【DS】世界樹の迷宮でエロパロ B4Fat EROPARO
【DS】世界樹の迷宮でエロパロ B4F - 暇つぶし2ch150:名無しさん@ピンキー
07/06/22 09:44:10 w/tzewKt
最後はさイヌビトは旅回りの見せ物小屋に売り飛ばされちゃうんだ
そして旅回りの先のある村の見物客の男の子がイヌビトの事を好きになって後先考えずに連れ出して逃げちゃうんだ
見知らぬ土地での未来なき逃避行
そんな中で幼く拙い男の子の親切に次第に頑な心を溶かしていくイヌビト
そして確実に背後に迫っている追っ手
二人でいられる最後の時間を感じたイヌビトは涙目で焦る男の子に優しく子犬のようにすり寄っていく。月明かりが落とす影の下で慰め合う動物のように重なっていく二つの影…
そして唐突にそして荒々しく訪れる別れの時…
朝日の中で引き裂かれる二人
無数の手によって連れ去られながらも静かに優しい目で男の子を見つめるイヌビト
それとは対照的に無様に泣き叫んで大人の暴力に打ちのめされて己の無力を噛み締める男の子…
すべてが過ぎ去り男の子に残ったのは一瞬で過ぎ去っていった初恋とも呼べぬ程の甘くも苦い日々の思い出と一つの噂

いわく世界樹の迷宮と呼ばれる遺跡にモリビトなる人に似て非なる者たちあり

そこにいるのは彼女ではない。しかし自分は彼女がどういう存在だったのか?他にも彼女のような境遇の存在がいるのか?それを確認する義務がある
そういつの日か再びまた彼女と巡り会うために…



そしてエトリアの街に一人のパラディンの少年が辿り着くのはそれから5の月日が過ぎてからの事だった…


みたいな悲恋キボン

151:名無しさん@ピンキー
07/06/22 09:49:19 WBLDFlI/
>>150
それは君が書きたまえ!さあ、ペンを取るのだ!


まあ、何だ、助かって欲しいとか、逆に助からないで欲しいとかそういうのも含めてだが、
神の作品がいかなるものなのか、静かに成り行きを見守ろうではないか。
作者が読み手に意見を求めるなら別だけど。

152:名無しさん@ピンキー
07/06/22 12:39:19 GBRfmKdO
>>150
YOU、いっそ許可取って三次創作しちゃいなよ

153:名無しさん@ピンキー
07/06/23 00:45:04 Lky5XovY
モリビトの人、筆はやいですね……。
そして>150に期待。


たぶん断続的になりますが、投下します。一月ほど前にリク募集した件。

投票してくださった方々とスレ住人に捧ぐ。

154:名無しさん@ピンキー
07/06/23 00:49:20 Lky5XovY
「Spoiled Child」


>Main Characters

ユエ
 女ロリバード。シトナの弟子。明るく前向きな7歳。

シトナ
 男金髪レンジャー。幼女にも妹にも振り回されている15歳。


>Sub Characters

マリス
 女ロリメディ。シトナの妹。大人しく真面目だが、こと恋愛についてはエキセントリックな13歳。

イサナ
 女デコパラ。落魄した名門の出であり、未だ世間ずれしていない26歳。


注:3階層の描写を含む。ペドもの。エロまでは長い。和姦だが13歳未満なので強姦扱い。前作「Roundabout Song」より時間軸的に少し前。

155:SC
07/06/23 00:53:06 Lky5XovY
■第1話

 エトリアにある、とある小さな宿。迷宮に挑む冒険者の一派、“カヴン”は、
その宿の中庭を訓練場所として利用している。その日は何人かのメンバーが武装の
手入れなどをしていた。

 弓の弦の補強剤が乾く頃を見計らって戻ってきたシトナは、自分の得物が見当
たらず、首をかしげた。
「イサナ。ここにあった弓を知らないか?」
 問われ、大盾を磨く手を止めて、イサナと呼ばれた女性は顔を上げた。流れる
ような金髪をうっとうしげにかき上げ、簡潔に答える。
「あぁ、すまないな。処分してしまった。夕方までには買いなおしてくる」
 シトナは腕組みしてその返答を何度か反芻する。
 離れたところで型稽古をしているブシドーの少女が目に入る。納刀から居合いの
構え。抜き付けて貫突。身を返して首討ち。鋭さにはやや欠けるが、以前よりも
練れてきている。
「……処分したって?」
「くれてしまった」
「誰に」
「恵まれない子供に。
 無断ではあったが、気にするな。お前だってそうしたはずだ」
「そんな無茶な理屈があるか」
 弓は、同じものを買いなおせばすむというものではなく、自分に合わせて調整
しないと命中精度が出ない。迷宮では遠射や狙撃の機会は、ほぼ皆無ではあるが、
かといってどうでもいいとは言えない。
 もう少し食い下がろうとしたところで、白衣の少女がやってきた。
「どうかしたんですか?」
「あぁ、マリス、手間をかけた」
 イサナが顔を上げて答える。
 いえ、と答えて、マリスはイサナに小さな金槌を差し出す。
「お前にも謝らなくては。干していた服な。人にやってしまった」
「ええ? 誰にですか?」
 と、マリスがびっくりして聞くと、イサナは「恵まれない子供に」と、さっきと
同じ答えを返した。
「気に入ってたんですけど……」
 マリスは不満そうというよりも、困惑したように言う。ちなみに洗濯中だった
のは、以前は冒険中に着ていて、今は部屋着代わりにしていたチュニックだ。
「すまない。新しい服をプレゼントするから許してほしい。後で買いに行こう」
「……イサナさんがそこまで言うなら、構いませんけど。
 お兄ちゃん」
 と、シトナの方に目を向ける。彼女が生まれる前からのつきあいなので、視線
だけで何を言いたいかが分かる。

 ―相手によっては古着を着られるのが嫌なので見てきて。
 ―面倒くさい。っていうかどこにいるかも分からないのに無理だろう。
 ―いいから行け。

 いまだ稚気の残る小動物めいたつぶらな瞳のくせに、兄に対しては容赦がない。
シトナはため息をついて了解した。
「イサナ。せめてヒントを」
「私の勘では旧市街だ」
 短い言葉の応酬。こちらは付き合いは短いが、何度も死線をともにくぐった仲間
ゆえだ。

156:RS 5
07/06/23 00:58:45 Lky5XovY


 エセ聖騎士の勘しか当てがないが、結果を出さないとマリスが拗ねる。シトナは
とりあえず旧市街へと足を運んだ。
 このあたりは、エトリアで世界樹の迷宮が発見された後、流入してきた荒くれも
のどもが最初に入ったあたりの土地だ。スラムとは言わないが、粗製濫造された建
物も少なくはなく、今となってはどことなく錆びた鉄のような雰囲気がある。
 当然というべきか、やはり弓をかついだ人の姿は見えなかった。そもそも通行人
もほとんどいないが、たまに道端に座り込んでいる者がいる。彼らの多くは、迷宮
で大怪我をして働けなくなった冒険者だ。ほんの一握りの成功した冒険者や商人の
影には、多くの敗者がいる。シトナたち“カヴン”は、幸い大きな被害を出すこと
もなく、着実に冒険者としての実績を積み重ねていっているが、明日は我が身とい
うこともありえない話ではない。
 彼らの前に硬貨を放ってやって、聞き込みの真似事をしてみるが、特に情報は得
られなかった。
 そんな風にして狭い通りを歩いていると、石塀の上にいた猫と目があった。
 そういえば森には虎だの狼だのはいても、犬や猫はいなかった気がするな。巨大
な猫は嫌すぎるが、などとシトナは間の抜けたことを考えている。
 やがて猫はふいと目をそらし、こちらに興味を失ったように行ってしまった。
 なんとはなしにその後を追ってみる。

 とん、と猫が塀から飛び降りる。そのまま悠々と歩いていき、やがて猫は崩れか
けた門のある家に入っていった。
 廃屋とはいえさすがに中までついていくわけにもいかない。シトナは足を止める。
 と―前庭の半ば野生化しかけた植木の先、曇ったガラスの向こうに、見慣れた
曲線のフォルムがあった。時々ひょこひょこ動くところを見ると、誰か弓を持って
る者がいるらしい。
 シトナは少し躊躇したが、あれは自分の弓だろうという確信はあり、(というの
も、有力な冒険者である彼らは、装備もそれに相応しいだけ高額なものを揃えてい
たので。)庭先へと足を踏み入れてみることにした。
 少し入っただけで荒れた様子が分かる。壁に塗られた白いペンキは剥げかけ、灰
色に変色した木材の地がところどころ見える。石の柱は、下の方は割れてその隙間
から雑草が顔を出していた。
 ガラス窓と蜘蛛の巣の向こうに、幼い女の子の姿が見えた。身長は彼の半分もな
いかもしれない。手にした短弓はほとんど長弓のように見え、樹海の植物で編んだ
ドレスは、ところどころぶかぶかなのをピンで無理やり留めている。鰐皮のマント
だけは、イサナが切ってやったのか、ちょうどいい丈になっている。

「見て、ママ! ユエ、ぼーけんしゃになったの!
 だからね、もうおくすりだってごはんだってだいじょうぶだよ」

 彼女の向かいには、粗末な木の寝台があって、痩せ窪んだ顔の女が寝ていた。開
かれたままの瞳を見るまでもなく、死んでいることが分かった。
 女の子の精一杯の呼びかけは続いている。これから森へ行ってすごい宝物をたく
さん見つけてくる。ずっと下まで行く。土の中のもっと下まで行く。ユエは強いん
だから大丈夫。ぜったいに泣かないし、ママをぶつあいつが来てもやっつけてあげ
る。だからもう大丈夫。ユエは強いから心配ないよ。

157:SC
07/06/23 01:01:21 Lky5XovY

 おおよそそのような内容のことを、シトナは目を伏せて聞いてた。時折、この街
には栄光と同数の悲劇があるのではないかと思う。帰らざる恋人。独り生き残った
男。ひたすら木を伐り鉱石を掘りつづけるだけの奴隷。
 彼は手を上げかけ、一度下ろし、もう一度持ち上げて、窓をノックした。
 女の子がこちらに顔を向ける。顔色がよくない。衰弱しかけている。
「だれ……?」
「君が会った、長い髪のお姉さんの友達です」
 できるだけ優しい声をつくる。
「入ってもいいかな?」
 女の子は黙って彼を見ている。
 シトナは窓を開けて家の中へと入った。ベッドの方を手で示し、
「きみのママ?」
 と聞くと、女の子はこくんと頷いた。
「パパは?」
「いない」
「そう」
 シトナは、儀礼的な動作で死者の唇にネクタルを流し込み、しばし待った。
 予想通りではあったが、何も反応は起きない。蘇生薬にも限界はある。
 彼女のまぶたを閉じてやり、ひざをついて、その魂の安らかならんことを祈る。

「ママ、もう起きないの?」
 いつの間にか隣に来ていた女の子が聞く。シトナは頭をなでてやった。亡骸に話
しかけながらも、母が目覚めないことは分かっていたのだろう。
「そろそろ天国につく頃でしょう」
 シトナは女の子を抱き上げた。羽のように軽いのが哀れだった。
「葬儀をしなければ。……お葬式は分かりますか」
 シトナはあくまで優しく穏やかに聞く。うん、と女の子はうなずく。
「一回、隣のおじいちゃんのときに、いったことあるよ」
 その時に食べた、おいしかった食べ物のことをしゃべり出す。
「そう。ええと、ユエちゃんでよかったのかな。何か好きな料理はありますか? 
宿に行ったら一緒に夕食を。それから、今夜はゆっくり眠って、休んで」
「…………ママは?」
「すぐに迎えにきます。先にユエちゃんを。ママは俺ひとりでは運べないからね」
「ユエも手伝うよ!」
「ありがとう。でも大丈夫。うちには力持ちがいますから」

 それからシトナは宿に戻って、彼女に甘い飲み物と暖かい食事を出し、“カヴン”
の何人かに協力を求めた。
 施薬院と提携している業者に僧侶と墓地を手配させ、執政院にしかるべき届を提
出した。遺体には適切な処置を施させた。近所の者の聞き込みと執政院の記録から
親類縁者を探したが、そちらは係累見つからずという結果だった。

158:SC
07/06/23 01:03:43 Lky5XovY


 その夜、シトナはユエが眠るまで傍にいてやった。涙の後をそっと指で辿ってか
ら、自分の部屋へ戻る前に茶でも淹れようと、階下のロビーへ降りた。
「お姫様の様子はどうだ」
 と、声をかけてきたのは、イサナ。
「一応は落ち着いてる。……俺にも一杯くれ」
「どうだ、私の言ったとおり、弓はくれてやることになったろう」
 シトナは肩をすくめる。
「確かにな。ああ、いや、あの子の装備は近いうちにシリカ嬢に頼んで新調するが。
メンバーの武装は、ギルドの金庫から支弁するのが習いだ」
「ん? “カヴン”に入れるのか? あんな小さな子を? 面倒を見る、くらいは
言い出すとは思っていたが」
「すまないが、その点で議論する気はない。彼女が求め、俺が承認した。これはマ
スターとしての決定だ」
 ふん、とイサナは鼻をならした。といってもバカにしているわけではなく、面白
がっている。
「君もあの子も物好きだな。イニシエーションはいつにする」
「というか、この件では俺はむしろ文句を言いたいんだ。イサナ、彼女をあのまま
放っておいたら死んでいたぞ。なぜ保護しなかった」
「最初あの子が来たときは、我々に憧れていて仲間に入れて欲しいと、それだけの
話しか聞かなかった……というか、なんだか事情がありそうだったので深入りは避
けた。まさか天涯孤独になっていたとは。あんな状況だと分かっていたらそれなり
の手は打ったさ」
「にしても他にやりようがあるだろう。装備だけ与えて放り出すか普通」
「ははは、そういじめてくれるな。不幸な人間も貧しい人間も多い。袖すりあった
だけですべてを助けていたら、半月で金庫が空になるぞ? 総てを救い給えるのは
神だけだ。だから私は稼ぎの一部を教会に献じる」
 ついでに言えば、彼女は施薬院にも幾ばくかの寄付を行っていた。イサナは間違
ってはいない。成り行きを楽しんでいる様子なのが気に食わないが。

159:SC(第1話終わり)
07/06/23 01:05:51 Lky5XovY
「エセ聖騎士め……。まあいい。とにかく、当面あの子の面倒は見る。教育も受け
させる」
「そして冒険にも連れ出す?」
「……本人の希望は尊重する。あの子の気が変わるまではその方向で行く。危険な
探索には出さないが」
「どうなっても後悔しないか? 子供だぞ」
「どうせうちの半数は子供だ」
「言われてみれば、大人はクドゥとセシル、私と君―四人だけか」
 くつくつとイサナは笑う。なんとも素敵だな。
 だがシトナは不審そうに眉をひそめた。
「なぜ俺も入っているんだ」
「…………? 当たり前だろう。違うのか?」
「俺は15だ。まあ、大人と言おうと子供と言おうと、大して意味はないが。どう
せ年齢で測れるものなどたかが知れてる」
「……なんだと?」
 イサナは口をぱくぱくさせている。彼女がこれほど動転したところは見たことが
ない。シトナは少し溜飲を下げた。
「嘘だろ!」
 だん、とテーブルに拳を叩きつけ、勢い良く立ち上がる。
「なんだ、四六時中一緒にいるのに気づいてなかったのか。俺の演技も捨てたもの
じゃないな」
「く、このふてぶてしい態度で私より十も下だったのか!?」
「イサナ、苦しい」
「だまれ、この……この、無礼者!」
「首をしめる方が無礼だろ。……ああもう、離せ!」
 どうにかふりほどくと、イサナはテーブルにつっぷした。
「ちなみに何歳だと思ってた?」
 からかう声でシトナが尋ねる。
「……てっきり少し上くらいだと」
 うめくようにイサナが答える。
「それはまた。そういえば、最初、やけに礼儀正しい人だと思ったのだが、長幼の
序を守ってくれていたのか」
「ちょっとそこに直れ。今、シールドギロチンという新しいスキルを思いついた。
ヒスノの首討ちとどちらが強いか実験台になれ」
 残念ながらパラディンのスキルバリエーションに即死攻撃は増えなかった。上階
から泣き声が聞こえてきたからだ。イサナは舌打ちして上を指差した。
「姫君がお呼びだ。行ってやれ」

 もちろん彼はそうした。ユエが再び眠りにつくまで、彼女をあやし続けた。

160:名無しさん@ピンキー
07/06/23 16:37:00 MLlXCcHG
鳥男(右)受けきぼんぬ
女体化ハァハァ(´Д`;)


正直男のままでもいい

161:名無しさん@ピンキー
07/06/23 16:47:53 4fj4WEFK
フォレストデーモン女体化受け…

162:名無しさん@ピンキー
07/06/23 16:48:45 MLlXCcHG
あれ、左か?
いやこっちからみると左だけど
ん?やっぱ左か?
あ、茶髪のほうっていえばいいのか、うん。



アッー!

