【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合16at EROPARO
【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合16 - 暇つぶし2ch19:6/6
07/05/30 03:00:40 Kao6l/pG
「メイジの前で喋りすぎですな」

 ざくざくと草を分けながら、コルベールが近づいてくる。

(待て? 何故だ? そんな筈無い、お前詠唱は?)
「わたしのような仕事をしていたメイジは、悟られぬように詠唱をする事も、
 詠唱を中断して喋ることも出来るのですぞ」

 詠唱を終了させた後、死にたくないなら投稿しろと、
 のん気な事をした事があるコルベールは苦笑いしながら言った。

「炎が得意なメイジだからといって、火の系統魔法しか使えないわけではありませんからな、
 動きを止めるのに『ライトニング・クラウド』を使わせてもらいましたぞ」

 ……読まれて……いた……
 悔しかった。
 舐められていた所ではなく、この男の手の上で踊っていただけ。
 そんな無力感に打ちのめされる。

「さて、これでわたしの勝ちですな」

 力の入らない手から、するりと剣が抜きとら……れ……

 しまったっ、……何言った? さっきわたしは何を言った?
 『何でも言う事を聞いてやる』……そう……言わなかったか?

『やぁぁぁぁぁっ、寄るなっ、こっち来るなっ……いやっ……止めて……』

 必死で逃げようとしても、身体にはまったく力が入らない。

『……や……だ……こんなの……こんなの……』

 メイジが相手でも勝てると、リッシュモンを倒した時から自分は驕っていた。
 その結果が……

「何でも言う事を聞いてもらえるんでしたかな?」

 杖と剣を持った男が、無力なわたしを見つめて……
 無骨な手が腰の辺りを探り、強く引き寄せられる。

『いやぁぁぁぁぁ……って?』

 どこか懐かしい背中に乗せられて、わたしは医務室の方に運ばれていた。

『な、なんで?』
「……シュヴァリエ・アニエス……『何でも言う事を聞いてやる』の件ですが……」
『……ベ、ベットで言う事を聞かせる気か? 外が嫌なだけなのか?』

 喋れないわたしに、不器用なウィンクと共に告げられたのは、

「女性があんな事を口にしてはいけませんな、以後二度と言ってはなりませんぞ……と、言う事でいかがですかな?」

 格好つけすぎだ……

 でも……両手に力が入らないのが……
 優しい背中に自分の意思で触れられないのが、無性に悲しかったことだけは確かだった。


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