07/06/21 22:19:01 iVIjiel6
投下終了です。
大変お待たせしてしまい申し訳ありませんでした。
それでは、また…。
246:名無しさん@ピンキー
07/06/21 23:05:38 msKvJ/G7
GJ! お待ちしておりました。
これはそろそろ葵の身が危ないか…
247:名無しさん@ピンキー
07/06/21 23:06:02 5ICcSUrp
>>245が神すぎてGJ以外に褒め称える言葉がなかなか出て来ない。とりあえずGodJob とだけ言ってみる。
人間、感動すると何も言葉に言い表せられないって本当なんだな……。改めて実感した。
248:名無しさん@ピンキー
07/06/21 23:38:01 W8GBqwmz
>>245
(*^ー゚)b グッジョブ!!
若菜に心惹かれる俺は、もう戻って来れないのでしょうか? (´・ω・`)
249:名無しさん@ピンキー
07/06/22 01:41:41 +eKaGNax
>>248
大丈夫、俺は澄香が好きだし
250:名無しさん@ピンキー
07/06/22 01:47:09 JU0WW5X1
みんなが全裸状態に耐えられなくなってきたところで颯爽とSSを投下する作者様
な、なんという焦らしテクニック
251:名無しさん@ピンキー
07/06/22 20:28:26 5Xza4j9Y
なかなかいい嫉妬だぜ
URLリンク(www.nicovideo.jp)
252:名無しさん@ピンキー
07/06/22 20:50:09 O61sKi6Z
youtubeかニコニコスレで嫉妬・修羅場・三角関係のスレを立てるのも面白いな・・
即効にダ・カーポとSHUFFLEとGiFTがうpされそうw
253:名無しさん@ピンキー
07/06/22 22:14:46 08bpeaHj
>>252
ダ・カーポにも重い修羅場があるの?
254:名無しさん@ピンキー
07/06/22 22:42:41 O61sKi6Z
あれはいろいろと話題になっていたじゃん
音夢とさくらのガチ対決で純一がヘタレ風景していた修羅場が・・・
255:名無しさん@ピンキー
07/06/22 22:44:11 8q8RcVrz
ニコニコには「こいつ明らかにこのスレの住人だろ」って動画がいくつかあったな・・・・・・
256:名無しさん@ピンキー
07/06/23 13:54:13 +0797xLV
それにしても、一気に過疎ってしまいましたね・・
257:名無しさん@ピンキー
07/06/23 14:07:52 esqUUxhv
変なのが湧くよりはましだろ。多少ペースが落ちたぐらい気にスンナ
258:名無しさん@ピンキー
07/06/23 14:10:10 VgH0PwX0
SSスレにはよくあること
259:名無しさん@ピンキー
07/06/23 14:36:40 mbDd28N1
ROM専の時代は終わったな
これからは自分で創作していかないと
260:名無しさん@ピンキー
07/06/23 17:53:28 +0797xLV
創作活動に必要なモノ
・リアルな修羅場を体験したことがある
とりあえず、彼女の親友から告白を受けて・・修羅場勃発経験ぐらいは
誰だってあるはずさ
261:名無しさん@ピンキー
07/06/23 18:10:57 f5Nnixjd
個人的に、男←男装の親友(女)←幼馴染(女) とか大好物です、はい
262:名無しさん@ピンキー
07/06/23 18:12:03 gOlv68BP
>修羅場勃発経験
が修羅場勃起経験に見えてしまった
修羅場にあって興奮のあまり勃起する事かと……
263:名無しさん@ピンキー
07/06/23 18:25:40 w56GJ9Pm
>>261
あれな・・・。結局上手くいかなかったな。
264:名無しさん@ピンキー
07/06/23 19:04:03 TQxPsLMn
兄→ 俺 ←妹
↑
妹の親友
みたいな修羅場こそが勃起するに相応しい
265:名無しさん@ピンキー
07/06/23 19:13:13 EK5b+4hL
アッー!
266:名無しさん@ピンキー
07/06/23 19:42:36 WgdcwN4E
>>264
それって実は「俺」が弟のこと妹だって思い込んでるってオチで親友も男なんだろ?
全員男の修羅場か・・マニアックだな
267:名無しさん@ピンキー
07/06/23 21:10:52 g6YJ5Bsw
保志
↓
若本→俺→×姉→妹
↑
田代
かなり嫌な相姦図。
268:名無しさん@ピンキー
07/06/23 21:25:23 gycnOckP
もう妹とか姉とか飽きた
269:名無しさん@ピンキー
07/06/23 21:33:56 0wmbtURq
>>268
つ[いとこ][はとこ]
270:名無しさん@ピンキー
07/06/23 22:20:31 fU1Mh1HY
セル&フリーザー&ブルー将軍
↓
キラ → 俺 ← アスラン
↑
嫉
妬
す
る
腐
女
子
271:名無しさん@ピンキー
07/06/23 22:24:43 EK5b+4hL
>>270オワタ\(^o^)/
272:名無しさん@ピンキー
07/06/23 23:17:54 f5Nnixjd
>>267
>>270
あまりにもネタ過ぎる物はやめようぜ
273:名無しさん@ピンキー
07/06/23 23:55:08 fU1Mh1HY
さてと皆はスクールデイズまでこんな寂れた流れも結構いいかもしれない・・
俺はアニメよりもラジオの方がちょっと楽しみwwww
274:名無しさん@ピンキー
07/06/24 01:52:15 tkWOzuCp
こういう時こそまとめサイトで過去の作品を読み直す(*´д`*)
阿修羅様忙しい中ありがとう(*_ _)人
275:名無しさん@ピンキー
07/06/24 12:19:40 jxER74i8
スクールデイズ楽しみだな
276:名無しさん@ピンキー
07/06/24 12:42:33 RYwPACgV
それまでは死ね無いな
277:名無しさん@ピンキー
07/06/24 15:24:04 tkWOzuCp
あまり期待しすぎるとアレだった時に泣けるからなぁ・・・
まぁシャッフルのおかげでそういう展開がテレビでありってのは
分かってるから希望は持っちゃうけど (´・ω・`)
278:名無しさん@ピンキー
07/06/24 16:15:10 A8jYfbp2
>>277
製作側も、スクイズをアニメ化するにあたって
視聴者が何を求めているのかをじっくりと検討した、と思いたいな・・・
279:名無しさん@ピンキー
07/06/24 16:18:49 HnOeZGPt
>>278
「みんなの誠」エンドから、話を「鮮血の結末」に持ってくる展開を激しく希望
280:名無しさん@ピンキー
07/06/24 16:23:00 92pczLOM
いきなりフォーク?ダンス。(てかダンスだったか?)
それからジオンの残光のように場面を最初に。
281:名無しさん@ピンキー
07/06/24 17:11:57 16eLeimH
とりあえず言葉レイプはマジで嫌だ
282:名無しさん@ピンキー
07/06/24 17:43:21 RYwPACgV
二人の恋人ENDが一番ええよ
283:名無しさん@ピンキー
07/06/24 17:59:36 YO1YS7U9
一番初めに到達したのが鮮血の結末ENDだった俺が来ました。
284:名無しさん@ピンキー
07/06/24 18:51:04 /qIq6uA6
一番初めに到達したのがバグで強制終了の俺も来ました。
285:名無しさん@ピンキー
07/06/24 22:50:27 hRoLkwmk
スクールデイズやってないオレも来ました
286:名無しさん@ピンキー
07/06/25 00:18:52 47yS0EDn
それ何?な俺も来ました。
287:名無しさん@ピンキー
07/06/25 00:49:07 j51uUFcR
体験版だけやって、確かにフルアニメーションだったけど、口パクシーンは多いわ
キャラが明後日の方向見たまま喋るわ、ダメじゃんこれと見捨てた。
まさかこんなに人気が出るとは思わんかった。
288:名無しさん@ピンキー
07/06/25 01:03:01 +9Cosn7A
>>287
大事なのは映像じゃない。
内容だよ
289:名無しさん@ピンキー
07/06/25 01:05:02 oIWS7W7O
>>279
鮮血より永遠の方がいい俺参上。
狂う過程は確かに鮮血の方がいいし、言葉様が究極狂ってる感じがする。
だけどやっぱり永遠の方がセリフとか行動がゾクゾクくるんだよ。
私、誠くんが居ないと生きていけないんですよ。とかマジで声聞いた瞬間背筋がゾクゾクきた。
290:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:36:21 Mg7kKKav
投下しに来ました。
291:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:37:43 Mg7kKKav
――side 晴香――
私はあいつが憎かった。
突然やってきた新しい家族。
同年代の男の子。
私は自分と同じ年頃の男の子が嫌いだった。
あいつらは昔から何かと私に嫌がらせをしてくる。
私の大嫌いな虫を近づけてくるし、隙を見せればからかわれるし、つまらないことでちょっかいをかけてくるし、
膨らみ始めた胸をじろじろと見る。
自分が嫌われていることも知らないで私に付きまとってくる奴らのことが、私は大嫌いだった。
そんな私の前にあいつは現れた。
しかも、あいつの隣で、私達の前で、父さんはこんなことを言った。
「今日から同じ屋根の下で過ごすことになった。仲良くしてあげて欲しい」と………
私はファザコンだった。
母さんが死んでから父さんは私達を人一倍甘やかすようになり、私はそんな父さんに甘えるのが大好きだった。
父さんは何も言わなくても私がどうして欲しいかを良くわかっていたし、私のワガママだってよく聞いてくれた。
私が困っているときはいつだって助けに来てくれた。
意地悪ばかりする同年代の少年よりも私は父さんが大好きだった。
だから私は父さんの言うことにはいつだって喜んで賛成していた。
父さんの言うことはいつだって正義だった。
その父さんの口から出た言葉は絶対のはず………。
けれど、私には許せなかった。
自分の家に“男の子”がいることが。
その場は何とか取り繕ったものの、あいつの姿が見えない時に私はすぐさま父さんに意見した。
「私は嫌。あいつを今すぐ家から追い出してよ」
私には自信があった。
父さんはいつだって最後には私のワガママを聞き入れてくれたから。
けれど、その日の父さんはいつまで経っても首を縦に振らない。
私がしつこく懇願すると、父さんは珍しく私を強く叱った。
そう、父さんに叱られた。
その出来事は私にとって衝撃だった。
父さんは私よりもあいつの方が大切なの?
胸を覆う昏い曇り空。
何よりも私達を一番に考えてくれた父さんが私よりもあいつを選んだ。
父さんをあいつに取られてしまう。
そして私は薄々気付いていた。
父さんは本当は男の子が欲しかったってことを………。
292:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:39:12 Mg7kKKav
あいつがやってきてから数日。
ふとした機会に雨音があいつと言葉を交わし始めた。
まだ一言、二言。
しかし、その光景は私の心を乱し、焦燥感を募らせる。
家族を汚された。
一点のシミだった汚れが縦横無尽に手を広げ、次第に真っ白だった私の家族を侵食してゆき、
その穢れが妹のすぐ目の前にまで及んでいる。
早く手を打たなければ手遅れになる。
けれど、父さんの言うことは聞かなければならない。
どうすればいい?
どうしようもない。
あいつが笑顔をみせるたび、私の不満が膨れ上がってゆく。
苛々する。
まるで、ゴキブリが家の中を我が顔して這い回っている気分。
どうしてこの家の娘である私がこんな思いをしなければならないの?
あいつがやってきてから父さんは仕事を増やし、なかなか家に帰ってこなれなくなった。
それなのにあいつは家に残って、生活を営んでいる。
居るはずの人が居なくて、居なくてもいい奴が居る。
母さんを奪われた私達から父さんまで奪おうとしているあいつが憎い。
だから、父さんが出張に出かけた日、私はあいつに言ってやったのだ。
「どうしてまだここにいるの? ここはお前の家じゃないのに」
その瞬間のあいつの顔は傑作モノだった。
谷底に突き落とされる者がみせる、哀れなまでの足場への執着。
あいつの絶望の表情。
それを視界に捉えた刹那、昏い快感が背筋を駆け抜けてゆく。
あいつの瞳が映し出すのは澱んだ輝き。
たった一言で、もうあいつは死に体だ。
後はトドメを刺してあげるだけ。
ならば、決定的なものを与えてあげよう。
たった一つの逃げ道を塞いで、終わらせてあげる。
「あいつがいなくなればおとーさんは帰ってくるよ。だからね雨音ちゃん、手伝って」
まだ幼い雨音を篭絡するのは簡単だった。
父さんのいない不安を煽ってやるだけですぐにこちら側についた。
これで天野家にあいつの味方はいなくなった。
後は、あいつが自分から出て行くのを待つだけ。
私達はあいつを無視して待つことにした。
けれど、あいつは出て行こうとはしない。
仕方ないから、あいつのことを散々罵ってやった。
けれど、あいつは出て行こうとはしない。
それならばと、身体に解らせてあげることにした。
けれど、あいつは出て行こうとはしない。
本当にあいつはゴキブリだった。
あいつはいつもギリギリのところで踏みとどまる。
いつも、もうこれで――と思わせておいて必ず蘇ってくる。
私は躍起になってあいつを痛めつけた。
あいつが誰かに告げ口しないことは良く分かっていたから。
それに、私はもう一度あいつが絶望する顔が見たかった。
あいつにはそれがお似合いだ。
293:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:40:40 Mg7kKKav
中学に入ったある日。
少し調子の悪い日が続いた。
いつもなら学校を休むところだけれど、ちょうどそのときはテスト前。
さらに運の悪いことに雨音は小学六年生、修学旅行で家にいなかった。
学校では成績優秀な優等生を装っていた私は多少の無理を押して学校に通った。
あいつの前で弱った姿なんて見せられない。
そんなのは私のプライドが許さない。
作り笑いを貼り付けて何とか乗り切った学校、心配する友人達と笑顔で別れ家にたどり着いた途端に眩暈がした。
突然、眩む視界。
全身を貫く寒気と共に、急激な気だるさに囚われる。
私はぶっ倒れた。
風邪だった。
気が付くと氷枕を頭に下に敷かれ、冷たいタオルを額に乗せた状態で私は自分の部屋で寝かされていた。
窓の外は真っ暗。
どれだけの時間が経っているのか良く分からない。
今、この家には私とあいつしかいない。
つまり私がこの状態であるということはあいつの仕業としか考えられない。
あいつはバカだ。
私があいつだったら絶対に私を助けたりはしない。
私があいつだったら高熱に苛まれ、もがき苦しむ私を笑顔で眺めているだろう。
それなのにあいつはそれをしようとはしない。
私はいったい何をしてるんだろう。
あいつに弱みを見せないために無理してがんばって、
その挙句、あいつに助けてもらっている。
熱は37~39度の間を行ったりきたり。
病原菌が入り込んだのか関節がジクジク痛む。
喉が痛くて堰が止まらない。
身体の芯が震えるのはきっと寒さのせいだけじゃない。
こんなに苦しいのに私は部屋に独りぼっち。
―誰か助けて欲しい。
病原菌に蝕まれた肉体はそう叫ぶ。
誰かって誰?
