【異形化】人外への変身スレ第二話【蟲化】at EROPARO
【異形化】人外への変身スレ第二話【蟲化】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
07/05/01 01:08:12 OAegQ3xc
乙。

前スレって、>>857まで?

3:名無しさん@ピンキー
07/05/01 01:29:04 /BJ0C4Go
587ではないかと。

4:名無しさん@ピンキー
07/05/01 01:35:06 OAegQ3xc
ああ、素で間違えた……orz

5:名無しさん@ピンキー
07/05/01 02:07:58 Vk6XtNX4
>>1に激しく乙と言いたい

6:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/05/01 18:05:26 uqDZe94l
ユベールへの指示は、ジェラールの意識を二分するため。
まともにやれば、ジェラールが駆け寄ってイヴォンヌを倒しておしまい。だから彼女は
ユベールを、羽を焼かれて飛べないわたしへと差し向けた。
わたしを守るために戦おうとしているジェラール。そんな彼が、わたしへの危険を
無視するわけがない。魔法使いはそう読んだのだろう。
そしてそれは正しかった。
ジェラールを避けるように大回りしながら剣を構えてわたしを狙うユベール。けど
その前に屈強な戦士が立ち塞がる。
振るわれた斧が巻き起こす一陣の旋風。
わたしに向けて突き出されようとした剣が、断ち落とされた腕ごと地面に落ちた。
「ひ、ひいいいぃっ!!」
うろたえて傷口を押さえるユベールを蹴り倒して気絶させると、ジェラールはわたしに
向き直って軽く笑いかける。
でも、そんな余裕があるんだろうか。
「つくづく馬鹿ね、ジェラール! 大事な蠅と一緒に黒焦げになるがいいわ!!」
イヴォンヌの声に視線を向ける。
複眼の捉える無数で一人の魔術師が、胸の前に構えた両手の中から今にも弾けんばかりの
巨大な電光を発生させていた。わたしが見たことのない魔術。半年あれば技量が上達
していてもおかしくないし、昨夜は手の内を晒してなかったということだろう。
たぶんあれは、話に聞いた魔術師の高位呪文『雷の奔流』。長射程と高威力を誇り、
わたしはもちろんジェラールでもまともに喰らったらただでは済まないはず。
敵の視線はわたしに据えられていた。わたしを狙えば自動的にジェラールが庇うことを
確信しているのだろう。
逃げようにも空は飛べない。蠅の貧弱な肢で地面をよたよた這っても、絶好の的には
変わりない。
ただ自分が攻撃されるだけならまだしも、ジェラールを巻き込むなんて最悪だ。なのに
今のわたしにはそれを打開する方途が思い浮かばない。
声をかけるのもためらわれ、無言でジェラールを見上げる。蠅なんかに顔を向けられても
いい迷惑だろうけど。
でも、彼は優しく微笑んでくれた。
「しくじったら回復呪文頼むぜ」
気軽にそう言うと、わたしを背後に置く形でイヴォンヌに向かって迫っていく。
けれども間に合うわけはなく、丸太のように巨大な電光がジェラール目がけて迸った。

7: ◆eJPIfaQmes
07/05/01 18:18:14 uqDZe94l
>1
ありがとうございます。


>拙作を読んでくださっている方々へ
前スレでちゃんと終わらせることができなくてすみません。
この後は、ラストまで書き溜めてから一気に投下しようと思います。
まだもう少し時間がかかりそうで重ね重ね申し訳ございませんが、
お待ちいただければ幸いです。

8:名無しさん@ピンキー
07/05/01 19:51:17 p5+URL2z
>>6,7
待ってました!
お待ちしてます!!

9:名無しさん@ピンキー
07/05/02 06:56:56 2cmq94ig
うお、投稿きとるし!


前スレの保守し切れなかったのが悔やまれるぜ……orz

10:名無しさん@ピンキー
07/05/02 21:50:20 P4xLmQfn
保守

11:名無しさん@ピンキー
07/05/04 00:49:42 XcQOV4El
頑なに保守

12:名無しさん@ピンキー
07/05/06 00:43:14 dmypq/we
保守

13:名無しさん@ピンキー
07/05/06 21:10:50 EZewLx2w
保守

14:名無しさん@ピンキー
07/05/08 00:03:10 KUSlT75G
hosyu

15:名無しさん@ピンキー
07/05/09 03:49:26 pTKOxYjj
保守

16:名無しさん@ピンキー
07/05/11 03:00:40 JHmChOn1
ほしゅ

17:名無しさん@ピンキー
07/05/14 02:35:06 sbGRdLlj
ホッシュ

18:名無しさん@ピンキー
07/05/16 10:48:18 pEJna6ir
ほしゅ

19:名無しさん@ピンキー
07/05/18 21:47:32 7xM4+DJw
ほっしゅ

20:名無しさん@ピンキー
07/05/21 09:24:33 bPA+7IhI
保守

21:名無しさん@ピンキー
07/05/22 12:46:18 BUS9uFTv


22:名無しさん@ピンキー
07/05/24 11:32:41 hDdKgi35
しゅ

23:名無しさん@ピンキー
07/05/25 08:05:33 f5Zi6Ovi
全裸でワクテカ保守

24:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:40:58 z9POdTMW
襲ってきた吸血コウモリを斬り伏せると、部屋を見回す余裕ができた。
奥の一隅に、埃にまみれた宝箱。
「テッド、よろしくね」
「はいはい」
戦闘中は撹乱が主な役目だったテッドだが、盗賊の真骨頂は罠の解除。
反対に魔法剣士の私は手持ち無沙汰になる。一応レイピアを構えて警戒はするけど、
片田舎の幽霊屋敷なんて住み着いてる魔物も低レベルと相場は決まってる。
「開いたよー。中身はしょぼいけど」
テッドの後ろから箱の中を覗き込むと、古ぼけた巨大な斧が入っていた。
「……武骨一辺倒。魔力もこもってない。どこからどう見ても、金にはならなさそうね」
商人でも学者でもない私たち二人にも、そのくらいはわかる。
「シルヴィアの予備の武器にしたら?」
「こんな重くて大きな斧、持ち運ぶのが面倒よ」
腕力に任せて武器を振るう戦士と違い、剣士はもっとスマートに戦うものである。
戦闘でやや乱れた髪を整えながら、私はテッドに提案した。
「奥まで調べて、余裕があったら帰り道で回収しましょ」
放っておこうと言えないのが貧乏な駆け出し冒険者のなさけないところ。

私とテッドは幼なじみ。ともにヒューマンの十六歳。二ヶ月前に訓練所を卒業して、
冒険者として生計を立てている。
と言っても、私たちの住んでいる平凡な地方都市は平和そのもの。名をあげるための
大事件も、腕を磨くための大冒険も、暮らしを楽にする大財宝も、とんと縁遠い。
大きな都市や危険な迷宮へ行こうにも、そのための充分な旅費も実力もない。
結果、私たちは、近隣の町村へ向かう商人の護衛などのような地道な日雇い仕事や、
今回の幽霊屋敷みたいに他の冒険者が着目しない(=実入りの期待できそうにない)
場所の落穂拾いじみた探索で、こつこつ路銀と経験値を貯めているところだった。

25:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:42:08 z9POdTMW
空気の淀んだ廊下を歩きながら、ついつい愚痴をこぼしてしまう。
「世の中不公平よね。名の売れた冒険者は色んな依頼があちこちから舞い込んできたり
有力なパーティに加入したりしてますます高度な経験を積んで強くなっていけるのに、
無名な冒険者は半端仕事ばかりでいつまで経っても低レベルなまま」
一度不利な状況に陥ると、不利な度合いはそこに留まってくれはしない。坂を転げ落ちる
ように、ますます物事は悪化していきがちだ。
これは経験に基づく実感でもある。八年前に父が再婚して以来、唯一の連れ子たる私の
家庭内での立場は見る見る悪化していったものである。
「まあまあ」
隣を歩くテッドは、私をなだめるように声をかけてくる。子供の頃から何度となく
繰り返されてきた、いつものやり取り。
「だからこうして一発逆転を狙ってるんでしょ?」
「……うん」
この屋敷は、実は単なる場末の探索地とも言いきれない。
ここの主は百年前に寿命を全うした偉大な魔術師だ。ゆえに、もし未発表の研究記録や
アイテムが見つかったら、魔術師学会が高値で買い取ってくれること間違いなし。さらに
歴史的な発見ともなれば、名を売るのにも役立つだろう。
ここは彼が晩年を過ごしていた別宅で、没後何度となく家捜しはなされている。けれど
誰も何も見つけられず、その頃の彼はボケが進んでいたという証言も多くて、いつしか
すっかり見捨てられるようになっていた。
でも、もしかしたら、何かが隠されているかもしれない。誰も何も見つけていない以上、
秘密の研究室みたいなものが発見されたら、そこはすなわち宝の山だろう。
そんな一縷の望みにかけて、私は仕事のないここ数日を利用し、この屋敷の探索に
乗り出したのである。
ちなみに『変化の導師』と呼ばれたその魔術師は、人間の変化に強い関心を持ち続け、
様々な魔法のアイテムを作っていた。若返りや加齢をもたらす指輪。異性に変わる薬。
また冒険者の職業を変える腕輪に、初心者を一瞬で熟練の冒険者に成長させる護符……。
ある意味、この『熟練の護符』が二つ見つかってくれれば、未知の研究やアイテムよりも
私たちには直接的にありがたいのだが。

26:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:43:20 z9POdTMW
次に入った部屋は、何の変哲もない書庫に見えた。
棚には本が並ぶが、すでに先達に漁り尽くされている。今でも本屋で買えるありきたりな
小説本(登場人物が変身する話がやたらと多い)や、百年の間に学説が改められて今では
役に立たない学術書などが、虚しく埃をかぶっている。
「テッド、どうしたの? 奥に行くわよ」
隠し部屋などがあるとしたら、屋敷の構造上、一番怪しいとされている最奥部の寝室。
そちらへ向かおうとした私だが、テッドがしきりに本棚を眺めている。
「テッド?」
「……これを捻って……こっちを動かして……」
そのうち部屋中をちょこまかと動き回り、本棚の天板や側板に施された彫刻をせっせと
弄り始めた。
短期の仕事で一緒になった流れの冒険者から聞いたことがある。手先の器用さや身軽さ
以上に盗賊に求められるのは、独特の勘だと。
彼の話はそこから「けど一番欠かせないのは運だよな」と、同じ宝石を五回も盗む
羽目になった不運な盗賊の笑い話へシフトしていったのだが、私は何だかテッドを
褒めてもらえたようで凄く嬉しくて、本題の笑い話以上にその前振りを今でもよく
覚えている。
そして今、テッドの独特の勘は百年間見過ごされてきた大当たりを引き当てた。
彼が各所の彫刻を動かし終えると、壁際の本棚が掻き消すように消え去った。
そして台所との間を隔てている、薄いはずの壁に、ぽっかりと穴が開いたのだ。

27:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:44:24 z9POdTMW
「異空間を使った隠し部屋……『変化の導師』ってよほど強力な敵にでも狙われていた
のかしら。それともそんなに用心したくなるほど凄い研究をしてたの?」
百年間、恐らくは誰も訪れなかった部屋に足を踏み入れながら、私は呟いた。
「うーん……単純に恥ずかしかったんじゃないかな」
私より少し先行しながら部屋のあちこちを探っていたテッドが、目を通していた数冊の
本を私に差し出す。絵物語のようだ。
全裸の美女が狂える魔術師の実験によっておぞましいキメラに姿を変えられる物語。
清楚な美少女がクラーケンに襲われ、触手に犯され、やがて自らの姿もクラーケンに
変わっていく物語。邪龍に国を滅ぼされ囚われた王女が、呪いによって次第に身も心も
凶悪な龍になっていき、最後には邪龍と交わる物語。騎士と王女の魂が入れ替わったまま
元に戻れず、最終的には本来の自分の身体と交わる物語。エトセトラ、エトセトラ……。
「……『変化の導師』って、要するに変態だったのね」
数々の研究も、ただ自分の歪んだ趣味を本業に反映させていただけだったのか。
「必死に隠そうとしてた気持ちは理解できたでしょ」
「まあね」
百年前に天に召された相手の性的嗜好をどうこう言っても始まらない。気を取り直して
部屋の探索を手伝う。
と、あるアイテムを引き出しから見つけた。

28:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:45:05 z9POdTMW
「これって……『熟練の護符』かしら?」
職業訓練の際、魔法の習得のために通っていた魔術師学会。その所蔵本に載っていた
『熟練の護符』の絵と、今ここにある二つの護符はかなり似通っている。
「身に着けて力を解放すればいきなりベテラン冒険者になれるっていう、あれ?」
「ええ。……ただ、彫り込んである字や図形がいくらか違ってるみたい」
古代語は基礎の基礎しか習っていない。見知らぬ単語が出てきてはお手上げだ。
「試作品? それとも形だけ似てる別の何か?」
「私には判断がつかないわ。この場で使うのはやめといた方が良さそうね」
いずれにせよ貴重な発見であることは確実だろう。テッドと一つずつ分け合って、
しっかりと懐にしまい込んだ。
「あ、向こうにも部屋がありそうだね」
テッドの言う通り、机や棚の陰に隠れて見えにくかったが、ドアがある。
「どうしようか?」
「もちろん調べるわよ。ここまで来た以上、覗かないわけないでしょ」
何か勘が働いていたのかわざわざ伺いを立てるテッドに対し、私は無造作に答えた。
……それが私の一生を大きく狂わせる選択だとも知らずに。

29:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:46:42 z9POdTMW
ドアを開けた瞬間、目指す部屋から重々しい地響きがした。誰もいないはずの部屋の中、
うずくまっていた巨大な人型の影が、すっくと立ち上がってこちらへと歩き始めた。
「え……?」
一瞬予想外の光景にぼんやりしてしまった私の腕を引き、テッドが鋭い口調で言う。
「シルヴィア、しくじった。逃げよう」
その言葉に遅ればせながら後退する。と、ほんのわずかに遅れて、私のいた空間を
巨大な拳が通過した。
ストーンゴーレム。魔術師によってかりそめの命を吹き込まれた石人形。主の命令を
自身が壊れるまでいつまでも忠実に守り続ける番兵。
それなりに経験を積んだ冒険者がやっと倒せるかどうかというモンスター。
ひよっこに過ぎない私とテッドでは、絶対に勝てるわけのない相手。

私の足はそれほど遅くないが、とりたてて速いわけでもない。
なのに相手のストーンゴーレムは特殊な改良でもされているのか、巨体なのに鈍重
どころかかなり身軽な足運び。はっきり言って、私より速い。
百年目の初仕事に張り切る敵をまるで振り切れないまま、私たちは追い立てられていた。
脱出方向に先回りしたゴーレムの強烈な蹴りを辛うじてかわす。
ゴーレムに短刀を投げつけて牽制するテッド。多少は撹乱になっているけれど、もちろん
倒すことなど期待できない。
一か八か、膝の関節を狙ってレイピアを突き出してみた。しかし渾身の一撃は簡単に
弾かれ、おまけにレイピアは折れてしまった。
「くっ……!」
「さっきの斧!」
いつの間にかあの宝箱の部屋までは戻っていたらしい。私は蓋を蹴り開けるとごつい斧を
取り上げて構えた。それでも、慣れない武器と月並みな筋力ではストーンゴーレムに
手傷を負わせるのは難しそうだ。

30:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:47:36 z9POdTMW
「テッド、あなただけでも逃げて助けを呼んで!」
隣の書斎に走りながら、私は叫んだ。まだ屋敷の中央部ではあるけれど、テッドが自分のことだけ考えればきっと逃げられる。私が食い止めれば、必ず逃がすことはできる。
「そりゃ無理な話だよ。この近所に高レベルの冒険者がいるわけないじゃない」
なのに彼は、床や机の上に転がるガラクタを手当たり次第に投げつけ、ゴーレムの足止めを図るばかり。
「だけどこのままじゃ、あなたまで無駄死にするだけよ!!」
そんなのは絶対に嫌だ。
人付き合いが下手くそで「家族」からも隣近所からも疎まれていた私と、たった一人
普通に接してくれたテッド。
自分が死ぬのは諦めもするけど、優しい彼まで巻き添えにするわけにはいかない。
「それならそれで本望だけどね」
テッドが私には聞こえない小声で何か呟いた。
「え?」
「何でもないよ。それよりさっきのあれ、使ってみない?」
「この護符?」
懐に収めた『熟練の護符』らしきアイテムの感覚を意識しながら、私は問い返した。
「それくらいしか対抗手段なさそうだしね。駄目なら駄目で、その時になってまた考える
ってことで!」
言いながら、彼は物がなくなって軽くなった床の上の絨毯をひっぺがす。その先にあった
机がさらに本棚をも巻き込んで倒れ、ゴーレムと私たちの間に一瞬の壁を作り出した。
逃げきる余裕はないけれど、護符を使う時間の猶予くらいは得られる壁を。
他にできることは何もない。
私とテッドはそれぞれ護符を握り、その秘められた力を解放した。

31:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:48:34 z9POdTMW
その瞬間、私の全身を圧倒的な力が駆け抜けた。
溢れんばかりの活力。湧き出す生命力。そしてまた、純粋なまでの筋力。これが成長の
感覚なのだろうか。
恍惚感に囚われ、私は危機的状況にありながらも思わず目をつぶっていた。
みなぎる力は私の全身を包んでいた安物の装備を弾き飛ばす。全裸になった自分を
恥ずかしいと思うよりも、解放感の心地好さが上回る。
そして私は、自分の身体が大きく広がっていく快感を味わった。力強く床を踏みしめる
充実感。握りしめた拳に、力を込めた腕に、エネルギーが蓄えられていく。
不意に、私の胸が殴られた。
目を開けるとストーンゴーレム。無防備に立ち尽くしていた私に攻撃を加えたのだろう。
しかしその打撃は、さっきまで死にもの狂いで回避していたのが嘘のように、貧弱で
情けない代物だった。私をよろめかせることすらできない。
いや、いくらレベルアップしたとしても、これはおかしくないだろうか。
私の身体はどうなってしまったのだろう。なぜあの巨大なストーンゴーレムと視線の
高さがほぼ同じになってしまっているのだろう。
「ああ、こういうことだったんだ」
私の耳のすぐそばで、高い澄んだ声がした。
顔を向けると、可愛らしい少女めいた小さな妖精が、蝶のような羽を広げて飛んでいた。
「あなたは、誰?」
自分が発した声にうろたえる。いつもの私の声とは違う、低く重たい声。
「説明は後。それよりさっさとゴーレムやっつけちゃってよ」
妙に馴れ馴れしい口調だが、とにかく言われて我に返る。手にした斧は、さっきまでより
はるかに軽く感じた。
「こ、このおっ!!」
振りかぶって無造作に叩きつけた斧は、一撃でストーンゴーレムを粉砕した。

32:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:49:21 z9POdTMW
「お疲れさま、シルヴィア」
小さな妖精はそう言うと、私の周りを軽やかに飛んだ。
私は周囲を見回す。さっきまでテッドがいた場所には、彼の装備と服装が乱雑に転がって
いた。まるで、彼の身体だけが空気に蒸発したかのように。
「あなた……もしかして、テッド?」
「ご名答」
妖精は優雅に一礼する。顔も声も身体の大きさも変わってしまったけれど、おどけた
仕草と口調はテッドそのものだった。
「あの『護符』は……つまり……」
「使用者の種族を変える効果があったみたいだね。僕の場合は、盗賊としての技術も
感覚も鈍っていない。職業とレベルはそのままっぽいよ」
それは、まあいい。
「まあ、妖精になったのが僕でよかったね。この小さな身体なら、普通のサイズの罠は
すごく簡単に外せるようになるはずだから」
問題は。
「テッド……あの……私の『種族』は……」
ストーンゴーレムに匹敵する身体の大きさ。その石像を一撃で破壊する腕力。低い声。
そして視界に入る、今までは見ないふりをしていた、前に突き出た鼻と両顎。
どう考えてもこの身体は、ヒューマンのものではなくて……。
「…………向こうの部屋に、鏡あったよ」
気まずそうに目を逸らして、テッドが言った。
鏡を見た私は、壁が壊れそうな勢いで絶叫した。

33:『アステリオスの裔』 ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:50:49 z9POdTMW
「子供が見たら泣くね」
私の肩に乗ったテッドが、耳元に囁きかけた。今は妖精向けに作られた小さな服を
きちんと着ている。いかにも女の子向けのワンピースだが、今の自分にはこれが一番
似合うからと、臆する様子もなく着こなしている。うらやましい。
「もう泣かせてるわよ」
かなり遠くにいながらも、ズタ袋のような覆面をかぶる私を恐怖の眼差しで見つめて
泣き叫ぶ幼い子。でもこの覆面を取ったらもっと激しく泣かれるに決まってるから
やむをえない。
私はつい足を速める。子供に泣かれるなんて、慣れてない。

ストーンゴーレムが守っていたものは、あの『種族変化の護符』などに関する未知の
研究成果だった。だが町の魔術師学会に提出しても、高度すぎて解析不可能と匙を
投げられた。
私たちが元に戻るには、首都かあるいは他国の、もっと進んだ研究施設に持ち込む他
ない。その役目は私たちが自分で引き受けることにした。
テッドはともかく、この姿になった私は地元で暮らすことなんてとてもできやしない。
マントに包んだ巨躯。それは屈強な男の身体。だがそれは本質的な話じゃない。その
程度の変化なら、身元をごまかせばまだ済む話だ。
強い風が吹き、覆面が飛ばされそうになる。
だが覆面は、頭から生えた角に引っかかって止まった。
猛牛の頭を有するミノタウロス。それが今の私。市民権を得ている妖精はともかく、
私がこの素顔で暮らしていたら討伐されること間違いなしだ。
「まあ、なっちゃったものはしかたないしね。元に戻れるまでは気楽に行くしかないよ」
「ほんと、テッドは呑気なんだから」
それでも彼の言うことは間違っていない。
テッドがついてきてくれることに内心で感謝しつつ、私は俯きそうになる顔を上げ、
首都へ続く道を大股で歩き始めた。

34: ◆eJPIfaQmes
07/05/25 16:55:47 z9POdTMW
保守ばかりしていただくのも心苦しく、以前書きかけて放置していた話を最後まで
書いてみました(展開はラストまで固まってるからすぐ終わるかと思っていたら
意外に長くなり、これではベルゼブブを終わらせた方が早かったかもしれませんが)。

35:名無しさん@ピンキー
07/05/26 03:33:19 ZLJ+RG0H
>>34
乙ですー!
割りとライトな乗りの話でしたが
よくよく考えてみると二人とも人外に変身してしまった上に
性別まで変えられてしまってるんですよね。
特にミノタウロスに変身してしまったシルヴィア嬢なんかは
旅の途中や街中で突発的な生理現象が起ってしまった場合の性欲の沈めかたとか妄想してしまいます。
突然勃起してしまったペニスを前にうろたえるシルヴィア嬢とか萌えです。
ちなみにシルヴィア嬢のマントの下は全裸ですか?
それともドラクエ3のカンダタみたいなパンツ着用?

36:名無しさん@ピンキー
07/05/26 07:49:09 xCTx3AIk
>>34
ぐっじょぶ!!
百年前の変態な魔術師様にぐっじょぶ!!(笑

37:名無しさん@ピンキー
07/05/27 21:06:17 F/w8VYqv
GJ!

38:名無しさん@ピンキー
07/05/28 20:18:03 lcsiXVsA
URLリンク(www.inazuma.jp)
変身しまくる本。

39:名無しさん@ピンキー
07/05/30 12:48:48 KoAOLqvl
新作GJ

40:名無しさん@ピンキー
07/05/31 16:19:11 8di3GXgL
GJ!新作も素晴らしくGJ!

41:名無しさん@ピンキー
07/06/03 08:29:42 rCw/GqR0
新作ktkr
GJでした!

42:名無しさん@ピンキー
07/06/08 07:00:21 tdg4isaH
hoshu

43:名無しさん@ピンキー
07/06/12 12:50:31 oPLE9zv7
ほっすー

44:名無しさん@ピンキー
07/06/14 00:03:17 k5byLLl9
蝿待ち保守

45:名無しさん@ピンキー
07/06/14 21:36:44 lIn+uxc2
ほす

46:名無しさん@ピンキー
07/06/14 23:46:26 jXcRiJFt
【フリークス(1)】
 
 京樹(けいき)は、一糸まとわぬ姿で手術台に横たわる真魚(まお)を、感慨深く眺めた。
 彼女は、「人間の女としては」完璧に近い美しさをもっていた。
 すらりとした長身、色白できめ細やかな肌。
 艶やかな黒髪が、裸の背の下に孔雀の羽根のように広がっている。
 整った目鼻立ちに、小ぶりだがぷっくらした愛らしい唇。
 横になっていても形の崩れない張りのある乳房の頂には、淡い桜色の蕾のような乳頭が添えられている。
 ウエストは細く締まり、下腹部のごく限られた部分を覆う恥毛は色こそ違うが真綿のような繊細さ。
 しなやかに伸びた手足もまた、指の一本一本から爪の先に至るまで美しい。
「―どうしたの?」
 真魚が、照れたように笑ってたずねた。
「いや……」
 京樹もまた、照れ隠しに笑って首を振り、
「君が、あまりに綺麗だからさ。これは本気で言ってるんだけど」
「あなたの口から、そんな言葉が出ると思わなかった」
 真魚は、くすくす笑った。
「もっと以前に言われていたら、私、あなたのことを誤解していたでしょうね。自分に都合いいように」
 京樹は、ただ微笑んでいる。
 真魚は言った。
「あなたは英雄よ、京樹。遺伝子工学の天才、再生治療の魔術師。多くの人があなたを尊敬し、感謝している。
手足を骨肉腫に侵されたベラルーシの少女、両眼を喪ったカンボジアの少年。数え上げれば、きりがない」
「だが、その正体は、ただの異常者だ」
 京樹は答えて言った。


47:名無しさん@ピンキー
07/06/14 23:47:51 jXcRiJFt
【フリークス(2)】
 
「僕は、誰が見ても美しいと思うはずの君を、外科的措置はもちろん遺伝子レベルの改変など必要のない君を、
僕の思い通りの《フリーク》に創り変えようとしている」
「つまり私は、あなたの理想の存在になる。―でしょ?」
「そうだね……」
 悪戯っぽく笑う真魚に、京樹も笑みを返す。
「だが、その価値を認めるのは僕だけだろう。君がこれから『なる』モノは、僕だけの理想の存在だ」
「そう『なる』ことが、私の理想なのよ」
「そうだったね……」
 京樹は微笑み、真魚の髪に触れた。
 それをゆっくりと、撫で梳いてやる。
 真魚は、心地よさそうに眼を閉じた。京樹の優しい指の感触に、しばし身を委ねる。
「……ねえ」
 真魚は言った。
「こんなことをお願いしたら、あなたは幻滅するかもしれないけど」
「なんだい? 脅かすみたいに」
 苦笑いして問い返す京樹の顔を、眼を開けた真魚は、じっと見つめて、
「英雄のあなたが、私の理想の存在だったの。いまは、私が『人間』でいられる最後の時間。お別れの挨拶を
してもらえると、嬉しいのだけど」
「……僕だって、君の気持ちには気づいていたよ」
 京樹は真魚の瞳を見つめ返して言う。
「それに応えられないことは、心苦しかった。君は優秀な医師で、最高のパートナーだ。僕が正常な人間なら、
間違いなく人生のパートナーにも君を選んでいた」


48:名無しさん@ピンキー
07/06/14 23:49:42 jXcRiJFt
【フリークス(3)】
 
「だけどね」
 京樹は言葉を続けて、
「もし僕が、誰か人間を愛するとすれば、それは、その人間を『人間』でなくしてしまいたいと思うときだ。
僕の理想の存在は、ただの《フリーク》―怪物ではない。それは、僕の最愛の人が生まれ変わったモノで
なければならないんだ。そうでないなら、犬でも猫でも創り変えてしまえばいいのだからね。だが、そんな
ものに価値はないんだ」
「つまり……これから《フリーク》になる私は、あなたに選ばれたいうことね」
「僕は、君を選んだんだ」
 京樹は、腰をかがめて、ゆっくりと真魚に顔を近づける。
 眼を閉じた真魚の唇に、唇を重ねた。
 長く、静かな、しかし一生分の愛を誓い合う口づけ―
 やがて、京樹は唇を離した。
「愛しているよ、真魚」
 真魚は眼を開けて、男の顔を見上げる。男は、もう一度、繰り返した。
「愛している、真魚。だから、君を……僕の《フリーク》にする」
「愛しているわ、京樹。だから、私を……あなたの理想の存在にして」
 京樹はもう一度、真魚と唇を重ねる。
 
 
 そして―彼女を理想の存在にするための措置にとりかかった。
 
【終わり】


49:名無しさん@ピンキー
07/06/15 03:56:28 bWkAnkH4
意味がわかりません><

50:名無しさん@ピンキー
07/06/15 04:51:11 9/N9P6yB
終わるのかよっ!wwwWwww

51:名無しさん@ピンキー
07/06/15 21:07:27 2flgnEKh
ワッホー! ワッホー!

52:名無しさん@ピンキー
07/06/16 01:03:32 mkZGXzxc
改造シーン書いてクレクレェェェェェェェェェェ

53:名無しさん@ピンキー
07/06/16 11:20:05 2tS1b158
わっふるわっふる。

54:名無しさん@ピンキー
07/06/16 23:38:01 9Fveg9yv
期待でビンビンだったのに最後の一行で萎えたwww

55:名無しさん@ピンキー
07/06/17 23:33:15 uW2OfcbI
お、俺のwktkをどうしてくれるんだ!

56:名無しさん@ピンキー
07/06/18 12:01:20 yiOp5OUA
流れを切って質問。ここって蟲そのものに変化させなくてもいいんだっけ?
例えば蜘蛛女とか。

57:名無しさん@ピンキー
07/06/18 15:52:03 NTwLJTmI
いやいやいや質問なんかすんなよ
オマイは今まさにこのスレのパイオニアになろうとしてんだぜ?

58:名無しさん@ピンキー
07/06/19 12:03:29 kg7GLbus
>>56
蜘蛛女期待
ガンガレー

59:名無しさん@ピンキー
07/06/19 17:12:44 PIKR2G7+
下半身が化け物(蜘蛛や蛇・百足等)で上半身は女の子がすげぇツボ!

60:56改め牧島みにむ
07/06/19 17:53:21 gwysGhKs
では、拙い作品ながら投下させていただきます。携帯打ちなので、下手したらかなり時間と容量ががかかってるかもしれませんが、ご了承くださいな。

61:牧島みにむ
07/06/19 17:54:44 gwysGhKs
『moonlit lunartic』

「気が付いた?」
女の人の声で、あたし―白池ゆいなは目を醒ました。これが母親か姉か妹なら、あるいは気の知れた友人なら安心できるところなんだろう―けど。
「――」
残念なことに相手は母親でも姉妹でもない。そしてあたしに友人などいない。そもそも姉妹などいないし、母親も三年前から綺麗に蒸発中だ。
結論。どこをどう行き着いても安心できる筈がない。
「………気分はどう?」
そんなあたしの家庭事情を知ってか知らずか、目の前の女は『目が覚めた対象に語りかけるマニュアル』の定石に則った台詞であたしに話しかける。
「………最悪」
実際、寝起きは最悪だった。人の声で強引に起こされるのは、誰しも気分が悪くなるもの―。

―で、あれ?あたし、何で寝てたっけ?しかも今、何処に―

風が吹いた。この時期にしては少し冷たい風に、あたしは思わず腕を組もうとして―その腕が動かないことに気付いた。動かそうとすると、何かが反対方向へと引っ張ろうとするのだ。
あたしはそちらに視界をやろうとして―固まった。

「――!」
本当に驚いた時、人は叫び声すらでなくなるらしい。
あたしは、服を全て脱がされ、全てさらけ出した状態で寝かされていた―だけならまだ良かった―いや、良くないか、やっぱし。
あたしの両足首は、何か糸状のものが巻き付いていて、あたしの脚を大きく開かせていた。多分、手首にも同じものが巻き付いているだろう。さらに、あたしの背中にも、同じ糸がべったりと張り付いて、その糸も放射状に広がっていて―!
信じたくはなかった。でも、今の状況を適当に表す言葉があたしの中に浮かんだ。

―蜘蛛の巣に、あたし、張り付けられてる!?―

「………あの、少しは返事してもらえるかしら?」
目の前の女性はパニクっているあたしに、少し戸惑い気味の声で話しかけてくる。でもあたしにそんな精神的余裕はない。
「え!ちょ、何よこれぇっ!何であたしは縛られてるのよ!」
あたしはじたばたともがこうとした。でも動くのは背中だけ。しかもその背中すら、蜘蛛の糸がだんだん貼り付いていき、次第に動きが鈍くなっていく。
あたしの頭は、この状況をもっとも現実としてありうる形に変換しようとしていた。


62:牧島みにむ
07/06/19 17:57:05 gwysGhKs
『そうよ―これは、これは怪獣映画のエクストラ―はやらないわよこんな芝居!』
失敗したのでもう一回。当然前の女性が何をしようとしているのか、最早目に入っていない。
『そうよ―これは夢n』

ちゅ………

「ふぐぅっ!?

現実逃避しようとしていたあたしは、このままではラチがあかないとあたしに迫ってきた女の人の動向に気付かず、結果―。
「んんっ!んむうんっ!」
―見ず知らずの女の人に唇を奪われてしまうことになってしまった。しかもそれだけでは終らなくて―。
「んふんんむふんんっ!」
あたしの歯の間をすり抜けて、女の舌があたしの口に入り込んできた!あたしは舌を追い出そうとしたけど、動きは相手の方が何枚も上手だった。突き出した舌は、そのまま彼女の口の中に招かれ、歯で軽く噛まれながら―

ぢゅうううううっ!

「んふむんんん~~~っ!」

表面についた唾液が全て吸い取られてしまいそうな程の、強烈な舌の吸引に、あたしは全身の力が抜けてしまった。そのまま彼女はあたしの口の中を思うままに這いずり回っている。
二人の唾液が撹拌され、混ざり合っていく―。
「………ぷは」
女が口を離した時、あたしは身動きする元気も、疑問を持つ元気すらも使い果たしていた。幽かに視界がぼやけている………。
「………」
ぼんやりと、あたしは目の前の、服を着ていない女性を眺めた。20代前半~中盤くらいの若々しい女性で、肌もきめ細やかな白磁、胸は大きく突き出して、腰はくびれて―!
下半身に目を移した瞬間、あたしは逃れられない運命と言うものがあるんだ、と絶望した。

彼女の下半身は、巨大な蜘蛛だった。

「………やっと気付いたのね」
今更、というニュアンスが伝わる口調で、目の前の蜘蛛女は呆れたように呟いた。
そもそも、あたしは縛られている状態で、どうして目の前に女性がいるのか、疑問を持っても良かったはずなのに―。
巣に捕えられた虫のようなものである自分は、動く元気すら使いきってしまった自分は、この目の前にいる蜘蛛女に食べられてしまうのだろう。何の抵抗も出来ずに。そう考えると、死にたくないと言う思いが、あたしの瞳に涙を呼び起こした。少し遅れて、しゃくり声も。
「?………どうして泣く必要があるの?」


63:牧島みにむ
07/06/19 17:59:01 gwysGhKs
「っく………そんなこと………ぃぐっ………ったり前じゃない………ぅ………死ぬのが………っくっ………嫌だからよぉ………」
お願いだから、食べないで。
あたしの願いは、言う事も出来ずに大量の涙に掻き消された。
蜘蛛女は、その様子を困ったように眺めていたが、やがて―

ふみ

あたしの口に何か、柔らかいものが押し当てられた。涙でかすんでいたが、白磁色をして見えた、弾力性と柔軟性を兼ね備えていたそれは、多分―あたしが憧れているものの一つだろう。
ぽんぽん、と優しく頭を叩かれ、撫でられる感触がした。ふぁ………と安らかな森の香りが漂ってくる。
「怖がらないの。私は貴女を食べるつもりなんか無いんだから」
その声が聞こえた瞬間、あたしの口の中に何かが、ぴゅ、と発射された。
不思議な味のする液体だった。甘いのに、どこか苦くて―それでいてずっと飲んでいたくなるような゛
「んぶっ!んぶっ!」
液体が器官支に入り、あたしは咳き込んだ―けど、蜘蛛女の乳は私の顔から離れることなく、どんどん液体を私の中に流し込んでいく。
―蜘蛛女のさっきの発言、食べるつもりはない、その事について頭を働かせようとしたけど、どうにも思うようにいかなかった。
咳き込む苦しさ、不思議な味、そして何故か感じた―温もり。それらがあたしの心を一ヶ所に置かず、様々に散らして脳内ジグソーパズルの完成を妨げていた。
頭を気持よく撫でられるうち、あたしは、
「んふふ――」
蜘蛛女は、そんなあたしの様子を見て笑っていた。それは決して、獲物を捕えた目ではない。もっと、何だろう、昔私が見ていたような―。

「―さぁ。ゆっくり休んで」

―あぁ、もう何も考えられない。どこか気持いい。まるで赤ん坊に戻ったみたいな―。


あたしの意識はここで途切れた。


64:牧島みにむ
07/06/19 18:00:54 gwysGhKs
「―ふふっ、可愛いわね。」
自分の胸の中で眠るゆいなに、蜘蛛女はさっきと同じ微笑みを向け、ゆいなの唇を再び奪った。と同時に、自らの秘部とゆいなのそれを合わせた。そして―何かを送り込んでいく。ゆっくりと。ゆいなが何も反応しないぐらいに。
十分ほど経った頃だろうか。蜘蛛女はゆいなから離れると、蜘蛛の臀部を彼女の体に標準を合わせ――

しゅるるるるぅ~~~~~っ!

大量の糸をゆいなへと放った!白銀色をしたそれは、ゆいなの体のあちこちに絡み付き、あるいは取り巻き、顔と秘部以外のほぼ全てを覆ってしまった。
「食べちゃうわけないじゃない。中々いないわよ、こんなに―」
蜘蛛女は脚を糸にひっかけ、丁寧に折り込み、ゆいなを糸で包み込んで行く―。顔が糸で覆われる直前のゆいなの表情は、どこか安らいでいた―。
脚を動かすのをやめたとき、そこには巨大な繭が、巣の真ん中に横たわっていた。その完成を満足げに眺めながら、蜘蛛女は言葉の続きを呟く。
「―こんなに、私達に近い娘は」


繭の中、あたしは夢見心地でいた………。
どこか体がふわふわして、まるで繭があたしのからだみたいに………。
とくん………とくん………
繭の中に、反響しているこの音は………あたし?それとも―

繭の中、あたしはあたしが少しずつ変わっていく事を感じた。
恐怖心は、繭を満たす微香に掻き消され、代わりにあたしの心を、何か別のものが満たしていった―。
何かが溶かされ、その中から何かが産まれ、作り出されていく―。
体が―溶かされてそこから新たに組み変えられていく―。
お尻が突き出ていき、そこから新しい脚が生えていく―。
あたしの下半身が、何か別の物へと変わっていく―。
腰がくびれ、胸が突き出ていく―。
手の爪が、指そのものが鋭く、固くなっていく―。
肌全体が、顔の形が、新しい物へと変化していく―。
そして―。


―モウ、イカナクチャ。


月夜。
望月の夜。
それはゆっくりと破られた。

滴り落ちる液体は、甘美な芳香を用いて生物を誘き寄せる。
我先にと群がる生物達は、数刻後、自らの体が全く動かせないことに気付くだろう。
そして―。

「ゴチソウサマ♪」

赫い瞳を持ち、人の美を越えた体を上半身に、巨大な蜘蛛の体を下半身に持つ生物は、産まれたての体を月に怪しく照らさせながら、飢えを満たすための食事を、腹を満たすまで全て味わっていた―。

65:牧島みにむ
07/06/19 18:02:58 gwysGhKs
………まだ続きます………が、暫くお待ちいただけたら嬉しいです。

66:名無しさん@ピンキー
07/06/20 00:19:53 Lo5jU9Ex
>>65
GJ!続きを期待して待ってます!

67:名無しさん@ピンキー
07/06/20 00:36:17 BzkC4RPM
>>65
wktk

68:名無しさん@ピンキー
07/06/21 02:59:56 Tz+8+RVs
>>65

死ね

69:名無しさん@ピンキー
07/06/21 06:42:08 v1MXU8Pd
みんな、鰈にスルーだ!

70:牧島みにむ
07/06/21 13:45:39 bDtz8bqm
では、続きを投下したいと思います。
暫くかかると思うので、ご了承のほどを。

71:『moonlit lunartic』by牧島みにむ
07/06/21 13:47:31 bDtz8bqm
―朝。
目を醒ましたあたしの目の前に広がっていたのは、いつもと何ら変わらない、電灯の紐がゆらゆら揺れている家の風景だった。
一つ伸びをしてから、あたしは今日の予定と、昨日の記憶を手繰り寄せる。
朝。
いつも通りに生活費稼ぎのコンビニバイトへ。
昼。
廃棄弁当で昼食。
夕方。
仕事終了。もう一つのバイトである夜間ファミレスへ。
そして夜。
仕事終了し、賄い飯を食べた後にそのまま帰宅―。
―頭の中に一瞬何かが引っ掛かったけど、思い出せない。
まぁ、大した事ではないだろうからと思い直して、あたしは着替え始めた。
違和感の事など、頭の中からすぐに抜け落ちてしまった。


『会社員男性、謎の失踪!?現場には、液体に濡れた服が散乱』
『類似事件多発!警察は同一犯と見て捜査を―』


気付いたら、バイトを二つともクビになっていた。
あたしは、事もあろうに一週間の無断欠勤を働いていたらしい。
―どういうこと?改めて携帯を見直すと、そこには自分の目でも信じられない内容が―。

曜日こそ一緒だが、日付が頭にある数字と7違っていた。
あたしはどうやら、一週間まるまる寝てしまっていたらしい。
そこまで疲れるような仕事じゃない―それ以前に、一週間も寝続けるなんて、おとぎ話じゃないんだから―。
………また頭の中を何かがかすめた。一体何なんだろう。あたし、何か重要なことを忘れているような―。

バイト先の店長に何度も謝り、働いた分の給料だけを手に、あたしはコンビニを出た。
不思議だと思う前に、あたしは苛立っていた。これから生活が苦しくなることは言わずとも分かる。
何で一週間も寝てしまったのか、それは自己責任なのは分かってる。
でも、苛立つ心は周りにも(タベチャイタイ)同じ感情を抱いてしまうから不思議だ。
見ているだけで、つい(タベチャイタイ)八つ当たりしたくなってくる。そして苛立つと体力も使うから(オナカガヘル)お腹が空いてくるわけで。
朝御飯をろくに食べていなかった私は、(タベタイ)近くの焼き肉店に向かった。
今は、ただ(ニクヲ)食べたかった。ヤケ食いしたかった。

「………お腹すいた……」
もらった給料を全て注ぎ込んで焼き肉を頼み、全て平らげた後でも、あたしのお腹は空腹を訴え続けた。
さっき食べた量だけでも、今までのあたしに比べて何倍もの量、いや、食べ盛りの青年でもここまでは食べはしないだろう量だった。


72:『moonlit lunartic』by牧島みにむ
07/06/21 13:49:50 bDtz8bqm
くきゅう………。
小動物が悲しげに鳴くように、あたしのお腹は食後十回目の悲鳴をあげた。(モットタベタイ)早くお腹を満たさないと(ハヤクタベタイ)もう、我慢できなくなりそう。

そう、町の人混みに出た時。

(オイシソウ………)

「おいしそう………?」
あたしの前には、色々なレストラン、ファーストフードの店が、ビルに混じって乱立している。
けど、あたしが見ていたのはそんなものじゃなくて―。

(コッチニキテ………)

その後ろ姿を見た瞬間、

(ネェ………)

あたしの意識は、

(オイシソウ、ハヤク!ハヤクキテ!)

完全に


(ハヤクッ!)


吹き飛ばされた。


男にとってその行動のきっかけは、何と無くだった。
ただ何と無く、向こうの裏路地が気になっただけだった。
この人混みの中、あの地帯だけが何故か人が誰もいない。
誰もその場所に気付いていない。
不思議で、どこか心惹かれた男は、何かの糸に引かれるように、その裏路地へとふらり、ふらりと引き寄せられていった………。

入れば入るほどに、男は奥に引き寄せられていった。単調な景色、自分の足音しか響かない空間を一定のリズムで、ただ前を見つめて歩く男。
一種の催眠状態に陥りながら、男はただ前に進んでいた。
男は気付かなかった。
自分が何のために前に進んでいるか、最早自分自身も気付いていないという奇妙な事態に。
男は気付かなかった。
いつの間にか両手両腕が銀色の糸で絡まれ、囚人のように歩かされていることに。
男は気付かなかった。
いつの間にか脚すらも絡まれ、宙に体が固定されていることに。

そして男は気付かなかった。
自分のこれからの運命が、自らの手で決定されてしまったことに―。

「ウフフフフ…………」
蜘蛛の巣に貼り付けられたまま、依然としてぼんやりとしている男に、ゆいなはゆっくりと、周り込むように近付いていった。


73:『moonlit lunartic』by牧島みにむ
07/06/21 13:51:02 bDtz8bqm
「ウフフッ………サテ♪」
ゆいなは変化した指と蜘蛛の脚で、糸ごと男の服を切り裂いていく。切り裂かれた場所には糸つぼから糸を発射し、巣に巻き付けていく。
二分も経たないうちに、男は急所となる下半身と、首から上以外は全て糸にくるまれてしまっていた。
「ン~~ソロソロネ♪」
男の全身を下敷にするような体勢をとり、目線を男に合わせると、ゆいなはパチン、と指を鳴らした。
乾いた音と同時、男の瞳に光が戻り―!

「なぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

男は、今自分がおかれている状況に愕然とした。
下半身蜘蛛の化け物が、自分を蜘蛛の巣にくくりつけ、迫ってきている。その目的を、男は本能的に悟った。悟ってしまっていた。

「い、嫌だ、ま、まだ、死にたくない、た、助けてくれ……」

必死にもがきながら、ゆいなに懇願する男に、ゆいなは笑顔を守ったまま、顔を男に近付けていき―。

ちゅ………―
こしょこしょこしょ……―

「んむむむむむむむむむぅっ!」
両手で男の顔を固定し、唇を強引に塞ぐと、蜘蛛の腹を体に擦りつけ始めた!
柔らかな刺激毛がびっしりと生え揃っている腹部は、少し動かすだけで生身の体にこそばゆい感触を送り込んでいく―!
その上、擽ったさに耐えきれず半開きになった口に、ゆいなの舌が容赦なく入り込み、男の口を蹂躪していく………。
互いの唾液を撹拌しながら、男の舌に、口内粘膜にねっとりと塗り付けていく………。
そして男の舌自体にも、絡み付き、吸い付き、締め付け……―!

くしゅくしゅくしゅ………
さわさわさわ………

ちゅば、ちゅゆ、ぴちゃ………
ちゅる、ぢゅう、ちゅる………

「んむんっ!んむむむむむぅっ!」

ゆいなによる責めが続くなか、男の分身は徐々にぴく、ぴく、と脈動し始め、その存在を示そうと膨張していた。

「………アン♪」
男から唇を離したゆいなが、艶っぽい声をあげた。どうやら、成長した男の逸物が、蜘蛛の下半身を突き上げたらしい。
ゆいなは体を擦りつけながら、男の逸物の方へ体を下げ始めた。
さわさわした刺激毛から、つるつるもちもちとした人間の肌へと感触が変化し、それが逸物を擦る度、男は快感のあまりびくびくと振動した。
やがて男のピストルがゆいなの顔に標準を定められるまでに下降すると―。

はむっ。

「あぁああぁあうあぁうっ!!!!!!」

ゆいなは陰嚢ごと男のペニスを加え込んだ!さらに―、


74:『moonlit lunartic』by牧島みにむ
07/06/21 13:54:45 bDtz8bqm
こぉり、こり、くちゅっ―
ぐに、ちゅば、ちゅる―

「ぉぉぉぉぉああああああぉあぅあぅあっ!」

陰嚢を舐め回し、精巣をこねくり回し、肉製発射台をもみくちゃにしていくゆいな。男の抵抗力は、その瞬間、根刮ぎ奪われた―。

びゅるるるるぅ~っ!びゅくっ!

「ン――♪プハッ♪」
ゆいなの口の中に、男の精が大量に発射された!その全てを飲み干そうとするも、飲みきれなかった分が口の端から溢れ落ちて、地面へと白い雨を降らしていく―。
「アハァァ………オイシ♪」
ゆいなは底知れぬ喜びを、お腹の底から感じていた。どんなに肉を食べても満たされなかった体が、だんだんと満たされていく、そんな感覚。それは同時に、新たな欲求を産み出していった。
「ンフフ………ッ♪」
ゆいなは、男の逸物を口から外すと、

がぷっ!

「!!キ゛ャ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛!!」

男の陰嚢に、鋭くなった犬歯を刺し込んだ!そのまま、男の体に何かを流し込んでいく!
激痛と下半身の違和感の中、次第に男の陰嚢は皺が伸ばされていき、いつしか、拳大に膨れ上がっていた。
それを確認すると、ゆいなは犬歯を抜き、糸で傷口を塞いだ。
にちゅうっ!

糸つぼの少し下の辺りにある生殖孔、それを露出させ、拡大した。痛みのあまりに、ゆいなの方に意識が行くことがない男は、次の瞬間、

ずにゅりゅゅうっ!

何もかもが奪われる恐怖を本能が察して、断末魔の叫び声をあげることになった。


「………ぁぁぁぁぁぁぁああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!!!!!!!!」


生殖孔の中は、無数の肉襞がやわやわと蠢き、蜘蛛糸の原料ともなりうる蜘蛛女の体液でぬらぬらと濡れ、それがペニスや袋に塗られると、糸状化してねばねばと絡み付く!
さらに襞一枚一枚が独立な意思を持ったかのように動き、蛭のように吸い付き、舌のように舐め、ハケのように体液を塗り込んでいく……!
孔自体も、締め付け、揉み込むように動き、まるで男の逸物を一切千切り取ってしまうかのように圧し、吸い込んでいく―!

さらに、
にゅじゅじゅじゅじゅジュジュジジジジジッ!
「ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ッ!」
人間では再現不可能な速度で腰が動かされる!あまりに暴力的な勢いで、ペニスが多方向から一気に扱かれていく――!

75:『moonlit lunartic』by牧島みにむ
07/06/21 13:58:24 bDtz8bqm
人間の生身で耐えられる快楽の限界を遥か越え、精神が完全に壊れるだけの快楽を一気に叩き付けられた男は、


びゅるるるびゅびゅびゅるるるぅびゅびっびゅぅ~~~~っ!


袋に溜っていたありったけの精と、その魂を全て、ゆいなの中へと叩き込んだ……………。


「ウフフフフ………♪」
驚愕の表情のまま事切れた男を眺めながら、ゆいなはその首筋に顔を近付けた。そして―

がぷっ!ぢゅうううう~っ!

噛みつき、犬歯から溶解液を流し始めた。溶かした肉を、少しずつゆいなは飲み干していく……。
男の肉体が、びくん、びくんと震えながら、徐々に痩せ細っていく………。
骨すら溶かされながら、男の体は収縮を続けていき―。

「…………プハ♪」

全てを吸い終ったゆいなの手には、今や皮だけになった男が握られていた。
そしてゆいなは、その皮を口に入れ―全て飲み込んでしまった。


気付いたら、あたしの体が動かせず、それどころかあたしの体は、下半身が蜘蛛の化け物に変わっていた。
その化け物の瞳からあたしが目にしていた風景。それは、あたしが男の人の首筋に噛みついて―。
そのまま何かを注ぎながら、首から何かを吸い取っていって―。
口の中に、甘い肉の香りが広がっていって―。
―気が付いたら、ぺらぺらの皮になった男の人を、もしゃもしゃと飲み込んでいた―。

あ、あはは………。
あたし、人を、食べ、ちゃ、た、だ…………。


その瞬間、あたしの中にあの日の帰り道と、この一週間の記憶が、人の体の中に閉ざされてきた記憶が一気に蘇ってきた。
仕事の帰り道、道端で綺麗な女性―あの蜘蛛女が人間に化けた姿―が通りすぎていくのを見た直後、急に意識を失って―。
蜘蛛女によって作られた繭から産まれてきたあたシは、町の中に蜘蛛の糸を張り巡らせ、触れた人間を捕えては食べていた。犯シテ、噛ンデ、溶カシテ―。


「……………………あ」
あたしの心の中で、

「………………あはは」
何かが完全に、

「…………あはははは」
音を立てて壊れた。



76:『moonlit lunartic』by牧島みにむ
07/06/21 14:00:41 bDtz8bqm
そしてそれは、壊れた瞬間に別の形に急速に再構成されていく。
アたしの本能と言う地盤に、蜘蛛の糸で繋ぎ合わせて。

「あはははハはははははハハはははハはは………」


「………アハ、オイシ♪」


流れるような黒髪は、月光を反射して怪しく艶めく。
あたシの汗と、あタしが食べた人―エもノ―の血が、白磁色の胸元で混じりあい、アたシの肌に、焼きゴテのような模様を刻みつけ、それも月によってなまめかしく輝く。
途端、額が割ける感覚がしたと同時に、あタシの視界が広がった。目が、新たに増えたのだ。
―視界に慣れると、アタしは蜘蛛の脚を使って、目の前を四角く切り裂いた。
かぽ、と音がして、何かが外れるのと一緒に、切り取られた場所の向こうに、緑に囲まれた空間が広がっているのが見えた。
アタシは、糸で開いた穴を仮止めすると、そのままその中に体を滑らせ―外に一本糸を垂らして、仮止めを外した………。


もう、ここにあたしはいない。
いるのは、アタシ―。


アタシが産まれた森に着くと、アタシは手頃な空間を見付け、巣作りを始めた。木に登っては糸を繰りつけ、他の木に糸を飛ばす。
それを繰り返して外枠をつくり、対角線上に糸を飛ばす。次に、内側に少しずつ糸を張り巡らせていくと、十分もしないうちに巣は完成した。
もご、もご。
アタシのお腹が、少し動いた。それも、内側から圧迫されるように。
アタシは巣の真ん中へ急いだ。その間もお腹はもご、もごと形を様々に変えている。少し痛み始めた。
我慢も、このまま行くと危ない。
そして、巣の真ん中についた瞬間、

「アハァァァァァァァァァ……♪」

こと、ぽこ、ぽここ……

蜘蛛の腹から、一個ずつ出てくる、アタシの卵。それは糸の粘液にくるまりながら、アタシの巣に一個一個、その体を固定させていく。
「アッ♪アアッ♪ア♪アアッ♪」
一個卵を産む度に、アタシの中に母親になった喜びが渦巻いていく。
そして、全て産み終り、巣の上がいくつもの卵で埋め尽されたとき、アタシは至福の表情を浮かべていた。
「ウフフ…………♪」


77:『moonlit lunartic』by牧島みにむ
07/06/21 14:02:09 bDtz8bqm
いずれこの子達は、産まれた後で互いに襲いあうでしょう。
そして、一番最後まで残った子は、アタシと同じように巣を作り、男を襲い、そして――。

「――ア♪」
アタシの糸が反応した。どうやら誰かにくっついたらしい。
アタシは、新たな食事の味を想像して一人笑みながら、その糸を辿っていった……。


空には満月。
その曇りない静かなる姿は、逆に人を闇のものと関わらせる。
そして―時としてそれは、人ならざる者へと変えてしまう事もあるのだ。



END

78:牧島みにむ
07/06/21 14:14:42 bDtz8bqm
これにて終了です。
最初は月と関わらせようと思ったのですが、見事失敗………orz

また何か浮かんだら、こちらに送らせてもらいますね。
では~。

79:名無しさん@ピンキー
07/06/24 01:02:11 SacNtcHT
保守age

80:名無しさん@ピンキー
07/06/25 20:02:47 eMU9wi/F
>>78


81:名無しさん@ピンキー
07/06/28 21:27:23 PtPEn6U9
そういやここってまとめサイト無いのかな?

82:名無しさん@ピンキー
07/06/28 23:24:58 f8aU4tWV
今のところだれも作ってないな。

83:名無しさん@ピンキー
07/07/02 19:12:26 Um6xZ4Dh
wktk保守

84:名無しさん@ピンキー
07/07/02 23:07:40 2Uuchw4i
保守

85:名無しさん@ピンキー
07/07/05 13:41:32 RGsnJJSQ
じゃ俺も保守っとくか

86:名無しさん@ピンキー
07/07/07 20:51:30 jvWuaqYn
保守


87:名無しさん@ピンキー
07/07/08 00:15:13 lAqz0Ywp
ほしゅ

88:名無しさん@ピンキー
07/07/10 00:53:05 fIGY336d
作品投下マダー?

89:名無しさん@ピンキー
07/07/15 04:49:18 FSK7Ljxo
ほしゅ

90:名無しさん@ピンキー
07/07/15 09:21:58 wqWRF8bF
窓からの光が、室内の塵に反射して瞬く。無機質で、どこか寒々しい病室。
そこに、ルパンがいた。
薄水色の病院服の上に赤いジャケットを羽織り、ベッドの上に腰掛けていた。
大きく息を吐くと、銭型は病室へと足を踏み入れた。ルパンを、逮捕するために。
捕まえる? この今にも死にそうな病人を?
長年夢見てきた事だというのに、銭型にとってそれは既に無価値だった。
「よく来たなぁ、とっつぁん」
人を食ったような態度でルパンが声をかける。
掠れきった声、扱けた頬、体中に繋がれたチューブは心電図へと繋がっている。
かつての面影は、ほとんど残っていない。
そこにいるのは、死を目前に控えた一人の病人だった。
「ルパン、何で貴様がこんな……」
「天下の大泥棒にも、勝てない物があったってことさ」
「一生をかけて追い続けて来て、こんな幕切れとはな」
「そんなら見逃してくれよ、とっつぁん」
「そればかりは出来ん相談だな。ルパン、貴様を……貴様を逮捕する」
「ごめんだね。俺ぁ逃げるぜ」
「今の貴様に何が出来る」
銭型の言葉に、ルパンはにやりと笑った。
「どうかな?」
ジャケットから取り出したのは、ワルサーP38。それを自らのコメカミに押し付けて言った。
「あばよ、とっつぁん」
銃声がコンクリートの壁に反響する。急激に乱れた心電図は、数刻の間にフラットとなった。
してやったり。
銭型の脳裏に焼きついたルパンの最期は、そんな、いつも通りの彼の姿だった。
「ルパンめ……まんまと逃げおった……」
銭型は、失われた何かが再び燃焼し始めるのを感じていた。
コートからガバメントを抜き、セーフティを解除する。

「逃がすものか。どこへ行こうが必ず捕まえてやるぞ、ルパン」

91:名無しさん@ピンキー
07/07/15 21:24:23 ihJizw3b
ごば…く…?

92:名無しさん@ピンキー
07/07/16 14:22:36 CTIO2MXu
これだろ?!
URLリンク(jggj.net)
URLリンク(jggj.net)
URLリンク(jggj.net)

93:名無しさん@ピンキー
07/07/17 06:04:20 y6FgRzqD
>>92
それじゃないです

94:名無しさん@ピンキー
07/07/17 13:54:00 nhVLyy98
牧島みにむ氏GJ!

95:名無しさん@ピンキー
07/07/21 20:01:23 ewOQqUut
hos

96:名無しさん@ピンキー
07/07/24 08:47:59 m3savDRs
ほっしゅ

97:名無しさん@ピンキー
07/07/24 23:30:10 XlR5dgS9
前スレ、過去ログ保存している人いらっしゃいますか?

98:名無しさん@ピンキー
07/07/25 21:10:55 M3bcDD+2
いらっしゃいますよ。

URLリンク(www.dotup.org)
パスはこのスレのタイトル。

99:97
07/07/26 00:28:34 eUyQORcl
>>98
ありがとうございます!

100:名無しさん@ピンキー
07/07/28 01:38:31 08M/lKVT
圧縮前ほーしゅ。

101:名無しさん@ピンキー
07/07/28 23:01:45 H1o/blrY
ニャ━━ヽ(゚∀゚)ノ━━ン!!

102:名無しさん@そうだ選挙に行こう
07/07/29 20:11:27 o1x5sAb/
>>101
つまり………猫変身ストーリーか?

103:名無しさん@ピンキー
07/07/31 17:27:28 6lPQNBRv
ほーしゅ。

104:名無しさん@ピンキー
07/08/02 14:10:17 aZnTbCYy
ここの住人は………どの辺りが好みなのかな?

1.容姿性格完全変化
2.容姿完全性格不完全変化
3.容姿不完全性格完全変化
4.容姿性格不完全変化

105:名無しさん@ピンキー
07/08/02 14:20:23 F/KdNEgV
>>104
1

106:名無しさん@ピンキー
07/08/02 16:42:47 3SHZjnoZ
全部おk
性格的か肉体的変化なしもバッチ来いだし
動物程度の思考になったり人の形をまったくしてなくてもおk。

107:名無しさん@ピンキー
07/08/02 18:23:23 VeBikENs
別スレのだけど秀逸の出来
URLリンク(www.geocities.jp)

108:名無しさん@ピンキー
07/08/02 18:53:59 aZnTbCYy
>>107
寄生スレの、乙×風氏の作品ですね。

109:名無しさん@ピンキー
07/08/06 20:34:26 /VBLxvhO
ところでここのみんなは普段どういうゲームやってるの?
おいらはFFTでモルボル菌ぶっかけてるけど
こういうことのできるゲームって少なそうで…

110:名無しさん@ピンキー
07/08/07 03:52:50 JmdL0W4s
漏れはツクール系だな。TFを作ろうと思えばメッセージだけでいいのなら作れるし。
でもついつい細かく作ってしまうんだよな(汗

111:名無しさん@ピンキー
07/08/07 06:02:00 39x2VJzM
SFC系のゲーム引っ張り出してる。
FF4でシルフの洞窟のトーディウィッチとの戦闘で放置したり。
ゲコゲコ おなき!

112:名無しさん@ピンキー
07/08/07 23:13:36 QefX/37P
SFCといえばグランヒストリアかなぁ。小ネタだけど。
小説版が出る予定だったのにいつの間にか無かったことにされたんだよね…。

113:名無しさん@ピンキー
07/08/09 01:13:15 8B/y3ao4
鬼の話
スレリンク(min板)

獣人スレに誤爆されて貼られていたが、鬼に変化するのはこちらのスレが専門だと思われるので。

114:名無しさん@ピンキー
07/08/09 16:59:38 LOUig3nV
『仮面ライダーSPIRITS』をアニメ化するならこういうテイストでお願いしたい 。
但し参考作品は衛星放送有料枠低予算アニメなのでこの3倍は動かして欲しい!!

URLリンク(www.youtube.com)



115:名無しさん@ピンキー
07/08/12 14:15:41 6y/1GUoO
>>107
これは素晴らしいですね!完璧!まさに見本のような作品です。

116:名無しさん@ピンキー
07/08/12 18:19:46 TN3gGz3O
いきなりだが、メスのクモを萌え化したキャラを探しているのだが、知らないか?

117:名無しさん@ピンキー
07/08/12 18:21:53 TN3gGz3O
って>>61からあったのか。

118:名無しさん@ピンキー
07/08/12 18:23:53 TN3gGz3O
あーそうか。スパイダーウーマンっぽいのがあればいいのか。

119:名無しさん@ピンキー
07/08/12 18:37:15 TN3gGz3O
足は普通の人間で、髪がクモの足みたいに散らばってる感じで、黒髪。
クモの女王ならばゴスロリドレス着てても良い。

120:名無しさん@ピンキー
07/08/12 18:45:57 TN3gGz3O
詳しくすると、左右の手に鎌を持っており、クモの8つ目をしたバイザーを頭に
装着して、髪に後ろに4本のポニーテールあたりだろう。

121:名無しさん@ピンキー
07/08/12 19:15:41 TN3gGz3O
>>119-120のキャラが主人公で
魔法少女リリカルあやかインセクターズ
なるエロゲの構想を思い浮かんでしまった……。妄想爆走命がけ

122:名無しさん@ピンキー
07/08/13 16:34:41 mC3rt/qj
とりあえず1レスに纏めろ

123:名無しさん@ピンキー
07/08/15 23:02:50 YEh/L359
フェチ板の女性を化け物に変えちゃうスレで
特殊メイクで女子アナが化け物にされちゃう小説を書いたので
よかったらみてね

124:名無しさん@ピンキー
07/08/20 08:18:18 znOxq31g
ほしゅ

125:名無しさん@ピンキー
07/08/24 05:28:19 G71I81NR
逃走晒しage

126:名無しさん@ピンキー
07/08/24 20:07:19 PNVafu7D
◆eJPIfaQmes氏の文章が纏めて見れる場所はないかな?
取っておいた奴がパソコンとともに吹っ飛んだ。

127:名無しさん@ピンキー
07/08/25 02:43:42 uEiylncy
>>126
何という俺…orz

128: ◆eJPIfaQmes
07/08/25 04:33:11 gPQXBoL+
長らくご無沙汰しております。なかなか続きを書けなくてすみません。

>126
>127
今のところホームページ等は作っておりません。
とりあえず、「irekae@writer.interq.」にメール欄後半をつなげてメールを送っていただければ
(面倒ですみません。普通にメール欄に書いたら、アドレスが長すぎると言われ……)
テキスト形式ですが送信いたします。

129:126
07/08/27 22:21:12 ZMFkPsxv
>>128
無事届きました。
どうもありがとうございました。
今後も頑張って下さい。

130:名無しさん@ピンキー
07/08/29 23:25:12 CYKHowFV
ふとキャリオンクロウラー娘というものを考えた。
しかし唯の捕食ってのは捕食スレよりこっちむきだよなーと考える今日この頃。
このスレでもスレ違いかな?

131:名無しさん@ピンキー
07/08/31 22:09:43 c2Qgx81A
そこまで捕食描写に力を入れてなければ、こちらでも構わないかと。
―一先ず投稿されてはいかがでしょう?

132:名無しさん@ピンキー
07/08/31 23:55:25 qpicZ7hZ
女がただ捕食するのはスレ違い
女が捕食するようになるってのがこのスレの主旨

133:名無しさん@ピンキー
07/09/01 15:04:30 WSi1lqBW
せっかく捕食スレがあるんだから
そっち使えばいいじゃない

134:130
07/09/01 19:04:54 KtMEXMPS
いや、向こうは女性が捕食されるのを楽しむ方、って思っているわけですけども。
キャリオンクロウラーに改造されて、捕食するしかない女性、
というのはこっち向きかな、と思ったんですが。

135:名無しさん@ピンキー
07/09/02 01:18:08 3YLw6yRz
人外に至るまでの肉体的・心理的描写があるなら十分と思われ。

136:名無しさん@ピンキー
07/09/02 19:58:49 nqxiFXIz
>>134
その改造シーンを詳しく書いてくれれば俺的にはおk

137:名無しさん@ピンキー
07/09/02 20:16:44 NNarvATP
そうそう、身体的にも精神的にも変化していく過程が大事


138:名無しさん@ピンキー
07/09/03 00:13:29 q04JymJ1
精神面でも完全に変化し切れないというのもありだろう

139:名無しさん@ピンキー
07/09/03 07:02:19 DH1t3F6K
>>138
貴殿とは良い酒が飲めそうだ。

140:名無しさん@ピンキー
07/09/03 07:17:07 WIsyPN1n
>>138
いいね

141:名無しさん@ピンキー
07/09/03 15:01:21 GDRu7mhV
ぬ~べ~の女郎蜘蛛の回で色々目覚めた。

142:名無しさん@ピンキー
07/09/04 00:57:54 +hg5bdK6
アウターゾーンの半魚人になる娘もいいぞ

143:名無しさん@ピンキー
07/09/08 01:04:13 kA7GBLXP
>>142のは魚食べまくって両親に「見ないで!」とか言ったり
描写もよかった気がする。
1話の悪魔化するママとか、交通事故から甦ったゾンビママとかもいたなあ

144:名無しさん@ピンキー
07/09/13 07:52:33 M2yckRkU
ほしゅ。

145:名無しさん@ピンキー
07/09/14 00:06:14 SRHrQWNL
ほしゅ

146:名無しさん@ピンキー
07/09/20 00:18:49 QvgUIUSb
hos

147:名無しさん@ピンキー
07/09/21 03:28:04 ED22kAox BE:537858645-2BP(0)
ヘタレ作者逃亡晒しage

148:名無しさん@ピンキー
07/09/22 02:19:19 q3+0zG4E BE:430286944-2BP(0)
>>147 ageんなカス死ね

149:名無しさん@ピンキー
07/09/22 02:31:18 0VC3et8P
うわぁ……

150:牧島みにむ
07/09/22 21:17:20 NDJuHoZc
現在SS創作中ですが………。
中々筆が進まず済みません。

151:名無しさん@ピンキー
07/09/23 15:16:16 4OCJgJE+
一々反応するな

152:名無しさん@ピンキー
07/09/27 07:55:58 V3VruCS+
あげ

153:名無しさん@ピンキー
07/09/28 21:41:32 w8zzmnKL
ほしゅ

154:名無しさん@ピンキー
07/10/03 15:25:41 sOFBU9Te
保守

155:名無しさん@ピンキー
07/10/06 10:01:29 PcUEDA0F
ほしゅー

156:名無しさん@ピンキー
07/10/09 01:05:06 x6tO9fTi
ほしゆ

157:http://FL1-125-199-112-29.ehm.mesh.ad.jp.2ch.net/
07/10/09 01:22:24 0/QaxHEs
guest guest 

158:名無しさん@ピンキー
07/10/09 20:07:34 vod/1m1U
裏2ch乙ww

159:名無しさん@ピンキー
07/10/09 21:02:19 vn87Y+jG
今どきwww

160:名無しさん@ピンキー
07/10/10 00:03:45 unVaqln+
フイタw

161:名無しさん@ピンキー
07/10/16 19:27:28 +CJt7BIq
hosyu

162:名無しさん@ピンキー
07/10/19 23:13:10 g18x6Nl2
っていうかなんで唐突にw

163:名無しさん@ピンキー
07/10/22 02:06:40 l+2IXXPx BE:242036633-2BP(32)
(^o^)ノ<死ねクズども~

164:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:18:52 NdHMJINC
ジェラールが、何かを呟きながら、手にした斧を振るった。
もちろん、迫り来る電光をただの斧で弾き返せるわけはない。
けど彼が眼前に描く斧の軌跡は……
「ヘキサゴン!?」
製図したように完璧な、魔術的な守護の象徴たる六芒星が描き出されていた。
そこに炸裂する電光。空間が透明なカーテンのように大きくたわみ、破れ、その奔流は
ジェラールを包んだ。
でもその威力は大きく減じられていて、彼を死に至らしめるほどではない。射線上に
位置していたわたしのもとにまでは届きもしなかった。
「あいたたた……」
痺れと痛みが全身を包んでいるのだろう、ジェラールが呻く。しかし彼は着実な足取りで
女魔術師へと歩んでいく。
「あなた……防御魔法が使えたの?!」
奥の手を凌ぎきられたイヴォンヌが、悲鳴のように叫んだ。
「『使う』ってほど上等なもんじゃないさ。半年近く前に会った旅の賢者に教わった
その通りのことを、理屈も何もわかってないままただ真似してるだけだからな」
律儀に応じると、言い足した。
「もっとも、まだ真似すらもできてないみたいだ。完璧にやれれば俺の乏しい魔力でも、
ケルベロスの炎ぐらい防げるはずなんだが……」
ケルベロス。半年近く前。わたしと同じことに気づいたのか、イヴォンヌが笑った。
「ははっ、フローランスの仇討ちを考えて、慣れない魔法の修行までこっそりやってた
ってことか。でもよかったじゃないの、フローランスが生きていて。あいにく醜い蠅に
なっちゃったけどね!」
「元に戻すだけさ」
捨て台詞を聞き流すと、戦士は魔術師を一撃で昏倒させた。

165:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:19:49 NdHMJINC
強張っていた身体から力が抜けるのを感じた。
利き腕を失ったユベールに、最強の呪文を防がれたイヴォンヌ。二人とも気を失っていて
こちらに襲い掛かっては来ない。
と、ジェラールが片膝を突いた。
「ジェラール?!」
「さ、さすがに『雷の奔流』は効いたな……。フローランス、呪文頼むわ」
さっきまでは気力で持ちこたえていたのだろう、その場に座り込んだ彼は、もはや一歩も
動けそうにない。
「え、ええ」
六本の肢を動かして、わたしはジェラールへと近づいていった。
地面を這うその速度が遅い。わたし自身羽を焼かれていたり、細かい傷を負っている
せいだろう。でも自分より、死闘を乗りきったジェラールを治す方が優先に決まってる。
近づくごとに彼の背中が大きくなっていく。力強い、愛しい背中。
と、ジェラールがこちらへ振り向きそうになった。
「見ないで」
今のわたしはあまりにも醜い、人間ですらない存在。
「今さら何言ってんだよ」
口ではそう言いながらも、わたしの言葉に従って、まだこちらを見ないでいてくれる。
「でも……」
「惚れた女に笑いかけるくらい、したっていいだろ?」
その飾り気のない力強い声は、わたしの中に残っていた最後の不安を拭い去ってくれた。
ジェラールがそばにいてくれるなら、きっと大丈夫。わたしは人間に戻れるし、どんな
敵が来ても……たとえそれがあのベルゼブブでも……怖くない。
「そ、そうね」
わたしの曖昧な答えから、それでも承諾の気持ちを汲んでくれたジェラールは、ゆっくり
首を回してわたしを見下ろそうとして……
突然弾かれたように立ち上がって飛び出すと、わたしの上に覆いかぶさった。

166:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:20:24 NdHMJINC
鈍い打撃音。
わたしの目の前で、ジェラールの膝が力を失い崩れ落ちる。それでもわたしの上に
倒れ込んだわけではない。膝と肘で彼は身体を辛うじて支えているようだ。
何が起きたかまだよくわからないが、回復呪文を唱えれば済むこと。
「すべての傷を癒せ!!」
わたしが使える最高の呪文をすぐさま唱えた。ほとんどあらゆる状態から回復できる、
とっておきの呪文だ。
なのに。
「傷を癒せ! 目覚めよ! 意識を取り戻せ!」
頭上からは、コゼットの悲鳴のような呪文詠唱。負傷回復、覚醒、混乱からの復帰の
三種の呪文を立て続けに唱え、どうやら対象はジェラールらしい。
それなのに。
ジェラールは、身じろぎ一つしようとしない。
夏の盛りだというのに、全身を寒気が走った。頭部から肢の先まで、身体中の毛が逆立つ
ような不安に囚われた。
肢を動かし、ジェラールの下から這い出す。
「傷を癒せ! 目覚めよ!」
わたしたちが、正確にはジェラールが、ユベールやイヴォンヌと戦い始める前、
コゼットはすべてを拒絶するようにしゃがみ込んで呆然としていた。そんな彼女が先刻、
わたしとほぼ同時に回復呪文を唱えられたのはどうしてだろう。
ジェラールのさっきの動きは、たぶんわたしを庇おうとしたものだ。なら、彼は何から
わたしを庇ったのだろう。
その何かに対して、コゼットはなぜ悲鳴も警告も発しなかったのだろう。たとえ最初に
襲われようとしていたわたしを救う気がなかったのだとしても、もしジェラールがその
何かに気づけば必ずわたしを守ろうとすることは、さっきの戦いからはっきりしていた
はずなのに。
もし人間だったら、全身から汗が噴き出していたはずだけど、蠅になっているわたしは
汗をかかない。
わたしは頭を巡らせてジェラールを見た。

167:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:21:04 NdHMJINC
クリティカルヒットと俗に呼ばれる攻撃がある。技の名前などではない。単なる結果を
示す言葉。
狙ってできるものではない、偶然とか、攻撃側の幸運とか、防御側の不運とか、そんな
表現でしか説明しようのない結果に対する呼称。
……例えば、駆け出しで筋力に乏しい僧侶の少女が、練達の戦士の脳天を一撃で
打ち砕いてしまった場合など、そうとでも呼ぶ他はないだろう。
コゼットの脇に放り出されているモーニングスター。そこにこびりついている脳漿。
わたしをかばうように四肢を伸ばしたまま、事切れているジェラール。
唱え続ける呪文の効果がないことを悟ったか、コゼットが呆然とした表情で膝をついた。
ぼんやりと周囲をさまよう視線が、わたしに止まる。
と、その顔が怒りに染まった。
「この、化け物ッッッ!!」
半年前までわたしに懐いていた幼い少女は、わたしにすべての憤怒と憎悪を叩きつける
ように叫んだ。その表情は、半年前まで、いや、つい先刻までと比べて、ひどく艶かしく
女らしいものにも見えた。
その表情で、彼女の心理を少し理解できた気がした。
「あんたが急に現れたりしなければ、みんな今まで通りにやっていけたのに! あんたが
今さら出てこなければジェラールさんがイヴォンヌさんやユベールさんと殺し合うことも
なかったのに! あんたがせめて虫なんかになってなければ諦められたのに! あんたが
化け物じゃなければ祝福することだってできたかもしれないのに! 醜い蠅のあんたが
いなければ」
「あなたが、恋してるジェラールを誤って殺してしまうこともなかった」
先回りすると、完全に図星だったのか、コゼットの言葉が止まった。
沸騰する彼女の頭に水を差せたかと、一瞬だけ期待した。
彼女がわたしをどう思ってるかはとりあえずどうでもいい。彼女がわたしを殺そうとした
ことも、ひとまずどうでもいい。
ジェラールを蘇生させるためには、他の二人の手が借りられない以上、コゼットの協力を
取りつけなければならないのだ。教会へ運び、防腐処置を施し……蘇生費用の工面は後で
考える。

168:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:21:41 NdHMJINC
しかし、コゼットはわたしの望みを裏切った。
「わかってるのなら、死んでよっ!!!!!」
素早くモーニングスターを掴むと、わたしの身体に打ち付ける。蠅の身体のわたしは
大きく吹き飛ばされ、立ち木に激突した。
やはりレベルが低いから、わたしを死に至らしめるほど強い打撃ではない。けれど心と
体力が参っているこの状況では、何発も喰らっていいものでもない。
だからわたしは、無駄かもと思いつつ声を上げた。
「ジェラールを蘇生させなくちゃいけないわ。一人で死体を抱えて山を降りる気なの?」
わたしは彼を運ぶ役には立てないが、コゼットの疲労回復はできる。もしモンスターや
意識を取り戻した二人に襲われた場合、呪文での攻撃は彼女より優れているし、盾役にも
なれるだろう。
しかし、やっぱり無駄だった。
「ジェラールさんを生き返らせるなんて無理に決まってるじゃない! わたしにはそんな
お金ないもの!」
ある意味、現実的な答え、とは言えるだろう。
だがその瞬間、わたしは深く激しい怒りの感情に包まれた。ユベールやイヴォンヌに
嘲られ殺されそうになった時よりも、はるかに深く。
あなたのジェラールに対する気持ちは、金銭的な問題で覆るようなものだったのか、と。

169:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:22:14 NdHMJINC
こうしてわたしを殺そうとしているというのも、ただの腹いせではないだろう。後で
イヴォンヌとユベールを治して三人で街へ帰る算段と考えられる。
結局のところ、彼女の熱はジェラールを死なせてしまったその時点から、急降下する
ように冷めてしまったのかもしれない。憎いわたしを自力で殺そうとするくらいには
まだ熱く、しかし恋する相手を甦らせる気力は萎えるほどに。
でも、わたしはそんな相手にみすみす殺されたくはない。こんなみっともない娘に
殺されるなんて冗談じゃない。
何よりわたしは、ジェラールを生き返らせたい。わたしを守り抜いて命を落とした、
愛しい人を。
「傷を癒せ!」
呪文でどうにか体力と羽を回復させる。このまま飛んで街の近くへ行き、姿を見せずに
物陰から助けを呼ぶ。成功率がどれほどのものかは定かでないが、今のわたしにできる
最善の手段のはず。
けれど。
「逃げるなよ」
いつもの落ち着いた口調とは違う、恨みのこもったユベールの声。
真後ろから不意を突かれたわたしは、羽と胴体ごと地面に縫い止められた。

170:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:22:55 NdHMJINC
「こっちについてくれたのね、コゼット。賢明な判断よ」
気絶から覚めたイヴォンヌが、回復呪文を唱えてくれているコゼットに言った。
「…………」
返事をしないコゼットだが、その行動がすべてを雄弁に語っている。
わたしは依然、胴体にサーベルを突き立てられたままである。
「三本目、っと」
切断された右腕をいち早くコゼットの呪文で回復してもらったユベールが、まだ
神経質そうに一度断ち切られた部分をさすりながら、わたしの左前肢に手をかける。
そして今度は、最初に二枚の羽をもいだ時のように、勢いよく引きちぎった。
痛いことは痛い。しかしそれは、人間の時なら髪の毛を十本ほど引き抜かれる程度の
痛み。子供の頃に近所の男の子たちが捕まえて振り回していた昆虫も、簡単に肢が
もげてるのに痛がったりはしなかったように覚えている。
痛覚が鈍いのは、蠅の身体で唯一ありがたいことだ。わたしは空虚になりがちな心の
片隅で、そんなことをぼんやり考えた。
ケルベロスに大怪我を負わされ死に掛けていた時のことを思い出す。ジェラールたちが
逃げ、ベルゼブブが現れるまでの、絶望と両脚の激痛以外に何も感じられなかった時間。
あの時に比べれば、まだしもと言うべきだろう。
わたしが悲鳴を上げるのを期待しながら肢を一本一本もぎ取っているユベールは、
わたしが大きな反応を示さない様子を見て、つまらなそうに言った。
「本当に虫になっちまったんだな。やっぱりおまえは化け物だよ」
そうかもしれない。今のわたしは人間だった時とは大きくかけ離れた存在だ。
でも、わたしには、彼ら三人の方がよほど化け物に思えてならなかった。
金を失いたくないから。金を得たいから。恋する相手を奪われたくないから。そうした
理由でかつての仲間や先輩に当たる人間を簡単に殺そうとする人間たち。わたしがかつて
見たことのなかった醜さをさらけ出した人間たち。
それともこれが普通なのだろうか。人間の姿を失ったものは、人間として扱うに値しない
ものなのだろうか。
いや、ジェラールはわたしをわたしとして扱ってくれた。わたしをフローランス・ベルと
して見てくれて、守ってくれて、戦ってくれた。
でも、そのジェラールはもういない。

171:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:23:36 NdHMJINC
「こっちの方がまだ効果的かね」
ユベールはそう言うと、ジェラールの死体をわたしの真正面に引きずってきた。
「ああ、痛かったなあ、さっきの一撃はよ」
わたしに聞かせるように大声でぼやくと、ジェラールが愛用していた斧を振り上げた。
「やめて!」
わたしの声を無視して振り下ろされる斧。断ち切られる左腕。
「おっと、間違えちまった」
「いや! そんなことしないで! ジェラールにそれ以上ひどいことしないで!!!!」
今度は右腕。さらにその次は、死体を嬲るように、小刻みに切り刻まれていく右足。
自分が殺されることは、まだ耐えられる気がしていた。ジェラールがいなくなった以上、
こんなところに未練なんてない。
でも彼の死体を辱められるのは我慢ならなかった。
果てしない喪失感と、肉体的精神的苦痛。しかもそれを加えてくるのは、かつて大切な
人たちと信じていた人間たち。
ケルベロスに殺されかけた時よりも、よほど惨い。
叫びながら、止めてくれることを期待してコゼットに目をやる。なのに彼女は、目を瞑り
耳を塞いでいた。まるでそうすれば、周りのすべての出来事から無縁でいられるとでも
言うように。
「こんなの嫌、殺して、わたしを殺して……」
叫ぶのに疲れ果て、呻くように繰り返すことしかできなくなる。
と、刺さっていたサーベルが引き抜かれた。
「前にあんなこと言ってたあなたがそこまで言うとはね」
頭上から聞こえるイヴォンヌの声。オークかコボルドに新種の呪文の威力を試してみる
時の声に、よく似ている。
「なら私もそろそろ飽きてきたし、お望み通り殺してやってもいいわよ。ジェラールと
一緒にね」
そう言うと、ゆっくりと呪文を詠唱し始める。彼女の掌の上、炎球が次第に大きく
膨らんでいく。
「今からジェラールごと火葬にしてあげるわ。ほら、まだ歩くくらいできるでしょ。
愛しの彼の元に駆け寄っていきなさいよ」
挑発するように言われ、わたしは身を竦ませた。

172:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:25:35 NdHMJINC
心は前へ進めと命じている。ジェラールとともに死ねるなら本望だと思っている。
頭もそれを否定しない。逃げようにも、回復呪文を唱えなければ飛ぶことはできない。
そんな猶予を彼らは決して与えない。それなら愛した人の傍で死ぬのがせめてもの
慰めになるのではないかと考える。額の紋章の件があるからわたしを焼き尽くしてしまう
わけがないとも考えられるが、それならなおさらジェラールの盾になるべきだろうとも。
なのに。
身体は硬く強張り、動こうとしない。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
ぴくりとも前へ進み出せないわたしを見下ろして、イヴォンヌが嘲るように言った。
「前に散々きこしめした時、言ってたわよね。『死にたくない』って。冒険者のくせに
臆病なこと」
ユベールとコゼットにも聞かせるつもりなのだろう。あるいはそれは、わたしの醜さを
顕わにすることで、自分たちの罪悪感を減らそうという計算もあったのかもしれない。
「まあ、しかたないわよ。死を恐れるのは生物の本能、まして悪魔の下等なしもべに
成り下がった今のあなたじゃ、人間だった時以上に本能の虜になっていることでしょう
しね」
心に突き刺さる嘲弄の矢。けれどそれは、たぶん事実。
わたしは醜い。わたしは浅ましい。わたしはいぎたない。わたしは穢れている。
こんな醜いわたしは……しょせん、ジェラールのそばにいる資格がない。
そんなくだらない合理化で今の自分を正当化し、わたしは全身の力を抜いた。
死にもの狂いでやれば、ここからでも誰か一人くらいは道連れにできるかもしれない。
でも無意味だ。死ぬのはやっぱり嫌だからとことん逃げる。ただそれだけを考えることに
しよう。
心の中で荒れ狂っていた感情が静まり、凪のような平静な気分が訪れた。
あるいはこれは、東方の宗教で言う「悟り」のようなものなのだろうか。
「さてと、ユベール、いいかげんに終わらせましょ」
「了解」
イヴォンヌが離れ、今度はユベールがこちらへ迫る。やはりまだわたしの首には利用
価値があると考えているのだろう。
まずは彼の初太刀をかわす。うまくいったら呪文で回復。その後はイヴォンヌの出方
次第で対応を即座に変えて……。
そんな風に思考を巡らせていると。
「今の君の心理状態は、私にとっては面白くないね。『収穫』はここまでとしようか」
聞き覚えのある声がどこからともなく響き、次の瞬間にはわたしを庇うように人影が
立っていた。

173:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:26:26 NdHMJINC
古めかしくも上品で豪奢な装束。一分の隙もない身のこなし。今わたしには見えないが、
その顔立ちはやはり気品あるものなのだろう。
わたしの姿を変えた元凶。わたしの命を救った悪魔。
地上に出たわたしに賭けを持ちかけた、ベルゼブブ。
「賭けは君の負けだ」
わたしへの宣告。しかしそれは、受け止める他ない事実。
「な、何者だ、貴様!?」
ユベールが声を張り上げながら、ベルゼブブに斬りかかった。今回の一件は、彼から
すっかり冷静沈着な印象を拭い去ってしまった。普段のあれはよくできた演技に
過ぎなかったのだろうか。
くだらないことを考えてしまうのは、この後の成り行きが予想できてしまうから。
ベルゼブブが、近づきつつあるユベールに対し、蠅を払うように手を横に一振りした。
それだけで、腕の立つ洒落者の剣士は人形のように吹っ飛ぶと、立ち木に全身を
めり込ませた。お気に入りのサーベルは、酸を浴びたようにボロボロになっていた。
「ユ、ユベール!」
イヴォンヌが声をかけるが、ユベールは木に貼りついたまま。あの勢いでは全身の骨が
砕けていそうだ。ベルゼブブが戦う姿は初めて見たが、肉弾戦もこなせるらしい。
「…………」
「くっ!!」
ベルゼブブは無言でイヴォンヌとコゼットを見つめている。モーニングスターを構えは
したが、コゼットはもう問題外。一方のイヴォンヌは、沈黙に耐えきれず呪文を
唱え出した。『雷の奔流』だ。
「無駄なのに」
思わず、ぽつりと漏らす。
わたしたちは、すでに詰んでいる。もはやこの場にいる誰も、この悪魔の意向からは
逃れられない。
「喰らいなさい!!!」
イヴォンヌが呪文の詠唱を完了させ、じっと待ち構えていたベルゼブブに放つ。
再び手先での軽い、今度は縦の一振り。
強烈な雷光の束は、蝋燭の火よりも簡単に消し去られ、イヴォンヌの全身は巨大な手で
押さえつけられたように大地に潰れた。
その様を見たコゼットは、腰を抜かしてへたり込んでいる。
さっきまでわたしの命を脅かしていた人間たちは、あっという間に無力化された。

174:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:27:24 NdHMJINC
イヴォンヌとユベール、コゼットの三人は魔力で拘束されていた。気を失った二人も
意識を取り戻しはしたが、何を企む気力もないのか呆然とベルゼブブを眺めている。
「惜しいところまで行ったが、負けは負けだ。君は今後、私の元で暮らしてもらい、
できれば協力もしてもらいたい。ああ、別に主従関係というわけではないよ。君は
私の同族だからね。保護はするが、君個人の判断はなるべく尊重しよう」
ベルゼブブはわたしの前に膝をつき、手ずから呪文でわたしの傷を癒し、近い目線から
語りかけてきた。
「同族?」
「君は自分がただの巨大な蠅だとでも思っていたのかい? 君のその身体は魔族だよ。
修練を積み魔力を伸ばせば、私のように人の姿を取ることもできる」
新しい事実を教えられたが、別にうれしくはない。今日経験した人間不信はかなり根深い
ものらしい。
「あの三人は、どうするのですか?」
後肢を擦り合わせながら、わたしはベルゼブブに訊ねた。無礼かもしれないが、マナーに
反していたら指摘してくれるだろう。
「君の妹や弟にしようかとも考えていたが……特に剣士と魔術師は、感情の動き方が
獣めいていてね。あれは傍においていてもつまらない。だからこうすることにした」
わたしの肢の動きは咎めずにベルゼブブはそう答えると、二人に視線を向けた。
「君たちは面白いことを言っていたね。公共の福祉のためにはフローランスが死ぬのは
当然だとか、冒険者のくせに死ぬのが怖い臆病者とか」
「じ、事実だろう」
「そこで君たちには、公共の福祉や秩序のために尊い自己犠牲の精神を発揮する機会を
与えよう」
言いながら、ベルゼブブの手には黒く小さな光球が生じていた。それらが二人の身体に
吸い込まれる。
「ガッ?! ウ、ガァァァァァ!!!」
「ヒィッ?! アウ、アウバウ、ワブ……ブビィッ?!!」

175:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:27:59 NdHMJINC
二人の衣服が塵となり、身体も変化していく。
ユベールは犬めいた低級な獣人……コボルドに。
そしてイヴォンヌは豚めいた下等な獣人……オークに。
「まあ落ち着いて、黙りたまえ」
ベルゼブブがそう言って指を鳴らすと、とたんに二匹の獣人は騒ぐのを止めた。いや、
声を発しようとしているのだが、出せないようだ。
「呪いによって少々姿を変えさせてもらったが、人間としての意識は保っているかね?
よろしい。そんな君たちには人間に戻れるチャンスがある。何、人間だった時の体力も
剣技も魔術も持ち合わせている勇敢な君たちには、簡単なことさ」
絶望と恐怖から期待へと眼の色を変え懇願するように仰ぎ見る二匹に、悪魔は告げる。
「先ほど君たちがフローランスに要求したように、人間に無抵抗で殺される。それだけで
呪いは完全に解除される」
二匹の顔色が劇的に変化した。
「では今から特別に君たちの住む街の近くの森の中へ送ってあげよう。ああ、一つ忠告
しておくが、人間としての意識は時間が経つほどに薄れていき、一年ほどで完全な獣人の
それになってしまう。そうなってしまえば殺されても元には戻れない。それまでに
人間らしい勇気を示すことを祈っているよ」
そう言ったベルゼブブは、すがるように手を伸ばす二匹の姿を無視して、軽く二言三言
呟いた。それだけで二匹は人間大の球形に包まれると、街の方向へ飛んで行った。
ただのコボルドとオークなら一撃で死ぬこともできるだろうに。なまじ強い冒険者で
ある彼女らが、ひたすら攻撃を受け続けるなど、よほど強固な意志がなければできない
相談だ。
もちろん、それらを百も承知で悪魔は呪いを設定したのだろうが。

176:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:28:37 NdHMJINC
「さて、こちらの小娘だが……君への贈り物としよう。好きなように加工して使い魔と
すればいい」
ベルゼブブはそう言うと、今度はもう少し長く呪文めいた言葉を唱えた。
「使い魔、ですか」
へたりこんだ股間から湯気を立ち昇らせるコゼットを、わたしは見つめた。半年前まで
神に仕える僧侶として仲の良い先輩後輩だったわたしたちが、今では蠅の姿の魔族とその
使い魔になるとは。
コゼットが口を開きそうになる。その表情を見れば、何を叫ぶ気かだいたいわかる。
絶望と恐怖と混乱の悲鳴、あるいはせいぜいわたしに救いを求める嘆願といったところ。
どちらも煩わしくて、わたしは何も聞きたくないと感じた。
するとコゼットは、先ほどの二人同様、口を開いても声を出せなくなる。
「……もしかして、わたしがこの子を弄れるわけですか?」
「その通り。やはり君は賢いね。君と彼女をつなげたので、能力と姿形を君の望むように
変えることができる。君自身の魔族としての能力に制限されるから、極端に強くしたりは
できないけれどね」
「別に、強くしたりするつもりはないです」
憎み、弄ぶ対象を与えられてしまった。新米の仲間に対する悪魔なりの歓待の手法と
いうことか。
まあ、拒む理由もない。
「わたしの居室の隣、あの底に送っておいてもらえないでしょうか? 手を加えるのは、
帰ってからにします」
「わけもない」
ベルゼブブが優雅な仕草でコゼットを指差すと、彼女の姿はかき消すように失せた。
たぶんこの瞬間には糞尿の悪臭で気絶していることだろう。

177:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:29:08 NdHMJINC
余分な登場人物は次々と退場していく。残るはベルゼブブとわたしと、彼の亡骸。
傾き始めた太陽が、わたしたちを照らしている。
「最後は彼だが……君はどうしたい?」
ベルゼブブは再び膝をつくと、わたしを見つめた。もうここで埋葬するくらいしかないと
思っていたわたしは一瞬呆気に取られたが、言わんとしていることをすぐに察した。
「わたしは……」
言いよどむわたしに、悪魔は口を開く。
「私は彼に君と同じ立場を与えたいと思っている。私の能力をもってすれば、今なら
十二分に間に合う」
わたしの予想通り、ジェラールを生き返らせることができると、悪魔は言っている。
けれどそれは、ジェラールをわたしと同じ目に遭わせるということ。わたしと同じ、
醜い蠅の身体をあてがうということ。
それぐらいなら、ジェラールは死を選ぶことだろう。ならばここで弔うのがよっぽど
彼の意に沿ったことになるのではないか。
でも彼がわたしと同じ身体で生き返れば、わたしたちは一緒にいられるだろう。いつか
冒険者に滅ぼされるまで、たぶん普通の人間よりはよっぽど長い時間を、同じ立場で、
一緒に。
「………………………………わたしは、」
陽が沈みそうになるまで考え、悩み、わたしは希望を口にした。

178:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:29:39 NdHMJINC
「あの選択肢は一番可能性が低いと思っていたがね」
洞窟の底の居城の奥のあの部屋に戻ったわたしに、ベルゼブブは語りかけた。
「予想はしていたんですね」
「似たような状況で、稀にその選択をする者がいるのでね。簡単に堕してしまわない、
優れて気高い心の持ち主がそういう決断をしがちだ」
「それは買いかぶりだと思います」
蠅の習性が強まっているのか、わたしは部屋のあちこちを飛び回ってしまう。壁や天井に
止まり、せっせと肢を擦る。
そんなわたしを見つめる悪魔の視線は優しい。わたしが蛆になっていたあの時と似た、
小さい子の歩みを見守るような表情。
「君はもちろん覚悟の上だろうが……彼が生き返れない可能性もあるだろうね」
ジェラールをここへ連れて来ない。あの場所に埋葬もしてしまわない。その代わり、
わたしは悪魔に頼んで彼の遺骸を街のすぐ近くに運んでもらった。蘇生費用をまかなって
おつりが来るほどの宝石と、一通の手紙とともに。
「どちらでも、構いません。ジェラールが生き返ってくれればもちろん一番いいですが、
あの宝を街の人間が着服してジェラールを見捨てたなら、わたしは人間に対してより深い
嫌悪感を抱くことができますから」
そうなれば今以上に、人ならぬ身となった現状を肯定することもできるだろう。
「生き返った彼は、私を追ってくるかもしれないね。囚われの姫君を救わんとする勇敢な
ナイトとして」

179:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:30:11 NdHMJINC
「彼にそれほどの力はありません」
「そうとも限らないさ。魔術の心得のない者が普通、六芒星の盾を半年で使えるもの
じゃない。彼が研鑽を怠らず幸運にも恵まれれば、いずれ私を脅かすかもしれない」
「……仮にそうなった場合、わたしはあなたとともに逃げます」
わたしはこの悪魔に頼みごとをした。ジェラールが生き返れるよう手を打ってもらった。
その借りを返さなければならない。
それにわたしは、ジェラールに顔を合わせる資格もない。あの時、自分の死に恐怖して
彼の傍に近寄れなかったわたしには。
「ふむ。私にとっては最良の回答だね。君にとって最善の選択かは不明だが」
露骨に皮肉を匂わせた口調で言うと、ベルゼブブは天井のわたしを見上げる。
「もうじき夕食だが、人の姿を取るつもりはないのだね?」
「はい」
わたしはもはや人ではない。だから人のふりをするつもりもない。
「ならばメニューは以前と同じだ。厨房に伝えてくるとしよう」
踵を返そうとした悪魔は、ドアの近くで振り返った。
「ああ、君の食料庫にはまだあの娘がいるよ。逃げ出す気遣いはなかろうが、トロールや
オーガにいちいち殺すなと指示を出すのも面倒なのでね、近いうちに処理を済ませて
もらえると助かる」
「なら、今すぐ行きます」
わたしは悪魔に使い魔を「弄る」能力の詳細を聞き出すと、部屋を出た。
些細だが、初めての仕事。魔族としてのわたしの、初めての仕事。

180:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:32:31 NdHMJINC
「開け」
屋敷の中は蠅の姿でい続けるわたしに合わせてすぐさま改造され、わたしの声に応じて
ドアが開くようになっている。
その途端に嗅覚を刺激する臭い。今のわたしにとっては食欲をそそる心地好い臭気。
だがもちろん人間にとってはそうではない。
わたしの部屋の隣を含め、屋敷のあちこちにある便所。その底で糞尿を受け止める巨大な
貯蔵庫。床や壁に降り立って肢を汚さぬよう気をつけながら、わたしは宙を飛んで奥へ
進む。
床一面を埋め尽くす糞尿の中、それでも比較的堆積が少なく、また上から降り注ぐことの
ない場所を選んで、コゼットは座り込んでいた。
ドアの開く音に反応して、汚物と涙と吐瀉物で汚れきった顔をこちらへ向ける。声を
上げようとしないのは、わたしがさっき地上で思った「声を発するな」という指示が
効果を失っていないため。
わたしを見つめる眼差しは相変わらず恐怖に満ちている。両腕で身体を抱く姿は、安い
悲劇のヒロインめいていた。
自分は何も悪くないとでも言いたげに。
時間を置いて少しは冷静になれたかと思ったが、そんな姿を見ているとやはりわたしは
怒りをこみ上げさせずにはいられない。ひどく残酷な衝動がわたしを支配する。
「あなたのおかげでジェラールは死に、わたしはここに逆戻りよ。人間に戻るどころか、
ずっと化け物蠅のまま」
わたしが言うと、身を縮める。しかしそこには、ジェラールを死なせたことへの悔恨は
見えず、微妙に喜悦の色も混じっていたような。しくじったわたしをざまあみろとでも
思っているのだろう。
あるいはその観察は、コゼットを断罪したがっているわたしの目が歪んでいるためか。
わからない以上、感情に身を任せるのが一番な気がした。

181:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:33:09 NdHMJINC
「まあ、あなたにもずっと付き合ってもらうわ。わたしと同じ姿で」
ぽかんとした表情が嫌悪と恐怖に歪むより早く、わたしは思い描いていた中でも最悪の
イメージを彼女に照射した。
瞬時に形を失い、はらりと床に広がる僧衣。
同時に巻き起こる無数の羽音。こちらの想定に従って、わたしの餌を採取するトロールの
邪魔にはならないよう、奥まったエリアへ移動していく。
「最初はただの蠅。でも魔物の糞を食べているうちに次第に魔力を蓄えるようになるわ。
百年も経てばいっぱしの魔族になれるかもね」
間違いなく混乱しているであろうコゼット「たち」に向けて、わたしは言葉を続ける。
「でも普通の蠅の寿命なんて短すぎるでしょ? だからちょっと操作させてもらったの。
今あなたの周りを飛んでいる蠅は、すべてあなた。そしてあなたが産む卵もそこから孵る
蛆も、すべてあなた。個々の経験は全体の知識となり、全部のあなたが死に絶えない限り
いつまでもコゼットの意識は保ち続けられるという仕組み。ある意味、あなたはわたし
以上に不死に近い存在になれたんじゃないかしら?」
相変わらずうろたえている何万何十万の蠅の群れ。でも何千匹かはすでに床に降り立ち、
早くも糞をむさぼっている。虫の本能にあっさり支配されているわけだ。
そして何十匹かはすでに……。
「雄と雌の比率は半々。自分同士でまぐわうってどんな気分なのかしら。いずれその
暮らしに慣れたら、教えてちょうだいね」
そこまで言うと、わたしはコゼットの群れを後にして貯蔵庫を出た。
今の自分はどこからどう見ても完全な魔族だなと自嘲しながら。

182:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:34:06 NdHMJINC
この屋敷に篭もってから一年が過ぎた。
わたしは日夜、図書館の本を人間の言葉に翻訳している。
それらは製本されて図書館の新たな一員となるのだが、その際に一部あるいは大部分が
欠損した状態で書き写され、人間の世界へと流出されるという。それら不完全な魔道書を
弄ぶ智者気取りはしばしば人の世に混乱を巻き起こすのだと、悪魔が楽しげに語らった
ことがある。そんな人間たちの混乱こそは、悪魔たちの最高の糧となるのだ。
もっとも、わたしはいまだに人の感情なるものを食したことはないが。
(お食事でございますお食事でございますああおいしそうな糞あたしも食べたい憎い
いえいえそんな失敬なことはいたしませんお食事でございます食べたい食べたい恨めしい
犯したい犯されたいお食事でございます死にかけてる苦しい気持ちいいおいしい痛い)
コゼットのうちの数匹が飛んできてわたしに告げる。そうしている間にもよその場所で
食い交わり殺されいまだにわたしを憎んでいる別の彼女らの思念が混ざりこむ。なかなか
煩わしいが、一年も経つとずいぶん慣れた。
わたしは蠅の肢に合うように作られたペンを机に置くと、食堂へ飛んでいった。

183:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:35:10 NdHMJINC
「フローランス」
いつものように口吻を突き立てて糞と腐肉の盛り合わせを喰らうわたしに、ベルゼブブが
話しかけてきた。
「わたしをその名前で呼ばないでください」
かつての『わたし』の名残を唯一残す、声を発する。本当はこれも消し去りたいくらい
だが、さすがにそれでは不便すぎるのでやむをえない。
「君もなかなか強情だね。魔力はすでに高まっているのに、君は一向に人間の姿に戻ろう
としない」
「わたしは人間ではありませんから」
九ヶ月ほど前から何度となく繰り返されてきた問答を、いつもの言葉で締めくくる。
ベルゼブブはしばし黙ってワインを味わうと、声の調子を変えた。
「アスタロトに聞いた話だが、エルスバーグの一行に斧を得物とする凄腕の戦士が
加わったらしい」
餌をむさぼっていた身体が思わず固まった。それに気づいているだろうに無視して、
知り合いの悪魔から得た情報をベルゼブブは語り続ける。
「今は南方の邪神たちと戦っているそうだが、いずれここへも来るだろうね。何せ彼は
ここにいるものの正体を知っている。今は力も身につけた。来ない理由がない」
「……申し訳ございません」
「侵略者に背中を見せるのは不愉快だが、ここには貴重な文物が多い。君の手になる
翻訳書などは、激しい戦闘の混乱で失われていいようなものじゃない。ゆえに私は、
彼らがここへ攻め込みそうになったら撤退の準備を開始する。蠅の情報網を駆使すれば、
彼らを出し抜くことは可能だろう」
「……はい」
話の行方が見えず、わたしは不得要領な相槌を打つ。
「半年後か一年後かはわからないが、その際のしんがりは君に任せたいと思っている」

184:『ベルゼブブの娘』 ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:36:29 NdHMJINC
「ああ……。かしこまりました」
わたしに今の身体を授けた悪魔の考えていることを理解し、わたしはジェラールが
生きていたことにまだ動揺しつつも、ひとまず肯った。
そんなわたしに、悪魔は唇を歪めて笑いかける。
「この一年間で一番大きく君の心が揺らいだね。一日中熱心に翻訳に取り組んでいる君を
見ていると、ここが修道院にでもなったのかとしばしば錯覚させられたものだったが」
そして、わたしの予想とまったく同じことを付け加えようとする。
「前にも言ったが、私は同族である君に命じない。殿軍の意味をどのように受け取って
もらっても構わない。むしろ」
「どんな行動を取るか悩みに悩んでもらいたいくらいだ、でしょうか?」
わたしを救うためにやって来たジェラールと戦うのか、徹底的に彼から逃げ続けるように
振る舞うのか、過去一年間の所業を泣いて詫びてエルスバーグの勇者たちに慈悲を乞う
のか、事前にジェラールと示し合わせておいて二人でどこかへ逃げるのか。
今この瞬間だけでも選択肢は次々と思いつく。わたしのこれからの日々は、悪魔好みな
起伏の激しい感情に左右されるものとなるだろう。
「ご名答」
ベルゼブブは、悪魔の名に恥じぬ邪悪な笑みを浮かべてみせた。

185: ◆eJPIfaQmes
07/10/25 02:42:15 NdHMJINC
『ベルゼブブの娘』はこれにて完結といたします。
途中でずいぶん長く中断してしまいまして、本当にすみませんでした。
諦めてスレを覗くのをやめてしまった方々には申し訳ない気持ちでいっぱいです。
そして最後まで読んでくださった皆様には、お待たせしたことをお詫びするとともに、
深く感謝いたします。

186:名無しさん@ピンキー
07/10/25 02:59:32 idCisKlC
おもろかった

待った甲斐はあった



187:名無しさん@ピンキー
07/10/25 03:01:26 mwz172FL
俺に言えるのはただ一言
GJ

待った甲斐あったよ!

188:名無しさん@ピンキー
07/10/25 05:44:37 CpQOCvx8 BE:47420922-2BP(1)
最後いっきに加速していって面白かったわwwww
まじGJ!感謝ですわ

189:名無しさん@ピンキー
07/10/25 12:17:13 f4O8lBnh
GJGJ!!
ただもう、すげえ! と唸らされました

コゼットへの復讐の仕方は予想外でした
すごい発想だ>フローランス&作者様

最後にフローランスがどんな選択をするかは気がかりですが、
ここで完結にするのが「粋(いき)」というものですね

愉しませて頂きました m(_ _)m

190:名無しさん@ピンキー
07/10/25 19:36:37 p5j292Fc
キテタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!

今から読む

191:名無しさん@ピンキー
07/10/25 23:16:02 p5j292Fc
読んだGJ!コゼットみたいなラストは新しくてよかったわー
ダークサイドに落ちた主人公の心情の変化も自然でよかった!
たださー、これ完結しちゃったらもう保守されなくなって
落ちちゃいそうだよねこのスレ(´・ω・`)

192:名無しさん@ピンキー
07/10/25 23:24:09 c98n0dxa
いつぞやの蜘蛛化小説とか良作が
ほかにも投下されてたから
そう簡単に落とさせはしない、ぞ。

193:名無しさん@ピンキー
07/10/26 00:11:15 6Iw3kuID
こんな良作があるのに保管庫がない

194:名無しさん@ピンキー
07/10/26 10:00:31 Z9DjO24y
本当にGJ!!
長い間ずっと待ったかいがあったよ!!
他の作品も読みたいけど、HPとか持ってないのかなぁ



195:名無しさん@ピンキー
07/10/26 11:08:23 Jvaz6dUO
なんというGJ、見ただけでwktkしてしまった。
お疲れさまです

196:名無しさん@ピンキー
07/10/26 22:06:00 tsDRcRQT
ほぼ毎日巡回し続けた甲斐があったぜww
本当にお疲れ様でした。

197:名無しさん@ピンキー
07/10/26 22:06:57 bYW/TvjM
冨樫より歓迎されているな

198:名無しさん@ピンキー
07/10/28 05:02:51 4SqKzlIi
誰か最初から持ってる人いません?
以前は過去ログ残してたんだけど初期化した時に間違って消しちゃって…

199:名無しさん@ピンキー
07/10/29 00:20:37 TxwS5uFJ
>>164
ご苦労様でした。

200:名無しさん@ピンキー
07/10/31 16:53:27 XFw4rRAT
面白かった。せっかくだから本にまとめてほしい(同人でも可)
どこかに持ち込めば単行本にしてくれるんじゃないの?

201:名無しさん@ピンキー
07/11/04 00:20:00 za5mG/YE
すごく楽しかった、これはいい良作

202:名無しさん@ピンキー
07/11/04 01:08:42 2hI1S6sK
次週からスライム女の連載が始まりますのでお楽しみに!

203:名無しさん@ピンキー
07/11/04 02:35:00 fTKM8luB
<<202
スレチか良く分からないけど、期待して待ってます。

204:名無しさん@ピンキー
07/11/10 12:52:58 FKgQFIP7
保守

205:名無しさん@ピンキー
07/11/10 18:09:08 4ViDxf4j
面白かった。お疲れ様です。

206:名無しさん@ピンキー
07/11/11 01:56:44 8/vC+4BF
フローランスのその後というのも色々と想像を呼び起こさせるが、
途方に暮れてさまよってたイヴォンヌが野生のオークの集団に捕まって
毎日犯されて段々と身も心も堕ちていく話、なんてのも妄想しがいがあるな

207:名無しさん@ピンキー
07/11/13 15:51:51 +J3Qbgt8
あげてみる

208:名無しさん@ピンキー
07/11/13 17:07:47 tMIXlY/9
うおっ、しまった。
完結してたのか……。

とりあえず、GJ。
これから前スレ含めて読み返してきます。

209:名無しさん@ピンキー
07/11/16 12:22:12 A6Gx+M47
保守。

210:名無しさん@ピンキー
07/11/20 18:57:57 XmKNIsE6
保守しても未来はないよ・・・

保守。

211:名無しさん@ピンキー
07/11/20 20:47:07 p5+vIhuY
◆eJPIfaQmes様、今しがた通読させて頂きました。感動!

212:maledictR18 ◆sOlCVh8kZw
07/11/21 18:36:11 DN5f/Lfj
 「おにゃのこを改造」スレから来ました。良スレ保守として拙作投下させて下さい。
元ネタは、フレドリック・ブラウン「雪女」(原題"Abominable")という、
四ページ強のSS(創元SF文庫『未来世界から来た男』所収)。
 だいたいこんな筋です―ローラ・ガブラルディはデビュー作一作で
全世界の男を虜にした映画女優。彼女はデビュー作出演後、ヒマラヤの奥地で
「雪男(イエティ)にさらわれた」という目撃情報を最後に姿を消す。
金持ちのプレイボーイ、チョーンシイ・アサートン卿はローラの生存を信じ、
イエティからローラを救出し、ローラとイイ仲になろう、と考えて
ヒマラヤへ向かう。そしてイエティを一匹しとめるが、直後に別の
イエティに背後から抱きすくめられてしまう。
 イエティの話では、自分たちは何世紀か前に秘薬によって姿を変え、
寒冷な高山で暮らし始めた人間なのだという。だが仲間の数が減ってきた
ため、登山者をさらっては秘薬を飲ませて仲間にしているのだと。
そして先ほどチョーンシイが撃ち殺したイエティこそローラであり、
仲間を殺した仕返しをする気はないが、代わりに仲間になって
自分と結婚しろ、と迫る。背後のイエティは雪男ならぬ雪女だった、
というオチ(訳者はタイトルでSSのオチをばらすという
信じがたいことをやっていますが、原題は「おぞましいもの」とか、
「あぼーん確定」とか、多分そういう意味で、ネタバレではない筈)。

…で、大昔、高校のときにこれを友人に借りて読んでから、ローラや
チョーンシイ卿がイエティ化する過程を何度となく夢想しました。
そして、今になってそれを形にしてみたいと思った次第です。
 予め言っておくと、SSである、という点と設定が同じという点以外、
原作のドライでスマートな雰囲気に似たものははありません。ご了承を。
 ―以上、前置き長くてすみません。全部で三話くらい考えていますが
とりあえず7レスで終わります。

213:"Abominable"妄想・ローラ編(1/7)
07/11/21 18:37:32 DN5f/Lfj
 わたしはヒマラヤの奥地・オブリモフ山で、突如醜悪な毛むくじゃらで
巨大な生き物にさらわれてしまった。けだものは身長8フィート。
人間のように二足で歩いているが、毛だらけで筋肉質のその姿はむしろ
ゴリラかオランウータンに近い。雪男とかビッグフットとか言われる、
雪山に出没するという噂の怪物だとすぐにわかった。
 わたしを抱えて歩く雪男の腕は太く強力で、その中のわたしは身動き
一つできない状態だった。この腕を振り払って逃げ出すのがまず
できないことは明らかだった。こうして運ばれるまま、どこかに連れて
行かれるのを甘んじて受け入れるしかないようだった。ただし、凶暴さや
敵意は感じられなかった。厚い毛に覆われたその胸は暖かかった。
ゴリラがそうであるように、恐ろしげな外見と裏腹の、優しい動物なので
あろうと思われた。わたしを食べたりするわけではなさそうだ、という
ことだけは直感的に分かった。諦念と疲労感と温かい胸の感覚は睡魔を
呼び寄せ、わたしはそのまま眠りについた。

 目覚めたとき、わたしは薄暗い穴ぐらの中にいた。日光の差し込まない
穴だが、壁のあちこちが強く光っていて、周囲の様子がわかる程度には
明るい。多分、ヒカリゴケとかいう発光植物の仲間が生えているのだろう。
 やはりわたしは雪男に抱かれていたが、先ほどとははっきりと違う感触に
気がついた。全身の皮膚に、直接雪男の柔らかく長い体毛を感じる。
…つまり、わたしは衣服をすべて剥がされているのだ―スキーウェアや
シャツはもちろん、下着の一枚すら残さずに。


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch