07/08/12 22:12:31 vvVVU9Mu
>>315
目が覚めて時間が経つほどに頭はクリアになっていく。
クリアになればなるほど現状に疑問が出てくるのは俺の気のせいではあるまい。
なぜ高野が俺を誰もいない部室に呼ぶのか、なぜ返事をしたときの高野はうれしそうな顔をしていたのか。
いや、後者は気のせいかもしれない。ただ、そう見えただけだ。
今、視界の片隅にある高野の顔には当然のように何の変化もなく、ただポツポツと歩みを進めている。俺もそれに続く。
手を伸ばせば届くほどの距離を保ち、前を行く高野の足取りはいささか軽いように見えた。
そして、茶道部部室まで辿り着いたときに、クリアになりきった頭は単純な事実を告げる。
―よく考えるまでもなくこの状況はかなりまじぃ。
ただでさえさまざまな勘違いをされ続けてきた経験からか、脳がカンカンと警笛を鳴らす。
こういうときに何が起きるか、一流脚本家もビックリな先読みもできる俺だ。
クドカンがここで何を望むかなんてことさえ簡単にわかる。
ちょっとしたアクシデントでいい感じに見える状態になったところを、なぜか遅れてやってきた妹さんなりに目撃されるんだろう。
だが甘い。何が起こるかわかっていれば対処のしようもあるというもの。
少し気をつければそんな状態など軽く回避できるし、何より相手は高野。
もしものことがあったとしてこいつなら上手く切り抜けてくれるだろう。
そんな危険を冒してまで部室でお茶を飲む必要があるのかはともかく、先ほどより盤面を見つめたまま動かなくなった棋士よろしく、
かの有名な考えているんだか悩んでいるんだかの像のごとく部室前で開いたドアを見つめ固まった俺を高野が不振そうに見やる。
その瞳がなぜだか澄んで見えて、吸い込まれそうな、というのはこういうものかなどと考えていると高野は口を開いた。
「いつもマジマジと見ることがなかったけど、よく見てみるとその瞳は綺麗で、本当はこいつかなりかわいいんじゃねぇか、
やべぇこれから二人きりってちょっと照れるじゃねぇかとか思って―」
「ちげーよ!」
とりあえず思いっきり否定しておいた。
間違ってはいなかったのだけど認めるのはまずい。これから二人きりだ、まずいなんてレベルじゃない。
もしかしてこれは―。
「冗談」
思考の渦に包まれている中で、高野が真顔で言い放ったその言葉により、俺は現実へ帰ってきた。
一言文句でも言ってやろうかとも思ったけどいい言葉が浮かばないので、
けっと一蹴して、先ほどから開け放たれている部室のドアをくぐり部室内へと入っていった。
少し赤らむ顔を、いつの間にやらイスに深く腰を下ろしている高野に覗かれないようそっぽを向きながら俺も適当なイスに腰をかける。
そんな様子をどう思ったのか、フフッと綺麗に鼻で笑うような音が高野からした。
一応、眉をひそめてそれなりの体を保とうとするが、不思議と嫌ではなかった。
「何が飲みたい?」
少しの間をおいてからの、そんなさりげない質問にまでドギマギする自分がちょっと悔しかったので、
低くどもりながらブラックとだけ、静かに告げた。
何を隠そうこれってエロパロなんだよねってことで少し播磨からも晶を意識させてみたり……正直スマソw