163:名無しさん@ピンキー
07/06/23 16:55:04 W6lKqACq
URLリンク(www3.uploader.jp)

確認するが、左じゃなくて右なんだよな?
マニアックだぜ…アンタ…

164:名無しさん@ピンキー
07/06/23 16:56:01 W6lKqACq
うわお、リロードしろ自分

165:名無しさん@ピンキー
07/06/24 00:09:29 yz9BGc9O
>>153
続きwktk

166:名無しさん@ピンキー
07/06/24 00:19:06 zGkyqydK
>>159
新作ktkr、シトナがクールカッコ良いです
ワクワクテカテカしながら続き待ってます

167:SC
07/06/24 02:35:35 So5pKZIu
■第2話

 ユエが“カヴン”に拾われてから、数ヶ月が過ぎた。
 彼らはさまざまな問題を、ひとつひとつ根気強くクリアしていき、やがて新しい
生活のリズムを確立した。
 ユエは冒険者として、吟遊詩人―バードを目指すことに決めた。歌唱スキルは
“カヴン”のもう一人のバードであるセシルに、時々レッスンをしてもらえるよう
頼んだが、基本的にはシトナに師事して、冒険者としての探索技術と、自衛のため
の弓術などを中心に学んでいる。


 シトナとユエは例によって宿の庭で訓練していた。
「野伏の弓とは即ち、足・貫・中・理・久」
 平坦で硬質な声で、シトナは淡々と講義をしている。
「足。最も肝要なるは腕にあらず足なり。迷宮における弓使いの戦いは、位置取りの戦い。
 味方に当てず、離れすぎず、確実に敵を射抜く。そのためには誰よりも速く。戦
いを制するのは常にスピードなのだから」
 ユエは小さな弓を構えている。
「貫。いかなる矢も貫かざれば甲斐なし」
 ややたどたどしいところを残しつつも、それなりにさまになってきている。
「中。あたらざる矢もまた然り」
 弦音。風斬り音。底を抜いた桶に張られた紙に穴の空く、破裂音。
「理。力の法則を知るべし」
 ユエの足元の矢は残り一本。
 シトナは、彼女の小さな手から、弓を受け取り、最後の矢を拾い、太陽を射るよ
うに天に打ち上げる。
 彼は的の方へ向かい、射終わった矢を回収し、的から離れる。
 と、先ほど打ち上げた矢が流星のごとく落ちてきて、枠ごと的を粉砕した。
 突属性攻撃最強を謳われる「サジタリウスの矢」である。矢の爆発的加速と落下
点の特定は、理―錬金術的・物理学的な裏づけが必要となり、敵をうまく落下点
に誘導し命中させるためにはフットワークを駆使せねばならず、まさに足貫中理が
高度に一体となって初めて有効となる。
 彼は何事もなかったかのように新しい的を設置し、女の子のもとに戻って、矢を渡す。
「久。その技の久しからずんば即ち野の露と消える。ゆめゆめ修練を怠るなかれ」
「せんせー」
「ん」
「……何言ってるか分かんない」
「問題ない。俺もまだ完全に理解していないから。
 さ、では最初から」
「うぃー」
 ユエはしたっと手を上げた。どこかずれた感じで二人は練習を続ける。

168:SC
07/06/24 02:41:44 So5pKZIu


「そろそろ休憩しませんか」
 と、マリスがお盆の上にグラスを並べて持ってきた。
 白衣ではなく、イサナに買ってもらった服装だ。気楽そうなブラウスに赤いリボ
ンタイをゆるく結び、フリルのついたティアードスカート。先日の一件で一緒に服
を買いに行ってから、どうもイサナはマリスを着せ替え人形にして楽しんでいる気
配がある。自分がイメージ的にトラッドかシックな服しか着れない分、マリスにふ
りふりなのを着せているのではないかとシトナはにらんでいたが、言うと首を落と
されそうなので黙っている。
 付け加えれば、彼自身もマリスとユエに服を着せたり、ボタンをしめたり、リボ
ンを結んだり、髪をとかしたりを彼女たちからねだられては、内心楽しんで世話を
しているので、ある意味では同志の邪魔をする気がおきない。

 三人でベンチに並んで、冷たいお茶で喉を潤す。小さい花を浮かべているのがな
かなか風流だ。
「おいし……」
 と、ユエが、にまーと笑うのにつられて、マリスも微笑む。
「お茶っ葉は普通のものですけど、水は森の深層から汲んできたものですからね。
疲れが取れます」
「このほのかな甘みがいいな」
 と、シトナが適当に相槌を入れると、マリスは目をぱちくりさせた。
「甘い……ですか? むしろしょっぱいかすっぱいのでは。お兄ちゃんの分には私
のいろんな汁が入ってるんですけど」
 シトナは口に含んでいた分を吹き出した。むせる。
「うーん、やっぱり好きな人のものだと甘く感じるんでしょうか。
 ……大丈夫ですか。落ち着いて飲まないとダメですよ?」
「お、お前、何を、ゴホッ、何を入れた!」
「あれ、信じました? 同じポットから注いだのに。妹のかわいいジョークですよ」
 マリスはしれっと言う。シトナはまだむせている。ユエは背中を叩くか、なでる
か、どちらが正しかったか悩んで、結局ぺちぺち叩く方を選んだ。威力がないので
意味がない。
「せんせー、いつもはかっこいいのに、マリスお姉ちゃんの前だと変になるね」
 ユエの率直な言葉は、前半はさておくとしても、思い当たる節が色々あって、シ
トナはがっくり肩を落として落ち込んだ。
「あー、ということは、いつもは私と一緒にいないことになるんですねー。くやし
いなぁ。っていうか許せませんねぇ、このこのこの!」
 マリスはユエと二人でシトナをがんがん叩き出す。無手の格闘ではほぼ最強を誇
る殴りメディックだけあってかなり痛い。
「ええい、やめんか。ユエも一緒になってはしゃがない」
「だってー」
 マリスがふくれると、「だってー」とユエが真似する。
 二人にでこぴんをかまし、
「一緒にいるのは迷宮にいるときと寝るときなんだから、ユエにとってのいつもと
違うのは当たり前だろうが」
「そういえばそうですね」
「マリスお姉ちゃん、せんせーと一緒に寝てるの? ユエも一緒がいい!」
「うーん、もうちょっと大きくなってからじゃないと身体が痛っ! お兄ちゃん痛
いです!」
 途中から悲鳴と抗議になったのは、こめかみに突きをくらったからだ。
「もー、乱暴なんですから。ねー?」
 と、自分のことを棚に上げて言うと、ユエも「ねー」と真似する。非常に楽しそうだ。
「ああもう、いつの間にか仲いいなお前ら……」

169:SC(第2話終わり)
07/06/24 02:44:59 So5pKZIu
「じゃあ、ユエちゃん。練習が終わったら部屋においで。
 私かイサナさんがいるときは―あとお兄ちゃんもだね。一緒に寝れるようにす
るから、準備しよう?」
 と、マリスが「お姉さん」の口調で言って、それだけで済ませておけばシトナも
ちょっと見直すのだが。
「ついでにお兄ちゃんを好き勝手する方法も教えてあげる」
 彼女は余計なことを付け足し、
「うん!」
 と、ユエは元気一杯うなずいた。
「……不穏な同盟が組まれつつある気がする」
 シトナは嫌そうに頭を抱えたが、彼女たちがかなりタチの悪い意味で不穏な行動
に出ようとは思ってはおらず、そのあたりが妹に好き勝手されている所以であった。


 その後練習に戻り、的相手も飽きてきた、と言い出したのが、シトナだったか、
ユエだったかは、二人ともよく憶えていない。
 そこから、よし、動く的を狙ってみろ、と言ったのは間違いなくシトナだ。
 催眠術的歩法―トリックステップを駆使して幻惑する彼に、みごと3本目にし
て直撃コースの矢をユエが放ち、その日の夜には、もはや実戦あるのみだ! と盛
り上がったのは場の空気というやつであり、翌日、本当に二人で迷宮の深層に潜っ
たのは、魔がさしたとしか言いようがない。

 最悪のタイミングだった。誰にとってかは分からないが。

170:名無しさん@ピンキー
07/06/24 05:35:53 haz8QOI9
文章巧いなぁ……物書きとして羨ましい限り
GJです!

171:名無しさん@ピンキー
07/06/24 14:39:47 iJz7/kof
>164氏
誰にだって間違いはあるさ

172:名無しさん@ピンキー
07/06/24 19:07:42 L9yBfY4I
>>168
すまない、まだ流し読みだがこれだけは言わせてくれ
メディ子着せ替えGJすぐる

173:モリビト少女その後~五話~
07/06/24 21:52:17 5ED08Cpo
「アポカリプト」見に行ったけど、面白く無かったよ畜生!
おとなしく「300」見に行ってれば良かったー!失敗したー!
こうなったのもモリビト!お前のせいだ!
徹底的に痛めつけてやる!笑ったり泣いたり出来なくしてやる!

…などと馬鹿な事を言ってすいません。モリビトの五話目が出来たので投下します。
相変わらずの鬼畜陵辱話なので、肌に合わない方は読み飛ばして下さい。

作中の登場人物は以下の通りです。

モリビト少女:私

レンジャー:アンスタン  ダークハンター:デジール   メディック:キュリオジテ
アルケミスト:ピール    ブシドー:ゴウ

建物から建物へと続く橋の上で、二組のパーティが相打っていた。
一組は五人、どれも屈強な男たちだ。
もう一組は、剣士風の娘と黒装束の二人。
五人組はアンスタン達一行、二人組みはレンとツスクルである。
どちらもエトリアで知らない者はいない有名な人物達だ。
どうしてこうなったのかはわからない。
分かっているのは、今は敵として戦っているという事だけだった。
数十合、白刃がきらめいたであろうか、ついに一方が膝をついた。
「強くなったな…冒険者よ」
レンは剣を杖代わりにして自分を支えながら言った。
「私たちの負けだ…。真実を知りたければこの先へ行け…これが必要になるだろう」
そういってレンは小さな銅板を差し出す。
アンスタンはそれを受け取ると、口の端を吊り上げる。
「言われなくても最初からそのつもりさ、通してもらう。
 だがその前に後始末をつけないとな。俺は歯向かった奴等は許さない男なんでね」
その言葉を聞いてツスクルはレンの側にすり寄った。
「…どうする…つもり…」
「なに、反省する時間をやるだけさ。お前等が地面に着く間に
 自分がしでかした行動について考える時間があるだろうよ」
そういって二人の側へ近寄って行くアンスタン。
それをキュリオジテが押し止める。
「しばしお待ちを、リーダー」
「止めるのか?キュリー?」
後ろを振り向き、イラついた様に靴をトントンと鳴らす。
「はい。この方達には幾ばくの恩義があります。それがまず一点」
キュリオジテは更にアンスタンへと近づいた。
「それに、負けた事を当人達に喋らせれば、私達の名声も上がるというもの。
 ここで始末しても迷宮深くに死体が転がるだけ。誰も知る由もありません。ここはお考え直しを、リーダー」
耳元でそう囁き、仰々しい態度でさがる。
「それもいいかもな…おい」
アンスタンは二人に向き直る。
「我ながら甘いと思うが…見逃してやる。ただし、俺等に負けた事を会う奴等に言え。
それぐらい簡単だろ?」
「いいだろう…それは事実だしな」
「決まりだな」
レンとツスクルの横を通り過ぎようとするアンスタン。
それをまたキュリオジテが止める。

174:モリビト少女その後~五話~
07/06/24 21:54:13 5ED08Cpo
「今度は何だ?」
「いえ…予想外の事に私達も疲労しています。本日は一旦戻って休養するのも良いかと」
アンスタンはしばし考えていたが、やがてニヤリと笑って言った。
「たまにはいいか。引き上げるぞ、みんな」
その言葉に他のメンバーは身支度を整える。
踵を返す一行だったが、一人だけ足を止める者がいた。
「どうした、キュリー?」
「私はここに残ります。お二人の手当てをしてから戻りますので、先に皆さんはお帰り下さい」
「ふぅん、まあいいか。気をつけろよ」
アンスタン達は樹海機軸のある場所へと戻っていった。
それを見送るキュリオジテ。彼等が見えなくなると二人の側へ近づく。
鞄から医療具を取り出すと二人に手当てを施し始めた。
薬品を塗り、包帯を巻いて止血をする。
「殺そうとむかって来た私たちを治すとな…変わった奴だな」
「先にもいいましたが、貴方達には恩義があります。借りを返すまでは死なせませんよ」
それに、と手当てを止めずにキュリオジテは続ける。
「貴方達を差し向けた黒幕の話も聞きたいですしね」
それを聞いてレンの眉が曇る。
「知っているのか?」
「だいたいは。しかしまだ確証が持てません。差し向けられた貴方達から聞き出す事にしましょう。
まさか命を助けた私を無下にする行為は、高名なサムライのレン殿はなさらないでしょう?」
レンは苦渋の顔を浮かべてツスクルの顔を見た。
ツスクルはレンを見つめ、無言で頷く。
目を閉じてレンは大きな溜め息をはいた。
「策士だな、君は。いいだろう、知っている事は話そう。我々は一旦死んだ身だからな」
「さすがはレン殿、聡明な方です。さて、詳細と参りましょうか?」
そういってキュリオジテは微笑んだ。

