嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35 - 暇つぶし2ch301:名無しさん@ピンキー
07/05/22 01:21:41 qkNPMiqI
不安がはね上がる。
「澄香っ」
今度は、はっきりとした声が出た。慌てて澄香に駆け寄り、彼女のすぐ側に腰を屈める。相手の息遣いさえ聞こえてきそうな距離、そ
れでも、澄香は翔に気付かない。まるで光を失ったように、音を失ったように、彼女はただ震えている。
ふと、静寂を震わす小さな声に気付く。小さく早口なその音は、うずもれた澄香から漏れている。耳をすまし、その音を拾おうとする
。しかし、その音が声となるにはあまりに小さ過ぎて、はっきりと聞き取る事ができなかった。
その音が止む事はなかった。まるで呪文を唱えるように、まるで悪魔に魂を持っていかれてしまったように、まるで狂った時計のよう
に、澄香はその音を放ち続けている。
不安が、爆発した。
「おい、澄香っ!どうした? 大丈夫か?」
澄香の両肩を掴み、大きな声をかける。すると、彼女は体を大きく震わせ、身を固くした。それからいかにも恐る恐るといった様子で
、ゆっくりと顔をあげた。
翔は思わず息を飲む。その顔は、翔の知っている澄香ではなかった。
疲弊しきった頬は痩けている。もう目を開ける事さえ出来なくなったように、彼女の瞼は半開きで、その奥に隠された瞳が、死んだ魚
のように澱んだ光を放っている。まるで冬山の死人のように青くなった顔色は、彼女をより凄惨に彩っていた。やがてその凍えたよう
に青紫色に変色した唇が、ゆっくりと動き出す。
「せん、ぱい……?」
集点の合わない瞳が、翔を見つめる。澱んだ瞳が、鏡のように翔を写し出している。その狂った瞳は、人間のそれとは思えなかった。
背中に冷たい何かが走り、翔は声を失う。狂った光を放つ彼女は、自分の声を確認するように再び唇を動かした。
「せん、ぱい」
そして、それが、契機だった。まるで春になり、蕾が開くように彼女の瞳が急速に色味を帯ていき、やがて笑顔の花がさく。瞳に光が
宿り、キラキラとガラスのように輝く涙が蓄積されていく。



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