07/09/22 23:40:08 k/7mIk9I
淡い月明かりに、白い肌が闇に浮かび上がる。はだけた浴衣を直そうともせず、昴は
情事の余韻に浸っていた。春彦は後始末をして、乱れた息を整えている彼女の隣に寝
そべった。心地よい静寂と、行為お残り香が二人を包む。
「な、春彦」
夢見るような声で呟いて、昴は乱れた浴衣のまま春彦に抱きついてきた。
「気持ち良かったか、オレの身体? ……その、ちゃんと恋人が出来てたか?」
春彦は微笑んで、彼女のタコだらけの手に自分の手を重ねた。
「すごく良かった。昴さんは、最高の恋人ですよ」
言うと、昴は薄明かりでもわかるほど顔を赤くして歯を見せて笑った。
「オレ、今初めて、自分が女だったんだなって思ってる。……ありがとうな」
その言葉に春彦の心臓が跳ねた。何か気の利いた言葉をかけようと、視線を彷徨わ
せる。
「あ、あの昴さ……あ、れ?」
声をかけると、しかし昴はすでにすうすうとやすらかな寝息を立てていた。
春彦は溜息をついて、昴の身体を抱き寄せて自分も瞼を閉じた。
数十分後には、安らかな寝顔が二つ並んでいた。
翌日。
「春彦。あの『ええぶい』ってやつ、貸してくれ」
「は……?」
「いや正直な話、昨夜の交わりは痛いだけでな。どうやったら気持ちよくなるか研究し
たいんだ。もちろんどうやったら春彦がもっと気持ちよくなるかも含めてな。お前だっ
て、どうせなら気持ちいいほうが楽しいだろう?
うん。やっぱり恋人も日々の鍛錬が大事なんだな。
そういうことでよろしくな。できれば二、三本頼む」
「……」
《了》