ここに囚われてから窓から見る光景は相変わらずだった。
いったいどれくらいの月日が流れたのだろうか?
日はいつも変わらず街を照らし、沈んで行く。
変わった事といえば、来た時より屈辱を重ね、生き続けている私。
私はどうなってしまうのだろうか?
解放という甘言に騙され、弄ばれる、愚かな、私。
このままいい様にニンゲンに遊ばれるだけなのか?
いやいや、とかぶりを振る。
弱気になっては駄目だ、生きていればきっと機会がある。
散っていった同胞を思えば、生き恥をさらすなど些細な事だろう。
これは試練なのだ、再興を遂げる為の試練なのだ。
今はまだ試練の途中、挫けてはいけないのだ。
「途中、途中、途中、途中………」
私は窓から見える景色に呟き続けていた。


175:モリビト少女その後~五話~
07/06/24 21:55:50 5ED08Cpo
夕方から夜へと変わる頃だろうか、部屋に一人のニンゲンが入ってきた。
ニンゲンは丁寧にお辞儀をすると私に言った。
「今晩は御嬢さん。既にお知りかもしれませんが、私はデジールと申します。
本日はわたくしめが御相手する事になりました。どうか一晩、宜しくお願いします」
冷ややかな声で私は答える。
「ニンゲン、いかに辱めをうけようとも私は挫けない。
やるならさっさとやるがいい」
おお!と大袈裟にニンゲンが両手をあげる。
「これは気丈な方だ。初めての時に私の下で暴れていた方とは思えぬ」
くっ…!
いけ好かないヤツだ、丁寧な態度に冷笑が見え隠れしている。
こういうのを慇懃無礼というのだろう。
「それに勘違いなさっては困る、私はただ貴女と食事をしようと思っているだけですよ」
「食事…だと?」
「そう、只の食事。喧騒をバックに酒場で食すのも興がありますが、
やはり食事というのは美女と一緒に頂くのが一番いい」
そう言いながら私の方へ手を差し出す。
「貴女も、一人で食べるより話をしながら食べた方が、気分が晴れるというもの。違いますか?」
「まあ…」
私は俯いて考え込む。
ニンゲンなりに気をつかってくれているのか?
確かに、長く囚われていて私は気が滅入っていた。
ニンゲンと顔を合わせるのは気に入らんが、多少は紛れるかもしれない。
「いいだろうニンゲン、食事ぐらいならつき合ってやる」
おお!とまた大袈裟にニンゲンが両手をあげる。
「これはこれは有り難い御返事、感謝いたします。野卑な連中と食事を取るのも
飽き飽きしていた所、なに、準備はわたくしめがいたします。
しばし御待ち下さいませ、お嬢様」
そういって、ニンゲンはにっこりと微笑んだ。


176:モリビト少女その後~五話~
07/06/24 21:57:20 5ED08Cpo
「まずはこの宴の喜びに、乾杯」
「あ・・・っ…うぐ…ぁ…」
ニンゲンが杯をあげ、口につける。
卓には二人分の食事が用意されていた。
ニンゲンは食前酒を飲み干すと、それらの料理に口をつけ始める。
私はそれを眺める事しか出来なかった。
ニンゲンはナイフとフォークと動かし、講釈を垂れる。
「うん旨い。このサラダ、オリーブオイルとの絡みが絶妙です。
酒場の女将の腕も良いですが、この宿のシェフも中々ですな」
「うぐ…ぁ…」
苦しい。
私は身をよじって苦しさから逃げようとするが、無駄な行為だった。
「いかがなされました?私の趣向はお気に召しませんか?」
「だ…れが…」
半ば茫とする意識を振り絞って悪態をつく。
ニンゲンはそんな私を見て首を傾げ、思い出したように
パン、と両手を打つ。
「これはこれは私とした事が気がつきませんでした。美女を前にして酒も注がないとは
何たる無作法、今お持ちいたしますね」
そう言って杯に酒を注ぎ、自らの口に含む。そして、席を立つと私の方へ近づいてきた。
「ぐ……」
私はニンゲンから逃げようとするが身体をもだえさせるだけだった。
当たり前だ、逃げられるはずがない。
私は縄によって天井の梁へと吊り下げられているからだ。
両手足を縛られ、仰向けの状態にされ首と腰と股間を結ばれる。
乳房の下と臍の部分に蝋燭を灯され、身動き出来ない状態で宙へと浮いていた。
奇妙な浮遊感とそれにともなう縄のくい込み、そして溶け出た蝋の不快感が
私を悩ませていた。
ニンゲンが髪を引っ張り、おとがいに手をかけ私の口を開かせる。
そしてそのまま接吻をする形で酒を流し込んできた。
舌を絡ませ喉の奥へと流し込もうとする。
「おぅっ…ゴホ、ゴホッ」
無理な体勢で飲まされた私は咳きこんだ。
飲みほせなかった酒が鼻や目にかかるが、ぬぐう事も出来ない。

177:モリビト少女その後~五話~
07/06/24 21:59:15 5ED08Cpo
「ふむ?アルコール類は駄目ですか?申し訳ない事をしました」
そういってニンゲンは私の下半身へと回りこむ。
「オードブルは充分に味わいましたから、今度はスープへと移りますか」
グイと、股間に張ってある縄を上へと引っ張られる。
「あひぃっ!?」
股間を刺激され、私は情けない声をあげた。
そのまま横へ縄をずらし、ニンゲンは私の股に顔を近づける。
しして私の陰部へと舌を這わしはじめる。
「あぁ…イヤ……」
身動き出来ない私は顔を左右に振って抗うが、振動で蝋を身体に撒き散らすだけだった。
狼が獲物の血を舐めるような、嫌らしい音が響き渡る。
いや、響き渡ったと感じたのは、羞恥の中にいた私の錯覚だったのかもしれない。
私はかぶりをふって、股間から聞こえてきる粘着な音に耐える事しか出来なかった。
蜥蜴が水面から顔を出すように、じゅるりとニンゲンが面をあげる。
「スープも素晴らしい…良い、実に良い!」
目に狂気の光を浮かばせながらニンゲンは両手をのばす。
髪、顔、首、そして胸から腰へと撫で、臀部を掴む。
「イイ…じつにイイ…辱めを健気に耐える貴方は最高ですよ…。
素晴らしい…素晴らしい戦利品だぁ………」
そしてテーブルにあったワインの瓶を取り、私の身体の上へと撒き散らす。
火を消された蝋燭の煤の匂いと、アルコールの濃厚な香りが部屋に充満する。
「肉料理には赤ワインが合いましてね…はあ、はあ、
さて、メインディッシュとまいりましょうか!」
両足を掴み、ニンゲンは私の中へがむしゃらに突き入れてきた。
蠕動に合わせて私の身体が所在無くゆらゆらと動く。
度々の行為によって、私の身体はニンゲンを受け入れられる様になっていた。
だが、望まぬ相手に良い様にされる行為は耐えられない。
私は涙を流して口を硬く結び、行為が終わるのを待つしかなかった。
ハア、ハア、と肉食獣のような荒い息遣いが耳に届く。
胸に生ぬるい感触がした。
「ひゃっ!?」
驚いて顔をあげると、ニンゲンが胸のまわりに残っていた酒を舐めとっていた。
そのまま私の乳首へと舌を這わし、歯を立てる。
「あぎぃ!」
私はたまらず声をあげた。
ニンゲンは私の首に掛けてあった輪の縄を引っ張る。
「あぐっ」
きりきりと輪が絞まり、息が苦しくなる。
腰を動かしながら荒い息を吐き、ニンゲンが叫ぶ。
「イイ!いいですよその表情!その苦痛に歪む顔!もっと私に魅せて下さい!」
腰を突き入れる度にニンゲンは縄を引っ張る。
その度に私は苦しくなり、ゴホゴホと咳きこんだ。
酒宴は、ニンゲンが満足するまで続いた。

178:モリビト少女その後~五話~
07/06/24 22:03:09 5ED08Cpo
153150
これで五話目終わりです。
正直、153氏の文章力が羨ましい。もうちょっと上手く纏められないものかorz
そして150氏のアナザーストーリーに超期待。とっておきの、wktkというやつだ!

179:モリビト少女その後~五話~
07/06/24 22:04:41 5ED08Cpo
書き込み最後ミスってるし…今日は早く寝ますね。
長文お目汚し失礼しました

180:名無しさん@ピンキー
07/06/25 07:14:00 z57OvMqf
>>179
毎回GJだぜ!
まさにフルコースだな!次は何が来るのかwktkだぜ。


そして勢い余ってレンツス陵辱もいくのかと期待してしまった外道な俺は鹿に掘られて来る

181:16
07/06/25 13:22:51 5nVupAhA
袴ブシ子とロリカメ子のロリ百合を考えていたはずなのに、気がついたら脳内モリビト祭になっていました。
というわけで、空気読まず、投下したいと思います。

メディック少年とモリビト(ピキーって泣いてる方)
とりあえずはキスだけ

182:16
07/06/25 13:27:16 5nVupAhA
 彼女たちは、いつもの巡回ルートよりも、少し遠出をしていた。
 近頃、人間がよく現れるようになったので、警戒範囲を広げておくべきだと思ったの
だ。
 奴らは、同胞を次々と……その、なんだ……辱めていっている。
 幼なじみのキーちゃんなんか、手も足も縛られて、猿ぐつわを噛まされたあげくに、鞭
で思いっきりひっぱたかれたのだ。
 なんという屈辱。
 あれ以来、キーちゃんの目は虚ろなのだ。
 ちょっとした物音にも体を震わせ、特に紐状のものを見ると、ぶるぶる震えてしまう。
「や、やらぁ……おしおきぃ、おしおきらめぇ、ゆるひて、ゆるひてくらひゃぁい、キー
を……わるいこのキーを、ゆるひてぇ、おしおきしてくらひゃぁい……!」
 な、なんという……!

 義憤に満ち満ちて歩んでいる、モリビトの少女。
 彼女の名前は、モーちゃん。執政院の資料でよく見られるモリビトたちと比べて、かな
り幼い。まあ、ようやく植木鉢から出てこられるくらいまで育ったばかりだから、仕方が
ない。頭の上では、アホ葉がぴょこぴょこと揺れている。
 彼女のそばをふよふよと浮いているのは、友達のコロちゃん。先日人間たちにフルボッ
コにされたコロトラングルの産み残した卵から、先日孵ったばかりである。モーちゃんと
はいつも一緒だ。
 名前が安直だといってはいけない。
 冒険者たちだって、大してかわらないのだから。

 彼女たちは、いつもの採掘コースよりも、少し遠出をしていた。
 近頃、レベルが少々上がったので、まあ、もう少しで歩いてもいいかなと思ったのだ。
 先輩冒険者がどんどこ迷宮を開拓していくが、彼女たちはマイペース。
 まあ、二人っきりで迷宮を歩いている時点で、そのマイペースっぷりもおわかりいただ
けようかと。
 レンジャーのはずなのに、先頭切ってすたすたと歩いている、レ子。ローラーズの
ショートパンツから覗いているおへそと、後ろからちょこっと見えてしまうお尻の谷間の
入り口が愛らしい。
 そのあとをひーひーいいながら追いかけている、若きメディックの、デイ。革鞄には念
のためにと買い込んだいろんなお薬がぎっしりである。さらには巨大な棍棒を引きずっ
て、重すぎて歩くのにも差し障りがあるのはどうかと思うが、平均的なメディックよりも
華奢な体躯では、致し方ないのかも知れない。
 名前が安直だといってはいけない。
 FOEだって、大してかわらないのだから。


183:16
07/06/25 13:28:40 5nVupAhA
「おー……ねーねー、なんかこの先にいるよー」
「へ?」
 遠目の利くレ子が、遥か先を指さして、叫んだ。
「何か、って何か、判る?」
「んー……もやもやぁ。FOEかなぁ? ……やっぱ判んないやー、あっははー♪」
 実は乱視なので、遠目が利くだけで、それが何かは判らないのであった。
「それが判らなきゃ、意味ないよな……レ子って、やっぱりレンジャー向いてないんじゃ
ないか……?」
「なにか言ったー?」
「いいや、なにも。しかたない、近づいてみようか」
 デイは、しれっと話を元に戻した。
 おそらくはFOEだろう。このあたりの階層のFOEは軒並み先輩たちが駆逐したはずだが、
いまは月に一度も来ないのだ。復活したFOEがうろうろしている可能性は、高い。それをど
うにか出来るぐらいのレベルには達しているし、治療薬だけではなく、その、いろいろな
薬を用意してあるのだ。対処は出来る。
 そう考えて、デイは近づこう、といったのだが。
 レ子は、すでに駆け足で『もやもや』に突っ込んでいっていた。
「あ……ありえない!」
 いつもこうだ、こうなのだ。
 思慮が浅く直情的で!
「ま、待ってよ、レ子!」
 デイもあわてて駆けだした。革鞄と棍棒のせいで、フラフラする。

「やっぱりFOE! さーあ、狩りの時間だよぉ!」
 レ子が見た『もやもや』は、やはりFOEだった。
「あ、あれってもしかしてコロトラングル!? なんでこんなところまで!」
 ふよふよと浮いているマンタのような生き物は、しきりに威嚇の吠え声を上げている。
「きゅくるるー!」
「……な、なんかかわいい鳴き声だけど……」
「稚魚だよ! 軟らかくっておいしいんだよ!」
「聞いたことないっ! むしろ防御力高いし! っていうか、食べたことあるの!?」
「ないっ!」
「また口から出任せを!」
「人類最初のコロトラングル・イーターを目指すのもいいと思うよっ!」
「いつもに金鹿のお姉さんに言われてるじゃないか! ホラは一日3回までって!」
「今日はまだ2回目だもーん♪」
 そんな掛け合いをしている間にも、レ子は矢をつがえ、デイは逃げるか戦うか一瞬迷っ
て、革鞄の中に手を突っ込んだ。
「きゅくるるるーるーるーるー!」
 戦闘の気配を感じ取ったのか、小さなコロトラングルはさらに吠える。
 とってもかわいい。
「おー、やる気満々だねー! 刺身と塩焼き、好きな方を選ばせてあげるよー!」
「それどっちも選びたくないよ、きっと」
「じゃあ煮付けでけってーい!」
 ヨダレまじりの、その叫びが開戦の合図となった。
「ああ、やっぱり逃げるって選択肢はないんだね、レ子……」
 デイがぽそりと呟いたが、残念ながら誰も聞いてはいなかった。

