無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目at EROPARO
無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目 - 暇つぶし2ch500:名無しさん@ピンキー
07/09/01 07:55:57 4ilFixFk
無口……か?

501:名無しさん@ピンキー
07/09/01 09:00:54 9t8FUvOv
手話で会話w

502:名無しさん@ピンキー
07/09/01 14:30:32 fN3kFZmf
腹話術

503:coobard ◆69/69YEfXI
07/09/01 22:53:17 lNZ98Uko
どうも。ミュウマ再登場です。10レスほど頂きます。
よろしくお願いします。


504:1/10
07/09/01 22:54:05 lNZ98Uko
 何か……向かってくる。
 あれは……なんだ……!
 巨大な、トカゲみたいな生き物。
 赤い眼。
 鋭いツノ。
 怖い、怖い、怖い!
 でも、ぼくは動けない。
 なす術なく、ぼくはその鋭いツノに……!

「うわぁあぁあっ?!」
 ぼくは驚いて目を覚ました。
「はぁっ、はぁっ……」
 ぼくは体を確認した。生きてる。よかった。
 周りを見ると、そこはぼくの部屋だった。
 時間は深夜。ほの明るい月明かりがカーテンの向こうから入ってきている。
 汗のしずくが、ぼくの太ももに落ちた。
 胸が痛む。思わず、押さえる。
 ぼくはこの胸の痛みのおかげで、ずっと身体が弱く、俗に言う運動音痴になってしまった。
 だけど、病院で検査を受けてもなんの異常も見つからない。
 心因性としか考えられないそうだ。
「ううっ……痛つっ……っはぁっはぁっ……」
 それにしても、今日は特にひどい。夢のせいだろうか。
「あんなファンタジーな夢見るなんて……ミュウマとエッチしたからかな……」
 ミュウマは、ぼくの彼女だ。この前、ひょんなことからエッチして付き合うことになった。
 彼女は可愛い感じだけど、いつも無口だった。
 その理由は、彼女が異世界から来たお姫様で、こちらの言葉がまだあまり解らないからだという。
 ぼくは、そんなゲームみたいな世界の王子様で、こっちの世界に生まれ変わった姿なんだそうだ。
 ミュウマは向こうのぼくを好きで、でも逢えなくなって。
 そんなとき、彼女はぼくに巡り会った。それで……。
 信じられない話だが、しゃべる黒オウムの執事、エルが説明したんだから、信じるしかない。


505:2/10
07/09/01 22:54:35 lNZ98Uko
 しばらく、ぼくは痛みが治まるまでじっとしていた。
 そうしていると、ふいに窓のほうから鳥の羽ばたく音が聞こえてきた。
「ん?」
 窓のほうを見たが、なにもいなかった。
「ナオ様。このような時間にすみません」
 ふいに後ろから声がした。
 驚いて振り返ると、見事なスタイルをした女性が立っていた。
 全身を真っ黒なスーツに包まれている。
 長い髪も黒く、額で切りそろえられている。切れ長の目の瞳も黒い。
 ただその顔だけは抜けるように白く、ドキドキするほどきれいだ。

「だ、誰?!」
 彼女は一礼して口を開いた。
「エルでございます。夜の間は一時的に人の形をとれるのです」
 エルってあの執事のオウム?
 声も大人っぽくて、雰囲気も落ち着いている。
 あのオウムの時とは全然違う。
 ぼくは彼女に問いかけた。
「そ、そうなの? ほんとに?」
「はい。本当です」
 なんていうか、まだ夢の続きみたいな気分になってくる。
「そうなんだ……ってか、女だったの? 執事っていうから、てっきり男だと思ってたんだけど……」
「わたしの知っているこちらの言葉では、適当な単語が見つからなかったもので。申し訳ありません」
 うやうやしく頭を下げた。
「いや、謝らなくってもいいけど……それで、なにかぼくに用でもあるの」
「はい。ミュウマ様があなたをお求めになっておられます」
 ぼくは真っ赤になって吹き出した。
「こ、こんな時間にどうしろっていうんだよ。今から出掛けるワケにもいかないしさ」
「ご心配には及びません」
 彼女は、その白く長い指先を伸ばし、空間に円を描いた。
 するとそこに別の部屋のようすが見えるようになった。
 何か中から甘い香りが漂ってくる。
「空間をミュウマ様のお部屋に繋ぎました。どのような状況なのか、まずはご覧下さい」
 エルに言われるまま、その中を覗き込む。

506:3/10
07/09/01 22:55:13 lNZ98Uko
 高い位置から下を見る感じだ。
 薄暗い部屋のベッドに誰かが寝ているのが見える。むこうを向いているので顔は見えない。
 だけど、エルがミュウマの部屋に繋いだっていうんだから、ミュウマなのだろう。
 かわいいピンクの寝間着を着ている。薄い毛布は、お腹のところだけを覆っていた。
 「ん……ふ……っ」
 肩が揺れている。
 また泣いているのかと思ったが、今度は何かもっと甘い感じだ。
「ん……」
 彼女は、ごろりと仰向けになった。
 両膝が立つ。それはやや開いていた。
 その太もものつけねには彼女の手があり、指が寝間着の上から大事な部分を押さえている。
 それは敏感な部分を緩やかに、さする。
 彼女のもう一方の手は、はだけた寝間着の間から胸へと入り、蠢いている。
 ぼくは思わず、つぶやいた。
「あ……お、オナニーしてるんだ……」

 口には例のペンダントをくわえている。
「ちゅぷっ……」
 彼女は胸にあった手を口元に持って行くと、それを口から取って舐め回す。
「らぁ……ナ、ナオぉ……ん」
 名前を呼ばれたぼくは顔が真っ赤になると同時に、股間に血が一気に集中するのを感じた。

 ミュウマはその秘密の部分を擦る指を早めた。
「……ん! んん! はぁっはぁっ」
 彼女は指を止めた。
 急に体を起こすと、もどかしそうにパンツごとパジャマのズボンを脱ぐ。
 だが全部は脱げず、すその片方は足首に掛かったままだ。
 白く艶めかしい下半身が闇に浮かぶ。
 また彼女は、ころんと寝転んだ。
 膝を広げ、その部分に指を滑らせる。
「んー……っ! はっはぁっはああっ」

507:4/10
07/09/01 22:56:41 lNZ98Uko
 彼女の息が早く浅くなる。
「はっ、はぅ、はっ、はぁ……っ」
 ペンダントトップをつまんだ指が、徐々にその部分に下がっていく。
 ぼくは思わず生唾を飲んだ。
 片手でその濡れるアソコを広げ、もうかたほうの手でペンダントトップをあてがった。
「ふぅ……っん」
 ゆっくりと、その丸い金属が彼女の中に挿入される。
「んんんっ!」
 彼女の腰が少し浮いた。少し震えているみたいだ。
「うう!」
 そのままそれは、指と共に激しく出し入れされた。
 ぐちゅぐちゅと、いやらしい水音が響く。
 ぼくはだんだん、たまらなくなってきた。
「はっ、はっ、はぁうんん! ナオ、ナオぉ!」
 ぼくのことを考えながら、あんなに感じてる。
 そのミュウマの姿に思わず、硬くなったぼく自身をパンツの上から握ってしまう。
「ナオ様。お手伝い致します」
 ふいに背中からエルの優しく低い声がした。
 彼女は、後ろからぼくをふんわりと抱く。
 大きめの胸が押しつけられて、さらにぼくのものは大きくなる。
「一度、出しておいたほうが二回目は長くもつのでしょう?」
 柔らかく白い指が、ぼくのパンツにするりと入る。
 硬くなっているモノを軽く握った。少しひんやりとした。
「こんな感じ、ですか?」
 その人差し指と親指が輪を作り、先のほうを滑らかにしごく。
「ううっ! いい……」
 もうそれだけで、爆発しそうだ。
「これではナオ様の着ているものが汚れてしまいますので、お脱ぎになって頂きます」
 エルがいったん手を離し、後ろからぼくの寝間着のズボンをパンツごとずり下げる。
 それはぼくのモノにちょっと引っかかってから、完全に下ろされた。
 暗闇に下半身を晒す。
 ぼくのモノはずっと上を向いていて、萎える気配はない。
 彼女は前に回ると、それを見つめた。
「ナオ様、ご立派です……」

508:5/10
07/09/01 22:57:24 lNZ98Uko
「え、そ、そうかな……」
 彼女は妖艶に微笑む。
「はい。素敵です……それでは、上も取らせて頂きます」
 流れるような指さばきで、あっという間にぼくは全裸になった。
「さあ、ミュウマ様をご覧になりながら、どうぞ達して下さい」
 エルがまた後ろに回り、ぼくのモノを擦り始めた。
 もう片方の手でぼくの乳首を優しく転がす。
「う……っ……」
 初めての感覚。
 ぼくは体を支えるように、その腕をつかんだ。
 背中にエルの胸を感じながら、ぼくはどんどん興奮してきた。
 ぼくはもう片方の手を後ろに回し、エルのお尻を触る。
「ん……な、ナオ様……」
 少し困惑したような声。しかし、拒否はしない。
 目にはミュウマの物凄くエッチな姿が映る。
「はっ、はぁ、はうう……」
 ミュウマがパジャマの前を全開にした。
 尖った乳首が、その薄い胸を覆う人差し指と中指の間から、飛び出している。
 指と手に力を入れ、強く揉む。
「くふぅ! んーっ」
 彼女のアソコには指が二本と、それに絡めたペンダントトップが出入りしてる。
「はっ、はっ、はっ、あー、あーっ……」
 ミュウマの腰が別の生き物のように、くねる。
「ナオ、好き、しゅきぃ! あー、くるるぁ! くるるぅ!」
 彼女の腰がぐねぐねと激しく上下する。
 あれは、ミュウマがイクちょっと前の時の言葉だ。
 それを聞いたとたん、急に何かが心の中で弾けるような気がした。

 これは、このパワーは……この湧き上がる力は……。


509:6/10
07/09/01 22:57:57 lNZ98Uko
 エルの手の動きが速くなる。
「ん、ナオ様の、モノがガチガチに硬く、なってますよ、はっ、ん、んふぅ」
 きれいな横顔がぼくのすぐ横で、ささやく。
 その頬は熱く、息も少し荒い。
「エル、あ、きもちいいよ! も、もうすぐ、で、出ちゃう、うっあう」
 彼女は微笑む。
「な、ナオ様、い、イッて下さいませ、わたしの、エルの手の中で、あ、はぁっはぁっ」
 彼女の甘い息が掛かる。
 エルの腕に、ぼくはしがみつく。
 もうかたほうの手を彼女のお尻から前に回し、彼女自身に触れた。
 スーツパンツの上からでもそこが熱を持って、とろけているのがわかった。
「あっ、な、ナオ様……い、いけませ、あ、ああはっ!」
 ぼくは、ぼくだけど、ぼくじゃない何かに突き動かされた。
「いいじゃないか! エルもイかせてあげるよ」
「は、はぅっ! あ、ありが、とうご、ざいますぅっ!」
 お互いの性器を激しく擦り、高め合う。
 ミュウマの嬌声も聞こえてくる。
「……ナオのぉ、お、おチンポ……あたしの、お、お●んこに、欲しいのぉ……!」
「うわ……ホント、ミュウマはスケベだなぁ……」
 エルの手がさらに速くなる。
「はぁっ、はぁっ! な、ナオ様……ああ、ああん」
 その脚の根元はもうどろどろだ。
 目はトロンとして、口元からはよだれが、だらしなく垂れていた。
 彼女はぼくの手を握り、自分から腰を振ってきた。
「……ん、んん! ん! ナオ、さ、ナオ様ぁ、イキます、イキそ、うです!」
 ぼくもエルの手に合わせるように腰を突き動かす。
「あ、い、いいよ! ぼくも、うっうう!」
「はっ、はああん! はあっはぁっ! ナオ様、ああっ」
「ナオ、ナオぉ! 好き、しゅきひぃ!」
「ミュウマ、ああ、ぼくも、好き、好きだっ!」

510:7/10
07/09/01 22:59:29 lNZ98Uko
 腰の律動が激しくなってくる。
 エルも声が出ている。
 彼女の腰がぼくの腕の上で、がくがくと震える。
「ああ、ああっ……はぁっはぁっ、ああ、くるるぁ、くるるぅ!」
 ミュウマも同じ言葉を発した。
「くるるぁ、くるるっううう!」
 その言葉は絶頂が近いしるしだ。
 ぼくももう、限界だ。
「あっ出るっ! 出る出る出るっ!」
「いひゅ、いひゅ、いひゅうん!」
「ナオ様いひゅぅっ!

