無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目at EROPARO
無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目 - 暇つぶし2ch600:クレイジー兄妹
07/09/20 18:22:25 1oOHll9i
え?
『それで妹さんは誰かと付き合ったことがあるんですか?』だって?
……無いな。一度も。
ん?
『それじゃあ今まで告白してきた人達はどうしたんですか?』って?
………………。
ハハハハハ。
うん。
……潰した。
俺が全部、握り潰した。
エヘ☆

……まぁ、とにかく、妹―エリは、俺が守らなくちゃならないんだ。
行き過ぎた行為かもしれない。
もはや出すぎた感情なのかもしれない。
それでも、俺は今まで、エリの傍にいた。
ソレが正解だと信じて。

……ん?
『それって、待ち受け画面とか目覚ましとか授業覗いたりする行為とは関係ないような』?
い、いいじゃないか!
ちょっと、こっちこい。
見てみろ、このエリの画像を。
……ほら、な。
かわいいだろぉ?
俺がコレほどまでの愛情を注ぐのも納得、だろ?
え? 『アナタの妹さんは確かにかわいいが、アナタの態度が気に食わない』?
いや、だから!!
引くな!
そんな目で俺の事を見るな! 見ないでくれ!!
……おい、ちょっと!! まだ話は終わってない!
行くな! ちょっと、オイ! 行かないでくれ!!
………………。

閑話休題。

でも、間違っていたのだろうか?
俺がエリの傍にいて、エリを守り続けてきたのは。
本当は、俺の提示し続けた答えは不正解だったのだろうか?
だから、天罰とでも言うのか?
もし、たとえそうであっても受け入れられない。
受け入れることなんてできるはずがないだろう?

―俺が死んでしまったなんて。

俺が死んでしまったことはとりあえず置いておく。
どうせいずれ、人は死ぬ。
それがたまたま早かっただけ。
そう考えれば、理不尽だが、納得できなくもない。
……いや、本当は納得なんかできない。できるはずがないだろう?
生きたい。まだやりたいこと、遣り残したことがあるんだ。
生きたい! 死にたくない!! 助かるんだったら、なんだってする!!
………………。
……でも、もうソレも叶わない。そして、叶わないことは何より自分が実感している。
死んでしまった、ということは、死んでしまったということ。
それ以外のなにものでもない。
だから、とりあえず棚の上においておく。納得したことにする。
……そういうことにしておく。
だが。

601:クレイジー兄妹
07/09/20 18:23:32 1oOHll9i
妹はどうなる?
今まで、俺が生涯をかけて守ってきた妹はこれからどうすればいいんだ?
エリはまだ学生なんだぞ?
今まで、俺に守られてきたのに、どうやってエリがやっていけるというんだ?
……『両親がいるんじゃないですか?』、だと?
ふん、両親なんて当てになるものか。
あいつらの自分勝手な行いにどれだけ俺たちが振り回されてきたことか。
俺たち兄妹はそのたびに苦い思いをして、身を切るような感覚を我慢して生きてきたんだ。
………………。
そうだ。これからは、そんな両親の振る舞いにも、俺はエリを守ってやれない。
それどころか、学校の連中、道ですれ違う他人、言い寄ってくる親戚。
それら全てにエリは怯えなければならないじゃないか。
どうしよう。
どうすればいいんだ。
俺は。
こんな中途半端な状態じゃ、エリを守ってやるどころか、自分の世話さえ満足にできやしないというのに。

………………?
お前今なんていった?
『アナタが生きていようと、死んでしまおうと、妹さんはやっていける』?
『むしろアナタがいないほうがいい』?
……馬鹿な。何を言ってるんだ。
エリは華奢なんだ、病弱なんだ。お人よしで、人見知りで、押しが弱いんだ。
そんなエリが、俺なしで生活できるなんて……。
………………。
……なんだと?
『妹さんが自分ひとりで生きていくためのチャンス』、だと?
エリが自立する、チャンス……?
………………。
いや、だが、しかし。
……たしかに、俺がエリの面倒を一生見ることは不可能だったろう。
いつか袂を分かつ。
そんなことは当然だ。覚悟だってしてきたし、できているつもりだ。
だが今は、それでも傍に居たかった。傍にいて守ってやりたかった。
嬉しいこと、辛いこと、いろんなこと一緒に分かち合いたかった。共有したかった。
確かに、いずれは俺が守る必要もなくなる。
それでも、今はいくらなんでも早すぎる。
エリが自立するのはまだまだ早すぎだ。
今のエリには俺が必要なんだ。絶対。



……どういうことだ?
『あなたが納得するまでの猶予を与えます』……?
それまで、世界に留まってもいい、だと?
つまり、エリが自立できるまで、自立できたと俺が納得するまで、この世界にいてもいい、ってことか?
いや、でも、俺は死んだんだろ?
どうやって……。
! ……まさか。

―俺はシスコンである。ついでに妹、エリを見守る幽霊でもある。

……。
こんなところか。
わかった、猶予は俺が納得するまで。
納得して、成仏するまでってことか。
……今のうちに言っておくが、俺はまだ信じていない。
まだまだ、エリには俺が必要なんだ。
だから、俺が納得するのは、エリが死ぬまで無理かもしれないぞ。
それでもいいんだな?

602:クレイジー兄妹
07/09/20 18:25:03 1oOHll9i
……。
よぉ~し。約束だ。
んじゃ、ちゃっちゃと、元の世界に戻してくれ。
エリが心配だからな。早くついていてやらないと。

俺の葬式の翌日、エリは元気に登校した。
………………。
え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?
なんで!?
なんで、なんで!?
っていうか、ショックで登校できないとかあるだろう!?
お兄ちゃんいないんだよ!? 死んじゃったんだよ!?
ほら、隣にいつもいるお兄ちゃんがいないだろう!?
まぁ、そりゃ幽霊としての俺はいるが……。
それにしても、一日寝込むとかもないのかよ!?
ちょっと、それはないだろう、エリ!?
俺はもうエリが学校辞めてしまうんじゃないかとまで危惧していたというのに!
それが、なんで、なんでなんでなんで。なんで!?
どういうことなんだ!?
理解できない。
お兄ちゃん、全く理解できないよ!!
………………。
……ま、まぁ、元気なのはいいことだ。
いいことだと思い込むことにする。
それに、それでも、エリは寝過ごしかけたし、弁当だってコンビニのおにぎりだ。
ほ、ほら、俺がいないとどうにもならないじゃないか。
ね? 俺は必要な存在だったんだよ。
そんなことを必死で考えながら、規則正しく歩くエリの後ろを行く。
宙に浮かび、空を飛ぶこともできるのだが、まだ慣れていないので歩くしかない。
エリの後を歩きながら、それでも混乱からなかなか立ち直れないでいると、俺の後ろから誰かが駆けてきた。
ソイツは俺をすり抜け、エリの隣で足を止めると、足を止め振り向いたエリに話しかけた。
「……おはよう、水城」
ソイツは兄が死んだばかりのエリに気を使ったのか、トーンを落とした声でエリに挨拶した(ちなみに“水城(みずき)”とは俺とエリの苗字だ)。
エリは少し微笑むと、挨拶代わりに頭を下げた。
ソイツも、エリの事情を知っているのでソレが無作法だと怒ることはない。
前を向き、再び歩き出したエリの隣を同じペースでソイツも歩き出す。
俺はソイツのことを知っている。
たしか、『武田……なんとか』とかいう名前のエリの同級生でクラスメイトだ。
家から学校への距離は遠いのだが、通学路が一緒なので朝によく接敵する。
“接敵”。
そう接敵だ。
俺の勘だが、コイツはエリに好意を抱いている。
いや、まちがいなくエリに惚れているな。
そんなヤツと接触することを、“接敵”といわずになんと言う?
……まぁ、いい。
沈黙のまま歩き続ける二人。
武田は言いにくそうに口を開いた。
「お兄さんのこと……なんていうか、………その、残念、だったな」
ん?
なかなかいい事を言うじゃないか。
ほら、エリ。残念だっただろ? 残念だった、と言うんだ。涙なんかを流すとなお良い。
……ってぇ! 妹が悲しむかもしれないというのに、喜んでどうする! 俺!! 俺の馬鹿ぁ!!
しかし、エリは武田の発言に、静かに首を振る。
「………………」
「え? 『今も見守ってくれてるから寂しくない』?」
………え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?
何ソレ!? ねぇ、何、ソレ!?
確かに今も見守ってるけど、見守ってるけど……!

603:クレイジー兄妹
07/09/20 18:26:39 1oOHll9i
その言い草じゃ、もう俺、思い出の人になってるじゃん!
遠い星空から見守る、『気のいいやつだった』的ポジションじゃん!!
早い! 早すぎるって!! エリ!!
せめて一ヶ月はもってくれ!
お兄ちゃんの名前を聞いただけで涙を流す、とかさぁ!
そういう、なんていうの? あの、あれだよ。
とにかく、思い出にするの早すぎだから! ね? エリちゃん!!
混乱する俺をよそに、武田も意外だったのか目を見開いている。
「あ、……そう、なんだ」
エリは首をかしげ、不思議そうに武田を見る。
「いや、ていうか、なんて言うのかな。ほら、水城ってよくお兄さんと一緒にいたからさ。もっとショック受けてるのかと思った」
武田の言葉を聞いて、少しエリの顔が曇る。
ソレを見て、武田は言う。
「あぁ、ゴメン。思い出させて」
すまなそうな武田に、エリは静かに首を振る。
「………………」
「『まだ傍にいてくれているから大丈夫』? ……。そう、か」
あう!?
確かに傍にはいるけどさぁ! いるけどさぁ!!
いないじゃん! 実際問題、いないじゃん!! 見えてないじゃん!!
ていうか、ちょっと、ホント、立ち直り早くね!?
エリってこんなに強い娘だったっけかなぁ。
『か弱い子』っていうの、俺の勘違い~……?
いや、いやいや。勘違いなはずはない。エリはか弱いことは間違い、ない、はず。
でも。あれ~? おかしいなぁ……。
だったらなんでぇ……?
そんなことを言っている間に、二人は学校につき、教室へ向かう生徒の群れの中に混じっていった。

教室でのエリはやっぱり落ち着いていた。
席に着いたエリにクラスメイトたちが次々に激励の言葉をかける。
俺は少し離れた位置でその光景を見守る。
……ふ~ん、そうか。
俺の知らないところでエリは友達に、クラスメイトに恵まれていたのか。
ただ授業を覗いていただけではわからなかったクラスメイトたちの優しさに俺は初めて気づいた。
うんうん。そうか。そうだったのか。
今、エリの机の前で盛んにエリに話しかけている女子がいる。
この娘は確か……。
『ユウキ』とかいう娘だったはずだ。
ソレが苗字だか、名前だかは忘れたが、確かそんな名前だ。
彼女は明るい声で、エリのことを元気付けようとしてくれている。
よかったよかった。そんな友達もいたんだな。
俺が感慨深げに頷いていると、始業のベルが鳴りホームルームの始まりを告げる。
少女ユウキもエリの席から離れ、自分の机についた。
ふと、エリが携帯を覗く。
そして、そのまま表情が固まる。
俺は異変に気づき、エリの席に近づくと携帯の画面を悪いと思いつつ覗く。
そこには。

『エリ。今日、食べたいものはあるか?』

携帯の液晶には簡素な文章が表示されている。
それは俺がエリに送ったメールだった。
その日は珍しくエリに用事があり、夕食の用意がある俺は仕方なく一人で帰っていた。
途中買い物によるために商店街に入り、そこでメールを打った。
できるだけ、エリの希望に沿ったメニューを出すために。
そして、その直後。

俺は死んだ。



604:クレイジー兄妹
07/09/20 18:27:43 1oOHll9i
その後、俺が死んだことに関する緊急連絡は直ぐにエリに届いた。
ソレからは怒涛の流れだった。
多分、そんな中でエリは携帯メールを見る暇、余裕なんてなかったのだろう。
ほったらかしにされたメールは、そして、今、開かれてしまった。

教師がホームルームのために教室に入ってくる。
すぐさま、教師はエリの異変に気づく。
「おい、大丈夫か? 水城。顔が真っ青だぞ」
エリはその言葉に反応しない。
人形のように固まった表情のまま、涙が大量に零れ落ちる。
「お、おい。どうしたんだ?」
エリの息遣いが荒くなり、苦痛に耐えるように体を折る。
涙をボロボロと零しながら、苦しげに喘ぐ。
異変に気づいた教師はすぐさま保健委員に保健室にエリを連れて行くようにする。
当然、俺もソレについていく。
ふと振り向いた俺の視界には、教室の中で、呆然となった教師と生徒たちが、出て行くエリの背中を眺めているのが見えた。

「(っていうか、保健委員ってお前かよ……)」
ジト目でソイツを見る。
ソイツは過呼吸状態のエリにビニール袋を渡し、それで口を押さえるように指示した。
保健室の中には、俺とエリ、そしてソイツしかいない。
どうやら、保険医は外出しているようだ。……ふん、頼りになるな。
ベッドに座り込んだエリは未だに苦しそうにしゃくりあげている。
俺はそんなエリを眺めながら、心配する。
そして同時に、不謹慎ながらも安心した。
「(やっぱりエリには俺の死がショックなんだな)」
本心では相当傷ついていたのを必死に押し隠し、普段通りに、気丈に振舞っていたのだろうか。
そんなエリを俺は愛おしく思う。
「(ああ! 抱きしめて慰めたい! 昔のように頭を撫でてやりたい! 安心させるために声をかけたい!!)」
衝動は膨らみ、今すぐに行動に移したい!
だが、幽霊の俺にはそんなことはできない。
……そんなことは解っている。
だから、心底残念だが、試すことさえしなかった。
今、この場でエリを慰めることができるのは、小憎らしいことに保健委員のヤツしかいない。
ソイツは心配そうにエリのことを見守る。
沈黙の中、しばらくそのままの状態が続き、ようやくエリの状態が落ち着いてくる。
「(気の利かないヤツだな! 飲み物の一つくらいもってこい!)」
ソイツを睨みつける俺。当然、そんな意見は届かない。
「………………」
歯がゆい思いをしていると、エリは真っ赤な顔を伏せながら、たどたどしくソイツに礼を言った。
気の利かない憎っくきソイツ―武田は少しだけ微笑み、しかし、首を横に振る。
「僕のせいだろ? 水城がそんな風になったのは」
ん?
何言ってるんだ、コイツは。
エリも意外だったらしく、首をかしげる。
それに構わず、武田は続ける。
「僕が朝、余計なことを言ったから、思い出してしまったんだろ?」
そういうと、武田は勢いよく頭を下げる。
「本当、ゴメン。無神経なことを言ってしまって。……思い出させてゴメン」
エリは唐突な武田の行動に動揺を隠せず、オロオロとしながら首を振る。
「(ふ~ん……)」
武田の言っていることは間違いなく勘違いだが……。
「(自分が謝るべきと思ったときには、ちゃんと頭を下げられるヤツだったんだな)」
俺は少し感心した。
今までは、妹に近づくただの敵だと思っていたが、どうやら見るべきところはあったようだ。
「(っていうか、死んでから妹に関係する人に目を向けられるようになるとは……。
ずいぶん俺は近視眼的な人間だったんだな……)」
そう自嘲する。
覗き魔のような、否、まさに覗き魔的な行為をして、ようやく人のことを正面から捉えられるとは……。
馬鹿げた話もあったものだ。当然、馬鹿なのは俺なのだが。

605:クレイジー兄妹
07/09/20 18:28:38 1oOHll9i
そんな俺を無視して、エリと武田の会話は展開していく。
「………………」
エリは先ほどの武田の発言をやんわりと否定した。
「? 僕のせいじゃない?」
武田は戸惑ったように顔を上げ、真っ直ぐにエリを見る。
一瞬、二人の視線が絡まる。が、直ぐにエリは視線を落とした。
「僕のせいじゃないとしたら、どうして……?」
エリは少し顔をゆがめ、持っていた携帯の画面を武田に見えるように指し示す。
「見ても、いいの?」
頷くエリ。
武田は恐る恐る携帯の画面を覗く。
そこには簡素なメールが表示されているはずだ。
「これってもしかして……。お兄さんからの、だね」
「………………」
頷くエリ。そして、告げる。
「え? これが最後のメール? ……そう、なんだ」
武田は画面から眼を離し、近くの椅子に腰掛ける。
エリは携帯を一瞬だけ覗くと、静かに折りたたんだ。
そのまま保健室に沈黙がおりる。
「………………」
「そうだね。いつも、水城とお兄さん一緒に居たもんな。寂しくってもしょうがないって」
「(そうだよ、そうそう! いつも一緒に居たからな! 寂しいのは当然だ!)」
………………。
……ああ。俺って本当、ダメな兄貴、だな……。
妹がこんなにも落ち込んでいるっていうのに……。喜んでしまうなんて!!
でも、しょうがない!
だって、俺が死んだばっかりだというのに、『それでも気にせず元気な妹』なんて見たくない!
いや、『元気な妹』はいつだって見たいのだが、それでも見たくない特殊な状況はある!
ソレが今だ!!
「(許せ! エリ! こんな駄目なお兄ちゃんだけれど、それでも俺はエリの味方だぞ!!)」
妙にテンションが上がってきた俺。
しかし、保健室の雰囲気は暗いままだ(当然なことに)。
「………………」
エリは申し訳なさそうに、武田に頭を下げた。
「いや、迷惑なんかじゃない。水城が落ち着くまでここにいるよ」
その発言に驚いたらしいエリは、しかし、武田を安心させるためだろう、微笑んだ。
「………………」
教室にもう帰ってもいいと武田に告げる。
「そういうわけにはいかないよ。……それとも、一人になりたい?」
エリはためらいがちに頷く。
そりゃそうだ。
こんなときは、一人になりたいに決まっている。
「そう、なんだ」
「………………」
再び頭を下げるエリ。
「……なんで、水城が謝るのさ。水城はぜんぜん悪くないだろ?」
「………………」
「………………」
再び、二人は黙り込む。
……ん~?
おいおい、なんだよ。この青春の一ページみたいな場面は。
っていうか、一人になりたいって言ってんだから、さっさと退場しろよ武田。
………………。
ん? おい武田。なんだ、その目。
その決意に満ち満ちた目は。
武田は大きく深呼吸すると、緊張気味に言った。
「僕じゃ、ダメかな?」
「?」

606:クレイジー兄妹
07/09/20 18:29:36 1oOHll9i
な、なんだ。何言い出してんだコイツ。
「僕じゃ、お兄さんの代わりにならないかな?」
「……………?」
ま、まさかコイツ……!
「僕が、お兄さんの代わりに、ずっと水城の傍にいたい、ってことなんだけど」
「…………??」
“そういう行為”は俺が事前に全部潰してきたので、エリは“そういう行為”に特にニブイ。
だから、まだ武田が何を言いたいのか良くわかっていない。
言いたい事がうまく伝わっていないことを察した武田は、絞り出すような声で、言う。
「つまり、好きです。俺と付き合ってください」
「!」
や、ややややっぱりかぁ!?
こ、こここ告白しおったぁぁ!!
おいおいおいおいおい! 何考えてんだ、お前!?
肉親の葬式の翌日に告白する馬鹿が何処にいる!? 否、此処にいる!!
っていうか、コレが若さなのか!? 若さというものなのか!? 武田君!?
ホラホラホラ見ろ。見てみるがいい。武田め。
エリ、驚いてるじゃないか。呆気にとられてるじゃないか。
ほら、顔を赤くしてないで相手の顔を見てみろ! 武田!!
お前と同じくらい赤いエリの顔を……、

ん? 赤い顔?

って、ええぇ!?
何赤くなってんのさ! エリ!! エリちゃん!?
俺の混乱をよそに武田は早口で言う。
「へ、返事はいつでもいいから。っていうか待ってる。いつまでも待ってるから。だから、そのなんていうか。
僕、支えになりたいんだ。水城の。だから、なんていうか、その! つまり、じゃ、じゃあね」
そしてそのまま、逃げるように武田は保健室から出て行った。
な、なんだったんだ、全く……。
少し見直したと思ったら、直ぐコレだ。
やはりエリ以外の人間は信用ならんな。
「(な、エリ?)」
俺はエリのいるベッドを見やる。
エリは放心したように、武田の出て行った扉を見つめ続けている。
そして、ポツリと呟いた。
「………………」
……?
ん? どういう意味だ? 『また、会えるかもね、お兄ちゃん』?
? 何を言っているんだ?
意味が解らずエリの顔を見つめる俺。
エリは告白された少女が浮かべるには似つかわしくない、嫣然とした笑みを浮かべていた。

607:230
07/09/20 18:30:53 1oOHll9i
とりあえず、今回は以上です。
お目汚しですが、まだ続きます。
よろしくお願い申し上げます。

608:名無しさん@ピンキー
07/09/20 18:33:38 F9vKbN28
おk、いいシスコン兄貴だ
文章も軽快にテンポよく読めました

うん、なにがいいたいかっていうと非常にGJ!!

609:名無しさん@ピンキー
07/09/20 21:13:43 GdDPhnNT
GJ!重い話のはずなのに軽快なテンポがそれを感じさせないですね。
兄貴が成仏しそうにないwいやわかんないけど

610:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:47:36 it4WFlk6
gj!
こんな兄貴なら欲しいな。三人くらい。

611:名無しさん@ピンキー
07/09/21 17:16:54 bWMJBY9v
こんな兄貴が三人もいたら何にも出来ない人間になりそうだ

612:名無しさん@ピンキー
07/09/22 14:04:47 XZTc/krh
こんな性格の義姉がいたら……うん、いいね

ついでに性格に無口を追加しとけば完璧

613:名無しさん@ピンキー
07/09/23 05:58:49 FKlus30c
良い意味でシスコンのウザさが出てたなGJ

614:名無しさん@ピンキー
07/09/23 07:07:57 dbm6zqBe
シスコン兄・・・だめだこいつ、早くなんとかしないと!

GJ!!!

615:名無しさん@ピンキー
07/09/23 18:09:09 5eywwf6G
>>614
残念だが、処置なしだ
ほら、バカは死んでも直らない、っていうだろ?

まあなにかっつうとgj!

616:230
07/09/24 11:57:54 Lcpy1mzV
これより、投下させていただきます。
前回より長い上に、大したエロも御座いません。
真に申し訳御座いません。
それでも構わないと言う方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

617:クレイジー兄妹
07/09/24 11:59:13 Lcpy1mzV
数週間が瞬く間に過ぎた。
その間、俺としては大層面白くない展開が続いた。
なんというか、エリと武田が付き合いだしたのだ。
なんとまぁ、二人は初々しくも、健全に距離をつめていく。
…………ケッ。
なんだよ、なんだよ。
何が『相思相愛』だっつうの。馬鹿馬鹿しい。
何が『お似合いのカップル』だっつうの。下らない。
……ああ、たしかにお似合いのカップルさ。
エリは前述したようにかわいいし、認めたくないことだが武田の外見も悪くない。
ふん、たしかに釣り合ってはいるさ。
っていうかさぁ。
もう俺、成仏してもいいんじゃね。
エリは、あのメール以降、俺のことで泣き出すようなことはなくなったし、家事だってうまくやってる。
馬鹿な両親共も干渉してこないし、学校での生活も順風満帆とは行かないが、限りなくソレに近い。
周囲との友人関係も良好で、むしろ俺という邪魔者がいない分コミュニケーションは円滑に行われている(俺としては複雑だが)。
それに、憎たらしいことに『お似合いのカレシ』もいるしな。
……でも、俺はまだ納得できていない、のか。
俺が納得したら迎えに来るはずのアイツも来ないしな。
そんなことを考えているうちに、エリは武田を家に招待した。
ふん。……『勉強会』、ねぇ。
エリ、油断しすぎだぞ。
男はみんな狼なんだ。
武田だって間違いない、一匹の狼だ。
それを自ら招き入れるなんて。
……自殺行為も甚だしいわ!! 
くそぉ、武田めぇ……!! 
何かしたらただじゃおかない。呪い殺してやる……!!

俺が呪詛の言葉を武田に投げかけているうちに、二人は家に着き、エリの部屋に到着した。
二人はぎこちなく勉強を開始した。
ホラ見ろ、武田のこの飢えた獣の目を。
エリ! 気づけ! そして、コイツを部屋から追放するのだ!
エリは動かしていた手を止め、武田の顔をうかがい、そして言う。

「………………」

ん? な、何て? エリ?
「『しないんですか?』って何を……?」
武田は戸惑っている。俺も戸惑った。
……エ、エリ? エリちゃん?
な、なななな何を言っているんだ?
おいおいおいおいおい。な、何を赤くなってるんだよ、エリぃ!
確認するように武田が呟く。
「……いいの?」
よくねぇよ!! ふざけんなよ、お前!!
いや、そりゃ、二人が家に来た段階で何もしないという選択肢はないし、若い二人が密室で、
勉強しかしないなんていうのは、むしろその方が不健全かもしれんが……。
っておい、コラ!! 何見つめ合ってんだ!!
あ! 武田! 何近づいてんだ!
エ、エリの肩に手を乗せるな!!
エリも!! 素直に目を閉じるな!!
オイオイオイオイオイオイ!! マズイ! マズイってぇ!!
このままじゃ、このままじゃ、このままじゃぁ!!
くっそぉ~!! ええい、こうなれば!!
かくなるうえは!!
そして、俺の意識が遠くなる。

618:クレイジー兄妹
07/09/24 11:59:58 Lcpy1mzV
ふと、唇に暖かく、柔らかい感触。
ん? もしかして……。
俺は覚悟を決めて目を開ける。
目の前には、エリの顔がどアップで映し出されている。
俺は驚き、顔を離す。
………………。
おいおいおいおぉぉい!!
成功しちまってるよ!! 憑依が!! 乗り移っちまってるよ、武田に!!
「………………」
エリは目を開け、もの問いたげに武田を―俺を見つめている。
「いや、いやいやいやいや! 『どうしたんですか』って、そりゃ!!」
っていうか、……あ! しまった!!
俺、妹にキスしちまったんじゃないか!!
義理の兄妹とはいえ、仮初の体とはいえ!!
い、いいいいい妹にキスしちまったよぉ!!
どうしよ、どうしよ、どうしよぉ!?
マジ、マズいって!!
いくら俺がシスコンだからって、いくらなんでもマズすぎる!!
俺は混乱した頭で、ふとエリの顔を覗き見る。
エリは―。
「……え?」
―涙を一筋、零していた。
俺は呆気にとられ、頭が真っ白になる。
どういうことだ?
「……なんで、泣いてるんだよ。エリ?」
自分の体が今、武田であるということも忘れ、口調も変えず尋ねる俺。
「………………」
「……え? 『お兄ちゃんを感じたから』って……。えぇぇぇ!?」
何言ってんだ!? エリは!?
バレた!?
いやいやいや、バレるはずがない! でも、どういうこと!?
感じた、っていうかキ、キスして俺の事思い出した、みたいな?
いやいやいやいやいやいや。
俺、生きている間に、キ、キスとかそういうこと一度でもしたか!?
……いや! してない! 全然覚えがない!
っていうか、そんなことするわけないだろう、お兄ちゃんが!! 誤解されるようなこと言うのやめなさい!!
っていうか、おいエリ!! 何で脱ぎだしてんだよ、お前は!!
ブ、ブブブ、ブラジャーが見えてるよ!
「ふ、服を、どうして、なして脱ぐんかなぁ……? エ、エリ?」
「………………」
「いや、『するんじゃないですか?』って。え、っと……」
いつからそんな、は、はしたない娘になっちゃったんだ……!!
お兄ちゃん……、お兄ちゃん悲しい!!
「………………」
「『私じゃダメですか?』って……。え、えぇぇぇ……?」
そ、そんな目で見つめるな、エリ……!
「………………」
「『私の初めて、もらってください』ですってぇ……?」
!!
か、かわいい……!! かわいすぎる……!!
………………。
…………もう、いいや……。
俺は悩むことを放棄し、エリを抱き寄せた。

619:クレイジー兄妹
07/09/24 12:01:04 Lcpy1mzV
目の前に服を全て脱ぎ、ベッドに座ったエリがいる。
俺もすでに服を脱いでおり、全身真っ裸でエリの前で同じく座っている。
……っていうか、武田。すまん。ホント、すまん。もうしばらくお前の体借りるぞ。
「………………」
「いや、なんでもない。じゃ、じゃあ、始めようか」
俺はエリの顔に震える唇を寄せると、優しくキスをした。
……はぁ、最低だな、俺。……ハハ。何か笑えて来た。
そして、とうとう、前人未到のエリの胸に触れる。
柔らかい。
それに、物凄くスベスベしてる。
俺は刺激を与えすぎないように、できるだけ優しく触る。
俺の掌ほどの大きさの乳房は、俺の手の感触に粟立つ。
「……………ん」
ピクリとエリが反応する。俺はそれにビビる。
「わ、悪い。……痛かったりするか?」
エリは首を振った。
「………………」
「『もっと強くしてもいい?』。 わ、わかった」
緊張による汗でべたつく両手を使い、俺はエリの胸を揉む。
……うん、物凄く柔らかい。
俺の掌の動きに合わせ、エリの胸乳は形を柔軟に変える。
「ん……んぅ」
エリが声をかすかに漏らす。
……っていうか、これでいいのだろうか?
俺だって経験がないんだから、エロ本とかの知識しかない。
でも、どこまでも指が埋まっていく胸には、どう対処すればいいんだろう。
なるべく単調にならないように変化をつけて指を動かす。
ん? なんだか先端が硬くなってきたような。
俺は半ば無意識にその先端を摘む。
「! ……んん……!」
再び、エリの体が鋭い反応を示す。
「おい! だ、大丈夫か? エリ?」
「………………」
「だ、大丈夫……? そ、そうか」
なるほど、本当に敏感なんだな。ち、乳首は。
ふぅ~ん。
でも、ここを攻めない手はない、か?
俺は乳房を弄ぶ指に、先端を苛める動作を加えてみる。
「ふ、……んん! あ、あぅ」
俺の指が突起を弄くるたびにエリは甘い声を漏らす。
まだ柔らかかった乳首は、触り始めると途端に硬さを増した。
俺は調子に乗って乳首ばかりを苛める。
「は、はぅ……!! や、やぁ!」
エリの顔は赤みを増し、手を触れている部分が暖まってくる。
次のステップとして、俺は自然と頭を下げ、右の突起を口に含んだ。
「!! んん……!」
エリの肩が大きく動く。
でも、俺はもういちいちエリの反応に構わず、夢中で乳首を貪った。
「ん……、は、はぅぅ……!」
舌でまさぐり、歯で挟み、口で吸引する。
汗ばんできたエリの胸は少ししょっぱかった。
唾液でエリの右胸はベタベタになり、俺の口の周りも濡れる。
俺は右の乳房を苛め倒すと、今度は左の胸を口に含む。
右と同じ目にあわせながら、口に含んでいないほうも揉み続ける。

そんなことをしているうちに、俺は気づく。
気づいてしまう。
俺の頬が濡れていることを。

俺は、いつのまにか、泣いていた。

620:クレイジー兄妹
07/09/24 12:02:56 Lcpy1mzV

乳房から口を離し、腕で顔を隠す。
「………………」
エリが聞いてくる。
『私じゃ興奮しませんか?』と。
エリは俺の頭を抱き寄せる。
俺は、グスグスと泣きながら、エリの胸に顔をうずめる。

私じゃ興奮しませんか、だって?
………………。

……しないよ、興奮。

俺の(正確に言うと俺のじゃないが)ペニスは最初から勃っていない。
勃つはずがない。
俺が今抱いているのは、エリ―妹なんだぞ。
小さいときからずっと守ってきた、大事にしてきた、かけがえのない妹なんだ。
それがどうして、性的対象に見える?
酷い話だ。
本当に酷い話だ。
俺は大声でなき、エリはますます強く俺を抱きしめた。

結局、俺のペニスは勃つことなく、まるで幕切れのように俺の意識は暗くなった。

「………………」
「じゃ、じゃあな。また明日」
俺は玄関から出て行く武田をエリと一緒に見送った。
どうやら、武田にもおぼろげに記憶があるらしい。
でも、何で泣いていたのかなんて、多分永久に分からないままだろう。
そして、今、部屋の中には俺とエリがいるだけだ。
当然エリはもう服を着ており、ベッドに腰掛け、ぼんやりとしている。
まぁ、当然だろうな。あんなことがあったんだ。
意味が分からないだろうなぁ。
なにしろ、彼氏が行為の最中突然泣き出したんだから。
しかも、相手はそのことをあまり覚えてないという。
ま、俺が始めての相手じゃなくてよかったじゃないか。
初めての相手が『憑依した兄』だなんて酷すぎる。
それでも俺はどうにも申し訳なくて、俺は幽霊になって初めてエリに声をかけた。
……かけずにはいられなかった。
[悪かったな、エリ。お前の貞操を乱しかけて。本当にすまなかった]
ふん。
聞こえるわけがない。
ソレでも俺は―。
「………………」
エリが呟いた。

―え?

今、確かに、俺に答えなかったか?
『どうして、私の初めて、もらってくれなかったの? ……お兄ちゃん』と。
[聞こえてる、のか? エリ?]
エリは、俺の目を見て、確かに頷いた。

621:クレイジー兄妹
07/09/24 12:05:11 Lcpy1mzV
[いつから、気づいてたんだ……?]
はじめからだよ。お兄ちゃん。
お兄ちゃんが死んで、私のこと見守ってくれだしてから。
だから、だよ?
お兄ちゃんはいなくなってなんかないって解ってたから。
だから、お葬式の後もすぐに立ち直れたんだよ?
[どうして、見えないフリなんか……]
見えてなかったからだよ、最初は。本当に見えたのはつい最近。
でも、いるのはわかった。ずっと傍にいてくれたんだよね。
[……じゃあ、どうして葬式の次の日、俺の最後のメールを見て泣き出したりしたんだ?]
だって、もう、見たり、話したりできないって思ったら……。
いくら見守ってくれてるっていっても、やっぱり寂しいよ。
でも、私、これでもがんばったんだよ。
本当はいつもお兄ちゃんに話しかけたかった。笑いかけたかった。一緒におしゃべりしたかった。
でも、そんなことしたら、他の人には見えてないお兄ちゃんに話しかけたりしたら、
きっと病院に連れて行かれちゃう。閉じ込められちゃう。
お兄ちゃんに心配かけさせちゃう。お兄ちゃんを心配させる嫌な子になっちゃう。
それがいやだったの。
[何故、今になって?]
だって、初めてお兄ちゃんが話しかけてくれたから。
……それに、お兄ちゃんが私のこと、……奪ってくれなかったから。
[………………]
ねぇ、どうして?
どうして、私のこと抱いてくれなかったの?
どうしてどうしてどうしてどうしてどうして、どうして?
[お前は、俺の妹だ。だから―]
わからない、わからないよ? お兄ちゃん。
だって、お兄ちゃん、途中までしてくれたじゃない。
[ああ、だが、しかし……]
これじゃ、なんのためにこんなことしたのか解らないよ。
[? ……どういうことだ?]
武田君と付き合ったり、部屋に招いたりしたのは、全部、お兄ちゃんのためなんだよ?
[……。まさか]
武田君はいい人だよ。いい人だよね?
でもそれだけ。
お兄ちゃんの代わりには、なれません。
[……武田のこと、利用したのか?]
利用じゃないよ、活用だよ。
それに武田君のほうから告白してきたんだから、お互い協力関係みたいなものじゃない?
それにしても、途中まではうまくいったのにね。
お兄ちゃん、私と武田君が、『そういう関係』になりかけたらきっと我慢できずに、私の前に姿を見せてくれる、私に触れてくれる。
私の事奪ってくれる。……私はそう信じてたのに。
お兄ちゃんのせいで計画が崩れました。お兄ちゃんのせいで壊れました。お兄ちゃんのせいで狂いました。
でも、勘違いしないでね。
そのために、そのためだけに好きでもない人とお付き合いしたんじゃないよ。
武田君のことはスキ。
たぶん、今生きている人達の中では最も大切な人の部類。
でもね、でもねでもね、でもねでもねでもね。
でもね、お兄ちゃんが一番なの。
お兄ちゃん好きなの。お兄ちゃんがいいの。お兄ちゃんじゃなきゃダメなの。
[……エリ?]
お兄ちゃん以外要らないの。お兄ちゃんさえいればいいの。お兄ちゃんだけでいいの。
お兄ちゃんさえ、いればいい。
だから、もういいの。
これからはお兄ちゃんと二人で生きていくの。
学校も辞める。家にずっといる。お兄ちゃんと一緒に。
他の物なんて、他の人なんて、他の世界なんて、もう要らない。
アハハ。最初からこうすればよかったのかもね。
でも、どうしても私の初めてをもらって欲しかったから。お兄ちゃんに。
だから、策を弄しました。

622:クレイジー兄妹
07/09/24 12:06:13 Lcpy1mzV
でもでも、もうそんなことはいい。もっともっと、傍にお兄ちゃんがいればいい。
お兄ちゃんさえ、いればいい。
どうして気づかなかったんだろう。こんな簡単なことなのにね? 単純すぎて気づかなかったのかな?
お兄ちゃんさえ、いればいい。
ね? だから傍にいてね?
ずっと、ずっと私の事、離さないでね? お兄ちゃん。
[エリ……]
いなくなったりしないよね? 私の事、見捨てないよね?
いい子にするから。いい子になるから。なんでもするから。なんだってするから。
だから。
お兄ちゃん、私のこと見捨てたりしないでね。
いつまでも、いつまでも、いつまでもいつまでもいつまでもいつまでも。
ずっと、ずぅっと私の隣にいてください。

エリの言葉を聞いて俺の意識が遠のく。
これが俺のしてきたことなのか?
俺がエリを守ってきた結果が、コレなのか?
………………。
こんなの、誰に言われなくても不正解じゃないか。
俺は妹を守るという大義名分を掲げ、妹に依存し、妹を依存させていたというのか……?
依存。まさにそれじゃないか。
それで『妹が自立するまで見守る』だと……?
馬鹿だ。俺は本当に大馬鹿だ。
結果的に俺は妹を追い詰め、依存を深くしただけじゃないか。
もしかしたら。
妹は壊れていたのかもしれない。
俺が死ぬ以前から。あるいは俺が死んだから。
……いや。そんなことはない。まだ大丈夫なはずだ。
まだ修正は可能なはずだ。
そう信じるしかない。
………………。
だから。
俺は解決方法がわかってしまった。
依存をなくし、自立させるための、手段。
間違いなく卑怯で、どうしようもなく姑息で、たった一つ、唯一の手段。
それは―エリの依存対象の消失。
……俺の消失。

[よしわかった。お兄ちゃん、傍にいる。ずっとエリの傍にいるぞ]
ホント? 本当に? ずっと、ずっと傍にいてくれるの? 私の傍に?
[ただし、もうエリの目には俺は見えない。エリの耳には俺は聞こえない]
………………。
……え?
[もう、エリは俺のことに気づくことはない]
そんな。そんなそんなそんな。
そんなのは傍にいるって言わないよ?
どうして? そんなことを言うのかな? 言うのかな??
[でも、それでも俺はエリの傍にいる。見えなくても聞こえなくても、俺はエリの隣にいる]
そんなのって、そんなのって、そんなのって―。
[それでも消えるわけじゃない。本当だ]
そんなのって―ずるい。
ずるいずるいずるいずるい。
ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい。
[首を振るな。泣きそうな顔をするな。信じろ、俺を]
ヤダヤダヤダヤダヤダ。
[俺が今までエリにウソを吐いたことがあるか?]
聞きたくない、聞きたくない、聞きたくない!
そんな言葉なんて聞きたくないよぉ!
……でも。

623:クレイジー兄妹
07/09/24 12:07:49 Lcpy1mzV
でも、でもでもでも、お兄ちゃんがウソをついたことなんて一度もない。
一度も。
[俺が傍にいるんならいい子になるんだろ? 何でもするんだろ?]
そんなの、そんなの酷い詭弁だよ。
詐欺だよ。ペテンだよ!
[いいな。俺が見えなくなってもしっかりやるんだぞ]
逃げるんだ。
[………………]
私のこと置いて、自分だけ逃げるんだ。
私のこと重くなったから、面倒見切れなくなったから、逃げるんだ。
そうでしょ? そうなんでしょう?
[………………]
否定してよ! そうじゃない、って言ってよ!!
これからもずっと傍にいるって、約束してよ!!
[……俺はずっと、エリの傍にいる。約束だ]
嘘吐き、嘘吐き、嘘吐き!!
もういい! もういい! もういいよ!!
キライキライキライキライキライキライキライキライキライキライ!!
大ッキライ!!
お兄ちゃんなんて、お兄ちゃんなんていなくなっちゃえ!!
消えてよ!! もう顔も見たくない!!
[それでも、俺はエリの傍にいるよ]
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!
大馬鹿野郎!!
[それじゃあな。元気でやるんだぞ]
消えて消えて消えて!!
なんだよ、なんだよ、なんだよ!
こんなことになるんなら、お兄ちゃんの声なんかにこたえるんじゃなかった!
お兄ちゃんの質問なんかに答えるんじゃなかった!! 本当のことなんていうんじゃなかった!!
失敗だよ! 大失敗だよ!!
あぁあ、もう嫌だ。嫌だよぅ。
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん。
スキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
離したくない、離れたくない、ずっとずっとずっと!!
お兄ちゃん!!
………………。
………………。
……え?
え、え、え?
本当に、消えちゃった……?
お兄ちゃん、消えちゃった…………?
やめて、やめてよぉ。
冗談、だよね?
消えちゃうなんて、そんなこと、しないよ、ね?
え? え?
わかんない。わけわかんない。
どうしよ、どうしよ、どうしよう。
ゴメンなさい、お兄ちゃん。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ほら、謝ったよ。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。何度でも謝るよ。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
あ、あぁぁ、謝り方が悪いのかな?
ほら、ど、土下座だよ。額も擦り付けるよ。…………ね?
も、申し訳ございません。もうわがまま言いません。キライだなんて永久に口にしません。
なんでもいうことききます。なんだって、なんだって、なんだって。
だから許してください。もうしません、もうしません。

624:クレイジー兄妹
07/09/24 12:09:24 Lcpy1mzV
―そんな妹の様子を見せられ、シスコンの俺が何もしないわけがない。
でもできない。
だから、俺はせめて―

―!

あれ? なんか、体が暖かい?
抱きしめ、られてる?
いるの? お兄ちゃん?
見えないし、聞こえないけど、ここに、いるんだね? お兄ちゃん。
私のこと、守ってくれているんだね?
そうなの?
……本当にそうなの?
それとも私、おかしくなっちゃったのかな? 狂っちゃったのかな?
でも、なんだか、判る。
……ああ、そうなんだ。
香り、お兄ちゃんの香りがするんだ。
見えなくても、聞こえなくても判るのは……、暖かく香るからなんだ。
………………。
お兄ちゃん、居るんだね?
ここに、私の傍にいるんだね?
抱きしめてくれてるんだね。
……アハハ。なんだか、笑えてきた。
どうしよう、涙も止まらないや。
そうか、そうなんだ。
本当に、人って嬉しいときも涙が出るんだね。
………………。
お兄ちゃん。
これからも、傍にいてください。

俺は妹の体から腕をそっと離す。
そして、目の前のアンタに話しかけるために立ち上がる。
「アンタ、最初に言ったよな。妹は俺がいなくてもやっていけるって。本当にその通りだ。確かに―」
―俺なんかがいないほうが、妹のためになる。
『よかったんですか?』
「ああ、これがたぶん俺ができる唯一の償いだろう」
逃げるわけじゃない。置いていくわけじゃない。捨てるわけでも、もちろんない。
「荒療治かもしれないが、依存を断ち切るための手段だ」
俺の妹が、俺の自慢の妹が、俺がいなくなる程度のことで壊れるわけがない。
壊れない、壊れるわけがない、壊れさせるわけにはいかない。
「あーあ、これで本当に孤独になっちまったな」
どうなんだろう。
これで本当によかったのだろうか? 
本当は逃げただけじゃないのか? 置いてきただけじゃないのか? 捨てただけじゃないのか?
手に負えなくなったから、怖くなったから、本当の姿を知ってしまったから。
………………。
違う、違うんだ。
コレが唯一の方法のはずなんだ。
「俺が心配しなくても、妹の周りには妹の味方がいっぱい居る。俺なんかに頼らなくても……」
それでも、そんな妹を作り出したのは、兄に依存する妹を作り出したのは間違いなく俺だ。
その責任は取らなくてはならない。
『そんな責任は存在しません。周りの異常な状況からアナタは妹を守ってきただけ』
たしかに妹を守ってきた。
親から親戚からクラスメイトから、周り全ての人間から。守ってきたはずだ。
それでも、よく考えず、妹の心理なんか考えず守ってきたツケは払わなくちゃならないはずだ。
『だったら最後まで、彼女が自立するまで責任もって、見守ってください』
そんなことでいいのか?
もう何もできない俺は、エリのことを見守ることしかできない俺の償いは、それだけでいいのか?
もっと、厳しい罰が必要なんじゃないか?
エリをあんなにしてしまった俺には。

625:クレイジー兄妹
07/09/24 12:11:18 Lcpy1mzV
『過保護なアナタには、手出しできない自分を歯がゆく思うくらいがちょうどいい。ちょうどいい、厳しい罰』
……確かにソレは歯がゆいかもしれないが。
『信じてください。彼女を。アナタの自慢の妹を』
………………。
信じる? エリを? 俺の妹を?
『できませんか? あなたが犯した行為の代償は、彼女自身が修正できるでしょう。アナタの自慢の妹はこれくらいじゃ、壊れません。
立ち直ります、きっと。今まで、自分を守ってくれていた兄の背中を見ていたのです。
今度は、アナタ無しでも歩いてゆける』
………………。
だが。
『それに、アナタ自身言ったじゃないですか。彼女にはもうたくさんの味方が居る。
彼女だけでは乗り越えられない壁でも、きっと、かの人たちが助けて乗り越えさせてくれる』
それじゃ、俺の責任放棄にならないか?
『まだ言ってるんですか? それに忘れていませんか? アナタが彼女を見守ることを言い出したんですよ?
責任? 責任ですって? アナタは、当の昔に死んだんです。
死んで初めて、依存体質の妹の少し奇矯な性質を見て、ようやっとそれに気づいたアナタが
それをなんとかしようと、責任を感じたり、修正を試みたりする。滑稽じゃないですか?
なんて馬鹿げた話でしょう。なんて粘着質な話でしょう。そして、なんて彼女に失礼な話でしょう。
彼女を馬鹿にしないで下さい。生きている人間をこれ以上馬鹿にしないで下さい。
死んだ人間が生きている、生きていく人間にとやかく言うのはナンセンスですよ?』
………………。
『信じましょう、彼女を。見守りましょう、いつまでも。それが、姿を消すのともう一つの
アナタにできる償いです。責任です。責務です。いいですか?』
俺は納得できないぞ。そんなんじゃ。
『別にアナタの納得など求めていません。それに何らかの大きな罰を受け、
それによって償うという根性だったら、そんなもの捨ててくださいね?
それは、そう例えば、最初から夏休みの宿題をせず、なんらかのペナルティーを負うことでソレを回避しようとする、みたいな卑しい行為ですよ?
そもそも第一、もう死んでしまっているアナタにこれ以上の罰なんて……。何をどうやって行えばいいというんですか?
馬鹿馬鹿しい。』
……地獄送りとか?
『はぁ? いい年して地獄なんて信じてるんですか? 冗談はシスコンだけにしてください』
シスコンは冗談じゃないぞ。本気だぞ。
『知ってますよ。あなたは本当に妹さんのことが“妹として”好きだったんですね』
………………。
『そして、妹さんはそうではなかった。ただ、それだけの話なのかもしれません』
……どうだろうな。
『妹さんはこれから最愛の人を亡くした、否、依存対象を喪失したことによる重荷を背負って生きていかなければなりません。
何年越しの苦行になるのか、見当もつきません。そして、あなたはそれをただ見守ることしかできない。
さっきから言っているとおりあなたにも相当辛い体験になるかもしれません。
でも、それでも信じて下さい。人間というものの―』

626:230
07/09/24 12:12:24 Lcpy1mzV
長らく垂れ流しを許容していただいたSSですが、
次回で完結です。
今しばらく、駄文にお付き合いください。

627:名無しさん@ピンキー
07/09/24 13:14:56 sGeh4hwJ
貴様……!
GJ


妹意外に黒いなwww

628:名無しさん@ピンキー
07/09/24 20:11:21 p+Lp/xR3
>>626
うん。面白かった。面白かったけどさ、この展開じゃ妹スレの方が相応しいんじゃないか?

629:名無しさん@ピンキー
07/09/24 22:26:44 /6QclrzQ
GJ!妹怖いよw

無口、妹、ヤンデレ、依存
すげえ、四つのスレまたげるぞ。

630:565
07/09/24 23:15:13 n82dSBuw
(´・ω・`) やあ。
今回の話には、グロテスクなシーンや暴力的な表現が含まれるんだ。
と言うわけで、それらのシーンが苦手な人はあらかじめ回避する事をおすすめする。
じゃあ、続きを始めようか。

631:『彼女』の呼び声 第四話
07/09/24 23:16:21 n82dSBuw
 持ってきた食べ物を二人で仲良く分け合って―食べた量は圧倒的に彼女の方が多いが―ふと仁は喉の渇きを覚える。
 そう言えば、食べ物は色々持ってきていたが飲み物を用意していなかった。

「ちょっと待っててくれ。そこの自販機で、何か買って来る」

 寄せ合っていた体が離れ、彼女がちょっと不満そうな声を上げる。
 宥めるようにその頭を抱き寄せ、額に優しくキス。

「すぐ戻って来るから。何か、飲みたいものはある?」

 仁の問いに、少女は小さく頭を振った。

「そっか。じゃあ何か適当に買って来るよ」

 そう言って、仁は公園の入り口へと駆け出した。


 真夜中にもかかわらず、煌々と明かりを湛えた自販機に硬貨を投入。
 続けて迷う事なくボタンを押せば、自販機は堅く重い音をたてて、炭酸飲料の缶を吐き出す。

「さて、何にしようかな?」

 彼女には何を買って行くべきか。腕を組み考える。
 やはり女の子だし、甘いミルクティが良いだろうか。
 それともさっぱりと緑茶か。あるいは仁と同じものが良いか。

「うーん。悩むな……」

 口先では困ったように言いながら、しかし仁の表情は緩んでいる。
 どんな飲み物を買って行くか。そんな他愛のない選択すら、とてつもなく楽しい。
 ほんの一週間前まで、自分がこんな風に甘い時間を過ごすなど考えたこともなかった。

 楽しいのは直接一緒にいる時だけではない。
 夜、眠りに着く前は抱き締めた彼女の柔らかさと温かさ、そして楽しかった時間を思い返し、朝は今日は彼女とどんな一日を過ごすのだろうと夢想する。
 普段の生活にも張り合いが出て、学校でクラスメイトと話すことも多くなった。

「ホント、不思議な娘だよな……」

 ただ一緒にいるだけで、こうまで自分を変えて行く。
 だが、変化は決して不快なものではなく、むしろ変わって行くことが心地良い。

「―と、あんまり待たせると怒られるな」

 我に返ると、わずかな逡巡の後、ミルクティを選択。
 転がり出た缶と、長らく持っていたせいで軽く水滴の付着した炭酸飲料の缶を抱え、仁は急ぎ彼女の元へととって返そうとした。

 その時だ。夜気を切り裂く、不快な排気音が響き渡ったのは。

632:『彼女』の呼び声 第四話
07/09/24 23:18:20 n82dSBuw
 それは、このあたりでも有名な不良達だ。
 珍妙な改造を施したビッグスクーターに、だらし無く着崩した服。
 珍走団と呼べるほど規模こそ大きくないものの、やっていることは彼らと大して変わらない。
 万引き、恐喝、暴行、そして強姦。
 被害の報告こそ多いものの、しかし巧みに逃げ回り、現行犯で捕まることはめったにない。

 そう言えば、少し前までこのあたりは彼らの溜まり場だった。
 警察が見回るようになって一時期は姿を消していたが、どうやら戻ってきたらしい。

 音自体はやや遠い。おそらく仁のいる場所からはちょうど反対側だろう。
 が、彼らがもし、真っ直ぐに公園の中心へとやって来れば―彼女が、危ない。
 そのことに気づいた瞬間、仁は可能な限りの全力で、彼女の元へと急ぐ。


「ねえ君。こんなところで何してんのぉ?」

 髪の毛をけばけばしい金色に染めた、前歯の数本欠けた少年が、にやにやと笑いを浮かべながら、少女の顔をのぞき込む。

「あれじゃない? 家出中」

 スクーターのサイドスタンドを立てながら言うのは、同じく金髪の少年。こちらは前歯は揃っているが、代わりに酷いニキビ面だ。
 ニキビ面の言葉に、歯欠けは笑って、

「ひょっとしてここで野宿でもするつもり? だったら俺達が泊まれるところに連れてってやるよ」
「大きなベッドにシャワーもあるしね」

 歯欠けとニキビが言いながら、近寄ってくる。
 もう一台のスクーターに分乗していた少年たちも、少女の逃げ道を塞ぐように並んだ。

「な、いいだろ?」

 少女の腕を掴んで強引に立たせる。それは誘いではなくより強制だ。
 だが、不良達に囲まれてもなお、彼女は声ひとつ上げないし、怯えた様子も見せない。

「なあ。こいつ、ひょっとしてアレか?」

 反応を欠片も見せない彼女に、後から来た少年の一人が、その頭を指さしくるくる回す。

「だったらむしろ好都合じゃん。さ、行こうぜ」

 と、不意に彼女が声を上げた。
 言葉というより異音に近い、名状し難い声。
 本能的にその異質さを感じたのか、思わず不良達が手を放す。
 仁が駆け戻ってきたのはその時だ。

「待たせたな。じゃあ、行こうか」
「――♪」

 回りを意識しないような自然さで彼女の前に行くと、その手を掴んで歩きだす。
 割合優等生な仁は、喧嘩の経験などほとんど無いし、トラブルに巻き込まれそうな場所にはめったに近寄らない。
 だから、出来る限り刺激しないように、駆け足にならないように速足で。
 が、不良達が呆気に取られていたのはほんの一瞬だった。

「おいおい、どこに行くんだよ?」

 肩を思いっきり掴まれる。さすがに鍛えているのか、掴まれた箇所に痛みが走った。

「いや、まあ……その……」

 視線を合わせないように曖昧に答える。

633:『彼女』の呼び声 第四話
07/09/24 23:18:59 n82dSBuw
「ああ? 聞こえねぇよ! もっとはっきり言えよ!!」

 恫喝するように大声を上げる歯欠けを宥めたのは、意外なことに仲間のニキビ面だった。

「まあまあトシちゃん。ほら、眼鏡君がびびってるよ」

 確かにニキビ面の言うとおり、精一杯の虚勢を張りながらも仁の足は細かく奮えている。
 が、だからといって屈する訳には行かない。―彼女を守らなければならないから。

「いや。悪いね、眼鏡君。こいつ、見ての通り馬鹿でスケベだからさ」
「んだと、だれが馬鹿だっ!?」

 ニキビ面の言葉に歯欠けが顔を真っ赤にして怒鳴る。
 が、ニキビ面は構わず、

「僕らはただ、楽しく仲間で遊びたいだけだからさ。邪魔しないならとっとと帰っていいよ」

 それは願ったり叶ったりだった。元より、こんな奴らに好き好んで関わるつもりはない。
 仁は彼女の手を引いたまま、急いで歩きだそうとして―次の瞬間蹴り飛ばされた。
 力任せに叩き込まれたつま先が脇腹に突き刺さり、思わず仁は肺の中の空気をすべて吐き出し悶絶する。
 倒れた仁の体を踏み付けながらにやにや笑いを浮かべてるのは、彼を蹴り飛ばした張本人。ニキビ面の少年だ。

「わかってないなぁ、眼鏡君。言っただろう? 僕はみんなで楽しく遊びたいって。
―みんなで、この娘とね」
「ひゃははは、そう言うことさ。眼鏡君は帰ってアニメでも見てな!」

 歯欠けや他の少年もゲラゲラと笑う。
 駆け寄ろうとした彼女が少年たちに阻止され、そのまま芝生の方へと引きずられる。

「じゃあね、眼鏡君」

 とどめとばかりにもう一度つま先を叩き込み、ニキビ面も仲間達の元へと歩いて行く。
 痛みと涙に滲む視界に映るのは、少年たちの体越しに見える、芝生に押し倒された彼女の姿。
 ―瞬間、仁の中で何かが切れた。

 自分でもなんと言っているか分からない滅茶苦茶な叫びとともに、ニキビ面の後頭部目がけ、手にした炭酸飲料の缶を投げ付ける。
 後頭部にジャストミートした缶は、圧力が限界に達したのか命中地点で破裂。周囲に内容物を撒き散らす。
 その光景に、少年たちの動きが止まった。

「ぶわはははっははは! マーちゃんマジうける!!」

 歯欠け達が指をさして爆笑するが、ニキビ面の少年は当然のごとく笑わない。
 ただ、奥歯を噛み、仁の方を振り返るとただ一言。

「―ぶっ殺す」

 それからは、一方的なリンチだった。
 元より喧嘩などめったにしない優等生だ。一対四では敵うはずもない。
 正確には、彼らの一人は少女を押さえ付けていたから一対三だが。

634:『彼女』の呼び声 第四話
07/09/24 23:19:51 n82dSBuw
「ワイが浪速の闘拳やー!」

 ボクシング選手の真似をした歯欠けの拳が、後ろから羽交い締めにされた仁の腹にめり込む。
 思わず胃の内容物を吐き戻した仁に、しかし容赦はされない。

「まだオネンネするには早いぜ、眼鏡君」

 ニキビ面に髪の毛を掴まれ、地面へと叩きつけられる。
 もはや、仁の体はサンドバックと言っても過言ではない惨状を示していた。
 砕けた鼻からは血が溢れだし、前歯も数本欠けている。これでは目の前の歯欠けを笑えない。
 腹や足などの目立たない箇所は特に執拗に殴られている。
 あばらにヒビでも入ったのか、息をする度に酷く痛んだ。

 だがそんなリンチにあっても、仁は平気だった。
 少なくとも、彼をリンチしている間は不良達は彼女に手を出している暇はないから。
 あとは、だれかが騒ぎに気づいて警察を呼んでくれれば―

「あー、なんか飽きて来たな。もう終わりにしてあの娘と遊ぼうぜ、マーちゃん」
「そうだな。そろそろ終わりにしておくか。じゃあ最後に……」

 そう言うと、ニキビ面はスクーターの横に括りつけてあった、一本の鉄パイプを引き抜く。
 元の色が分からなくなるほど使い込まれたそれを手にニヤリと笑い、

「じゃあ、そいつ押さえ付けててよトシちゃん。暴れられて手元が狂ったりしたら大変だから。
あ、あとケンちゃんはその娘こっちに連れて来て。せっかくだから特等席で見てもらおう」

 声にならない声で彼女が暴れるが、しかし力が違い過ぎた。
 がっちりと押さえ付けられ、視線を逸らすことも許されず、これから始まる惨劇に顔を向けさせられる。

「マーちゃんの、ちょっと良いとこ見てみたい♪」
「そーれ、一気! 一気!」

 囃し立てる少年たちの声の中、仁の頭目がけニキビ面が全力で鉄パイプを振り下ろす。
 堅質な鉄の固まりは狙いを違う事なく目標へと命中し、鈍い音と共に内容物が周囲へと飛び散る。
 惨状に無理やり顔を向けさせられた少女の白い肌に、飛び散った赤い色は良く映えた。

 そして仁は、己の中で中で決定的な何かが砕ける音を聞きながら、意識を失った……。

635:『彼女』の呼び声 第四話
07/09/24 23:20:47 n82dSBuw
 頬にあたる、冷たい感触に目を覚ます。
 背中に感じる硬い感触は、公園のベンチか。
 が、不思議と頭の下の感触は柔らかく、暖かい。

「あれ、俺は―?」

 状況が理解できず、そう呟いた仁に応えたのは、聞き慣れた少女の声。
 が、微妙に撥音が不明瞭だ。相変わらずの名状し難い声なので区別はしづらいが。

「――?」

 頬にあてられた白い手。ひんやりとした感触の正体はこれか。
 そして、頭の後ろの柔らかな感触は、彼女の膝。
 どうやら、ベンチの上で彼女に膝枕をしてもらいながら介抱されていたらしい。
 心配そうに仁の顔を覗き込む彼女は、しかし何故か口一杯に何かを頬張っている。
 その姿がまるで栗鼠のように愛らしく、思わず仁は吹き出した。

「――!」
「ああ、悪い悪い。ごめんな、心配かけて」

 ―何よ、心配してあげたのに!
 少女の不満げな声に、仁は笑いながらも応えるが、笑った瞬間、頭の奥がズキリと痛んだ。
 手を当ててみれば、そこには大きな瘤。

「うー、痛ぇ……」

 思わず呻いた仁だが、その瞬間気を失う直前までの記憶がフラッシュバックする。

「――! そうだ、あいつらは!?」

 身を起こし、周囲を見回す。
 だが、あの不良達の姿はどこにも見えない。

「――?」

 相変わらず口をもぐもぐさせたまま、彼女が首をかしげた。

「なあ、あいつらはどこに行ったんだ? いやそれより、君は平気だったのか―?」
「――」

 一抹の恐れを抱きながら仁が尋ねる。
 が、少女は柔らかな笑みを浮かべ、心配そうな仁の頬にそっと残った左手を伸ばした。
 ―大丈夫。貴方が護ってくれたから。

 彼女の姿に視線をやれば、確かに服の所々は皺になっているものの、破れられたりしたような跡はなく、そしてわずかに覗く肌にも傷一つなかった。

「そっか、無事だったんだ……。良かった―って、痛っ!?」

 胸を撫で下ろした瞬間、再び頭に鈍痛が走る。
 そんな仁の肩に手をやると、少女は再び彼の己の膝へと導いた。

「あ……うん。ありがとう」

 頭にあたる柔らかく暖かな感触にどぎまぎしながら礼を言う。
 そのまま上を見上げれば、小ぶりではあるが柔らかそうな彼女の胸が視界に入り、仁は慌てて横を向いた。
 その時だ。地面に残された跡と、散らばるモノに気づいたのは。

636:『彼女』の呼び声 第四話
07/09/24 23:21:38 n82dSBuw
 それは、急発進させようとしたタイヤの跡と、派手に転んだ痕跡。それに砕けたスクーターのミラーだ。
 詳しい事情は分からない。が、類推することはできる。
 恐らく、警察か地域の住人が騒ぎを聞き付けたのだろう。
 そして、人の気配に気づいた不良達は、慌てて仁達を置いて去って行った、と行ったところか。
 そう結論付ようとして、しかし仁の中の何かが否と言った。

「―あれ?」

 何か決定的な記憶の欠落がある気がする。
 思い出せ。気を失う直前、自分はどんな状態だった?
 それに、持ってきた食べ物はすべて食べきってしまったはずだ。
 なら、彼女が今口にしているのは一体何だ?

 そして気を失う直前、彼は何を耳にし、暗く沈む視界の中に、一体何を見た?

「……っ!?」

 頭が痛む。視界がぶれ、気分が酷く悪い。だが―

「――」

 ―心配しなくて良いよ。怖いことはもう、何もないから。
 もうすっかり聞きなれた彼女の声がゆっくりと仁の中に染み渡っていく。
 仁は手を伸ばし、まるで母親にすがる幼子のように、彼女の片方だけの手をしっかりと握り締めた。
 そして、彼女に髪を優しく撫でられる度、彼の中から違和感と焦燥感が消えて行く。

「――」

 ―目を閉じて、次に目を開ければ、全ては元通りだから。

「うん……そうだな。何だか今日は……すごく疲れた……」

 再び、仁の視界がゆっくりと暗く沈んで行く。
 だが今度のそれは酷く優しく、穏やかなものだった。
 だから仁は抵抗する事なく、その眠りに身を委ねる。

「――」

 ―だから、今は……おやすみなさい。


 次に目を覚ますと、仁は公園のベンチで眠っていた。
 腕時計の示す時間は日付の変わるころ。周囲のどこを見回しても、彼女の姿はない。
 無人の公園で、仁は一人、途方に暮れて天を見上げる。
 たった一人で見る月は、彼女と一緒だった時と比べ、酷く冷たく、不気味に見えた。

637:『彼女』の呼び声 第四話 後書き
07/09/24 23:26:19 n82dSBuw
そんな訳で第四話でした。エロも萌えも無くてほんとごめん。
次はまた萌え萌えな展開に戻る……予定。
では、本日はこの辺で。

638:名無しさん@ピンキー
07/09/24 23:37:59 sGeh4hwJ
こ、これは…………
や、やべえ、彼女の正体と続編が気になってしかたがねえ……
そして凌辱が始まらなくて安心
しかし、あの不良共はどこへ……ま、まさか……


最後にGJ!!せんせー!今夜は続きが気になって眠れなさそうです!!

639:名無しさん@ピンキー
07/09/24 23:41:03 4yDSdY8n
GJ!
リアルタイムで遭遇してドキドキしたよ
弱いながらも彼女のために命張る彼氏に感動した!
しかし……空白の時間になにがあったか気になって夜しか眠れないぜ

640:名無しさん@ピンキー
07/09/25 23:04:08 OVJVuHZ8
なんというGJの連打だ
>>626

>>637
も素敵だっ!

641:名無しさん@ピンキー
07/09/25 23:31:47 9avS9P88
>637
く、、、喰った?!

なにを喰ったかは知らないけどな!w


てなわけで、GJ
続き期待

642:名無しさん@ピンキー
07/09/26 08:52:03 uRWNf2BD
呼び声とか名状し難き~とかSAN値が減りそうでGJ。
これで冒涜的な~とか出たらSAN値が0になるとともにアリスに萌え狂う

643:名無しさん@ピンキー
07/09/26 12:21:37 RmEG0RyN
GJ!
しかし、最後は「窓に!窓に!」とか言いながらバッドエンドになりそうな雰囲気だなw

644:名無しさん@ピンキー
07/09/26 16:32:37 Fz3wX352
>>626
>>639

どっちもGJ!! 超GJ!!
しかしどちらも不幸せな終わりを迎えそうで気になるわー
両方とも、幸せになってほしいカップルなんだよなぁ。

いや、読者の意見なんかで作者の決めたラストは変えてほしくは無いけどね。
ドキドキして終わりを待つかー。

645:名無しさん@ピンキー
07/09/26 16:36:55 Fz3wX352
>>644
スマン、637の間違い

646:名無しさん@ピンキー
07/09/27 00:26:45 jaW35+X8
ホラー萌えというかなんというか……
ああもうぼかぁ新境地に目覚めてしまいそうですよ!?

647:230
07/09/27 16:42:04 62G2Gjnw
これより、投下させていただきます。
今回はエロは微塵も御座いません。
真に申し訳御座いません。
それでも構わないと言う方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

648:クレイジー兄妹
07/09/27 16:43:21 62G2Gjnw
俺が死んで数年が経過した。
俺の事を感じることがなくなったエリ。
そんなエリを支えてくれた武田。
そして、二人を見守り続けることしかできなくなった俺。
………………。
俺の事を本当の意味で喪失してしまったエリのこの数年は……。
酷い、本当に酷い数年だった。
“アイツ”は地獄を否定したが、その数年の二人は間違いなく地獄と形容しても差し支えは無いはずだ。
それほど酷かった。
地べたを這い蹲り、砂を噛み、泥水を啜るような日々が過ぎ、経過していった。
………………。
それでもエリは立ち上がった。
武田は、周りの人間たちは、そんなエリを文字通り支えてくれた。
その時、俺は確かに見た。
人間というもののしぶとさを、図太さを、強かさを、……素晴らしさを。
そして、知った。
本当に俺は必要なくなった、といういことを。
だから、決めたんだ。
あの二人に来るべきときが来たときに。
―決断したんだ。

コンコン。
儀礼的にノックをする。
本当はもう必要ないことは知っているが、入るたびにソレをするのを忘れない。
「は……いる、よ。……ぉにぃ、……ちゃ、ん………」
一声かけるのもその一連の儀式の一つだ。
私は、もう使われなくなって久しい兄の部屋に入り、彼を招き入れる。
彼は始め躊躇していたが、私の顔を見て決心したのか、ようやく足を踏み入れた。
「キレイだね」
意外そうな彼の声。
キレイなのは当たり前。
私が部屋の中を定期的に掃除しているので生前より清潔なくらいだ(というのは言い過ぎだろうか)。
私は部屋の中心で大きく深呼吸する。
あの時以来、感じることのなくなった兄の香りを、気配を、全身で感じたような気がした。
私たちは二人して、兄の机の前に横に並んで立つ。
彼の顔をうかがう。
(本当にするの?)
彼の顔には、そうはっきり書いてあるのを感じる。
しかし、コレは必要なこと。
そして、とっても重要なことなのだ。
私は彼に頷き、彼も迷いを振り切った顔をして私に頷き返した。
もう一度深呼吸をして、兄の机の正面に向き直る。
そして、少し目を閉じた後、私は口火を切るように口を開いた。
「ぉにぃ、……ちゃぁ、ん………。きょ、きょ、うは……ほぅ、こっくが……ぁる……の」
………………。
もちろん、返事はない。
構わず私は続けた。
「……わぁた、し。……こ、のひぃ、と…………と、け、こん……しまぅ」
私は彼の顔を見上げる。彼も私のほうを見ている。
そして、決然とした表情で彼は、さっきの私と同じように前を向いた。
「……お久しぶりです、お兄さん。武田です。武田信輝です」
私は彼が真剣に名乗っただけで泣きそうになってくる。
ありがとう。
こんな馬鹿げた、異常なことに付き合ってくれて。
ありがとう。
「僕、大学卒業したら、就職することになってます。もう、内定ももらってます。僕の両親と、
エリさんの両親もこの結婚に賛成してくれました。失礼ながら最後になってしまいましたが、ご報告にあがりました。
……スイマセン。敬語とか上手にできなくて」
そんなこと、ない。
確かに、上手ではないかもしれないけれど、伝わってる。

649:クレイジー兄妹
07/09/27 16:45:34 62G2Gjnw
伝わってるはずだよ、信輝くん。
「でも、お兄さんには正直、複雑な感情しかもてません。お兄さんが彼女のこと、
……エリさんのこと、昔から守っていたのは知ってます。でも、そのせいでエリさんは
お兄さんが死んで、相当、苦しみました。何年も何年も。お兄さんに、……依存してたから」
………………。
「それに、そんな理想的な偶像になってしまったお兄さんに張り合わなくちゃならなかった僕も、苦労しましたし、苦しみました。
……すみません。生意気なこと言って。……でも、事実です。恨み言の一つぐらい言わせてくだ―」

[ふん。図に乗るなよ。武田]

「………………、―え?」
[とはいえ、その気持ち、分からなくなくなくも、なくなくない]
「僕、え、………………えぇぇ、ど、な、何……?」



彼の様子がおかしい。
彼の顔を見上げると、彼は目を見開き、顔を青くしたり真っ赤にしたり忙しい。
まるで、そう。

幽霊にでもあったように。

「……ど、ぅし、たの……?」
しかし、彼は固まったまま答えない。
[やはり、武田、お前にしか聞こえていないようだな]
「………………ひ、ひぃぃぃ」
彼は気の抜けるような声を出した後、その場に跪いてしまった。
「のぉぶ、て、るくん。……らい、じょーぶぅ……!?」
[おいおい、コレくらいのことで気を失うとは、本当にコイツで大丈夫なのか? ま、都合はいいが……]
「のぉぶ、てるくぅう……! のぶ、てぃ、るく、ん……!?」
私は白目を向いている彼の肩を揺する。
それが功を奏したのか、彼の黒目が戻ってくる。
「ぁ、だぃ、じょー……ぶ?」
彼はいきなり立ち上がると、大きく深呼吸した。
そして、そのまま体を軽く動かす。
「のおぶ……てぇる………くん?」
その時。
気づいた。
彼の体から、あの時以来、感じることのなかった香りが漂っていることを。
この部屋に、かつて充満していた懐かしい、あの香り。
姿勢を正した彼は、私を立ち上がらせると、私の頭を豪快に撫でた。
「短い髪も、よく似合ってるぞ、エリ」
それは幼い頃、あの人がよくしてくれた行為。
信じられないが、でも、直感が伝えてくる。
私は、震える声で告げた。
「………お、お兄ぃ……ちゃぁ、ん?」
彼は、その人は、思い切り破顔した。
「久しぶりだな。エリ」
間違いない……! この人は、この人は……!
私の目から涙が溢れてくる。
でも、私は泣かない。
目の前の人に泣きついたりもしない。
だって、そんなことをしたら、せっかく出てきてくれたのに―
「ひさ、ひさしぶぅい、だぁ……ね」
―安心させられないじゃないか。
その人は笑顔のまま言う。
「結婚の報告か。わざわざ、どうもな」
「い、いちぉう、ね」
本当は一番に報告したかった。
そして、成長した自分の姿を知って欲しかった。

650:クレイジー兄妹
07/09/27 16:48:45 62G2Gjnw
「でも、必要なかったかもな。俺はお前の傍にずっといたから。お前らのこと、ずっと見てたから」
「……スゥ、トーカー?」
かの人は、私の軽口に軽く吹き出す。
「おいおい。見えなくても聞こえなくても、ずっとお前の傍にいるって、約束しただろ?」
「ふ、ふふ。わぁ、かぁぁて、る」
見えなくても聞こえなくても、ソコにいてくれていると信じるだけで、安心できた。
でも―。
「……でも、もう俺は必要ないよな?」

―今度こそ本当にお別れしなきゃ。

「……ぅん」
判ってる。解ってる。わかってる、ハズ、なんだ。
かの人は、おもむろに天井を見上げる。
「それにしても、お前には迷惑かけたなぁ。この数年、ものすごかったものな。
っていうか、結果論的には武田に迷惑かけっぱなしなような……。お前のほうから謝っといてくれよ。
俺が悪かった、って言ってたって」
「……う、ん」
違う。
私は迷惑なんてかけられてない。
信輝くんには迷惑だったかもしれないけれど、それでも、私は迷惑なんてかけられていない。
私のほうこそ、お兄ちゃんに守ってもらってばかりで。
お兄ちゃんが生きている間中、死んでからも。
こんな私のことなんかを。
「さて、本当はもっと色々話したかったんだけど、もう時間みたいだ」
「……行ぃく、の?」
イヤだ。
イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだ。
本当は泣きつきたい。
あの時のように駄々をこねて、あの時のように引き止めたい。
でも、もう、そんなことはできない。
……お兄ちゃんのこと、休ませてあげないと。
「握手しようぜ。我が妹よ」
「ぁうく、しゅ?」
かの人は大きく頷いた。
「そう。別れの記念だ。……いいだろ?」
別れ、という言葉に、私の胸がビクリと反応する。
でも、そんなことは表には出さない。
「……へぇん、なぁ……の。でっもぉ、ぃいよ……」
かの人は右手をズボンに擦りつけ、手の汗を拭く。
私もソレに習い、スカートで簡単に手を拭った。
そして、どちらともなく手を差し出し、握手した。
「じゃあな。エリ。幸せになるんだぞ」
「ぅん。バ、イ……バァイ。お、にぃぃ、ちゃあ、ん」
かの人は私の手を握ったまま、全身の力を失ったように床に倒れこんだ。
私は両手でかの人の手を握って、しゃがみ込む。
たぶん、もうじき彼が目を覚ますだろう。
まだ、かの人がその辺にいるかもしれない。
でも私は我慢ができなかった。
私は力なく倒れた、かの人の体に抱きつくと、力いっぱい泣いた。
別れの意味を初めて理解した子供のように。
泣いて、泣いて、泣きじゃくった。
涙が溢れて止まらない。
わんわん泣く。
そして、泣きながら思う。
かの人に対する感謝と、謝辞と、別れを。

お兄ちゃん。
私、しあわせになります。
だから。そして、おやすみなさい。

651:230
07/09/27 16:56:39 62G2Gjnw
以上です。

稚拙なSSにここまで付き合ってくださった方々。
駄文の垂れ流しを許容してくださった方々。
あまつさえ感想まで書き込んでくださった方々。

皆様のおかげで何とか完結させることができました。

此処までのお付き合い、本当に有難う御座いました。




……しかし、今回の作品で自分の力不足を痛感いたしました。
ほかのSS書きの皆様に負けぬよう、頑張っていこうと思います。

では、また、いずれ此処か、何処かでお会いいたしましょう。
その時まで御機嫌よう。

652:名無しさん@ピンキー
07/09/27 16:59:29 zwVxTOm5
一番槍GJ
期待してるのでまたいつか投下して下さい

653:名無しさん@ピンキー
07/09/27 17:53:15 9N9h6amt
GJGJ!
次も期待してるぜー

654:名無しさん@ピンキー
07/09/27 17:56:08 xj94x19v
GJ~!

いいねえいいねえ、ちょっと前が滲みましたね

また書きにきてください

655:名無しさん@ピンキー
07/09/27 22:37:06 5aw8wMCg
乙。
題名とは裏腹に、かなり健全な作品でしたなあ

656:名無しさん@ピンキー
07/09/28 04:06:35 o1+Fww1B
保守

657:名無しさん@ピンキー
07/09/28 18:19:13 Mto4QkYd
>>651
ガチで軽く涙が出ました・・・・
Gj。そして乙。

しかし次の文。

「妹は脳の言語野に後天的な障害がある。
そのせいで妹は、極めて端的なことを、極めてゆっくりとしか話せない。 」

だから「……ど、ぅし、たの……?」
になるんだが、依存が発動した時は饒舌になったなww

書きもしない俺に文句を言われるのも癪だろうから
これ以上は言わんよw

しかしGJ


658:名無しさん@ピンキー
07/09/28 19:49:24 YfPn//pl
出会い系で逢えないのって理由がある。

URLリンク(550606.net)

659:名無しさん@ピンキー
07/09/28 21:42:24 NxkyVnyT
やつはスルーで削除待ちしないと

それはそうと>>651GJ!!
早く新さ(ry



そういえば、かおるさとー氏とかじうご氏とかどうしてるんだろ

660:名無しさん@ピンキー
07/09/29 00:32:21 +3U0Ewbm
>>651GJ!
タイトルや途中の流れからヤンデレかと思ったけどすごく綺麗で感動的な話でした。
できればもっと長く続いてほしかったくらい……
とにかくGJ!

ところで彼女の呼び声なんだけど次話で仁の日常を書こうと思ったら、アリスの出番が皆無になりそうなんだ
さすがにこれはまずいかね?(´・ω・`)

661:名無しさん@ピンキー
07/09/29 00:43:49 VrxH1mQV
>>660

どこに問題があるんだ!!
我々はただ提供された作品を読むのみ……!

662:名無しさん@ピンキー
07/09/29 05:21:44 M+UyQWV3
>>660
いちおうスレタイを意識しておいては欲しい、とだけは言っておきたい。

663:名無しさん@ピンキー
07/09/29 10:23:10 mhqUey4a
ジャンプのバトル漫画が全話戦っているわけじゃなし、
問題はないですよね。
ただ、アクションシーン無しに10話も20話も続くと、それは読者に
オカシク思われても仕方が無いわけで。

ってとこで、作品の方向性さえ見失なわなければいいんじゃないでしょうか。


664:名無しさん@ピンキー
07/09/29 15:55:36 u2IxKkEI
物語が最終的に無口萌えできれば構わないかと

665:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/10/01 10:10:12 4EGvICgj
お久しぶりです。かおるさとーです。
また二ヶ月も開いてしまいました。くやしいっ、でも慣れきっちゃう……最悪ですね。
以下に投下します。
今回縁シリーズ最終話のはずでしたが、スレの残り容量が足りなさそうなので別のやつを。
小ネタのようなものなのでエロはなしです。すみません。

666:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/10/01 10:11:07 4EGvICgj
『幼馴染みとエプロンと』



 彼女は小さくて、無口で、愛想も何もないけれど、
 制服の上からエプロンを着けたときだけ、ぼくだけの無敵の存在になる。


「ねえ橋本」
 昼休み、急に声をかけられてぼくは席に着いたまま振り返った。
「なに?」
 見るとすぐ後ろに同じクラスの女子が立っていた。出席番号2番、今口翔子(いまぐちしょうこ)。
「ちょっといいかな」
「?」
「あんたさ、甘利(あまり)と仲いいよね」
 急な問いかけだが、ぼくは揺れない。何度か訊かれ続けたことがあるので、もう慣れきっていた。
「まあ、幼馴染みだし」
「……付き合ってんの?」
「……随分ストレートだな」
 またこの質問だ。そして答えはいつも同じ。
「違う。そんな事実はない」
「ホントに?」
「うん。で、なぜそんなことを?」
 聞き返すと、今口はあははとごまかし笑いを浮かべた。
「いや、甘利が来てるから」
 言われて教室の入り口を見ると、見知った顔がぼんやりと佇んでいた。
 ぼくは立ち上がり、今口に礼を言う。
「ああ、ありがとう」
「いや、別に礼はいらないけど……」
 なぜか口ごもる今口を尻目に、入り口に向かう。
 甘利紗枝(さえ)はぼくの顔を見るや、手に持っていた何かを目の前に突き出してきた。
「……紗枝?」
「……」
 突き出されたものは、弁当箱。
「持ってきてくれたのか?」
 こくこくと頷く紗枝。それからちょいちょい、と天井を指差した。
「屋上か。わかった、先に行っててくれ。飲み物買ってくから」
 素直に頷くと、紗枝は足取りも軽く廊下を駆けていった。
 それを見送ってぼくも準備をする。鞄から財布と携帯電話を取り出して、
「やっぱり付き合ってるようにしか見えないけど」
 不意に横から言われて、つい苦笑した。しつこい。
「ホントに違うんだけどなー……」
 小さく呟いてみる。聞こえたのか、今口が軽く吹き出した。
「ごめんね、変なこと言って。じゃ、甘利によろしく」
「ああ、伝えとく」
 持ち物をポケットに収め、ぼくは教室を飛び出した。


 甘利紗枝は近所に住む幼馴染みだ。
 最初の出会いは四歳。公園の砂場でとても上手いゾウの絵を描いていた。
 その日からぼくらはいっしょに遊ぶようになった。
 無口な紗枝を引っ張るのはぼくの役目で、いろんなところを駆け回った。公園で、街中で、空き地で、家の中で、たくさんの日々を過ごした。
 それは幼稚園、小学校、中学校と同じところに通い、同じ高校になった今でも、基本的には変わらない。
 小さい頃のように駆け回ることはできないけれど、同じ時を過ごすことはできる。
 ずっと同じ道を歩んできた、大切な友達。
 それが甘利紗枝だった。

667:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/10/01 10:13:38 4EGvICgj
 屋上で差し出された紗枝の手作り弁当を見て、ぼくはたまらず唸った。
「クリームコロッケ六個入りは反則だ。わざわざぼくの好物を入れてくれる辺り、さすが幼馴染み!」
「……」
 紗枝はおかず箱に箸を伸ばすや、中身を半分に仕切り始めた。
「あ、やっぱり半分こなんだ」
 頷く紗枝。
「うぅ、ぬか喜びはダメージ三割増しなんだぞ」
「……」
 紗枝は首を傾げると、また箸を伸ばした。自分の側からぼくの側に、クリームコロッケを一個移す。
「え? くれるの?」
 首が縦に振られた。
 感謝感激雨あられですよ紗枝さん。
「じゃあ卵焼きと交換ってことで」
 いただきます、と手を合わせ、ぼくらは弁当を食べ始めた。
「んじゃこれ、卵焼き」
「……」
 紗枝は無表情だ。ぼくは気にしない。これが紗枝の常態だからだ。
 代わりにちょっとからかってみる。
「昔みたいにあーんとかしてあげようか?」
 ぼくは卵焼きをつまみ上げると、紗枝の前にゆっくりと持っていく。
「はい、あー……」
 瞬間、紗枝の左手が稲妻のように閃いた。
「うわっ」
 同時にぼくの右肘に軽いしびれが走り、思わず卵焼きを投げ出した。
 紗枝はそれを右手の箸で正確にキャッチし、自分の口の中に放り込む。
「……」
「……」
 もぐもぐもぐもぐ。
 凄まじい早技の後にもかかわらず、紗枝の表情は変わらなかった。
「ごめんなさい、はしたない真似をしました」
 微かに怒っているのを見て取り、ぼくは素直に謝った。
「……」
 わかればよろしいとばかりに肩をすくめる紗枝。
 悪ふざけが過ぎたようだ。ぼくも食事に戻る。せっかくのクリームコロッケなのだ。おいしくいただこう。
 口に入れた瞬間、甘く柔らかい感触にぼくはとろけそうになる。
「うん、うまい」
 大げさな感想など必要ない。この料理を讃えるのに多くの言葉はいらない。
「……」
 紗枝は無言で差し入れたペットボトルのお茶を飲む。
 そのとき、横合いから声がかけられた。
「紗枝せんぱーい」
 複数の声が重なるように響く。一つ下の学年色のスリッパを履いた女子が二人こちらに寄ってきた。
 先頭の娘は顔見知りだった。紗枝と同じ道場に通っていた、折本糸乃(おりもといとの)という下級生だ。
 ぼくは正直うんざりした。この折本という少女は、屈託なく紗枝やぼくに接してくれるいい子なのだが、一つだけ問題があった。
「あっ、すっごく美味しそう。先輩の手作り?」
 紗枝はこくりと頷く。まずい、ロックオンされた。
「橋本先輩もいっしょですか。また紗枝先輩の手料理食べてるなんて、彼氏だからってずるいー!」
「彼氏違うってば。そんなこと言ってまた横取りに来たんだろ」
「うっ、まるでこちらをハイエナのように言う! 私そんなに意地汚くない」
「ハイエナはサバンナの食物連鎖に欠かせない生き物なんだよ」
「え? えっと……それって誉めてる?」
 すごい思考回路だなおい。
「……ハイエナ以下ってことじゃないかしら?」
 後ろの娘が控え目に補足をした。おとなしそうな娘だけど、なかなか聡明だ。
「うぐ、橋本先輩なんてキライだーっ! 紗枝先輩、一刻も早く別れて下さいこんな人!」
「ってどさくさにまぎれてコロッケ取るな! 返せ!」
 端から見たら醜い争いだったかもしれない。ぼくと折本はぎゃあぎゃあと言い合う。

668:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/10/01 10:16:47 4EGvICgj
 そこで頭をはたかれた。
「いてっ」
「いたっ」
 紗枝が左手でぼくらの頭を一閃したのだ。
 じろりと睨まれてぼくらは低頭した。
「ごめん、紗枝」
「ごめんなさい紗枝先輩」
 後ろの娘がくすくす笑っている。折本はそれに頬を膨らませたが、やがておとなしく腰を下ろした。よし、コロッケは死守した。
 と思ったのも束の間、紗枝が弁当箱を折本の方に押しやった。
「え、もらっていいんですか?」
 頷く幼馴染み。あれ?
「やたーっ! さすが紗枝先輩、どっかの彼氏とは器が違う!」
「黙れ」
 紗枝、人が良すぎるにも程があるぞ。
 後ろの娘はにこにこと楽しそうだ。
「おもしろいですね、先輩方って」
「いや、嬉しくない……。ところで君は? 折本の友達?」
 女生徒は柔らかく笑うと、ぺこりと頭を下げた。
「後羽由芽(あとばゆめ)と言います。糸乃とは同じクラスなんです」
「いつもこれに付き合ってるのか。大変だな」
「これとか言うなー!」
 うるさい、黙って食え。
 そこで紗枝が操り人形のように小首を傾げた。
「? なんでしょうか、甘利先輩」
「……」
 左手で弁当をつい、と勧める。
「え? でも私は……」
「いっしょに食べようよ、後羽さん」
 後押しをしてやると、紗枝がこちらに目を向けてきた。ぼくはそ知らぬふりで続ける。
「みんなで食べた方が楽しい。紗枝も遠慮するなだって」
「そうそう、せっかくの先輩の申し出、受けなきゃ損だよ」
「お前はもっと遠慮しろ」
「橋本先輩に言われたくない」
「……」
 後羽さんは少し逡巡したようだったが、やがて小さく微笑した。
「……それじゃ、私もお呼ばれしますね」
 瞬間、紗枝の顔に微かな笑みが生まれた。
 それを見て、ぼくは胸にじわりと嬉しさが広がるのを自覚した。


 放課後。
 夕焼けに覆われたアスファルトの上をぼくと紗枝は歩いていた。
「え、うちに来るの?」
 頷く幼馴染みにぼくは戸惑った。それは、ちょっと、
「……」
「いや、変なことなんて考えてないけどさ」
 紗枝は玲瓏院流という古武術の有段者である。襲ったりしたら白打と蔓技でボコボコにされる。そもそも彼女に対してそんなことをする気はない。
 紗枝は右の親指をぐっと立てて見せた。
「なら問題ないって……まあいいけど」
「……」
 夕日の下、紗枝は無表情な小顔を微かに緩ませた。
 その微笑は幼年の頃を思い起こさせるような懐かしい顔だった。
 普段から無口で、学校ではほとんど無表情で、紗枝は本当に何を考えているのかよくわからない女の子だ。
 そのくせ他人の世話をよく焼き、誰に対しても真摯に接するので、周りからはとてもよく慕われている。
 そんな紗枝が、かつてはいつもぼくの後ろに隠れていたなんて、誰が想像できるだろう。
 無口で引っ込み思案な性格だったため、なかなか友達ができなかった昔。それを助け、フォローするのはぼくの役目だった。
 そんなぼくにたまに見せてくれた表情が、今目の前の微笑だった。
 無表情な彼女が見せる精一杯の笑顔。とても大好きな顔だ。
「シチューが食べたいな。じゃがいものたくさん入った」
 ぼくの言葉に紗枝は微笑んだまま頷いた。

669:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/10/01 10:20:16 4EGvICgj
 家に着くと、紗枝は鞄からエプロンを取り出した。
 紗枝がぼくの家で着用する、そっけない白のエプロン。
 ぼくはそれを見た瞬間、心臓が高鳴って息が詰まりそうになった。
 それは甘利紗枝が甘利紗枝でなくなる変身スーツなのだ。
 そして変身した彼女は、ぼくだけの無敵の存在になる。
 藍色の制服の上から、紗枝がエプロンを着けた。ワンピースであるために、なんだかメイドみたいな格好だ。足りないのはカチューシャだけ。
 瞬間、紗枝の目が夢から覚めたみたいに大きく開かれた。
 そしてぼくに相対するや、ぺこりと頭を下げた。
「お久しぶりです、風見(かざみ)さま」
 いつもはまず聞かない声が涼やかに放たれた。
「久しぶり。冴恵(さえ)」
『変身』した彼女はにこやかに笑う。紗枝にはありえない表情。
 と、
「えいっ」
 いきなり首に抱きつかれた。
「うわっ!」
 小さな体をなんとか支える。柔らかい胸の感触が心臓に伝わる。
「ちょ、ちょっと」
「寂しかったです、ずっと会えなくて」
 頭を肩に乗せて頬を寄せてくる冴恵。穏やかな匂いがぼくを惑わせる。
「わかったから、ちょっと離れてくれ」
「くっつくのイヤですか?」
「そうじゃないけど、帰ってきたばかりで着替えてないし、鞄も置きっぱなしだからさ、ちょっと待ってて」
「わかりました。じゃあ私、下で待ってますね」
 ぼくは冴恵をリビングで待機させると、二階の自室へと戻った。
 着替えながら、下で待っている彼女のことを思う。
 冴恵はあの白いエプロンに憑いている精霊だ。……たぶん。
 確証が得られないので明言は避けるが、本人に言わせるとそういうことらしい。
 出会ったのは一年以上前。フリマで見かけたエプロンをたまたま購入して、それを見た紗枝がひどく気に入ったのでプレゼントしたのだ。
 早速身に付けた紗枝は一瞬で様子が変わり、あの『冴恵』が現れたのだった。
 急にご主人様呼ばわりされた時は紗枝がふざけているのかと思ったが、開く口から次々と放たれる明るい言葉に、ぼくはそれが紗枝じゃないことを確信した。
 事情を聞いてみると、冴恵は自分がいつ生まれたのかわからないらしい。精霊というのもなんとなくな自己感触でしかなく、怪しいものだった。
 ただ彼女は、特定の誰かのために尽くすことを使命のように思っているらしく、ぼくのために尽くしたいと言ってきた。
 お願いします、どうか見捨てないで下さい、必ずあなたのお役に立って見せますから。
 冴恵が涙を流しながら訴えるのを見てぼくは怯んだ。幼馴染みの姿で幼馴染みにありえないことをされると不気味というか、凄まじい違和感を覚えた。
 それでも少し気の毒に思ったので、ぼくは彼女の申し出を受けた。
 思えば安請け合いしたものである。ある問題をすっかり失念していた。
 冴恵はエプロンを誰かに着てもらわないと現出できないのだ。
 要は自由にできるボディがいるのだ。誰かの体を借りなければ彼女は何もできないのである。
 タンスの中に押し込んでおけば実質封印できるので、彼女から逃れるにはそれはむしろ好都合な点だった。
 しかしタイミング悪いことに幼馴染みがそれを気に入ってしまい、プレゼントして以来度々着用するのである。
 その度に冴恵は紗枝の体を使い、ぼくに仕えるようになった。
 プレゼントしたエプロンを今更取り上げるわけにもいかず、結局そのままにしてある。
 悪事を働くわけでもなく、むしろパーフェクトなまでに身の周りの世話をしてくれるので、有用なことこの上ないのだが、やはり幼馴染みの姿形に違和感ありありである。
 まるで幼馴染みがぼくだけの専属メイドになったかのようで、たまらなく邪な心が時折沸いて出てしまいそうだった。
「そりゃ嫌じゃないけどさ……」
 知らず一人ごちる。
「ありがとうございます」
 背後から急に返されてぼくは振り返る。
「お茶をお持ちしました、風見さま」
「ノックぐらいしてくれ……」
「したんですけどお気付きになられなかったようで」
「……」
 ぼくは首を振って、ごまかすようにベッドに倒れ込んだ。自分の子どもっぽい行動が少しだけ恥ずかしかった。

670:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/10/01 10:22:28 4EGvICgj
 程よい温度の紅茶を飲みながら、ぼくは目の前のメイドを眺める。
 にこにこと笑顔を浮かべながら正座する冴恵。なんだかぼくの側にいられるだけで幸せといった様子だ。
「風見さま」
「何?」
「今日は何時までよろしいのですか?」
「親が帰ってくるのが十一時くらいだから、まあその前までかな」
「ならあと四時間はありますね」
 嬉しげに笑う冴恵。
「夕食はシチューとポテトサラダを作りますね。お風呂はさっき準備しましたので、あと二十分もすれば入れますよ」
「ありがとう。でも大丈夫? 久しぶりで結構疲れたりしない?」
「優しいですね、風見さまは。でも大丈夫です。私、あなたのためなら疲れませんから」
「……」
 顔が熱くなる。面と向かってそんなことを言われると、なんというか、
「照れました?」
「……からかわないでくれ」
「本気でもありますよ?」
「……」
 嘘はないようだった。
「……あのさ、どうしてそこまでぼくのために」
「ご主人様だからです」
 即答だった。
 それからふと砕けた声音に変わり、
「……でも、今は少し違うかもしれません。風見さまだからこそ私は頑張ろうという気になるんだと思います」
「……どういうこと?」
 冴恵は自分の耳を恥ずかしげに撫でた。
「これまでほとんどのご主人様は、私に優しい言葉なんてかけてくれませんでした。でも風見さまは私を対等に見て下さっているように思って、すごく嬉しかったんです」
 あんまり昔のことはよく憶えていないんですけどね、とごまかし笑いをする。
「だから私、風見さまのために一生懸命頑張ります。お望みでしたら、夜伽の方もお世話させていただきますよ」
 ぼくは思わぬ言葉に紅茶を噴き出しそうになった。なんとかこらえようとして喉の奥に引っ掛け、激しく咳き込んだ。
「だ、大丈夫ですかっ?」
「だ……だい、じょうぶ」
 ごほっ、ごほっ、と何度か咳き込み、時間をかけて持ち直した。
「急に変なこと言わないでくれ。夜伽って」
「そんなに変なことですか?」
「いや、その、」
 冴恵の顔が真剣な色を帯びていく。
「風見さまは私の申し出に応えてくれました。私が思い出せない名前を代わりに考えてつけてくれました。あなたに尽くすことが私は好きなんです。尽くせることが嬉しいんです」
「……」
「あなたが私の体を求めるなら、私はいつでも、いくらでも差し出します」
 冴恵の目には混じりっけのない純粋な想いがこもっていた。
 小さいながらも健康的に発達した体のラインが服の上から窺える。
 ぼくは小さくため息をついた。
「駄目だよ。絶対に駄目」
「なぜですか?」
「その体は紗枝の、ぼくの大切な幼馴染みのものだ。それを傷付けることはできないよ」
「―」
 はっとなった冴恵に、ぼくは微笑みかけた。
「君が実体を持っていたらまた別だけど、その体でいる以上は、その点は譲れない」
 大切な幼馴染みを欲望だけで傷付けるなんて、ぼくにはできなかった。中身や外身の問題でなく、ぼく自身の想いの問題だ。
「……」
 冴恵はしばらく何も言わなかったが、やがてにっこりと満面の笑みを浮かべた。
「紗枝さんを大事に思っているのですね」
「うん」
「やっぱり風見さまは私にとって最高のご主人様です。すばらしいです」
 別にすばらしくはないが、冴恵は納得したようだった。うんうん頷いて勝手に自己完結してしまっている。

671:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/10/01 10:30:33 4EGvICgj
「あ、でも、一つだけわがまま言っていいかな」
「? なんですか?」
「シチューはじゃがいも多めでお願い」
 冴恵はきょとんとして固まった。
 だがそれも一瞬で、理解が及ぶやすぐに花のような笑顔を咲かせた。
「―はいっ」
 幼馴染みの小顔がより一層輝くようだった。


 翌日。
「おはよう、紗枝」
 玄関を出てすぐ向かいの家から出てきた幼馴染みに、ぼくはいつもどおり挨拶をした。
 紗枝もすぐにこちらに気付き、ほっそりした右手をひらひらと振って返してきた。
 もちろんその体にはエプロンなんか着けてなくて、
「少し寒いかな。風邪とかひいてない?」
 ふるふると首を振る彼女は、昨日とはちがって無口なままで、
「……」
「え、今日もお弁当作ってきた? じゃあまたいっしょに食べよう」
 世話を焼く辺りはあまり昨日と変わってなくて、
 それだけを見ればあのメイドさんはやっぱり演技なのではないかと疑ってしまう。
 それでも構わないと思う。エプロンを着ければ彼女は現れ、それ以外はいつもの幼馴染みでいてくれる。問題はない。
 エプロンを着けてる時だけ、学校で頼りにされている優等生じゃなく、ぼくだけの無敵のメイドになってくれる。誰も知らない秘密だ。
「多めに作ってきたの? ああ、折本たちの分か。後羽さんのだけでよかったと思うけど」
「……」
「いや、あいつは単に食い意地張ってるだけだ。断じてクリームコロッケは譲れん!」
「……」
「子どもっぽくてごめんなさい。あー、でも後羽さんにならコロッケ取られてもいいかなー」
「……」
「い、いや、別に気があるわけじゃないって。ようやくかわいい後輩に恵まれた感が強くてね。うん、妹に欲しい」
「…………」
「じ、冗談だよ。そんなに怒るなって」
 いつもと変わらないやり取りをしながら、ぼくらは登校する。
 朝日が冷たい空気を吹き飛ばすように上がっていく。白い息も、小鳥のさえずりも、毎朝と同じ光景だ。
 小さな秘密を抱えて、また今日も、一日が始まる。

672:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/10/01 10:45:14 4EGvICgj
「投下終了だよ桃香ちゃんっ」
「人の名前で勝手に遊ぶな……」

というわけで投下終了です。まあ上のアニメも終了しましたが。

無口にエプロンにメイドに幼馴染み。いろいろ趣味をぶちこんでみたらこうなりました。
これを使ってもっと書いてみたいですね。
縁シリーズは容量の問題で次スレに回します。どなたか立てて下さいー。

>>659
縁シリーズずっと書いてます。伏線回収が大変です。
ちなみに今回のやつは三日で書きました。

673:名無しさん@ピンキー
07/10/01 14:44:54 /aR7sTR+
かおるさとー氏乙華麗
いやぁ、久々に平日休暇をとればいきなり新作を読めるとは
縁シリーズに続く新シリーズ化にも期待。

674:673
07/10/01 17:50:43 /aR7sTR+
次スレ建てました

無口な女の子とやっちゃうエロSS 3回目
スレリンク(eroparo板)

わかりやすく、スレタイはこのスレを踏襲しておりますのでヨロシク。

675:名無しさん@ピンキー
07/10/01 17:52:09 1tg3K4yY
かおるさとー氏GJ!!
ええいなんという期待感高まる面白い作品!!

そしてたしかに大変そうですね……縁シリーズ伏線回収


さてと、ちょっと探してくる
あのエプロン

676:coobard ◆69/69YEfXI
07/10/02 02:25:43 j6s1yNec
一ヶ月ごとに来ています、coobardです。
無口なミュウマ、最終話です。
エロは前半のみです。
よろしければお読み下さい。

677:1/10
07/10/02 02:26:16 j6s1yNec
 夕日。
 なぜかその日は、夕日の色が赤過ぎて嫌な感じがした。

 放課後、ぼくとミュウマはいつものように待ち合わせて、一緒に帰っていた。
 途中にある人気の少ない公園の中を、やっぱりいつものように何度かぐるぐると回る。
 帰ってしまうのが惜しい気がするからだ。
 また明日逢える。そう解ってはいても、今、逢っていることのほうがずっと大切に思える。
 彼女の温もり。柔らかさ。きれいな瞳。
 それを手離したくない。そばにいたいと思う。
 唐突なエッチから始まったぼくらの恋愛だけど、このごろやっと気持ちが追いついてきた気がする。

 彼女は最初からぼくのことを好きだったんだろうけど、ぼくはというと正直な話、エッチに流されててよく解らなかった。
 本当に好きなのか、それともただ可愛い女の子とエッチできるのが嬉しいだけなのか。
 彼女にしてみれば、好きな人にこんな風に思われていたなんて最悪かもしれない。

 でも、今は違う。
 胸を張って、彼女を好きだと言える。

 ただ……ぼくはぼくの中にいる、彼女が本当に好きだった“向こうの世界の王子”に嫉妬している。
 強く逞しく男らしい、ぼくとは全然違う見知らぬぼく。

 誰もいないベンチのそばで座るでもなく、ただ、ぼくは軽く溜息を吐いた。
 ぼくと腕を組んでいるミュウマが見上げて、小首をかしげた。
「……ナオ?」
 彼女の言葉は少ないけれど、その静かで優しい響きはぼくにとって魅力的だ。
 ぼくは頭を振って、答えた。
「なんでもないよ」
 ぼくの目をじっと覗き込む。
 ふいに手を伸ばして、ぼくの頭を撫でた。
 顔をほんのり赤く染めて、微笑む。
 急に涙が込み上げてきた。
「ミュウマ!」
「ひゃん?!」
 ぼくは思い切り彼女を抱きしめた。

678:2/10
07/10/02 02:27:17 j6s1yNec
 風に揺れる木の葉の音も街の音も消えて、お互いの鼓動だけが聞こえる。
 ほどよい重みを持った、しなやかで柔らかな温かさ。
 好きだ。好きなんだ。
 この気持ちに前世とか異世界とか関係ない。

「ナ、オ……くる、し……」
「あ、ご、ごめん」
 力を緩める。
 少し離れて、彼女の顔を見つめた。
 真っ直ぐだけど、潤んだ目でぼくを見返す。
 彼女は頬を一層赤くして、そっと目を閉じた。
 彼女の唇に、ぼくの唇を重ね合わせた。

 魔法の時間。
 ぼくは彼女を木が覆い茂って一歩先に暗くなっている林の中に、手を繋いで連れて行く。
 彼女も黙ってついてきた。
 しっとりと足元の葉が濡れている。

 奥にあった、やや太めの幹に優しくミュウマの背をもたれさせる。
 顔が近い。お互いの息が掛かる。
 ゆっくりと距離を縮め、またキス。
 今度は深い。
「ん……ちゅ、ちゅぷ……んん」
 その体勢のまま、制服の上から胸を触る。
 薄い小学生が着けるようなブラの奥に、乳首だけがぷっくりと硬くなっていた。
 それを手のひらで転がす。
「ん! んふぅ! あ」
 ビクビクと身体が反応した。
「ん、んん……るぁ……」
 彼女がぼくをぎゅっと抱きしめた。
 ぼくは彼女の唇を執拗に求める。
「ん! んふ、ちゅぱっ、ぷふっ……」
 ぼくは制服の中に手を滑り込ませる。
 じかにその先端のしこりに触れた。
「ひんぅ!」

679:3/10
07/10/02 02:28:03 j6s1yNec
 ぼくは彼女からちょっと離れた。
 顔を見ると全体が赤く、口は半開きで目の焦点が合っていない。
 声は無く、吐息と喘ぎだけが漏れる。
「あ、はぁっ! はぁはぁ、ああっ、あっ……」
 ぼくは彼女の下半身へ手を伸ばした。
 制服の短いスカートをまくり、もう直接、綿のパンツの中に手のひらを入れた。
 滑らかなお腹の下に少ない陰毛を感じた。
 そしてその先には、熱くとろけて淫水が溢れている秘裂があった。
「うわ、すごいよ……べちゃべちゃだ……」
 指の先だけではなく、手のひら、手の甲、全てが濡れてしまう。
 ミュウマは喉の奥から喘ぎを上げた。
「あああっ! あひゅう、うう、はっあっ!」
 彼女の腰がうねうねと、指を求めるように蠢く。
「ホント、ミュウマはエッチな子だなぁ……」
 この言葉に彼女は弱い。
 それを聞いた途端、何かに憑かれたように、すでに大きくなっているぼくのモノを掴んできた。
 かすれた声で、淫蕩なセリフを吐く。
「……あ、あたし、スケベでぇ、え、えっちなの、お、だから、は、はやくコレほし、いの……」
 彼女はしばらく、ぼくのモノをしごく。
「はぁ、はぁ……か、たいよ、すっ、ごい……」
 彼女はズボンのジッパーを素早く下ろすとトランクスの前を広げ、ソレを取り出した。
「……濡れて、あ、熱い、よ……ナオ……」
 柔らかに握って、リズミカルに擦る。
 気持いい。
「う、うう……ミュウマにもしてあげる」
 ぼくは彼女の秘部に人差し指と中指を同時に二本、挿れた。
 つるりと奥に達した。
「んぁぁぁっ! あ、あっあっあああ……」
 ガクガクと身体全体が小刻みに震えたかと思うと急にがっくりとぼくにしなだれかかってくる。
「……あ、足、ちから、はぁ入ら、な……」

680:4/10
07/10/02 02:29:18 j6s1yNec
「ちょっとイッちゃった?」
「う、ん……ちょっと……イッちゃっ……た」
 大きく肩で息をするミュウマ。
 ぼくは、彼女の股間から手を抜くと、両手でパンツを引き下ろした。
「ん……す、すーすーす、る……」
 ぼくは彼女を抱きかかえるようにして、股間のモノをそこに挟んだ。
「うあっ! ナオ、ナオの、硬いので、めくれちゃうぅ!」
 一気に彼女の愛液が溢れ出した。
 彼女がぼくの胸に抱きついて、懇願した。
「いやっ、いや、擦るの、いやあ! 入れて入れて、い、入れてぇ!」
 ぼくは彼女から離れると、指示した。
「さ、向こう側の木に手をついて」
「ん……こう、か、な」
 彼女は言われるまま、背後からセックスをする体勢になった。
 まくれ上がったスカートの下に、未発達ながらも丸みを帯びた白いお尻が見える。
「じゃあ、するよ」
 ぼくはもう破裂寸前のモノを、そこにあてがった。
 だが、まだ挿入せず、ぐにぐにと擦る。
「ナ、ナオぉ……じ、らさな、いで……」
 ぼくは頷いた。
「じゃあ今日もおねだりしてよ。ちゃんとぼくのほうを見ながらね」
 彼女は体中がピンクに染まった。
 彼女は息を飲むと、ゆっくり言った。
「……な、ナオのぉお、おチン……ポぉ、あたし、のぉおま●こに挿れて、くらさい……」
 ぼくはニッコリ微笑んだ。
「よく言えまし……たっ!」
 ズン、と一気に挿入する。
 中が熱く滑って、ぎっちりと奥まで埋まる。
 彼女の背中がぐっと反った。
「ふゅあぁぁぁっ!」
 ぼくはそれを見ながら、腰を律動させた。
 ぱんぱん、とミュウマの尻肉と、ぼくの太ももが当たる。
 その間からは、ぐちゅぐちゅといやらしい体液の音が漏れ響く。
「あっあっ、あーっあっ! ナオぅ、す、すご、いっあああ、るぁっ、うふぁ!」
 彼女の中の締め付けが、きゅきゅっと強まる。
「う、あ、み、ミュウマの中、も、すごいよっ! あ、はぁはぁはぁっ……」
 ぼくは彼女の腰骨のほうを持って、さらに奥深く突いた。


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