184:16
07/06/25 13:30:42 5nVupAhA
「先制攻撃っ! エイミングフットー!」
 相手の足を封じる弓技。相手に足があれば、大変有効な封じ技である。
 足があれば。
「サカナに足があるかーっ!」
 デイの悲鳴のようなツッコミ。
 当然、コロトラングルに足はない。
 初手の攻撃としては最悪である。
 しかも。
 レ子の放った矢は。
 天高く、飛んでいった。
「どこが足(フット)だーっ!?」
 デイの絶叫のようなツッコミ。いや、ごもっとも。
 仕方なく、彼は革鞄の中で握っていた薬瓶を取り出し、あたりにぶちまける。
 耐氷ミスト。コロトラングルのアイスブレスを警戒しての防御アイテムである。
 そして、コロトラングルは、デイの狙い通り、ブレスを吐いた。
「ぶ、ぶぱー!」
 ……
「……か、かき氷出てきたー!?」
「デザート用意するなんて、覚悟は出来たよーだねーっ!」
 あまりのありえなさっぷりに、愕然とするデイ。こんなの、聞いたことない。
 一方のコロトラングルは、一仕事終えた充実感からか、ふひーと息をついていた。
「よーしっ! 今度こそ当てるよー! エイミングフットー!」
「だから足ないって!」
 レ子が次の矢をつがえたとき。
 遠くからすごい勢いで走り込んでくる人影が見えた。
「こらあああああああああ! コロちゃんいぢめるなあああああああ!」
「FOEの乱入!?」
 人影はあっという間にエンカウントし、小さなコロトラングルをかばうように、ばっと
両腕を広げた。
「コロちゃんいぢめるやつは、わたしが相手だあああああ!」
「モ、モリビト!?」
 そう。乱入してきたのはコロちゃんの友達、モリビトのモーちゃんである。
 鼻息荒く、コロちゃんをかばうモーちゃん。
 デイは躊躇した。
 執政院から、新たにモリビトが見つかった場合には、速やかに報告するように通達が出
ている。生死を問わず(DEAD OR ALIVE)ではあるが、殺さずにすむならそうした方がいい
とは、先輩たちの言葉である。もちろん、それはモリビトたちの高い戦闘力を踏まえての
セリフだ。一般にモリビトはすさまじい攻撃力、強力な術式を誇っている。先輩たちとい
えども、モリビトと戦うには犠牲なしには済まないのだ。


185:16
07/06/25 13:32:05 5nVupAhA
 だが。
 レ子は全く空気読めない子であった。
「足があるならエイミングフットーっ!」
 今度の矢は、さっきほど見当違いの方向には飛ばなかった。
 モリビトのおでこめがけて、一直線。
「ぴきゃああくぁwせdrftgyふじこlp!?」
 すごい悲鳴(?)と共に、モーちゃんとコロちゃんは辛うじて避ける。
「ちっ、おしいっ!」
 (>▽<)な顔して、レ子は舌打ちした。
「惜しくない。全然違うよ、いまのは!」
「いっ……いまっ! いまおまえっ! 足(フット)って言ったっ! 言ってただ
ろっ!」
 デイとモーちゃんが、同時にツッこむ。
「頭に当てちゃえば、あしもとまるよ! とまるよ!」
「二度言わなくていいよ……」
「だいいち! お前らニンゲンには、ちゅーちょって言葉がないのかあっ! トモダチを
かばうところを見たら、ふつーちゅーちょするだろおっ!」
「……そんな計算があって、立ちはだかったの……?」
 おもわず生暖かい目になってしまうデイ。この幼いモリビトも、なかなか『侮れない』
ようである。
「ふふふ。ボクの辞書に『躊躇』って言葉はないよ! 漢字難しいから!」
 思いっきり胸を張って、レ子は3発目の矢をつがえた。さっきからヨダレが止まってい
ない。
「今日の晩ご飯は煮付けとサラダだよ……!」
「あっちのモリビトも食べるの!?」
 生死問わず(DEAR OR ALIVE)とは言われているが、食後(EAT UP)ってのはアリなんだ
ろうか、とデイはちょっと考え込んだ。
 その仕草がモーちゃんには『ドレッシングはサウザンアイランドとごま醤油、どっちが
いいだろうか』に見えた。
「ぴきゃああくぁwせdrftgyふじこlp!?」
 絶叫。もはやガクガク震えて神様にお祈りするしかない。ああ、せめてマヨネーズにし
て。
 そのとき。
 一本目の矢が、落ちてきた。

 サジタリウスの矢。
 ご存じ、最強クラスの弓技である。

 ちゅっどー……ん……

186:16
07/06/25 13:33:17 5nVupAhA
「ん……んあ……?」
 モーちゃんが目を覚ましたとき、あたりはすでに暗くなっていた。
 近くで、ぱきぱきと何かが爆ぜる音がする。
「……火!?」
 掛けられていた毛布をはね除けて、がばっと起き上がる。モリビトに火は禁物である。
お肌が乾燥しているときに火に近づいたりしたら、全身発火である。
「あ。起きたね。大丈夫? 痛くない?」
 聞き慣れない声。あたりを見渡すと、若いニンゲンがいた。デイである。
「いちおう、傷の消毒と痛み止めをしたんだけど……モリビトの体って、よくわかんな
くって」
「ぴよっ!?」
 自分の体を見ると、あちこちに木綿が巻き付けられている。包帯、というものだとモー
ちゃんはあとで知った。
 まあ、それはいいのだが。
 着ていた服は!?
「ふっ、服!?」
「あ、ごめん。応急処置のために、その、ちょっと、脱がせちゃった」
「な、なななななな!?」
「ごっ、ごめんっ! いや、見てないっ! 見てないからっ!」
 必死に頭を下げる、デイ。
「ゆ、ゆるさない! やっぱりニンゲンは敵だっ!」
 顔を真っ赤にして、モーちゃんは立ち上がり、臨戦態勢をとる。
 かろうじて引っかかっていた毛布が、ずるんと、落ちる。

「あ」
「ぴきくぁwせdrftgyふじこlp!?」
 いまこそ、デイは見た。ばっちりと。

 見られたモーちゃんの頭に、一気に血が上る。
「わたしがサラダなら、お前らはハンバーグにしてやるう!」
 と叫んだとき。
 くらっ、ときた。
「ひょ?」
 ぐるん、と視界がまわる。
「ぴ?」
 かくん、と膝をついてしまう。
「な……なん、れ……?」
 舌も回らない。
 しまった。毒を盛られたのか。
「え!? ど、どうしたの!? って、顔真っ赤……もしかして、消毒のアルコールで、
酔っぱらったの!?」
 アルコールとは、なんという毒なのか。
 目がぐるぐるして、体がぽわーっとして、頭の中がふわふわする。
「ふ……ふにゃらあ……」
「あ、あぶないっ」
 そのまま顔面からべたんと倒れそうになるのを、デイはなんとか受け止め
……ようとして、筋力が足りず、一緒に倒れてしまう。

 むにゅ。

187:16
07/06/25 13:34:03 5nVupAhA
「ふえ、ええ……ニンゲン……毒盛っら、にゃあああ……?」
「毒って、そんな! まさか消毒で酔っちゃうなんて思わなくて!」
 モリビトは、ニンゲンとは違う生物である。体の構造は、どちらかといえば植物に近
い。であるからして、アルコールを分解するための器官を持っていない。
 体のあちこちの傷を消毒するために塗られたアルコールが、体に吸収されて、そのまま
神経系に作用しているのだ。
「モリビトってお酒に弱いんだ……って、感心してる場合じゃない、何とかしないと」

 むにゅ。

 何か使える薬はないか革鞄の中を探そう。そう思って少女の体をとりあえずは横たえよ
うとしたところ……デイは手のひらの感触に、息を呑んだ。
 な、なんだろう、この、すっごく柔らかいの、は……

 むにゅ。

 デイの手のひらは、ちょうどモーちゃんの胸のあたりにあった。
「ふ、にゃ、あ……」
 柔らかさが手のひらいっぱいに広がるたびに、モリビトの少女の口から、舌の回らない
吐息が漏れる。
「ひ、ひいい……」
 デイは戦慄した。こういう場合、ビンタが飛んでくるのだ。少なくとも、彼が執務院や
施薬院の図書館で見た文献には、こういう場合にはそうなるのが必然と書いてあった。
 しかし、いつまでたってもビンタは飛んでこない。
 かわりに聞こえるのは
「にゃふ……にい……」
 相変わらずの、少女の吐息。アルコールで火照ってしまった身体から吐き出される息
は、人間よりも体温が低いとされるモリビトなのに、ねっとりと、暖かい。
「う、わ……」
 なんとか少女を押しのけようと手に力を入れると、柔らかくも弾力のある胸がその手を
押し返してくる。その感触で、少年メディックの腕から力が抜けてしまい、また少女に押
しつぶされそうになる。
 デイが仰向けに寝て、その上にモーちゃんがのし掛かるようになっていた。
 なんとか、この子をどけないと……そう思って行動しようとすればするほど、手のひら
の感触が、デイの身体から力を奪っていく。
「や……やわらかくって……あったか、い……」
 思わず、正直な感想が口から出てしまう。
「ひにゃ……まふ……」
 何かを言い返しているのだろうか。モーちゃんの口がもこもこと動く。
 その拍子に、半開きになっていた口から、とろーっとした液体が垂れ落ちてきた。
「ちょ、ヨダレ……?」
 つつつー、とその液体は垂れてきて、ゆっくりと、デイの口に近づいてくる。
「わ、わ、わ、わっ!?」
 とろり。
 焚き火の明かりできらめきながら、モリビトの少女と人間の少年の口と口が、液体で繋
がれる。

188:16
07/06/25 13:36:07 5nVupAhA
「あ……んく……」
 とろとろと液体がデイの口の中に広がっていく。シロップのように、甘く感じる。唾液
というよりは、樹液のようなものなのかも知れない。
 甘みがだんだん強く感じられて、頭の中がぼんやりとしてくる。
「あま……ん……」
 こくん、と喉が鳴って、飲み込んでしまう。すると口の中が物足りなくなった。
 もう少し、この甘いの、飲みたい。
 一度そう思ってしまうと、もう、デイは自分で自分が抑えられなくなった。
 腕の力を抜ききる。
 少女の口が近づいてくる。
 軽く息を吐いて、全身の力を抜いた。すると、少女の口が、自分の口のすぐそばに来
る。
「ん……」
 今度は首に、少しだけ力を入れる。
 それだけで、くちびる同士が、密着した。
「んく……んぅ……っ」
 半開きのくちびるから、液体が少年の口の中に垂れ流れてくる。さっきの甘みが、また
舌に絡みついてくる。
 だけれども、もう、それだけではがまんできない。
 ゆっくりと、舌を伸ばす。ぷるんとした少女のくちびるに触れて、少し甘みが強くなっ
た。
「はん……む……」
 さっきよりも、もう少し性急に、舌を伸ばしていく。くちびるから、粘膜へ。そして、
そっと、くちびるを押し広げる。
 そうすると、少年の舌を伝って、液体が流れ込んできた。

 ぺちゃ……ちゅ……ちゅく……

 つながりあったくちびるとくちびるの間から、舌を動かすたびに、ぬめった音が漏れ
る。
 甘い味覚と聴覚に、デイの脊髄がぴりぴりと震えた。

 どうしよう。これ、止められない……レ子が近くで、寝てるのに……

「にゃむにゃむ……もう食べられないよ……」

 レ子の寝言は耳に入らなかった。
 もう、自分とモリビトの少女のくちびるから紡がれる、この音しか聞こえない。

 ちゅぷ……じゅ……るく……

 もっと。
 もっと、ほしい。
 これじゃ、全然足りない。

 でも、じゃあ、このあと、どうしたらいいのかな……?
 もっとほしい、のに……

189:16
07/06/25 13:37:38 5nVupAhA
ここで一旦、お話は止まります。
誰かこのヘタレメディックに、このあとどうしたらいいのか教えてやってください。
おながいします。

190:名無しさん@ピンキー
07/06/25 13:43:47 1QXlVjPw
>>173
相変わらずガチ鬼畜ですな!ゾクゾク感と罪悪感の板ばさみですよ!
このモリビトさん最後は幸せになれると・・・いいなぁw

>>181
コッチはライトな感じで初初しさが何とも・・・スゴクイイ!
えーと知識が薄いっぽいんで、お互いに気持ち良い所を手探りで探していくなんてどうでしょ?

191:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:30:51 08SqQSZp
ロリ系もいいけどオネーサン系も見てみたいんだぜ
金鹿の女将さんとかメディ姉にやさしく教えられたい

192:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:33:53 9aInzggZ
流れを読まずに投下。
主要登場人物はダークハンターとメディック。

注意
一部に暴力的と取れる表現があります。
NTRを思わせる部分があるため、苦手な方はご注意ください。
また、登場人物の性格等はあくまで「オレのギルドの」メンバー準拠のため
キャラスレ、パロスレでの一般的なものと違う部分があります。

193:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:34:28 9aInzggZ
ギルド長の記録
ギルド名:Eternity
構成:リーダー パラディン
   初期構成員 レンジャー ダークハンター バード メディック
備考:エトリアでの冒険者としての技量は未知数。 何らかの事情のある者同士が
   集合したらしいが詳細不明



襤褸襤褸、としか言い様が無かった。
装備を代えたことによる慢心か、似たような景色の中慣れぬ移動手段への戸惑いか等と
いう原因探しは本来ならば肩の上で昏睡している騎士の得意とするところだが。
「畜生」
悪態をついたところで、常に交ぜっ返す野伏も、野郎三人の会話を面白がって
きゃらきゃらとよく笑い声を上げる歌姫静かなものだ。ま、こいつらも昏睡している
から仕方ないといったところだ。
後から付いて来る、歌姫を背負った衛生士に「糸、持って来たな?」と確認すると、
いつもよりたっぷり三拍遅れて「ええ」という返事が返ってきた。荷物と金の管理を
これまで滞りなくすすめてきたあいつにしては珍しいと思ったものの、ただ単に
疲れているのだろうと思った俺は、いつまでも騎士と野伏の二人を担がせられるのは
ごめんだとばかりに糸玉に籠められた力を発動させた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
施薬院に昏睡している三人を放り込むと、いつもの宿へ向かう。
常ならば色黒のネェチャン…と言ったら「お前が言うな」と異口同音に返された…の
店に戦利品を置いてくるところだが、戦利品を手に入れる前に逃げ帰って来た今回は
寄る必要も無い。とにかく一休みしてからだ、と思っていたところを衛生士から声を
かけられた。
「すみませんが、施薬院からこれを受け取ってきていただけますか?」
渡されたのは処方箋。「メディカ」等の誰にでも使える品ではなく、おそらくは
「キュア」や「リフレッシュ」に使う薬品の名が書いてあるのだろう。
さっさと休みたかった俺は思わず自分で取りに行かないのかと声を荒げかけたが、
済ませておかなくてはいけないことがあるからと押し切られ、しぶしぶ施薬院へと
引き返した。

院長に処方箋を渡すと、暫く時間がかかると言われたので治療を終えたらしい三人の
様子を見に行く。
「起きられるか?おっさん、チビに探索屋」
「その適当な呼び方は止せと言っているのだがな」
「あたしは大丈夫。パラ男さんもレン男さんも起きられるみたいよ」
「中々ひどい目にあったな。 ん?メディ姉は一緒じゃないのか?」
うるせぇ、そうかそうか、あいつは何か用があるとか言って俺に使いを頼んだぞ、
と答えていくと、連中がおやという表情に変わった。
「珍しいこともあるものだな。そこまで急ぐ用とは何だか聞いていないのか?」
「酒場から依頼を受けていたわけでもないし… あれ?そういえばここの治療費って?
確かメディ姉さんはこの間『装備を変えたら次は宿代がぎりぎりですね。無駄使いは
できませんわ』と言ってたような?」
「今回は戦利品無しで戻ってきたよな?」
「さすれば、施薬院に払う費用は手持ちの金からでは不足するということか」
「ええ?それじゃどうしたの?」
「余所のパーティにいる冒険者から聞いたことがあるな。長鳴鶏の宿では、
ある『仕事』で金を用立てることができる、と」
「メディ姉さんはその話を知っていたと思う。『赤字になるようなことがあれば、
……の顔をきちんと見られなくなりそうですわ』って…」
何がどうなっているのかおおよそ理解できた。
と同時に腹が立った。
畜生、無表情糸目野郎。俺の… 俺の?
呼び止める声を背中に聞いたが知らぬ振りで宿への道を引き返した。

194:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:35:03 9aInzggZ
「いらしゃいませ。『Eternity』さんのお部屋はこちらに…」
「あいつ、じゃネェ メディ姉は!?」
ルームキーを人数分まとめて差し出そうとしている糸目から自分の分のキーを
引ったくりながら怒鳴るように聞く。
「はい。先様とのお約束の時間からすればまもなく戻られるはずです。」
あまりにも事務的に、まるで夕食の時間や出立の時間を告げるように言われたものだから
つい毒気を抜かれてそのままあいつが戻るであろう宿の部屋の前で待つことにした。
何度も泊まっている宿とはいえ、いつも閉じられている扉、おそらくは関係者用だろうと
見当をつけていた扉が見える位置だな、と見るともなしに見ていると、少し肩を落とした
様子のあいつが出てくるのが目に入った。

近づき呼び止めると、目を合わせずに踵を返して去ろうとする様子を見せるが、その時
髪で隠れていた首筋にうす赤い痣を見つけた。
それを目にした瞬間、自分でも説明できない衝動に突き動かされ、そう、丁度樹海で
取れる植物を元にして作った香水を使った時のような……そんな力と速度で彼女を
俺にあてがわれていた部屋へ引きずり込み、襟元に巻いているスカーフを毟り取った。
雪原に咲く赤い小さい花。
それがどういう状況でできる痣かを知らない訳でも無い。ケフトでの話の端々や状況
からの予感が当たってしまったことを確かめた形になった俺の次の感情は怒りだった。
  何故、相談してくれなかったのか
  何故、一人で背負い込んでいたのか

「ダク男さん、ちょっと落ち着い… ぁあっ!」
抵抗する間もあらばこそ、寝台に押し倒して白衣に手を掛ける。肩から滑らせた白衣が
彼女の腕の動きを封じたあたりで、胸元の痕に順に指先を這わせながら耳元で囁いた。
「……宿代と、治療費の肩代わり、か……?」
逸らした視線と、腕の中でぴくりと反応した身体が言葉以上の返事だった。
下着に覆われた柔らかな感触としっとりとした肌の感触を楽しみながら、更に追い討ち
をかけるように言葉を続ける。
「誰と、だ……?」
せつなそうな吐息だけが返ってきた。俺の片手は下着の上からもわかる突起を弄びつつ、もう片手は短めのスカートとその下の下着へと伸ばす。
「答えたくない、か?」
今度は耳元に顔を寄せて聞いてみる。湯浴みした後なのだろうか、少し湿り気の残った
髪の感触が俺の頬に残った。
「そ……んなこと、聞かない、で」
樹海の中ではまず聞くことは出来ないであろう甘い声。その声をおそらく『誰か』が
聞いていたのだろうと思うと、なぜか無性に彼女を苛めてみたい思いにとらわれた。
片手には余り過ぎる大きさの膨らみを今度は下着の上からではなく直接、手の中で自由
に形を変えながらも心地よい弾力が返ってくるのが楽しい。半端に剥かれた白衣や
スカートが手枷足枷となっているのが苦しいのか、それとも快楽から漏れ出る声を
こらえているのかはわからないが、少し苦しげな表情が不思議と樹海探索での疲れも
忘れさせるような気がした。

195:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:35:36 9aInzggZ
「他には?自分からは何かやったのか?」
彼女の手が俺の下半身に伸びてきて服を剥いだかと思うと、そのまま口に咥え始めた。
ヤバい、結構…いや、かなり上手い。
今の職業上人体の構造を熟知しているのか、それともエトリアに来る前に何かあった
のか。なんてことを詮索している余裕は無かった。
立てないように唇を被せた歯で茎を刺激され、舌に敏感な部分をくすぐられ、おまけに
両手で袋やその周囲を刺激され。
「くっ、口でイカせたのか?」
「ひひへ(いいえ)」
不規則な刺激に暴発した。飲み込む音が小さく聞こえ、口の中で掃除されているうちに
再度臨戦体勢が整ってきた。
頭を軽く押して口を離させ、そのまま俺の上に跨らせると、もう十二分に潤っていた
そこは易々と俺自身を受け入れた。
「……やっ、こ、んな、いきな…り、奥、に……」
甘い声とともに俺に身を預けてくる。二人の間で乳房が潰れた。
尻に手を添えてまずは揺らすように静かに動かし始める。、彼女の手が俺の背中を撫で
ていく。その手がふと止まった。
「古傷だ。気にするな」
「で……も、大きいし、それにダク男さんは無茶な闘い方ばかりで…ひぁっ……
し、ん配」
「お前がいるから安心して闘える。だからお前は俺の後びいてくれ。きっとお前を
守るから、メディ姉」
言ってしまった後、思わずそれを誤魔化すかのように腰を引き寄せ強く突き上げる。
「ああんっ、そんなに激しくされたら……、」
「されたら?」
「あぁっ、もう、イキそう……」
「もう?」
背に回された腕がぎゅっとしがみついてくる。
「だ、だって…… ダク男さん、だから……」
その言葉に思わず愛おしさがこみ上げ、そっと彼女を抱きしめた。
「そういうこと言われると、俺も」
「イ……くなら、一緒に……」
最後の高みに向けて互いの動きが激しくなる。繋がっている部分からの水音と
吐息混じりの甘い喘ぎ声に煽られるように突き上げは大きく速くなり、そして。
一際高い声と反った背中、中の締め付けに誘われるように俺も欲望を吐き出した。
快感の余韻に浸るかのように力を抜いて俺に身を預けてくる彼女の温もりがとても
心地よかった。

196:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:36:07 9aInzggZ
湯を使い終え、身支度をしようとしていた彼女を、少し話がしたいと引きとめたはいい
がいざ口を開こうとしても今度は言葉が中々出てこない。そうこうしているううちに
二の腕に心地よい重みを覚え、小さな寝息が聞こえてきた。やれやれ、これでは明日
武器を取るには軽いしびれが残りそうだし、何よりこいつに触れたくとも下手に腕を
動かしたら起こしてしまいそうだ。
腕を枕の代わりにされているのは心外だが、安心しきったような寝顔のこいつを起こす
にはしのびない。まあ、いいさ。話をする時間はこれからいくらでも取れるはずだし、
起きている相手には照れくさくて言えない言葉も今なら言える。
その言葉をごくごく小さな声で囁くと、寝顔が少し微笑んだ気がした。
眠りに引き込まれながらそういえば、と思い出す。
こいつは本来は歌姫と同室の筈だし、この部屋も野伏と相部屋だった筈だ、と。
まあいいさ。石頭のリーダーの騎士が何か考えてくれるだろう。


翌朝のちょっとした騒動はともかくとして、その後俺達のパーティは打たれ弱い前衛と
後方支援の要が少し慎重になった。

197:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:38:55 9aInzggZ

以上です。

発想そのものは前スレでの「宿代が無い」あたりから。
120で白衣の下を聞いたくせに結局上手く取り入れられなかったorz

イマジネーションをくださったスレの皆様、ありがとうございました。

198:名無しさん@ピンキー
07/06/28 00:29:46 v70+aFaC
ちょっと来られなかった内に、また投下ラッシュだな!

>>178
宙吊りエロ! これはよいフルコースディナー。
何気に前段のキュリオシテの動きとかも気になる。

>>189
ロリビトに萌えつつ、ちびコロトラングルが妙にツボった。
メディックは本能のまま突き進めばいんじゃね?

>>197
「仕事」帰りのメディ姉(;´Д`)ハァハァ
NTRからラブにもっていくとはたまらないツボ展開。GJ!

199:名無しさん@ピンキー
07/06/28 21:38:30 xTpzr6lG
>>197
良いな、ラブいな
好きでもない男に抱かれて帰って来たメディ姉を、慰めてあげるというか清めてあげるというか
アバウトですまんが、ともかくそういう感じが、凄ぇツボった

200:名無しさん@ピンキー
07/06/29 20:16:12 gdRZUr0z
>>189
モリビト×デイの隣でコロちゃん×レ子
ぐっちょんぐっちょんな展開を希望します。

>>197
GJ。これはエロい。


あと遅レスだが、
>>157
>時折、この街 には栄光と同数の悲劇があるのではないかと思う。帰らざる恋人。独り生き残った男。

>ひたすら木を伐り鉱石を掘りつづけるだけの奴隷。

ちょwwシリアス台無しwww

201:名無しさん@ピンキー
07/06/30 13:00:21 SLuLB0Wl
いや、ある意味ホラーだと思うwww

202:SC
07/06/30 19:45:06 LM0OWvRp
>>154
■第3話

「ふわぁ……」
 と、ユエは口をぽかーんと開ける。あくびをしているわけではなく、千年の蒼樹
海の幻想的な光景に見入っているのである。
「どうだ。前に一度連れて行った第1階層もいいが、ここも美しいだろう。
 ああ、穴に落ちるといけないから、必ず俺の後についてこい。いいか、俺から離
れてくれるな。最悪でも矢の届く範囲からは絶対に出ないように」
 と、シトナが街の中から繰り返している注意も聞いていない。
「……ユエ?」
「すごい、すごい、すごい! きれい!」
 ぴょんぴょん跳ねながらも小声で叫ぶのは、一応、騒々しさの似合わない光景を
考慮しているのだろうか。
「うん。では、まずはカエルとアリを見に行こう」
 と、シトナは言った。
「おっきい?」
「ユエより大きい」
「かぁいい?」
「多分キモカワイイ。カエルは。アリはうっとおしい。ああ、ミミズもいたな。あ
れも大きい」
 いちいち律儀に答えるシトナ。彼は、礼を弁えない大人を除いて、誰にも等しく
敬意を払うというルールをもっているので、子供を子供扱いしない。同年代の友達
がおらず、愛情たっぷりに育ってきたとは言いがたいユエにとっては、自分の話を
いつでも真剣に聞いてくれ、応えてくれる相手というのは彼がはじめてで、だから
ユエはシトナが誰より大好きだ。

「まずは後ろで見ていればいい。位置取りだけは気をつけて動け。慣れてきたら弓
を射ってもらうから」
 では狩りをはじめよう、とシトナは言った。


 戦闘の流れに慣れて援護を任され、それにも慣れてきた頃。
「かーえーるーのがっしょうはー」
「……それはメダカの学校の節では」
「えへへー」
 ユエの変な歌に誘われているわけではないだろうが、カエルが次々と集まってく
る。あまり動きが速くなく、適度に大きく、皮膚も厚くない、理想的な練習相手だった。
「ほら、左手に力を入れるな。指は弓を落とさないように添えるだけ。触れる面積
は最小限」
 シトナは指導を続けながら、カエルの体当たりをかわし、時折自分に当たりそう
になユエの矢を叩き落とす。
「弓力は骨で受ける。肩と肩のラインに真っ直ぐに左腕をつなぎ、人差し指と親指
の間のポイント一点で押し伸ばせ。
 どんなに動いても、崩した体勢で射っても、その基礎だけは崩すな」
 ある程度倒したら、シトナが残りの敵を一掃して小休止。彼が壊れてない矢や戦
利品を回収している間、ユエは休んだり、型の確認をしたりする。
 余裕そうだが、シトナの服は血でまだらに染まっている。返り血ではなく彼自ら
の出血だ。ケフト施薬院謹製の治療薬の薬効はあらたかだが、ユエは怖くてたまら
なかった。実を言えば、多少慣れてきた今でも帰りたいくらいには怖い。
 だが師の冷静さがそれを許さない。泣き言を言えば失望されるだろうと思うと、
震えて力の入らない腕で、これまでの練習を思い出しながら、弦を引き続けるしか
ない。捨てられたくない、という想いは、泣きすがるユエを置いて出て行った父親
の記憶とともに、ほとんど脅迫観念として彼女の根底に根付いている。


203:SC
07/06/30 19:49:57 LM0OWvRp

 そうこうしているうちに、戦闘の恐怖を飼いならすこともできるようになってき
た。感情を丸い珠にして胸の中に転がし、身体は訓練の動きをリプレイさせ、その
両者を自分の意識がながめているようなイメージ。視点は広く、そして意識に近接
させて。言語化することはできても、実感によってしか理解しえないその微妙な感
覚。ユエはシトナのもとで急速に成長していた。舞人は戦士よりも身体操法に優れ
ていることも多い。もともとの身体的なセンスを背景に実戦的な技を練り上げ、そ
れを制御し活かす精神をも手に入れつつあった。

「そろそろ次に行くか。カメを見に行こう」
「せんせーが前に言ってた、水をかける人?」
「…………もしかしてカスメか。変にひねったボケはやめてくれ」
「かっめさん、かっめさんー」
 モンキータンブリンをしゃんしゃん鳴らしながらついてくるユエ。
 シトナは、こいつ本当にバードだったっけかと疑問を感じ始める。
「さて、いま曲がり角の向こうにある気配が、目標だ。多分アリじゃなくてカメだ
ったと思うが、間違っていたら許してくれ。
 うまくいけば不意をつけるだろう。一本試しに甲羅に射ってみて、硬さを確かめ
たら逃げるぞ」
「かめさん狩らないの?」
「硬いから狩らない。さ、行こう」
 一歩踏み出す。狙い通り不意打ちになった。百年以上を生きていると言われる巨
亀が反応してくるまでに、一手は行動できるだろう。
 シトナは逃走経路をイメージ―した直後に、ユエに服を引かれ、身をかがめさ
せられた。
 精一杯背伸びしたユエが、シトナの耳元に唇を寄せ、ささやいたのは、氷の力を
感じる歌。