 三人同時に、弾けた。
「うあぁぁ―ッ!」
「いぎゅぅぅぅ―ッ!」
「いぎゅぅふぅ―ッ!」
 最後の声はステレオで聞こえた。
 ぼくの精液は弧を描いて、見事にミュウマに降りかかる。
 イキ顔のミュウマにべっとりと付着するぼくの体液。
「……?」
 彼女は荒い息の中、それをぼんやりと指に掬い取り、ねぶる。
「……ナ、オ?」
 彼女が首を動かし、目線を天井、つまりぼくのほうに向けた。
 ぼくと目が合った。
 彼女が慌てて胸と股間を毛布で隠した。
「……見て、た?」
 彼女は顔を真っ赤にして聞いた。
「あ、あはは、ご、ごめん……」
 ぼくは頭を掻いて謝るしかなかった。

511:8/10
07/09/01 23:00:35 lNZ98Uko
 しばらくしてから、ぼくはとりあえずパンツだけは履いて、ミュウマの部屋に降りた。
 エルが、ミュウマの部屋のもう少し低いところを繋ぎ直してくれたんだ。
 ぼくが現れたのを見て、ミュウマがぎこちなく照れるように笑う。
「……こ、んばんは」
 まだ服は着ていない。毛布で体をくるんでいるだけだ。
「こんばんは……その、さっきはごめん……」
 彼女はふるふると首を横に振った。
「……別に、いい……ナオなら……」
 可愛い。
 ぼくは彼女のそばに行った。

 ミュウマの横に座る。
 彼女がぼくの肩に頭を預けてきた。
「……くふ……」
 柔らかくて、ふにふいにしている。

 エルが目の前に来て膝を突き、かしづいた。
「本当にあなたはナオ王子がこちらの世界で転生した姿なのですね」
 ミュウマの頭を撫でながら返答する。
「どういうこと?」
 エルは頭を垂れたまま、応じた。
「その胸の輝きは、王家の証です。王家のかたは皆、その力を胸の輝く鳥、ヴァーディアに宿しているのです」
 見ると、ぼくの胸の中央に羽を広げた鳥のような形が青白く浮かび上がっている。
「これは……そうか、これのせいで……」
 今まで、ぼくがぼくじゃないような感じがしていたのはこれだったのか。
 そう思って見ていると、すーっとそれが消えていった。
 とたんに体が重くなる。
「う、わ……なんだこれ……ヤバい……死ぬ……」
 体が動かなくなって、そのまま後ろに倒れ込んだ。

512:9/10
07/09/01 23:01:19 lNZ98Uko
 ミュウマが焦って呼びかける。
「ナオ? ナオ!」
 ぼくの体を必死に揺する。でも、もう意識も……
「エル!」
 涙の混じったミュウマの叫びだけが耳に残った。

 目が覚めると、ぼくは自分のベッドにいた。
 覗き込む黒いオウムがいる。エルだ。
 首をくくっと曲げると、甲高い声で喋り出した。
「ナオ様、お目覚めですか。回復魔法を掛けた甲斐がありましたな」
 どうやら、エルのおかげで命は助かったらしい。

 しかし、このオウムがあの美女とはとても思えないなぁ。
 声もしゃべり方も違うし……キャラが違い過ぎる。
 ぼくはあの胸とミュウマの体を両方、思い出した。
 すると……股間が反応した。
 エルがくるっと頭を回して、それを見た。
「ふむ。さすがですな。もう大丈夫ということでしょう。ではわたしは失礼します」
 羽を広げると、二、三回羽ばたいて宙に浮く。
 すると、もうその姿はどこにもなかった。
 ちょっと溜息。
 まぁ、ここんとこ色々あり過ぎて、もう驚かないけどね……。


513:10/10
07/09/01 23:02:02 lNZ98Uko
「ナオユキ、佐藤さんがお見舞いにいらしたわよー」
 突然、母さんがドアをノックした。
「ええっ?!」
 ミュウマがお見舞いー!?
 って、ぼくはどのくらい寝てたんだ?
 混乱したがとりあえず、母さんには返事をした。
「あ、ああ。どうぞー」
 ドアが開けられ、ミュウマが顔を出した。
「こんにちは……」
 ぺこりと頭を下げる。
 母さんが彼女の後ろで、にやにやしまくりながら去っていった。

 ミュウマはぼくのそばに、とてとてといった感じでやってくる。
「大丈夫……?」
「ん。エルのおかげでなんとか大丈夫みたい」
 彼女はちょっと拗ねるように頷いた。
「……そう、ね」
 これはもしかしてエルにジェラシーを燃やしてるのか?
 ぼくは重たい体を無理矢理に起こして、彼女の薄い胸に頬ずりした。
「来てくれてありがとう」
 すりすり。
「ん……あ、あぅ」
 ミュウマがぼくの頭をぎゅっと抱いた。
「……だめ……」
 ぼくは彼女の顔を見上げた。
「ん?」
 ミュウマは真っ赤になっていた。
「気持ちよくなっちゃう、から……」
 うわ……ドキドキする……。
 なんて可愛いんだろう。
 ここで押し倒したい。でも、ぼくの体がヤバいのも解っていた。
 これ以上、体力を消耗してしまっては本当に死んでしまう。
「ん、解った。また、今度ね」
 そう返事をすると彼女は嬉しそうに、でもちょっと残念そうに、こっくりと頷いたのだった。

514:coobard ◆69/69YEfXI
07/09/01 23:02:49 lNZ98Uko
以上です。ここまでお読み頂いて有り難うございました。
失礼します。

515:名無しさん@ピンキー
07/09/01 23:51:01 iupEvKJt
乙!

516:名無しさん@ピンキー
07/09/02 00:02:58 XlUTr+LD
うお、続きですか。ミュウマ相変わらずエロカワですな。エルの変化にかなり驚きました。GJ!

517:名無しさん@ピンキー
07/09/02 03:03:02 nLPGrCC4
寝る前に来てよかった……

Gj!です
実は密かに楽しみに続き待ってた私


518:名無しさん@ピンキー
07/09/05 02:53:44 fAYkHM+1
久々にきたら良作が。
GJ!

519:名無しさん@ピンキー
07/09/06 12:05:07 amIN82y2
三時間以内にレスつかなければ
全作品の無口っ娘は俺の嫁

520:名無しさん@ピンキー
07/09/06 12:07:44 a0ZU2Gn0
…………だが……断る

521:名無しさん@ピンキー
07/09/06 12:13:48 amIN82y2
>>520




早すぎだw




人居るんだな、意外だ


522:名無しさん@ピンキー
07/09/06 12:16:01 D1X2tueM
ノシ
居るよ

523:名無しさん@ピンキー
07/09/06 12:18:18 a0ZU2Gn0
携帯さえあれば時間なんて関係無いんだぜ?

524:名無しさん@ピンキー
07/09/07 18:46:49 KvBcT8ph
無口娘情報!
まんがライフMOMO 10月号
新連載 [森田さんは無口]佐野 妙

キタコレ!



525:名無しさん@ピンキー
07/09/08 07:13:15 o9ZlKoi7
>>524購読確定

526:名無しさん@ピンキー
07/09/09 00:21:39 fe5DtJ6a
GJ

エルハァハァ...

527:名無しさん@ピンキー
07/09/11 02:05:24 KQbYrIGO
GJ

528:名無しさん@ピンキー
07/09/11 16:29:58 9vtA1Ik7
無口だけど活発な娘はこのスレの対象外?

529:名無しさん@ピンキー
07/09/11 17:05:39 1E2OUiqb
十分、対象内

530:名無しさん@ピンキー
07/09/11 19:38:38 SWgWCfPA
無口ならおk

531:名無しさん@ピンキー
07/09/11 21:18:32 GfknvrLX
あんなに過疎ってたのに結構な反応の速さ。おまいら普段どこにいるんだw
活発無口っ娘ガンガンおk。むしろ大歓迎

532:名無しさん@ピンキー
07/09/11 21:50:05 Tt2cxukj
>>531
ここの住人も無口なんだろ

533:じうご
07/09/11 22:09:30 H7KNeoXk
さてと、みなさんこんばんは
じうごです

なんというか……現在書いているものの筆がなかなか進まないので
気分転換に1レス分のものを投下します
エロはありません、ご注意を




534:じうご
07/09/11 22:10:36 H7KNeoXk
ふと外を見る。
豪雨、といってもいいような勢いで雨が降っている。
そのせいか、夏―暦の上では秋だが―なのに気温は肌寒いくらいだ。
「ん……」
まぁ、そんな寒さも彼女が俺の背中に抱きついてきているおかげで、たいして感じないが。
「はぁ……いつもいつも、暇さえあれば、俺に抱きつくのはやめろよ」
「……いや?」
「別にいやではないけどな」
というか、すこし話ずれるが自分の好きな人に抱きつかれるのが嫌いな人とかいるのか?
「……なら、いいでしょ」
そういい、先ほどより強く抱きついてくる。
俺の肩に顔を乗せているのが、なんともほほえましく思える
「まぁ、そうだな……」
ザーッと、雨の降る音が聞こえる。
……窓を閉めないと吹き込むな、
そんなことを思うが、動く気はない。
吹き込んだとしても、どうせあとで拭けばいい、今は、なんとなくこのままでいよう。
「なぁ」
俺は彼女に呼びかけるが、
「…………」
返事がない、どうしたかと思い、顔を横に向ければ、
「…………」
俺の肩に顔を乗せたまま、なんだかどこか幸せそうな顔をして寝ていた。
「ったく……」
自然に頬が緩むのを感じるが、別にだれかが見ている訳でもないから、そのままにしておく。
「仕方のないやつだな……」
言うのは口だけ、俺は彼女を背中に抱きつかせたまま器用に立ち上がり、彼女をベッドの上に優しく置き、布団を被せる。
ザーッと、雨の振る音が聞こえる。
「俺も寝るか……」
床に座り、ベッドに背中を預けて、彼女の寝息を聞きながら、俺は目を閉じた。
ザーッと、雨の振る音と、彼女の寝息が聞こえる。





終わり


535:じうご
07/09/11 22:14:22 H7KNeoXk
あ、あと、
>>528

ぜひ書いてくださいお願いします

536:名無しさん@ピンキー
07/09/11 22:18:41 W7+93nlz


537:名無しさん@ピンキー
07/09/12 00:39:02 /TdZOiEa
>>534


駄作乙www

もう二度と来るなよ低脳野郎www

誰もお前のSSなんて待ってないしなwww

538:名無しさん@ピンキー
07/09/12 00:41:07 9EMFGxTk


>>537
ツンデレは帰れw

539:名無しさん@ピンキー
07/09/12 15:35:18 hnPD0jL1
 彼女は何も言わない。
 ただ、その頬は窓から差し込む夕日より赤くしている。
 彼女の目の前には、SSを書き終えて、疲れたためベッドで眠っている>>534がいる。
 彼女は、深呼吸して、その上に静かに乗る。
 目が覚める>>534
「ん……な、なにやってんだ。降りろよ>>537子……」
 彼女は持ってきていたスケッチブックに文字を書き込む。
『駄作乙www 』
 >>534は、一瞬きょとんとした。だが、悪魔のように嗤った。
「そうか」
 >>534は彼女の腕をぐいっと引っ張る。
 彼女の息がふっと漏れて、>>534の胸に倒れ込む。
 すっかり熱くなっている彼女の身体が、眠っていた>>534の少し冷えた身体と熱交換をする。
 彼女はちょっと横に転がると、まだ片手に持っていたスケッチブックにまたなにか書き込んだ。
『もう二度と来るなよ低脳野郎www』
 くくっ、と声を上げる>>534
「もう言うことはないのか?」
 彼女はほんの少し挑むような目つきで、さらに書き込む。
『誰もお前のSSなんて待ってないしなwww』
 それを見たとたん、>>534は激しく彼女の唇を奪った。
 お互いの吐息といやらしい水音が部屋にこだました。
 >>534はむさぼるように彼女の胸を揉みしだく。
「……んっ……」
 ばさりと、彼女の持っていたスケッチブックが床に落ちた……。

540:名無しさん@ピンキー
07/09/12 16:15:38 F8WTmZhr
わっふるわっふるwwww

541:名無しさん@ピンキー
07/09/12 17:34:27 DwSycxOg
らんま思い出したwww

542:名無しさん@ピンキー
07/09/12 17:41:09 9EMFGxTk
これはw

543:名無しさん@ピンキー
07/09/12 17:42:34 z4/6+0PC
わっふるわっふる

544:名無しさん@ピンキー
07/09/12 19:27:12 /mTJ1AXp
わっふるわっふる

545:『彼女』の呼び声
07/09/12 23:38:10 nFPgP+Xf
 学費の足しにしようと始めたコンビニのバイトは、予想以上に退屈かつ苦痛なものだった。
 ただひたすらバーコードを読み込み、金額を合計し、レジに打ち込んで行く。
 売り上げを記録し、店長の指示の元機械的に商品を補充。
 自己研鑽も達成感もない、ルーティンワークの繰り返し。

 本当なら、もっとやりがいがある、例えば製造系のバイトがしたかった。
 が、それらの仕事は総じて拘束時間が長い。
 学業に支障がでない範囲でできるバイトと言えば、このコンビニのバイトくらいしか―学生の多い街ゆえ、新聞配達の奨学生はあっと言う間に埋まってしまった―なかった。

 そんな燻る火種のような日々を送っていた少年、古橋仁がその少女と出逢ったのは、夏の終わり。
 まだ蒸し暑い、夏の夜のことだった。


 彼女が店内に入ってきた時、仁はすぐにその存在に気づいた。
 決して汚れているわけではないが、撚れてくたびれたワンピース。
 不潔なわけではないが、年頃の少女にしてはあまりに手入れのされていない長い髪。
 何より、彼女くらいの年齢の少女が、お洒落なバッグの一つも持っていないというのがいかにもな感じだ。
 ―そう、彼女は、一目でそうと分かるほどに家出少女にありがちな特徴を持っていた。

 彼女は店の入り口にあるカゴを左手に持つと、レジの真っ正面を横切り、そのまま迷い無く食料品の並べてある一角へと歩いて行く。
 間近で彼女の姿を見て、仁は気づいた。
 彼女のワンピースの右腕に中身は無く、無造作に縛ってある袖口だけがぶらぶらと揺れている。
 如何なる理由があるかは分からないが、彼女は隻腕なのだ。

 そして、食料品コーナーにたどり着いた彼女はカゴを床に置き、片方だけの左手を棚へと伸ばし、

「―って、おいおいおい!?」

 無造作に掴んだ菓子パンを次々とカゴの中にほうり込んで行く。
 あっと言う間に一杯になったカゴを、彼女はそのまま片手で掴むと、レジを素通りして入り口へと。

 レジを飛び出し追いかけようとした仁だが、しかしそれは叶わない。

「ちょっとアンタ、これ」

 弁当とレトルト食品と、そして少しのスナック菓子の詰め込まれたカゴを、子供連れの若い女性が突き出す。
 それどころじゃない。と言おうとした仁だが、その時違和感に気づく。

 今し方の彼女のような、普通とは異なる人間が視界に入ってきた時、人間は思わずそちらに視線をやってしまうものだ。
 家出少女、隻腕、そしてあの突飛な行動。
 注目される要素がいくつもありながら、しかし彼女の存在に気づいたのは彼ただ一人。
 ゆとり教育の弊害だとか都会の人間は周囲に無関心だとか、そんなチャチなものではない。
 仁は、もっと恐ろしい何かの片鱗を味わった気がした。

 ―その日の売り上げと在庫にはやはり大きな差があり、仁や他のアルバイトは在庫確認のために残業を強いられることになる。


 次の日も、そのまた次の日も。
 少女は同じような時間にやってきて、同じようにカゴ満載の菓子パンを手に夜の街へと消えて行った。
 仁の予想通り、どうやら少女の姿は他の人間には見えていないらしい。
 一度など、店長の目の前を堂々と横切って行ったにもかかわらず、だ。

 それだけではない。監視カメラにも彼女の姿は映っていなかった。
 まるで幻。しかし、現実に店の品物は消えて行く。

 そんなことが一週間ほど続いた時、仁は一つの計画を実行に移した。

546:『彼女』の呼び声
07/09/12 23:39:43 nFPgP+Xf
「やっぱり、今日も来たな」

 その日、仁はいつもと同じようにコンビニに居た。
 が、いつもと違うのは店員としてではなく、客として来ている、と言うことだ。
 今日はバイトは休み。普段はバイト以外でコンビニに来ることなどめったにないが、今回は特別である。

 少女はいつものように片手でカゴを掴み、無造作に菓子パンをカゴにほうり込んで行く。
 真後ろにあるおにぎりを選ぶ振りをして仁が近づいても、一考に気にする気配はない。
 やがてカゴが一杯になると、いつものように堂々とレジ前を横切り入り口へと歩いて行く。
 仁は数歩遅れるように、その後を追いかける。

 幸い、コンビニを出た途端幻か何かのように少女の姿が消えてしまうようなことはなかった。
 迷いなくてくてくと歩いて行く彼女を、仁はつもりだけでも足音を忍ばせて追いかける。
 やはりというべきか、彼女が向かって居るのは近所の市民公園だ。

 街灯の頼りない明かりの中、少女にわずかに遅れるようにして仁が追いかける。
 そして公園の中央付近、噴水の回りにあるベンチまでやってくると、彼女はようやく足を止め、手にしたカゴをベンチの上に載せ、その横にちょこんと腰掛ける。

 カゴへ向かって手を伸ばし掴んだのは、袋に子供たちに大人気な黄色い電気ネズミの描かれたパン。
 左手と歯で器用に袋を破り、彼女はかわいらしい口を大きく開け、思い切りよくパンにかぶりついた。

 今だ。仁は茂みから、大股に歩み出る。

「あのさ、あんた……」
「…………(もぐもぐ)」

 聞いちゃいなかった。それどころか、仁の方に視線をやろうともしない。
 あっと言う間に一つ目のパンを食べきり、次に手に取ったのは大きなメロンパン。

「…………(はぐはぐ)」

 幸せそうに目を細める彼女の姿は、薄暗い街灯でもはっきりと分かるほどに愛らしかった。

「―って、聞けよおいっ!」

 思わず見とれてしまった仁だが、我に返って再び声を上げる。
 が、それでも彼女は彼を見ようともしない。
 仕方なしに仁は彼女の目の前まで歩いて行くと、その両肩をがっしりと掴む。
 見た目どおりに細いその肩は、確かな実体を持ってそこにあった。

「…………!?」

 驚いたように、初めて彼女が反応を示す。
 見上げる視線がちょうど彼女を見下ろす仁のそれと重なり合った。
 夜空よりもなお暗く深いその瞳に、引き込まれそうになる感覚をしかしなんとか堪えながら、

「なあ、あんた。家出中なんだろ? 親とか、心配してるんじゃないか?」

 少女は応えない。沈黙に居心地の悪さを感じ、仁は言葉を続けた。

「まあ、百歩譲って家出なのは別にいいとしよう。けどな、万引きは不味いぜ。
最近のコンビニは容赦ないから、見つかったら即行警察行きだ。
あんただって、警察のお世話になんかなりたくないだろ?」

 肩を掴み言い含めるように言うが、少女は意味が理解できないのか、不思議そうにことんと首を傾げる。
 見た目は黒髪黒目の日本人のようだが、ひょっとすると外国人なのだろうか。

「あー。俺の言葉、わかる? きゃんゆーすぴーくじゃぱにーず?」

547:『彼女』の呼び声
07/09/12 23:40:30 nFPgP+Xf
 ちなみに、仁は発音こそ壊滅的に悪いが、リーディングやライティングは得意な方だ。念のため。
 が、それでも少女は返事をしない。と言うか、仁への興味が失せたのか、それとも食欲の方が勝ったのか、手にしたメロンパンの咀嚼を再開する。

「まいったな……」

 色々な意味で困った。
 しかし、いつまでも彼女の肩を掴んでるわけにも行かない。
 というか、彼女のワンピースは胸元が少し開いているため、この体勢では柔らかそうな胸の谷間が覗けてしまう。

「ああ、もうっ!」

 仕方ないので、仁もベンチに腰掛ける。
 彼女の左にはパンの入ったカゴが置いてあるので右側に。
 その位置から彼女の横顔を見ようとすれば、自然と中身の無い右袖が視界に入る。
 一体、彼女は何者なのだろうか。
 気にはなるが、多分聞いても答えてくれないだろう。
 それどころか、まともに意志の疎通が図れるかも不安になってきた。

 と、その時だ。

「…………」

 もう何個目か分からないパンの袋を手に、彼女は困ったように眉根を寄せる。
 どうやら、袋がうまく開かないらしい。
 その姿を見ると仁はひょいと手を伸ばし、彼女の手から袋を取り上げる。
 何をする、とでも言うように不満げな彼女に向かって苦笑し、

「別に取らないって。……開けてやるよ」

 力の入れ方を工夫すれば、開けにくい袋も簡単に開く。元々手先は器用な方だ。

「ほら、開いたぜ」

 開いた袋を手の中に押し込んでやる。
 彼女はきょとんとした表情を浮かべ、手の中の菓子パンと仁の顔を交互に見つめた。
 が、すぐにまたパンを口に運び―咥えたまま、左手に力を入れる。
 口に残った大きな固まりと、手の中の小さな固まり。
 二つに分かれたパンを彼女は困ったように見つめ、だが決心したのか、口元の大きな固まりを器用に薬指と小指で掴むと、仁に向かって差し出した。

「…………」
「え、くれるのか?」

 こくりと頷く。
 が、渡されても困ってしまう。元々彼のバイト先から盗まれたものだし―何よりこれでは間接キスだ。

「――」

 迷っていると、不意に少女が口を開いた。

 が、最初仁は、それが彼女の発した声だとは気づかなかった。
 それは言葉と言うにはあまりに異質で、また声と言うにもあまりに異質だった。
 それはむしろ、鳴き声や音に近い、名状しがたき何か。
 しかし、それが仁に向けて明確な意志と共に発された、彼女にとって何等かの意味を持つものならば、それはやはり、声あるいは言葉と表するべきだろう。

「わかったよ。ありがとな」

 だから仁は柔らかな笑みを浮かべ、彼女の差し出した菓子パン―蜂蜜がけのベルギーワッフルを受け取る。
 ただでさえ甘いワッフルが、この時はさらに甘く感じられた。

548:『彼女』の呼び声 あとがき
07/09/12 23:44:22 nFPgP+Xf
そんな訳で>>528でした。

要するに、わっふるわっふる、と。
エロく無くてごめん。

549:名無しさん@ピンキー
07/09/13 00:12:25 0pazShQx
なんだか新しいな……新鮮な感じ


まぁようするに、非常にGj!

550:名無しさん@ピンキー
07/09/13 00:42:01 rClAvBgg
>>548
ユーこのまま続けちゃいなYO!

551:名無しさん@ピンキー
07/09/13 00:43:11 c3aSW4LU
なんだ これ!

よくわかんねーけど、よかった。
よくわかんねーけど、あんたの書いた世界が勝手に頭の中で画になって

ありがと。



552:名無しさん@ピンキー
07/09/13 02:57:11 hASoXKdy
>>548たった今、全世界主要国脳内妄想電波サミット会議にて連載が確定しました。

続きこなかったら無口でベッドの中で泣き続けるからな。

GJ!

553:『彼女』の呼び声 第二話
07/09/13 21:22:37 6EVXz4JX
 夜八時。今日も仁のバイト先のコンビニに、片腕の家出娘が現れる。
 相変わらず周囲に認識されてない彼女に、仁は視線だけで待っているようにと合図を送る。
 そして彼は店長に向かって振り返り、

「じゃ、俺はこれで上がるんで。期限切れの商品、適当に持ってきますね」
「ちゃんと廃棄伝票切っとけよ。しかし、前まで期限切れの商品に手を付けなかったお前が、一体どんな風の吹き回しだ?
まあ、外の奴と違ってちゃんと断って持ってくし、常識の範囲内で持ってくから文句は言わんが」

 ゴミとして廃棄するにもコストがかかるからな、と笑う店長に挨拶をして、仁は店の裏へと回る。
 期限切れの商品の中からいくつかを適当に見繕って、伝票に記入。手にしたトートバッグに詰め込むと、着替えるためにロッカーへ。
 手早く着替えて表に回れば、そこには待ちくたびれた彼女の姿。

「よ、お待たせ」
「――♪」

 そろそろ聞き慣れてきた、名状しがたい音―彼女の声。
 喜んでいることまでは分かるのだが、それが果たして仁に向けてなのか、あるいは彼の持って来た食料に対するものなのかは定かではない。

「じゃあ、行こうか」

 トートバッグを少女に渡し、二人は並んで歩き始める。
 様々な食べ物の入ったバッグはかなり重く、片腕の彼女にはやや重いはずだが、彼女自身が持ちたがるので、仁は彼女が望むようにしてやっている。

「――」

 公園までの道を歩きながら、彼女が続け様に声を発する。
 ひょっとして、歌っているのだろうか。残念ながら仁にはそこまでは分からないが、少女が上機嫌なことは分かる。

 満月の月明かりの下を踊るように歩く隻腕の少女。
 ステップを踏み、時にクルリと回る度、腰まである長い髪がふわりと揺れる。
 と、手にしたバッグの遠心力に負けたのか、その体が不意にバランスを崩した。

「っと、気を付けろよ」

 慌てて手を伸ばし、その体を抱きとめる。
 どちらかと言えばインドア派な仁でも受け止められるほどに、少女の体は軽かった。
 だが、軽いだけではない。腕の中に感じるのは、わずかな重みと柔らかさ。
 彼女が幻ではなく、現実に存在しているのだという、確かな重みだ。

「――? ――♪」

 抱きとめられた彼女は一瞬不思議そうな表情を浮かべ、しかし仁の顔を見上げると、嬉しそうに笑った。
 その笑顔に釣られるように、仁も笑みを浮かべる。
 そんな何気ない一つ一つの出来事が、不思議ととても楽しかった。

 仁とて、女性と付き合った経験くらいある。が、最長でもせいぜい二カ月が良いところだ。
 整った表情に、いかにも切れ者と言ったメタルフレームの眼鏡。当然成績は良く、スポーツも特別苦手という訳でもない。
 そして何より、その雰囲気だ。どこか近寄り難い、理知的な雰囲気。
 そんな見た目に騙された女性たちに告白され、人並みに異性への憧れはある仁は、大抵の場合OKする。
 が、しばらくたつと彼女達は決まって言うのだ。
 あなたは真面目すぎて、面白みがないと。
 そして彼女達は彼と早々に別れ、もっと話の巧い、いかにもなクラスメイトに鞍替えして行く。

554:『彼女』の呼び声 第二話
07/09/13 21:23:22 6EVXz4JX
 真面目で何が悪い。ああそうさ。俺は話し下手だ。
 テレビもニュースや歴史番組くらいしか見ないし、新聞はまず政治欄と経済欄から目を通す。
 音楽は滝廉太郎や中山晋平くらいしか聞かないし、好きな作家はチャールズ=ドジソンだ。

 他人を楽しませるような話題など欠片も持っていない。
 なのに、彼女といると―

「自然……なんだよな。別に何も特別なことなんてない」

 バイトが終わって、二人で公園に行って。
 おにぎりや菓子パン中心のジャンクな夕飯を食べて。
 その後は何をするでもなく、二人でベンチで体を寄せ合って。
 そんな、変わり映えのしない毎日がひどく楽しい。

 女の子向けの話題なんてほとんど知らないから、仁はほとんど喋らない。
 たまに学校やバイトであったことを淡々と話すくらいだ。

 そして彼女は、声を出すことはできても喋ることはできない。

「なのに、楽しいんだ。二人でいるのが、凄く―心地良いんだ」

 不意に、彼の腕の中から少女がするりと身を引き抜いた。
 くるくると踊るように駆け出しながら、しかし時折振り向いては声を上げる。
 呼んでいるのだ。彼を。

「ああ。今行くよ」

 未だに、仁は彼女のことを何も知らない。
 家族はいるのか。その片腕はどうしたのか。彼と逢っている以外の時は何をしているのか。
 だが、そんなことはどうでも良かった。

 言葉や理屈なんかじゃあない。心ではっきりと理解できた。

 古橋仁は、今。
 ―この、名前も知らない少女に、恋をしている。

555:『彼女』の呼び声 第二話 後書き
07/09/13 21:26:20 6EVXz4JX
書いてる本人が言うのもなんですが、名状しがたい声ってどんな声なんでしょうね?
様々な伏線を凄い置き去りにしながら激しくバカップル。
無口キャラって、なんとなくいちゃいちゃさせやすい気がします。

またネタが浮んだら投下します。
あと、今回もエロ無くてごめん。

556:名無しさん@ピンキー
07/09/13 21:37:53 0pazShQx
形状しがたい声なんて……なんだろ

エロ無しなんて別に気にならない~♪
文章も読みやすくていいです


やっぱりなにが言いたいかと言うと

………………GJ

557:名無しさん@ピンキー
07/09/13 22:25:43 /H5yJBAp
GJGJ!

>形状しがたい声なんて……なんだろ
あれじゃね?超音波。

このバッドエンドになりそうな空気にハラハラしてるww

558:名無しさん@ピンキー
07/09/14 01:45:47 nAsnoHDL
最初の話読んだ時、
正直、続編はなくてもいいと思った。
このまま何だかよく分からない感じを自分なりに消化する感じで・・・。

でも、今回の話を読んで少女の事、仁との係わり合いを
もっと教えて欲しくなりました。

ありがと。

559:名無しさん@ピンキー
07/09/14 04:51:47 YchKwLTX
>>555

アリス、かわいいよアリス(違)

GJ !!

560:名無しさん@ピンキー
07/09/14 09:04:26 bNIyIgg2
名状しがたい声って聞くとクトゥルフ的な何かかドラえもんのダミ声しか思い浮かばない

561:名無しさん@ピンキー
07/09/14 09:33:56 oi2DrqNh
普通に、動物とか鳥の声 >>名状しがたい声

イヌは『びょうびょう』もしくは『バウワウ』
鶏は『キッキラキ』

一応、聞き成しなんかされていても、違う
と思うモノは、違ってるようにしか聞こえません

562:名無しさん@ピンキー
07/09/14 10:57:22 btgHYKaa
ノイズとか
……完全に人間の声じゃないな

563:名無しさん@ピンキー
07/09/14 13:08:15 NBmkRVch
>>561

何故古典www

564:『彼女』の呼び声 第三話
07/09/14 22:52:44 BT196Iyq
「色々あるが……どれがいい?」

 いつものベンチに腰掛け、仁はトートバッグを開き、少女に尋ねる。
 少女はわずかに考えるような素振りの後、エビマヨネーズのおにぎりを指さした。

「ん、わかった」

 手早く包装を解き、ビニールを引き抜く。

「――♪」

 少女はそれを仁から受け取ると、嬉しそうにかぶりついた。
 単に菓子パンの包装ならなんとか破れるから菓子パンを選んでいただけで、おにぎりや弁当も好きらしい。

「そうだよな。片手じゃさすがにこの包装は破れないよな」

 ―普通に両手が使えても、巧く破けない奴もいるし。
 などと考えつつ、仁も適当にひとつを手に取り、包みを破る。

「ん、美味いな」

 やや塩味のきつい鮭は、しかし米に良く合う。
 コンビニのおにぎりなどと莫迦にしていたが、こうして味わってみるとなかなか侮れない。
 食べかけのおにぎりを手にそんなことを考えていると、

「――☆」

 横合いから彼女が食べかけのおにぎりを齧り取る。
 もきゅもきゅと咀嚼し、

「――♪」

 満足そうな声を上げた。

「あ、このっ。やったな!」

 お返しとばかりに仁も彼女の食べかけのおにぎりを狙うが、彼の口が届くより早く、おにぎりは少女の口の中へと消えた。
 が、仁は止まらない。

「――!?」

 口元へと運ばれるおにぎりの軌跡を追うように仁の体が動き、そのまま彼女の唇へと。
 かつんと前歯と前歯がぶつかり合う数度目のキスは、ほのかな塩味とエビマヨネーズの香り。

「…………」

 一瞬驚きに目を丸くした彼女は、しかしすぐに目を閉じ、口付けに応える。
 それはまだ初々しい、唇と唇と重ねるだけの軽いキスだ。
 ほんの一呼吸か二呼吸の間だけ。
 だが、唇が離れると、彼女は満ち足りた笑顔で声を上げる。

「――」

 相変わらずの名状し難い声だが、その奥に秘められた想いを、仁は感じた。
 だから、彼女の体をそっと抱き寄せ、耳元で囁く。

「ああ。俺も好きだよ」
「…………」

 月が二人を祝福するかのように、柔らかな光を投げかけていた。

565:『彼女』の呼び声 第三話 後書き
07/09/14 22:55:52 BT196Iyq
(´・ω・`) やあ。ようこそ無口(ry

うん、正直短くてすまんかった。
なんか、いちゃついてるだけであっという間に行数が埋まったので、切りの良いところで一旦投下。
次こそ話が進むはずです。

>>559
実はヒロインの名前考えてなかったので、それ採用しても良い?

566:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:25:54 aO88LIvK
早く投下しないと全国から無口っ娘が押し寄せるぞ!



それはそうとGj~!


ただ、やっぱりそれなりに書き溜めてから投下してもらえるほうが
悶えずに済むのでお願いします

567:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:39:13 LcYNesiU
>>565
バーボン吹いたwwいや、実際吹いたのは焼酎だけど

おにぎり奪うときに「手ェ使えよw」と思ったのは内緒。
でも口から行く仕草に萌えるのでアリなのです。アリスたんに萌えなのです。

568:名無しさん@ピンキー
07/09/15 08:20:43 dQdcu2HV
アリス万歳!!超GJ!!

なんて萌えのツボを突いてくるキャラなんだ・・・

ちょっくら会社辞めてコンビニでバイトして無口幽霊っ娘と運命の出会いをしてきます。

569:559
07/09/15 17:09:38 WAcwPULU
>>565
ドジソン ちゅ~たら、アリスでっしゃろ?

強度ロリコンになるけど、いいんですか?

570:名無しさん@ピンキー
07/09/17 10:13:40 R8SRpSTn
アリスと聞いてRAMZと歪みの国思い出した俺orz

571:名無しさん@ピンキー
07/09/17 10:17:55 bfJe2L2T
ager

572:230
07/09/17 20:47:03 hHNoayui
皆様、お久しぶりです。
以前、SSを投下させていただいた230という者です。
>>565氏が再臨されるまでの間、また投下させていただきたいのですが宜しいでしょうか?

というか、今回の作品自体が長い上にエロがR-15くらいしかないので、正直、投下するか
それとも斧とかにUPしたほうがいいのか、それとも作品の混合ないし皆様の混乱を避けるために
565氏が作品を完成させるまで行動を起こさないほうがいいのか迷っています。

皆様のご意見がいただければ幸いです。

573:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:14:50 C2Ew1DR1
スレに落としておk

574:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:17:21 APlVrMrq
全く問題ない
つーか投下してくださいお願いします

575:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:18:03 XNvovkdX
読み手を舐めんじゃないよ!

そのくらいの事、てめーの頭で整理するさ!
しょーもない事気にしないで、あんたはいいの書く事考えてりゃー良いんだよ!

さぁ、勢いついたかい?
どーんとやりな!

576:名無しさん@ピンキー
07/09/17 22:11:28 OftEdge2
>>575の内容を視線だけで訴える無口男らしい女の子を想像したら萌えた

577:565(´・ω・`)
07/09/17 22:35:18 yvEzPS/z
>>230
私は全然気にしないので、じゃんじゃん投下しちゃって下さい。
私なんて、R-15どころかエロシーンすらありませんしね。
いや、そのうちエロくなる予定ではあるのですがー(=ω=.;)
ちなみに、この話自体、>>230氏の影響受けまくりなのですよ(´・ω・`)
激しくワクテカさせていただきます。

あと、お待たせしてしまっているスレの皆様に、本編では未だ名無し少女なアリスからメッセージがあるそうです。

アリス「――♪」

578:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:44:09 RdOxLV2l
ごめんなさい、>>230さん、>>575です。
自分このスレ、新参者です。
230さんの作品、どうゆう訳か>>252から読んでました。
今回の>>572のレスを見て230を読ませてもらいました。

バケツの中の花火に感謝するところ、好きです。

場違いなレス書き込んで、ごめんなさい。

579:名無しさん@ピンキー
07/09/18 03:06:42 uqj75Cmd
俺っ娘無口娘(強引)


これと「・・・やろ・・・?」組み合わせたら大変なことに・・・

580:名無しさん@ピンキー
07/09/18 07:51:57 2qeGZMfF
>>579


そんなこと言うとじうご氏が書いてくるんじゃないか?w

あの時も書いてネタ投下してたしw

581:名無しさん@ピンキー
07/09/19 00:32:26 MAwNXpJj
いきなり友から

「無口は欠点じゃない、ステータスだ希少価値だ!!」
とかいう電波メールが来た


俺になんて返して欲しかったんだろうな……

582:名無しさん@ピンキー
07/09/19 00:47:59 +0tvbBo8
「……」って、無口メール返すべきだったんじゃね

583:名無しさん@ピンキー
07/09/19 00:57:29 okxG5bd0
……バカ
でもいいんじゃね?

584:名無しさん@ピンキー
07/09/19 01:03:15 +0tvbBo8
それじゃ>>581が友人から惚れられてしまうぜ
お幸せに( ・∀・)ノ

585:名無しさん@ピンキー
07/09/19 04:10:45 5k0jsSIV
ってか下手すりゃここの住人なんじゃねw?

586:名無しさん@ピンキー
07/09/19 09:05:00 cpZpptI8
恐らく友人は無口で普段から無口なことを周囲の人に陰口叩かれて心を許せる友人の>>581に愚痴ったんだよ

587:純情プレパラート(1/4)
07/09/19 15:53:23 PQQClnxQ
 満員電車に乗るとき私はドアの傍にいく。
 ドアの収納口近くに取り付けられた手摺りが私のお気に入り。
 都心に向かう電車は毎朝混んでいて、人見知りな私は周りの人と視線を合わせたくなく
て、ずっと窓の外を見てる。
 窓から見える田圃とか通過する踏み切りの音も好き。
 痴漢にあっても一駅我慢して、乗車口を変えればやり過ごせる。

 でもその日はドアの傍にいけなかった。
 人身事故のせいで人が多くて、ドアの傍に行こうとする私のわがままな動きは人の波に
押し流された。吊革にも掴まれない一番嫌いな場所。煙草くさい。俯いて前の人の鞄を見
てる。見慣れた鞄。うちの学校の人。
「かや……相原さんじゃん、おはよ」
「ぁ、相川くん……」
 相川くん。男子の出席番号一番の人。私は女子の一番。入学式から最初の席替えまで隣
の席だった人。人見知りの私に構ってくれる人。「かや」ってなんて言おうとしたんだろ。
かやこ? なんで相川くんが私を名前で呼ぶんだろ。学校で誰にも名前で呼ばれたことな
い。
「今日、人多いな」
 相川くんが私を見てる。私は相川くんのネクタイの結び目を見てる。いつも綺麗な形。
器用な人なんだ。返事しなきゃ。
「ぇ……あの、今日……人身事故で」
 だから電車が遅れてて、人が多くて。私はドアの傍行けなくて、そしたら相川くんがい
て。

588:純情プレパラート(2/4)
07/09/19 15:54:23 PQQClnxQ
「相原さんって駅までチャリ?」
 チャリ……自転車。
「ぇ……うん。自転車」
「今日チャリ乗ったらさ、ギッタンバッタンいうわけ」
「パンク?」
「そうそう。漕ぐとギッタンバッタンってなるじゃん。しょうがないから走ってきた」
 相川くんの顔を一瞬だけ見る。汗びっしょり。髪が汗で張り付いてる。タオル貸したほ
うがいいのかな。
「足、速い……」
 相川くん足速いよね。速いよねって言ったら偉そうかな。でも私が走ってきたらきっと
遅刻してる。
「そうでもないって。チャリ使わないと近道できるし」
 私は目を泳がせて相川くんを見る。右手で吊革に掴まって、左手で鞄。ちょっと大きい
口。唇が荒れてる。髪が張り付いてる。目が私を見てる。どこ見てるんだろう。他の子み
たいにブラウスの第二ボタンを開けてたら相川くんも見たりするのかな。
「近道?」
「ん、ああ、うちって駅から直線で近いんだけど、道路通ってないから」
「遠回り?」
「神社抜けてショートカット。階段あるからチャリ通れないんだよな。ていうか神主に怒
られそうだし」
「……うん、怒られそう」
「だよなー」


589:純情プレパラート(3/4)
07/09/19 15:55:12 PQQClnxQ
 電車が揺れますのでご注意ください。
 いつものアナウンス。
 相川くんと話すのに一生懸命で、車内放送を聞き流す私。
「相原さん、揺れ―」
 彼がぼーっとしてる私に注意しようとしたとき、がくんっ。揺れた。
 今日はドアの傍じゃないから掴まる場所ない。ヤダ倒れる。周りの人に迷惑かける。脇
から強い力でひっぱられて止まった。倒れてない。強い力が肩甲骨の辺りを鷲掴みにして
私を引き寄せる。制服が引き攣る。相川くんの手だ。電車が逆に揺れた。彼の胸に飛び込
む形になる。車内がざわめいて落ち着いた。
「ぇ、ぁ……」
「あ、ごめん、相原さん倒れそうだったから」
 お礼言わなきゃ。
「ぁ……うん……」
 ありがとう。言葉が出ない。私はいつもそう。
 背中がもぞもぞしてる。
 相川くんが私の後ろの人と私の背中の間から手を抜こうとしてる。でも車内は混みすぎ
るほど混んでて、それ以上したら私はともかく後ろの人が怒りそうだよ相川くん。手の動
きが止まった。
 彼の手は結局そこに留まることにしたらしい。ちょっと気まずい。相川くんは左手がお
かしい動きにならないように気を使ってくれてるけど、でもそこブラの紐だよ。恥ずかし
すぎる。
 それから駅に着くまで二人とも黙ってた。左手が私の背中をしっかり支えてくれて、ま
た電車が揺れて、吊革、相川くん、私が一塊で揺れて、身体が触れて、耳まで赤くなって
た私はずっと俯いて、早く到着して欲しかったけど、このままでいたかった。
 相川くんはその間ずっと私を見てた。と思う。

590:純情プレパラート(4/4)
07/09/19 15:55:56 PQQClnxQ
 相川くんに抱えられるようにして電車を降りて、左手が自然と離れた。彼に触れられて
いた場所が急に涼しくなった。気恥ずかしくて彼の後ろについてホームを歩いていく私。
 そのとき彼のシルエットが不自然なことに気づいた。
「ぁ、あの、相川くん、鞄」
 そうなのだ。私が倒れそうになったとき、彼は左手の鞄を放して支えてくれた。降りる
まで彼の左手はずっと私の背中にあったから、彼の鞄はまだ電車の中。乗客の足元で踏ま
れてるかもしれない。
「あ、ちょ、やばいって」
「どうしよう」
 二人とも慌てまくって、ホームを右往左往して―相川くんも私も電車の中に大事な物
を置き忘れるのは初めてだったのだ―駅員さんに聞いたら、忘れ物は三駅先の終点で車
内点検のときに回収されることを教えてくれた。
 終点まで取りに行くと私たちは完全に遅刻だ。私も一緒に行くと言うと相川くんは言っ
た。
「相原は先行っててよ。二人とも遅刻したら家に電話来そうだろ。先生に事情話しといて」
「でも……」
「ほんと気にしないでいいって。つか楽しかったし」
 そう言って、相川くんはにこにこしながら、左手をにぎにぎさせた。
 私が思わず笑ったら彼も笑いだした。

 結局、相川くんの鞄は無事に戻ってきた。少し汚れていたけれど、親切な人が網棚にあ
げてくれたおかげで、ひどく踏まれたりもしていなかったみたい。
 それからどちらともなく電車の時間と乗車口を合わせるようになって、私たちは一緒に
登校するようになった。

591:いじょ
07/09/19 15:59:01 PQQClnxQ
告白編セクロス編と続くかも

592:名無しさん@ピンキー
07/09/19 17:10:03 z5EFEicM
GJ。早く続きが気になるな。


……ところで“いじょ氏”と“230氏”って別人だよ、な?

593:名無しさん@ピンキー
07/09/19 18:31:53 81L8ocV0
>>570 歪みの国って何だ?

594:名無しさん@ピンキー
07/09/19 18:43:37 THzr9fM8
>>593
ぐぐれ

595:いじょ
07/09/19 22:00:29 PQQClnxQ
230氏の投下直前だったんですね。空気読めずにごめんなさい。

596:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:13:27 MAwNXpJj
>>595



そんなことは気にしない気にしない
先に投下したもの勝ちだから
あと、GJ!!展開が非常に気になるな

597:名無しさん@ピンキー
07/09/20 11:31:39 LfXcGHxf
これはGJ。無口娘の独白という感じがよく出てる。

598:230
07/09/20 18:18:19 1oOHll9i
申し訳御座いません。
結局、モタモタしている間に事態を混乱させてしまい、
スレをご覧の方々、いじょ氏にご迷惑をおかけしてしまいました。
重ねてお詫び申し上げます。
また貴重なご意見を下さった方々、真に有難う御座いました。

これより、投下させていただきます。
見苦しい真似を重ねますが、作品をご覧になる前に諸注意、ないし“いいわけ”をさせて下さい。

今作には『エロ』も『萌え』も多分、殆ど御座いません。
どうか、期待だけはされないようお願い申し上げます。
また、前回投下させていただいたSSより、相当、気持ち悪い話になってしまっています。
どうか、気分が悪くなりましたら即座に切って捨ててください。

それでも構わないという方は、片手間にでもご覧戴けますようお願い申し上げます。

それでは投下致します。

599:クレイジー兄妹
07/09/20 18:20:25 1oOHll9i
―俺はシスコンである。

少なくとも、周りの人間にはそう認識されている。
ソレも当然だ。
携帯の待ち受け画像が妹の写真で、PCの壁紙、スクリーンセーバーも妹で、さらに目覚まし時計の音声も妹の肉声だ。
朝は、自慢の目覚ましで起き、朝食と弁当を作った後、妹を起こす。
そして、朝食を一緒に済まし、一緒に一緒の学校に登校する。
学校でも暇を見つければ、妹の教室に入り浸り、授業を覗き見たり。
で放課後は、二人とも帰宅部なので無理やり時間を合わせ、一緒に家路に着く。
家では、勉強を教えるという名目で妹の部屋に押し入る。
その時間を堪能した後、夕食を作り、団欒を楽しむ。その後、二人で家事。
さすがに風呂に一緒に入ったり、覗いたりはしないが、風呂上りの妹を鑑賞するためにゲームに誘ったりする。
いい感じの時間になったら妹を寝かせ、後は自分の時間。
まぁ、課題をやっつけたり、家事の残りをしたり。
そんなこんなで深夜になり、本格的に寝入る前に携帯の妹の写真に挨拶をして、寝る。

な? シスコンだろ?
………………。
……おい、ちょっと待て。
引くな。
距離をとるな。
やめろ! やめてくれ!!
そんな白い目で俺のことを見ないでくれ!!

自覚はしているんだ。
自分がどういう人間か。
自覚してはいるんだ。
でも、しょうがないことでもある、と思いたいのも事実。
なにしろ妹は、昼ドラみたいな親の人間関係のもつれで生まれてきたんだ。
そんな親共の馬鹿げた関係を間近で見てきた俺は、幼い頃から妹のことを守らなくちゃならないと自分に強いてきた。
俺が小学生のとき、俺と妹の血が繋がっていないことを酔った父に告白されてからは特に。
でも、それだけじゃない。
親がどうしようもないから、血が繋がっていないから、というだけではない。
そう、物理的にも精神的にも守ってやらなきゃならないほど、妹は本当にか弱いヤツなんだ。
小さいときから病弱で、いつも床に臥せっていた妹。
俺は、そんな妹の世話をいい加減な親どもに任されていた。
妹が熱を出せば看病し、妹が倒れれば医者に連れて行き、妹がいじめられれば助け、妹が勉強について行けなくなったら教えた。
時が経ち、人並み程度に生活できるようになった今でも、華奢で、繊細なのには変わりない。
病弱な性質の妹は、ソレに準じるように性格もか弱かった。
押しが弱く、人見知りも激しく、自分の言いたいこともいえない無口な性格だ。
無口。
いや、無口な性格なのは確かだ。
でもそれだけじゃない。
妹は脳の言語野に後天的な障害がある。
そのせいで妹は、極めて端的なことを、極めてゆっくりとしか話せない。
なぜ、そんなことになったのか。
ま、簡潔に言えば下種な元母親の、愚劣な行為によってそうなってしまったのだが。
話すとイライラするし、長くもなるので割愛する。
妹はそんなハンディを抱えながら、それでも生活できている。
本人の努力の賜物だ。
そんな妹は、(俺としては悪いことに)外見がいい。
俺の贔屓目じゃなく、本当にかわいいのだ。
一度も染めたことのない黒髪は足に届こうかいうほど長く、伏目がちだが大きな瞳は一点の曇りもなく澄んでいる。
また小さい頃から肌が弱いため夏でも露出しない肌の色は抜けるように白い。
低めの身長と、痩身の体は、まるで動く人形のようだ。
そんな外見を備えておきながらも、控えめで、おしとやかな性格なのだ。
これでモテないわけがない。
もらったラブレターは山の量。受けた告白数知れず。
最低でも一ヶ月に一回は妹に取り成してくれ、と学校の男子共が俺に相談に来る。

600:クレイジー兄妹
07/09/20 18:22:25 1oOHll9i
え?
『それで妹さんは誰かと付き合ったことがあるんですか?』だって?
……無いな。一度も。
ん?
『それじゃあ今まで告白してきた人達はどうしたんですか?』って?
………………。
ハハハハハ。
うん。
……潰した。
俺が全部、握り潰した。
エヘ☆

……まぁ、とにかく、妹―エリは、俺が守らなくちゃならないんだ。
行き過ぎた行為かもしれない。
もはや出すぎた感情なのかもしれない。
それでも、俺は今まで、エリの傍にいた。
ソレが正解だと信じて。

……ん?
『それって、待ち受け画面とか目覚ましとか授業覗いたりする行為とは関係ないような』?
い、いいじゃないか!
ちょっと、こっちこい。
見てみろ、このエリの画像を。
……ほら、な。
かわいいだろぉ?
俺がコレほどまでの愛情を注ぐのも納得、だろ?
え? 『アナタの妹さんは確かにかわいいが、アナタの態度が気に食わない』?
いや、だから!!
引くな!
そんな目で俺の事を見るな! 見ないでくれ!!
……おい、ちょっと!! まだ話は終わってない!
行くな! ちょっと、オイ! 行かないでくれ!!
………………。

閑話休題。

でも、間違っていたのだろうか?
俺がエリの傍にいて、エリを守り続けてきたのは。
本当は、俺の提示し続けた答えは不正解だったのだろうか?
だから、天罰とでも言うのか?
もし、たとえそうであっても受け入れられない。
受け入れることなんてできるはずがないだろう?

―俺が死んでしまったなんて。

俺が死んでしまったことはとりあえず置いておく。
どうせいずれ、人は死ぬ。
それがたまたま早かっただけ。
そう考えれば、理不尽だが、納得できなくもない。
……いや、本当は納得なんかできない。できるはずがないだろう?
生きたい。まだやりたいこと、遣り残したことがあるんだ。
生きたい! 死にたくない!! 助かるんだったら、なんだってする!!
………………。
……でも、もうソレも叶わない。そして、叶わないことは何より自分が実感している。
死んでしまった、ということは、死んでしまったということ。
それ以外のなにものでもない。
だから、とりあえず棚の上においておく。納得したことにする。
……そういうことにしておく。
だが。

601:クレイジー兄妹
07/09/20 18:23:32 1oOHll9i
妹はどうなる?
今まで、俺が生涯をかけて守ってきた妹はこれからどうすればいいんだ?
エリはまだ学生なんだぞ?
今まで、俺に守られてきたのに、どうやってエリがやっていけるというんだ?
……『両親がいるんじゃないですか?』、だと?
ふん、両親なんて当てになるものか。
あいつらの自分勝手な行いにどれだけ俺たちが振り回されてきたことか。
俺たち兄妹はそのたびに苦い思いをして、身を切るような感覚を我慢して生きてきたんだ。
………………。
そうだ。これからは、そんな両親の振る舞いにも、俺はエリを守ってやれない。
それどころか、学校の連中、道ですれ違う他人、言い寄ってくる親戚。
それら全てにエリは怯えなければならないじゃないか。
どうしよう。
どうすればいいんだ。
俺は。
こんな中途半端な状態じゃ、エリを守ってやるどころか、自分の世話さえ満足にできやしないというのに。

………………?
お前今なんていった?
『アナタが生きていようと、死んでしまおうと、妹さんはやっていける』?
『むしろアナタがいないほうがいい』?
……馬鹿な。何を言ってるんだ。
エリは華奢なんだ、病弱なんだ。お人よしで、人見知りで、押しが弱いんだ。
そんなエリが、俺なしで生活できるなんて……。
………………。
……なんだと?
『妹さんが自分ひとりで生きていくためのチャンス』、だと?
エリが自立する、チャンス……?
………………。
いや、だが、しかし。
……たしかに、俺がエリの面倒を一生見ることは不可能だったろう。
いつか袂を分かつ。
そんなことは当然だ。覚悟だってしてきたし、できているつもりだ。
だが今は、それでも傍に居たかった。傍にいて守ってやりたかった。
嬉しいこと、辛いこと、いろんなこと一緒に分かち合いたかった。共有したかった。
確かに、いずれは俺が守る必要もなくなる。
それでも、今はいくらなんでも早すぎる。
エリが自立するのはまだまだ早すぎだ。
今のエリには俺が必要なんだ。絶対。



……どういうことだ?
『あなたが納得するまでの猶予を与えます』……?
それまで、世界に留まってもいい、だと?
つまり、エリが自立できるまで、自立できたと俺が納得するまで、この世界にいてもいい、ってことか?
いや、でも、俺は死んだんだろ?
どうやって……。
! ……まさか。

―俺はシスコンである。ついでに妹、エリを見守る幽霊でもある。

……。
こんなところか。
わかった、猶予は俺が納得するまで。
納得して、成仏するまでってことか。
……今のうちに言っておくが、俺はまだ信じていない。
まだまだ、エリには俺が必要なんだ。
だから、俺が納得するのは、エリが死ぬまで無理かもしれないぞ。
それでもいいんだな?

602:クレイジー兄妹
07/09/20 18:25:03 1oOHll9i
……。
よぉ~し。約束だ。
んじゃ、ちゃっちゃと、元の世界に戻してくれ。
エリが心配だからな。早くついていてやらないと。

俺の葬式の翌日、エリは元気に登校した。
………………。
え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?
なんで!?
なんで、なんで!?
っていうか、ショックで登校できないとかあるだろう!?
お兄ちゃんいないんだよ!? 死んじゃったんだよ!?
ほら、隣にいつもいるお兄ちゃんがいないだろう!?
まぁ、そりゃ幽霊としての俺はいるが……。
それにしても、一日寝込むとかもないのかよ!?
ちょっと、それはないだろう、エリ!?
俺はもうエリが学校辞めてしまうんじゃないかとまで危惧していたというのに!
それが、なんで、なんでなんでなんで。なんで!?
どういうことなんだ!?
理解できない。
お兄ちゃん、全く理解できないよ!!
………………。
……ま、まぁ、元気なのはいいことだ。
いいことだと思い込むことにする。
それに、それでも、エリは寝過ごしかけたし、弁当だってコンビニのおにぎりだ。
ほ、ほら、俺がいないとどうにもならないじゃないか。
ね? 俺は必要な存在だったんだよ。
そんなことを必死で考えながら、規則正しく歩くエリの後ろを行く。
宙に浮かび、空を飛ぶこともできるのだが、まだ慣れていないので歩くしかない。
エリの後を歩きながら、それでも混乱からなかなか立ち直れないでいると、俺の後ろから誰かが駆けてきた。
ソイツは俺をすり抜け、エリの隣で足を止めると、足を止め振り向いたエリに話しかけた。
「……おはよう、水城」
ソイツは兄が死んだばかりのエリに気を使ったのか、トーンを落とした声でエリに挨拶した(ちなみに“水城(みずき)”とは俺とエリの苗字だ)。
エリは少し微笑むと、挨拶代わりに頭を下げた。
ソイツも、エリの事情を知っているのでソレが無作法だと怒ることはない。
前を向き、再び歩き出したエリの隣を同じペースでソイツも歩き出す。
俺はソイツのことを知っている。
たしか、『武田……なんとか』とかいう名前のエリの同級生でクラスメイトだ。
家から学校への距離は遠いのだが、通学路が一緒なので朝によく接敵する。
“接敵”。
そう接敵だ。
俺の勘だが、コイツはエリに好意を抱いている。
いや、まちがいなくエリに惚れているな。
そんなヤツと接触することを、“接敵”といわずになんと言う?
……まぁ、いい。
沈黙のまま歩き続ける二人。
武田は言いにくそうに口を開いた。
「お兄さんのこと……なんていうか、………その、残念、だったな」
ん?
なかなかいい事を言うじゃないか。
ほら、エリ。残念だっただろ? 残念だった、と言うんだ。涙なんかを流すとなお良い。
……ってぇ! 妹が悲しむかもしれないというのに、喜んでどうする! 俺!! 俺の馬鹿ぁ!!
しかし、エリは武田の発言に、静かに首を振る。
「………………」
「え? 『今も見守ってくれてるから寂しくない』?」
………え?
えぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?
何ソレ!? ねぇ、何、ソレ!?
確かに今も見守ってるけど、見守ってるけど……!

603:クレイジー兄妹
07/09/20 18:26:39 1oOHll9i
その言い草じゃ、もう俺、思い出の人になってるじゃん!
遠い星空から見守る、『気のいいやつだった』的ポジションじゃん!!
早い! 早すぎるって!! エリ!!
せめて一ヶ月はもってくれ!
お兄ちゃんの名前を聞いただけで涙を流す、とかさぁ!
そういう、なんていうの? あの、あれだよ。
とにかく、思い出にするの早すぎだから! ね? エリちゃん!!
混乱する俺をよそに、武田も意外だったのか目を見開いている。
「あ、……そう、なんだ」
エリは首をかしげ、不思議そうに武田を見る。
「いや、ていうか、なんて言うのかな。ほら、水城ってよくお兄さんと一緒にいたからさ。もっとショック受けてるのかと思った」
武田の言葉を聞いて、少しエリの顔が曇る。
ソレを見て、武田は言う。
「あぁ、ゴメン。思い出させて」
すまなそうな武田に、エリは静かに首を振る。
「………………」
「『まだ傍にいてくれているから大丈夫』? ……。そう、か」
あう!?
確かに傍にはいるけどさぁ! いるけどさぁ!!
いないじゃん! 実際問題、いないじゃん!! 見えてないじゃん!!
ていうか、ちょっと、ホント、立ち直り早くね!?
エリってこんなに強い娘だったっけかなぁ。
『か弱い子』っていうの、俺の勘違い~……?
いや、いやいや。勘違いなはずはない。エリはか弱いことは間違い、ない、はず。
でも。あれ~? おかしいなぁ……。
だったらなんでぇ……?
そんなことを言っている間に、二人は学校につき、教室へ向かう生徒の群れの中に混じっていった。

教室でのエリはやっぱり落ち着いていた。
席に着いたエリにクラスメイトたちが次々に激励の言葉をかける。
俺は少し離れた位置でその光景を見守る。
……ふ~ん、そうか。
俺の知らないところでエリは友達に、クラスメイトに恵まれていたのか。
ただ授業を覗いていただけではわからなかったクラスメイトたちの優しさに俺は初めて気づいた。
うんうん。そうか。そうだったのか。
今、エリの机の前で盛んにエリに話しかけている女子がいる。
この娘は確か……。
『ユウキ』とかいう娘だったはずだ。
ソレが苗字だか、名前だかは忘れたが、確かそんな名前だ。
彼女は明るい声で、エリのことを元気付けようとしてくれている。
よかったよかった。そんな友達もいたんだな。
俺が感慨深げに頷いていると、始業のベルが鳴りホームルームの始まりを告げる。
少女ユウキもエリの席から離れ、自分の机についた。
ふと、エリが携帯を覗く。
そして、そのまま表情が固まる。
俺は異変に気づき、エリの席に近づくと携帯の画面を悪いと思いつつ覗く。
そこには。

『エリ。今日、食べたいものはあるか?』

携帯の液晶には簡素な文章が表示されている。
それは俺がエリに送ったメールだった。
その日は珍しくエリに用事があり、夕食の用意がある俺は仕方なく一人で帰っていた。
途中買い物によるために商店街に入り、そこでメールを打った。
できるだけ、エリの希望に沿ったメニューを出すために。
そして、その直後。

俺は死んだ。



604:クレイジー兄妹
07/09/20 18:27:43 1oOHll9i
その後、俺が死んだことに関する緊急連絡は直ぐにエリに届いた。
ソレからは怒涛の流れだった。
多分、そんな中でエリは携帯メールを見る暇、余裕なんてなかったのだろう。
ほったらかしにされたメールは、そして、今、開かれてしまった。

教師がホームルームのために教室に入ってくる。
すぐさま、教師はエリの異変に気づく。
「おい、大丈夫か? 水城。顔が真っ青だぞ」
エリはその言葉に反応しない。
人形のように固まった表情のまま、涙が大量に零れ落ちる。
「お、おい。どうしたんだ?」
エリの息遣いが荒くなり、苦痛に耐えるように体を折る。
涙をボロボロと零しながら、苦しげに喘ぐ。
異変に気づいた教師はすぐさま保健委員に保健室にエリを連れて行くようにする。
当然、俺もソレについていく。
ふと振り向いた俺の視界には、教室の中で、呆然となった教師と生徒たちが、出て行くエリの背中を眺めているのが見えた。

「(っていうか、保健委員ってお前かよ……)」
ジト目でソイツを見る。
ソイツは過呼吸状態のエリにビニール袋を渡し、それで口を押さえるように指示した。
保健室の中には、俺とエリ、そしてソイツしかいない。
どうやら、保険医は外出しているようだ。……ふん、頼りになるな。
ベッドに座り込んだエリは未だに苦しそうにしゃくりあげている。
俺はそんなエリを眺めながら、心配する。
そして同時に、不謹慎ながらも安心した。
「(やっぱりエリには俺の死がショックなんだな)」
本心では相当傷ついていたのを必死に押し隠し、普段通りに、気丈に振舞っていたのだろうか。
そんなエリを俺は愛おしく思う。
「(ああ! 抱きしめて慰めたい! 昔のように頭を撫でてやりたい! 安心させるために声をかけたい!!)」
衝動は膨らみ、今すぐに行動に移したい!
だが、幽霊の俺にはそんなことはできない。
……そんなことは解っている。
だから、心底残念だが、試すことさえしなかった。
今、この場でエリを慰めることができるのは、小憎らしいことに保健委員のヤツしかいない。
ソイツは心配そうにエリのことを見守る。
沈黙の中、しばらくそのままの状態が続き、ようやくエリの状態が落ち着いてくる。
「(気の利かないヤツだな! 飲み物の一つくらいもってこい!)」
ソイツを睨みつける俺。当然、そんな意見は届かない。
「………………」
歯がゆい思いをしていると、エリは真っ赤な顔を伏せながら、たどたどしくソイツに礼を言った。
気の利かない憎っくきソイツ―武田は少しだけ微笑み、しかし、首を横に振る。
「僕のせいだろ? 水城がそんな風になったのは」
ん?
何言ってるんだ、コイツは。
エリも意外だったらしく、首をかしげる。
それに構わず、武田は続ける。
「僕が朝、余計なことを言ったから、思い出してしまったんだろ?」
そういうと、武田は勢いよく頭を下げる。
「本当、ゴメン。無神経なことを言ってしまって。……思い出させてゴメン」
エリは唐突な武田の行動に動揺を隠せず、オロオロとしながら首を振る。
「(ふ~ん……)」
武田の言っていることは間違いなく勘違いだが……。
「(自分が謝るべきと思ったときには、ちゃんと頭を下げられるヤツだったんだな)」
俺は少し感心した。
今までは、妹に近づくただの敵だと思っていたが、どうやら見るべきところはあったようだ。
「(っていうか、死んでから妹に関係する人に目を向けられるようになるとは……。
ずいぶん俺は近視眼的な人間だったんだな……)」
そう自嘲する。
覗き魔のような、否、まさに覗き魔的な行為をして、ようやく人のことを正面から捉えられるとは……。
馬鹿げた話もあったものだ。当然、馬鹿なのは俺なのだが。

605:クレイジー兄妹
07/09/20 18:28:38 1oOHll9i
そんな俺を無視して、エリと武田の会話は展開していく。
「………………」
エリは先ほどの武田の発言をやんわりと否定した。
「? 僕のせいじゃない?」
武田は戸惑ったように顔を上げ、真っ直ぐにエリを見る。
一瞬、二人の視線が絡まる。が、直ぐにエリは視線を落とした。
「僕のせいじゃないとしたら、どうして……?」
エリは少し顔をゆがめ、持っていた携帯の画面を武田に見えるように指し示す。
「見ても、いいの?」
頷くエリ。
武田は恐る恐る携帯の画面を覗く。
そこには簡素なメールが表示されているはずだ。
「これってもしかして……。お兄さんからの、だね」
「………………」
頷くエリ。そして、告げる。
「え? これが最後のメール? ……そう、なんだ」
武田は画面から眼を離し、近くの椅子に腰掛ける。
エリは携帯を一瞬だけ覗くと、静かに折りたたんだ。
そのまま保健室に沈黙がおりる。
「………………」
「そうだね。いつも、水城とお兄さん一緒に居たもんな。寂しくってもしょうがないって」
「(そうだよ、そうそう! いつも一緒に居たからな! 寂しいのは当然だ!)」
………………。
……ああ。俺って本当、ダメな兄貴、だな……。
妹がこんなにも落ち込んでいるっていうのに……。喜んでしまうなんて!!
でも、しょうがない!
だって、俺が死んだばっかりだというのに、『それでも気にせず元気な妹』なんて見たくない!
いや、『元気な妹』はいつだって見たいのだが、それでも見たくない特殊な状況はある!
ソレが今だ!!
「(許せ! エリ! こんな駄目なお兄ちゃんだけれど、それでも俺はエリの味方だぞ!!)」
妙にテンションが上がってきた俺。
しかし、保健室の雰囲気は暗いままだ(当然なことに)。
「………………」
エリは申し訳なさそうに、武田に頭を下げた。
「いや、迷惑なんかじゃない。水城が落ち着くまでここにいるよ」
その発言に驚いたらしいエリは、しかし、武田を安心させるためだろう、微笑んだ。
「………………」
教室にもう帰ってもいいと武田に告げる。
「そういうわけにはいかないよ。……それとも、一人になりたい?」
エリはためらいがちに頷く。
そりゃそうだ。
こんなときは、一人になりたいに決まっている。
「そう、なんだ」
「………………」
再び頭を下げるエリ。
「……なんで、水城が謝るのさ。水城はぜんぜん悪くないだろ?」
「………………」
「………………」
再び、二人は黙り込む。
……ん~?
おいおい、なんだよ。この青春の一ページみたいな場面は。
っていうか、一人になりたいって言ってんだから、さっさと退場しろよ武田。
………………。
ん? おい武田。なんだ、その目。
その決意に満ち満ちた目は。
武田は大きく深呼吸すると、緊張気味に言った。
「僕じゃ、ダメかな?」
「?」

606:クレイジー兄妹
07/09/20 18:29:36 1oOHll9i
な、なんだ。何言い出してんだコイツ。
「僕じゃ、お兄さんの代わりにならないかな?」
「……………?」
ま、まさかコイツ……!
「僕が、お兄さんの代わりに、ずっと水城の傍にいたい、ってことなんだけど」
「…………??」
“そういう行為”は俺が事前に全部潰してきたので、エリは“そういう行為”に特にニブイ。
だから、まだ武田が何を言いたいのか良くわかっていない。
言いたい事がうまく伝わっていないことを察した武田は、絞り出すような声で、言う。
「つまり、好きです。俺と付き合ってください」
「!」
や、ややややっぱりかぁ!?
こ、こここ告白しおったぁぁ!!
おいおいおいおいおい! 何考えてんだ、お前!?
肉親の葬式の翌日に告白する馬鹿が何処にいる!? 否、此処にいる!!
っていうか、コレが若さなのか!? 若さというものなのか!? 武田君!?
ホラホラホラ見ろ。見てみるがいい。武田め。
エリ、驚いてるじゃないか。呆気にとられてるじゃないか。
ほら、顔を赤くしてないで相手の顔を見てみろ! 武田!!
お前と同じくらい赤いエリの顔を……、

ん? 赤い顔?

って、ええぇ!?
何赤くなってんのさ! エリ!! エリちゃん!?
俺の混乱をよそに武田は早口で言う。
「へ、返事はいつでもいいから。っていうか待ってる。いつまでも待ってるから。だから、そのなんていうか。
僕、支えになりたいんだ。水城の。だから、なんていうか、その! つまり、じゃ、じゃあね」
そしてそのまま、逃げるように武田は保健室から出て行った。
な、なんだったんだ、全く……。
少し見直したと思ったら、直ぐコレだ。
やはりエリ以外の人間は信用ならんな。
「(な、エリ?)」
俺はエリのいるベッドを見やる。
エリは放心したように、武田の出て行った扉を見つめ続けている。
そして、ポツリと呟いた。
「………………」
……?
ん? どういう意味だ? 『また、会えるかもね、お兄ちゃん』?
? 何を言っているんだ?
意味が解らずエリの顔を見つめる俺。
エリは告白された少女が浮かべるには似つかわしくない、嫣然とした笑みを浮かべていた。

607:230
07/09/20 18:30:53 1oOHll9i
とりあえず、今回は以上です。
お目汚しですが、まだ続きます。
よろしくお願い申し上げます。

608:名無しさん@ピンキー
07/09/20 18:33:38 F9vKbN28
おk、いいシスコン兄貴だ
文章も軽快にテンポよく読めました

うん、なにがいいたいかっていうと非常にGJ!!

609:名無しさん@ピンキー
07/09/20 21:13:43 GdDPhnNT
GJ!重い話のはずなのに軽快なテンポがそれを感じさせないですね。
兄貴が成仏しそうにないwいやわかんないけど

610:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:47:36 it4WFlk6
gj!
こんな兄貴なら欲しいな。三人くらい。

611:名無しさん@ピンキー
07/09/21 17:16:54 bWMJBY9v
こんな兄貴が三人もいたら何にも出来ない人間になりそうだ

612:名無しさん@ピンキー
07/09/22 14:04:47 XZTc/krh
こんな性格の義姉がいたら……うん、いいね

ついでに性格に無口を追加しとけば完璧

613:名無しさん@ピンキー
07/09/23 05:58:49 FKlus30c
良い意味でシスコンのウザさが出てたなGJ

614:名無しさん@ピンキー
07/09/23 07:07:57 dbm6zqBe
シスコン兄・・・だめだこいつ、早くなんとかしないと!

GJ!!!

615:名無しさん@ピンキー
07/09/23 18:09:09 5eywwf6G
>>614
残念だが、処置なしだ
ほら、バカは死んでも直らない、っていうだろ?

まあなにかっつうとgj!

616:230
07/09/24 11:57:54 Lcpy1mzV
これより、投下させていただきます。
前回より長い上に、大したエロも御座いません。
真に申し訳御座いません。
それでも構わないと言う方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

617:クレイジー兄妹
07/09/24 11:59:13 Lcpy1mzV
数週間が瞬く間に過ぎた。
その間、俺としては大層面白くない展開が続いた。
なんというか、エリと武田が付き合いだしたのだ。
なんとまぁ、二人は初々しくも、健全に距離をつめていく。
…………ケッ。
なんだよ、なんだよ。
何が『相思相愛』だっつうの。馬鹿馬鹿しい。
何が『お似合いのカップル』だっつうの。下らない。
……ああ、たしかにお似合いのカップルさ。
エリは前述したようにかわいいし、認めたくないことだが武田の外見も悪くない。
ふん、たしかに釣り合ってはいるさ。
っていうかさぁ。
もう俺、成仏してもいいんじゃね。
エリは、あのメール以降、俺のことで泣き出すようなことはなくなったし、家事だってうまくやってる。
馬鹿な両親共も干渉してこないし、学校での生活も順風満帆とは行かないが、限りなくソレに近い。
周囲との友人関係も良好で、むしろ俺という邪魔者がいない分コミュニケーションは円滑に行われている(俺としては複雑だが)。
それに、憎たらしいことに『お似合いのカレシ』もいるしな。
……でも、俺はまだ納得できていない、のか。
俺が納得したら迎えに来るはずのアイツも来ないしな。
そんなことを考えているうちに、エリは武田を家に招待した。
ふん。……『勉強会』、ねぇ。
エリ、油断しすぎだぞ。
男はみんな狼なんだ。
武田だって間違いない、一匹の狼だ。
それを自ら招き入れるなんて。
……自殺行為も甚だしいわ!! 
くそぉ、武田めぇ……!! 
何かしたらただじゃおかない。呪い殺してやる……!!

俺が呪詛の言葉を武田に投げかけているうちに、二人は家に着き、エリの部屋に到着した。
二人はぎこちなく勉強を開始した。
ホラ見ろ、武田のこの飢えた獣の目を。
エリ! 気づけ! そして、コイツを部屋から追放するのだ!
エリは動かしていた手を止め、武田の顔をうかがい、そして言う。

「………………」

ん? な、何て? エリ?
「『しないんですか?』って何を……?」
武田は戸惑っている。俺も戸惑った。
……エ、エリ? エリちゃん?
な、なななな何を言っているんだ?
おいおいおいおいおい。な、何を赤くなってるんだよ、エリぃ!
確認するように武田が呟く。
「……いいの?」
よくねぇよ!! ふざけんなよ、お前!!
いや、そりゃ、二人が家に来た段階で何もしないという選択肢はないし、若い二人が密室で、
勉強しかしないなんていうのは、むしろその方が不健全かもしれんが……。
っておい、コラ!! 何見つめ合ってんだ!!
あ! 武田! 何近づいてんだ!
エ、エリの肩に手を乗せるな!!
エリも!! 素直に目を閉じるな!!
オイオイオイオイオイオイ!! マズイ! マズイってぇ!!
このままじゃ、このままじゃ、このままじゃぁ!!
くっそぉ~!! ええい、こうなれば!!
かくなるうえは!!
そして、俺の意識が遠くなる。

618:クレイジー兄妹
07/09/24 11:59:58 Lcpy1mzV
ふと、唇に暖かく、柔らかい感触。
ん? もしかして……。
俺は覚悟を決めて目を開ける。
目の前には、エリの顔がどアップで映し出されている。
俺は驚き、顔を離す。
………………。
おいおいおいおぉぉい!!
成功しちまってるよ!! 憑依が!! 乗り移っちまってるよ、武田に!!
「………………」
エリは目を開け、もの問いたげに武田を―俺を見つめている。
「いや、いやいやいやいや! 『どうしたんですか』って、そりゃ!!」
っていうか、……あ! しまった!!
俺、妹にキスしちまったんじゃないか!!
義理の兄妹とはいえ、仮初の体とはいえ!!
い、いいいいい妹にキスしちまったよぉ!!
どうしよ、どうしよ、どうしよぉ!?
マジ、マズいって!!
いくら俺がシスコンだからって、いくらなんでもマズすぎる!!
俺は混乱した頭で、ふとエリの顔を覗き見る。
エリは―。
「……え?」
―涙を一筋、零していた。
俺は呆気にとられ、頭が真っ白になる。
どういうことだ?
「……なんで、泣いてるんだよ。エリ?」
自分の体が今、武田であるということも忘れ、口調も変えず尋ねる俺。
「………………」
「……え? 『お兄ちゃんを感じたから』って……。えぇぇぇ!?」
何言ってんだ!? エリは!?
バレた!?
いやいやいや、バレるはずがない! でも、どういうこと!?
感じた、っていうかキ、キスして俺の事思い出した、みたいな?
いやいやいやいやいやいや。
俺、生きている間に、キ、キスとかそういうこと一度でもしたか!?
……いや! してない! 全然覚えがない!
っていうか、そんなことするわけないだろう、お兄ちゃんが!! 誤解されるようなこと言うのやめなさい!!
っていうか、おいエリ!! 何で脱ぎだしてんだよ、お前は!!
ブ、ブブブ、ブラジャーが見えてるよ!
「ふ、服を、どうして、なして脱ぐんかなぁ……? エ、エリ?」
「………………」
「いや、『するんじゃないですか?』って。え、っと……」
いつからそんな、は、はしたない娘になっちゃったんだ……!!
お兄ちゃん……、お兄ちゃん悲しい!!
「………………」
「『私じゃダメですか?』って……。え、えぇぇぇ……?」
そ、そんな目で見つめるな、エリ……!
「………………」
「『私の初めて、もらってください』ですってぇ……?」
!!
か、かわいい……!! かわいすぎる……!!
………………。
…………もう、いいや……。
俺は悩むことを放棄し、エリを抱き寄せた。

619:クレイジー兄妹
07/09/24 12:01:04 Lcpy1mzV
目の前に服を全て脱ぎ、ベッドに座ったエリがいる。
俺もすでに服を脱いでおり、全身真っ裸でエリの前で同じく座っている。
……っていうか、武田。すまん。ホント、すまん。もうしばらくお前の体借りるぞ。
「………………」
「いや、なんでもない。じゃ、じゃあ、始めようか」
俺はエリの顔に震える唇を寄せると、優しくキスをした。
……はぁ、最低だな、俺。……ハハ。何か笑えて来た。
そして、とうとう、前人未到のエリの胸に触れる。
柔らかい。
それに、物凄くスベスベしてる。
俺は刺激を与えすぎないように、できるだけ優しく触る。
俺の掌ほどの大きさの乳房は、俺の手の感触に粟立つ。
「……………ん」
ピクリとエリが反応する。俺はそれにビビる。
「わ、悪い。……痛かったりするか?」
エリは首を振った。
「………………」
「『もっと強くしてもいい?』。 わ、わかった」
緊張による汗でべたつく両手を使い、俺はエリの胸を揉む。
……うん、物凄く柔らかい。
俺の掌の動きに合わせ、エリの胸乳は形を柔軟に変える。
「ん……んぅ」
エリが声をかすかに漏らす。
……っていうか、これでいいのだろうか?
俺だって経験がないんだから、エロ本とかの知識しかない。
でも、どこまでも指が埋まっていく胸には、どう対処すればいいんだろう。
なるべく単調にならないように変化をつけて指を動かす。
ん? なんだか先端が硬くなってきたような。
俺は半ば無意識にその先端を摘む。
「! ……んん……!」
再び、エリの体が鋭い反応を示す。
「おい! だ、大丈夫か? エリ?」
「………………」
「だ、大丈夫……? そ、そうか」
なるほど、本当に敏感なんだな。ち、乳首は。
ふぅ~ん。
でも、ここを攻めない手はない、か?
俺は乳房を弄ぶ指に、先端を苛める動作を加えてみる。
「ふ、……んん! あ、あぅ」
俺の指が突起を弄くるたびにエリは甘い声を漏らす。
まだ柔らかかった乳首は、触り始めると途端に硬さを増した。
俺は調子に乗って乳首ばかりを苛める。
「は、はぅ……!! や、やぁ!」
エリの顔は赤みを増し、手を触れている部分が暖まってくる。
次のステップとして、俺は自然と頭を下げ、右の突起を口に含んだ。
「!! んん……!」
エリの肩が大きく動く。
でも、俺はもういちいちエリの反応に構わず、夢中で乳首を貪った。
「ん……、は、はぅぅ……!」
舌でまさぐり、歯で挟み、口で吸引する。
汗ばんできたエリの胸は少ししょっぱかった。
唾液でエリの右胸はベタベタになり、俺の口の周りも濡れる。
俺は右の乳房を苛め倒すと、今度は左の胸を口に含む。
右と同じ目にあわせながら、口に含んでいないほうも揉み続ける。

そんなことをしているうちに、俺は気づく。
気づいてしまう。
俺の頬が濡れていることを。

俺は、いつのまにか、泣いていた。

620:クレイジー兄妹
07/09/24 12:02:56 Lcpy1mzV

乳房から口を離し、腕で顔を隠す。
「………………」
エリが聞いてくる。
『私じゃ興奮しませんか?』と。
エリは俺の頭を抱き寄せる。
俺は、グスグスと泣きながら、エリの胸に顔をうずめる。

私じゃ興奮しませんか、だって?
………………。

……しないよ、興奮。

俺の(正確に言うと俺のじゃないが)ペニスは最初から勃っていない。
勃つはずがない。
俺が今抱いているのは、エリ―妹なんだぞ。
小さいときからずっと守ってきた、大事にしてきた、かけがえのない妹なんだ。
それがどうして、性的対象に見える?
酷い話だ。
本当に酷い話だ。
俺は大声でなき、エリはますます強く俺を抱きしめた。

結局、俺のペニスは勃つことなく、まるで幕切れのように俺の意識は暗くなった。

「………………」
「じゃ、じゃあな。また明日」
俺は玄関から出て行く武田をエリと一緒に見送った。
どうやら、武田にもおぼろげに記憶があるらしい。
でも、何で泣いていたのかなんて、多分永久に分からないままだろう。
そして、今、部屋の中には俺とエリがいるだけだ。
当然エリはもう服を着ており、ベッドに腰掛け、ぼんやりとしている。
まぁ、当然だろうな。あんなことがあったんだ。
意味が分からないだろうなぁ。
なにしろ、彼氏が行為の最中突然泣き出したんだから。
しかも、相手はそのことをあまり覚えてないという。
ま、俺が始めての相手じゃなくてよかったじゃないか。
初めての相手が『憑依した兄』だなんて酷すぎる。
それでも俺はどうにも申し訳なくて、俺は幽霊になって初めてエリに声をかけた。
……かけずにはいられなかった。
[悪かったな、エリ。お前の貞操を乱しかけて。本当にすまなかった]
ふん。
聞こえるわけがない。
ソレでも俺は―。
「………………」
エリが呟いた。

―え?

今、確かに、俺に答えなかったか?
『どうして、私の初めて、もらってくれなかったの? ……お兄ちゃん』と。
[聞こえてる、のか? エリ?]
エリは、俺の目を見て、確かに頷いた。

621:クレイジー兄妹
07/09/24 12:05:11 Lcpy1mzV
[いつから、気づいてたんだ……?]
はじめからだよ。お兄ちゃん。
お兄ちゃんが死んで、私のこと見守ってくれだしてから。
だから、だよ?
お兄ちゃんはいなくなってなんかないって解ってたから。
だから、お葬式の後もすぐに立ち直れたんだよ?
[どうして、見えないフリなんか……]
見えてなかったからだよ、最初は。本当に見えたのはつい最近。
でも、いるのはわかった。ずっと傍にいてくれたんだよね。
[……じゃあ、どうして葬式の次の日、俺の最後のメールを見て泣き出したりしたんだ?]
だって、もう、見たり、話したりできないって思ったら……。
いくら見守ってくれてるっていっても、やっぱり寂しいよ。
でも、私、これでもがんばったんだよ。
本当はいつもお兄ちゃんに話しかけたかった。笑いかけたかった。一緒におしゃべりしたかった。
でも、そんなことしたら、他の人には見えてないお兄ちゃんに話しかけたりしたら、
きっと病院に連れて行かれちゃう。閉じ込められちゃう。
お兄ちゃんに心配かけさせちゃう。お兄ちゃんを心配させる嫌な子になっちゃう。
それがいやだったの。
[何故、今になって?]
だって、初めてお兄ちゃんが話しかけてくれたから。
……それに、お兄ちゃんが私のこと、……奪ってくれなかったから。
[………………]
ねぇ、どうして?
どうして、私のこと抱いてくれなかったの?
どうしてどうしてどうしてどうしてどうして、どうして?
[お前は、俺の妹だ。だから―]
わからない、わからないよ? お兄ちゃん。
だって、お兄ちゃん、途中までしてくれたじゃない。
[ああ、だが、しかし……]
これじゃ、なんのためにこんなことしたのか解らないよ。
[? ……どういうことだ?]
武田君と付き合ったり、部屋に招いたりしたのは、全部、お兄ちゃんのためなんだよ?
[……。まさか]
武田君はいい人だよ。いい人だよね?
でもそれだけ。
お兄ちゃんの代わりには、なれません。
[……武田のこと、利用したのか?]
利用じゃないよ、活用だよ。
それに武田君のほうから告白してきたんだから、お互い協力関係みたいなものじゃない?
それにしても、途中まではうまくいったのにね。
お兄ちゃん、私と武田君が、『そういう関係』になりかけたらきっと我慢できずに、私の前に姿を見せてくれる、私に触れてくれる。
私の事奪ってくれる。……私はそう信じてたのに。
お兄ちゃんのせいで計画が崩れました。お兄ちゃんのせいで壊れました。お兄ちゃんのせいで狂いました。
でも、勘違いしないでね。
そのために、そのためだけに好きでもない人とお付き合いしたんじゃないよ。
武田君のことはスキ。
たぶん、今生きている人達の中では最も大切な人の部類。
でもね、でもねでもね、でもねでもねでもね。
でもね、お兄ちゃんが一番なの。
お兄ちゃん好きなの。お兄ちゃんがいいの。お兄ちゃんじゃなきゃダメなの。
[……エリ?]
お兄ちゃん以外要らないの。お兄ちゃんさえいればいいの。お兄ちゃんだけでいいの。
お兄ちゃんさえ、いればいい。
だから、もういいの。
これからはお兄ちゃんと二人で生きていくの。
学校も辞める。家にずっといる。お兄ちゃんと一緒に。
他の物なんて、他の人なんて、他の世界なんて、もう要らない。
アハハ。最初からこうすればよかったのかもね。
でも、どうしても私の初めてをもらって欲しかったから。お兄ちゃんに。
だから、策を弄しました。

622:クレイジー兄妹
07/09/24 12:06:13 Lcpy1mzV
でもでも、もうそんなことはいい。もっともっと、傍にお兄ちゃんがいればいい。
お兄ちゃんさえ、いればいい。
どうして気づかなかったんだろう。こんな簡単なことなのにね? 単純すぎて気づかなかったのかな?
お兄ちゃんさえ、いればいい。
ね? だから傍にいてね?
ずっと、ずっと私の事、離さないでね? お兄ちゃん。
[エリ……]
いなくなったりしないよね? 私の事、見捨てないよね?
いい子にするから。いい子になるから。なんでもするから。なんだってするから。
だから。
お兄ちゃん、私のこと見捨てたりしないでね。
いつまでも、いつまでも、いつまでもいつまでもいつまでもいつまでも。
ずっと、ずぅっと私の隣にいてください。

エリの言葉を聞いて俺の意識が遠のく。
これが俺のしてきたことなのか?
俺がエリを守ってきた結果が、コレなのか?
………………。
こんなの、誰に言われなくても不正解じゃないか。
俺は妹を守るという大義名分を掲げ、妹に依存し、妹を依存させていたというのか……?
依存。まさにそれじゃないか。
それで『妹が自立するまで見守る』だと……?
馬鹿だ。俺は本当に大馬鹿だ。
結果的に俺は妹を追い詰め、依存を深くしただけじゃないか。
もしかしたら。
妹は壊れていたのかもしれない。
俺が死ぬ以前から。あるいは俺が死んだから。
……いや。そんなことはない。まだ大丈夫なはずだ。
まだ修正は可能なはずだ。
そう信じるしかない。
………………。
だから。
俺は解決方法がわかってしまった。
依存をなくし、自立させるための、手段。
間違いなく卑怯で、どうしようもなく姑息で、たった一つ、唯一の手段。
それは―エリの依存対象の消失。
……俺の消失。

[よしわかった。お兄ちゃん、傍にいる。ずっとエリの傍にいるぞ]
ホント? 本当に? ずっと、ずっと傍にいてくれるの? 私の傍に?
[ただし、もうエリの目には俺は見えない。エリの耳には俺は聞こえない]
………………。
……え?
[もう、エリは俺のことに気づくことはない]
そんな。そんなそんなそんな。
そんなのは傍にいるって言わないよ?
どうして? そんなことを言うのかな? 言うのかな??
[でも、それでも俺はエリの傍にいる。見えなくても聞こえなくても、俺はエリの隣にいる]
そんなのって、そんなのって、そんなのって―。
[それでも消えるわけじゃない。本当だ]
そんなのって―ずるい。
ずるいずるいずるいずるい。
ずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるいずるい。
[首を振るな。泣きそうな顔をするな。信じろ、俺を]
ヤダヤダヤダヤダヤダ。
[俺が今までエリにウソを吐いたことがあるか?]
聞きたくない、聞きたくない、聞きたくない!
そんな言葉なんて聞きたくないよぉ!
……でも。

623:クレイジー兄妹
07/09/24 12:07:49 Lcpy1mzV
でも、でもでもでも、お兄ちゃんがウソをついたことなんて一度もない。
一度も。
[俺が傍にいるんならいい子になるんだろ? 何でもするんだろ?]
そんなの、そんなの酷い詭弁だよ。
詐欺だよ。ペテンだよ!
[いいな。俺が見えなくなってもしっかりやるんだぞ]
逃げるんだ。
[………………]
私のこと置いて、自分だけ逃げるんだ。
私のこと重くなったから、面倒見切れなくなったから、逃げるんだ。
そうでしょ? そうなんでしょう?
[………………]
否定してよ! そうじゃない、って言ってよ!!
これからもずっと傍にいるって、約束してよ!!
[……俺はずっと、エリの傍にいる。約束だ]
嘘吐き、嘘吐き、嘘吐き!!
もういい! もういい! もういいよ!!
キライキライキライキライキライキライキライキライキライキライ!!
大ッキライ!!
お兄ちゃんなんて、お兄ちゃんなんていなくなっちゃえ!!
消えてよ!! もう顔も見たくない!!
[それでも、俺はエリの傍にいるよ]
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿!!
大馬鹿野郎!!
[それじゃあな。元気でやるんだぞ]
消えて消えて消えて!!
なんだよ、なんだよ、なんだよ!
こんなことになるんなら、お兄ちゃんの声なんかにこたえるんじゃなかった!
お兄ちゃんの質問なんかに答えるんじゃなかった!! 本当のことなんていうんじゃなかった!!
失敗だよ! 大失敗だよ!!
あぁあ、もう嫌だ。嫌だよぅ。
お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん。
スキスキスキスキスキスキスキスキスキスキ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!
離したくない、離れたくない、ずっとずっとずっと!!
お兄ちゃん!!
………………。
………………。
……え?
え、え、え?
本当に、消えちゃった……?
お兄ちゃん、消えちゃった…………?
やめて、やめてよぉ。
冗談、だよね?
消えちゃうなんて、そんなこと、しないよ、ね?
え? え?
わかんない。わけわかんない。
どうしよ、どうしよ、どうしよう。
ゴメンなさい、お兄ちゃん。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
ほら、謝ったよ。
ゴメンなさい。ゴメンなさい。何度でも謝るよ。ゴメンなさい。ゴメンなさい。
あ、あぁぁ、謝り方が悪いのかな?
ほら、ど、土下座だよ。額も擦り付けるよ。…………ね?
も、申し訳ございません。もうわがまま言いません。キライだなんて永久に口にしません。
なんでもいうことききます。なんだって、なんだって、なんだって。
だから許してください。もうしません、もうしません。

624:クレイジー兄妹
07/09/24 12:09:24 Lcpy1mzV
―そんな妹の様子を見せられ、シスコンの俺が何もしないわけがない。
でもできない。
だから、俺はせめて―

―!

あれ? なんか、体が暖かい?
抱きしめ、られてる?
いるの? お兄ちゃん?
見えないし、聞こえないけど、ここに、いるんだね? お兄ちゃん。
私のこと、守ってくれているんだね?
そうなの?
……本当にそうなの?
それとも私、おかしくなっちゃったのかな? 狂っちゃったのかな?
でも、なんだか、判る。
……ああ、そうなんだ。
香り、お兄ちゃんの香りがするんだ。
見えなくても、聞こえなくても判るのは……、暖かく香るからなんだ。
………………。
お兄ちゃん、居るんだね?
ここに、私の傍にいるんだね?
抱きしめてくれてるんだね。
……アハハ。なんだか、笑えてきた。
どうしよう、涙も止まらないや。
そうか、そうなんだ。
本当に、人って嬉しいときも涙が出るんだね。
………………。
お兄ちゃん。
これからも、傍にいてください。

俺は妹の体から腕をそっと離す。
そして、目の前のアンタに話しかけるために立ち上がる。
「アンタ、最初に言ったよな。妹は俺がいなくてもやっていけるって。本当にその通りだ。確かに―」
―俺なんかがいないほうが、妹のためになる。
『よかったんですか?』
「ああ、これがたぶん俺ができる唯一の償いだろう」
逃げるわけじゃない。置いていくわけじゃない。捨てるわけでも、もちろんない。
「荒療治かもしれないが、依存を断ち切るための手段だ」
俺の妹が、俺の自慢の妹が、俺がいなくなる程度のことで壊れるわけがない。
壊れない、壊れるわけがない、壊れさせるわけにはいかない。
「あーあ、これで本当に孤独になっちまったな」
どうなんだろう。
これで本当によかったのだろうか? 
本当は逃げただけじゃないのか? 置いてきただけじゃないのか? 捨てただけじゃないのか?
手に負えなくなったから、怖くなったから、本当の姿を知ってしまったから。
………………。
違う、違うんだ。
コレが唯一の方法のはずなんだ。
「俺が心配しなくても、妹の周りには妹の味方がいっぱい居る。俺なんかに頼らなくても……」
それでも、そんな妹を作り出したのは、兄に依存する妹を作り出したのは間違いなく俺だ。
その責任は取らなくてはならない。
『そんな責任は存在しません。周りの異常な状況からアナタは妹を守ってきただけ』
たしかに妹を守ってきた。
親から親戚からクラスメイトから、周り全ての人間から。守ってきたはずだ。
それでも、よく考えず、妹の心理なんか考えず守ってきたツケは払わなくちゃならないはずだ。
『だったら最後まで、彼女が自立するまで責任もって、見守ってください』
そんなことでいいのか?
もう何もできない俺は、エリのことを見守ることしかできない俺の償いは、それだけでいいのか?
もっと、厳しい罰が必要なんじゃないか?
エリをあんなにしてしまった俺には。

625:クレイジー兄妹
07/09/24 12:11:18 Lcpy1mzV
『過保護なアナタには、手出しできない自分を歯がゆく思うくらいがちょうどいい。ちょうどいい、厳しい罰』
……確かにソレは歯がゆいかもしれないが。
『信じてください。彼女を。アナタの自慢の妹を』
………………。
信じる? エリを? 俺の妹を?
『できませんか? あなたが犯した行為の代償は、彼女自身が修正できるでしょう。アナタの自慢の妹はこれくらいじゃ、壊れません。
立ち直ります、きっと。今まで、自分を守ってくれていた兄の背中を見ていたのです。
今度は、アナタ無しでも歩いてゆける』
………………。
だが。
『それに、アナタ自身言ったじゃないですか。彼女にはもうたくさんの味方が居る。
彼女だけでは乗り越えられない壁でも、きっと、かの人たちが助けて乗り越えさせてくれる』
それじゃ、俺の責任放棄にならないか?
『まだ言ってるんですか? それに忘れていませんか? アナタが彼女を見守ることを言い出したんですよ?
責任? 責任ですって? アナタは、当の昔に死んだんです。
死んで初めて、依存体質の妹の少し奇矯な性質を見て、ようやっとそれに気づいたアナタが
それをなんとかしようと、責任を感じたり、修正を試みたりする。滑稽じゃないですか?
なんて馬鹿げた話でしょう。なんて粘着質な話でしょう。そして、なんて彼女に失礼な話でしょう。
彼女を馬鹿にしないで下さい。生きている人間をこれ以上馬鹿にしないで下さい。
死んだ人間が生きている、生きていく人間にとやかく言うのはナンセンスですよ?』
………………。
『信じましょう、彼女を。見守りましょう、いつまでも。それが、姿を消すのともう一つの
アナタにできる償いです。責任です。責務です。いいですか?』
俺は納得できないぞ。そんなんじゃ。
『別にアナタの納得など求めていません。それに何らかの大きな罰を受け、
それによって償うという根性だったら、そんなもの捨ててくださいね?
それは、そう例えば、最初から夏休みの宿題をせず、なんらかのペナルティーを負うことでソレを回避しようとする、みたいな卑しい行為ですよ?
そもそも第一、もう死んでしまっているアナタにこれ以上の罰なんて……。何をどうやって行えばいいというんですか?
馬鹿馬鹿しい。』
……地獄送りとか?
『はぁ? いい年して地獄なんて信じてるんですか? 冗談はシスコンだけにしてください』
シスコンは冗談じゃないぞ。本気だぞ。
『知ってますよ。あなたは本当に妹さんのことが“妹として”好きだったんですね』
………………。
『そして、妹さんはそうではなかった。ただ、それだけの話なのかもしれません』
……どうだろうな。
『妹さんはこれから最愛の人を亡くした、否、依存対象を喪失したことによる重荷を背負って生きていかなければなりません。
何年越しの苦行になるのか、見当もつきません。そして、あなたはそれをただ見守ることしかできない。
さっきから言っているとおりあなたにも相当辛い体験になるかもしれません。
でも、それでも信じて下さい。人間というものの―』

626:230
07/09/24 12:12:24 Lcpy1mzV
長らく垂れ流しを許容していただいたSSですが、
次回で完結です。
今しばらく、駄文にお付き合いください。

627:名無しさん@ピンキー
07/09/24 13:14:56 sGeh4hwJ
貴様……!
GJ


妹意外に黒いなwww

628:名無しさん@ピンキー
07/09/24 20:11:21 p+Lp/xR3
>>626
うん。面白かった。面白かったけどさ、この展開じゃ妹スレの方が相応しいんじゃないか?

629:名無しさん@ピンキー
07/09/24 22:26:44 /6QclrzQ
GJ!妹怖いよw

無口、妹、ヤンデレ、依存
すげえ、四つのスレまたげるぞ。

630:565
07/09/24 23:15:13 n82dSBuw
(´・ω・`) やあ。
今回の話には、グロテスクなシーンや暴力的な表現が含まれるんだ。
と言うわけで、それらのシーンが苦手な人はあらかじめ回避する事をおすすめする。
じゃあ、続きを始めようか。

631:『彼女』の呼び声 第四話
07/09/24 23:16:21 n82dSBuw
 持ってきた食べ物を二人で仲良く分け合って―食べた量は圧倒的に彼女の方が多いが―ふと仁は喉の渇きを覚える。
 そう言えば、食べ物は色々持ってきていたが飲み物を用意していなかった。

「ちょっと待っててくれ。そこの自販機で、何か買って来る」

 寄せ合っていた体が離れ、彼女がちょっと不満そうな声を上げる。
 宥めるようにその頭を抱き寄せ、額に優しくキス。

「すぐ戻って来るから。何か、飲みたいものはある?」

 仁の問いに、少女は小さく頭を振った。

「そっか。じゃあ何か適当に買って来るよ」

 そう言って、仁は公園の入り口へと駆け出した。


 真夜中にもかかわらず、煌々と明かりを湛えた自販機に硬貨を投入。
 続けて迷う事なくボタンを押せば、自販機は堅く重い音をたてて、炭酸飲料の缶を吐き出す。

「さて、何にしようかな?」

 彼女には何を買って行くべきか。腕を組み考える。
 やはり女の子だし、甘いミルクティが良いだろうか。
 それともさっぱりと緑茶か。あるいは仁と同じものが良いか。

「うーん。悩むな……」

 口先では困ったように言いながら、しかし仁の表情は緩んでいる。
 どんな飲み物を買って行くか。そんな他愛のない選択すら、とてつもなく楽しい。
 ほんの一週間前まで、自分がこんな風に甘い時間を過ごすなど考えたこともなかった。

 楽しいのは直接一緒にいる時だけではない。
 夜、眠りに着く前は抱き締めた彼女の柔らかさと温かさ、そして楽しかった時間を思い返し、朝は今日は彼女とどんな一日を過ごすのだろうと夢想する。
 普段の生活にも張り合いが出て、学校でクラスメイトと話すことも多くなった。

「ホント、不思議な娘だよな……」

 ただ一緒にいるだけで、こうまで自分を変えて行く。
 だが、変化は決して不快なものではなく、むしろ変わって行くことが心地良い。

「―と、あんまり待たせると怒られるな」

 我に返ると、わずかな逡巡の後、ミルクティを選択。
 転がり出た缶と、長らく持っていたせいで軽く水滴の付着した炭酸飲料の缶を抱え、仁は急ぎ彼女の元へととって返そうとした。

 その時だ。夜気を切り裂く、不快な排気音が響き渡ったのは。


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch