無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目at EROPARO
無口な女の子とやっちゃうエロSS 2回目 - 暇つぶし2ch150:名無しさん@ピンキー
07/06/11 00:43:13 1RhArrva
かなりへたくそだなこれはwww
おまいらこんなのにGjす
るのかよwwwレベル低いな
さすが低脳な凡人w
とにかく考えることが低俗w
ー腹痛いぜおまえらwきっとこじきを
様呼ばわりするんだろうなw
神様に作り直してもらえw

151:名無しさん@ピンキー
07/06/11 00:46:47 NzKmOXA5
気持ちいいか?



お前の腟、最高だ。



うっ!出すぞ!



最高だったよ。




と、ダッチワイフに話かける少年A

152:名無しさん@ピンキー
07/06/11 01:54:03 8cQ8JXll
とにかくまずGJ!
いいねー。この無口娘見てるとなんか心が暖かくなってくる。
癒されました。ありがとう

153:名無しさん@ピンキー
07/06/11 02:15:56 3o6Phf3r
>>152
一瞬>>151のダッチワイフに癒されたのかとオモタw

154:名無しさん@ピンキー
07/06/11 16:10:09 IFKEz8dj
>>150
すごいツンデレさんだw

155:名無しさん@ピンキー
07/06/11 23:20:32 A0jXCJsK
>>154
あ、ほんとだw
素直にかけばいいのに…

156:名無しさん@ピンキー
07/06/13 00:36:33 QJ2wdMEO
>>155
恥ずかしがり屋さんなんだよ。
それはいいとして、かおるさとー様GJ!!

157:名無しさん@ピンキー
07/06/13 18:35:07 0mujc/a8
人はそれを ツンデレ と呼ぶ

158:名無しさん@ピンキー
07/06/13 23:12:04 vjoKyWS7
さてかおるさとー様GJ!!
やっぱうまいですねー
そんなに長いのがかけるようになりたい…


159:名無しさん@ピンキー
07/06/13 23:23:47 cZYcTwYW
できれば無口で男っぽいクールな女の子希望…

160:名無しさん@ピンキー
07/06/14 11:10:35 RwDX3ro4
>>159
いいなそれ

161:名無しさん@ピンキー
07/06/16 05:27:35 4P1I6BQT
あげあげ

162:名無しさん@ピンキー
07/06/17 21:04:46 QKbjNAt1


163:名無しさん@ピンキー
07/06/17 23:26:00 fbQqkTeF
「どうしてこうなったんだろうな……」
「……………キミのせい」
「ですよねぇ」
そう、確かに俺のせいだ。
朝トイレに行きたくて、寝ぼけ眼で扉を開けたら居候先の三姉妹の三女のコイツ、三河冬美が偶然にも用を足していて…
「慌てて飛び出ようとしたらドアノブぶち壊して出れなくなったんですよね…」
携帯も無いから助けも呼べないし、まぁ春香さんか夏希様が来るだろ…と思ってたら。
「あの二人は、今日は、いない」
「だもんなぁ……」
あ~ヤバい、結局おしっこしてないから出したい、でも出せない。
「…………したい?」
へ?何を?エッチなことならがっつかなくても出てから…
「バカ………」
そうやって真っ赤になって照れるところがまた可愛いなぁ……ってヤバい、流石に限界。
「悪い…させてもらうわ…」
……ってこっちジロジロ見ないで下さいません?
「………………気にしない、気にしない」
いや、そういう弱みを握ったぞ的な笑いはよしなさい。
そして何処か違うところを向きなさい、お願いだから向いてぇ!!
「……………じゃあ、お願い、聞いて?」
聞く!聞くから!人間の尊厳を損なわない限りの範囲で聞くから!
「…………………保守……して……」


164:名無しさん@ピンキー
07/06/17 23:38:46 ZgXsuAgM
三姉妹で、無口で、保守で、色々要素詰め込んであるとかそういうことよりなにより、

秋がどこにいったのかkwsk

165:名無しさん@ピンキー
07/06/18 00:30:22 FaaPY+bY
男の名前に「秋」が入っているのではないかと妄想。秋太郎とか。

166:名無しさん@ピンキー
07/06/18 00:34:16 bJKOVkUf
母親,もしくは長女の娘が秋

167:名無しさん@ピンキー
07/06/18 01:13:59 b9FQRKIj
もうすぐ秋

168:名無しさん@ピンキー
07/06/18 10:27:12 VFUbE7Ls
そこで無口・実直な従姉の秋奈が家にくる、ですよ

169:名無しさん@ピンキー
07/06/19 00:53:46 IgngU3Y2
・・・・・・・・・投下・・・

170:名無しさん@ピンキー
07/06/20 01:30:38 03+s7VpZ
どう考えても口を動かしてるように見えないけどなぜか考えている事が分かる
実は彼女は超能力者でそれが原因で超展開・・・・

171:名無しさん@ピンキー
07/06/20 15:33:14 G1lC1zPg
>>169
・・・・・・・・え?投下するんじゃないの?

172:名無しさん@ピンキー
07/06/20 21:09:09 uzd+zGq8
…………投下…………(ずっと待ってるから……)

ってことじゃね?

173:名無しさん@ピンキー
07/06/20 23:18:48 n5kAesnn
いやいや、投下したものの、声が小さすぎて………や空白になってるだけなんだろう。

174:名無しさん@ピンキー
07/06/21 00:24:52 jgwwhOpU
「みんな行っちゃったな…」
「………大丈夫」
「なにがだよ?」
「……私たちが保守するから…」

175:名無しさん@ピンキー
07/06/21 06:04:51 dMzcsxTI
二人きりの世界に空気を読まず俺が乱入

176:名無しさん@ピンキー
07/06/21 17:43:39 8tBWnQTF
よしわかった!そんなことより野球しようぜ!

177:名無しさん@ピンキー
07/06/21 18:00:39 lWIkveEy
そんなことより野球拳しようぜ!

178:名無しさん@ピンキー
07/06/21 22:17:13 PF4de8jj
「じゃあ……脱ぐ……」
「おう」
「…………あっち、向いてて」
「ヤダ」
「…………」
「恥ずかしいなら俺が脱がしてあげよっか?」
「……………………いじわる」
「野球拳負けたんだからしかたないだろ。で、脱ぎたい? それとも脱がされたい?」
「………………………………脱がせて」
「…………」
「…………」
「……脱がすだけじゃすまないかもしれないぞ」
「……。…………いい、よ」
「……一回じゃ終わんないかも」
「…………ん」
「……悪い。ちゃんと気持ちよくしてやるから」
「……ん、大好き」
「…………おりゃ」
「ん──」


なんとなく書いてみた。
無口っ娘のラブラブ野球拳は、俺の中でこんな感じ。

179:名無しさん@ピンキー
07/06/21 22:56:11 7FWrgF/S
>>178
経緯とかをもっとkwsk!!!

180: ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:30:50 RbAA2ocp
流れを読まずに投下します
【濡れ場4割半】 【クセあり一人称】 【落語調】 【萌えない】 【パラレル世界】
話の元ネタは1スレ目で出た『応挙の幽霊』という落語です
上のどれかに拒絶反応が出た方、トリップ付けてるのでお手数ですがNGワード登録して下さい

181:1/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:31:28 RbAA2ocp
ちょいとそこのあんた。
そう、今こっちを向いた二枚目のお兄さん。お前さんのことですよ。ちょいとあっしの話を聞いてくれませんか?
なにせまだ一度も人に言った事がねえもんでね、ちいーっとばかり長くなるかも知らんが、
そこまで時間はとりやしません。ちらりと見えるその立派な一物よりもずっと、ずうっと短い小咄でございやす。

おっ、下もいける口ですかい? そいつはいい。落ちで霜が降りることもなさそうですわ。
え、何を勝手に話を進めてると? あっしの話なんて聞く気は無い?
まあまあそう言いなさんな。かっかかっかと熱くならずに、これでも一杯ぐいっと飲んで気を静めてくだせえ。
こんなもん飲んじゃ余計に熱くなりやすかね? へっへっへ。

そういえば今から話す小咄も、こんな風に酌をしたことから始まるのでござい―


    おうきょのれい


浮世絵にも美人画やら春画やら色々と種類があるでしょう?
あっしはそういうもんを描いて食い扶持にしてるんですが、この通り手よりも口の方がよく動くんですわ。
なので、他人の画を安く買って高く売る、そういった副業もしている訳です。
ああ、だからと言って朝気付いたらおたくの家に見覚えの無い掛け軸がぶら下がってるなんて事はこれっぽちもありやせんから安心しなすってくだせえ。
あきんど商売はあくまで副業でありやす。そっちの稼ぎの方が大きかった事は気にせんでおきましょう。

その日のあっしは一段と気分が良かった。まんまるいお月様の下でね、ういーひっくとふらふらと覚束ない足取りで下宿先へと歩いていやした。
何故かってそれを話すには、おてんと様が顔を出してた頃まで戻らにゃなりませんな。
日差しがぎんぎんと強い昼過ぎでした。
口に立派な髭を生やした身なりの良い壮年の方があっしの所へすたすたやって来て、持っていた画の一枚を眺め始めたんでさ。

こっちも商売なもんでね、あちらさんが画を見定めてる間にあっしらもその人となりを見極める訳です。
あ、この人は財布の口が緩そうだとか、しっかりした目を持ってるからそうそう吹っ掛けられそうにねえな、てな具合でさ。
その髭丈夫は着ているもんもそうですが、背筋がぴんと伸びておりやした。それを見りゃこっちもぴんと来るもんです。
ははあ、この人は金を持ってるなと。
なになに、死んだじじいも背筋だけは物差しが一本入っているみてえにしゃんとしていたが、うちは見ての通りの貧乏だと?
折り目正しい人は由緒も正しいってね、まあそういった事が多いんでやんす。おじい様もきっと立派な方だったんですよ。

金持ちってえのは、目が確かでも裕福だからちょっとばかし高めに言ってもその値でぽんと払うような気概があるもんでさ。
こっちとしちゃあ願ってもないおいしい相手。何か買ってくれないかと首を伸ばして待っておりやした。

口元に蓄えた髭と同じように金もたんまり持っていたんでしょうかね、やがてその年配は自慢の髭を撫でながらこちらを一瞥してこう言ったんでやす。
これを戴けないか。値段はそちらの言い値で良いね、とな。

182:2/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:33:06 RbAA2ocp
思わずあっしも顔のにやけが止まりませんで。洒落のせいでも、高い値で画が売れる事でもありません。
その髭紳士には悪いですが、もっと気の利いた話をする人もおりやしたし、絵に高値が付く事もそこまで喜ぶ程珍しいもんじゃあねえんです。
あっしがなんで上機嫌になったかっていうと、いくんちか時間をまた戻さにゃなりませんな。
売れた画は他の行商から買い取った画だったんですがね、他の絵師の画かというとそうではない。
かと言ってあっしの描いた画なのかというと、これまた事情が違うんでありやすが。

実はその画は幽霊画だったんでさ。頭がぱっくり裂けて血を垂らした女がうらめしやー、てえな具合の。
それ自体はとうの昔に仕入れたものなんですが、これがさっぱり売り手が付かない。
年季が入っていてねえ、とても巧く描けた良い品なんですがね、なにしろ幽霊なもんで逆に凄みが出て恐ろしく不気味な画でして。
家族連れがふらりと立ち寄れば、それを一目みた子供が泣き出して、
大の大人でさえ気味悪がって手に取ろうとも目を向けようともしないでそそくさとその場を出てしまう程でさ。
そのせいで他の画も売れなくなってきたもんだから、あっしもなんでこんな画を買ったのか頭を抱え始めた所です。
誰か知り合いの行商に押し付けようにもうまく行かないし、かといって燃やして処分するなんてのはもっての他。祟られたら大変でやんす。

なんとかせにゃあ、このままのたれ死んでしまうぞと無い知恵絞った結果、一つの名案を思いつきましてね、早速それに取り掛かりやした。
先に言ったように、まあこれがその後の明暗を分けたって訳なんでさ。
要は、あっしの売り方じゃあなくて、元の画がわりいのは分かってやしたから、それをちょちょいと変えてやりゃあいいでないかと。そう思ったんですな。
幸いあっしは絵描きですしね。そりゃあ腕は大した事ありゃせんですが、その幽霊画よりも悪くない。
失敗して下手な画になったらなったで、元の気味悪さよりはましだろうなんて気楽に考えとったんでさ。

まず岩絵の具をたんと使いましてね、血で真っ赤な顔に白粉をたっぷりと塗りたくってやりました。そりゃあもう豪快にたんまりと。
燃やすのは駄目でそれは良いってのはおかしい? なるほど、そりゃそうだ。
しかしその時のあっしにゃあそんな事これっぽっちも頭に無かったんだなあ。
元々出来のわりい頭ですから、一つこりゃいいやと思いついたらあんまり他の事には回らんようになってるんでありやしょう。

とにかくあっしは、どんどんと絵筆を走らせやした。
白粉なんて言葉使いやしたが本当にその通りで、絵を描くというよりかは年頃の娘っこに化粧してやるような気持ちです。
あれやこれやと施していく内に、なんだかこのうすっきみわりい女にも情がわいてきやしてね、それはそれは丁寧にやったもんです。
手は進まねえが、口は軽やかなもんで、赤い口紅をついーっと塗れば、おうお嬢さんなかなかべっぴんだねえ。
乱れた髪はあっしの腕じゃあどうしようもなかったんですが、そんな所も、たらりとしな垂れかかる黒髪がそそるじゃねえかあ。

なんて、一言一言、口説き落とす勢いで嘯きながら、これより気い張り詰めてやった事はねえんじゃねえかってくらい、丹念に。

183:3/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:34:24 RbAA2ocp
上っていたお天道様もだいぶ下に来た頃でさ。
ようやく筆を置いてその女子を見てみるとまあ、なんということでしょう。
呪詛を吐き散らしていた幽霊の姿は、匠の手によって物静かそうな、とっても素敵な令嬢に変貌を遂げました。ってな具合でさ。
自分で言うのもなんですが、なかなかどうして美しい仕上がりでありやした。
見せろと言われてもその画はもうありゃあせんですがね、見事な変わりっぷりに和田んところのおアキさんも度肝を抜くにちげえねえ優麗な姿でしたよ。
自分の知らない人を出すんじゃねえって? ふひひ、すいやせん。

まぁ半分あっしが描いたようなもんですから、そんな画をどんな値がしても買うと言ってくださる方が現れた訳です。
何度も言っていやすが、あっしはそんな巧い絵描きでねえもんで、それが初めての出来事だったんでさ。もう嬉しいのなんのって。
その髭男爵は今は持ち合わせがねえってんで明日取りに来るという話で、その夜は祝い酒をやってたっつー訳です。
ふぅ。やっと話が追いつきやした。

一杯やらかした後、酔いも宵も良い加減。手に持った一升瓶を見ては酒の肴もなしに一生楽しめるなあ、などと馬鹿な事考えて一笑してやした。
寝床に帰ればそこは独り身の悲しい所。あっしの他にゃあ誰もいない、真っ暗な寝床がお出迎えって訳でさあ。
いつもはがらんとした空っぽの風景を見るたんびに、はあと一つ溜め息を付くんですがね。
その日はそんな事は気にならん位、代わりに酒臭いげっぷが出るってな具合に満ち足りた気持ちでさあ。
いやあ所帯を持った今じゃそんな事は気が狂っても起きやせん。既に狂ってのかもしれやせんがね。へっへっへ。

蝋燭に火を点けて部屋でもう一辺飲みなおそうと思った所、昼間の掛け軸が目に付きやした。
そうです、あっしがおめかしした美人でさあ。考えてみりゃあこうやって美味い酒が呑めるのもこのお嬢のお陰な訳で、
徳利を持ってきやしてね、掛け軸の前にお供えした訳です。ありがてえありがてえ、神さま仏さま紙美人さまでやんす。

瓶の口の一滴まで飲み干すと、なにせ腹がたっぷんたぷんと膨れるまで飲みやしたもんですから、ちょいと用を足しに厠へ行ったんです。
その前の日まではね、きいきいとうるさい床だと文句垂れていたんでやすが、
それすらもあっしの前途を祝ってるように聞こえてきてね、本当かなりのもんでした。
そんで水だけ垂らして部屋へ戻ろうと首をそっちへ向けたんですが、背筋にぞくぞくっと寒気が走りました。

え、また小便に行きたくなかったんだろって? んなあほな。あっしの膀胱はさっき空けた一升瓶の如く一滴残らず出し尽くしやした。
いやあそれもおかしいですね。悪寒がした時あっしは恥ずかしながらあまりの事に酔いも吹っ飛び、小便もちびっちまいやしたから。

薄暗い部屋、音も立てずにひっそりと、いつのまにか見知らぬ女がそこに座っておりました。

184:4/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:35:24 RbAA2ocp
歯はがたがたと震えまして下を向けば膝もがくがくと揺れておりやす。酒が回って前後不覚という訳では決してございません。
きいきいと音を立てるぼろっちい床が何も音を立てねえっていったらもう思い浮かべるものは一つしかありやせん。
蝋燭も風でいつの間にか消えちまって、お月様も姿を隠れてる。墨汁をこぼしたみてえな視界の中で、青白い肌がやけに目立っておりやす。
どうやらあちらさんはあっしには気付いてないようで、このまま身体をくるりと翻してそのまま逃げちまおうと思ったんですが、
ふと掛け軸の事が頭に過ぎりやした。

その晩盛大に飲み散らかしたんで路銀はほとんど残っちゃいねえどころか、明日払うなんて調子の良い事言って周りの連中にも振舞っちまったんでさあ。
おてんと様が昇った後、部屋に戻っても掛け軸が無事である保証は一体どこにありましょう?
なんとか掛け軸だけでも持ってかんと首を括ることになっちめえぞと踏みとどまりやした。

臆病ですからね、幽霊は怖い。前に進むにゃあ相当の覚悟が必要でした。
前を行けば暗い部屋の中に幽霊がいる。後ろを行けばこの先の人生真っ暗だと、どちらも暗闇を歩くことにゃあ変わりねえ。
こんなでっぷりと膨らんだ腹を括れば口からぴゅうっと酒が吹き出ちまうだろうが首よりはましだろうって、やっとのことで決心がつきました。

一歩あちらさんへ踏み出しやした。そうすっとやっぱりこの木の床がきいっと甲高い音を立てる。
あちらは簪も挿さずに伸ばし放題の黒髪を揺らして、こちらに顔を上げました。
するとあっしも堪らなくなって、ひいっと女みてえな声を上げちまう。
その時のびびりようと言ったらね、このままお月様と一緒に雲隠れしちまうかって心境でさあ。

しかしあっしは逃げやせんでした。いやいや歌舞伎や絵巻に出てくるような勇敢さは持ち合わせておりません。
ただの小便ちびりの中年でやんす。
いくら小心者といえど、さっきの悲鳴はさすがに大きすぎるんでねえかと思ったら、
え? お前はこんな所で見栄を張るなって?
いやいやその時張っていたのは気だけでやんす。

えっと、どこまで話しましたっけ? ああそうだそうだ。

声がやけに大きいと訝しんで目を細めると、肩を震わせるあちらさんの姿が見えるじゃありませんか。
悲鳴を上げたのはこっちだけじゃあ無かったんでさあ。
なんでえ、怖がりの幽霊なんて絵の描けねえ絵描きみてえじゃねえかと親近感が湧いてきまして。

暗がりに腹を括って飛び込めば、吹き出されたのは焼酎ではなく笑い声。ってな具合でやんす。


どっとはらい。

185:名無しさん@ピンキー
07/06/21 23:35:33 jgwwhOpU
「そういえばお前の誕生日ってもうすぐだよな?」
「……覚えてたんだ…」
「自分の誕生日に物くれた奴の誕生日くらい覚えるさ、で、何か欲しいものあるか?」
「…………リボン」
「リボン?でもお前、髪短いから結ぶ必要ないんじゃない?」
「…長くするからいい」
「なんでいまさら髪長くする必要が…」
「……………」
「え?」

「…あなたは髪が長い方が好き…でしょ?」

186:5/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:36:36 RbAA2ocp
……それで腹を抱えて一件落着、めでたしめでたしって訳にゃあいきません。

ひとしきり笑った後、改めてあちらさんを見てみる。暗がりではっきりとは分からないが、その姿を見た時思わず目をそらしちまいました。

目を向けられない、と言っても件の幽霊画とは訳がちげえ。
はっと息を飲むような―あれだけ酒を飲んだ後にお前はまだ飲むのかってえ茶々はやめてくだせえ―
美人というのはこういう人のことを言うんでしょうね、雪のように白く澄んだ肌。どんな夜よりも黒くて長い髪。
絶世の美女。それでいてどこか懐かしいような親しみがある。

自分が唾を飲み込む音が聞こえちまうくらい静かな夜に、盛大な夢を見ました。夢としか思えなかったし、こんな話は嘘っぱちにしか聞こえんでしょう。
頭ん中を覗き見されたのかと疑う程の自分好みの絶世の美女が、小汚い宿の一角、そこにちょこんと座ってる。
呆けている内にあちらさんがもごもごと口を動かしました。
と思ったら身に纏っていた上等な着物をはらりと脱ぎ始めるじゃあありませんか。

「……おう……きょ……の……れい……です」
あちらさんの声がか細いからか、こちらが興奮しているからか、
そん時あっしの耳で聞き取れたのはそれだけでして、何を言ってるのか分からない。
自分で言うからには霊であるんでしょうが、おうきょとは、はてさて。地名か人名かしらんと訝るも無知ゆえに分からぬ。
しかしねえ、花街のどんな女より華のある娘っこの裸が目の前でこてんと布団の上に転がれば、それもしょうがないことですわ。
声とおんなじように控えめな胸が二つ、ほっそりとした肢体についておりやして、
肉も付いてないのに部屋一杯に広がるような色気を、そりゃもうぷんぷんと出されちゃあ、こちらの鼻息もふんふん出るってもんでさあ。

黒髪から覗かせる綺麗な顔は、
あちらさんは口紅をしているようでぷっくりと柔らかそうな唇には白い肌に映えるだろうこれまた綺麗な赤で染まっていたんだがあ、
そいつと同じくらい頬も色づいていてね、恥ずかしそうに眉をへの字にしてこっちを見ていやした。
肩が微妙に震えているのは、安宿に吹き抜ける夜風の寒さだけじゃあどうにも無いようで、その姿はどう穿った見方をしても遊女にゃあ見えねえ。
こっちは何十何百ってえ人を相手に商売してきてますからね、眼には自信があった。
絵描きなのに、口やら眼やらが良くても困ったものですが、とにかくこちらの娘っこは美人局ではなさそうだ。

それにねえ、別にこの続きを見れるのなら夢でも狐の仕業でも別にいいかという気分に不思議となっておったのです。

育ちの良さそうなお嬢さんが、茹でた蛸みてえに真っ赤になりながらもここまでしてくれてるのに何もしないってのは逆に失礼。
据え膳食わぬは絵師の恥ってえ訳でね、はだけた肌に手をすっと伸ばしやした。

187:6/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:37:50 RbAA2ocp
上質の紙でもここまで白くて粗のないものをあっしは触ったことがありやせん。冬の雪のような肢体は、蒸し暑い夏の夜よりも熱を帯びておりました。
小振りな乳房に手を這わせると、びくんと顎が上下する。
気持ちいいのかと訊ねてみると、はしたないと思われるのが嫌だったんでしょうかね、口をぎゅっとつぐんで顔を左右にふるふると振っている。
こういう娘っこには、ついつい意地悪をしたくなってしまうもんですよねえ?
そうけえ、手を乗せるだけでそんなに気持ちよかったのかあ、こりゃあよっぽどの好き者なのかもしらんなあと、
独り言のように呟くと、手で顔を覆い隠してしまいました。その夜のお月様のようにあちらさんの顔はすっぽり隠れて全く見えやせん。

あっしはそういった性癖の持ち主じゃあねえもんで、いやあ本当に違うんですよ、いじめるのはここいらでやめにして、
あっしの手の中に収められたままのそれをいじる事にしました。
ふにょふにょと柔らかい揉み心地はさしずめ大福といった所でしょうか。それでいて搗きたての餅のように手に吸い付いて離れない。
ところで、自分がそうとは思ってえねえのにそうなってしまった、直そうと思っているんだが一向に直らねえ、ってなこたあ、ありませんかね?
あっしですか? あっしゃあこの口ですかね、閉じよう閉じようって手で塞いでいてもいつの間にか開いちまいますからね。
黒髪を垂らしたあちらさんもそういった、人の力じゃあどうにもなんねえもんを持っておられてね、
潤んだ瞳、ぎゅっと噛んで薄桃どころか白くなっている唇、借りてきた猫のようにおとなしく縮こまった肩、
どこを見渡しても私をいじめて下さいと言っているように見えるんでさあ。本人は米粒ほどにも口をきかねえのに、不思議なもんです。

そんな風に否定しちゃあいるが胸は正直だねえ、もっと触ってほしいってこっちの手にひっ付いてくるぞと罵ってみる。
あちらさんがあの調子なもんで、ちょっと前にいじめんのはよそうと決めたばっかなのにもう破っちまいました。
あちらの表情は分からないが、耳や首が真っ赤に色づいていくのが見てとれました。
そりゃあもうはっきりと変わりましてね、はて、もう秋が来たのかと頭を傾げたくれえです。

しかしそりゃあ気のせいでいくら触っていても飽きはまったく訪れません。厚みはねえのにふかふかと心地よい体躯をしっかりと指で堪能していきます。
あちらの身体は相当に繊細なようで、触った場所にゃあ薄く手の跡が残るんですわ。それが面白くって、ぺたぺたといたる所に手をつけました。
それは初雪の、まだ誰も踏み入れていない白絨毯に足跡をつける楽しさにも似ていました。
時が過ぎて昼になる頃にはきっと大勢の人がそこを通って茶色い泥道になっているんだろうが、
そうなる前に自分が初めて歩いたんだってえ印をそこかしこに残しておきたかったんでさあ。

しっかし、あっしばかり愉しんであちらはそうでないじゃあ具合が悪い。
この通り顔は隠れちまってるし、喘ぎ声一つだしやしない。しゅっと肉の付いていないきれいな顎もあれっきり上下しない。
まいった、これじゃああちらさんが悦んでいるかなんて分からんぞ。
乳房を餅をこねる様にいじりながら困っていると何やら硬いくりくりとした感触が指に伝わってきました。
これは何ぞやと指先で転がしてみると、あちらのすらりと伸びた足がぴんと棒のように固まりました。
これは只事ではないと思わず手を引っ込める。暗闇でもその色合いの良さが分かる桃色の小山がぴんと二つ反り立っていました。
美味しそうなその実を口に含む。するとあちらのくびれた腰が釣り上げられた魚のように大きく跳ねました。
昼は淑女で夜は娼婦ってかあ。しかし娼婦でもこんな良い反応はせんだろう。
などと思っていると、口に出ちまったのか、あちらさんの黒髪が左右に宙を舞っておりやした。

188:名無しさん@ピンキー
07/06/21 23:39:05 jgwwhOpU
うっ…
なんか邪魔しちゃった…

189:7/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:39:16 RbAA2ocp
ひととおり撫で回してみれば、どこを見渡しても白い所なんてありゃあしなくなっておりやした。
と言いましても、雪解けのぬかるんだ泥道が出来た訳じゃあありません。
紅葉山のように赤く火照った身体。乳房の上の桜咲く二つの小山。
あちらさんは相も変わらずその見目麗しい顔すら見せちゃあくれませんが、
盛り上がっているのはあなただけじゃありませんってえ口にせずとも態度で教えてくれています。

はやる気持ちを落ち着かせながら、ふんどしに手を掛ける。すると憤怒した一物が外に出ます。
憤怒てえのは言葉のあやで、そんだけ興奮していたっつうことでさあ。
下の頭は怒っているのに、ほんまもんの頭の方は絶世の美女を前にして狂喜乱舞しておるっちゅうのも変な気がしますな。
口吸いもまだと言われてもなんら不思議じゃねえくれえにうぶなあちらさんの反応が気になる所ですがあ、
何も見ぬこと見猿の如し、うんともすんとも言わぬ。

肉はついていないが、痩けてもいない、美しい頬をナニで叩いてみる。諸行無常の響きはねえが、ぺちぺちと瑞々しい音がなりました。
何が、ってナニがなんですが、自分のほっぺたに当てられているのか気になったのか、目を覆っていた細い指がのそのそと開いていきやす。
指と指の間からでもその形の良さが伝わってくるつぶらな瞳がその正体を捉えると、ぱっとまた指を閉じてしまいました。
けれども、結構な興味がおありのようで、頬に当てていましたから、それはちょうど顔の横にあったわけなんですが、首を回して真正面へと持ってきました。
微々たるもんですが、開いたり閉じたり、手がもごもごと動いている。

気になるのなら手をどかして見たらいいのでないかとこちらが提案する。
当然のことながら、返事は来やせん。
腕ずくでとっぱらっちまえば一番手っ取り早かったんでしょうが、その時はどうしてかそんな考えはこれっぽちも頭にありやしませんで、
いや無理にとは言わんが、嫌なら別に構わん、といった風な言葉を取繕うみたいに添えましてね、
字面から見んとなかなかぶっきらぼうですが、あっしは紳士ですからね、絵を売る時に出すいかにも媚びへつらっている調子で言っとりましたよ。
じいいいと、けらの鳴き声が聞こえてきました。
夜の間中ずっと鳴き声が響いているから、その日も、もうずっと前から鳴いていたんでしょうね、
そんな事にも気づかねえ位に気をとられていたのかと驚きやした。

しかし、けらは本当にうるさい。
蚊に刺されみたいなもんで一旦気づいちまうと無視するこたあ出来んようになってしまう。
じいい、じいいとずっと響かせているその声の主に、よくもまあ飽きもせずに鳴き続けるものだと、
呆れが感心に変わって、どれ位の時が経った頃でしょうか。

障子の向こうの外の景色を、ぼうっと眺めていた両の目を座敷に戻すと、久しぶりに顔をお出しになられたあちらさんがおりました。

190:8/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:40:25 RbAA2ocp
先程の愛撫やら言葉責めやらで、羞恥や快感という染料が綯い交ぜになってあちらさんの、
肉も付いていないのに不思議とぽってりとした、こちらの欲情をそそる頬を鮮やかな赤で染め上げておりやす。
熱に浮かされたような、陶酔した表情であっしの肉棒に釘付けの黒髪美人に、
これからあなたの中に入るものだ、しっかりと挨拶をしときなせえと一言声を掛ける。

するとあちらさんはよっぽどそちらの方面の知識がねえのか、くいっと頭を斜めに傾げてこちらを見上げるので、
これをそそへと入れても痛くないように口に含んで舐めるのだと説明すると、お天道様の下じゃあやらねえようなはしたない事だというのは分かるらしく、
赤い顔がぼんっと更に赤みを増して、ふるふると駄々をこねる童のように首を降る。
けれど、押しには弱いのか、こちらが退かないのを察すると目をぎゅっとつむり、意を決し小さな口をめいっぱい開けて顔を股座へと近づけやした。

目を瞑っていたせいで顔は見当違いの軌道を描き、鼻の穴に男根が擦り付けられる結果となってしまいやす。
そうか、そんなに牡の臭いが好きか、そう嘲るように呟くと滅相も無いというような感じでぱっと目を開き顔を肉棒から離しました。
あちらさんの筋の通った鼻についた我慢汁が、尿道口とあちらさんとを繋ぐ橋を掛けて、それが月明かりに照らされて、やけにいやらしく輝いておりました。

どうせ一夜限りの夢なのだから、自分の不細工な一物を咥えてもらうつもりだったのですが、それを見たらこちらも我慢の限界が来ちまいましてねえ、
飢えた獣のような乱暴な手付きであちらさんの恥部をまさぐりました。
するとどうだろう、もう何もする必要がねえ位にくちゅくちゅと濡れそぼっておるではありゃせんか。
その水気を帯びた音ときたら、あっしが厠で小を足した時よりも大きいほどでさあ。
人の身体は、まああちらさんが何者かはひとまず置いておいて、ここまで水分に満ちているのかと、ただ単純に感心して思わずその旨を口から漏れると、
悪意がないのがわかる分、あちらさんにはよっぽど耐え切れない言葉だったのでしょうね、
自分はそんなはしたない女ではないと主張するみてえに、布団を使ってごしごしと自分のそそを拭き始めました。

それが新たな刺激になってしまうのか、何度拭いても愛液がとめどなく溢れてくるものだから、布団が栗の花の匂いを漂わせる液体でしなしなと、
洗濯をして乾かさなかったもののようにべちゃりとたっぷりと水を含んでしまいやした。
あちらさんは目を伏せて長い睫が夜だというのに影を作り、しくしくと泣き出してしまったではありませんか。
何と言っていいか分からず、肩を出来る限り優しく叩いて慰めて、ようやくあちらさんの涙も枯れると、ようやく男根を挿し入れることとなりやした。

なにせあちらさんは妙齢の、美しい肢体を惜しげもなく晒している訳でさあ、
おおよしよしと宥めている間もつんと屹立している乳首やぽこんとせり出たそそやもじゃもじゃと絡まり波打つ陰毛が見えるのです。
そりゃあ男なら萎えずにおるのもしょうがあるまいて。片方の手が頭を撫でておる間にもう片方が乳房をむにゅむにゅと揉み解すのもこれまたしょうがあるまい。

あちらのそそに突き入れてみると、使い込んでおらんのか、やはり狭くてきつい。しかし進まなんだという訳ではない。
涙は枯れたが下は今もなお大洪水。潤滑液が溢れておるものだから、こちらにみっちりと絡みつく肉襞もその役目を果たせなんだ。

押し入れる度にこちらに抱きついていたあちらさんは、その腕の力を強め、悩ましげな吐息を首筋に吹きかける。
根元まで入ると、動かなくなったことを不思議に思ったのか、どうされたのか、というような眼差しをこちらに向けてきたので、
全部入ったのだと囁いてやると、なにやら微笑みをこちらに浮かべました。
うんともすんとも喋らないあちらさんのことだからどういった理由で笑ったのかは今も分かりません。
しかし、その顔が幸せそうだったのは誰が見ようと明らかだったと、あっしは思います。

191:9/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:41:31 RbAA2ocp
あちらさんは出来る限り声をださまいときゅっとその可愛らしい口を噤んでいるものの、
こちらの肉棒があちらさんを一突きする度、ああっと一声、なんとも美しい嬌声が響きます。
両の乳首が摘んでくれと言わんばかりに存在を主張しておるので、ぎゅうと摘んでやると濁音交じりの悲鳴にも似た声が奏でられる。
下の口がひくひくと蠢くので苦痛でないのだけは確かでありやした。

お前さんは全く喋らんのに、下の口はぱくぱくとお喋りだなあと気持ちよさから頬を釣り上げながら喋ると、
あちらさんは、やはり頭をぶんぶんと左右にするのですが、そそがその通りだと蠕動しているので全く意味がありやせんでした。
じゅぼじゅぼと音を立て、穴と棒の隙間から漏れたどちらとも分からない液体が泡になっておりますが、そろそろあっしにも限界が近づきやす。
すると自然と腰の振りも速くなり、あちらさんもよほど耐えられなかったのか、ようやく重い口を開きやした。
「かん……にん……か……にん」
またも涙目になりながら髪を乱し、堪忍と呟き続けるあちらさんを尻目に突き入れ続け、やがて果てました。
びくんびくんと脈を打つ肉棒を抜くと、あちらさんのそそから濁った白い液体がたらりとだらしなく垂れました。
そんな様子を見ている内に視界が白んでいき、知らん内に眠ってしもうたという訳です。


話はそれで終わりやせん。申し訳ない、もう少しだけ続くんでさあ。
起きてみると、夜も白み、すっかりお天道様が上っておりやす。これだけ明るいのに、あの無口な雪のように白い肌をもった美女はまったく見つからん。
名前も知らないので、おおい、おおいと馬鹿みたいに声を出してみますが、うるさいぞと他の客に言われるだけでありやした。
怒鳴られた時、ふとあの晩のけらのことを思い出しやした。

土の中に潜って、日の光を見ることの無いけらは、何も見えない闇の中、必死で叫び続けているのです。
自分はここにいるということを。誰かがそれに気づいてくれることを信じて喧しく叫び続けているのです。
けらのことを煩わしいと思ったのは、きっと無意識のうちに同属嫌悪を抱いていたのでしょう。
よくもあれだけあちらさんにいやらしく言葉を投げ掛けたのも、何も喋らないあちらさんに自分という存在を知らせたかったからに違いありやせん。

何も反応が返ってこないというのは、いないのと変わりありやせん。
あっしは何か証拠が欲しかったのです。あの綺麗な人がここにいるという証拠が。あの夢のような体験が事実であるという証拠が。

自分以外に人気のない貸家の部屋には昨晩飲み散らかした酒と、裏返しになったあの美人画があるだけでした。
昨日の約束を思い出し、あっしは絵を丁寧に箱にしまうと、髭紳士の元へ向かうことにしました。

192:10/10 ◆95TgxWTkTQ
07/06/21 23:43:55 RbAA2ocp
髭紳士に約束の掛け軸を差し出すと、一目、これは受け取れないと断られました。
裏返しのまま、表を見ないで持ってきたので画を間違えて持ってきてしまったのかもしれない。あるいは昨日酔った勢いで酒を引っ掛けてしまったとか?
色々と理由を考えてみやしたが、見たほうが早いってんですぐさまそれを見てみると成る程その原因が分かりやした。

その画は確かに昨日の美人画でしたが、
掛け軸の向こうの美人は着物を着崩し、太股から赤と白の混じった液体をつーっと垂らし、白い肌を羞恥で真っ赤にして立っておりやした。

あっしは昨日の晩の出来事を正直に話すと、髭紳士は大笑いし、今度またあなたの画をくれればいいと代金だけ寄越して颯爽と去っていかれやす。
こんなこともあるのか。
そうしみじみ思いながら、あっしは掛け軸を、皺がつかないように、抱きしめました。


あの晩の幽霊が自分の理想の美人なのも、妙に親しみを感じたのも当たり前の話でした。だってそれはあっしが描いたんですもの。
その後何度かあちらさんは画から出てはあっしと夜を共にして、「おうきょのれい」という言葉の意味も分かりました。
あの晩の出来事は、幽霊画として世に生まれ、老若男女問わず誰からにも虐げられる存在だったあちらさんを、
言い値で買い取る人が出る位の美人に仕立て上げてくれたあっしへのお礼だったそうです。
なんでまぐわう事を礼にしようかと思ったのか、自分の持っているものなんてそれ位しかあらん、
それに誇れるものなどあなた、つまりあっしですが、が褒め称えてくれたこの身体しかなかったのです、などと、ぽつりぽつりと口ごもりながら語ってくれました。
「今日の礼です」そう言おうとしたものの、なにせ初めて喋ったものだから、うまく言葉にならず、
「今日」が「おう」になり、言いなおしたものの間違えないように注意しながら口に出したので途切れ途切れになってしまったと。そういう訳なんでさあ。
ひょんなことから家庭を手に入れたあっしはその後、心機一転、あの晩のあちらさんの言に因んだ名に変え、画に没頭しました。
描いて描いて描いて描いて。そして気づけば画描きはあっしのれっきとした本業となっておりやした。今では何人も弟子を抱える一大一派でさあ。
今はその画はありやせん。
というのも、はるか昔に生まれた幽霊画は誰の手に取られることも無く百年を過ぎて付喪神となり、
その後ある絵師―まあ、あっしのことなんですがね―によって美人画となり、今では子沢山の幸せ家族画に姿を変えておるからでさあ。



何故こんな素っ頓狂な話を恥ずかしげもなくする気になったのかというと、これまた話が長くなりますがこの際ですから説明させてくだせえ。

ようやく立身出世したあっしは、あの日大金をくだすった髭紳士に恩返しをする為にあの不思議な晩の出来事が起こった町へと戻ってきました。
思えばあの紳士から戴いた大金が無ければ酒場や何やらの借金で野垂れ死んでいた事でしょう。
しかし残念ながら、あの人の好い髭紳士はその性格のせいで騙されて一文無しとなり老衰で死んでしまったと言うじゃありゃせんか。
豪邸を売り払われたご親族は、その輝かしい過去はどこへやら、今も質素な生活をしているのだという。
あっしは思いました。今、この時こそが、あの時のご恩を返す時なのだと。

今の今まで飽きもせずによくあっしの話を聞いてくれました。
話を聞いて下さっている時のあなたの背筋は、あなたの祖父上と同じようにぴんと竹が入ったように真っ直ぐでしたよ。
これがこの日の為に書き溜めた画の山です。これが少しでもあなた方の生活の足しになってくれればと思いやす。
ああ、この円山応挙という印は、紛い物ではありやせんのでご安心を。

これであっしの礼は、しまいでございやす。


(了)

193:名無しさん@ピンキー
07/06/21 23:53:16 HTMTsUjW
GJ!おあとがよろしいようで。

194:名無しさん@ピンキー
07/06/21 23:59:40 jgwwhOpU
邪魔しまくっちゃった…
すまない。
そしてGJ!

195:名無しさん@ピンキー
07/06/22 00:33:52 1AvWFveZ
付喪神とか、そういう話は好きだ。しかもえろい! いい仕事してるぜ。

196:名無しさん@ピンキー
07/06/22 00:45:07 pySQjJmZ
クオリティ高ぇw
こういう形式は珍しいけど、抵抗なく読めた。韻を踏んだりして面白いな。しかもエロい。超GJだぜ!!

>>194
タイミング悪─ッ!!まあ、どんまいだ、半田くん

197:名無しさん@ピンキー
07/06/22 02:07:46 W55Kvz3M
>>196
あぁ!車道に猫が!!

198:名無しさん@ピンキー
07/06/22 19:33:54 ySxkVlxU
>>197

俺が行くっ!!


キキーー、ドカッ!!

あ……と…GJ…

199:名無しさん@ピンキー
07/06/22 22:08:59 pySQjJmZ
>>197
元ネタわかる人がいて素で驚いた…無口とは関係ないネタだが

>>198
ちょw無茶するなwww

200:名無しさん@ピンキー
07/06/23 00:45:24 cJVj0k9t
>>197 それについては「すきやき」が浮かぶんだがそうなのか?

201:名無しさん@ピンキー
07/06/23 01:08:23 SLhwcZ6T
>>200
「1/Nのゆらぎ」じゃないか?昔ガンガンでやってた土塚理弘のギャグ漫画。

202:名無しさん@ピンキー
07/06/23 01:37:42 sNeIlAvr
>>200
すきやきってどんなん?

203:名無しさん@ピンキー
07/06/23 11:15:45 cJVj0k9t
気のせいならいいんだが…
自分が無口キャラを好きになった歴史がそこにあるんだよ…
まあ2、3年前の事なんだけど。

204:名無しさん@ピンキー
07/06/23 14:04:37 8PNoWG3e
詳細kwsk

205:名無しさん@ピンキー
07/06/23 17:14:52 LoGKd7RF
GJ

206:名無しさん@ピンキー
07/06/23 21:45:55 sNeIlAvr
からあげなら知ってるんだが

207:名無しさん@ピンキー
07/06/23 22:36:59 cJVj0k9t
「スキヤキ」については誰も知らないのか…
とりあえずパワ○ケ7をやってみてくれ、分かるから。

208:名無しさん@ピンキー
07/06/24 00:37:52 NAWu9/L0
>>207
あれでマジ泣きした俺がいるぞ

209:名無しさん@ピンキー
07/06/24 02:10:19 SAtd9PNX
パワ○ケは確かに恋愛シミュレーションのごとく属性をカバーしてるが、無口っ娘まで守備範囲だったとは知らなかった。

210:名無しさん@ピンキー
07/06/24 03:41:29 XNPDcu2j
>>208 同志よ!俺も泣いたから気にするな! 真のエンディングを見るために何日励んだか…

211:名無しさん@ピンキー
07/06/24 11:45:13 7pxz1CvH
>>181
す、すごすぎる…

212:名無しさん@ピンキー
07/06/24 20:58:14 lg4lRm+v
ちょっと検索かけたらネタバレ踏みまくっちゃったが凄いんだな最近のパワポケ……
正直ヒロインありきのストーリーじゃないか。ちょっとDS買ってくる

213:名無しさん@ピンキー
07/06/26 00:43:20 lukcwtVg
俺が三河家に居候し始めてからもう三ヶ月だ。
この三ヶ月の間、俺は人生の半分以上の幸と不幸に遭遇したような気がする。
幸は大抵が冬美関係、不幸は夏希様関係だ。
特に48の夏希技は恐ろしいもので、特に夏希ドライバーは本当に死ぬんじゃないかと思ったほどだ。
夏希様の彼氏はその辺大丈夫なんだろうか…
「あれ、今日は早いっすね夏希様」
「ああ、仕事がすぐに片づいたからな」
「そりゃよかったっすね………あぁ…彼氏、いないのか」
「ん、なんか言った?」
「全然全く何も、夏希様の結婚に不安を感じてたりしませんよ」
「…ほぅ……今日は夏希スーパーホールドを味わいたいようだな」
「え?勘弁してくださあぁいだだだぁ!!その関節はそっちに曲がりまがあぁぁ!!!」
夏希様のデカい胸と白く美しい脚とかが体に密着しているが、痛みでそれどころではない、このままじゃ落ちる!
「……夏ねぇ、お風呂」
思わぬ救世主参上!すげぇ、冬美が輝いて見える…
「ん、じゃあ今日はこの辺で勘弁してやる」
俺の命を刈り取らんとばかりに締めていた拘束を解き、上機嫌で風呂に向かう夏希様。
今日のパンツは白のレース、ということだけが倒れている俺に神様がくれたご褒美だった。
「いたたたた…後少しで死ぬとこだったぜ」
「……自業自得」
「ちぇ……まぁ、冬美がギューッてしてくれれば治るんだけどな」
「……馬鹿」
「とかなんとか言って顔真っ赤じゃん」
「………」
お、顔が真っ赤で俯きだした。
冬美のこの反応を見るのは俺だけでいい、誰にも見せたかねぇ。
「……ホントに、治る?」
「あぁ、治る治る、踊り出すくらいに治るぜ」
「……ち、ちょっとだよ?」
「あぁ、いいぜ」
「……エッチなの、しない?」
「んなことしないって」
多分無理だけど。
「……じゃあ」
モジモジしながら俺の背中に腕を回し、体を密着させる冬美。
シャンプーのいい香りと冬美の密やかな胸がパジャマ越しに……やべぇ、勃ってきた。
「……エッチなの、無しって言った」
「いや、これは男の子の正常な状態でだな…」
「……したいの?」
「…したくないったら嘘になる、お前風呂入った後…」
「……別に、いいよ」
へ?マジっすか!?
「……だから……お願い、聞いて?」
「…何?」
「……後で…一緒にお風呂で…保守して」


214:名無しさん@ピンキー
07/06/26 00:49:30 b6KoidH2
保守だけじゃあ飽き足らないぜ!!!!

215:名無しさん@ピンキー
07/06/26 00:52:50 nyRPZ7ve
萌えた。いやむしろ燃え尽きた。
>>207パワポケ7?その無口ヒロインのすきやきとやらに泣けるのか?

216:名無しさん@ピンキー
07/06/26 02:26:11 b6KoidH2
すきや人に焼きを入れるのかい?

217:名無しさん@ピンキー
07/06/26 23:18:24 S/5GijNj
車にひかれそうになった猫の名前が「すきやき」

218:名無しさん@ピンキー
07/06/27 02:05:52 g3wPDK7Z
>>217おk。とりあえずかってやってみる。

219:名無しさん@ピンキー
07/06/29 17:56:30 UI3e+omI
保守

220:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:28:49 2R6cL8P0
どうして、こんなことになったんだろうか?
泣きそうな顔をした苺に押し倒されてぼんやりと思う。

「啓くん…」

滅多に言葉を発しない口から漏れたのは、俺の名前。
そして、その唇が俺に重ねられる。
そう、触合うだけの、幼稚とも言える、キス。

この細い体のどこに、俺を押し倒すような力があったのか?
それともこれは、いつも伝えようとして口にできなかった気持ちの力なのか?
とにかく、抵抗しようという考えさえも、奪われてしまった。

唇を重ねたまま、苺は制服のボタンに手を掛け、羞恥に顔を染めながら、ブラさえも外す。
桃色の頂点が視界に入る頃、ようやく苺は唇を離した。
「苺、お前何を考えて…!?」
言葉は最後まで続かなかった。
苺はその華奢すぎる手で、俺の手を掴み、そして自らの膨みに押しつけた。
「…ぁ、あたしのこと、嫌いにならないで…!!」

消え入りそうな声で言いながら、俺の手の形を変えていく。
小柄な体躯に合わない、大きく、形の良い膨みが、醜くゆがんでいく。
「ちょ…っ!!苺、やばいからやめろ…!!」

己の欲望が形になっていくのを感じた。
「…ぁ」
そして、その感触は苺にも伝わる


221:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:42:42 2R6cL8P0
反則だと思った。
なんで、こんなに、こいつは嬉しそうに、幸せそうに、無邪気に微笑むんだろう。

この微笑をズタズタにしてやろうかとさえ考えてしまう。

「自業自得だからな」
「…っ!?」
苺の肩を掴み、一気に引寄せ、そして床に押しつけた。
折れない程度に加減して両手を片手で括り、耳朶の溝をを、舌でなぶった。
途端に苺の表情が、恐怖に染まる。
そう、もっとその顔を見せて欲しい。
「ぃゃ…!!」
絞り出すような拒絶の声も、嗜虐心をあおる。



222:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:54:02 2R6cL8P0
「どうして、あんなことしたんだよ?」
空いている手で、苺の体をなぞっていく。
その度に、苺の体はビクリと反応し、目にたまっていた涙がボロボロと落ちた。

「ゃぁあっ!!啓くん…っ」
「言えよ」
「っふぁ…!!ゃめ…」
「ったく、いやがる言葉だけは言えるのかよ?」

業をにやして、スカートの中に手を伸す。
苺の抵抗が激しくなるが、力任せに押さえこんだ
「……の」
下着の中に指が入り、硬い蕾をこじあけている最中に苺が呟く。
「だって…、ほ、保守して欲しかったんだもん」

223:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:56:58 2R6cL8P0
駄作で済みません

224:名無しさん@ピンキー
07/06/30 01:11:57 xtSK7aLV
>>220-223
乙。
でも保守オチよりはそのまま青春の情動に任せちまったほうがいいかもなんだぜ?

225:名無しさん@ピンキー
07/06/30 01:17:48 2R6cL8P0
次回は保守オチなしで頑張ります~

orz

226:名無しさん@ピンキー
07/06/30 11:08:48 3KnVZwuy
新たな神候補ktkr

227:名無しさん@ピンキー
07/07/02 03:09:41 a79X6E+0
保守

228:名無しさん@ピンキー
07/07/03 00:42:23 7wJdt3zu
ほ・・・・・・しぃ・・・・・・?

229:名無しさん@ピンキー
07/07/03 19:18:06 9vFkTlTQ
うん。

230:名無しさん@ピンキー
07/07/04 15:38:47 eG3T+zNo
話は長め、エロは少なめ。
それでもよろしければ、SSを投下したいのですが、
よろしいでしょうか?

231:名無しさん@ピンキー
07/07/04 15:48:29 hJSaZTnv
是非お願いします!

232:230
07/07/05 13:30:52 N2uWHLcu
それでは投下します。
かなり長い上に、設定的に拒否反応が出る方も
いらっしゃるかもしれません。

そういった方はスルーしていただけると幸いです。
ではどうぞ。

233:彼女の事情と僕の慕情
07/07/05 13:32:28 N2uWHLcu
……猶予は一ヶ月。
……泣いても笑ってもコレが最後のチャンスらしかった。
……でも、私は泣いたり笑ったりしたことがない。
……本当はどうでもよかった。
……がんばることも、がんばらないことも。
……わたしの中では同義だった。
……だから、このままでもいいと思った。
……このまま罰されても、別に構わなかった。
……でも、チャンスは向こうから訪れた。
……神様なんて信じていないけれど、その時だけは信じた。
……ああ、これで私は助かるんだなと、素直に思った。
……でも。


今にして思っても、彼女は不思議な娘だった。

彼女はとんでもなく無口だった。
彼女が三十秒以上何かを喋っているのを僕は聞いたことがない。
いつもボソボソと、なにか重大な秘密を隠しているように話す。
だから僕はいつも、彼女の口元に耳を寄せ、彼女の託宣を拝聴し、一々聞き返さなければならなかった。
そのくせ頑固で、彼女が何か言い出したら聞かないという場面はいくつもあった。
次に時間に凄く正確だった。
待ち合わせに遅れるとか、早くつくと言うことはなく、いつだって、時間ぴったり。
腹の中に原子時計でも入ってるんじゃないかと、冗談でなく本気で思ったこともある。
それに僕は、彼女の家も知らなかった。
どころか、彼女の携帯番号を最後まで知ることはなかった。
それでも僕たちは一緒にいたし、不便もなかったのだけれど。

まぁ、一番ダントツで不思議なのは、彼女が僕なんかと一緒に居てくれたことだろう。

自慢ではないが、僕は醜い(ブサイクなんて生易しい表現はしない。できない)。
背は低く、肌は浅黒く、余計な贅肉が余すところなくついている。
そのうえ汗っかきで、いつも異臭が漂っているのではないかと、気を配らなければならない。
また、性格も悪い。
理屈っぽく、卑屈っぽく、なにより馬鹿で要領が悪かった。
そして、さらに言えることは貧乏だということ。
いつだって、財布は軽く。そして、その財布には何の将来性もなかった。
ほら、見て御覧なさい。
こんな人間に付き合おう何て考える酔狂ものは、天然記念物モノだろう。
それでも僕と一緒に居てくれた彼女は天然記念物モノなのかもしれない。
背は僕より低く、肌は異様に白く、余計な贅肉なんてものは存在しない。
腰まである長い髪の下の顔はどこか幼く、だが、形容しようとすると『かわいい』より、『美人』という言葉がよく似合う。
性格は……、よくわからない。
彼女が何を考えていたのか、今でも僕にはわからない。
賢かった、といいたいが、僕なんかに付きまとうくらいなんだから、どうなんだろう、というところだ。
僕と彼女で唯一の共通点は、貧乏だと言うこと。
バイトを要領悪くこなしている僕よりも、彼女はお金を持っていなかった。
というよりも、お金というものに執着しなかった。
だからどんなときも、お金を払う場面になると、彼女は僕のことを見つめて、救済を求めるのだ。
といっても、彼女は比較的無表情だから、本当は何を考えていたのやら。

と、いけないいけない。
ついつい長くなってしまった。
僕と彼女の話は、実を言うとそんなに長くはない。
書いてしまえば、あっという間。
読んでしまえば、(乱文が苦痛でなければ)瞬く間。
そんな話だ。

それでは最初に何を書こうか。
そうだな、とりあえず、僕と彼女の出会いについて書いてみよう、と思う。

234:彼女の事情と僕の慕情
07/07/05 13:33:26 N2uWHLcu
夏休みも中ごろに差し掛かった、ある曇りの日。夕方。
道行く人々が、次のクーラーの涼しさを求めて足早に歩く商店街。
そんな人々の中、僕は浮かれて歩いていた。
何しろ給料日だ。
うちの店は給料を現金で払ってくれるいまどき珍しい店で、僕の懐は、真夏だと言うのに暖かかった。
もちろん僕はそれが不快ではない。
不快ではないのだが、浮かれている理由はそれだけでもなかった。
僕が店から出る間際、高校生バイトの女の子が僕に福引券をくれたのだ。
今日の5時までだという福引に、バイトが昼から夜までの彼女はいけないからという理由からだった。
もちろん、僕が嬉しかったのは福引の券が純粋に欲しかったというわけではない。
どんな理由であれ、女の子からプレゼントをもらったのだ。
そのことが単純に嬉しかったのだ。
「(今日は何かいいことがあるかもなぁ!)」
暖かい懐と、明るい気分。
それだけで、僕の足取りは宙に浮くほど軽く、ココロは天にも昇るようだった。
ふと気づくと僕は福引の会場に来ていて、列に並んでいた。
そろそろ、お終いと言う時間もあってか、なかなか人が並んでいる。
「(これで一等なんかがあたったら本当にラッキーだろうなぁ)」
もちろんそんなこと本気で思っていたわけではないが。
それでも、何かが起こりそうな予感で胸がいっぱいだった。
そうこうしている内に列は進み、僕の前には女性が一人立っているだけになった。
「(さぁ、次だ。何か当たるといいけどなぁ)」
そんなことを考えていた僕のシャツの袖を誰かが“クイッ”と引いた。
「?」
見ると前に並んでいた女性が、僕のことを何か求めるように見ている。
「(うわぁ、美人だなぁ)」
背中まである長い黒髪は空の色を映しそうなほど煌き、
全体的に細すぎる体は白いワンピースに包まれており、その肌は、それと同じくらい白かった。
僕を見つめる漆黒の瞳は赤ん坊のように澄んでおり、その目がすえられている顔は
どこか人形じみ、人間離れした美しさだった。
「(………………ホント、美人だ)」
僕が女性に見とれていると、福引の係りの中年男性が声を出す。
「お嬢ちゃん。はよぅ、回してぇな」
どうやら、福引でまごついているようだ。
「(っていうか、福引で何故まごつく?)」
そんなことを考えているうちに、女性はさらに僕の袖を引っ張った。
「な、なんですか?」
どもった。
キモいと思われたんじゃないだろうか?
そんな僕の心中など眼中にないように女性は、空いているほうの手で福引を指差した。
「?」
何かを伝えたいのは判るが、何を伝えたいのか判らない。
僕が怪訝な顔で女性と福引を見比べていると、女性は僕を手招きした。
近寄れ、ということだろうか。
僕は一歩足を踏み出し、女性に近づいた。
すると、女性はいきなり僕の頭を両手でつかみ、強引に自分の頭の近くまで持ってきた。
あまりといえば、あんまりな動作に、僕は身動きどころか声も上げられない。
僕はそのままの体勢で、彼女のほのかに甘い匂いを嗅ぐ羽目に。
「(うわぁ、何か香水でもつけてるのかなぁ?)」
突発的な自体にもかかわらず、僕はそんな場違いなことを考えていた。
そんな僕に構わず、女性は僕の耳に口を寄せると、ボソボソと何かを呟いた。
「………………」
内容は。
「え? 『これをどうすればいいのか?』ですって?」
奇妙なことを聞く女性だ。いままで福引をやったことないのだろうか。
それにどうして普通に聞いてくれないんだろう?
そこまで考えて、僕は自分の無神経さに気づいた。
「(そうだ。なにか、生まれつきの障害で大きな声を出せないのかも)」
女性はようやく気が済んだのか、体を解放すると、僕を見つめながら大きくうなずいた。

235:彼女の事情と僕の慕情
07/07/05 13:34:18 N2uWHLcu
心底、猛省していた僕は、女性の甘い匂いが遠くに行ってしまったことを少々残念にも思ったが、
そんなことはおくびにも出さず、
「それはですね。まずは、券を渡します。はい、この係りの人に、ええっと、五枚ですね。
……。五枚で一回ですか? じゃあ、一回だけ回せますね。では、そこの取っ手……、
そうそれです。それを握って、あ、片手でいいんですよ。で、矢印が描いてありますよね。
その方向に、取っ手を回すんです。いや、取っ手の部分を回すんじゃなくて、取っ手を持ったまま、
その箱を丸ごと回すんです。……そうです」
紳士的に解説した。
福引から一個の玉が出る。
「あ! もうあかんで! これ以上回したら」
「一回だけ。一回だけしかできないんですよ」
まだ福引を回そうとする彼女を、係りの人と同時に止めた。
彼女と僕、係りの人の視線が出てきた玉に集中する。
係りの人が、大げさにハンドベルを鳴らした。
「も、もしかして一等!?」
自分のではないが、胸が高鳴る。
「おめでとさん! 五等! 五等の花火セットや!!」
係りのオジサンが声を張る。
「(ご、五等……、か)」
なんだ。だったら、あのハンドベルいらなかったんじゃ……。
そんなことを考えている間に、女性に中途半端なサイズの花火が手渡される。
一応、声をかけたほうがいいかな。
「おめでとうございます。よかったですね、当たって」
女性は首をかしげると、また僕のことを手招きした。
なにかまた聞きたいことでもあるんだろうか?
僕はまた彼女に近寄った。
今度は彼女は僕の頭を拘束することはなかった。
その代わり、先ほどよりかは、比較的大きな声を出して喋った。
「………………」
「え?『これはなんだ』ですか? 花火ですよ、花火。したことがないんですか?」
女性は小さくうなずく。
そこで僕は得心がいく。
「(そうか。もしかして彼女、病気でいままでずっと外に出たことがないのかもしれない。
だから、福引とか、花火とか知らないのか)」
それだったら、彼女の小さな声とか、白すぎる肌とかに納得が行ったような気がする。
「これはですね。夜に火をつけて遊ぶものなんです。で、それが燃える様を『きれいだな』とかいって
楽しむものなんです。え? 『火遊び』? ま、そうなんですけど、あまり危険はないですよ。安全な遊びです」
彼女はいまいちよくわからないという表情をしたが、とりあえず納得はしてくれたようだ。
すると彼女は、僕に花火を手渡してきた。
「………………」
「『お礼です』って? なんの? 福引の? いえ、いいです。結構です」
確かに彼女の助けになったかもしれないが、物をもらうほどのことじゃない。
彼女は少し困った顔をして言う。
「………………」
「え、『自分ひとりじゃ遊べなさそうだから』って。じゃ、友達とかと―」
そこでハタと気づく。
「(そうだ。この人は、いままで病弱だったかもしれない人だ。友達とかは少ないのかも)」
「―じゃなくて、家族で楽しまれてはいかがです? それだったら……」
何とか会話を修正した僕を遮るように彼女は言った。
「………………」
「『家族いない』……。あ。ひ、一人暮らしなんですか。そうですか……」
修正、失敗!
ちょっと、気まずい。
彼女はなおも、僕に花火を押し付けてくる。
そこで、僕の脳裏にミューズの託宣が降りた。
「(こ、これだー!!)」
僕は、内心、物凄くどきどきしながら、でも、平静を装って言う。
「だ、だ、だ、ったら、い、い、一緒に、や、やりませんか? ぼ、僕と」
ものすごく挙動不審になってしまった。
これでは、下心があるみたいじゃないか!

236:彼女の事情と僕の慕情
07/07/05 13:35:16 N2uWHLcu
「(いや、下心がまったくない、というわけでもない。けど、これじゃあまりにも……)」
僕は物凄い後悔の念にさいなまれた。
そんな僕に彼女の一言。
「………………」
それは僕を救済してくれる一言だった。
「い、いいんですか!? そ、そうですか、それだったら―」
「―ラブラブなんは、ええんやけど。はよう、兄ちゃん、福引回してんか」
舞い上がる僕に冷たい一言。
僕を睨む、係りの人。
後ろを見れば、イライラしている、僕の後ろに並んでいる人。
そうだった。
ここは福引会場だった。
僕は彼女に待ってもらい、いそいそと福引を回す。
二回回した結果は、どちらもポケットティッシュだった。

今思うと、突っ込みどころ満載だが、それでもこれが、彼女と僕のファーストコンタクトだった。

「………………」
「待ってないですよ。ていうか、時間ぴったりですね」
僕の家の近くの自然公園。
現在時刻は夜七時を回ったところだ。
昼が長いこの季節、まだ、あたりは薄明るく、花火に適しているとは言いがたいが。
「(あまり時間が遅いと、さすがにマズかろう)」
という僕の配慮から、この時間になったわけだ。
彼女はどこでも、いつでもいいと言ったのだが、そういうわけにはいかない。
だから僕はとりあえず、この公園を候補に挙げてみたのだが。
どうやら、特に都合が悪かったり、機嫌を害することもないようだ。
僕は家から持ってきたバケツに水を張り、ぼんやりと突っ立っている彼女から花火セットを受け取った。
そして、手ごろそうな大きさの手持ち花火を一本抜くと、それに火をつける。
すると、花火の先端から緑色の火花が勢いよく吹き出した。
「(花火なんて久しぶりだな)」
なんて考えながら、ふと彼女のほうを振り返る。
彼女は物凄く集中した顔で、花火の先端、火花が飛び散る様を凝視している。
あまりにも真剣な表情に内心面食らいながら、僕は言う。
「これが花火の楽しみ方です。どうですか? 綺麗ですよね?」
彼女は大きく首を何度も振る。
どうやらお気に召したようだ。
僕は、花火を片手で持ち、もう片方の空いた手で、まだ火がついていない花火をもつと、
そろそろ消えかかってきた花火の火花で、新たな花火に火をつけた。
僕は古いほうの花火をバケツの中に放り込むと、彼女のほうに火のついた新しい花火を差し出す。
「どうぞ。持ってみてください」
彼女はおずおずと手を出し、遠慮がちに柄を持つ。
もう手を離しても大丈夫だと判断した僕は、彼女に完全に花火を手渡した。
彼女は青い火花を真っ直ぐに見つめる。
そして、ふ、と僕の顔を見つめる。
新しい花火を探していた僕は、まじまじと顔を観察され、頬が少し赤くなった。
「な、なんですか?」
彼女は小さな口で、小さくささやく。
「………………」
それはお礼の言葉だった。
ちょっと意表を疲れた僕は反応が遅れる。それでも
「い、いえ。そんな感謝されるようなことしていませんよ。ホ、ホラ! まだまだ、たくさんありますから。楽しみましょう」
僕の言葉にうなずいた彼女は、どこか上気した顔をしていたような気がした。

最後まで花火を楽しんだ僕ら。
ちなみに彼女の一番のお気に入りは、一番数の多かった手持ち花火でも、最後にやった線香花火でもなく、
袋の中でゴミのように放置されていた蛇花火だった。

237:彼女の事情と僕の慕情
07/07/05 13:36:50 N2uWHLcu
とうとう花火は全て終了した。
僕は、周囲を見渡し、ゴミを片付け終わったのを確認し、バケツの中を見る。
バケツの中には、今日、楽しませてくれた花火の残骸が残されていた。
「(今日はアリガトウな。おかげでこんな美人と遊ぶことができたよ)」
心の中だけで、花火たちに感謝する。
そうしていると、彼女が近寄り、僕と同じようにバケツの中を覗き込んできた。
「………………」
「『何をしていたか』、ですか? いや、今日は楽しかったなと、花火たちに感謝を―」
しまった。
こんなノスタルジックな少女趣味みたいなことをわざわざ解説してしまった。
キモい男だと思われなかっただろうか。
だが、彼女はそんな僕を見つめて大きくうなずいた。
そしてその小さな両手を祈りのように組むと、目を閉じる。
「な、何をしているんですか?」
「………………」
―私も感謝してるんです。
彼女はそう小さく呟いた。
だが、彼女が感謝することなんてあるのだろうか?
なにしろ、今日彼女と花火をしたのは僕なのだ。
醜く、馬鹿で、貧乏な、この僕だ。
そんな僕と花火をして、感謝することなんてあるのだろうか?
「(楽しかった、と思ってくれてるんだろうか? それだったら嬉しいんだけど)」
やがて、彼女は目を開け、手を離す。
そして、僕に向かい合うと、頭を下げた。
「………………」
それは彼女の心底からのお礼の言葉だった。
僕は胸が詰まり、息が苦しくなる。
「(もう、これでお別れなんだな……)」
それでも、笑いながらこういった。
「そんなに感謝していただかなくても結構ですよ。僕も十分楽しかったですし」
彼女は顔を上げる。
そこに浮かんだ表情は、どこか焦っているような、何かに追い詰められている真剣な表情だった。
意外な顔を見た僕は、場違いにも胸を高鳴らせる。
「(連絡先くらい、聞いても、いい、ん、じゃない、か……?)」
それは名案だ。
だが、すこし大胆じゃないか?
そんなことを考えていると、彼女は僕の片手を掴み、ズンズン歩き出した。
「! な、なにを……!」
いきなり手を握られた。
そのことに内心パニックになっていた僕は、冷静な状況判断ができない。
少し冷たい感触、とても柔らかい感覚。
小さな手を片手全部で感じる。
僕の頭の中はそれでイッパイイッパイだ。
それでも、何処へ連れて行く気なのかが気になった。
「あ、あのあの! い、一体、どこへ……!」
彼女は答えない。
振り向くどころか、さらにスピードを上げ、自然公園の奥へと足を向ける。
すぐに整理された区画から、樹木が生い茂り視界の悪い場所を通る羽目に。
それでも、彼女の足は止まらない。
僕は、彼女のなすがままに、彼女についていくしかなかった。

しばらく歩き続け、本格的に木の影で暗く、湿った場所でいよいよ彼女は足を止めた。
「な、なんなんですか? 一体?」
日ごろの運動不足のせいで、もう息が上がっていた僕は、少し不機嫌に彼女に尋ねた。
「………………」
「『花火のお礼がしたい』って……。こんなところで? 一体何を?」
とんと想像できない。
彼女は僕の方を押さえ、僕の後ろにあった樹木に僕の背中を寄りかからせる。
無抵抗の僕。
そんな僕には見向きもせず、彼女は僕のズボンのジッパーを下げた。

238:彼女の事情と僕の慕情
07/07/05 13:37:59 N2uWHLcu
…………下げたぁ~!?

「ちょっと、おたく、な、なにを!? あの、どういう―」
すぐさま彼女はその場に跪くと、開いた社会の窓から、僕の性器を取り出し、咥えた。
「…………はぅ!」
いきなりの刺激に僕は何の抵抗もできない。
彼女はそのまま、先端を咥えたまま、手でサオを擦りはじめた。
「ちょ…………、あの。な、なんで……?」
先端が暖かく湿ったモノに取り囲まれ、サオを刺激された僕の男性自身はゆっくりと、固さと大きさを整えていく。
彼女は手を擦り動かしながら、呟いた。
「………………」
「え、じ、持病? えーと、それはつまり……?」
「………………」
つまるところ、彼女の説明によると。
彼女はふとした拍子で性欲が昂ぶってしまい、それを押さえるのは困難なんだとか。
それで、今、お礼をしたいという彼女の感情が、性欲となって彼女をこんな行動に駆り立てているのだ、という。
「(………………えぇ?)」
正直胡散臭い話だ。
そんなことが本当にありえるとは思えない。
でも、彼女の顔は本気のそれだった。
「(…………もしかして、痴女?)」
にしてはやり方が中途半端というか、なんというか。
それに痴女だって、相手くらい選ぶだろう。
でも、今彼女の相手をしているのは僕だ。
醜い、僕なのだ。
「(それに、彼女のあの表情)」
性欲が昂ぶっているというより、どこか落ちつか無さ気で、切羽詰ったような顔。
それは言葉よりも雄弁に彼女の苦境を物語っているようだ。
「………………」
―どうしてもイヤなら、このままやめます。
彼女はそういった。
いつの間にか、性器を刺激する手の動きも止まっている。
僕は目を閉じ考えた。その結論は―。
「(こんな千載一遇のチャンス、逃がせられるかー!!)」
僕だって、一応は男なのだ。
そんな僕がこんな美人が迫ってきているというのに、逃げ出すなんていう選択肢はありえない。
「(それに、礼をしたいという彼女の気持ちも汲んでるし、彼女を助けることになるかもしれないんだ!!)」
無理やり、偽善的な言い訳も考えた。
「じゃ、じゃあ、アナタのそのお礼の気持ち、受け取ります」
それを聞いたときの彼女の表情。
嬉しいんだけれど、恥ずかしい。それよりなにより、哀しげで切なげなその表情。
僕はその顔が何を表しているのか、その時は知る由もなく、ただただ見とれていた。

「ふぁ……ん、ちゅぱ、ちゅぴ、ん、れろ……っ」
先端を丹念に舐めまわし、舌先で先っぽやカリ、裏筋をなぞる。
彼女の小さな口から吐き出される情熱的な吐息と、暖かな舌や唾液の感触に、ペニスはさらに硬くなる。
「ぁあ……あう…………んちゅぴ、ちゅる…………ぴちゅっ」
「く、……うぅ」
「ふぁ……んんっ、ちゅるぷ、ちゅぱ……ちゅ、ちゅ、ぴちゅ……はう、んぅっ……」
先走りすぎているカウパーを、丁寧に舌で攫い、口に含む。
柔らかく暖かい、可憐な唇が、僕の臭い体液を嬉しそうに口に乗せ、咀嚼していく。
「ぁはあ……んんっ、ちゅる、えろ………ちゅっ、ちゅっ……」
粘液を飲み下すごとに彼女は熱い吐息をつき、もじもじと腰を震わせる。
「そ、そんなもの飲み込まなくてもいいんですよ……?」
腰が砕けそうになる快感に襲われながら、正直な感想を漏らす。
しかし、彼女は首を振った。
「………………」
―これもお礼の一つですから。
彼女はそう言うと、再び、僕の性器を咥えた。
「んちゅ……はぁ、はあっ……へふ……ちゅる、ちゅぴちゅ……」

239:彼女の事情と僕の慕情
07/07/05 13:39:10 N2uWHLcu
唾液とカウパーでベタベタになったペニスを何度も舐め上げたことで、彼女の口の周りはだらしなく汚れている。
それでも、そんなことお構いなしに、彼女は僕の敏感な部分をぴちゃぴちゃと舐めては、吸い付く。
「(このままでもいいんだけれど……)」
少し図々しくなった僕は、彼女に要望を出してみる。
「……あの、スミマセン。こんなことを言うのも何なんですが……もう少し、激しくしていただけると……」
消え入るような声で彼女に訴える。
彼女はペニスを咥えたまま、上目遣いに僕を見て、小さくうなずいた。
「はぷ……ちゅ、れろれろれろれろ……っ」
べちょべちょに唾液を絡ませた舌で、先端部分を激しく責めてくる。
「はぁ、はぁう……! ちゅる、ちゅう、……れる、んんっ……ぴちゃ、んぅ……
マタオオキクナリマシタヨ……あん、ちゅる……」
「え? 何か言いました?」
今、小さく何かを喋ったような。
彼女はそれには答えず、さらに舌を大胆に使う。
「ちゅる……ちゅぴ、れる……ぴちゃ………………れるれる。ちゅぴ…………」
その熱心な奉仕に思わず腰が前に出る。
彼女はそれを受け止め、さらに口戯でかえしてくる。
唇で先端を刺激し、先走りを啜り、口を大きく開けて舌を突き出し、ペニスにヌメヌメと絡ませる。
そもそも童貞の僕だ。
彼女の卓越した舌技に、あっというまに追い詰められる。
彼女もそれを感じ取ったのか、より一層、舌を絡めてくる。
「ん、ちゅるる、れろれろれろ、ちゅぱ、…………んんっ!」
「もう、で、出ますから口を離して……!」
しかし、彼女は口を離すどころか、口内の深くまでペニスを入れ込んだ。
「あ、ちょ。あの、あぅ……、で、出る……!」

―ビュル、ビュルビュ! ビュプッ……!

塊のような精液が、ペニスを上り詰め、先端から射出される。
その瞬間。
まるで命そのものを精液ごと抜き出される、そんな感覚が僕を襲った。
おもわず、僕は後ろの木に倒れるように寄りかかる。
彼女はそんな僕に戸惑うことなく、精液を口で受け止める。
勢いよくだされた精液は、それにとどまらず、彼女の口の周りまで汚す。
「(な、なんだったんだ。今の感覚……)」
戦慄した。
今まで味わったこともない倦怠感。
全身から力が抜ける虚脱感。
下半身を中心にまとわりついてくる、甘く、痺れるような感覚。
ただの射精感ではない何かが、僕の体をさいなむようだった。
「………………」
彼女は無表情に、口内に出された精液をコクリ、コクリと少しずつ飲み込む。
それどころか、口の周りの精液や、ペニスの尿道に残ったものも一滴たりとも逃すまいと、舌を絡めた。
気を取り直した僕は、彼女の行動に面食らいながら言う。
「そんな、飲み込まなくても……」
彼女はふ、と僕を見つめ
「………………」
―飲まないと意味がない、と意味不明な言葉を吐いた。

その後、僕たちはちょうど持っていたポケットティッシュで後片付けをすると、花火をした場所まで戻ってきた。

あたりはすでに暗く、すぐ傍の外灯が直線的に僕らを照らす。
僕は謎の脱力感と、無力感に苛まれ、ただただ無言だ。
当然、彼女も一言も口を利かない。
そして、バケツのところまで着た僕らは、向かい合って立った。
「なんか、今日は、その、あ、有難うございました」
何とか僕は感謝の意を示す。
彼女は困ったように首を振り、頭を下げた。
「な、なんでアナタが謝るんですか?」

240:彼女の事情と僕の慕情
07/07/05 13:40:17 N2uWHLcu
「………………」
―私の持病に付き合ってもらってしまったから。
申し訳なさそうに頭を下げ続ける彼女。
「(いえいえ! アナタのような美女に誘惑されるのでしたら、こちらから喜んで―なんて言えるか!!)」
彼女は持病のことを酷く気にしているようだし。
そんな持病のために、こんな男のイチモツを―。
僕は首を振る。
言いたいことはそんなことじゃない。
「アナタが僕に負い目を感じることはないですよ。アナタは僕に花火のお礼を下さっただけ。
反対に僕は、アナタと楽しい時間をすごすことができた。それだけで十分です」
僕はできるだけ真摯に言った。
彼女がようやく頭を上げる。
「今日は楽しかったです。また、何処かでお会いしましょう」
正直、残念だった。
否、心底残念だった。
「(あんな美人と知り合うことができたというのに~! コレでお別れかよっ!)」
それでも、彼女の持病が発症したとき、この醜い僕が隣に居るわけにはいかない。
彼女にはもっとふさわしい男性が居るはずなのだ。
それを彼女の持病につけ込んで、彼女とまぐわうなんていうのは紳士ではない。
だから僕は身を引いた。
彼女と、彼女にふさわしい人間のために。
いやそれだってウソが混じっている。
本当は怖かったのだ。
彼女のような美しい人間と関わるということが。
彼女のような複雑な人間と関わるということが。
「自信」というものとは無縁だった僕。
だから、怖かった。
それでも、心の中で号泣するほど、このチャンスは惜しかった。
そんな心中を見抜かれる前に、僕はバケツを持つときびすを返した。
「(もう、会うことはないんだろうな……)」
寂しい、侘しい、なにより悔しい、惜しい。
「(今日のことは日記に書いておこう)」
心にそう決めると、僕はゆっくりと歩き出した。
すると―。

クイッ。

僕のシャツの袖が引っ張られる。
僕は振り向く。
そこには僕のシャツを掴んだまま、必死な表情を浮かべている彼女の姿があった。
「………………」
「今、なんて?」
聞き間違いじゃないだろうか。
でも確かに彼女は言った。
―私と友達になってください、と。
「トモダチ、ともだち、友達……。友だちぃ!?」
彼女は大きく何度もうなずく。
「そ、それって、ぼ、僕の事、ですよね……? 僕と、友だち……」
「………………」
―だめですか?
彼女は切なげに首をかしげる。
ちょっとその動作は、反則気味にかわいかった。
そのまま、抱きしめかねないほどに。
それでも、僕は自制する。
「(そんなことをしたら、変態だ……!!)」
抱きしめる以上の行為をさっきしておきながら、それでもそれができなかった僕は、間違いなくヘタレだろう。
「ほ、ほんとうに僕なんかでいいんですか?」
醜く、馬鹿で、貧乏なこの僕で。
彼女は大きくうなずいた。

241:彼女の事情と僕の慕情
07/07/05 13:41:28 N2uWHLcu
こうして、僕と彼女は友だちになった。
といっても、もうすでに性行為を行っているという奇妙な友だち関係ではあったけど。
それでも、友達には変わりなかった。

242:230
07/07/05 13:42:22 N2uWHLcu
とりあえず、今回は以上です。
お目汚しですが、まだ続きます。
よろしくお願い申し上げます。

243:名無しさん@ピンキー
07/07/05 19:54:49 TkxM7JHe
gj

244:名無しさん@ピンキー
07/07/05 22:26:32 UocJP9vB
GJ!いいじゃんいいじゃん。

245:名無しさん@ピンキー
07/07/06 01:06:20 RS+ifVv/
期待を裏切らない出来ですな。素晴らしい

246:名無しさん@ピンキー
07/07/06 01:14:37 57mZ71MU
GJ!!ミステリアス無口っ娘はあまり書かれてないから期待大です

247:名無しさん@ピンキー
07/07/06 01:57:03 99xDVg/p
GJ!!デブ男は脳内変換しました。
ついでに保守。

248:名無しさん@ピンキー
07/07/06 16:51:51 ExZqGP7U
>>242
ぐっじょb!
珍しく読んじまったぜ…相手は淫魔なのか、人形なのか、それともただの人間なのか?
なんか野郎が自分にフィードバックし過ぎてちょい感情移入しちゃったりんりん♪・・・orz
続きを待つ楽しみができたぜぃ

249:名無しさん@ピンキー
07/07/06 19:28:47 57mZ71MU
>>248
個人的には宇宙人と予想。

250:名無しさん@ピンキー
07/07/07 06:40:13 qF8F0BcQ
続き待ち保守

251:230
07/07/08 17:47:46 GzuXLU2D
申し訳ございません。
これより、投下させていただきます。
前回より長い上に、エロも少な目かもしれません。
それでも構わないという方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

252:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:48:50 GzuXLU2D
それから彼女から連絡があったのは、あの花火の夜の三日後だった。
僕はその日はバイトが休みで、朝から自室でゴロゴロとしていた。
一応言っておくが、ただゴロゴロしていたわけではない。
『家庭の医学大百科』なる書物で調べ物をしていたのだ。
調べていたのは当然、彼女の持病。
しかし、この本が古いからか、それとも彼女の持病はよほど特殊なのか、残念なことに
この本には彼女の持病については触れられていなかった。
ちなみに、何故三日後の今、調べているかというと、僕は小さいころから本を読んでいると
眠くなってしまう体質だからだ。だから、バイト前には読めないし、バイトの後に調べると、簡単に眠ってしまう。
だから、バイトが休みの今日、気合を入れて本を開いたのだが。
しかし、睡魔は目の前に来ており、意識の陥落は目前。
そのときだった。
僕の滅多にならない携帯がなり、半分眠りかけていた僕は一瞬混乱しながらも、それに手を伸ばした。
表示されたのは、知らない番号。
訝しみながら、とりあえず電話に出てみる。
「はぁ~い、もしもし」
「………………」
無言電話かと思った。
しかし、耳をよくすませてみれば、雑多な音に混じりかすかに人の声がする。
そして、その声は待ち望んでいた声でもある。
「ああ! あなたでしたか。お久しぶりです」
「………………」
「いえいえ。ちょうど今、暇していたところなんですよ。あなたも?」
「………………」
「ああ、そうなんですか。へぇ~…………」
「………………」
「………………」
会話が途切れてしまった。
「(なにか、なにか話題はないか!!)」
僕は必死に頭の中を探り、目を部屋中にいきわたらせ、何とか活路を見出そうとする。
しかし、無常にも救いの手は何処にもなかった。
「(くっ、これだから、馬鹿は救いようがないというのだ!!)」
自分の無能さが吐き気がするほどイヤになる。
しかし、救済は意外な方向から訪れた。
「………………」
「はい? 今、なんて……?」
「………………」
―お暇でしたら、一緒に街で遊びませんか?
そう聞こえた。
確かに、そう聞こえた。
「はい! はいはい! はい!! 喜んで!!」
「!……………」
いきなりの僕の大声に少し驚きながら、彼女は笑った。……ような気がする。
「今何処に居るんですか? え? 駅前? わかりました、直ぐに―」

それから僕は、音の速さで身支度を整え、光の速さで待ち合わせ場所に直行した(誇大表現)。
待ち合わせ場所の、何を意味しているのかよくわからないモニュメントの前。
僕は、待ち人を探す。
どうやら、自分のほうが早く着いてしまったらしい。
しょうがなく、近くのベンチに座る。
「―!? おぉ?」
すると、間違いなく空席だったベンチの端に彼女が座っていた。
「(あれ? さっきまではいなかったのに……)」
見落としていたのだろうか?
というか、そうとしか考えられないが……。
気を取り直し、とりあえず、挨拶。
「お久しぶり、というのもなんですが、こんにちわ。待たせてしまいましたか?」
彼女は僕を見て、(気のせいかもしれないが)少しだけ顔を明るくした。
そして、丁寧に頭を下げた。

253:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:50:00 GzuXLU2D
「………………」
「え? 飛んできた? あぁ、今ちょうど来たって意味ですか。なるほど」
「………………」
「………………」
沈黙。
「(いかんいかん。コレでは電話の二の舞だ)」
そう思った僕は、カバンの中から情報雑誌を取り出すと、彼女に見せた。
彼女は不思議そうにそれを見つめる。
「実は、今日は映画を見ようと思いまして。それでこれを持ってきたんです」
「………………」
「『エイガって何ですか』? え? 見たことも聞いたこともありませんか? イヤ、
怒ってないですよ。……そうですか。ええっとですね。映画というのは……」
彼女に説明しながら考える。
「(そうか。彼女病弱だから、家とか病院から出たことがないのかも。知らないのは無理もないか)」
勝手に結論付けながら、説明を終了させる。
そして、情報誌の映画の一覧のページを見せる。
「なにか見たいのはないですか……って、映画の事知らないんじゃ、選びようがないですよね……。いや、怒ってないですって」
彼女はまるで、初めて見たかのように雑誌を見つめる。
そして、そこに書かれている映画の紹介文をたどたどしく読み始めた。
「………………」
「そうですね。それは戦争モノです」
「………………」
「え? あぁ、戦争モノっていうのはつまり―」
彼女に一つ一つの映画を説明する。
驚くほど何も知らない彼女に何かを教えるのは、妙な優越感に浸れて、少し気分がよかった。
そして、とうとう映画紹介のページが終わる。
僕はとりあえず、彼女の希望を聞いてみる。
「なにか、面白そうなもの、ありました?」
「………………」
彼女が少し遠慮がちにページの一部分を指差す。
そこには。
「……えー、と。なになに『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX 注:R-18指定』
………………、ん?」
………………。
なにか誤解があったようだ。
僕はもう一度彼女に聞きなおした。
すると、彼女はやはり『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX』を指差した。
………………。
「え~!? こ、コレが見たいんですか?」
彼女は大きく、何度もうなずいた。
「ち、違うのにしましょうよ。コレなんてどうです? この恋愛映―」
「……………!」
僕が言い終わらないうちに却下されてしまった。
どうしよう。
できるだけ、彼女の期待にはこたえたいが……。
しかし、『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX 注:R-18指定』だ。
どんな映画なのか、想像もできない。
なぜかコレだけには写真も紹介文も載ってないし。
それでも、彼女はコレを見たいという。
僕はほかにも面白そうな映画をピックアップして、薦めてみたが、結局、全て却下され、僕たちは
『俺たちの大悪魔図鑑・虐殺屠殺なんでもござれREMIX 注:R-18指定』を見ることになってしまった。

まだ上映まで時間があるので適当に店をぶらついてみる僕ら。
周囲の人たちの視線がいたい。
何しろ、天女のような美人と、猪八戒のようなブ男のコンビだ。
目を引かないわけがない。
彼女はそんなことには全く頓着せず、足元のタイルに集中して歩いている。
僕は少しだけ鼻高々だった。
なにしろ僕はこんな彼女と『友だち』なのだから。
一緒に歩くことができるのだから。

254:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:51:09 GzuXLU2D
それでも、不意に不安に駆られた。
「(本当に僕なんかでいいのだろうか)」
それは彼女と知り合ってずっと付きまとう恐れだった。
僕のようなどうしようもない男が彼女の隣に居ていいのだろうか。
知らず、大きなため息をついてしまう。
そして、ふ、と気づく。
「(イカン、イカン。ため息なんかついたら彼女に失礼だ)」
誤魔化すように、僕は彼女を誘った。
「あと少し時間もあることですし、あの文房具屋に入ってみませんか?」
彼女は頷いた。
文房具屋に入った僕は、そのお洒落なデザインの商品に圧倒された。
そうした鋏やらペンにはべらぼうな値段がついている。
「(こりゃあ、ちょっと場違いなところに入っちゃったかな……?)」
こっそり、彼女の顔色を伺う。
彼女は興味深々な表情で、文房具たちを見ている。
どうやら何の気兼ねもしていないようだ。
そのことに僕は安心する。
そして僕らは、店の中の比較的日常的な、つまり安めな商品がおいてある一角に足を進めた。
「(ここらへんは特に面白いものもなさそうだ)」
適当にぶらついて、そろそろ店を出よう。
そう考えたときだった。

クイッ。

袖が引っ張られる。
見ると彼女が足を止め、一心に何かを見つめていた。
「どうしたんです?」
「………………」
彼女は目の前の何かを僕に差し出した。
それは、一冊の黒いノートだった。
ディフォルメされた骸骨が描かれた、どちらかというと子供向けのノート。
彼女はソレを真剣な眼差しで、見つめている。
まさか。
「……欲しいんですか? ソレ」
彼女は少し泣きそうになりながら頷く。
どうやら、本気のようだ。
ま、ノート一冊ぐらいだったら。
「買ってあげましょうか?」
彼女は目を見開き、首を振る。
「……………!」
「そんな遠慮しなくてもいいですよ。今日付き合ってくれたお礼ってことで」
それでもなお、彼女は首を振る。
「大丈夫です。それ一冊買うくらいは余裕ありますから」
僕は強引に彼女からノートを奪い取ると、袖を引っ張り引きずる彼女を放置しながらレジに向かった。
「×××円です」
よかった。
値段は見ていなかったが、どうやらそんなに高い代物ではなかったようだ。
僕は安堵しながらお金を払った。
そして、品物を受け取るとそのまま店から出る。
まだ僕の袖を引っ張ったままの彼女に向き直ると、袋に入ったノートを彼女に手渡した。
「どうぞ」
「………………」
そっぽを向き、彼女は受け取らない。
どうやら、勝手にお金を払ったのがいけなかったらしい。
僕は苦笑しつつ、彼女の手にノートを握らせた。
「コレは、今日、僕にお付き合いいただいたお礼です」
「………………」
彼女は僕の袖から手を放し、両手でノートを掲げるようにして持つ。
「僕のお礼の気持ち、受け取ってもらえませんか?」
ちょっと卑怯な言い回しかもしれない。

255:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:52:04 GzuXLU2D
そんなことを考えてた僕が見たのは、気持ち微笑み、頭を下げる彼女の姿だった。
「………………」
「お礼の言葉なんて要りませんよ。さ! もうそろそろ映画の上映時間です。急ぎましょう」
僕は威勢のいい言葉とは裏腹に、ドギマギしながら彼女の手に触れようとする。
すると、吹っ切るように頷いた彼女は、僕の思慮なんて構いもせず、堂々と僕の手を握ってきた。
そして、足早に歩き出す。
僕は赤くなりながら言った。
「もしもし、映画館はそっちじゃなくて、反対方向ですよ」

何とか上映時間までに映画館についた僕たちは、一も二もなく券の販売窓口に寄り、指定された座席へと急ぐ。
もうすでに上映会場は暗く、何らかの予告が流れ出していた。
僕たちはなるべく足音を立てないように上を目指す。
しかし、そんな遠慮は無用だったようだ。
スクリーンの光を反射する座席には、人っ子一人いなかったのだから。
「(ま、『俺たちの大悪魔図鑑』だもんなぁ)」
納得といえば、納得の結果に僕は内心苦笑した。
目当ての座席までたどり着いた僕たちは、並んで座った。
ちょうど、予告が終わり、本編が始まるところらしい。
ふ、と隣の彼女を見る。
彼女は本腰を入れた表情でスクリーンを見守っている。
「(これで面白かったらいいんだけど……)」
いよいよ始まった本編映画は、ただただ赤かった。

「(なんで、こんなことになっているんだろう……)」
僕は便器の上に座り、呆然と考えた。
ズボンは足までずり下げられ、下半身がほぼ完全に露出している。
そして、本来一人ではいるべきその個室には
「ん……じゅる、れろ…………んん、はぁ」
熱心に僕のペニスをしゃぶる彼女の姿があった。

結局、僕は映画の全編を手で目を覆い隠しながら見過ごした。
時々大音量で何かの奇声が聞こえ、いい加減気分が悪くなる。
地獄のような責め苦が続き、ようやく映画は終了した。
僕は隣の彼女を見て、感想を聞こうとした。
しかし。
「どう―」
彼女は僕の手を掴むと、猛然と駆け出したのだ。
何らかのデジャブを覚えながら、僕はなされるがままだ。
そして連れ込まれたのが、男性用の個室トイレ。
彼女は僕を立たせると、そのままズボンを脱がし、座らせた。
「(もしかして、また持病が―)」
なんて思う暇もなく、彼女は僕の性器を咥えた。

「ん……やっぱり、持病が、出たんですか?」
僕は性器に与えられ続ける感触に耐えながら、聞いてみた。
彼女はペニスを口から離し、僕の顔を見て頷いた。
「………………」
謝る彼女。
僕は苦笑しつつ答える。
「謝る必要はないですよ。むしろこちらこそ謝りたい気分です」
「……………?」
不思議そうに聞いてくる彼女。
しかし、僕は答えなかった。
僕からの答えがないことを悟ると彼女はまた性器を咥えた。
先端部分に吸い付き、口のかなの性器を舌でなぶる。
「ん…………ちゅる。れる、ちゅぱちゅぱ」
「くぅっ……」
「ちゅく、ちゅくくっ……ん、んんんっ、ちゅぷぷ……」
舌先を使い、敏感なカリ口を攻めてくる。
そして、そのまま舌をおろしサオの部分を舐める。

256:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:52:51 GzuXLU2D
敏感なところから、鈍感なところに攻めが変わり、僕はもどかしくなる。
しかし、僕の気持ちとは裏腹に、彼女は舌先だけを使い、僕を追い詰めようとする。
そのじらすような動きに僕は我慢できず、腰を前後に動かす。
「!……………」
彼女はその積極的な動きに動揺したようだが、直ぐにソレに慣れると、腰の動きに同調して舌を動かす。
「ぴちゃ、れる………………んちゅっ」
「ふ……ぁ」
彼女の小さな舌がペニスの側面を這いまわり、僕はその気持ちよさに思わず小さくため息をついた。
「んん……れろ、れろれろっ……んふっ、ちゅぴぴ………」
舌がだんだんと先端に近づき、とうとう亀頭にいたる。
「く、ぅ………」
「はぷ、んむ………んっ、れるれる………ぴちゅ」
しかし、僕の期待を裏切るように、舌は直ぐに裏に回り、裏筋を辿る。
それも声が出るほど気持ちがいいのだが……。
「ん、気持ちいい……んですけど、そろそろ、あの、しゃぶって―」
彼女は上目遣いに頷くと、その小さな口で剛直を飲み込んだ。
「んっ、んんっ、んぷぷぷ……っ」
ペニスが、亀頭の先から順番に柔らかい粘膜に包まれていく。
全ては入り込めなかったが、彼女はかなり深いところまで咥え込んでくれた。
「んふぅ、んん……ちゅむっ……ちゅぶ……」
「くぅ……」
ペニスと唇の間から漏れ出した唾液を塗りつけながら、彼女は強く吸い付いた。
その滑らかさと吸い上げに、腰が震える。
「フフ………ちゅるっ、ぢゅる………ぢゅるる、ぢゅちゅちゅちゅ………!」
「? いま、笑いませんでした?」
「………ちゅ、ヂュッ、ちゅう、チュウウウ………」
彼女は返答する代わりに、ひと吸いごとの加減を変えてきた。
緩急をつけて唇を狭め、ペニスに緩慢な刺激を送ってくる。
誰もいない男性トイレにイヤらしい音が響く。
その音に、僕はトイレでこんなことをしているのだという認識でさらに興奮した。
「す、すごい………」
「ちゅぽっ、フフフ………れろれろ………」
「今確かに笑いましたよね?」
彼女は亀頭を舌の裏で嘗め回しながら、こちらを見た。
………なんだか彼女の瞳の色がおかしい。
あれほど真っ黒だった彼女の目が、なぜだか暗い深紅に見える。
「あ、あの………」
問いかける僕を無視するように、ペニス全体を舌で刺激しながら、口内を動かす。
柔らかい頬の粘液や舌がペニスの敏感な部分に当たり、僕のペニスがさらに大きくなる。
「んぷっ、んむっ、ぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅぢゅ………!」
止めを刺すような大きなバキューム。
いつのまにか限界まで上り詰めていた僕の官能が終わりを迎える。
「うっ、で、出ます……!!」

ビュブッ!! ドビュッ、ビュビュッ!!

「はぁう。……ん、んん。ぺちゃぺちゃ……」
射精中に、彼女は先端を嘗め回した。
敏感になっていた僕の性器は、完全に精液を出し終える。
「(くっ………まただ!)」
僕の体が異常を訴える。
頭が白く染まり、全身を削られるような脱力感。
力が抜け、僕はだらしなく後ろに倒れこんだ。
彼女は精液を舐めとっている。
僕は意識がかすむのを感じる。
完全に僕の視界が落ちる瞬間。
「………………」
―ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
確かにその時、彼女は謝っていた。

257:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:53:51 GzuXLU2D
息苦しい。
それで僕の意識は覚醒に向かった。
どうやら、濡れたタオルが顔の全体を覆っているようだ。
「って、殺す気か………!!」
僕は慌てて、そのタオルを放り投げた。
「!……………」
そのタオルが向かった先。
そこには彼女が居た。
「って、ええ!? こ、ここは!?」
見慣れた布団、見慣れた本棚、見慣れた台所。
どう見てもそこは、僕が一人暮らしをしているアパートだった。
僕は混乱する。
「え、ええ……!? なんで、なぜ、ホワイ? ぼ、ぼくは……」
体を起こそうとする僕。
しかし、急激なめまいが僕を襲い、すぐさま僕は仰向けに倒れる。
たったそれだけの運動で、僕の息は上がり、喉は痰が絡まり痛い。
彼女が心配げにこちらを見ている。
僕は気持ちを落ち着けるため、深呼吸した。
寝たまましたので、効果があったかどうかはわからないけれど、とりあえず息は落ち着いた。
そして、この現状を一番知っているはずの人間に事情を尋ねることにした。
その人間とは、もちろん。
「………………」
彼女は心配そうに、こちらを見つめている。
僕は彼女を安心させるために無理やり笑顔を作った。
「大丈夫です。心配はいりません」
「………………」
彼女は俯き、謝罪の言葉を呟いた。
「? なんであなたが謝るんですか?」
「………………」

彼女の説明によると、僕はトイレの個室での一件の後、気を失ってしまったようだ。
驚いた彼女は、とりあえず僕を背負い、映画館を出たのだという。
「……それからどうしたんです?」
「………………」
途方にくれた彼女は、街中のベンチに僕を寝かせ、様子を見ることにした。
すると、僕は意識を取り戻し、『家に帰る』と盛んに繰り返しだしたのだという。
心配になった彼女は、僕に付き添い、この家までたどり着いたのだ。
「……そんなことがあったんですか」
「……………?」
―覚えてないんですね?
「……ええ、まったく記憶にないですね。最後の記憶はトイレの中です」
「………………」
彼女はすまなそうに頭を下げる。
「いえいえ! あなたが悪いんじゃない。なにか調子が悪かったのでしょう」
たぶん。
というか、それ以外考えられない。
それでも彼女は頭を下げる。
僕は無理やり上体を起こすと、彼女に向き直った。
「あなたの持病は、あなたの持病。僕の不調は、僕の不調。分けて考えましょう、ね」
彼女は、く、と顔を上げると、僕に抱きついてきた。
まだ力が入らない僕は、そのまま彼女に押し倒される。
いきなりのことに、僕の顔は一瞬で沸騰する。
「ちょ、ちょ、な、な、なんですか~!?」
「………………」
彼女は僕の胸に顔をうずめたまま小刻みに震えていた。
「……もしかして―」
言いかけた僕は口をつぐみ
「(―泣いているんですか?)」
心の中だけで呟いた。
それに答えを示すように、僕の服の胸の部分が濡れた。

258:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:55:00 GzuXLU2D
その日、彼女は僕の看病のためといって一晩泊まった。
もちろん一人暮らしの僕の部屋に予備の布団なんていう贅沢なものはない。
だから、一緒の布団に寝ることになってしまったのだが……。
正直、そのことに僕は興奮したが、しかし、体は言うことを聞かず、日が完全に傾く前に僕の意識は落ちてしまった。
翌朝、起きると彼女は適当な朝食を作ってくれた。
本当に適当な朝食で、その手抜き加減は田舎の母親を思い出させてくれたけど、
単純なその料理は、一人暮らしが続いていた僕の胸には結構響いた。
「………………」
彼女が感想を聞いてくる。
当然僕は絶賛した。
安堵したように彼女は吐息を漏らす。
「………………」
ここで衝撃の告白。
どうやら彼女、料理は始めてだったらしい。
「ん? っていうか……」
一人暮らしをしているのに料理をしたことがない?
どういうことかと彼女に尋ねてみる。
彼女は少しだけバツが悪そうに顔をしかめ、俯き加減に言った。
「………………」
―私、小食ですから。パンだけでも足りるんです。
「(しまったぁ! 彼女は病弱なんだった!!)」
失念していた。
そりゃそうだ。小食だったら、買ってきたものとかでも足りるじゃないか。
僕はなんと言う無神経な質問をしてしまったのか。
「(―いや、待てよ……)」
病弱なんだったら、なおのこと栄養なんかに気を使わなければならないんじゃないのか?
それを、買ってきたものとか、パンとかだけで足らせていいのだろうか?
「(否。よくない!! 僕が彼女のことを何とかしなくては!)」
僕は一大決心をして、彼女のほうに向き直る。
「あの……!」
「……………?」
不思議そうな彼女の顔。構わず僕は言い放つ。
「もしよろしければ、これから僕の家に食事を食べにいらしてください。……ちょくちょく」
少し驚き、なお不思議そうな彼女の顔。
「あの、その、僕、料理とか結構できますから。一人暮らしとかも長いですし、……どうですか?」
「………………」
―あなたがお料理上手なのと、私が一緒にお食事をすること、何の関連が?
ぐうっ。
そう突っ込まれると……。
僕は「(ここまできたら、破れかぶれだ!)」とさらに踏み込む。
「ええっと、とにかく! あなたと食事がしたいんです。ダメ、ですか?」
彼女は少し困惑した表情になる。
「(っていうか。僕って相当、キモいぞ……)」
内心、凄く反省する。
だが、口に出してしまった言葉は、喉に戻ることはない。
彼女の裁定を震えながら待つのみだ。
そして、彼女は僕のほうを再び見つめてきた。
「………………」
それは、……肯定の返事だった。

それからちょくちょく彼女は僕の家を訪れるようになった。
バイト終わりに彼女から連絡があり、街中で待ち合わせ。
それから一緒に買い物をして、帰宅。
そのあと、僕は調理を、彼女はその手伝いをする。
そして、一緒に食事をして、そのあと―。
たびたび彼女の発作が起こった。
僕はその都度、彼女に弄られた。
でも、彼女が体を許してくれることはなかった。
いつも、口か手、あるいはスマタとか。
行為の後、僕は必ず気絶するようになった。

259:彼女の事情と僕の慕情
07/07/08 17:55:55 GzuXLU2D
軽いときには一時間。重いときには翌日の昼までかかるということもざらだった。
だんだん僕はバイトに遅れたり欠勤したりするようになった。
そして、とうとうある日、僕はバイトを首になった。
もともと夏休み前後の短期のバイトだったから、特に問題はない、と思ったけど、ショックなことはショックだった。
でも、彼女には正直に言えず、『バイトは自分から辞めた』といって誤魔化した。
また彼女が自分の発作のことを責めないように。
彼女はその埋め合わせをするように、僕と長い時間一緒に居るようになった。
僕はそのことがとても嬉しくて楽しかったのだけれど、彼女が何を思ってそうしてくれたのかは判らない。
彼女との時間が増えても、やっていることは変わらない。
買い物をして、食事をして、たまに行為に及ぶ。
そのことに本を読んでぼんやりすごすとか、どこかに行って遊ぶとか、そんな時間が追加されただけ。
それでも、僕は幸せだった。
ただ、心配なのは、彼女の食事の量。
彼女は僕の三分の一以下の量しか口にしなかったし、どうやら、夜中にソレさえも吐いているようなのだ。
『これはイカン』と食事に気を配り、手をかけてみたけれど、ソレと反比例するように、彼女の食事量は減少した。
だからといって、彼女が変わったか? というと、そうでもない気がする。
むしろ、僕との時間が多くなるたびに、彼女は元気になって言ったような気さえする。
まぁ、そんな日がいつまでも続くと考えていた。
―あの日までは。

260:230
07/07/08 17:57:31 GzuXLU2D
とりあえず、今回は以上です。
お目汚しですが、まだ続きます。
よろしくお願い申し上げます。

261:名無しさん@ピンキー
07/07/08 19:41:46 50n/AHCP
GJです!なんつーか、起承転結の承にあたる部分て感じ。次は転かな?

262:名無しさん@ピンキー
07/07/08 20:11:37 Ju5qksHQ
>>260
ナイスやでほんまGJ!
罰、悪魔、栄養摂取から核心に迫りつつありますね?
しかしどっかで擬し感があるってさっきからずぅーと調べてたのだが
数年前に同人ソフトで出た蜜牢だ…どうでもいいですね♪

きっとなにか見せてくれるだろうから、それを楽しみに待つぞぃ


263:名無しさん@ピンキー
07/07/08 22:13:17 BMEwB5eb
GJ!
幸せなのと反比例して命を削られていくという
退廃的な雰囲気はたまらんですわ

264:名無しさん@ピンキー
07/07/09 01:24:33 8d1RQYtY
GJ!
読んでてゾクゾクしまさぁねw
しかしヒロイン、なんてゆーかこう……サキュバス?

265:名無しさん@ピンキー
07/07/09 02:32:51 oPLd+SgQ
なんたこのwktk神作品は・・・・GJ!

266:名無しさん@ピンキー
07/07/09 02:34:02 oPLd+SgQ
またミスた。age

267:名無しさん@ピンキー
07/07/10 00:52:22 gZz6S4KR
シャンブロウ?

268:230
07/07/11 14:13:21 ICGccihB
これより、投下させていただきます。
前回並みに長い上に、エロも御座いません。
申し訳御座いません。
それでも構わないという方は、片手間にでもお読みください。
それでは、本文です。

269:彼女の事情と僕の慕情
07/07/11 14:14:42 ICGccihB
それは彼女と出会って、ちょうど一ヵ月後のある日のことだった。
僕は前日の彼女との行為で、いつものように意識を失って、気づいたら夕方だった。
だんだん、気絶している時間が長くなっている。
「(病院には行ったけど、健康体そのものだって言われたしな……。なんなんだろう)」
そんなことを考えながら、部屋の中を見渡す。
どうやら彼女は出かけていて、今、部屋には僕一人のようだった。
「(買い物にでも行っているのかな?)」
そんなことをぼんやりと考え、ふとテーブルの上を見る。
そこには、いつか僕が彼女にプレゼントした骸骨のイラストのノートが乗っていた。
「(あれ? 出しっぱなしだ)」
いつもは彼女の私物が入っているらしい段ボール箱の中に収められているソレが、どういうわけか真っ直ぐに置かれていた。
まるで、僕が中身を見るために差し出すように。
「(イヤ。それはマズイだろう)」
彼女がたまに真剣な顔で何かを書き込んでいたのは知っていた。
ふざけて覗こうとしたとき、彼女の機嫌を酷く害したのを覚えている。
「(イカンイカン。彼女に対して失礼だ)」
そう思いながら、ノートから目が離れない。
そのとき。
開けていた窓から突風が吹き込み、閉じていたノートがめくられる。
「(!!)」
瞬間目を逸らし、しかし、再び視線はノートへ。
「(イカンイカン。と、閉じなくては……)」
そう思いながら、しっかりと、目はノートの字を捉える。
……捉えてしまった。
「(? なんだ? この文字……)」
そこには今まで見たこともない記号、文字らしきものがつづられていた。
しかし、全く意味不明なその記号は、奇妙なことに、僕がその羅列を追うと、そこに書かれている内容が頭に浮かぶ。
まるで、語りかけてくるような不思議な感覚。
僕はノートが彼女のものだというのを半分忘れながら、最初からソレを読み始めた。

『彼と出会ってしまったのは、運命なのだろうか、それとも単なる偶然なんだろうか?
 私にはわからない。
 それでも、彼に出会わせたのが神様とかの気まぐれなんだったとしたら、私は感謝したほうがいいのだろうか?
 それとも、出会ったのが彼でなかったらと、肩を落としたほうが正解なんだろうか?
 本当は、彼なんかに出会うはずはなかったのだ。
 私はただただ一ヶ月を浪費し、その後、しかるべき処罰を与えられる。
 それだけでよかったのだ。それ以上は望んでいなかった。
 それが、何の因果か、彼に出会ってしまった』

彼というのは僕のことだろうか?
しかし、一ヶ月? 処罰? 
どういうことなんだろう。
僕は文字を追い続ける。

『最初はただの気まぐれだった。
 ただ、困っているお婆さんが目に付いたからという、ただそれだけの理由。
 私はおばあさんを躊躇無く助けた。たやすいことだった。
 やたら感謝してきたお婆さんは、私に無理やり何かを握らせた。
 それは何らかの紙切れで、五枚もまとめて手の中に入っていた。。
 これは何かと尋ねたら、お婆さんは商店街のほうを指差し、フクビキフクビキ、と繰り返す。
 意味がわからないうちにお婆さんはサッサと行ってしまった。
 しょうがないから、おばあさんが指差したほうに行ってみた。
 すると、同じような紙切れを持った人間たちが列を作って並んでいる。
 どうやら、この紙を持っている人は、ここに並ばなければならないらしい。
 面倒くさいな。
 正直に言えば、そんな感想しかもてなかったが、しかし、ここでコレを無視すれば、
 お婆さんの好意を踏みにじる結果になってしまう。
 悩んだ挙句、私は列に並んだ。
 そのまま、ぼんやりと列が進むに任せる。

270:彼女の事情と僕の慕情
07/07/11 14:16:11 ICGccihB
 そして、とうとう自分の番が来た。
 しかし、ぼんやりしていた私は、何をすればいいのかがわからない。
 私は困り果て、あたりを見渡す。
 すると、私の後ろに幸福そうに突っ立っている青年が見えた。
 混乱していた私は、とりあえず青年に助けを求めてみた』

どうやら彼女と初めて出会った福引の日のことらしい。
……こんな経緯があって、彼女は福引に並んでいたのか。
それにしても、『幸福そうに突っ立っている青年』って……。
間違いなく、僕の事なんだろう。
最初は僕の事をそんな風に思ったのか……。

『袖を引っ張ると、青年は私のほうを初めて見た。
 そして、そのまま、固まってしまった。
 ますます困ってしまった私を助けてくれたのは、テントの中のおじさんだった。
 おじさんが声をかけるとようやく青年は気がついた。
 私はここぞとばかりに、さらに袖を引っ張る。
 そして、どもりながらも事情を聞いてきた青年に私は指をさして窮状を伝える。
 しかし、伝達には失敗したようで、彼は怪訝な顔をするばかり。
 しょうがないので、私は強引に彼の頭を抱え込むと、耳元で喋った。
 ……本当はいまいち言葉に自信がないので喋りたくなかったのだけれど。
 青年はどうにか私の言いたいことを理解してくれたようだ。
 私はフクビキというものについての説明を受ける。
 意味がわからなかったが、とにかく回せばいいらしい。
 機械を回す。
 玉が出る。
 さらに回そうとした私をおじさんと青年が止める。
 どうやら、一回きりらしい。
 玉を見たおじさんがハンドベルを鳴らした。
 これから何らかのイベントが始まるんだろうか、と少しわくわくした私に、おじさんが何かを手渡した。
 青年の説明によるとハナビというものらしい。
 意味がわからなかったので、青年にあげようとした。
 どうせ、私にとっては必要のない代物だ。
 しかし、青年は受け取らず、逆に私を誘ってきた。
 ……正直に書こう。チャンスだ、と思った。
 これで助かる。何とかなる。青年は自ら飛び込んできてしまったのだ。
 異界への入り口に。
 魂の牢獄に』

? 『チャンス』?
『異界への入り口』『魂の牢獄』?
何を、何のことを書いているのだろう、彼女は?

『夜、再び出会ったとき、青年の魂は著しく脈動していた。
 花火をしているとき、ソレはさらに高まった。
 私に視線を送っていたときも、それは激しく波打っていた。
 私はハナビというものの美しさに心を打たれながらも、悲しくなった。
 これから青年を貶めなければならないということに。
 こんなに無邪気な青年から魂をいただかなければならないということに』

魂を、いただく?

『ハナビが終わり、全てはバケツの中に落ちた。
 どうやって青年を貶めるか考えていた私の目に、青年がバケツに向かって何かを呟いているのが見えた。
 不思議に思い、聞いてみると、青年はバケツの中のハナビに礼を言っているというではないか。
 こんな物言わぬ物たちに対する真摯な姿勢に私は心を打たれた。
 それでも、容赦することはできない。
 わたしは青年を林の奥深くに連れ込み、行為に及ぶことにした。
 青年が私に問う。
 なぜ、こんなことをするのかと。


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