 ―そっとからだを満たす
    水に映る言葉

    消え残る真昼の淡い微熱
    とじこめれば凍る砂に変わる


 氷劇の序曲。攻撃に対し魔術的ともいえる力を付与する歌唱スキルである。
「せんせー、元気、出た?」
「……バカ」
 頭をひとつなでて、前に出る。戦わないと言ったので弱気になっているとでも思
ったらしい。
「一射後に予定通り撤退」
 命じ、自らも弓を放つ。倒すつもりがないので甲殻を狙う。突き刺さった。
 続いてユエの射撃。こちらは甲殻の曲面に弾かれて飛んでいった。
 1挙動を無駄にしてしまったので、反撃を受ける。巨亀が口を開き、鋭く凍える
ような息吹を噴き出す。シトナにとっては、耐えられないものではないが―
「ユエ、生きてるな?」
「はい!」
 声で位置のあたりをつけて、タックルするようにユエを抱える。抱えて走る。
「きゃぁぁぁぁぁぁ」
「やかましい、黙れ」

204:SC
07/06/30 19:52:31 LM0OWvRp

 装備込み35kg以下の重量は、ちょっとした荷物にしか感じない。ついでだっ
たので、そのまま階段まで走って、さらに1階、下へと降りる。
 肩にかついで、軽く走っているので、飛んでいるように感じるのだろう、さすが
に騒いで敵を寄せたりはしないが、ユエはひどく楽しそうに無言ではしゃいでいる。
「……興を殺いで悪いが、また少し講義しておこう。樹海には戦いづらい相手がい
る。どんなモンスターか分かるか?」
「えっと……。強いくておっきい敵さん?」
 サイズか? と少し疑問に思いつつも、そこは流して、
「それもある。が、その時のパーティによっても変わる」
「戦いには相性がある!」
 と、ユエが叫んだのは、錬金術師のクドゥをはじめ“カヴン”のメンバーがたま
に口にする言葉。
「お、よく覚えてたな。えらいえらい」
「えへへー」
「例えば、上のカエルはおおむね戦いやすい相手だ。ワームも、弓や剣がよく通る
から、俺たちにとってはやりやすい。さっきのカメは、甲羅が硬いから、攻めるな
ら術式が欲しい。そういう意味では、序曲というのはいいセンスだ」
 えらいぞーと頭をなでて続ける。属性の予想の問題まで話すと面倒なので、そこ
は飛ばすことにする。
「あとは強さにかかわらず、バステを使う相手はやりにくいことが多いな。
 基本的に、そういう戦いづらい相手は避けて、やりやすいところで戦う」
 担がれたままユエが手を挙げる。
「はい、せんせー」
「ん」
「でも、先に進むには、やりにくい相手にも勝たないとダメじゃないの?」
「ああ、いま言ったのは、修練や狩りのときの話。探索はまた別」
「りょーかい」
「ん。敵だな。このまま駆け抜ける。ユエ、守護舞曲開始」


 何度か出会ったアリは無視し、細い抜け道まで来た。ユエを下ろす。彼女は残念
そうな顔になるが、シトナが先に狭いトンネルをくぐって、向こうから手招きする
と、すぐに機嫌を直す。
 このまま歩かせようと思っていたが、戦闘はそろそろ切り上げるか、とシトナは
方針を変え、再びユエを持ち上げて、肩にのせる。今度は担がずに肩車だ。
「落ちないようにつかまってろよ」
「うぃ」
「こら、目はよせ」
 暖かく湿った小さな手のひらを払いのけ、自分の帽子を脱いでユエにかぶせて、
いざとなったら髪をつかむように言う。痛そうだが落ちられるよりは良い。
 試しに身体を斜めに曲げてみる。落ちそうになったユエが黄色い声を上げるが、
掴まっていられそうだ。走るときは彼女の足を持ってれば、最低、死にはしないだ
ろう。
「しかし、くすぐったいな、これ」
 ユエの脚を包んでいる薄物が頬に当たるのだった。ユエは面白がって脚を動かす。
 遊ぶな、と言ってもやめないので、太股をマッサージするように指先で押す。
「ひゃうん!」
 とユエが鳴いて、ぽかぽかシトナの頭を叩いた。それよりも胸甲冑の方が後頭部
に当たって痛い。

 女王の宮殿を抜けて奥の階段へ向かう。
「次はちょっと飛ばそう。いいって言うまで目をつぶっていて」
「どうして?」
「いいから」
「はーい」

 獣避けの鈴を鳴らしながら、水路の脇を通って、さらに1階、下へと降りる。シ
トナの肩の上で揺られながら、ユエの耳は地響きのような音を聞いていた。

205:SC(第3話終わり)
07/06/30 19:54:48 LM0OWvRp

 やがてシトナが、「もういいよ」と声をかけた。
 ユエはゆっくりと目を開く。
「うわー……」
 そこに広がっていた光景は、広大な地下空洞を満たす大量の水。そして地底湖に
は、小さな島々が点在している。
「水! 水! たっくさん! 海? これって海!?」
 上階から柱となって流れ落ちてくる水の轟音に負けないように、ユエが叫ぶ。ば
たばた手足を振るので、シトナは彼女を落とさないように地味に必死だ。弓二張り
は結構かさばるので、うまく腕が使えない。
「いや海では……。むしろ湖だな。
 そうか、海、見たことないか」
 わざわざ上の階を飛ばしたのは、インパクトを強くしてさらに感動してもらうた
めだった。頭上で叫ばれて顔をしかめながらも、狙い通りにいったので、シトナは
満足して頷く。そのうち“カヴン”の皆で、エトリアの外にも出てみるか、と考え
る。骨休めも必要だ。
 しゃがんでユエを下ろす。帽子も返してもらおうとするが、やー、とユエが逃げ
るので、あっさり諦めてそのままかぶせておく。
「ユエは甲殻類は嫌いだったか?」
「こー……?」
「すまない。カニとかエビとか」
「ちょっときらーい」
「じゃあカニは無しだな」
 こっち、とユエの手を引き、
「でっかいお花ー」
 湖に浮かぶ花の前まで行って、シトナは上に飛び乗る。
「うわ! 乗れるの!?」
「6人くらいは、いけるかもしれん。ほら、ジャンプ」
 と、呼ばれても、陸から花まで少し距離があって、なかなかすぐに飛べるもので
はない。
 ユエはちょっと困ったように、子供特有のはにかみを浮かべ、
「こわい……」
 と小声でつぶやく。当然その声は水音に消されて聞こえなかったが、シトナは一
度陸まで戻って、ユエと手をつないだ。
「よし、せーの、で行くぞ」
「えー、やだやだやだ、怖い!」
 後ろに下がって逃げようとする。腰が引けている。そういえばこの子はシャンプ
ーも嫌いだとか言ってたなぁ、とシトナは思い出す。もうちょっと水に慣れてほし
い。やはり海は連れて行っておくか。
「しょうがないな。じゃあ、だっこしたら大丈夫?」
「……うん」
「俺はこっちの方が怖い気がするが……」
 言いながら、抱き上げて、こともなげに花に飛び乗る。勢いを得て湖の上をすべ
るように流れはじめる。ユエがまた歓声を上げる。お花の船だよ、とシトナが言った。


 花から島へ、島から花へと乗り継いで、しばらく遊んだ。ユエもひとりで跳べる
ようになり、手をつないで花に乗る。
 水に揺られ、周囲を警戒しつつ風景を愛でる。この地に足を踏み入れる力を持っ
た者だけに許される贅沢。

206:名無しさん@ピンキー
07/06/30 20:08:22 LM0OWvRp
えっち前のあれこれは次回4話までかかる見込みです。

というかベッドシーン(野外ですが)をどうしようか悩み中。
ユエの性知識はほとんど無し、の方向で想定していますが、シトナっちの態度が決まらなーいー。
子供相手の葛藤は前回ぐだぐだにやってしまいましたから、かぶっちゃうのです。
かといってノープロブレムで幼女レイプな人なのだろうか。ロリはむずかしい。

>>200-201
気づいてくれてありがとう!

207:名無しさん@ピンキー
07/06/30 23:29:33 cGAyg889
>206
なんていうか第3話は凄く子供の描写、とても丁寧に子供の描写、そんなイメージ
ロリは好きですがペドは嫌いなんですけど、続き期待してます

悩んでるようなのでネタふりで引っかき回してみますね
1.お父さんのように包み込んであげよう
2.大人の女性として見てあげよう
3.幼女ばっちこーい
4.つい、妹のつもりでアッー!!


208:名無しさん@ピンキー
07/07/01 01:20:42 UJZQZ6/a
>206
萌えというのとはちょっと違うかも知れませんがすげぇかわいいです、はい。超癒され~。
さて私もネタ出しで引っ掻き回し

5.迫られて折れる
6.薬盛られて迫られる

・・・そんなに幼女攻めが好きか俺

209:名無しさん@ピンキー
07/07/01 03:22:48 YniKFgvo
7・正しい性教育を行なわねば、と・・・・・。いや、なんでもない

それにしてもユエ可愛いよユエ

210:名無しさん@ピンキー
07/07/01 04:26:59 yqXUtPfz
それが最終的な目的だろうしな

211:名無しさん@ピンキー
07/07/01 04:29:19 yqXUtPfz
すまない、誤爆した

212:名無しさん@ピンキー
07/07/01 14:23:42 u6zWsN8j
>>211
全く誤爆に見えないんだがw

213:名無しさん@ピンキー
07/07/01 15:56:11 UHNPZHYY
Hurricane P○n○○

214:192-197
07/07/01 22:04:12 dkyYsOrv
感想を下さった皆様ありがとうございます。
他人様から見てエロく見える文章になっていたようなのでほっとしました。

>202-の作者様のような「物語」をきちんと書きたいとは思いつつも
結局筆力不足で肝心のエロシーンも含めて「読者様の想像にお任せします」
が大きくなってしまったようにも思えます。
職業らしくスキル取り入れて書こうとしたものの、頭封じの手段が思いつかなかった
上にうちのダクハンは剣特化なのでエクスタシー取得しておらず諦め。
そして、タイトル付け忘れていました。
『宵闇の物語』でひとつ。
パラとアルケでスキル連想できるエロってどういう形になるか悩みつつ
また何か書けたら投下させていただきかもしれません。

>保管庫管理人様
投稿時、場面区切り記号を入れ忘れてしまいました。
お手数ですが
>193
最初の6行(詳細不明)のあとに
////////////////////////////////////////

>193と>194の間に
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
を入れていただければ嬉しいです。

215:名無しさん@ピンキー
07/07/03 02:46:35 zw6CdZ9k
投下します。
金髪バド男×赤髪ソド子。

少し長いので、途中で投下中断したら、さるさる規制にかかったと思って
マターリお待ちくださると幸いです。

216:よろこびの歌 1/11
07/07/03 02:48:06 zw6CdZ9k

 お人形よりも剣が、おままごとよりも冒険家ごっこの方が、小さい頃から好きだった。
 身体を動かして暴れていれば、ただそれだけでしあわせ。
 女の子らしいことはどうにも苦手だし、第一、ガラじゃない。わかってる。
 だから。

「……あ……っ、や、ちょっと、待って、よ……っ、ん!」
「ごめんね。でも……もう、待てないから……」
 甘い囁きと共に、麦藁色の髪が覆いかぶさって来て、裸の肩に口づける。
 近く側に触れる温度に、目を合わせているのも恥ずかしく―赤い髪を細かに震わせながら、女ソードマンは瞳を閉じた。

 ―だから、『こんな』のは、困るんだ。

     *

『―ガァァァァァ!』

 通路に立ち塞がった骨竜が、首を掲げて咆哮した。剥き出しの頭蓋骨が音を立てて噛み合わされ、研いだような牙が光る。
 杖を構えかけていたメディックの少女が、ひっと足を竦ませる。すかさず踏み込んだ隻眼のレンジャーが、数本の矢を竜の足元に打ち込み牽制しつつ叫ぶ。
「火炎攻撃で一気に落とす! メディックは防御、バードは補強! 行くぞ!」
 明確な返答はなく、だが全員が一斉に、それぞれの動作を開始する。
 赤毛の女ソードマンも、抜き放った剣を構えた。ブシドー式に言うなら「青眼」―やや低めに切っ先を下げて爪先を踏みしめ、いつでも前へ飛び出せる姿勢。
 イメージする。身を屈めて獲物を狙い、跳躍する寸前の山猫―
 集中し高まる闘志を煽るように、背後で弦の響きが沸き起こる。
 キタラを弾く、詩人の指。
「……!」
 流れ出した前奏のメロディ、そのほんの数フレーズだけでもう、背中の産毛が総毛立つ。産毛どころか、髪の毛まで躍り出すんじゃないかという昂揚感。
 ぞくぞくする。無意識に舌が唇を湿す。
「―術式起動!」
 赤眼のアルケミストが、ガントレットを高々と掲げた。リンと硫黄とマグネシウムが反応する匂いを振り撒きながら、鋭く腕を一閃する。
 轟、と火炎が撃ち放たれた。
 宙に伸びる灼熱のライン。追ってソードマンも地を蹴った。豊かな赤毛が空に舞い、更なる炎のように巨体に襲いかかる。
 『火炎の術式』から『チェイスファイア』に至る連携。
「たああああ―ッ!」
 火炎が着弾し、骨竜の頭部は一瞬にして炎に包まれた。
 身を焼く真紅の波に、竜がのたうち首を振る。のけぞって晒された骨の喉へ、ソードマンの剣が深々斬り込んだ。
『グガァ! ガウッ、ガアアア!』
 割られた顎を空しく開閉させつつ、咆哮する竜。炎にまみれて悶えるその巨体へ、ソードマンはすかさず追撃を放つ。
 またイメージする。今度は猛禽。翼を立て、目にも止まらぬ速さで降下し、獲物を切り裂く鉤爪―
 骨の横面を叩き割り、降り落ちて来た牙を砕く。跳び退って更に、今度は脚。体勢のよろめいたところへ、もう一撃。
「やあッ! はッ! たああッ!」
 もう理屈ではなく、本能だけで身体が動いている。血が沸き立つ感覚に、あかがねの瞳が煌々と光る。
 極限まで集中し、斬り、かわす感覚に没頭した世界に、遠く。
 ―歌声が聴こえてくる。

“歓喜よ、美しき神々の煌めきよ! エリジウムから来た娘よ!
 我らは炎のような情熱に酔って、天空の彼方、貴方の聖地に踏み入る!”

