擬人化した狂暴な♀動物が逆レイプする【六匹目】at EROPARO
擬人化した狂暴な♀動物が逆レイプする【六匹目】 - 暇つぶし2ch50:名無しさん@ピンキー
07/06/08 23:51:27 nWKuJaVg
GJ!
デザートお握り・・・食いたくねぇーw

51:名無しさん@ピンキー
07/06/08 23:59:34 /WzqL8d6
そういや、まとめ更新しないね…

52:名無しさん@ピンキー
07/06/09 01:15:10 vatplQVX
なんか……所々聞いた事が有るセリフが有る、俺ゴミナント。
GJ!

53:名無しさん@ピンキー
07/06/09 02:35:20 iDeMcwyb
この際プライドは抜きだ
お前をGJ出来ればそれで十分だ

54:名無しさん@ピンキー
07/06/09 02:58:28 3AzIzcWh
とりあえずこっち見るな。
ついに本当にアッーー!されたなww
GJ!

55:名無しさん@ピンキー
07/06/09 09:12:05 kfZIsM6G
>>30
なんというヤンデレ…鬱だな…。
いろんな意味で心にくる話でした。
GJ!
短編もいいですね~。


>>46
GJ!獅子沢さんはできる子だと信じてますw
続編も待ってます。
やっぱ虎姐はかわいいな(*´Д`)

56:名無しさん@ピンキー
07/06/09 15:45:34 x1MrQLE+
>>47
お兄さんについてのお話キボン
つか虎娘にここまで興奮したのは初めてでつ

57:名無しさん@ピンキー
07/06/09 18:00:40 KJHs57sY
最近、♀犬を見るとドキドキする

58:名無しさん@ピンキー
07/06/09 19:01:04 f9t1iq6I
動物全てにドキドキする

59:名無しさん@ピンキー
07/06/09 19:02:30 CXQkoYI1
大分このスレに毒されたなww

人の事言えないが

60:名無しさん@ピンキー
07/06/09 19:07:03 8JlpcaSc
動物園に行ったらどうなってしまうんだw

61:名無しさん@ピンキー
07/06/09 19:07:51 f9t1iq6I
>>58
一部抜けてた

動物全てにドキドキする

♀かわからなくてもとりあえず動物全てにドキドキする+妄想が膨らむ

62:名無しの物書き
07/06/09 19:30:45 yKAf28bU
今タコの作品出てないよね。
で、今タコで適当に設定作って妄想を繰り広げてんだけど…
文章化できないorz
誰か国語力をください(泣)

63:名無しさん@ピンキー
07/06/09 19:38:09 KJHs57sY
以前、鮫と一緒にタコが出たことはある

64:名無しさん@ピンキー
07/06/09 20:23:27 3+6cuwoP
『擬人化した狂暴な♀動物が逆レイプする』

何か良いですよね。

65:名無しさん@ピンキー
07/06/09 20:49:04 HzxVbjAy
>>30
アニメのマシンと小鳥もSSの猫耳娘もすごい可哀想。
アニメとSSの両方で鬱の相乗効果だ・・・
でもそれが良いorz

66:名無しさん@ピンキー
07/06/09 22:30:20 3AzIzcWh
>>64
よく見ると4スレだけ受動的だ。

67:名無しさん@ピンキー
07/06/10 00:06:50 Nk+tmHPN
>>66
なんかその方が犯られてる感があるな
そっちの方がスレタイとしては好きだわ







…何言ってんだ俺orz

68:名無しさん@ピンキー
07/06/10 07:02:37 ifQkySjf
こんなピンポイントなスレタイを最初に考案した人、よく考えたら神だわw

まあ職人方のネ申レベルは言うまでも(ry

69:名無しさん@ピンキー
07/06/10 08:34:57 noy6biOn
>>30のSSの内容がよく分からないんだが…東西核戦争後の世界で主人を失った猫の女の子が昔を思いながら生きているってことでおk?

前々から思ってたんだけどくまさんのSSって読解力がやたらといるな。

東西の緊張状態→降り止まない雪(灰?)、黒い雨、灰になった人=核戦争があった
みたいな感じ。何回か読み返さないと分からない俺…orz

70:名無しさん@ピンキー
07/06/10 11:26:49 iaQLEIyZ
今まとめサイト見てきたけど「濡れ女」えかったわぁ・・・・・・
ラノベ脳氏今更だけどマジでGJJ

71:名無しさん@ピンキー
07/06/10 13:16:00 JXjNEIQQ
ふと思ったんだけどまとめのベヘモスって分類的には虎娘にいれるべきなんじゃね?

72:名無しさん@ピンキー
07/06/10 13:48:12 /rjyb1de
自分もそう思ふ

73:メサイア ◆wa5/w.bVtg
07/06/10 16:45:46 bfCr1WUT
どうも、メサイアです。
皆様、ご感想ありがとうございました。
先日の猫娘の続きを投下させていただきます。
以下、注意点です。

・今回分にもエロはありません。

・主人公が変態です。

74:メサイア ◆wa5/w.bVtg
07/06/10 16:48:06 bfCr1WUT
台所に行くと、キッチンに向かってトントンというリズミカルな音を響かせている茶髪をショートカットにした少女と、
机に座って黙々と朝食を食っている腰まで届く金髪縦ロールの二人の少女がいた。
……って何他人行儀になってるんだろうな俺。
しかし、この時間帯にこよりんが家にいるのも珍しいな。
「あ、おはようございます、ご主人様♪」
「……………」
俺の方に振り返り、茶髪の少女は天使のような笑顔で(この言葉に嘘偽りはない。ああ、デジカメがあれば画像を取って証拠をうpするんだがなぁ……)挨拶をする。
一方金髪の方は、振り返りもせず飯を食い続けている。まったく、無愛想な奴め。
「おはようかりん、こよりん。今日も本当に可愛いなぁ」
「みぃ……もう、可愛いだなんて。恥ずかしいですよ~」
「……………」
ああ、照れているその顔も本当に可愛いぜ。神様、俺の下にこんないい子を遣わしてくださって本当にありがとうございます。
「可愛い物は可愛いんだから仕方ないだろう。こんなに可愛いく育ったお前が悪い(もみもみ)」
「きゃっ!……だ、だめですよ、今日はあげはちゃんの日……」
「いーじゃねーか、俺はおっぱいを揉んでるだけだぜ。このくらい、あげはも多めに見てくれ「セクハラですわーーーーっ!!」ぶべらぁ!」
「だ、大丈夫ですか、ご主人様!?」
「さっきから黙って見てればセクハラまがいの変態行為の数々……慎太郎、あなたには節度という物は無いんですの!?」
「……ああ大丈夫だかりん。お前への愛に比べれば、この程度蚊が刺したようなものだぜ」
「人の話を聞きなさい!」
「ご主人様……ぽっ」
「キィーーーーーーッ!!なんであなたたちばかりがわたくしを放っておいてそのようにラブラブできるんですの!腹立たしい……」
「おいおい、こよりん。俺はかりんと朝のスキンシップを取ってただけだ。急に飛び蹴りを入れるなんてひど過ぎるぜ」
「その、こよりんって呼ぶのをやめなさい!」
「こよりちゃん……」
あー、やれやれ。ようやく反応したと思ったらいきなり飛び蹴りかよ。もっとよく躾けないといかんな……



75:メサイア ◆wa5/w.bVtg
07/06/10 16:50:08 bfCr1WUT
あ、二人の紹介がまだだったな。悪い悪い。
まず、今俺に飛び蹴りを入れたのがこより。
背中まで届く縦ロールの髪、いつも不機嫌そうな深緑の瞳、3桁はいっているだろうけしからんおっぱい。
そして、実に見た目通りのお嬢様な性格。
ああ、黙ってれば(ちょっと背は高いが)お人形みたいで可愛いんだがなぁ……
俺は親しみをこめて「こよりん」と呼んでるんだが、本人はどうも気に入らないらしい。
自分では結構気に入ってるんだがなぁ、何が悪いんだろうか。
で、俺がおっぱいを揉んだりした茶髪がかりん。
ショートカットにした栗色の髪、引き込まれそうな黒い瞳、もちろん耳と尻尾も完備。
3人の中でただ1人、俺のことを「ご主人様」と慕ってくれている、本当に可愛い子だ。
ああかりん、お前のためならこの命、微塵も惜しくないぜ……
「あー、なんだ、こよりん。そんなに気になるんだったら、お前のおっぱいも揉んでやろうか?」
「結構ですわ。まったく、何でわたくしはよりにもよってこんな変態に拾われたのかしら……かりん、昼御飯と晩御飯はいりませんわ!」
そう言うと、こよりんは窓から飛び降りていった。おいおい、ここは3階だぜ。誰かに見られたらどうするんだよ……。
あ、もちろん心配は要らない。こよりんは猫。少々高いところから降りても大丈夫らしい。そう本人が言ってたんだから間違いない。
あいつ、どうも放浪癖があるらしくてな。いつも朝早くから家を出て夜にふらっと帰ってくるんだ。
何をしているのかは俺には教えてくれない。けちー。
「こよりちゃん、いつも元気でいいな……あ、そうだ。朝ごはん、出来上がってますよ」
「おおそうか。じゃ、頂こうか。今日のメニューはなんだい?」
「はい、今日の朝ごはん簡単に、ご飯と卵焼きです」
そういいながらかりんはご飯とおかずを俺の前に置いてくれた。
「んじゃ、いただくとしますか。いただきまーす!……ンマーイ!いやぁ、本当にお前の飯は最高だな」
「ふふっ、ありがとうございます。いつもご飯を作るときは、ご主人様のことを思いながら作るんですよ」
こいつ、嬉しいこと言ってくれるじゃないの。ああ、俺は幸せ者だな……
「……ばーか……」
「ん?かりん、俺に何か言ったか?」
「え?私は何も言ってませんよ?」
そうか、じゃあ気のせいだろうな……


76:メサイア ◆wa5/w.bVtg
07/06/10 16:52:29 bfCr1WUT
今回はここまでです。
次回にはエロが入る予定ですが、投下にはちょっと時間が掛かるかもしれません。
気長に待ってやってください。
では、今回はこれで。

77:名無しさん@ピンキー
07/06/10 18:05:51 kOcEhXz/
首を3回転半捻りながら続きを期待させてもらうぜ!

78:名無しさん@ピンキー
07/06/10 19:39:41 t7q7bUuD
>>73
期待して待ってます。

79:名無しさん@ピンキー
07/06/10 22:00:39 I7z6Iu/P
>>76
某スレで変態主人公に慣れきってるせいか、「変態……?この程度で……?」とか思った。
続き期待中。

80:名無しさん@ピンキー
07/06/10 23:22:55 dZ+wI6bG
>3桁はいっているだろうけしからんおっぱい
悶絶期待wktk

81:名無しさん@ピンキー
07/06/10 23:31:12 Nk+tmHPN
全裸で三点倒立しながら待ってまつ
超続き期待

82:名無しさん@ピンキー
07/06/10 23:37:25 MR6xDuay
この流れの中、魔女のぬこに期待する俺は間違いなく異端

83:名無しさん@ピンキー
07/06/11 12:47:56 jtgJh5i3
くまさんのラブラブハッピーエンドなクドリャフカを待ってるのは俺だけだろうと思う

84:名無しさん@ピンキー
07/06/11 12:54:49 X2SLcMnA
スレタイを見るにラブラブハッピーってのも、何か変な感じ

85:名無しさん@ピンキー
07/06/11 14:40:19 D/TkXi34
明るく楽しく逆レイプだな!

86:名無しさん@ピンキー
07/06/11 18:25:06 VsHcQoQY
獣人だけの国に転生したクドリャフカがいて、そこに旅行で来た博士(生まれ変わり)て奇跡的に出会う。
という妄想をしてみた。

87:名無しさん@ピンキー
07/06/11 22:17:16 9wHKSGEY
>>84
このスレの一発目がまさにそれだったからな。
アレがジャストミートして以来、このスレを離れるに離れられない俺が居る…(´・ω・`)

88:名無しさん@ピンキー
07/06/11 22:26:44 6RN8Xm8v
大丈夫、みんなそうだよ

89:名無しさん@ピンキー
07/06/11 22:38:29 h4/IYgbZ
>>87
このスレが常駐スレの一つになったのは、ひとえにアレのおかげだよ。

90:名無しさん@ピンキー
07/06/11 22:53:34 1vAe7IU+
ラブラブになりすぎて後日談は他スレに投下
というオチまでついていたしね

91:名無しさん@ピンキー
07/06/11 23:13:47 X2SLcMnA
初代スレ誕生!
  ↓
いまいち盛り上がらない

書く人氏光臨

職人キター!

書く人氏の影響だと思うが暁狐氏誕生

更に職人いっぱいキター!!

良スレ化

今に至る


過去スレ見た。大体こんなだと感じた
とりあえずここまで伸びたのは凄いとオモタ

92:名無しさん@ピンキー
07/06/11 23:32:01 9wHKSGEY
>>90
むしろ、そこから辿ってきて住み着いた俺が居ますよ、と。

93:名無しさん@ピンキー
07/06/12 00:44:54 Oiy4Xs5I
ぶっちゃけてめーら今までの娘達全員一斉に逆レイプされたいとか一回思ったろ?
正直に書きやがってくださいよ

94:名無しさん@ピンキー
07/06/12 00:48:21 PHjqcUj4
>>93
あえて一人選ぶなら一番最初の狼だな

95:名無しさん@ピンキー
07/06/12 00:53:38 2bAIZH5z
俺は青龍かな


96:名無しさん@ピンキー
07/06/12 00:54:57 FnR0SyU+
>93
あぁ、そうだよ悪いかコンチクショー!しかも神々に触発されて構想練ってるよ。


…ところで牛娘って需要ある?


97:名無しさん@ピンキー
07/06/12 00:59:01 YsCkMSPO
>>96
ここには需要のない動物なんていないんだぜ?
まぁグロ・スカトロ・ハードSMはきついが

98:名無しさん@ピンキー
07/06/12 01:00:13 0k7vs3vS
>>96
需要は掘り起こすものです

99:名無しさん@ピンキー
07/06/12 01:02:52 2bAIZH5z
>>96
あるよ

100:名無しさん@ピンキー
07/06/12 01:03:54 YsCkMSPO
>>98がいいこと言った

101:名無しさん@ピンキー
07/06/12 02:18:00 OyjUeqFA
なんか普通の動物じゃつまらないから
マントヒヒ・豚・ラクダ・ブルドックで誰か書いてみてくれ

102:名無しさん@ピンキー
07/06/12 02:25:37 6GJ/Kn+G
>>101
冒険家が『森の人』オランウータンに遭遇するという電波を受信した

103:名無しさん@ピンキー
07/06/12 02:45:21 WarpIutU
やっぱ初代スレの一番最初のSSが一番よかった
狼娘の

104:名無しさん@ピンキー
07/06/12 03:04:14 2bAIZH5z
>>103
確かに良作……だが、あんまし言い過ぎるとなんか投下しづらい、かも…
文才無いから書く人より質が落ちてるのは明白だし

105:名無しさん@ピンキー
07/06/12 10:36:52 WHwLfD38
>>86
想像しただけで泣いた。くまさんは萌エロパロよりもシリアスな方が合ってると思うんだがどうだろう?

書く人氏のはぶっちゃけ一番エロいな。何度抜いたか分からん。

106:名無しさん@ピンキー
07/06/12 11:03:01 0BvaIcL5
>>76
こよりんでですわ喋りというと某マジカルメイドを連想してしまう……
何はともあれGJ!

107:名無しさん@ピンキー
07/06/12 13:09:02 jPLCwtLS
ところでこのスレに投下された作品はバッドエンド:ハッピーエンドの比率ってどれくらい?

初期は結構バッドエンドも多かった気がするけど。

108:名無しさん@ピンキー
07/06/12 13:44:20 T9UuOqPC
おれは刹那ちゃんを選ぶね、二話目の月子さんもすごい可愛かったから捨てがたいところだけど

>>107
バッドなんて2桁いかないくらいじゃない?
ヤドカリ様もハッピーの部類だし

109:名無しさん@ピンキー
07/06/12 18:02:16 uda1lGCQ
一つ短編があるから投稿しようかと思ったら、よく見たらグロ禁止だった……

このグロ禁止ってどれぐらいのレベルまでなんだろう。
狼女がハードに逆レイプで相手死んでるし、硬めの文章だから抜けるかどうかは微妙なんだけれど。



110:名無しさん@ピンキー
07/06/12 18:07:44 JyQYu0fh
死にオチは幾つかありますよ。
投下する前に注意書きを添えれば問題ないかと思いますが

111:瀬錬
07/06/12 18:17:15 uda1lGCQ
了解。
四の五の言わずに投下してみます。
ダメなら何事も無かったかのように母の会でお願いします。


112:WOLF and RAVEN
07/06/12 18:20:16 uda1lGCQ
※以下の文章には殺傷表現が含まれます。





―私の言う事を聞いていれば、いつか人間にしてあげよう。

それが、私がこの世に生を受けてから、最初に貰った言葉だった。


「……」
窓から見渡す限り、荒れた山野と森しか見えない、そんな僻地に立つ塔。
それが、私と、我が主の住まう家だ。
「……」
私は何をするでもなく、闇色のボロ布―私がこの身体以外に主から頂いた唯一の品―を纏い、ただ窓の外を眺めている。
なんという事はない、いつもの……三十年もの間続いた昼の日課だ。
「……」
私が微動だにせぬまま、この世界を照らす恒星が五度ほど傾いた頃、私の耳に聞き慣れた音が響きだした。
風を切って羽ばたく、大翼の音。
それが一際大きくなると同時に、窓から差し込む光に巨大な影が差した。
「やあ。今日も話をしに来たよ」
決して耳障りではない、陽気な声。
どうやったらそんな声がその黒い嘴から出るのか疑問ではあるが、聞いた事はない。
―そう。
「彼」は、全長二メートルはあろうかという巨大な鴉だ。


113:WOLF and RAVEN
07/06/12 18:21:36 uda1lGCQ
私が閉口していると、彼は小さく首を傾げ、
「あれ? 元気ないね。ボク、君の挨拶が聞きたいなぁ」
―そう決まって彼は言い、私を喋らせようとする。
私は苦笑しながら、
「―おはよう」
と、返すと彼は即座に、
「おはよう! 今日もいい天気だねぇ。と言っても、ボクはここが晴れていない時を見た事がないんだけどさ! 君は見た事あるかい?」
そう機関銃のように喋るのである。

私と彼の付き合いは、もう二十年近くになる。
始めて出会ったのは、私が我が主の「願い」を聞いていた時だった。
そう、あれは―
「おーい!」
私はその声に、我に返った。
見れば、彼はいつの間にか石造りの窓枠から降りて、私の眼前でその黒真珠のような瞳を真っ直ぐに私へと向けていた。
「君はよく人の、じゃなかった。鴉の話を聞かない事があるね。まぁだからこそボクも話しがいがあるんだけどさ。ちょっと疲れたから失礼するよ」
そう言うと、彼は私のボロ布に飛び込んできた。そのまま実に器用に中へと入り込んでくる。
私の腹部に心地良い羽毛の感覚が広がり、次いで胸元から彼の頭が飛び出した。


114:WOLF and RAVEN
07/06/12 18:22:37 uda1lGCQ
「君の毛は柔らかくて暖かいね。それに長い。ボクのとは大違いだ」
「貴方のも、暖かいと思うが」
「そうかい? 自分では分からないな。なんにせよ―お褒め頂き有難う。一応、自慢の羽なんだ」
決して変わる事のない彼の調子に微笑を浮かべて、私は彼の頭を撫でた。
「それと―」
「なんだ?」
「済まない。君はその身体を嫌っていたっけな」
私はその言葉に小さく顔を歪め、しかしすぐに微笑へと戻した。
「そんな事はない。これでも少しは気に入っている。だから……素直に嬉しいよ」
「……そうかい?」
「ああ…… そうだとも」
ややあって、彼が再び嘴を開いた。
「今日の夜も彼の『お願い』かい?」
「ああ、そうだ」
「ボクが言うのもなんだけれど、嫌なら嫌と言った方がいいんじゃないかな」
「……それは出来ない」
「例の約束? 人間になりたいから?」
「ああ」
即答すると、彼は心なしか悲しそうな目をした。
「……そうかい。君がそう言うならボクの出る幕はないかな」
「ああ…… 悪いな」
「気にする事はない。ただの鴉の戯言だ」
彼はそう言って眼を閉じた。
眠ったのだろう。
いつもの事からそう考え、私も目を閉じた。


115:WOLF and RAVEN
07/06/12 18:24:03 uda1lGCQ
次に目覚めた時、彼は既に消えていた。


―そして、夜がやって来る。
我が主の「願い」を聞き、私は塔を出た。
この身に布一つだけを纏い、夜風を切って野山を駆ける。
この世界の衛星が10度ほど傾く頃には、私は山二つ離れた所にある小さな王国の首都に到着した。
街は祭りの真っ最中だった。
警備を掻い潜り、雑踏から雑踏へと移ろい続ける。
耳に響くのは、人々の歓声。鼻に残るのは、豪勢な馳走の匂い。
どれもが、今の自分には縁遠いモノだ。
それがあまりにも羨ましく―狂おしいほどに憎い。
私がそんな想いを抱いて祭りを眺めていると、ふと祭りの賑わいが増した。
―時間だ。
私はゆっくりと、その賑わいの増した一画へと歩みを進めた。
豪華な衣装に身を包み、周囲の雑踏へ向けて微笑と手を振るう、成熟した男女と少年少女の一家。
周囲には多数の近衛兵が警備に当たり、油断なくその視線を張り巡らせている。
この国の、王族。
それを確認して、私はボロ布を身体から払い取った。
途端、私の周囲から響く悲鳴。それに反応して一斉にこちらを警戒する近衛兵。


116:WOLF and RAVEN
07/06/12 18:25:00 uda1lGCQ



私はその一切に構わず、周囲の人間を跳ね飛ばしながら地を蹴った。
「近衛隊! 王を―」
―もう、遅い。



―彼女の鋭利な爪が、確かに王の首を刎ね飛ばしたのをボクは見た。
次いで横薙ぎに振るわれた爪と、丸太のような腕が、王妃の胸部を中の心臓ごと三枚に下ろした。
花が咲いたように散る鮮血。
巻き起こる怒号と悲鳴。
近衛兵が次々と槍を繰り出し、彼女の爪の一閃を受けて残骸へと化す。
「Raaaaaaaa!」
彼女が雄叫びを上げる。
その声に竦んだ兵が、次の瞬間には肉片となって散る。
刹那―
「―死ねッ!」
そんな声と共に、彼女の背後からその心臓に向かって槍が突き立てられた。
多量の鮮血が散り、彼女と、彼女に槍を突き立てた近衛隊長に降り掛かる。
「どうだッ! 化け物がッ!」
彼女は一度だけ痙攣し、そのまま―
背後の近衛隊長の足を後ろ足で蹴り砕き、自分の心臓から突き出した槍を引き抜いて、近衛隊長へ叩き付けた。
「が―」
一瞬だけ、近衛隊長の肺が潰れる音が聞こえ―胴と腰が別れる砕音に取って変わった。
……それからはもう、一方的な虐殺と蹂躙が続いた。


117:WOLF and RAVEN
07/06/12 18:26:02 uda1lGCQ





怨みを叩き付けるように。
妬みを打ち付けるように。
まるで、人という種を終わらせるまでは飽き足らぬと言うように。

衛星が更に十度ほど傾いた頃に、ようやく虐殺は止まった。
半死人の呻き声が鳴り止まぬ祭りの、その明かりの奥。 通りの裏路地に彼女はいた。
「ひっ、あっ、ぐう、ああぁ!」
獣の唸りと共に聞こえるのは、男の情けない嬌声。
彼女は歳若い青年を押し倒し、その首元に爪を当てながら、青年の上で腰を振っていた。
銀の体毛は汗とそれ以外の体液で濡れていて、この行為が既にある程度続いている事を示していた。
「Graaaa!」
「ひぃっ、ぐ、ああああっ!」
彼女が吠えながら小さく震え、青年が叫び声を上げる。
主よ―!

そんな声が聞こえた気がした。
彼女と青年の接合部から白濁色の液体が一筋流れ、一拍おいて彼女がまた動き出す。
「ぐ、ああぁ! た、助けてくれ……」
彼女は答えない。
血のように赤いルビーの瞳を、青年に向けただけ。
重い水音が響く中、ややあって再び彼女が小さく震えた。
それに合わせて青年が悲鳴を上げ、白濁液を彼女の胎に流し込まされる。
そして彼女はまた動き出す。


118:WOLF and RAVEN
07/06/12 18:26:59 uda1lGCQ





「Gruaaaa!」

―私は、貴方が……!

彼女が青年の首を掴んだ。
凄まじい度合で加えられる力に、青年の顔色が変わる。
「あ……! が……!」
青年の手が腕に絡み付くが、彼女は躊躇せずに締め上げた。
―そして、限界が来る。
「Gaaaaaaaa!」

―貴方が…… 憎い!

彼女が震え、青年が精を吐き出した。
気怠げで緩慢な動きで、彼女は青年の肉棒を胎から引き抜く。
彼女は既に事切れた青年を何の感慨も無さそうな目で一瞥し、黒いボロ布を身に纏う。
そして、搾り取った精が胎から零れるのも構わずに、彼女は闇夜へと消えた。

―ボクは翼を拡げ、風に乗った。
眼下を勢い良く野山が流れ、遥か向こう、蜃気楼のように薄らと見える塔がゆっくりと近付いて来る。
目指すのは、塔の中程にある窓枠。
塔の壁面を眼前に捉えて、上手く窓枠に着地。塔の一室に顔を突っ込んでから、今日もボクは言い放った。
「―やあ。今日も話をしに来たよ」
明かりといえばボクが今立ち塞がっている窓からの光しかない暗い部屋で、今日も彼女は部屋の隅に蹲っていた。


119:WOLF and RAVEN
07/06/12 18:48:27 uda1lGCQ
「あれ? 元気ないね。ボク、君の挨拶が聞きたいなぁ」
そう呼び掛けると、彼女はこちらを見て、何事かを呟いた。
よく聞こえなかったが、それはいつもの挨拶ではなかった。
「何だって?」
ボクは窓枠から降りて、彼女の眼前へ歩み寄った。
彼女は呟くように言った。
「……最近、よく夢を見る」
「どんな夢?」
「私が…… 貴方を殺して、食べてしまう夢だ」
彼女の瞳がボクを捉える。
その色は、いつもとは違う、濁った血のような色をしていた。
「……昨日から、身体がおかしい。思考もだ」
「おかしい?」
「ああ……」
彼女は虚ろな息を吐いて、
「貴方は、私が人になれると思うか?」
そうボクに問うた。
「……なれるんじゃないかな。いつかは」
「そう、か」
彼女は大きく息を吐き、苦笑を浮かべて言った。
「―おはよう」
「ああ、おはよう―」


120:瀬錬
07/06/12 18:49:24 uda1lGCQ
以上です。
板汚し失礼致しました。


121:名無しさん@ピンキー
07/06/12 18:56:55 dHiDvPd5
深いね…GJ!

