【友達≦】幼馴染み萌えスレ12章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ12章【<恋人】 - 暇つぶし2ch100:名無しさん@ピンキー
07/05/31 02:03:14 52bSq0AP
スクランのような、幼い頃と今とでは立場が逆転してる幼なじみも良いもんだぞ

101:名無しさん@ピンキー
07/05/31 02:04:48 qWlEeAFt
プレイしたのはかなり前なのでうろ覚えだが、TOEの主人公らが
どえらく良い幼なじみだった気がする。


102:名無しさん@ピンキー
07/05/31 02:29:16 U63qT4Uz
タクティクスオウガは当時プレイした時に衝撃をうけたな。大儀に従わなければカオスの属性付いたり
怖い姉がいたり、途中参加とはいえ献身的な幼なじみがいたり、全てとは言わないけど戦争のエグイ部分をちゃんと描写したり
本体は人にやったけど、これだけは家に置いてるな。 とスレ違いスマソ

103:名無しさん@ピンキー
07/05/31 02:59:12 6cV0VLqO
幼馴染といったら、かしましのとまりだな。


104:名無しさん@ピンキー
07/05/31 03:01:02 6cV0VLqO
ごめん、sage忘れてたorz

105:名無しさん@ピンキー
07/05/31 06:29:56 zFeXH2lW
ちょおまwww
スレ進み過ぎwww

こんなに人がいるならもう少し作品投下された時に感想つけようぜ。

いや俺もだけどさ。
>>101
リッドとファラは最高だったな。
俺を幼なじみの世界に連れて行った立役者だぜ。

106:名無しさん@ピンキー
07/05/31 08:17:37 LkpI8Y2+
>>97 >>99 >>102
子供の頃、湖か何かで溺れかけて、その時額に傷がついたことを話すんだよな。
「私のことキズモノにした責任、取ってくれるんでしょうね」(←そんなこと言ってない)

あとは二人での外出中、突然の通り雨に遭って、近くの廃屋に逃げ込んで雨宿り。
どこかぎこちなく張り詰めた雰囲気の中で、とりあえずは濡れた服を乾か……
そうとしたら女の子の姉(元敵方で現在は敗残兵の身)が隠れていて邪魔される。
「どうして!? せっかくいいところだったのに!」(←言ってないけどきっと思ってた)

107:名無しさん@ピンキー
07/05/31 09:08:26 kwS2UGHF
クロトリのルッカに光を…

108:名無しさん@ピンキー
07/05/31 14:50:15 Um77HYEb
ルッカは本当に噛ませ犬だったなw

109:名無しさん@ピンキー
07/05/31 16:01:41 y9A7/ZKD
ルッカはツンデレも持ってたんだがな……

110:名無しさん@ピンキー
07/05/31 16:12:32 ob9+MkC0
噛ませというか、そもそも恋愛感情持っていたかどうかも怪しいところじゃなかったっけ。
長い事やってないんで間違ってたら申し訳ないけど。

111:名無しさん@ピンキー
07/05/31 16:42:34 eH/5cJFe
>>110
クロノが生還するとき、パーティにマールがいないとそれらしい台詞があったようななかったような。

112:名無しさん@ピンキー
07/05/31 18:24:33 nBCOXDEF
4以降のドラクエはみんな幼馴染がいるよな

113:名無しさん@ピンキー
07/05/31 21:23:02 w0FEIUip
お前ら話が脱線している

114:名無しさん@ピンキー
07/05/31 22:58:21 I2zTZcIt
ロックマンDASHのロールちゃん
日記がモエス

115:名無しさん@ピンキー
07/05/31 22:59:55 I2zTZcIt
ってな訳で日記ネタとか希望

116:名無しさん@ピンキー
07/05/31 23:23:28 BZJ4xao1
>>101
あれは良い幼馴染みだった
元々仲が良いのに
くっつく訳でもなく、
進展がない訳でもなく、
最初から最後まできっちり「友達以上恋人未満」でいてくれた

>>113
いいじゃないか
「よしじゃあ俺が二次もので書いてみるか」
なんて思い立つ住人がひょっとしたら出てくるかもしれない

117:名無しさん@ピンキー
07/06/01 01:28:20 cygFOO4b


|・ω・´)ノ >>115 センセイ! コンナカンジデスカ!


―6月某日ひねくれ男のひねくれ日記―


【8:42】「崇兄なんか嫌いだ!」惚気てくる紗枝の夢を見ながら起床。顔色は言うまでも無い。
【8:55】焦げた食パンを頬張る。忙しくてもちゃんと朝飯を食べるのが俺のルール。
【9:04】だるいバイトに出発、そろそろ今のバイトを辞めたくなってきた今日この頃。
【9:22】「おはようございます!」兵太だ、朝にこいつと会うのは実に鬱陶しい。
【9:34】「今日も天気いいっすね!」妙にテンションが高い。多分女だなこれは。ちなみに天気は
     雨だけどな。
【10:10】黙々と働く。兵太は常にニヤニヤしている、傍目から見ていて実に気持ち悪い。
【12:34】休憩がてら昼食。最近のコンビニは明らかにおにぎりに情熱を注いでない、もっと注げ。
     兵太も一緒に飯を食っている。相変わらずニヤニヤ(ry
【13:32】「いらっしゃいませ!」満面の笑顔で接客してたら客に笑われる。どうやら歯にのりが
     くっついたままだったらしい、誰か指摘しろクソが。
【15:07】兵太がそわそわしだした、あいつはそろそろ上がりだ。ちなみに表情は相変わらず(ry
【15:30】「お疲れっしたー!」兵太上がる。見ていたら真由ちゃんが外で待っている。
     あまりの展開に思わず加○茶ばりの二度見をかましてしまう。
【15:32】停止していたら店長に小突かれる。外にいた真由ちゃんと目が合い鼻で笑われた、
     今度紗枝に彼女の対策を聞いておこう。
【17:00】かく言う俺も仕事終了、荷物まとめてとっとと職場を後にする。
【17:12】そういや今日は紗枝の家で晩飯を食うんだった、これからのことを思うとどうにも
     溜息が止まらない。紗枝本人はともかくおじさんおばさんは魔物の域に達してるからな。
【17:59】紗枝の家到着。いつぞやのボロのワンボックスが見当たらないのがちょっと寂しい。
【18:07】「おやいらっしゃい」おばさんだ、今日は根掘り葉掘り聞いてくるんだろうなぁ。
     「よく来たね」おじさんだ、メガネが光って目線が見えないのが実に不気味だ。
【18:08】「紗枝はどうしたんスか?」「あの娘なら今台所でご飯作ってるよ」
     どうやら今日の晩飯は全部紗枝が作るらしい、非常に不安だ。
【18:10】「あ、た、崇兄っ、来たんだ」鍋にフライパンに踊らされてる紗枝が非常に面白い。
【18:11】「お前エプロン姿似合ってねーなー」「うるさいっ!」
     酷いと思うかもしれんが実際似合ってないんだから仕方ない、なんつーかガキ。
     「ちょっ、ちょっと! いきなり何すんだよ!」「んー?」
     気付いたら抱きしめてた、いやでもこいつほんとエプロン姿似合わない。
【18:12】「もー、火傷したらどうすんだよ!」「そん時は火傷跡舐めてやっから」「っ!?」
     紗枝の顔が火傷している。おじさんとおばさんがドアに隠れてニヤニヤしている。
【18:12】「お…お母さんとお父さん見てるんだよ!?」「見せつけてやれ期待されてるみたいだし」
     こういうのは開き直ったもん勝ちだ。
【18:47】とりあえず紗枝にビンタされてからダイニングの椅子に座ってお預けを食らう、二つの意味で。
      あー…くっそ早く食いてーなぁ、二つの意味で。
【19:01】「出来たよー!」やっと完成したようだ、てめー一時間近く待たせやがって。
【19:02】「大好物作ってたんだ!」ほほう俺の好物を作ってくれるなんてんなかなか殊勝な真似…
      「ほら、上手に出来たんだよぶり大根!」お前の好物ぢゃねーか。
【19:04】メニューは他にも色々あるが、なにはともあれ食うことに。
     「いただきまーす!」こういう時の紗枝はいつも以上に子供っぽい。
【19:11】「そういえば、孫の顔はいつ見れるんだろうねぇ」「気になるところだな」
     おじさんおばさんの口撃が始まる、紗枝の顔が途端に不機嫌になっていく。
【19:11】「もう仕込んだよ」紗枝一人思いっきり噴出す。おじさんおばさんは全く動じない。
     それどころか笑みが深くなってんぞ、怖えーな。
【19:12】「それは楽しみだな」「名前考えとかないとねぇ」「ははは、そっすね」「……っ」
     よく考えたら飯時にする会話じゃねーよな。
【19:15】机の下で足を紗枝にげしげし蹴られ続ける。おいおい、そんなに求愛してくんなよ。



118:Sunday
07/06/01 01:30:06 cygFOO4b

【19:25】ちなみに紗枝の料理の感想はロシアンルーレットみたいなもんだと思ってくれ。
【19:54】夕食終了。喋りながらだったからダラダラ食っちまった。
【20:00】居間でくつろがせてもらおうかと思ったら紗枝の部屋に通される。紗枝はどうやら
     俺とおじさんおばさんを話させたくないらしい。
【20:04】「ご飯どうだった!」「ぶっちゃけ微妙」正直に答えたら途端に顔曇らせやがった。
     お前嘘ついたら余計に怒るだろ。
【20:07】「……お茶汲んでくるね」頼んでもないのにトタトタと階段を降りていった。
     別に喉渇いてねーのに。
【20:10】「はい、どーぞ!」やっべ、紗枝の表情が怖いくらいに笑顔だ。相当怒ってんな。
     「お、おう」なんか濃い塩味がするぞこの麦茶。
【20:24】「あー、その、悪かった」「うわっ」埒が明かなくなったもんだから、いつものように
     座椅子になってやる。
【20:25】「ちょ、ちょっと!」「んー」「お母さん上がってきたらどうすんだよ!」「んー」
     止めたら止めたで寂しがるだろーがお前わ。
【20:29】「もうー、止めてよー」眉吊り上げて口を尖らせだした。どうやら機嫌を治してくれた
     ようだ、良かった良かった。
【20:43】「だめ?」「だーめ、下に二人いるんだよ?」「聞かせてやりゃいいじゃん」「絶対嫌!」
     今日は鉄壁のガードだ、まあ当たり前っちゃ当たり前だが。
【20:45】妥協した結果キスだけOKということに。

【20:48】(時刻は書き込まれているが空白になっている)

【21:03】明日もバイトがあるのでそろそろお暇することに。
【21:07】「またいつでも来なさい」「待ってるからね」
     おじさんおばさんの二人の笑みが妙に深い、もしかして覗いてたのかオイ。
【21:12】「じゃあお休みなさい、明日は紗枝家に帰ってこないんで」
     しゅたっと手を上げ挨拶すると、二人は満足したように手を振ってきた。
【21:15】帰路についてると追いかけてきた紗枝に思いっきり背中を蹴られる。別れ際の挨拶が
     不満だったらしい、何を今更。
【21:18】「あんなこともう言わないでよね!」「別にバレてるから良くね?」「だめ!」
     
【21:19】(時刻は書き込まれているが空白になっている)

【21:20】あまりにうるさいから力づくで黙らせてしまった、俺も大概だな。
【21:25】ふらふらした足取りの紗枝を見送って再び帰路につく。

     
     あー…、そろそろフリーターやめて就活するべきかなぁ……




119:名無しさん@ピンキー
07/06/01 01:48:26 AHZx2zPp
GJ!!w 崇兄の日記はマメだなw

120:名無しさん@ピンキー
07/06/01 01:52:53 1k6r/Y9a
ちょwww
うますぎるwww
超GJ!

121:名無しさん@ピンキー
07/06/01 02:03:10 BYEpfZBi
空白の中身が気になりすぎるwww

122:名無しさん@ピンキー
07/06/01 10:34:55 bDH5Q9kr
>>117
GJ思わず
ニヤニヤしてしまったw

123:名無しさん@ピンキー
07/06/01 13:51:39 dAk8Zuu0
>>117
よし、まずは18:12~18:47までのホシの行動と同じく20:10から21時頃までの一連のやり取り
そして、空白になっている部分の詳細をまとめて提出してくれ

124:名無しさん@ピンキー
07/06/01 21:40:12 pVLjJxFZ
紗枝バージョンも期待して良いですか?

125:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:36:59 tyN14nun
>>117
GJです! こういう日記形式も良いですね! 空白の部分は是非たっぷりと書いて欲しいですw

それでは、こちらも投下させて頂きます!

126:絆と想い 第13話
07/06/02 02:38:34 tyN14nun
図書館で舞衣にプロポーズまがいのことをしてしまった日の夜。正刻は中々寝つけずにいた。
天井を見上げながら、ふぅと溜息をつく。
「しかし……。舞衣があんなに思いつめていただなんてなぁ……。」
図書館での出来事を思い返してそう呟く。いつも自分に愛を囁き、ひっついてくる舞衣があんなに不安を抱えていたとは想像すらしていなかった。
「まったく俺って奴は……。あいつに何年俺の幼馴染やってるんだ、なんて言ったが……人の事は言えねぇな本当……。」
そう言って正刻は目を閉じた。瞼に浮かぶのは舞衣の泣き顔、そして笑顔。
「しばらく……ベタベタしてくるのも大目に見てやるか、な……。」
そう言って正刻は、ようやく訪れた眠気に身を委ねていった。


「……き、おき……刻……。」
自分を呼ぶ声に、正刻は起こされた。枕元の携帯電話を見ると、まだ午前二時前後といった所だ。
こんな時間に部屋に侵入してくる人間は色々と不味い感じなのだが、夜中に起こされた所為で今ひとつ覚醒しておらず、かつその人物が自分の
良く知る少女であったため、正刻はその点には深くつっこまずにとりあえず問いかけた。
「……こんな時間に何の用だよ舞衣……。」
そう、正刻を呼んでいたのは舞衣だった。学校指定のセーラー服を身に纏い、とびっきりの笑顔を浮かべながら正刻に跨っている。

「こんな時間に済まんな正刻。だが……どうにも我慢が出来なくてな。」
正刻に跨ったまま笑顔で答える舞衣。その笑顔を見て、やっと働き始めた頭が警鐘を鳴らし始める。
「な、何だよ……。何が我慢出来ないってんだ……?」
正刻は慎重に舞衣に問いかけた。正体不明のプレッシャーを感じつつ。
「何が、だって? ……君とこうすることを、さ。」
すると舞衣は、言うが早いか正刻の頭をかき抱き、キスをしてきた。

「───ッ!?」
突然の不意打ちに、正刻は思わず硬直してしまう。その隙に、舞衣は舌を入れ、濃厚なディープキスを行い始めた。
「……っぷ、はぁ……。んっ……。」
一心不乱に正刻の口内を蹂躙する舞衣。正刻は最初、驚きのあまりにされるがままになっていたが、我に返ると舞衣の肩をつかんで引き離した。
「んっ……。」
正刻の口と舞衣の口を銀色の糸が繋ぎ、そしてぷつんと切れる。それを見ていた舞衣は名残惜しそうに言った。
「何をするんだ正刻。折角のディープキスの最中だったのに……。」
「何をするんだ、はこっちの台詞だ馬鹿野郎!! お前、一体どういうつもりなんだよこんなことして!!」
「だから……言ったじゃないか。もう我慢が出来ないって。私は君が欲しくてたまらないんだ。君と……セックスしたくてたまらないんだ。」

127:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:39:20 tyN14nun
そう言ってじっと見つめてくる舞衣。正刻はその瞳を暫く見返していたが、不意に目を逸らした。そしてぽつり、と呟いた。
「……俺には、お前を抱く資格はまだ無いよ。」
「……資格、か。君は変な所で真面目だな。」
そこがまた良いのだがな。そう言って舞衣は正刻の髪に軽く口付けをする。
その感触にぴくりと身を震わせ、そして正刻は言葉を続ける。

「とにかく、俺はお前をまだ抱けない。……お前のことを一番に考えることが出来ない今は、な……。」
そう言って舞衣から目を逸らし続ける正刻。そんな彼を見て、舞衣はくすり、と微笑んだ。
「? ……何だよ。」
「いや、君は少し勘違いをしている、と思ってな。君が私を抱くんじゃない。私が君を抱くんだ。」
そう言われた正刻はきょとん、とした顔をした。しかしすぐに呆れた顔をして舞衣を軽く睨みつける。
「おい舞衣。俺の話、ちゃんと聞いてるか?」
「ああ聞いているとも。その上でこう言っているんだ。いい加減覚悟を決めろ。」
「だから、何度も言っている通り、俺は……。」
「私の事を一番に考える事は出来ない、か? なら聞くが、君は私のことが嫌いなのか? 私のことを抱きたいと、これっぽっちも思わない
 のか?」
妙な迫力を伴って正刻に問いかける舞衣。その迫力に押され、正刻は思わず本音を言ってしまう。

「そんな訳ないだろ! お前のことが嫌いだったりどうでも良かったらとっくに手を出してるさ! お前のことが好きで大事で大切だから、
 必死になって我慢してるんじゃねーか!!」
その正刻の本音を聞き、笑みを浮かべる舞衣。それを見て、正刻は自分の失敗を悟った。思わず唇を噛み締める。
「ふふ……。そこまで私のことを想ってくれているのなら正刻……。私のことを抱いてほしいな……。」
舞衣はゆっくりと正刻に覆いかぶさり、彼を抱きしめながらそう囁いた。
自分を抱きしめてくる舞衣の身体の柔らかさと温かさに正刻はもう陥落寸前であったが、しかし最後の抵抗を試みた。

「だ、けど、それじゃあお前が……。」
「正刻。私のことを大切に想ってくれるのは有難いし嬉しいが、必要以上に大切に扱われるのは辛いものだぞ? ましてやそれが、愛する
 人ならば尚更な。」
舞衣はそう言って正刻を抱きしめる腕に力を込めた。
その台詞を聞き、正刻は寝る前に考えていたことを思い出す。
(そうか……。だから舞衣は、あんなに不安に……。)
考え込んで抵抗を止めた正刻に、舞衣は止めとばかりにこう言い放った。
「今までずっと不安で辛かったんだ……。その分、君の温もりを欲しいと思うのは……私の我侭、か?」

潤んだ瞳で見つめられ、正刻は自分の理性の最終防衛ラインが破られたのが分かった。
舞衣の背中と後頭部に手を回し、しっかりと抱きしめる。
「あっ……。」
思わず声を上げた舞衣の頭を撫でながら、耳元で囁いた。
「覚悟しろよ? やめてと言っても、もう止まらないからな。」
それを聞いた舞衣は正刻に微笑みかける。
「それはこちらの台詞だ。君のことをたっぷりと愛してやる。私以外の女の子など、眼中に入らないくらいに、な。」
そうして二人はゆっくりと目を閉じ、再び口付けを交わした。



128:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:40:17 tyN14nun
「むぐっ……はぁ……あむっ……。」
二人はお互いを貪るように深い口付けを交わす。舌を入れ、入れられ、またその舌を吸っては吸い返される。
その感触に二人とも陶酔していたが、やがて正刻は自分の胸に押し付けられている舞衣の胸に手を伸ばした。
「!? ん、んんんんんっ!!」
キスをしながら胸を鷲づかみにされた舞衣は思わず身をよじる。しかしそれは触られるのを拒絶するものではなく、予想以上の快感が自身
を襲ったためであった。
正刻はその反応を見ながら、片手だった胸への愛撫を両手を使って行い始めた。もちろんキスはしたままだ。
舞衣の胸はFカップに達しており、正刻の手には到底収まるような大きさではなかった。
その大きな胸を強弱をつけて揉みしだく。柔らかさと、手を弾くような瑞々しい弾力に正刻は夢中になった。

「ぷはぁっ! ま、正刻、ちょっと待ってくれ……!」
息が続かなくなったのか、キスを止めて舞衣が叫ぶ。その様子に、正刻は意地の悪い笑みを浮かべて言った。
「何だよもう降参か? まだキスと、服の上から胸を揉んでいるだけだぜ?」
そうして一際強く両胸を揉みあげる。舞衣は思わず「ひっ!」と声を上げてしまうが、それでも何とか正刻に言った。
「い、いや……。想像以上に気持ち良いが、降参とかではなくて……。ふ、服を脱ぎたいと思って……。」
そう言われて正刻の頭の冷静な部分が働く。確かに制服を皺だらけ、もしくは汚してしまっては不味いだろう。
だったらそんな格好で来なければ良いのに、と思ったが、それは言わないでおく。
「分かった。じゃあ俺も脱いでおくか。」
そうして二人はゆっくりと身を離し、着ている服を脱いでいった。

……しかし。
「な、なぁ正刻……。」
「ん? どうした?」
「そ、そんなに見つめられると……流石に恥ずかしいのだが……。」
そう言ってもじもじとする舞衣。まだスカーフしかとっていない。それに対して正刻は既にパジャマを脱ぎ終え、布団に入って舞衣の着替え
を凝視していた。
「心配するな。俺も結構恥ずかしいぞ。」
「だ、だったらこちらをあんまり見ないで欲しいのだが……。」
「それは却下だ。」
「うぅ……。」
舞衣は真っ赤になった。普段は素直クール属性で正刻に過度のスキンシップをとっている舞衣だが、流石にこの状況では羞恥心が勝ってい
るようだ。もっとも、何回か場数を踏めばもう嬉々として脱いでしまうようになるのかもしれないが。

だが今は、この貴重な舞衣の姿を楽しんでやろう。正刻はそう思いながら、舞衣を凝視し続けつつ言った。
「早く脱いでくれ舞衣。俺はお前の身体を見たくてたまらないんだ。」
だが、その言葉が舞衣の中の何かに火を点けた。
「……そんなに見たいのか? ……私の身体を……。」
正刻は無言で頷く。それを見た舞衣の身体は、羞恥心とは別の気持ちで熱くなり始めた。
(そうか……だったらたっぷりと見せてやる……。目を離すなよ正刻……。)
そうして舞衣は制服に手をかけた。

上着を脱ぐと、純白のブラに包まれた豊かな双乳が露わになる。舞衣がちらりと正刻の様子を伺うと、彼は既に胸に釘付けとなっていた。
(ふふ……そんなに見つめて……。このおっぱい星人め……。)
そんな事を思いながらも素知らぬ振りで服を脱いでいく舞衣。スカートを下ろすと、ブラとお揃いの純白のショーツが現れた。
正刻はもう無言である。ただ、興奮しきった目で舞衣の身体を見つめ続けている。

129:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:41:03 tyN14nun
舞衣はその視線を感じながら、ソックスを脱ぎ、ブラのホックへと手をかけた。
だがすぐには取らず、正刻の様子を伺いながらゆっくりと外していく。
そして。ついにブラが全部外れた。
大きいのに全く垂れず、上向きの乳房。その先端は薄い桜色であり、興奮のためか、既に乳首は固くなり始めている。
それを見た正刻は、思わず息を吐いた。その様子に舞衣は満足し、ショーツにも手をかけ、下ろしていく。
股間の陰りはやや控えめであった。そして生まれたままの姿になった舞衣は、顔を赤くしながらも正刻に問いかける。
「どうだ正刻。私の裸は?」
そう言われた正刻は、すぐには反応出来なかった。舞衣の裸に見蕩れていたからだ。
やがて正刻は、ぽつり、と言った。
「……凄く、綺麗だ。」

それを聞き、舞衣は顔と……股間が熱くなるのを感じた。それを紛らわすため、布団に潜り込み、正刻と抱き合う。
「何か……凄いな。肌と肌を合わせると、こんなに気持ちの良いものなんだな……。」
正刻は舞衣の体中を撫でまわしながら呟いた。舞衣も同じように正刻の身体を触りながら答えた。
「そうだな。だが……誰とでも、という訳ではあるまい。私と君だから……こんなに気持ち良いんだよ。」
正刻は軽く頷いて同意を示すと、身体をずらし、舞衣の胸に吸い付いた。
「ひゃあっ!?」
痺れるような快感に、舞衣は思わず叫ぶ。その声に驚いた正刻が、慌てて舞衣に尋ねる。

「す、すまん舞衣! 痛かったか?」
既に荒い呼吸をし始めた舞衣は、しかし正刻の問いに首を振って答えた。
「いや、あまりにも気持ちよかっただけだ……。だから、もっと吸って、いじってくれ……。」
舞衣の懇願に、正刻は乳首に激しく吸い付くことで答えた。激しく音を立てながら舞衣の乳首を責め立てる。
「んっ!……はぁ……あああっ!!」
舞衣は激しく嬌声を上げた。声を出すのを我慢しようとは思っていない。正刻に愛され、それに応える自分を見て欲しいという想いがある
ためであった。

そしてその姿は正刻をより激しく興奮させる。
乳首を吸い、舐め上げ、軽く甘噛みする。片手で片方の乳首もさすり、ねじり、つねってやる。
そして正刻は、もう片方の手を舞衣の股間へと手を伸ばした。
「! あ、正刻……!」
「舞衣……。お前……凄いことになってるぞ……。」
「ばかぁっ……! 」
そう、舞衣の股間は大洪水と呼ぶに相応しい状況であった。
正刻は、胸への愛撫をしながら舞衣の秘裂をゆっくりとなぞった。
「ふ、ああ、ああああ……。」
正刻に秘裂をなぞられるたびに、舞衣は身体をびくんびくんと震わせる。

舞衣の秘裂からは、とめどなく愛液が溢れ出る。指をたっぷりと濡らしたそれをぺろりと舐めると、正刻は舞衣に囁いた。
「指、入れるぞ。」
「! ……分かった。でも、優しくしてくれ……。」
「分かった。」
舞衣に軽くキスをすると、正刻は彼女の秘裂に中指を入れる。
「ん、くぅ……。」
舞衣は正刻の頭を抱き寄せた。正刻はされるがままになってやりながら、指の挿入をゆっくりと行なう。
最初こそ少し苦しそうな表情を浮かべていた舞衣だが、すぐにそれは喜悦の表情へと変わる。
それを確認した後、正刻は入れる指を二本へと増やした。


130:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:41:54 tyN14nun
「あっ! そ、そんな二本も……っ!!」
「けどお前のココは、ぎゅうぎゅう締め付けてくるぞ?」
そう言って指の出し入れを更に激しくする正刻。舞衣は反論しようとするが、快感に喘ぐことしか出来ない。
それを見た正刻は、ちょっとした悪戯心を出す。人差し指と中指で愛撫を行なっていたが、親指でクリトリスをぐっ、と押したのだ。
「!? あああああああああっっっ!!」
だが舞衣の反応は正刻の想像を遥かに超えていた。獣のような叫び声を上げ、背を弓なりにそらし、膣が激しく収縮して正刻の指を千切ら
んばかりに締め付ける。そして糸の切れた操り人形のようにぐったりと動かなくなった。

「お、おい、舞衣! 大丈夫か!?」
正刻は慌てて舞衣に問いかける。舞衣は虚ろな目をしていたが、段々と意識を取り戻し、絶え絶えな息をしながらも答えた。
「ああ、何とか大丈夫だ……。だがいきなりクリを刺激するのはちょっとひどいぞ……。」
「すまん……。まさか、その……こんなになるなんて思わなかったから……。」
そう言ってうなだれる正刻をそっと抱き寄せて、舞衣はその髪に軽く口付けた。
「悪いと思っているなら正刻……。そろそろ挿れてくれ……。本当はその……フェラをしたり、君にも私のあそこを舐めて欲しかったが……
 もう我慢出来ない……。君が欲しいんだ正刻……。」
舞衣のその告白に、正刻も頷く。実の所、正刻ももう限界であった。愚息は今までに無いほど固く大きくなり、先走り液も大分溢れている。

「ああ……。俺もお前が欲しい……あ、でも……。」
正刻はこの段階に至って気がついた。コンドームを用意していない。
どうしたものかと思っていると、舞衣がくすりと笑いながら言ってきた。
「心配するな、今日は安全日だ。そのくらいの事は私も織り込んで来ているさ。」
「けど……。」
「それに決めていたんだ。初めては直接君を感じたいと。君の精液を……直接受け止めたいと、な。」
そこまで言われて引くことは出来ない。正刻は舞衣を仰向けに寝かせ、足の間に身体を割り込ませた。

「あっ……正刻っ……!」
愚息を舞衣の秘裂に当てた正刻を舞衣が呼ぶ。
「どうした? ……怖い、か?」
「うん、少し……。だから……キスをしながら挿れて欲しい……。」
その願いはすぐに満たされる。正刻は舞衣にキスをし、舞衣はその首と背中に腕を回す。
そのまま正刻は腰を進めた。熱く、ぬめった肉の中を進んでいくと、僅かな抵抗があった。
その抵抗を、正刻は体重をかけ、一気に突き破った。それと同時に舞衣の口から声にならない叫びが上がり、身体が震え、
腕に力が込められ、背中には爪を立てられた。

そのまま突き進むと、こつんと行き止まりにぶつかった。正刻は口を離し、舞衣に囁いた。
「舞衣。全部入ったぜ。」
すると舞衣は、ぎゅっと閉じていた瞳をゆっくりと開けた。うっすらと涙がたまっている。
それを見て正刻は仕方ないとはいえ少し胸が痛んだ。
「痛い、よな、やっぱり……。」
だが予想に反し、舞衣は首を振って否定した。その様子に正刻は少し驚く。
「え? だってお前、泣いて……。」
「いや……痛みはそれほどではない。少し圧迫感はあるがな。泣いているのは……嬉しくって、安心したからさ。」
「え?」
「不思議だな……君自身を私の中で感じることが、これほど嬉しくて、気持ちが安らぐものだとは思わなかった。君はどうだ?
 そうは思わないか?」

131:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:42:40 tyN14nun
そう問われ、正刻も思っていたことを素直に言った。
「ああ。俺も同じ気持ちだ。ついでに言うなら、俺の方は受け入れてもらって安心する気持ちがあるのと、……気持ちよすぎて
 もう出ちまいそうだっていうのがあるな。」
その正刻の告白に、舞衣は声を上げて笑った。そして、自分が正刻の背中に爪を立ててしまっていることに気づく。
「済まない、正刻。この背中……私なんかよりよっぽど痛かっただろうに……。」
そう言ってくる舞衣に、正刻は笑顔で答える。
「何、いいさ。これもお前との初体験の思い出だしな。」
そんな正刻が愛しくて、舞衣は軽くキスをした。そして彼に囁く。

「じゃあ正刻……。もう動いてもいいぞ……。」
「え? だが……。」
「私なら大丈夫だ。さっきも言ったように、痛みはそれほどではない。それに私は早く君に、私の中に精液を注いで欲しいんだ。
 だから……動いて、私を愛してくれ。」
もっとも、優しくしてくれると嬉しいがな、と舞衣は付け加えた。
既に動きたくてたまらなかった正刻は、その言葉に頷いた。
「優しく……してやるさ。」
そうして彼は動き始めた。

ゆっくり、慎重に正刻は愚息を出し入れする。その度に舞衣が上げる喘ぎ声は、否応なしに彼を興奮させていく。
舞衣の膣内は、とても気持ちが良かった。出し入れするたびに、これまで味わったことの無いような快感が正刻を襲う。
気がつけば、腰の動きは段々と早くなっていき、そしてそれを止められなかった。
結合部からはぐちゅぐちゅと粘膜の擦れあう水っぽい音がしだし、肉と肉がぶつかりあう音もし出した。
「ま、正刻! ちょ、はげしすぎっ……!」
「ごめん、舞衣、俺もう止まらない……ッ!!」

そう謝って正刻は激しく腰を打ちつけ続けた。
舞衣はもう正刻の下で、ただ嬌声を上げ続けることしか出来ない。
限界は、すぐに訪れた。射精感を覚えた正刻が舞衣に囁く。
「舞衣っ……! そろそろイクぞっ……!!」
すると舞衣は、足を正刻の腰に絡めて固定する。
「ああいいぞ正刻……ッ! 君の全てを……私の中に注いでくれえっ……!!」
絶え絶えの息でそう告げる舞衣。正刻は頷くと舞衣にキスをし、ラストスパートをかける。

もうお互いが絡み合う音は部屋中に響いていた。正刻も舞衣も、既にお互いの身体の熱さと、快感しか感じることが出来ない。
そして、終局が訪れる。
正刻は舞衣の一番奥に一際強く腰を打ち付けると、限界まで我慢した欲望を一気に解き放った。
これまでに無い程の勢いと量と熱を持った精子が、舞衣の膣を、更には子宮を蹂躙する。
その感触に、舞衣は絶頂へと一気に持ち上げられた。獣のような叫び声を上げると、彼女は深い充足感と安心感と幸福感を
味わいながら意識を手放した。


132:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:43:22 tyN14nun
「まったく君はひどい奴だな。優しくしてくれって言ったのに……。本当に君はケダモノだな。」
「う……。ご、ごめんなさい……。」
情事が終わった後。正刻に腕枕をされながら舞衣は正刻を責め、彼はひたすら低姿勢に謝っていた。
まぁ優しくしてやるといっておきながらいきなりエンジン全開になってしまったのだから、この場合は責められても仕方無いかもしれない。
そんな正刻を半目で睨んでいた舞衣であったが、くすり、と笑うと、腕を回して正刻を抱きしめながら言った。
「まぁいいさ。私も気持ちよかったし、それに……やっと君と一つになれて幸せな気分だし、な。」
その舞衣の言葉に正刻はほっと胸を撫で下ろした。

しかし……そのほっとした気持ちもすぐに奈落の底へと叩き落されることとなる。
何故なら……。
「あぁそうだ正刻。私も実は一つ謝らなければならないことがあるのだが。」
「? 何だ?」

「いや、大したことではないのだがな。実は、今日は安全日などではないのだ。」

その言葉に正刻はぴしり、と固まる。そんな正刻を無視して舞衣は衝撃の告白を続ける。

「実は今日はむしろ危険日……いや、超・危険日と言った方が良いかな? とにかくそういう日でな。そんな日に子宮にあんな量と粘度の
 精液を流し込まれたのだから、恐らくは当たっているだろう。」
そして舞衣はとても穏やかな笑顔で自らの腹部を撫でる。
しかし正刻には、その笑顔は悪魔の笑顔に見えた。

(こいつ全部計算して、そして俺を嵌めやがったな……!)
そんな正刻の様子をちらりと見て、舞衣は妖艶に微笑んだ。
「もう逃げられないぞ、正刻。さあ、色々と覚悟を決めてもらおうか!」
そんな彼女を見て、正刻の思考は走馬灯のように回り始める。

いや俺は舞衣のこと嫌いじゃないしエッチも気持ちよかったけど流石にこれはないんじゃないか俺の人生これで決まりなの?いや何ぼ何でも
コレは無いだろうでも責任とらなきゃだしああ俺唯衣と鈴音に殺されるかもいやもう勘弁してくれそうだこれは夢だそうに違いない頼むから
そうであってくれというか夢なら醒めてくれお願いだから夢なら───

133:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:45:19 tyN14nun
「───醒めてくれぇぇぇぇっっっ!!!」
そう叫んで正刻は飛び起きた。
はぁ、はぁ、と自分の呼吸音が聞こえる。
真っ暗な部屋には自分以外……舞衣も……いない。聞こえるのは自分の呼吸音と時計の針の音、そして遠くを走る車の音だけだ。
時計を見ると午前四時くらいだった。
「……夢、だったのか……?」
そう言って正刻は額の汗をぬぐった。ひどい寝汗をかいてしまっていたようだ。

そのままの状態で正刻はしばらく呆けていたが、徐々に落ち着いてくると、自己嫌悪で頭を抱えて唸りだした。
「あー、もう! 何つう夢を見てんだ俺はー!!」
そしてとある事に思い至り、そっと自分のトランクスの中を確認した。
一応寝る前にある程度の「処理」を行なっていたので流石に夢精はしていなかったが、しかし愚息は天を衝く程に戦闘態勢に入っていた。
正刻は溜息を吐くと、汗を洗い流すのと、愚息の「処理」のために、風呂場へとシャワーを浴びに行った。

「ねぇ正刻大丈夫? 何か顔色悪いよ?」
朝食を作っていた唯衣が心配そうに問いかける。それに対して正刻は力ない笑顔で返す。
結局あの後シャワーを浴びて愚息の処理を行なっても眠ることは出来ず、寝不足になってしまったのだ。
「あぁ大丈夫だ。ちょっと厭な夢を見ちまってな……。その所為で少し寝不足なんだ。」
「ふーん。逆に舞衣は何か良い夢を見られたような事を言ってたけどね。どんな夢を見たかは教えてくれないんだけど。」
そう言って唯衣は舞衣を見た。つられて正刻も彼女を見る。
確かに今日の舞衣は上機嫌だった。心なしか、肌もいつにもまして艶々としている。

二人の視線に気づいた舞衣が問いかける。
「何だ? 私の顔に何かついているか?」
「いや、今日はいやに上機嫌だと思ってさ。何だか良い夢を見たんだって?」
俺が見たのはお前が主演のある意味悪夢だけどな、と心の中で呟きながら正刻は舞衣に尋ねた。
すると舞衣は満面の笑顔を浮かべて答えた。
「ああそうとも! まぁ君になら言っても良いだろう。私が見たのは君と私の夢だったのだよ。」
ふぅん、と正刻は舞衣が淹れてくれたコーヒーを啜りながら相槌を打つ。

「具体的に言うならばな? 私と君が初体験を行なう夢だったのだよ!」

ぶ───っ!!
がっしゃ───ん!!
その舞衣の衝撃の告白に、正刻は盛大にコーヒーを吹き出し、唯衣は皿を落とした。
そんな二人の姿も眼中に入らないのか、舞衣はうっとりとした表情でその「夢」の内容を語りだす。

「いや夢の中の君はおっぱい星人でな? 私が服を脱ぐのをもう獲物を狙うハンターのように見つめてくるんだ。その視線に私はまた感じ
 てしまってな。更に優しくしてくれって言ったのに最初からクライマックスでもう激しく責め立ててくるし……。まぁそれはそれで愛
 を感じることが出来て嬉しかったがな。ただ一ついただけないのは安全日だと偽って君に中出しさせたことだな。確かにそうすれば君
 は責任をとってくれるだろうが、そんなものは私の本意ではない。……まぁ、少しだけ魅力的な案ではあるのだがな。それにしても凄
 かったよ。起きたらもうショーツがぐっしょりと……。」


134:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:45:59 tyN14nun
「あ──ッもうそこまで!! あ、あああああアンタは一体何言ってんのよっ!?」
唯衣が耐え切れずに舞衣の話を強引に中断させる。唯衣の顔は真っ赤だ。
そんな唯衣を不思議そうに見ながら舞衣が答える。
「いや、ただ単に私が見た夢の内容を語っただけなんだが……。お前だって私が見た夢の内容を知りたがっていたろう?」
「い、いや確かにそうだけど、まさかこんな……。」
そう呟いて唯衣は俯く。その様子を見ながら舞衣はしれっとした調子で言った。
「心配するな。別に誰にでも言うわけじゃないさ。流石に往来でこんな話をするつもりも無いしな。」
「当ったり前でしょうがッ!! 道端でこんな話をしてたらそれこそ良い晒しモノよっ!!」

それでもけろっとしている舞衣に、正刻からも何か一言言ってもらおうとした唯衣は、彼の様子がおかしいことに気がついた。
いつもなら自分がつっこむ前に、彼のアイアンクローが舞衣を捉えて黙らせている筈である。
なのに今の彼は、青い顔をして気まずそうに目線を外している。よく見ると、こめかみには脂汗が浮いている。

不審に思い、正刻に声をかけようとした瞬間、唯衣の中で色々なものが繋がり、閃くものがあった。
「厭な夢」を見て寝不足の正刻。「良い夢」を見て上機嫌の舞衣。更にその「良い夢」の内容を聞いて、明らかに様子がおかしい正刻。
常人ならばこれだけでは何も連想できないかもしれないが、ずっと幼馴染として過ごし、そして正刻を愛する乙女の勘が唯衣にある推測
をもたらす。

(まさか正刻が見た夢って……!)
そう思うが早いか、唯衣は正刻の頭をつかみ、強引に自分の方に振り向かせる。
「うわっ! 何すんだよゆ……!」
「ねぇ正刻……。私、あんたが見た夢の内容を知りたいんだけど、教えてくれない……?」
そう言った唯衣は笑顔だった。しかし正刻は、その笑顔の裏に唯衣の激しい怒りを垣間見た。
(ま、まさかコイツ……気づいて……!?)
そんな筈はないという考えと、唯衣ならば気づいてもおかしくない、という考えが頭でせめぎあい、正刻は硬直してしまう。
そして怖い笑顔を浮かべてくる唯衣と、興味津々な様子で見つめてくる舞衣をどうするべきか、正刻は内心で溜息をつきながら考えた。

結局唯衣のプレッシャーに押され、つい真実を言ってしまったため、数日間唯衣と事情を聞いた鈴音に完全に無視され、舞衣にはいつも
以上にベタベタされて正刻はぐったりとしてしまったのだが、それはまた別のお話。


135:名無しさん@ピンキー
07/06/02 02:50:20 tyN14nun
以上ですー。やっぱりエロは難しいですね……。

話の性質上、なかなか本番は織り込めないのですが、まぁ妄想やら夢やらで何とか入れていきたいと思いますー。

ちなみに私が好きなのは、やはりドラクエ5ですね。あそこでビアンカを選ばずに、何が幼馴染萌えかッ!!と思いますー。

長々と失礼しました。ではー。

136:名無しさん@ピンキー
07/06/02 03:40:56 5wops/Ra
きたぞーっ!久々にきたぞーっ!超GJ!!
いやーついに舞衣ルート確定したかと思ってWKTKandHIHIYAしたよ。
それにしても作者さん引っ張るなー。一体誰と結ばせる気なんだ?
やっぱ三人とか?それともハーレム?まさか亜依とか言わないよな?
激しくwktk!アンドage

137:名無しさん@ピンキー
07/06/02 04:36:47 VpLPrERT
GGGGGGGGJ!!!!おっぱい星人の俺にとってFカップは魅力たっぷりなんだぜ?いや、まあ実際は大きさよりも温もりなわけだが。
正刻が『覚悟』を意識してきた辺り、話全体が大きく動き出してきそうですね。やはり例の伏線張りまくってる新キャラが出てからが勝負か?
しかしみんないいキャラだからいっそのことハーレム囲って…ってそれは俺の願望だなw
続きが早く読みたいですっ。あなたが書く作品なら、いつでも、いつまでも待ちますよ!

138:名無しさん@ピンキー
07/06/02 17:31:35 VVtUQMF4
mo☆e★tu☆ki★ta☆

139:名無しさん@ピンキー
07/06/02 23:05:49 MHfj6clu
GJ。
さすがですな。正直にいうと別にエロなしでも楽しめるタイプなのだが、これはいい。
甘甘でそれでいて純粋なこの世界観が俺のツボにクリーンヒットしている。

しかし、舞衣よ、その夢の内容は、いくら何でも嬉々として語るようなものじゃあないぞ。
たが、それこそが君の輝くところだ。存分に輝いてくれ。いつか俺が悶え死ぬが、悔いはない(舞衣大好き派)。

最後にふと気になったのだが、なぜ13話なんだ?保管庫の方には9話までしかないのだが、まだ保管してない話か、俺が見過ごした話があるのか?

140:名無しさん@ピンキー
07/06/02 23:43:00 A0VlrO2H
>>139
確かこの方の作品「絆と想い」は、実は最初は作品名が無かったのだよ。4話目からこのタイトルがついたのだ。
で、ここからは推測だが、最初の方は短めの投下だったから、管理人さんがまとめてしまったようなんだな。

過去ログと照らしあわせると、まとめサイトの1は、第一話から第三話、2は第四話と五話、で、3からは六話以降が
対応している感じだな。

まぁ別に不都合は無いだろうが、知らないとちょっと戸惑ってしまうかもなぁ。

それはともかく作者さんGJ!! 夢オチでも良いので唯衣や鈴音との絡みも書いてくれー!!



141:名無しさん@ピンキー
07/06/03 00:38:37 Q2KPbycf
なるほど。そういうわけだったのか。
ここ来るようになったのが、前スレからだったから、初期の投稿時の様子を知らんかった。
>>140ありがとう。

小生意気にも予想とかしてみるが、二人が夢の話を聞いて舞衣に対する軽い嫉妬と、正刻に対する願望が渦巻いて一人でしちゃてる状況が来るとか妄想してる。
ごめん。唯衣と鈴音も好きなんだわ。はあ、俺の妄想力がたくましすぎる。


142:名無しさん@ピンキー
07/06/03 01:02:14 Zs2P1q7i
そこで仲良くハーレムですよ
誰が妻で誰が愛人かなんて些細なこと。全員平等に愛せば無問題。
愛に優劣など無意味よ。頑張れ正刻

143:名無しさん@ピンキー
07/06/03 01:45:23 oGct+27/
ハーレムとなるとこのスレの定義から若干外れそうな気もするが、それはまあ住人の裁量次第か
「今宵の~」でNTR云々盛り上がったりもしたしな

144:名無しさん@ピンキー
07/06/03 02:01:36 rYpq6Cru
まったくの他人を巻き込んだハーレムはちょっとアレだが、構成している女の子が全員幼馴染であるならば、それほど
違和感無いように思うけどなぁ。

何がいいたいかというと、誰か一人とくっついても、ハーレムエンドでも私は一向に構わんッッッッ!!という事だ。

145:名無しさん@ピンキー
07/06/03 03:24:08 gg52q+TM
妻妾同衾という言葉がありましてな……。

146:名無しさん@ピンキー
07/06/03 15:42:42 rOuwsfeX
>>145詳しく説明してもら桜花!

147:名無しさん@ピンキー
07/06/03 19:31:58 gg52q+TM
文字通り、妻も妾も同じ家、或いは布団に同衾するという事で。
素晴らしい言葉だと俺は思う。

148:名無しさん@ピンキー
07/06/05 01:27:52 RYMVwZIl
保守。投下待ってます。

149:名無しさん@ピンキー
07/06/06 15:22:18 q9zMag3A
URLリンク(nekomarudow.com)

150:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:34:49 9TCqqGcA
1.
……人生には、決して目を離しちゃいけない瞬間ってのがある。
例えば、初めて恋人とキスをするとき。
女の子は目を瞑ってもいいけど、男の子は駄目だと思う。
それは何ていうか、ロマンチックじゃない。男の子はじっと彼女を見つめなきゃだめ。
例えば、お気に入りのスポーツ選手の試合。
一瞬でも目を離したら、そのあと何十年も語り継がれるような瞬間を見逃してしまうかも。
そうなったら悔やんでも悔やみきれない。
そういうときは、例え目が乾燥して涙がどばどば出ても、目を開けてなきゃいけないの。

だから、そうじゃないときはゆっくり目を休ませてあげましょう。
一例をあげれば、議題がほとんどないゴールデンウィーク前のホームルームとか。
そんなときはぐっすりと眠るに限る。
教室はエアコンを使わなくてもほどよくいい心地だし。
授業とは違って、先生だって寝ている私を叱ったりしない。
せいぜい、そっと私の机の横に立って、「起きなさい、那智子さん」と注意するぐらい。
―それがそもそもの間違いだったわけだけど。

「……では、最後の一人は妙高那智子さんにしたいと思います、異議はありますか?」
『ありませーん』
三十人の声が重なって私はがばっと起きた。
……確か、今私の名前呼んだよね?
ああいう時って、一瞬自分が日本人じゃなくなったみたいな気がしない?
周りでは確かに日本語を喋ってるんだけど、それが理解できないの。
私もまさにそうだった。
慌てて見回すと、クラスメイトのみんながにやにやと私を見ていた。
担任のシスターまで。あらあら困ったものね、みたいな笑顔で私を見つめている。
戸惑う私の視界に、親友の青葉の顔が飛び込んできた。
三列向こうの席に座っている青葉が、声を出さずに何か言ってる。

マ・エ・ヲ・ミ・テ……?

私ははっと首をひねる。
指差す方に目をやると、黒板には私の名前がばっちりと書かれている。
あの字は副学級委員長の字だー、なんて、私はぼんやりと考えていた。
私の上には別の名前も並んでいる。
クラスメイト三人の名前……あれ、青葉の名前もある。
さらに私は視線を上にやる。
すると、そこには。

「第45回・校内英語弁論大会 クラス代表」……

「え、え、え、えええ……!?」
そう。
人生には決して目を離しちゃいけない瞬間がある。
何の議題もない「はず」の、ゴールデンウィーク前のホームルーム―とか。

151:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:35:09 9TCqqGcA

その日、家に帰った私はさっそくあの人に愚痴っていた。
「つまり、居眠りしてる隙に弁論大会の代表に選ばれちゃったわけ?」
「……そうです」
祐輔はわざとらしく確認してから、小さく笑った。
私はじろっと睨んでから、彼の入れた緑茶をそっとすする。
―あー、悔しいぐらいおいしい。
何でこんなにお茶入れるのうまいんだろう、祐輔ってば。
そんなことを思いつつ、私は弁解がましく返答してみる。
「だって、そんなのこれまで関係なかったんですもん。
居眠りしちゃっても仕方ないじゃないですか」
私たちはキッチンに置かれたテーブルに向かい合って座ってる。
いつも、私が帰宅して私服に着替え終えた頃に祐輔は大学から帰って来る。
それから二人して飲むお茶。
それは私たちにとって大事な時間になっていた。

「……だいたい、原因は祐輔さんのせいなんですからね」
「僕? 何で僕のせいなの?」
「それは……」
私は口ごもる。
そもそも私の英語の成績って大したものじゃなかった。
クラスでも真ん中ぐらい。学年でいえば下半分に入ってるはず。
青葉にヤマを教えてもらって何とか人並みな点数を取ってるぐらいだもの。
あ、ちなみに青葉は英語はかなり得意。
ところが。
祐輔に勉強をみてもらうようになってから、私の成績は突然上がり始めた。
特に苦手だった英語と数学は、先生がびっくりするぐらいの上がり方だった。
だから、今回クラス代表を選ぶに当たっても、担任の先生は内心私に決めていたらしい。

祐輔の教え方がうまかったわけじゃない。
でも、私が行き詰まるところは、なぜか大抵、祐輔もかつて行き詰まったところだった。
だから、祐輔は私が「なぜ分からないのか」をすぐ理解して教えることが出来たってわけ。
どうやら、私たちは考え方の方向性が似ているらしい。
……それはそれで嬉しいけど「成績優秀」になると余計な仕事が増えるなんて聞いてない。
私はそういう知的な役目は回って来ないはずだったんだ。これまでは。

152:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:35:27 9TCqqGcA

「―八つ当たりじゃない? それって」
「う、うるさいなあ! もう、とにかく祐輔さんが悪いの! 悪いから、お茶っ!」
私は空になった湯飲みをドン! と机に置く。
祐輔ははいはい、と言いながら新しいお茶を入れに立ち上がった。
こぽこぽこぽ、と心地よい音を立てながら、お茶が注がれていく。
まるでエメラルドみたいなきれいな色。薄すぎず、濃すぎず、理想的な緑。
祐輔って、本当にお茶入れるの天才的だ。

「……で、今度の土曜日、私の家で打ち合わせをやるんですけど」
「へーっ、打ち合わせなんかするんだ」
ここからが本題だ、とばかりに私は祐輔の顔をじっと見た。
見つめられた祐輔の方は、まだ事情をつかめずぼんやりしている。
「ゴールデンウィーク明けには練習始めなきゃいけないんで、みんなで原稿を書くんです。
―だから、その日は祐輔さん私の部屋に顔を出したり下さいね」
「なんで?」
祐輔が首を傾げる。
ああ、やっぱり分かってない。私はため息をついて、もう一度祐輔を真正面から見据えた。

「女の子の中にひとりだけ見知らぬ男の人がいたら緊張するじゃないですか。
……みんなお嬢さまで、ずっと女子高の子もいますし」
本音をいえば、私と裕輔のことを邪推されるのが嫌なんだけど。
青葉を除けばみんな私がいとこと暮らしてることなんて知らないし。

しばし、無言。
祐輔の目が、素早く一周した。
それは彼が物を考えているときの仕草。
「……OK。分かった」
でも、祐輔笑ってる。
「本当に分かってます?」
「分かってるよ。年頃の女の子の考えることは、よく分かんないってことが」
「このっ!」
私が手を振り上げると、祐輔はおどけたように逃げていった。
ああ、もう。疲れそうだな……今度の土曜日。

153:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:35:41 9TCqqGcA

2.
「へぇ……ここが妙高さんのお部屋なんですね……」
「わりかし片付いてんジャン、あたしと全然違うわー」
そんなこと言いながら、部屋を見回しているのは私のクラスメイト。
おっとりした様子で、静かに座布団に座ったのが羽黒さん。
ウチの高校でもいまや絶滅寸前のお嬢様。幼稚舎からの生え抜きだって。
まるでシスターみたいな黒いワンピースに、真っ白なレースの靴下。
肩までで切りそろえた髪は毛先まで滑らかで、宝石みたいに輝いてる。

もう一人、あけっぴろげな口調で断りもなく人のベッドに腰掛けてるのがハル。
本名は霧島はるなって言うんだけど、みんな「ハル」って呼んでる。
ソフトボール部のエースで、まあクラスに一人はいるお調子者……っていうと怒るけど。
ボブヘアでパンツルックが馴染んでいるのは私に似てる。
違うのは彼女はスポーツに加えて、勉強も出来るってことかな。
ちなみに私はどっちも苦手です。はい。

「でも前に来たときよりは片付いてるよね、なっちゃん」
そう言って青葉はくすくす笑った。
私がにらむと、口をそっと手で押さえて目をそらす。
全く、何が言いたいのよ何が。
「さすがに散らかしっぱなしじゃまずいもんねー」
意味深長な青葉の発言に、羽黒さんとハルが反応した。
「なんですか?」「どういうこと?」
二人の問いに、青葉は私の方を盗み見る。
羽黒さんとハルの目が私に向けられるのを感じる。
「……なんでもないの、いまお茶淹れてくるから」
『おかまいなくー』
背中で三人の声がハモるのを聞きながら、私は台所の方へ向かった。

台所で私が湯飲みを取り出していると、隣の部屋の扉がそっと開いた。
「お客さん、もう来てるの?」
まるで怖いものでも見るみたいに隙間から片方の目だけが覗いてる。
……なんだか、失礼だ。私はそんなに怖くないぞ。
そんな気持ちが表にでちゃったのか、裕輔は私と目が合うなり部屋に引っ込んだ。
「……私たちはずっと部屋にいますから、裕輔さんはどうぞご自由に」
「みなさん何時ごろお帰りになるかな?」
扉の向こうからおびえたような声。ああ、もう。

―別に、そんなつもりじゃないのに。
ただ、私のいとこだ、とか、小さい頃から知ってるとか。
そんな理由で挨拶とかされたり、まして「これからもなっちゃんをよろしくね」なんて。
そんな父兄みたいなこと言って欲しくないから。だから「顔出すな」って言ったのに。
これじゃまるで……
でも、もう何を言っても仕方ない。
とりあえず裕輔さんには部屋にいてもらおう。
っていうか、そんなに気になるなら出かけてくれれば良かったのに。
……家に居座って勝手に気を揉んでるのはあなたの勝手でしょう!

154:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:35:55 9TCqqGcA

もう。
知らない。

私はポットから急須にお湯を注ぐと、さっさと自分の部屋に戻ることにした。
裕輔の部屋の扉に「べーっ」と舌を出すことは、忘れなかった。

部屋に帰ると、私たちは作業を始めた。
英語弁論大会はクラスごとに色々と趣向を凝らす。
代表は各クラス四人だから、ただ英語でスピーチするだけじゃない。
たとえば寸劇仕立てにしてみたり。擬似討論(もちろん台本アリ)だったり。
だからどういう方向性でいくかについては良く考えなきゃいけない。
ただ、ウチのクラスにはハルがいた。
彼女の提案で、私たちは「法廷」風でいくことにした。
もちろん日本のじゃなくて、アメリカのアレ。
「異議あり!」とか「陪審員のみなさん~」とか、ああいうの。
テーマは「自然保護におけるテクノロジー使用の是非」。これは羽黒さんの意見。
私と青葉は二人の意見にうなずいていればよかった。
あー、熱心な人とまじめな人がいると話は早い。
だいたい、私があまりに場違いなんだけどさ。

とりあえず私たちは手分けして筋を考えることにした。
クラスの代表だから、何度かクラスのみんなの前で発表してみせなくちゃいけない。
で、クラスメイトの意見を聞いて修正する、と。
あー、なんでこんなめんどくさいことになったんだか。
私はぶつくさ言いながら(もちろん心の中だけで)ペンを走らせていた。
えっと『資源確保は文明社会の維持には必須であることは産業革命以来の……』
……ハル、もっとやさしい日本語にしてよ。
だいたい英訳するのが何で私の役目なの?
もっとさあ、すなおにSVCとかSVOで済む文章を…
なんて思ってたら、不意に当人が話しかけてきた。

「そういえばさあ」
私が目を上げると、ハルは手を休めてテーブルに肘をついたまま私を見つめていた。
「青葉っちに聞いたんだけど、なっちんって従兄のお兄さんと住んでるんだって?」
私はテーブルの向こうにいる青葉をじっと睨む。
こっちを全然見ないところをみると、私がお茶を入れている間に余計なこと言ったな。
おのれ裏切り者。
視線を横に移すと、青葉の隣に座った羽黒さんは興味津々って感じ。
……青葉を口止めしておけばよかった、不覚。

「どんな人? どんな人?」
ハルは身を乗り出さんばかりに聞いてくる。
分かってたんだ。ハルがこういう人だってことは。
「別に、普通だよ」
私はそっけなく言って、自分の原稿用紙に目を落とす。
そうそう明後日には練習を始めるんだから、今日は遊んでられないの。
分かったハル?

155:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:36:12 9TCqqGcA

「すっごいかっこいいよ。背が高くて。それにやさしそうだし」
青葉……わざとやってるのね?
確かにさ、さっき英訳するの難しそうなところそっちにこっそり回したけど。
だからってそんな仕返しはないでしょう。
「そーなんだ、へー、いいなー、男の兄弟とかー」
「ハルにだっているじゃん、弟」
「えー、駄目だよ年下はさー。馬鹿だし」
まるで飲み屋でクダまいてるオヤジみたいに、ハルは吐き捨てた。
「中学になったらとたんに生意気になってさー。
『俺ねーちゃんみたいな女とは絶対つきあわねえ』とか言い出してさー。
こっちだってお前みたいな男ごめんだっつーの」
そう言って手をひらひらさせるハルを見て、羽黒さんはくすりと微笑む。
「仲がいいのね、ハルちゃんと弟さん」

「羽黒さんは一人っ子だっけ」
私が聞くと、彼女はこくりとかすかにうなずいた。
「母が体が弱いものだから。父はどうしても男の跡継ぎが欲しかったようだけど」
「……ふ、ふーん」
なんだろう。その口ぶりに何かとても生臭い背景を感じて、私は言葉を濁した。
「最近英語の点がいいのも、裕輔さんのおかげだもんね、なっちゃん」
青葉の口調には悪びれたところは全然なく、純粋に裕輔のことを尊敬している風だった。
うーん、やっぱり天然だったか。
「なに? 勉強見てもらってるの?」
ハルの問いかけに、うんとうなずく私。
そのおかげで今こんなことする羽目になってんのよ……とは言わなかった、さすがに。
「この前の実力試験も校内五位だったから、ご褒美にデートしてもらったんだよねー」
「こら、青葉っ!」
叫んだのが逆効果だった。
羽黒さんとハルは目を輝かしている。もう手を動かしている人が誰もいない。

「うそ、付き合ってんの? 彼氏?」
「違う、違うよ!」
あわてたけど、もう遅い。
ハルはにじり寄ってくるし、羽黒さんは頬を赤らめて私をじっと……。
ちょっと待って二人とも。
「ち、違うの! 点数とは関係なく、ちょっと買い物に付き合ってもらっただけ!」
っていうか、青葉も変なこと言うな。
「でもさ、好きじゃなかったら買い物につき合わせたりしないよね~」
「そうですね」
ハル、変なところで鋭い……じゃなくて。
私は無意識のうちに首をぶんぶん振っていた。
「じゃ、なっちんお兄さんのこと嫌いなの?」
そうじゃなくって。
好きとか嫌いとかいう以前に、裕輔はずっと一緒にいるから。
そりゃ、小さい頃のことはよく覚えてないけど。
でも私の感覚が、ときどき思い出させてくれる。

裕輔と一緒にいたころのことを。

私は裕輔とずっと一緒にいたいし、多分そうなる。
ここは私の家で、裕輔の家。
だから、私たちは―

156:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:36:34 9TCqqGcA

「会ってみたいです、そのお兄さんに」
意外や意外。
そんなことを言い出したのは羽黒さんだった。
驚いたのは私だけじゃなかった。青葉も、ハルもあっけにとられている。
そんな三人の視線を感じたのか、羽黒さんはもじもじと少しあとずさった。
「……だって、とても素敵そうな方に聞こえるし……。
今日、ご在宅じゃないんですか?」
ううん。
首を振って否定すると、羽黒さんはまた少しはにかんだ。
「ではぜひ。
それに、おうちにお邪魔したのに、ご挨拶しないのは失礼ですし」

なるほど。
高貴な人はこういう風に自分のわがままを通すのだな。
なんて、私が変な納得している間に、どうやら裕輔に挨拶することに決まったらしい。
じゃあ早速、なんて立ち上がってるのは青葉。
そういえば青葉も写真は見てても、まだ直接あったことはなかったっけ。
なんだかんだ言って、羽黒さんに便乗したいみたい。

仕方ない。

あわせてあげますか。「私の」裕輔に。

私が先導して、裕輔の部屋までぞろぞろと歩いていく。
なんだろう。このちょっとドキドキする感覚は。
初めて彼氏を友達に紹介するときの感覚?
たぶん、こんな感じなんだろうか。私は気を落ち着けるために小さく咳をする。
扉を、ノック。

「裕輔さん、ちょっといいですか?」
中で慌てて立ち上がる音。
「……な、何?」
あ、こりゃ寝てたな。
「私たち、今から休憩するんですけど、一緒にお茶でもどうですか?」

157:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:36:49 9TCqqGcA

3.
青葉と羽黒さんとハルを玄関で見送った私は、上機嫌だった。
ばいばい、と手を振ってそのまま台所へと引き返す。
すると、裕輔がテーブルに頬杖ついて一人お茶をすすっていた。
私が入ってくるなり、大きくため息。
「……なんですか?」
その態度、私に対してのアピールと受け取った。なんか、文句ありげ。
いいじゃないの、聞いてあげるわよ。

「で、一応合格だったのかな」
「何がですか?」
裕輔の顔が、少し真剣。ちょっとどきっとした。
こんな顔したのは……。
確か、彼のお父さんと名乗る人から電話があったときぐらい。
あのあと、裕輔はすごく沈んでいて、真剣な顔で、私は何も聞けなかったけど。
今日の理由は、たぶん私。
「出てくるなと言ってみたり、突然挨拶させられたり。どういうことかな、と思って。
考えてみるに、僕は試されてたのかな……ってね」

確かに、裕輔はパーフェクトだった。
あたりさわりのない話題から始まって、やがて親しげな会話へ。
誰とでも打ち解けるハルはともかく、内気な青葉も最後は声を上げて笑ってた。
もっと驚いたのが羽黒さん。
応接間でお茶をしたとき、彼女は最初は裕輔から一番遠いところにいた。
ところがだんだん近づいていって、気づいたら裕輔のそばから離れなくなっていた。
裕輔の湯飲みが空になったら甲斐甲斐しく台所に立って新しいお茶を淹れさえした。
……裕輔、羽黒さんはすごい逆タマだけど、お父さんはたぶん怖いぞ。
ま、それはともかく、みんな裕輔のことが気に入って。
私は素敵な男性と暮らしていることが証明できて。
何の問題もないはずだった。

「……苦手なんだよ。ああいう社交的なことは」
ポツリともらした言葉に、私は裕輔の本音を聞いたような気がした。
いつも私をからかってばかりの裕輔が、たまに漏らす本音。
それはこの家に彼が住むことになったとき。
私が以前つまらない意地をはって風邪ひいて、看病してくれたとき。
そんなときにわずかに覗く表情。
「知らない人の前で、笑顔を作り続けるのって、正直、いやなんだ」

「……どうして、ですか」
裕輔の言葉は意外だった。
裕輔ってなんでも如才なくこなしちゃうタイプだと思ってたし。
お父さんと話すのを聞いてても、大人同士の会話とかすごく得意に見えた。
じゃあ、あの裕輔の笑顔は、何なの?

158:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:37:01 9TCqqGcA

「僕はここに来るまで、ずっと親戚中をたらいまわしにされてきたからね」
「……え?」
それは初めて聞く、「離れ離れだったころの裕輔の話」だった。
「親戚って言っても、なっちゃんのお父さんやお母さんみたいな関係じゃなくて。
血のつながらない叔母さんの、そのいとこの家とか。
母方の祖父の後妻さんの本家とか。遠い親戚ばかり。
そんな環境で、僕は小学生から高校生までをすごした。たった独りで。
母は病気で入退院を繰り返してたし、親父はいなくなってたし……
とにかく周りから嫌われないでいよう。それだけ考えて過ごした」
「裕輔さんのお父さんって……」
この前電話をかけてきたあの人ですか? そう問いかけて、私は口をつぐんだ。
裕輔が触れて欲しくないことは、明らかだったから。

「叔父さんが―なっちゃんのお父さんが僕を下宿させてくれる……
そう聞いたとき、僕は息が詰まるような思いがした。
また、大人の顔色ばかりうかがって生きなきゃいけないんだろうか、って」
裕輔は何度も頭を振りながら、目の前のとっくに冷めた湯のみを両手で握っていた。
私は泣きそうになった。
突然裕輔が、遠くなったような気がしたから。
そんなことを考えて、この半年裕輔はこの家で過ごしてきたんだろうか。
私は裕輔の顔も見れないまま、尋ねた。
「じゃあ、私に笑ってくれたのも……」

「勘違いしないで欲しい、今はそんなこと―」
裕輔は言葉を詰まらせた。
それは、私が裕輔を抱きしめたから。
立ち上がって、裕輔の頭を、ぎゅっと胸に抱きしめる。
「なっちゃん、あの―」
「裕輔さん、どこにも行かないでね」

涙交じり言ったら、余計悲しくなって、私は涙をこぼしてしまった。
そしたら、後から後から涙がわいてきて、止まらなくなって。
私は裕輔の髪に顔をうずめるようにして、必死に涙をこらえようとした。
「ここが、裕輔さんの家だから。
だから、お父さんのこととか、お母さんのこととか、気にしなくていいから。
私、裕輔さんが何にも気にしないでここで暮らせるように頑張る。
……裕輔さんのこと、好きだから。
だから、どっかに行っちゃったらやだ……」

159:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:37:15 9TCqqGcA

私の背中を、大きくて暖かい手がそっとなでていた。
それに促されるままに、私は裕輔の首にすがりつく。
気がつけば、今度は逆に私が裕輔の胸の中に抱きしめられていた。

「最後まで話は聞こう、なっちゃん」
裕輔は私の頭を撫でている。
私が見上げると、裕輔はいつものように優しい笑顔を浮かべていた。
「確かに、僕はここでの暮らしが不安だった。
でも、それは余計な心配だったんだ。叔父さんも叔母さんも優しかったし……
何よりなっちゃんがいた。
小さいころと同じ、やんちゃで、わがままで、僕の知ってるなっちゃんが」

「……褒めてないですよね、それ」
涙声で責めると、裕輔は声を殺して笑った。
私も自然と笑みがこぼれる。
「ありがとう、なっちゃん」
私は「どういたしまして」と言おうとして……やっぱり止めた。
そんな言葉遊びはどうでもよかった。それより、私は自然とある行動をとっていた。
腕を裕輔の首に絡めて、小さく体を伸ばす。
目指す場所はすぐ目の前にあった。
軽く目をつぶって。そう、こんなときは目をつぶるの。
昔からそう決まってる。

小さな子供がふざけてするみたいに、私は唇でそっと裕輔の唇に触れる。

「あ、わっ!」
突然裕輔が立ち上がったもんだから、私は思わず椅子から落ちそうになった。
「逃げないでくださいよー」
「だ、だって……」
あらら、赤面して。
なんだか裕輔のかわいい一面を見てしまった。
キスって言っても軽く触れあっただけなんだけどなー。
少なくとも、私の初めての相手(たぶんあっちも初めて)はこんなに動揺しなかったぞ。
修行が足りん、うん。

「ふーん」
「な……何が『ふーん』なの?」
「なんでもー」
うん。
私はニヤニヤしながら、窓の外を見る。
なんでもない。
そう、こんなのなんでもない。小さいころから遊んだいとこ同士にとっては。

―このときまでは私はそう思っていた。

(続く)

160:那智子の話・第四話 ◆ZdWKipF7MI
07/06/06 19:40:33 9TCqqGcA
ほぼ10ヶ月ぶり?ぐらいのご無沙汰です。
最近時間に余裕が出来たのと、なんとか結末への目処がたったので、投下させていただきました。

話の都合上、今回はなんか重くなってしまったけれど、次ぐらいからはたぶんらぶらぶえっちな展開になると思います。
たぶん。

では。

161:名無しさん@ピンキー
07/06/06 20:23:03 1deg6swk
待ってた。超待ってた。全力で待ってた。GJ!

162:名無しさん@ピンキー
07/06/06 21:08:37 aHOPOjoD
うおあわああ

マジでまた読めるとは!!GJGJGJ
次回も期待している!

163:名無しさん@ピンキー
07/06/06 22:33:52 JF9iioDj
うおおこれは良い不意打ち!
久々に乙!

>次ぐらいからはたぶんらぶらぶえっちな展開に
ウヒョー

164:名無しさん@ピンキー
07/06/06 23:06:26 TDZyaRro
保管庫で読んだことあるけど、GJ。
なんか中途半端なとこで切れてるなあ、と思っていたら続きがありましたか。早合点してました。すいません。
重いというよりも、何かしっとりとした雰囲気に感じました。続きを待ってます。


165:名無しさん@ピンキー
07/06/07 11:16:24 EHmHaXb0
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|          『亜qすぇdrftgyふじこlp;』
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |           な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        おれも 何が起こったのか わからなかった…
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ         頭がどうにかなりそうだった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉        >>160GJだとか神降臨だとか
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ       そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ     もっと恐ろしいものの 片鱗を味わったぜ…      
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \



166:量産型うに ◆/pDb2FqpBw
07/06/07 23:35:25 weadKTHu
>20-28
>43-46
のつづきです

167:量産型うに ◆/pDb2FqpBw
07/06/07 23:36:06 weadKTHu
----------------------------------------------------------------------------
ブルー 第3話:
----------------------------------------------------------------------------


俺より先に、寝てはいけない。
俺より後に、起きてもいけない。
飯は美味く作れ。いつも綺麗でいろ。
出来る限りで、かまわないから。

殴られる。

少なくとも我が家でそのような態度を取ったら雨音さんに殴られる。
男の見栄とそして不器用な愛の表現が語られたこんなに良い曲なのに。

幸せの形は様々とは言う。
うちはうちでこれで良いのだとも思う。
しかしかかあ天下ここに極まれりという感じでは少々肩身も狭い。

168:量産型うに ◆/pDb2FqpBw
07/06/07 23:36:47 weadKTHu

こういう家庭である理由は雨音さんが世話好きだとか、
母親がいないだとか色々あるかもしれないが
俺はひとえに父親の性格によるものだと思っている。

妻つまり俺の母親だがに逃げられた現在42歳公務員で毎日6時には家にいる冴えない男、
俺の父親の事を俺から見て端的に表現するとこんな感じの人間となる。

気が弱く、腰が低く、外で喧嘩でもしてる所なんかは見た事がない。
その癖説教臭く、事ある毎に俺に説教をする。
それが又ねちっこい上に理不尽だ。
子供の頃は喧嘩に負けたといえば負けるお前が悪いと説教され、勝ったといえば乱暴を振るうなと叱られた。どうしろと。
その割に雨音さんには異常に甘い。
フェミニストとかそんな物を凌駕する感じに甘い。何があろうとどうあろうと雨音さんの味方になりやがる。
そう、まあ言ってみれば理不尽な位にだ。

169:量産型うに ◆/pDb2FqpBw
07/06/07 23:37:58 weadKTHu

@@

「お前が悪い。」

開口一番こうだ。まだこっちは何も言っちゃいねえ。

「いや、あのなあ」

「雨音に謝って来なさい。」

公務員てのは公正を旨にするべき。
という世の常識に真っ向から反発するかのごとく人の話を聞かねえ。この親父。
警官じゃなくて本当に良かった。
もし警官だったら俺みたいなちょっと世の中を斜めに見ちゃう年頃の、
でも内面は凄く男らしくて頼りがいがあって、
でも口にすると自分を上手く表現できない、
そんな不器用な男を次々と冤罪に陥れていたに違いない。

「別に雨音さんが勝手に怒ってるだけで俺は何もしてないって。」

「怒るのにも怒られるのにも理由がある。それを聞いて謝って来なさい。」

「親父は理不尽なことで怒られた事はねえのかよ。」

「理不尽だと思った事はあるよ。でも後々良く何度も考えれば父さんの場合はそう理不尽じゃないと思える事ばかりだった。
理不尽だと思ったのは自分が未熟だったからだ。雨音が怒ったならお前が悪い。我慢しなさい。」
実の息子に背を向けながらこれだ。驚くべき理不尽さだ。いつもこうだ。

「親父が雨音さんに甘いのは判るけど今日なんか俺、ただ学校から帰って来ただけだぞ。」
それなのに口を聞いてくれないわ、ご飯は茶碗に小盛り一杯とメザシだわ、
洗濯物は俺の分だけ綺麗に畳んでくれているものの仕舞ってくれてはいないし、
夜のおやつは無くなってるし家に帰っちゃうしで大騒ぎだ。
親父は今、こちらに背を向けながらちゃぶ台の前に丸まって
いつもならあるはずの晩酌のつまみなしに中年男の悲哀、ここに極まれりという感じでちびりちびりと日本酒を啜っている。

「じゃあただ帰ってきたその中に不味い事があったんだろう。」
俺が反論すると不貞腐れたようにそう言う。

「ねえよ!」
と叫んだ瞬間に、ふと気に掛かった。

170:量産型うに ◆/pDb2FqpBw
07/06/07 23:38:40 weadKTHu

「・・・まあ、でも、あれは。」

「ほらあるじゃないか。」

今日は確かに後輩の女の子と2人で帰った。
「でも関係ないよなあ。」

「関係なくはないんじゃないか。」

「いや、関係ないよ。判らないくせに口挟むなよ。」

「因みに今日は雨音は午後5時半頃に鬼のような顔をして帰ってきたぞ。
それから3分おきに時計を見て、だんだん角が尖ってきてたな。」

確かに今日は後輩の女の子と2人で帰った。大体そのくらいの時間に。
テレビや最近はやりの漫画について語り合い、大分盛り上がったのも確かだ。
盛り上がりついでに喫茶店に誘われたのでついていって小一時間ほど話をした。
主に剣道の話やテレビや音楽の話などを。

その後輩の女の子は派手だがそこそこ可愛いと評判の子でもあり、
帰り際には俺の腕を取ったり、にこにこと笑いかけてきて悪い気がしなかったのも確かだ。

しかしそれが何か問題でも?


171:量産型うに ◆/pDb2FqpBw
07/06/07 23:39:27 weadKTHu

「多分それだよ。」

「だから何も言って無いじゃん。」
エスパーか。

「とにかく父さんはにこりともせずエプロンを握り締めて台所の暗がりに立ち尽くす雨音を見るのは正直怖い。
怒りを父さんに隠そうとするところも含めて。どう対処していいのかわからん。」

まさか。
「・・・そんなに怒ってたの?」

「イチは遅いねえと言ったら
き っ と 楽 し く 遊 ん で る ん で す! 剣道を辞めたとたん羽伸ばしちゃってさ。
とかなんとか目線を全く動かさずに答えてたからな。
だからまたお前が何かしたんだろうと思ったんだけどな。」
そういって又背を丸めてぼりぼりと頭を掻く。

「いやだから特段何もしてないけど。」

「そうか。ならいい。謝って来なさい。」

「聞いてる?俺の話。」
何故に俺が謝らなきゃいけないのか。
そういうと親父はようやくくるりとこっちに向き直り、真面目な顔をした。


172:量産型うに ◆/pDb2FqpBw
07/06/07 23:40:10 weadKTHu

「・・あのな。雨音は良く怒るけど、怒った後に毎回悲しい気持ちになる芯の優しい子だ。
お前だって雨音が悲しい気持ちになっていたら嫌だろう。
理不尽だと思ったら謝らなくてもいいけれど、兎に角話しに行きなさい。」

・・・この始末だ。
いつもいつもだが親父はえこひいきじゃないかって位に雨音さんを可愛がる。

「・・・ま、謝りはしないけど、迎えに行くよ。今日は雨降りそうだし。」

そういうと親父は頷いた。
「それがいい。雨の夜に家で1人なんて可愛そうだ。連れて帰ってきなさい。
なんだったら向こうに泊めてもらってきてもいいが。」
冗談を。雨音さんは父親がいないし、母親は殆ど家に帰ってこないからいつも家にいるときは1人きりだ。
昔ならいざ知らず17にもなってそんな所に泊まれるか。
ただでさえ近所じゃ何言われてるかわからないのに。

「・・連れて帰ってくるよ。」
俺が立ち上がるとそういって親父はほっとしたような顔をしてうんうんと頷いた。

「うん。そうだな。そうするといいな。雨音も家に一人じゃ寂しいだろうからな。
雨音が落ち着いてから連れて帰ってくる方がいいな。うん。
あ、あれだ。雨音の好きなお菓子があっただろ。ふんわり名人とかいう。
あれ帰りに2人でスーパーで買って帰ってきなさい。お金渡すから。な。な。」

一段落。といった顔で、じゃあ雨音が帰ってくるまでお酒は控えておこうかな。うん。
などと1人ごちている。

雨音さんのいない晩酌が嫌だから、だろうがエロ親父が。





173:量産型うに ◆/pDb2FqpBw
07/06/07 23:41:18 weadKTHu

-----
感想ありがとうございます。
4話目は◆NVcIiajIygさんが落とす予定です。
そのうち。
(=゚ω゚)

174:名無しさん@ピンキー
07/06/07 23:54:42 AKSXWGPt
のはー、GJです!
イチ君が雨音さんの気持ちに気づくのはいつになるのだろうか……。
交代で投下してるから大変でしょうけれど、お二方とも頑張って下さい! とにかく期待してます!


175:名無しさん@ピンキー
07/06/08 00:35:32 ubIqQlD/
GJ!
二人で交互に書くなんて非常に面白いですねー
頑張ってください

176:名無しさん@ピンキー
07/06/08 06:45:43 0PIVAupJ
( ゚∀゚ )<ムッハー!
那智子キテターーー!とおもたらイチくんまで!
那智子の人待ち遠しかったよ那智子の人(ノ▽`)

177:名無しさん@ピンキー
07/06/08 10:55:12 +ZZt9M/z
>>173
なんという鈍感主人公!
俺もイチ父の気持ちがわかるかもしれん…

178:名無しさん@ピンキー
07/06/08 11:04:38 wMy0BL0F
うにさんGJ!
雨音さん直接登場していないのに存在感があるw

179:名無しさん@ピンキー
07/06/08 18:14:10 Oy0XjBLQ
>>160
GJ!!
>>173
GJ!!

180:夢?×現実? ◆EpNa70REtE
07/06/08 23:04:40 3R0/TNaq
――最近、よく夢を見る。夢ってのはその当人の精神状態とか…
まぁ何かよく分からないけどその人の状態によって見る夢もそれに関係してるい夢を見るらしい。
あ、ちなみに今言ったのは俺の知識じゃないぜ?テレビでたまたま見たのを抜粋して読み上げただけだ。
 夢ってたまに「あ、これ夢だ」って分かる時あるよな。あれは不思議なもので、夢って分かっててもなかなか起きられない。
だから誰かに起こしてもらうか、自力で頑張って起きるか。俺はどっちかって言うと誰かに起こしてもらう派だ。
目覚ましとか最近は凄い性能のがあるけど、所詮は機械だから俺の場合起きれりゃしない。
誰かに起こしてもらうのが一番手っ取り早い方法だと俺は考えて―――バコッ!!
 「痛って!」
痛みと共に俺は目覚めた。頭から入った痛みがつま先から飛び出していき、機能停止していた脳が正常に動き出す。
ただ、俺の脳のエンジンはどうも旧式らしく回転数が少ない。ま、簡単に言や馬鹿だってことなんだろうけど。
 「やっとお目覚めか横山…?いい身分だよなぁ、お前今回の中間平均点何点だったっけか?ん?」
起きて早々ガタイの良い筋肉質な男の顔が目に入る。こいつは……そういや保健の授業だったな。
しっかしいつ見ても顔でけぇな~、ほんとに人間なのか?原人の生き残りじゃないのか?
故にコイツには異名があった。本名は片山というのだがあまりにも原人…いや、現代ではゴリラに相当する形相なので
『ゴリ山』と呼ばれていた。何が異名なんだか分からんくだらない名前だ。誰か知らないが、正直センスに欠けると言うかなんと言うか…
まぁ、高校生の発想なんてそんなもんだろう。くだらなく単純だから面白いっていう利点もある。
コイツの顔など見たくも無く、関わりたくないのだが…運悪くコイツが俺の担任教師でもあるのでそうもいかなかった。
 「まぁまぁ先生、勉強だけがその人の価値を決めるものじゃないっしょ?人間性とか、そいつにしかない才能とか。
つまり!人を判断する要素は勉強以外でも――っ!」バコッ!!
再び頭から入った痛みがつま先へ向かい飛び出した。それと同時に、とめどない笑い声が俺の四方360度を埋め尽くした。



 「やっとお目覚めか横山…?いい身分だよなぁ」
「ちッ…うっせぇ、茶化すんじゃねーよ」
悪友の恭介だった。コイツは俺が奴に怒られる度に今みたいに似てないモノマネをしてくる。
似てないのでほんっとワザとらしくて腹に立つ野郎だ。一度ブン殴ってやろうか。
「まぁ、そうカッカすんなって。確かにアイツはムカつくよなぁ、言い方が嫌味でさ。
あんな図体してるくせにやる事は妙に女っぽいところなんかもう気持ち悪っちゃありゃしないっての!」
 よく喋る奴だ。こいつとは子供の時からの付き合いだから分かる。とにかく人の話をまーったくこれっぽっちも聞かない奴だ。
相手が誰であろうとお構いなし、とにかく喋って喋って喋り通す!何考えてんのか知らないけど、これがコイツ流の会話術らしい…。

181:夢?×現実? ◆EpNa70REtE
07/06/08 23:06:19 3R0/TNaq
「オイ、ちょっと黙れって。聞いてんのかよ、喋るのやめろって」
予想通り注意しても聞く耳持たずだ。それどころか「もうちょっとだけ!な?」などと訴えてくる。
何がもうちょっとだ、毎回そのもうちょっとが長ぇんだっての。ほんと、呆れるしかねーよ…
 「彼方彼方、おい聞けって。これから言うのが一番面白いんだよ。聞き逃してももう話してやんねーからよーく聞いとけよ?」
「別にいいよ、お前が黙ってくれれば何でも」
再び無視された。俺の言葉など聞かずに嬉しそうに楽しそうに愉快そうにトークを続けてきた。
「実はさ実はさ!ゴリ山の野郎3組の担任の白樫先生になんと!…恋をしちゃってるらしいんだよこれが!!」
「……」
くだらない話のネタが飛び出した。んなもんどーでもいいじゃんか、ゴリ山が白樫先生に恋しようが何しようが…興味ねーっての!
聞いて損した…すぐに頭のメモリーから情報を削除せねばならない。
こんなくだらない情報で俺の少ないメモリーを埋められちゃたまったもんじゃない。削除削除っと…
 「とまぁ馬鹿話はここまでで。本題だ。」
「何?本題?」
「そう、本題。お前に言わなきゃいけないことがあってな。」
「どうせ、またくだらない話なんだろ?」
すると恭介はニヤけていた表情を一転させ、真剣な表情でじっと俺の事を見ながら口を開いた。
 「伝言を頼まれたんだ。お前宛にな」
「は?伝言?」
「そう、お前にだ。その伝言なんだがな『ただいま』だってさ」
「…は?」
キョトンとしざるを得なかった。意味がまったく分からんうえに意味深だ。一体誰からの伝言だ?この学校の人?男?女?
様々な疑問がフワフワと宙に浮ている。だが聞いても恭介はただ『明日になりゃ分かる』としか言ってくれず
結局のところ、疑問を解決する為の答えは教えてはくれなかった。



 何度も何度も伝言とやらを復唱しながら俺は下校していた。今日は珍しく俺での一人での下校だ。
いつもは恭介と帰っていたのだが、最近どうも彼女が出来たらしい。
つい最近振られたばかりだったのだがものともせず猛アプローチしてゲットしたらしい。
俺の人生武勇伝がどうのこうのとこの前熱く語っていたのをふと思い出した。
 「――にしても、伝言で誰からなんだ…?ただいま、かぁ…まったく意味が分からん」
再び頭の中は伝言の事で一杯になった。
家に帰っても変わらずだった。飯を食ってる時も、風呂に入ってる時も、テレビを見ている時も、歯を磨いてる時も。
とにかく、常にその事が気になって仕方がなかったのだ。
 「明日になれば分かるかぁ…ほんとだろうな…?」
最後まで恭介の言葉を疑っていた。
だがそのうち睡魔に襲われ、俺は抵抗せずに睡魔に体を預けた。
疑問の答えは明日以降に持ち越しとなった。

182:夢?×現実? ◆EpNa70REtE
07/06/08 23:07:52 3R0/TNaq
いきなりの投下すみません。どうしても書いてみたかったので書きました…
駄文をお許しくださいORZ

183:名無しさん@ピンキー
07/06/08 23:40:48 2/2zUW5T
これが駄文かどうかは、ちゃんと続きを書き、その内容によって決まると思うぜ!!

だから遅くなっても良いから続きを書いてくれ! 待ってるから!!

184:名無しさん@ピンキー
07/06/09 02:40:24 wCxW3hwX
GJ!! 続きが気になる・・

185:夢?×現実? ◆EpNa70REtE
07/06/09 23:13:14 cGvSDIVY
  不思議な夢を見た。けど、どんなのだったか具体的には憶えていない。
『ただいま』と、誰かに言われた事だけが記憶に新しい。一体誰だったんだろう?
それも含めすべてが今日分かるはずだ。恭介の話が本当だったらの場合だけどな。
 不意に時計に目をやる。ぼんやりとしていた視界が段々と開けてきた。徐々に時計の針にピントが合い始める。
時計の針は俺が家を出る時間の10分後を指していた。毎日遅刻ギリギリにつくように家を出ていたので10分の遅れは確実な遅刻を意味していた。
 「やっば!!」
慌てて家を出る準備をする。テーブルの上の食パンを手探りで掴み、口に銜え勢い良く玄関を飛び出る。それはどこかのベタなドラマのような光景。
この後どこかでヒロインと正面衝突したりするんだよ。んで、何だかんだ色々あり、最終的には付き合ったり結婚したりすんだよな。この前の番組のオチはそうだったし。
しかしながら当然そんな事は起きるはずが無い。所詮テレビドラマ、フィクションな話だ。現実にはありえんありえん。
大体、同じ学校に向かってるのに正面衝突する意味が分からん。ああいうのってそういうところが手抜きだよなぁ。ま、どうでもいいんだけど。
 そうこうしてるうちに学校に着いた。予想通り誰とも衝突しなかった。遅刻1分前、家からダッシュした甲斐があったようだ。あんなに走ったのは何年ぶりだろうか?
とりあえず遅刻しなくてよかった…あと1回でも遅刻してたら生活指導を受けなければならないのだ。過去の遅刻回数は3回。4回でゲームオーバーだ。
 「もう遅刻出来ねーな…」
ボサボサの髪を少し整えてから教室に向かう。途中ゴリ山とすれ違い、軽く挨拶した。ゴリ山は『ほう、今日は遅刻じゃなかったんだな』と見下したように笑いながら言い放ち去って行った。
朝っぱらムカつく野郎だ。ほんとモチベーション下がるよ…
 教室は幾人もの会話や、携帯電話での音楽再生による音で埋め尽くされていた。いつもと同じ光景、かと思ったのだが一ついつもある光景が今日に限って見られない。
恭介がまだ来ていなかった。このクラスで一番のお喋り君の声が聞こえてこなかったのはこのためだった。
 「珍しいな…休みか?それとも遅刻か?」
自分の机に頬杖をつき窓の外をぼんやり眺めながら考えてみる。あいつに限って遅刻はないだろうし…昨日までピンピンしてたから休みってのも無いと思うし…
まぁ、別にいいか。あいつがいなけりゃちったぁ静かになんだろうし。
うんうんと頷き納得。その事を考えるのはもうやめにしよう。つーかゴリ山遅ぇな。もうとっくにHRの時間過ぎてんじゃねぇか、時間に人一倍うるさいあいつがねぇ…
こりゃ何かあったな。勝手な推測だけど。

186:夢?×現実? ◆EpNa70REtE
07/06/09 23:14:37 cGvSDIVY
「おはよう」
不意に声を掛けられた。遅い反応の後、声のする方へ顔を向ける。
 「凪か…」
声の主はクラスメートの冬月凪だった。凪は俺の反応が気に食わなかったのか、少し不機嫌そうな表情を浮かべている。
 「凪か…って、ちょっと酷いんじゃない?折角人が親切に挨拶したのに。普通、返すのが常識なんじゃない?」
「悪かったな非常識人間で」
冷たく言い返しまた窓の外へ顔を向ける。凪は顔、性格、スタイルが共に完璧な女の子だったので男子生徒に絶大な人気を誇っていた。
故に、凪と会話を交わすと周りの男子に冷たい目で見られたり闘争心剥き出しの表情で見られたりした。この前なんかトイレで手洗ってたら『調子に乗るなよ…?』とか言われた。
まったく、怖い怖い連中だ。だからあんまり凪とは話したくなかった。
凪が嫌いとかそういうわけじゃなくて、ただこれ以上凪と仲良しこよしをやってると面倒な事になりそうだったから。それはどうしても避けたかった。
 ――バタバタバタバタ…ヒュンヒュンヒュン…
ヘリコプターが低空で飛んでいる。それになんかこっちに向かってきている。
「ねぇ、何か近づいてきてない…?あのヘリコプター」
凪が不安気な声でヘリコプターを指差しながら言う。まったくもって同感だ。明らかにこちらへ向かってきている。
教室内の他の生徒もそれに気付き、窓へ押し寄せてきた。「何アレ…?」「オイオイ、何かのショーか?」などとざわつき始めた。
するとヘリは校庭のど真ん中に着陸した。ざわつきがさらに大きくなる。
ヘリから4,5人の黒い服を着た連中が現れた。そして一人、ロングの髪をなびかせたうちの学校の制服をきた女の子が黒い服を着た連中に囲まれながら姿を現した。
そのまま校舎へ向かってくる。校長を始めとする職員の連中が慌しくそれを出迎えている。ゴリ山の姿も伺える。
何やら少し会話を交わした後案内されるように校舎へ入っていく。校舎へ入ったところで姿が見なくなった。
それと同時に放送が入る。
 『生徒の皆さんは教室で待機していてください。くれぐれも教室内からは出ないように』
「…何だぁ?」
一体何が起きているのか理解出来ずにいた。それは俺だけでなく、全校生徒が同じ境遇であろう。
耳に入る大きなざわめきがウザったくて仕方が無かった。

187:夢?×現実? ◆EpNa70REtE
07/06/09 23:21:17 cGvSDIVY
書ききりたいと思います。途中でやーめたは嫌いなんで…
それまでの間、不服であると思いますがどうぞご了承ください!!


188:名無しさん@ピンキー
07/06/10 00:39:13 cLvI8Qn4
なんか読み辛い。

189:名無しさん@ピンキー
07/06/10 09:32:53 kz1L96h1
俺的には好きなシチュだな

190:名無しさん@ピンキー
07/06/10 17:27:38 T2ZQeD7W
頑張って書ききって下さい!!

191:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/06/12 01:34:08 MVsyyfoE
 これは、三人が紡ぐ物語。



   01 : Daily Life



 六月、続く雨に誰もが気を塞ぎがちになる季節。
 高校の教室の窓の外、しとしとと降り続ける雨をチラリと横目で一撫でして、塩崎忍は再び読みかけの本へと戻っていく。
「それ、面白いのか?」
 近くの席に座り、声をかけてきた男の名前は、九条正宗。まるでどこかの殿様か、あるいは名家のご子息かといった具合
だが、父親は平凡なサラリーマン、母親はスーパーでレジ打ちのパートをしてるという、ごくごく一般的な家庭の育ちだ。
 しかし、容姿は名前負けしない立派なものだった。背は人一倍高く、百八十近くあるだろう。その上に乗る顔も決して悪く
ない。絶世の美男子というわけではないが、どちらかといえばいい男に分類される方だ。
 ただいかんせん、愛想が無いことで有名だった。腹を抱えて笑っているところを誰も見たことがない、と噂されるほど、彼
は表情の変化に乏しいのだ。正宗本人にしてみれば、そんなことを言われるのは心外で、十分に笑っているのだが、なか
なか伝わっていないようだ。
「これ? 面白いよ。読む?」
 答えて顔を上げた少女、忍が本の表紙を彼に見せるが、正宗は小さく肩をすくめて首を横に振った。どうやら退屈過ぎた
から言ってみただけで、さして興味はなかったようだ。
 そ、とだけ言って、気を悪くした素振りも見せない彼女、塩崎忍は、スカートをはいていなければ男の子と見間違われかね
なかった。短く切った黒髪に高い背、スレンダーな体形。彼女が少女を主張するのは、スカートと、衣替えを終えたばかりの
半袖の制服から覗く、白くて細い腕ぐらいだ。
「随分、読み込んでるんだな」
「好きだからね」
 辛うじて背表紙のタイトルが読めるといった具合に、かなり読み込まれてボロボロになった本を、忍はパタンと閉じて膝に置く。
「どんな内容?」
「読めばわかるよ」
 視線を向けられて、正宗はさりげなく目をそらした。やはり読む気はないらしい。その仕草に小さく口元だけで笑って、忍は
教室の壁にかけてある時計に目をやった。
「遅いね」
 待ち合わせとして指定された時間は、放課後五時。場所は二人のクラス。なのに、当の本人は十分を過ぎても現われない。
「いつものことだろ」
 投げやりな声で正宗は言って、大きく伸びをする。確かにいつものことだったから、彼女も怒ったりはしない。本を持ってきた
のは、あらかじめこれを予想していたからだ。
「今日はどうする? どこに行こうか」
「雨が鬱陶しいから、遠くには行きたくない」
「じゃあコルトンなんてどう?」
 忍が挙げたのは、彼女の叔父が経営している喫茶店の名前だ。本当はコールド・ストーンという名前なのだが、コルトンという
名前で通っている。忍が行くと安くコーヒーを出してくれるので、正宗も一緒に行くことが多かった。
「そんなとこだな」
 と正宗も頷いて、ふと、
「明日って、何か授業が入れ替わってたよな。なんだっけか」
「数学が、木曜の英語に変わった。そういえば正宗、あてられてるけど、もう訳した?」
「そういやそんなのあったっけな。忍はもうやったのか?」
「やったけど、見せない。正宗の為にならないし」
「今日、奢るって言ったら?」
「……考えとく」
 どうせ見せることになるのだろう、と思いながら忍は自分の意思の弱さに苦笑する。そこでちゃんと断れていたら、カッコ良かった
のに、と。
 もっとも、そんな彼女を見て声を出さずに笑っているところを見ると、そもそも正宗は断られることなど毛頭考えていなかったのだ
ろうけれど。

192:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/06/12 01:35:31 MVsyyfoE
「テストの時、困っても知らないから」
「なんとかなるさ」
「それで本当になんとかするんだから、正宗は可愛くない」
「平均点ギリギリだけどな」
 他愛もない会話のやり取りの隙間からも、彼らの仲の良さが伺える。退屈な、それでいて楽しくないわけではない
時間を、忍も正宗も、決して嫌いではなかった。
「……ってか、あれじゃないか? 近付いてくるやつ」
 そうこうしているうちに遠くから聞こえてきた足音に、二人は扉に目を向けた。階段を駆け上がって近付いてくる
それは、確かに彼らが聞きなれたもの。
「来たね」
「だな」
 二人が目配せをすると同時に、教室の前で足音は止まり、ガラリと音を立てて扉が開いた。
「ごめんっ、お待たせっ」
「遅い」
 呆れ交りの忍の言葉に、戸口に立ったままの少女は片手を挙げて謝って見せる。正宗はわざとらしい溜息を
ついて、鞄を持って立ち上がった。
「で? 遅れた理由は?」
「んー、ちょっと、話し込んじゃって」
 彼の問いかけに返ってきたのは、はにかみの笑顔。
 一瞬にしてまさかという顔になる正宗と、呆れ果てたという顔の忍、二人の視線が交わる。
「もしかして、またか?」
「ういっ! 立花美幸、好きな人が出来ましたっ!」
 お茶目に敬礼をする彼女をよそに、二人は肩を落とす。
「あの台詞、これで何度目だ?」
「二年になってから、四回目」
「なに、暗い顔になってんのよ。雨だからって、気分まで暗くなってちゃ損だよっ」
 忍と正宗、二人が同時に吐いた大きな溜息にも気付かないのか、美幸は一人、テンションが高い。その彼女
の明るさにつられたのか、気がつくと雨はすでにやんでいて、雲の境目から光が差し込んでいたのだった。

 立花美幸は、気さくな少女だ。快活で裏表がなく、男女を問わずに友人の数は多い。忍があまり交友関係を
広げようとしないのとは対照的だ。
 対照的なのはそれだけではない。体つきも、女性をしっかりと主張している。忍がモデル体形ならば、美幸は
グラビアアイドルといったところか。
 そんな彼女なのだが、恋の話に関しては、忍と正宗、二人の前でしかしない。
「それでね、それでね、まぁ前からちょっとカッコイイな、とは思ってたんだけど、顔だけかなとも思ってたわけ。
それが今日、ゆっくり話してみたら、意外に真剣に色んなこと考えててさ。あ、なんかいいな、って思ったんだ。
サッカーも遊びじゃなくて、プロにはなれないかもしれないけれど、ずっと続けていきたいし、ゆくゆくはコーチに
なりたいんだって。で、今からそういう勉強もしてて……」

「それじゃ、また明日ねー」
「おう」
「……じゃあね」
 コルトンからの帰り道の途中で美幸と別れ、二人になった忍と正宗は、今日、何度目かわからない溜息をついた。
 喫茶店につくまでと、ついてから、そして店を出た後も、美幸はずっと『彼』のことを喋り続けていたのだ。彼らは
ただ、時々相槌を打つぐらいにしか口を挟むことが出来ず、延々と聞かされるだけだった。
「疲れた……」
 忍が漏らしたのは、心の叫び。ただただ疲れたとしか、言いようがなかったのだ。
「相変わらずだな、あいつは」
 同じように正宗も言うが、わずかに苦笑が交っているのは、それだけ耐性がついているからなのかもしれない。

 忍と正宗、そして美幸の三人は、幼稚園の頃からの幼馴染だ。住んでいるところが同じ町内と近かったので、
お互いの家を行き来していたものだった。そのまま小学校にあがり、中学校を経て、今は同じ高校に通っている。
 ただしそれは、正宗と美幸の二人だけの話。
 忍は家の都合で中学の三年間だけ、別の土地で過ごしていたのだ。すごく遠く、というわけでもなかったが、
中学生が自由に行き来出来るほどではなく、メールのやり取りはしつつも疎遠になっていた。
 それが高校の入試前後に、また家族そろってこちらに戻ってくることになったのだ。なんだかんだで再び、一緒の
高校に通うことになった時には、一番喜んでいたのが美幸だった。正宗も勿論、喜んでいたのだが、同時に、
「お前もこれからは一緒に聞いてもらうからな」
 と言ってもいた。覚悟しとけよ、とも
 その時には何のことかわからなかったのだが、今ならばよくわかる。

193:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/06/12 01:36:24 MVsyyfoE
「いつも思うんだけど」
 並んで歩く正宗を横目で見ながら、忍は疲れ切った声で尋ねる。
「よく耐えられるね」
「慣れたからな」
 肩をすくめる仕草をした彼の横顔には、諦観に似た笑みが張り付いている。確かにそうだろう。忍がこの街を
離れていた三年の間も、ずっと聞かされていたのだろうから。
「ああやって人に聞かせたくて仕方ないんだろ。自分が好きになった男が、どれぐらい素敵かってのを」
「悪気がないのはわかってるんだけどね」
 短い髪を軽くかきあげながら、忍は夕焼けの空に美幸の面影を重ねる。彼女が浮かべる無邪気な笑みは、
いつも眩しいから。
「にしても、簡単に人を好きになるな、って思う」
 話を聞くのが嫌だというわけではない。ただ、恋をするのが一年に一度とか、それぐらいのペースならばまだ
いい。そうではなくて、傍目から見ていると、美幸はあまりに簡単に人を好きになってしまうのだ。だからこそ、
たった二ヶ月ちょっとで四人目なのだ。
「そういうのは、許せないか?」
 だが、そう言っておりながらも忍は、正宗の問いかけにすぐに頷けない。何故なら、
「あいつはいつでも、真剣だぞ。困ったことに」
「……そうなんだよね」
 他の女子がそうだったなら、あまり友人付き合いはしたくないと彼女は思う。ただ美幸は、簡単に人を好きに
なる癖に、その一つ一つに真剣なのだ。気軽な気持ちで恋をしているわけではないというのが感じられるから、
美幸のことを嫌いになれないのだ。
 ただ。
「なんていうか、厄介な子と幼馴染になっちゃったな、って感じ」
「まったくだな」
 それでもさすがに、幼馴染でなければきっと、見限っていただろうとも思う。まだ小さい頃の彼女を知っている
から、嘘を付いていないと感じられる。それだけ、子供の頃からの絆は深い。忍はそう考えていた。同じことは
正宗にも言えるだろう。
「じゃあ、ここで」
「ん。また明日」
 彼の家の前で、別れを告げた後、ふと忍は振り向く。
「そういえばさ」
「ん?」
「美幸の恋がうまくいったら、どうする?」
 夕焼けを背に、彼女は問いかける。正宗からは影になって見えていないだろう。それでも、忍は表情を消す。
 想いを悟られたくはないと、そう思って。

 それに対して、彼もまた、表情を消して。
 一瞬、そっと視線をそらした後。

「おめでとう。って、それだけの話だろ」
 何事もなかったかのように、いつもの顔に戻って、そう言う。

「ん。そっか」
 正宗に合わせるように、忍もいつもの顔で頷いた。胸の奥はわずかにくすぶっていたけれど、隠せない程では
なかったから。

194:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/06/12 01:37:41 MVsyyfoE
 それから、一週間後。

「はぁぁぁぁ」
 深い、深い溜息を付いているのは、立花美幸。この世の終わりが来た、と言わんばかりの表情。だが忍と正宗
にとっては、見慣れた光景でもある。
 彼女がこんな風に落ち込んでいる理由は簡単だ。
 フラれた。それだけのこと。
「今度は、何て言われたの?」
「好きな人がいるんだけど、って相談されてさ……なんでよりによって、私にするかな……」
 テーブルに顎を乗せて、落ち込んでいく美幸に、二人は苦笑と同情の交った視線を向ける。どちらかといえば、
苦笑の割合の方が大きいか。
「相変わらずだね」
「いつものことさ」

 彼女は人を好きになる数は多いのに、実はまだ誰とも付き合ったことがない。ただの一人も。
 美幸は気さくな少女で、男女問わずに友人が多い。だが、それはもう一つの意味を持つ。
 彼女は、その性格ゆえにか、男子から恋愛対象というよりは、『女友達』として認識されてしまうのだ。その為、
恋愛相談をしやすいと思われているらしい。そうしていつも、彼女の恋は実ることなく散ってしまう。
 もう一つ、美幸は自分の恋愛を忍と正宗以外には話さない。だから、二人を除いた彼女の友人は皆、美幸は
誰も好きになったことがないと思い込んでいる。恐らくこれも、彼女に恋人が出来ない遠因だろうと、忍は推測
している。

「懲りないよね、美幸は」
 美幸がノロノロとトイレに向かったのを見送ってからの忍の言葉に、正宗は重々しく頷く。
「まぁそれでも、男を見る目はあるんじゃないか。女なら誰でもいい、って奴には惚れないんだから」
「確かに、それは評価出来るかな」
 美幸が好きになる男に共通するのは、真摯な男ということ。だからこそ、自分の想いを優先して、美幸に振り
向きもしないのだけれど。
「いつかベクトルが向かいあう人に、巡り合えるのかね」
「数打ちゃ……ってわけにはいかないだろうからな、こういうのは」
 コーヒーカップで表情を隠す正宗を、忍はチラリと盗み見る。

 もしも。
 もしも、いつか。美幸のベクトルと、その想い人のベクトルがピタリと向かいあった時。
 彼のベクトルは、どうなるのだろう。

 そして私のベクトルは。



「落ち込んでても、仕方なーーいっ!!」
 忍の物思いは、トイレから戻ってきた美幸の大声に破られた。一体何があったのかわからないが、すっかり
元気になっていつものテンションに戻っている。
「忍、正宗っ。カラオケ行こっ、カラオケっ。歌って忘れる、これに限るっ!!」
「はいはい、わかったよ」
「仕方がないな」
 苦笑をしながら、二人は鞄を取った。
 立ち直りが早いのは、いいことだ。それでこそ自分達の幼馴染、立花美幸だ、と。

 そうして幼馴染三人は、カラオケへと連れ立っていく。一人の明るい少女を先頭に。
 少年はその後ろについて、彼女の背を見ていた。普段はぶっきらぼうな彼の瞳には、暖かな優しさが浮かんで
いる。彼女の後を歩く、それだけでいいと思っているかのように。
 だが彼は気付かなかった。自分の背を、もう一人の少女が複雑な目で眺めていることには。


 これは、三人が紡ぐ物語。
 描き出される模様を、彼も彼女らも、まだ知らない。知ることもない。

195:三人を書いた人  ◆vq1Y7O/amI
07/06/12 01:41:40 MVsyyfoE
突然の投下、失礼しました。

自分が感じる幼馴染の魅力をどのように描いていけばいいのか。悩みどころです。
難しいですね。

長編というよりは短編をちょくちょく投下していきたいと思っています。
今後ともどうかよろしくお願いいたしますm(_ _)m

196:名無しさん@ピンキー
07/06/12 03:20:35 UoZBqAqp
>>195
GJ!
一方通行でほんのり切ない香りが漂っていい感じです
これがそのうち三角関係に変わるのかどうか、続きに期待が止まらない

幼馴染の魅力をどう表現するかというのは難しいけど
微妙な距離感が読んでて伝わってくるこういう作品は好物です。
自分の信じる道を行くんだ!

197:名無しさん@ピンキー
07/06/12 05:53:19 55uKZ7Dt
こ、これは…かなり期待できるんじゃないか?
こういう距離感、空気感で魅せる文体は好きだな。
職人さん、GJです!

198:三人を書いた人  ◆vq1Y7O/amI
07/06/13 22:39:48 qFtAFgo/
>191-195
の続きですー。

199:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/06/13 22:40:34 qFtAFgo/
 雨の調べは寂しい。時に。



   02 : Rainy Tunes




「あれ、もう帰るんだ?」
 鞄に教科書を詰め込む正宗は、かけられた声に顔を上げた。扉から覗いているのは、部活の途中なのだろう、
Tシャツにハーフパンツ、そして長い栗色の髪をポニーテールに結った少女。
 クラスメイトの宮村彩夏だった。
「でも珍しいね、九条君が一人なんて」
「……どういう意味だよ」
 悪意はないのだろうが、気になる言葉を投げかけてくる彼女に視線を返すが、
「別に深い意味はないって。たださ、九条君っていつも、忍か美幸ちゃんのどっちかと一緒にいるイメージがある
から」
 正宗の席からほんの二つほど隣にある自分の机に、軽く腰掛けて彩夏は笑う。彼女は、彼の愛想の無い見かけ
と態度に、物怖じしない数少ない女子の一人だ。
「そんなことか」
 正宗はそう言って、肩をすくめて見せる。
「でも実際、そうでしょ? よく一緒に帰ってるし」
 楽しそうな、それでいて探るような目で見つめてくる彩夏に対して、正宗はしかし、動揺することなく、
「そりゃ帰り道が一緒だからな。忍なんて、ほんの目と鼻の先に住んでるし」
「ふぅん?」
 まだ満足しなさそうな彩夏に、鞄を肩にかついでから彼は向き直る。
「昔っから一緒なんだ。時間が合うんだったら、今さら別々に帰る方がおかしいだろ」
「うーん、つまんない」
 正宗の言葉に対して、返ってきたのはひどく身勝手な感想だった。なんだそれは、と、さすがに呆れながらも、
目で彼女に先を促す。
「だってさ、照れるか恥ずかしがる九条君を見てみたかったし」
「なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだよ」
「子供の時から一緒だけど、年をとるにつれて一緒にいるのが恥ずかしくなって、わざと冷たくする……とかさ」
 大きな身振り手振りを交えた彩夏の熱演を、彼は冷たく、アホか、と切り捨てる。
「少女マンガの読みすぎだ」
「でも実際、そういうことだってあると思うけど」
「ガキじゃあるまいし。仲のいい奴を減らすことないだろ」
「へぇ。人の目なんか気にしないって? それ、なんかちょっとカッコいいよ」
 からかう彩夏に、もう付き合っていられないとばかりに正宗は戸口へと向かう。さすがにそれ以上、追及してくる
ことはなかったが、クスクスと彩夏は声をあげて笑い、片手をひょいと軽く挙げた。
「じゃあね。また明日」
「ああ、お疲れ」

200:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/06/13 22:41:56 qFtAFgo/
 校門を出て歩き出すのとほぼ同時に、ポツポツと雫が彼の頭を濡らし始めた。見上げると、青い空に唐突に
黒い雲が広がっていく。
 舌打ちをする間もなく、墨色の天が泣き出した。
 天気予報、あてにならないな。思いながら彼は、鞄の中から折り畳み傘を取り出して開く。出掛けに母が持って
いけと渡してくれたものだ。何故か、正宗の母の勘は天気に関してだけはよく当たる。今回もそれに助けられたわ
けだが、帰ってきた時の彼女の得意そうな態度を思い出すと、なんとなく渋い顔になってしまう。だから言ったでしょ、
とばかりに、調子に乗って恩を売ってくるのだから。
 とはいえ、それでも濡れるのよりはマシだと云えた。そしてふと、思う。あの二人はどうしているだろうか、と。
 確かに、彩夏が指摘したように、正宗が一人で帰るのは珍しい。大体いつも、幼馴染の二人の少女のどちらか、
あるいは両方と一緒だから。今日一人なのは、本当にたまたまなのだ。
 美幸はクラスメイトと買い物に行くとメールが来ていた。忍は調べたいものがあるから、と図書室に向かった。
 広い水溜りを避けながら、正宗はゆっくりと歩く。急ぐことはない。ただ、のんびりと。こうして帰るのも、たまには
悪くはないか。そんなことを考えながら。

 ふと、彩夏の言葉が脳裏を過ぎる。
『忍か美幸ちゃんのどっちかと一緒にいるイメージがあるから』
 あの時は頷いて肯定したが、改めて考えてみると少しだけ不思議な気分だった。
 幼馴染だから、一緒にいるのが当たり前だ。そう正宗は心の中で呟く。
『人の目なんか気にしないって?』
 必要がないからだ。例えそれでからかわれたところで、さっきのように聞き流せばいいだけ。相手にするから悪い。
そう思う。
 噂が無かったわけではない。中学の時はもっとひどかった。忍がおらず、美幸と二人だけだったからだ。人の口と
妄想は、止められない。
 だが彼女は、そんな噂を気にも止めようとしなかった。正宗も同じだった。やがて噂が静まった理由は、彼らがいつも
二人きりだったわけではなかったからだろう。途中まで二人と一緒に帰る友人も、数多くいたから。
 高校になっても、同じだった。勘繰る連中がいなかったわけではないが、美幸の天真爛漫、正宗の無愛想、そして
忍のクールな態度は、火種を消すのに十分だった。
 三人。一緒。
 その関係を心地良いと、彼は感じている。

 だが。

 スッ、と正宗の目が細まった。鋭い瞳は、しかし何物も捉えていない。ただ心の内側を覗いている。

 だが一方で。
 想いは、確かにある。
 陽炎のように揺らめいているけれど、そこには人の影がある。


「美幸?」
 角を曲がった瞬間に目に飛び込んできたのは、たった今まで思っていた少女の姿。それと同時に、彼の口から名前
が漏れる。

201:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/06/13 22:43:11 qFtAFgo/
「あ、正宗。よっす」
 パン屋の軒先で、長い髪から水をしたたらせながら雨宿りをしていた美幸は、彼の声に携帯から顔を上げてニコリ
と笑った。
「何やってんだ?」
「やー、カラオケ行こうと思ったら雨が降ってきてさ。今日はやめとくか、って別れてから走って戻ってきたんだけど」
 トホホ、と言いたそうな顔で美幸は空を見上げた。
「結構、強くなってきたでしょ? もうビショ濡れだし疲れたしで、ここで休んでるの」
 確かに、彼女の言う通りだった。半袖の白のシャツはピッタリと肌に張り付いているし、ローファーは浸水がひどく、
紺のハイソックスを絞ったら滝のように水が出てくるだろう。
「大変だな」
 いつもよりしっかりと美幸の顔を見て話すのは、油断をすれば、透けて見えるピンクのブラに目が行ってしまうから
だ。かなりの努力が必要だったが、それでもなんとか正宗は見ないようにしていた。出来るだけ。
「朝のテレビで、今日は晴れって言ってたのになー。正宗は用意いいね」
「またうちのお袋だよ。持ってけ、って言われてな」
「あー、やっぱり。正宗のお母さん、ホントに天気をよく当てるよね。元・天気予報のお姉さん、だったりしない?」
「テレビとかでか? 冗談じゃない、想像出来ねぇよ、そんなの」
 軽口を言いながら、ふと、気付く。彼女がアーケードから出て来ないことに。
 何の気はなしに、誘う。
「ほら。送ってってやるから、入れよ」
「ん? ああ、いいよ、別に」
 メールでも来たのか、携帯から顔を上げずに美幸は応えた。

 断られたという事実が胸の奥におさまるまで、少しの時間が必要だった。

 拒否されるなどと、まるで思い浮かべていなかったことを、改めて知る。腹の底に、何か重いものが生れて、心を
圧迫する。

「見られたら困る奴でもいるのか?」
 冗談めかして問いかけるのが、精一杯だった。
 自分だけだったのかもしれない。そんな考えが頭をよぎる。仲が良すぎるとか、付き合ってるとか。そんな誤解など、
気にしていなかったのは自分だけで、美幸は実は気にしていたのか、と。
 もしかしたら、好きな人が出来て、その男に見られたくないのかもしれない。相合傘なんて、カップルがするような
ことだから。
 寒い、と正宗の体が訴える。それは決して、雨に濡れたからだけではなかった。

「え?……ああ、そんなんじゃないよ」
 明るく言って、美幸は笑いながら携帯を閉じた。そして、
「ちょっと用事が出来て、家に帰る前に寄るとこが出来たの。だからね」
 途端に、彼は脱力する。考えすぎだったのか、ただの。思った瞬間、自分がおかしな表情をしてたのではないか、
そんな不安が襲ってきた。それを誤魔化す為に口を開くが、
「なら……」



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