07/09/18 21:53:40 O5Mzzhmy
リースを侵入者として排除しようとする触手。牧草の上で地球の光を浴びて立ち尽くすリースの周囲に触手を伸ばし、ぐるんと囲む。
そうして四方を囲み、吸盤を向けて一斉に距離を縮めた。あとは触手で絡んで、捕らえるだけ。なんならミアと同じく家畜にしてもいい。
「はっ!」
リースはぱっと上方に飛んで触手の包囲から抜け出す。触手よりもさらに高くリースは飛んでいた。
まるで背中に羽が付いているように自在に宙を舞う。
そして触手の真上を取ると、手を向け、
「その『たん』禁止!」
リースの手からぴかっと放たれた電撃が、触手の全身をビビビッと駆け巡る。
効果は抜群だ!
ドシーンと触手が倒れると、つかつかとリ-スが歩み寄る。
「リ、リースさん!?」
その時、ようやくミアが外に出てきた。メイド服を着ていたので手間取ったらしい。
外に出るときはメイド服を着るぐらいの常識は残っているようだ。もっとも胸が丸出しなのはもう気にしなくなったが。
「……ロストテクノロシーは全て回収する」
痙攣する触手にモンスターボールを向け、カチッとスイッチを入れると、触手の巨体はその中に収まっていった。
触手ゲット!
「あ、ああ……」
触手が回収されたのを見て、ミアはへなへなと崩れ落ちる。何も出来ない自分が悔しかった。
いや。何か出来たとしても、リースを傷付けるような事は出来ない。
任務を終えたリースは今度はつかつかとミアに歩み寄る。
「ここから……逃げたいか?」
そして唐突に聞いてきた。思いもかけないことを。
「え?」
「逃げたいなら逃がしてやる」
ハッと気付き、ミアは鼻の鼻輪に手をかけた。ここから逃げるのなら、これを外せる。
フィーナに逆らい、ここから逃げて人として生きるか。
フィーナに従い、このままここで牛さんとして生きるか。
「わたし……わたしは」
鼻輪に手を置いて考える。これを外すかどうか。
「わたしは……フィーナ様の従者です」
ここに残る。ミアはフィーナの乳母という名の牛として生きる意志をはっきりと伝えた。
「そうか」とだけリースは言った。
ミアが決めたことなら他人が口を出す事ではない。それにリース自身も任務に縛られているから。
夜空に輝く地球を見上げ、リースは呟く。
「フィーナは……地球か」
放置はできない。今のフィーナは何をするか検討もつかない。
「さようなら」
鼻輪をかけたミアに別れを告げ、リースは姿を消した。
「リースさん……」
消えたリースにミアは頭を下げる。
どうか姫さまをお願いします。
そしてミアは四つん這いになると地球に向かって鳴いた。
「もー」
(つづく)