今この家に居るのは?
―あいつ、あいつにだけは助けられたくない。
私の意地が踏みとどまる。
肉体と精神の要求の狭間。
矛盾を抱えた心が行き場を無くして、悲鳴を上げる。
頬が濡れている。
私は部屋で独り涙を流していた。
294:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:41:26 Mg7kKKav
――二度、ドアを叩く音。
誰かなんて考える必要も無いのに、惚けた頭では反応できなかった。
そして、無抵抗のまま私の部屋のドアは開かれてしまう。
「晴香さん?」
あいつは申し訳程度にドアの隙間から顔を覗かせて、こちらの様子を窺う。
「よかった――寝てるみたいだ」
横たわったまま動けないでいる私を見てあいつは勘違いをしたようだ。
私の了解も得ないまま、あいつはズカズカと私の部屋に入り込んでくる。
その足音は不快ではあったが、今は焦りのほうが勝っていて、
あいつの足音が近づくたびに『あっち行け!』と叫びだしそうになる。
やがて、あいつの足音が私の耳元へとたどり着く。
私が目を瞑り寝たふりを通していると、あいつは私の汗と涙を拭い、
タオルの水を取り替えて私の額にそっと置いた。
「早く良くなってくださいね」
あいつの口から出た言葉はありきたりな言葉だった。
まるでブラウン管や液晶越しに見るような、当たり前の言葉。
けれどそれが、たまらなく――で……。
「………ヒッ………ヒッ………」
必死に堪えていたものが溢れ出し、私は息をしゃくりあげていた。
あいつの目の前で私は泣いてしまった。
憎むべき相手の前で、弱い自分を曝け出している。
でもそれは、それだけは許されない。
「出て行きなさい!」
私は唖然としたあいつの顔に叩きつけるように言い放つ。
「でも……」
「出て行ってよ!!」
弱っている為が私の声には迫力があまり無い。
「大体誰がこの部屋に入っていいって許可したの? こっちが病気で弱ってるからって甘く見てない?」
「僕はただ……晴香さんが苦しそうにしていたから……」
「そうやって優しい振りをするのも大変ね。
どうせ、御機嫌取りでしょ。ここ以外に行く所が無いから、そうやって媚びへつらってる」
「僕は、晴香さんが心配で――」
「うるさい。本当の兄弟じゃないくせに……」
何気ない一言。
けれど、その一言があいつの胸を深々と穿っていた。
二度目のあいつの絶望の表情。
けれど、少しも楽しくなんてなかった。
在ったのは胸糞悪い吐き気だけ。
「何かあったら、すぐに呼んでください……」
あいつは振り返りもせずにトボトボと部屋を出てゆく。
あいつのいない部屋、独りぼっちの部屋、妙に空虚な部屋で私は無理やり目を閉じる。
それからどれくらいの時間が経ったか分からない。
まだ満足には働いていない聴覚が何かの物音を拾い、半分眠っていたはずの意識が覚める。
じんわりと広がる心地よい冷たさ。
氷とタオルは新しい物と取り替えられていて、
机の上にはペットボトルに入った水と薬と魔法瓶に入ったおかゆ、そしてメモが用意されていた。
『先に眠ります。体調が悪くなったらいつでも呼んでください』
時刻は午前4時。
私はメモを破り捨てた。
数日後、あいつが風邪で倒れた。
私の方はすっかり治っていたけれど、看病したりはしなかった。
もちろん帰ってきた雨音もあいつを助けなかった。
295:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:42:38 Mg7kKKav
私が高校受験に向けて本格的に勉強を始めた頃。
その夜は布団に入っても寝付けなかった。
寝るタイミングを外したとでも言うのだろうか?
妙な胸騒ぎがした。
お茶でも飲んで気分を変えようと、私は台所へ向かう。
階段を静かに降りて台所へ入る間際、人の気配を感じた。
父さんの趣味で作った書斎。
今はもう使われていないはずの扉の隙間から淡い光が漏れていた。
私は誘われるようにその光に手を伸ばし、自分の目を疑った。
書斎を照らす、オレンジ色のランプの光。
暖かな陽だまりのような部屋の中、二つの影が優しい時間を過ごしている。
私はまるで夢でも見ているような幻想的なその光景を食い入るようにして眺めていた。
「そういえば、雨音ちゃんは彼氏とかいる?」
「え?」
「いや、僕の友達が雨音ちゃんと付き合いたいって言ってたからさ」
「………そうですか。私、そういうのには興味ありませんから………」
「そうなの? もったいないと思うな。雨音ちゃんは元がいいんだから、男子なんかは放って置かないでしょ?」
「そんなことありません。私、無愛想ですから」
「大丈夫。雨音ちゃんは可愛いんだから、自信を持っていいと思うよ」
「私が……可愛い……」
あいつの隣であの雨音が女の子の顔をしていた。
異性に興味なんて無かった妹があいつの前で頬を染めていた。
そして、私は聞いてしまう。
「ば、バカなこと言わないでください……に、にぃさん……」
不慣れなのが一目でわかる。
それでも不器用な性格の雨音がやっとの想いで紡いだ妹の誓い。
たった扉一つ向こう側、
その空間に3年前に在るべきだった姿が横たわっている。
あの二人は出会った頃に戻っている。
もう一度、やり直そうとしている。
でも、そこに私の姿が無い。
私を隔てる扉はたった一枚。
ほんの一瞬だけ、あいつが雨音と親しそうに話している姿を羨まし――
嘘だ!!
そんな事はありえない!!
違う!!
断じて違う!!
どうして私があの二人を羨む!?
私が感じなければならないのは怒りだ!!
雨音は私を裏切った!!
あいつは私を出し抜いた!!
だから私は怒っている!! 怒っていなければならない!! 怒っているはずだ!!
私は胸の内を怒りに塗り替え、書斎の扉に手を掛ける。
「ねぇ――いったい何しているの?」
私が書斎に入ると、二人の間の和やかな空気が凍りつく。
私が壊してやった。
いい気味だ!!
自分にそう言い聞かせて、私は二人に圧力をかける。
反撃もしてこないでヘラヘラ笑っている臆病者と今まで従属してきた妹だ。
すぐに屈するはず。
けれど、今日の雨音はあいつの傍から離れようとしない。
不愉快だ。
必死にしがみついてくる雨音が私に向かって叫ぶ。
「姉さんもう止めようよ! 本当は姉さんだって、もうこんなことしたくないんでしょ!!」
296:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:43:53 Mg7kKKav
視界が脈を打った。
その一言は私の精神を貫いて、心の弱さを暴き出しそうになる。
私だって、出来るものなら………。
うるさい!! 出てくるな!!
これが私の望んでいることだ!!
雨音に何がわかる!!
雨音の両手だってあいつの血で汚れているくせに。
それなのに、
どうしてあいつの傍であんなに幸せそうな顔が出来るの?
どうしてあいつに許してもらう事が出来たの?
どうして?
教えて!
教えなさい!!
そうしたら………私だって………。
あいつはバカだ。
バカだから――私だって受け入れてくれるかもしれない。
ちゃんと分かってる。あいつが優しい奴だって事は……。
けれど、これは私が始めてしまったこと。
だから、もう後には引き返せない。
それにもうあいつには数え切れ無いほどの傷痕を残している。
許してくれる訳が無い。
――でも、雨音はあいつの傍にいる。
黙れ!!
それが何だというのだ。
期待なんかしたって、裏切られるに決まってる。
羨んだ所で、手が届くはずも無い。
だから、壊してやる!
手に入らないなら壊してやる!
でないと私は自分を保てなくなる!
あいつと雨音のか細い絆。
まだ生まれたばかりのそれが、姉妹の絆に敵うはずが無い。
私があいつを追い出して家族を守るんだ!
私があの二人の間を引き裂いてやれば元通りだ!
私が壊してやる!
私が兄妹を壊してやる!
私が! 私が!! 私が!!!
私は、本当は――
顔を上げると二人はお互いを支えあうようにして、こちらを見ていた。
ただそれだけなのに、私はそれがどうしても許せなくて――。
キレた。
喚き散らした。
そして、目の前が真っ白。
視界に映っている世界を脳味噌が認識出来ない。
キーンと耳鳴りがする。
私、なにしてたんだっけ?
297:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:45:30 Mg7kKKav
頬が熱い。
私……もしかして、ぶたれた?
「――いい加減にしてください。
僕に言うのはかまいません。でも、雨音ちゃんにだけは、その言葉は使わないで………」
混濁する意識。
雨音? 私、何を言ったんだっけ?
そして、歪んだ視界の端に掌が映る。
もう一度、ぶたれる? あいつに?
咄嗟にその覚悟をする。
それはつまり、いつかこういった事態になるかもしれないと心のどこかで思っていたから。
――けれど、いつまで経っても来るべき衝撃が来ない。
代わりにあったのは、火照った頬に触れる優しい感触。
文字通り血塗れたあいつの手。
けれど、気持ち悪いなんてこれっぽっちも思わなくて………。
「ごめんなさい、痛かったよね……」
開口一番にあいつはそう言った。
やっぱりあいつはバカだ。
遅い。
今頃になって手を差し伸べてくる。
私があいつに安らぎを与えられている。
それは私にとって最大の屈辱。
それなのにあいつの掌を私は拒めない。
温かい。
嬉しい。
手放したくない。
ずっと、こうしていて――
違う!
違わない。
嘘だ!
嘘じゃない。
止めて!
止めないで。
認めたくない!
じゃあ、どうしたいの?
――雨音にするみたいに優しくして欲しい――
298:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:46:12 Mg7kKKav
動悸が止まらない…。
つまりはそういうことらしい。
いいだろう。
認めてあげる。
この勝負はあいつの勝ち。
あいつのバカは私を狂わせる。
これが恋愛感情というのならそれでも構わない。
それならば、こちらにだって考えがある。
私を狂わせたのは他でもないあいつ。
だから、責任を取ってもらうからね。
「八雲ちゃん」
299:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/06/25 01:46:59 Mg7kKKav
ここまでです。
妹編と重なる部分はかなり説明を端折っていますので、
阿修羅氏のまとめサイトを活用していただけると助かります。
次回も晴香視点です。
相変わらず忙しいままなので、更新は遅くなってしまいます。
本当に申し訳ありません。
300:名無しさん@ピンキー
07/06/25 01:47:52 Y09JfPfY
キタ━━(゚∀゚)━━!!
惜しみなくGJ
301:名無しさん@ピンキー
07/06/25 01:53:38 MmhTxF4D
とりあえずいまさらだよ姉さん…ときっぱり振ってほしいぜ!
302:名無しさん@ピンキー
07/06/25 02:07:16 8VIgLkv3
姉うぜぇわ、普通にボコボコにしてやれと思ってしまった…
でもGJ、続きに期待
303:名無しさん@ピンキー
07/06/25 02:24:29 ecl3AyPC
GJ!!一番続きが気になる作品投下されてた!
それと…なにこの自己中女、ホントウザイわ
雨音にはマジで頑張ってほしい
こんな腐れ女、名前すら覚えられんわ
姉は鼻の穴に耳かきの棒つっこんで死ね
304:名無しさん@ピンキー
07/06/25 02:26:08 oB9SU5U1
姉も妹も大好きだよ!
皆が幸せになれる結末ならいいな!
305:名無しさん@ピンキー
07/06/25 02:37:01 xNUlHGYe
この姉、今後は修羅場で残酷に殺されることがあっても、
少なくともこの主人公に徹底的に報復されることはないんだろうな。
主人公、このDQN女を殺っちまえ!
306:名無しさん@ピンキー
07/06/25 02:44:55 SufRsurR
そんなこと言う前にさげろ
307:名無しさん@ピンキー
07/06/25 03:04:04 MmhTxF4D
姉への総攻撃にワロタ
同級生娘には頑張って欲しい
308:名無しさん@ピンキー
07/06/25 04:02:56 KTklP6J7
>>299乙&GJ!
壊れかけた家族の絆がこのままぶっ壊れるのか
それとも再びくっつくのか、続きが気になる。
あと避難所に修羅サンタの新作来てるね。
こっちもGJ!
309:名無しさん@ピンキー
07/06/25 04:48:18 7cIorg/3
>>290-299
まってて良かった!待ってて良かった!!
ありがとう・・・・そしてお疲れ様、良かったよ
じゃあ人気のない姉様はぼくが貰って行きますね^^
310:名無しさん@ピンキー
07/06/25 05:35:14 hNkCl5O1
姉妹を性奴隷に、と言うオチになる予定なので無問題
311:名無しさん@ピンキー
07/06/25 06:36:09 XwyjLgJz
姉への総攻撃は止めろよ。
もし姉がメインヒロインならやや地獄みたく作者来づらくなるだろうが。
まあ、現在の展開を見ればまったく反省してない可能性が高いし、叩かれるのも当然っちゃ当然だが。
共犯の妹が距離置かれても無理がない反応に対し、主犯の姉は弟が悪いって態度だからな。
312:名無しさん@ピンキー
07/06/25 06:41:37 c7qwM241
待ってました!
