嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35 - 暇つぶし2ch25:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:42:45 H/rKP5dl
>>23
お前さ、前スレで盛り上がってないとか書くなら向こうに投下するべきだったんじゃないか?

26:名無しさん@ピンキー
07/05/14 10:57:40 OVUFy87y
>>25
どちらに投下しても盛り上がらない以上

27: ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:09:15 j7IhhsXt
保守代わり投下いきます。
途中連投規制引っかかるかもです。
約10レス使用予定
ファンタジーモノ

28:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:10:46 j7IhhsXt

揺れている。

周りは闇に包まれ、"それ"が何であるのかは分からないが、俺の目の前で揺れていた。
どうしてそれが知覚できるのか、分からない。
だが"それ"は、ゆらり、ゆらりと時を刻むように正確に揺れている。

俺は、それに触れたくて、でも触れられなくて。
そんなジレンマに陥っていた。
何故触れたくて、触れられないのかは分からない。
けれども、その絶対的な矛盾が存在した。

突然、光が差した。
雲の隙間から、目の前の"それ"を照らし出すように──

"それ"をみて俺は、自分の中の矛盾がどういうものなのか気づいた。
触れたくて、触れられなくて─確かにそうだ。

"それ"とは紅く、燃えるような──

    * * *

「カイ・クルード、起きなさい」

突然、声を掛けられた。
馬車の心地良い揺れに身を任せ、いつの間にか自分が寝てしまっていた事に気づく。
まだ寝たりない、と主張する瞼をこじ開け、声の主を見る。

「ふぁ~……あ、おはようございますメルダリア様……あ゛!」

声の主は、我が主、メルダリア・ディレイズ様であった。

29:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:11:41 j7IhhsXt
メルダリア様は、寝ぼけている俺を微笑みながら見つめている。
国一番と評される美貌をお持ちのメルダリア様の微笑みは、美しい、としか表せなかった。
スラリと高い鼻筋や、その冷徹さと優しさを同時に含む切れ長の瞳。

それに──紅い髪の毛。
腰まで届く、長い朱の髪。
それは、メルダリア様の特徴であり、力の象徴─聖痕(ステイグマ)でもある。
それがいま、馬車の窓から吹き込む風で、緩やかに靡いていた。

「どうした?」
「い、いえ…申し訳有りません…従者である私が居眠りなど……」

メルダリア様の美貌に目を奪われていたが、メルダリア様の一言に我を取り戻した。
申し訳なくて、頭を垂れる。

「いや、カイが乗り物に弱い事を知っていながら、馬車に乗せたのは私だ……済まない」
「い、いえ!メルダリア様にお供できて光栄です」

逆に謝られそうになり(実際謝られてしまったが)慌ててそう言う。
そもそも、俺が乗り物には弱いのを自覚していながら、メルダリア様に誘われて、馬車に乗ることを断れなかったのが原因だ。
だから、メルダリア様が謝るのは筋違いだろう。
ところが、あたふたする俺をよそにメルダリア様はクスクスと笑っていた。

30:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:13:29 j7IhhsXt
「フフ……」
「な、なんですか?」

優しく微笑むメルダリア様。
俺以外に見ている者がいれば、メルダリア様に心奪われているだろう。

「いや、やはり平和とは良いものだな……とつくづく実感しただけだ」
「……そう、ですか……」

遠い目をして、窓の外を眺めながらそう言うメルダリア様を見て、少し、胸に痛みを感じた。

俺達が現在居る国─ベルマリア共和国と言うこの国は、三ヶ月前まで、隣国のティズ公国と戦争を行っていた。
五年間続いたこの戦争は、三人の英雄の登場により、三ヶ月前に終戦。
その三人の英雄の一人が、辺境の貴族ディレイズ家の御息女、メルダリア・ディレイズ様なのだ。

メルダリア様は、ベルマリア共和国軍の一将校として軍に加わっていた。
俺も一応護衛として、共に戦地へ赴いたのだが……。
酷い、状況であった。
つい先日まで、のどかで平和であると思われた村が、一晩で蹂躙され、焼き払われた。
女は連れ去られ、男、子供、老人は皆殺し、家畜は奪われ、農作物は焼かれた。
それが、どちらの国でも行われていた。

メルダリア様は、その時の事を思い出し、仰っているのだろう。
"平和とは実に良いものだ"と。

31:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:16:00 j7IhhsXt
俺もそれを思い出し、胸が締め付けられた。

「……カイ、見えてきたぞ、王都だ」

メルダリア様がそう仰って指差した先には、巨大な円形の城壁に囲まれたこの国の王都、ベルマリク。
その中心部には、巨大な城と教会が存在した。
その両方が、他の建造物より群を抜いて高く、まるで、二本の角のように、左右対称に並んでいる。

「ベルマルク城と、聖ベルマリア教会……ですか?」
「ああ…あそこには余り良い思い出はないが……やはり外から見ると美しいモノだな……」
「そうですか……」

うっとりと目を細め、感慨深げに溜め息を吐くメルダリア様
思わず俺は、王都の景観に見とれるメルダリアさまに見とれてしまった。


   * * *



そもそも、俺とメルダリア様が王都へとやって来なければならなかったのは、
戦後の処理も粗方済んだので、
メルダリア様の戦争での勲功を讃え、英雄に然るべき立場が与えられる授与式がある為であった。
しかし、先の戦争での英雄が王都へ行く。などという事態であるから、授与式だけで済むはずがない。
パレードや数々のパーティー、王"達"との会談など。
ありとあらゆる様々な催し事のオンパレードだろう。

32:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:19:17 j7IhhsXt
俺としては、それを考慮し、出来れば遠慮したかったのだが……。
メルダリア様と、先述の王"達"の一人で、先の戦争での三人の英雄にも数えられる、
大賢君シルフス・カナード皇子直々にお呼びを掛けられては、断れるはずもなかった──



   * * *



「到着致しました」

馬車を操っていた騎士がそう言って馬車を止め、扉を開いた。
俺が先に降りて、メルダリア様の手を取りエスコートする。
聖騎士とはいえ、その前に女性であるからだ。

「あ、ありがとう……」

珍しく語尾を濁すメルダリア様を訝しんで、下げていた顔を上げた。
すると、メルダリア様は心なしか頬を赤らめていた。

「ここが、ベルマリク城か……」

外から見るのは初めてなので、その見た目に圧倒されてしまった。
近くで見ると、遠くから眺めた時より遥かに大きく、また、厳粛なオーラが漂っていた。

「カイはここに来るのは何度目なんだ……?」
「メルダリア様と共に来たのが三回、それ以外に二回、そして物心もつかぬ頃にも一度だけ訪れた……と父から聞いたことがありますので、7度目になりますか……」
「そ、そうか……なんだか、悪いことを聞いてしまったな……」
「……いえ」

33:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:21:00 j7IhhsXt
何だかしょんぼりした様子のメルダリア様。

俺の両親は、俺がまだ幼い頃、先の戦争とはまた別の戦争で戦死した。
貴族出の騎士である父は、一個師団を指揮する立場だったらしい。
母は、それを補佐する参謀であったそうだ。
父は、負け戦で殿を勤めた際、流れ矢に貫かれ戦死。
母はそれを悔やんで自決なさったそうだ。

そして、両親を失った俺は、両親の親友であり、
メルダリア様の父君であるディレイズ侯爵に引き取られ、現在に至る。と言うわけだ。

両親の記憶が薄れつつある今でも、両親の話となれば多少は心が痛む。
しかし、それをメルダリア様に気取られぬよう、城内を歩きながら話題を変えた。


「あ~……シルフス様はお元気でしょうかねぇ?」
「…………」

これでも精一杯考えた末に出た話題であったのだが、メルダリア様にスルーされてしまった。
少し悲しい。

「シルフス様は、何で私なんぞをお呼びなすったんですかね?」
「…………」
「シルフス様は──」
「シルフスシルフスシルフスシルフス……と、私の前であの餓鬼の名前を連呼しないでくれ、カイ!」

半ば叫ぶように、怒鳴られてしまった。

34:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:23:57 j7IhhsXt
いつもクールなメルダリア様があんなにお怒りになるなんて……
そんなにしつこかっただろうか?
きっとメルダリア様を酷く気分を害されたに違いない……

「申し訳ありません……」
「い、いや、カイは悪くないぞ?……ただ、あの餓鬼─シルフスが嫌いなだけだぞ?」

どこか不安そうに、確かめるように俺に仰るメルダリア様。

「メルダリア様……英雄とはいえ、皇子をハッキリ嫌いと言うのはどうかと思いますよ?
それに、シルフス様は既に15、成人しておられるので子供ではありません」
「し、仕方ないだろう……嫌いなものは嫌いなのだから……」

少し顔を俯かせながら言うメルダリア様。
そのまま、暫く無言で歩き続け、謁見室の前へ差し掛かった時だった。

「お兄様!」

謁見室の大きなドアの前で、そわそわしていた小さな子供が、そう言って俺へと手を振り駆け寄ってきた。

「シルフス様、御久し振りで御座います」

そう、俺の胸ほどの背丈しかないこの子供─もとい皇子が、大賢君シルフス・カナード皇子であるのだ。
駆け寄ってきて、肩で息をするシルフス様に、跪きそう言う。

35:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:26:15 j7IhhsXt
「お兄様、そーゆー堅苦しいのは止めにしてって言ったでしょ?」
「いえ、そのような恐れ多き事、たかが一騎士には許されません……」

跪き、俯いたまま答える。
チラと横目で黙っているメルダリア様を見ると、不機嫌そうにブスッと膨れていた。

「とにかく、顔上げなさいカイ・クルード!これは皇子命令です!」
「……ハッ」

命令と言われれば、断る事はできない
素直に従って面をあげ、立ち上がった。

視線をシルフス様へと向ける。
綺麗な金の髪を肩まで伸ばし、男児でとは思えぬ程整った顔、そして──紅い、瞳。
この瞳もまた──聖痕である。
その両目は今、俺へと真っ直ぐに向けられていた。

「んふふ~お兄様~えへへ~僕、幸せですぅ~♪」

次の瞬間、俺の胸くらいまでしか身長のないシルフス様が、ギュッと抱きついてきた。
声変わりしていないのか、女の子のような可愛らしい声で、はぅ~、やら、ふへぇ~、と呻いている。
すりすりと、俺の式典用の胸当てに頬をすり付けている。
ふわり、とシルフス様の髪から芳しき花の香りがして、一瞬頬が緩みそうになった。
その刹那、俺は猛烈な殺気を感じて、背筋が凍った。
この殺気は、め、メルダリア様だ……。

36:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:30:16 j7IhhsXt

「……カイ……」
「は、はい!なんでありましょうか!」

ぼそりと俺の名が呟かれた。
そこには、凍てつくような殺意が込められている。

「皇子が……迷惑しておられるようだ……離れなさい」
「ハイィィ!今すぐ!……皇子、済みませんがお離しください……」

じりじりと殺気と殺意に背中を低温火傷させながら、小声でシルフス様に言う。

「……いやです!」

プーっと頬を膨らませ、可愛らしく拒否するシルフス様。
それだけ見れば、思わず許してしまいそうになるが、後ろの聖騎士とその殺気がそれを許さない。

「あとで何でも致しますから!お願いです!」
「何でも……ですか?」

自分で言っておいて、しまったと思った。
それをきいた目の前の皇子の真紅の瞳は、すでに怪しい光を帯びていた

「じゃあ、離します」

シルフス様はパッと離れ、ニッコリと笑った。

「じゃあ、またあとで!お兄様と、そっちの"お供の人"!」

ブンブン手を振りながら、皇子は謁見室へと入って行った。
クスクスと笑いながら去るシルフス様を見て、後で一体どんな無茶をやらされるのか、とても不安になった。

37:聖痕 ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:31:05 j7IhhsXt
皇子の姿が見えなくなった直後、ドゴン、と大砲の発射音のような音がした。
メルダリア様の方を見ると、拳が、壁に完全にめり込んでいた。

「め、メルダリア、様……?」
「イエ、ナンデモアリマセン、サア、ワタシタチモエッケンシツヘムカイマショウ」

怒りの余りが、口に出す言葉はカタコト、口元は引きつり、こめかみには血管が浮いている。
今のメルダリア様には、なるべく刺激を与えないようにしなければ……
そう肝に銘じて、先程の音に兵士が集まってくる前に、俺とメルダリア様は、謁見室へと向かった。

38: ◆oPyzY43DZ2
07/05/14 11:35:06 j7IhhsXt
今回は以上です。
初めてであることに加えて、ケータイからなので読みにくいかもしれないです。

39:名無しさん@ピンキー
07/05/14 12:28:49 ZMlNev4Z
皇子萌え(*´д`*)GJ!!

40:名無しさん@ピンキー
07/05/14 12:32:10 OVUFy87y
正直に言おう・・正ヒロインは小学6年生の弟の方だと・・・
そして、作者は急病

41:名無しさん@ピンキー
07/05/14 13:59:25 cUvrGj2C
>>38読みにくいなんて事は全然なかったし、面白かったぜ。
GJ!!

42:名無しさん@ピンキー
07/05/14 16:06:41 rjlfECyh
時代は腹黒ショタ、これだな!

43:名無しさん@ピンキー
07/05/14 17:09:53 A2OZkd1U
これはいい。
GJ

44:名無しさん@ピンキー
07/05/14 18:41:08 ltDovZsh
ショタっ娘キターー!!!続きを期待してるぜ!

45:名無しさん@ピンキー
07/05/14 18:55:20 W1Ajqerk
いや普通に事情があっての男装だろ。

46:tyoujin
07/05/14 23:39:28 3rE3BU/x
あえて贅沢を言うのならロリッ娘が良かった。
と思うのは自分だけか?

47:名無しさん@ピンキー
07/05/14 23:50:10 1Y4fZ/4D
↑うわ何だこいつ

48:名無しさん@ピンキー
07/05/14 23:51:02 Hemkgg9Y
待て、とりあえず話しはsageてからだ

49:tyoujin
07/05/14 23:53:06 3rE3BU/x
ごめん。

50:名無しさん@ピンキー
07/05/15 00:05:47 BUQZuQM1
素直でよろしい

51:名無しさん@ピンキー
07/05/15 00:19:06 BbgtJTl4
GJ

52:名無しさん@ピンキー
07/05/15 00:30:22 5D2SXQ7t
個人的に男装落ちはやめてほしいなぁ・・ショタものって初だし。

53:名無しさん@ピンキー
07/05/15 00:33:08 kOj0RWc/
女装っ子はいたよ

54:名無しさん@ピンキー
07/05/15 01:11:37 +S1vqcBU
屋聞のことか!

55:猫泥棒 ◆wvo7w.Uzxk
07/05/15 01:52:11 H7P4G6hd
お久しぶりです。「お願い、愛して!」とか「紅蓮華」を排出していた者です。
一年近く放置しておいて本当に申し訳ないのですが、
やっぱり完成させた方がいいなってことで続きを書かせていただきました。
トリップは変わりましたが本人です。

それじゃ、投下します。


56:お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk
07/05/15 01:59:47 H7P4G6hd

とにかく、この状況が理解できない。
ここは屋上で、手すりに寄りかかった朝生がいて、自殺しようか考えていた。
つまり、ここから身を投げ出そうとしていたのだろうか?
……どうして?
三時間前の昼放課では、むしろ明るく俺と瑞菜と三人で弁当をつついていたはずだ。
彫刻刀を借りたときも、満面の笑みで快く「どうぞ」と貸してくれたのに。
たった三時間の内に、自殺なんて心情に至ることがあるのか?

…………。
…………ある。

少なくとも俺はそんな人間をひとり知っている。
抑えつけて、押し殺し続けて、俺が初めて辛さに泣き出したとき、やっと傷痕を見せてくれた幼馴染。
自分へのプレゼントを買いに出て両親は交通事故にあったんだと、ぐしゃぐしゃに泣きながら打ち明け、
「死にたい」とまで叫んだあの時の瑞菜のように。
もしかしたら朝生も―。

「あははははっ!」
突然の声に驚いて、思考が途切れた。
声の主は酷く空虚な―いや、ただ嘆きだけが詰め込まれた笑みを浮かべている。
人間がどうしようもない憤りや絶望を感じたときに漏れ出す、あの笑みを。
「あはっ、あはは、くふふふ!」
「…………っ」

道化のような笑い声は虚しく響くだけで、俺はそれに応えることができずにいた。
『なんで自殺なんか? 辛いことでもあったのか? 思い直せよ』
頭に巡る言葉も、すべて咽でつぶされてしまう。
自分の一言が朝生の生死に関わっているという、その重圧だけで逃げ出したくなるのに、
イレギュラーに強いタイプの人間でもない俺が説得なんてできるはずがない。
だけど、瑞菜の大切な友達を自殺させて、あいつを悲しませるようなことは絶対にしたくなかった。
あの時のように泣いて、ただ傷を舐めあっていればよかった状況とは違うんだ。

朝生を止めるには……動けないようにすればいい!


57:お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk
07/05/15 02:05:49 H7P4G6hd

「っ!」

一気に駆け寄って、彼女との間合いを詰める。
走り込みの練習をこの一ヶ月で散々してきた甲斐があった……のかは知らないが、
朝生が反応する前に抱きとめることに成功した。
たった一瞬、小さく悲鳴をあげて全身を強張らせる朝生。
抵抗を予想していたけど、意外にそれからは俯いたまま沈黙していた。
しばらく頃合を見計らって、静かに諭しはじめる。

「……俺は、朝生には死んでほしくない……絶対に」
「ぁ…………っ」
小さく漏れた朝生の吐息が、耳に触れて少しくすぐったい。
「自殺なんかしたら、瑞菜が悲しむから。あいつが苦しむようなことは……してほしくない」

「………………」

朝生の手がぎゅっと強く握られるのが見えた。
それが何の意思によるものか俺には分からない。
「―白河先輩のこと、好き、なんですね」
「……ただの片思いだよ」
急に、虚しさとせつなさがこみ上げてきた。

『あの人は……あんまり好きじゃないけど』
きっとこの恋は片思いのままなんだろうけど、今はそれより―。

「……先輩……あ、あの、その、えと、ですね」
「うん?」
「えぁっ……あ、ありがとう、ございます」
「うん……」
いつもの朝生に戻ったことに安堵を覚えた。


58:お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk
07/05/15 02:11:46 H7P4G6hd

ついでに、安堵すると色々考える余裕が出てくる。
例えば、朝生の顔が真っ赤に火照ってることとか、艶やかな髪の香りとか、
華奢なのに思ったよりずっと柔らかな体とか。
ただ胸の当たる部分がいやに狭い気がするけど……まぁ、そういうことなんだろう。

「っと、いや、その……ごめん」
とりあえず手すりから離れたところまで移動して、ゆっくり朝生を開放しようとした。
なんだかよく分からないが、この状況は瑞菜への裏切りのような気がしたからだ。
しかしすぐに離した手を朝生に握られ、そのまま引き寄せられた。

「え、あれ? あ、朝生?」
「ごめんなさい、ちょっとだけ……ひっ……ちょ、ちょっとだけ、待って、くださいっ」
しゃくり声で俺の胸に顔を埋める朝生。
か細い体を震わせて、必死に声を出さないように抑えて、泣いていた。
「ほんとに、ごめ……ん、なさいっ……ひぅ、うぇぇっ」
その姿に、こんな風に泣きじゃくった昔の瑞菜を思い出して―。
「別に声抑えなくていいから。明日には、今日のこと全部忘れるよ」

「せん、ぱっ……ひっ、うぇ……ひっく……ひ、うぁ、う゛ぁぁぁああああ!!」

ほんの少しだけ、朝生が愛しく思えた。


59:お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk
07/05/15 02:14:55 H7P4G6hd



夕焼けもそろそろ終わりが近づいているし、夏とはいえ夜は冷え込みもする。
そういうことで、ようやく涙も止まり始めた朝生に下校を提案したのだが……

「……あぅぅ、ご、ごめんなさいぃ」
どうやら本人は泣くのに必死で時間帯に気づいていなかったご様子。
「だから俺は平気なんだってば……それより朝生のほうが大丈夫か?」
「わ、私はそりゃもう平気ですっ! そ、その、どうせこの時間に帰る予定だったりしたんですから!」
「この時間に帰る予定だったって……。もう下校時刻だぞ」
「あわわ……す、すいません、私のせいで下校時刻まで……あの……」
「い、いや、そういう意味で言ったんじゃなくて。……まぁいいや」

とりあえず、朝生が嘘をつくのが苦手というのは分かった。
これは平気というのも嘘かもしれないな……。だからといって俺に何ができるわけでもないけど。
なら、せめて帰り道の安全は守るべきかな。
「帰り道は? 途中まででも一緒に帰らない?」
「い、一緒に、ですか? それはその、すごく、嬉しいんですけど……。そ、そうっ、ちょっと忘れ物があったので……ごめんなさい」
「そっか、分かった。それじゃまた明日な」
「あ、は、はい! また明日、お昼休みに」
なんとも不自然な断られ方に、俺は少し情けない気分になりながら朝生と別れた。

朝生がどうして自殺しようとしたかは分からなかったけど、ある程度予想はついている。
あの時の俺や瑞菜と同じ……誰にも打ち明ける相手がいなくて、ずっと辛さを抑えつけてきたんだろう。
それももしかしたら、昼放課から放課後までの三時間に何か思い込むきっかけがあったのかも知れない。
抑えつけてきた辛さは、思い込むことで増幅したりもする。
俺が屋上という場所で待たせたせいで、それが飛び降りという形で爆発した。
もちろん、すべて勝手な推測でしかないわけだけど。

もし、朝生が俺たちに今日の自殺の理由を教えてくれた時は。
その時は、俺と瑞菜の傷痕も打ち明けて、共有したいと思う。



「…………あれだけ想われておいて……っ。……白河、瑞菜…………!」

背中から、小さすぎる呟きが聞こえてきた。内容は、よく聞き取れなかった。


60:お願い、愛して! 8 ◆wvo7w.Uzxk
07/05/15 02:22:24 H7P4G6hd


―遡って、放課直後
終礼が終わると同時に女子トイレへ駆け込んだ生徒がいた。

「え? そ、そんなに……遅くなるんですか?」
『だからそう言ってるでしょ? 残業よ、残業。一回聞いたらハイって返事しなさい、バカ女」
「は、はい……で、でも、そんなに待ってたら風邪ひいちゃいます。その……夜は冷え込みますし」
『あたしの知ったことじゃないわよっ! 文句があるなら社長に直接言ったらどう?」
「そんな……なら、家を出るときに鍵を庭に隠してくれていれば……」
『冗談じゃない! あたしがいない間にあんたに家のモノ盗まれるかもわからないのにっ」
「わ、私盗みなんて……!」
『うっざいわね! いいからあんたは公園で待ってればいいっつってんの! それともまた公園に野宿する?』
「い、イヤ……それだけは……イヤ、です」
『あれもいや、これもいや、いい加減にしなさいっ! いい? 公園で待ってなきゃ本当に野宿よ』
「…………は、い……」
『ほんっと、あんたと話してると苛々してくるわね……じゃあ、切るわよ』
「ごめんなさい……わざわざお電話ありがとうございました、お母様……」
―ブチッ

「…………どうして、名前を呼んでくれないの? ねぇ、お母様……」
信頼できない娘なら、産まなければいいのに―。
「……どうして…………っ?」
こんなに惨めな想いをさせて、何が楽しいの―。
「…………」
私は何も悪いことしてないのに―。
「……屋上に、行かなきゃ……」
分かった。私がいることが「ダメ」なんだね―。
「……ごめんなさい、ごめんなさい……」

ごめんなさい―。




61:猫泥棒 ◆wvo7w.Uzxk
07/05/15 02:32:31 H7P4G6hd
以上で8回目完了、これからよろしくです。
展開分からない人多そうだなぁ……。
7回以前のあらすじ書いた方がよかったかなぁ……。

おかしな言い回しとか、違和感感じた部分は指摘お願いします。
できるだけ今後に役立てていきたいので。



62:名無しさん@ピンキー
07/05/15 02:56:16 QUCXV5+Q
お帰りなさい
結構続きが気になってた作品なんで帰ってきてくれて嬉いっす
でも最初前回どこまでだったか思い出せなかったので
急いで補完庫に逝ってきて読んできましたw
朝生の心の闇と隠した本心、そして何れ来るであろう瑞菜との修羅場wktkしながら期待してます

でも次はあまり待たせないで下さいねw


63:名無しさん@ピンキー
07/05/15 07:48:22 zVDQoadv
>>61
おっしゃぁぁああああ、めっちゃGJですよ!!
続きが気になる作品の一つだったので、投下はうれしい限りです。
朝生には何か私生活に秘密があるみたいですね。
作者さんのペースで良いのでなるべく早い投下を期待してます。

64:名無しさん@ピンキー
07/05/15 14:46:35 AyXAtSoh
まとめサイトで「あーこれ続き読みてーなー……」と思ってたのが再開されたよ! GJ!

65:名無しさん@ピンキー
07/05/15 17:30:56 mvWKyK8B
>>62-64
偽者に釣られて乙


66:名無しさん@ピンキー
07/05/15 17:38:44 6zA1Yq0B
なんとなく職人さん達のリレーSSが読みたいと思った
職人さんの数も結構多いし、個性の強い人が多いから面白くなると思う

トラ氏でパロをやって
緑猫氏で戦闘をやって
ロボ氏で鬱レイプして

とか、そんな感じ


そんな妄想をする俺駄目人間

67:名無しさん@ピンキー
07/05/15 17:55:34 zVDQoadv
>>66
確かに読んでは見たいが、難しいだろうな。
それぞれの作者さんの現在のSSが全部終わらない事には特に・・・。

68:名無しさん@ピンキー
07/05/15 17:56:15 rpA4HHDl
>>66

一人で皆の個性をコピってみれば良いんじゃない?


69:名無しさん@ピンキー
07/05/15 18:01:38 zVDQoadv
>>68
それぞれの作者さんがやってくれる事に意味がある・・・と思う。
真似出来るほどの力があれば俺だって・・・(つA`)

70:名無しさん@ピンキー
07/05/15 18:25:04 3P5f+AgK
>>66
リレーは難しいし、作品がまとまらないことがあるから俺は反対
普通に自分の作品を頑張ってもらえばいいよ

71:名無しさん@ピンキー
07/05/15 22:09:24 xH3Q4XiB
雨の音を結構楽しみにしてたんだけど、最近更新がない…書くの飽きちゃったのかなぁorz

72:名無しさん@ピンキー
07/05/15 22:42:24 L0oBIM4e
redpepper
ノン・トロッポ

一番気になる所で停止してしまったこの2つを俺はいつまでも待ち続ける

73:名無しさん@ピンキー
07/05/15 22:49:47 pNrgrnT1
静かに待ち続けるのがいい男ってばっちゃが言ってた

74:名無しさん@ピンキー
07/05/15 22:51:37 o6mp1mJW
こういう流れになると必ずノントロをクレクレするやつ出るNE☆


75:緑猫 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:12:49 zho8HjJK
投下します

76:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:13:55 zho8HjJK
 
 * * * * *
 
 ケスクは歯ぎしりしていた。
 
(……なによなによなによ! クチナの馬鹿! 馬鹿! 馬鹿!
 あんな小娘のどこがいいのよ!? 胸だってぺたんこで、頭から変なの生えてるじゃない!
 それに素性もよくわからないっていうし、そんなのクチナには相応しくないんだから!
 クチナには、もっと、その、なんというか、私みたいなのが一番なんだから!
 なのに、クチナってば……! ……うう……!)
 
 ケスクの睨み付ける先。
 ―クチナと、彼にまとわりつく羽虫。
 許せない光景を、しかし見るだけしかできないことに、ケスクは心の底から苛立っていた。
 それは、きっとあの姉妹も変わるまい。
 そしておそらくは、あの奴隷娘も同じだろう。
 
 まさか、こんなことになろうとは。
 
 クチナの部屋に女奴隷と訪れて。
 護衛姉妹と戦っていた刀小娘を殺そうとしたときは。
 今のような事態になるなどとは、欠片も想像できなかった。
 
(あいつら……絶対許さない……!
 大会で戦うことになったら、絶対に殺してやるんだから……!)
 
 ケスクは決意を新たに。
 殺すべき相手を、明確に見据えた。
 一人は当然、クチナにべたべたひっついている、角の生えた少女。
 そして、もう一人は―
 
(―あの、腐れ侍女……!
 次は絶対、油断しない。
 どんな小細工を仕掛けようとも、必ず斬り殺してやるんだから!)
 
 
 * * * * *
 
 
 愛竜に跨り、愛剣を抜き放ち、それでもケスクは油断していなかった。
 
 竜に乗った竜騎士は、紛う方無き大陸最強。
 それは誰も疑うことのない、絶対的な事実である。
 
 しかし。
 護衛姉妹が二人揃い、各々の武器を手に、侵入者と相対していた。
 ケスクは、イクハとユナハの実力を、嫌というほど知っている。
 どちらか片方ならともかく、二人揃った状態で。
 侵入者が瞬殺されていないという状況は。
 ―はっきり言って、異常だった。
 
 故にケスクは最大警戒。
 侵入者を上級竜と同等のつもりで、斬り殺す。




77:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:14:43 zho8HjJK

 クチナ王子の寝室は、広いといっても人間レベルでの話である。
 竜の中で小柄とはいえ、人間の3倍の大きさの飛竜が飛び回るには、狭すぎる。
 
 だが、飛竜の強みは、名前に表される飛行能力。
 空戦を制する移動速度こそが、飛竜の真髄である。
 
 ならば、どうするか。
 簡単なことだ。
 
 
「―征け!」
 
 
 ケスクは吠えた。
 呼応するのは飛竜の翼。
 竜は、翼の揚力によって飛ぶのではない。
 翼が、空気を掴むのだ。
 
 竜騎士が、空を駆けた。
 
 一直線、敵に向かって。
 
 瞬きすら許されない刹那の合間。
 竜騎士の刃が、蒼髪の少女へ襲いかかる。
 飛竜の突撃に完璧に合わせられた、鋭すぎる一閃。
 それは、あらゆる防御すら切り裂く、必殺の一撃だった。
 
 が。
 
 ケスクの大剣は、虚空を斬った。
 
「―なっ!?」
 
 必中を信じていたケスクは、驚きの声を上げてしまう。
 外すはずはなかった。
 高速で避けられたわけではない。
 斬る瞬間まで、ケスクの人並み外れた動体視力は、相手の姿を捉えていた。
 
 斬った瞬間、消えたのだ。
 まるで―幻を斬ったかのように。
 
「―え? なに?」
 
 飛竜の困惑した様子に、乗り手のケスクは反応した。
 彼女の愛竜は、不可解そうに鼻の頭を振っている。
 何かにぶつかってしまったらしい。
 しかし―何に?
 ケスクと侵入者の間に障害物はなかった。
 侵入者に向かって、真っ直ぐ飛んだだけなのに―




78:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:15:35 zho8HjJK

 そこまで考えたところで。
 ケスクは直感で飛竜を旋回させた。
 
 果たして、そこには。
 刀を拾い上げた、少女がいた。
 
「―ふん。姿を眩ますのは我の十八番だ。直線で来てくれて助かったぞ」
 
 不敵に嗤う少女は。
 しかしその全身を、いたく傷つけられていた。
 
 左肩は砕けたのか、異様な捻れ方をしている。
 横顔は耳から下が裂け、千切れた筋が血にぬめっていた。
 腰骨は歪んでいるのか、立ち方も何処かおかしかった。
 
 それでも。
 少女は、嗤っていた。
 
「跳ね飛ばされたおかげで、こいつを拾うことも出来た。
 ―結構、気に入っているのでな。多少の怪我は、仕方あるまい」
 
 言いながら、無事だった右腕で刀を振るう。
 その剣閃は、どことなくぎこちなかった。
 
「……ちっ。流石に、このままで戦うのは無理か。
 まあいい。竜騎士よ、これからが本ば―」
 
 少女が言葉を終える前に。
 ケスクの竜が、再び飛んだ。
 
「のわあっ!?
 くそ、少しは格好付けさせろ!」
 
 転がりながら逃げる少女。
 それを嘲笑うかの如く、狭い空間を飛竜が踊る。
 
「―変な技を使うようだけど! 叩き斬ってやるんだから!」
「ほざけ! 先程は機会を逸したが、今度こそ我の本当のす―」
 
 
 少女が何やら言おうとしていたが。
 全く気にせず、ケスクは再三突撃をかけた。
 飛竜の常識離れした機動力に、正確無比な己の斬撃を乗せて。
 たとえ、上級竜が相手でも殺しうる、帝国有数の竜騎士の必殺技。
 
 対する少女は、なにやら不穏な気配を発していたが。
 その小細工を起こす前に、斬り殺す自信がケスクにはあった。
 
 
 ―彼女の愛竜が、突然、その動きを止めさえしなければ。




79:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:16:18 zho8HjJK

 * * * * *
 
 突然の急制動に耐えられず、ケスクは勢いよく放り出される。
 それは絶対的な隙だったが、ヘイカもそれに構ったりしなかった。
 突然止まった飛竜と同じく、全身を硬直させていた。
 
 
 その光景は、とても異様なもので。
 二人の戦いを見ていた他の者も、無言で光景を見守るだけ。
 
 
 最初に気付いたのは、ユナハだった。
 
「―クチナ様! 姉さん! 何か来る!」
 剛槍を構え、傍にいたサラサを押しのける
「ちょ!? なにすんのさ! 王子はボクが護るんだから!」
「クチナ様の護衛は私です! 貴女はどっかそこらへんで座っててください!」
「むか。何だよそれ!?
 王子様の護衛のくせに、あんな糞餓鬼、瞬殺できないのかよ!
 ―ボクだったら一撃だね、一撃!」
「なんですって!?」
 
 ぎゃあぎゃあと口喧嘩をする二人。
 しかしそれでも二人の体は、完全にクチナを庇っていた。
 壊れた窓側から如何なる相手が訪れようとも、クチナを護りきれる体勢だった。
 
 
 ただ。
 窓から飛び込んできた存在は。
 二人の想像を、遙かに超えるものだった。
 
 
 
「くちなー!」
 
 
 
 緊迫した空間には不似合いな、甘えた声。
 飛び込んできたのは、一人の少女。
 
 とはいっても、壁をよじ登り突入してきたわけではない。
 城の比較的高いところにあるクチナの寝室。
 その窓から、言葉通り。
 
 ―“飛び”込んできた。




80:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:17:09 zho8HjJK

 ぐわん、と空気がかき混ぜられた。
 部屋の気流が乱れに乱れ、ユナハもサラサも吹き飛ばされる。
 暴力的なまでの風。誰一人として、その場に留まることを許さない。
 ―ただ二人の例外を除いて。
 
 ひとりはクチナ。
 彼にだけは何故か、暴風は襲いかからず、そよ風に前髪が揺らされるのみ。
 
 もうひとりは。
 部屋に乱入してきた、年若き少女。
 
 否。
“それ”は、はたして少女と呼んでよいものか。
 人にあらざる、薄緑の髪。
 額より生えた、異形の角。
 そして、何より―
 
 
 背中から生えている、巨大な“翼”。
 
 
 翼といっても、鳥のように美しいものではない。
 臓物と溶けた鉄を混ぜ合わせたかのような、赤黒くぬめる肉の板。
 蠢く腐肉が、背中の皮を突き破り、大きく展開しているのだ。
 
 翼を生やした少女―ヌエは。
 吹き飛ばした少女たちのことなど欠片も気にせず。
 一直線に、クチナの胸に抱きついた。




81:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:17:56 zho8HjJK

「ぬ、ヌエ!? どうしてここに―」
「くちなにあいにきた!」
「会いに来たって……施設から勝手に出てきたの!?」
 
 朝の少女乱入から今まで混乱のし通しだったクチナだが。
 ヌエの言葉で冷水を掛けられたかのように思考を切り替えた。
 ―もし逃げ出してきたのなら、大事件だ。
 ヌエに関する研究は、最上級の機密事項である。
 検体の処分や主国との関係悪化は免れないだろう。
 ……もし表沙汰になっていないのであれば。
 何としてでもヌエを施設に戻し、彼女に被害が及ばないよう尽力しなければ―
 
「ううん。たいかいにでたいっていったら、えらいひとがすきにしていいって」
「……え?」
 
 予想外のヌエの言葉に。
 クチナの思考は、白く染まった。
 
「……偉い人って?」
 
 何とか気を取り直したクチナは。
 恐る恐る、ヌエに訊ねた。
 
「よくわかんないけど、えらいひと。しせつのひとが、みんなこわがってたから」
「―怖がってた? 施設の職員じゃない……?」
「それでね、そのひととおはなししてたらね、くちなのはなしになってね。
 わたしがそのたいかいにでたいっていったら、そのひと、でてもいいって!」
「……僕のことを知ってる? ……ねえ、ヌエ。その人の名前、教えてくれないかい?」
「ん。えっと、うんと、たしか……ねきつ。そうだ、ねきつこーしゃくっていってた」
 
 ―ネキツ公爵。
 
 どこかで、聞いた覚えがある。
 そう、確か、大会の参考にと訪れた、主国の奴隷闘技場の―
 
 と。
 一瞬考え込んだクチナの脇を。
 一陣の風が、吹き抜けた。




82:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:18:40 zho8HjJK

「王子様、大丈夫……っ!?」
 
 強風で吹き飛ばされていたサラサが。
 クチナと少女の間に、割り込んだ。
 
 その拳は握り締められていて。
 踏み込む足は、地面を砕かんとばかりに力強く。
 上半身は硬く捻れ、解放の瞬間を待っている―
 
「なに勝手に、」
 
「!? じゃま!」
 
 サラサに割り込まれたヌエは。
 不機嫌を露わにして。
 異形の翼を大きく動かす。
 
「ボクの感動の再会を、」
 
「どいて」
 
 ―竜の翼は、空気を掴む。
 ヌエの背中から生える翼は、風切竜と呼ばれる種族のものである。
 知能が低いため下級竜に属されるものの、その翼は自在に風を繰るといわれている。
 それが、狭い空間で、使われたら。
 人間など軽々と吹き飛ばされる、暴風が吹き荒れることに。
 
「―邪魔してるんだよっ!」
 
「えっ―」
 
 しかし、サラサは吹き飛ぶどころか崩されることもなく。
 振り上げられた拳は、次の瞬間。
 ―暴風を突き破る、閃光となった。
 
 
「……!」
 
 ヌエの目が見開かれる。
 鉄よりも硬く握り込まれたサラサの拳が。
 無防備に晒された、ヌエの左胸へ走った。
 
 それは、肋骨を粉砕し、心臓をズタズタに破壊する。
 
 はずだった。




83:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:19:46 zho8HjJK

 * * * * *
 
 ケスクは、飛竜に放り出されながらも、剣を手放していなかった。
 そのまま肩から着地し、体を回して衝撃を流す。
 部屋の端まで転がったところで、体を跳ね上げ、状況を把握した。
 
 飛竜が止まった原因は不明。
 窓から新たな侵入者。
 クチナの近くには護衛姉妹と女奴隷。
 
 ―侵入者は、クチナのもとへ一直線。
 
 駆け寄りたい衝動をねじ伏せる。
 クチナとはだいぶ離れている。
 それに、護衛姉妹と女奴隷がいれば、どんな強敵が相手でもクチナを守り抜くだろう。
 そう判断したケスクは。
 クチナを護るという最上級の名誉を諦め。
 
 刀を持つ少女に、向かい合った。
 
 
 
「……な、なんだ、アレは……!」
 
 少女は何故か戦う意志を見せず。
 呆然と、新たな侵入者の方を見つめていた。
 
 ―好機。
 
 ここで見逃すケスクではない。
 一足飛びに距離を詰め、そのまま鋭い剣閃を放った。
 
「!? ―ちぃっ!」
 
 気付いたヘイカが、慌ててその場を転がった。
 ―すんでの所で避けられる。
 その身のこなしは、大怪我しているとは思えないほど。
 だが、少女は紛う方なき重傷である。
 ケスクの刃に倒れるのは、時間の問題だった。
 
 はずなのに。




84:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:20:33 zho8HjJK

 * * * * *
 
 ちりん、と。
 
 澄んだ鈴の音が、響いた。
 
 激戦の最中、そのような音に反応する者などいるはずもない。
 各々が、己の相手に対して精一杯。
 
 しかし。
 澄んだ音の直後。
 
 
 全員が、その動きを止めていた。
 
 
 暴風に吹き飛ばされたが、体勢を立て直しつつあったユナハ。
 クチナから侵入者を引き剥がすため、離れたところから棒を振りかぶっていたイクハ。
 風を操る侵入者に、必殺の拳を叩き込まんとしていたサラサ。
 今まさに、大剣で敵を貫こうとしていたケスク。
 胸元まで大剣が届き、半ば諦めかけていたヘイカ。
 風を突き破った拳を、驚いた表情で見つめていたヌエ。
 
 彼女らの動きが、全て、止まっていた。
 
 
「―まったく」
 
 
 やれやれ、と。
 呆れたような溜息は。
 部屋の入り口から聞こえてきた。
 
「お使いから帰ってきて、窓が豪快に割れてるし。
 いつからここは、戦場になってしまったのですか?」
 
 声の主は、メイド服を着込んだ少女。
 指先をくるくる回しながら、部屋の中を見回している。
 
 
「ツノニ……!」
 
 クチナの声に、少女―ツノニが肩を竦めた。
 
「まあ、ご主人様が無事だったから、良しとしますか」




85:七戦姫 9話 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:21:22 zho8HjJK

 つかつかと部屋の中に踏み入るツノニ。
 彼女の足運びに緊張は欠片も見られず。
 その隙の無さに、瞠目する者もいた。
 
「こら、ヌエちゃん。
 ちゃんと入り口から入らなきゃダメでしょ。
 窓から入ってくるなんて、はしたない」
 
 ヌエに人差し指を突き付けて。
 めっ、と眉根を寄せて注意した。
 
「え、あの、その、ツノニさん!? なんで!?」
「あー、ユナちゃん。下手に動いちゃダメだよー。
 銀蚕の糸に金剛石をまぶしてあるから―全身、細切れになっちゃうぞ」
 
 そう言うツノニの手からは。
 目を細めても捉えるのは難しい、極細の銀光が煌めいていた。
 それは、部屋全体に張り巡らされていて。
 クチナとツノニを除く、全員の体を捕らえていた。
 
 
 いくら激戦の最中だったとはいえ。
 これだけの猛者達に全く気付かれず。
“糸”を仕掛けるその技術は、異常としか言い様がなかった。
 
「いやー。それにしても大漁大漁。
 不意打ちが得意な私でも、これはほとんど奇跡だなあ。
 ―ご主人様ー。頑張ったツノニを褒めて褒めてー」
 
 ニヤニヤと笑いながら、クチナに擦り寄るツノニ。
 その所作に部屋の温度が一段階下がったが、全く気にする様子はない。
 
 
「ま、冗談はさておくとして。
 ヌエちゃんが部屋にいる時点で驚きなのに、
 えっちい格好の人や、死にかけの子どもまでいるんだから、もうわけわかんない。
 ―ご主人様。どうしてこんなことになったのか、最初から説明してくれませんか?」




86:緑猫 ◆gPbPvQ478E
07/05/15 23:23:43 zho8HjJK
長すぎて申し訳ありませんorz

まあそれはそれとして。
次の次で、ようやく対戦トーナメント表を公開できます。
というわけで。
 
【第一回七戦姫展開予想・対戦組み合わせ編】
 
を募集します!
ルールは簡単。次々回の投下までに、対戦組み合わせを言い当てられるか否か。
一緒にお気に入りのキャラを教えて頂ければ、最初に正解を出した人のお気に入りで外伝を1話書かせて頂きます。というか書かせて下さい。
 
 ↓こんな感じで書いて頂ければOKです。
(1)○○ 対 ××
(2)△△ 対 ■■
(3)++ 対 ◎◎
(4)攻城 対 対人
 
ついでにどうしてそう思ったかなども書いて頂けると泣いて喜びます。
ちなみに、大会には8人の選手が出場します。つまりあと一人います。
まだ名前が出ていないので、適当に「新キャラ」とでも書いて頂けると助かります。
武器は鞭。今出せる情報はこれだけです。申し訳ありません……。

もちろん、普通の感想や展開予想も大歓迎です。
いつも住人の皆様に読んで頂けるからこそ、SSを書けています。
本当に、ありがとうございます。
修羅場万歳!


87:名無しさん@ピンキー
07/05/15 23:37:37 nEBusAeI
>>86
マジレスするとここは緑猫氏だけのスレじゃないから正直○○募集みたいなことはやめた方がいいです
SSの分岐とかならまだ分かるけど..,.

88:名無しさん@ピンキー
07/05/15 23:38:46 sEsOeE3d
>>66
避難所でスレを立てて、リレーSSを作れば問題ないのでは・・
一般も参加できる修羅場SSです

89:名無しさん@ピンキー
07/05/15 23:57:35 t6jmocN1
無難に九十九書いとけって
過去の反応見りゃ分かるだろう?
それでも書きたいなら自分のSSのあらすじくらい自分で決めな
それとキャラ多すぎて振り回されてる感じがするぜ


90:名無しさん@ピンキー
07/05/16 00:10:28 6tjOK1CM
七戦姫がきた!GJ!
やはりクチナはいいものだ…

けど募集とかそういうのはここではやらないほうがいいかと
荒れる元とかになったりしますし

91:名無しさん@ピンキー
07/05/16 00:14:14 tuJ5DTsq
避難所でとも思いますが逆に好きな人が争いそうだな
無難にブログでもはじめてみたらどうかなと思う


92:名無しさん@ピンキー
07/05/16 00:15:42 lcuNWICH
>>86
GJ
俺、ツノニ好きだなー

どうでもいいけど、戦うメイドキャラって暗殺系が多いのは何故だろう

93:名無しさん@ピンキー
07/05/16 00:22:27 I/WMLG/X
>>86
GJ!
個人的にはヘイカ対ヌエが見たい
ドラゴン同士の戦いにwktk


>>66
SS書きの一人として、参加してみたい
他の職人さんはどうかは分からないけど

94:名無しさん@ピンキー
07/05/16 00:27:13 Gneq4U/f
ちょっとやるって言ってる人軽率じゃね? 
リレーってSSに限らずグダグダになる可能性のほうが高いよ、経験上
俺も各個人の作品に集中して欲しい
>>86
GJ、この人数を動かすのは大変だろうけど最後まで頑張って欲しい
でも欲を言えば九十九を先に完結して欲しいな、続きが気になってしょうがないっす

95:名無しさん@ピンキー
07/05/16 00:32:20 J24Z5J2S
やりたい奴らが勝手にやればいい

96:名無しさん@ピンキー
07/05/16 01:15:01 dnD96sSQ
>>93
>>SS書きの一人
えーっと、これは笑うところ?


97:名無しさん@ピンキー
07/05/16 01:19:35 Lw+aRLz7
別に普通に読み流すところだと思うけど

98:名無しさん@ピンキー
07/05/16 01:30:44 vTH+2oGv
>>86
GJ!!
クチナ可愛いよクチナ(´Д`;)ハアハア

99:名無しさん@ピンキー
07/05/16 01:50:27 rHa9Tc6s
GJ!!
お気に入りがケスクとヌエなのでその組み合わせがみてみたい。
九十九にも期待してますwww

100:名無しさん@ピンキー
07/05/16 07:30:38 ranr7+7S
しかしみんな個性がたってて可愛いのに誰かは死ぬのか・・・

101:名無しさん@ピンキー
07/05/16 07:53:14 OHmq3bb6
>>100
だが、それがいい。

とか思う俺は異端か。

102:名無しさん@ピンキー
07/05/16 12:05:06 BEQVOgTs
>>101 私はそんなあなたが好きよ
ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと前から
そしてこれからも…

103:名無しさん@ピンキー
07/05/16 13:40:04 XREc24mI
>>86GJ!
ってかじゃあ予想してみます

1ケスクvsイクハ 単に俺が姉スキーだから。……イクハが勝つとは思わないけど、でもだからこそ見たいんだい
2サラサvsヌエ 依存っ子同士の執着戦を。
3ユナハvsツノニ 今まで隠されていたダークサイドツノニに翻弄されるユナハに(*´д`*)ハァハァ
4ヘイカvs新キャラ 単に余っ(ry

そんなわけでこの展開だとおそらく一回戦で消えてしまうイクハがお気に入りです(´・ω・`)


104:名無しさん@ピンキー
07/05/16 16:05:54 PKH+UegW
七戦姫は避難所、九十九をこのスレでやるとか分けた方が良いかと

105:名無しさん@ピンキー
07/05/16 16:08:25 yETSyWKf
いや、そのメリットと意味がわからん……

106:名無しさん@ピンキー
07/05/16 16:17:59 yETSyWKf
避難所は飽くまでも“避難“所なんだから、避難しなきゃならんような状況にならない限り利用する必要はない

107:名無しさん@ピンキー
07/05/16 16:23:05 PKH+UegW
同じ作者が同じスレで違う作品バラバラ公開してたらアレだと思うし、実際
七戦姫投下された後は荒れやすくなってるしなぁ

108:名無しさん@ピンキー
07/05/16 16:29:41 /0GYxAgA
荒らしてるのが自分って事分かってます?

109:名無しさん@ピンキー
07/05/16 16:40:59 PKH+UegW
しかし、このスレで七戦姫投下したらこれからも荒れるだけだと思うし、せめて
どっちか終わらせてから取り込むかどうかしたほうが良いと思う。
緑猫氏の作品は普通に気に入ってるから、氏の作品関係で荒れるのは心もとない

110:名無しさん@ピンキー
07/05/16 16:50:08 yETSyWKf
別に荒れちゃいないだろうに
少々作者さんが諫められた程度だろうが
むしろダラダラ引っ張ってるあんたの方が火種になりかねないわけで

111:名無しさん@ピンキー
07/05/16 17:02:40 yETSyWKf
同スレ2作品平行投稿の何が悪いのか、そこがまずわからんなあ
そんなん作者の自由だし、今までだっていくつかそういうのあったけど別に問題無かったのに何を突然

112:名無しさん@ピンキー
07/05/16 17:31:52 NdTydovM
こういう議論こそ避難所を使おうぜ
無駄に本スレで容量を使わせるのが目的じゃないならね

113:名無しさん@ピンキー
07/05/16 17:39:31 Lw+aRLz7
議論ですらなかろ
別に作者の自由じゃね?の一言ですむ話だし

とりあえずこれ以上引っ張るネタではない

114:名無しさん@ピンキー
07/05/16 17:42:42 vTH+2oGv
>>112
ちょうど避難所にも雑談スレがたってるしな

115:名無しさん@ピンキー
07/05/16 18:10:25 xyQr03Lm
なんで募集とかは荒れるからやめた方がいいよ、って話が避難所と分けて投下しろって話になってんだ?
避難所は別に使う必要ないじゃん、それに今は向こうの方が投下しにくくね?


116:名無しさん@ピンキー
07/05/16 18:12:58 NdTydovM
>>115
>>投下しにくくね?

WHAT?

117:名無しさん@ピンキー
07/05/16 18:13:57 dZPR382d
WHYだろ馬鹿

118:名無しさん@ピンキー
07/05/16 18:15:42 Lw+aRLz7
”正しい日本語”かどうかは兎も角別に珍しい表現じゃないと思うけど……
URLリンク(www.google.co.jp)

119:名無しさん@ピンキー
07/05/16 18:15:52 xyQr03Lm
>>116
こっちの荒らしの話ばっかじゃん
まぁ、ぶらまり投下されてたけど


120:名無しさん@ピンキー
07/05/16 18:19:43 NdTydovM
>>117
素で間違ったよw

>>119
避難所のスレが増えたぞ

121:名無しさん@ピンキー
07/05/16 18:27:28 vTH+2oGv
>>119
雑談・議論スレが増えてる

122:名無しさん@ピンキー
07/05/16 19:10:58 U/YYTEEn
ふと思いついたネタを投下



 無言の俺にテーブルの向こうに座っている悪魔が笑顔で言った。
「今日のお昼はチンジャオロースだよ」

 彼女と付き合い始めて3年。
 結婚も視野に入れた関係、というやつでお互いの表も裏も理解しつつある。
 無論それには食べ物の好みも含まれる。
「……俺がピーマン嫌いなのは知ってるよな」
 ピーマンなんてスカスカで中身が無くて、なおかつ苦味のあるものを食べるというのが理解できない。
「好き嫌いはよくないよ。これは言わば愛の鞭だよ」
 嘘だ。悪意を持ってピーマンを出しているんだ、こいつは。
「そうかな?」
「そうだよ」
「そうかな?」
「そうだよ」
「そうかな?」
「時間稼ぎしても食べないといけないのは変わらないよ」
 あっさりと考えを見抜かれた俺は、しかたなくピーマンをより分けながら食べる。
 うん。まずい。

 そんな俺を見ながら彼女が食べながら問いかけてきた。
「ところでお昼からはどこか出かけるの?」
「ああ、ちょっと図書館に」
 というか史書のちひろに会いに。

 ちひろと俺は、まあなんというか、週一ぐらいのペースで体の付き合いをしている。
 平日の図書館は暇らしく、今日も昼から二時間体を予約していのだが。
「じゃあ私も一緒に行くよ」
 彼女の一言で予約が吹き飛んだ。

 以前もこいつがきまぐれで図書館に来て予約取り消しになったことがあるというのに冗談じゃない。
「何か用事があるなら俺がしておくぞ。本を借りるくらい楽なものだし」
「いやーそうじゃなくてさ。人に会いに行くんだよ」
「お前が人に会いに行くなんて珍しいな」
 こいつは人見知りの気があって、よほどのことがないと自分から人とかかわりあおうとしないのだが。

「史書でちひろちゃんっていう子がいるんだけど、すっごくかわいいって話なんだ」

 心臓の音が大きくなった気がする
「そうなんだ」
 まずい。非常にまずい。どうする。いや、まだばれてるとは限らない。ひょっとしたら本当に興味があるだけなのかもしれないし。
「会ってもいいよね」
「俺に聞くことか?」
「いやー聞かないといけない気がしたんだよー」
 ばれてる。これはばれてる。どうしよう。

「ところで、図書館の後って予定無いよね?」
無言の俺にテーブルの向こうに座っている悪魔が笑顔で言った。

123:名無しさん@ピンキー
07/05/16 19:15:37 U/YYTEEn
終わりです

問い詰めのとき、怒りながらよりも、笑いながらのほうが、怖いと思うんだ
そんだけ

124:名無しさん@ピンキー
07/05/16 19:24:42 +l/bYeaP
>>122
一発ネタにしては主人公のキャラがくどいとオモタ
ていうか自分が浮気してるくせに彼女を悪魔呼ばわりかよって感じだ

125:名無しさん@ピンキー
07/05/16 19:35:01 yETSyWKf
最近みんな忘れがちなのか知らんが
>>3

126:名無しさん@ピンキー
07/05/16 20:17:21 TINb3X4t
>>124
いや怖いだろ

浮気してる男も悪いがwww

>>122
GJ
時間があれば長編お願いします><俺こういう独白調の主人公好きなんだ

127:名無しさん@ピンキー
07/05/16 22:34:18 E70tGg1e
>>86
トーナメントだと 8!/(2^7) で315通りかな?

128:名無しさん@ピンキー
07/05/17 00:23:37 L7evYajA
"非難所”もあながち間違いじゃあないね

129:名無しさん@ピンキー
07/05/17 00:25:14 L7evYajA
スマン、ミスった……
さっき書き込み損ねたメモ2の方を書き込んでしまった……

130:名無しさん@ピンキー
07/05/17 00:38:13 hBOmxoCm
お前ら、嫉妬SSで萌えるキャラ属性は何だ?
俺は、年上系が好き。
お姉さんもいいけど、熟女も良いな。

131:名無しさん@ピンキー
07/05/17 01:03:50 q21memxL
可愛い子、美しい女性が嫉妬してればそれでいい。
姉妹ロリ熟巨貧清楚快活なんでもこーい。

132:名無しさん@ピンキー
07/05/17 20:18:41 RRZULCsp
娘属性な俺はマイノリティー。

133:名無しさん@ピンキー
07/05/17 21:40:53 gdmUkxjR
バツ1の父親でその娘が実の父親にのめり込むというパターンが好きな俺も
きっとマイノリティー。

134:名無しさん@ピンキー
07/05/17 21:52:00 tCA26Ug8
俺は義理の娘が(ryまたは義理の母親(ry

135:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:13:01 5TQc2qlI
>>131
お前は俺か

136:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/05/17 22:28:38 RQaFQ2jB
では投下致します

137:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/05/17 22:32:20 RQaFQ2jB
 第1話『桜荘の愉快な人々』

 遠い過去と現実の境に行き来している俺はあの忘れられない告白の出来事を思い出しては
悪夢のように何度もうなされる事はしばしばで。そんな日の朝は嫌でも早く起きてしまうのだ。
 眩しい陽の日光がカーテンの隙間から入ってきて、暖かい陽気に包まれて俺は布団から出て、思わず背伸びを伸ばして欠伸をかく。
窓を開けて覗き込むとそこには満開な桜が咲いていた。

 桜荘。

 俺が大学に進学するために下宿先へと選んだアパートである。
更紗や刹那の幼馴染の関係の亀裂に走った原因を親や二人の両親たちに真相を喋らずに
突如進路変更した俺は気難しい親父と母親から勘当同然に家を出てしまった。
1年分の学費は払ってくれていても、毎月の生活費や仕送りはしてくれなかったので、

安い家賃のアパートを探していると不動産が紹介してくれた場所が、『桜荘』だった。
 家賃も破格な値段だったので俺は速攻に契約をして入居することに決めた。
古風な屋敷で建物自体はあちこちと老朽化は目立つが人が住めない状態ではない。

部屋は畳み部屋、洗濯は共同の洗濯機を使い、お風呂も共同で住んでいる住人と交代で入浴する。
トイレも共通のトイレがある。
今時、珍しいなんでもかんでも共同というのは住人同士のトラブル問題が勃発しそうで恐いのだが、
皆は仲がいいのかそういう事にならないらしい。

 俺が入居した日には住人共同の憩いの場で歓迎会など開かれたものだ。
今現在のお隣同士の希薄な関係は『桜荘』にはない。
ここには言葉では表現できない温もりや暖かさがここにはある。
 最後に『桜荘』の中庭には、大きな桜の木が立っている。
春の季節を巡る時に咲いている桜の木は住人や近所の皆様にとって、見ているだけで心が癒される『桜荘』の名物である。
桜が咲いている時は一般の方にも開放されて、休日にはお花見などで大いに盛り上がっている声が聞こえてくるものだ。

 今年も桜の木は満開に咲いていた。

 春は出会いと別れの季節。
 俺が『桜荘』からやってきてからちょうど1年である。

「さてといい加減にモノローグに浸っていると奴がとんでもない起こし方で襲ってくるかもしれん。
昨日は必殺エルボーを腹部にお見舞いされたから。今日はハイキックかもしれん」
 急いで俺は布団を押し入れに仕舞おうとした時に自分の部屋のドアが勢いよく開かれる音が聞こえた。
反応するのが遅くて、奴は次の動作で問答無用に襲ってきた。

「お・に・い・ち・ゃ・ん・。起きろぉぉぉぉぉっっーー!!」
「ぐはっっ!!」
 回転がかかったキックを予言した通りに俺の腹部を直撃する。
胃から昨日食べた物が吐き出しそうになった。少女は勝ち誇った顔をして、俺の体の上を馬乗りして見下すように言った。

「もういい加減に起きないと真穂さんが作った朝ご飯が冷めちゃうよ」
「雪菜。毎日毎日言ってるだろう。もっと、普通に起こすことができないのかよ」
「お兄ちゃんがいつまでものんびりに起きないから可愛い雪菜ちゃんが
少しでも眠たい時間を削ってまで起こしにやってきているんでしょうが。
感謝して雪菜に永遠の忠誠を誓ってくれるなら、真穂さんが作ってくれた玉子焼きをくれてあげてもいいよ」
「誰が誓うか。んなもん」
 俺は馬乗りになった雪菜を乱暴に押し退けた。年頃の女の子に触れているなら健康上よろしくはない。


 彼女の名前は、御堂雪菜。(みどう ゆきな)
 今月から近所にある学園を通う女子生徒で『桜荘』の住人である。
容貌は子供と見間違えるぐらいに幼いが最近は成長してだんだんと女の子の容姿になってきている。
俺をお兄ちゃんと呼んで慕うわけだが、そこにはまた別のエピソードである。

138:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/05/17 22:34:05 RQaFQ2jB
「うわ~ん誓ってよぉぉ。お兄ちゃん」
「もう、二人ともなにやっているの。雪菜ちゃんも深山君も今日も仲良しさんだよね」
 開いている扉から入ってきたのは、同じくアパートの住人である安曇 真穂(あずみ
まほ)さんがエプロン姿を身に付けていた。
「仲良しというか、迫り来る狂犬から身を守るために必死に抵抗しているだけなんだけどな」
「それはどうかな……」
 と、安曇さんは曖昧な微笑を浮かべた。

 安曇 真穂(あずみ まほ)
 俺と同じ時期に『桜荘』に引っ越してきた住人である。
年頃は俺と同じ年齢で、ここから大学に通っている。
主に『桜荘』における料理担当という貧乏くじを引いてしまった彼女は入居した日からめげずに
アパートの住人の料理を憩いの場で腕を奮っている。基本的には面倒見が良くて桜荘の良識人と言ったところだろうか。

「とりあえず、深山さんも雪菜ちゃんも戯れないでちゃんと朝食を食べに来てください。
そうしないと奈津子さんの胃袋が胃液で溶けてしまって、深山さんの部屋に殴り込みが来ますから」

 笑顔を絶やさずに安曇さんは恐ろしい言葉を残して俺の部屋を立ち去って行った。
あの人は男を冷笑で全てを凍り付かせる特殊な業を隠し持っている違いないと俺は密かに思っている。

「というわけで俺は奈津子さんを餓えさせるわけにもいかないから。雪菜はさっさと俺の部屋から出る。いいな」
「ええっ。どうして、そんな急に追い出すの? 雪菜のことが嫌いなの?」
「着替えるんだよぉぉ!!」

 未だにパジャマから着替えていない俺の部屋を無断に入り込んで行く女性達の奇抜な行動に慣れ始めていた。
普通の年頃の女の子なら男という狼の生物の生態をよく把握して、男の部屋なんて近付くはずもない。

ここの住人からは男と認識されていないのか度々とやってきては俺の部屋で時間を潰すのは日常茶飯事になっているのだ。
 これなんてエロゲー?


139:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/05/17 22:36:18 RQaFQ2jB
 桜荘の朝食は個々の部屋で食べるというごく一般的な摂り方はしない。
憩いの場という桜荘の住人が集う一室に皆が集まって一緒に朝食を食べるという変わった習慣がある。
俺も入居していた最初の時期は自分の部屋で寂しくご飯を食べていたのだが、
奈津子さんの脅しに似た強い勧めで俺も憩いの場で食事をすることにした。
不思議な事に皆で食べていると胸が暖かくなった。
それは失ったはずの幼馴染とお弁当を食べたあの頃を思い出してしまいそうになる。
 
 憩いの場に辿り着くとすでに桜荘の住人が全員揃っていた。
テーブルの上には安曇さんが作ってくれた朝食が数々と並んでいる。皆の顔を眺めてから俺は挨拶した。

「みんな、おはよう」
「おはようございます。一樹さん」
「少し遅いわよ。一樹君」

 丁寧に礼儀正しく挨拶を交わした方と乱暴に言葉を返した二人の女性は姉妹である。
前者は妹で、後者は姉である。この桜荘の中では支配者階級の立場にいる極悪な姉妹である。

 姉の方は高倉奈津子(たかくら なつこ)と言う。
 年頃は二十歳を少し過ぎており、桜荘の住人の中で圧倒的な長者である。
一応、桜荘の管理人兼オーナーであり日頃の老朽化したアパートの維持のためにいろいろと頑張って修繕活動をやっている。
特に定職に就いているわけでもなく、アパート運営に人生の全てを捧げている。あんまり儲からないらしいが。

 そして、妹の名前の方は高倉美耶子(たかくら みやこ)。
 雪菜と同じ学園に通う女子生徒であり、桜荘の管理人代理兼オーナー代理という役に立ちそうもない役職を持っている。
長い髪を腰まで伸ばしており、清楚を漂わせるような整った顔立ち。
遠く眺めている限りでは美人なんだろうが、その口を開いた途端に言い寄る男性がいなくなる程の毒舌の持ち主である。
恐らく、桜荘の中では一番腹黒いなのではないかと俺は密かに疑っている。

 桜荘の住人は

 御堂 雪菜

 安曇 真穂

 高倉 美耶子

 高倉 奈津子

 そして、俺。深山 一樹。
 以上。
 計5人が仲良く共同で暮らしている。
この少人数でよくボロアパートを運営しているのかと疑いたくもなるが奈津子さんの運営は
家賃収入以外に汚い手を使って得ている黒い収入のおかげで何とか維持をしてそうな気がしてしまう。
その辺の事は誰も突っ込まないという暗黙の了解があるため誰も触れようとする人間はいないだろう。


140:桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA
07/05/17 22:36:57 wC6Xbj9G
「うわ~ん誓ってよぉぉ。お兄ちゃん」
「もう、二人ともなにやっているの。雪菜ちゃんも深山君も今日も仲良しさんだよね」
 開いている扉から入ってきたのは、同じくアパートの住人である安曇 真穂(あずみ
まほ)さんがエプロン姿を身に付けていた。
「仲良しというか、迫り来る狂犬から身を守るために必死に抵抗しているだけなんだけどな」
「それはどうかな……」
 と、安曇さんは曖昧な微笑を浮かべた。

 安曇 真穂(あずみ まほ)
 俺と同じ時期に『桜荘』に引っ越してきた住人である。
年頃は俺と同じ年齢で、ここから大学に通っている。
主に『桜荘』における料理担当という貧乏くじを引いてしまった彼女は入居した日からめげずに
アパートの住人の料理を憩いの場で腕を奮っている。基本的には面倒見が良くて桜荘の良識人と言ったところだろうか。

「とりあえず、深山さんも雪菜ちゃんも戯れないでちゃんと朝食を食べに来てください。
そうしないと奈津子さんの胃袋が胃液で溶けてしまって、深山さんの部屋に殴り込みが来ますから」

 笑顔を絶やさずに安曇さんは恐ろしい言葉を残して俺の部屋を立ち去って行った。
あの人は男を冷笑で全てを凍り付かせる特殊な業を隠し持っている違いないと俺は密かに思っている。

「というわけで俺は奈津子さんを餓えさせるわけにもいかないから。雪菜はさっさと俺の部屋から出る。いいな」
「ええっ。どうして、そんな急に追い出すの? 雪菜のことが嫌いなの?」
「着替えるんだよぉぉ!!」

 未だにパジャマから着替えていない俺の部屋を無断に入り込んで行く女性達の奇抜な行動に慣れ始めていた。
普通の年頃の女の子なら男という狼の生物の生態をよく把握して、男の部屋なんて近付くはずもない。

ここの住人からは男と認識されていないのか度々とやってきては俺の部屋で時間を潰すのは日常茶飯事になっているのだ。
 これなんてエロゲー?

141:桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA
07/05/17 22:38:10 DzTuKXAS
>>140
桜荘の朝食は個々の部屋で食べるというごく一般的な摂り方はしない。
憩いの場という桜荘の住人が集う一室に皆が集まって一緒に朝食を食べるという変わった習慣がある。
俺も入居していた最初の時期は自分の部屋で寂しくご飯を食べていたのだが、
奈津子さんの脅しに似た強い勧めで俺も憩いの場で食事をすることにした。
不思議な事に皆で食べていると胸が暖かくなった。
それは失ったはずの幼馴染とお弁当を食べたあの頃を思い出してしまいそうになる。
 
 憩いの場に辿り着くとすでに桜荘の住人が全員揃っていた。
テーブルの上には安曇さんが作ってくれた朝食が数々と並んでいる。皆の顔を眺めてから俺は挨拶した。

「みんな、おはよう」
「おはようございます。一樹さん」
「少し遅いわよ。一樹君」

 丁寧に礼儀正しく挨拶を交わした方と乱暴に言葉を返した二人の女性は姉妹である。
前者は妹で、後者は姉である。この桜荘の中では支配者階級の立場にいる極悪な姉妹である。

 姉の方は高倉奈津子(たかくら なつこ)と言う。
 年頃は二十歳を少し過ぎており、桜荘の住人の中で圧倒的な長者である。
一応、桜荘の管理人兼オーナーであり日頃の老朽化したアパートの維持のためにいろいろと頑張って修繕活動をやっている。
特に定職に就いているわけでもなく、アパート運営に人生の全てを捧げている。あんまり儲からないらしいが。

 そして、妹の名前の方は高倉美耶子(たかくら みやこ)。
 雪菜と同じ学園に通う女子生徒であり、桜荘の管理人代理兼オーナー代理という役に立ちそうもない役職を持っている。
長い髪を腰まで伸ばしており、清楚を漂わせるような整った顔立ち。
遠く眺めている限りでは美人なんだろうが、その口を開いた途端に言い寄る男性がいなくなる程の毒舌の持ち主である。
恐らく、桜荘の中では一番腹黒いなのではないかと俺は密かに疑っている。

 桜荘の住人は

 御堂 雪菜

 安曇 真穂

 高倉 美耶子

 高倉 奈津子

 そして、俺。深山 一樹。
 以上。
 計5人が仲良く共同で暮らしている。
この少人数でよくボロアパートを運営しているのかと疑いたくもなるが奈津子さんの運営は
家賃収入以外に汚い手を使って得ている黒い収入のおかげで何とか維持をしてそうな気がしてしまう。
その辺の事は誰も突っ込まないという暗黙の了解があるため誰も触れようとする人間はいないだろう。

142:桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA
07/05/17 22:39:30 veSE+4M2
>>142
桜荘の朝食は個々の部屋で食べるというごく一般的な摂り方はしない。
憩いの場という桜荘の住人が集う一室に皆が集まって一緒に朝食を食べるという変わった習慣がある。
俺も入居していた最初の時期は自分の部屋で寂しくご飯を食べていたのだが、
奈津子さんの脅しに似た強い勧めで俺も憩いの場で食事をすることにした。
不思議な事に皆で食べていると胸が暖かくなった。
それは失ったはずの幼馴染とお弁当を食べたあの頃を思い出してしまいそうになる。
 
 憩いの場に辿り着くとすでに桜荘の住人が全員揃っていた。
テーブルの上には安曇さんが作ってくれた朝食が数々と並んでいる。皆の顔を眺めてから俺は挨拶した。

「みんな、おはよう」
「おはようございます。一樹さん」
「少し遅いわよ。一樹君」

 丁寧に礼儀正しく挨拶を交わした方と乱暴に言葉を返した二人の女性は姉妹である。
前者は妹で、後者は姉である。この桜荘の中では支配者階級の立場にいる極悪な姉妹である。

 姉の方は高倉奈津子(たかくら なつこ)と言う。
 年頃は二十歳を少し過ぎており、桜荘の住人の中で圧倒的な長者である。
一応、桜荘の管理人兼オーナーであり日頃の老朽化したアパートの維持のためにいろいろと頑張って修繕活動をやっている。
特に定職に就いているわけでもなく、アパート運営に人生の全てを捧げている。あんまり儲からないらしいが。

 そして、妹の名前の方は高倉美耶子(たかくら みやこ)。
 雪菜と同じ学園に通う女子生徒であり、桜荘の管理人代理兼オーナー代理という役に立ちそうもない役職を持っている。
長い髪を腰まで伸ばしており、清楚を漂わせるような整った顔立ち。
遠く眺めている限りでは美人なんだろうが、その口を開いた途端に言い寄る男性がいなくなる程の毒舌の持ち主である。
恐らく、桜荘の中では一番腹黒いなのではないかと俺は密かに疑っている。

 桜荘の住人は

 御堂 雪菜

 安曇 真穂

 高倉 美耶子

 高倉 奈津子

 そして、俺。深山 一樹。
 以上。
 計5人が仲良く共同で暮らしている。
この少人数でよくボロアパートを運営しているのかと疑いたくもなるが奈津子さんの運営は
家賃収入以外に汚い手を使って得ている黒い収入のおかげで何とか維持をしてそうな気がしてしまう。
その辺の事は誰も突っ込まないという暗黙の了解があるため誰も触れようとする人間はいないだろう。

143:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/05/17 22:39:50 RQaFQ2jB
「真穂ちゃん真穂ちゃん。私の秘蔵のお宝から一本持ってきてくれない?」 

「奈津子さん。朝から飲むんですか? 
さすがに朝から飲酒するのは人としてどうかと思うんですけど。
昨晩もビールを2缶と焼酎まで飲んで。本当に大丈夫なの」

「高倉奈津子。その程度の酒の量で倒れる程のヤワな体じゃないのよ。
せいぜい、私を酔わせるならその3倍のアルコールを持ってこいって」

「そして、お姉ちゃんのお腹は水太りの階段を一歩一歩と突き進んで行くのでした。
行き着いた先は、必死に虚偽宣伝しているダイエット通販に手を出して……
挙げ句の果てにはリバウンドで更に体重が増加するという顛末は簡単に予想ができます」

 安曇さんからアルコールを受け取った矢先に食卓で大人しくご飯を食べている美耶子がぼそりと呟いた。
カチンと来た奈津子さんは妹相手にムキになって言い返した。

「美耶子……あなたも言うようになったじゃない」
「アルコール依存症の姉を持つと月の生活費の半分が娯楽とDVDBOXに消えゆく運命なんですよ。
こうして、安曇先輩の手料理で栄養を補給することで何とかこの果てしない暗闇と混沌を頑張って生き抜いているんです。
いつも。ありがとうございますね」

「いえ、どういたしましてって……奈津子さんも美耶子ちゃんも自分の欲望のために無駄遣いが多すぎますよ。
一体何をしたら学生で買えないような銘柄の酒と毎日のように
配送会社から届けられるアニメのDVDを買えるんですか? 
お二人の喧嘩よりもそっちの方が不思議です」

 安曇さんの指摘通りに俺も高倉姉妹の放蕩ぶりの資金源の謎を解明したい。
ただ、その答えは二人の笑顔を微笑んで同時に言った。
「それは禁則事項です(だから)」

 余程、腹黒いことをやっているのであろうか?

「雪菜もお兄ちゃん名義で闇金からたくさんお金を借りて、欲しいものたくさん買ってきていいかな」
「人の名前で借りてくるんじゃねぇっっ!! 利息がありえない程に高いからやめておけ。人生狂うぞ」

 腹黒い方々の会話は子供の教育には宜しくないはずのだが。
この憩いの場に集まった以上は黒い話になるのは必然になってしまっている。
あの唯一の品行方正の安曇さんですらもこの空気に馴染んでしまっているから慣れというのは恐ろしいもんだ。

「深山さんも大人しく朝食を食べてくださいねぇ」
 会話に入ろうとした俺は見事に安曇さんから注意されてしまった。俺は嘆息を吐きながらせっせと作ってくれた朝食を口に運んだ。


144:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:40:52 gEDzG0Hg
>>141
>これなんてエロゲ?
こんなこと言う奴いねーよw


145:桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA
07/05/17 22:42:38 Fm6IBb6k
「真穂ちゃん真穂ちゃん。私の秘蔵のお宝から一本持ってきてくれない?」 

「奈津子さん。朝から飲むんですか? 
さすがに朝から飲酒するのは人としてどうかと思うんですけど。
昨晩もビールを2缶と焼酎まで飲んで。本当に大丈夫なの」

「高倉奈津子。その程度の酒の量で倒れる程のヤワな体じゃないのよ。
せいぜい、私を酔わせるならその3倍のアルコールを持ってこいって」

「そして、お姉ちゃんのお腹は水太りの階段を一歩一歩と突き進んで行くのでした。
行き着いた先は、必死に虚偽宣伝しているダイエット通販に手を出して……
挙げ句の果てにはリバウンドで更に体重が増加するという顛末は簡単に予想ができます」

 安曇さんからアルコールを受け取った矢先に食卓で大人しくご飯を食べている美耶子がぼそりと呟いた。
カチンと来た奈津子さんは妹相手にムキになって言い返した。

「美耶子……あなたも言うようになったじゃない」
「アルコール依存症の姉を持つと月の生活費の半分が娯楽とDVDBOXに消えゆく運命なんですよ。
こうして、安曇先輩の手料理で栄養を補給することで何とかこの果てしない暗闇と混沌を頑張って生き抜いているんです。
いつも。ありがとうございますね」

「いえ、どういたしましてって……奈津子さんも美耶子ちゃんも自分の欲望のために無駄遣いが多すぎますよ。
一体何をしたら学生で買えないような銘柄の酒と毎日のように
配送会社から届けられるアニメのDVDを買えるんですか? 
お二人の喧嘩よりもそっちの方が不思議です」

 安曇さんの指摘通りに俺も高倉姉妹の放蕩ぶりの資金源の謎を解明したい。
ただ、その答えは二人の笑顔を微笑んで同時に言った。
「それは禁則事項です(だから)」

 余程、腹黒いことをやっているのであろうか?

「雪菜もお兄ちゃん名義で闇金からたくさんお金を借りて、欲しいものたくさん買ってきていいかな」
「人の名前で借りてくるんじゃねぇっっ!! 利息がありえない程に高いからやめておけ。人生狂うぞ」

 腹黒い方々の会話は子供の教育には宜しくないはずのだが。
この憩いの場に集まった以上は黒い話になるのは必然になってしまっている。
あの唯一の品行方正の安曇さんですらもこの空気に馴染んでしまっているから慣れというのは恐ろしいもんだ。

「深山さんも大人しく朝食を食べてくださいねぇ」
 会話に入ろうとした俺は見事に安曇さんから注意されてしまった。俺は嘆息を吐きながらせっせと作ってくれた朝食を口に運んだ。

>>144
安価ミス?

146:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/05/17 22:43:00 RQaFQ2jB
 朝食を食べ終わると互いの食器は流し台に水で軽く汚れを落としてから食器洗い器の中に入れる。
安曇さんが全員分の食器が中に入っているのを確認してから洗剤を入れて、電源を入れた。
後は数十分後を経つと綺麗に洗い終わってくれているので文明の発達に改めて謝辞を述べたくなる。
 畳の上で皆はTVを見ながらぼんやりと過ごしていた。
春の季節になると自然と眠たくなるものだが、ここにいる5人は今日の予定について話し合っていた。

「雪菜ちゃんは明後日から入学式。
美耶子さんは明日から始業式が始まります。
奈津子さんはいつものようにお昼からお酒お酒で。
私は大学が今日は休み。
で、深山君はお仕事はどうなっているんですか? こんなにゆっくりしていいの」

「今日はオフだよ。そうじゃないと朝はこうやって落ち着いて過ごしてるはずないだろ。仕事があれば遅刻になってクビは確実だね」
「一樹さんもいい加減に何の目的もないフリーターから足を洗ってカタギの世界を生きましょうよ。
世の中は搾取搾取搾取の弱肉強食時代なんです。
何も考えずに30代を迎えると個人的カタストロフィーで完全に発狂しますよ」

 と、毒舌の持ち主の美耶子の胸を突き刺す一言を言われる。
さすがに会話を振った安曇さんも苦渋な笑顔を浮かべて居心地が悪そうにしていた。

「いや、働いたら負けっていう名言があるし」
「働く以前に一樹さんは無意味に色目を使っているからヤンデレ症候群感染した女の子から
後ろから刺されるのがお似合いなのかもしれませんね。
幼女から熟女まで自分の手元に置いていくような人は修羅場を狙いすぎてますよ」

「そのヤンデレ症候群はクリスマス前に政府が提案した一夫多妻制度の導入で解決されたんじゃないのか?」

 美耶子の言うヤンデレ症候群というのは昨年発生した女性にのみ発病する
一種の心の病である。感染した女の子達は片思いの相手に
他の女の子が近付いたりするとどんどんと病んで行くという恐ろしい病気である。
その病は昨年の政府が一夫多妻制の導入を決めたことによって表面的に解決したはずであった。

「まあ……深山君は優しい人ですから見た目で騙される人は多いかもしれませんね」

 と、安曇さんが視線を横に逸らしながら言った。
フォローを入れているつもりなのだろうか……俺の年齢=彼女いない歴だと勝手に想像されてそうだ。

 さて、今日の休日も憩いの場で桜荘の住人と一緒に過ごすことになるであろう。

 あの日、失った幼馴染の絆はもう二度と戻ることがないけど、俺はここの生活に充分に満足している。

 だから、時々不安に思うことがある。

 この生活が粉々に壊れ落ちそうな予感が……。


147:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:43:34 c0GyVcNd
>>145
相変わらずトラ氏は面白いですね
GJです

148:桜荘にようこそ ◇J7GMgIOEyA
07/05/17 22:45:05 piSDIc8Y
 朝食を食べ終わると互いの食器は流し台に水で軽く汚れを落としてから食器洗い器の中に入れる。
安曇さんが全員分の食器が中に入っているのを確認してから洗剤を入れて、電源を入れた。
後は数十分後を経つと綺麗に洗い終わってくれているので文明の発達に改めて謝辞を述べたくなる。
 畳の上で皆はTVを見ながらぼんやりと過ごしていた。
春の季節になると自然と眠たくなるものだが、ここにいる5人は今日の予定について話し合っていた。

「雪菜ちゃんは明後日から入学式。
美耶子さんは明日から始業式が始まります。
奈津子さんはいつものようにお昼からお酒お酒で。
私は大学が今日は休み。
で、深山君はお仕事はどうなっているんですか? こんなにゆっくりしていいの」

「今日はオフだよ。そうじゃないと朝はこうやって落ち着いて過ごしてるはずないだろ。仕事があれば遅刻になってクビは確実だね」
「一樹さんもいい加減に何の目的もないフリーターから足を洗ってカタギの世界を生きましょうよ。
世の中は搾取搾取搾取の弱肉強食時代なんです。
何も考えずに30代を迎えると個人的カタストロフィーで完全に発狂しますよ」

 と、毒舌の持ち主の美耶子の胸を突き刺す一言を言われる。
さすがに会話を振った安曇さんも苦渋な笑顔を浮かべて居心地が悪そうにしていた。

「いや、働いたら負けっていう名言があるし」
「働く以前に一樹さんは無意味に色目を使っているからヤンデレ症候群感染した女の子から
後ろから刺されるのがお似合いなのかもしれませんね。
幼女から熟女まで自分の手元に置いていくような人は修羅場を狙いすぎてますよ」

「そのヤンデレ症候群はクリスマス前に政府が提案した一夫多妻制度の導入で解決されたんじゃないのか?」

 美耶子の言うヤンデレ症候群というのは昨年発生した女性にのみ発病する
一種の心の病である。感染した女の子達は片思いの相手に
他の女の子が近付いたりするとどんどんと病んで行くという恐ろしい病気である。
その病は昨年の政府が一夫多妻制の導入を決めたことによって表面的に解決したはずであった。

「まあ……深山君は優しい人ですから見た目で騙される人は多いかもしれませんね」

 と、安曇さんが視線を横に逸らしながら言った。
フォローを入れているつもりなのだろうか……俺の年齢=彼女いない歴だと勝手に想像されてそうだ。

 さて、今日の休日も憩いの場で桜荘の住人と一緒に過ごすことになるであろう。

 あの日、失った幼馴染の絆はもう二度と戻ることがないけど、俺はここの生活に充分に満足している。

 だから、時々不安に思うことがある。

 この生活が粉々に壊れ落ちそうな予感が……。
>>147
誤爆?

149:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:46:24 6BDlayfV
>>148
トライデント氏GJです!!!!!!!!!!!


150:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/05/17 22:47:58 RQaFQ2jB
投下終了です。

て、スレを見直したら見事に荒れていますね。
コピペで乱立しているおかげで少し読みづらいですね。
後で避難所で同じ内容の物を投下した方がよろしいでしょうか?




151:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:49:50 5ayO35B6
>>150
まとめるとき面倒になりそうだからこのままでいいと思う

152:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:50:33 nIcgXFNF
>>150
スルーでおk

153:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:51:48 n7qCF4WJ

age荒らしkita

154:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:52:26 jzykelIv
>>150
乙。コピペはNGワードでどうにかなるからそこまで気を使わなくてもいいと思うけどね。
キャラが多くて騒がし楽しいものになりそうだな。
ただ、一点だけ指摘を。「満開な桜が咲く」という表現は、多分おかしい。頭痛が痛いと同系統の表現。
「桜が満開になっている。」「桜が満開だ。」でいいと思う。

155:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:52:58 YJw887Yl
>>150
スレが荒れるしこれからは避難所に投下したほうがいいんじゃね?


156:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:52:58 nIcgXFNF
すまねぇ、ageちまった……

157:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:53:40 TKYPuOme
>>150
うはwwwwいい展開になりそうだwwww
トライデント氏GJですた!

う~ん・・・専ブラ使ってるから俺は問題ないんだけど・・

158:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:54:07 YEtCZydm
コピペの方が面白かったので
貴方の存在はいりません
とりあえず、トライデント氏の妄想を垂れ流しにするのやめてくれませんか?


159:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:56:42 CEGCl9cx
>>150
2度手間だし次からは避難所で
皆が専ブラ使ってるわけでもないしね


160:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:58:11 V2gAVP1W
>>150
投下お疲れ様です
ここに幼馴染がどう絡んでくるか楽しみですね
偽者はすぐ判るので避難所に落とす必要はないかと

>>140-142,145,148
ただでさえ鳥付きをコピペしてもバレバレなのに
いちいちID変えていたら余計おかしいってw

>>144,147,149
釣りか自演か天然か知らんが偽者にアンカーするな

161:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:03:01 V2gAVP1W
>>158
偽者必死だな

162:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:05:11 rnxqZaPH
>>149
便利だし使えばいいだろ


163:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:06:07 rnxqZaPH
>>159


164:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:08:42 j1bJJmNK
ID:V2gAVP1W
おぉ~っとここに荒らしに反応するアホ登場~

165:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:14:26 ziDeJWII
>>150
乙です

166:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:16:27 5TQc2qlI
>>150
GJ!!
これだけのキャラを動かすのはやっぱり凄い・・・!!
変なのは気にしないで頑張ってください!

167:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:59:16 aR1fCMb8
トラ氏GJ!!!!続き楽しみにしてます。

168:名無しさん@ピンキー
07/05/18 13:11:33 HaVT7SzA
>>164
そうしてまたID変えて住人を装って煽るのか

169:名無しさん@ピンキー
07/05/18 14:12:18 mGZDqSH7
193 :名無しさん@ピンキー:2007/05/17(木) 23:22:49 ID:+O3+fuD10
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35
スレリンク(eroparo板)

>>140>>141>>142>>145>>148>>158   
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿
荒れかねない挑発的なレス
個人コテ叩き・投稿者のコピペ
6. 連続投稿・重複
連続投稿・コピー&ペースト

作者さんがSSを投下した直後にコピペしてスレの進行を阻害しています。
またコピペの最後の行から同一人物と思われます。


170:名無しさん@ピンキー
07/05/18 16:42:50 FCSW/6z3
はいはい、、続けて特定の人物の相手する気なら避難所逝こうぜ

171:名無しさん@ピンキー
07/05/18 16:51:54 Gqn3DZVB
>>170
避難所は避難所だろ
ここの荒らしの話ばかりされても困る
スルーしろ

172:名無しさん@ピンキー
07/05/18 17:23:46 3wZZ4G97
荒らしの原因になったトライデント氏は避難所で寂しく妄想を垂れ流すということでOK?
まあ、あっちに投稿されても誰も見向きしてないから荒れなくていいね

173:名無しさん@ピンキー
07/05/18 18:34:13 jYP8VW2L
↑(^Д^)

174:名無しさん@ピンキー
07/05/18 21:01:29 lXeD1o+/
>>172
m9(^Д^)


175:名無しさん@ピンキー
07/05/18 21:04:13 dxa+yf0B
これで削除板のコピペは3度目か…はぁ
もしかしてそれに生きがいとか感じちゃってんの?

176:名無しさん@ピンキー
07/05/18 23:50:19 590Gtgiw
194 :名無しさん@ピンキー:2007/05/18(金) 18:21:26 ID:p9XjZcqF0
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その35
スレリンク(eroparo板)

>>144>>147>>149>>164>>171>>172
5. 掲示板・スレッドの趣旨とは違う投稿
荒れかねない挑発的なレス
個人コテ叩き

>>193の荒らしと同一人物と思われるレスを追加します

また見境無くなってきたな、と思われるって何?

177:名無しさん@ピンキー
07/05/18 23:53:13 zcqPkEjJ
もうホント勘弁しろよ……

178:名無しさん@ピンキー
07/05/19 00:06:01 8KFC6wJP
>>176
楽しいか('A`)?

179:名無しさん@ピンキー
07/05/19 00:09:29 v/nEHRKg
嫉妬の炎に包まれた彼女でもない恋人未満の女の子に
膝枕されていると実の姉でもない年上のお姉さんが主人公
争奪戦に参戦してくるようなSSが読めるのは嫉妬スレだけ!!

ってみたいなCMを夢で見た・・。
正夢にならないかな

180:名無しさん@ピンキー
07/05/19 00:16:47 8KFC6wJP
>>179
ちょっと過程を省きすぎじゃね?

181:名無しさん@ピンキー
07/05/19 00:20:28 hZvAQdag
まぁ、夢だし

182:名無しさん@ピンキー
07/05/19 00:30:14 v/nEHRKg
妹「お兄ちゃん・・小さな頃にお嫁さんにしてくれるって約束してくれたのに
  どうして・・どうして・・そんな女を選んだの? お兄ちゃんを奪ったお姉ちゃんなんかと!!」
姉「ごめんね妹ちゃん。私はどうしても弟君の事が好きだった。あなたになんて渡したくなかったんだよ」
妹「そ、そ、そんなの私だって同じだよ。お姉ちゃんだけにはお兄ちゃんを渡したくなったの。
  私が持っていない全ての物を持っているお姉ちゃんにだけは大事な物で勝ちたかった」
姉「でも、もう遅いよ。弟君は私の体に溺れている。時間をゆっくりかけて骨抜きにしたんだから・・」


と、今度は適当に主人公、姉、妹の三角関係と修羅場を軽く過程を省いて書いてみた
誰か書いてくれませんか?



183:名無しさん@ピンキー
07/05/19 00:41:57 jUKyP39q
まとめに行ったほうがはえぇよ

184:名無しさん@ピンキー
07/05/19 00:46:33 RecdHnMd
>>180


普遍的な日常─

変わらない筈の毎日─

全ての始まりは、幼馴染みの一言だった─

「○○くん、ずっと好きでした」
屋上で囁かれた思い。
広がる困惑

「兄さん、告白されたんだって?」
妹の冷たい一言。
抱いた疑念

「○○ちゃん、お姉ちゃんとずっと一緒だよね?」
姉の厳しい詰問。
感じた恐怖

奏でられ始めた純愛と狂気の二重奏

「この泥棒猫!!」
「殺す……殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスッ!!」
「兄さんどいて、そいつを殺せない!」
「クスクスッ……兄さん、兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん兄さん……」
「ねぇ○○ちゃん、そんな雌狐ほっといてご飯にしましょ?」
「○○ちゃん、そのお料理私の特製愛の調味料入りだよ?おいしい?」

乙女達の醜くも美しい独占欲。

渦巻く謀略と狂気と流血の果てには──

こんな作品は修羅場スレにて公開中!



てな感じでCM化したらどうですかね?

185:名無しさん@ピンキー
07/05/19 00:48:47 lUzSflj2
そろそろフラッシュ職人が光臨……?

186: ◆Xj/0bp81B.
07/05/19 01:38:02 A21pw/ec
投下します。

187:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/05/19 01:39:53 A21pw/ec
今朝のあの悪夢。
その中で、小さな少年が最後に言ったあのセリフを。


「どうして僕にはお母さんがいないの?」


何故、あの時、あんな事を言ったのか。
─そんな事は、分かっている。
誰もいない家が、一人が寂しかったからだ─。
気がつくと、翔は立ち上がっていた。覚悟は決まっていた。澄香の元へ行こう、と。メールには彼女の居場所を示す手掛りは何もない
。しかし不思議と、直覚的に感じていた。きっと澄香は自分の家にいるのだろう。
机の上に転がっている鉛筆や消しゴムを、そのまま鞄に突っ込み、持っていた単語帳を上から乱暴に押し込む。
その鞄を肩にかけ、横の席で早くも舟をこきはじめた寺田に一言告げる。
「悪い、俺帰るわ」
いきなり寺田が顔をあげた。夢の世界を引きずっているのか、目が半開きで、表情がついてきていない。しかし、それでも驚いている
だろう事は分かった。その寺田が死にかけの金魚のように口をパクパクさせて、何かを言おうとしている。が、寺田が声を発するより
先に翔は地面を蹴っていた。
主のいない教壇の上を駆け抜ける。半開きのドアに体を滑りこませ、廊下に出る。
そのとき、背後から伸びた手に首根が掴まれ前のめりになったところを、襟首に首を絞めつけられ、翔は綺麗なお花畑を見た。思わず
振り返る。
「あんた、どこ行くのよ」
中野だった。彼女は眉を釣り上げ、冷たい瞳で翔を睨んでいる。
「どこって。鞄持って便所に行く奴はいないだろ? 帰るんだよ」
翔は喉元をさすりつつ言う。すると、世界でもっともありえない光景を見たといった顔で、中野が消えるように呟く。
「う、そ……」
しかし、彼女はすぐに態勢を建て直し、翔を鋭い眼光で見据え、
「ばっ、馬鹿じゃないの!? あんたねぇ、今日の試験がどれだけ大事か分かってないんじゃない?今日の試験は、大学進学がかかっ
ているのよ、何があっても最後まで頑張らなきゃ駄目なのよっ!!」


188:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/05/19 01:41:25 A21pw/ec
中野はほとんど叫んでいた。とてつもない迫力で、今にも飛びかかってきそうだった。しかし、翔は怯まない、決意も変わらない。
「分かってるさ。だけど、どうしても帰んなきゃいけないんだよ」
翔は真っ直ぐ、彼女を見つめ返して言った。自分の意思を、瞳に込める。その決意が伝わったのか、中野は悔しそうに唇を結び、うつ
むいた。彼女の肩が、小さく震えている。
「……悪い、じゃあ俺、帰るわ」
そう言い残すと、踵を返し、走り出そうとした。そのとき、背中から、蚊の鳴き声のように小さく、そして悲痛な呟きが聞こえた。
「そんなに、あの娘が大事なの……?」
走り出せなかった。彼女の声が、意思が、まるで植物の蔦のように、翔の未練を絡め取り、先へ行く足を止める。
そして思うのは、「あの娘」。彼女が言ったその言葉が指す人物は、おそらく澄香であろう。それ以外に、あの娘で思い当たる節がな
い。しかし、それは中野の知りえない話であり、またありえない話である。それなのに何故、中野があの事を知っているのか、その疑
問が無意識に口についた。
「どうして、お前……」
「ねぇ、答えてよ。あの娘の何がいいの?」
翔の疑問は中野の涙声にかき消された。
「私じゃ駄目なの?私はまだ綺麗だよ、汚れていないよ。それに翔だったら、汚されてもいいよ」
まるでミルクをねだる仔猫のように甘く、そして、どこか哀れを誘うその声に、ドキリと、胸がときめいた。普段の中野が見せる強気
な態度はすっかり影をひそめ、しおらしい部分が表に出ている。そのギャップが、翔の心に熱くてむずかゆい感覚を忍ばせる。しかし
、それでも決意は変わらない、いや変えてはならない。
「……何が駄目ってわけじゃないんだよ」
翔は背中を見せたまま、喉から声を絞りだした。が、決して振り返りはしなかった。おそらく今の中野は、彼女の中で一番可愛いい顔
をしている、と思う。振り返ったら、その中野の顔を見たら、せっかくの決心が揺らいでしまう気がした。


189:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/05/19 01:44:17 A21pw/ec
「じゃあ、どうして?」
心に染みる中野の声。
翔は考える。なぜ、澄香と付き合っているのか。そしてなぜ、中野ではなかったのか。その答えは。
「……何となく似てるんだよ、俺と澄香ってさ。だから、」
「どこがよっ!?全然似てないじゃないっ!!」
翔の言葉を遮り、中野がいきなり声を張り上げた。溜った鬱憤がついに抑えられなくなってしまったかのように、感情が溢れだし明ら
かに錯乱していた。
今の刺のつきでた中野に、がさつに触れると怪我をする。だから、翔はやり方を変える事にした。振り返り、中野の濡れた瞳を真っ直
ぐ見つめる。気丈に涙を溜め込んだ瞳は、気高く、息を飲むほど綺麗だった。そこから一筋の涙の趾が、ほんのりと染まった頬を通り
、薄く紅を指した口許にまで道を作っている。それは、大人の女性の顔だった。
やはり、中野は美しかった。輝いて見えた。しかし、決して心を揺るがせてはならなず、逃げてもならず、退いてもならない。複雑に
絡み付いた未練の蔦を、一本一本丁寧にほどいていくように、言葉を選びながら翔は問う。
「中野はさ、学校から家に帰った時、何をする?出来るだけ丁寧に思い出して答えてくれないか」
「何よそれっ!?そんな事、関係ないじゃないっ!!」
「関係、あるんだ。頼むよ、答えてくれ」
翔は中野から目を離さず、ジッと彼女の瞳を見つめる。中野も見つめ返してくる。しばらくすると、中野は翔から目を反らして、ぶっ
きらぼうに、
「まず、ドアを開ける」
一つ、蔦がほぐれた。
「次は?」
「……ただいまって言う」
二つ。
「ただいまって言うと、どうなる?」
「どう、って。奥からおかえりって声が返ってくる」
三つ目で、翔は溜め息をもらした。
「それ、だよ」
「え?」
「それなんだ。俺も澄香もさ」
中野は意味が分からないといった様子で、おおげさに髪を振り乱しつつ、
「ちょっと待ってよ!わけわかんないよ!!何がそれなの? 何が違うの?私が言ったのは当たり前の事じゃない!!誰だって同じ事
するわ!!」


190:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/05/19 01:47:26 A21pw/ec
当たり前。その響きが翔を悲しくさせる。昔から、翔にはその当たり前がなかった。
「その当たり前にさ、俺も澄香も憧れていたんだよ」
しみじみと、肺の空気を吐き出すように言い、翔は目を瞑る。深い暗闇に包まれ、あの時の孤独感と寂廖感が蘇る。その感覚をかき乱
すように、中野が息を飲むのが分かった。どうやら、隠された意味を察したようだ。翔は再び語り出す。
「俺は、澄香と同じ境遇だったし同じ経験をしてる、気持ちも分かる。だからこそ、ほっとけないんだ」
ゆっくりと瞼をあげると、そこには中野の白い顔があって、彼女は唇をきつく噛みしめ何かを堪えているようだった。やがて、その唇
がゆっくりと言を紡いだ。
「じゃあ翔は、あの娘と同じだから、行くの?」
頷く。おかしい、と、か細い声の後、まるで坂道を転がる車輪のように、中野の言は勢いを増していく。
「おかしい。そんなの、絶対おかしいよ!!そんなの、ただ同情してるだけじゃないっ!!」
中野の震える唇が、唾液で、ヌメヌメとねばついた光を放っていた。
「同情……か。ああ、その通りだよ。俺は多分、澄香に同情しているだけだ。だけど、それを理由にしちゃいけないのか?」
同情だっていい。寂しい時、苦しい時、誰かが側にいてくれるのであれば、それがどんな理由であっても構わない。翔はそう思ってい
るし、きっと澄香も同じだ。それに、同情がその先へと発展する可能性だってある。現に、澄香は変わりはじめ、翔も初対面の時には
考えられないほどの好意を彼女に抱いている。もちろんそれは、恋と言えるほど成熟した気持ちではないが、まだ先がある。ゆっくり
と、彼女に惹かれつつある。
それは別に中野が嫌いだからでも、ダメだからでもない。ただ、澄香の方が、澄香がいいからだ。
「かわいいとか、優しいとか、処女だからとか、そんな理由だけで恋に落ちるほど俺は謙虚じゃないんだ」
翔がゆっくり、しかし一つ一つはっきり言う。中野はうちひしがれたように表情を萎ませた。その言葉が、翔なりの拒絶だと理解した
のだろう。


191:すみか ◆Xj/0bp81B.
07/05/19 01:48:56 A21pw/ec
「だけど、だけど、もう少しだけ、様子を見ようよ。あと、二時間だけなんだし、最後まで頑張ろうよ」
それでも中野は食い下がる。まるで母親に玩具をねだる幼児のように、彼女の瞳には期待と不安が同じだけ共存していた。
「いたずらだったら、取り返しがつかないよ?」
その言葉を最後に、彼女は声を失った人魚のように押し黙り、しかし、それでも声にならない声は確かに聞こえてくる。その唇が、頬
が、そして瞳が必死で翔に訴えかけている。それが、彼女の必殺の表情なのだろう。
ずっとおかしな話だと思っていた。メールの内容も、それが誰からのものであるかも、中野が知っているはずがないのに、知っている
ように思えてならなかった。しかし、そんな事はもうどうでもよくなっていた。
未練に絡み付いた蔦は、いつの間にかあと一本にまで数を減らしていた。弱々しく張り付いたそれを、今なら乱暴に振り払う事も出来
る。しかし、翔は最後の一本を丁寧にほどいた。
「……いたずら、か。まぁ、その時は、澄香が無事でよかったって思う事にするよ」
必殺の表情を浮かべていた中野の顔から、まるで凪のように表情が消えた。中野は呆然自失といったふうで、口を動かし、視線をさま
よわせている。そんな彼女に、翔はいつものようにおどけて見せた。
「もちろんその後、小一時間たっぷり説教してやるつもりだけど、な」
中野の体から力が抜けた。彼女はまるで枯れ葉のように、フラフラと廊下の壁にもたれかかる。そこから先は見ずに、翔は踵を返し階
段へと向かう。
途中、背中からむせび泣く声が聞こえてきたが、振り返りはしなかった。


192: ◆Xj/0bp81B.
07/05/19 01:50:21 A21pw/ec
投下完了。
次回から、誰かが狂い始めます。そしてようやく、話のテンポも上がる、はず。

193:名無しさん@ピンキー
07/05/19 01:54:08 8KFC6wJP
>>192
キタ―(゚∀゚≡゚Д゚)ムハァ―!!
リアルタイムで読めた俺は何て幸せなんだ・・・
とうとう修羅場フラグが完全に立ててしまった翔の今後にwktk!!

194:名無しさん@ピンキー
07/05/19 09:05:04 MaBqKXvG
私の作った御飯食べてよ。って2時間叩かれ続けた者ですが修羅場は近いですか?意地でも寝たフリしてたけどクズ主人公にはなれそうですか?

195:名無しさん@ピンキー
07/05/19 09:58:38 qVmu7CKg
翔が男になった――!
いやスゲェ始めて翔がカッコいいと思えましたよw
GJッス!

196:名無しさん@ピンキー
07/05/19 10:48:46 1riznWVO
>>192 こんなエロゲの主人公がいたら僕はもう…!!

197:名無しさん@ピンキー
07/05/19 12:05:15 AIQ27V1W
修羅場スレの主人公で始めて漢だと思える奴を見た。
なんか感動ですわー。

198:名無しさん@ピンキー
07/05/19 15:46:17 FlD9gq+C
>>194
2時間というのが嘘くさいが、もし本当なら修羅場は近いな。
とりあえず、彼女や奥さんだったら答えてやれ。

199:名無しさん@ピンキー
07/05/19 15:51:15 ecL3szlm
なんだかまとめサイトが重く感じるな。俺だけかな?

200:名無しさん@ピンキー
07/05/19 16:25:30 8KFC6wJP
>>199
俺のPCでは普段どうりだが、回線に何かあったんじゃね?

201:名無しさん@ピンキー
07/05/19 16:56:07 ecL3szlm
そうなのかなー
それにヤンデレSSのまとめサイトもちょい重く感じるんだよな
その2つだけ……それ以外は何の異常もないのはずなのに、どうしたんだべ

202:名無しさん@ピンキー
07/05/19 17:43:42 8KFC6wJP
>>201
お前のPCが嫉妬してるんじゃないか?
「あのサイトばかり見るんじゃなくて、もっと私を使って」とか

203:名無しさん@ピンキー
07/05/19 19:21:00 3EvCZAsV
どちらもFC2の無料HPだったような気がする・・


204:名無しさん@ピンキー
07/05/19 20:05:03 VNjX5TnL
んー、俺も多少遅い気がする
見れない程じゃないが

205:名無しさん@ピンキー
07/05/19 20:43:34 d0NHGRXb
多少とかちょっと程度で言われてもね

206:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
07/05/19 21:33:31 RiFlkXMF
投下します。前回同様区切りの都合上長いです。

207:両手に嫉妬の華を ◆kNPkZ2h.ro
07/05/19 21:34:10 RiFlkXMF
「……ッ!」
 多分店内の客の半数が俺に奇異の視線を向けているんだろうが、そんなこと気に掛けていられる
ほどの余裕は欠片もなかった。
 つい数秒前に送られてきた、改行も句読点もないのに律儀に漢字変換だけはしっかりされてある
奇怪なメールの文面が頭にこべりついて離れてくれない。正直最初は何かの悪戯メールだと思った
しその方が良かった。しかしそのメールには俺の名前が書いてあるから、知らない誰かが間違えて
しまったというケースはありえない。知り合いにしたって俺の友達にこんなに手の込んだ気色悪い
ドッキリを仕掛けてくる奴はいない。
 それにそんなに考えなくても、決定的なことがある。簡単なことだ、送信者の欄を見ればいい。
しかし、俺はそこを見るのを躊躇っている。だって、俺はその人物に心当たりがあるからだ。全く
の赤の他人ではなく且つ友達と言えるほど過ごした期間は長くない相手―、一人しかいない。
 店内の静寂と同化しそうなほどの微妙な動きで、俺は視線を送信者の欄へと向ける。そこには、
意味を理解し難い半角英数字の羅列が記されていた。だが、それを見て俺はデジャビュに似たもの
を覚えた。当然だ。俺はこのメールアドレスを見たことがあるんだからな。
 あの土手でこのメールアドレスを教えてもらえて喜んだ分だけ、その体験が容赦なく俺に現実の
重みを伝えてくる。
 俺は僅かに”そうでない”ことを祈りながら、携帯電話に映し出されているメールアドレスと、
別の手に持っているメモに記されているそれとを見比べる。そして俺の願いは儚く崩れ去る。
 二つのアドレスは、一方は冷たく機械的なのに対しもう片方は見ているだけで微笑ましくなって
くるような愛らしい丸びを帯びた文字であるという違いを除いて、一文字も違うことはなかった。
 愛しき佑子さんのアドレスと悪戯一歩手前の迷惑メールもどきを俺の携帯に送りつけてきた主の
アドレスが同じということが示す事実は一つ―このメールの送信者が佑子さんだということだ。
 こうも回りくどい道筋でこの結論を導き出したのは、俺が無意識の内に現実を受け入れることを
拒んでいたからなんだろう。素直にすぐに送信者の欄を見ればいいものを。自分でも呆れる。
 何で佑子さんが俺のメールアドレスを知っているのだとか、俺への呼称が”くん”から”さん”
になっていたりと不可解な点はあるが、それでも佑子さんが俺にメールを送ってきたという事実が
揺らぐことはない。
 意味もなく暴れたい衝動を何とか抑え俺はもう一度佑子さんからのメールに視線を向ける。
 理由はわからないが切羽詰った状況だということは一目瞭然。「ごめんなさい」を四回も書いて
いる辺りから推測するに、情緒不安定でもあるようだ。俺は謝られるようなことはしていないし。
 そのことについては直接佑子さんに訊くとして、今注目すべきは「私土手で待ってますから」と
いう一言だ。佑子さんの置かれている具体的な状態は俺には計り知れないが、とりあえずあの土手
にいるということだけは確定事項なようだ。助けてくれといった内容は書かれていないから危機的
状況だという訳ではないことだけが安心の拠り所だ。
 携帯を閉じメモと一緒に乱暴に鞄の中に押し込めるとそれを肩に掛ける。よし出発準備完了。
 とりあえずは佑子さんとコンタクトを取れないと話が見えてこない。まさか佑子さんがこの俺に
『実はドッキリでした』と言いたいが為にこんなメールを送りつけてきたとは到底思えないし思い
たくもない。仮に本当にこの二日間の佑子さんとの体験が全て仕組まれていたものだとしたら、俺
はその場で笑った後、家に戻って自室で枕を三つほど涙で濡らしてやる。そして一生女性不信症者
として余生を過ごしてやるさ。
 たとえ佑子さんが相手からの想いを面白がるような人だったとしてもだ、それでも許せてしまう
ほど俺は彼女のことを好きになっちまってるようだからな。
 行く末わからぬ決意を抱きつつ、俺は店を出ようとする―ところで思い出した。
「仲川……どこ行く気なの? ねぇ?」
 朝は悪戯っぽく笑い、昼は俺に怒鳴られて地に足が着いていないかの如く不安定に視線を泳がせ
て、一度俺が謝るとまた笑顔が復活して、そうかと思ったら今度は露骨なまでな作り笑いを浮かべ
て、意味不明なことを真剣染みて言った後俺にコーヒーぶっかけるとまた恐いほど悲しそうに瞳を
震わせ、挙句の果てには近寄り難い雰囲気を醸し出しながら目を見開かせつつ俺の携帯を弄る―
そんな風に表情がコロコロ変わる、佐藤早苗が目の前にいることを。


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