無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目at EROPARO
無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目 - 暇つぶし2ch250:名無しさん@ピンキー
07/07/07 06:40:13 qF8F0BcQ
続き待ち保守

251:230
07/07/08 17:47:46 GzuXLU2D
申し訳ございません。
これより、投下させていただきます。
前回より長い上に、エロも少な目かもしれません。
それでも構わないという方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

252:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:48:50 GzuXLU2D
それから彼女から連絡があったのは、あの花火の夜の三日後だった。
僕はその日はバイトが休みで、朝から自室でゴロゴロとしていた。
一応言っておくが、ただゴロゴロしていたわけではない。
『家庭の医学大百科』なる書物で調べ物をしていたのだ。
調べていたのは当然、彼女の持病。
しかし、この本が古いからか、それとも彼女の持病はよほど特殊なのか、残念なことに
この本には彼女の持病については触れられていなかった。
ちなみに、何故三日後の今、調べているかというと、僕は小さいころから本を読んでいると
眠くなってしまう体質だからだ。だから、バイト前には読めないし、バイトの後に調べると、簡単に眠ってしまう。
だから、バイトが休みの今日、気合を入れて本を開いたのだが。
しかし、睡魔は目の前に来ており、意識の陥落は目前。
そのときだった。
僕の滅多にならない携帯がなり、半分眠りかけていた僕は一瞬混乱しながらも、それに手を伸ばした。
表示されたのは、知らない番号。
訝しみながら、とりあえず電話に出てみる。
「はぁ~い、もしもし」
「………………」
無言電話かと思った。
しかし、耳をよくすませてみれば、雑多な音に混じりかすかに人の声がする。
そして、その声は待ち望んでいた声でもある。
「ああ! あなたでしたか。お久しぶりです」
「………………」
「いえいえ。ちょうど今、暇していたところなんですよ。あなたも?」
「………………」
「ああ、そうなんですか。へぇ~…………」
「………………」
「………………」
会話が途切れてしまった。
「(なにか、なにか話題はないか!!)」
僕は必死に頭の中を探り、目を部屋中にいきわたらせ、何とか活路を見出そうとする。
しかし、無常にも救いの手は何処にもなかった。
「(くっ、これだから、馬鹿は救いようがないというのだ!!)」
自分の無能さが吐き気がするほどイヤになる。
しかし、救済は意外な方向から訪れた。
「………………」
「はい? 今、なんて……?」
「………………」
―お暇でしたら、一緒に街で遊びませんか?
そう聞こえた。
確かに、そう聞こえた。
「はい! はいはい! はい!! 喜んで!!」
「!……………」
いきなりの僕の大声に少し驚きながら、彼女は笑った。……ような気がする。
「今何処に居るんですか? え? 駅前? わかりました、直ぐに―」

それから僕は、音の速さで身支度を整え、光の速さで待ち合わせ場所に直行した(誇大表現)。
待ち合わせ場所の、何を意味しているのかよくわからないモニュメントの前。
僕は、待ち人を探す。
どうやら、自分のほうが早く着いてしまったらしい。
しょうがなく、近くのベンチに座る。
「―!? おぉ?」
すると、間違いなく空席だったベンチの端に彼女が座っていた。
「(あれ? さっきまではいなかったのに……)」
見落としていたのだろうか?
というか、そうとしか考えられないが……。
気を取り直し、とりあえず、挨拶。
「お久しぶり、というのもなんですが、こんにちわ。待たせてしまいましたか?」
彼女は僕を見て、(気のせいかもしれないが)少しだけ顔を明るくした。
そして、丁寧に頭を下げた。

253:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:50:00 GzuXLU2D
「………………」
「え? 飛んできた? あぁ、今ちょうど来たって意味ですか。なるほど」
「………………」
「………………」
沈黙。
「(いかんいかん。コレでは電話の二の舞だ)」
そう思った僕は、カバンの中から情報雑誌を取り出すと、彼女に見せた。
彼女は不思議そうにそれを見つめる。
「実は、今日は映画を見ようと思いまして。それでこれを持ってきたんです」
「………………」
「『エイガって何ですか』? え? 見たことも聞いたこともありませんか? イヤ、
怒ってないですよ。……そうですか。ええっとですね。映画というのは……」
彼女に説明しながら考える。
「(そうか。彼女病弱だから、家とか病院から出たことがないのかも。知らないのは無理もないか)」
勝手に結論付けながら、説明を終了させる。
そして、情報誌の映画の一覧のページを見せる。
「なにか見たいのはないですか……って、映画の事知らないんじゃ、選びようがないですよね……。いや、怒ってないですって」
彼女はまるで、初めて見たかのように雑誌を見つめる。
そして、そこに書かれている映画の紹介文をたどたどしく読み始めた。
「………………」
「そうですね。それは戦争モノです」
「………………」
「え? あぁ、戦争モノっていうのはつまり―」
彼女に一つ一つの映画を説明する。
驚くほど何も知らない彼女に何かを教えるのは、妙な優越感に浸れて、少し気分がよかった。
そして、とうとう映画紹介のページが終わる。
僕はとりあえず、彼女の希望を聞いてみる。
「なにか、面白そうなもの、ありました?」
「………………」
彼女が少し遠慮がちにページの一部分を指差す。
そこには。
「……えー、と。なになに『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX 注:R-18指定』
………………、ん?」
………………。
なにか誤解があったようだ。
僕はもう一度彼女に聞きなおした。
すると、彼女はやはり『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX』を指差した。
………………。
「え~!? こ、コレが見たいんですか?」
彼女は大きく、何度もうなずいた。
「ち、違うのにしましょうよ。コレなんてどうです? この恋愛映―」
「……………!」
僕が言い終わらないうちに却下されてしまった。
どうしよう。
できるだけ、彼女の期待にはこたえたいが……。
しかし、『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX 注:R-18指定』だ。
どんな映画なのか、想像もできない。
なぜかコレだけには写真も紹介文も載ってないし。
それでも、彼女はコレを見たいという。
僕はほかにも面白そうな映画をピックアップして、薦めてみたが、結局、全て却下され、僕たちは
『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX 注:R-18指定』を見ることになってしまった。

まだ上映まで時間があるので適当に店をぶらついてみる僕ら。
周囲の人たちの視線がいたい。
何しろ、天女のような美人と、猪八戒のようなブ男のコンビだ。
目を引かないわけがない。
彼女はそんなことには全く頓着せず、足元のタイルに集中して歩いている。
僕は少しだけ鼻高々だった。
なにしろ僕はこんな彼女と『友だち』なのだから。
一緒に歩くことができるのだから。

254:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:51:09 GzuXLU2D
それでも、不意に不安に駆られた。
「(本当に僕なんかでいいのだろうか)」
それは彼女と知り合ってずっと付きまとう恐れだった。
僕のようなどうしようもない男が彼女の隣に居ていいのだろうか。
知らず、大きなため息をついてしまう。
そして、ふ、と気づく。
「(イカン、イカン。ため息なんかついたら彼女に失礼だ)」
誤魔化すように、僕は彼女を誘った。
「あと少し時間もあることですし、あの文房具屋に入ってみませんか?」
彼女は頷いた。
文房具屋に入った僕は、そのお洒落なデザインの商品に圧倒された。
そうした鋏やらペンにはべらぼうな値段がついている。
「(こりゃあ、ちょっと場違いなところに入っちゃったかな……?)」
こっそり、彼女の顔色を伺う。
彼女は興味深々な表情で、文房具たちを見ている。
どうやら何の気兼ねもしていないようだ。
そのことに僕は安心する。
そして僕らは、店の中の比較的日常的な、つまり安めな商品がおいてある一角に足を進めた。
「(ここらへんは特に面白いものもなさそうだ)」
適当にぶらついて、そろそろ店を出よう。
そう考えたときだった。

クイッ。

袖が引っ張られる。
見ると彼女が足を止め、一心に何かを見つめていた。
「どうしたんです?」
「………………」
彼女は目の前の何かを僕に差し出した。
それは、一冊の黒いノートだった。
ディフォルメされた骸骨が描かれた、どちらかというと子供向けのノート。
彼女はソレを真剣な眼差しで、見つめている。
まさか。
「……欲しいんですか? ソレ」
彼女は少し泣きそうになりながら頷く。
どうやら、本気のようだ。
ま、ノート一冊ぐらいだったら。
「買ってあげましょうか?」
彼女は目を見開き、首を振る。
「……………!」
「そんな遠慮しなくてもいいですよ。今日付き合ってくれたお礼ってことで」
それでもなお、彼女は首を振る。
「大丈夫です。それ一冊買うくらいは余裕ありますから」
僕は強引に彼女からノートを奪い取ると、袖を引っ張り引きずる彼女を放置しながらレジに向かった。
「×××円です」
よかった。
値段は見ていなかったが、どうやらそんなに高い代物ではなかったようだ。
僕は安堵しながらお金を払った。
そして、品物を受け取るとそのまま店から出る。
まだ僕の袖を引っ張ったままの彼女に向き直ると、袋に入ったノートを彼女に手渡した。
「どうぞ」
「………………」
そっぽを向き、彼女は受け取らない。
どうやら、勝手にお金を払ったのがいけなかったらしい。
僕は苦笑しつつ、彼女の手にノートを握らせた。
「コレは、今日、僕にお付き合いいただいたお礼です」
「………………」
彼女は僕の袖から手を放し、両手でノートを掲げるようにして持つ。
「僕のお礼の気持ち、受け取ってもらえませんか?」
ちょっと卑怯な言い回しかもしれない。

255:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:52:04 GzuXLU2D
そんなことを考えてた僕が見たのは、気持ち微笑み、頭を下げる彼女の姿だった。
「………………」
「お礼の言葉なんて要りませんよ。さ! もうそろそろ映画の上映時間です。急ぎましょう」
僕は威勢のいい言葉とは裏腹に、ドギマギしながら彼女の手に触れようとする。
すると、吹っ切るように頷いた彼女は、僕の思慮なんて構いもせず、堂々と僕の手を握ってきた。
そして、足早に歩き出す。
僕は赤くなりながら言った。
「もしもし、映画館はそっちじゃなくて、反対方向ですよ」

何とか上映時間までに映画館についた僕たちは、一も二もなく券の販売窓口に寄り、指定された座席へと急ぐ。
もうすでに上映会場は暗く、何らかの予告が流れ出していた。
僕たちはなるべく足音を立てないように上を目指す。
しかし、そんな遠慮は無用だったようだ。
スクリーンの光を反射する座席には、人っ子一人いなかったのだから。
「(ま、『俺たちの大悪魔図鑑』だもんなぁ)」
納得といえば、納得の結果に僕は内心苦笑した。
目当ての座席までたどり着いた僕たちは、並んで座った。
ちょうど、予告が終わり、本編が始まるところらしい。
ふ、と隣の彼女を見る。
彼女は本腰を入れた表情でスクリーンを見守っている。
「(これで面白かったらいいんだけど……)」
いよいよ始まった本編映画は、ただただ赤かった。

「(なんで、こんなことになっているんだろう……)」
僕は便器の上に座り、呆然と考えた。
ズボンは足までずり下げられ、下半身がほぼ完全に露出している。
そして、本来一人ではいるべきその個室には
「ん……じゅる、れろ…………んん、はぁ」
熱心に僕のペニスをしゃぶる彼女の姿があった。

結局、僕は映画の全編を手で目を覆い隠しながら見過ごした。
時々大音量で何かの奇声が聞こえ、いい加減気分が悪くなる。
地獄のような責め苦が続き、ようやく映画は終了した。
僕は隣の彼女を見て、感想を聞こうとした。
しかし。
「どう―」
彼女は僕の手を掴むと、猛然と駆け出したのだ。
何らかのデジャブを覚えながら、僕はなされるがままだ。
そして連れ込まれたのが、男性用の個室トイレ。
彼女は僕を立たせると、そのままズボンを脱がし、座らせた。
「(もしかして、また持病が―)」
なんて思う暇もなく、彼女は僕の性器を咥えた。

「ん……やっぱり、持病が、出たんですか?」
僕は性器に与えられ続ける感触に耐えながら、聞いてみた。
彼女はペニスを口から離し、僕の顔を見て頷いた。
「………………」
謝る彼女。
僕は苦笑しつつ答える。
「謝る必要はないですよ。むしろこちらこそ謝りたい気分です」
「……………?」
不思議そうに聞いてくる彼女。
しかし、僕は答えなかった。
僕からの答えがないことを悟ると彼女はまた性器を咥えた。
先端部分に吸い付き、口のかなの性器を舌でなぶる。
「ん…………ちゅる。れる、ちゅぱちゅぱ」
「くぅっ……」
「ちゅく、ちゅくくっ……ん、んんんっ、ちゅぷぷ……」
舌先を使い、敏感なカリ口を攻めてくる。
そして、そのまま舌をおろしサオの部分を舐める。

256:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:52:51 GzuXLU2D
敏感なところから、鈍感なところに攻めが変わり、僕はもどかしくなる。
しかし、僕の気持ちとは裏腹に、彼女は舌先だけを使い、僕を追い詰めようとする。
そのじらすような動きに僕は我慢できず、腰を前後に動かす。
「!……………」
彼女はその積極的な動きに動揺したようだが、直ぐにソレに慣れると、腰の動きに同調して舌を動かす。
「ぴちゃ、れる………………んちゅっ」
「ふ……ぁ」
彼女の小さな舌がペニスの側面を這いまわり、僕はその気持ちよさに思わず小さくため息をついた。
「んん……れろ、れろれろっ……んふっ、ちゅぴぴ………」
舌がだんだんと先端に近づき、とうとう亀頭にいたる。
「く、ぅ………」
「はぷ、んむ………んっ、れるれる………ぴちゅ」
しかし、僕の期待を裏切るように、舌は直ぐに裏に回り、裏筋を辿る。
それも声が出るほど気持ちがいいのだが……。
「ん、気持ちいい……んですけど、そろそろ、あの、しゃぶって―」
彼女は上目遣いに頷くと、その小さな口で剛直を飲み込んだ。
「んっ、んんっ、んぷぷぷ……っ」
ペニスが、亀頭の先から順番に柔らかい粘膜に包まれていく。
全ては入り込めなかったが、彼女はかなり深いところまで咥え込んでくれた。
「んふぅ、んん……ちゅむっ……ちゅぶ……」
「くぅ……」
ペニスと唇の間から漏れ出した唾液を塗りつけながら、彼女は強く吸い付いた。
その滑らかさと吸い上げに、腰が震える。
「フフ………ちゅるっ、ぢゅる………ぢゅるる、ぢゅちゅちゅちゅ………!」
「? いま、笑いませんでした?」
「………ちゅ、ヂュッ、ちゅう、チュウウウ………」
彼女は返答する代わりに、ひと吸いごとの加減を変えてきた。
緩急をつけて唇を狭め、ペニスに緩慢な刺激を送ってくる。
誰もいない男性トイレにイヤらしい音が響く。
その音に、僕はトイレでこんなことをしているのだという認識でさらに興奮した。
「す、すごい………」
「ちゅぽっ、フフフ………れろれろ………」
「今確かに笑いましたよね?」
彼女は亀頭を舌の裏で嘗め回しながら、こちらを見た。
………なんだか彼女の瞳の色がおかしい。
あれほど真っ黒だった彼女の目が、なぜだか暗い深紅に見える。
「あ、あの………」
問いかける僕を無視するように、ペニス全体を舌で刺激しながら、口内を動かす。
柔らかい頬の粘液や舌がペニスの敏感な部分に当たり、僕のペニスがさらに大きくなる。
「んぷっ、んむっ、ぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅ………!」
止めを刺すような大きなバキューム。
いつのまにか限界まで上り詰めていた僕の官能が終わりを迎える。
「うっ、で、出ます……!!」

ビュブッ!! ドビュッ、ビュビュッ!!

「はぁう。……ん、んん。ぺちゃぺちゃ……」
射精中に、彼女は先端を嘗め回した。
敏感になっていた僕の性器は、完全に精液を出し終える。
「(くっ………まただ!)」
僕の体が異常を訴える。
頭が白く染まり、全身を削られるような脱力感。
力が抜け、僕はだらしなく後ろに倒れこんだ。
彼女は精液を舐めとっている。
僕は意識がかすむのを感じる。
完全に僕の視界が落ちる瞬間。
「………………」
―ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
確かにその時、彼女は謝っていた。

257:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:53:51 GzuXLU2D
息苦しい。
それで僕の意識は覚醒に向かった。
どうやら、濡れたタオルが顔の全体を覆っているようだ。
「って、殺す気か………!!」
僕は慌てて、そのタオルを放り投げた。
「!……………」
そのタオルが向かった先。
そこには彼女が居た。
「って、ええ!? こ、ここは!?」
見慣れた布団、見慣れた本棚、見慣れた台所。
どう見てもそこは、僕が一人暮らしをしているアパートだった。
僕は混乱する。
「え、ええ……!? なんで、なぜ、ホワイ? ぼ、ぼくは……」
体を起こそうとする僕。
しかし、急激なめまいが僕を襲い、すぐさま僕は仰向けに倒れる。
たったそれだけの運動で、僕の息は上がり、喉は痰が絡まり痛い。
彼女が心配げにこちらを見ている。
僕は気持ちを落ち着けるため、深呼吸した。
寝たまましたので、効果があったかどうかはわからないけれど、とりあえず息は落ち着いた。
そして、この現状を一番知っているはずの人間に事情を尋ねることにした。
その人間とは、もちろん。
「………………」
彼女は心配そうに、こちらを見つめている。
僕は彼女を安心させるために無理やり笑顔を作った。
「大丈夫です。心配はいりません」
「………………」
彼女は俯き、謝罪の言葉を呟いた。
「? なんであなたが謝るんですか?」
「………………」

彼女の説明によると、僕はトイレの個室での一件の後、気を失ってしまったようだ。
驚いた彼女は、とりあえず僕を背負い、映画館を出たのだという。
「……それからどうしたんです?」
「………………」
途方にくれた彼女は、街中のベンチに僕を寝かせ、様子を見ることにした。
すると、僕は意識を取り戻し、『家に帰る』と盛んに繰り返しだしたのだという。
心配になった彼女は、僕に付き添い、この家までたどり着いたのだ。
「……そんなことがあったんですか」
「……………?」
―覚えてないんですね?
「……ええ、まったく記憶にないですね。最後の記憶はトイレの中です」
「………………」
彼女はすまなそうに頭を下げる。
「いえいえ! あなたが悪いんじゃない。なにか調子が悪かったのでしょう」
たぶん。
というか、それ以外考えられない。
それでも彼女は頭を下げる。
僕は無理やり上体を起こすと、彼女に向き直った。
「あなたの持病は、あなたの持病。僕の不調は、僕の不調。分けて考えましょう、ね」
彼女は、く、と顔を上げると、僕に抱きついてきた。
まだ力が入らない僕は、そのまま彼女に押し倒される。
いきなりのことに、僕の顔は一瞬で沸騰する。
「ちょ、ちょ、な、な、なんですか~!?」
「………………」
彼女は僕の胸に顔をうずめたまま小刻みに震えていた。
「……もしかして―」
言いかけた僕は口をつぐみ
「(―泣いているんですか?)」
心の中だけで呟いた。
それに答えを示すように、僕の服の胸の部分が濡れた。

258:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:55:00 GzuXLU2D
その日、彼女は僕の看病のためといって一晩泊まった。
もちろん一人暮らしの僕の部屋に予備の布団なんていう贅沢なものはない。
だから、一緒の布団に寝ることになってしまったのだが……。
正直、そのことに僕は興奮したが、しかし、体は言うことを聞かず、日が完全に傾く前に僕の意識は落ちてしまった。
翌朝、起きると彼女は適当な朝食を作ってくれた。
本当に適当な朝食で、その手抜き加減は田舎の母親を思い出させてくれたけど、
単純なその料理は、一人暮らしが続いていた僕の胸には結構響いた。
「………………」
彼女が感想を聞いてくる。
当然僕は絶賛した。
安堵したように彼女は吐息を漏らす。
「………………」
ここで衝撃の告白。
どうやら彼女、料理は始めてだったらしい。
「ん? っていうか……」
一人暮らしをしているのに料理をしたことがない?
どういうことかと彼女に尋ねてみる。
彼女は少しだけバツが悪そうに顔をしかめ、俯き加減に言った。
「………………」
―私、小食ですから。パンだけでも足りるんです。
「(しまったぁ! 彼女は病弱なんだった!!)」
失念していた。
そりゃそうだ。小食だったら、買ってきたものとかでも足りるじゃないか。
僕はなんと言う無神経な質問をしてしまったのか。
「(―いや、待てよ……)」
病弱なんだったら、なおのこと栄養なんかに気を使わなければならないんじゃないのか?
それを、買ってきたものとか、パンとかだけで足らせていいのだろうか?
「(否。よくない!! 僕が彼女のことを何とかしなくては!)」
僕は一大決心をして、彼女のほうに向き直る。
「あの……!」
「……………?」
不思議そうな彼女の顔。構わず僕は言い放つ。
「もしよろしければ、これから僕の家に食事を食べにいらしてください。……ちょくちょく」
少し驚き、なお不思議そうな彼女の顔。
「あの、その、僕、料理とか結構できますから。一人暮らしとかも長いですし、……どうですか?」
「………………」
―あなたがお料理上手なのと、私が一緒にお食事をすること、何の関連が?
ぐうっ。
そう突っ込まれると……。
僕は「(ここまできたら、破れかぶれだ!)」とさらに踏み込む。
「ええっと、とにかく! あなたと食事がしたいんです。ダメ、ですか?」
彼女は少し困惑した表情になる。
「(っていうか。僕って相当、キモいぞ……)」
内心、凄く反省する。
だが、口に出してしまった言葉は、喉に戻ることはない。
彼女の裁定を震えながら待つのみだ。
そして、彼女は僕のほうを再び見つめてきた。
「………………」
それは、……肯定の返事だった。

それからちょくちょく彼女は僕の家を訪れるようになった。
バイト終わりに彼女から連絡があり、街中で待ち合わせ。
それから一緒に買い物をして、帰宅。
そのあと、僕は調理を、彼女はその手伝いをする。
そして、一緒に食事をして、そのあと―。
たびたび彼女の発作が起こった。
僕はその都度、彼女に弄られた。
でも、彼女が体を許してくれることはなかった。
いつも、口か手、あるいはスマタとか。
行為の後、僕は必ず気絶するようになった。

259:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:55:55 GzuXLU2D
軽いときには一時間。重いときには翌日の昼までかかるということもざらだった。
だんだん僕はバイトに遅れたり欠勤したりするようになった。
そして、とうとうある日、僕はバイトを首になった。
もともと夏休み前後の短期のバイトだったから、特に問題はない、と思ったけど、ショックなことはショックだった。
でも、彼女には正直に言えず、『バイトは自分から辞めた』といって誤魔化した。
また彼女が自分の発作のことを責めないように。
彼女はその埋め合わせをするように、僕と長い時間一緒に居るようになった。
僕はそのことがとても嬉しくて楽しかったのだけれど、彼女が何を思ってそうしてくれたのかは判らない。
彼女との時間が増えても、やっていることは変わらない。
買い物をして、食事をして、たまに行為に及ぶ。
そのことに本を読んでぼんやりすごすとか、どこかに行って遊ぶとか、そんな時間が追加されただけ。
それでも、僕は幸せだった。
ただ、心配なのは、彼女の食事の量。
彼女は僕の三分の一以下の量しか口にしなかったし、どうやら、夜中にソレさえも吐いているようなのだ。
『これはイカン』と食事に気を配り、手をかけてみたけれど、ソレと反比例するように、彼女の食事量は減少した。
だからといって、彼女が変わったか? というと、そうでもない気がする。
むしろ、僕との時間が多くなるたびに、彼女は元気になって言ったような気さえする。
まぁ、そんな日がいつまでも続くと考えていた。
―あの日までは。

260:230
07/07/08 17:57:31 GzuXLU2D
とりあえず、今回は以上です。
お目汚しですが、まだ続きます。
よろしくお願い申し上げます。

261:名無しさん@ピンキー
07/07/08 19:41:46 50n/AHCP
GJです!なんつーか、起承転結の承にあたる部分て感じ。次は転かな?

262:名無しさん@ピンキー
07/07/08 20:11:37 Ju5qksHQ
>>260
ナイスやでほんまGJ!
罰、悪魔、栄養摂取から核心に迫りつつありますね?
しかしどっかで擬し感があるってさっきからずぅーと調べてたのだが
数年前に同人ソフトで出た蜜牢だ…どうでもいいですね♪

きっとなにか見せてくれるだろうから、それを楽しみに待つぞぃ


263:名無しさん@ピンキー
07/07/08 22:13:17 BMEwB5eb
GJ!
幸せなのと反比例して命を削られていくという
退廃的な雰囲気はたまらんですわ

264:名無しさん@ピンキー
07/07/09 01:24:33 8d1RQYtY
GJ!
読んでてゾクゾクしまさぁねw
しかしヒロイン、なんてゆーかこう……サキュバス?

265:名無しさん@ピンキー
07/07/09 02:32:51 oPLd+SgQ
なんたこのwktk神作品は・・・・GJ!

266:名無しさん@ピンキー
07/07/09 02:34:02 oPLd+SgQ
またミスた。age

267:名無しさん@ピンキー
07/07/10 00:52:22 gZz6S4KR
シャンブロウ?

268:230
07/07/11 14:13:21 ICGccihB
これより、投下させていただきます。
前回並みに長い上に、エロも御座いません。
申し訳御座いません。
それでも構わないという方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

269:彼女の事情と僕の慕情
07/07/11 14:14:42 ICGccihB
それは彼女と出会って、ちょうど一ヵ月後のある日のことだった。
僕は前日の彼女との行為で、いつものように意識を失って、気づいたら夕方だった。
だんだん、気絶している時間が長くなっている。
「(病院には行ったけど、健康体そのものだって言われたしな……。なんなんだろう)」
そんなことを考えながら、部屋の中を見渡す。
どうやら彼女は出かけていて、今、部屋には僕一人のようだった。
「(買い物にでも行っているのかな?)」
そんなことをぼんやりと考え、ふとテーブルの上を見る。
そこには、いつか僕が彼女にプレゼントした骸骨のイラストのノートが乗っていた。
「(あれ? 出しっぱなしだ)」
いつもは彼女の私物が入っているらしい段ボール箱の中に収められているソレが、どういうわけか真っ直ぐに置かれていた。
まるで、僕が中身を見るために差し出すように。
「(イヤ。それはマズイだろう)」
彼女がたまに真剣な顔で何かを書き込んでいたのは知っていた。
ふざけて覗こうとしたとき、彼女の機嫌を酷く害したのを覚えている。
「(イカンイカン。彼女に対して失礼だ)」
そう思いながら、ノートから目が離れない。
そのとき。
開けていた窓から突風が吹き込み、閉じていたノートがめくられる。
「(!!)」
瞬間目を逸らし、しかし、再び視線はノートへ。
「(イカンイカン。と、閉じなくては……)」
そう思いながら、しっかりと、目はノートの字を捉える。
……捉えてしまった。
「(? なんだ? この文字……)」
そこには今まで見たこともない記号、文字らしきものがつづられていた。
しかし、全く意味不明なその記号は、奇妙なことに、僕がその羅列を追うと、そこに書かれている内容が頭に浮かぶ。
まるで、語りかけてくるような不思議な感覚。
僕はノートが彼女のものだというのを半分忘れながら、最初からソレを読み始めた。

『彼と出会ってしまったのは、運命なのだろうか、それとも単なる偶然なんだろうか?
 私にはわからない。
 それでも、彼に出会わせたのが神様とかの気まぐれなんだったとしたら、私は感謝したほうがいいのだろうか?
 それとも、出会ったのが彼でなかったらと、肩を落としたほうが正解なんだろうか?
 本当は、彼なんかに出会うはずはなかったのだ。
 私はただただ一ヶ月を浪費し、その後、しかるべき処罰を与えられる。
 それだけでよかったのだ。それ以上は望んでいなかった。
 それが、何の因果か、彼に出会ってしまった』

彼というのは僕のことだろうか?
しかし、一ヶ月? 処罰? 
どういうことなんだろう。
僕は文字を追い続ける。

『最初はただの気まぐれだった。
 ただ、困っているお婆さんが目に付いたからという、ただそれだけの理由。
 私はおばあさんを躊躇無く助けた。たやすいことだった。
 やたら感謝してきたお婆さんは、私に無理やり何かを握らせた。
 それは何らかの紙切れで、五枚もまとめて手の中に入っていた。。
 これは何かと尋ねたら、お婆さんは商店街のほうを指差し、フクビキフクビキ、と繰り返す。
 意味がわからないうちにお婆さんはサッサと行ってしまった。
 しょうがないから、おばあさんが指差したほうに行ってみた。
 すると、同じような紙切れを持った人間たちが列を作って並んでいる。
 どうやら、この紙を持っている人は、ここに並ばなければならないらしい。
 面倒くさいな。
 正直に言えば、そんな感想しかもてなかったが、しかし、ここでコレを無視すれば、
 お婆さんの好意を踏みにじる結果になってしまう。
 悩んだ挙句、私は列に並んだ。
 そのまま、ぼんやりと列が進むに任せる。

270:彼女の事情と僕の慕情
07/07/11 14:16:11 ICGccihB
 そして、とうとう自分の番が来た。
 しかし、ぼんやりしていた私は、何をすればいいのかがわからない。
 私は困り果て、あたりを見渡す。
 すると、私の後ろに幸福そうに突っ立っている青年が見えた。
 混乱していた私は、とりあえず青年に助けを求めてみた』

どうやら彼女と初めて出会った福引の日のことらしい。
……こんな経緯があって、彼女は福引に並んでいたのか。
それにしても、『幸福そうに突っ立っている青年』って……。
間違いなく、僕の事なんだろう。
最初は僕の事をそんな風に思ったのか……。

『袖を引っ張ると、青年は私のほうを初めて見た。
 そして、そのまま、固まってしまった。
 ますます困ってしまった私を助けてくれたのは、テントの中のおじさんだった。
 おじさんが声をかけるとようやく青年は気がついた。
 私はここぞとばかりに、さらに袖を引っ張る。
 そして、どもりながらも事情を聞いてきた青年に私は指をさして窮状を伝える。
 しかし、伝達には失敗したようで、彼は怪訝な顔をするばかり。
 しょうがないので、私は強引に彼の頭を抱え込むと、耳元で喋った。
 ……本当はいまいち言葉に自信がないので喋りたくなかったのだけれど。
 青年はどうにか私の言いたいことを理解してくれたようだ。
 私はフクビキというものについての説明を受ける。
 意味がわからなかったが、とにかく回せばいいらしい。
 機械を回す。
 玉が出る。
 さらに回そうとした私をおじさんと青年が止める。
 どうやら、一回きりらしい。
 玉を見たおじさんがハンドベルを鳴らした。
 これから何らかのイベントが始まるんだろうか、と少しわくわくした私に、おじさんが何かを手渡した。
 青年の説明によるとハナビというものらしい。
 意味がわからなかったので、青年にあげようとした。
 どうせ、私にとっては必要のない代物だ。
 しかし、青年は受け取らず、逆に私を誘ってきた。
 ……正直に書こう。チャンスだ、と思った。
 これで助かる。何とかなる。青年は自ら飛び込んできてしまったのだ。
 異界への入り口に。
 魂の牢獄に』

? 『チャンス』?
『異界への入り口』『魂の牢獄』?
何を、何のことを書いているのだろう、彼女は?

『夜、再び出会ったとき、青年の魂は著しく脈動していた。
 花火をしているとき、ソレはさらに高まった。
 私に視線を送っていたときも、それは激しく波打っていた。
 私はハナビというものの美しさに心を打たれながらも、悲しくなった。
 これから青年を貶めなければならないということに。
 こんなに無邪気な青年から魂をいただかなければならないということに』

魂を、いただく?

『ハナビが終わり、全てはバケツの中に落ちた。
 どうやって青年を貶めるか考えていた私の目に、青年がバケツに向かって何かを呟いているのが見えた。
 不思議に思い、聞いてみると、青年はバケツの中のハナビに礼を言っているというではないか。
 こんな物言わぬ物たちに対する真摯な姿勢に私は心を打たれた。
 それでも、容赦することはできない。
 わたしは青年を林の奥深くに連れ込み、行為に及ぶことにした。
 青年が私に問う。
 なぜ、こんなことをするのかと。

271:彼女の事情と僕の慕情
07/07/11 14:17:15 ICGccihB
 本当は無視してもよかった。答える必要もなかった。
 それでも、私は答えてしまった。
 持病の発作と何故か誤魔化してしまった。
 そして、ハナビのお礼です、と口が動いた。
 言って初めて気がついた。
 本当に楽しかったのだ。本当に心躍ったのだ。
 初めてだったのだ、こんな楽しいこと。こんな嬉しいこと。こんな美しいこと。
 私は躊躇した。
 ……躊躇して、しまった。
 そして挙句失敗した。
 行為自体が初めてだったからなんて言い訳はしない。
 でも、こんなことが起きるなんて考えもしなかった。
 青年は、行為の後も生きていた。
 私は混乱しつつもその魂の欠片を啜った』

………………。
彼女は僕の精液を残らず飲み込んでいた。
どんなときも。
飲まないと意味がない、と。

『そしてお別れの時間が来た。
 私は謝った。
 青年の魂を汚してしまったことを、誤魔化しながら。
 青年は許してくれた。
 当然だ。私が本当は何をしたのかを知らないのだから。
 青年が後ろを向く。
 でも。
 私は青年の、彼の袖を引っ張り、そして、言った。
 私と友達になってください、と。
 ……打算があったのは否定しない。
 せっかくの獲物が逃げてしまうのを、指を咥えてみているだけというのは耐えられない。
 でも、それだけじゃなかった。
 そのときは訳の判らない感情だと思っていたけれど、今では判る。
 あれは本当に寂しかったのだと。
 本当に友達がほしかったのだと。
 だから、怖かった。
 断られるのが、物凄く恐ろしかった。
 でも、彼は許してくれた。
 こんな私と友達になってくれた
 友達になって、くれたんだ』

………………。
僕は無心に読む。
彼女の記録と、記憶を。

『あんまり早く連絡したら迷惑になると思って、三日後に電話した。
 彼は直ぐに答えてくれた。
 後から聞いたら、バイトというものがなかったらしい。
 直ぐに私たちは会うことになった。
 待ち合わせ場所に着いた彼を驚かそうと、私は飛んでいった。
 予想通り、彼は驚いてくれた。してやったり。
 エイガというものを見に行くことになった。
 彼が何か見たいものはないか、と聞いてくる。
 私は一つだけ心が躍ったものがあり、ソレを指し示した。
 彼はどうしてか、それには直ぐに賛成してくれなかった。
 「俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX」の何がいけないというのか。
 どうせなら、楽しいものを見たほうがいいに決まっている。
 だから、私は頑なにほかの意見を却下した。
 でも、結局、ソレを見ることに決定してから、私は後悔した。
 どうせ、私にはエイガなんて判らないから彼に決めてもらえばよかったのだ。

272:彼女の事情と僕の慕情
07/07/11 14:18:32 ICGccihB
 私の強引な決定を、彼はどう思っただろう。
 頑固者だと、ワガママな奴だと嫌われたかもしれない。
 凄く不安になった。
 それでも彼は笑顔だった。
 私は、自分の頑なさを反省しながら、それでも救われた。
 彼と友達になれてよかった、と』

『私たちは街中を歩いた。
 街の中は私の知らないものばかりで、私の胸は高鳴った。
 なかでも気に入ったのは、このノート。
 とてもイカしている。
 今でも、これ以上のノートなんて存在しないと、確信している。
 彼が買ってくれた。
 本当は私にだって少しくらいは手持ちがある。
 自分のお金で買って、自分のものにしたかった。
 でも「僕のお礼の気持ち、受け取ってもらえませんか?」なんて言われたら……。
 初めてその時、彼のことを卑怯だと思った。
 でも、嬉しかった。
 人からもらった初めてのプレゼント。
 内心、感動する私は彼と手をつなぎ、エイガカンに向かった』

『エイガの内容は書かない。
 というよりも、書けない。
 エイガの最中、私は胸が苦しくなり、途方もない飢餓感に襲われた。
 原因は直ぐにわかった。いつものことだからだ。
 人の魂が、補充分の、体を維持するための魂が切れ掛かっているから。
 でも、ソレはいつものこと。
 我慢しようと思った。我慢できると思った。
 でも、ダメだった。
 私の体は貪欲に獲物を求め、気がついたら、私は彼に襲い掛かっていた。
 私は夢中になって、彼を求めた。
 本当にその時は夢中で、私は何をしていたのか、あまり覚えていない。
 覚えているのは彼が果ててから。私が満ち足りてから。
 私は謝った。
 でも、彼は気を失ってしまっていた。
 私は動転した。
 なにしろ、二回目なのだ。
 こんなことが起きるなんて想像だにしていなかった。
 私は混乱しながら、彼を寝かせられる場所を探した。
 勝手に彼の記憶を弄り、探り、家の場所を確認した。
 部屋の中に入ると、彼の匂いが私を包む。
 そのことを新鮮に感じながら、私は彼を寝かし、懸命に祈った。
 魂は採っていないはず。だから、きっと目覚める。
 私は半端な知識で看病した。
 すると、彼はまもなく目を覚ました。
 彼は心配する私を見て、微笑んだ。
 私は適当に状況をでっち上げ、説明し、謝罪した。
 罪深い私を。
 彼は笑って許してくれた。
 私はたまらなくなって、彼に抱きつき、泣いてしまった。
 ものも言わず泣きついた私を彼は黙って受け入れてくれた』

『それから私たちは一緒に寝て、食事をした。
 私は生れ落ちて始めて食事を作った。
 彼は美味しいといってくれた。
 お世辞でも嬉しかった。
 それから何故か、彼は私のこと、特に食事のことを気にした。
 私は人間の食事は食べられない。食べても味がわからないし、消化できないのだ。
 そのことを適当に誤魔化した。
 すると彼は、私と一緒に食事をすることを提案してきた。

273:彼女の事情と僕の慕情
07/07/11 14:19:39 ICGccihB
 正直、困った。
 でも、一緒に居たいといわれて、嬉しかったのも事実。
 だから、私はうなずいた。
 その時の彼の喜びようといったらなかった。
 私も彼が喜んでくれたら嬉しかった』

『私たちはたびたび会うようになった。
 一緒に買い物をして、調理をして、食事をした。
 楽しかった。
 本当に楽しかった。
 でも、私は我慢できずに彼を求めてしまった。
 そのたびに彼は衰弱していった。
 そのためにバイトとかいうのを駄目にしてしまったらしい。
 口には出さなかったけれど、私のせいだろう。
 行為を重ねるごとに罪悪感が募った。
 申し訳ない。申し訳ない。申し訳ない。申し訳ない。申し訳ない。
 生きるためには糧を得なければならない。
 そのために彼を犠牲にしている。
 ……死んでしまいたかった。
 朝、目覚めることなく、眠りながら死ぬ。
 ソレが理想だった。
 でも、朝は毎日訪れたし、そのたびに私は絶望した。
 そして、絶望の淵で、それでも生きていられたのは彼のおかげ。
 彼の笑顔のおかげ。
 でも、そんな彼を犠牲にしなければ生きていけない。
 そんなジレンマに頭が狂いそうになった。
 逃げ出したかった。
 何もかもを捨てて、逃げ出し、何もかもなかったことにして消えたかった。
 でもできなかった。
 彼の隣にいたかった。
 彼を犠牲にしても、何を犠牲にしても。
 彼の隣にいたかったのだ。
 でも、隣にいても私には何もできない。
 馬鹿で愚図で無知な私には。
 だから、せめて、彼のことを慰めようと、より一緒の時間をすごすようになった。
 ……でも、コレは自分のためなのだろう。
 もっと彼のことを知りたくなった、彼と近づきたくなった、自分のため。
 それでも、体を許すことはできなかった。
 体をあわせない行為でも、彼はあんなにも衰弱してしまったのだ。
 もし、本格的な性行為に及んでしまったら、彼がどんな目にあうのか。
 想像するのも恐ろしかった。
 今、彼を失ってしまったら。
 私は……、どうすればいいというのだろう』

それから、彼女と僕の生活が延々と書かれている。
そして、彼女の書いた最新の、最後のページ。

『期限が来てしまった。もう時間がない。
 一ヶ月後の今日、私は魂を手に入れることができなかった。
 しかるべき罰を受けなければならない。
 でも、その前に、彼に知ってもらいたかった。
 私が何者なのか。
 何を考えていたのか。
 私が彼のことを知りたかったように、彼にも私のことを知ってもらいたかった。
 そして、軽蔑して欲しい。
 私のことなんてゴミ屑のように忘れて欲しい。
 それが彼の幸せなんだ。
 だから―』

274:彼女の事情と僕の慕情
07/07/11 14:20:59 ICGccihB
「わざわざノートを僕の目に付くところに置いたんですね。僕が勝手に読むと思って」
僕は隣に話しかける。
いつの間にか、音も無く彼女はそこに居た。
彼女はうなずく。
そこは否定して欲しいところだったんだが。
「僕が人のノートを勝手に見るような人間だと思ったんですか? 酷いですね」
苦笑しつつ、尋ねる。
彼女は比較的、困ったような顔になった。
「あの突風もあなたが起こしたんですか?」
とんでもない、というように彼女は首を振る。
「………………」
―そこまで、人間離れした魔物じゃありません。
魔物。
彼女はソレだというのか。
「……あなたは一体、何者なんですか?」
僕は吐き出すように、問う。
それは彼女自身のことを問う、初めての質問だった。
「………………」
―私は、異界から来た人外。
「人外? 人外って……」
「………………」
―いやらしいことをして、魂を盗る、低俗な化け物です。
「………………」
符合してしまう。
行為に及ぶたびに、何か重要なモノが削られ失われていく感覚。
あれは、超常的な何かを持ってこないと説明できない。
「……そんな馬鹿な」
言いながら、気づいてしまう。
時間に正確すぎ。
いつだって、時間丁度に来ていた。
いまだって、音も無く、僕の隣に来たじゃないか。
……異常だ。
「……そんな、馬鹿な」
彼女は何も食べなかったじゃないか。
ほんの少ししか、ソレすらも吐いていたじゃないか。
それでも、元気だなんて。
……異常すぎる。
「……そんな、馬鹿な……!!」
異常だ、異常だけれど……!!
認めたくない……!
僕は、ぼくは、ボクハ!!
彼女は僕の肩にそっと手を置いた。
その小さく暖かな感触に、僕は反射的に体をビクつかせる。
ビクつかせて、しまう。
彼女は、そんな僕を悲しげに見ながら

チュッ

唇を合わせた。
その瞬間、胸の奥から頭の先、手足の指先まで何かがみなぎる。
熱い。
とても熱い何かが僕の体を満たしていく。
それが体の中を蹂躙するのと比例するように、急速に眠気が襲ってくる。

275:彼女の事情と僕の慕情
07/07/11 14:21:47 ICGccihB
「………な、にを……?」
「………………」
―今までいただいた分、お返しします。魂を。
「…………そん、なこ、と……したら……あな、た………………は……」
彼女は悲しげに微笑んだ。
……微笑んだと、思う。
でも、霞みだした意識と視界の中でソレは定かではない。
「…………待って、くだ……さい。ぼくは…………あなた、の……ことが……」
「………………」
―わたしもです。
確かにそう聞こえた。
彼女は僕の背中に両腕を回し、抱きついた……と思う。
「(……あたたかい)」
僕はその暖かさの中で、ゆっくりと意識を落としていった。

276:230
07/07/11 14:23:23 ICGccihB
長らく垂れ流しを許容していただいたSSですが、
次回で完結です。
今しばらく、駄文にお付き合いください。

277:名無しさん@ピンキー
07/07/11 17:02:43 IATcqb/D
GーーーーーJーーーーーー!!

やはり人間じゃなかったのか、ノートの独白に萌えた

278:名無しさん@ピンキー
07/07/11 17:03:49 aZcUhlyb
GJ!これはラストに期待大な展開ですね。そして筆が速い!素晴らしすぎる

279:名無しさん@ピンキー
07/07/12 05:04:19 fsUUM5/Q
GJ!!
これはワッフルせざるを得ない

280:名無しさん@ピンキー
07/07/12 06:09:04 CchsV7Yx
GJ!
どうか幸せな結末を・・

281:名無しさん@ピンキー
07/07/12 06:17:24 SlwEosPw
>>276
ザッピングできましたか・・・GJ!
生きていく為に絶対不可欠なもの、存在が違えば弱肉強食ならば当然の摂理・・・
しかし、この魔物は優し過ぎた
最後は分からない

いや、最後の最後はまだ分からない・・・。

282:名無しさん@ピンキー
07/07/13 03:28:32 +ljP4vNJ
アゲ

283:230
07/07/15 16:27:29 kJaKvyeb
これより、投下させていただきます。
前回よりは短いですが、それでも長いですし、何よりエロが御座いません。
まことに申し訳御座いません。
それでも構わないという方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

284:彼女の事情と僕の慕情
07/07/15 16:28:24 kJaKvyeb
それからの一週間。
正直あまり覚えていない。
ただいえる事は、部屋の中に彼女の姿は無く、そしてもう二度と帰ってこないだろう、ということだけだ。
僕は何を食べて生きたのだろうか。
でも、何かを食べるたびに彼女を思い出した。
だから、何かを食べてはいたのだろう。
僕は何処に居たのだろうか。
でも、何処かに行く度に彼女を思い出した。
だから、何処かには居たのだろう。
僕はただただ、家の中を、街中を、彼女の姿を求めてさまよったのかもしれない。
僕はただただ、家の中に引きこもり、彼女のノートをめくっていたのかもしれない。
かもしれない、かもしれない。
でも、そんなことはどうでもよかった。
重要なのは、彼女が居ないこと。
それだけだった。

「お客さん、いくらなんでも飲みすぎですよ」
いがらっぽいだみ声が聞こえる。
どうやらここは何かの店のようだ。
僕はうっすらと目を開ける。
明るい木目調の日本家屋的な店内。そのカウンター席に座っているらしい。
どうやら飲み屋のようだ。
その証拠に、僕の目の前には小料理と、片手にはしっかりとコップが握られていた。
店に入った記憶も、何かを注文し、飲み食いした記憶がないのだが……。
僕はそのことに戦慄しながらも、意識の全体は“どうでもいい”という結論を下していた。
彼女がいなくなってどれだけ経っただろうか。
彼女のいない世界は灰色で、現実感が希薄だった。
こんなにも薄汚れていたのか。
こんなにもつまらないものばかりだったのか。
こんなにも希望という言葉が見当たらない場所だったのか。
この世界は。
ぼくはコップの中身を舐めた。
口先から胸の中に熱い感覚が下りていくのを感じる。
それはまるで彼女との最初で最後のキスを連想させる感覚だった。
「君、起きたようだね」
隣から渋い低音が響く男の声がする。
ふと横を見てみると、僕の隣の席にくたびれたスーツを着た男性が座って、コップを傾けている。
だが、照明の具合か、僕が酔っているためなのか、その男の体型、体格あるいはどんな容貌をしているのかさえ、僕には見えなかった。
見えるのはただの灰色。
周りの風景同様の、灰色。
「……ええ、起きてますよ」
正直、人と話す気分ではなかったが、僕の中の小市民気質がソレを許さない。
僕の気分を知りもしないであろう男は、こちらに体をむけ喋りかけてくる。
「なにか大切なものでも失くしたのかな?」
「………………」
そのものズバリだ。僕はうなずくこともせず、コップの中身を舐める。
男はそれだけの動作で得心したようで、口を開き、続ける。
「何をなくしたのか当ててあげよう」
「………………」
「ズバリ、恋人。つまりは失恋、だね?」
僕は皮肉に見えるように苦笑した。
「ハズレです。僕がなくしたのは恋人ではないです」
「じゃ、友達かな」
即答で核心を付かれる。
喉が詰まり、何もいえない。
「というよりも、君はかの人のことを友達以上に感じていた。だが、名目上は友達ということになっていた。
君はソレに甘んじ、かの人と関係を続けたが、本当はそれ以上に進みたかった。
でも、できなかった。友達という名目さえ失ってしまうんじゃないかという怯えに足がすくんでしまったのだね」
ズバズバと僕の内心を言い当ててくる。
半分酩酊した意識で、この男は何様なんだろうという理不尽な怒りがこみ上げてくる。

285:彼女の事情と僕の慕情
07/07/15 16:29:12 kJaKvyeb
否、正直なところ、逆ギレだった。
図星を付かれ、核心に迫られ、僕の小心をいとも簡単に言い当てた男に対する怒り。
「まるで見てきたように言うんですね」
何も知らないくせに、知ったかぶって。
「まさしく、見ていたのかもしれないよ」
「馬鹿な……」
僕はコップの中身を思いっきりあおる。
さらに意識は朦朧とし、視界が狭くなり、頭が熱くなる。
「じゃー、なんでも知って、何でも見ているアンタ。教えてくださいよ。僕はこれからどうすればいいのかを」
呂律が、理性が回らない。
食って掛かる僕の言葉に、彼は若干、口調に笑いをこめて、返答した。
「忘れなさい」
「なぁんですって~?」
「かの人のことを、一刻も早く思い出にしなさい。……時間というものはどんな傷にも効く特効薬だよ。とくに心の傷にはね。
かの人もそれを望んでいるのではないかな?」
「………………。ばぁかですか~? そんなことができたのなら……」
そういいながら思い出す。
彼女のノートの最期に書かれた一部分を。
『そして、軽蔑して欲しい。
 私のことなんてゴミ屑のように忘れて欲しい』
………………。
……そんなこと、できるわけが、ないだろう。
彼女の問いたげな顔、怒った顔、困った顔、なによりはにかんだような笑顔。
本当は彼女は無表情といっていいほど、顔に表情が出ないタイプなのだろう。
それでも、僕にはわかった。
僕だけにはわかっていたんだ。
「彼女がいない世界なんて、そこに流れる時間なんて、無意味ですぅ~。彼女は、彼女こそが―」
気分が悪くなってくる。
僕は彼女のことなんて何もわかっていなかったじゃないか。
彼女が何を見、何を聞き、何を思い、何に苦しんで、何に謝っていたのか。
僕はわかっていたつもりだった、だけじゃ、ないか……。
彼女のことなんか一つだって理解していなかったんじゃないか?
それでも、彼女は僕の事を生かしてくれた。
魂を返してくれた。
真剣に喋って、真剣に遊んで、友達だといって、いつも隣にいたじゃないか。
なにより、こんな僕を見て微笑んでくれていたじゃないか。
それだけは事実だ。
僕が彼女のことをどう誤解しようと、それだけは真実だと信じたい。
黙りこくってしまった僕を見て、男性はため息を漏らし、そして言う。
「たとえ話なんだが、君は、その失ってしまったかの人を取り戻すためにどれだけ払える?」
「はい~?」
「つまり、失ってしまったモノを取り返すために、いくらまで、どこまで代償を負うことができる?」
愚問だ。
僕は即答した。
「はい~? ハッ、僕の人生、命、魂の半分までならぁ、支払ってもいいですよぉ」
「? 何故、半分なんだ?」
僕はみみっちくコップの中身を舐める。
「簡単ですよぉ。本当は全身全霊を払ってでもいいんですがぁ、それだとぉ、彼女が戻ってきたときに、
彼女の隣には誰もいなくなってしまう。それじゃ、彼女はさびしいじゃないですかぁ。
だから、たとえ魂が半分にかけていようとも、彼女には僕が、友達が隣にいないとダメなんですよぉ~。
それにぃ、僕が返ってきて欲しいのはぁ、『僕の隣にいる彼女』なんですよぉ?
僕がいなくなっちゃ意味がないじゃないですかぁ?」
「? ということは、もし彼女が帰ってきて、君の下を去ってしまったら? そしたら、そんな彼女には何の価値もないと?」
「違いますよぉ。何聞いてるんですかぁ? いくら僕の隣に彼女がいても、彼女が幸せじゃなきゃ意味がない。
僕の隣にいて、もし幸せじゃないんだとしたら、彼女に三行半つけられてもしょうがないんですよぉ。
僕はね、僕が欲しいのはね。僕が、僕の隣にいる彼女を幸せにしたい。ということなんですよぉ。わかります?
結局、友達なんて、持ちつ持たれつじゃないですかぁ。彼女が隣にいるだけで僕は幸せだし、
僕が隣にいることで、彼女に何かを与えられるのだとしたらサイコーですよ」
「でも、それでも、彼女が君から得るものは何もないと、君を切り捨てたら?」
おいおいこの男、人の話聞いているのか?

286:彼女の事情と僕の慕情
07/07/15 16:30:09 kJaKvyeb
「だから、さっきも言ったじゃないですかぁ。彼女が幸せでなければ意味がない。
……あ~、もう、ここまで言わせるんですか? じゃ、言いますけどね……。
彼女を幸せにできるのは、この僕の隣しか存在しない。いや! 断言します! 
彼女を幸せにできるのは、この僕だけだと!! ……たぶん」
アルコールではない何かのせいで頭に血が上る。
男性は少しだけ、呆気にとられてしばらく何も言わなかったが、ポツリと言葉を漏らす。
「君は自分のことを、『醜く、愚かで、貧乏のどうしようもない人間』だと評価していたのではないのかな?」
どうしてそんなことを知っているのだろう。
だが、酔いが究極的に回り、冷静ではない僕は声を張り上げる。
「あんな美人がいつも隣にいたんですよ? いてくれたんですよ? 勘違いしない男はいないですよ」
「だから、彼女のことを幸せにできると勘違いした?」
「……勘違いでも、思い込みでもいい……。彼女が隣にいてくれるのなら僕は……」
いよいよアルコールは睡魔を呼び寄せ、僕の意識が怪しくなっていく。
その意識の中で思う。
僕の魂の半分なんかではとうてい彼女のことを取り戻すことはできないだろう。
それでも、彼女が隣にいてくれたら。
何でもできる。
何だってしてやる。
そして、彼女を幸せにしてみせる。
絶対に。
だから。
だから、だから、だから。
どうか、どうにか帰ってきてください。
薄れ行く意識の中で男の声が木霊する。
「ふん。君はたいそう気持ちが悪い男だな。言ってることは支離滅裂、まぁ、
酔いのせいなのかもしれないが。確かに、醜く、愚かで、貧乏だ。だが、
この私の前で、あの娘を幸せにできると宣言したのは君一人だ。大変遺憾なことに」
その声にこたえるように、店の親父の声もする。
「では、この者に?」
「何でもする、といっている。あの娘のためにこの者になにができるのか。少し興味がわかないか?」
「しかし……」
「なにより、この者といる時、たしかにあの娘は、わたしが見たこともないような顔をしていた。
無表情で無感動なあの娘が。無論、それが幸福だったからとは限らないが」
「そうですか。……私には、いつもどおりの無表情としか……」
「そして、娘の幸せを願わない親はいない。おい君よ。娘のためなら何でもでき、何でもしてやるといった君よ。
我が娘を幸せにして見せろ。力を失いただの人間に落ちぶれた娘を。
無知で無口で頑固で、だが無垢なあの娘をなにがなんでも幸せにしろ。ただし―」

気がつくと、僕はベッドの上に倒れていた。
外出着のままだったから、どこかに言って飲んだくれたのかもしれない。
だが、まったく記憶にない。
たしか、誰かと彼女の話をしていたような―。
酔いがまだ残っているのかぼんやりとした頭で思い出してみる。
すると。

トゥルルルルル、トゥルルルルル………………

唐突にソレは訪れた。
滅多にならない僕の携帯にかかった、たった一本の着信。
「…………もしもし」
酔いがさめた状態で久しぶりに出した声は、酷く擦れて、醜い。
僕はこんな声をしていたのか?
「………………」
無言電話かと思った。
だから僕は切ろうとした。
でも、思い出す。
確か前にこんなことがあったような。
………否。
いつもそうだったじゃないか。
あの人からの電話は、いつもこうだった。

287:彼女の事情と僕の慕情
07/07/15 16:31:18 kJaKvyeb
僕は知らず高鳴る胸の鼓動を抑えながら、通話に集中する。
そして、慎重に耳を澄ませれば、雑多な音に混じりかすかに人の声がする。
「………………」
それは。
「………………」
それは……!!
「………………」
―、―――。
僕は携帯を片手に矢のように飛び出した。

そしてついたのは、何を意味しているのかよくわからないモニュメントの前。
運動不足な僕は息を切らせながら、雑多な人々の中に視線をめぐらせ、かの人を探す。
いない。
いない、いない、いない。
どこだ、どこにいる?
僕は焦りながら、足を進め、一人ひとりの顔を確かめていく。
時々足を止め、鋭い視線で人々を探る。
その様子は明らかに不審で、警察官がいたら間違いなく職務質問されていただろう。
それでも見つからない。
もしかして、あの電話は僕の妄想が生み出した産物なのではないのか?
そんな予感、否、悪寒がよぎる。
「……いや、そんなはずはない。確かに……!」
声に出すことで、悪寒を遮り、意識を保つ。
もつれそうな足取りで、それでも諦めずにかの人を探す。
いない、いない、いない、本当に妄想だったのか。いない、いない、僕は何をしているんだ……? いな―。
そして、見た。
灰色の景色、灰色の人々、その中のたった一つの純白を。
背中まである長い黒髪は空の色を映しそうなほど煌き、全体的に細すぎる体は
白いワンピースに包まれており、その肌は、それと同じくらい白い。
僕を見つめる漆黒の瞳は赤ん坊のように澄んでおり、その目がすえられている顔は
どこか人形じみ、人間離れした美しさを保持していた。
その姿を見て、僕は涙がこみ上げてくる。
わけのわからない衝動に駆られ、叫びだしたくなる。
きっと、もう飛ぶことのできないその人は。
こんどこそ、ちゃんと待っていた。
僕を待っていたんだ。
僕はよたよたとかの人に近づき、倒れるように彼女を抱きしめた。
「あなたは……!! あなたって人は!! 本当に!!」
意味もわからず、喚き散らす。
その人も、……彼女も僕をあやすように抱きしめた。
「………………」
そして彼女は、意味も無く謝る。謝り続ける。
僕は興奮気味に尋ねた。
「どうして、どうしてあなたがここにいるんです!?」
本当はそんなことはどうでもいい。
彼女が僕の目の前に、僕の腕の中にいる、それだけで十分だ。
でも、何かを喋らなければ、嬉しすぎてどうにかなってしまいそうだった。
僕の問いに彼女は無表情に、だがどこか興奮したように答える。
「………………」
―わかりません。気がついたら人間でした。
あまりにもどうしようもない回答。
いつものような、どこかたどたどしい子供のような呟き。
僕はそんな彼女の一言に無性に可笑しくなって
「アハハハハ、ハハハハハハハハハ……」
笑い出してしまった。
可笑しい、可笑しい、可笑しい。
ダメだ、どうしても笑いが止まらない。
そんな僕の胸で彼女は泣き出した。
なぜなのだろう。
でも、傲慢かもしれないが、僕にはその理由がわかったような気がした。

288:彼女の事情と僕の慕情
07/07/15 16:32:47 kJaKvyeb
僕は笑いながら考える。
今の状況を。
一人は大笑いし、一人は大泣きしている。
傍から見たら、どんな二人に見えたのだろう。
僕はソレさえもおかしくて笑った。
その時、脳裏に、微かに聴いた覚えのある声が響いた。

『―君の魂の半分、確かにいただく。それで君はあの娘を幸せにして見せろ。
ただし、このチャンスただではない。君の魂の半分だけでは到底足りないこの賭けを
成立させるために、君は、もう片方の魂をかけなければならなくなる。
つまり、あの娘を幸せにできなければ、もう半分の魂も頂戴することになるということ。
これは実験でもあり、試験でもある。だが、それ以上に、あの娘を幸せにしたい私と君が望む結末を導き出すための唯一の道でもある。
私の勝手な行い、勝手な期待。だが、君はそれでも構わないだろう? なにしろ娘が、彼女が―』

―僕の隣にいるのだから。
僕はそういわれたときに確かに、頷いた。
彼の提案、賭けを了承したのだ。

「(僕らの評価、結論はとりあえず、しばらく保留ということか)」
そして、それらは全て、僕の手にゆだねられているらしい。
彼女のことを幸せにできるんだろうか?
賭けられているものの大きさに体が震える。
もう、自分が醜く、愚かで、貧乏だといういい訳はできない。
それでも、僕はやらなければならないのだから。
死にたくない僕のためにも。
幸せにしたい彼女のためにも。
たった一つの『彼女の事情』は、かけがえのない『僕らの事情』になったのだから。
そこまで考えた僕は、腕の中の暖かな存在をもっと確かにしたくて、目を瞑り、腕に力を入れた。

そして、ひとしきり笑い、泣いた後、彼女は言った。
「………………」
―帰りましょう。“家”に。

「当然です」
僕は瞳に溜まった涙をふき取りながら、大きく頷いた。

見ていろ、どんな手を使ってでも、彼女を幸せにしてみせる。
彼女がもう要らないというまで、幸せ漬けに、幸せまみれにしてみせる。
この賭けは、僕が勝ち取ってみせる。
だから見ていろ。いつまでも。
僕らの幸せな生活を。
そして、なにより、ありがとう。
お義父さん。

僕はためらい、彼女は躊躇なく、手をとった。
いつもの光景に、僕は胸が熱くなる。
涙を悟られないように、僕は笑った。
こちらを見つめる彼女も、同じように笑っていた。
僕にしかわからない微妙な微笑で。
僕は彼女の手を、もう離さないように強く握った。
彼女もまた、小さな手で強く握り返してくる。
そして、僕らは帰っていく。
僕らの家に。
いつものように。
笑いながら。

薔薇色の日々を、いつまでも。




289:230
07/07/15 16:37:08 kJaKvyeb
以上です。

稚拙なSSにここまで付き合ってくださった方々。
駄文の垂れ流しを許容してくださった方々。
あまつさえ感想まで書き込んでくださった方々。

皆様のおかげで何とか完結させることができました。

では、改めて。
ここまでお付き合い有難う御座いました。
また機会が御座いましたら、お会いいたしましょう。

そのときまで、ごきげんよう。

290:名無しさん@ピンキー
07/07/15 17:11:35 Zdsg8tJ8
>>230さん、GJ。
いい話だ。とにかくいい話だ。
特に最後の1行がお洒落だな。

では、また。

291:名無しさん@ピンキー
07/07/15 19:21:35 sAWsevrS
うおあっ、完結編キタ────!やばい感動度が高すぎてヤバい。もうひたすらにGJです!

292:名無しさん@ピンキー
07/07/15 22:26:11 wfIALHgb
GJ!
ちょっとだけ主人公の事を尊敬してしまった。

293:名無しさん@ピンキー
07/07/16 03:36:07 lVX+tnwo
まずいってこれは・・・・・名作すぎる。
涙と一緒にいろいろと汚れた物が流れていったような気がするよ・・・

さて言わせてもらうよ。
神GJ!!

294:名無しさん@ピンキー
07/07/16 04:44:59 GW7M23MQ
>>289
230の君グッジョb!
昔どこかで感じた感動を思い出したようだよ・・・

途中携帯のとこから俺自身が動作に移行して、走り、外聞を気にせず、彼女を見つけ、そして泣いた。
そもそも事の男自身狙った感じではあったが、それこそがこうまでシンクロさせ、
長文ダメダメキングのこの俺を毎回楽しみにさせてたのにはほんと驚いたよ……

最後は互いが前を見据え共に歩んで行ける事を・・・


「最後の最後にありがとうを君へ」


295:名無しさん@ピンキー
07/07/16 08:58:05 RNsXBJOc
感想が無駄に厨臭い長文だと萎えるな

296:名無しさん@ピンキー
07/07/16 13:34:22 3d3bxwFQ
これだろ?!
URLリンク(jggj.net)
URLリンク(jggj.net)
URLリンク(jggj.net)

297:名無しさん@ピンキー
07/07/16 19:06:53 qsstGIeJ
ここのスレマンセーしてる奴らって、リアルで女と話せずに女が全部従順で
自分のいう事に頷くだけの存在ならいいなーとか思ってるヒキオタなんだろうな

298:名無しさん@ピンキー
07/07/16 19:15:55 gND64C8J
以下、何事も無かったかのようにスルー。

299:名無しさん@ピンキー
07/07/16 19:44:06 qsstGIeJ
否定しない、つまり認めるってことか

300:名無しさん@ピンキー
07/07/16 22:58:50 0CvBsIlW
なんという一人芝居……

301:名無しさん@ピンキー
07/07/17 00:02:16 osEbpVBk
だいたいリアルなんかくだらないことが殆どだし。嫌になるよ。
せめて二次元だけでも癒しが欲しいのさ。

302:名無しさん@ピンキー
07/07/17 00:03:24 d16xRBps
嵐に反応するなってーの

303:名無しさん@ピンキー
07/07/17 00:10:49 xVSyYMa8
エロパロに来る人なんてみんなヒキオタですっ!!



……あれ、ちがうの?

304:名無しさん@ピンキー
07/07/17 01:25:52 yhT6BMkl
>303
お前は全俺を敵にまわした

305:名無しさん@ピンキー
07/07/17 01:56:17 SrYzALY8
>>303
お前に全俺を敵に回したかった

306:名無しさん@ピンキー
07/07/17 02:01:17 UBnR+iiR
他所でも煽りやらかしたやつだからスルー推奨。

307:名無しさん@ピンキー
07/07/18 03:02:59 sRXcIRdC
保守
↓以下無口女の作り方を書き込んでくれ。

308:名無しさん@ピンキー
07/07/18 11:59:42 Hji6gfPr
①口が臭い、声がうざいなどと言い続ける
➁さらに喋る度に殴りつける
③それでだめなら声帯をぶった切る

勿論DVで訴えた際には必ず殺すと言い含めておくのは基本

309:名無しさん@ピンキー
07/07/18 12:21:42 HvqwoGon
その手の無口にはイマイチ萌えないなぁ・・・

310:名無しさん@ピンキー
07/07/18 13:29:33 BTT3Xvv8
日本語のしゃべれない女のコ
共通言語が外国語しかないと、必然的に口数は少なくなる

311:名無しさん@ピンキー
07/07/18 15:13:30 W3UoyfUf
>>307
本読ませまくる
ひたすら

312:名無しさん@ピンキー
07/07/19 01:32:23 z5qZhjOc
>>310
人によっては母国語で猛烈にしゃべりかけてくるので要注意
 あ、でもお互い言葉を教えあうというシチュいいなぁ・・・

313:名無しさん@ピンキー
07/07/19 02:37:57 BsA7LmtI
お互い自国語で話してて通じてないのに、
続けてるとなんか楽しくなってくることあるよな。
うなずいたり、ちょっと首傾げたり笑ってみたりしてんの。
いやこれじゃ全然スレ的にダメだが。

314:名無しさん@ピンキー
07/07/19 14:10:10 /CGT44Md
>>310
だがそれを書こうとすると、作者は出す国の言葉をある程度しゃべれなくてはいけないような気がするのは俺だけだろうか?
おもしろそうだけど

315:名無しさん@ピンキー
07/07/19 17:33:52 EzfV12al
主人公の一人称にしてしまえば、判別不可能な言葉はある程度主できるんだぜ。

316:名無しさん@ピンキー
07/07/19 18:41:03 88/MFZFt
>>314
つyahoo翻訳

317:名無しさん@ピンキー
07/07/21 00:54:40 MWsYx+B/
人魚だから発音(発声)出来無いってのがあったな。


318:名無しさん@ピンキー
07/07/21 04:11:14 2DFcj/r1
投下してくれ

319:名無しさん@ピンキー
07/07/21 21:22:05 hUU08EIv
私の知らない武器が内蔵されているのか…?

320:名無しさん@ピンキー
07/07/21 21:22:53 hUU08EIv
すまん!誤爆した

321:名無しさん@ピンキー
07/07/22 15:14:03 WecqGOL2
>>313
もう読んでるかもしれないけど、

【不可抗力】女の子と二人きりスレの520~のシチュがまさにそれかと。

完結してるし、無口スレの住人にも向いてそうな感じの話かも?

322:名無しさん@ピンキー
07/07/23 03:32:05 8VD74LaO
書いてくれる職人さん来ないかな・・・

323:名無しさん@ピンキー
07/07/23 12:56:40 E9GkA+Nn
主人公・・・俺
ヒロイン・・・雪華 (設定に沿って無口。)
こんなカンジで書いていきます。
初心者なので、見苦しいところはあるかもしれませんが、よろしくお願いします。

324:名無しさん@ピンキー
07/07/23 13:14:23 rDkLx+IC
>>323
改行を多用し過ぎないことと
書きながら張るのはしない
ということを忘れないで

325:名無しさん@ピンキー
07/07/23 13:30:39 E9GkA+Nn
四月の春。みんなが入学にうかれる季節に、俺は彼女と出会った。
彼女の名前は雪華。
俺とイッコ下で中学卒業したての高校一年生。
ちょうど入学式&始業式も終り、俺は一人で帰っていると、前に女の子がいるのに気付く。
彼女の特徴の長い黒髪に魅かれて、声をかけた。
「君、この春入学してきた、一年生だよね。俺、一応帰り道一緒みたいだから覚えておいてね。」
帰り道一緒だから、覚えておいてって、あまりにも変だけどこれ以外話し始めの機会が無かったので、右肩に掛けているバッグの中の参考書と教科書を見ながら言った。
「私は・・・雪華・・・。」
持っていた本のページをめくりながら、彼女は答えた。
不自然な喋りだしに無視されると思っていた俺は、すんなり来た返事に少々戸惑いながらも、話を続けた。
「じゃあ、雪華でいい?」
「うん・・・。」
いきなりの呼び捨てに今度こそ無視されると思ったが、またもや、彼女は答えてくれた。
「家どこ?」
「○○町三丁目」
「じゃあ、俺ん家の向かいじゃん! 」
意外だった。俺ん家の向かいといえば、近所でも有名な夫婦ゲンカの名所で、
毎晩、毎晩大声でケンカしているので、近所の評判は悪かった。俺は敢えてそのことは聞かず、話題を変えた。
「ウチの学校の受験、何点で入った?」
「492点・・・」
これには、びっくりした。入学式最中となりの男子が話していた、ウチの学校に492点で入った
バケモノがいるというのは本当だった。(男子の情報力の凄さにも驚いたが)
「じゃあ、今度勉強教えてもらっていい?」
「いいけど・・・、あなた私の先輩だから・・・多分たいしたこと教えれない・・・」
「大丈夫だって! 俺バカだから(笑」
まあ、確かに、高2の俺が入学したての高1に勉強を教えてもらうのもなんだが、俺の狙いはそこじゃなかった。
勘がいいやつはもうここで気付いたと思うが、俺は雪華のことが好きになってしまった。
ヒトメボレとかいうやつだ。


326:名無しさん@ピンキー
07/07/23 16:24:41 0Mkf4+nN
なんとまぁ…

327:名無しさん@ピンキー
07/07/23 16:28:35 +CMQ8Vao
これまたキツい…


328:名無しさん@ピンキー
07/07/23 16:51:17 E5EmfJC5
なんというか・・・・・
まあ、どんまい。

329:名無しさん@ピンキー
07/07/23 21:00:31 RaVXiWpW
マジレスすると、
ネット上のものでもいいから、小説をもっと読んで見るといい。
意気はなかなかいい。

330:名無しさん@ピンキー
07/07/23 21:36:46 rA5X1qDP
とっかかりとしては、ネット小説やラノベでいいと
思うのだが、できれば、夏目漱石とか志賀直哉とか、
古典といわれる、小説にも挑戦してみたら
もっといいと思うぞ。


331:名無しさん@ピンキー
07/07/23 23:03:42 0ZZ7y790
>「家どこ?」
>「○○町三丁目」
>「じゃあ、俺ん家の向かいじゃん! 」

紅茶がキーボードまみれになりました……

それはともかく、
マジレスすると、知り合いなどで普段から小説を読んでる人に読んでもらって
容赦のない意見をもらうといい気がする。
それで書かなく(書けなく)なってもそれはそれでいいんじゃないかと。

332:名無しさん@ピンキー
07/07/23 23:05:35 d5t6z0eR
みんな優しいな
そういうスレの空気は嫌いじゃないが

333:名無しさん@ピンキー
07/07/23 23:48:19 E5EmfJC5
>>332
もうこうやって職人を育てていかないとスレの過疎具合が限界なんだよ;;

334:名無しさん@ピンキー
07/07/24 01:34:55 SOMEZ6DQ
皆なかなか厳しいな。
違和感読んでしまった俺ってダメなのかな。
皆のコメント見た上でもう一度読んだら
「成る程」とも思ったが。

331のポイントも三回読んで初めて気付いたぞ。

。。。と、こんな読者もいるので
E9GkA+Nnさん、気にしすぎることなく、
このまま頑張って続けください


335:名無しさん@ピンキー
07/07/24 03:36:50 6gTeKCrV
>>331のどこが変なのか分からない俺orz
教えて童貞さん

336:334
07/07/24 04:09:32 SOMEZ6DQ
>>334
> 違和感読んでしまった

「違和感なく読んでしまった」の間違いだ。
orz


337:名無しさん@ピンキー
07/07/24 06:20:03 ZTyKaUV5
3丁目という情報だけで向かいの家とわかる。
(3丁目には2軒しかないのかもしれない)

向かいの家が夫婦げんかで有名なのは知っている。
でも子供の顔を知らなかった。

338:名無しさん@ピンキー
07/07/24 09:31:51 gYtZO2th
下はまぁ子供が居なくても夫婦喧嘩の激しい家があるからともかくとして、上はな

339:名無しさん@ピンキー
07/07/24 11:08:32 np//1+U8
多分、生まれて初めて書いたSSだと思うが、それを躊躇する事無く
ココにうp出来る『勇気』に対して、最大級の敬意を表する

少なくとも一週間以上、隠しフォルダの中で寝かせすぎて
腐敗寸前まで逝かせている自分に比べれば、百倍もマシ

340:名無しさん@ピンキー
07/07/24 11:45:34 0gmjANm5
よし、腐る前に放出するんだ!

341:名無しさん@ピンキー
07/07/24 13:36:40 FD92lQis
腐ってても美味しくイタダク!

342:名無しさん@ピンキー
07/07/24 13:47:27 PxvGfWLz
ハハノ\/\

343:名無しさん@ピンキー
07/07/24 13:51:59 PxvGfWLz
今から続き書いていくんだけど、
ちょっと焦ってるから、話の展開速いけど
気にしないで読んでください。

344:名無しさん@ピンキー
07/07/24 16:36:53 GMIChF8l
wktk

345:名無しさん@ピンキー
07/07/24 21:45:36 w7SJ3CsH
今は発酵させていると考えるんだ


よし、そろそろ蔵から出してみようか?

346:名無しさん@ピンキー
07/07/25 00:06:41 SOMEZ6DQ
339に皆で勇気を分けてあげなきゃ

347:名無しさん@ピンキー
07/07/25 04:49:45 rtYPZboc
>>343
>ちょっと焦ってるから、話の展開速いけど

GJ !!

勇者に乾杯!

348:名無しさん@ピンキー
07/07/25 04:52:31 DGXcwKNa
>>343さあ舞台は整った。腐る前に投下したまえ。

349:名無しさん@ピンキー
07/07/25 23:45:54 1mzYAmfG
ちょっと、待ってください・・・。(初心者なもんで、打つの遅いです。。。)

350:名無しさん@ピンキー
07/07/25 23:55:46 hnwgZUDw
断りはいらないよ。
一週間後でも1ヶ月後でも構わないんで
できあがった時点で投下してくれればいい。

351:名無しさん@ピンキー
07/07/26 05:10:43 QLc5j37y
>>349ゆっくり推敲して自己最高の作品を投下してくれたまえ。


ずっと君の後ろ7mから無口になって見守るから。

352:名無しさん@ピンキー
07/07/26 12:14:08 xalQV6zc
7mって俺の真後ろじゃねぇか。やめてくれよ

353:名無しさん@ピンキー
07/07/26 17:24:31 UH8L4WzA
じゃあ俺は毎晩>>352の枕元で見下ろしているよ

354:名無しさん@ピンキー
07/07/26 17:40:57 25wGU1aT
耳元に熱い吐息がかかる。
無口な女だとは思っていたが、こういうときまでとは
下からしがみつく細い腕が愛しさを募らせる
潤んだ瞳は俺しか映さない

可愛い女だ

自分が、この女から離れられないことを理解した夜

355:名無しさん@ピンキー
07/07/26 17:50:33 h23S74ig
>>331
>紅茶がキーボードまみれになりました……

ちょwどんな紅茶だwww

356:名無しさん@ピンキー
07/07/26 18:26:47 EeZm8OaR
>>355
ネタに(ry

357:名無しさん@ピンキー
07/07/27 02:42:35 zCcXY0XW
>>354>>353の事を書いたのかと思って笑い死んだwww


スマソ

358:名無しさん@ピンキー
07/07/27 23:12:21 y9sWNqUp
ん?

359:名無しさん@ピンキー
07/07/28 05:19:47 kRXIr/kH
つまり>>354の耳元に熱い吐息がの部分が、>>353>>352の枕元で>>352の耳に熱い吐息を吹きかけてあげてるのかなと。

わかりにくくてスマソ

360:名無しさん@ピンキー
07/07/28 14:18:31 8w2/TJeS
流れ切って小ネタ。


ポンポン
弱々しいながらも気付ける範囲に叩かれて振り向くと
「・・・・・・」
無口な幼なじみがひとり。
といってもこの場には俺を含めて二人しかいないわけだが。
「ん?どうした?」
「・・・背中・・・向けて・・・」
最低限聞き取れる声の言われるがままに背中を向けたのち、
「んで?」
と問えば、
「・・・文字・・・当てて・・・」
と人差し指を出しながら答えた。
なるほど、よくわからんが文字当てゲームをやろうとしてるらしい。
さして断る理由もないので
「よし、来い!」
と威勢よく言って背中に意識を集中させた。
それから多少間があった(その中に深呼吸するような音が聞こえた)のち、
スススっ、と背中をなぞってきた。

・・・・・・

「・・・ぉ、終わり・・・」
なんか最後のほうが震えていたような気がするが、長いことかけたものがようやく終わった。
だがそのおかげでわかりやすかったのですかさず振り向いて答えを言おうとしたら、
「・・・・・・」
顔を真っ赤にさせている無口な幼なじみがひとり。
といってもこの場(ry
じゃなくて、
「ど、どうした!?風邪でも引いたのか?!」
「・・・ぇ、いやちが」
相手の言うことお構いなしに額に手をあてた瞬間、
しゅ~、ぱたん
と音をたてて倒れ込んだ。「おい?!大丈夫か?!おーい・・・」



小ネタなうえ文才がないので続けられません。
あと携帯から書いたので見づらいかもしれないです。

361:名無しさん@ピンキー
07/07/28 17:04:21 x9inJUH3
GJ!
背中には「好き」とか書いたのかな?

362:名無しさん@ピンキー
07/07/28 19:51:02 A2PjOwBa
>>360
 GJ!
 本当、かわいいよなぁ

 短く効果的にまとめられる文才、テラホシス
 

363:名無しさん@ピンキー
07/07/28 22:38:21 H1o/blrY
800

ニャ━━ヽ(゚∀゚)ノ━━ン!!



364:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 09:12:54 NWfP2fgi
「シテ」

とか書かれたら・・・

365:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 12:18:03 /ZpyD5zq
おkするしかないだろ・・・・・ 常考

366:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 12:19:43 /ZpyD5zq
つーか今更だが改めて読み直してみると>>360氏文才ありすぎwww
しかも携帯でこのクォリティ
ぜひ続編書いていただきたいです。

367:名無しさん@ピンキー
07/07/29 22:39:50 64etFQfM
そろそろ誰か池戸美穂について語ってくれないか?

368:名無しさん@ピンキー
07/07/30 05:26:45 BhHZkoh5
>>360
かわいいねぇ~
どうも無口っ娘はティセ=ロンブローゾを想像しちまうぜぃ!

369:名無しさん@ピンキー
07/07/30 10:36:55 YU9YGEB4
>>360
GJ
さぁ、そのクオリティのまま続編を投下するんだ!

370:coobard ◆69/69YEfXI
07/07/31 22:33:14 tfQb24Fp
初めまして。coobardと申します。
今から12レスほど投下させていただきます。
よろしくお願いします。

371:1/12
07/07/31 22:34:03 tfQb24Fp
《無口なミュウマ》

 ぼくは、いつもの保健室で目を覚ました。
 小さい頃から体が弱くて、よく保健室にお世話になっている。
 今日も朝礼で気分が悪くなり、ここに来てそのまま眠っていた。

 天井が仄明るい。
 グラウンドに反射している初夏の日射しを、窓から受け入れてるんだろう。
 ぼくのいるベッドは、つい立てに囲われている。外は見えない。
 隣のつい立ての向こうにはベッドがもう一つあるけど、いつも誰もいない。
 足元のほうにいるはずの、保健の先生も気配がない。

「静かだな……」
 ただ、わずかに体育の授業をやってる音が聞こえる。
 野球かな。高い金属バットの音と同時に、女子の歓声が響く。
 窓際から授業そっちのけで応援してるんだろう。

 ふいに、すぐ近くから鳥の羽ばたきが聞こえた。
 またカラスが来てるのかな……。カラス、多くなったなぁ。

 そんなまだ半分眠っている思考の中にぼんやりと、ある女の子の顔が浮かぶ。
「そう言えば佐藤さん、そんなのに全然興味なさそうだったな……」

 ぼくには最近、気になる女の子がいた。
 名前は佐藤 美馬(さとう みうま)。
 彼女はいつも一人で、教室の窓から外を見たりしてる。
 実は特に何を見ているわけでもなく、ぼんやりとしているだけみたいだけど。
 成績も運動も普通。話しかけられれば返事はするが、ほとんど単語だけ。
 会話が続いているのを見たことがない。
 誰にも興味が無さそうで、必要以上にしゃべらない。無口だ。何を考えてるんだか全然分かんない。
 でも、そこがぼくの興味を惹いた。
 知りたい。彼女が何を考えているのか。
 そう思った。

372:2/12
07/07/31 22:35:00 tfQb24Fp
 見た目は全体的に小さい。出るところも全然出てない。
 高校生なのに、第二次性徴のまだない少年とも少女ともつかない、そんな中性的な雰囲気だ。
 髪は普通に黒く、短めで肩より上。
 顔はけっこう整っている。でも、きれいというよりは幼い、かわいいといったほうが似合う気がする。
 瞳は印象的だ。明るい茶色、とび色っていうのかな、そんな感じ。

「でもなぁ……」
 ぼくは腕を上げて、それをもうかたほうの手で確かめた。なんて白くて細い腕。
 ぱたりと腕をベッドに落として、溜息をついた。
「こんなんじゃ、佐藤さんどころかどんな女子でも相手にしないよな……」

 ふいに人の気配がした。
「大丈夫? 佐藤さん」
 あの声は、うちのクラスの保健委員だ。どうやら佐藤さんを連れてきたらしい。
 佐藤さんが保健室に来るなんて珍しい。
 確かに物静かで無口な子だけど、いつも普通に元気そうだった。

 保健委員は佐藤さんを奥のベッドのほうへ連れて行く。
「先生いないけど、とりあえずそこのベッドで横になってればいいよ! それで大体、大丈夫だから」
 保健委員は大雑把な性格だった。

 保健委員が教室に戻ってしばらくすると。
 どこからか優しい花の香りが漂ってきた。佐藤さんの香りなんだろうか。
 ちょっと頭を回して、隣のつい立てのほうを見た。
 窓から入る明かりで、つい立てには佐藤さんのシルエットが映っている。
 彼女は横向きに転がっていた。シーツを被っているようだ。
 つい立てひとつ隔てた向こうに、佐藤さんがいる。その状況にちょっとドキドキした。

 彼女のほうを何となくそのまま見ていた。
 肩が動く。
 シーツの衣擦れと一緒に、かすかな金属音がした。
 なにかアクセサリーのチェーンみたいだ。

373:3/12
07/07/31 22:35:46 tfQb24Fp
 彼女が微妙に震えだした。
 吐息と声が聞こえてくる。
「……ふっ……うう」
 これは……泣いてる?
 どうしたんだろう。
 なにがあったんだろう。
 彼女は何か、つぶやいた。
 しかし、それは聞いたこともない言葉だった。
 でも。
 悲しげなのは、わかった。
 ぼくは……なにもできないんだろうか。
 好きな子が悲しんでるのに。

 いや。なにができるかじゃなくて、なにかしないといけないんだ。
 ワケがわからなくても、それでも、きっと。

 ぼくは息を大きく吸って、深呼吸した。
 そして。
「あ、あの佐藤さん?」
 声を掛けた。

 彼女の影が、びくっとなった。
「サハラ……君?」
 彼女のか細く頼りない声。
「う、うん。ぼく、体弱くてさ。よくここにいるんだ」

 返事はない。
 ぼくは心臓の鼓動をなんとかしようと右手で胸を押さえながら、話を続けた。
「佐藤さん、ちょっと聞こえちゃったんだけど、その、泣いて……ないかな」
 彼女の、すん、という鼻を鳴らす音が聞こえた。
「えと……ぼくでよかったら、話、聞くけど……」
 言った。言えた。

374:4/12
07/07/31 22:36:21 tfQb24Fp
 しばらく沈黙。
 怒った、かな。それとも無視、なのか……。

 ふいに、彼女のシルエットが大きく動いた。
 ベッドから降りて、ぼくの足元のほうへいく。
 つい立ての向こうから、ぼくのほうをちらりと覗いた。
 ちょこっと頭から鼻先までが見える。
 髪はくしゃくしゃで、その瞳は潤んでいた。
 そのまま、そこで立ちすくんでいる。

 また、無言の時が流れた。
 ぼくがその沈黙に耐えられなくなって、何か言おうとしたとき。
 ここが静かでなかったら、聞き取れないほどの声がした。
「……いいの?」
 ぼくは体を起こして即答した。
「あ、うん! もちろんだよ」
 彼女はじっと見つめている。
「あ、えと、そ、そこで立って話すのもなんだから、よ、よかったらこっちに……」
 それってすっごい誘い文句じゃん。なに言っちゃってるんだ、ぼくは。
「あっ、いやそれってヘンてか、やらしい意味じゃなくて、ごめんね、なんかその」
 照れ笑いしながら、彼女のほうを見ると。
 彼女もちょっと笑って。
 ぼくの太もものへんにやってきて、ちょこんと腰を掛けた。
 短い制服のスカートがひらりと揺れる。

 彼女のきれいな太ももに置かれた両手は、緊張のせいなのか、きゅっと握られていた。
 彼女の横顔はうつむき加減で。
 寂しそうに見えた。
 それだけで、ぼくの心は締め付けられた。
 なんとかしてあげたい。

375:5/12
07/07/31 22:37:00 tfQb24Fp
「それで……佐藤さん。なにか……あったの?」
 彼女はぼくの言葉を聞くと、スカートのポケットから何かを取り出した。
 握られたこぶしを、ぼくのほうへ突き出すと、ゆっくり開く。
 そこには銀色のペンダントがあった。さっきのチェーンの音はこれだったのか。
 ペンダントトップは卵形で、開くようになっているみたいだ。
 周りの飾りはものすごく細かく作り込まれている。
 よく解らないけど、相当高価な物に違いない。
「すごく、きれいだね」
 彼女は軽くうなずくと同時に、それをさらに突き出す。
「え、これぼくに?」
 彼女はちょっと笑って、首を横に振る。
「開けて」
「あ、そか、はは……」
 ぼくは勘違いに赤くなりながらそれを手に取り、ペンダントトップを開けた。

「えっ……これって……」
 そこにはどうみてもぼくの顔写真があった。
 だが、その肩まで写っている服装は見たこともないもの―なんというか貴族っぽいものだった。
「ぼくの写真……? にしては、こんな服持ってないし、撮られた記憶もないけど……」
 彼女を見ると、また軽くうなずいて。
 今度は寂しそうに笑う。
「それ、向こうであたしの好きだったひと」
 その言葉に対して瞬間的に色々な思考が巡り、ちょっとパニックになる。

 向こう? ってどこだろ。
 恋人がいたの? いや、好きだっただけなのかな?
 それがでも、ぼくにそっくりってどういうこと?
 なんでそれを見せたの?

 ぼくがそんな状態で、あわあわしながら彼女を見ると、その瞳が強く輝いていた。
「運命、信じる?」
「え……?」
「あたし、信じる」

376:6/12
07/07/31 22:37:45 tfQb24Fp
 彼女はペンダントを持ったぼくの手を上から握った。
 ぐっと顔が近づく。
「もう戻れない。でも……」
 彼女の顔が、赤みを増しながら更に近づいて来る。
 ぼくはパニック度と血圧がぐんぐん上昇した。
「え、え、なに」
 鼻が当たるほどの距離。
 彼女が不思議な言葉を囁く。
 意味は解らないけれど、心地良くて。
 ぼくは彼女の頬の熱を感じて。
 彼女は目を閉じて。
 ぼくの唇を奪った。

「あ……そ、そんな、佐藤さん……」
 長く熱く濃いキスの後、彼女はぼくの太もものあたりで馬乗りになっていた。
 ぼくの股間が、彼女の開けた制服のズボンから飛び出している。
 ぼく自身はもうすっかり、彼女の手の中にあった。
 彼女は少し楽しそうに、ぼくのモノのぬるぬるとした先端部分を弄ぶ。
「う、く……」
 彼女はくす、と笑ってぼくを見る。
「はじめて?」
「そ、そりゃあ……。あ、もしかして佐藤さんは違うの? あの、ぼくに似た人と、その」
 首を横に振る。
「好き、だっただけ。してない」
「そ、そうなんだ」
 こっくりと、うなずいた。
 ぼくは彼女に失礼だけど、少しほっとした。
 男の身勝手、というか……好きな子の処女は自分が貰いたい、なんて思ってる。

 彼女は火照った顔でぼくの手を取ると、自分の制服のすそから中へ入れる。
「ふっ……ん……」
 ぼくの手がお腹に当たる。なめらかな肌触り。
 ムダな脂肪がないどころか、本当に子供のように痩せている。
「はぁっ……おっぱい、触って」

377:7/12
07/07/31 22:39:14 tfQb24Fp
 ぼくは彼女の指示に従った。
 ハッキリ判る肋骨の上で、わずかに膨らんでいる胸。その先端が痛々しく尖っている。
「の、ノーブラなの?」
 恥ずかしそうに潤んだ瞳で、小さくうなずいた。
「そか……」
 ぼくは精一杯優しく笑って、彼女の乳首を親指で刺激した。
「ふぅ……んっ……はぁっ」
 小刻みに彼女の体が震えた。
 あごが上がって、背中が反る。
 その反応を見て、ぼくの股間に血が集まるのが判った。
 ソレを握っていた彼女が少し、はっとした。
「また、硬く……」
 彼女の手にぼくのモノから、鼓動が伝わる気がした。
「あ、はぁ……」
 彼女の眼がとろん、となる。
「も、もう、挿れたい」
 ひざ立ちになって、自分のパンツが覆っている大事な部分を晒した。
 その濡れてぬめぬめと光る割れ目からピンクの肉が覗く。
 そのまわりに毛はなく、つるりとしている。こっちも子供みたいだ。

 彼女はぼく自身に手を添えて、その部分にあてがった。
 ゆっくり腰を落としていく。
「ん! んん……」
 強い抵抗感がある。
 しかしそれさえも、強烈な快感の渦に巻き込まれている。
「あ、佐藤さんの中、すごく熱くて……っ! 気持いい!」
 彼女はあごを上げたまま、金魚のように口をぱくぱくさせている。
「く……はぁっ!」
 全体重がぼくの腰に乗った。
 根元まで、ぎっちり挿入された。
「あ、はぁ……ああ、うあ、はぁはぁ……っ」
 彼女はもう苦しそうではなかった。
 半分笑うように、口を開けて舌を突き出す。
 よだれがたれて、制服を汚した。
「サハラ君……きもち、いい……あたし、きもちいい」
 ぼくは彼女の腰を抱いて、中を突いた。
「うあっ! あ、ああ!」
 彼女の腕が、ぼくの首に回る。
 見上げると、その瞳は焦点が合っていない。
「はぅう……好き、好きぃ……ナオユキぃ」
 ぼくの名前を呼びながら、唇に吸い付いた。

378:8/12
07/07/31 22:39:54 tfQb24Fp
「ん! んぷ、ちゅる、んん!」
 ぼくはあまりの淫乱ぶりにびっくりしたが、こうなったらもっと激しくしてやろうと思った。

「ん! どう! 佐藤さん! 良いんだよね、これが!」
 スカートの中に手を入れ尻を掴んで、思い切り突き込んでいく。
「うあ! あ! ふんぐ! あぁお! う!」
 彼女は軽い体を仰け反らせて、喘いだ。
「ミ、ミュウマって、呼んで! ナオぉ!」
 ぼくは腰をさらに回すように突き上げる。
「ん! ん! ミュウマ、腰が動いてるよ、スケベだなぁ!」
 彼女の腰はぼくの動きに合わせて、そのぐちょぐちょになった部分を強く擦りつける。
「ああはぁ! あたし、スケベ! スケベなのぉ!」
 彼女の腰がうねうねと、快感をむさぼるように動く。

 ぼくはそれを放置して、両手を上にずらし、彼女の制服をまくり上げた。
 淡いピンクの乳首が両方、露わになる。
 その硬く小さな先っぽを、唐突に吸った。
「ひうっ!」
 一瞬、彼女の動きが止まる。
 ぼくは構わず、さらに吸って舐めた。
「あぶぁ……! くるるぁ! いふぃんくぉ! いふぃ……」
 意味不明の言葉が飛び出した。

 彼女の動きが止まったままになったから、ぼくはまた、突き上げた。
「ん! ナオ、いふぃん! くるるぅ!」
 彼女は泣きそうな声を上げた。
 よく解らないがどうやら、絶頂が近いようだ。
「ぼくも、ん! い、イクよ! イクイク……!」
 ぎゅっと締め付けられる感覚が、ぼくの射精感をより強くした。
 彼女はぼくを抱きしめる。
 脚もぼくの腰に絡まる。
「あ、な、中にでっちゃ、出ちゃうよ! い、いいの? ミュウマ!」
 彼女はいやらしい水音と共に腰をぼくの腰に打ち付けながら、囁く。
「ん、いい、中で、中にいい! いふぃん、う、いふぃんんん!」

379:9/12
07/07/31 22:40:45 tfQb24Fp
 不思議な、でも、かわいい鳴き声にぼくの我慢は限界に達した。
「あ、あっ! ミュウマ、出すよ出すよ出すよっ! うっうう!」
「ナオナオナオぉ! いふぃ! いふぃいふぃいふぃぃ!」
 ぎしぎしと安物のベッドが激しく軋んだ。
「うあぁぁ―ッ!」
「いぎぅ―ッ!」

 ぼくたちは、思い切り果てたあと。
 狭いベッドで、抱き合いながら微睡んでいた。
「ミュウマ……好きだ……」
 彼女の髪をくしゃ、と掻いた。
「ん……ナオ。好き……」
 初めてがこんな経験で良いんだろうかとか、それにしても誰も来ないってどういうことだろう、とか。
 そんなことをぼんやり考えていると。
 ベッドの片隅に、いつの間にか黒いオウムのような鳥がいた。
 くくっと頭をかしげると、急にしゃべった。
「ミュウマ様。ついに本懐を遂げましたか」
 ミュウマは上半身を起こすと、こっくりとうなずいた。
 黒い鳥がまた、頭をかしげた。
「ふむ。では、魔法を解きましょう」
 ミュウマは、ぼくに軽いキスをしてベッドを降りた。
 元々いた隣のベッドへ、手を振りながら戻る。
 鳥が一歩近づいて、首を上下させた。
「ナオユキ殿。ありがとうございます。これからも姫をよろしく頼みますぞ」
「は、はぁ」
 思わず、応えてみたものの、ワケがわからない。
 鳥が頭を左右に振った。
「その顔は、何が起きているのか判らないといったご様子ですな。では、説明しましょうぞ」


380:10/12
07/07/31 22:41:39 tfQb24Fp
 鳥―執事ということらしいが、彼の言うにはこうだ。

 彼女は、一年前まで別の世界にある王国の姫だった。
 悪い魔法使いに追われて、秘められた魔法でこの世界に来た。
 その魔法は命はあるものの二度と帰ることは出来ないという過酷なものだった。

 魔法の力で、こちらに来たときには、もうミュウマは“ここに居る”ことになっていた。
 もちろん、執事も一緒だ。
 佐藤というのは、こちらの両親の名前だ。

 まだこちらでは一年しか経っていないから、こっちの言葉があまりしゃべれなくて、ほとんどが単語の返事になってしまう。

「さらに、ナオユキ殿は姫の思慕されていた隣国の王子の、こちらでのお姿なのです」
 うーん……にわかには信じられない。
 でも、もうこんな普通にしゃべる鳥とか目の前にいるし、信じるしかないかぁ。
「ですから、あなたに逢った時の姫の喜びようは……」
 てか、そんなの全然気付かなかったんだけど。
「姫はこちらでは言葉も拙い上、あのように内気なお方」
 ちらっと彼女のベッドのほうを見ると、最初と同じ姿勢で寝転んでいる。
 あれは……照れてるんだろうか。
「ですので、なかなか打ち明ける機会がございませんでした。
ところが、今日、あなたさまがこちらで寝ておられたところへ、偶然にも恋に憔悴された姫が来られて……」

381:11/12
07/07/31 22:42:26 tfQb24Fp
 あー! それでペンダントを見て泣いてたのか。くぅ。なんてかわいいんだ。
「ありがとう、だいたいわかったよ。執事の、えと……」
「エルシャーロットデンバームヘンデル二世……もっぱら、エルと呼ばれております」
「エル、事情はわかったよ」
「ふむ。それでは今度こそ、魔法を解きましょう。ちなみに、これは時間がゆっくり流れるという魔法です」
 気付かなかったけど、そう言えばかなり経ったはずなのに外の明るさも全然変わってない。
「では、大切なことですのでもう一度、言いますよ。姫をよろしく頼みます」
 そう言うと、ばさっと羽を広げて天井のあたりをぐるぐる飛び回った。
 なにか呪文のようなものを唱えている。
 優しい花の香りがする。
「これは、最初、ミュウマがここに来たときに嗅いだ……そうか……全部、エルが仕組んでたのか……」



382:12/12
07/07/31 22:43:34 tfQb24Fp
 ふと気付くと、ぼくは教室にいた。
 時計を見ると、まだ一時間目の途中だった。
 窓のほうから高い金属バットの音と同時に、女子の歓声が響く。
 そちらを見るとミュウマがいつものように外をボンヤリと見ていた。
「え……と……夢?」
 そう思ったとき。
 ミュウマがぼくの視線に気が付いた。
 スカートのポケットから何かを取り出して。
 こぶしから、光る卵形のペンダントトップを少し垂らした。
「あ……」
 彼女はそのとき、ものすごくキレイに、この初夏の太陽みたいに笑ったんだ。

《end》


383:coobard ◆69/69YEfXI
07/07/31 22:44:48 tfQb24Fp
以上です。
お読み頂いたかたには感謝いたします。
それでは失礼します。

384:名無しさん@ピンキー
07/07/31 23:24:03 nprGLKwo
>>383
GJ!ミュウマエロかわいいな。
トリップからエロい職人さん、続きはありますか?

385:名無しさん@ピンキー
07/08/02 04:43:36 dMM9dVFC
>>383GJ!!俺も続き期待

386:名無しさん@ピンキー
07/08/02 10:13:42 X6llqWXH
>>383
GJ!

確かにコテがエロいwwwww

387:名無しさん@ピンキー
07/08/02 12:50:49 MeSIpPbv
GJ!続きwktk


388:名無しさん@ピンキー
07/08/03 16:14:36 3QUYmYoE
とりあえずコテトリでググると吉

389:名無しさん@ピンキー
07/08/04 04:19:45 6bh9T3XI
保守

390:名無しさん@ピンキー
07/08/04 19:04:14 wRAHo/Nk
>>388
トリップだね。マチガタ

391:名無しさん@ピンキー
07/08/04 23:15:12 3ZdJ0psI
>>390
いや、ごめん、そう言う意味でいったんじゃあないんだ
>>383が書き込んでるコテトリをググるといいよ、って言いたかった

392:名無しさん@ピンキー
07/08/05 22:52:01 x4H7LnrF


393:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 12:51:12 j4Yjr9JS
こんにちは、お久しぶりです。七月投下ができずに愕然としていました。
以下に投下します。縁シリーズ続き。今回はストーリー重視です。

394:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 12:52:16 j4Yjr9JS
『縁の滅 揺蕩う少女』



 十一月。
 霜月の空気は肌寒く、季節はあと一歩で冬に辿り着くところまで来ていた。
 街は徐々に様変わりを始め、人々の服装も厚みと枚数を増している。商店街では一ヶ月先のクリスマスに向けて装いを改め、駅前にはイルミネーションの鮮やかなツリーが立てられた。
 依子はそんな駅前のオープンカフェで、注文の品を待ちながら、人の波を眺めていた。
 土曜日の午後。人の数はなかなかに多い。平日でも休日でも、賑わいは常にあった。
 房総半島の一隅にある街、神守市。
 百万都市にはまったく届かないが、交通のアクセスが行き届いているため活気を呈している街。
 かつてこの街は、彼女の家の一族によって統べられていた。
 一族の名を冠し、霊能によって統御された街は、明治初期までは神守の手にあった。
 しかしそれも時代の流れに飲み込まれ、今ではどこにでもある地方都市に様変わりしている。
 神守家は少し離れた緋水という土地に本拠を置き、今では市の名に跡を遺すのみだ。
 神守家そのものにとってはあまり意味を為さなくなった街である。しかし依子はこの街に複雑な感情を抱いていた。
 この街は好きだ。八年前から住んでいるこの街には、人生の半分の年数が詰まっている。そしてその時間はこれからさらに積み重ねられていく。
 友達がいる。家がある。居場所があって、依子はそこで生きることができる。
 嫌いなわけがない。
 それでもこの街を素直に愛せないのは、街の至るところに神守の名が、影が見えるためだろう。
 東の川、西の道、南の海、北の山、それぞれに冠されるはやはり神守の名。
 駅も病院も学校も神社も、同じ名前がつきまとっている。
 依子が名乗れなかった苗字を、この街は持っている。
 くだらないことなのだろう。実際依子は執着を奥底に溜め込んでいるわけではない。未練はあるが、もうあらかた流れてしまった。
 微かに、胸の内に名残があるだけで。
 だからこの街に対して依子は、好意と、僅かばかりの懐かしさや寂しさを抱く。
「お待たせしました」
 ぼんやりと物思いに耽っていた依子の前に、注文のチョコレートパフェが届いた。飲み物を頼むことが多かったこの店では、初めて食べる品だ。
 スプーンを手に取り、クリームをすくう。口に運ぶと濃厚な甘さが広がった。
 空を見ると、秋の薄い陽光が降っている。夏よりだいぶ高度を下げてきている。
 青空とはいかない。白を混ぜすぎたかのように、空に広がるは白っぽい水色。
 道行く人の波は、昼下がりの午後も落ち着く様子はなかった。
 依子はほんのり冷たい甘さを舌に覚えながら、そんなありふれた街を眺めている。


 その日、最初に会ったのは同い年の少女だった。
「……依子さん?」
 水本静梨はカフェの前で足を止め、小さく首を傾げた。
「久しぶり、静梨ちゃん」
 にこやかに手を振って返すと、静梨は小走りに寄ってきた。
「久しぶり! 元気だった?」
 はきはきした声音に依子は少しだけ驚く。夏に会ったときはもうちょっとおとなしい印象だった。
 しかし考えてみれば、あのときは声を聞いていないし、笑顔もなかった。

395:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 12:55:22 j4Yjr9JS
 依子は冗談めかして答える。
「元気も元気。元気すぎて死んじゃいそうなくらい」
「ダメじゃん。……あのときはありがとうね、お見舞いに来てくれて」
「ううん。あなたも元気そうでよかった」
 社交辞麗ではない。彼女に降りかかったことを思うと、心底からよかったという気持ちが生まれる。
 静梨は照れ臭そうに笑み、
「守さんのおかげだよ。あの人が私を支えてくれたから」
 いとこの名前を出されて、依子の心が小さく揺れた。
 遠藤守。二十歳の大学二年生。
 あのお人好しないとこの『お兄さん』は、夏に静梨と出会い、彼女を助けた経緯がある。
 静梨はそれ以来守に好意を抱き続けている。直接静梨からその想いを聞いたわけではないが、依子には一目瞭然だった。
「ところで今日はどうしたの? こんなところで」
 不思議そうに問いかけてくる静梨。
 依子は答えた。
「ちょっとした趣味」
 静梨の眉が寄る。
「……趣味?」
「そう。人間観察」
 答えて正面に視線を向ける。灰色の道路を行く人の波は少しは収まってきていた。
「……よくここに来るの?」
「休みの日に結構ね。いろんな人たちが見れておもしろいよ」
 静梨が合わせるように、依子の視線の先を追った。昼下がりの時間帯に子供連れの主婦や若いカップルが通りすぎていく。
「おもしろい……かなぁ」
「いっしょにどう?」
「……人間観察?」
「街の様子を楽しむと言い換えてもいいけど」
「……遠慮しとく。私には合わないかも」
「じゃあお話ししようよ」
「それなら喜んで」
 依子の提案に静梨は頷き、テーブルの対面に座った。それからやって来たウェイターにコーヒーを一杯頼む。
「静梨ちゃんって神高だっけ?」
「え? ……ああ、学校の話? 私立はお金かかるから……。依子さんは?」
「明宝」
「すごっ。頭いいんだ?」
「成績はいつも平均だけどね……」
 神守市には三つの高校が存在する。公立の神守高校、同じく公立の福山工業高校、そして私立の明宝高校である。
 神高は学費の安い公立校なので、私立に行く経済的余裕のない市内在住者の多くが通っている。市内には同じ公立の福高もあるが、偏差値の低さがネックになっている。
 一方明宝は、普通科、商業科、理数科と三つの学科を有し、全校生徒二千人を超えるマンモス校である。特に理数科は優秀で、他県からの受験者も多い。
「私は普通科だし、特に部活もやってないからすごくもない。すごいのは一部の人たちだよ」
「私から見れば充分すごいけどね。商業科はともかく、普通科も結構難しいんでしょ?」
「宿題が多いのが困りものだよ……」
 二学期に入ってから課題の量が一気に増え、そのことを思うと憂鬱になる依子である。
「……まあ進学校だし、それは仕方ないよ。依子さん要領良さそうだし、大丈夫じゃない?」
 慰めるように静梨が言う。
 依子は微かに顔をしかめた。
「あのさ静梨ちゃん、さん付けやめない? 言いにくいでしょ」
「え、……じゃあちゃん付けで?」
「いいよ。そっちの方が友達って感じがするから」
 同い年の子にさん付けで呼ばれるのは、少々こそばゆい。
 ウェイターがコーヒーを運んできた。静梨は受け取ると、角砂糖を一個、黒い液体の中に落とした。スプーンで軽くかき混ぜ、そっと口をつける。
「ところで、守さんは元気?」
 再び出されるいとこの名前。
 依子は自身の心が煙るのを感じた。
「……さあ? 最近会ってないからわかんない」
 本心とは別に、そっけない答えを返す。
「会ってないの? なんで?」
「別にいつもいっしょなわけじゃないよ。ただのいとこなんだし、不思議でもないでしょ?」
「……」
 静梨は口をつぐむ。
 が、それも一瞬で、すぐに口を開く。

396:かおるさとー ◆F7/9W.nqNY
07/08/06 12:59:46 j4Yjr9JS
「一つ訊いていい?」
「なに?」
「守さんのことどう思ってるの?」
 投じられた問いは直球だった。
 静梨の顔は真剣そのもので、からかいの色は微塵もない。
 依子は─言葉に詰まった。
 静梨は何も言わない。ただ依子の答えを待っている。
「……別になんとも、って言っても納得しないよね」
「答え方によるよ」
 どうにもはぐらかせる雰囲気ではないようで、依子はそっと息を吐いた。
「大切な人だと思う。でも、静梨ちゃんみたいに真っ直ぐな想いじゃないかも」
「……どういう意味?」
「近すぎるとそういう目で見られなくなるってこと」
 底のチョコレートはビター質が強い。スプーンで口内に運ぶと甘苦い味が全体に広がっていく。
 守に対する感触はこのパフェの味に近い。遠くから見ている分には甘そうな雰囲気しか感じられないのに、実際には苦味を含んでいる。
 人は皆そうなのだろう。他者を深く知るということは、酸いも甘いも知るということだ。依子は守の良いところも悪いところも知りすぎてしまっている。
 守は自分にとって大切な存在だと思う。だがそれは、兄弟姉妹の関係に近い。依子にとって彼はいとこの『お兄さん』なのだ。
「兄に恋愛感情を抱くのは……違う気がするよ」
「……依子ちゃんにとって、守さんは兄なのね」
「とびきりお人好しな、ね」
 静梨は微笑した。
「私はあの人が好き」
「……」
「だから依子ちゃんが羨ましい。誰よりも近くにいて、あの人に愛されているあなたが羨ましい」
「……」
 ひゅ、と秋風が小さく吹いた。
 依子は少しだけ肌寒く感じた。
「……憎いの?」
 こういうのも修羅場と言うのだろうか。ずれた思考から生まれた問いはかなりストレートだった。
 静梨はゆっくりと首を振った。
「羨ましいだけ。まあちょっとだけ、嫉妬はあるかもしれないけど、あなたが憎かったりはしないわ」
「諦めるの?」
「今のところは、ね。でもチャンスがあればいつでも狙っていきます」
「諦めてないじゃん」
 突っ込むと静梨はくすくす笑った。つられて依子も口元が緩む。
 この娘はなんて強いのだろう。依子は感嘆の思いで同い年の少女を見つめた。
 もしも自分が同じ立場だったら、こんなにも吹っ切れた顔は作れないだろう。未だに昔の名残に囚われているような自分には。
「しかし守さんも大変ね」
「え?」
「だって好きな相手に兄としか見てもらえないんだから。どうすればいいのかしら」
「……」
 依子は反応に困った。
「あれ、どうしたの? ……守さんの気持ち、初耳だったとか?」
「ううん。知ってる。こないだ告白されたから」
「─。なんて言われたの?」
「…………」
 沈黙。
「……そんな固まるほどのこと言われたの?」
 依子はしばし悩む。はっきり言うべきかどうか。しかしあれは、
 思い出すと顔が熱くなる。思えばあれは生涯でも最も恥ずかしい瞬間だった。
 少しだけ、ひねって答えた。
「……いとこ同士って、結婚出来るらしいよ」
「? 知ってるけど……って、え?」
「……」
 静梨の驚いた顔はなかなか見物だった。


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