122:名無しさん@ピンキー
07/06/12 19:22:33 WHwLfD38
>>120
うーむ、冒頭と終わりはGJだが中盤の生々しい表現はちょっと…orz
精神的にダークなのはいいけど視覚的に来る表現はきついな。
御伽噺のようなストーリー、ダークな展開は大好きなんだがなあ。
あと少しは萌える表現を入れてほしかった。

グロさとエロさがどことなく「エルフェンリート」に似てるな。

123:暁狐
07/06/12 19:36:11 JyQYu0fh
悪いが投下しますがいいですか?答えは聞いてn(ry

注意点
・無駄に長い
・エロない
・ちょっとグロ有りかも
・文章力ないorz(頑張ります)

124:暁狐
07/06/12 19:37:27 JyQYu0fh
「はい、人族一人と猫で」
「ではここにお名前を」
 辺りはすっかり夕方になり、空一面が赤く染まっている。
 少し歩けば着くと思っていた村だったが、結局こんな時間になるまで掛かってしまいレオンは疲れ気味に宿に入った。
 小さな村は純粋な人間、この世界では人族と呼ばれる種族がおらず、村人全員が獣人。
 そして小さな宿は悪く言えばボロいのだが、野宿よりはマシ。
 入り口の受付のような場所には犬耳の女の子がにこやかに立っており、レオンが名簿に自分の名前と種族、そしてブランシュネージュの名前をサラサラ書いている。
 その彼の肩に乗っていたブランシュネージュは、レオンから離れ一人歩き出した。
「私は疲れた。先に部屋に行っているぞ」
「あ、はい」
「ペットと一緒に旅ですか?」
「その人間が私のペットみたいなものだ、勘違いするな小娘」
「す、すみません……」
「いえ……こちらこそ」
 長い尻尾を揺らしながらゆっくり歩くブランシュネージュを見て、宿の犬耳娘はレオンに笑顔で聞いた。
 その刹那、振り向かずやや怒り口調でブランシュネージュは犬耳娘に一言言うとそのまま部屋の中へと入っていった。
 この場に重い空気が流れ、レオンと犬耳娘はお互い苦笑しながら謝っていた。


125:暁狐
07/06/12 19:38:23 JyQYu0fh

「ふぅ、レオン飯はまだか?」
「少し待ってもらえませんか? 食材が足りないので買出しに行きたいので」
「ならば早くしろ、私はここで寝ている」
 宿の部屋は四部屋ある。その内一番奥の部屋がブランシュネージュ御一行の部屋となった。
 少し埃を被っているベッドを、魔法にて新品同様にしつつその上に丸くなりながらブランシュネージュはレオンに空腹を訴える。
 しかし、食料が足りずレオンは買出しに出かけてしまった。
 一匹取り残されたブランシュネージュは何をするわけでもない、ただ尻尾を揺らしながら肉球を舐めたりし普通の猫のようになっていた。
「……満月も近いな……」
 日は沈み、外の部屋も暗くなり始める。
 部屋の中央にある小さな机の上に置いてあるロウソク。それに火をつけ窓から外を眺めるブランシュネージュ。
 暗い夜空に輝く月は、後数日もすれば満月となる。
 そんな月を見上げつつ、何かを感じ取りブランシュネージュの耳と尻尾は立ち、昼間オークが出没した森をじっと見つめていた。
 だが、すぐに気にすることもなく丸くなってベッドの上で寝息を立て始めた。
 しばらく経ち、レオンもリンゴやら肉やら食材を買い部屋に戻ってくると、そのまま幾つか持ち再び部屋を出る。
 料理をするためだ。宿は用意するといったが、ブランシュネージュはレオンの料理しか口にしないと言っているのでレオンが作るしかないのだ。
 さらに時間が経ち、レオンは笑顔で部屋に戻り、部屋にはいい匂いが漂う。
 その匂いに反応し、ブランシュネージュも大きな欠伸をし耳をピクピク動かしつつ、テーブルの上に置かれた料理をレオンの肩に乗り見つめていた。
 本日の料理は、ドラゴンの肉を使った料理。骨付きの肉が皿に乗っているが、その大きさは凄まじい。
 レオンの顔よりは遥かに大きい肉。その横にはパンとオニオンスープも添えられていた。
「ブラン様、何から頂きますか?」
「肉に決まっているだろう」
『つか、俺には!?』
「お前は食べられないだろう? 戦闘以外は出ないという決まりだ、我慢するんだな」
 ブランシュネージュが物を食べる際は、決まってレオンが食べさせる。
 猫のままでは自分で食べるのは難しい、魔法を使っても良いがそんな事に魔力を使うのは疲れる、という理由からだ。
 彼女の一口サイズに肉を切り分けホークで刺し、彼女の口に持っていくレオン。
「はい、ブラン様」
「あむっ………うん、今日も美味いな」
「ありがとうございます」
 ガジェットの訴えは軽く返され、料理を口にしブランシュネージュの機嫌も上がっていく。
 宿の入り口の件で怒っているのではないかというレオンの不安は、彼女の言葉を聞いた時点で何処かに消え去ったようだ。
「レオン、お前も食べろ。料理は冷めると不味い」
「あ、はい」
 そして四口ほど食べたブランシュネージュはレオンにも食べるように言う。
 彼は笑顔で頷き、巨大な肉に齧り付いた。
『おいレオン、俺にも食わせてくれよ~』
「だめだ、表に出してはいけないぞレオン」
「ごめん、ブラン様の命令だから」
『くぅ~~っ!!』
 ブランシュネージュの命令は絶対である。またもガジェットの訴えは軽く返された。
 悔しそうなガジェットの声が部屋に響く中、レオンは既に肉の半分以上を食べていた。
 パンやスープもブランシュネージュに与えつつ、一人と一匹の食卓は進んでいった。


126:暁狐
07/06/12 19:40:33 JyQYu0fh
「うぅ……ちょっと食べ過ぎたかな……」
 食事が終わり、レオンは空となった皿を宿の外に持っていく最中である。
 ドラゴンの肉は大きい上に脂もあり、食べ過ぎれば当然お腹に負担がかかる。
 レオンも食べすぎで膨れたお腹に苦しみつつ、皿を洗うべく井戸までやって来た。
 しかし、外に出ようとした瞬間、彼は何かにぶつかり豪快に皿を放り投げてしまいその場に倒れこんでしまった。
「きゃあッ!」
「うわっ!」
 レオンの声、そして女の声と皿が割れる音が宿と外に響く。二人はほぼ同時に尻から地面に倒れた。
 しばらくほぼ同じ動作でお尻を摩る二人。
 そして、先に口が開いたのはレオンの方だった。
「す、すみませ―」
「すみませんじゃないわよっ!」
「ひっ!」
 だが、謝罪するレオンの言葉を中断させ女のほうが怒鳴ってくる。レオンは思わず怯んだ。
 そして改めて女を見ると、人間、人族で人族ではないことに気づいた。
 この宿の娘さんと同じ犬に似ている耳を淡い緑の髪から生やしているが、尻尾は長くふさふさしている。
 すぐに、彼女は人狼族だという事にレオンは気づいた。
「何人のことじろじろ見て……あっ!」
 しかし、そんな事は些細なことだった。レオンの視線からは、少し開かれた両脚に彼女が穿いている緑のミニスカートから見える白い布。
 それに気づくと、狼女は足を閉じ顔を真っ赤にさせレオンを睨み付けた。
「今見たでしょ?」
 狼女がドスの利いた低い声でレオンに聞くと、彼は思いっきり頭を横に振る。
 しかしすぐに見抜かれてしまい、不意に手を掴まれ井戸の側までレオンは狼女に引き摺られていった。
「ごめんなさい」
「あんた、この村の人じゃないでしょ?」
「へ?」
 レオンは正座になり、その前には脚を組んで井戸に座っている狼女。
 むしろまた視線の角度的にレオンからは彼女の白い布が見えてしまうのだが、指摘したら殺されると思いレオンは黙っていた。
 せめて見ないよう、俯いていたが、明らかに怒ってはいない彼女の口調に再び顔を上げた。
「早く質問に答えなさいよ」
「え、あの、そうですけど……」
「ふーん………もしかして、あんたもこの村に雇われたの?」
「へ?」
 そして女からは意外な言葉出てきた。その言葉に目を丸くするレオン。
 別に雇われたわけでもなく、レオンはただ偶然にこの村に訪れていただけだから。
「違います、僕旅の途中でこの村に」
「そうなんだ……へぇー」
 レオンは正直に女に伝えた。
 それでも信じていない女は、じと目で彼の顔を見る。
 どう見ても女にしか見えないレオンの顔、一人称と格好から男だということがわかるが、どうしても可愛いと思ってしまうことに女は少し困っていた。
「あの、僕の顔に何か?」
「な、何でもない!」
 ジッと顔を見られ続けレオンも困っていた。
 指摘すると、女は顔を赤くさせ怒鳴ってくるからますます混乱する。
 とりあえず、レオンが嘘をついているようにも見えないので、女はその言葉を信じ立ち上がった。
「まぁいいわ。あんた、旅してるなら明日の朝にでもこの村を立ち去ることね?」
「へ?」
「この村の近くの森にオークが大量に出没してるのよ。それが村を襲っては女の子を攫っちゃうのよ。それで、あたしみたいな傭兵が雇われたって訳」
「傭兵、なんですか?」
「なによ、獣人の女が傭兵しちゃ悪いわけ? あたしこれでも少しは強いんだから」
「そ、そう、ですね……」
 女は自分の職業、そしてこの村の現状をレオンに話した。
 その際に、女がレオンの首を腕で締め付けるものだから、彼女の強さをレオンは痛感した。
 オークが大量出没、レオンには心当たりがある。何せ昼間襲われたばかりだから。
 その事を女に話すレオン。彼女はその話を聞き、獣耳を動かしつつ驚いていた。
 何せ見た目ひ弱そうな男、オークから逃げたのならともかく群れを倒したというのだから。
「あんた、やっぱり傭兵でしょ?」
「だから違いますってば……」
 実はかなりの実力者なのではという仮説を脳内で勝手に作った女は、再び疑いの眼でレオンを見る。
 村人の話では、自分以外に傭兵は雇っていないと聞かされていたし、報酬も減ってしまう可能性があったから。

127:暁狐
07/06/12 19:42:02 JyQYu0fh
「まぁいっか。とりあえずあたしの仕事の邪魔だけはしないでよね、えっと……」
「僕、レオンです」
「名前は男っぽいわね。あたしウィンって言うの。さっきも言ったけど、これはあたしの仕事なんだから邪魔しないでよ? あ、ただで手伝ってくれるなら話は別だけど」
 レオンに顔を近づけ、じと目で警告する狼娘ウィン。レオンは思わずドキリとしてしまう。
 暗くてよく見えなかったが、ウィンはかなり可愛い女の子。
 淡い緑の髪は腰まであり、瞳の色は青く綺麗。体つきは無駄なところがなく綺麗なラインを見せている。
 また服装も下は緑のスカート、上はジャケットなのだが、ジャケットの下が黒い水着のようなものであり露出も高い。
 その為、レオンも男なのでどうしても彼女の胸なのにも視線がいってしまうので正直困っていた。
 まぁ、ウィンの服装はただ単に動きやすいからということなのだが。
「戻ってこないと思ったら、何をしている?」
「っ! ぶ、ブラン様」
 ウィンがレオンに念を押していたとき、宿から出てくる一匹の猫にレオンは気づいた。
 ブランシュネージュだ。しかも口調的に少し怒っているので、レオンからは嫌な汗が出てくる。
 一方のウィンは、レオンがビビッているのが一匹の猫ということに疑問を覚えた。
「レオン、何この猫?」
「あ、駄目ですウィ―」
「触れるな小娘が。レオンもいつまでもこんな犬とじゃれ合っているんじゃない」
「い、犬ぅ!? あたし狼なんですけど!!」
「私から見れば犬だ。ほら行くぞレオン」
「は、はい。ごめんね、ウィン、仕事頑張って……」
 そしてウィンはブランシュネージュに近寄り、しゃがんで指を刺しつつレオンに聞く。
 だが次の瞬間、ブランシュネージュの一言に耳と尻尾を逆立てつつ彼女に怒鳴りこんだ。
 しかしブランシュネージュは全く気にすることなく、レオンの肩に飛び乗るとそのまま宿へと戻っていく。
 その際、レオンは苦笑いでウィンに謝ったが、彼女がそれで納得するはずがなく……村中に彼女の声が響いた。
 その刹那だった。村に悲鳴が響き、ウィンやレオン、ブランシュネージュもそれに気づいた。
「何!?」
 ウィンは宿の柵を一跳びで超え、悲鳴が聞こえたところまで走っていく。
 そしてレオンもまた、ガジェットを持ち、宿の犬娘や犬のおばさんに部屋に篭っているよう指示を出す。
 彼女達はレオンを止めようとしたが、彼は笑顔を見せ『大丈夫』と言い残し宿を後にした。
 ちなみに、ブランシュネージュは別でやることがあると闇夜の中に消えていった。


128:暁狐
07/06/12 19:42:44 JyQYu0fh

「オーク、こんなにいっぱいっ!」
 宿を出た瞬間、レオンを待っていたのはオークの群れ。既に数体が村の娘を攫っている真っ最中だった。
 そしてレオンにもオーク達は気づく。やはり女だと思い、昼間同様襲い掛かってきた。
「村人を助けながらだからね」
『おう、早くしろぉ!』
 ガジェットはやる気満々の様子。
 というより、ブランシュネージュに妙な扱いをされ続けてイライラしていたのだ。
 そして魔装具の中央に埋め込まれている赤い宝石のようなものが光り、一帯を赤く染める。
 その光にオーク達は腕を目に当て、光が治まると、そこには黒い大剣を担いでいるレオンがいた。
「ふぅ、ようやく憂さ晴らしができるぜ」
「グ……オオオオオ!!」
 明らかに目の前の”女”の雰囲気が変わり少し怯むオークの群れ。
 だが、こいつ等頭悪いので、考える前にまず雄たけびを上げながらレオンに突撃していった。
「てめーらなんざ敵じゃねーんだよ!! さっさと斬られろっ!!」
 レオンもまたオークに向かっていった。
 一を書くようにオークの一体は上半身と下半身に分かれ、レオンは村の娘を抱えているオークに向かっていく。
 そして高く飛び上がり、重力に任せてオークを二つに斬る。赤い血が飛びレオンにも、連れ去られようとしていた狐耳の娘にも返り血が付く。
 狐の娘は恐怖で涙を流し続け体を震わすだけ。
 そんな彼女に背を向け、レオンは向かってくるオーク達を大剣で次々と斬り倒していく。
 両腕、両脚を斬り五つに分かち、肩から横腹にかけて斜めに斬ったり、頭と体を分離させたりもした。
 血は飛び散り、目玉が地面を転がりオークの悲鳴が村に響き続ける。
 目の前に広がるグロテスクな光景、そしてオークを斬りながら笑っているレオンにも恐怖し狐娘は気を失った。
 その直後、レオンは周囲のオークをすべて斬り殺し終えた。
『あの、少しやり過ぎじゃ……』
「うっせーよ。向こうが向かってきたんだし、大体この娘だって助けただろうが」
『それはそうだけど』
「まだこの筋肉どもの気配がしやがる……へへ、いいねぇ」
 レオンは自分の中の主人格と話す最中も、村中のオークの気配を感じて楽しそうに笑みを浮かべる。
 気絶している狐の娘を民家の家に中に置き、レオンは大剣を担ぎながらオークが一番いると思われる村の入り口に向かって走り出した。


129:暁狐
07/06/12 19:43:27 JyQYu0fh

「しつこいんだからもうっ!」
 村の入り口では、ウィンが一人オークと戦っていた。
 その手には短弓を持っており、彼女に襲い掛かるオークの何体かは肩や胸に矢が刺さっている。
 だが致命傷まではいかず、ウィンはやや手こずっていた。
 ウィンは少しずつ後退る。だが、彼女の体が大きな影に覆われた。
 背後にオークがいた。前方のオークに気を取られ、別の場所から入ったオークに気づかなかった。
 オークの巨大な拳がウィンに襲い掛かる。
 ウィンは弓で防ぐが、防ぎきれるわけもなく弓は粉々に折れ、ウィンはその場に倒れこんでしまった。
 起き上がろうとするが、既にオークに囲まれ逃げることもできない。
 ウィンは綺麗な女の子、オークにとっては格好の獲物だった。
 オークの群れの、無数の手が彼女に伸びる。ウィンはジャケットから何かを取り出そうとした。
 だが、その前にオークの群れは血を噴出し何体かに斬り分けられその場に倒れた。
「おい、大丈夫かよ?」
「あ、あんた」
 オークを倒し、自分を見下ろしている男にウィンは驚いた。 
 それは先ほどまで自分にやられてもがいていたひ弱そうな青年、レオン。
 だがすぐに何かが違うことに気づいた。少し鋭くなった目、黒くなっている髪の毛、真紅の瞳、そしてオークの血が付いた黒い大剣。
 そして何より、戦いを楽しんでいそうな笑みにウィンは恐怖さえも覚えた。
「こ、こんなとこで何やってるのよ? 大人しくするよう言ったでしょ?」
「ふん、やられてたくせによく言うぜ。俺が来なきゃどうなっていたのかなぁ?」
「う……た、助けてくれたのはありがと……だけどもう帰りなさい、これはあたしの仕事なんだから」
「やなこった。こんな楽しいのに帰れるかよ」
 ウィンの言葉にも全く聞く耳持たずで口答え。
 目の前のこいつは自分に似ていると思いつつ、ウィンは周囲のオークの気配を感じた。それは無論レオンも感じていた。
「ヴゥ……ウウウ」
「オンナ、オンナ……サラウ」
 村はほぼ一直線なので村の入り口、そして背後からもオークは二人に向かってくる。
 レオンとウィンはお互い背を向けあいながら、オーク達に対し迎撃体制をとった。
「おいウィン、武器も壊れたんだし、てめーこそさっさと帰れ」
「冗談じゃないわよ、あんたの方が活躍しちゃったら報酬貰えなくなっちゃうかもしれないじゃないの」
「へっ、女が無理してんじゃねぇよ。あの筋肉ヤラれちまうぜぇ?」
「余計なお世話よ。大体、武器が無いなんて誰が言いました?」
 ウィンが使用していた弓は既にボロボロで使用不可能。
 だがウィン自身は何の危機感も持っていないことに、レオンは疑問に思う。
 それに答えるかのように、ウィンは先ほど手に持った何かを取り出した。
 それを横目で見て、レオンは少し驚いた。

130:暁狐
07/06/12 19:44:13 JyQYu0fh
「おい、ありゃあ……」
『魔装具?』
 それは、やや形状が異なるがレオンが持っているガジェットに似ている物質だった。
 黒く十字架のような形に、中央に埋め込まれている紫の宝石が怪しく光っていた。
「頼むわねリウ」
『うん、頑張るねお姉ちゃん』
 それはウィンの言葉に反応し喋った。この時点でレオンはあれが同じガジェットという事を確信した。
 そして、ガジェットが喋った瞬間、それは紫に眩く光り、レオンやオーク達は目を瞑る。
 光が治まると、そこには獣耳と尻尾の色が淡い緑から紫になったウィンがいた。
 ウィンはゆっくり瞳を開けると、瞳の色も紫になっており、手には黒い銃へと変わったガジェットを握っていた。
「こいつ……」
『ウィンも僕達と同じ?』
「オ? ゴオオ?」
 先ほどまでのウィンの雰囲気が、まるで別人になったように変わりオークも戸惑っている。
 そんな中、ウィンは銃口を前方のオーク達に向け口を開いた。
「お仕事だから君達倒すよ?」
「ウウ……グオオオオオオオオ!!」
 少し幼くなった感じウィンの言葉に、オークは答えるかのように雄たけびを上げた。
「答えは聞いてない」
 そしてその叫びにまた答えるかのように、ウィンは引き金を引いた。
 銃口からは普通の弾ではなく、魔力の篭った紫の光がオークに直撃し、そのオークの腹には大きな穴が開きその場に倒れた。
 そしてオークの群れはレオンとウィンに向け一斉に突撃していく。
 レオンはオークの群れに入り斬り倒していき、ウィンは一歩も動かずオーク達をなぎ払っていった。



131:暁狐
07/06/12 19:46:01 JyQYu0fh
 どのくらい経っただろうか、周辺にはオーク達の死体しかなく死臭が鼻を刺激する。
 その死体の山の上で、血まみれのレオンは大剣を担ぎ笑っていた。
「はっはっはっは……オークってのもホント大した事ねえな~! 俺の時代とは大違いだぜ!」
『この死体の山、どうするの?』
「んなもん、あの猫にでもやって貰え」
 主人格のレオンがオークの死体の始末や、村人の反応などを心配するが現表のレオンは気にしない。
 隣のウィンも、そんなレオンを何故か瞳を輝かせて見ていた。
「ん? 何だガキ?」
 そしてその視線にレオンも気づいた。
 ちなみに何故ガキ呼ばわりかというと、現表のウィンの口調が子供っぽいからである。
 ウィンの銃は再び紫に光ると、ガジェットは小さくなり彼女の獣耳と尻尾、瞳の色は元の色に戻り表情も戻っていた。
「何なんだよ?」
「あ、いや……何か照れてるみたい」
「はあ!?」
 いきなり照れてると言われれば、レオンの反応は最もと言える。
 ウィン自身もよく分かっておらず困惑する中、レオンは大剣を地面に突き刺しその場に座り込んだ。
「ったく、まぁいいや。とりあえずこの村にはもうオークはいねーようだな」
「そうね」
『そうなの?』
「「そうなの」」
 レオンはオークが周辺にいないことを感じ、ひとまず休憩といったところ。
 それはウィンにも感じていたが、主人格のレオンには分からない。
 元々戦闘に関しては素人、ウィンのように獣人というわけでもないので魔物独特の気配なども判別できるわけない。
 ウィンはレオンと同時に主人格のレオンにツッコむと、一枚の布を取り出しレオンに差し出した。
「はい、血が付いたままだとみっともないでしょ? 大体あんた何なのよ? どうしてあたしと同じようなもの持ってるわけ?」
「俺はレオンだ、それ以上でもそれ以下でもねえ。そんなに聞きたきゃこいつに聞け」
 ウィンから手渡された白い布は、あっという間に赤く染まり、レオンは言い残すように大剣の赤い宝石を光らせる。
 すると、彼の髪は元の茶髪に戻り瞳の色も戻っていた。
「あの、僕もよく分からないんだ……」
「逃げたわね」
『逃げたんじゃねぇバーカ!』
 とりあえず苦笑するレオンが持っていたガジェットを奪い、ウィンはその場に踏んでおいた。
「レオン、随分と楽しそうだなぁ」
 刹那、彼らの背後から明らかに怒っていらっしゃるブランシュネージュの声。
 レオンの体は竦み、ウィンはさっき犬扱いされたのでジト目で彼女を見下ろした。
「何しに来たのよ?」
「小娘には関係ないだろう? なに、オークの群れの数が少し気になってな、調べに行っていた」
「関係あるじゃないの!!」
 クールなブランシュネージュに、ウィンは口調を荒げて再びガジェットを取り出した。
 それをレオンは必死に止める。このままではウィンが殺されてしまうから。
「なんだ関係あるのか? まぁいい、私のレオンから離れろ小娘」
「その小娘ってのやめなさいよ猫!」
「……一度死んでみるか?」
「あぁ、やめて、やめてください~!」
 しばらく二匹の争いは続いていた。
 ウィンは今にもガジェット発動しブランシュネージュを吹き飛ばそうとし、ブランシュネージュは今にも魔力全開でウィンを吹き飛ばそうとする。
 どちらにしろ村が崩壊する危険性と巻き込まれる危険性があるので、レオンは涙目で二人を止める。
 その彼の表情にウィンは顔を赤くし、ブランシュネージュはクールなまま喧嘩をやめた。
 そして村中のオークの死体と血を、ブランシュネージュはすべて跡形も無く消し去った。
 ブランシュネージュはもうオークがこの村を襲うことが無いと二人に言い、宿に戻り一夜が明けた。

132:暁狐
07/06/12 19:47:03 JyQYu0fh


「え? 虎?」
「あぁ」
 翌朝、事の原因は何なのかとウィンはブランシュネージュに問いただした。
 白いベッドに座っているレオンの膝の上に丸くなっているブランシュネージュは、関係者であるウィンの質問に渋々答えた。
 オークはただ村を襲っていたわけではなく、誰かに操られる感じで行動していたこと。
 それをしていたのは、ブランシュネージュが森の奥深くにある洞窟内で見つけた虎耳の女の子だということ。
 その娘は、魔物を操る特殊な鈴を持っており、それはブランシュネージュが破壊したということ。
 そして、そんな虎娘がオークを操り村人を攫わせていたのは、家族が欲しかった一心で行っていたということ。
 その虎娘は、物心付いたときから一人であり家族が欲しかったから攫わせた、と言っていた事を全てレオンとウィンに話した。
「そうだったんだ……」
「しかし、おかしい点がある」
 さらにブランシュネージュは口を開く。
 確かにオークを操っていたのはその虎の女の子だが、何処でどうやってとその鈴を持っていたのか分からない。
 それを本人に聞いたら、知らないおばさんに貰ったのだと言っていた。
「つまりは、そのおばさんが本当の原因だって事?」
「そうなるな。しかし、これでもう力も失い、あの娘がオークを従えることも無いだろう」
「でも、それって危ないんじゃ……」
 レオンはブランシュネージュを撫でながら問う。
 今までは、その特殊な鈴でオークはある程度制御していたのだろうが、制御が利かなくなり再び村を襲うのではないか、という不安からだった。
 だが、その不安を取り除くように、ブランシュネージュは鼻で笑い二本の尻尾でレオンを軽く叩いた。
「あの森に居たオークならすべて消しておいた。安心しろレオン」
「でもその女の子は」
「私から事情を言った。この村で共に暮らすそうだぞ?」
「そうですか、よかった」
 ホッと息を吐き安心するレオンの顔を、ブランシュネージュは彼の肩に乗り尻尾で軽く撫でている。
 その光景を、頬を膨らませながらウィンは眺めていたが、やがて村人に呼ばれて部屋を後にした。


133:暁狐
07/06/12 19:48:28 JyQYu0fh


「それで、どうして小娘までいるのだ?」
「小娘って言うな!」
 レオンとブランシュネージュ、そして名前をガジェと付けてもらった魔装具は村を後にしていた。
 ただし、ウィンも一緒にだが。
 その状況を不満げに着いて来た本人にブランシュネージュは聞くと、ウィンの声が空に響いた。
「今回の報酬、あんたと山分けになっちゃったのよ!」
「ぼ、僕とですか?」
「あんたも戦ったからね、当然といえば当然よ! ただあたしは納得できない、あたし一人でもできた仕事だしね!」
「それと着いて行く理由と何の関係がある?」
「関係あるわよ化け猫!」
 ブランシュネージュとウィンが再びにらみ合った。レオンは涙目になり体を震わす。
 ウィンが傭兵の契約を解除し、報酬を貰う際に何故かレオンと半々となってしまった。
 村人が言うには、レオンとウィンは同じくらい戦ってくれた、という事だが彼女は納得できるはずも無い。
 だからウィンは、本来貰うはずだった報酬の半分を持っているレオンに着いて行く事にしたのだ。
 そもそもウィンは養っている家族の下にこの金を送り届けなければならない。
 その道中、危険なこともあるだろう。レオンはウィンにとっては護衛代わりでもあるのだ。
「あんた……というか、あんたのガジェットがでしゃばるからいけないんだからね!」
『んだとこら!』
『ずっと一緒だね、お兄ちゃん♪』
『お、お兄ちゃん……?』
 更に言えば、ウィンの銃型ガジェット『リウ』も、強いガジェを気に入ったことも理由の一つである。
 お兄ちゃんという聞きなれない言葉に、ガジェは戸惑いを隠せない様子だった。
「とにかく、あたしの故郷まで着いてきてもらうからね!」
「行き先は私が決めることだ、下僕が決められるわけ無いだろう?」
「いつあんたの下僕になったのよ!」
「着いて行くと言うのならお前も私の下僕だ。嫌ならこの金は有難く貰っていこう」
 完全に足元を見たブランシュネージュの言葉に、ウィンも身を震わせて怒りを抑えながら頷いた。
 まぁ、それは上辺だけだが。
「レオン?」
「どうしたの、ウィン?」
「あんたはあたしより下だからね。ガジェット使わなきゃあたしの方が強いんだから」
「え……あ、うん、そう、だね……」
 そして、ウィンは耳元で囁く様にレオンに伝えた。
 レオンは戸惑いながらも、彼女の言っていることはある意味尤もなので頷くしかない。
 ブランシュネージュにも聞こえていたのだが納得の様子。
 レオンは深いため息を吐いた。
「嫌なの?」
「いえ、とんでもないです」
 どうやら自分はこうなる運命なのだと、レオンは心の中で無理やり納得させた。
 反論すると何かされるので、ウィンにも笑顔を向けて返す。
 そしてウィンがレオンと腕を組み、尚且つ胸に腕を押し当てながら歩き出しレオンは動揺す、ブランシュネージュは魔力を溜め始めた。
「レオンから離れろ、お前は私の下僕だろう?」
「レオンはあたしの下僕でもあるんだから、別にいいでしょ?」
 再びにらみ合う二人。その間でただ汗を流し笑っているしかないレオンがいた。
 ガジェもリウに自分のペースを乱されているあたりレオンと似ているかもしれない。
「あの、二人ともやめてください」
「お前は黙っていろレオン。これは私とこの小娘の問題だ」
「小娘って言うなって言ってるでしょう!?」
「うぅ……」
 この直後、ブランシュネージュとウィンはしばらくレオンを取り合った。
 レオンは嫌な顔もできないのでただ笑っていた。

 まぁ何はともあれ、新しい仲間ウィンと共にレオンの旅は続くのである


―続―

134:暁狐
07/06/12 19:52:09 JyQYu0fh
すいません、長々とすいません。しかもエロないしorz
次は少しエロを書くつもりですので。あと長いので読みたくない人はNGお願いします


ちなみに、この話の世界観はガン○ムでいうターンエー。
つまりは一度現代文明は滅んで一から文明し直してるって感じで書いてます

135:ポン
07/06/12 20:20:53 xO3k70XV
>>134
Gjです

最近四聖獣ネタで尾津一門の久瀬楠木(クゼクスキ)なんて人物を考え付いてしまった。
どうしてくれる暁狐さん

136:名無しさん@ピンキー
07/06/12 21:30:39 F7fHpNRv
>>134
月光蝶GJである!!

137:名無しさん@ピンキー
07/06/12 21:46:36 VtVKVtfs
>>134
GJ!せずにはいられないッ!

138:名無しさん@ピンキー
07/06/12 21:51:35 KBVkhGdB
>111
GJ! テレビゲーム的なファンタジー分じゃなくて童話的でけっこう好みだ
黒成分は俺は大丈夫だったが、だめな人もいるよう。投下前の対応が誠実なので無問題だが
欲を言えばもう少し二人の話を見てみたかった

>123
GJ! しかし恐ろしい速度…落ちる気配がない…まるで速射砲ww
このまとめの中の人泣かせめ!

139:ラノベ脳('A`)
07/06/12 22:19:10 GtD0WjNl
>>134
ちょ、テラモモタロス&テラリュウタロスwwwwww
自分も電王スキーですが、リュウタロス女性化とは…
その発想はありませんでした。しかも萌えるwとにかくGJです。


そしてすいません、SSですがセルフリテイク喰らいまくりで、遅々として進んでませんorz
全く別の新作でいこうかな…('A`)

140:名無しさん@ピンキー
07/06/12 22:24:44 pP5kwqcB
擬人化した狂暴な♂動物が逆レイプされる


ふと頭に浮かんだフレーズ
なんだろう、これ

141:名無しさん@ピンキー
07/06/12 22:25:50 bxWte3KX
>>134
電王分大杉ワロスwwwでも云うべき事は一つ、
 G J ! !

142:名無しさん@ピンキー
07/06/12 23:30:17 2bAIZH5z
>>120
俺はダーク系も好きだぜ!
眩い誓いGとJだ!!


>>134
ちょ、どこからツッコんでいいか分からんw槍と斧のガジェットも出てきそうww

143:名無しさん@ピンキー
07/06/13 00:09:11 +C2+hIPW
ふと思ったんだけど
>>119って獣姦じゃね?

144:名無しさん@ピンキー
07/06/13 00:13:41 OYg2b4Tm
>>140
そういうのもあったな
猫の双子とか猫の双子とか猫の双子とか。

145:暁狐
07/06/13 00:25:44 pOCRStfe
皆さんありがとう。また投下しに来ます

ちなみに書き忘れで
>>124-133はまとめの二又の白魔女の続きとなります。

いや、一応

146:通りすがり
07/06/13 02:18:19 eC+Ldbkx
この盛況振りにここもメジャーになったんだなと思っている俺が通りますよ……
そして気が付いてみれば女王蟻のSSを書いている俺。
……虎姐の話の続きは如何したんだ……orz

>>111
うん、今までにない作風GJです!
自分の文章力の無さを思い知らされる……

>>123
ちょwwww、それ何処の電王!?ww
とにかくGJですBIGBOSS

……他に僕に釣られてみる?の人と、俺の強さにお前が泣いた!の人も出る訳か……

147:ブシドーブレード弐なくまさん
07/06/13 08:22:56 AajIlqOc
風呂の神様、序盤です。
今回は短く収めたいなあ。

148:ブシドーブレード弐なくまさん
07/06/13 08:24:16 AajIlqOc
「来たか…」
村の中心に鎮座する霊石に座り続け三日と三晩を経た四度目の朝、それは訪れた。
湿り気を帯びた烈風が吹き荒び、雷光が天を走り、海を落としたような勢いで雨が降り始める。

『かの声は雷電となりて驚天動地のごとし。
かの爪は天剣となりて大山鳴動せしめん。
御姿過ぎ去りし所には七色の帯を引かんとす。
帯に眼識、耳識、鼻識、舌識、身識、意識、末那識、即ち七識あり。』

俺は気付かぬうち祖父の口伝を口ずさんでいた。
「六道八卦を司る神々の長たる天神、それが龍…全く口伝の通りだ。」
瀬戸に面するこの小さな村は幾度となく龍に襲われた…といっても酒蔵の酒を全て空にされただとか程度の悪戯だが。
酒処で有名な
だが天神たる龍の誇りを穢したという罪は重く、村へ赴き逆賊を討伐せよという龍皇の勅命を受けて俺はここへ来た。

雲を縫って降り立った龍の姿を見るなり俺は腰の太刀に手をかけた。
まさか『五爪の龍』とは思わなんだ。
最高神である龍の中で最も最高位に属し、現人神として顕在するという言い伝えを思い出す。
よりによって初仕事でこんな化け物に当たるとは…死んだかもな、俺。

149:ブシドーブレード弐なくまさん
07/06/13 08:25:43 AajIlqOc
五爪の龍は羽衣を纏った美しい天女のようだった。
だが頭の上、長い漆黒の髪から除く双角と周囲に浮かぶ双対の宝玉、
そして腰から生えた龍鱗に覆われた尾は彼女がまぎれもなく龍だと知らしめる。

「我が名は刀 源士郎の子、刀 正宗。そこにあらせられるは五爪の龍とお見受け致すが。」
「いかにも…我は人の姿を借りし五爪の龍、名を巽(たつみ)と言う。かの有名な刀一族の小僧が何用じゃ?」
俺は刀を抜き、上段に構える。
「かの者、一族の誇りを穢す大逆を為した罪なれば“父皇”陛下の勅により貴公を討ちに参った…。
要はお前を倒しに来たんだよ!」
くそっ!声も握りも震えてやがる…。

「小僧。人の身でありながらそれだけの気勢とは…先が楽しみじゃ。」
「俺は小僧じゃねえ!」
応える代わりにくすりと笑うと彼女はおもむろに羽衣に手をかけた。

150:ブシドーブレード弐なくまさん
07/06/13 08:27:12 AajIlqOc
「なっっっ!?」
慌てて顔を背けた俺の網膜には一糸纏わぬ彼女の裸身がしっかりと焼き付いていた。
「なんだ小僧、女の裸は見たことがないのか?」
「うるさい…っっっ!」
「ふん…初(うい)やつじゃな。どうだ、少しは気が紛れたか?」
え…?
「小僧。呼吸を整え、心を研ぎ澄まし、刃を信じろ。
そのように力んでいては己が力を引き出す事はできぬ。

彼女の言われるがまま大きく深呼吸をしてみると、あれほどまでに高ぶっていた闘争心が消えていき、水鏡のように静まっていった。

俺は心からの感謝を込めて一礼を送り、上段に構えていた刀を納刀する。
「それでよい。龍か人を問わんや、一族の誇りも性別もまた同じ、今この場に必要なのは“刀 正宗”と我の刃のみ。」
この上なく満足そうな笑みを浮かべると、彼女も右手を腰に当てて左手を添えた。
彼女も俺も考える事は同じらしい。神速の抜刀術をもって一撃で決める。
彼女の体に赤く呪詛のような龍鱗が浮き出し、やがて彼女の体を鮮やかに染め出す。
「巽殿と刃を交える事ができ至極光栄…全身全霊を持ってお相手いたす。」
「刀 正宗、その心意気や見事だ。このような者と刃を共にするは武人の本懐なり。」


151:ブシドーブレード弐なくまさん
07/06/13 08:29:49 AajIlqOc
風が凪いでゆく。厚い雲は失せ、夜明け前の空がゆっくりと回る。
心臓の鼓動も、呼吸もなかった。

「「いざ、尋常に勝負…」」
空の果てが燃え上がり、太陽の光が俺たちを差す。

――刹那、俺と彼女は閃光となった。


「…くっ」
俺は折れた刀を手に仰向けに倒れ込む。斬られた胸はそこまで深くないが…たった一撃でここまでの差を思い知らされるとは。
彼女は俺の側まで歩みよると、ふっと微笑んで俺に言った。
「見事な一撃であった…」
龍鱗の紋様が消えて行き、片方の角が音もなく折れる。
満足そうな微笑みを浮かべたまま彼女も気を失って俺の上に倒れてきた。


まさかこれが俺達の馴れ初めになるなんてことは夢にも思わなかった…。

152:ブシドーブレード弐なくまさん
07/06/13 08:40:20 AajIlqOc
てか、全裸ってただの変t(rx


>>111
GJ!うお、めちゃくちゃツボだ…!
少しグロいけど orz

>>134
GJ。俺も下僕にして下さいw


153:名無しさん@ピンキー
07/06/13 13:01:30 U5n1SxBo
>>152
おk、俺も全裸で待ってる

>>111
いいね!GJ!

>>134
何だかソウルガジェットっていう漫画思い出したw

154:名無しさん@ピンキー
07/06/13 19:08:36 +NVnbV18
>>153
てか、全裸ってただの変t(rx

155:瀬錬
07/06/13 21:57:14 zgwTyIuq
多くの感想ありがとうございます。

>>122
>あと少しは萌える表現を入れて欲しかった。

済みません……
「萌え」という表現が最近苦手なので……

でも挑戦と受け止めて、頑張って私なりに「このスレに相応しいであろう萌え」を描いてみました。
良ければご賞味下さい。


156:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 21:59:42 zgwTyIuq
南部大陸に広がる、赤土の赤銅色と森の緑色がまだら状に彩る野山に、二つの人影があった。
「はぁ…… はぁ…… 待ってよ、ベル」
二つの影は、一組の少年と少女だった。
少年は茶色の外套に血色のの髪と身を包み、手に持つ長身細身の金鎚を杖代わりにして、やっとといった感じで歩いていた。その背中には、彼自身を押し潰しそうな程の体積を持つ荷物が背負われている。
少女の方は少年とは正反対に、白色の薄手の法衣に、要所を護る為の部分鎧しか着けていない。荷物らしきモノも一切持っておらず、実に身軽な格好をしていた。
「なんだシルス。もっと早く来いウスノロめ。この調子では日が暮れてしまうではないか」
少年にベルと呼ばれた少女は、本来の行程よりも遅れつつある事にいたくご立腹の様子で、少年をなじった。
ベルにシルスと呼ばれた少年は、一つ溜息を吐いてベルに言う。
「そう思うなら、少しは荷物を分担してくれればいいのに」
「何故に我がそんな事をせねばならんのだ。それは我の下僕となる名誉を与えたお前の使命だぞ」
「名誉と使命、ね……」
「そうだ。このベルディラウスの下僕はお前が最初の一人だ。光栄に思うがいいぞ」


157:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 22:01:26 zgwTyIuq
腰まで届く銀色のロングヘアーから生えた二つの雄々しい角と、法衣の裾から伸びる、金色の鱗を持つ尻尾を誇らしげに示し、ベル―神聖竜ベルディラウスは、彼女の言う所で下僕のシルスにそう言い放った。
―どちらかというと、君を召喚した僕の方がご主人様だと思うんだけど。
シルスはそう思ったが、口には出さなかった。
反論しようものなら、下等竜でさえ七転八倒する彼女の竜尾が即座に飛んでくる。
「さあ! 早く行くぞシルス! 命を弄ぶ錬金術師など、神の名の元に成敗してくれようぞ!」
「その錬金術師だけどさ…… 本気で退治するの?」
「何を言っておる。悪は成敗されるのが世の定めだ!」
「そうじゃなくて…… いや、確かに間違ってないと思うけど」
シルスは溜息を吐いて、懐から数枚の羊皮紙を取り出した。
「塔の邪悪なる錬金術師を討ち取りし者に望みのままの報奨を与える」
羊皮紙の出だしにはそうあった。
強力な合成獣の製造技術を持つという錬金術師の退治。
依頼主は小国の、先日即位したばかりの若い王だ。
この国は先日、この錬金術師の合成獣によって、王と王妃、そして首都の人口の二割を殺されるという災厄に見舞われた。


158:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 22:02:41 zgwTyIuq
―もっとも、それは殺された前王が錬金術師との取引に違反したからの報復であって、悪いのは前王と言えなくもないのだが。
「僕が聞きたいのは、この錬金術師はやり手だから、何か勝算はあるの? って事」
「そんなモノはなくとも行かねばならんのだ。 ……それとも何か? 我の実力が合成獣ごときに及ばぬとでも?」
「そうは思わない、けど」
「ならば大船に乗ったつもりでいるのだシルス。下僕のお前がその様子でいては、主人である我の格好が付かぬ」
「はあ……」

シルスが神聖竜ベルディラウスと出会ったのは一年程前の事だ。
召喚術師の修行の一環として独力のみで召喚を行う事になったシルスは、何処をどう間違ったのかベルディラウスを喚び出してしまった。
その時はご立腹の彼女を何とか宥め空かしてお引き取り願ったのだが、何故か次の独力召喚でも彼女を喚び出してしまった。
それから紆余曲折あって二人は主従の契約を結び、シルスはベルディラウスから「シルスと呼んでやる名誉」と「ベル様と呼べる名誉」を賜った。
それから二人は「下賤の者の世界を見るのも面白い」というベル様のお言葉で、諸国放浪の旅を続け、現在に至る。


159:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 22:05:58 zgwTyIuq

「―はっ!」
ベルが正拳を繰り出し、小鬼―ゴブリンの持っていた盾ごと鎖帷子を貫いた。
情けない悲鳴を上げながら面白いように吹き飛ぶゴブリンを視界の隅に捉えたまま、シルスは杖代わりに使っていた金鎚を本来の目的の為に振り上げた。
重厚な先端部が風を割って振り下ろされ、ゴブリンの兜を直撃する。
痛快な音が響き、ゆっくりとゴブリンが後ろ向きに倒れた。
残ったゴブリンは次々に逃げ出し始め、倒れたゴブリンも仲間に引き摺られながら去っていく。
「……ふう。これで終わりか? 下衆どもめ」
ベルが手甲に包まれた手を鳴らしながら、吐き捨てるように言った。
シルスが、やれやれ、と呟いて、空を見上げる。
陽の光は既に地平線へと沈みかけ、穏やかな朱色の光が辺りには広がっていた。
「ベル、残念だけれど今日はここまでだよ。キャンプしよう」
「そうだな…… 仕方あるまい」
悔しそうな表情をして塔のある方向を睨み付けるベルの傍らで、シルスは背中の荷物を下ろした。
魔の者を寄せ付けない魔法のテントに、二人分の食料と料理道具など、キャンプ用の道具が次々と下ろされる。
「今日の夕餉はなんだ?」
「ティスディスの肉が安かったから、そのマルディ風と、ベロワのサラダ」
「そうか。アレは美味だったな」


160:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 22:07:09 zgwTyIuq

「まあ、得意料理になったからね」
シルスは手際よく準備を進め、ものの数分で料理を開始。
その間、ベルはじっとシルスの横顔を見つめていた。


「―うむ、美味だった」
「お粗末様」
数十分後に出来上がった料理をたった数分で残さず平らげ、ベルは満足げに感想を述べた。
シルスはベルと自分の食器を手際よく片付け、テントに―
「待て」
「―ぐえっ!」
―入ろうとした瞬間、ベルの竜尾がシルスの首に巻き付いた。
「げふっ、けふ……! なんだよ、突然!」
瞬間的に凄まじい力を首に加えられたシルスは猛烈に咳き込み、涙目になりながら振り返った。
眼前にはベルの、いつにない真剣な顔。それが不意に質の悪い笑みに変わり―
「食後の軽い運動がしたくなった。付き合え」
―瞬間、シルスは身体が宙に浮き、落下する感覚を得た。
足払いを掛けられたと分かったのは、地面に身体が叩き付けられる直前だった。
「痛っ……! げふっ!」
次いで、胸元に掛かるそれなりの重量。
「な、なんなんだよいった―ぃっ!?」


161:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 22:08:43 zgwTyIuq


シルスが痛みから目を開けると、法衣に包まれたベルのあそこが眼前にあって、しかもベルはその部分の法衣を自ら摘み上げようとしていた。
「どうした? ん?」
「ど、どうした、って……! 何してるんだよ!」
「食後の運動だと言っているだろう。あと、生意気な口を利くな。どのみちお前に拒否権はない」
言うが早いが、ベルは法衣を摘み上げた。
咄嗟にシルスは目を閉じたが―
「―こら、拒否権はないと言っているだろう」
「ぐっ!」
途端、シルスの首に巻き付いている竜尾の力が増し、たまらずシルスは目を見開いた。
「わ、わわ……!」
シルスの眼前には、ベルの秘めやかな果実があった。
ベルの呼吸に合わせ、僅かにその熟れた中身を覗かせている。
「初めて見るモノではないだろう。いい加減慣れろ」
「だ、だって……!」
「黙れ。気が散る」
ベルのやや怒気を孕んだ声に、シルスは無理矢理口を閉じた。
ベルはそれを確認して満足げに頷くと、おもむろに指を自分の露わな秘所に添え―
「目を閉じたら締め上げるからな。覚悟しろ」
そう、邪気を含んだ声で言った。


162:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 22:09:36 zgwTyIuq


「んっ……! は、ぁ……」
ベルの指が、緩急を付けながら自らの秘所を探る。
「あ、は……! っ、あっ!」
ややぎこちなく、震えながら蠢く指は、いつの間にか二つにその数を増やし…… 突起を摘み上げ、尿道口をくすぐり、愛液でぬかるんだ襞を開く。
「んんっ…… は、ああっ」
「ベ、ベル……」
「ふふっ、目を…… 閉じるなよ」
劣情に満ちた顔でそう言い、ベルは秘所をまさぐる指を三本に増やした。
二本の指で秘所を割り開き、残った一本を胎へと侵入させる。
「ああっ…… 見えるかシルス…… 我の中が……」
「う、うん……」
シルスが顔を真っ赤にしながら答えると、ベルは淫蕩な声色で、
「今…… 此処にお前のモノが入っているのを想って、触れておる……」
「あ、う……」
「お前の、あの逞しいモノがこの中に…… っ、分かるか、我の気持ちが……?」
ベルは小さく震え、熱を帯びた吐息を吐くと、胎に入れる指を二本に増やした。
重い水音がシルスの眼前から響き、発情した「雌」特有の匂いが嗅覚を麻痺させる。
「ふふ……」
そう淫靡に笑うと、ベルはまた不意に震え、次いで小さく痙攣した。
軽くイったのだろう。


163:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 22:10:37 zgwTyIuq


ベルは小さく身動ぎすると、ゆっくりと胎から二本の指を引き抜いた。
愛液が糸を引いて指にまとわりつく。そのまま、彼女は自身の口にその指を含んだ。
己の愛液を余さず舐め取った後―
「―んっ!?」
―素早く上体を倒し、シルスの唇を奪った。
小さい水音―唾液を交換するが互いの脳内に響き合う。
ややあってベルはシルスを解放し、問うた。
「どうだ……? 美味だったろう……?」
「う……」
あまりの緊張と羞恥に何も言えないシルスを見て、どこか満足げにベルは笑い、
「寒くなってきたな。お互いに暖め合うとするか」
―そう宣った。
両手をシルスの胸板に置いたまま、ベルは竜尾をシルスの首から解いた。
シルスが安堵の息を吐く間もなく、今度は下半身で痛いほどに張り詰めている怒張を、鱗の硬い感触が撫で上げた。
「こんなに硬くしおってからに…… 我の痴態にそれほど興奮したか」
「う、うん……」
「この痴れ者め。我は竜ぞ…… 獣姦を肯定するとは、変態もいいところだ」
ベルはそうシルスをなじりながら、竜尾で器用に彼の肉棒を露出させた。
シルスの外套の中、華奢な肉体からは想像出来ないほどの肉の凶器だった。


164:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 22:12:20 zgwTyIuq


先走りに濡れる凶悪な肉棒と、淫らな自慰によって愛液に塗れた秘所が触れた時に響いた、唾を飲み込む音は果たしてどちらのモノだったのか。
「では…… 頂くぞ」
強い粘性のある水音と共に、シルスの肉棒がベルの胎内に消えた。
「……あ、っっ!」
「あ、あああっ!」
どちらのモノとも知れぬ嬌声が、夕暮れの大地に木霊する。
しばし荒い獣のような吐息が交わされ、不意にどちらともなく動き出した。
「あ、あっ、あッ、シルスっ……!」
「っ、くっ、ぐっ、ベルっ…… ベルっ……!」
二人の動きは徐々に加速し、互いを呼ぶ声も止まる事を知らない。
「ベルっ、ベルっ……!」
「っ……! この、竜に欲情する痴れ者めっ……!」
「ベルっ……!」
「っ、あああっ!」
一際大きくベルが嬌声を上げ、シルスの肉棒を強烈に締め上げた。
途端、男が精を吐き出す脈動の音が響き、ベルの顔が弛む。
「あぁ…… 出ておるぞ。卑しき人間であるお前の精が、高貴なる竜である我の胎に……」
愛おしむように両手を自らの下腹に当て、ベルはそう言った。


165:ベルディラウスの名の元に
07/06/13 22:13:23 zgwTyIuq


―空の白む翌朝、シルスはテントや放りっ放しの料理道具を片付けていた。
勿論、単独でである。
「よし、準備出来た」
「ではいざ行かん!」
高らかにベルは宣言し、重い荷物を背負うシルスを気にせずに、その前を征く。
そんな彼女の華奢な背中を見て、シルスは微笑を浮かべた。


166:瀬錬
07/06/13 22:15:56 zgwTyIuq
以上です。
板汚し失礼致しました。

また、最初の三つほど、最初に改行を入れ忘れ、板が見苦しくなった事をここで御詫び致します。


167:名無しさん@ピンキー
07/06/13 22:39:12 9rCNgkBd
別に見苦しくなっていないが?
GJだぜ?

168:名無しさん@ピンキー
07/06/14 09:14:23 Ilg9XFep
>>166
もっと罵ってくださいw
GJ!こないだの狼娘と同じ世界感ですな。あの子の主人は錬金術師だったのか。
なんだかエロよりストーリーが楽しみで仕方がないです。
wktkしながら続き待ってます!

>>152
渋い…これなんてるろうに剣心?

169:名無しさん@ピンキー
07/06/14 17:33:50 cWB0Hv4X
良いスレだよな、ここ。
初代から見てきたけど、停滞するほどに荒れる事もなく、逆レイプされ続けてきた。
全く、良いスレだ。

余談だが、「居合い」と「抜刀術」は全くの別物。
居合いは「刀を抜く以前の精神鍛錬」、つまり兵法であり、その極意は「刀を抜かずに相手を制す」事。
刀は実は非常に脆いので、チャンチャンバラバラやったらすぐに鉄の棒きれになる。
それを防ぐ為、初撃で相手の機先を制し、二撃、三撃と切り結ぶ事無く勝負をつける。
抜刀術は純粋な戦闘技術であり、その極意は「相手が刀を抜く前に倒す」事。
言ってる事は似てるが、抜刀術は初撃に重点を置いている。

170:名無しさん@ピンキー
07/06/14 18:20:14 DP0lvIxS
剣豪乙

171:名無しさん@ピンキー
07/06/14 18:34:54 yGjpZ3pR
つい長いSSを書いていると別の妄想もしてしまう罠

172:名無しさん@ピンキー
07/06/14 18:55:44 6VCRK3Tf
まぁ、刀が脆いというのも場合によりけりなんですけどね。
例えば新刀、新々刀、それに準拠する現代刀は実戦に耐えるレベルではないとか
対して天下五剣の一本である童子斬の試し切りに関する逸話は有名だったりとか

だから何だって話ですが('A`)

173:名無しさん@ピンキー
07/06/14 19:36:16 MoaV1H1t
擬人化した鋭い刀を逆レイプする

174:名無しさん@ピンキー
07/06/14 19:55:46 wt2K/hPv
くまさんの書く風景というか情景は俺のツボに入るということに今更気付いた。

だけど抜くのは、なあ…

175:瀬錬
07/06/14 21:50:17 9fwmQnwv
>>167
そう言って頂けると助かります。ありがとうございました。

>>168
貴重なご感想ありがとうございます。
続きを期待して頂けるのは非常に励みになります。
ただ、このスレで連載を続けると、シルスの男としてのプライドが半永久的にアッー!なのが作者としては不憫に思うばかりですw

スレタイ違いのジャンルってどれぐらいまで混ざっていいのか気になる所です。



176:名無しさん@ピンキー
07/06/14 21:54:44 9Yn9FmjC
前スレ落ちたみたいだな

177:名無しさん@ピンキー
07/06/15 13:31:09 iMuW3ntO
スレ容量いっぱいまで投下されるのはエロパロ板としてほほえましいことだね。

このスレって犬科と猫科はどっちが多いんだろ?

178:名無しさん@ピンキー
07/06/15 18:16:11 eGlmA3s7
犬と猫なら猫だな。
保管庫に入ってない話も含めて

179:名無しさん@ピンキー
07/06/15 19:51:17 QH4/uG+E
このスレって謙遜してる人ほど上手いですよね。


180:名無しさん@ピンキー
07/06/15 20:15:19 QPEFbJry
謙遜してる人ほど上手い……なら、このスレでは俺は下手な方になると思う。

181:名無しさん@ピンキー
07/06/15 20:53:53 1+7nXbwu
>>178
タチなネコが多いのか。

182:瀬錬
07/06/15 21:43:37 IJLYN9Jg
猫の方が多いんですか……
ちなみに私は猫の方が好きです。
黒猫なんか特に。


では少し投下させて頂きます。
「ベルディラウスの名の元に」の続きです。
暫定的に「2」とさせて頂きます。苦手、あるいは嫌いな人はお手数ですがNGにぶっ込んで何事もなく母の会でお願い致します。


183:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 21:45:31 IJLYN9Jg


―なんだ? この感情は。

解せぬ…… 我が? 下賤な人間などに?
あのような、小僧に……?
解せぬ……
有り得ぬ…… 一時の気の迷いだとしても……


神聖竜ベルディラウスは竜の姿で、天界に広がる無限の空を飛びながら、そんな事を考えていた。

『お前にもいつかは良き伴侶が見つかるだろう』

というのはベルディラウスの父の言葉だが、その「伴侶」とは勿論、同じ神聖竜を指す訳であって。
異種族―それも人間など―を伴侶にした神聖竜など、見た事も聞いた事もない。


ややあって、ベルディラウスは空に浮かぶ一つの小島に着陸した。
ベルディラウスの登場に、その場にいた、彼女の数倍の体躯を持つ紅竜や蒼竜が慌てて頭を垂れ、小島の森の奥から出てきた数人の天使が次々と彼女の前で跪いた。
ベルディラウスは、それらの行為を全く意に介する事なく、界の鏡に用がある、出せ―と、そう言い放った。
天使が慌てて、ベルディラウス様ともあろう方が下界に何の御用でしょうか、と聞くと、彼女は大変不機嫌な様子で、我に一天使が意見するというのか、面白い、と言った。


184:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 21:46:29 IJLYN9Jg


天使達は更に慌てて、最初に発言した天使の口を塞いで森の奥に引っ張って行くと、残った天使が彼女を界の鏡の元へと案内した。
界の鏡の元に辿り着いたベルディラウスは、その白銀の爪で鏡の縁に触れた。
途端、鏡の表面に波紋が沸き立ち―下界の、彼女にも何処か分からない、ある場所が映し出された。
鏡の中では、血色の髪を持った少年が、その自室らしき場所で、単独で召喚の準備を整えつつあった。
ベルディラウスは性質の悪い笑みを浮かべ―
天使達が止める間もなく、界の鏡の中にその身を投げ入れた。


かくして―少年は、今度は失敗がないよう三日掛けて再構築した召喚式を再び失敗させ、神聖竜ベルディラウスは、己の気の迷いを正す為に下界へと下った。


解せぬ…… 我が? 下賤な人間などに?
あのような、小僧に……?
解せぬ……
有り得ぬ…… 一時の気の迷いだとしても……


なんという事はない。
これは、人間という下賤な異種族の一人の少年に一目惚れをした、やんごとない高貴な神聖竜の物語―


185:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 21:47:21 IJLYN9Jg



「うーん……」
そんな声を上げながら、血色の髪を持った少年は、眼前の塔を見上げた。
「ベル、やっぱり止めておかない?」
「何をふざけた事を。シルス、お前は命を弄ぶ輩を生かしておいていいと思っているのか?」
少年にベルと呼ばれた、銀の髪を持った少女は、その法衣の裾から伸びる竜尾を鞭のようにしならせながら憤慨して、自身がシルスと呼んだ少年の問いに答えた。
「うーん…… でも、なんだか不安なんだよね」
「戯言を言っていないで、早く行くぞ」
言うが早いが、ベルは重厚な鉄扉に手を掛け―
「ぐっ!」
―瞬間、ベルと扉の間に猛烈な火花が散った。
「ベル!」
「くっ、小賢しい真似を…… 下がっていろ、シルス!」
ベルは数歩下がると、小手に包まれた右手を真っ直ぐ扉に突き出した。
不意に、彼女の銀髪から生えている二つの角の周囲が瞬き―
「―うわっ!」
突如発生した大爆発に、シルスの髪の毛が逆立った。
同時、火花が散る音と共に、こちらに向かって次々と飛来する瓦礫が片っ端から迎撃される。
爆煙が晴れた時には、塔の鉄扉は跡形も無くなっていた。


186:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 21:50:13 IJLYN9Jg



「……なんだ?」
私は足元に緩やかな振動を感じ、まどろみから目覚めた。
「こんなのは普段はなかったね。何かな?」
私の胸元で眠りについていた彼も目を覚まし、黒い羽を器用に使って外套から外に這い出る。
彼は一度羽ばたいて窓枠に乗り、外を覗き込んだ。
ややあって、こちらを振り返る。
「乱暴なお客さんだ。君のご主人様が危ない」
「そうか……」
私はゆっくりと立ち上がって、部屋の扉に手を掛けた。
「ねぇ」
「なんだ?」
彼の視線を感じて振り返ると、黒真珠の瞳が真っ直ぐにこちらを見つめていた。
「何で人間になりたいのか、覚えてるかい?」
「……なりたいから、なりたいんだ。特に理由などない」
「そうか。覚えているならいいんだ」
私は視線を戻し、扉を潜った。
背後で彼の陽気な声が聞こえる。
「行っておいで、彼の為に。そして、他ならぬ君自身の為に―」


「―はっ! ふっ、だあっ!」
痛快な打撃音と共に、次々とスライムが四散し、ゴーレムが爆散していく。
先頭に立って、ひたすらに無双の限りを尽くすベルは、未だかすり傷一つたりとも負ってはいなかった。


187:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 21:51:37 IJLYN9Jg



それは彼女の後ろを着いて行くだけのシルスも同様で、彼もまたかすり傷一つも負っていない。
最初の扉以外には大した罠もなく、二人は早々に三階への階段を登ろうとしていた。
「ふむ…… 妙だな」
「うん、おかしいね……」
聞いた話では、強力な合成獣の製造技術を擁する術師だった筈だ。
だというのに、これまでに二人の前に立ち塞がってきた面子は、各種スライムやゴーレム―即ち、人工無機兵器だ。
合成獣どころか、有機生命体の一体たりとも出ていない。
「最後の切札としているのか、はたまた別の何かか…… 何にせよ、敵はお前を狙ってくる可能性が高い。注意しろ」
「分かった……」
慎重に、それでも早々に足を進め、二人は三階へと登り、最初の部屋の扉を開けた。
「む……?」
その部屋は、今までに通ったどの部屋よりも広かった。
高い天井にぶら下がるシャンデリア以外に物は何一つなく、左右の壁に小さな窓、そして丁度反対側の壁に扉が一つだけある。
そんな、一つの階を丸ごと使った部屋の中央に「それ」はいた。


188:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 21:53:24 IJLYN9Jg



ベルの倍はあろうかという巨躯。全身を覆う銀の体毛に、シルスの腕ほどもある指から生えた長大な爪。
間違いなく、人間と狼の合成獣だ。
「ようやくお出ましか…… 邪なる命よ、在るべき輪廻の輪に還してやろう!」
ベルが毅然と宣言し、相手を睨み付ける。
喋る事も出来るだろうに、相手は何一つ喋る事なく、確かな知性の感じられる動作で戦闘体勢を整えた。

一拍、そして―

「Gruaaaa!」
部屋が振動する程の雄叫びを相手が上げ、それに呼応するようにベルが地を蹴った。
五歩で相手の眼前まで到達したベルは、その勢いを殺さずに右の手甲を叩き込んだ。
命中したのは左腕。
即座に防御に割り込んだその丸太のような腕が、今までに受け止められた事のないベルの一撃を防いでいた。
「―はっ! だっ! く…… はあッ!」
間髪入れずに叩き込まれる連撃。最後の一撃と同時に、ベルは宙を舞って距離を取った。
瞬間、白の巨体が動く。
「―っ!」
半瞬で、着地したばかりのベルにの眼前に到達し、目にも止まらぬ速度で右の爪が叩き込まれた。
これをベルは一瞬遅れて防御。辛うじて一撃を防ぎ―


189:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 21:56:16 IJLYN9Jg



―瞬間、ベルの脇越しに伸びた竜尾が、正確に相手の胸―心臓のある場所―を撃ち抜いた。
鮮血が飛び散り、ベルの法衣に僅かに降り掛かる。
竜尾を引き抜き、ベルが踵を返すと同時、相手は崩れ落ちた。
「ベル、大丈夫!?」
シルスが駆け寄ると、ベルは手を腰に当て、胸を逸らしながら、
「あの程度の事、どうという事はない。心配など無用だ」
そう言って、シルスに歩み寄り―
「……ッ! ベル!」
後ろ―!
そうシルスが言う前に、長大な爪がベルの背後から振るわれた。
命中の寸前で、いち早く反応した竜尾がその一撃を受け止める。僅かに鮮血が散って、金色の鱗の破片が宙を飛んだ。
「く……! 馬鹿な……」
銀の狼は、以前と変わらぬ姿でそこに立っていた。
胸の貫通痕は跡形も無く、ダメージを受けた様子すらない。
「小癪な……!」
再び、竜尾が跳ねる。稲妻もかくやと思われる速度で相手に向けて直進し、瞬時に喉、胸、脇腹を貫いた。
防御する様子すら見せなかった相手は、僅かにたたらを踏んだ程度で、竜尾が引き抜かれる端から凄まじい速度で再生している。
「なんと面妖な…… こうなったら一撃で木っ端微塵にしてくれる!」
ベルは手を突き出し、力を込めて―


190:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 21:57:40 IJLYN9Jg



「―はい、そこまで」
そんな冷静な声が部屋に響いた。
声の主はベルの背後。即ち―
「……っ! シルス!」
ベルが振り向くと、先程の声の主と思しき長身の男―その前にシルスはいた。
ぱっと見て傷はないが、その代わりに二人の女―猫と人の合成獣がシルスの両脇を固め、その首に鋭い爪を押し当てていた。
「う…… ごめん……」
「この…… 阿呆!」
ベルは取り敢えずシルスを罵ると、ゆっくりと長身の男に向き直った。
「月並みな台詞ですが…… 彼の命が大切なら、寝転がって手を後ろに回して頂けませんか。物騒な尻尾も」
「……無駄だぞ。その男は我の単なる下僕に過ぎん」
「下僕かどうかはさておき、無駄という事はないと思うんですが…… 試してみましょうか」
男の合図で、猫人の片方がゆっくりとシルスの首に掛けた指先に力を込める。
ややあって、その爪先から血の珠が浮き出し―
「―止めろッ!」
たまらず叫んだのはベルだった。
怒りを抑え切れぬ表情で、男を睨み付ける。
「では、言う通りにお願い出来ますか?」
「……っ」
だが、ベルは動かない。


191:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 21:58:44 IJLYN9Jg



それを見て、男は少し思案し、
「では…… これではどうでしょう? 二人とも。やってしまいなさい」
「―え?」
そんな声はシルスの物。
二人の猫人は、男の合図でシルスの外套を剥ぎ取った。
そして―
「わ、ちょ、ちょっと!」
片方の猫人が、シルスの前に回り、その頬を舐めくすぐった。
「―っ!」
ベルの怒りが目で見ても分かる程に跳ね上がり、しかし抑えた声色でベルは告げた。
「……その程度がどうしたというのだ」
「いえ、まだまだこれからですが。 ……続けなさい」
男は涼しげな顔でベルの視線を受け流し、猫人に続きを促した。
猫人の行為は更にエスカレートし、シルスの服と肌着を脱がせ、色素の薄い胸板に頬擦りしたり、シルスの手を掴んで自分の豊満な乳房に導いてみたり。
そして遂に、その手がシルスの下半身に伸びた。
「ふふっ…… いいのかな~?」
そこで、シルスの身体を弄っていた猫人が、初めてその口を開いた。
ここ最近、恐らくはシルス本人とベル以外は触れた事のないシルスのズボンの縁を手に、猫人はベルに向かって扇情的な声色で挑発する。
しかし、ベルはまだ動かない。


192:名無しさん@ピンキー
07/06/15 22:03:51 YDVWf7ka
支援

193:ベルディラウスの名の元に:2
07/06/15 22:05:02 IJLYN9Jg



その反応に更に気をよくした猫人は、シルスのズボンを下着ごと一息に引き下ろした。
「わわ、う、うぅ……!」
「わあ、おっきい~!」
半勃ちでも十分な長さと太さを持つシルスのモノに、猫人が歓声を上げる。
猫人は一度、ベルを一瞥して笑い、
「……じゃ、頂きま~す」
そう言って、手にシルスの肉棒を持ち、口を―
「―それ以上シルスに触ってみろ! 貴様、八ツ裂きにしてやるぞッ!」
―遂にベルが吼えた。
猫人は肉棒に唇を着ける寸前で止め、ベルを見た。
男が小さく笑いながら、言う。
「ですから、床に」
「っっ、下衆どもがっ!」
ベルは再び最大限の声量で吼え、ゆっくりと床に伏せた。
手を背中に回し、竜尾を垂れさせると、猫人のもう片方がやって来て、即座に拘束した。
「……さて、肝が冷えましたよ」
男はそう言うと、シルスを見遣って、
「神聖竜ですか。それに貴方を大変好いているようだ。幸せですね、シルス」
「いえ、そんな……」
「誇ってもよい事ですよ。何しろ前例のない事です。 ―ああ、もういいですよ」
男がそう言うと、猫人の二人は即座にシルスに一礼して、乱した衣服を元に戻していく。
「―貴様ら、まさか……」
ベルが額に青筋を立てつつ問うと、男は、ああ、とわざとらしく呟きながら―
「申し遅れました神聖竜様。私はヘイル。シルス君とは旧知の間柄です。シルス君が大変お世話になっております」
―などと挨拶した。


194:瀬錬
07/06/15 22:10:24 IJLYN9Jg
メモ帳の関係上、今回はここまでです。板汚し失礼致しました。
エロ分がかなり少なめですが、次回は多くなる予定なのでご勘弁下さい。

【次回予告キーワード】
猫 竜 3P 拘束


195:名無しさん@ピンキー
07/06/15 23:47:43 41nJNwNK
ちょwwwシルスwwwwww続きwktk!!

196:名無しさん@ピンキー
07/06/15 23:47:59 iMuW3ntO
GJ!一騎打ち!一騎打ち!
展開が予想できないぜ。
そして密かにカラス君が気に入ってる俺。

197:名無しさん@ピンキー
07/06/16 00:10:37 LOSxnbxc
うおおおおっ熱烈に待機!

198:名無しさん@ピンキー
07/06/16 10:22:36 S1DYEiUB
4Pじゃないのか

199:名無しさん@ピンキー
07/06/16 11:21:08 o0EFtuc4
待て!
女体化ヘイル、擬人化カラス、猫人、猫人、狼娘、ベル × シルス
の7Pじゃないのか。


200:名無しさん@ピンキー
07/06/16 12:16:21 5dzQuvBl
みwwなwwぎwwっwwてwwきwwたww

201:瀬錬
07/06/16 18:07:15 CMWMorP6
今回も沢山のご感想ありがとうございます。

エロSS板なのに、ただでさえ硬い文章でその上エロ少ないとか問題外かなーと思ってただけに安心しましたw

個人的にはストーリーありきの絡みなので、エロよりストーリーがメイン(男と女の関係を描く上での必要不可欠なエロ)になってしまう事が多く、いつ叩かれるかと不安なのですが。
皆さんはどうなのでしょうか?


202:SA
07/06/16 18:36:46 UH2sFVZx
凡人の再来です(覚えて下さっている人はいないと思いますが……)
狼娘&虎娘の前編です。今回はエロ無しです。

―Caution!!―
1.暴力的な表現が多々、含まれております
2.血が飛び散ります
3.イタイです
4.SAです

203:SA
07/06/16 18:37:28 UH2sFVZx
「はぁっ、はぁっ……」
「待ちなさい!」
「無駄な抵抗は止めて、素直に止まりなさーい!」
 広大な森の中を一心不乱に走っている少年が一人。そして、その後を追い駆ける二つの影。
 少年の必死な表情から見ると、どうやら彼はその二つの影に追われているようだ。
「仕方ないわね……ルル、あれを!」
「OK!大いなる緑よ、我に力を貸し与えたまえ!緑術、蔓籠の戒(アドモニッシュ・バイン)!」
 ルルと呼ばれた方が何か呪文のようなものを唱えた瞬間、地面に蔓延っていた蔓がうねうねと蠢き始めた。
 そして、物凄い速さで少年を追い駆け、一箇所に集まったかと思うと、そのまま籠のように少年を閉じ込めてしまった。
「……!?」
 突然の超常現象に驚きを隠せずにいる少年。
 そして、ザッ、ザッとまるでいたぶるかのように一歩ずつ、一歩ずつ近付いてくる正体不明の生物に少年は底知れぬ恐怖をも感じていた。
 そもそも、何故、少年がこの少女達に追われることになったのか。それは、数時間前に遡る。
 従姉妹の家に一人で遊びに来た美波 優輝(みなみ ゆうき)は途中で道が分からなくなり、この広大な森で迷ってしまったのだ。
 優輝の従姉妹の家はお世辞にも都会とは言えない田舎の村にあり、その村にはこんな言い伝えがあった。
 あの森は決して踏み込んではならない神聖な場所だ、と―
 その言い伝えを思い出した優輝は出来るだけ早く森から抜け出そうとしたのだが、遅かった。
 優輝は会ってしまったのだ、人ならざるものに。
 一見、人と変わらないのだが、実際は大きな違いがあった。人には存在しないはずの獣耳、尻尾、長い爪、鋭い牙。
 優輝はそれを見てたちまち恐怖し、逃げ出したのだが、途中で見つかってしまい、今に至るというわけだ。
「ふぅ。全く、手こずらせてくれたわね」
「うふふ、つっかまーえた!」
「質問の途中で逃げるなんて酷いじゃない」
「そーだよー!別にあたし達はキミを取って食べようとなんて思ってないのにっ!」
 食べる、という言葉に優輝は更に怯え、ぶるぶると肩を震わせ始めた。
「すっかり怯えちゃってるわね……。とりあえず、それ外してあげたら?」
「ん、そーだねー。緑術、解除!」
 先程まで優輝を閉じ込めていた蔓がその言葉で嘘のようにしゅるしゅると戻っていった。
 今、自分を邪魔するものは何もない。優輝はその隙を狙って逃げ出そうと試みたが、それはいとも簡単に阻まれてしまった。
「おっと、もう逃がさないわよ」
 がっしりと腕を掴まれ、完全に逃げ道を絶たれてしまう。
 これまでかと半ば諦めかけたその時、茂みの中から謎の女性が躍り出た。
 そして、赤い長髪を靡かせながら、ゆっくりと優輝達に近付いていく。
「誰かしら?今、取り込み中なのだけれど」
「それ以上、その人に触れることはこの私が許しません」
「……は?あなた一体、誰なのよ!?見たところ、私達と同じ獣人みたいだけど?」
「ララちゃーん、邪魔者はやっつけちゃおうよー」
「ふっ、そうね。誰だか分からない人に邪魔されるなんて御免だわ!」
 ララとルルが謎の女性に襲い掛かる。
 ララが右から攻撃を仕掛け、ルルが左から攻撃を仕掛ける。つまり、挟み撃ちの形だ。
 しかし、謎の女性はそれをひらり、ひらりとかわしていく。
「ほらほら、避けるだけで精一杯?さっきまでの威勢は何処へ消えたのかしら!?」
「あははっ、よわっちぃ!」
 彼女が故意に反撃をしていないことにララとルルは気付かなかった。
 完全に弱いと決め付け、ただ闇雲に攻撃をし続けている。
 そんなララとルルの攻撃の手が緩むのにそう時間は掛からなかった。

204:SA
07/06/16 18:38:31 UH2sFVZx
「くっ……何なのよ、コイツ!ルル、あれ頼むわよ!」
「ごめーん、力使い過ぎちゃったぁ……」
「そちらから吹っ掛けて来ておいてもう終わりですか?では、今度はこちらが……」
 そう言うと、謎の女性は片手を横にかざした。
 すると、その手に光が集まり始め、やがて、一本の刀が姿を現した。刀身が陽光で反射してキラリと光る。
 その刀身の真っ赤は元々の色なのか、或いは幾多の者を斬り殺し、吸い続けたきた血なのか。
 それを知っている者は当人だけであろう。
「この私に喧嘩を売ったこと、あの世で後悔しなさい」
 謎の女性がその刀を一振りした瞬間、その跡を沿うようにして数多の赤い斬風が現れた。
 そして、それは物凄い速さで次々と二人を斬り刻んでいき、立ち込めた煙が晴れた所には二人の姿はなかった。
 そこにあったのは、ただ、おびただしい量の血と凄まじい攻撃の跡だけであった。
「己が愚行を悔い改めることですね。……さてと」
 謎の女性はくるりと優輝の方を向き、一歩、また一歩と近付いていく。
 返り血を浴びて赤く染まったその姿に優輝はすっかり竦みあがり、歯をガタガタと鳴らして震える。
 そして、何より、その眼が怖かった。その赤い双眸は優輝を射抜いて決して離さない。
 物理的な何かに縛られているわけでもないのに、まるで金縛りに掛かったかのように優輝の身体はピクリとも動かなかった。
 そうこうしている内に既に謎の女性は優輝の目の前に立っていた。
 特に何かをするわけでもなく、ただただ、無表情のまま優輝をじっと見下ろすだけである。
 やがて、少しずつその距離が縮まっていき、遂にその顔が目と鼻の先まで近づいたとき、優輝は気を失った。
「大丈夫……って、あら?気を失っていますね……。仕方ありません、連れて帰りましょう」
 そう言って謎の女性は優輝の膝の裏と背中の部分を持ってひょいと持ち上げる(いわゆる、お姫様抱っこ)と、そのまま茂みの中へと姿を消した。



 周りに広がるのはただ一面の白。白以外、何も無い、白だけの世界。
(ここは何処だろう……?確か僕は……)
 やがて景色が変わり、そこは森となった。そこに二人の少女と刀を持った一人の赤髪の女性が現れる。
 赤髪の女性は二人の少女を斬り殺し、辺りはたちまち血の海となった。いや、正確には血の森と言うべきであろうか。
 優輝はその光景を見て、思い出した。見るに堪えないおぞましい惨劇を。
 赤髪の女性が血の滴り落ちた刀を引き摺って、今度は優輝にゆっくりと近づいていく。
 そして、目の前まで来ると、にっこりと微笑みながら刀身をぺろりと一舐めし、そして―
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 ガバッと飛び起きる優輝。その額には嫌な汗が滲んでいる。
「ゆ、め……?」
 確かに目の前で行なわれていたあの光景は果たして本当に全て夢だったのだろうか。
 夢にしてはやけに現実性があり過ぎたが、よくよく考えてみれば、人殺しなんて有り得るわけがない。第一、今こうして温かいベッドの中にいる。
(そうだ、森に迷いこんだこと自体が夢だったんだ。少し疲れて、従姉妹の家で眠っていただけなんだ……)
「そ、そうだよ、全部夢だったんだ……」
 優輝はそう信じた。いや、信じたかった。
 だが、それは夢などではなく全て現実に起こったことなのだと知らされる時が近付いていることに優輝は気付かなかった。

205:SA
07/06/16 18:40:23 UH2sFVZx
 ドアノブがガチャリと回され、ゆっくりとドアが開く。
 そこにいたのは優輝の従姉妹、ではなく先程の赤髪の女性だった。
「……!?」
「あら、目が覚めましたか」
 にっこりと微笑みながら、優輝に近付いていく赤髪の女性。
「ひっ……!」
「あぁ、これが怖いんですね」
 手にしていた刀を宙にかざし、愛おしそうに眺める。
「綺麗な刀でしょう?この刀は一体、どれくらいの血を吸い続けてきたのでしょうか?何千、何万?或いは……。あなたはどう思います?」
「ぅっ……」
「綺麗なだけじゃなくて切れ味も凄いんですよ」
 試してみます?と、刀を優輝の首に突き付ける。
「あぁ、お願いだから殺さないで下さいぃ……」
「……くすくす、うふふっ!ちょっと冗談が過ぎましたか?」
「え……?」
「うふふっ、わたくしはあなたを殺すつもりは毛頭ありませんよ。あ、私、紅狼(こうろう)と申します。『くれない』に『おおかみ』と書いて紅狼ですね」
 紅狼と名乗った女性の頭には確かに名前の通り狼のような耳が生えている。それに、牙も鋭いし、爪もかなり長い。
 先程、優輝を追い掛け回していた少女達と同じ獣人であろう。
「それにしても、どうしてこの森に?」
「あの、知り合いの家に行く途中に道に迷ってそれで……」
「なるほど。それでは、故意にというわけではないのですね?」
「はい……」
 紅狼の表情が急に険しくなる。
「ここは神聖な森です。普通ならば、軽々しく足を踏み入れて良い場所ではないのですが……」
「あぁ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ……!」
「……あなたは可愛いから今回は見逃してあげましょうか」
「へっ……?」
「あら。それとも、この刀の錆になりたいですか?」
「い、いえいえ!ありがとうございます……!」
「うふふっ」
 優輝はこの時、初めて心の底から安心することができた。
 もし、あのまま紅狼に助けられていなければ、今頃は……。
「あっ!あの、危ないところを助けて頂いてありがとうございました!」
「いえいえ。私も良い憂さ晴らしになりましたから」
 にっこりと笑う紅狼の顔を見て先程の光景がフラッシュバックし、軽く鳥肌をたてる優輝。
「そ、それにしても、紅狼さん強いんですね!あの二人はちょっと可哀相でしたけど……」
「この私に反抗的な態度を取ったのがいけないんですよ。それに、あの時は丁度、機嫌が悪かったですから」
 この人は絶対に怒らせないでおこうと優輝は堅く心に誓った。
 怒らせてしまったら、きっと半殺しは免れないであろう。機嫌が悪ければ、血祭り確定だ。
「この森には色々な獣人がいます。神聖と言っても野生は野生ですからね。物凄く凶暴な獣人もいますから、外に出る時は必ずわたくしに声を掛けて下さいね」
「はい、分かりました」
「まだお疲れみたいですから、もう少し休んでみてはどうですか?それに、もうすぐ暗くなる頃ですし」
「えっと、じゃあ、お言葉に甘えて……」
「あ、まだ名前を聞いていませんでしたね」
「あっ、美波 優輝です。優輝って呼んで下さい」
「では、優輝君。私は近くにいますから、何かあれば声を掛けて下さい」
 そう言い残して、紅狼は外へ出て行った。
 やっと落ち着いた優輝は家の中を見回してみる。
 森の中に建っていることだけあって、家の中のほとんどが木で造られているようだ。
 これ程の物を全て一人で造るとなると、相当の時間と労力が必要であっただろう。
「紅狼さんって凄いなぁ……」
 優輝も思わずそう零してしまう。まぁ、実際は獣人にとって家一つ建てることぐらい容易いことなのだが。
 そんなことを考えていると、優輝は強烈な睡魔が自身を襲うのを感じた。
「眠くなってきちゃった……。もう少しだけ寝よう……」
 そして、そのまま優輝は夢の世界へと落ちて行った。

206:SA
07/06/16 18:42:18 UH2sFVZx
「ん……」
 優輝が目を覚ましたのは辺りがすっかり明るくなってからのこと。
 部屋にはトントンと何かを刻む音が響き渡っている。
 あまり慣れていない森の中に長い時間いたことですっかり時間の感覚が欠乏してしまった優輝はとりあえずベッドから起きて、
その音がする奥の方へと歩み寄り、そっと覗き込んだ。すると、そこには料理をしている紅狼の姿があった。
 木製のテーブルの上にはまだ作り途中ではあるが、二人分の食事が用意してある。
「あら、目が覚めましたか。おはようございます」
「おはようございます」
 優輝の姿に気付いたのか、振り返って挨拶をする紅狼。優輝もそれを返す。実に爽やかな朝だ。
「もうすぐ朝食が出来上がりますから、それまで顔でも洗って待ってて下さい」
「はい、分かりました」
 紅狼に言われた通り、顔を洗いに行く。だが、ここは森の中だから、当然、水道などない。優輝は外にあった井戸を使って顔を洗った。
 優輝はふと辺りを見回した。周りには木しかないが、何処と無く癒される感じがした。木々の独特な香りや柔らかい木漏れ日、静かな森に響き渡る小鳥のさえずり。
 追い駆けられていた時は気付きもしなかったが、そこはとても美しかった。
「これが神聖って呼ばれてる理由なのかな……」
 そんなことをぶつぶつと呟きながら家に戻ると、既に朝食の準備が完了していた。
 木製のテーブルの上にはご飯、味噌汁、焼き魚、卵焼き、海苔といった至って一般的な朝食が二人分、並べられている。
「さてと、頂きましょうか」
「はい。いただきます」
 静かな食卓に時折、木製の食器同士がぶつかり合う音が響く。
「食事まで用意してもらって、本当に申し訳ないです……」
「いえいえ、これくらい簡単なことですから。味の方は如何ですか?」
「はい、とても美味しいです!」
「うふふっ、それは良かったです」
 それは、お世辞などではなく心の底からそう思って出た言葉である。
 何でもこなしていく紅狼のことを、優輝はただただ尊敬するばかりであった。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末様でした」
「あっ、食器は僕が洗って来ますね。紅狼さんには迷惑ばっかり掛けてますから……」
「そうですか?では、お言葉に甘えて」
 二人分の食器を持って行き、せっせと洗っていく優輝であったが、自分の胸元を見て重大なことに気付いた。
「あれ、無い……!?」
 自分が着ている服のポケットというポケットを探すが、見つからない。優輝は大慌てで家の中に戻った。
「こ、紅狼さぁん!」
「そんなに慌ててどうしたんですか?」
「ぼ、僕が気を失った所でペンダントを拾いませんでしたか!?」
「ペンダント?いえ、見かけていませんけど……」
「あぅ、どうしよう……!」
 今にも泣き出しそうな顔の優輝。紅狼がそれを見て可愛いとか思っていることは内緒である。
「大切な物なんですか?」
「はい……。僕の死んじゃった父さんの形見で、命と同じくらい……いえ、命よりも大切な物なんです!」
「形見……ですか。それは、大変ですね」
「僕、探して来ます!」
 出て行こうとする優輝を紅狼は少し強めの口調で制した。
「待ちなさい。私が優輝君に話したこと、もう忘れたんですか?」
「でもっ……!」
「私も一緒に行きましょう。一人では危険です」
「い、いいんですか……?」
「優輝君こそ、凶暴な獣人に襲われても良いんですか?」
 良いんですか、の部分を強調的に言う紅狼。それを聞いた優輝の顔はたちまち青ざめていく。
「ぅ……。お、お願いします!」
「それに……」
「え?」
「いえ、何でもありません。急ぎましょう」
「はいっ!」
 紅狼はその先は言えなかった。否、言いたくなかったのだ。
 他の獣人に優輝が盗られてしまうのは嫌だ、と。
 何故ならば、この森は……。

207:SA
07/06/16 18:43:22 UH2sFVZx
 急いで駆け出した二人は優輝が気を失った場所辺りに辿り着いた。
「確かこの辺りですね。落ちていませんか?」
「んー、無いです……」
「じゃあ、もう少し奥かもしれませんね」
「そうで……あっ!」
 優輝は少し遠くで何かがキラリと光るのを見逃さなかった。
 それが探している物かどうかは分からないが、今はそんなことを言ってられる状況ではなかった。
 優輝はそのキラリと光った物に近付いて行き、やがて、喜びの声をあげた。
「紅狼さぁん、ありましたぁ!」
「見つかりましたか。良かっ……優輝君、伏せて!」
「?」
 言われた通り伏せると、頭のすぐ上を何かが通り過ぎて行くのを優輝は感じた。
 そして、ぱらぱらと何かか落ちてくる。それは自身の髪の毛であった。
「え……」
 紅狼は物凄い速さで優輝の許へと駆けつけ、彼を自身の後ろに隠した。
「優輝君には申し訳ないですが、無傷で帰るわけにはいかないようですね」
「どういう……」
「おや、誰かと思ったら紅狼ではないか。久しぶりだな」
「やはり、貴女ですか、蒼虎(そうこ)」
 優輝が後ろからそっと覗くと、そこには紅狼に良く似た獣人の女性が立っていた。
 だが、蒼虎と呼ばれた女性は紅狼とは違い、髪の毛は青い長髪。片手には青い刀を持っている。
「何の用ですか」
「そんな冷たい言い方をするな。お前と私の仲ではないか。……お前の後ろにいるそれは何だ?」
 優輝と蒼虎の目が合った瞬間、優輝は自身の力で立てなくなり、その場に身を崩した。
「ひぁっ!」
「優輝君。極力、彼女のことは見ないで下さい。人間ならば、獣気に当てられてたちまち気絶してしまいますから」
「わ、わか、わかりまし、た……」
「少し言うのが遅かったかもしれませんね……」
 優輝は既に蒼虎の獣気に当てられてしまったため、意識が飛ばないようにするのがやっとである。
「どうして、この森に人間が、しかも、男がいるのだろうな?これは私の見間違いなのだろうか」
「出来れば、そういうことにして欲しいですね。まぁ、貴女のことですから無理でしょうけど」
「紅狼よ、お前、情にでも駆られたのか?男を嫐り、犯し、食らい続けてきたお前が何故、男を庇っている?」
「……それは過去の話です。もう私は獣としての情は捨て去りました」
「獣の情を捨て去ることなど出来ぬこと、お前が良く知っているであろう?」
「私の決意は獣の情などに負けたりはしません」
「愚かな。お前という者が、あろうことか人間如きにたぶらかされたか。……いいだろう。私が真のお前を呼び起こしてやる」
 そう言うや否や、蒼虎は物凄い速さで紅狼に斬りかかった。それを紅狼は受け止め、弾き返す。
「剣の腕は全く鈍っていないな。寧ろ、上達しているようだ。それでこそ我が宿敵に相応しい」
「お喋りが過ぎると、舌を噛みますよ」
「ふっ、心配は無用だ。用があるのはお前ではないからな」
「しまった……!優輝君、逃げて!」
 そう、最初から蒼虎の狙いは紅狼ではなく、優輝だったのだ。
 紅狼も地面を蹴って優輝の許へと急くが、蒼虎の攻撃を受け止められるかは激しく微妙だ。
 やがて、ドスという鈍い音と共に辺りに血が飛び散った。


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