晴香姉さん意地ばかり張ってると本当に八雲取られちゃうよ。
職人さんに惜しみ無いGJを!
313:名無しさん@ピンキー
07/06/25 06:45:29 c7qwM241
興奮のあまりageてしまった。すまん。
314:名無しさん@ピンキー
07/06/25 07:55:56 qNWnspgN
一時の感情に流された日和見なレスでは後の大局を見誤る。
むしろ、ここからの晴香の心理をいかに上手く料理するのか。
それを楽しみにしようじゃないか。
315:名無しさん@ピンキー
07/06/25 08:10:21 uRx9Rg55
姉イイネ!ツンデレっぷりがすばらすぃ。でもこの作品八雲に一番萌えるね。
316:名無しさん@ピンキー
07/06/25 09:04:38 K7dVBUfg
姉スキーの俺は問答無用で晴香派であり今後も晴香ガンガレなのである
317:名無しさん@ピンキー
07/06/25 09:42:54 OyFAu10a
バカだなお前ら
自分が付けてしまった傷を生涯かけて癒すのがいいんじゃあないか…
318:名無しさん@ピンキー
07/06/25 14:34:54 8SlR7Frm
なんか、転帰予報を初めて見た人の感想多いよな?
まとめサイトで1話から見た方が良いぞ、晴香がなんだかDQN扱いされてて驚いた
319:名無しさん@ピンキー
07/06/25 15:00:28 x2XEGZkS
転帰予報の初期の当初の晴香姉は弟にデレデレしていたような記憶がある
まあ、伏線は1話から張られていたんだから騒ぐ奴はどうかしていると思うんだが・・
俺は嫌われていた主人公がどうやって姉と妹を仲良くなる経緯をちゃんとやってくれているので
次回が気になって仕方がないですよ
320:名無しさん@ピンキー
07/06/25 16:00:06 V+ztHWyb
暴姉殺すにゃ刃物はいらぬ
弟LOVEでブレインウォッシュ
321:名無しさん@ピンキー
07/06/25 16:28:35 lPrlzBz7
ここって基本的に男に女が複数って感じですか?
女を取り合う男、のような逆バージョンはスレ違いでしょうか
322:名無しさん@ピンキー
07/06/25 16:33:10 RQPdr+Ba
>>321
スレの定義という点ではスレ違いではないが
需要は期待しないほうがいいと思う
323:名無しさん@ピンキー
07/06/25 17:08:37 YZpOzTue
>>321
その設定で投下するなら注意書きをしてくれ
スルーするから
324:名無しさん@ピンキー
07/06/25 17:20:59 XwyjLgJz
>>318
俺は最初から見てたが、次第に嫌いになったってタイプかな。主犯だし。
325:名無しさん@ピンキー
07/06/25 19:15:33 X3wQUQo8
>>321
寝取られスレでやった方がお前さんにとってもこのスレにとってもいいと思う
326:名無しさん@ピンキー
07/06/25 19:37:35 nwvTPD2I
嫌いになったのはわかったからそれをいちいち喚くな
327:名無しさん@ピンキー
07/06/25 19:57:33 GJ3YxgIc
>>298
やばい・・・晴香に殺意がとまらねえ・・
もし俺が主人公ならぶん殴ってただろうな・・・
328:名無しさん@ピンキー
07/06/25 20:41:12 jPELhNRA
ツンデレ属性の晴香に萌える・・
一体どうやってデレモードになったのか・・気になる・・
329:名無しさん@ピンキー
07/06/25 20:47:11 gBSaJies
ツンってレベルじゃねぇよw
330:名無しさん@ピンキー
07/06/25 20:53:27 8SlR7Frm
お前ら、まとめサイトで1話から見てこいよwww
デレデレ晴香なのに、過去話が投入されただけでDQN扱いとかカワイソスwww
まぁ、妹の方が萌えるけどね^^
331:名無しさん@ピンキー
07/06/25 22:00:08 +9Cosn7A
何故だろう。雨音のスカートに
どんな切れ込みを入れられたかが一番気になる俺…
332:名無しさん@ピンキー
07/06/25 22:06:25 c7qwM241
いいじゃん、晴香姉さん。
堕ちかけた正義ヒロインの悪あがき見てるみたいで楽しいぜ。
まあそれも、雨音ちゃんが三馬身くらい離してるから言えるワケですが。
ヒロイン一人しかいなかったら、間違いなく俺もアンチ化してたろうな。
333:名無しさん@ピンキー
07/06/25 22:10:53 HUeXTbLU
ここってフタナリあり?
334:名無しさん@ピンキー
07/06/25 22:11:25 8SlR7Frm
そもそも嫉妬ヒロインはこのスレでは歓迎のはずなのに、何故か晴香姉は批難・・・
九十九が投下されても、流タソが批難浴びそうな勢いだなw
335:名無しさん@ピンキー
07/06/25 22:21:29 jPELhNRA
転帰予報が投稿された途端にレス数が限りなく盛り上がっている
お前ら、飢えていたんだな・・w 俺も転帰予報は待っていた信者だったが
最近の過疎で嫉妬成分が飢えていた・・
飢餓状態のピラニアに餌を与えるとこんな感じになるんだろうな
336:名無しさん@ピンキー
07/06/25 23:50:35 pb+WfUJw
姉攻撃してるのは妹か他キャラが好きだからなんだぜ
待ち遠しかったからこそのレス
337: ◆Xj/0bp81B.
07/06/26 00:11:46 ezcUyCIT
投下します。
338:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/26 00:13:25 ezcUyCIT
翌日、目覚まし時計のやかましい音に叩き起こされた。ガチャンと時計を乱暴に叩き、その口を黙らせると、ムクリと起き上がり、
寝惚け眼を擦りつつ、欠伸を一つ。ベッド脇の窓の外から、ポツポツとおとなしい雨音が聞こえている。体を捻りカーテンを開けると、
見慣れた街並みが淀んだ空の色とあいなって、湿って見えた。
灰色の空は、何だか気持ちが悪い。そのうえ、雨か、と思うと少し憂鬱にもなる。
そんな憂鬱を引きずりつつも、いつまでもベッドの上にいるわけにはいかないので、充電していた携帯を抜き取り、
ひとまず立ち上がる準備をする。立ち上がるためには、覚悟が必要で、その覚悟を充電するにはそれなりの時間が必要で、
だからあくまで準備だ。そして、ぼけっとしたまま何気なく携帯を開いたそのとき、
ビリビリと、
夜中は、サイレントモードに設定していた携帯が震動した。どうやら、寝ている間にメールか、着信があったらしい。考えてみれば、
昨日は普段よりずいぶんと早く就寝したので、それを知らない誰かが普段の調子でメールなり、電話なりをかけてきたのだろう。
昨日の明日だけに、おおかた森あたりの程度の低い冷やかしに違いない。そう、だいたいの当たりをつけて、翔は画面に目を落とし、
そして、戦慄した。
画面にはこんな表示があった。
新着メール、500件。
不在着信、100件。
体の芯が凍えるような錯覚が、脳髄を駆け抜け、寝惚けた頭がいきなり冴えわたった。それとほぼ同時に芯から広がる寒気に震え、
思わず携帯をベッドの上に落としてしまった。しかし、そんな事は気にもならない。翔の思考は、その寒気が孕んだ真実へと、
なすすべなく吸い込まれていく。
考える
339:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/26 00:14:46 ezcUyCIT
翔が寝床についた時間が夜十時。それから約九時間。その間にメールと着信が約六百件もあったというのか。いや、ありえない。
そんな事ありえるわけがない。見間違いではないのか。そうだ、そうに決まっている。
混乱しかけた頭をかろうじて立て直し、落とした携帯を拾いあげて、翔は再び画面に目を落とす。
新着メール、500件。
不在着信、100件。
見間違いではなかった。
その事実に、慄然とする。
それでも同時に、頭の冷静な部分が犯人の割り出しにかかっていた。いったい誰が、こんな事を。大久保?都築?森?それとも─。
─その思考を遮るように、携帯が再び震えだした。見ると、ランプが緑色に発光している。着信だ。
画面に目を落とす。ディスプレイには着信相手の番号と、登録しておいた名前が写し出されていた。
「水樹澄香」。
ゾッとした。その寒気に押されるように、突然頭の中に浮かび上がる嫌な予感。
─未読メールも、不在着信も全て澄香のものなのでは?
ありえない。
翔はかぶりをふって、その予感を追い払おうとする。
それは、ほとんど悪夢だ。ありえない。だいたい澄香はそんな事をして何の得があるというのだ。大丈夫、ありえない。
そんな予感が現実になるなんて、絶対にありえない。そう、心にいい聞かせる。
しかし、それでも、その予感は思考を侵食していく。最近、見た澄香の狂気。その記憶が、予感の侵食を手助けしているのだ。
着信は十五秒ほどで留守電に入り、そしてプツリとあっけなく切れた。画面は通常画面に戻ったが、不在着信は表示限界を超えていて、
カウンターはもう増えなかった。
その瞬間に、翔は弾かれたようにカーソルを不在着信に合わせる。そして一つ息をつく。予感の正体。闇の向こうに転がる事実が、
あと一押しで目の前に姿を見せるのだ。そう思うと指が震える。たっぷりの時間を費やし覚悟を決めて、翔は指に力をこめた。
340:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/26 00:17:35 ezcUyCIT
途端に画面が暗転し、写し出される五件の不在着信。その全ての差し出し人が、澄香だった。
嫌な予感。ありえない予感が、ゆっくりと現実味を帯ていく。
それでもその予感を否定したくて、震えたままの指で、下ボタンを押した。
ひとつ画面が繰り上がる。
そのスペースに浮かび上がった名前も、やはり「水樹澄香」だった。
今度はめちゃくちゃに連続で下ボタンを押す。画面はリフトのように次々と上へと流れていくのに、水樹澄香の名前は一向に消えない。
上に上がった分、下からは水樹澄香の名前が現れるのだ。三十件過ぎたところで、耐えきれなくなって、翔は悲鳴と共に、
携帯を全力で投げ捨てた。携帯は正面の壁に、豪快に激突し、派手な音と共にコナゴナになった。
花火が消えた後、残るのはいつも静寂と寂廖だ。その静けさの中で、雨の音がやけにうるさかった。
ガクガクと体が震える。
たった今、ありえない予感が、悪夢が、現実へと昇華してしまったのだ。いや、実際のところ、それは分かっていない。
不在着信を三十件開いただけで、残りの着信履歴も、まるまる五百件の新着メールも確認したわけではない。しかし、それでも確信はある。あれは、間違いなく全て澄香からだ。
恩人である由美を邪険に扱ったり、勝手に翔の家に忍びこんだり、アルバムをしかも女性の顔だけを黒く塗り潰したりと、翔に確信させるだけの材料は、もう揃っている。「狂っている」。それだけで、全ての説明がついてしまうのだ。
その現実のおぞましさ、異常さに、翔は頭を抱えた。脳がぐしゅぐしゅに侵されていく。どこかへ消えたはずの異常の世界が、
再び目の前まで迫っている。翔を誘う悪魔は、澄香の形をしていた。
341:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/26 00:19:26 ezcUyCIT
逃げ場所が欲しい。
震える体を押さえ付けて、そう願う。
ここではないどこかへ。異常の世界とは無縁な、平穏な場所へ。もしくは異常の届かない騒がしい日常の溢れた場所へ。心の底からそう願う。
しかし、そんな場所はどこにある?
家?
ありえない。ここは孤独と記憶の廃墟だ。
しかし、それ以外にどこがある?
学校?
そうだ、学校だ。
学校には、たくさんの友達がいる。青木も大久保も寺田も本田も森もいる。あそこならいつもの喧騒が、恐怖の足跡全てを、
まるでさざ波のように洗い流してくれるはずだ。
─学校へ行こう。
342: ◆Xj/0bp81B.
07/06/26 00:21:07 ezcUyCIT
投下完了です。
続きは水曜か木曜に投下します。
343:名無しさん@ピンキー
07/06/26 01:18:31 G1ipx9lJ
>>342
GJ
お前さんをずっと待ってたんだぜ
そしてこれからもずっと待ってるんだぜ
344:名無しさん@ピンキー
07/06/26 03:41:40 eCE1jKY8
雨の音まだー
345:名無しさん@ピンキー
07/06/26 03:54:24 IBpyadqf
なんという恐怖による錯乱っぷり
このままでは主人公は間違いなく鬼隠し編の圭一と化す
346:名無しさん@ピンキー
07/06/26 07:17:46 YWMF6qzy
>>345
誰だよw むしろ俺は最初の携帯とメールでリーダー伝の校長思い出した。
しかし、父親にレイプ孕ませの過去を持つと聞くと、
最後には主人公と幸せに結ばれて欲しいとは思うんだよな。
347:名無しさん@ピンキー
07/06/26 07:19:05 YWMF6qzy
>>330
いや、それは知ってるんだよ。最初から見てた人も大勢いるだろう。
だが、最初に萌えても回想を見た後だとそれが白々しく見えるって事だろ。
348:名無しさん@ピンキー
07/06/26 18:46:38 ww0w2lbE
あげ
349:名無しさん@ピンキー
07/06/27 00:33:49 gCcozg84
>>299
スーパーロボット系の敵役みたいな口調だな、姉さんww「もうあいつは死に体だ」とかww
今まで妹の方がクローズアップされてて目だってなかったが、姉ちゃんの方もかなり好きになった
350:名無しさん@ピンキー
07/06/27 03:12:58 QHIgspQu
さて、じっくりと神を待とうジャマイカ
351:名無しさん@ピンキー
07/06/27 14:12:42 eLHK8YuL
嫉妬に該当すりゃ他スレから無断天才OK?
352:名無しさん@ピンキー
07/06/27 14:24:02 MxdmV+wq
ダメ
誘導すればいいだけのこと
353:名無しさん@ピンキー
07/06/27 14:28:15 PdAHz7WA
>>352
「無断転載」って言ってる時点で察しようぜ?
354:名無しさん@ピンキー
07/06/27 14:35:23 yyLVEtyP
SSの無断転載とかw
ゆとり脳にはついていけないわw
355:名無しさん@ピンキー
07/06/27 20:55:19 UWgfsCPO
他の関連スレは盛り上がっているのにここだけは盛り上がる気配を見せないなww
356:名無しさん@ピンキー
07/06/27 21:10:26 PCE8CUbR
ていうか元々マイナー属性のスレなんだからこんなモンで良いんだけどな。普通。
アホが入ってこないようになっただけ重畳、重畳。
357:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:59:54 2JNtIbU4
>>356 確かにマイナーだよなww
俺の周りの奴と趣味が合わない
358:名無しさん@ピンキー
07/06/28 01:28:19 SJAlZa57
女の子に挟まれたい、嫉妬されたいってのはオタ男の普遍的な願望だと思うんだが、違うのか?
キツイ修羅場が好みとなると偏ってるかもしれんが。
359:名無しさん@ピンキー
07/06/28 01:39:35 CqsUvYUS
普通だとハーレムの方にいっちゃうんじゃないか。
360:名無しさん@ピンキー
07/06/28 03:16:40 Ji/2j9tv
最近は荒らしに埋められてたけどまだ前スレ残ってるから
梅ネタ連載の再開を希望したい
361:名無しさん@ピンキー
07/06/28 17:48:09 SozPYFIc
>>360
そっかぁ・・・あの子まだ埋まってなかったんだ・・・・・・
でも安心して、すぐにあんな子埋めちゃうからね♪
362:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/06/28 21:30:06 ORF6gsu4
では投下致します
363:雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA
07/06/28 21:33:05 ORF6gsu4
アナザー2『夏休み』
終業式が終わってから学生にとって唯一の楽しみである夏休みがやってくる。
俺こと桧山剛は親友である内山田の助けを借りて、何とか赤点ギリギリの成績で地獄の補習をパスすることに成功した。
これで何のお咎めもなしに夏休みを迎えることができる。思わず、歓喜の声だってあげてしまいそうになる。
ただ、学校の帰路に着いている途中なので、そんなことをやってしまえば、周囲の人間から
冷たい視線を浴びられるので遠慮させてもらうが。
ただ、胸の内に僅かな不安と杞憂があるの事実であって、あの猫耳装備搭載した雪桜さんの悲しみに満ちた顔が脳裏に浮かんだ。
殺人犯赤坂尚志の娘である彼女……俺の立場から見ると最愛の家族を奪った憎き男の娘だ。
罪もない子供たちが彼の手によって殺されている。悲惨な殺人現場を思い出すだけで吐き気と震えが止まらない。
あの事件を境に俺の家族は離散することはなかったが、家族同士の交流はなくなった。両親は仕事に没頭して家に帰ってこなくなり、
独りぼっちになった俺は美味しくない食事を食べる日々。
彩花がいなくなったことがきっかけで俺は変わってしまった。
笑うことが少なくなったり、周囲から離れるように孤独になっていた。
そんな変わってしまった俺から逃げた友人は数えきれない程にたくさんいる。
だが、ちゃんと離れずに俺の傍に居てくれた友人がいたおかげで俺はグレて不良行為をする馬鹿な真似だけはしなかったかもしれない。
彩花が亡くなってから、数年。
その過去の全てを忘却して無かったことにすることができない。
だから、雪桜さんが殺人犯の娘だと判明した途端に俺は彼女に
自分の憎悪を向けるのを恐れて、彼女に別れを告げたはずだった。
『好きです。桧山さんのことを心から愛しています』
猫耳搭載装備で言われてもこっちは困る。てか、学年の生徒たちの前で告白はやめてもらいたい。
虎と俺と雪桜さんの三角関係って噂されるだろうに。
急遽結成された雪桜親衛隊、通称NNY(ねこねこ雪桜さん)が俺を危険人物として学園中に指名手配されているので、
どこぞのエロゲーの主人公のように命の危険に晒されている。
とはいえ。もう、夏休みに突入するのでこの案件で俺の胃炎が痛むことはないだろう。
餓えた虎の餌を作る以外はな。
俺の家の前で待ち伏せしているのは虎こと東大寺瑠依が不機嫌そうな顔で俺の帰りを待っていた。
それは標的を見つけた獲物を狩るような野性的な瞳で彼女は吠えた。
「剛君。帰ってくるのが遅いよ!! お腹空いたんだから、さっさと作ってよ!!」
それ以外に俺に言うことないのか虎よ。
364:雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA
07/06/28 21:36:00 ORF6gsu4
素麺ってのは夏の季節に最も売れる商品の一つだ。
食べるときは冷たくて夏バテしている人にとっては食べやすいんだが……
この季節に素麺を作る側にとってはとにかく暑い。暑くて調理場を抜け出したくなるんだよ。
湯気が出る熱湯に素麺の束を入れて、茹で上がる前に生姜やねぎを切り、つゆを用意しておく。
その間に熱気が狭い台所に充満して、体中から発汗して気持ち悪くなる。
作業を中断してお風呂に入りたい欲求に襲われるが餓えた虎母娘を野放しすれば、近所の皆様に迷惑がかかるのでそれはできない。
ゆえに俺は夏休みという平穏な日々などはなくて、常に緊張と生死の境界線を跨ぐ者の日々が待っているのだ。
「剛君。お母さんが竹を割って、ちゃんと流れ素麺を作る準備できたって」
「なあ。瑠依。夏だから素麺ってのは理解できるんだけど、流れ素麺ってオイオイ」
「そんなこと知らないわよ。お母さんの趣味なんだからちゃんと付き合わないと」
普段は台所に出入りしてこない虎が虎の母親である由希子さんの伝言を伝えに侵入してきた。
ちなみに由希子さんってのは若造りで未亡人。一人娘を養うために仕事をして生活を支えるために常日頃から頑張っている。
と、俺は擁護してみる。真実は娘を放任するのは日本の伝統だと主張したり、
学校の給食費を払わずに踏み倒すなどと言う伝説を達成している。
すなわち、あの虎の母親が常人であるはずがないということを改めて俺は認識した。
「もうすぐ、茹で上がるから庭で待ってろと伝えてくれ」
「夏はやっぱり~赤い素麺だよ~」
ざるに移し代えた素麺の色は正に鮮血の光沢を出していた。
製造元は絶対に人の血を混入していても俺は驚かないけどね。
ざるの中に氷をたくさん入れて、赤い素麺を庭に持ってゆくと驚愕する光景がそこに在った。
竹で組み立てられた器材が見事に完成していた。ホースで流れやすくするように水を思う存分に使っていた。
(ちなみにうちの水道代は返せよ虎母娘)
「夏のお約束。赤い素麺を流して流しましょう!!」
「由希子さん……どうして真っ昼間からいるのかという疑問を聞かないでおくが」
「少年は大志を抱け!! そして、少女は男を犯せ!!
ってなわけで剛君は女の子の行動にいちいち素朴な疑問ばっかり聞いていると鋸で首を切られるわよ」
「ご忠告ありがとうございます。てか、二度と由希子さんの仕事状況に口ださねぇ」
毎日遊んでいる由希子さんがどうやって生計を立てているのかというシリ-ズの最大の謎の一つに追求したかったが……。
これ以上踏み込めば余裕で死ねる。
「じゃあ、瑠依ちゃんと剛君は食べる方ね。私は赤い素麺を流す方が大好きだから。どんどん流す。流して流して流しまくるわ」
「うん。ありがとう。お母さん。瑠依大感激だよ」
虎は戦闘態勢に入ると持っている箸とお皿が素早く動いた。餓えた虎は獲物を仕留めるために常に全力を尽くす。
半分やる気がなかった俺のとこに赤い素麺が来る前に箸で素麺をお皿の方に入れてから、喰う!!
喰う速さは赤い素麺を噛むことなく飲み込んだ。
「さすがは私の娘。素晴らしい食べ方ね。じゃあ、どんどん流すわよ」
「どんどん、来い!!」
虎が吠えた。自分の獲物を奪う相手を威嚇するように。更に流れて来る赤い素麺を執念だけで瑠依は食べてゆく。
ちなみに俺のところには赤い素麺が流し終わってしまうまで。来ることはなかった。
結論。俺、昼食抜きです。
ぐすん。
365:雪桜の舞う時に ◆J7GMgIOEyA
07/06/28 21:38:15 ORF6gsu4
暑い日差しから避けるために家の中で冷房を入れて、由希子さんが差し入れに持ってきたスイカを二人で喰い散らかしていた。
由希子さんは赤い素麺を流しまくったことに満足して、仕事に行ってくると出掛けた。
今、家にいるのは俺と虎だけである。
「剛君。明日から夏休みだよね。今度はどこに遊びに行こうか?」
「さあな。どうせ、毎日のように俺の家に遊びに来るんだろ」
「当たり前じゃない。剛君とは毎日会わないと気が狂うわ」
「そうですか……」
毎年の夏休みは虎が我が家の主人のように入り浸っている。
由希子さんから世話をよろしくと頼まれているので安易に断ることが出来ない。
なので今年も一人暮らしの自由を満喫できずに虎と共に長い夏休みを過ごす。もう、毎年恒例の行事の一つだと言えるであろう。
「それにしても、今日の瑠依はいつもと比べて何だか楽しそうだな」
「えっ? わかる 」
「なんかいいことがあったのか?」
「だって、剛君があの泥棒猫の告白を受けずに夏休みを迎えたからかな?」
「泥棒猫って雪桜さん?」
「私がせっかく彼女役を引き受けて泥棒猫を剛君から諦めさせようとしたのに。
あの女。猫だか犬だかわからないけど、変なコスプレ姿で剛君の気を引こうなんて許さないわ」
告白された出来事を思い出しているのか勝手に憤慨している虎に俺は嘆息を吐いた。
「雪桜さんの告白の返事をしたくても、本人があの日からずっと学園を休んでいるからな。会いたくても会えん」
「会・わ・な・く・て・い・い・の・!!
泥棒猫は彩花ちゃんを殺した男の娘なのよ。
私だって妹のように可愛がっていたんだから。尚更泥棒猫が憎くてたまらないわよ」
果てしない憎悪の表情を浮かべる瑠依に俺はただ首を頷かせて彼女の言葉に同意した。
少なくても、雪桜さんにもう二度と仲良くしないという箇所だけだが。
別に憎悪を向けられるまでの感情までは沸いてこない。これは被害者家族の感情としては異常なのだろうか?
「剛君には私がいるんだから。他の女に優しくしちゃダメだよ」
「瑠依に優しく接したことはないんだけどな」
「なんですとっ!?」
某徳川の生類憐れみの令が桧山家に発動している以上は虎の扱いを人間レベルとしている。
本来ならタダ飯喰らいの虎に一人でサバイバル生活が出来るように徹底的に仕込んでいますよ。マジでw
「さてと夕食の買物に出掛けてくるけど……瑠依はどうする?」
「お腹一杯になっちゃったからちょっとだけ寝る」
「食べてばっかりですぐに寝ると太るぞ」
「大丈夫だもん……。ということで剛君のベットでお昼寝してくる~」
虎の尻尾が嬉しそうに左右に振って部屋から出て行く姿を見送ると俺はやれやれと嘆息を吐いた。
台所の後片付けを終わらせてから、夏の一番暑い時間帯に俺は暗澹たる気分で外へと出掛けた。
366:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/06/28 21:42:17 ORF6gsu4
投下終了です。
久々の雪桜の舞う時にを書き込みを致しました。
この作品の時系列は第15話で桧山剛が雪桜さんのお見舞いに行かなかった場合の
アナザーストーリーとなっています。監禁生活がなかった場合の二人の恋愛物語を楽しみに待ってください
桜荘にようこそは今週中にうpする予定です・・。
それでは。
367:名無しさん@ピンキー
07/06/28 21:53:44 HtKzFWXB
>>366
GJ!!
本編以外は前スレとか避難所に投下してくれるとうれしいのですが・・・
368:名無しさん@ピンキー
07/06/28 22:04:16 TQN+d+gc
待ってました。これからも頑張って下さい。去年の9月はスレ(2ちゃんねる)の存在を知らなかったから毎月まとめが更新するまでwktkしながら雪桜さんを待ってました。
369:名無しさん@ピンキー
07/06/28 23:51:51 4lowkAer
>>366
(*^ー゚)b グッジョブ!!
桜荘のほうも期待してます
370:名無しさん@ピンキー
07/06/29 17:48:28 ceTbT/QT
そういやアップルって長い間使ってると嫉妬するらしいよ
他のに変えようと思った瞬間フリーズとかするらしい
371:名無しさん@ピンキー
07/06/29 18:13:32 DIxIUTpW
>>370
九十九まだかなぁ…
372:名無しさん@ピンキー
07/06/29 21:08:17 ivgF4yAz
>>366
とりあえず、雪桜さんは俺が頂いた!!!!
373:名無しさん@ピンキー
07/06/29 22:02:22 QJqyOA5r
その「俺の嫁宣言」ネタは荒れのもとになるから控えた方がいいよ
374:名無しさん@ピンキー
07/06/29 22:53:44 uMQgWEw3
嫉妬ネットワークとか結成している作者達が痛いと思ったのは俺だけか?
375:名無しさん@ピンキー
07/06/29 23:03:54 bgv938J5
それは、ここの話題じゃないな。
376:名無しさん@ピンキー
07/06/29 23:36:39 ig455N3n
>>374電撃ネットワークと混同して、
観客を斬ったり刺したりする美女軍団かと妄想してしまった。
377:リクエスト王者
07/06/29 23:47:47 iDuecBGy
リクエスト。
オープンな性格で新たな価値観を見出させようとする西洋美女。
純日本的でおしとやかであるが他の価値観を認めない大和撫子。
女性本来の身体の魅力で主人公を溺れさせようとする黒人美女。
世界規模の修羅場だと思うのですがどうでしょうか?主人公は日本人ですね。
378:名無しさん@ピンキー
07/06/29 23:52:48 K4ONv+YO
>>376
ぶっちゃけ、ヒロイン同士で殺しあっているからな・・別に嘘ではないかもね
379:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:09:03 XBDs4GzX
なぁ、未婚で童貞の学生なのに十も離れていない娘がいるのってそんなにおかしなことなのか?
380:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:10:24 bMhwUAao
>>377
その内容にするなら俺だったら…
肩までの綺麗な金髪と、大きくて澄んだ青い瞳を併せ持つ
活発で明るい美少女。
腰まで伸びた黒髪に、細くしなやかな手足と長身と
純和風な大和撫子のイメージを兼ね備えたおしとやかお嬢様。
だが何かと主人公にきつく当たる。
……スポーツ美少女…?日焼け…?
世界を股にかけた嫉妬自体きついと思う。何故かって?
萌と嫉妬は日本特有の文化だからさ。
381:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:26:11 7iVbarJr
壊れやすいのはツンデレ少女だな・・
常日頃からツンツンして主人公の好感度が悪くなるとは知らずにいつまでもツンツンしていると
泥棒猫が現れて、あっさりと主人公と恋仲に・・。
その事実を知ってから壊れるツンデレ少女は・・・・ヤンデレの道に突き走るとw
382:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:48:35 U0Ajn9iR
>>379
とても・・・ど真ん中です・・・
383:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:49:30 eQhRXoDp
/
/
/ な く .い き
l
l あ れ っ が
| 。
l る て る
|
\ ____ に
,.>‐'::::::::::, - ,;::::::,ニ、'‐-::、 ./
,.;'"::::::::::::::::/‐- 、l/ ';:::::::::\ /
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::::::::::::::::::::/ ヽ -‐' `:,:::::::::::l
384:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:50:58 wzIVlKva
嫉妬は他の国のほうがすごいとおもうが。
385:名無しさん@ピンキー
07/06/30 01:06:24 43qFrhu1
>>384
外国のと日本の嫉妬では基本的にベクトルが違う様な気がする
上手く言えないが、日本のは内に秘めるというか怨念めいてるというか…
386:名無しさん@ピンキー
07/06/30 01:14:11 eQhRXoDp
失われた大和撫子の嫉妬なら外国に対抗できるはず
387:名無しさん@ピンキー
07/06/30 02:04:12 HQyGsCIo
リクエスト
ツンデレの女医がヒロインで主人公が来ると嫌々仕事やってるんだけど、内心喜んでて、主人公に触った器具を持ち帰って集めてるみたいな話とかどう?このスレ的には
日本語が変でごめんねm(__)m
…これってスレ違い?スレ違いだったらごめん。
388:名無しさん@ピンキー
07/06/30 02:52:52 eQhRXoDp
>>387
その構図だと泥棒猫は看護婦だな
389:名無しさん@ピンキー
07/06/30 02:52:59 s+p7N7Ed
節子・・・それ、嫉妬関係ない、スレ違いや
390:名無しさん@ピンキー
07/06/30 08:40:03 CmI/7YcF
ちゅうか、リクエストは止めろ
最初っから他力本願かよ
プロットならともかく
391:名無しさん@ピンキー
07/06/30 08:55:57 d52wy5dN
錬金術師とホムンクルスでの嫉妬というのはどうだろう
錬金術師(女)は研究の結果としてホムンクルスを作る
当然女性型でエロス可能で活動源は性的なもの
で
ラブラブだった彼氏がホムンクルスとエロスするようになって錬金術師暴走開始
それを受けてホムンクルスも暴走開始
そして起きる修羅場
錬金術師は「相手は物だから壊してもいいや」で
ホムンクルスは「壊れれば修理すればいい。死ぬ?なんですかそれ」という考えだから
二人とも容赦のかけらも無し
錬「私が作ったモノのくせに私の彼を取るんじゃないわよ」
ホ「作っていただいたのは感謝します。おかげで彼と出会えましたから。しかしもうあなたは用済みです」
錬「塵は塵に、灰は灰に、土くれは土くれに返れ!」
ホ「障害物は廃棄します!」
べつに科学者とクローンでも魔法使いと精霊でも可
392:名無しさん@ピンキー
07/06/30 10:13:53 ZipwsxRQ
嫉妬や修羅場という小さな宇宙に懸ける俺らの情熱は無限大
393:名無しさん@ピンキー
07/06/30 10:15:39 ZipwsxRQ
バカなこと言ってあげてスマン
394:名無しさん@ピンキー
07/06/30 10:18:47 RGfDjGSN
いやいいこと言った
395:名無しさん@ピンキー
07/06/30 11:29:56 eGpLl2YC
俺がエロビデオを鑑賞中におかんが部屋に踏み込んできたってのは
この修羅場の趣旨に合うのかな・・・? いろんな意味で修羅場
396:緑猫 ◆gPbPvQ478E
07/06/30 13:51:01 VYhfrx3z
短編投下します
397:ひとり多い ◆gPbPvQ478E
07/06/30 13:52:54 VYhfrx3z
「おはよう!」
今日の天気を表すような底抜けに明るい声に続いて、背中をばしんと叩かれる。
驚いて振り返ると、そこには見覚えのある顔がひとつ。
「朝から暗い空気背負っちゃって。
相変わらず司郎は元気ないなあ!
わたしの、すこし分けてあげよっか?」
すらりと伸びた手足。
激しく自己主張する胸と腰。
こちらを見上げる切れ長の瞳は蒼く輝き、
流れるセミロングは太陽にも負けない黄金色。
正常な青少年ならまず間違いなく“ヤリたい”と思ってしまう外見。
かくいう僕も、幾度となく自慰のオカズにしていたりする。……まあそれはそれとして。
そんな美少女が、僕に対して気さくな態度で。
朝の挨拶を、投げかけてきた。
それに対して、僕は。
「…………ぉ……ょぅ」
唇をモゴモゴ動かして、そのまま少女から離れようとした。
「司郎は今日、3限からだっけ。
まだ少し時間あるよね? ちょっとお茶しない?
この前借りたレポートなくしちゃったお詫びに、わたしが奢るからさ!」
別にいいよ、と言おうとしたが、
慌てて口を塞ぎ、僕は努めて彼女を無視する。
今は駄目だ。
彼女に大きな話しかけてはいけない。
ここは大学の講義棟のすぐ近く。
昼休み前とはいえ、まわりにたくさん人がいる。
「ほらほら、行こうよ!」
ぐい、と腕を抱え込まれる。
二の腕に柔らかい感触。
しっとりマシュマロのようなそれに、思わず抵抗する力が失せてしまう。
そのままずるずると引きずられていく。
行き先はおそらく、大学近くの喫茶店。
彼女はいつも、僕をそこに連れ込んでいく。今日も、きっとそうなのだろう。
―あそこなら、人も少ないから。
398:ひとり多い ◆gPbPvQ478E
07/06/30 13:53:38 VYhfrx3z
城井珠希(しろい たまき)
両親は国際結婚の日米ハーフ。
一見遊んでいそうに見えるが、妙に貞操観念が強く、悪い噂はとんと聞かない。
ひょっとしたら処女かもしれない。
僕が、彼女について知っているのはその程度。
知り合ったのは、大学に入ってから。
彼女の方から話しかけてきて、そのまま何故か僕に積極的に構うようになった。
僕は、自他共に認める“つまらない”人間である。
趣味無し、金無し、体力無し、友達無し、会話無し。
人と話しても7秒以上保つことなど滅多にない。
そんな僕に、何故か彼女は積極的にアタックしてくる。
信じられなかった。
だから。
僕は彼女を無視している。
それでも彼女は挫けることなく。
毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日馬鹿のひとつ覚えのように話しかけてくる。
これはもう、人付き合いのほとんどない僕にだって、おぼろげながら理解できる。
―城井珠希は、僕のことを好いている。
これが現実だったら、どんなに幸せなことだろうか。
喫茶店で珠希にひたすら中身のない話を押しつけられた後。
紅茶とケーキで栄養補給したはずなのに、何故かふらつく足取りで。
僕は講義のある教室へと向かっていた。
講義棟の一番奥。
教室の前から6列目。
僕以外誰もいない列に座る。
熱心な人はもっと前に座るし、やる気のない人はもっと後ろに座る。
周りに人が座ってない、ぽっかり浮いた教室の孤島。
ある人が“根暗ゾーン”と呼んでいたそうだ。あながち間違いでないのかもしれない。
399:ひとり多い ◆gPbPvQ478E
07/06/30 13:54:24 VYhfrx3z
そんな根暗ゾーンに、一人の乱入者が押し入ってきた。
すとん、と僕の隣の席に腰を下ろしたのは、こちらも見覚えのある少女だった。
「こんにちは」
挨拶に添えられたのは、穏やかな笑顔。
流れる翠の黒髪は、触れたら濡れて溶けてしまいそうな美しさ。
今日は気温もそれなりに高いのに、長袖ロングスカートで汗ひとつかいていない。
背筋は真っ直ぐ伸びており、とても“きれい”な女の子だ。
そんな子が、隣に座り、挨拶してきたので。
「…………」
僕は無言でノートに視線を落とした。
無視。
隣の少女は、少しだけ悲しそうな溜息を吐いた後、気を取り直して授業の準備を始めた。
「……あっ」
ふと、隣から息を呑む気配が伝わった。
何とはなしに目を向けると、バインダーを開いて固まる少女。
顔を上げた少女の視線は彷徨い―僕のと重なった。
「……資料を忘れてしまいました」
助けを乞うような目で、呟いてきた。
手元に視線を落とす。
そこには、色々なプリントの挟まった僕のノート。
その中に、きっと彼女が欲しているものも含まれるだろう。
「…………っ……」
数瞬、逡巡する。
やがて、ゆっくりとノートを開き、資料を探し出す。
はたして、目当てのものはすぐに見つかった。
僕はそれを、無言で机の上に広げる。
位置は、僕のノートの真横。右手寄りの方向だ。
隣の机にはみ出してしまっているが、誰かが文句を言わない限りは大丈夫だろう。
これくらいなら。
きっと、大丈夫。
右隣の少女は、嬉しそうに微笑んだ。
僕はその笑顔を直視せず、視線は手元に落としたまま。
400:ひとり多い ◆gPbPvQ478E
07/06/30 13:55:08 VYhfrx3z
竹月天花(たけつき あまか)
純国産のお嬢様。
とても真面目で誠実な、いまどき珍しい人格の持ち主である。
まず間違いなく処女だろう。
僕が彼女について知っているのはその程度。
知り合ったきっかけは忘れてしまったが、彼女とはよく講義で一緒になる。
そして何故か、根暗ゾーンをかいくぐり、僕の隣に座ってくる。
時折チラチラと向けてくる視線や、語りかけてくるときの甘い声色。
信じられなかった。
だから。
僕は彼女に対して素っ気なく振る舞う。
それでも彼女は挫けることなく。
毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日馬鹿のひとつ覚えのように隣に座ってくる。
これはもう、人付き合いのほとんどない僕にだって、おぼろげながら理解できる。
―竹月天花は、僕のことを好いている。
これが現実だったら、どんなに幸せなことだろうか。
今日の講義も全て終わり、帰りの電車に三十分ほど揺られた後。
自宅の最寄り駅に到着した頃には、既に日は落ちかけていた。
駅前は、帰宅途中の学生軍団や買い物部隊の主婦たちでごった返していた。
隙間を探すのが難しい、ヒトの群れ。
それをぼんやりと眺めていると。どこか落ち着いた気分になる。
―僕は、人混みが好きだ。
たくさんの中に紛れられるから。
ひとつくらい混じっても、大差ないから。
川を上る鮭のようなヒトを見るのは、唯一の心の清涼剤。
この瞬間、僕は日々の疲れから解放され、救われた気分になる。
ああ、ヒトがいっぱいいるなあ、と
401:ひとり多い ◆gPbPvQ478E
07/06/30 13:55:53 VYhfrx3z
そんな風に。
心休まる時間を堪能していた僕の視界に。
一人の少女が、映った。
まずい、と思って身を隠そうとしたが。
その前に向こうに発見されたようで、ずんずんとこちらに近付いてくる。
「やあ! 今帰り? 奇遇だね!」
腕や顔は黒く日焼けしているが、胸元は妙に白い、典型的な“部活焼け”。
小柄ながらも活力に溢れた肢体には、そそる男も多いだろう。
髪はベリーショートに軽く色を付けている。
ホットパンツから伸びる生足には、思わず生唾を飲み込んでしまいそうになる。
そんな、いかにも青春を謳歌していそうな少女が、僕に擦り寄り、話しかけてきたので。
「……………………」
僕はそっぽを向き、離れようとした。
「―もう! なんで逃げるかな!」
ぐい、と腕を掴まれた。
二の腕に押しつけられた柔らかさは、昼前に味わったそれより数段弱いが、それでもドキリとさせられる。
「違う大学になっちゃってあんまし会えないんだから、もっと構ってよー。
アタシ、寂しくて死んじゃいそうー」
「…………」
「構ってくれないのなら、こっちからくっついちゃうもんー」
「…………」
「もう、こんなに可愛い彼女が甘えてるのに、その態度はいかんわよー」
彼女じゃないだろ、と言いたくなってしまうが、必死に抑えて無言を保つ。
会話をする必要はない。
放っておけばそのうち黙る。
黙らなければ逃げればいい。
話さなければ、それでいいのだ。
彼女の方を向き、声を出し、体を動かす。
そういったことさえしなければ、きっと大丈夫に違いない。
自分にそう言い聞かせて、僕はとにかく無言を貫いた。
402:ひとり多い ◆gPbPvQ478E
07/06/30 13:56:42 VYhfrx3z
雪野きつね(ゆきの きつね)
同じ高校に通っていた幼馴染み。
趣味はソフトボールで、大学に入ってもソフト部に入部する、典型的な体育会系。
体格は小柄ながらも、引き締まった足首は、妙なエロさを感じさせる。
僕が彼女について知っているのはその程度。
近所同士だが、高校卒業直前まで、互いが近くに住んでいたことを気付けなかった。
知り合ってからは、なにかと僕に話しかけてくるようになった。
遊びや食事の誘いなどしょっちゅうで、街で会うたびにくっついてくる。
充実した人生を送っているのに、何故か僕なんかのことを構いたがるのだ。
信じられなかった。
だから。
僕は、彼女をいない者として扱った。
それでも彼女は挫けることなく。
毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日馬鹿のひとつ覚えのように擦り寄ってくる。
これはもう、人付き合いのほとんどない僕にだって、おぼろげながら理解できる。
―雪野きつねは、僕のことを好いている。
これが現実だったら、どんなに幸せなことだろうか。
城井珠希。
竹月天花。
雪野きつね。
僕のことを好いているであろう三人。
こんな幸運、一生どころか何度転生したとしても、今だけだ。
おそらく今の僕には、泥酔した恋愛の神が間違えて宿っているとしか思えない。
このチャンスを活かせば、きっと僕は、誰もが羨むようなハイレベルの彼女を手に入れることができる。
でも。
―誰が“当たり”なのか、わからない。
403:ひとり多い ◆gPbPvQ478E
07/06/30 13:57:33 VYhfrx3z
僕は、少しおかしいのだ。
人付き合いが苦手だとか、そういった意味ではない。
そもそも僕が人に話しかけられなくなったのには、原因がある。
そしてそれは今もなお、僕を縛り付けて動けなくさせる。
僕の周りは、常に“一人”多いのだ。
家族は、いつの間にか兄や妹が一人増えている。
クラスメートは、常に名簿の数より一人多い。
親戚の集まりに参加すると、いつの間にか親の兄弟が増えてしまう。
僕は常に、人を一人多く数えてしまい、
それが現実に存在するかの如く、認識してしまうのだ。
いないはずの人間に話しかけ、周囲の人には気味悪がられる。
カウンセリングや精神科にも通ったが、治る見通しは全く持てず、今は落ち着く薬を貰うだけだ。
その瞬間に話している相手が、実は存在しない人間かもしれない。
それは、僕にとって酷いストレスとなり。
いつしか僕は、ヒトを避けるようになっていた。
この、“一人多くなる”という誤認知は、どうやらルールが存在するらしい。
まず、あるカテゴリーに分けられる集団から、架空の人間を作り出す。
次いで、一人多くなったら、その集団からはそれ以上増えない。
そして、増えた瞬間から、僕の中でその存在は現実となり、如何なる方法でも区別できない。
特に、最後のルールが厄介だった。
例えば携帯の着信履歴や物のやりとりなど、形に残る証拠があれば、比較的容易に認知の狂いを発見できるはずだ。
カウンセラーも、周囲の物を注意深く見てみるといい、などと言っていた。
しかし、僕にとっては、“絶対に存在しているはず”なのだ。
そういった物的証拠を見ても、“それが無いなんて信じられない”のだ。
だから、僕の周りには常に一人。
“存在しないはずのヒト”が存在するのだ。
404:ひとり多い ◆gPbPvQ478E
07/06/30 13:59:22 VYhfrx3z
そして。
“僕を好いている女性”というカテゴリーで。
きっと、一人増えている。
全員が偽物だったら、ある意味気は楽かもしれないが、
存在しない人間だけでカテゴリーが作られることはないようなので、
少なくとも一人は、僕のことを好いている女性が存在するということになる。
……なんて勿体ないんだろう。
三人が三人、どれをとってもレベルの高い美少女ばかり。
悔しすぎて涙がこぼれそうになってしまう。
彼女たちとの記憶は少なからず存在するが、そのうちひとつは僕の頭の中で勝手に作られたものなのだ。
たとえ彼女ができたとしても、それが架空の人物だったら、誰もいない空間に向かって話しかけることになる。
最悪、一人でホテルに入って、ベッドの上で独り腰を振る羽目になる。
それが怖いから。
僕は、城井珠希、竹月天花、雪野きつねの三人には、決して近付こうとせず、不当な期待は抱かないことにした。
ひとり多い限り、きっと僕は、大きな声で話しかけることはできない。
せいぜい、人気のない場所で、小さな声でぼそぼそ会話するのが限界だ。
こんなつまらない男、普通ならすぐに飽きて離れてしまう。
しかし、彼女たちは、こんな僕に呆れもせずに、ずっとこちらを気に掛けてくれる。
彼女たちは、一体どれだけ、僕のことが好きなのか。
でも。
ひとり多いから。
僕は、このまま、彼女たちを避け続けるだろう。
彼女たちが、どんなに僕のことを好こうとも。
405:緑猫 ◆gPbPvQ478E
07/06/30 14:00:13 VYhfrx3z
ついカッとなって>>380氏の設定を元にを書いてしまいました。
今は反省してます。ちなみに続きません。すみませんorz
というか書いてみたら全然別物というか、結構黒いですねコレ……。
七戦姫と九十九は、二週間くらい後になりそうですorz
もうしばらく待っていただけると幸いです
406:名無しさん@ピンキー
07/06/30 14:03:39 RGfDjGSN
お疲れ様です。
緑猫氏の作品何時も心待ちにしています。
無理をなさらないように頑張って下さい。
407:名無しさん@ピンキー
07/06/30 14:04:18 O4iKu+jn
構想はいいと思うんだけどサ・・・嫉妬・三角関係・修羅場、ないよね・・・?
408:名無しさん@ピンキー
07/06/30 14:47:41 uQFAnDcH
短編なんだし仕方ないだろ
409:名無しさん@ピンキー
07/06/30 16:07:37 wYR9qq2i
想像の余地を自分の脳内であれこれ楽しむのもアリでしょう。
言いたい事もわかるけどさ。
410:名無しさん@ピンキー
07/06/30 16:17:25 CmI/7YcF
これだけではハーレムスレ向けだと思うます。
早急に続きを書いて嫉妬修羅場にすべくです。
411:名無しさん@ピンキー
07/06/30 16:24:24 GNZKmQeE
どれが当たりか分からないなら
全員と付き合ってみればいいじゃない
と主人公が開き直れば修羅場への道が
412:名無しさん@ピンキー
07/06/30 16:41:56 lpU2uf6v
誰か一人とつきあう
残ったどちらかが病み、つきあってる女をいないものとして扱う
つきあっている女が「当たり」と勘違い
その後色々修羅場があって、一番安心できる三人目を選ぶがそれが「当たり」
これならスレ違いじゃない?
413:名無しさん@ピンキー
07/06/30 17:12:08 U0Ajn9iR
定期的にageる人がいるけど何で?
414:名無しさん@ピンキー
07/06/30 18:07:01 0kOY1Z9R
嫉妬:七つの大罪の一つ。象徴する悪魔(怪物)はリヴァイアサン。
415:名無しさん@ピンキー
07/06/30 18:55:32 XBDs4GzX
>>414
デジモンの設定だと思っていたら、本当の設定だったのか。
昔、七つの大罪をネタに修羅場嫉妬三角関係を書こうとしてなかったっけ?
416:名無しさん@ピンキー
07/06/30 19:01:11 W41XJjLK
そいやハガレンって七つの大罪だよな
417:名無しさん@ピンキー
07/06/30 19:29:07 +Q9juEUX
リヴァイアサンといえばあのキモウトを思い出すな
いやっ…絶対に話さないっ…
永遠にっ…!
418:名無しさん@ピンキー
07/06/30 20:01:45 0kOY1Z9R
>>415
サブカルからだとデジモンとリボーンのどっちを思い浮かべるかでどのような人物か見えてくる。
419:名無しさん@ピンキー
07/06/30 20:04:06 0kOY1Z9R
ちなみに七つの大罪の嫉妬を象徴する動物は蛇。
さらにリヴァイアサンは番になって増えないように雄が殺されたため雌しかいない。
420:名無しさん@ピンキー
07/06/30 20:51:49 MS+ERINT
阿修羅さん更新お疲れ様です(*_ _)人
421:名無しさん@ピンキー
07/06/30 21:06:26 qXl0K/LI
リヴァイアサンっていうとホラー映画のヘルレイザー思い出す。
リヴァイアサンのチンコが頭に突き刺さってるキャラがいたな。
422:名無しさん@ピンキー
07/06/30 21:28:38 XsFf+gXM
リヴァイアサンとなんとなく音が似てる無限のリヴァイアスを思い出したぜ。
あれこそ嫉妬、鬱の世界
423:名無しさん@ピンキー
07/07/01 02:12:50 upouD9OM
リヴァイアサンと聞いてファイナルファンタジーIVを思い出した俺は三十路
424:名無しさん@ピンキー
07/07/01 02:52:39 3WbqzRqC
>>423
案ずるな、ゆとりの僕も同じ物を連想したよ
425:名無しさん@ピンキー
07/07/01 03:38:19 7YRtopF/
リヴァイアサンと聞いて鈍速超誘導核ミサイルを思い出した俺。
マイノリティー!!
426:名無しさん@ピンキー
07/07/01 04:08:25 qCz0DpRT
俺は遊戯王のなんか漁師っぽいやつをおもいだした。
427:名無しさん@ピンキー
07/07/01 04:21:57 WGvjJRbj
俺はMTGを思い出した。10/10のやつ。
>>405
乙です。これ嗜好を変えれば結構こわいサイコホラーものになる予感。
428:名無しさん@ピンキー
07/07/01 08:41:28 k5kjMsbt
リヴァイアサン→大海衝
429:名無しさん@ピンキー
07/07/01 09:46:51 1/GjM7p6
海蛇の人気に嫉妬
430:名無しさん@ピンキー
07/07/01 14:47:18 iBgej3OJ
単に嫉妬深いのではない。嫉妬そのものの権化と言える者だからな。
431:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/07/01 19:53:59 s7ayO3Z8
投下します。
432:アンビエイトダンス2-2 ◆oEsZ2QR/bg
07/07/01 19:56:31 s7ayO3Z8
「さぁ、私たちの出会いに乾杯だ」
「「「乾杯」」」
私とラッテが腕によりをかけて作った豪勢な料理が並んだテーブル。そのテーブルに腰掛けて紅行院家のお姫様と王子様、そしてその王子の婚約者の猫娘がグラスをかち合わせました。
音戸をとるしずるお嬢様に合わせて、直さまはオレンジジュースの注がれたグラスを遠慮がちに上げています。しずる様がさながら大学生の宴会のように(言葉は上品でしたが)高々と上げている姿とは対照的です。
川澄葛葉はどちらかといえば直さまのようなおとなしくグラスを掲げる方でした。
かちんとグラスと氷の音を鳴らし、しずるお嬢様がオレンジジュースを一気に飲み干します。本当に大学生の宴会のようです。
空になったグラスをしずるお嬢様がテーブルに置くと、すぐ横に控えていたラッテが黙ってミニッツメイドの紙パックを持って注ぎいれます。
「おう、ごくろうだな」
無言で頭を下げて、一歩下がるラッテ。
いつもは直さまと私、そしてラッテの三人で一緒にテーブルに座り食事を取るのですが、今回ばかりはさすがに私たちは本物のメイドよろしく、身分をわきまえて食事する直さまたちの後ろに控えて給仕のお手伝いをしています。
私は直さまのためだけに遣える者ですので、当然直さまのすぐ後ろに控えます。ラッテはテーブルを挟んだ対向側に座るしずるお嬢様とその脇に座る川澄葛葉を任せています。
普通なら全体的な身分が上のはずのしずるお嬢様をメイド長である私が担当するべきなのですが、この家の主人は直さまですので。
お嬢様も私の直さま好きはよくわかっているのか素直にラッテの給仕を受け入れています。というよりしずるお嬢様は元よりそんなこと気にするお人ではありません。
ラッテも一応は空気が読める女ですので、黙って仕事をしています。
私は直さまの後姿とそこから見える可愛らしい食事風景に心を奪われつつも、心の奥底の瞳からは対面に座る川澄葛葉の挙動をじっと観察していました。
「ほぉ、改めておいしそうな料理だな。わたしはここに遊びに来る時は、直の次にこの料理が楽しみなのだよ。葛葉」
しずるお嬢様が葛葉にまるで自分の作ったもののように自慢します。
「はい、とてもいい匂いでおいしそうです」
直さまと川澄葛葉の二人がどんな邂逅をしたかは、私は見ていません。川澄葛葉はテーブルに並ぶ料理を眺めながら、ちらりちらりと直さまのお顔を伺うように覗いていました。
二人の邂逅は見ていませんが、短い時間です。まだ自己紹介をしあっただけのようです。その様子から、やはりお互いまだ話題も見つからずに、観察しあっている段階ですね。
ラッテのように自ら切り込んで話していく性格ではないのでしょう。
「直、ちなみにこの中では何が一番好きだ?」
「あ、うん。姉さん。これとか……僕、好きだよ」
「これは素麺ですか? 直くん?」
麻婆春雨を指差す直さまに、川澄葛葉が固い笑顔で訊きます。
「え、いや。春雨……」
「そう」
「ほぅ、君は素麺を食べたことがあるのかい? 葛葉よ」
「はい。一年ほど前に……」
しずるお嬢様が居なければ会話が続かないでしょうね。絶対。私は心の中でほくそ笑みます。
ふと、川澄葛葉と私の目が一瞬だけ合いました。私の視線に気付くと、ぴくりと肩を震わせて料理に視線を戻しました。
……なんで、そんな怯えているのでしょうか。わたしはただ観察しているだけですのに。
「おいしい……」
「うん」
「はははっ、やはりここの食事は絶品の一言に尽きる」
三人が料理に手をつけ始めました。私の料理に舌鼓を打つ直さま、しずるお嬢様、……そして川澄葛葉。
会話はしずるお嬢様が話題を出し、それを直さまや川澄葛葉に意見を出してもらい話を進めていく形で進んでいきます。直さまと川澄葛葉の二人は当人同士だと一言・二言で会話が終わってしまいますが、
その度にしずるお嬢様がフォローを出し、なんとか楽しい場が続いています。
しずるお嬢様のご近所武勇伝話なるものまで飛び出し始めると、直さまと川澄葛葉はそろって声をあげて笑い始めました。
どうやら、互いに緊張がほぐれてきたようです。川澄葛葉も肩の力が抜けてきたようで、じかに直さまに話を振ったり直さまも、それにとして盛り上がっていきます。
しかし、直さまと会話しつつもちらりと後ろに控える私の顔を見ては、彼女は小動物のように怯えるような表情を浮かべ、すぐに何事も無かったかのように話に戻っていました。
そんなに私が気になるのでしょうか。私が実は直さまと結婚するはずだった女だと知っているから、私を定めているのでしょうか?
私は直様の後ろで控えながら考えをめぐらします。
433:アンビエイトダンス2-2 ◆oEsZ2QR/bg
07/07/01 19:57:26 s7ayO3Z8
「ととと、すまん。そろそろ私は出る時間だな」
時刻が午後三時を回ったころ。そう言って、突然しずるお嬢様が立ち上がりました。
「え、出るって?」
直さまが目を丸くして聞きます。川澄葛葉も驚いたように口を開けてしずるお嬢様を見ました。
私もラッテも驚いて、給仕の手を止めます。私たちも初耳なのです。
「デートだ」
「はぁ?」
デートですって?
しずるお嬢様が……?
「と、いうわけでだ。エリィ」
「はい?」
「車を出して私を隣町まで送ってくれないか?」
……しずるお嬢様は、私を見据えてニヤニヤと笑いながら、そう言い放ちました。
★
私としずるお嬢様は無言で車を飛ばしていました。
後部座席に座ったお嬢様はふんふんと機嫌よさそうな表情で、鼻歌を奏でていました。
しずるお嬢様がデート……? 相手は誰でしょうか。想像がつきません。
どこかの財閥のご子息? いや、案外そこらへんに居る、普通の同世代の男子かもしれません。人の思惑の裏側を渡らせるように見せて本質はとても純粋な心をお持ちになったしずるお嬢様のことです。
生まれてからどっぷりと思惑や欲や政略の海に浸かって育まれてきたレベルの高い男には見向きもしないでしょう。それよりももうすこし庶民の位置に近い男の子をしずるお嬢様は好くはずです。
「……お嬢様。お嬢様の恋人とはどのような方でしょうか?」
「気になるのかい?」
「ええ」
「ふふん。直以外のことはまったく興味は無いと言い張っていたエリィはどこへ行ったのだ?」
ええ、直さま以外興味はありません。しかし、疑問はあります。
「しずる様の口から恋人という言葉が出るとは思っていませんでしたから」
「出そうと思えばいくらでも出るぞ? こいびとこいびとこいびとこいびと南君の恋人こいびと」
「……はい」
やはり、まともに教えてくれる気は無いようですね。それにしても南君の恋人とはまた古いドラマを持ってきましたね。虫のように花壇に埋められる恋ですか。これは漫画版でしたかね?
バックミラ-で私はしずる様の様子を伺いつつ、ハンドルを回しできるだけ早くしずる様の指定した目的地まで走らせます。
車の通りの少ない十字路の信号機が赤に変わり。私は車を徐行させて止めます。
「……それにしても、エリィ」
止まってしばらくして、しずるお嬢様が自分から口を開きます。
「なんでしょうか?」
「不機嫌そうだな」
「そんなことありません」
「嘘付け。顔に出てるぞ」
さっとバックミラーにうつる自分の顔を見てみました。別にマジックなどで落書きはされていません。ただの私の顔があるだけです。
「そんなことありません」
私は自信を持って否定しましたが、しずるさんはそんな私の自信を鼻息一つで吹き飛ばします。
「お前は顔に出てるという意味を間違えておらんか?」
「私の顔は何が起きても未来永劫私の顔です。誰の顔にもなりません」
「そんな『前はどこだ』みたいな矛盾した答えはいらん。まったく、変なところで抜けているやつだな。相変わらず」
しずるお嬢様は深くため息をつきました。
「はやく帰って、あの娘と直がいちゃいちゃしないように監視したいのだろう?」
「そんなことありませんっ」
信号が青になります。アクセルを踏みしめて、また車を走らせました。対向車はおらず、私はぐんぐんと車のスピードを上げていきます。
「ふふふふ。いちゃいちゃいちゃいちゃ。今頃二人でなにをやっているのだろうな。きっとお目付け役がいなくなって二人でせいせいしてるのだろうなぁ。焦るだろう? エリィ」
「いえ。別に」
「あせっとるな」
「そんなことありません」
「じゃあ何故一般道路で140キロも出してるのか理由を聞かせ願おうか」
メーターを見ると、右のほうまで振り切っていました。なるほど、いつのまにかアクセルを踏み込んだままにしていましたね。……私はブレーキを緩めて、スピードを落としていきます。
私の免許は残り3点しかないんです。ここで罰点で免停でも喰らった日にゃメイドとしての立場がありません。
……私は車の運転が実は苦手なんですよっ!
「……ほれ、正直に話してみろ。ほれほれ」
しずるお嬢様は私の後部座席から手を伸ばして、私の頬を人差し指で両方からぷにぷにとつついてきます。私は黙ってそれを無視します。
「ふぅむ。強情なヤツだ。そんなに、直の家に婚約者を呼んだのが嫌だったのか?」
当たり前です。
434:アンビエイトダンス2-2 ◆oEsZ2QR/bg
07/07/01 19:58:28 s7ayO3Z8
ずっと直さまに仕え、直さまだけを愛し続けていた私を無視して、直様に婚約者として川澄葛葉をあてがったのは他でもないしずるお嬢様なのですよ?
「………」
バックミラー越しに、しずるお嬢様を睨みつけます。
私の無言の抗議にしずるお嬢様はにやりと笑って肩すくめました。
「お前は、友達と呼べるものはいるのか?」
「いいえ」
即答します。居る必要も作る必要も無いですからね。私にとって直さまはご主人様であり私の全て、ラッテはただの小間使い。
「……そうか。じゃあ、私の意図はわからんだろうな。ふふふふふふふ……」
?
友達に関することで、しずるお嬢様は何か考えがあるのでしょうか。
しかし、友達という言葉。恋人という単語と同じぐらいしずるお嬢様の口から出るのには珍しい言葉です。
ちょうど、しずるさまに指定された場所に停めます。織姫高校の校門の前。グラウンドでは野球のユニフォームを着込んだ男たちが汗苦しい怒号を飛ばしていました。あんな、ところに直さまは入れられませんね。
「着きましたよ。しずるお嬢様」
ここで、降りられるのでしょう? 私はシートベルトを外して、後部座席にドアを開けるためと外に出ようとして……。
「待て。エリィ」
「はい?」
しずるお嬢様にとめられます。
しずるお嬢様は鏡の国のアリスのチャシャ猫ように意地悪く笑っていました。あ、いや。いつも意地悪く笑っていますが……。
「予定変更だ。このまま吉野崎ワニ園に行ってくれ」
「………はい?」
吉野崎ワニ園といえば……隣県ではないですか!!
「お嬢様!?」
「ふふふ、行きたまえ」
「デートは……」
「一回のデートのドタキャンぐらい、私の恋人は許してくれるさ」
ふふふふ……と笑うお嬢様。……吉野崎ワニ園なんて、往復するだけでもう夜になってしまいます。
一体なんのつもりで…。
「どうした? 私の命令だぞ。はやくワニ園へ行くのだ」
「……お嬢様。そんなに直さまから私を離したいのですか……?」
「そんなことはないぞ。わたしはただ頭に被るスポンジ製のワニの被り物が欲しいだけだ。あのカプッチョと頭から食いつかれてるヤツだ。さぁ早く行きたまえ」
問答は無駄ですね……。私は歯を食いしばると、強く強くアクセルを踏みしめて、車を走り出させました。
(続く)
435:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/07/01 19:59:18 s7ayO3Z8
投下終わりです。短めですが。
436:名無しさん@ピンキー
07/07/01 23:39:47 /5DQ60Q9
GJ!
葛葉がこの後どう出るのか気になる・・・
437:名無しさん@ピンキー
07/07/01 23:42:34 YurldvQa
エリィさんが久々に!!
これから一体どう修羅場るのか楽しみで仕方ないぜ…!!
438: ◆Xj/0bp81B.
07/07/02 02:03:02 EkUmjnt7
投下します
439:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/07/02 02:04:33 EkUmjnt7
朝食は喉を通らなかった。
そのため朝の支度は、いつもよりずっと早く終わり、またいつもより早く登校する事にした。制服に着替えると鞄を肩にかけて、
靴をはく。玄関に置かれた傘立てに立てられた傘を無造作に一本取り出す。
玄関の扉を開けると、曇り空が太陽を遮って薄暗い。おまけに雨粒がコンクリートを打ち付けて、霧のようなモヤを、
地面スレスレに作り出していた。そこに朝の爽やかさなど未塵もなく、まるで霧の中に立っているようだった。
翔はポケットから鍵を取り出すと、いつものように、花瓶の下に忍ばせた。今日は家政婦に向けた置き手紙を、
リビングのテーブルの上に置いておいた。手紙には、家政婦に鍵を持ち帰るよう書いてある。これで今日から、
家政婦が鍵を所有する事になり、そして、澄香が勝手に家に侵入する事はなくなるはずだ。
紺色の花を頭上に指して、降り頻る雨の中へと足を踏み入れた。
家の前でT字に別れている道路を、真っ直ぐ左に進めば、駅がある。家と道路を遮る塀、その出口たる小さな門を抜けて、
外の道路に出ると、そのまま左に体を翻した。
その瞬間、翔は固まった。
誰かが家の塀に背を預け体育座りをしていた。膝を抱えた腕に、顔を押し当てて、うずくまるように体を縮めている。
見覚えのある制服。それは澄香だった。
ある意味、一番会いたくはなかった相手との遭遇に、翔は驚愕と共に落胆する。舌うちしたい気分だった。
だから、初めは無視してやろうかとも思った。そもそも、朝から嫌な気分になったのも、いつもより早く登校するのも澄香のせいであり、
これ以上彼女に関わって不快な気分にはなりたくはなかった。しかし、どうもそういう訳にはいきそうもなかった。
考えるより先に、翔は澄香の様子がおかしいことに気付く。
傘を指していない。
ずぶ濡れもいいところだ。
髪は長い間雨に打たれていたためか、その光沢を失い、まるで苔のように澄香の頭にへばりついている。
制服はたっぷりの雨を吸い込んで体に張り付き、下着のラインが透けて見えた。ただてさえ肌寒い秋の雨は、凍えるほど冷たく、
よく見ると彼女は震えていた。
440:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/07/02 02:06:16 EkUmjnt7
この時間、道路を通る人影は決して少なくない。しかし、時折行き交う人や車は奇異の目を彼女に向けるが、
それ以上の事を誰もしようとはしない。まるで捨てられた子猫を見るかのように、憐れみこそにじませている、
しかしそこに暖かみは皆無だ。助けるどころか、皆声をかけようともせず、ただ、淡々と澄香の前を通りすぎていく。
誰も澄香を助けない。薄情な奴らだ、と思う。このままでは澄香が死んでしまうかもしれないのに、と。
しかし、それでも澄香を無視するべきだと、翔の冷静な部分が主張する。もう澄香との関係は終わりにするべきだ。
これ以上彼女と関わりを持つのは止めろ。次はアルバムだけではすまないかもしれないんだぞ、と。
だが、翔が無意識にとった行動は、その冷静な部分とは真逆だった。
慌てて澄香の元に駆け寄ると、翔は傘を自分の体にかけ膝を折る。それから、震える彼女の紙のように細い肩を掴んで、驚いた。
澄香の体は、氷のように冷たい。途端に不安が津波のように押し寄せて、
「おい、澄香っ!! 大丈夫かっ!?」
制服はビショビショで、強く握ると水が絞り出され、翔の腕を伝った。こんなにずぶ濡れになるなんて、一体いつからここにいたんだ、と思う。
「澄香っ!! おいっ、返事をしろっ!!」
雨音に負けないようにずいぶんと声を張り上げた。するとその声が届いたのか、ようやく澄香の頭がピクリと動き、
それからゆっくりと顔が上がる。
真っ青を通り越して土気色の顔色。瞳には生気が宿っておらずどんよりと曇っている。熱にうなされているのか、
はたまた寒さに凍えているのか、澄香の吐息は苦しそうだった。その途絶え途絶えの吐息に乗って、微かに聞き取れるほどの声が聞こえた。
「せん、ぱい……?」
瞬間、翔の体に熱い感情が駆け巡った。
「馬鹿野郎っ!! こんな雨の中、傘もささずに何やってんだよっ!!」
返事はない。彼女の瞳は虚空を見ている。舌打ちしつつ、澄香の額に手を当てる。ひどい熱だ。
441:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/07/02 02:09:22 EkUmjnt7
このままではまずい。そう思って、慌てて澄香の脇の下に手を入れ、彼女を立たせようとする。家に入れるつもりだった。しかし、
澄香の体は糸の切れたマリオネットのようにグッタリとしていて、立ち上がらせても、その体を支える力がないように見えた。
仕方なく、立ち上がらせるのを諦め、持ち上げる事にする。体育座りの格好をしている澄香の膝の下に手をさしこみ、
余った手で腰を支え、いざ立ち上がろうとしたそのとき、澄香の手が頼りなげに翔のシャツの裾を掴んだ。
「なんだ……」
言葉が消える。澄香が、真っ直ぐ翔を見ていた。
「どう、して、返事、して、くれ、なかった、の?」
苦しそうな息使いで、澄香が口を開いた。
返事? と翔は眉を寄せたが、澄香の馬手に握られた携帯を見て、その疑問は氷解する。あの、異常な数のメールと電話の事だ。
「私、ずっと、待って、たのに、返事が、なくて、心配に、なって、それで、それで」
ギュッと、裾を掴む澄香の手に力が籠った。今にも死んでしまいそうな弱々しい吐息からは考えられないほどの、強い力だった。
「約束、した、のに、だから、ね。わたし、は、」
そこで澄香は力つきたようだった。裾を掴む手からフッと力が抜け、そのままダラリと地面に垂れ下がった。
そして先ほどまで力なく瞬いていた瞳がついに閉じられて、彼女はピクリとも動かなくなった。
焦る。死んでしまったのではないか、と思った。幸いにも、すぐに澄香の穏やかとは言えない寝息が聞こえてきて、
翔は一応胸を撫で下ろした。
が、いつまでもこのままでいるわけにはいかない。彼女の額に触れた翔の手には、まだの熱の余韻が尾を引いている。澄香の額は、
信じられないほどの熱を帯ていた。ともかく澄香がまずい状態にいる事は間違いない。だからひとまず、家の中に運ばなければならない。
すぐに気をとりなおし、翔は全身に力をこめて、澄香を抱き上げた。
442:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/07/02 02:11:11 EkUmjnt7
それは見てはいけないもの。いや、見るべきではないものだったように思う。
家に澄香を運びこむと、翔は彼女の体を吹き、髪を乾かし、服を着替えさせて、彼女を自室のベッドに寝かせた。
押し入れに収納された冬用の羽毛布団を引っ張り出し澄香にかけ、そして翔は現在澄香の携帯と向き合っている。
あれだけの雨に当てられながら、それでも機能が停止しないなんて、最近の携帯はすごいな、と少しだけ感心した。
ところで、この携帯の中には、たくさんの秘密が入っているはずである。今朝、気付いた有り得ない数の着信とメール。
それが孕んでいる真実が、全て目の前の携帯に全て入っているのだ。もちろんそれは翔の携帯にも入っていたのだが、
もう確認出来ない状態になってしまっている。どうも最近の携帯は耐水性は高いが、衝撃耐性は低く作られているらしい。
だから今となってはこの携帯だけが、あのメールと着信の全てを知っているのだ。
翔は、真実を知りたいと思っている。
しかし同時に、確認などする必要などないのかもしれない、とも思う。まるで深く突き刺さった杭のような、
ゆるぎない確信はあるのだ。だが、それでもまだ事実だと確認したわけではない。もしかしたら、あのメールや着信全てが、
森や都築からの頭の悪い悪戯であった可能性だってないわけではない。もちろんその可能性は、
宝くじに当たるよりずっと低いだろう事は分かっている。それでも、心の奥底がそうなる事を望んでいた。
宝くじだって買わなきゃ当たらないのだ。まだ、決まったわけではない。
そう心に言い聞かせつつ、翔は澄香の携帯のメールボックスを呼び出そうと、左上のボタンを押してから、自分の失敗に気付いた。
この携帯は自分のとは違うのだ。いつもの調子でボタンを押してしまったが、それはメールボックスを開くボタンではなく、
アドレス帳を開くボタンだった。
443:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/07/02 02:12:20 EkUmjnt7
すぐに画面は暗転し、お呼びでないアドレス帳が現れる。真抜けな自分に、何をやってるんだ、と溜め息をついて、
その画面を再びトップに戻そうと、クリアボタンを押そうとしたそのとき、翔は気付いてしまった。
ここには、メールボックスなんかより、ずっと、ずっと悲しい事実が横たわっていたのだ。
『水樹由美』
『奏翔』
アドレス帳に登録されているのは、そのたった二件だけだった。
444: ◆Xj/0bp81B.
07/07/02 02:15:13 EkUmjnt7
水曜に投下するとか言っといて、今さら投下終了です。
七月になると、リアルが無茶苦茶忙しくなるので、今までのように定期的に投下出来なくなりますが、今後もよろしくお願いします。
445:名無しさん@ピンキー
07/07/02 19:14:42 8hbX4MyT
GJ!
俺は自宅と弟二人と母親の4件。勝ったな。
446:名無しさん@ピンキー
07/07/02 20:07:39 Jm+IyRdG
アドレス?なにそれ、食えんの?
447:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/07/02 21:31:56 xJtdT666
では投下致します
448:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/07/02 21:34:16 xJtdT666
第5話『集結』
手が痛かった。
握られている圧力が人間業じゃね-よとツッコミを入れたくなる程に俺は痛みを顔に出さずに我慢していた。
バイト終了後に待っていたのは人類が体験したこともない地獄であった。
閉店の時間になるまで俺を問い詰めていた妹分、御堂雪菜。
今日、俺の代わりに店を手伝ってくれた幼馴染、進藤刹那。
二人がきっちりと俺の手を力強く繋いで離そうともせずに桜荘の帰路を歩いていた。
その雰囲気は夜よりもなお暗き者が存在するような完全なる混沌。まともに二人の顔が見ることができない。
いや、様子を探ろうとすることさえ恐怖を感じてしまうのだ。
俺はなんとか重い空気を少しでも軽くするために積極的に二人に話し掛けた。
「そういえば、刹那は今どこに住んでいるんだ? 雪菜を送った後に家まで送ってやるよ」
「家なんかありませんよ。カズ君と再会した時に使っていたあのダンボ-ルが私にとっての唯一の家だったの」
「え、えっと?」
「行く場所がないので……カズ君の家に泊まっていいでしょう?」
「いや、出来ればお金を貸してやるからその辺にあるビジネスホテルに泊まってくれたら俺的には嬉しいんだけど?」
その言葉と共に刹那が握っている手に新たな握力が込められる。
小さな悲鳴をあげたいところだが、俺はひたすら我慢しなければ更に恐ろしい事に遭遇するのだと本能が悟っていた。
刹那を桜荘に連れて行くのは違う意味で危険すぎる。あの桜荘の中で男は俺一人だけであって、
あの共同生活に触れるだけで刹那はとんでもない勘違いしそうである。
特に桜荘の住民は雪菜を筆頭にいろんな意味で濃いキャラが多すぎるのだ。
故郷に幼馴染が俺のために拾ってくれワンワンプレイを披露したことを知られると……
奈津子さんの酒の肴に使われて、美耶子には永遠とからかわれるネタを提供してしまうことになる。
それだけは避けねば……。
安曇さんだけは桜荘の唯一の良心だ。彼女なら周囲の空気を読んでいろいろとフォローしてくれるはずだ。
「お、に、い、ち、ゃ、ん……。今、他の女の子の事を考えていなかった?」
「滅相もございません。俺ごときが可愛い女の子と一緒に手を繋いで帰られるような夢のような一時に
他の女性の事を考えているなんて。うん。ありえないっ!!」
「でも、カズ君……妙に焦っていない?」
「大丈夫だ。常に強姦魔や痴漢がいつでも襲いかかってもいいように
俺は周囲を警戒している。近付けば、俺のザムディンが火を吹くぜ」
「心強いお兄ちゃんに守ってくれるのは嬉しいけど……下手なボケでゴマかすのはよくないと思うよ。ねぇ、刹那さん」
「ええ。同意ですね」
二人の圧力は俺の手を握り潰すまでに握力を加えて、逆に痛覚が感じられない領域に辿り着いた。
グシャグシャグシャ………。
俺の掌は桜荘に帰るまで原形を保っていられるだろうか?
449:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/07/02 21:37:27 xJtdT666
夜の桜の花びらが舞い落ちる桜荘の前に辿り着くと俺は涙が出るぐらいに感激していた。
悪夢からの解放は人類が望んだ希望なのだから。
少なくても、俺は助かったと気を抜いていたが中で待ち受けていたのは、今日の出来事を遥かに超える悪夢であった。
食卓には、奈津子さん。美耶子。安曇さん。雪菜。
反対側の席には、俺、刹那、そして、更紗が座っていた。
桜荘の住民に向けられる視線の全てが俺に睨んでいるのは気のせいではないだろう。
雪菜と刹那を連れて帰宅すると重圧に押し潰された老朽化が進んでいる桜荘に漂う空気は尋常ではなく、
汚染地域に犯されたような感覚がした。それは俺の被害妄想ではなく、重い空気の正体を知ったのは
桜荘の住民に束縛されて尋問を受けている更紗の姿を目撃した時であった。
昨日に不法侵入していた更紗が桜荘の住民たちに捕獲された理由は考えなくてもわかる。
俺に会うために彼女はまたここにやってきたのだ。
ただ、ここの住民たちは常人を遥かに凌駕した人たちだから二度目の侵入は不可能であった。
俺は奈津子さんに縄を解いてと懇願して解放された更紗は俺の腕にくっついて離れようとはしない。
更に対抗して刹那も反対側の腕を組んで、また離れることなんてしなかった。
そして、今日の昼に行なわれた桜荘緊急会議が再び行なわれていた。
「これから……第一回『深山一樹君が幼馴染ちゃんたちをどういう風に誑し込んだのか?』
についての問い詰め会を始めようと思います。資料は各自テーブルの手元に置いてあります。
司会進行役は作品内で出番が少なすぎる高倉奈津子が仕切らせてもらいます」
奈津子さんが用意した資料には昼に会議した内容も更に付け加えられていた。
事実と違う歪曲と捏造を重ねた書類に抗議をしたいが、
俺にはそんな発言と弁解することは残念ながらここでは出来ない。
「では。白鳥更紗ちゃんがどういう風に捕獲されたのか。
実際に更紗ちゃん捕獲作戦を提案した我が愚妹からの報告を聞いてもらいましょうか」
「では愚姉の代わりに私こと高倉美耶子がその時の状況と作戦発案に関する経緯を報告させて頂きます!!」
目を輝かせた美耶子が饒舌に今回の更紗に関する件について語り始めた。
「それは桜が舞い散る出会いと別れの季節の時期でした。
桜荘の中央にある庭に桜の木があるから桜荘という安直な名前のセンスに疑問を抱いていた
私は急な監督降板にDVD-BOXの予約をキャンセルしようかと思っていたときに閃いたんです!!
とりあえず、一樹さんをからかって遊ぼう!!
そのためには忍び込んできた出張風俗嬢を捕まえて、一樹さんの情報を得るというのが目的でした。
だから、私は一樹さん不在の時に管理人代理権限で一樹さんの部屋を無断で開けて、部屋の前に目立つ立て札を置きました。
『深山一樹、桜荘の女の子を凌辱中』と。
後は、安曇先輩と交代で見張りしていると私の立てた策にはまった女の子、
白鳥更紗さんが一樹さんの部屋に物凄い剣幕で乗り込んで……用意した罠にはめて見事に捕獲完了です」
450:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/07/02 21:40:43 xJtdT666
満足な表情を浮かべて語り終えた美耶子は大人しく席に座った。
その報告にいろんな意味でツッコミどころ満載だったが更紗が捕獲されるまでの経緯に触れない方がいい。
真実というのは時にして残酷だからな。
「私も驚いたわ……一樹君の盗撮写真が部屋中にばら撒かれていて、写真相手に頬を擦り付けている更紗ちゃんの姿にちょっと」
「てか、俺の盗撮写真かよ!! どこで流失したんだよ」
「では……真穂ちゃんの過激な拷問によって得られた情報をここに公開を……」
「コラぁ。華麗にスルーするな!!」
その盗撮写真の疑惑や犯人の追求する暇もなく安曇さんが立ち上がって更紗を拷問した時のことを喋りだした。
「とりあえず、深山さんの盗撮写真に夢中になっている白鳥さんを縄で縛る行為は容易でした。
捕獲してからの拷問は……お、お、女の子の秘密ということで」
顔を朱に染めてしまった安曇さんが恥ずかしそうにその話題を見事に避けた。
どのようなやり取りが存在していたのか過去の世界にタイムスリップしてまでその事実を喉から手が出る程に知りたいが、
更紗が桜荘の住民どもに自分たちの関係を隅々まで白状している可能性もあるので。
深入りするのは危険だな。
俺は自分の腕を組んでいる幼馴染たちに視線を向けた。
このバカらしい問い詰め会を、この桜荘の住民たちに一体どういう風に思っているのか。
更紗も刹那も敵意の込めた視線を4人の女性たちに向けていた。
「さてと……そろそろ、一樹君の幼馴染たちの意見が聞きたいね。
はるばると遠い故郷から上京するのは並大抵の事じゃない。
特に幼馴染という名の異性を付け回すなんて普通じゃないからねぇ」
「まあ、奈津子さん。今日はこれくらいで勘弁してくださいよ。
更紗も刹那も慣れない場所に居たり、知らない人たちに出会ったりして疲れているんです。
二人から詳しい話を聞いて後で報告しておきますから」
ここで更紗と刹那に喋らせるととんでもない事をこの場で言いそうで恐かった。
俺は出来るだけ桜荘恒例の問い詰め会を終了させてから、更紗と刹那が桜荘にやってくる経緯を聞いておきたかった。
そのためには住民達が納得するような理由を鈍い頭を働かせて考える。
その間に桜荘の玄関の入り口にある電話が鳴り響いた。
各個室に電話は設備されているが、玄関からすぐにある電話は賃貸マンションやアパートなどで
広告に紹介されている電話番号はそこにかかるようになっている。管理人である奈津子さんに関係のある用件ばかりであった。
だが、今の状況で奈津子さんは電話に出ようとしない。空気を読んだ雪菜が仕方なく椅子から立ち上がって、電話に出ていった。
「ダメよ。今日の一日の疲れを癒すためには心地の良い住民の面白いネタを皆で存分に楽しまなくちゃ」
「ちょっと待て。管理人職の仕事はほとんどやってなさそうに見えるあんたが言うな」
「管理人は大変よ。一日やることがないからどうやって過ごせばいいのか悩むのよ」
「単にニートなのでは?」
さりげなく、相手の図太い神経を傷つけるような言葉を発するが奈津子さんは余裕の態度であっさりと言い返す。
「告白されたけど、どっちかを選べなかったチキン野郎とは違うわよ」
「うぐぅ……」
だから、桜荘の住民たちに更紗と刹那の過去に遭った忘れたい出来事を知られるのは嫌だったのに。
安曇さんや美耶子もジト目でこちらを睨んでいた。これまで築いてきた人間関係が音を立てて崩れてゆくのがわかる。
今の俺は二股をかけている最低最悪の遊び人男として彼女たちの再認識されたに違いない。
「お兄ちゃん。電話だよ」
受話器を持ってきた雪菜が俺に渡してくる。この時間帯に俺に用があるとするならば、
頭のネジを全て解き放った店長ぐらいしか思いつかないが。とりあえず、俺は電話に出た。
「はい、もしもし」
「やぁ。我が息子よ。久しいな」
電話の相手は、なんと親父だった。