【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合16at EROPARO
【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合16 - 暇つぶし2ch200:名無しさん@ピンキー
07/06/02 13:32:54 p7y2Q1vC
ここまで典型的なゆとりは久々に見た

201:名無しさん@ピンキー
07/06/02 14:05:02 CebACf5I
ゆとり、自演、(笑)
この辺をNGにするとスッキリする

202:名無しさん@ピンキー
07/06/02 15:55:59 poAIznPg
知っててやったんだろ、荒らしたくて
エロパロに空気嫁ない厨房が来るわけないからな

203:Soft-M ◆hjATC4NMLY
07/06/02 19:50:01 66UVJman
『ゼロの飼い犬』の4回目投下します。
今回は、ちょっと時期が進んで原作では3巻の中盤の頃の話になってます。
3回目までの話は前スレか↓にあります。
URLリンク(wikiwiki.jp)

204:口付けの理由 1/7
07/06/02 19:50:50 66UVJman
 部屋の灯りを消して床につき、夜もふけたころ。
 わたしは寝たふりをしていた瞼を開き、ゆっくり体を起こした。 
 僅かな月の光だけが照らすベッドの上で、隣に聞こえている寝息の方へ目を向ける。
そこには、わたしの使い魔……ヒラガサイトが、幸せそうに眠りこけている姿。
 
「寝てる、よね?」
 少しだけ彼の方に顔を寄せ、小声でつぶやく。サイトは、相変わらず気持ちよさそうな
寝息を立てていた。サイトの眠りが深いのは、ここ数日のことでよく知っている。
 
 とくん、と胸の奥が熱くなる。はやくはやく、と心ではなく体が急かす。
わたしは、サイトの寝顔へそっと顔を寄せると─その唇に口付けた。
 柔らかくて、あったかい。他の物に例えようがない、不思議な感触。
 
「……はぁ……」
 すぐに顔を離す。そして、体を再び寝かせる。唇が熱を持ち、そこから体中に
甘い感覚がじわじわ溶け出す。心地よい気だるさの中で、また目を閉じる。
 
 ふわふわと、体が浮いてるみたいな感じ。とくんとくん、と自分の心臓の鼓動が聞こえる。
 体が熱くなって、ちょっと苦しいくらいなのに、嫌じゃない。
 わたしは薄く目を開けると、今度は寝たままサイトの方に体をよじって、また、キスする。 
 体の中のふわふわがもっと膨らんで、熱くなって、切なくなる。
 どうしたらいいのか……自分がどうしたいのかもわからないまま、またキス。
 
 気持ちいいモヤモヤが溜まってきて、それが開放されなくて辛い状態のまま、
サイトの腕を枕にして、横になる。そうしてるだけで、またキスしたい気分になってくる。
 
 もう、何なのかしら、これ。自分でも嫌なのに、癖になっちゃってる。
 例えるなら─そうね、好きなお菓子をビン詰めで買って、少しだけと思っていくつか食べて、
残りはとっておいて蓋をするんだけど、やっぱりもうちょっとだけ、とまた手が伸びてしまう。
 そんな感覚に似てる。
 
 じゃあ、こいつとのキスはわたしにとって美味しいお菓子と一緒ってこと? 冗談じゃないわ。
 そう思うんだけど、わたしはついまた顔を寄せて、キスしてしまう。頭がとろんとしてくる。
 お菓子よりタチが悪いわ。お菓子と違って無くならないし、お腹が一杯になって
満足することもないんだから。
 
 わたしにこんなクセがついちゃったのは、あの時から。
 アルビオンでの任務の帰り。風竜の上でサイトに抱かれながら、キスされた時から。
 
「なんで、あんなことしたのよ」
 また、したらわかるかな、と思って、もう一度唇を重ねる。当然だけど、わかるはずなかった。
 ただ、わたしの中に熱い何かが膨らんでいくだけ。
 
 以前みたいにマッサージをしてくれたら、たぶんこの気持ちをどうにかしてくれるのに。
 そう思うのだけれど、アルビオンから帰ってきて、わたしを何度も助けてくれたサイトを
ベッドに寝かせてあげるようになったり、食事をまともにしてあげるようになってからは、
なんとなく、マッサージして欲しいって言い出せなくなってしまった。
 
 あのキスのせい? それとも、その前から?
 サイトに体に触れられたり、体を見られたりするのが恥ずかしくなった。
 初めてサイトをベッドに寝かせてあげた晩。サイトがわたしにキスしてきた理由が気になって、
寝ているサイトにキスしてみた。それ以来。こんなことを、毎晩のようにしてしまうようになったのは。
 
 それに……。何だから知らないけど、アルビオンから帰ってきて以来、サイトはわたしに対して
妙に遠慮がちというか、距離を置くようになった。どうしてよ。余計に気になっちゃうじゃない。
 ぜんぶ、こいつのせい。こんな事しちゃうのもこいつのせい。
 そんな風に心の中で八つ当たりしながら、わたしはまた、サイトにキスした。

205:口付けの理由 2/7
07/06/02 19:51:36 66UVJman
 サイトがわたしにキスした理由も気になる。でも、それと同じくらい、気になることがある。
 サイトが、わたしを助けてくれる理由。サイト自身も、何度も死にそうな目に遭っているのに。
 以前キュルケに言われた言葉が蘇る。わたしは、使い魔の主人として足りてないって。
 考えたら、そうなのだ。わたしは、サイトに酷いことばっかりしてる。
 
 サイトは、フーケと戦った時に必死でわたしを助けてくれた。
 ワルドに殺されそうになった時も、救い出してくれた。
 
 どうして? わたし、使い魔にこんなに尽くして貰えるほど、立派な主人だった?
 サイトをぶったり蹴ったり踏んだり鞭で叩いたりした光景が浮かぶ。
 犬呼ばわりして、首輪をつけて引きずり回したことを思い出す。
 ……落ち込んでいるサイトの前で、『ワルドと結婚するわ』って言い放った時の事を考える。
 思い返せば思い返すほど、わたしは使い魔に尽くされるに足る主人じゃないと知ってしまう。
 
 どうしてよ。どうしてわたしを助けてくれるの?
 どうして、勝手に呼び出して故郷に帰れなくしたわたしを恨まないの?
 ―どうして、キスしたの?
 
 サイトに覆い被さるようにして、強く唇を押しつける。わたしの体の中は、
ただ暖かくて気持ちいいだけじゃない、もっと重くて、切ない何かでいっぱいになっていた。
 
 
                      ∞ ∞ ∞
 
 
 気がついたら、俺はふわふわしたよくわからない場所に寝ころんでいた。
 暖かくて、心地よい。ここはどこだっけと思って辺りを見回そうとするが、よく見えない。
 
 これだけ居心地が良いってことは、ここは俺の寝床である藁束の上ではないはず。
 そこまで考えて、思い出した。確か、最近は、ルイズがベッドで寝ることを許可してくれたんだった。
 それまで使っていた藁束はもちろんのこと、日本にいたころのせんべい布団と比較しても
泣けるくらい寝心地の良いルイズのベッドで、ぬくぬくと眠れるようになったのだった。
 
 俺は一回寝たら朝まで起きないタイプだから、目が覚めたってことは、もう朝なのかな。
 だったら、ルイズの朝の支度をしてやらないと。最近はルイズ自身で色々やるようになったとはいえ、
着替えを用意したり洗顔の水を汲んでくるのは俺の仕事だし……。
 寝起きのせいか、ぼやけた頭でそう思ったとき。寝ている俺の体の上に、何かが覆い被さってきた。
 
「ん……何だ? 誰?」
 まだ、よく見えない。どうやら人らしい。いわゆるマウントポジションをとった相手に、聞いてみる。
 
「サイト……」
「ルイズ?」
 俺の耳に入ってきたのは、やや舌っ足らずな可愛らしい声。隣で寝ているはずの、ルイズの声だった。
 俺より先に起きてるなんて、珍しい。それはいいとして、何で俺の上にのし掛かってるんだろう。
「あ、悪い。今起きて準備するから…」
「いいの、起きなくて」
 どいてくれ、と言おうとした所で、ルイズに遮られてしまった。
 
「え、なんで? 今日休みだっけ?」
「サイトは、わたしより、学校の方が気になるの?」
 やっと周囲の様子が見えるようなって、俺の上にいるルイズの顔が目に入った。その端正な顔は、
寂しげな表情を浮かべている。心なしか、その頬が赤く上気しているようにも見える。
 
「気になるも何も、勝手に休んじゃまずいだろ。風邪でもひいたのか?」
「心配してくれるの? じゃあ、確かめて」
 ルイズは上体を倒して、顔を俺の方に近づけてきた。止める間もなく、その額が俺の額に
押しつけられる。まるで、キスしてるみたいな格好で。

206:口付けの理由 3/7
07/06/02 19:52:19 66UVJman
「どう? 熱い?」
「え、あっ、そ、そうだな、熱はない……かな?」
 ルイズの吐息が唇に当たる。鳶色の綺麗な瞳がすぐ目の前にある。ふわふわの桃色の髪が
顔や首筋に当たって、くすぐったいけどいい匂いがする。ルイズの細くて軽い体が、洋服越しとはいえ
俺に密着してる。
 ああ、やわらかい、ちっちゃい、かるい、かわいい。ルイズの人が変わったみたいな行動に、
心臓がばっくんばっくん鳴り響く。
 
「ほんとに? よく確かめて」
 目を閉じて、さらに強く頭を押しつけてくるルイズ。ああ、何だよこれ。ホントに熱でもあるんじゃないの。
 
「ない、ないから! だから起きて学校いかないと! ね?」
「うそ……。だって、こんなに熱いのに」
 必死で主張すると、ルイズは俺の手をとって、その指を……自らの唇へ持って行った。
 
 熱い。最初に感じたのは、ルイズの言葉通りの感触。
次いで、とろけそうな程の柔らかさが指に伝わる。
「ル、ルイズ?」
「あのね、あのね。サイトにキスされてからね、この唇が……ずっと熱いの」
 俺の指を唇に当てながら、ルイズは囁く。熱くて柔らかい唇が
ふるふる震える感触が伝わって、ぞくぞくする。
 
「て、てか、なに? 知ってたの? 起きてたの? 俺がキスしたとき」
 驚愕の新事実。あの時もしルイズが起きてたなら、その場で突き飛ばされて風竜の上から
真っ逆さまだったろうと予想した(まぁ、遅かれ早かれ落とされるわけだが)。なのに、全部知ってたって。
 
「うん、起きてた。気付いてた」
「じゃ、なんで止めなかったの……?」
「……ったから」
 ルイズの答えは、小さすぎて聞こえなかった。
 
「今、なんて言った?」
「……嫌じゃ、なかったから」
 顔を真っ赤にして、はにかみながら、ルイズはそう言った。頭の中が真っ白になる。ナニソレ。嫌じゃない。
キスされても嫌じゃない。キスされてもOK。むしろキスして。普通キスなんて好きな人にしか許さないから、
つまりこれは好きだからキスしても好きずきキス好きスキスキス……。
 
「えっと、それ、どういう……」
 混乱してきたので、ルイズにさらなる説明を求める。すると、ルイズは
ちょっとだけ怒った風な顔をして、唇に当てていた俺の指を、口に含んだ。
「うわっ! あ……!?」
 唇と同じくらい、いや、それ以上? ルイズの口の中は熱かった。
火傷するんじゃないかと思えるくらい。それに、唇と違って、湿った粘膜の中で唾液が絡んでくる。
怪我した時とかに自分で舐めるのとも違う、今までに感じたことがない異質な感覚。
 
「んむっ……ちゅる、ちゅぷっ……ん……」
 熱い口の中で、小さい舌が指を舐め上げる。背筋を電流が駆け上がり、
体が跳ねそうになってしまう。銜えられているのは指一本だけなのに、
まるで体全体をルイズに支配されてしまったように翻弄され、身を震わせていることしかできない。
「ぷはっ……はぁ……」
 しばらくしてから、ルイズはその指を口から放した。唾液に濡れた指が外気に晒され、ただ冷たいと
感じたいう以上の、大きな喪失感が俺を襲う。
 
「……嫌いじゃないの。サイトに触られるのも。触るのも」
 僅かに零れた唾液で口元を光らせながら、ルイズは両手で俺の手を包み込み。
「キスされるのも、するのも。……ううん、嫌いじゃないっていうのは嘘……」
 目を閉じて。
「好きなの」
 そう言って、俺の唇に唇を重ねてきた。今までで一番、熱い感触。体どころか、頭までとかされてしまうほど。
 ルイズの突然の行動を、俺はただ受け入れることしかできなかった。

207:口付けの理由 4/7
07/06/02 19:53:02 66UVJman
「あの、ルイズ、それって……」
 長いキスをして、ようやく唇を離してくれたルイズに言葉をかける。今の言葉は、その、つまり。
”俺のことが好き”って解釈していいってことなんだよな?
 ルイズは、俺の上に乗っかったまま、熱っぽい視線を俺に向けている。
 
 ルイズは答えない。恥ずかしがってるのかもしれないけど、いきなりこんな大胆なことをしてきたのだ。
今更、好きだという一言が言えないはずもあるまい。
 
「ルイズ、お前、俺のこと」
 そう言うと、ルイズは少しだけ目を伏せた。なに、何なのその反応。急に不安になる。
もし、俺のことが好きだって今はっきり言ってくれたら、すぐにでも抱きしめて逆に押し倒してしまうのに。
 
 そこまで聞いても、ルイズは何も言わない。じゃあ何? 今までのは何? 俺が好きだから、
こんなことしてきたんじゃないのか?
 それまで火がついていた衝動が、少しずつ冷えていく。何だろう。
ルイズが俺を好きと言えない理由って、一体何なんだろう。 
 そうして、思い出した。つい先日の、アルビオン遠征での出来事。
その時感じた、屈辱と、無力感と、劣等感と……それに、嫉妬。

「……まさか、まだ、ワルドのこと」
 自分でもあまり言いたくなかったが、つい、口に出して聞いてしまった。ルイズを傷つけるかもしれないのに。
「そんなっ! それは違うの! わたし、ワルドには幼い頃憧れてただけで!」
 取り乱し、必死に否定するルイズ。けれど、今の俺にはその慌て方が怪しく見えてしまった。
 
「ほんとに? もし、アイツが裏切り者じゃなかったら……敵じゃなかったら、あのまま結婚してたんだろ?」
「違うっ! ちがうの! わたし、しなかった! ワルドが敵だってわかる前に、式をやめたの!」
 ルイズはそう言うが、いまいち信用できない。あれだけ信頼してたワルドと式をあげることになって、
急に止めますなんて言い出すだろうか。もし止めたくなったとしても、ドタキャンできる空気じゃない。
 
「そんなこと、口で言われたって、信用できねーよ」
 言ってしまった。自分でも、なぜこんなに酷い台詞が口から出てくるのかわからない。
ルイズが俺を好きと言ってくれないのが、すごく不満で、不安だったからなのかもしれない。
 だから、この言葉は、『証明のかわりに、好きって言ってくれよ』という意味もあったのだけど。
 その言葉を引き金にして、俺をみつめるルイズの目から光る物が溢れ、頬をつたって落ちた。
 
「どうして……?」
 ルイズは、涙を拭こうともしないで、震える弱々しい声で呟く。
「どうしてそんな意地悪言うの……?」
 整った、綺麗な顔が、悲しみに歪む。それを見てようやく、俺がどれだけ残酷な事を
言ってしまったのかを理解した。
 
「あっ、ごごごごめんっ! 言い過ぎた! 俺が悪かった!」
 慌てふためいて、ルイズの肩を抱こうとする。けど、なぜか起きあがることも、手を上げることもできない。
「いいの。わかってる。わたし、サイトにひどいことばっかりしてたもん。意地悪いっぱいしたもん。
だから、サイトを責められないの……わかってるの」
 ルイズは、子供みたいに泣きじゃくり、子供みたいな口調で、俺に弁明する。泣かしたのは俺なのに。
悪いのは、絶対的に俺のはずなのに。
 
「サイト……どうしたらゆるしてくれる? どうしたら、わたしのこと信じてくれるの?」
 俺の顔をのぞき込んだルイズの涙が、頬に落ちる。俺の事なんていい。
俺の方が、この涙を止められる方法を聞きたい。
 
 ルイズは、涙ながらに、何かを決意したようだった。その瞳に、今までになかった光が宿る。
 その顔が俺の耳元に寄せられ、ルイズは内緒話をするように囁いた。
 
「なんでも、してあげる。なんでも、していいよ。…………それで、許してくれる?」

208:口付けの理由 5/7
07/06/02 19:53:45 66UVJman
 ボンっ、と爆発したみたいに、頭の中が沸騰する。な、ななななな、何でもって。なんでもって。
 そのルイズの声には、強い決意が込められていて、嘘だとも冗談だとも思えない。
 そして、言った後、恥ずかしそうに俺の服をぎゅっと握りしめ、顔を合わせるのを避けるために
俺の胸元に顔を押しつけた様子は、『なんでも』が、つまりその、”そういうこと”を想定してる事を示す。
 
 うそ、うそ、うそ、本当に? ホントにいいの? 犬いいの? いやいやいやいや、違う。
 俺はもともとルイズを恨んでなんかいないし、ルイズに悪意があって酷いことを言ったわけじゃない。
だから、ここでルイズが俺に贖罪する必要はなく、この提案は無効。無意味なのです。
 
 でも、ルイズはそうは思ってないですよ? 俺の中の悪魔がそう囁く。彼女は、勇気と覚悟を振り絞って
今の言葉を紡ぎ出したんですよ? 応えてあげるのが誠意ってものなんじゃないのかなぁ?
 
 あー! やめろー! 悪魔がっ、俺の中の暗黒面がっ!!
 俺は必死になって自らの中の誘惑を斬り捨てる。だめだ。だめなんだ。ルイズは可愛い。
可愛いし、綺麗だし、愛しいし、良い匂いするし、良い感触するけど、だからこそ駄目なんだ。
今、俺が彼女にしてあげるべきことは、そんなんじゃない。そんなんじゃないんだよう……。
 
「……じゃ、じゃあ、このお願い、聞いてくれるか?」
 俺は、震えて歯がかちかち鳴り始めたのを必死で止めながら、胸の上のルイズに言う。
 ルイズは、少しだけ顔を上げて俺を見て……口元は俺の胸に埋めながら、恥ずかしげに小首を傾げた。
 ああ、かわいい。俺は馬鹿だ。揃えれば何でも願いが叶えられるボールを集めておいて、
ギャルのパンティーを願ってしまう豚くらい馬鹿だ。
 
「俺は、ルイズが酷いご主人様だなんて思ってないし、ワルドとのことももう何もないって思ってる。
だから、それを信じて……もう、泣くのやめてくれ。な?」
 
 自分でも言っててクサいと思ったけど、本心。ルイズをこのままどうにかしてしまいたいと思うのと
同じくらい強く願ってること。こいつの泣き顔なんて、見たくないから。
 ルイズは、驚いた顔をした。そのまま、少しの間困惑の表情を浮かべ……
それから、照れくさそうに、微笑んだ。
 まだ、一回しか見たことがないルイズの笑み。それだけで、誘惑を振り切った甲斐があったと思えた。
 ああ、良かった。俺は間違ってない。
 
「嬉しい……サイト、やさしい……♪」
 ルイズは、嬉しそうに体をすり寄せ、俺に甘えてきた。その感触に、やっぱり誘惑に負けてた方が
良かったかなぁなんて速攻の前言撤回をしかけたところで、ルイズはまた俺の耳元へ口を寄せた。
 
「あのね、サイト」
「な、なんでしょう?」
「なんでもしてあげるし、していいって言ったの……ひとつだけじゃ、ないのよ?」
 そう言って、また口付けをしてきた。その頬の涙は、もう乾いている。
 
 K.O! カーンカーンカーン!
 
 俺の中で先程の悪魔が高らかに両手を上げてガッツポーズを取る。
腰にはチャンピオンベルトなんて巻いていやがる。
 だめだ。だめ。ルイズずるい。こんなのずるい。よくわかんないけど卑怯。才人、星になります。
今から空に向かいます。地球の青さと宇宙の広大さを知ります。この一歩は人類にとっては
極めてどうでもいい一歩だけれど、俺にとってはとっても大事な一歩です。
 
「ルイズ、ルイズ、ルイズっ!」
「ひゃっ!?」
 たまらなくなって、俺の体の上のルイズを抱きしめる。今まではなぜか腕が上がらなかったのに、
今になったら簡単にできた。細くて軽い体が、俺の手の中にすっぽり収まる。
 こんな可憐な子を。乱暴にしたら壊れてしまいそうな芸術品みたいな少女を。
でも、でも、優しくするから。俺を優しいって言ってくれたルイズを、幻滅させたりなんてしないから……!

209:口付けの理由 6/7
07/06/02 19:54:27 66UVJman
 
 
 
 抱きしめたルイズの体を横に下ろして、今度は俺がルイズに覆い被さる体勢になる。
 気付けば、まだ辺りは暗かった。自分の下にいるルイズの表情も、よくわからない。
 あれ、さっきまでは、普通にルイズの顔も体もよく見えてたのに。何か変だな、と思う。
 けど、その時の俺は、深く考える余裕もないほど興奮してしまっていた。
 
「えっ……なに、どうしたの、サイト?」
 ルイズの慌てた声が聞こえる。さっきまであんなに積極的だったのに。やっぱりいざとなると、
緊張してしまうものなのだろう。
 
「ごめん、なるべく怖がらせないようにするから……」
「何よそれ……ちょっと、やめて!」
 ネグリジェに手をかける俺の下で、ルイズはじたばたと暴れた。ちょっと、あそこまでやっておいて、
ここまで抵抗するのはあんまりじゃないだろうか。それとも、何か俺間違えてる?
 
「おい、あんま動くなよ、やりにくいだろ?」
「嘘、どうして!? やめてよ! こんなのやだっ! やだぁ……!!」
 その言葉の最後で、ルイズはしゃくりあげた。さっき、もう泣かないでくれってお願いを
聞いてもらったばかりなのに。
 
 さすがにおかしい。そう思って手を止めたとき、雲間に隠れていたらしい月が顔を出して、
窓明かりがベッドの上を微かに照らした。
 そこには、当然ながらルイズが横になっていて。困惑に怯える目元からは、
今にも零れそうな涙が光っていた。頬にはまだ涙の跡はなく、”今日初めて溢れそうな涙”が。
 
「あ…………」
 頭をハンマーでガツンと殴られたような衝撃。自分が、何をしようとしていたのか、気付く。
夢。今までのは、夢。俺は勝手な夢を見て、ルイズを抱きそうになって……それで、目を覚まして、
そのまま夢の続きを実行するみたいに、現実のルイズを押し倒した。
 寝ぼけた、なんて言い訳が通用する筈が無い。これは、これは、これは……。
 
「ごめ……!!」
 弾かれるようにルイズから離れ、ベッドから駆け下りる。そして、謝ろうとして、その舌が止まる。
謝って済む問題じゃない。許されるわけない……!
 ルイズは上体を起こし、その細い肩を自ら抱いて、小さく震えていた。顔はこちらを見ているけど、
窓とは逆方向で、その表情がわからない。きっと、俺を軽蔑の目で見ている。
いや、それどころじゃない。恐怖や、憎悪や、絶望の目を向けているのかもしれない。
 
 俺はそのまま、そろそろと後じさって、部屋のドアの近くまで行った。慌てたら、ルイズを
怯えさせてしまうと思ったから。
 ドアノブに手をかけたとき、ルイズが何か言おうと口を開いたのがわかって……。
 
 それを聞く前に、俺はルイズの部屋から飛び出し、廊下を走り抜けた。
 ひょっとしたら、もうここには、帰ってこないのかもしれない、なんて思いながら。

210:口付けの理由 7/7
07/06/02 19:55:10 66UVJman
 
 
                      ∞ ∞ ∞
 
 
 サイトが飛び出していったドアの方を呆然と見つめながら、わたしはベッドの上に座ったままでいた。
 まだ、心臓がばくんばくん言ってる。何が起きたのか、完全には飲み込めていなかった。
 
 最近のクセになってしまった、寝ているサイトへのキスを何度か繰り返して。
今日は、いつもより熱が入っちゃって。ひょっとしたらサイト、起きるかな? なんて思うくらい、
強くキスしちゃってたんだけど。
 
 何度目かわからないキスの途中に、急にサイトはわたしを抱きしめてきて、お互いの位置を
ひっくり返すみたいにわたしを組み敷いてきた。
 
 どくん、とまた心臓が跳ねる。あれって、あれって、もちろん、それよね。
 わたしを、その……どうにかしちゃうつもりだったのよね。
 かあっと頬が熱くなる。前……確か、フリッグの舞踏会の後も、サイトってば寝ているわたしに
のし掛かってきた。その時は、それまで見てた夢のこともあって、怒りだけが爆発したんだけど。
 
 今は、違う。そりゃ、びっくりしたし、怖かったけど……あの時とは、違う。
 だって、だって、急にあんなことしてきたってことは。まさか、わたしが寝ているあいつに
キスしてたことに、気付かれてたってことじゃないの?
 考えてみれば、寝てる時に何度もキスされるなんてことに気付いたら、そりゃ、
なんていうか、許してる、って誤解しても仕方ないわよね。……あくまで誤解だから。誤解なんだから。
 
 まくらを持って、ぎゅっと抱きしめる。気付いてた? わたしが何度もキスしてたことに、気付いてた?
 気付いてて、知らないフリしてたの? わたしの気付かないとこで、ニヤニヤ笑ったりしてたわけ?
 
「あああぁぁぁぁ~~~~~~!」
 
 ごろごろごろごろ。まくらを抱えたまま、ベッドの上をのたうち回る。屈辱だわ。恥ずかしすぎる。
もしそうだったら、死ぬしかない。名誉のためにこの命を絶つしかないわ。
 
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 荒くなった息を整えながら、考える。っていうか、違うわ。今問題なのはそこじゃない。
サイトが、わたしがその、許してるって誤解して、わたしにのし掛かってきたってこと。
 ナメられてるじゃない。そんな誤解、解かないとまずいじゃない。名誉の問題もあるし、
今後あんなことされないためにも必要だわ。
 
 だって、わたしが許すわけないじゃないの。あいつは平民だし、使い魔だし。
それどころかこの世界の人間ですらないし。ヴァリエール公爵家のわたしが許すわけないでしょ。
それくらい常識でわかりなさいよ。
 それに、まぁ有り得ない仮定だけど、もしも身分の差が無かったとしても、サイトなんかに
わたしが許すわけ……。何度も、命をかけてわたしを救ってくれたサイトに……。いざとなると、
結構格好いいわたしの使い魔に……。
 
 …………。
 
 あーもう! 有り得ない仮定の話はどーでもいいの! 考えても無駄!
 と、とにかく。あいつは何だか知らないけど逃げちゃったけど、帰ってきたらこの誤解はちゃんと
解いておかないと。あいつは使い魔で、わたしは主人。そのことはハッキリさせておかないとね。うん。
 
 
 
 この時のわたしは、サイトとの間で大きな気持ちの隔たりがあることにまだ気付いていなかった。
 それから、もうひとつ。サイトに許すわけがないとか、誤解されたら困るとかは考えていたのだけれど、
サイトにああいうことをされたのが”嫌”だとは感じていない自分がいることにも、気付いていなかったのだった。
 
つづく

211:Soft-M ◆hjATC4NMLY
07/06/02 19:56:44 66UVJman
続きます。次回はちょっと趣向が変わってシエスタの話になります。
では。

212:名無しさん@ピンキー
07/06/02 20:04:22 3sMhPH38
せつねーーーーーーーー!!!!!
胸がぎゅ~~ってなるぜ……
超GJ




保管庫でサイトがテファの使い魔重複するヤツを見付けてしまった……
これはやはり自分のをちゃんと書き上げるしかないか……


ところでハルケギニアには塩は問題ないとして、麹はあるんだろうか?

213:名無しさん@ピンキー
07/06/02 20:15:32 heCXHGEn
これはいい純愛。GJなのですよ!

214:名無しさん@ピンキー
07/06/02 20:25:24 p7y2Q1vC
おお、夢オチを有効活用してる。
まさにラブコメ、GJなんだぜ

215:名無しさん@ピンキー
07/06/02 20:38:44 ntEUgTEW
サイトがルイズではなく、テファの使い魔としてハルケギニアに召喚されたという電波を受信して書こうと思うんだが、
ルーンはどうするべきだろうか?

サイトと言ったらガンダールヴって感じもするが、テファの使い魔ならやっぱ最後の使い魔だろうし……
どうすっかなぁ~やっぱ神の巨根しかないか?


216:名無しさん@ピンキー
07/06/02 20:46:27 Sc9ngbiS
>>215
ルーンは胸に出たけど、名前も効果も分からないままってのは?
多分使い魔だと思うけど、あなた人間よね? 変なの…、と
そのほうがラブコメに専念できるし

217:名無しさん@ピンキー
07/06/02 20:55:52 ntEUgTEW
>>216
名前や効果もわからないってのはストーリー的にちょっとなぁ。
テファは森に住んでるから名前は調べようがないで済ませるけど、やっぱなにか効果があったほうがいいと思うわけですよ。
真面目なのなら他の使い魔のルーンの能力を全部使用できるとか、ドロドロのエロ展開にもってくなら洗脳とか

218:名無しさん@ピンキー
07/06/02 21:19:26 rwJNL1qi
>>211 GJ!
サイト、お前は悪くない決して悪くないぞ!
しかし、この話のルイズは悪気がない分タチが悪いなw

219:名無しさん@ピンキー
07/06/02 21:21:33 Ob/cgvzB
いや、マジで神の心臓だと思うぞ。ルーンの出る位置と通り名は一致している。
胸に出る以上、心臓でなけりゃ、神のおっぱいしかない。

220:名無しさん@ピンキー
07/06/02 21:38:44 5tY0/Pbt
>>215
デルフ曰く再契約の時にどっちになるか分からないなら
テファの使い魔でガンダールブでも問題ないんだZE☆

221:名無しさん@ピンキー
07/06/02 22:00:43 N9UgNBIO
>>220
てことはルイズの使い魔だったのに途中からテファの使い魔になっちゃう可能性もありなのか
なんて寝取りフラグだ(*´д`*)

222:名無しさん@ピンキー
07/06/02 23:54:29 TR25WZH0
神の心臓=主人の身代わり

ということを妄想してしまた

223:名無しさん@ピンキー
07/06/03 00:07:08 UJVCZ9Vu
最初はブリミル復活の時の器だと思ったんだけど、それだと当時の使い魔の意味がなくなるから断念した

224:名無しさん@ピンキー
07/06/03 00:31:49 ZTaoQy4g
生死を共にする存在、かなぁ。
ブリミルと愛し合っていたとかね。
うーむ……これもいまいちか…召喚したては初対面だし。
ブリミルの補佐として魔法使えたりして。

心臓の役割ってなんだろねぇ。
なくてはならないものだってのは、わかるけど。

225:名無しさん@ピンキー
07/06/03 00:48:52 6aJlVTDq
>>211
GJ!
いつもながら面白い
読んでて思わず身もだえしてしまったw
続き期待してます

226:名無しさん@ピンキー
07/06/03 00:50:51 uYl41wwq
胸の内ってことで、他人の思考を読み取れるとか

コンパクト!

227:名無しさん@ピンキー
07/06/03 01:11:30 M7S/y9UE
>>211
あなたの書くルイズはいつもかわいい。
次も期待する。

228:名無しさん@ピンキー
07/06/03 01:33:06 PclTS6tA
>>211
うわ
すげーな、なんてすれ違いだ
ノボル仕事しろw

229:名無しさん@ピンキー
07/06/03 03:24:44 4e5aeLRJ
>>211
GJです!!
この3歩進んで2歩下がるような展開がたまんねぇ
次回投下心待ちにしてます

230:名無しさん@ピンキー
07/06/03 07:27:31 OUdq6LT7

 次回 下心 待ち……



231:名無しさん@ピンキー
07/06/03 10:05:11 xErbHetL
これはよいエロルイズ

232:名無しさん@ピンキー
07/06/03 12:23:23 H7sqtw25
あの声優事務所前で枕投げオフ
URLリンク(blog107.fc2.com)
URLリンク(makura528.blog107.fc2.com)
URLリンク(www.nicovideo.jp)


233:名無しさん@ピンキー
07/06/03 14:41:27 v8p3l7eU
ソフトMさんの書く純愛もの
いいね。シエスタに期待

234:名無しさん@ピンキー
07/06/03 21:29:21 uuuFFE58
そういえば戻ってくる宣言しておいてまだ戻ってきてない職人はどうしてるのだろうか?
純愛センターさんとか…

235:名無しさん@ピンキー
07/06/03 22:47:30 K2Rc5gsM
最近になって保管庫を見つけました
これで当分生きれる…

236:名無しさん@ピンキー
07/06/03 22:49:09 GHOgDqZ5
ちょ、おま、>>1もよく見てなかったのかよw
……それとも、全く別の保管庫の話とか?

237:名無しさん@ピンキー
07/06/03 22:56:55 F8O7RbF3
たびたび>>1以外でもリンクは貼られてるのに。
>>203で気付いたとか?

ここでもアリだが保管庫で作者さんにコメントレスつければ
つづき書く励みになるかもしれない。

238:名無しさん@ピンキー
07/06/03 23:18:51 xJaKYpg4
正直、途中で終わってるSSに続きが読みたいのが多すぎる…

それだけ放置の量も多いというわけだが…

ものかきさんしかり、純愛センターさんしかり

239:名無しさん@ピンキー
07/06/03 23:28:52 6XtgcUfZ
ちょっとログ漁ってて気がついた
作者の皆様おつかれさまです!*大量
(正直具体的なコメントできなくてすげーしか言えないもので 毎回おんなじ事言ってもしょうがないのかな?
みたいな感じで最近お礼かいてませんでしたorz)

こ こんな人ってあんまり・・・・いないかw

240:名無しさん@ピンキー
07/06/03 23:29:13 dDoLsfgx
>238
自分は205さんの「その名はイーヴァルディ」の続きが読みたい

241:名無しさん@ピンキー
07/06/04 00:14:51 +ROuJolf
神の心臓どうこうと味噌汁の作者同じだよな?

アレはどうにかならんのかと小一時(ry

242:名無しさん@ピンキー
07/06/04 01:04:13 3WZ2lCcd
ここほど恵まれてるスレも他に無いと思うがな。
ネタかぶりやキャラ偏重もほとんど無いし。

243:名無しさん@ピンキー
07/06/04 03:30:56 J0UlbVCz
二次創作である以上、使えるネタが無限にあるわけじゃないんだから
ある程度のネタ重複くらいなら、そんなに気にならないな。

書き手が他の職人とのネタ被りを気にして書きたいものを書けなくなるより、
書き手の書きたい数だけSSがあったっていいと思うんだ。
(そう言っても、さすがに盗作レベルの重複まで行くとマズイとも思うが)

その最低条件というか書き手として守るべきマナーというか、
書きたいものを書くのはいいが、投下を始めたSSを未完のまま
放置してほしくないってのは当然あるけどな。

244:名無しさん@ピンキー
07/06/04 07:58:18 VuZVh4/Y
>>243
んでも、誰もなにも反応無かったら、放置になんね?

せめて、・・・待ってるくらいは書き込まないと。
一方的に~~~だからマナーがってのも見苦しい。

245:名無しさん@ピンキー
07/06/04 08:07:45 3pTql3a2
てか極端なこと言っちゃうと書き手なんてボランティアなんだから
放置だろうが何だろうが読み手が文句言う筋合ないだろ

246:名無しさん@ピンキー
07/06/04 09:20:04 ThWIN0XY
今書いてくれてる人やSSをさておいて
長期間放置されてる過去のSSの話するのもどうかと思うがな。
何かしら理由があって続きが書けなくなったんだろうものを
書くのが義務だ書かないのは不誠実だみたいに続き希望するのも何か違うと思う

247:名無しさん@ピンキー
07/06/04 10:45:03 +ROuJolf
なら俺は激待ちだということを表明するッ!!>心臓&味噌汁

表明するだけですが


黒シエ&黒タバも気になるし、子供化サイトverタバサだって続きwktk
コルベールとアニエスが中心の話もガン待ちだ!!
すれちがうサイトとルイズの話も続きが知りたい!!


今思い出せなかった作品の作者には失礼かもだけど、待ってるから!!




スーパークレクレだと気付き、頭が痛い

248:名無しさん@ピンキー
07/06/04 11:07:29 2Zsah1/y

それにしてもこの>>247、ノリノリである。



しかしオレもwktkなのさ!
子供サイトのタバサVerなんて想像しただけでハァハァ

249:名無しさん@ピンキー
07/06/04 11:22:58 VuZVh4/Y
俺も待ってる~

上に加えて、イーヴァルティの続きと、
(この職人、以前かきたときに書くうーてたにで、
クレクレ言いにくいが)

かなーりまえだが、裏タバサの職人の予告した百合話
(荒れたらかかねって宣告されてた希ガス)

純愛センターさんの・・・
(異動したぽいカキコあったなぁ・・)



待ってる・・・・
くじけそうになりつつ



250:名無しさん@ピンキー
07/06/04 11:27:29 bCRF+bwm
Wikiの作者別ページのコメント欄に書き込むという手もあるのだぜ
しばらく凍結してるSSにはこっちのほうがいいかも

251:名無しさん@ピンキー
07/06/04 23:21:55 I7JJAu2b
11巻のサイトをカトレアが慰めるシーンはエロゲーだと確実にセクロスシーンにつながる

神様書いて1!!!

252:名無しさん@ピンキー
07/06/05 00:34:38 FkW/XjmS
恐れ多くて汚せない

253:純愛センター
07/06/05 00:50:59 YT0Rn6oc
どうやら自分なんかのSS

254:純愛センター
07/06/05 00:53:09 YT0Rn6oc
投稿ミスった(汗

どうやら自分なんかのSSを楽しみにしていてくれた人がいるみたいで…本当に嬉しいです。

それでは続きが行き詰まってた長編物の続き投下します!

255:名無しさん@ピンキー
07/06/05 00:58:07 YT0Rn6oc
寺院の中はほとんど変わってはいなかった。
夕日に照らされたステンドグラス、荘厳な雰囲気をかもし出している祭壇、そして最奥に二人を歓迎するかのように立つ始祖の像。
だが変わっているものも見つかった。
少しだけ埃を被ったイス、旅人が訪れでもしたのだろうか、ロウが溶けきってしまったロウソク、そして落ちている二つのグラス。
「ここ…」
私はしっかりと覚えている。戦場から味方を逃がす、そのために敵軍に特攻する直前、最後に来た場所。最後にいようとした大切な場所。
なぜ自分はこんなところを最後の場所になどしようとしたのだろうか。
なんのためにこんなところに来たのだろうか。
わからないその理由。わからないからわかる。
ここは私とあの背中の人最後にいた場所なのだと。

寺院奥、祭壇近くまで進む。
「ここはね、私の一番大事な場所なの」
町から連れてきた平民に、ただの気まぐれで声をかけた。
「なんで…一番大事な場所なんだ」
男も寺院の奥にまで歩いてきた。
私は始祖の像を見上げながら質問に答えてやる。
「ここが最後に会った場所だから」
「そんな場所にオレなんかを連れてきてよかったのかよ」
バカ
「あんたは私のことを守るんでしょうが!離れてちゃ意味ないじゃない!」

256:名無しさん@ピンキー
07/06/05 01:00:14 YT0Rn6oc
「そうだな」
後悔が心で渦巻く。
もしあの時に記憶を消していなかったら。
そんな思いを無理やり頭の中から追い出す。
ルイズの記憶を戻したい。でもそれをすればガンダールヴでない自分は必ず死ぬ。また自分が死んでルイズを泣かせるような真似はできないし、もとより自分が決めたことだから。
オレは強くならなきゃならない。ガンダールヴじゃなくてもルイズを守れるくらいに。
わかってる。理解している。
―そんなことは不可能だ―
これまでルイズを守ることができたのは虚無の力、ガンダールヴの力があったからである。
『平賀才斗』なんかになにができよう。どんなに修行しようと、どんなに時間をかけようと不可能は不可能、せいぜいそこいらの兵士一人を相手にするのが精一杯である。
できることと言えば次のルイズを守る者、次のガンダールヴが現れるまで命を賭けてルイズを守ることくらい。
それでも…なにかの拍子で、いつの日かルイズを守ることができる力が手に入るかもしれない…そうして記憶を戻せばまた前みたいに…
そんなくだらない希望、妄想に心が縋りつこうとする。
「お前方向音痴っぽそうだしじゃじゃ馬っぽいし、近くにいてやらないとどこ行くかわかったもんじゃないしな」
「あんですってぇ!?」
「ここに来る時もさんざん迷って迷ってだったしな」
「ああああああやって来るのが一番の近道だったのよ!」
怒ってる。
「へいへい、わかりやしたよ貴族様」
「なんか感じ悪いわねぇ」
むくれてる。
やっぱ無理。
「ちょ!!!ああああああああんたなにすんのよ!!!」
気づいたら腕の中にルイズがいた。


257:名無しさん@ピンキー
07/06/05 01:04:58 YT0Rn6oc
「悪い…悪い…」
耐えられるわけがない…我慢など出来ようはずがない。
半年。半年一緒にいて、寝て、食べて、歩いて、生きた好きな人がそこにいるんだ。そこからいなくなっちゃうかもしれないんだ。いらないと言われるかもしれないんだ。
会った瞬間は我慢したんだ。二人っきりになっても我慢したんだ。
だから、許されないかもしれないけど。
でも…それでも…
「今だけ、もうしないしお前にも半径十メートル以内には近づかない!雑用だろうが奴隷だろうが犬だろうがなんだってするから…」
気づいたら泣いていた。
「許してくれ…」
その懇願はどこに向けたものなのだろうか。
今自分を抱きしめていること?
それとも全く違うこと?
男は滝のように涙を流し自分を抱きしめる。
不思議と嫌悪感はなかった。平民にだきしめられているのに、男のだれにも抱きしめられたことなんてなかったのに。
さらには心地良さまで感じてしまう。安心感という名の。
だから
「うん、許したげるわ」
男の肩がビクンと震えたが気にせず続ける。
「その変わり!あんたはこれから一生私を守りなさい!わかった!?」
男は驚いた顔をして
「オレで…いいのか?」
とかきいてきた。
聞かれてからなぜかのすごく恥ずかしくなってきた。
一生ってなんかプロポーズみたいじゃない!!ダメダメ!!ダメなんだから!
貴族が平民なんかと結婚できるわけがないんだから!!
「べべべべ別にあんた以外のやつでもいいんだけど探すの面倒だし、高貴な物のなかに一つくらいは汚い物があったっていいじゃない!」
「ルイズ…」
「そそそそそれに家に一匹くらいペットがいたっていいじゃない!よかったわねぇ、私がまだペットを飼ってなくって」
「ルイズ!」
男の顔には涙の跡など微塵もない。あるのは…
「オレ、守るから…」
揺るぎのない覚悟だけ。
「お前を一生…命を賭けて」



そうして数分、二人の間に会話が生まれなかった。


瞬間


その静寂を破る者が現れた。
「あら、もう茶番は終わり?」
冷たい女の声と無数のガーゴイルの群。


258:純愛センター
07/06/05 01:07:15 YT0Rn6oc
とりあえずここまでです。

とりあえず一時間くらいで書いちゃったので文章がおかしいところがあるかもです…

ありましたら脳内保管して頂けると幸いです

ではでは…

259:名無しさん@ピンキー
07/06/05 01:23:02 5XYTErdU
ねんがんの続きが来てたぞ。
恋愛センター氏GJ!
でもこの展開なんか嫌な予感が・・・

260:名無しさん@ピンキー
07/06/05 04:10:43 B9vRONiK
ふっかつキター
GJ!
クライマックスwkwk

261:名無しさん@ピンキー
07/06/05 08:22:01 5puDnwWx
どれの続きですか?

262:名無しさん@ピンキー
07/06/05 08:33:53 kJDD5aej
つ7-532
たぶんこれかと。

263:名無しさん@ピンキー
07/06/06 00:26:30 7dA1e7oo
GJ
続き期待してます。

そしてせんたいさん。
ぜひともタバサを!
選択肢大好きです。

264:名無しさん@ピンキー
07/06/06 01:20:12 fFi4u20r
続きktkr!!!
GJですよ、はい。
しかしこの話の流れだと・・・w

265:純愛センター
07/06/06 02:12:22 8lNQYXUY
あっちとは違うようにするのでそちらは気にしなくても大丈夫です

自分の考える構想に持っていくにはああするしかなかったので(汗

続きは週末に…

266:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/06/06 11:22:07 8KiNDfP4
さて夜勤前に投下。
こどもさいとタバサ編、いくよー

267:タバサと小さな才人 ◆mQKcT9WQPM
07/06/06 11:22:49 8KiNDfP4
三人の魔女が視線で火花を散らす中、子供になった才人は怯えていた。
なんかこわい。
それが自分を巡っての事だとは露ほども思わず、才人は三人の脇でただ、怯えていた。
そして。
自分と最も近い、背の低い少女の背中に、隠れた。
青い髪の、眼鏡の少女の背中に。
タバサは驚いて、思わず背中にしがみついてきた才人を振り返る。
その顔に、優しい微笑みが浮かんだのを、才人は見逃さなかった。

「ちょ、なにしてんのよアンタ!」
「そうですよ独り占めなんてズルいですっ!」

ハブにされた二人は物凄い剣幕でタバサに詰め寄る。
その剣幕に、才人は怯え、タバサのマントをきゅっときつく握る。
その感触に、タバサの中に熱い何かが点った。
この子は、私が守る。

「…サイトが怯えてる」

詰め寄る二人に、タバサはずいっ、と杖を差し出す。
その視線は心の奥底までも凍りつかせそうなほど冷たく、二人の動きを止めるのには十分過ぎた。

「な、なによ」
「凄んだって無駄、ですよ」

しかし言葉とは裏腹に、二人は突き出された杖より前に進む事ができない。
タバサから感じる異様なプレッシャーに、足が前に進まないのだ。
タバサはそのまま、無表情に杖を振る。
すると。
二人の周囲の水分が一瞬で凍りつき、二人の身体を氷の衣が固めてしまう。
タバサは、二人から見えないように呪文を詠唱していたのだった。
文句を言う口も完全に塞がれた二人を置いて、タバサは才人に優しい笑顔を向ける。

「行こ」

そして、才人に手を差し伸べる。
才人はその手を握り、タバサに手を引かれてルイズの部屋を出て行ったのだった。


268:タバサと小さな才人 ◆mQKcT9WQPM
07/06/06 11:24:05 8KiNDfP4
「おしっこ」
「え」

私の部屋に向かう途中、サイトが急にもじもじしだしたと思ったら、そんなことを言ってきた。
え。

「もれるぅ~~~」
「ちょ、ちょっとまって」

この寮の共同トイレは一階だ。
私の部屋は三階で、今いるのは三階の階段の踊り場。
ま、まずい、間に合わない!
私はサイトを抱きかかえると、フライの魔法を使って、丁度開いていた廊下の窓から飛び出して…。

「うわっ!」

サイトの驚いた声と。

じょぼろろろろろろ~

液体の零れる音が同時に響いた。
私は空中で、サイトのおしっこを下半身に思いっきり浴びてしまった…。

「もれちゃった…」

申し訳なさそうに私の腕の中でサイトはそう言うけど。
…うわぁ、生暖かい…。
私は思わず顔をしかめてしまう。

「ごめんなさい…」

でも、しょんぼりと謝る小さなサイトを見ると、そんな粗相も許せてしまう。
…この暖かいキモチが、母性ってやつなのかな…。
私は一旦踊り場に戻ると、サイトを床に降ろした。
そして、そっとサイトの頭に手を差し伸べる。
サイトの身体がびくん!と震える。たぶん、怒られると思ったんだろう。
私はそんなサイトの頭を、くしゃくしゃと撫でた。
サイトは驚いた顔で、私を見上げる。
そんなサイトに、私は。

「ごめんなさいね、驚かせちゃって」

できるだけ優しい笑顔で、応えたのだった。

269:タバサと小さな才人 ◆mQKcT9WQPM
07/06/06 11:24:54 8KiNDfP4
部屋に戻ると、タバサは服を脱いだ。
才人のおしっこはタバサのワイシャツからスカート、果てはその下のショーツにまで被害を及ぼしており、全部脱いで着替えるしか方法はなかった。
才人はといえば、タバサのベッドですやすやと眠っている。おしっこを出してすっきりしたせいだろう。
全裸になったタバサはそんな才人を見て優しく微笑む。
…可愛い。
昔のサイトって、こんなに可愛かったんだ。
そこまで考え、ふとある事に思い至る。
…昔の私が昔のサイトに逢ったら、どうなるんだろう。
やっぱり、今と同じように、彼の事を好きになるんだろうか。
そして、タバサの目に、机の上に置いたあの本が目に入る。
『形態変化』の術式を集めた書籍。『若返り』の術式を載せた、あの書籍。
…試してみよう…。
そしてタバサは、マントだけを羽織ると、本を手に術式の準備に入った。
家具を退け、魔法陣を描くスペースを確保する。
半時間ほどかけて魔法陣を完成させる。
魔法陣の周囲へ、増幅装置となる燭台の設置。呪文の確認。
ささやき、いのり、詠唱…ねんじろ!
そして術式は完成し、橙色の光が部屋を包む。
魔法陣の中心には、三歳くらいの、青い髪の少女が、ほけっと立っていた。

「…なーにー?」

それから少しして。術式の音と光に、眠っていた才人が目を覚ます。
その目の前に、青い髪の小さな女の子が、全裸で、才人の顔を覗き込んでいた。

「だーれ?」
「だーれ?」

二人は同時に同じ言葉を漏らす。

「ぼくはさいと。ひらがさいと」
「わたし、シャルロットっていうの」

二人はお互いに紹介しあった。
そしてシャルロットが才人に尋ねる。

「ねえ、ここどこ?」
「しらないー」

言って才人も首をかしげる。
二人で首をかしげていると、扉が開いて事情を知っていそうな大人がやってきた。

「おねえさまー!おなかすいたのねー!」

青い長い髪を揺らしながら、扉を開けてシルフィードが現れた。
そしてその目が点になる。

「あ、おとなのひとだ」
「おねえちゃん、ここどこー?」

シルフィードは完全に固まった。
誰コレ。どこの子。
そしてシルフィードのおつむは、最も可能性の高い答えを導き出した。

「いつのまに生んだのねおねえさまーっ!?」

確かに目の前にいる二人は、タバサと才人にそっくりだった。

270:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/06/06 11:25:38 8KiNDfP4
しかしここで続くなのです。ゴメンネ
続きは夜勤から帰ってきてからな!

んじゃ寝ますノシ

271:名無しさん@ピンキー
07/06/06 11:30:38 cjo0Y0Y0
仕事中にリアルタイムktkr!
っていうか、まったくもって想像もしなかった展開にwktkが止まらぬっ!

272:名無しさん@ピンキー
07/06/06 11:38:28 8qQOpMPd
ショタ路線ぶっちぎっていくのかと思いきや小1にして体験済みという究極のシチュ……
生暖かく見守るぜ……!

273:名無しさん@ピンキー
07/06/06 11:39:11 ULeuqssp
タバサは大きいままでサイト食っちゃえばいいのに!


でもちびシャル子もかわええのう
この後の展開に期待

274:名無しさん@ピンキー
07/06/06 11:58:50 +0oNroyU
なんというカオス

275:名無しさん@ピンキー
07/06/06 12:30:20 hHzUW7c6
ふはははは、やはりせんたいさんは素晴らしき書き手。カオスの権化だ!
もっと、もっと見せてくれ私に!あなたの主観に満ちたSSを!!

276:名無しさん@ピンキー
07/06/06 12:41:51 JHuW+3iZ
タバサ編はもうちょっと続くのか。
純愛センターさんの続きも来てたし
文句なしのGJ!

277:名無しさん@ピンキー
07/06/06 13:06:09 afuHrpwa
>>270
さすがせんたいさん、俺達ができないことを平然と(ry


>>275
ジョージ乙

278:名無しさん@ピンキー
07/06/06 13:25:12 gMwhaoT1
何という想像の斜め上……これぞ正にカオス。
間違いなくせんたいさんはへんたいさん。

279:名無しさん@ピンキー
07/06/06 13:38:16 VI6FY5Vt
まさかここでお預けをくらうとは…


280:名無しさん@ピンキー
07/06/06 15:34:18 cWJ3XyeT
*ささやき えいしょう いのり ねんじろ!*

サイトは灰になった

281:名無しさん@ピンキー
07/06/06 19:23:37 dwNdYUle
おまえらせんたいさんが来るだけで盛り上がりすぎだろwレス速度が一気に
加速したw

へんたいさん・・・・。じらしは勘弁wwタバサ終わったらショタ
才人でアン様、カトレア姉さまverたn(ry

282:Soft-M ◆hjATC4NMLY
07/06/06 23:28:10 +0oNroyU
『ゼロの飼い犬』 5回目です。
前回までの話は>>203から見られます。

283:メイドの温もり 1/8
07/06/06 23:28:58 +0oNroyU
 昼休みの開始を告げるチャイムが鳴り響き、静かだった校内に生徒の喧噪が聞こえ始めた。
 校舎の裏で壁に寄りかかり、膝に顔を埋めて座り込んでいた俺は、何時間かぶりに顔を上げる。
陰鬱な俺の気分とは裏腹の、抜けるような青い空から照らす日差しが眩しい。
 
 昨晩、夜中にルイズの部屋から飛び出した俺は、人が来なさそうな場所まで逃げてきて
ここでずっと時間を過ごしていた。ルイズがどうしているのか、ちゃんと授業には出ているのか、
俺にはわからない。
 
 これから、どうしよう。昨日の、ルイズの涙が脳裏に鮮明に蘇る。
 俺は、使い魔失格どころか、人間としてやってはいけないことをしかけてしまった。
未遂だったとか、そんなつもりはなかったなんて言い訳はできない。
 ルイズを、傷つけたんだ。この世界に来たばかりの時よりも俺を信頼してくれて、
人間扱いしてくれて、一緒のベッドに寝かせてくれるようになったり、テーブルで学院の生徒と
同じ食事を食べさせてくれるようになったルイズを、俺は裏切って……傷つけた。
 あいつを守ってやろうって、決意したばかりだったのに。その決意を、俺自身がぶち壊した。
 
 ルイズは、俺をどう思ったんだろう。
 怒っているのか。悲しんでいるのか。
 罵倒したいと思ってるのか、もう二度と会いたくないと思っているのか。
 わからない。あの後、ちゃんと起きて学校に行けたのかどうかも、今の俺にはわからない。
 
 でも、ひとつだけはっきりしていることがある。左手に刻まれたルーンを見て思う。
 このまま、ルイズの元から逃げ出すわけにはいかないということ。あいつが、昨日の俺の行動を
どう思い、今後俺をどうするつもりなのか……聞かなきゃいけないということ。
 
 今は、ちょうど昼休みだ。ルイズが授業に出ているなら、昼食をとっているはず。
そうでなかったとしても、部屋に行けばいるはず。会うんだったら、今しかない。
 俺は、体を持ち上げると、重い足を無理矢理動かして校舎の中へ入っていった。
 
 
 テーブルが並べられた広場まで来た。ルイズはここで昼食をとることが多い。
 早く見つけたいような、見つけたくないような、複雑な気分で辺りを見回す。料理の皿が置かれた
テーブルのひとつの側に、目立つ桃色のブロンドの姿をみつけて、俺の心臓が跳ねる。
 テーブルには、これまた目立つ容姿のキュルケが座っていた。どうやら、ルイズはキュルケと
何か話しているらしい。
 意を決して、そこに近付いていく。どんな言葉をかけられるのか、どんな目で見られるのか、
不安で仕方ない。でも、ここでそれを避けるわけにはいかない……。
 
 だが、その直後。まだ背を向けていて、俺には気付いていないルイズがキュルケとの会話で
放った一言は、俺が想像していたどんな罵倒や恨み言よりも、俺の心を射抜くものだった。
 
「………アイツは使い魔なんだから、飼い犬同然なの! それでいいの!」
 
 
                        ∞ ∞ ∞
 

284:メイドの温もり 2/8
07/06/06 23:29:40 +0oNroyU
「サイト! どこ行ったのよ、サイトーっ!!」
 お日様が真上に輝くお昼休み。あたしが広場のテーブルについて優雅に昼食を楽しんでいると、
ゼロのルイズが年甲斐もなく大声を張り上げる声が聞こえてきた。
 
「騒々しいわねぇ、みんな食事をしているんだから、ちょっとは場所柄をわきまえなさいな」
 声のした方へ目を向けて、ピンク髪のちんちくりんにそう声をかける。
あたしの姿を確認したルイズは、つかつかとあたしのテーブルの横まで早足に歩いてきた。
 
「キュルケ! あんた、サイトを見なかった?」
 文句のひとつでも言い返してくるのかと思ったら、ルイズはいつになく真剣な表情でそう聞いてくる。
「今日は見てないわよー。そういえば、いつも一緒に授業受けてるのにいなかったわね。どうしたの?」
「……昨日の夜から帰ってこないのよ、アイツ」
 ルイズはちょっと思案してから、そう言った。たぶん、使い魔がいなくなってしまった不名誉を隠すよりも、
早く見つけ出すことを優先したのだろう。
 心細そうなルイズの声に、あたしは思わず吹き出しそうになった。
 
「何よ、なにがおかしいの?」
「いや、ゴメンね。なんかあなたの口ぶりが、男に逃げられた女っていうよりも、
飼い犬が行方不明になって不安がる子供みたいだったから」
 ふくれっ面をした彼女にそう言うと、ルイズの頬がみるみる紅潮する。
 
「なっ、なな何よ男に逃げられたって! アイツは使い魔なんだから、飼い犬同然なの! それでいいの!」
 あたしが笑ったのは”子供みたい”ってところだったんだけど、ルイズは別のところに反応した。
ルイズは未だにサイトをただの使い魔だなんだって主張するけど、信じられると思ってるのかしら。
 
「ちょっと、それはさすがにひどいんじゃない?」
「知らないわよ! 勝手にいなくなる使い魔なんて、犬と一緒なんだから!」
 ルイズは口をへの字にして両手を組む。やれやれと思った所で、ルイズの後ろに、
当の彼女が探している黒髪の使い魔さんが立っていることに気付いた。
 
「……っていうかルイズ。サイトだけど、そこにいるわよ」
 あたしが顎でそちらを指すと、ルイズは「えっ?」と振り向いた。そこにいた自分の使い魔の姿を目にして、
一瞬、ルイズは固まる。
「サっ、サササイト! 今までどこをほっつき歩いてたのよ!」
「あ、あぁ……ちょっと……」
 ルイズの剣幕に、たじろぐサイト。
「まったく、随分探したんだから。ご主人様の手を煩わせるんじゃないわよ、もう」
 ため息をつくルイズ。サイトは、なぜか心ここにあらずといった様子で、そんなルイズを見ていた。
 
「あ、あの……ルイズ。昨晩のことだけど……」
 サイトがそう言うと、ルイズはぎくっと身をすくませた。
「え、あ、それ。それだけどね。あの……あれは、何て言うか、気の迷いだから!
ちょっと興味があっただけなんだから。たっ、ただの気まぐれで、深い意味があったワケじゃなくて、
わたしはあんたに何か許したわけじゃないんだから。勘違いしないでよね!」
 ルイズは、慌てたように早口でべらべらとまくしたてた。何だか言ってることが抽象的で
よくわからないけど、サイトの方には伝わっているのかしら。
 
「え……そ、それだけ?」
「な、なによ、それだけ? って。重要なことよ。わたしは主人で、あんたは使い魔。
そこんとこ、はっきり理解しておきなさい。ヘンな誤解したら、許さないんだから」
 頬をりんごみたいに赤くして、サイトの方から顔を逸らすルイズ。
 あらあら、そんな態度とったら、ただのご主人様と使い魔じゃありませんって
告白してるようなもんなのに。思わず苦笑が漏れる。

285:メイドの温もり 3/8
07/06/06 23:30:22 +0oNroyU
 ―けど、次の瞬間。サイトの様子を見たあたしの背筋に、冷たい物が走った。
 
 その黒い瞳は、虚ろだった。怒ってるとか、不満だとか、逆にルイズの真意を見透かして
面白がってるとか、そんな目じゃない。
 大げさかもしれないけど……絶望の目。今までそうだと信じていたことを、根底から覆された。そんな目。
 
「……あぁ、そっか。使い魔だもんな。ごめん、勝手にいなくなったりして」
「? ……あ、うん、わかればいいのよ、わかれば」
 サイトは、その目とは釣り合わない、ごく自然な言葉を口にした。ルイズも、一瞬怪訝そうな顔をした後、
素直に自分の非を認めた使い魔に偉そうな返事をする。
 
「……じゃ、今日サボっちゃったぶん、部屋の掃除してくるから。じゃあな」
「え? あ、ちょっと!」
 サイトはルイズに微笑みかけると、踵を返して学生寮の方へ走っていった。
呼び止めようとしたルイズだったが、表面上は特に不自然なことを言ったわけではないサイトを、
無理に引き留めることはしなかった。
 
「……なんか、ヘンだった? 今のサイト」
 首をかしげるルイズ。
 そんな彼女に、あたしは……今までからかっていた時とは違う、本物の嫌悪を感じた。
 唇を噛む。どうして止められなかったのかしら。いずれこんなことになるのは、想像できたはずなのに。
 
「……ルイズ。あなた、何よりも得難いものを失ったかもしれないわよ」
 そう声をかけると、ルイズはきょとんとした顔であたしを振り向いた。
その顔。自分が間違っているなんて、少しも考えていない顔。
悪気がないっていうのは、この上なく手に負えないことなのかも。
 
「何よそれ。どういうこと?」
「……あなた、貴族に差別される平民の気持ち、考えたことある?」
 聞くと、ルイズは困惑の表情を浮かべたまま黙ってしまった。
「あたしも、あんたと同じで差別”する”側の人間だから、理解できてるとは思わない。
……でも、なるべく考えるようにはしてる」
 
「……何が言いたいのよ、キュルケ」
 察しの悪いこの子なりに、何かうすら寒いものを感じたのか、少し焦った口調でルイズは聞いてくる。
 でも、ここであたしが説明したって、解決にはならない。だからもう黙る。
 
 サイトの目。最後にルイズに笑いかけ、ここから去った時の目。
 ―それは、見慣れた目だった。あたしが、サイトに感じていた魅力が、失われつつある目。
 サイトは、ルイズを”平民が貴族を見る目”で見た。絶対的な目上の者を見る目。
住む世界が違う人間を見る目。相手が、自分を見下していることを前提にした目。
 それは、この学院にいる全ての平民が、あたし自身や、級友や、先生を見る目。
そして、サイトだけが。ルイズが召還した、あの少年だけが、平民であるのにその目をしていないはずだった。
 
 それを……恐らくこの主人が。生粋の貴族であるヴァリエール家のルイズが、奪った。
自覚を無しに、悪いことをしたと露とも思わずに。
 でも、このルイズだけを責められるわけじゃないのかもしれない。言うなれば、それはあたしたち貴族全ての
責任で……そして、サイトの件だけに罪悪感や喪失感を抱くこと自体、ただの偽善なのかもしれないのだから。
 
 
                           ∞ ∞ ∞

286:メイドの温もり 4/8
07/06/06 23:31:03 +0oNroyU
 部屋の掃除をし終わった俺は、ルイズが帰ってくる前に部屋を出て、ヴェストリ広場にやってきた。
 俺が作った風呂が置かれているあたりで、今日の昼まで校舎裏でそうしていたように、
建物の壁に背を預けて座り込む。心にぽっかり穴が開いたような気分だった。
 
『アイツは使い魔なんだから、飼い犬同然なの!』 
 昼間の、ルイズの言葉がまだ耳に残っている。はは、犬だってさ。飼い犬。
 今までにも、何度も犬呼ばわりされた。メイジとそれ以外は違う人間だって言い草も、何度も聞いた。
 けど、俺は、何て言うか……本気にしてなかったんだ。俺が、日本で暮らしていたからなのかもしれない。
 基本的に、人間は平等で。あんなことを言うルイズだって、心の底ではそう思っているはずだと考えてた。
 
 ここへ来たばかりの頃は確かに酷い扱いをされてたけど、最近は待遇を良くして貰えるようになった。
 それは、ルイズが俺をようやく人間扱いしてくれるようになったからだと思っていた。
使い魔ではあるけど、人間でもある。それを、ルイズの方でも認めてくれたのだと信じていた。
 
 けど、さっきのルイズの様子を見て、気付いてしまった。
 逆だった。俺の考えていたこととは、全くの逆だったのだ。
 ルイズは、俺を、使い魔であると認めたから、ベッドに寝かせてくれるようになったのだ。
 
 だって、考えてみれば、人間の……異性に、一緒のベッドで寝ることを許可するだろうか?
恋人でも何でもない男を相手にして、そんなこと有り得ない。
 けれど、使い魔……いや、ルイズが言ったように、飼い犬だったらどうか。人によっては、許すだろう。
ベッドに上がってくることや、一緒に寝ることを許す飼い主は、それなりにいる。
 
 つまり、ルイズは、最初から俺を同じ人間だなんて思ってなかったんだ。寝込みを襲われることとか、
本気で心配してはいなかった。危機感があまりにも薄かった。だって、完全に住む世界が違うものなんだから。
 フーケの事件の後、俺がカンチガイして、ルイズの寝込みを襲ってしまったことがあった。
あの後ルイズはどうしたか……俺に鎖をつけて、犬扱いしたんだ。人間ではなく、見境のない犬だって。
 
 アルビオンに行く前、ルイズが何度もマッサージをねだってきたことにも説明がつく。
 男の前でベッドに横になって、体を触らせて、しまいにはそのまま寝てしまったりしたルイズ。
どうしてそんなに無防備だったのか。それは、俺を人間で、男だと思ってなかったから。
 常識で考えたらそれで何もされない保証なんて無いんだけど、貴族の中でも最上級の家で育てられた
ルイズには、そんなことわからなかったんだろう。
 
 だから、だから……ついさっき広場で話したルイズは、昨晩、俺に組み敷かれたのに、
大してショックを受けた様子が無かった。
 そして、一緒に寝るのを許したのも、ただの気まぐれだなんて言ってきた……。
 
 涙が出そうになってきた。何だよ、なんでだよ。俺は、ルイズのことを、認めていた。
そりゃ、性格は酷いし、不器用だし、見た目が可愛い以外どうしようもないやつだと最初は思ってたけど、
あいつが本当は強い誇りと信念を持っていて。死にゆく人のために悲しめる心を持っていて。
 その小さくて、メイジの拠り所である魔法も満足に使えない体で頑張っていることを知って、
立派な人間だって認めてたんだ。尊敬できる部分もあると思った。側にいて、守ってやりたいと思ってたんだ。
 
 なのに。あいつの方は、俺を人間だとすら思っていなかった。ただの使い魔、飼い犬同然だって。
 そう思って、俺に接していたんだ。
 
 でも。それは、ルイズが悪いんじゃない。言わば、この世界のルールのせい。地球にだって、
差別はいっぱいあるという話だ。日本だって、平等だ、民主主義だなんてなったのはつい最近のこと。
 世界がそういう風にできている以上、仕方ない。どうしようもないこと。
 でも……それは、ルイズと俺の間には、個人の気持ちとかだけでどうにかできるわけではない壁が
存在することでもある。
 俺は、大きくため息をつく。悲しみとか絶望とかじゃなくて。言いようの無い空しさが体を包んでいた。

287:メイドの温もり 5/8
07/06/06 23:31:44 +0oNroyU
「あー、もう! 考えるな!」
 だったら、もうこれ以上悩んだって何にもならない。どうしようもないものはどうしようもない。
 今まで通り、使い魔としてルイズの世話をしてればいい。少なくとも、言いつけられた仕事をしているうちは
美味い食事を食わせてくれるんだし、寝るとこはあてがってくれる。それでいいじゃんか。
 
「まぁでも、そう簡単に割り切れるもんじゃねーよなぁ……」
 薄暗くなってきた空の下で、一人ごちる。少なくとも、今すぐにルイズの部屋に帰って、
あいつと顔を合わせる気にはなれなかった。もう、今までと同じ目でルイズを見ることができない。
 でも、いつまでも外で座ってるわけにもいかないし。夜は寒いし。
 そんなことを考えていたら、腹の虫がぎゅるると鳴いた。落ち込んでいても腹は減る。
ルイズの部屋を飛び出してから何も食べていないので、仕方ないといえば仕方ないのだが。
 
「……サイトさん?」
 そんな時、傷心だし帰る気にもなれないし空腹だしで惨めの極みみたいな気分になっていた俺を、
朗らかな声が呼んだ。ボロボロの心に染み入るような声の方へ、顔を向ける。
 
「どうされたんですか? こんなところで」
 そこにいたのは、学院のメイドであるシエスタ。俺がこの世界に来たばかりのころから、
何かと気遣ってくれる女の子。シエスタは、壁際に縮こまって座り込んでいる俺に
心配そうな表情を見せてくれた。
 
「いや、別に、何でも」
 俺を立派な人だとか、憧れだとか言ってくれるシエスタに、こんな姿を見られたくない。
作り笑いを浮かべて安心させようとしたところで、再び俺の腹の虫が盛大に鳴いた。
 シエスタはその音を聞いて目を丸くした後、可愛く苦笑する。
 
「ひょっとして、またミス・ヴァリエールにご飯を抜かれてしまったんですか?」
「いや、えーと、その……なんていうか」
 恥ずかしさに慌てて手を振ると、シエスタは小走りで隣まで来て、俺の顔を覗き込んだ。
「遠慮することなんてありませんよ。今ならまだ夕食の準備で忙しくなるまでに時間がありますから、
厨房で何かご馳走させてあげられます。来てください、ね?」
 
 微笑んで、シエスタは座り込んだ俺に手を伸ばす。思わずそれの手をとって立ち上がってしまうと、
鼻の奥がツンと痛くなった。シエスタの優しさが、人懐っこそうな笑みが、温かい手が、あまりにも染みた。
 それはまるで、くたくたに疲れた全身を、熱い湯船の中に沈めた時のように。
 
 
 
「どうですか? サイトさん。ありあわせのもので、申し訳ないんですけど…」
「いや、十分すぎるよ。美味い。滅茶苦茶美味い」
 厨房のテーブルで、シエスタが残り物を組み合わせて作ってくれた料理を、ガツガツと頬張る。
マジで泣けるくらい美味しい。お腹が空いてたっていうのもあるし、もともとの料理がよく出来てるって
いうのもある。けど、今の俺には、シエスタのかけてくれた気遣いが何よりの調味料になっていた。
 
「そんな、褒めすぎですよ。でも、お世辞でも嬉しいです」
「いや、お世辞じゃな……もごっ」
「あ、もう。ほら、そんなに急いで食べなくても、料理は逃げませんよ」
 がっついて食べながら話していたので喉に詰まらせてしまった俺に、シエスタは水の入ったコップを
差し出して、背中をトントン叩いてくれた。
 
「ぷはっ、ふぅ……ありがとう、シエスタ」
「いえ、いいんですよ、このくらい」
 あっという間に食べ終わり、シエスタの方をじっと見つめて礼を言うと、シエスタは頬を染めて、
照れくさそうに笑った。メイドらしい、控えめな態度。けど、その笑顔は仕事上の作った顔ではなく、
シエスタの本性から来るものなのだろう。愛嬌があって、見る人を安心させる魅力的な笑み。

288:メイドの温もり 6/8
07/06/06 23:32:29 +0oNroyU
「……サイトさん、何かあったんですか?」
 しばらく食休みをしていると、シエスタは俺にそんな言葉をかけてきた。
「え……何かって、何が?」
 ぎくっとしてとぼけると、シエスタは真剣な表情で俺に詰め寄る。
「サイトさん、落ち込んでるように見えます。
何かあったのでしょう。 ミス・ヴァリエールに酷いことをされたとか」
 鋭い。なんという洞察力。これが女のカンというやつなんだろうか。
 その黒い瞳に見つめられて、これ以上嘘をつくことができない気分になってしまう。
 
「うん……実は、ちょっとルイズと顔合わせにくい事情ができちゃって」
 照れ隠しに頭を掻きながら、そう白状する。シエスタは、そんなことだろうと思った、
という風に深いため息をついた。
「また、無茶なことをされたのですね。いくら平民だからって、貴族の方に何でも好き勝手されて
いいなんて法はありませんのに……」
「いや、今回は俺に非があるんだけどね」
 シエスタは、少しだけ考え込む様子を見せてから、何かひらめいたという顔をした。
 なぜか、その瞳がちょっとだけ怪しい色に輝く。
 
「……サイトさん、今日の夜、お風呂をご一緒してもいいですか?」
 頬を染めて、お盆で口元を隠しながら、シエスタはおずおずとそう聞いてきた。
「え、お風呂!?」
 急な提案に、驚く。確かに、何日か前、ひょんなことから俺が作った五右衛門風呂に
シエスタを入れてあげることになってしまった。
 その時は、シエスタの服が濡れてしまったハプニングのせいだと思っていたのだけど。
 
「えーと、あの風呂に入りたいなら、俺と一緒じゃなくても」
「でも、わたし、一人でああいうお風呂に入ったことないから、ちょっと不安で……」
 シエスタはもじもじと体を揺する。そのメイド服の下に隠れた、着やせする脱いだら凄い肢体を
思い出してしまい、頭が一気に熱くなる。
 シエスタとお風呂。シエスタの体。それに、あの時風呂から上がったシエスタに言われた、
『一番素敵なのは、あなたかも』なんて台詞。
 それらが鮮明に蘇る。そそ、それは。そのお誘いは。ただ”お風呂に入りたい”というお願いではなく、
”俺と一緒にお風呂に入りたい”というお願いなのではないでしょうか。
 
「あ、あああ、その……うん、わかった。シエスタの仕事が終わるころ、用意して待ってるから」
 頭で考える前に、口がそんな言葉を勝手に喋る。シエスタは、ぱあっと顔を輝かせた。
「は、はいっ! 楽しみにしてます! ……それじゃ、そろそろお夕飯の仕事があるから」
 さよなら、と言ってシエスタは足早に立ち去った。後に残された俺は、マルトー親父さんたちが
夕食の準備に厨房に入ってくるまで、その場にぼけーっと座り込んでいたのだった。
 
 
「お待たせしました、サイトさん」
 その日の夜。結局、俺はルイズの部屋に戻ることなく時間を潰し、頃合いを見計らって風呂の準備をした。
 ちょうど、釜の中のお湯が温まったあたりで、月明かりと薪の火が照らすヴェストリ広場に
シエスタがやってきた。
 
「あ、ちょうど良かった。今入れるようになったばっかりだから」
「そうですか。良かったです」
 既に部屋に戻って着替えてきたのか、シエスタの格好はいつものメイド服ではなく、薄手の寝巻きに
毛糸の温かそうな上着を羽織った姿だった。
 見慣れない……そして、メイドではなく、一人の女の子であることを嫌でも意識してしまういでたちに、
ついドキドキしてしまう。今までにルイズやキュルケの寝巻き姿も見たことはあるけど、シエスタの容姿は
俺にとって馴染み深い日本人の女の子に雰囲気が似ていて、生々しい雰囲気を放っている。
 
「えっと……それじゃ、入ろうか」
 妙に落ち着いた声でそう言う俺に、はにかんで頷くシエスタ。考えてみれば、なんかおかしくないか?
女の子と一緒にお風呂入るんだぞ? ただ事じゃないぞ? なんで、”そんなに大したことじゃない”
みたいな演技してるんだ?
 でも、冷静に考えて常識的な判断をしたら、一緒にお風呂に入れなくなる。
だから、俺は……きっとシエスタも、このよくわからない演技を続ける。

289:メイドの温もり 7/8
07/06/06 23:33:17 +0oNroyU
「はぁ……やっぱり、気持ちいいです」
 シエスタのうっとりとした声が背後から聞こえ、湯の中で温まった体がさらに熱くなる。
 二人で背中を向け合って服を脱ぎ、体を洗って、風呂に入った。一日中外にいて汚れていた
体がさっぱりしたのはいいのだが、ぜんぜんリラックスできる状況じゃない。
 だって、すぐ後ろには、脱いだらすごいシエスタが裸でいるのだから。
 
 先日も一緒に入ったシエスタの肢体が思い出される。湯気に湿ってしっとりした髪。
濡れて上気し、艶めかしい雰囲気を放つ肌。恥ずかしげな表情を浮かべる、可愛らしい顔。
 ああ、見たい。また見たい。あの時みたいに、こっち向いても良いですよ、
なんて言ってくれないだろうか。そんな、人としてちょっと終わってることを考える。
 
「月が綺麗ですね、サイトさん」
 そんな煩悩満載のところへ聞こえてきたシエスタの言葉につられて、空を見上げる。
ふたつの月の輝きも綺麗だったが、それより、星が無数に散らばる夜空に嘆息が漏れた。
電気による灯りのせいで、夜でも星があまり見えない日本の空とはまったくの別物。
 見惚れるほど綺麗ではあったけど、自分は異世界にいるんだなという事を再認識してしまう。
 
「お風呂に入りながら夜空が見られるなんて、貴族の方でもそうそうできない経験ですよね」
「ああ、そうかもな」
「えーと……あ、あれがグリフォン座ですね。となりがフクロウ座。わたしの星座はどこだったかな」
 星を見ているらしいシエスタが、聞き覚えのない星座の名前を呼ぶ。元々星に詳しいわけじゃない
俺にはよくわからないけど、見える星の並びや、星座の名前も地球とは全然違うのだろう。
 
「あ、あれがイーヴァルディ座ですよ。今日はすごく良く見えます」
「え、どれ?」
 確か、この世界で童話とかになってる勇者の名前だっけ。どんな格好なのか気になって、聞いてみる。
「赤い月の横です。剣と槍を構えているように見える」
「んー、よくわかんないな」
「ほら、あれですよ」
 俺が星空を見渡してきょろきょろしていると、シエスタの声が間近で聞こえた。 
「え?」
 シエスタの手が俺の顎に当たって、角度を調節してくる。当のシエスタの顔は、俺のすぐ隣にあった。
 星座の位置を教えてくれてるんだろうけど、そんなことより、俺の体に当たっている感触に意識が奪われる。
 シエスタ、俺の背中に寄り添うみたいな格好になってる。顔、近い。いやいやそれより、
背中になんかやわらかいの当たってる。ナニコレ。やーらかい。あったかい。脳溶けそう。
 
「シっ、シシシシシシシエシエ?」
 歯をかちかち鳴らしながら、やっとのことでそう言う。シエスタは俺の顔を空に向けさせるのをやめて、
吐息が聞こえるくらい近くへ顔を寄せてきた。
「……サイトさん……」
 耳元で、囁かれる。ぞくぞくぞくっ、と背筋が縮み上がる。甘えるような、ねだるような、微かな声。
「な、なに?」
 聞くと、シエスタはそのまま顎を俺の首筋へ乗せてきた。思わず叫び声を上げそうになる。
「……わたしの体、魅力ありませんか?」
 寂しそうな、シエスタの声。何ですかそれ。これだけえっちぃ体を押し付けておいて魅力ないですかって。
そんなん、拳銃を突きつけておいて『怖いですか?』って聞くみたいなものじゃんか。
 
「あっ、あああるあるよ。何言ってんの。シエスタは可愛いし、魅力的だし、脱いだら凄いし……」
 最後のはちょっとまずかったか。だけど、シエスタはそれを聞いて、俺の背中へさらに体を押し付けてくる。
「じゃあ……どうして、見てくれないんですか?」
「ど、どうしてって、そんなの……」
「そんなの?」
 俺の首に顎を押し付けたまま、小さく首をかしげるシエスタ。さらりとした黒髪が、俺の肩を撫ぜる。
 
「わ、わかるだろ? 男が、魅力的な女の子の裸なんてじろじろ見ちゃったら、どんな気分になるか……」
「……わかります。わかってて、サイトさんと一緒にお風呂に入りたいなんて言ったんです」
 シエスタの言葉が、すぐには理解できなかった。頭が煮えすぎてて、思考力が低下してる。
「サイトさんとだけですよ? こんなことして平気なの」
 シエスタは、泣きそうな声でそう言った。それって。それって。それって。うわぁ、なにそれ。
おかしい。なんかおかしい。これも夢なんじゃないの?

290:メイドの温もり 8/8
07/06/06 23:34:03 +0oNroyU
「サイトさん……わたし、こんなにどきどきしてるんです……倒れちゃいそうなくらい。
これ以上……恥をかかせないでください。嫌なら嫌って、言ってください」
 俺の胸に両手が回され、ぎゅっと抱きしめてくる。背中に、柔らかいふたつの膨らみが押し付けられて
形を変え、その奥から言葉どおりに早鐘を打つ鼓動が伝わってくる。
 夢なはずがない。そして、嘘や冗談なわけもない。この温もり。シエスタの言葉。紛れもない現実。
 
 シエスタは、俺を慕ってくれてる。信頼してくれてる。ここでどうにかされることを
許してくれると言ってる。
 人として、友人として、異性として。メイジに召還された使い魔としてではなく、
ヒラガサイトである自分を。それは、同情でも愛想でもなく、俺が俺だから、してくれること。 
 優しいシエスタ。いつも笑顔を見せてくれるシエスタ。ときどき、妙に積極的になるシエスタ。
 俺の中で、シエスタへの愛しさがどんどん膨らんでいく。ついさっきまで、可愛らしい外見や、
実はいやらしい体つきなんかばっかり意識してたけど、それよりも─いや、背中に当たってる
甘美な感触はそれはそれで意識しっぱなしなんだけど─シエスタという少女そのものへ向いた気持ちが、
自分でも驚くくらいに大きくなってくる。
 
「シエスタっ!」
「あっ……!」
 俺はシエスタの方を振り向いた。すぐ目の前にいる彼女は、俺を潤んだ瞳と上気した頬で見上げている。
「シエスタ、俺……」
 もう一度名前を呼ぶと、シエスタは小さく微笑んで、目を閉じた。卑怯だと文句をつけたくなるくらい、
可愛らしくて、男の情欲に火をつけるしぐさ。
 俺は、その顔に自分の顔を寄せて……寄せて、頬に口付けた。
 
「……え……?」
 シエスタは不思議そうな声を上げて、目を開けて俺を見る。嬉しいけど、期待と違う。そんな様子。
 俺も、よく自分で自制できたと思う。でも、やっぱり、ここでシエスタの唇を奪うわけにはいかなかった。
 
 だって、それは、逃避のような気がしたから。ルイズの事で傷つけられて、落ち込んでいるところを
シエスタが癒してくれて。だから、今までよりも強くシエスタを意識してしまっているのかもしれない。
 シエスタは可愛い。いい子だと思う。日本にいたときに、こんな子に好かれたりしたら、間違いなく
ふたつ返事で恋人になっていると思う。 
 でも、今の俺がシエスタをどうにかしてしまったら……それは、ルイズが駄目だったから彼女を。
そんなことにならないだろうか。俺の気持ちに、そんな要素が一切無いと言い切れるだろうか。
 いけない。そんな気持ちを疑ってしまっているうちは、できない。
 
「ごめん……俺、シエスタは凄く魅力的だし、このままどうにかしちゃいたくてたまらないくらいだけど……
でも、今、勢いでそんなことするわけにはいかない」
 言ってる途中に、首筋がピクピクいった。体の方は完全に今すぐこの子に思いをぶつけろと要求してる。
 でも、これだけはゆずるわけにはいかない。それこそ、俺が犬なんかじゃなく、人間だという証明だから。
 
「サイトさん……」
「でっ、でも、それは俺がシエスタを大事にしたいって、こういうのはきちんとしないと駄目だって
思ってるからで! だからこそ必死で我慢してるっていうか、いや我慢ってのも下品だけど……」
 俺がしどろもどろになってわけのわからないことをのたまっていると、シエスタはくすりと笑った。
 
「……ありがとう、サイトさん。嬉しいです。ひょっとしたら、ここで愛していただけるのと同じくらい」
「シエスタ……」
「わたし、待ってます。いつでも。……でも、あんまり待たせたら、またわたしの方から
迫っちゃうかもしれませんよ?」
 シエスタは悪戯っぽくウインクした。そして、「ちょっとのぼせちゃいました」なんて言いながら、
湯船から上がる。その姿を見ないように慌ててまた背中を向けて、俺も風呂から上がった。
 
 体を拭いて、お互い服を着直す。そこで、はたと気付いた。風呂で温まることができたのはいいけど、
これからルイズの部屋に帰らなければならないのだろうか。今の今までシエスタとしてたことを考えると、
風呂に入る前よりもずっと帰りにくい。
 どうしようと頭を抱えかけたところで、シエスタが、まるで今まで隠していた切り札を出すように口を開いた。
 
「あの……厨房でミス・ヴァリエールと顔を合わせにくいって聞いて、あの後、今夜だけ同室の子に
他の部屋に移ってもらったんです。……もし、良かったら……わ、わたしの部屋に、来ませんか?」

291:Soft-M ◆hjATC4NMLY
07/06/06 23:34:59 +0oNroyU
勘違いしていませんか? まだわたしのバトルフェイズは終了していませんよ?
次回、ゼロの飼い犬 『サイトの理性はとっくにゼロ』

続きます。

292:名無しさん@ピンキー
07/06/06 23:42:56 e6dmaHx4
>>291
うわあああああ、GJ!
なんだかラブコメの王道を突っ走ってる感じが良い。
もともとゼロの使い魔自体がベタにベタを重ねてベタベタな作品だから
こういう王道的なストーリーがばっちり嵌るのかな。

293:名無しさん@ピンキー
07/06/06 23:43:05 sXnIaza1
エロパロでやれ、と言いたいところだが
続けてくれ

294:名無しさん@ピンキー
07/06/06 23:43:08 SJuyueIG
うあー、もうなんてコメントしたらいいかわからんよ、ほんと
なにはともあれ、Soft-Mさん、GJ!

295:名無しさん@ピンキー
07/06/06 23:44:24 e6dmaHx4
>>293
君が何を言ってるのか分からない。
こっちが混乱しちゃったじゃないかw

296:名無しさん@ピンキー
07/06/06 23:47:15 sXnIaza1
ノボルスレと混同してしまった…


とにかくGJ!
無礼をお許しいただきたい

297:名無しさん@ピンキー
07/06/06 23:48:12 EL/bYgch
>>291
いやもうずっとバトルフェイズでもww
続きwktk!

298:名無しさん@ピンキー
07/06/06 23:51:20 JHuW+3iZ
ずっとソフトMのターン!!
いやもうGJ!まだまだあなたのターンを続けてください。

299:名無しさん@ピンキー
07/06/07 01:27:34 uXYZ3Y8y
うわぁ、目茶苦茶間が悪いルイズに目茶苦茶間がいいシエスタw
色んな意味で続き気になり過ぎ。GJ!

300:名無しさん@ピンキー
07/06/07 05:46:41 ny2EXsUG
うッ!!

301:名無しさん@ピンキー
07/06/07 09:12:46 B1cVjh90
>291
ずっとシェス子のターン!!!

夜通しサイトを誘惑しちゃうんだな
期待大だぜ

302:名無しさん@ピンキー
07/06/07 12:17:38 aO1V5wTy
>>290
早く!早く続きを!

303:名無しさん@ピンキー
07/06/07 20:12:35 /I6Yr/WR
最後は、ルイズもでてきて3Pか?

304:名無しさん@ピンキー
07/06/07 20:41:40 01g5NdeN
キュルケも入って4Pじゃね?

305:名無しさん@ピンキー
07/06/07 20:58:43 fwuh5qdu
最近はルイズ・シエスタ・タバサ分は安定して配給されてるな。前に
ルイズ・シエスタ分が足りないとか言ってた奴が居たのが懐かしい。
逆にアン様、テファとかは激減傾向にある。

306:名無しさん@ピンキー
07/06/07 21:09:06 OmDZZyQT
アン様ネタでお勧めある?

307:名無しさん@ピンキー
07/06/07 21:12:00 2pHx9NeN
>>305
新刊の影響で、アン様は立ち位置が良く分からなくなったしなあ
テファは最近ちょっと影が薄い

>>306
黒アン様で、バラフライ伯爵夫人を実践してくれ

308:名無しさん@ピンキー
07/06/07 22:19:26 /1MnREuJ
マイナーキャラの話が好きなんだけどな
サイト×モンモンとかコルベールのとか
一番続き気になってるのはイザベラ慣らしです
続きお願いしますー

309:名無しさん@ピンキー
07/06/07 23:31:01 3ZXhTbp7
イザベラ慣らしかぁ。あれもいいとこで止まってるんだよなぁ。

310:名無しさん@ピンキー
07/06/08 10:31:38 pxJ15IVh
いつの間にかこんなにSSが

さすがせんたいさん、なんというカオス!
ソフMさん、王道ラブコメ待ってましたぁーっ!偉い・・・やっぱお前は偉いよサイト・・・だが真の試練はまだこれからのようでw続きwktk


311:名無しさん@ピンキー
07/06/08 12:51:40 9jpzpKdy
>>308
サイト×モンモンだとある意味NTR

312:名無しさん@ピンキー
07/06/08 12:57:27 t9QE/kkh
>>311
前にサイモンはあったけどNTRっぽくはなかったぞ

313:名無しさん@ピンキー
07/06/08 19:44:11 VtCayinq
ルイズ、シエスタ、アンリエッタ、タバサ等が
サイト以外のキャラと寝るとそれはNTRだが
サイトは英雄なので誰と寝ようがそれはNTRではない。
というわけでサイト×モンモン希望。

314:名無しさん@ピンキー
07/06/08 20:05:15 nYSMMN/n
ある意味寝取りだな

だが、それがいい

315:名無しさん@ピンキー
07/06/08 20:05:35 ArIHwTLE
誰か… テファを知らない俺に救いの手を…

316:名無しさん@ピンキー
07/06/08 20:19:59 uoYuFhdp
>>315
URLリンク(up.tseb.net)

317:名無しさん@ピンキー
07/06/08 20:29:16 JTJnFPTJ
テファを知らないってことは、アニメ派の人か?
それとも、前にもチラリと書き込んでた、「原作すら知らないけどこのスレにいる人」?
後者の方には、原作知らんのにここにいる理由と言うか経緯とかを聞いてみたい。
なんか、その辺スゲー興味がある。

318:名無しさん@ピンキー
07/06/08 20:33:03 XToO4rhE
エロ同人誌作者買いじゃねーの?
それくらいしかパターンが思いつかん

319:名無しさん@ピンキー
07/06/08 20:35:01 uoYuFhdp
微妙に話がずれるが、
その作品を実際に読んだり見たりしたことがないのに
ネットでの評判とか2chのスレとかAA・台詞ネタとかで
勝手に想像してたその作品の内容、って結構貴重だったりする。
実際に読んだり見たりすると二度と想像できないので。
で、本当の内容を知って全然違ってた過去の自分の想像に笑ったり

320:名無しさん@ピンキー
07/06/08 21:13:19 k1c/kRfF
>>316
改めてこの絵を見ると、テファの胸はほんとにはしゃぎすぎだなw
スイカでも入れてんじゃねーかと思うよ

321:名無しさん@ピンキー
07/06/08 21:30:09 H805gnal
テファの胸に入ってるのはオレ達の夢

322:名無しさん@ピンキー
07/06/08 21:48:28 DGX/7MI+
確かに巨乳に詰まってるのは俺たちの醜い欲望


真に乙女の夢が詰まってるのは平な乳だと思うんだがどうだね?

323:名無しさん@ピンキー
07/06/08 21:51:48 UMCn9iC0
>>319
その感じすごく分かる

とんでもない偏見持ってたりするよな

俺もゼロのタイトルだけみて
ゼロという男が使い魔(獣系)と旅する
熱い話だと思ってたからなw

324:名無しさん@ピンキー
07/06/08 22:22:50 ArIHwTLE
>>316
なんだろう 目から汗が…
ありがと

小説1巻購入→アニメ(ようつべ)→金無いから買えない→て…ふぁ…?

325:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/06/09 01:21:56 tH05Iyw+
すまん…今晩中にあげようと思ったんだが…
明日早番なのを忘れていたYO…
そういうわけで途中だけど投下しまっす

あ、>>267の続きね

326:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/06/09 01:22:38 tH05Iyw+
「と、とりあえず落ち着くのね。
 大きく深呼吸なのね」

シルフィードは自分に言い聞かせ、大きく深呼吸をする。
ベッドの上の二人は、そんなシルフィードをきょとんとした目で見つめる。
そんな二人の視線などお構いなしに、シルフィードはすぅはぁと数回深呼吸する。
よーし落ち着いた。
シルフィードは落ち着いて、目の前の謎の二人に質問する。

「パパとママはどこ行ったの?」

やっぱり落ち着いてないかもしれない。
ベッドの上の青い髪の少女と黒い髪の少年は、互いに顔を見合わせると、声を合わせて言った。

「「しらないー」」

二人の即座の返答に、シルフィードは頭を抱える。

「あの色ボケバカップルー!またどっかにシケこんでるのねー!」

その色ボケバカップルなら今目の前にいるのだが、シルフィードは完全にこの二人を才人とタバサの子供だと思い込んでいた。
そもそも、二人が出逢った時期を考えればこんな大きな子供がいるはずはないのだが、人間の常識を風韻竜に求めるのがそもそもの間違いといえるだろう。
それ以前に常識をシルフィードに求める事自体が間違いなのだが。
シルフィードはそのバカップルを探し出しに行こうと外に出ようと振り向く。
その背中に、二つの重低音が響いた。

ぐうぅ~っ。

これは。このよく身に覚えのある音は。

「おねえちゃん」
「おなかすいたー」

やはり。腹の虫。
シルフィードがその音と声に振り返ると、毛布に包まった二人が、期待に満ちた目でシルフィードを見つめている。
…う。

「おねえちゃーん」
「おなかすいたー」

きらきらと期待に満ちた目で、二人の子供はシルフィードを見つめる。
そ、そんな目で見られても困るのね…!

「お、おねえちゃん用事があるのね…!」

とりあえず嘘なんぞこいてみる。
しかし、二人は聞かなかった。

ぐうぅ。

「おなかすいたぁ」
「ごはんー」

シルフィードはぐぅ、と唸って、考える。

327:タバサと小さな才人 ◆mQKcT9WQPM
07/06/09 01:23:30 tH05Iyw+
そ、そうだ、棚にリンゴがとってあったのね!
そのリンゴは本来タバサのもので、食べたらお仕置きだから、と言い含められていたのだが。
背に腹は換えられないのね!ていうかおねえさまの子供にあげるんだから問題ないのね!
シルフィードは棚からリンゴを出すと、近くにあったナイフで不器用にリンゴをざく切りにした。
そして、そのへんにあった紙の上にのっけて、二人に差し出す。

「コレ食べて待ってるのね!おねえちゃんはパパとママを捜しにいくのね!きゅい!」

リンゴを受け取った二人を尻目に、シルフィードは部屋の外へと駆け出した。
子供ほっぽってどっかしけこむなんてお姉さまもヒジョーシキなのね!見つけたらオシオキなのね!
激しく勘違いなどをしながら。

部屋に残された二人は、あっというまにリンゴをたいらげてしまった。
お腹がすいていれば当然である。
そして、リンゴ一個では当然ものたりないわけで。

「おなかすいたねー」
「ねー」

言って二人はきょろきょろと部屋を見渡す。
他に食べ物はないか捜しているのだ。
才人は様式を含めてこの部屋は自分の全く知らないものだと思っていたが、タバサはなんとなく、この部屋を知っている気がしていた。

「サイトはここでまってて。たべものさがしてくる」

言ってタバサは毛布だけを体に巻きつけてベッドから降りる。
才人はそんなタバサを手を振って見送った。

「がんばってねー」

大人の才人なら自分から率先して食べ物を捜しに行くところだが、子供の才人はある意味ものすごく図々しかった。
さがしてくれるっていうなら、さがしてもらおうっと。
そして自分は、ふかふかのベッドの上で飛び跳ねてみたりなどしてみる。
才人がベッドの上で遊んでいる間に、タバサは先ほどシルフィードがリンゴを取り出した棚に目をつけた。
ここなら、何かあるかもしれない。
しかし、シルフィードが開けていた扉は高い位置にあり、自分の背では届かない。
仕方なく、一番下の開きの扉を開ける。
そこには、様々な形と色の、ガラス瓶が並んでいた。

「のみもの、かなあ」

しかし、中には黒いインクの入った壷や、銀色のどろりとした液体を満たしたものもある。
どうやら、飲んではいけないものもまじっているようだった。
どれがのめるんだろう、と考えながらタバサが飲めそうなものを捜していると。
一本の、小さなガラス瓶が目に留まった。
それには、小さな青いリボンが巻きつけられていて、そのリボンの先端に『とっておき』と書いてあった。

「これ、のめそうかも」

中には赤い液体が満たされている。
ぱっと見、飲んでも大丈夫そうだ。
タバサはこれを持っていく事にした。

328:タバサと小さな才人 ◆mQKcT9WQPM
07/06/09 01:24:30 tH05Iyw+
タバサがベッドに戻ってくると、才人がベッドで跳ねていた。

「なにしてるの!」

タバサがその歳に見合わない声を出す。
才人は思わずびくっ!として身体を縮こまらせる。
タバサはよっこらしょ、とベッドの上に登ると、才人の鼻先に指をつきつけた。

「ベッドのうえでとびはねたらだめって、おかあさんにいわれたでしょ!」

才人は憮然とその指を見つめて、言い返す。

「…ウチのおかあさんは『マットがこわれてなかったらはねていい』っていってたよ」

…どういう教育をしていたのだろうか。
しかし、その言葉にタバサはさらに反撃する。

「いうこときかないなら、のみものあげません」

言って、手にしたガラス瓶を抱き締める。

「えー」

才人は一度、不満そうにそう言ったが。

「しょうがないなー」

タバサのいう事を聞く事にした。
お腹もすいていたし、喉も渇いていたからだ。
今も昔も、才人は欲望に素直な性格だった。
才人がいう事を聞くというので、タバサは手にした瓶を才人に差し出した。

「これ、そこのたなでみつけた」
「なにこれ?」
「わかんない」

才人は受け取った瓶を傾けたりして、中身を確かめる。
赤い液体が、そのガラス瓶には満たされていた。
才人は自分の知識の中から、その中身を予想してみる。

「いちごじゅーす?」
「イチゴなのこれ?」

タバサの疑問に、才人は首をかしげる。
この中身がイチゴだという保証はどこにもない。
しかし、中身を確かめる方法はあった。

「のんでみる」

言って才人は、瓶の蓋を開ける。
くんくんと匂いをかいでみるが、これといった匂いはしない。
のんでもだいじょうぶそう?
とりあえず、飲んでみることにした。

329:タバサと小さな才人 ◆mQKcT9WQPM
07/06/09 01:25:10 tH05Iyw+
才人は瓶に口を付けると、その液体を一口、飲み込んだ。

「うえ」

まずい。変な味がする。

「これいちごじゃない~~」

眉をへの字にまげて、才人は顔全体でまずさを表す。
その顔が滑稽で。

「ぷ」

思わずタバサは笑ってしまう。
才人はあまりの後味の悪さに、まだ顔をしかめている。

「ねえ、そんなにまずい?」

子供は、とにかく好奇心が強い。
たとえそれが否定的なものだとしても、経験した事のないものには興味を示すものだ。
タバサはまずいまずいと言われるその飲み物を飲んでみたくなったのだった。
そして。

「なにこれ。まずい~」

口に含んで文句を言って。
二人で顔を見合わせて、大笑いしたのだった。

330:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/06/09 01:26:26 tH05Iyw+
以上。続きは明日。
さ、寝なきゃ寝なきゃノシ

331:名無しさん@ピンキー
07/06/09 02:12:22 +PNlwqVE
一番槍でGJと賛美を遅らせていただく

332:名無しさん@ピンキー
07/06/09 02:27:27 g8P1UJyH
せんたいさんGJ!
いつもながらいい仕事だぜ

333:名無しさん@ピンキー
07/06/09 02:43:20 NUO19Tn7
へんたいさんのネタの底無さには脱帽です。
どうなるんだろうwktk

334:名無しさん@ピンキー
07/06/09 04:52:40 HtY/wUpw
GJであります
ところで才人が記憶喪失になってそれをルイズが
献身的に看護し、才人も少しずつ心を開いてくという電波を受信した

335:名無しさん@ピンキー
07/06/09 05:40:10 mnbXx1q0
せんたいさん、GJ!
赤い液体ってまさか…

336:名無しさん@ピンキー
07/06/09 06:47:42 g8P1UJyH
>>334
どっかで聞いたことのある話だw
わかんねーけどね。
毎回毎回せんたいさんのSSのネタはどこからくるんだろう
って思う。続きまってます。

337:名無しさん@ピンキー
07/06/09 07:26:23 b4EHv+R6
においがしないイチゴジュースなんて飲んじゃいけませんGJ
続きもwktkして待ってる

338:痴女109号
07/06/09 19:32:37 kIHtn6WC
お久しぶりです。
お久しぶりすぎて、忘れられてるかもしれませんが、投稿します。
>>前スレ643の続きです。


339:契約(その6)
07/06/09 19:34:39 kIHtn6WC

「……!!」

 才人は絶句した。
 
(どういう事態なんだ……これは……!?)

 いま、この部屋には、シエスタを含めて三人の女性がいる。
 タバサ。シルフィード。そして、この淫靡なイベントの主催者であるシエスタ。
―いや、何も知らない者が見れば、女性の人数は四人に見えたに違いない。そこに女装を強制された才人を加えたならば。


 いつもの通り、ノックもなしにイキナリ部屋に入ってきたシエスタに、当然のように突き出された、下ろしたてのメイド服。それと、ウィッグを含む数々の化粧用品。
「こ、このあたしを、お姉様の“いもうと”に戻して頂いて、有難うございます……」
 才人はそんなシエスタに、ぎこちない感謝の辞を述べ、彼女に為されるがままに着付けとメイキャップを施されてゆく。
 当然、ただ着替えるだけではすまない。
 才人の言葉に、鷹揚にうなづき、淫らな微笑を返しつつ、彼女はいつもの行動に移る。
 唇、ペニス、アナル、乳首、耳朶、うなじ、脇の下といった、才人の全身の性感帯を撫でまわし、存分に彼の悲鳴を堪能しながら、それでもシエスタは手際よく、才人を変身させてゆく。

 股間からペニスを生やした、とても残念な生き物……シエスタの“いもうと”に。


340:契約(その6)
07/06/09 19:36:32 kIHtn6WC

 はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……。

 メイクが完了した頃には、才人はいつものように肌を紅潮させ、息も絶え絶えになっていた。
 そんな彼を見下ろし、シエスタは言う。

「喜んでくださいサイトさん。今日はね、特別ゲストがいらしてるんですよ」
「え?」
「どうぞ、準備は出来ましたのでお入りください。―ミス・タバサ」
「なっ!?」

―いま、いま何と言いやがった!? たばさ? タバサと言ったのか!?

 その言葉に才人が愕然となる暇すらなかった。
 扉が開いて現れたのは、まさしく、彼が知る寡黙な少女、タバサその人であった。

 さらにその後ろから、
「きゅいきゅい、待ちくたびれちゃったのね!」
 という、いかにも無邪気な声とともに入室してきた、もう一人の女性。
 タバサと同じく、青く美しい髪を背まで伸ばした、二十歳前後の綺麗な女性。
「―しっ、シルフィ……!?」

「あっ、サイトっ!? どうしたのね? 何かいつもと違う格好してるのね」
「あ、いや、その、これは―」

―ばたんっっ!!

 必死に言い訳しようとする才人の口は、重い音と共にシエスタに閉じられた部屋の扉によって、遮られた。
「……しえすた?」
 とっさに、幼児のように救いを求める視線を、シエスタに投げかける才人。

 しかし、シエスタは、まるで彼の逃げ場を塞ぐかのように扉の前に仁王立ちになり、さらに彼を追い詰める。

「さあ、サイトさん、この方々に説明してあげてくださいな。―いまの自分が、一体どういう事になっているのか」
「そっ、そんなっ!?」
「逆らうんですか?」
「……!」


341:契約(その6)
07/06/09 19:38:25 kIHtn6WC

―ここまで、ここまでするのか、シエスタ……。

 何度も味わった、この絶望。
 絶望の淵に叩き落されていたはずの自分が、さらに深く、暗い闇の底まで引きずり落とされてゆく感覚。
 逆レイプに始まり、射精管理、飲尿行為、アナル開発、野外プレイ、さらには男性用貞操帯と授業中の道具責め。そして現在の強制女装からのレズセックス。
 シエスタの口が開くたびに、そこから紡ぎだされる新たな命令に才人は、いつもこの感覚を味合わされていた。すでにして希望を捨てている彼をして、更なる絶望の暗闇に叩き落す、彼女の恐るべき嗜虐性。

―何を言ってるんですかサイトさん。まだまだ、これからなんですよ。

 そして今もシエスタは、そう言わんばかりに両手を腰に当て、ねっとりとした視線を才人に送っている。

「きゅいきゅい、早く説明してサイトっ。一体なんでこんな格好してるのっ?」
「そうですよ、サイトさん。ゲストの方々をお待たせするのは、メイドとしてはとても恥ずべきことなのですよ。私は“姉”として、あなたをそんな“いもうと”に躾たつもりはありませんよ。ふふふ……」

 無邪気なシルフィード。その尻馬をあおるシエスタ。
 才人は、その迷える視線を、おそるおそる第三の少女……タバサに向けてみる。

 タバサの、常に自己の感情を窺わせない青い瞳。
 その美しい碧眼が、わずかに興奮の色合いをにじませつつ才人を射抜き、言う。

「早く」

 彼は、その一言を聞いた瞬間、まるで下半身が泥になったように、その場に崩れ落ちた。


342:契約(その6)
07/06/09 19:41:27 kIHtn6WC

 この、絶望的なまでに無残な姿を晒している自分を見て、あのタバサが、僅かにであるが頬を紅潮させ、目を潤ませ、笑みすら浮かべている。それも、シエスタと同質の淫靡な微笑を。


(もうダメだ)
「……あ、あたしは……」
(ダメだよルイズ……)
「あたしは、―シッ、シエスタお姉様の“いもうと”で」
(もう……限界だ……!!)
「ドジで間抜けで、いつもお姉様にご迷惑をかけて、お仕置きをして頂いている、サイトっていうメイドです」
(俺、もう、何か、壊れちまったよ……)
 才人は、全身を震わせながらひざまずき、
「ミス・タバサ、それにミス・シルフィード。こんな哀れなあたしを、ど、どうか、お姉様と三人で、……お、お仕置きして下さい……!」


 そう言って才人は、三人の靴にキスをした。


343:痴女109
07/06/09 19:44:26 kIHtn6WC
異常です。もとい以上です。
今週は何とか週末が空いたので、今晩中か、もしくは明日にも続きを投稿したいと思います。

344:名無しさん@ピンキー
07/06/09 20:20:59 ookqYXbs
>>343
うぉぉ、GJ!
相変わらず何と言うか凄まじいモノを…。
まぁ、嫌いじゃないっていうかむしろ好きだけどね。

345:名無しさん@ピンキー
07/06/09 23:57:56 mcnLGIu8
どこまで堕としていくんだシエスタ……
果てしない彼女の暴走の結末に期待wktk

346:名無しさん@ピンキー
07/06/10 00:48:33 oynfKjnL
>>291
>>330
>>343
GJ!!
あああ、このスレやべぇぇぇぇぇぇぇ
ちょっと高速行ってぬあわ遊びしてくる

347:痴女109号
07/06/10 03:43:27 V7ARRJ95
>>338-343の続きです。
もうやばいです。シエシエが恐ろしい勢いで壊れつつあります。
苦手な方は容赦なくスルーして下さる事を推奨します。

348:痴女109号
07/06/10 03:44:54 V7ARRJ95

 元来、この部屋はルイズの個室だった。

 そこに、使い魔として召喚された才人が同居し、さらに才人の“御付きメイド”となったシエスタが押しかけてきて、いつの間にやら三人部屋になったのだが、それでも、この部屋の家具や、クローゼットの衣装などはほとんどがルイズの私物である。
 つまり、この部屋の中には当然の事ながら、ルイズの体臭こそが一番染み付いている。
 ベッドにも、シーツにも、枕にも、布団にもである。
 そんなルイズの匂いにまみれた夜具の中で、彼女の夫になるべき男を蹂躙する。
 
―シエスタの優越感をこれ以上ないほどに刺激するこのシチュエーション。
 
 そして、肝心の“寝取られ男”は今、彼女―シエスタにスカートをまくりあげられ、四つん這いになって剥き出しの尻をさらし、シエスタにアナルを舐められていた。
 その連日の荒淫ですっかり黒ずんだ彼の菊門はパックリと口を開き、そこから伸びた黒い細紐の先には、金属製のリングが鈍く光っている。

―シエスタのアナルパールの紐であった。


349:契約(その7)
07/06/10 03:47:26 V7ARRJ95

「きゅいきゅい、すごい! シルフィ、とっても気持ちいいのねん!!」

 ワンワンスタイルになった才人の頭部は、シルフィードの細く長い両足に挟まれ、拘束されている。
 いくら人間の姿をとったところで、元はドラゴンである。恐らく彼は、かつて経験した事のないパワーで頭蓋を圧迫され、必死になってシルフィードの恥部に舌を振るっているはずだ。

「きゅいきゅい!! こんなのっ!! こんなの初めてなのねんっ!!」
 いまシルフィードの神経を、どれだけの快楽電流が迸っているかは、そのムダ毛一本生えていない白い美脚が、真っ赤に紅潮している事でも予想はつく。

「きゅい~~~~~~~~~!!!」

 二十歳前後の容貌に似合わぬ甲高い声を発し、シルフィードの全身から、一気に力が抜けた。
 首の骨を捻り折られる前に、どうやら才人が、この竜の幼生を頂上に追いやったようだ。
 イったシルフィードも、イカせた才人も、互いに肩で荒い息をしながら、ベッドに突っ伏した。


(当たり前よね)
 シエスタは、余韻に酔いしれるシルフィードを見て、むしろ自慢気に鼻を鳴らした。
 この“いもうと”は、シエスタが都合数十時間の連続調教の果てに、女性を(と言うか自分を)悦ばせるためのあらゆる手練手管を叩き込んだ、いわばシエスタ自慢の『作品』でさえある。
 いかに伝説の風韻竜といえど、いかに妙齢の美女に変身していたとしても、所詮は幼竜一匹、“いもうと”の手にかかれば物の数ではない。


350:契約(その7)
07/06/10 03:52:07 V7ARRJ95

「んふふふふ……サイトさんったら、ホント学習しない人ですねえ」

 そんな上機嫌とは裏腹に、シエスタは尻肉に、がぶりと歯を立てる。
「~~~~~っっ!!」
「私はサイトさんに『お尻を差し出しなさい』と言ったんですよ」
 彼の臀部に歯型を生産しながら、シエスタは言葉を続ける。
「誰が休んでいいと言ったんです? あなたがこのベッドでお休みになれるのは、ここにいる全員が、あなたを罰し終えてからなんですよ。まだそんな事も分かりませんか?」
「すっ、すびばせんっ! お姉様っ!!」

 そう言われて才人が、満面の恐怖を浮かべながらシエスタを振り返る。
 が、当然シエスタは彼を許すつもりはない。

「さあ、どういうお仕置きがいいでしょうか、ミス・タバサ?」
 そう言いながら、シエスタは視線をタバサに移す……が、その時になって、彼女の姿が自分の視界にないことに気が付いた。


「このリングは何?」

―っっっ!!?
 肩越しにかけられた冷静な声音に、シエスタは驚きの余り、体勢を崩して振り返る。
(いっ、いつの間に私の後ろにっ?)
 そこには、碧眼碧髪の眼鏡っ娘が、まるで理科の実験でも観察するような冷静な眼差しで、シエスタを見つめていた。

「それに、サイトの肛門が完全に口を開いてしまってる」

 いや、彼女が見つめていたのはシエスタではない。
「何をしたらこうなるの?」

 タバサの眼中にあるのは、あくまでも才人一人なのだ。
「この、お尻のリングが関係してるの?」


351:契約(その7)
07/06/10 03:55:49 V7ARRJ95

 タバサは、シエスタの隣―丁度、才人のアナルを最もいい角度で覗ける場所に移動してくると、そこで初めてシエスタを振り向いた。
「引っ張っていい?」

 どうやら、タバサは才人のアナルから生えたリングに御執心らしい。
「その必要はありませんわ」

 シエスタは、さっきの驚きはどこへやら、逆に誇らしげに答える。
 彼女としても、才人の調教状態をタバサに示せる事が嬉しくてたまらないらしい。
「ミス・タバサのお手を煩わせるまでもありません。―サイトさん」
 シエスタは、歯型をぺろりと一舐めすると、闇に沁み入るような声で命じた。


「『産卵』のお時間ですよ」


「こっ、ここでですかっ!?」
「私に恥をかかせるおつもりですか、サイトさん?」

 その一言で才人の口答えは終焉を告げた。
「あ、いや、その、申し訳有りません、お姉様……」

 生半可な反抗が、どれほどの“罰”となって我が身に帰ってくるか、彼はもう、骨の髄まで承知しているのだろう。タバサには、そんな才人がとても新鮮に見えた。



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