 猛き戦いの舞曲。
 麦藁色の髪をしたバードの青年が、キタラを抱えて高らかに歌う。剣戟の音、憤怒の咆哮―戦場の騒音を貫いて、絶えることなく続く歌。
 ぞくぞくとまた、背中が総毛立つのをソードマンは感じる。
 魂の底から、力が湧き上がってくる。
「はあああぁぁッ!」
 メロディに乗り、リズムに合わせるように、ソードマンは剣を払い、地を蹴った。
 身体が軽い。握った剣の重みなど、まるで感じない。


217:よろこびの歌 2/11
07/07/03 02:51:13 zw6CdZ9k

(みえる)

 吼えて襲いかかる竜の動きが、ひどくのろのろとして見えた。余裕でかわし、刃を叩き込む。深々と斬り下げる。
 わきあがる、強烈な歓喜。

(ああ。あたし、いま、生きてる)

 響き続ける、やわらかいテノール。
 その歌声が血に溶けて、燃える。戦う悦びをいやがおうにも高めて、絶頂にも似た悦楽を身体の隅々にまで運んでいく。
 声に酔い、ただ陶然と、ソードマンは剣を振るい続ける。
 このまま、いつまでも戦っていたい。
 思考も感情もふっ切れた、真っ白な瞬間の中で。
 あの歌声だけ聞きながら、ずっと―

『―ガアァァァァ……!』
 かすれた咆哮を残して、骨竜の巨体が大きくよろめき、くずおれた。
 轟音と共に地に沈む身体を退さってかわすと、ソードマンはしばし立ち尽くす。
 滴る汗も拭わず、息を荒らげたまま、息絶えた亡骸を無言で睨んだ。

「……あっけなかったね。意外と」
「もう! ソードちゃんが強すぎるんだよー」
 はしゃいだ声をあげて、メディックの少女が抱きついてきた。さりげなく取り出したガーゼで汗を拭ってくれつつ、
「最後の方、凄かったよ。あのおっきな竜が、まるで手も足も出なかったもん」
「またレベルを上げたようだな。研鑽を絶やさないのはいいことだ」
 隻眼のレンジャーも満足げに頷く。
 まだどこかぼんやりとしたまま、ソードマンは剣を掴んだ己が手を見つめた。
 昂揚はもう霧散して、剣は剣らしく、ずっしりとした金属の重みを指に伝えて来る。
 戦場に響いていた歌は、当然のごとく止んでおり―代わりに、弦をつま弾く音と共に、軽薄な声がくすりと笑う。
「そうそう。独りでズバズバ斬りまくっちゃって、アルケなんて手の出しようなくて、おろおろ突っ立ってるし。何ていうか、オウガかデモンかソードマンか!って感じ?」
 ぴくり、とソードマンの肩が揺れた。
 自省するように一度大きく息を吐くと、のろのろと振り返る。
「……バード」
「ん? 何だい?」
「仮にも仲間に向かって、その言い草はないだろ。あんたらに被害が行く前に、あいつを倒そうと頑張ったあたしに、もっと言うことはないの?」
「またまたぁ。ソードは単に、ぶった斬るのが大好きなだけだろ?」
 あはは、と明るく笑うバード。
 ソードマンは掴んでいた剣を、無言のまま振り上げた。メディックとアルケミストが、慌てて左右から押し止どめる。
「そ、ソードちゃん、だめっ!」
「落ち着け、ソード。同士討ちは樹海を出てからにしてくれよ」
「……えと、それもどうかと思うんだけど、アルケくん……」
 ソードマンは嘆息と共に、剣を鞘に収めた。ぶすりとした表情のまま、メディックから受け取ったガーゼで更に汗を拭う。
 懲りない笑顔を変わらず浮かべ、バードが歩み寄って来た。
「ごめんごめん、ソード。でも僕も、頑張って『猛き戦いの舞曲』を練習しまくったんだよ? 大好きな君のために」
「―!」

 どくん、と鼓動がはねる。

「……な、なに、言って―」
 一瞬で耳まで真っ赤に染まった顔をガーゼに隠し、問い返すソード。懸命にとりつくろった声は、語尾がかすれて震えていた。
 そのさまに気づいているのかどうか―バードはにっこりと笑みを深めて、頷いた。

「ぶった斬るの大好きな君の為にね。もっといっぱい、ぶった斬れるようにって」

 ソードマンは無言で再び、剣を抜いた。
 ひえぇ、と緊張感のない悲鳴をあげて逃げるバードと、追い回すソードマンのさまに、メディックがおろおろと拳を握り、アルケミストとレンジャーは深くため息をついた。

     *


218:よろこびの歌 3/11
07/07/03 02:52:04 zw6CdZ9k

 もやもやする時は、身体を動かすのが一番だ。
 月光の差す地下一階、翠緑の樹海の木々の間で、ソードマンは黙々と基礎練習に励んでいた。
 涼やかな森の夜気を、刀身が鋭く裂く。
 踏み込み、払い、撃ち下ろす。ステップを踏んで回り込み、横へ薙いで、また正面に戻る。
 完璧に身体に叩き込まれた型と動きを、繰り返し続ける内に―余計な思考はかき消えて、純粋に身体を動かす悦びだけが残る。
 延々と剣を振るい続ける頭上、樹海の梢に覗く月が、ゆっくりと位置を変えて行く。

「……っはぁ……、はぁ……、はぁ……」

 やがて呼吸もあがり、さすがに切っ先が重く鈍って来て、ソードマンは動きを止めた。
 剣先を地に突き立てると、胴を覆う鎧を外し、これも地面に投げ捨てる。
 汗で濡れそぼった襟足をかき上げ、傍らの茂みを振り返った。樹海の小道の行き止まり、岩陰から湧き出た清水が、月光に煌めいている。
 膝をついて、ソードマンは水を掌に掬った。まずは冷たい清水で思うさま喉を潤し、それから浸したタオルで襟を拭う。
「―あぁ……」
 心地よさに、思わず声がもれる。
 汗は首筋どころか、胸元や腹にまでびっしょりとたまっている。一瞬だけ逡巡して―ソードマンはすぐに、鎧の下に着けていた胴着も脱ぎ始めた。
 深夜の樹海。どうせ見ているのは、森ネズミかモグラぐらいのものだ。
 一度脱いでしまえば、ためらいはなかった。飾り気のない下着をもすべて外し、完全に生まれたままの姿になったソードマンは、濡らしたタオルで身体を拭い始めた。
 しなやかに筋肉のついた腕、ひきしまった背筋と腰。ほどよく張ったももと尻。
 汗の玉を浮かせた、白い乳房。
 日頃、鎧で押さえ付けられているにもかかわらず、双丘はふくよかに形よく、ボリュームも全く損なわれてはいなかった。
 清水をしみ込ませたタオルで、ソードマンは丁寧に胸元を拭った。火照った肌に、水の冷たさがこの上なく気持ちいい。
「…………」
 タオルを右手に握ったまま、ふと自分の乳房に触れる。
 ふんわりとした感触が、指に伝わる。軽く押すと、しっかりした弾力が跳ね返って来た。
 仲間たちや街の人々を横目に眺める限り―大きさも形も、さほど悪い方ではないように思う。『金鹿の酒場』の女将までとはいかなくても、胸の空いた今風のドレスを着て、髪をアップに結い上げたりしたら、少しは自分も―

(……なんて、ガラじゃない、か)

 何しろ、仲間にまで「オウガかデビルか」と言われる始末なのだ。
 昼間のことを思い出し、ソードマンは改めて腹が立って来た。濡れたタオルで、茂みをぴしゃりと叩く。
 あの男は、いつもそうなのだ。
 ソードマンのことをからかって、剣術バカ扱いして―

(そりゃ……あたしは実際、女の子らしくなんてないけどさ)

 化粧やおしゃれは苦手だし、女の子らしい趣味やアイテムとも、とんと縁がない。「ぶった斬るの大好き」と言われても、事実だから反論のしようもない。
 けれど最近―少しだけ。そう言われて笑われると、胸が痛む自分がいる。
 ぴしゃり、とまた茂みを叩く。知らず、ため息が唇をこぼれた。

(けど……あいつだって、悪いんだ。あいつの、あの『声』が……)

 普段はからかいの言葉しかこぼさない唇が、歌う時だけは真剣に、極上の響きを放つのだ。戦う彼女の背を押して、血を沸き立たせ、鼓動を合わせて鳴り響くのだ。
 何度も聴いたフレーズなのに、何度でも胸が熱くなる。
 いつまでだって、聴いていたい。
 あの歌さえあれば、他の何にもいらないなんて、思うようになったのはいつからだろう―

「バード……」

 呟いた時、背後の茂みが音を立てて揺れた。
 ―殺気。
 考える間もなく身体が動き、地に突き立てた剣を掴んだ。振り向きざまに打ち払い、牽制の一撃を放ちながら―あかがねの瞳が、大きく見開かれる。

「『魂の裁断者』……ッ!?」

 どうせネズミかモグラだろうと顧みた視線が捉えたのは、青灰色の毛並みを月に震わす、巨大な熊の魔物だった。
「どうしてこんな奴が、この階層に……!」


219:よろこびの歌 4/11
07/07/03 02:53:55 zw6CdZ9k

 返答は猛々しい咆哮と、刃の如き爪の一閃。
 間一髪、ソードマンは飛びのいた。
 横薙ぎに払われた魔物の爪は、側の立ち木を紙のように引き裂いた。一抱えはある幹が、中ほどからあっけなく砕けて折れ―ソードマンの真上へ倒れかかって来る。
「ッ!」
 慌てて再度、背後へ跳んだが、濡れた踵が草に滑り、着地の体勢が大きく崩れた。
 その一瞬の隙に、魔物は折れた幹を蹴散らし詰め寄って来た。剣を握って跳ね起きる彼女の頭上へ、煌めく爪を振り下ろす―

 ばすっ! ばすんっ!

『グアァァァ―!?』
 苦鳴と共に、魔物が大きくのけ反った。
 腕を掲げて覆った顔面には、二本の矢が突き立っている。
 茫然と顔を上げたソードマンの背後から、鋭い声が響き渡った。

「今だ! 行け、ソード!」

 澄んだテノール。
 茂みの間に仁王立ちに立ったバードが、矢筒から新たな矢を抜いた。ギリギリと引き絞りつつ―息を止めて顧みたあかがねの瞳へ、強く頷いて見せる。
「僕が援護する! 大丈夫、行け!」
 声と共に、弓弦を放す。
 風を切って飛ぶ矢が、またも魔物の額に突き立ち、派手な悲鳴がわきあがる。
『グアアッ!? ガウッ、ガアアッ!』
「……ッ!」
 ソードマンは剣を掴み、地を蹴った。
 迷いも怯えもすべて消えた。ただ彼の声の命じるまま、真正面から目の前の敵へ、全力を叩き込む。
「たああぁぁぁ―ッ!」
 苦悶する魔物が、気配に気づいた。振り払われた腕が周囲の木々を引き裂き、葉を掻いて、彼女の上にも襲いかかる。
 剣をはねあげ、ソードマンは爪を弾いた。すぐに身を引いてステップ、横手に回り込み、腕が伸びてがらあきになった魔物の腹へ、鋭く切っ先を突き通す。
 重い手ごたえと、凄まじい咆哮。
 内臓まで深々と刺し貫いた剣を引き抜こうとして―ソードマンの表情が刹那、凍る。

(しまった! 剣が―)

 深い刺傷に収縮した筋肉が、刃をがっちりと挟み込んでしまっている。
 抜けぬ剣を相手に焦る彼女の頭上、苦悶の咆哮が断続的に響く。魔物が激痛にもがきながらも、脇腹にとりつく敵を振り払おうと爪を伸ばす。

“喜ばしきかな! 太陽が壮大なる天の計画に従って飛ぶが如く!
 兄弟たちが己が道を駆け抜ける、勝利に向かう英雄のように喜ばしく!”

 朗々と、歌声が月に響いた。
 ソードマンはカッと瞳を見開いた。渾身の力をこめて、柄を握りしめる。
 魂に、火がつく。
 身体が燃える。そうとしか表現できない感覚に、堪え切れず喉が叫ぶ。

「うああぁぁぁ―!!」

 絶叫と共に、剣を引き抜いた。
 大きく跳び退り、刃を払って血を振るう。構え直した剣を握り、暴れる魔物へ再び斬りかかった。

“歓喜は我らに口づけと葡萄、そして死の試練にある一人の友を与えた!”

 夜空を仰いで、バードは歌う。
 高らかに澄み渡り、雄々しく、けれどこの上もなく美しい声。
 その歌声に従って、ソードマンは剣を振るう。
 リズムが揃う。彼がブレスを取る、その同じタイミングで彼女も息を吸う。
 呼吸が重なる。


220:よろこびの歌 5/11
07/07/03 02:56:33 zw6CdZ9k

“官能の快楽は虫けらにも与えられ、そしてケルブは神の御前に立つ!”

 彼は歌い、彼女は剣を翻し、舞う。
 猛き戦いの舞曲。
 同じひとつの旋律に、ふたりの鼓動が同化する。それぞれ別の働きをしながら、同じひとつの瞬間へ向けて駆け登っていく。

“貴方の御力により、時の流れで容赦なく分け隔てられたものは―”

 青白い月光に浮かぶ裸身と、冴え冴えと煌めく刃。
 彼の歌が敵を裂き、彼女の剣が歌う。
 指と腕と、喉と呼吸と、ふたつが区分なく溶け合い、混ざり合って吼え―

“―再び、一つとなる!”

 振り抜かれた切っ先が、月を弾いた。
 一瞬の間をおいて、魔物の頸動脈から噴出した熱い血が、音を立てて草を打つ。
 凄まじいまでの噴出を、ソードマンは鳥のように宙にかわした。汗に煌めく真白の裸身は、一滴の返り血も浴びてはいない。
 ゆっくりと倒れ打つ魔物には目もくれず、背後のバードを振り返り―
 はたと、我に返る。

「きゃああああ!」
 真っ赤になったソードマンは、全裸の我が身を両腕で抱え、側の茂みに飛び込んだ。懸命に身体を隠しながら、八つ当たりに怒鳴りつける。
「こ、こっち見てんなばか! や、その前におまえ、何でこんな所にいるんだ!?」
 弓を下ろしたバードは、別段焦る風もなく、ただ飄々と肩を竦めた。心外そうに眉をひそめつつ、いつも通りの暢気な声で言う。
「ごあいさつだなあ。僕がいたから、怪我もしないで助かったんじゃないか。この場合、最初は『ありがとう』じゃないの、やっぱ」
「答えになってない! ていうか、見るなって言ってるだろ!」
 手近の蔓草をちぎって、投げつけるソードマン。だが、細い蔓は彼女の期待したようには飛ばず、ひょろひょろと彼の足元に落下する。
 ううう、と悔しげに唸るさまに、バードの方が苦笑して折れた。
「最近、下層の魔物が上層に出て来てるって噂があったからね。君ならたいていの魔物は大丈夫だろうとは思ったけど、万が一ってこともあるし……やっぱ、心配だし? 来て良かったよ、ほんと」
「様子……見に来た、のか?」
 帰りが遅いと心配されるほど、ぐずぐずしていたつもりはなかったのだが―
 意外そうに目を瞠ったソードマンに、今度はバードの方が驚いた表情になった。弓を背中にはねあげて、茂みの側にしゃがみこむ。
「気づいて、なかったの?」
「え?」
「まさか、君ほどの剣士が。おかしいなあ、そこまで気配消してたつもり、ないんだけど」
「え? え……?」
 ぱちくりと瞬いて、その言葉を反芻するソードマン。混乱する頭をどうにか励まし、意味をたどる。
「そ……それって、つまり……ずっと、いたのか? 最初から!?」
「何事もなければ、邪魔しないで帰るつもりだったけどね」
 バードはあっけらかんと頷いた。細めた瞳に、ふと笑みが浮かび―枝葉の間に見え隠れする彼女の裸身を、遠慮なく眺め始める。
「いきなり服、脱ぎ出すからさ。誘ってくれてるのかと思って期待したのに。なぁんだ、ただ気づいてなかっただけなのか。残念」
「さ、誘うっ、て……っ、ば、ばか!」
 あからさまに鑑賞しにかかっているバードを、ソードマンは力任せにぶっ飛ばした。
 容赦のない一撃に、彼の身体はあっけなく吹っ飛び、岩清水が作った小さな流れに頭から突っ込んだ。
「ぶはあっ! げほ、ごほ! ひっど、命の恩人にこれはないだろ、げほごほ!」
 むせて水を吐きつつ訴えるバードに、ソードマンはふんと背中を向けた。
 そうして彼から顔を隠し、必死に呼吸を整える。ばくばくと搏つ胸を押さえて、熱い頬を鎮めようとするが―考えれば考えるほど、頭が真っ白になっていく。

(見てた? 最初から? ついて来て、様子を―心配、だから? あたしが?)

「……ほんとに、気づかなかったんだ」
 確認するような声。
 ソードマンはますます身を縮め、こくりと頷いた。―声が、出ない。
 バードの頬に、穏やかな笑みが浮かぶ。


221:よろこびの歌 6/11
07/07/03 02:58:16 zw6CdZ9k

「嬉しいな」
「な……なに、が……?」
「だってそれって、僕の気配に違和感を感じなかったってことでしょ? 側にいても、全然苦にならないくらい、当たり前に」
「……んだ、それ。何言って……」
 いつものように言い返してやりたいのに、声がどうしても震えてしまう。
 バードは水場の端に座り直した。背を向けた彼女を見つめていたが、やがてついと視線を逸らす。
 水の下に、タオルが落ちていた。それを拾い上げながら、ぽつりと問う。

「どうして、僕の名前、呼んだの?」
「え……?」
「魔物が出る直前。君、呟いたよ。僕の名前」

 ソードマンは今度こそ、呼吸が止まった。
 かあっと頭に血が上る。目の前がくらくらと歪み、茂みの中に倒れそうになった。
 まさか、聞かれていたなんて。よりによって、想いを馳せていたその当人に―

「……気のせい、だろ。あたし、別に―」
「悪いけど、これでもバードの端くれなんだ。耳には自信があるよ」

 取り繕う言葉は、あっさりと却下される。
 バードは濡れたタオルを絞った。滴る雫が水面に波紋を描き、細く流れ落ちる清水の下に消えていく。

「ねえ。どうして?」

 繰り返される声は優しく、だがもう、ふざける様子もからかう色もなかった。
 絶句したまま、竦むソードマン。
 清水の流れる音だけが、さらさらと沈黙を満たして続き―

「あんたが、ばかだからに決まってるだろ!」

 ぽかんと振り返ったバードへ、ソードマンは大股に歩み寄った。
 力いっぱいその襟首を掴み、目の前まで引き上げる。
 ちょ、とか、え、とか、意味をなさない声をあげてもがくバード。絞ったタオルが指をこぼれ、草の上へ転がっていく。
 ソードマンは構わず、掴んだ指に力をこめ、バードの身体を揺さぶった。

「あんたがばかだから! こっちの気も知らないで、いっつもばかなことばっか言って、からかって! あんたが―!」

 恥ずかしさも戸惑いも、自分が素裸ということさえ、全部吹っ飛んだ。
 止めようもなくこぼれるのは―自分でも正体のわからない、熱い叫び。

「ばかで、意地悪で、ふざけてばっかで―なのに、あの歌は。あの歌を歌う時だけは、あたしとぴったり何もかも合わせて!」

 魂を震わす、彼の声。

「あたしは、あれのせいで……熱くて、熱くて真っ白になって、どうしようもなくて……もう、訳がわかんないんだ! あんたのせいなんだよ、わかる!?」
「ちょっ……ソード、待っ、て……」
「どうしていいのかわかんないよ! こんなの、全部、あんたのせいなんだからね!」

 襟を絞められ、苦しげに呻くバード。ソードマンは構わず更に力をこめ、彼の顔に顔を寄せた。
 彼が薄目を開けて、こちらを見やる。

「……嫌い、なのかい? 僕の、歌……」
「ばか! 何でそうなるんだよ!」
「じゃあ、好き……?」
「だからさっきから、そう言ってるだろ!」


222:よろこびの歌 7/11
07/07/03 02:59:41 zw6CdZ9k

 喉いっぱいに、ソードマンは叫んだ。
 バードは苦しげに呻きながら、絶え絶えの息で、更に問うた。

「じゃあ……、僕のこと、は……?」

 一刹那、間があったろうか。
 ソードマンの頬が、一瞬にして真っ赤に染まる。指の力が抜け、膝まで砕けて、へなへなと草の上にへたり込んでしまう。
 が、今度はバードの方が、それを許さなかった。くずれかかる身体に腕をかけ、引き寄せる。
 びくりと慌てて振り返った唇に、唇が重ねられた。

「……っ!?」

 赤面したまま硬直したソードマンは、瞼を閉じることさえ忘れ、ただただその感触を受け止める。
 触れるだけの口づけを、長く残して―やがてバードが唇を離した。凝然と見開いたままのあかがねの瞳を見返し、苦笑めいた息を吐く。

「……ほんと、素直じゃないんだから」
「……う……るさい……」
「君がいい加減鈍いから、僕、途方に暮れてたんだからね。あーんな一生懸命アピールしてたのに、ことごとくスルーされてさぁ、参っちゃうよ」
「……待て。そんなの、ほんとに心当たりないんだけど」

 オウガだのデモンだの、貶められた記憶は山とあるが。
 じとりと睨む視線を前に、バードはいつも通りあっけらかんと、肩を竦めてみせた。

「ええ? いつも言ってたじゃない。僕は『大好きな君のために』歌ってるって」

 ぽかんとひとつ、瞬いて―
 更に頬を染め上げながら、ソードマンは心の底から叫び返す。

「判るか、そんなん! アピールっていうんなら、もっとちゃんと真面目にやれ! あんな冗談ばっかの、誰が本気にする!?」
「あははは。つい、さぁ……いじめたくなっちゃうんだよね」
「子供か! 素直じゃないのはどっちだ!」

 怒鳴る彼女を、再び彼が抱き寄せた。
 一瞬でびくりと硬直してしまう身体を、両腕でかき抱きつつ、小さく囁く。

「でも、嬉しいな。僕の歌、ちゃんと届いてたんだ……」
「あ……」

 再び、重ねられる唇。
 包み込むような口づけを、今度は彼女もようやく、瞼を閉じて受け止めた。

     *

 月の落ちる樹海の葉陰、横たえられた裸身が、びくりと身じろいだ。
 這う指の感触に身をよじり、頬を染めて俯いたまま、絞り出すよう訴える。

「……あ……っ、や、ちょっと、待って、よ……」

 下肢の間へと伸ばされた指が、ゆっくりと蠢いている。
 閉ざされた膣の入口をかき分けて、内部へと忍び込み、奥の襞を擦りあげる。

「―っ、ん!」
「ごめんね。でも……もう、待てないから……」


223:よろこびの歌 8/11
07/07/03 03:01:25 zw6CdZ9k

 覆いかぶさったバードが薄く笑み、空いた左手で乳房をこね回す。
 胸元から、先端へ。つんと尖った色の薄い乳首に、唇が寄せられた。
 遠く響く清水の音に、ちゅくちゅくと吸い上げる淫靡な音色が混じる。ゆるゆると動いて下る舌の軌跡が、梢を透かす月明かりに青白く光った。
 あまりの恥ずかしさに耐えかねて、ソードマンはひたすら目を閉じていた。無意識に閉じかかる膝を、彼が掴み―更に深く、指が入り込んで来る。

「やっ……、ったい、痛いってば……」
「ん……、でも、ちょっとでも慣らしとかないと、あとがもっと痛いと思うけど」

 さらりと返って来た言葉に、ソードマンの表情が思わずひきつる。

「そういうこと、言うか……?」
「怖い?」
「だっ、誰が、怖いなんて……!」

 挑むように問われると、習慣でつい、挑み返してしまう。
 言ってしまってから、しまったと口をつぐむソードマンのさまに、バードの笑みが更に深まる。

「じゃあ、僕も遠慮なく―」
「あああっ、ちょっと、待って―っ、やっ、あ! な、何、して……ッ」

 裏返った悲鳴は、秘所へと落とされた唇のせい。
 両手でももを割り開かれ、晒された場所を舌先で思うさま嬲られる。

「あぁあ……、やだ、そんっ、な……。こんな、の……、はずかし、いって……、ねぇ、もう!」

 誰にも見せたことのないその場所を、さらすだけでもたまらなく恥ずかしいのに―更に、それを。
 全身朱に染め身じろぐ彼女に、バードは声すら返さず、ただ舌を動かす。わざと派手に音を立て、ぐちゅぐちゅと唾液を絡めて、襞を執拗にねぶる。
 あたたかく湿ったその愛撫に、ソードマンはかたく目を閉じ、懸命に耐えた。
 激しく搏つ胸が苦しくて苦しくて、心臓が壊れてしまいそうだ。

「やあぁ……、んっ、うぁ……、もう、やめてったら……ぁ……」
「……でも、濡れて来たよ?」

 そんなことだけ、報告してくる。
 顔を上げ、睨もうとするソードマン。バードはくすくすと笑いながら、桃色の秘肉に滲んで来た雫を舌先に掬い、クリトリスの包皮になすりつけて転がし始める。
 起こしかけていた彼女の身体が、びくりと大きくのけ反った。

「ああぁぁ……!? やだあ……っ、な、に、これ……ッ!」

 鋭く貫くようなのに、一瞬のちにはただ甘く、全身を疼かせる痺れ。
 感じたこともない感覚に、身体が勝手に震える。無意識にはねあがろうとする脚を、力ずくに押さえつけられる。
 逃げる腰を抱えられ、その一番気持ちいいところをぐりぐりとしつこくしゃぶりあげられて、身体から力が溶けていく。

「はっ……ぁ、あぁっ……、やだ、これ……ヘン、だって、こんな、の……」
「ヘンじゃないヘンじゃない。こーゆーもんだから、さ」
「だっ……て、やぁだぁ、も、う……」

 快楽と、羞恥と。
 ひどく混乱し、涙すらこぼし始めた彼女を、バードが覗き込む。乱れた髪をかきあげて、額に口づけが落とされた。

「可愛い。大好き。ソード……」

 耳元に響く甘い声に、ぞくりと震える。
 ばくばくと搏ちっ放しの心臓。胸元にぎゅっと抱え込むように腕を押し付け、ソードマンはバードの顔を仰ぐ。
 その頬をくるんで口づけると、バードは身を起こし、手早く衣服を寛げ始めた。
 あらわになる彼の身体をぼんやり見上げ―やがて現れた光景に、ソードマンは思わず声を失う。


224:よろこびの歌 9/11
07/07/03 03:03:25 zw6CdZ9k

「あ、うぁ―そ、れ……!?」

 既に準備の整った彼のペニスは、くっきりと筋を浮かせて勃ち上がっている。
 初めて見るその大きさと、予想以上の猛々しさに、思わず血の気が引いた。

(あんなのが、入る、の……!?)

「……む、無理むり! ぜ、ぜったいそんな、無理だって、や―あっ、待っ!」
「大丈夫だいじょーぶ。こういうもんだからさ、ね?」

 すさって逃げようとした身体は、あっけなく彼の手に引き戻された。
 怯えてひきつる身体を抱き込んで、バードは楽しげに挑発の声をあげる。

「どうしたのさ。怖くないって、言ってたじゃない?」
「……怖い……よ……」

 うっ、とソードマンがしゃくりあげた。
 虚勢すら張れなくなった様子に、バードがさすがに困った顔になる。それでも退くつもりはないらしく、ひらかせた脚の間に身体を割り込ませ、挿入の体勢に移る。
 入口に触れる、硬い感触。
 ソードマンの顔がいっそう青ざめ、唇がふるふると震え始めた。
 その表情を見下ろして、ふとバードが息を吐いた。小さくブレスを取ると、唇に旋律を紡ぎ始める。

“―眠れよ吾子、汝を巡りて、美しの花咲けば“

 穏やかなテノール。
 びくりとソードマンは息を呑んだ。
 聞こえて来たメロディは、彼女もよく耳に馴染んで知っている。
 安らぎの子守歌。

“眠れ、今はいと安けく、あした窓に、訪いくるまで……”

 歌いかけられる声の魔力に、彼女の魂は抵抗のすべをもたない。
 かすかな囁きめいたその声だけでもう、緊張が溶けていった。静かに優しいメロディは、鼓動のリズムを穏やかに緩め、全身を巡り、あたたかく流れ出す。
 わずかに表情の緩んだ彼女を見下ろし、彼も微笑む。甘い歌を口ずさみながら、膝をついて身を屈め―
 ぐ、と先端を秘所に潜り込ませる。

「―う、あ!」

 痛みに、ぎくりと竦む身体。
 反射的にこわばる身体を、彼が抱きしめる。狭い入口を切っ先で抉り、少しずつ侵入を深めつつ、唇はなおも歌い続ける。

“眠れよ吾子、汝が夢路を、天つ使い、護りたれば”

 熱く硬い楔が、ぎりぎりと胎内を裂く。
 拡げられ、埋められていく、その鮮烈な痛みと圧迫感。もがいてものけ反っても退くことなく、着実に奥へと潜り込んで来る。

「く……は……ッ、うぁ……あ……!」

 声にならぬ吐息をこぼしながら、彼女は必死に彼の声に縋った。
 耳に歌声が届くたび―痛みがほんの少しだけ和らいで、呼吸を継ぐ余裕が生まれる。
 暖かい腕の中に、しっかりと包まれていることを思い出させてくれる。

“眠れ、今はいと楽しく、夢の園に、ほほえみつつ―“

 ぶつん、という鈍い衝撃と共に、ペニスが処女地を突き破り、最奥まで貫いた。
 ゆるやかに伝う鮮血が、結合の箇所から滴り落ちる。
 目を閉じて震える彼女を抱いて、バードが深々と息をつく。途切れた旋律の代わりに、唇に浮かぶのは薄い自嘲。



次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch