嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35 - 暇つぶし2ch800:名無しさん@ピンキー
07/06/07 00:50:03 URDcIW0H
>>793
王子可愛いよ王子!!
もうどっちがヒロインかわかんね、良い意味で。

801:名無しさん@ピンキー
07/06/07 00:55:23 ROBSgYhl
待ってる作品が投下されるとほっとするなぁ。GJ!
クチナいい感じですね。
次回も楽しみにしてます。

802:名無しさん@ピンキー
07/06/07 01:35:22 aRAdVx5S
>>>793
つまんねーーーーーーーーーーー,もう投下するな


803:名無しさん@ピンキー
07/06/07 01:38:51 HnZg+aHe
>>802
ハゲシクドウイ
マジ投下止めてほしい



804:名無しさん@ピンキー
07/06/07 01:40:42 5onEZ5aX
>>803
禿同
投下止めてくれ



805:名無しさん@ピンキー
07/06/07 01:42:11 UWJFPFzb
>>804
九十九投下しろって話だよNE☆

806:名無しさん@ピンキー
07/06/07 01:43:55 rBDZk7a0
>>805
戦姫は普通につまらん


807:名無しさん@ピンキー
07/06/07 01:45:49 l//9jBHY
>>806
いや、面白いよ




読んだことないけど信者として擁護しておく


808:名無しさん@ピンキー
07/06/07 02:07:05 URDcIW0H
皆分かってると思うが、短時間で連続して沸くIDの違う荒らしは同一人物だからな
【パターン例】

まず「信者乙or作者自演乙orつまんね」等々
       ↓
ここで大体、「禿同」が出てくる
       ↓
んで反応すると「自演UZEEEEEE」になってグダグダ

最近はバリエーションが増えたのか、語尾にNEを付ける時もある。
もうパターン化されてるので、極力スルーして欲しい。


809:名無しさん@ピンキー
07/06/07 02:09:04 tKqSVA7A
>>808
避難所、逝こうぜ

810:名無しさん@ピンキー
07/06/07 02:34:52 RvRc27uO
とりあえず簡単に殺ったら勿体ないと思ってたので王子ナイス
妃決定後もドロドロするんだよね?

811:名無しさん@ピンキー
07/06/07 05:50:23 1HT8cAKU
これで新キャラが虐殺しまくらない限り、ハーレムエンドですね。
正妻決定トーナメント,負けたら妾。

でも丹下左膳やZ武になったりするのは忍びないなぁ。

812:名無しさん@ピンキー
07/06/07 06:13:36 xB04ZObx
>>808
ソースは?

813:名無しさん@ピンキー
07/06/07 07:11:04 KeuaSN2u
王子、男かな。また中途半端な偽善じゃね
中国の刑じゃないが、ひどい不具にされて殺されない、死ねないってのもかなり残酷だぞ
逆に、負けたほうがわざと致命傷まで負えば、王子を道づれにできる罠
王子の馬鹿行動で、貴族の陰謀で選手暗殺、王子自殺、全員後追い自殺、なんてオチになったら目も当てられん

814:名無しさん@ピンキー
07/06/07 07:13:27 5vQaQULJ
GJ!
いやっほ-い!!誰も死なずにすむ可能性が出てきたぞい!!!

815:名無しさん@ピンキー
07/06/07 07:49:19 gQDUKU3r
元々は宗主国に対するご機嫌とりで、娯楽として大会を開かざるえないという話だったのに
殺さず、では宗主国の貴族の興奮度は、本国で行われている剣闘以下じゃないのか
奴隷少女は簡単に相手をぶち殺してるワケで
なんという本末転倒ぶり

816:名無しさん@ピンキー
07/06/07 09:58:55 xastFCtR
だがそれがいい!(ニヤッ

817:名無しさん@ピンキー
07/06/07 14:03:30 RvRc27uO
妃を決める大会で殺し合いってのもなんか違う気がする

竜騎士が悲参加なら殺し合いもありだったかもしれんが(他の参加者の身分的に)
あの竜騎士が参加してて殺し合いはちょっと不味いと思った。もし死んだりしたら外交問題になりそうなくらいの
身分ぽいしな

818:名無しさん@ピンキー
07/06/07 14:18:05 r+ux9g58
・展開に口出しするな
・嫌いな作品なら見るな。飛ばせ


819:名無しさん@ピンキー
07/06/07 14:28:07 EdBSdIVe
文盲だらけだな

820:名無しさん@ピンキー
07/06/07 14:40:45 mAPzhB5W
今のところ、
こうなったらいいな、
こうなるんじゃね?
くらいだからいーんでないの?

こうしろよ! これはダメだろ!
とか直接的に言ってきたら問題だが。

取り敢えず猫様GJ!

821:名無しさん@ピンキー
07/06/07 14:55:52 yjR1JI9g
>>815
>>817
色々伏線が張ってあるかもしれないし、これからの展開もある。
悲観するのはまだ早いぜ!

822:名無しさん@ピンキー
07/06/07 17:24:31 fhe8gBOt
自分でもつまんないと思うけど、プロット投下するわ

男が13歳の時に、友達だと思っていた女に逆レイプされて中出してしまい、
女が妊娠→女の子が生まれ、数年後無理やり結婚
さらに数年後、男と結婚するために生んだ女の子が異常なほどのファザコンで男にベッタリ
で女が実の娘に嫉妬、だが女の子も男の妻である女が妬ましく、疎ましい存在だった





823:名無しさん@ピンキー
07/06/07 17:31:19 URDcIW0H
>>822
もろにツボなんだが・・・
当然書いてくれるよな?

824:名無しさん@ピンキー
07/06/07 17:35:14 Mxp5sBgb
>>822
俺はいいと思うけど
あとはおまえさんの腕次第だ

825:名無しさん@ピンキー
07/06/07 17:37:39 Mxp5sBgb
あ、プロットだけで書くわけじゃないのか…orz

826:名無しさん@ピンキー
07/06/07 18:00:19 wm7juMbn
>>822
13歳は速いなw

なんか若年結婚とか周りの目とかそういう描写が難しそう

827:名無しさん@ピンキー
07/06/07 18:08:48 URDcIW0H
>>826
6歳で妊娠、7歳で出産するラノベがあるんだぜ?

828:名無しさん@ピンキー
07/06/07 19:08:18 mAPzhB5W
是非とも教えて欲しい。
タイトルプリーズ

829:名無しさん@ピンキー
07/06/07 19:09:23 mhAU2GOi
>>827
現実なら100%死ぬだろそれ。
きのこっても手足両目が無い超未熟児か。


830:名無しさん@ピンキー
07/06/07 19:09:46 Dg17bkz0
ダディフェイスか?

831:名無しさん@ピンキー
07/06/07 19:12:09 h8LKgIbp
>>829
何で現実の話が??


てか、ヒロインは宇宙人の血を引いた超人ですから。

832:名無しさん@ピンキー
07/06/07 19:13:08 Dg17bkz0
>>829
別に問題はない。
URLリンク(ja.wikipedia.org)

833:名無しさん@ピンキー
07/06/07 19:31:58 yjR1JI9g
ダディフェイスは美貴が主人公依存症だからな…
母と娘の修羅場は良い物だ

834:名無しさん@ピンキー
07/06/07 19:41:22 yjR1JI9g
つまり何が言いたいかというとだ
>>822よ、分かるな?

835:名無しさん@ピンキー
07/06/07 19:48:00 ebDRzV3s
まあ、他の誰かが書くのもOKだよなw

836:名無しさん@ピンキー
07/06/07 21:57:22 RvRc27uO
>>822
娘と妻の年齢が凄く近くて
娘が超ファザコン、妻も当然夫のこと超大好きっての凄いツボだ

837:名無しさん@ピンキー
07/06/07 22:26:44 fhe8gBOt
よかった…正直叩かれるかなぁ…って思いながら書いたから
けど俺文才能力0なんだ…ごめんorz


838:名無しさん@ピンキー
07/06/07 22:41:05 kMVEIHwx
叩かれるのは日本語がおかしい人だけです
誰かと言わないけど・・。
さて、次スレタイトルを決めようぜ

ドロボウ猫、首折れるでいいよ

839:名無しさん@ピンキー
07/06/07 23:00:55 URDcIW0H
立てた。

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その36
スレリンク(eroparo板)

840:名無しさん@ピンキー
07/06/07 23:01:01 xFaWZSze
とりあえず次もナンバーかな?
37番だけは語呂合わせするっきゃないでしょうけど(笑)

841:名無しさん@ピンキー
07/06/07 23:12:07 kMVEIHwx
あちらにAAを張ってきた・・
少し愛情を込めた台詞に10分ぐらい考えたわけだが・・

842:名無しさん@ピンキー
07/06/07 23:21:02 xastFCtR
>>841
「キメェww」ってレスしようと思ったんだけどここは嫉妬スレだったんだよね。ふー、危うく刺されるところだった。(・ω・´;)
GJ!!

843:名無しさん@ピンキー
07/06/07 23:28:48 Mxp5sBgb
ypじゃないのかYO!って思った

844:名無しさん@ピンキー
07/06/08 00:02:13 WKqYbDdy


845:名無しさん@ピンキー
07/06/08 00:07:50 QvSiHaGj
URLリンク(uproda11.2ch-library.com)
感謝の死るし
パスは目欄

846:名無しさん@ピンキー
07/06/08 00:09:36 QvSiHaGj
誤爆・・・orz

847:名無しさん@ピンキー
07/06/08 00:18:54 C8L4795n
[反村幼児] 小雪の季節


( ´,_ゝ`)プッ

848: ◆Xj/0bp81B.
07/06/08 03:18:19 /SPf4Foo

投下します

849:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/08 03:21:07 /SPf4Foo

夜道は暗い。街灯の光も、所々でその明かりを失い、不気味な静けさと共に闇が翔を深みへと誘っている。西の空に浮かぶ下弦の月が、
瞬く無数の星と、闇を吸い込み青さを持った雲を従えて銀色の光を放っていた。夜空の月は、
想像以上に明るく闇の中で一人気をはいている。しかしそれでも影をひくには至らず、辺りは闇のモヤに隠され、
かろうじて自分の周りだけが見えるだけだった。
夏の間は元気に鳴いていた蝉の声もいつの間にか途絶え、時折鈴虫の悲しげな調べを聞く事がある。
秋の冷たい夜気が半袖から顔を出す素肌を撫で、左腕に鳥肌を残していく。夏服ではもう肌寒い季節、時間になった、と思う。
夏は終わったのだ。それなのに、右腕はウールにつつまれたような暖かい。その暖かさは、間違いなく人肌のものだった。
翔は、ギョロリと瞳を回し右腕を温める澄香を見る。白く透き通る澄香の横顔が、雪灯りのように闇の中で映えている。
彼女は翔の腕に体を絡ませ、まるで寄り添うように共に歩いていた。それが昼間なら、恥ずかしくて絶対に許さなかっただろう。
夜だから、誰もいないから許しているのだ。と、言うのは理由の半分で、残りの半分は、あのとき見た澄香の淀んだ瞳が、
瞼の裏に残っていたからである。恐怖が体を縛りつけ、振り払う事が出来ないのだ。
不意に、澄香の顔がこちらに向き、彼女を眺めていた翔の視線と視線がぶつかった。翔の瞳を真っ直ぐ見据え、ニィと瞳を細める澄香。
心の中を覗かれているような気がして、翔は慌てて視線をそらした。垣間見た彼女の瞳には、既に部屋で見た狂気は消え去っていた。
それでもあの時の恐怖の火種は、まだ心の底でくすぶっている。腕に体を絡ませ、時折甘えるように頭を擦りつけてくる彼女からは、
既にあの時のような恐怖は感じない。しかし、心と体があの恐怖をしっかりと覚えていて、ありとあらゆる神経が逆立ち、
彼女の異変をすぐにでも感じとろうとしているのだ。いつ再び澄香に異常が訪れるのか、そんな不安ばかりが翔の中で渦を巻いている。


850:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/08 03:23:17 /SPf4Foo

不安でざらついた足音が、コンクリートを叩き続ける。闇の向こうの繁華街で、パトカーが何かを追い回す音が聞こえた。ジワリと、
季節外れの蝉の鳴き声が聞こえたような気がした。
澄香の家から一キロほど歩くと、翔の家がある。辺りはいわゆる高級住宅街で、ひっそりとした静けさと共に、
どこか高貴な雰囲気をかもし出していた。どこもかしこも大きく立派な家ばかりだが、その中でも我が家は広い、と翔は自覚している。
さすがにテレビに出てくるような豪邸とは言えないが、この住宅街の平均より明らかに広く大きい。しかし、夜の戸張に覆われ、
自ら瞬く事のないその大家は、まるで星空の中の空白のようにただただ不気味なだけだ。
「センパイのお家って大きいんですね」
澄香が、どこか感心したように呟いた。その声に、どこか羨望を孕んでいるような気がして、翔はせせら笑う。
大きいから、うらやましい?
それは錯覚もいいとこだ。大きいから、寂しいのだ。
「ここまで来れば、いいだろう? 腕、離してくれないか?」
翔は、その寂しさを隠すように言った。
澄香は、翔の腕を力を込めてギュッと抱き、無言で何かを考えているようだったが、やがて、パッといきなり腕をほどいた。
もっとぐずると思っていたので、いささか肩透かしを食った気分だった。ようやく解放された右腕には、まだ澄香の熱が残っていて、
冷たい夜気をはねかえしジンジンとうずいている。
向き直り、頭を下げる澄香。彼女の漆黒を宿した短い髪が、宙に舞った。
「それじゃあ、センパイ。私は帰ります。また明日、学校で」
そう言うと、澄香は素早く身を翻し、まるで何かに追われるような早足で、夜の闇に紛れていく。
ゆっくりと溶けるように消えていく澄香の後ろ姿。不意に翔は何かとてつもない胸騒ぎを覚えた。
このまま、澄香を行かしてはいけない気がした。
「ちょ、ちょっと待って」
気が付くと、澄香を呼び止めていた。淀みなく歩いていた澄香の足がピタリと静止する。
「あ、その……」
呼び止めておいて、何一つ言葉を用意してなかった自分に気付く。


851:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/08 03:29:50 /SPf4Foo

何を言おうとしていたのだろう。自分の感情を表す言葉が見つからない。いやそれ以前に、既に確かに感じた胸騒ぎも消え去り、
本当に自分があのような感覚を感じたかさえ分からなくなっていた。もしかしたら、本当は気のせいだったのかもしれない。
そんな気さえする。
しかし、それでも何かを言わねばならない。闇の中に佇む澄香は、もの言わず翔の言葉を待っているのだ。
そして、翔がようやく捻だした言葉は、
「……あのさ、由美さんに謝っとけよ」
深い闇に、静けさが戻る。
闇の向こうで、澄香が小さく頷いた気がした。そして、澄香は今度こそ、闇の中に消えていく。
違う。こんな事を言いたかったわけではないのだ。もっと別の、澄香を、そして自分の不安を取り除ける何かを言いたかった。それなのに、その何かを言い表す言葉が見付けられない自分が、たまらなく歯がゆい。
気が付くと、彼女の姿が、闇に飲み込まれて完全に消えていた。ふと我に返り、翔は無理矢理今までの思いを断ち切る。わからない事を考えたり、まして後悔しても仕方ないのだ。
そして翔は小さな門を抜け、敷地の中に入った。玄関先の、パンジーの花瓶の下に隠された鍵を取り出す。
平日の午前中に来訪する家政婦が、鍵をここに隠していくのだ。もちろん翔もそれとは別の鍵を持っているが、不用心なので、
帰宅の度に回収する。そして、朝は登校前に花瓶の下に忍ばせておくのだ。それは翔が小学生の頃から、暗黙のルールとなっていた。
鍵をあけ、翔がノブに手をかけた瞬間。
─ゾクリと、
戦慄が背中を駆け抜けた。何かが、背後にいる。
まるで獲物を狙う肉食獣のような湿った視線が、背中に絡み付いていいる。
思わず悲鳴をあげそうになったが、何とか飲み込み、恐る恐る振り返る。
何もない。
そこには、闇を纏った細い道だけが真っ直ぐ延びていた。
気のせいなのだろうか。
そのとき頭によぎったのは、なぜか、やけに嬉しそうに嗤った澄香だった。

852: ◆Xj/0bp81B.
07/06/08 03:32:16 /SPf4Foo
投下完了です。

853:名無しさん@ピンキー
07/06/08 05:59:25 HkKVlwZF
GJ!
あー鍵の場所みつかっちゃったららめぇw

854:名無しさん@ピンキー
07/06/08 09:39:45 GkQdF++i
これは恐ろしい澄香のなく頃に・・・早く続きが読みたいw

855:名無しさん@ピンキー
07/06/08 10:31:45 VUwifLZC
とうとう家屋侵入フラグが立ったか…
俺もこんな彼女が欲しいあれなんか人の気配が

856: ◆WIhkQEicx2
07/06/08 20:56:43 AvuK7atT
投下するよー。

857:彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2
07/06/08 20:59:54 AvuK7atT
「ふんふんふふんふん、んっふんっふ♪」
陽気に鼻歌を奏でながら、人のあんまり歩いていない廊下を歩く。
ここはこの大学病院の中でも重症の人しか入れられてない区画らしくて、
元々私のように元気に歩き回るような人はいないから。
夕暮れが差し込みだした寂しげな廊下で、ただただ私の鼻歌だけが響く。
時々すれ違う看護士さんがジト目で睨んでくる。すいませんうるさくて。
でもヒトって楽しい時には自然とメロディがこぼれちゃうんです。

「今会いにいくからね!かっちゃん!」
私は(気持ち小声で)宣言してから、ちょうどよくこの階に着いてたエレベーターに乗る。

かっちゃん、というのは、私が目覚めた時に最初に会った若い先生のこと。
北克己(きたかつみ)、という名前なので、私が勝手にかっちゃんと呼んでる。
目下、私が一番気にしている存在。
優しいとかイケメンとか若いのに准教授とかイケメンとか目覚めてから一番最初にあった人とか
病院という実は狭い生活範囲の中で一番頼れる人とかイケメンとか、
色々理由を挙げようと思えば挙げられるけど、でも、そもそも会ったときからどこかで会ったことがあるような、
そこにいてくれるだけで安心感を与えてくれる人だった。
ううん。あたしはあの人にあったことがある。そういう確信がある。
あ、そうそう、気になるといえば、あの後「何で私を黒って呼んだんですか?」って聞いてみても、
かっちゃんは顔を引きつらせて笑うだけで答えてはくれなかった。
気になるけど、もしも患者取り違えとかがあったとしても、
私は元気なわけだし、困ってるのは取り違えられた『黒さん』の方だから、別にいいかとも思ってる。
あ、でも、もし子宮とかそういうの取っ払われてたりしたら。
「そのときは、かっちゃんに責任とってもらおう!」
と、叫んだところでチーンという音がして、私を乗せた箱が開いた。
准教授室まで、軽やかなステップで進んだ。こないだまで病人だったのに、何でこんなに体軽いんだろう?
ふとした疑問が頭をよぎりつつも、目指す部屋の扉を躊躇なく開いた。

「やっほー!かっちゃん!遊びに来た…」
全部言い切る前に固まっちゃったのは、部屋にかっちゃんだけでなく別の女がいたから。
別に見てはいけないシーンというわけじゃないけど、いる人間が問題だった。
「水崎さん、せめてノックをしてから入ってください。常識というものがないんですか?」
嫌な匂いと聞きたくない人の声。あたしは気が滅入りそうになった。
女は目を吊り上げて私を叱る。ただでさえ細いっちゅーのに、線になっちゃってるよ?
私を叱るこの気の短い女は、看護婦の1人。名前は…なんだっけ?忘れた。ってか覚える気なかった。


858:彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2
07/06/08 21:02:54 AvuK7atT
かっちゃんの横に座って何かを話してた風なんで、多分仕事の話をしてたんだろう。
「まぁまぁ、堂島くん。水崎さんがそれだけ元気になったってことでもあるし。」
「先生は甘すぎます!患者は神様でも何でもないんですから!」
かっちゃんがかばってくれた。優しいなぁ、と思ってると、
堂島はかっちゃんの膝に手をかけて詰め寄り、非難を始めた。
あんたそれ、間違いなくかっちゃんに詰め寄る方が目的でしょ。
「ちょ、ちょっと堂島くん、近いよ。」
「黙って聞いてください、先生。私は貴方に対して言いたいことがいっぱいあるんです。
そもそも、私は先生のことをですね」
堂島は何か不穏なことを言いかけてる。
ピーンと来たあたしは、ツカツカと二人の方に近寄って、かっちゃんの腕を手にとって、噛んだ。
「あいたたたたたた!?み、水崎さん!?」
「な!なにやってんのよあんたーーーーー!!!」
かっちゃんは突然のことに慌て、堂島は顔を真っ赤にして立ち上がる。
「何やってんのって?見たら分かるでしょ。かっちゃんを噛んでるの。」
とはいえない。何せ、口ふさがってるからね。どっかの三刀流の剣士みたいなマネはできません。
「水崎さん、は、離してくれないかな?痛いんだけど。」
ごめんね、かっちゃん。
二人の会話を中断させたくて、堂島に近寄られてちょっと顔を赤くしてたかっちゃんにもちょっぴり腹が立ってて、
何よりあたしは堂島の体に口をつけるなんてまっぴらごめんだし、ってわけでかっちゃんを噛んだの。
それに今は、あたしは貴方を噛んだままでいたいから。
「先生どいて!鎮静剤投与します!」
堂島はいつの間にか何かのビンを手にして、投げる寸前というモーションに入ってた。
確かに、『投与』って投げて与えるって書くけどさ、ホントに投げちゃまずいんじゃない?
「ど、堂島くん!!君も落ち着くんだ!とりあえず鎮静剤の使い方違うから!!!」
「いいえ、これが一番良く効く使い方なんです!!」
さらに慌てふためくかっちゃんと、殺気を漂わせる堂島と、
慌てたかっちゃんもかわいくていいな、と思う私。
部屋は正に混沌、って感じで、私はちょっと楽しくなっていた。

「おう先生!!邪魔するぜー!!」

大騒ぎになっていた部屋を、モーゼのように切り開いたのは、私の良く知っている無遠慮で野太い声だった。
ノックもなしに扉を開いたその声の男が、ずいっと入ってくる。
間違えるはずもない、この男は。

「ヤ○ザーーーーー!?こ、この病院に何をしに来た!?」
混乱極まった堂島が、鎮静剤を投与する対象を部屋に入ってきた男に変えて、投げて与えようとする。
「ちょっとまった堂島くん!この人は○クザじゃなくて、」
「私のお父さん。」
かっちゃんの言葉に続けて、私が真実を伝えた。
堂島は、投げモーションのまま、ピシッと固まった。


859:彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2
07/06/08 21:05:20 AvuK7atT


「がっはっは!まぁしょうがねぇかなぁ!俺ぁこういう風貌だからよぉ!!」
笑いながら、父さんは自分の膝をバンバンと叩く。
流石に人の父親をヤのつく職業の人と間違えたことは申し訳なかったのか、堂島はそそくさと部屋を出て行った。
なので、私、かっちゃん、父さんの三人で、准教授室で椅子に座って話し合うことになった。
私も仕方ないと思うんだけどね?プラスチック工場で長年結構真面目に働いてきた父さんは、
一度機械に指を挟まれて、小指がなかったりするしさ。髭も濃いし顔もいかついし。
服も、一体どこで買ってくるのかいつも不思議な紫のスーツだし。
院内のパジャマの私や普通の白衣のかっちゃんは病院にマッチしてるけど、
父さんは明らかにミスマッチ。よくここに来るまでに通報されなかったなー。
「申し訳ありません、うちの看護士がとんだ間違いを。」
「いいんだよ、先生!この病院には感謝してるからよぉ!
なんたって、なぁ!お前がこうして、起きてるんだもんな!!」
言いながら、父さんは私の方を向いて、がばっと体を抱く。その太い腕で。
「たまきーーーーーーー!!!おとうさん、ずーっと心配してたんだぞーーー!!」
ゆさゆさと体を揺らしながら父さんは叫ぶ。ちょっと泣き声になってる?
でもそれも、しょうがないよね。なにせ、私は。
「一年も目を覚まさねぇからよぉ…俺ぁもう…ぐすっ、お前は二度と起き上がらねぇんじゃないかとよ…!!」
そう、一年間も、ずーっと意識不明だったのだから。


「まったく、信じられねぇぜ!!つい1時間前にお前が起きた、って聞いた時は、心臓が止まるほど驚いた。
こうしてお前の声がもう一度聞けるなんて、神様ってやつぁいるもんだなぁ!」
私の状態についてかっちゃんが説明した後も、相変わらず父さんは感動しながら喋り続けていた。
それだけ私を心配し続けてくれたことが分かるから、嫌じゃないけど、ちょっとウザいかな。
それより、ちょっと気になることがあった。つい1時間前?私がちゃんと起きたのは3日前だったと思うんだけど?
軽い疑問をかっちゃんに訪ねてみると、
「ああそれはね、君が安定して覚醒していられるかどうかは分からなかったから。
お父さんをぬか喜びさせるわけにはいかないだろう?」
と説明してくれた。私がちょっとでも目を覚ましたら、普通すぐに家族に連絡するもんなんじゃないのかな?
でもまぁ、かっちゃんが言うんだから仕方ないよね、と、あたしは納得した。
「どうでもいいぜそんなこたぁ。とにかくお前が目を覚ましてるってのが一番だからな!」
がっはっは、と父さんが笑う。うん、そうだよね。

「だがよ、俺もな、一つだけ気になることがあるんだけどよ。」
父さんが、指の欠けた手を自分の顎にかけて考え込むポーズをする。
「一年も目を覚まさなかった環が目を覚ましたってことはよ。
先生はもしかして、環のクローンを作って治してくれた、ってことかい?」



860:彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2
07/06/08 21:08:05 AvuK7atT
クローン。
父さんが突然出したその言葉に、何故か私の心臓は大きく反応した。
どくんどくんと高鳴っている。クローン?
「俺ぁ聞いたんだよ。どうしても治らない怪我や病気を治すには、
そいつのクローンを作って患者に移植すりゃあいい、ってよ。
別に俺ぁどういう方法で環が治ろうがかまわねぇんだが、先生、そこんとこどうなんだ?」
父さんを見ていた私は、すぐ横にいるかっちゃんの方にゆっくりと顔を向ける。
そうなの、かっちゃん?
私が固唾を飲んで見守っていると、かっちゃんは断言した。
「違います。」
と。


患者のクローンを作って、失った部分や使えなくなった臓器を移植する。
誰でも考えついて、拒否反応も起こらない、でも人としてどうかと思うこの方法は、
今では結構当たり前に使われている、らしい。
らしいというのは、噂には聞いても表には出てこないから。
どっかのマッドな教授が実行して発表した後、できるんだということははっきりしたけど、
そんなこと流石に国が許すわけないから、誰も「私も同じことをしました」とは言い出さなかった。
でも、できるとなったらしちゃうのが人のサガ。
お金を積んでクローンを作ろうとする人たちは、多いらしい。
私も、飛び出してきた車に轢かれて頭を打つ、というすごく普通の事故で眠ったままになる前に、
そういう方法があるんだということくらいは知っていた。
だから、私のクローンがいても、そこまでびっくりはしないと、思う。
「確かに環さんは脳にダメージを負っていて、普通の治療では治る見込みはかなり薄い患者さんでした。
でも、こうして目覚めているのは環さん自身の力です。低いといっても可能性はゼロじゃありませんでした。」
かっちゃんはクローンという方法を使ったことを強く否定する。
「いいんだぜ、先生。使ったとしてもよ。大事なのはここに環がいることだ。
あ、先生、もしや俺のナリから病院を脅すつもりじゃないかと思ってねぇだろうな?
やめてくれよ、先生。俺ぁ穏やかな人間なんだから。」
だっはっは、と笑い続ける父さん。
父さん、穏やかに思われたいならファッションセンスを変える必要はありそうだよ?
「いえ、お父さん。本当にやってないんです。
方法とか人道的なことはこの際否定しません。実際に行っている例は僕も知ってますからね。
でも環さん、水崎さんの場合ではもう一つ問題があります。
はっきり言いましょう。お金です。」
身も蓋もないことを、かっちゃんは真顔で語りだす。
「クローン作りには莫大な費用がかかります。
卵子提供者と保管管理、母体になってくれる人を探す、
その人に何度も施術を行い、さらにクローンが育つまでの費用を負担する。
それを隠しておくための場所。見つかれば補助金がなくなるという危険もある。
大学病院もイメージほど安泰なわけではないんです。
お金はかかる、名誉も得られない、それどころか世間や上から非難される。
そんな方法を取るためには、それ相応の代価が必要です。
大変失礼ですが、水崎さん。あなたの資産状況では、それだけのお金は。」
「払えない、わなぁ。」
ははは、と心なしか力がなくなった笑いで、お父さんは答えた。

861:彼女の目はつぶら 第2話 ◆WIhkQEicx2
07/06/08 21:11:06 AvuK7atT
「俺もよ、本当はそういう手段を取ろうかと思ったんだぜ?
だから、身を粉にしてこの一年働いてきた。環を治すためなら、何だってしようと思ったよ。」
グッとくること、突然言い出さないでよ、父さん。私まで泣きそうになるでしょ?
「でもま、足りなかった、っつーかなんつーか。
他の病院の医者に聞いたら、こんなはした金じゃ無理だって言われちまった!だはは!」
ガクッとくることを言い出さないでよ、父さん。感動した私が馬鹿みたいでしょ?
あはは、とかっちゃんも付き合いで笑う。いいよ、かっちゃん。この人ほっといても。
「あ、じゃあよぉじゃあよぉ!」
父さんが何かを閃いたー!って顔してる。あ、この顔は。
「親切なのは今だけで、俺あてに馬鹿高い請求書が送られてくるとか!」
「送りません。流石にそんな危ない商売するほどには困ってません。」
あーあ、悪ノリしだしちゃった。じゃあ、私ものっちゃおう、っと。
はいはーい!と小学一年生ばりに手を挙げて、指名される前にずばりと言った。
「じゃあ、私があんまりかわいいから治してソープに売るつもりだとか!」
「相場は詳しくは知らないが、多分そういうところに売った代価よりクローン製作費の方が高いだろうね。」
ちぇっ、かわいい、ってところに反応してよぉ。
「あれだろ、環をクローンの実験台にして学会に発表してとか!」
「クローン技術自体も、それを人に移植する実験も、方法としては既に確立されたものです。
今更僕が症例を挙げようと、何の論文も書けませんよ。」
「私は何か特殊な抗体とかそういうの持ってて培養したかった!」
「それは多分、君が目覚めなくても行えるね。」
「じゃあ昔俺が先生の命の危機を救ったことがあって、その恩を感じてってぇのはどうよ!?」
「恐れ入りますが、私と水崎さんは環さんが眠ってしまってからの知り合いです。」
「だよなぁ、先生みたいな白い巨塔に住んでる人と俺とじゃ、接点ねぇよなぁ。」
父さん、それある意味合ってるけどなんか違うよ?
呆れ顔になりだすかっちゃんと、楽しくなってきた私たち。
「じゃあ、じゃあ…」
必死で考える私。真実はいつもひとつ。よーし、これだ!
「もしかして、もしかするとだよ?かっちゃんにはすごく好きな人がいました。
でもその人は病気や怪我で体がほとんどなくなっちゃって…
その人にどうしても生きてもらいたかったかっちゃんは、残った部分を私に移植したとか?」
「…ロマンチックな妄想、と言えばいいのかな。良くそんなこと思いつくね?
残念だけど、そんなことしようとしても拒否反応が起こって死んでしまうだけだよ。
特に脳なんてデリケートなところに、まったく違う遺伝子を持った他の人の脳を移植するなんてことは、不可能だ。」

その後もあれこれと考えたけど、かっちゃんの鉄壁を崩すことはできなかった。
ま、元々かっちゃんを疑う理由もないんだけどね?気になったのは、私の胸の鼓動だけ。
ただそれだけだから。
「納得してもらえましたか?
とにかく、娘さん、環さんは、自分の力で起き上がったんです。」
机に手を置いて、かっちゃんが静かに結論づけた。
納得した父さんは、静かに席を離れ…なかった。立ち上がると、がしっとかっちゃんの左腕を掴む。
「な、何でしょう?水崎さん。」
「難しい話は、まぁどうでもいいのよ先生。とにかく俺ぁうれしいんだ!いっちょ飲みに行こうぜ、先生!」
二カッと笑う父さん。
今までの私なら父さんがはしゃぐのを止めてただろうけど、
その日のあたしは、かっちゃんと一緒に楽しく騒ぎたかった。
立ち上がって、あたしもかっちゃんの右腕を掴む。
「な!?環さん!?」
「いこ!かっちゃん!」
「がっはっは、環ぃ、お前分かるようになったなぁ!!」
親子の強み、息のあったテンポで、かっちゃんを抱えたままずんずん歩く。
「僕にはまだ仕事が。何より環さんは患者で!もしもーし!!??」
細かいことはどうでもいいじゃない。楽しもうよぉ。かっちゃん。


862: ◆WIhkQEicx2
07/06/08 21:12:30 AvuK7atT
第二話ここまで。
あ、すいません、うちでは理系の人からのツッコミは受け取ることになってませんので。
ええ、ええ。今回は目を瞑っていただくということで。お願いします。

863:名無しさん@ピンキー
07/06/08 22:32:11 iPz1aWrh
GJ!
そういえば医者が恋人の脳を別人に移植しちゃうエロゲあったなぁ

864:名無しさん@ピンキー
07/06/08 22:41:34 iPz1aWrh
すまん。sage忘れてた;

865:名無しさん@ピンキー
07/06/09 16:26:55 OBas37aj
本当に人が少なくなってしまったね・・

866:名無しさん@ピンキー
07/06/09 17:05:37 /a9VvnOZ
人が増えると変なのも増える。何事も程々がよろしい。

867:名無しさん@ピンキー
07/06/09 19:23:32 oWhdrM33
              /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:.、:.:| \\
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     ,∠     \ヽl:. / :|:.:.:.:.:|:.:.|:.:.:.:.l≧|、∧:.:.:.:.:|:.:.|:.:.:|:斗:.:.:.:.:.|:.:l\\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
   /    \   V|/ |:.:.:.:|:.:.|:.:.:. 「`{テ:圷、:.:.:.| x|セ行「\:.:.:.ト、!:.:.:\\:.:.:.:.:.:.:.:.:. \
  /  ヽ. 、 |   | l   ヘ:.:.:.:.|:∧:.:.:.:| ゞ‐┘ ヘ: |.  辷.リ /:\| `ー‐ \\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
  |  \ Y/  |_/´ ̄ ̄ \ ハ| \∧    , ヽ    /:./ノ´ ̄ ̄ ̄` \〉:.:.:.:.:.:.:.:.:.
  ヘ\ヽ Y_/              /:.:∧    ,___     /:./::::::::::::::::::::::::::::::::::::\:.:.:.:.:.:.:.
   ` ー‐'′               |:.:/ /\  `ー┘   /:./:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\:.:.:.:
                        |/ 〈::::::::/ヽ、_ .. イ:|/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ̄ ̄
                       /  ∨/ / /ヽ  / /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
                        |   ヘ|  | .|::::/ / /::::::x-――‐‐/
                        |     |  |/::::| / /::::::/       ,
                       |     l  |::::::;/ /|:::::/     /



嫉妬パンチーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

868:名無しさん@ピンキー
07/06/09 19:51:19 dyNdB8BN
>>867
何のキャラだっけ?

869:名無しさん@ピンキー
07/06/09 20:20:16 ksWXR62K
バキ

870:名無しさん@ピンキー
07/06/09 20:40:54 wprbocse
バキって女性の登場人物もいるのか

871:名無しさん@ピンキー
07/06/09 21:11:07 NwBKY7Nv
てか・・賑やかさがなくってしまったのはどうしてだろうか・・
昔は神の投稿でGJな毎日だったのに

872:名無しさん@ピンキー
07/06/09 21:15:46 dyNdB8BN
>>869
へ~バキってこういう系の女の子も出るんだ

873:名無しさん@ピンキー
07/06/09 21:31:27 ksWXR62K
賑やかだからアホの標的にされたんだろ
そもそもこのスレには波があんだよ
投稿が集中する→アホがのたうち回って静かになる→落ち着くと投稿が再開される→アホが(ry
毎回毎回同じパターンなんだからいちいち落ち込み時の度に過疎だ過疎だ騒ぐなよ新参者

874:名無しさん@ピンキー
07/06/09 21:57:53 ULsJ+OYe
>>873の兄貴っぷりに嫉妬

875:名無しさん@ピンキー
07/06/09 23:18:58 ltRcedti
>>867ってなのはSSのシグナムだべ?

876:名無しさん@ピンキー
07/06/09 23:29:41 t4zA0U+5
みんな分かってるさそんなこと……

877:名無しさん@ピンキー
07/06/10 00:43:54 CwnpWsEu
どうでもいいが、転帰予報の続きが読みたい・・・


878:名無しさん@ピンキー
07/06/10 01:52:10 VecKtG56
俺も転帰予報待ってる
そして雨の音も待ってる




でも僕我慢出来るよ!職人さんだって生活あるんだから!
出来る世!

879:名無しさん@ピンキー
07/06/10 02:03:45 ZRW5YcsL
モチベーションは永久に続くものではなく消費されるものだから
大事なのはそれを再び盛り上げる「リ・モチベーション」だって誰かがこないだ言ってたぜ。

880:名無しさん@ピンキー
07/06/10 02:20:11 VecKtG56
モチベーションなのかモチュベーションなのか
シミュレーションなのかシュミレーションなのか
俺にはわからない
教えてくれ五飛

881: ◆Xj/0bp81B.
07/06/10 02:49:54 MtUrZP1q
投下します。

882:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/10 02:54:15 MtUrZP1q

とんでもなくついていなく、最悪な一日がようやく終わる。そう安堵の溜め息を漏らしつつ、翔は力なく家の門を開けた。まだ太陽は高く、
空も青い。しかし、翔はすでにボロボロで、すぐにでも倒れてしまいそうだった。いや、さっさとベッドに倒れこみたかった。
ともかく、今日はとことん厄日だ、改めてそう思う。今までの人生を振り返ってみても、ここまで疲れた記憶はない。
それほどの疲労を呼び込む不幸が、雪崩のように翔を飲み込んだのだ。
元々嫌な予感はしていた。昨日、自分が学校でやらかした事が、どういった困難を呼び込むかくらいは想像できていたし、
覚悟はしていたつもりだった。しかし現実は想像をはるかに超えていて、覚悟という名の心の壁はいともあっさりと決壊し、
裸にされた一番柔らかい精神をジワジワといたぶられた結果、肉体的と言うより精神的な疲労でグロッキーになってしまったのである。
今朝、教室につくや否や、いきなり好奇の目に晒された。昨日の中野とのやりとりが、事実を無視して一人歩きし、
様々な憶測がクラスの中で飛び交っていた。浮気したとか、だから別れるとか、果てには中野をもてあそんだ悪者にまでされていた。
もちろんそれら全ては事実無根であり、翔は必死で噂を否定しようとしたのだが、間が悪いことに中野が欠席したため、
余計に高まったクラスの好奇心を沈静化させる事は出来なかった。
たっぷりの非難と好奇と、主に男子の嫉妬に晒されつつ迎えたホームルームはさらに地獄だった。担任はテストを放ったらかしにして、
しかも無断で早退した翔にたいそうおかんむりで、朝っぱらから怒鳴り声をあげた。もう大学進学は絶望だとか、
こんな馬鹿ははじめて見たとか、昨日巨人が負けたのはお前のせいだとか、ここぞとばかりに関係のない事まで持ち出し、
翔の精神をガリガリ削る。担任は加虐的嗜好を瞳に宿し、そこに快感を見い出したのか、一時間目の授業まで全て説教で潰しやがった。
そしてようやく辿りついた休み時間。こってりと絞られ、とってもへろへろな翔は、力なく机に突っ伏していた。
相変わらずクラスは翔の噂で持ちきりだが、もう翔にはそれを否定する力は残っていなかった。そして、抵抗する力を削がれた晒し者の地獄は、
一日中続いたのだった。


883:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/10 02:56:45 MtUrZP1q

思い返すだけで、重い疲労に押し潰された肺から、溜め息ばかりが漏れる。せめて中野がいてくれれば、噂を沈静化出来たかもしれない、
と思うと、今日に限って欠席しやがった中野に恨めしい気持ちが沸々と煮えたぎる。もっとも、
今日学校に来れなかった中野の心情も分からないでもないが。
そのとき、ふと、今日は澄香の姿を見掛けなかった事を思い出した。教室の噂を拾い聞きしたかぎり、澄香も今日は欠席らしい。
あくまでそれは噂なのだが、いつもならお昼を誘いにくるはずなのに、今日は来なかった所から考えると、
まんざら噂だけではないようだ。昨日、夜風に当たり過ぎて風邪でもひいたのだろうか。少し心配だ。後で電話してみよう。
そんな事を考えながら、残された僅かな力を振り絞り、玄関先の花瓶を持ち上げる。家政婦が残した家の鍵が、
ここに隠されているはずなのだ。が、持ち上げた花瓶の下に、あるべきはずの鍵はなかった。
その事にいささか不審に思いもしたが、それは珍しいことにしても、初めてというわけではなく、
首を傾げどそれ以外に何ら感じる事はなかった。家に来る家政婦は、まれにそういったミスを犯し、鍵を持って帰ってしまうのだ。もっとも、
それで家に入れないわけではないので、翔はすぐに思い直し、鞄から鍵を取り出して、玄関のドアを開けた。
後ろ手で鍵を閉め、玄関の上がり端に鞄を放り投げると、翔はゾンビのような足取りで階段を登っていく。
二階の廊下の突き当たりに翔の部屋がある。その途中にある部屋は全て空き部屋となっていて、また一階も同じように空き室が多く、
そのため翔のこの家での行動範囲は、自分の部屋と台所、リビング、後はトイレと風呂くらいで、他の部屋にはほとんど入る事はない。
それでも時々垣間見るそれらの空き室は、奇妙なくらい整然としていて、埃ひとつない。有能な家政婦が、
全ての部屋を平等に掃除してくれているのである。しかしそれは、悪く言うと画一的であり、生活の匂いのない部屋まで整然としているのは、
より今の状況が目の前につきつけられるような気がして寂しさを助長させている。一番散らかっている翔の部屋が、妙に落ち着き居心地がいいのも、
その辺りに理由があるのかもしれない。



884:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/10 03:01:55 MtUrZP1q

細い廊下、その突き当たりにある自室の前まで歩を進める。そこにはのっぺりと黙りこんだドアが佇んでいる。部屋と自分を遮るそのドアのノブを回し、
静かにそれを押した。
眼前に、見慣れた自室の光景が飛込んできた。
少しだけ、気が抜けて疲れがドッと体に押し寄せる。危うくその場にへたりこみそうになったが、そこは気合いで乗り切る。
ベッドは、すぐそこだ。
部屋の中に足を踏み入れる。その時だった。いきなり体に戦慄が走った。

─何かが、おかしい。

見慣れているはずの自分の部屋に妙な違和感を感じる。それは、心の隅に宿った小さな感情。しかし、その感情はすぐに翔の心全てを飲み込んでいく。
心臓が、早鐘をうつ。
何だ? 何がおかしいんだろう。
改めて部屋を見渡す。
今朝見た時と同じ机、同じベッド、同じ本棚、同じテーブル。何も変わっていない。そのとき、ふとテーブルの上に目が止まった。出した覚えはない、
しかしまた、出していないという確信もない幾冊かのアルバムが、そこに散乱しているのだ。
違和感の正体はこれだろうか。
一番上のアルバムを取り上げる。それは中学時代の、卒業アルバムだった。
何気無く、ページを開く。
一ページ。目次と校歌。
一枚、ページをめくる。校長の顔写真と、訓辞。
ページをめくる。
その瞬間、全身の全ての毛が逆立った。体の中を脈脈と流れる血液が、その温度を失い体が一気に冷え込んだ。寒くて、体が震え、
全身に鳥肌が立った。違和感の正体は、間違いなくこれだった。
全校生徒の集合写真。そこから、思い出の詰まったアルバムが狂いだしていた。
その集合写真には、顔が、ないのだ。
真っ黒なインクで、顔が塗り潰されている。そのページからは、鼻をつくような濃厚なインクの匂いが漂っていた。
魂が揺さぶられたかのような驚愕。しかしそれと同時に、おかしな事が一つ頭にモヤを張る。塗り潰されそこねた顔が、いくつもあるのだ。何故だろう、と首を傾げる。時間がなかったのか、単純に塗り潰しそこねたのか、はたまたわざと塗り潰さなかったのか。



885:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/10 03:04:09 MtUrZP1q

その答えを求めて、もう一枚ページをめくる。
教員の集合写真。そこで、塗り潰されていない顔がにある共通点が分かった。
塗り潰されているのは、全部女性なのだ。
慌てて、ページをめくる。
次のページも、その次のページも女性の顔だけが、全て塗り潰されている。一人一人の個人写真も、修学旅行や部活、
数ある行事の写真も全て同じように、女性の顔だけが執拗に黒く塗り潰されている。
たくさんの思い出が、真っ黒なインクと共に狂気に塗り潰されている気がした。
恐怖が、少しづつ心を蝕み始める。悪戯にしては度が過ぎているし、そこに何か執念のようなものを感じたのだ。
一体誰が、そして何のためにこんな事をやったのだろう。それは分からない。だが、犯人が狂っている事だけは分かる。犯人は、おかしいのだ。
開いたページから、インクの匂いと共に、その狂気までもが匂い立つような気がして、翔は思わずアルバムを閉じた。
打ち上げ花火のように、大きな音を立てて閉じられたアルバム。その後に残る静寂と、寂廖も花火のようだった。その物寂しさに紛れ込んで、
突然津波のように巨大な恐怖が翔の心を飲み込んだ。静けさが、怖い。恐怖に足が震えて、立っている事が出来なくなった。翔はアルバムを胸に抱き、その場にしゃがみこんだ。
体が、狂ったようにガクガクと震える。
怖い。
まさか、他のアルバムも同じようになっているのか。
怖い怖い。
しかし、確認する勇気はなかった。
怖い怖い怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

─そのとき、

「センパイ……」
背中から、消え入りそうな静かな声が聞こえた。
心臓が、止まりそうになった。
「どうしたんですか? センパイ」
澄香の声だった。
振り返る。
そこには、制服姿の澄香が立っていた。


886:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/06/10 03:06:07 MtUrZP1q

恐怖が、安堵へと急速に変化する。その地獄から天国の心境の変化に、不覚にも涙腺が緩み、涙が溢れ落ちそうになった。寂しい時、
悲しい時、そして怖い時。誰かが、特に親しい人が近くにいてくれるのは、とても心強いと改めて認識した。
しかし、それでも涙が溢れ落ちなかったのは、ある事に気付いてしまったからだ。途端に、その安堵も、まるでジェットコースターのように、
別の感情に変化する。体に寒気が走った。
─何故、澄香がここにいる?
学校を休んだのではないのか。
いや、そもそも澄香はどうやって家に入ったのだ?
確かに鍵は閉められていたし、翔もまた閉めたはずだ。
「……どうして、ここにいるんだ……?」 翔は、警戒に身を固めて言った。
すると、澄香はうんざりしたように、
「どうしてって、センパイに会いたいからに決まってるじゃないですか。当たり前の事を、」
「違うっ!! 俺が聞きたいのは、澄香がどうやってこの家に─」
─そのとき、ふいに彼女の右手に握られているものが目に入った。それは、家政婦が持って帰ってしまったはずの家の合鍵だった。


887: ◆Xj/0bp81B.
07/06/10 03:09:20 MtUrZP1q

ついにストー化ー。嫉妬と言うよりヤンデレか?と、時々自分で疑問を持ちますが、投下完了です。
なんか最近書いててもの凄く楽しい。

888:名無しさん@ピンキー
07/06/10 04:16:40 wjf9Y9lp
GJ!
マジックで塗りつぶし>実に素晴らしいw
書いててもの凄く楽しい>とても良い傾向ですw
そして定期的な投下をしてくれるのはとてもありがたいです
今後も頑張ってくだされぃ!!


889:名無しさん@ピンキー
07/06/10 10:51:19 j+p0tkal
フラグ消化に余念のないいい子でつね。澄香は。






ヤセ我慢だよ!
超怖えよ!
次回も楽しみにしてます。頑張ってください!

890:名無しさん@ピンキー
07/06/10 11:08:51 M/G/jiJg
てか、次は空鍋か?

891:名無しさん@ピンキー
07/06/10 16:22:23 7WLchAEk
凄く静かだな・・・・・

892:名無しさん@ピンキー
07/06/10 19:04:52 mF3577/9
スクールデイズがアニメ化するわけだが、


エロパロ版にスクールデイズスレが誕生するのか?

893:名無しさん@ピンキー
07/06/10 20:43:02 81cZfHl+
言葉様レイプENDとかないよな?な!?な!?な!?ないよな!?!?

894:名無しさん@ピンキー
07/06/10 21:04:20 u5Dl+PuG
>>893
多分ない…放送Cに引っかかる。


が、しかし 歩道橋首切り、腹部刺殺、電車人身事故。
この中の何れかが選ばれるかも…

895:名無しさん@ピンキー
07/06/10 21:44:28 j+p0tkal
ヘルダイブはダメ?

896:ントだ。なんでこんな簡単な小テストで15点しかとれないのよ」  知るか、と一男は言いたかった。  だが、自分の学力を否応無く思い知らせるテスト用紙を見ていると、落胆で何も言う気にならなかった。  月曜日、一男たちのクラスでは国語の小テストが行われた。  問題数は20。配点は一問につき5点。  一男が15点しかとれなかったということは、3問しか正解できなかったということだ。  一男は国語と社会と英語が不得手だったのだ。  一男たちの学校では、来週から期末テストが始まる。  一学期の期末テストで赤点をとろうものなら、夏休みの間、補習を受けることになる。  夏休みに旅行へ出かけるつもりでいた一男は、当然補習を受けたくなかった。  そのために、一男なりに勉強したつもりではいた。  しかし結果はこの通り、一男には補習が必要だと証明することにしかならなかった。 「これはもう、補習確定ね。ご愁傷様」 「ああ、ううう。……自転車で県内一周する計画が、こんなことで、こんなことでぇ……」 「諦めなさい。行けなくなって良かったじゃない。  あんた1人じゃ、トラブルに巻き込まれてそこで人生終わっちゃうわよ」 「くう……」  幼馴染の組子の言葉を聞いても、一男は諦める気にならなかった。  一男は先日自転車を購入したばかり。  しかも、一男がずっと以前から欲しかったロードバイクを買ったのだ。  ロードバイクに乗ってどこまでも、走れるところまで走ろう、と考えていた。  そのためだけに一男は努力し、体の脂肪を削り、筋肉をつけてきたのだ。  簡単に諦められるわけがない。 「頼む、組子!」 「なに?」 「勉強を教えてくれ!」



897:姉妹家庭教師ネタ
07/07/09 17:54:51 YrZ9gadi
 深く頭を下げる一男を見て、組子は顔をしかめた。

「なんのために?」
「俺を助けるためにだ!」
「どうして私が?」
「お前しかいない!」
「他の友達に頼めばいいじゃない」
「どいつもこいつも勉強じゃ頼り甲斐のない奴ばかりなんだ!
 クラスで5番以内に入るお前なら、俺を補習の魔の手から救うことができるはずだ!」

 もう一度、深く頭を下げる一男。
 組子は腕を組んで、考えるように天井を見上げ、数秒してから顔を下ろした。

「……やっぱり嫌」
「何故だ!? 幼馴染の俺がこれだけ頼んでいるというのに!」
「私だって暇じゃないのよ。だいたい勉強教えるって言っても、私教えるの上手くないし」
「それでも構わない、お前が教えてくれたら、俺は必ず満点をとれる。
 俺にはお前が必要なんだ! 俺にはお前しかいない! 組子、お前さえいてくれればいいんだ!」
「…………なあっ?!」

 一男の言葉を聞いて、組子は驚いた。
 どれほど驚いたのかというと、顔を茹蛸のように紅くするほどだった。

「な、なななななななな……」
「……ななな?」
「あんた、いきなりこんなところでそんなことを……」
「そんなこと?」
「今、あんたには私が必要だって……」

 一男は怪訝な表情で首を傾げた。
 組子は何を驚いているのだろうか。
 自分にとって組子は仲のいい幼馴染であり、頼れる存在だ。
 おんぶにだっこというわけではないが、自分は組子にかなり助けられている。
 組子が必要だ、というのは自分の正直な気持ちなのに。

「もう一度言う。俺を助けてくれ。俺には、お前が必要なんだ」

 正確には組子の『助け』が必要だった。
 しかし、組子には一男の言葉しか届いていない。

「………仕方ないわね。現国だけなら、引き受けてあげるわよ」

 組子には、顔を紅くして返事することしかできなかった。


898:姉妹家庭教師ネタ
07/07/09 17:55:33 YrZ9gadi
*****

 一男は1人で学校から自宅へ向かう帰路についていた。
 隣には、なんだかんだ言いながらも仲のいい幼馴染の姿は無い。
 今日、たまたま組子は他の友人と遊ぶ約束をしていたのだ。

 一男は歩きながら腕を組んだ。
 とりあえず、国語はなんとかなりそうだ。
 あとの苦手教科、社会と英語はどうするべきか。
 数学と理科は1人でもなんとかなる。
 しかし、1教科赤点をとっただけでうちの学校は夏休みの間補習をやらせやがる。
 穴は、すべて埋めなければいけない。

「お兄ちゃん!」
「ん?」

 後ろから声をかけられ、一男は立ち止まって、振り向いた。
 駆け寄ってきたのはもう1人の幼馴染で組子の妹の、恵子だった。

「えいっ!」
「ちょ、腕に絡みつくな」
「えー? いいでしょ、だって私達どこから見ても恋人だよ?」

 そう言ってくる恵子に、一男は沈黙を返した。
 俺とお前のどこが? とは言わなかった。
 一男が恵子を恋愛対象としてみないのは、恵子の容姿に原因がある。
 恵子は中学3年生、15歳だというのに、中学に入学したばかりの1年生のようにしか見えない。
 恵子を恋人だ、と友人に紹介しようものならロリコン呼ばわりされるのは間違いない。
 組子はクラスメイトと比べても大差ない発育具合だというのに、恵子は何故か成長が遅い。
 高校に入ったら一気に成長するタイプなのかもしれない。

「今日のお兄ちゃん、なんだか暗いね」
「ん……そうか?」
「うん。もしかして悩み事?」
「まあな」

 一男は恵子に小テストで赤点をとったことを話した。
 来週の期末テストで赤点をとったら夏休みがつぶれてしまうということも話した。
 全てを聞き終えた恵子は、ぶんぶんと頭を横に振った。

「だめだよそんなの! お兄ちゃんの夏休みがつぶれたら、お兄ちゃんと遊べなくなっちゃう!」
「ああ」
「そしたら、私誰と一緒にラジオ体操に行けばいいの?」
「それは1人で行けばいいだろ」
「嫌だ! やだやだやだやだ!」


899:姉妹家庭教師ネタ
07/07/09 17:56:33 YrZ9gadi
 一男は、高校1年生だった去年も近所の公園で行われるラジオ体操に行っていた。
 不本意ながらも、恵子に誘われて毎日行ってしまっていたのだ。
 一男が夏休みを利用して自転車旅行を計画していた理由のうちの一つが、
ラジオ体操に誘ってくる恵子から逃げることだった。
 恵子を嫌っているわけではないが、17歳になった今小学生と混じって
ラジオ体操をするのは気が向かない。
 ラジオ体操の後で遊びに誘ってくる小学生から逃げるのも、
断られて悲しい顔をする子供たちを見るのも、一男は好きではなかった。

「やーだーよー!」
「あのな、恵子。俺は夏休みの間旅行に行くから、どっちにしろラジオ体操にはいかないぞ」
「え……、旅行? どこに行くの?」
「とりあえず、自転車で県内を一周するつもりだけど」
「……1人で? お姉ちゃんは?」
「1人旅だよ」

 一男の言葉を聞いて、恵子は泣き顔から満面の笑顔へと、表情を変えた。

「じゃあ、私と一緒に旅行にいこうよ!」
「だから、赤点をとったら旅行には行けないんだって。特に英語が絶望的で」
「私、英語が大大大得意だからお兄ちゃんに教えてあげる!」
「は? ……そうだったのか?」
「本当だよ。ほら」

 恵子は手提げの学生かばんを開くと、薄い紙を一枚取り出した。
 恵子が取り出したものは、英単語がびっしり書かれてある英語のテスト用紙だった。
 いたるところに赤い丸が記され、右上には赤いペンで100、と書かれてあった。
 中学校のテストとはいえ、難易度はそれなりに高いはず。
 事実、英単語の意味を覚えるのが精一杯の一男にとっては30点とることすらあやしい。
 もしかしたら、恵子は高校生の英語のテストさえわかってしまうのでは……?
 一男は心の中で、この偶然を起こしてくれた存在に感謝した。

「恵子」
「なあに、お兄ちゃん」
「教えてくれ、頼む。俺に、英語力を……」
「じゃあ、旅行に連れて行ってくれるの?!」
「おう」
「やったーーーーーーーーーーー!!!」

 キーの高い叫び声を上げる幼馴染の声を聞きながら、一男は一つ悩みが減ったことに安堵した。
 代わりに、どうやって恵子を旅行に連れて行けばいいのか、という悩みがあらわれたのだが。


900:姉妹家庭教師ネタ
07/07/09 17:57:52 YrZ9gadi
*****

 自宅に帰ってきた一男は、玄関に女物の靴が置いてあることに気づいた。
 一男の両親は同じ会社に勤めていて、職場も同じ。
 そのため、ここ数ヶ月のように長期の出張に出かけるときは2人一緒に家を留守にする。
 つまり、玄関に置いてある女物の靴は母親以外の物だということになる。

 一男が自分の部屋に入ると、そこには近所に住む幼馴染であり、組子と恵子の姉でもある女性がいた。
 ベッドの上に。

「ん、今帰ってきたのか一男。おかえり」
「ただいま、倉子さん」

 ベッドの上にいる倉子は、胸元をタオルケットで隠していた。
 一男は今までの経験から、倉子が服を着ていないということがわかっていた。
 床に脱ぎ捨てられているジーンズ、シャツ、ブラジャー、ショーツを手早くまとめ、枕元に置く。

「早く服を着てください。あと、出てってください」
「なぜ服を着なければならない? 一男は服を着てヤる方が燃えるのか?」
「……倉子さん、もっと恥じらいを持ってください」
「一男を前にしては、恥じらいなど消え去ってしまうよ……」

 うっとりした顔で一男を見つめる倉子。
 大人の魅力を全開にした瞳で見つめられては、たいていの男なら陥落してしまうだろう。
 小さい頃からこの視線にさらされ、今ではすっかり慣れてしまった一男には効かないのだが。
 一男は嘆息して、倉子に背を向け、椅子に座った。
 かばんから社会の教科書とノートを取り出し、机の上に並べる。

「む、勉強か。珍しいな」
「ええ、今回は頑張らないとまずいんで」
「そうか、とうとう私を迎えるために努力を始めたんだな。だが無理はしないでくれ。
 いくら私との結婚生活を順風満帆にするためとはいえ、一男が倒れては意味が無い。
 いや……倒れたとしても、それはそれでいいか。一男を朝から晩まで看病できるからな」
「来週の期末テストで赤点を一つでもとったら、補習になるんです。
 邪魔するんなら、帰ってくれません?」
「補習? 補習というと、あれか。夏休み中ずっと学校へ通わされ、どこにも遊びに行けなくなるという」
「まさしく、その通りです」

 着替えを終えた倉子は、机に向かう一男の手元を覗き込んだ。

「現代社会……か、これは。最近の学校ではえらく簡単なものを教えているんだな」
「これでも俺にとっては天敵なんですけど」
「……なるほど、そうか。誰でも得手不得手があるものな。一男にとっては、これがそうだと」
「まあ、そういうことです」


901:姉妹家庭教師ネタ
07/07/09 17:59:44 YrZ9gadi
 一男は倉子を視界の隅に追いやり、教科書に向かった。
 しかし、全く頭に入ってこない。
 世界の政治や歴史など、一男にとってはどうでもいいものにしか思えないのだ。
 そんなものよりも体育の授業で体を動かす方が余程自分のためになる。
 そう考えて今まで現代社会という科目から逃げ回ってきたツケが今、一男を追い詰めている。

「かなり悩んでいるようだな、一男」
「はあ……どうしよ。あとこれさえなんとかなれば、問題ないのに」
「そうか……そうなのか。ならば、取引をしないか」

 倉子の言葉を聞いて、一男はなんとなく嫌な予感を覚えた。

「……何と何を取引するんです」
「そう警戒しなくてもいい。お互いに持っているものを交換しあうだけだ。
 私から差し出すものは、私の脳に詰まっている現代社会の知識。
 一男から差し出して欲しいものは、一男が持つ夏休みの時間だ」
「いや、俺は夏休みは旅行に行くつもりだったんですけど」
「全てとは言わない、一日だけでいいんだ。一男の時間を、24時間だけ私にくれたらそれでいい」
「え? ……そんなので、いいんですか。それだけで、俺に勉強を?」
「うん」

 これは罠?倉子さんが最初からこんな甘い条件で取引を申し出てくるなんて、どういうことだ?
 もしかして今日、何か悪いものでも食べたのか?

「何を不思議そうな顔をしている。取引するのか? しないのか?」

 だけど、これはチャンスだ。
 倉子さんは昔から優等生でとおっていた。
 今は隣接する市にある、有名大学に通っているほどの才媛。
 高校の現代社会のテストなど、朝飯前に解いてしまうだろう。

「本当に、その条件でいいんですね。あとから追加とか、なしですよ」
「この胸の内に秘める愛に誓って、そんなことはしない。一男の一日を独占できるだけで充分だ」
「……わかりました。じゃあ、さっそく今から……」
「では、さっそく明日、火曜日から始めるとしよう。私にも準備があるしな。
 じゃあ、明日来るから待っているんだぞ、一男!」

 倉子は一男に言い聞かせるように、びしっと指を指した。
 そして、さっさときびすを返して部屋から出て行ってしまった。

 やれやれ、と言いそうになった口を制し、一男は現代社会の教科書と向き合った。
 ……やっぱり、少しも頭に入ってこない。
 一男は勉強の内容を、現代社会から数学へと切り替えた。
 数式がすらすらと浮かび、教科書の例題がたちまちのうちに解かれていく。
 一男は、得意教科と不得意教科の実力差が極端だった。
 三姉妹の教えによりこの差が埋まることを期待し、一男は勉強を続けた。


902:名無しさん@ピンキー
07/07/09 18:03:27 YrZ9gadi
>>940よ、こんなのが好きか?

903:名無しさん@ピンキー
07/07/09 20:04:02 dl2TByo9
940じゃないが大好きだ
是非このまま書いてほしい

904:名無しさん@ピンキー
07/07/09 22:00:04 Se6bWS/8
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 GJ!GJ!
  ⊂彡
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 続き!続き!
  ⊂彡


905:名無しさん@ピンキー
07/07/09 22:15:19 RTBfEqf3
三姉妹の個性が良い
続きを書かれるならば、おおいに期待する所存

906:名無しさん@ピンキー
07/07/10 03:47:47 o96XjrFK
なんという35スレの底力
これは間違いなく本妻の意地


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