【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合15at EROPARO
【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合15 - 暇つぶし2ch400:名無しさん@ピンキー
07/05/13 22:52:30 sn8Zj+DJ

 ふと、何か聞きなれない音がした。顔を上げて、眉をひそめる。
 何か、東の空から光るものが近づいてくる。最初は星に紛れてしまうような小さな光だったそれは、
じょじょに大きさと力強さを増していき、最後には目を開けていられないほどにまぶしい光になった。
 そして、それはゆっくりと空から降りてきた。激しい音と風を巻き起こしながら、まるで鉄の竜のように。
 夕日を浴びて鈍く光っているのは、明らかに鋼鉄で出来ていると思しき、どこか疲れたような感じのする体である。
 竜ではない。その翼は真っ直ぐで、こんなものが今飛んでいたなどとはとても信じられなかった。
 だが、それは事実飛んでいたのだ。夕日の光を跳ね返し、もう日の光も届いていない、東の夜空から飛んできた。
 今は西の方を向いている鋼の竜から、不意に誰かが降りてきた。見慣れぬ服に身を包んだ、一人の老人である。
 その老人は懐かしそうに周囲を見回してから、ふとこちらに気付いて声をかけてきた。
「やあ小さなお嬢さん。驚かせてしまったすまんね」
 そう言ったあと、不意に何かに驚いたように目を瞬いた。
「これは驚いた。お嬢さん、あんた、俺の知り合いにそっくりだよ」
 どう返していいか困惑するこちらのことなど気にもせず、老人は躊躇いながら質問してくる。
「ところでお嬢さん、あんたに聞きたいんだが、この名前に聞き覚えはないか。多分、結構有名な貴族なんだがね」
 老人が口にしたのは、この国でも相当有名な貴族の名前であった。
 黒髪の少女が頷くと、老人は興奮したように目を光らせて、さらに問いかけてくる。
「そうか、知っているか。それで、その領地はどっちの方向にある」
 嘘をつく必要も感じなかったので、黒髪の少女は西の方角を指差した。
 老人は暮れ行く空を見つめて、じっと目を細めた。その黒い瞳が、潤んだように煌いた。
 老人は鋼の竜に近づき、何かが刻まれた左手で、その翼を愛しげに撫でた。
「翼よ見ろ、あれが俺達の目指していた空だ。おお、今すぐに会いに行くぞ、飛んでいくとも」
 老人は元気に呟き、こちらに一つお礼を言って、また鋼鉄の竜に飛び乗った。
 再び凄まじい音と風を巻き起こしながら、鋼鉄の竜が重々しく空に舞い上がる。
 少しずつ小さくなりながら西の空に飛んでいくその影を見送っていたとき、家の扉が開いて誰かがこちらに走ってきた。
 祖母だった。今朝、魂が抜けたような状態で椅子に据わっていた祖母が、何かに驚いた様子でこちらに駆けて来る。
 手には、あの便りが握られていた。
「ああ、今、ひょっとして」
 多分、祖母が聞いているのは先程の老人のことだろうと思った。だから、西の空に指先を向けた。
 祖母はその方向を見て、遠ざかる影を見つけて息を呑んだ。そして、あの便りを握り締めて絞り出すように呟いた。
「ああ、あなたは約束通り帰ってきてくださった。でも、ほんの少しだけ遅かった。あと、ほんの少しだけでも、早く来てくだされば」
 肩を震わせて涙を流す祖母の背中越しに、黒髪の少女は西の空を見つめた。
 もう日が完全に沈みかけて、夕暮れから宵闇へと移り変わろうとしている、西の空。
 東の夜空から飛んできた男が、今また、西の夜空へと消えていく。
 少女と祖母は、完全に見えなくなってしまうまで、そこに立ち尽くしたまま鋼鉄の竜の影を見守っていた。

401:名無しさん@ピンキー
07/05/13 22:54:27 sn8Zj+DJ

馬鹿なもの書いた口直しと言うか。

402:名無しさん@ピンキー
07/05/13 22:57:42 b37PzPhR
サイトが帰って数十年後のシエスタの話かな?あっさりしてて良かった。

403:名無しさん@ピンキー
07/05/13 23:04:00 UgFaQpEi
才人はルイズに会いに帰ってきたんだけどルイズは死んで落胆していた
シエスタ視点でのSSか

404:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:05:54 5bs6rUMc
日曜丸一日使って書いた、俺的脳内11巻。
無駄に冗長な上に非エロだが、とりあえず投下。
初投下なんで、ミスったらすまん。10連投の予定。

405:脳内11巻
07/05/14 00:07:19 5bs6rUMc
 タバサたち母娘を救出した後、才人たちは陸路でゲルマニアへ向かった。
 数日かけて荷馬車でゴトゴト。窮屈な旅である。モンモランシーはさっさとこの衣装を脱ぎたいとしきりに訴えていたが、元の服は『魅惑の妖精』亭に預けっぱなしである。新しい服を買う余裕もないので仕方なかった。
 それでも旅は順調だった。二日目の午後にはゲルマニア入りし、安宿で才人たちは大きく安堵した。
 ここまでくれば、もう追っ手の心配はほとんどない。
 部屋はベッドが二つある大部屋と、普通の小部屋の二つを借りた。人数が増えたためである。
 小部屋にタバサの母と、タバサ。シルフィードももちろん一緒だ。しゃべれるのが嬉しいのか、シルフィードはずっと人間の姿をしたままだった。
 大部屋にはその他全員。とはいっても、キュルケはほとんどタバサに付ききりだし、モンモランシーはタバサの母に薬を飲ませたり世話をしているので、寝る場所だけの問題である。交代で荷馬車の中で睡眠をとっていたので、全員一緒に寝る必要はないのであった。


「なあ、ルイズ。どうしたんだ」
 夕食を済ませ、部屋で一息つくと、才人はベッドに腰掛けているルイズに声をかけた。少し前からルイズの様子がおかしかったのだ。
 もう一つのベッドでは、ギーシュとマリコヌルが早くも寝息を立てている。モンモランシーは隣室でタバサの母に夕食を食べさせているはずだ。タバサも一緒にいる。
 キュルケはいない。さきほど唐突に「ごめん、忘れものがあったわ」と言ってシルフィードと一緒にどこかへ行ってしまった。そんなわけで、現在部屋で起きているのはルイズと才人の二人だけであった。
「ううん、なんでも」
 ルイズはそっけない素振りで首を振る。
「なんでもないってことないだろ。さっきからため息ばっかだし、目はきょろきょろしてるし、ヘンだぞお前」
 はあ、とルイズは大きくため息をついた。

406:脳内11巻
07/05/14 00:08:19 5bs6rUMc
 今、彼女の抱えているものは些細な問題である。まあ、彼女にしてみれば大問題ではあったが、極めて個人的な葛藤であった。
 ルイズはジト目で才人を見る。
 この使い魔は、普段相談したいことがあっても気付かずにメイドとイチャイチャしたりするくせに、どうしてこういうどうでもいい時だけ鋭いんだろうか。
 それでも、単純に気にしてくれたことが嬉しくもあったので、ルイズは渋々といった口調で話し始めた。
「あのね、わたし達これからキュルケの家に向かうわけよね?」
「ああ」
「わたし、キュルケのご家族になんて名乗ればいいと思う?」
「は?」
 問われて才人は面食らった。そんなの普通に名乗ればいいじゃないか。
 と、そこで気付く。ルイズの家とキュルケの家は、不倶戴天の仇敵同士だったっけ。
「もしかして、キュルケの家の世話になるのが嫌なのか?」
「そんなわけないでしょ」
 ルイズは目を細めて才人を睨んだ。
「もう先祖の確執とか、わたしはどうでもいいのよ。キュルケは誠意を示してくれたんだから、今度はわたしが示す番だわ。それが貴族としての礼儀だもの。でもわたし、姫さまにマント返しちゃったでしょ」
 才人は頷く。
「だから本来、名乗りたくても名乗れないの。でも、キュルケのご家族にとってはわたしはやっぱりラ・ヴァリエールのはずなのよね。それを隠して世話になるのは卑怯だと思うの。でも名乗ったら多分ただじゃすまないし、まあ……、名乗れないんだけど」
 言いながらだんだん声が小さくなっていく。どうやらルイズの中では複雑な葛藤があるようだった。
 仕方ないので、才人は正直に答える。
「悪い。複雑すぎて俺にはよくわからん」
 はあ、とルイズは再び大きくため息をついた。
 目が、この役立たず、と言っている。
 言われても困る。才人は未だに、そうした貴族の意地とかプライドとか礼儀とかいった機微がよくわからないのだ。貴族を辞めたといっても、ルイズはやはり誇り高い貴族のままだった。
 やがて、ルイズは諦めたようにもぞもぞとシーツをかぶり、
「……寝るわ」
 と言った。

407:脳内11巻
07/05/14 00:09:32 5bs6rUMc
 昼間に馬車で仮眠を取ったせいか、才人は目がさえてしまっていた。まだ眠る気にはなれない。
 隣室を覗くと、モンモランシーが椅子に座ったまま舟を漕いでいた。タバサの母も深く眠っているようだ。夕食も、夕食後の薬も摂り終えたらしい。
 タバサはいない。どこかへ出掛けたのだろうか。
「モンモン。椅子なんかで寝てたら体壊すぞ」
 声を掛けると、モンモランシーは虚ろな目で「ふわ」と声をあげた。
「ああ……、つい寝ちゃったわ。だめね、昼間寝とくべきだったか」
「薬の追加作ってたんだろ、馬車の中で。しょうがないさ」
 眠り薬は調合が簡単とはいえ、揺れる馬車の中ではそうもいかない。随分と目を疲れさせてしまったようだ。
「部屋に戻って寝ろ。歩けるか」
 モンモランシーは片手を挙げて返事しながら、ふらふらと立ち上がる。
「ルイズの方のベッドで寝とけな。ギーシュが寝てる方はぽっちゃりさんがいるから、狭い」
「ふあーい」
 貴族らしからぬ返事に、すっかりモンモンも砕けたなぁ、と才人は苦笑する。
「あ、タバサどこ行ったか知ってる?」
「ん……、ああ、さあ。散歩じゃない?」
 そう言いながら、モンモランシーはふらふらと大部屋に入っていった。
 しょうがないなぁ、と才人は一度部屋に戻ってデルフを背負い、階段に向かう。
 ゲルマニア入りしたとはいえ、追っ手の可能性が消えたわけではない。軍はさすがにもう追ってこないだろうが、特殊な刺客がこっそり狙ってる可能性は依然としてあるのだ。その上、タバサは今、杖を持っていない。
 アーハンブラの城に、タバサの杖はなかった。隠されたのか捨てられたのか、折られたのかわからない。彼女を捕まえた連中にしてみれば不要のものだろう。取っておく理由がない。
 杖のないタバサは、ただの少女と変わりなかった。
 階段を降り、一階の酒場を抜けて玄関を出る。
 外はすっかり日が暮れて、人通りもほとんどなくなっていた。
 左右を見渡すと、左手を流れる川の橋の上に、見慣れた目立つ青い髪があった。
 才人は安堵の息をつくと、そちらへと向かう。
 タバサは橋の欄干にもたれ、空を眺めていた。とっくに才人には気付いているはずなのに、その視線はぴくりとも動かない。
 月明かりに照らされたタバサの幼い顔は、神秘的な美しさを湛えていた。

408:脳内11巻
07/05/14 00:11:52 5bs6rUMc
 季節は春とはいえ、夜風が吹くとまだ肌寒い。橋の上は風の通り道だった。
「寒くないか?」
 近付きながら声を掛けると、タバサは首を小さく横に振って答えた。
 タバサはルイズと同じような、質素なワンピースに身を包んでいる。幽閉時に着せられていた豪奢な寝巻き姿のままではいくらなんでもまずいので、昨日キュルケが適当に選んで買ったものだった。その際、靴も一緒に買っている。裸足だったからだ。
 余ったお金でシルフィードの服装も整えたら、それでキュルケの持ち金はほとんど尽きてしまった。あとは宿代くらいしかない。
 いつもの白タイツも白ニーソもはいてないので、スカートからは細い生脚が覗いていた。
 月は二つとも満月だった。そのせいか、夜なのに随分と明るい。太陽とは違う冷たい光が、夜の空をやわらかく照らしていた。
 才人はタバサに並んで欄干に寄りかかり、同じように空を仰いだ。
「……はあ。相変わらずすごい月だよなぁ。参っちゃうよなぁ」
 思わず呟く。
 ハルケギニアに召喚されてほぼ一年。何度も見ているとはいえ、未だにこの二つの月には慣れない。堕ちてきそうなほど大きいので、なんだか不安になるのだ。
 ふと見ると、タバサが不思議そうに才人を見つめている。
 才人は言い訳でもするかのように言葉を継いだ。
「俺の世界には、月は一つしかないからな。こんなにでっかくもないし」
 言ってしまってから、才人は気付いた。
「あ、俺、別の世界から来たんだ。言ってなかったっけ」
 タバサはこくりと頷き、そのあと首を横に振って、
「竜の羽衣の時に、そんな気はした」
 と言った。
「そっか」
 才人はなんだか意外な気がした。才人が異世界から来たことは、ルイズはもちろんオスマンにアンリエッタ、コルベールだって知ってる。キュルケもコルベールから聞いてるような感じだった。
 どこまで理解してるかは不明だが、シエスタだって知ってるのだ。すっかりみんな知ってるものだと思っていたのである。
 そういえば俺、ギーシュたちに言ってたっけ、と才人は考える。言ってなかった気がする。こう考えてみると、ルイズの虚無よりも周囲の認知度は低いのかも知れない。
 というか、東方のロバなんとかの出身ってことになってたんだっけ、と才人は思い当たる。そんなことまで忘れていた才人であった。

409:脳内11巻
07/05/14 00:12:52 5bs6rUMc
「まあいいや。俺はこことは違う、別の世界で生まれたんだ。月は一つしかなくて、魔法使いはいない。竜とかエルフとかもいない。貴族もいない」
「貴族もいない?」
 不思議そうなタバサの問いに、才人は頷く。
「大昔はいたし、今もいる国もあるのかも知んないけど、俺の国にはいなかったな」
「誰が国を治めてるの?」
 タバサが素朴な疑問を口にした。貴族がいないということは、王さまもいない。地方を治める領主もいない。どうやって国政を執っているのか興味がわいたのだろう。
「えーと、総理大臣」
「ソーリ大臣?」
 重ねて訊かれて才人は困った。民主主義の詳しい仕組みなんて知らない。
「うーん、選挙するんだ。政治家になりたい人が何人か立候補して、国民がその中から投票で選ぶのかな。総理大臣ってのは、政治家の中で一番偉い人……かな」
 言ってて自分でも自信がなくなってくる才人であった。
「ごめん、俺もよくわかってない。二十歳になるまで選挙権ないし、公民苦手だったし」
 頬をかいてそう言うと、タバサは「そう」と言って視線を戻した。
 タバサはもう空を見ていない。なにか考え込むかのように、川の水面を見つめていた。
 心地よい沈黙が流れた。風が二人の髪を絶え間なく梳いてゆく。
 川面を魚が跳ねた。鱗が月光を弾いて、きらきらと光った。才人はそれをぼんやりと眺めていた。
 ここしばらくなにかと忙しかったので、こうした安寧な時間は久し振りだった。もちろん今だってタバサの護衛のつもりなのではあるが、それでもこうして二人でいると、なんだかほっとするのだった。
 なんでだろう、と才人は考える。ルイズと一緒だと、嬉しくてドキドキする。たまに怖ろしくてドキドキする。シエスタの場合は、落ち着くし懐かしい感じがするけど、やっぱりドキドキする。
 タバサの場合、このドキドキがない。干渉してこないからだろう。ずっと傍にいても不自然でなくて、でも、いないとなんとなく物足りない。
 不思議な子だな、と才人は思った。
「……サイト」
 と、唐突にタバサが才人を呼んだ。名前で呼ばれるのは初めてだったので、不覚にも才人はどきりとした。
 タバサは顔を上げ、まっすぐに才人を見つめている。
「わたしはあなたに二度、救われた」
「へ?」
「一度目は命を。二度目は心を。だからわたしの命と心はあなたのもの」

410:脳内11巻
07/05/14 00:13:36 5bs6rUMc
「え?」
 才人は目をぱちくりさせた。突然すぎて、意味がよくわからない。
 なんか、さらっととんでもないことを言われた気がする。
 やがて、水が滲みこむようにその言葉の意味を正しく理解し、咀嚼し、才人は慌てた。
「ちょ、まま待てって、なにトンデモないこと言ってんだお前!」
 いつか見た夢を思い出す。あれは悪夢だったが、これは夢じゃない。
 才人はぐるぐると目を回した。
「それに、そんなこと言ったら俺だってお前に何度も助けられたし、お互いさまだろ!」
 タバサはゆっくりと首を振る。
「わたしはただそこにいて、できることのために杖を振ってただけ。あなたはできるはずのないことに挑んでくれた」
「いや、でも、だって、俺こう見えても一応伝説だし。できないかどうかなんて、やってみないとわからないし」
「だからこそ」
 そう言って、タバサは才人に向き直った。直立したまま、右手を胸に添える。優雅な動きだった。
 ガリア王家の正式な敬礼の作法なのであるが、もちろん才人にはわからない。
「雪風のタバサ。世をはばかる名を、元ガリア北花壇騎士七号、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。今は捧げる杖すらなく、すでに貴族の身でもないけれど、この命とこの心、あなたに捧げます」
 くらくらした。ワインをがぶ飲みした時みたいに、頭が揺れる。
 タバサはじっと黙って、才人の言葉を待っているようだった。
 外見こそ幼いけれど、タバサの年はルイズと一つしか違わない。才人と二つしか違わない。才人の世界でいえば、この春に高校入学するはずの年齢である。信じられないが。
 改めて気付くまでもなく、タバサは綺麗だ。白磁のような肌も、宝石のような艶やかな髪も、全体に纏った気品も、ルイズに少しも劣らない。
 夢で見たよりも、タバサは綺麗だった。
 ティーカップのような、白くて丸い頬。
 形の良い貝殻のような、桜色の清楚な唇。
 眼鏡の奥の、深碧の湖のような神秘的な瞳。
 混乱する頭のまま、どこか冷静な思考で才人はそっと手を伸ばし、タバサの眼鏡を外した。考えて取った行動ではなく、ただ、もっとその瞳を覗き込みたくなったのである。

411:脳内11巻
07/05/14 00:14:37 5bs6rUMc
 しかし、タバサはその瞳を閉じてしまった。別に意地悪をしたわけではない。目を閉じ、ややあごを上げて、胸の前で手を抱えただけである。
 どこで習ったのか、誰に聞いたのか、はたまた本で読んだのか、それは男性に眼鏡を外された時の正しい少女の仕草だった。
 どきん! と才人の心臓が跳ね上がる。
 これは……もしかして?
 いいのかな? しちゃっていいのかな?
 いいもなにも、ほかに考えられる可能性はなかった。蛾が蝋燭の火に誘われるかのように、才人はタバサの両肩に手を置き、腰をかがめてその端正な顔に唇を寄せた。
 顔を寄せると、甘い匂いがした。才人はたまらず、そのままタバサの唇に唇を押し付けた。
 いつの間にか、こういう流れに慣れてしまった才人である。
 タバサの唇はやわらかく、しっとり冷たかった。
 唇を離すと、思ったよりも長いタバサの睫毛が震えてるのが見えた。両手は胸元でぎゅっと握りしめられている。
 ああ、緊張してたんだな、と思うほど、いつの間にか才人には余裕があった。とんだスキル獲得である。
「キス、初めて?」
「……初めて」
 タバサは目を開きながら、かすれた声で短く答える。
 才人は彼女の頬にかかった青い髪を梳きながら、ふと思ったことを口にした。
「でも、シルフィードとは?」
 使い魔として召喚した時に、コントラクト・サーヴァントの儀式でキスしたはずである。
 しかしタバサはついと目を逸らし、やや頬を染めながら、
「あれはノーカン」
 と呟くように言った。
 無愛想な子供だと思っていたタバサの、そんな女の子らしい発言に才人は脳幹を撃たれた。
 洒落ではない。直撃である。思ってもみなかった攻撃だけに、一撃必殺であった。
 余裕は吹き飛んだ。本能的な愛しさが込みあげてくる。才人はほとんど無意識にタバサの背中に手を回し、ぐっと抱き寄せた。
 羽のように軽いタバサが、才人の腕の中に納まる。
 ずっと強張っていた肩から力が抜け、タバサは体重を才人に預けた。
 あったかくて、やわらかい。
 じっと見つめる瞳が月の光を反射して、心なしか潤んで見える。
 やばい。なんかずるい。こんな不意打ちひどい。
 こんなに可愛いなんて反則だ。よくわからないけど反則だ。
 ピピー。レッドカード、退場。俺の胸の中へ退場。次の試合には出られません。
 意味不明のことを考えながら、才人は憑かれたようにタバサの肩を抱き、もう一度唇を寄せた。

412:脳内11巻
07/05/14 00:15:33 5bs6rUMc
 一瞬だけタバサの体が強張るが、すぐに力は抜ける。才人に体を預けたまま、タバサはそっと目を閉じた。
 二人の息が重なる。
 その、瞬間。
 ぞくり! と才人の背筋に悪寒が走った。同時にタバサが神速で飛び退く。
 数々の修羅場をくぐった二人である。殺気に対しては敏感だ。特に才人は文字通り“数々の修羅場”を経験している。この悪寒には嫌というほど憶えがあった。
 はっと振り返るいとまもなく、上空からきゅいきゅいと声がして、目の前を大きな影がよぎった。
「え、シルフィード?」
 気付くとその足に、いつの間にかしっかりタバサを捕まえている。風でスカートがめくれてパンツが見えた。シルフィードの背中には、キュルケともう一人の影がある。
 そのまま川の上を滑空して遠ざかり、ばさりと羽ばたいて急上昇。シルフィードに掴まれたタバサは困ったような顔で「ごめんなさい」とだけ言い残した。
 呆然としたのは一瞬。パンツ見えた、と思ったのも一瞬。才人は“戦場”に一人取り残されたことを悟った。
 今なお殺気というか怒気というか、肌を焼くような感覚は続いている。むしろ激しさを増していた。
 恐る恐る、才人はその源泉と思しき宿の方向を向く。首が意志に逆らって言うことを聞かなかったが、それでもなんとか首を回す。
 はたしてそこには、寝ていたはずの桃色の髪が夜風に舞っていた。
「ル、ルル、ルルル……」
 鳥を呼んでいるわけではない。動転して言葉にならないのだ。
 月下に佇むルイズは美しかった。
 風になびく草色のワンピース。どこか遠くを見るような目で、高貴な微笑すら浮かべながら彼女は才人を見つめた。どことなく、悟りを開いた高僧のような雰囲気すらあった。
 右手にはすでに杖を抜いている。唇が震えて見えるのは、なにか呟いているからだった。
「そうなんだそうなのねやっぱり犬は犬なのねわたしのこと好きとか言いながら機会があればほかの女の子押し倒すのねキスするのね尻尾ふるのねわたしよりちっちゃいのにわたしよりちっちゃいのにわたしより」
 ぶつぶつと呪詛の言葉を吐きながら、ルイズは一歩、また一歩と近付いてくる。

413:脳内11巻
07/05/14 00:16:36 5bs6rUMc
 小悪魔? 冗談じゃない、あれは悪魔だ。正真正銘。
 だって、なんか髪が生き物みたいにうねってるし。
 怖い。七万の軍勢より、エルフより怖い。多分エルフが七万いるより怖い。
 恐怖の余り、声も出ない。抜けそうになる腰に鞭打って、才人は逃げるために震えの止まらない足を懸命に反対側へ向けた。
 振り向くと、そこに鬼がいた。
 いつの間に起き出してきたのか、どうやって回り込んだのか、最強のぽっちゃり系ことマリコルヌが、ドットメイジとは思えない迫力で立ちはだかっていた。
「マ、ママママリマリマルマレ……」
「黙れ。息すんな」
 言下にマリコルヌは言い放つ。取り付く島もない。
「不公平だろ不公平だよね誰だってそう思うよね教えてよ誰か教えてくれよ幸せってなにさ幸せってどこにあるのさ誰かぼくにも幸せをくれたっていいじゃないかぼくにもご褒美くれよぼくにもご褒美くれよぼくにも」
 本当に才人は息ができなくなった。
 前を向けば、魔王。
 周りの景色が歪むほどの瘴気を纏い、夜の空気を震わせながら、ルイズが迫る。
「体に覚えさせても無駄なら魂に刻むしかないわよねどうすればいいのかしらやっぱり体から魂を追い出すしかないのかしらわたしよりちっちゃいのにわたしよりちっちゃいのにわたしより」
 後ろには、修羅。
 ゆらり……、と暗殺者のような見事な動きで、マリコルヌは音もなく歩を進める。
「おかしいよね絶対おかしいよねなんでサイトばっかりなのさ今回ぼくがんばったよねすごくすごくがんばったよねぼくにもご褒美くれよぼくにもご褒美くれよぼくにも」
 前門のルイズ。後門のマリコルヌ。
 才人はひいっ、と叫ぶと背中のデルフリンガーに手をかけた。心はさっきから震えている。別の意味で。
「あー相棒。なんつーかな、ぶっちゃけ無理。俺のことはかまわずその辺の茂みにでもうっちゃってくれ。頼むから。ごめん、巻き込まないで。お願い」
「つ、つつつ冷たいこと言うなー!」
 才人は声を裏返して叫ぶ。それが合図であったかのように、
「わたしより胸ちっちゃいのにーッ!」
「ぼくにもご褒美くれよおおおーッ!」
 渾身のエクスプロージョンとエア・ハンマーが才人を吹き飛ばした。
 閃光と轟音。橋は粉々に砕けて塵と化し、才人は枯葉のようにきりもみながら宙を舞う。
 遠ざかる意識の中、才人はふと、“後門のマリコルヌ”って厭な響きだな……、と思った。

414:脳内11巻
07/05/14 00:17:43 5bs6rUMc

 さて、上空を舞うシルフィードの背中。
 眼下の惨劇を綺麗さっぱり素敵に無視して、キュルケは拾い上げたタバサに明るく声をかけた。
「ただいまー。あれタバサ、眼鏡どうしたの?」
 タバサは黙って下を指差す。
「あちゃ、壊れてなきゃいいけど。まあいいわ、はいタバサ。あんたの杖よ」
 キュルケが差し出したものは、まさしく失くしたはずのタバサの杖だった。
 タバサは目を丸くしてそれを受け取る。
「瓦礫の中に埋まってたのをシルフィードが見つけてくれたのよ。それからこっちが……」
「シャルロットさま……」
 キュルケの後ろからひょこりと老人が顔を出す。執事のペルスランであった。
「忘れものの本命。あの屋敷に一人でいたってしょうがないし、タバサが逃げたってバレたら王軍に捕まる可能性もあるしね。間に合ってよかったわ、ほんとに」
 得意そうに赤い髪をかきあげて微笑むキュルケ。
 感動の再会のはずだったが、ペルスランは眉を寄せ、じっとタバサを見つめた。タバサはつつ、と目を逸らす。
「今のは……、この年寄りめの見間違いでしょうか、お嬢さま?」
「……」
 タバサは目を合わせずに黙り込む。
「いけません、いけませんぞお嬢さま。あのような街娘のごとき軽挙妄動、この私が許しません。なにより奥さまが悲しまれます。そもそもあの馬の骨はどういった御仁ですか」
 滔々と訓戒を垂れるペルスランに、タバサはちらりとキュルケを盗み見る。キュルケはそんな彼女の様子を、含み笑いをしながら見守っていた。
「いえいえお嬢さまをお助けいただいた恩人であることは重々承知しておりますが、それとこれとは話が別でございます。どこぞ由緒正しい高貴な方なのでございましょうな」
 重ねて問われ、タバサは意を決したように視線を向け、はにかんだような笑顔を見せた。
 その、かつて見せなかった彼女の表情に、ペルスランは言葉を呑む。
 タバサは短く、少し恥ずかしそうな声で言った。
「わたしの勇者」
 ペルスランは目をまん丸にして絶句した。キュルケは爆笑して、タバサの肩をぱんぱんと叩く。
 シルフィードが嬉しそうに、きゅいきゅいっと鳴いた。

415:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:19:09 5bs6rUMc
以上。駄文失礼。
なんか書いてるうちにマリコルヌが妙に好きになったぞな。
変な脳内設定もできちゃったり。ではでは

416:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:20:39 yEqtgpdn
ノボル・・・・・・・・お前がそこまでタバサLOVEだったとは知らなかったぜ・・・・・
しかし執事のじいちゃんか・・・・そうか、その人がいたか・・・・・まったくノーマークなところに・・・・・いやいや、これはこれで・・・・


つか本人だろ?w忙しいだろうけど、12巻も早いトコ仕上げてクレよなwGJw

417:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:22:04 R/dm8L2a
うめえええええ
素晴らしきかなタバサ、GJ!

418:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:22:31 A555G9qO
>>415
タバサステキ杉タバサーーーーー!!!

419:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:05:14 1R49oqA0
仕事しろーw

420:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:10:50 ZMNNNOUv
GJ。俺もゼロの使い魔最終話なら脳内に保管してあるぜ。

ってかこのスレを見てるとタバサ好きの人口が多そうだが実際はどうなんだ
ろうな?一回、公式人気投票でもやってほしいぜw

421:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:11:17 JAfKsIdX
なんだ、作者ご本人がいらっしゃってるではないか

422:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:44:12 Qp1dHhKJ
何かもうタバサは最初からクライマッスだな。

423:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:52:36 760VHSHH
デルフ擬人化=銀髪なイメージきてるな。
ぜひデルフと犯りたいんだが喘ぎ声はどうなるんだ?
そしてデルフエロが広がる事をマジで祈る。

>>420俺はタバサ一番スキーだ。

424:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:59:12 R/dm8L2a
感動したので勢いで書いた 反省はしていない
URLリンク(up.tseb.net)

425:名無しさん@ピンキー
07/05/14 02:02:06 J8AcFO4D
うは、上手いな
ラフなのに特徴でてる

>>405もGJ


426:名無しさん@ピンキー
07/05/14 02:21:41 fCcdNHJw
遂に絵師も降臨とはな・・・

427:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:25:22 lfuyT44m
深読みすれば、いや多分そのままの意味であろうアンリエッタの願いに才人は焦る。無人島に漂着し
てガリガリになるまで痩せたところへ、三ツ星レストランの豪華ディナーが空輸されたみたいな気分
だった。それでも平静を取り繕えている自分の克己心に驚いてしまう才人だが、それでは、それでは
とアンリエッタが願いを続けると、ほとんど訳が分らなくなって反射的に否定するようになった。

するとアンリエッタも駄目の連発に段々と感情的になり、その要求も天井知らずにエスカレートして
しまう。ものの数分で了承してしまうと一体全体どうなるのかのオンパレードになり、最後には国の
根幹に関する問題にまで到達した。

「では、騎士になってください、私だけの。そして常に私の傍にいてください!」
「い、いや、それはちょっと難しいです。何しろ俺、既に使い魔ですから」
「もう! それならばいっそ一緒に国を治めてくださいませ!!」
「それってすなわち王様じゃん! もうこれでもかってくらい完璧にダメでしょ!?」

才人は一ミリの誤解も無いよう完全否定した。一国が自分の物になってしまいかもしれない夢のよう
に素晴らしいお願いだが、素晴らし過ぎて逆に恐ろしく、とても手に負えなかった。

「力になってくださると言って、何もかもいけないではないですか!」
「だって、いけない事ばかりだからです!」

半分叫ぶみたいに才人が言うと、アンリエッタは口を尖らせた。王女として生まれ不満を明確に表情
にしないよう教育されて来たが、ここまで駄目を出されたのは初めてで堪らず拗ねてしまったのだ。

そんな軽く頬をふくらませたアンリエッタは、高嶺の花とは思えないくらい愛らしかった。別に悪く
ないのに才人は自分から謝ってしまい、女王さまの頭を撫でてしまいそうになった。

しかし、才人の前に非を認めたのはアンリエッタの方であった。ただし暴走気味に。

「すみません、我が儘でした」
「え、いや、我が儘までとは。ただ、もうちょっとソフトだと良かっただけですから」
「いいえ、確かに我が儘でした。ですからサイトさん」
「は、はい、何でしょうか?」
「我が儘な私を叱ってくださいまし」

428:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:26:05 lfuyT44m
前にもそんな事があったなと才人は思ったが、今回はだいぶ雰囲気が違い戸惑ってしまう。

「女王さまを叱れませんよ」
「でしたらアンを叱ってください。我が儘なアンを」
「あの~、ムキになってません? てか我が儘はダメですって言えばいいんですか?」

取り敢えず形だけでも承諾しないと引き下がりそうにない女王さまへ、才人は躊躇いがちにお伺いを
立てる。まあ、沈んだ表情よりはずっと良いかもしれないとも思っていたが、返って来た答えに腰を
抜かすとは思ってもみなかった。

「そうですね、お仕置きですから、お尻を叩くのが普通でしょうか?」
「……………………は?」
「知りませんか? 行儀が悪かったり、悪戯をしたりすると罰としてお尻を叩くのです。鞭や杖です
けれど、いまは手でお願いいたします」
「そ、そーじゃなくて! 姫さまのお尻を想像しての幻聴かと思っちまったくらい危険な発言、姫さ
ま、ヤバヤバですってば!!」

才人は顔を真っ赤にして捲し立てた。可愛らしく拗ねた姫君のどこからそんな発想が湧き出すのか全
然ちっとも理解不能だった。血統書無しのバカ犬が高貴中の高貴な方のお尻を叩くなど有り得ない下
剋上。

メイジ様なのだ、貴族様なのだ、女王様なのだ。これでもかと様しかつかない高貴なお尻。きっと庶
民がお目に掛かれない高級店で売られている高級桃に違いない。スーパーで売られてるみたいな誰か
に触られちゃった傷とかなくて、ムチムチに形が良くて、甘い汁がたっぷりジューシーなのだ。

「っは!? あぶねー妄想しちゃったよ俺。だって仕方ねー! 姫さまのお尻なんだもん。って、な、
な、な、なにやってるんですか!?」
「忠誠には報いを我が儘にはお仕置きが必要なんです」

何時の間にか位置が入れ替わっていた。アンリエッタは木に手をつき、腰を曲げた姿勢になっている。
即ち尻を叩かれる格好だ。さすがに恥ずかしく、首を巡らせて才人を見る横顔は上気している。

「あぐ!? へぐぐぐぐがあ!?」

429:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:26:46 lfuyT44m
才人は舌を噛みそうになりながら奇声を上げた。女王さまの御お尻は破壊力抜群であった。月明かり
の下でも白いドレスには、精神を何処かへ連れて行かれそうな艶めかしいお尻の陰影が浮き上がって
いる。二つの膨らみはふっくらと美形で、その間の谷は布で浅くなっているのにどこまでも扇情的。
そしてアンリエッタの若さを象徴するみたいな瑞々しい尻肉の引き締まり感。

想像以上の桃をどうぞと差し出されて、才人の頭の中では回線が切れ、激しくショートする。

「こ、これを叩けと? てか、叩くって触れるんですよ? 手で触るんですよ? お尻ですよ?」
「は、はい、ど、どうぞ」

ドレスをたくし上げ、アンリエッタは夜気に自身の桃尻を晒し出す。後はドレスよりも遥かに薄く小
さな布切があるだけ、柔らかそうな曲線を才人の視線から隠すものは殆ど無くなった。

アンリエッタも自分がおかしな行動を取っていると強く自覚していた。骨の髄まですり込まれてきた
王族の規定に従うべきだと理性も叫んでいる。しかし、限界であった。たまりにたまったストレスが
捌け口を求めていたのだ。それ故、こんな絶対にいけない事をする解放感に抗えなかった。

それに自分自身を吐露する相手は、想い人。単なるスリルを味わうのとは違うドキドキがこの上なく
甘美であった。こんな秘密の行為を共有する親密感も求めて止まなかったものであり、傍目にはどう
であれ、アンリエッタが欲しいものが全て揃っていた。

「な、生桃、生桃ってなんなんですか!? も、もう知りませんよ? お尻だけにしりません! 姫
さまのお尻に接触させていただきます!!」
「は、はい……きゃあん!? く、くすぐったいです。あ、あの、た、叩くのでは?」
「叩きます! 悪いアンのお尻を叩きます! これはその下調べなんです! モチモチと吸い付く感
触とか確かめて、どれくらい柔らかいのか押してみたりしないとペシペシできませんから」
「わ、わかりました。 やっ、はあん!?」

ムニュっと音がしそうなくらいお尻の肉を摘ままれてアンリエッタが甲高い声を出す。才人の指は執
拗であった。ここまで振り回された仕返しするみたいに十本の指を最大限に使用して、女王さまのお
尻の膨らみを捏ね回す。

「あ~売り物の桃を指で押しちゃう気持ちが理解できる。潰しちゃう感触も気持ちいい、買って食べ
る人の前に悪戯するのが最高に気持ちいいッス!」
「サ、サイトさん あっ! そんなに掴まないでください ふくんっ! ひ、ひろげちゃイヤです」

430:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:27:26 lfuyT44m
「だいじょうぶです。パンツが隠してくれてますから問題ないです。紐みたいになっても根性あるパ
ンツです」
「ああ、仰しゃらないで、恥ずかしいです」

アンリエッタがか細い声をもらす。お尻を弄る指先は柔らかい肉に食い込み芯までほぐそうとしてい
る。親指などは谷間の底にまで届いているので握られる度に、普段は意識しない場所までひんやりと
空気を感じてしまうのだ。たとえ下着に隠れていると言われても、羞恥で顔から火が出そうになる。

ただ、それが嫌かと訊ねられれば、アンリエッタは余計に恥ずかしくなっただろう。自分の奥底に秘
めていたものをどんどん才人へ見せてしまうのが、もう快感になっていたのだ。清楚な純白のドレス
に包まれた肢体は、かってない火照りを覚えている。才人の視線が突き刺さるお尻など、オーブンに
入れられているみたいに熱くなっている。アンリエッタは汗とは思えない高温の湿り気を感じて、さ
らに羞恥を昂じさせて切ない声で懇願する。

「はあ、サイトさん、早く叩いてくださいまし。さもないとアンはおかしくなってしまいます」

アンリエッタは悩ましい吐息を漏らし、しっとりと汗ばんだ腰をくねらせる。願いをかなえる為なら
ば、どんな事でも言う事を聞く、そんな媚びた空気を清楚であった肢体は存分に纏わせていた。それ
はアンリエッタの麻薬か毒のような魅力であった。いけないとは思っていても手を出すのを止められ
ない魅力。才人も、うが~っと吠えずにはいられなかった。

「こ、こんな鼻血出そうな色っぽさって、何て悪いお尻なんだ! 有罪決定です!」
「きゃうんっ!!」

ピシっと才人は女王さまのお尻を叩き、アンリエッタは甘い悲鳴を上げた。ほんのりと薄赤の手形の
付いた双丘が、二人ともゾクゾクとした気分にさせる。

「姫さま、喜んじゃダメですよ。お仕置きなんでしょ? 悪いお尻が手に吸いついてくるみたいで
す」
「す、すみません。アンは本当には悪い娘です。ですから、もっと強く叩いてください」
「なんですか、一回じゃ足りないんですか?」
「お、お願いです―――あふ!! ひあぁ きゃん ひぅん!?」

才人の平手がアンリエッタのお尻を甲高く鳴かせる。一、二、三と回を重ねる毎に真っ白な桃尻は艶
めかしい紅に熟して行く。思い切り叩いたには程遠いけれど、お尻に生じるヒリヒリとした感覚はア
ンリエッタの高ぶった神経を程好く刺激して甘い悲鳴をどんどん生々しい喘ぎへと変化させる。

431:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:28:13 lfuyT44m
「ひやぁ は、はあ、サ、サイトさん! ああ、アンリエッタはサイトさんにこうして欲しかったん
です」

身を捩り谷間に食い込んだ下着に擦れる大切な部分が燃えるようで、隠しようもない熱い湿潤を感じ
てしまいアンリエッタは歓喜に啜り泣いた。

「ふあぁ! アンのお尻、熱いです。サイトさんにはたかれる度に熱くなって んくうぅ! お、お
腹の方まで熱いんです」
「姫さま、やっぱり喜んでるじゃないですか。コレ、お漏らしじゃなくて気持ち良くて濡れてるんで
すよね……って思わずベタなセリフで聞いちゃうじゃん!」
「きゃふんんっ!?」

これまでにない高い音が桃尻で鳴り、アンリエッタの腰が戦慄いた。すっかり汗で湿って掌が密着し
た衝撃が堪らない痺れとなり、女王さまは明確な快感の極みを味わったのだ。叩かれたお尻がまだ振
動していて、裡に響き続けているみたいで、その心地好さに身も心も軽くなる。

「あ゛ す、すみません。姫さまのお尻がけっこうなお手前でついつい調子にのってました。痛かっ
たですか?」
「あ、や、サイトさん サイト殿…いいえ、サイトさま! 止めないで、もっとアンを叱ってくださ
いまし」
「さまって立場逆転!? とっても背徳!?」
「お仕置きされているのですから、そう呼ばせて。そして私にはさまなど付けないで」
「お女王さまを呼び捨てって何か漢心を直撃って感じなんですけど!?」

女王と平民の逆転劇、才人がそこから連想した幾つかの物語りは、深夜番組でも放送できないような
タイプの内容であった。とっても元気に興奮してしまう物なのだが、そのメインヒロインの女王とは
比較するのも失礼なくらい本物であるアンリエッタの美貌は輝いている。しかも、寄せられる想いは
真正であれば才人も沸騰してしまう。

「ツボ過ぎるセリフで革命しちゃいますが、姫さま……じゃなくてアンリエッタ、巷で流行りのちょ
っといけない本とか読んでない? てか、好きなんじゃない?」
「いえ、あの、侍女に薦められて………ちょ、ちょっとだけ読みました」
「ふ~ん。女王さまはいじめられてた?」
「あ、あの、私のようにお尻を叩かれてるお話もありました」
「それがアンの好きな話なんだ、で、アンみたいに喜んでた?」
「は、はい、その女王は叩く相手に対する気持ちも私と同じでした。あ、これは本のセリフではあり
ませんので」

432: ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:33:17 lfuyT44m
使い方知らなかったよ。
ってことで、また後で


433:名無しさん@ピンキー
07/05/14 02:43:16 A555G9qO
>>432
寸止めかよ!!!
GJ
そして続きをwktkッ!!

434:名無しさん@ピンキー
07/05/14 07:38:01 g+0Y9U5w
こ、このっ!変態がああああぁっ!!

続き待ってます

435:名無しさん@ピンキー
07/05/14 13:19:49 0TI+C7jR
>>432
Hなアン様が大好きです。

か、堪忍してなぁ。
URLリンク(p.pita.st)

436:名無しさん@ピンキー
07/05/14 15:49:19 gf8y09MJ
>>432 & >>435 どっちもGJ!!!


437:名無しさん@ピンキー
07/05/14 17:22:03 ShaARziU
2日きてない間にすげー伸びてると思ったら。
みんなGJ!絵師さんもきてるし言うことありませんw


438:名無しさん@ピンキー
07/05/14 23:03:25 yEqtgpdn
サイトの煮えてるセリフがまた最高www何でブレーキが効かないんだとか言いながらアクセル両足で踏み込んでるなww
続きにまじ期待っ!

439:名無しさん@ピンキー
07/05/14 23:55:53 f2vq6VGv
このスレの進行速度はガンダールヴでも追い付けまい

440:名無しさん@ピンキー
07/05/15 00:48:10 Hs1L6U4W
アン様好きなので、もろつぼだったw
続き期待してます。

441:名無しさん@ピンキー
07/05/15 02:58:08 GS/5EKRY
神作品に絵師までキタキタキタキタキタキタキタァ!!
両者GJ!!


ぜ ひ タ バ サ の エ ロ 画 も お 願 い し ま す

442:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:37:59 IF3YVvXP
「て、天然でそんな萌えな雰囲気のセリフを放つなんて!? ア、アンリエッタ、なんておそろしい
娘! も、もう、お仕置きよ!!」
「きゃくうぅん!? ああ、サイトさまぁ!」

夜に響き渡る尻打ちの音を合図に、どこかの誰かさんより少し高度な芝居の幕をあける女王さまと平
民。演じていると言う一種の安心が羽目を外させ、二人を真実の混じった役へと没頭させる。

「アンの桃、剥いちゃうから。んで、じっくり観察するから」
「は、はい、お仕置きの成果をご覧になってください」
「んではクルクルっと………ををうぅ! な、なんて桃なんだ!」

遠慮無く、ショーツを捲るみたいに剥いだ才人は出現した素尻に感動した。とっくに下着は谷間へ追
いやられていたから露出面積はあまり変わらない。けれど叩いていた部分は基本的に肌、しかし今見
えているのは生のアンリエッタであった。

「サ、サイトさま、アンのは如何でしょうか? どのようになってますか?」
「綺麗な膨らみ方が絶品だよ。肉付きもコイツめ!って感じで、真ん中の溝はすっきりで、しかも溝
の底まで純白! 文句無しの特級品だ」

アンリエッタは頬を染める。お尻を誉められて嬉しくなる女王さまは可笑しいものだが、想い人の自
分の大切な部分への評価は重要であった。

「ただ………」
「え?」
「潰れて汁が出ちゃってるな。指でツンツンされたみたいに赤い果肉もヤバヤバになって、アン」
「はい」
「叩いて感じちゃったんじゃないか。これじゃもう叩いても無駄だよな? こんな時にはどんなふう
になるのかな? とっても悪いアンをお仕置きするには何がいい?」
「は、はい、手ではなくてサイトさまの杖でアンを叩いてくださいまし」

アンリエッタは、剥かれてしまった桃尻の中心で果汁を溢れさせている部分へ、そっと手をあてがっ
た。自分でも驚くくらいに熱く濡れた感触を、くちゅっと開いて才人へ見せる。エロティックな行為
に心臓が飛び出しそうな羞恥で腰が砕けそうだ。

でもアンリエッタの顔には、麗しい喜びの表情が浮かんでいる。本にもこの展開は頻繁に登場する、
と言うよりもしない方が珍しい。次の場面も同様であり、アンリエッタは慕う相手と迎えるその目眩
く瞬間に胸を高鳴らせる。

「か、可愛い顔でやらしい表情、こ、この二律背反がオレのハートを唸らせるっ!!」
「あ、ふぅん! サ、サイトさまのアンのよりも熱いです ひ、ひぁ!?」

清純な恋心と欲情の淫靡さが程好くブレンドされた女王さまの魅力にすっかりやられ、
才人は猛然と生桃へと襲い掛かる。

「お仕置きなんだからね、エッチなアンリに平民の杖でお仕置きするだけなんだから! べ、別に痛
くて我慢できないくらいに硬くなっちゃったから、トロトロのピンク色に入りたくなったんじゃない
んだから!!」
「は、うぅっ あ、サイトさまが入って……んんっ…き、きつい…あ、あつ……あひぃっ!!」


443:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:38:49 IF3YVvXP
アンリエッタは一瞬躰を強張らせ、その後甘く蕩けて仰け反った。お尻とお腹の奥に才人がぶつかっ
た衝撃と同時に、叩かれていたのとは違う本物の痛みが襲った。だけど尻叩きで恥ずかしいまでに濡
らした以上の本物の快感にいってしまった。ズキズキと痺れる痛みを裡に感じるのに達していた。

「ぬ、ぬわあぁぁ! ヌルヌル柔らかく絡み付いてくる!? い、痛くないの?」
「い、痛いです。だって、こんな、私はサイトさまが以外にいません……で、でも、とても痛いのに、
アンはますます悪い娘に! サイトさまの杖を中で感じていると ふあぁ! 中までアンにお仕置き
してくださるのを思うと、はしたなく熱くなってしまいます!」
「ほ、本当にどんどんウネウネして溶けちゃいそうっス!」

清楚な姫君の純潔を奪った興奮が冷めないうちに、快感に堪え切れないとばかりに腰が蠢いてしまう
アンリエッタの様子に才人の昂揚も成層圏を突き抜けてしまった。

「一番悪いアンはこっちだったんだな。もう抵抗できないくらいトロトロに餅搗きしてやる!」
「はひっ あ、あ、あ、杖の先がアンを叩いてます! ああ、こんなに激しくお仕置きされてるのに、
やっ、やあ、奥から何か溢れてしまうのが止まりません!」

アンリエッタの真っ白なお尻の下側は、ぱっくりと才人に割られて淫靡な紅色を覗かせる。その内側
では破られたばかりの純潔がさらに甚振られているのに、泡立つほどに高貴な蜜が分泌されている。

荒々しい律動にアンリエッタの快感は直結していて、抜け落ちそうな位置から奥を抉じ開けられそう
な深みまで突かれる一回、一回で天にも昇る心地になってしまう。

「い、いや、サイトさま、アンは杖で叩かれて、も、もういってしまいそうです! ああ、いやらし
いアンを叱ってくださいまし」
「も、もう、杖だけじゃダメって事でダメダメだけど最高なお尻も叩くからな!」
「え、サ、サイトさ――はっ ひ、ひぃいん!?」

かつてなく興奮しているアンリエッタが、ここで熱くなっている柔肉をぶたれたら一体どうなるのか
考える間も無く桃尻が音を立てる。破瓜の痛みもすっかり甘美になっていたところへ到来したお尻の
痺れは、蕩けた躰を駆け抜けてアンリエッタを絶頂の高みへと導いた。

「ふ、ふあぁぁ………」
「わっ! ちょ、ちょっと倒れちゃダメだってば って、この柔らかい感触はメロンですか!?」
「きゃふん! あ、あ、あ、サ、サイトさま、い、いま果てたばかりで、ん! む、胸までお仕置き
をっ」
「い、いや偶然だけど、手が勝手にメロン的な胸を揉んじゃうんだ。桃とはまた違った揉み心地が堪
らない!」

才人が、女王さまの崩れかけた肢体を支えた場所は丁度たわわな乳肉の膨らみであった。みっちりと
掌に吸い付き、お尻よりも柔らかく感じて奥が深い。

「手の真ん中辺りに当たっているのはブドウ? くうううう! メロンにブドウって夢のような果実。
さすが魔法の世界! ビバ!くだもの!!」
「くふぅん!? そ、そんなに掴まないでくださいまし む、胸が取れてしまいそうですわ」
「とか言いつつ、こっちもお仕置きで叩いて欲しいとか? でも叩くよりもきつく握っちゃうほうが
簡単だな。どうかなアン?」
「え、ええ、その通りでございます、サイトさま………あ、ひん!」

444:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:39:33 IF3YVvXP
才人が指を沈み込ませるとアンリエッタの背中がなよなよと揺れる。すっかり平民に従うのが板に付
いた女王の胸は、瑞々しい若さの張りに富んでいる。ほんの少し揉まれるだけで、甘い痺れが妙なる
調べとなってアンリエッタの全身に響き渡る。貫かれる花びらと叩かれるお尻、そして揉まれる胸の
三重奏は、少し前までは乙女でだったとは信じられない激しい快感を与え、面白いくらいアンリエッ
タに何度も絶頂を極めさせる。

「果汁で膝のほうまで濡れて光ってるぞ。女王さまの美脚とは思えないエロエロさで困ってしまう桃
とメロンだ! く、くぬぬ、悪い娘すぎて自家製の生クリームでデコレーションしちゃうからな!!
 で、でも、気持ちいい中も捨て難いし、こんなに悩ませて、どこまで悪いんだ!」

お仕置きで乱れ悦ぶ女王さまに、才人はサディスティックに興奮する。喘いでしまう程の絶妙な濡れ
加減と肉棒が千切れそうな締め付けもあり、清楚の象徴みたいな白いドレスごと精液で汚すと決めた。

「ああもう! 両方、両方にします! 才人、どっちも行きます!」
「あ、ひっ! ど、どうぞ、お好きになさってくださいまし! あ、サ、サイトさまぁ~~っ!」

才人は熱いアンリエッタの裡で射精した。高貴な蜜に混じる平民の白濁の高熱と粘りにアンリエッタ
は、甘い悲鳴をあげて躰を震わせる。才人は抽送の勢いのまま腰を引き、脈打つ肉棒からドクドクと
粘った放物線を放った。

「ドレスにも髪にもかけちゃたっス! ドロドロで素敵な桃メロン・サンデーに乾杯!!」
「あ、あふ、たくさんかけられて………これがサイトさまの匂いなのですね」

じんじんと熱さで痺れる中でアンリエッタは穏やか笑みを浮かべた。聖女と称えられる女王は、きら
びやかな宮殿では探せなかった幸せを見付けたのだ。

夜道を帰る才人とアンリエッタ。手を繋ぐのは行きと同じだが、雰囲気はだいぶ異なっていた。張り
詰めたものが消えて、特に才人は一応心配からは解放されていた。

「てか、さすがに吹っ切れたよな」
「なにがです?」
「いや、あの何でもないです。ただの独り言ですから」
「はい、サイトさま………あ、いえ、サイト殿。ふふ、なんだかまた間違えて言ってしまいそうで
す」
「そ、そんな、勘弁してくださいよ」
「大丈夫ですから、そんなに心配なさらないで。皆の前でサイトさまなどと言えば、それこそ大変な
騒ぎになってしまいますもの」
「と、とりあえずかなり気をつけてくださいね。じゃないと犬、泣いちゃいますから」

既に半泣きで才人は冷や汗を流す。自分の不敬な行動もアレだったが、もしもアンリエッタが、ぽろ
りと言ってしまったらと想像すると気が気でない。銃士隊の隊長さんにばれたりしたら、頭と胴体が
別行動するとか、ご主人様だと永久にご飯が要らない身体になるとか、どうなるか知れたものではな
い。

「でも、サイトさんと二人だけの時には間違えてしまいそうです」
「そ、そうですか」
「ええ」

ただ、自分の視線で、はにかむみたいに笑うアンリエッタを見ると、まあそれでも良いかと思えて来
る。行きよりもアンリエッタの魅力は凶悪に増していたから。もじもじと羞う様子など桃メロン・サ
ンデーに匹敵する程ときめいてしまう。

445:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:40:35 IF3YVvXP
いろいろ考えるのは止めて才人は、ほわほわした幸福感に浸るが、ふと前にもこんな事があったなと
思い出した。あの時は学院で、誰かの部屋から帰る途中であったが、無事に到着する前に誰かと出く
わしたのだ。

「そうそう、あん時は突然トゲトゲがあらわれて大変な目にあったんだ。ちょうどこんな感じで……
…って、イ、イヤン! ダ、ダレなの!?」

記憶とそっくりの光景であった。まるで立ち塞がるみたいに小柄な人影が前方に出現して、才人は吃
驚仰天した。

身長に比べて大きな杖、青色の髪と月明かりに光る硝子。才人の見知った中に該当者はただ一人だっ
た。

「タ、タバサかよ? び、びっくりするじゃん、声くらいかけてくれよ」

とか言った才人、隣りに女王さまがいるのを思い出して汗が噴き出したりする。それはそれはダラ
ダラと、才人の身体がこの状況は説明できないと言っている如く大量の汗であった。

「ちょ、ちょっと待って、なんか暑くて汗がどんどんでちゃうよ。こんな涼しげな夜なのに変だな、
ハ、ハハハ」

才人は胡魔化し、間を取るためポケットをごそごそとあさり、布切を取り出して額を拭う。
すると………………

「それ………何?」
「な、なにってハンカチに決まってね~~~~!?」

才人が持っていたのは女王さまの下着であり、間違ってもハンカチではなかった。

「ヤ、ヤベ も、桃を剥いた時についついポケットにしまってた!?」
「桃?」

タバサは小声を聞き逃さなかった。無論、布切の形状も見逃さない。ただし真っ先に気になる筈の女
王さまは無視している。それが才人には怖くて、食べ放題であった果実の事は絶対に秘密にしたかっ
た。

「も、も、桃は関係ない! わ、忘れてちょうだい! メロンも忘れるように先に言っておくから
ネ!!」

あたふたとする才人。タバサは珍しくジト目である。

446:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:41:57 IF3YVvXP
「何してたの?」
「う゛っ い、いや、お爺さんは山へ洗濯に行ったんだ。散歩のついでに。このパンツはそれだな、
ウン洗濯洗濯」
「夜に?」
「あ、ああ、夜だと月の光が化学変化を起こしてパンツが綺麗に洗えるんだ。パンツ洗いの匠が言う
んだから間違いないぞ。ってことで、疾しいことはないです、ハイ」
「………そう」
「な、納得したか?」
「した」

静かに肯くタバサの顔は氷のように冷たく硬い。そしてたった今まで我が世の春を謳歌していた筈の
アンリエッタの表情も以下同文であり、タバサとの会話を打ち切らせるように口を開く。

「別段、あなたにはサイトさま……」
「ま、間違えてます! 様、いきなり間違えてますから!」
「………サイト殿が何時どこへ散歩に行こうと関係ないのではないですか?」

別に様でも良いじゃないかと言った顔のアンリエッタ、サイトの部分を殊更強調している。タバサと
才人の短い遣り取りで敏感に何かを感じ取ったのである。そんな場合なので横で泣きそうな才人にも
構わない。

「それに誰とも。ね、サイト殿?」
「…………そうなの?」

「ボ、ボクニハナシヲフラレテモコマリマス。イヌダカラネ」

二人の視線が集中して才人はガクガクと震えた。伝説なのにかなり情けない。

「ともかくサイト殿は私を送る途中なのですから、これで失礼します」
「なら私の風竜で送らせる。その方が早い」
「無用です。 あっ! ちょ、ちょっとサイト殿は私とって言っているのに、ど、何処へ行くんです
か!?」
「夜の散歩。ついでに私のも洗濯もしてもらう」

使い魔を呼んだ素振りもみせず、タバサは固まっている才人の腕を掴むと、強引に引きずり才人達が
今来た路を戻り始める。

「お、お待ちなさい!」
「どうして? 散歩は終わったのに」
「もう一度行くんです。それに洗濯もしていただきます!」

アンリエッタはタバサとは反対側の腕を掴んで引っ張った。タバサもさらに力を強めたので、才人は
両側で柔らかな感触に密着する。たわわと小振り、異なる弾力に才人は逆上せ上がる。

「メ、メロンとミカンが同時に!? 連行される宇宙人的な状況なのに、とっても幸せなのは何故で
しょうか? てか鼻血出そうダヨ」

今度の散歩は倍の時間が掛かるかもしれなかった。

447: ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:43:43 IF3YVvXP
こんな感じで終わり

448:名無しさん@ピンキー
07/05/15 08:11:37 Lu1t0y4H
一番槍でGJ!!

449:名無しさん@ピンキー
07/05/15 08:43:22 stqR227F
GodJob!!なのですよ。
電車の中でニヤニヤしていた俺を誰が責められようか。

450:名無しさん@ピンキー
07/05/15 08:55:44 A5R3fZXD
GJGJGJ
>>449
じゃあ俺はお前の後ろで画面覗き込みながらハァハァする役な

451:名無しさん@ピンキー
07/05/15 11:21:24 uZFWiUEX
>>415
どう見ても没プロットを投下した作者本人です、どうもあり(ry
つまりGJなんだぜ

452:名無しさん@ピンキー
07/05/15 14:39:18 ZoauYt77
毎度毎度サイトはモテすぎだww
ちくしょうめ。GJ!

453:名無しさん@ピンキー
07/05/15 16:25:08 0fDEyfWj
なんという職人の質
これは間違いなく神スレ

454:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/05/15 23:03:05 aArvtIzI
うっはー。才人がアホだー。おもれーw
タバサと修羅場るところが見たいぞ。見たいぞぉぉぉぉぉぉぉ

って感想ばっか言っててもしょうがないですね。本文いきます

(途中までなのはナイショだ)

455:今日の料理 ◆mQKcT9WQPM
07/05/15 23:04:27 aArvtIzI
「たーすーけーてー!」

大気をつんざく女の悲鳴。
その声の主は青い髪をなびかせ、中庭で芝生に腰を下ろしてくつろいでいた才人のところへやってきた。

「どーしたシルフィード?またなんか悪さしてタバサに怒られてんのか?」
「違うのね!だいたいそんなカンジだけど違うのねー!」

言ってシルフィードは才人の背中に隠れ、丸くなってガクガクブルブルと震えだす。
青ざめたその顔には、死の恐怖がありありと見て取れた。

「シルフィまだ死にたくないのねー!きゅいー!」


事は約2時間前に遡る。
タバサは椅子に腰掛けて、既に自分のマニュアルと化した、『素直になれない女主人』の最新刊を読みふけっていた。
すぐ隣ではシルフイードが床に寝転がって、こちらは既刊だが、同じものを読んでいた。
シルフィードが読んでいるのは、友人の結婚式に呼ばれて、「まだ結婚しないの?」と聞かれた女主人が、つい口を滑らせて「私にも婚約者の一人や二人!」と言ってしまい、執事となんとなく疎遠になって慌てるくだりであった。
…素直に『好き』って言っちゃえばいいのに。
この本を読み始めて最初に思わずそう突っ込んだら、タバサに何故か怒られたので何度そう思ってももう突っ込まない事にした。口では。
当のタバサはといえば、花嫁修業の一環で作った手料理が思いのほかうまくいき、執事に感動されて女主人が有頂天になるシーンであった。

456:今日の料理 ◆mQKcT9WQPM
07/05/15 23:06:41 aArvtIzI
「お、お父様とかお母様に食べさせてお腹壊したりしたらあんまりだから、あ、あんたが片付けなさい」

長いブロンドを揺らし、早まる脈を抑えながら、女主人は執事に言った。

「…お嬢様、味見はされましたか…?」

真っ黒なソースのかかったその揚げ物らしき物体を眺めながら、執事はゴクリと喉を鳴らす。
もちろん食欲からではない。その物体を口に含む想像からくる恐怖が原因である。

「す、するわけないじゃない!毒見は執事の役目でしょうが!」

思わず本気で怒鳴ってしまう。なんで私っていっつもこうなんだろう。女主人はちょっと自己嫌悪に陥った。

「はは…すでに『毒見』なんですか…」

まあ言っても始まらないけど。執事は既に諦めの境地に達していた。
その所々黒く焦げ、香ばしすぎる匂いを放つ、しかもどろどろの真っ黒なソースのかかったソレを、執事はフォークで刺し、口元に運ぶ。
その様子を、女主人はまるで神に祈るように胸元に両手を組み、見つめる。

ざく…。

重い音を立てて、執事の歯が女主人の作品を噛み砕く。

ざく、ざく…ごくん。

「…あれ」

執事の目が点になる。きょとんと呆けたように女主人を見つめ、そして作品をもう一度見る。
女主人の顔が、一瞬で真っ赤になり、そしてそのまま思った事を口にしてしまう。

「な、なによ!マズいならマズいってはっきり言いなさいよ!」
「い、いや…そうじゃなくて…」

執事はぽりぽりと頬を掻き、主人の言葉を否定した。

「おいしいですよ、コレ」
「ま、マズくて悪かったわね!…え?って?」

思わず聞き返す女主人。執事は律儀にもう一度言った。

「おいしいですよコレ」
「ちょ、そんな、無理してお世辞なんて言わなくても」
「おいしいです。いいお嫁さんになれますよ、ご主人様」

言って執事は残りの作品にも手を出し始める。
おいしそうにソレを頬張る執事を見ながら。
女主人の頭の中では、執事の朝ごはんを作る、執事の『お嫁さん』になった自分の生活が展開していた。三か月分くらい。

457:今日の料理 ◆mQKcT9WQPM
07/05/15 23:07:51 aArvtIzI
…こ、これだ…!
タバサはぱたんと本を閉じ、たった今舞い降りた天啓を即座に自分と才人に置き換えてシミュレートする。

『シャルロット、おいしいよコレ!』
『お世辞はいい』
『お世辞じゃねーよ。いいお嫁さんになれるよ。もちろん俺の』

きたああああああああああああああああ!
タバサは椅子から立ち上がり、早速計画の実行に必要なものを頭の中で纏める。
そしてその必要なもののうち一つは。
自分の隣で本を読むのに飽きて、積み上げた本を枕に居眠りをしていた。

458:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/05/15 23:09:00 aArvtIzI
すまん、思いっきり途中なんです。
ていうか明日早番なの忘れてた(何

というわけでここで続きは又明日ノシ

459:名無しさん@ピンキー
07/05/15 23:13:39 stqR227F
GJだぜ!
シルフィが何やったのかが気になるww

460:名無しさん@ピンキー
07/05/15 23:59:53 AXoDb+G3
この時代の本って基本的に手書きだから(その分結構高い)寝転がって読んだりしたら速攻で傷んだ気がするが
そんな野暮な突っ込みはマルコリヌの胃の中にでも放棄しといてとりあえず変態さんGJ

461:名無しさん@ピンキー
07/05/16 00:11:46 dNOR4hBC
アホなサイトに加えてへんたいさんまで・・・・・なんという神スレ。
11巻と併せてwktkが止まらないぜ!

462:名無しさん@ピンキー
07/05/16 00:15:20 T204i8R/
何で気になる終わり方するかねw
言うことはない。GJ!!

463:名無しさん@ピンキー
07/05/16 00:16:22 k2Ci50xd
>>460いや、流行の本があるくらいだから多分印刷技術はある。
1ページ丸々手彫り版レベルかもしれんが、それはともかくGJ

464:名無しさん@ピンキー
07/05/16 02:43:45 rx4sIUJ8
へんたいさんもといせんたいさんGJ!
これはなにか!?まさかタバサが私を食べ・・・・


(エオルー・スーヌ・フィル・ヤルンサクサ
オス・スーヌ・ウリュ・ル・ラド
ベオーズス・ユル・スヴュエル・カノ・オシェラ)


ん?これエクスプロージョンの詠唱か?誰狙ってんだ?まっいいか。

465:名無しさん@ピンキー
07/05/16 03:17:20 MIYyq7TZ
せんたいさんにつっこようだがタバサはゲームでもう才人にケーキを・・・
うわ・・やめ・・なにす(ry

466:名無しさん@ピンキー
07/05/16 03:32:09 0zspDtn7
「死の恐怖」が頭から離れない俺


何はともはれ、へんたいさんに超期待

467:名無しさん@ピンキー
07/05/16 03:51:55 ZGDx+sUN
期待

468:名無しさん@ピンキー
07/05/16 09:55:49 lPcy1hES
>>465
後、コッペパンも作ってよな

469:名無しさん@ピンキー
07/05/16 13:52:44 DfNKzMX4
ここはほんと安定してるなあ(・・。
ところで新刊っていつごろでるんかな

470:名無しさん@ピンキー
07/05/16 14:13:37 WZu2rMKm
今月の25じゃなかったっけ?

471:名無しさん@ピンキー
07/05/16 18:41:06 w3w/lbg5
2~3日前倒しされるかも

472:名無しさん@ピンキー
07/05/16 20:25:24 YjxI6/9X
なんだか21日前後には手に入るところもあるらしいから、
発売5日前あたりから注意した方がいいだろうね。
ネタバレ直撃だけはなんとしても避けたい。
もし直撃食らったら、被害者を他に出さないためにも
NG指定ワードをネタバレと分からないように教えるが・・・

473:名無しさん@ピンキー
07/05/16 20:28:04 pYa67ad0
11巻発売を機に積んでるままにしている7~10巻を読了してみるか
SS読み漁ってるから大体どんな話かわかるのだけれどもね

474:名無しさん@ピンキー
07/05/16 21:36:51 xMrx/uya
>>460
技術的には中世ではなく、17世紀(近代)レベルに見える。
多色刷りや活版印刷機も出て1世紀以上は経過済みかと。
已然として高価で手書き写本が多く、作家の保護による本の生産は貴族の金
のかかる娯楽でもあったが、まあ中世ほどではない。

475:名無しさん@ピンキー
07/05/16 21:51:16 OANkI4i2
本屋でバイトの俺は20日に手に入るぜwww

476:名無しさん@ピンキー
07/05/16 21:57:31 RWK66tBJ
ハルケギニアにはまさに魔法の言葉の魔法があるから印刷機的な魔法があってもおかしくないしな

477:名無しさん@ピンキー
07/05/16 22:23:39 eMA5P7UX
魔法が使えるのは貴族だけなんだよね
平民や奴隷(あったっけ?)の安い労働力があれば貴族はなにも印刷機なんて
必要ない訳で。
(例えばヘロンの蒸気機関は奴隷より高くついたから廃れた)
むしろ知識の独占こそが貴族体制の維持に必須だと
考えれば印刷機を非合法化しちまうかも。

478:名無しさん@ピンキー
07/05/16 23:16:01 yQ0lDI+N
ハルケギニアで特定の商品が出てきても、それを魔法抜きで造れるのかどうか
(地球でその商品が発明された時期と同じだけの技術があるのか)は
わからないね。
魔法があるおかげでむしろ技術の発展は遅れてるみたいだし。
平民は知識を得る機会も生かす機会も少ないだろう。

479:名無しさん@ピンキー
07/05/17 00:05:26 wSnynOMk
銀の降臨祭で見せたような、好きな人に尽くす一途なシエスタに激しく身もだえ、その感動をウィルリプレイと思い立ち、執筆してみた。



何度やってもサイトとルイズ(他verタバサ・アン様)のセクロス(密会・イチャつき)現場目撃が話に織り込まれてしまいます。
どう読んでも黒シエです。本当にry


白シエの身悶えっぷりを再現すんのは至難の業ダゼ・・・・・orz

480:名無しさん@ピンキー
07/05/17 02:09:14 48un/f7g
ネタバレは普通に26日に解禁?
それとも28(月)位から?もしくはその他?

481:名無しさん@ピンキー
07/05/17 02:11:38 MHt9sJhN
>>480
25日が公式発売日なら、解禁は26日の0:00になります。

482:名無しさん@ピンキー
07/05/17 04:00:51 E1DTtMwv
たまに原作いつ発売?とかレスあるから次スレからテンプレにMF文庫のリンク
入れないか?

さて、アニメイトは今回はいつからだろうか。前は月曜発売→前週の金曜発売
って流れだったけど今回は金曜発売だからな。水曜あたりだと帰りに買えて嬉しいのだが

483:痴女109号
07/05/17 06:56:02 NsYJzJhi
朝っぱらから投下します。
>>211-217の続きです。

484:痴女109号
07/05/17 06:57:33 NsYJzJhi

 その日、タバサは授業に出なかった。
 彼女にしては、これは珍しい事と言わねばならない。
 ガリアからの指令があれば、魔法学院の授業はおろか、あらゆるプライベートを省みずに任務に勤しむ彼女であったが、逆に言えば、そう言った任務以外の理由で授業をサボった事は無い。本来、彼女は根が真面目だった。

 原因は分かっている。
 昨日見た、あの風景。
 あの時、タバサのまぶたに焼きついたあの荘厳なる絵画の如き、淫猥な眺め。
 その焼きついた淫画を、あらためて、ぼんやりと思い出す。

(あれが、いやらしい、という事なんだ……)

 男女の間には、そういった事がある、というのは知っている。
 男女の間では、そういった事をする、というのも知っている。
 その行為の果てに、人は子を産み、育て、死んでいくのだという事も。

 しかし、それはタバサにとっては、天の果てに極楽があり地の底に地獄がある、という教えと同じくらい概念的で、実感の湧かない抽象的な知識だった。
 かつてシャルロットという名で、ガリアの宮中にいた頃。さらには故国を追われ、タバサという名を名乗り、血のにじむような魔法の修行に励んでいた頃。―彼女に、そんな当たり前の性教育を施してくれる者は、誰もいなかったのだから。

 もっとも、単に当たり前の性知識だけしか知らぬ者なら、その光景を見て、彼らが何をしているのかも、見当がつきかねたに違いない。
 タバサとて、その博覧強記とも言えるほどの読書量と、いつもキュルケが話す、ほぼワイ談交じりの恋愛話を―半ば流しつつであっても―聞いていなければ、彼らが何をしていたか理解は出来なかったに違いない。
 それほどまでに、あの二人が繰り広げていた痴態は、タバサの常識に当てはまらないものだった。
 
 むくり。
 体を起こしてみる。
―重い。
 昨夜の疲れが、まだ綿のように残っている。
 気付けば、全身汗まみれだ。
(シャワー、浴びなきゃ)
 のろのろと、着替えを取ろうとして、その時初めて彼女は、自分が全裸であった事を思い出す。
 そして、その恥じらいと共に、昨夜の自分の痴態をも。


485:契約(その4)
07/05/17 07:00:49 NsYJzJhi

(熱い……!)
 昨夜、タバサは熱にうなされていた。
 尋常の投薬、治癒呪文では決して癒される事の無い高熱に。
 熱を持っているのは心だけではない。むしろ肉体だ。―いや、集約すれば、肉体の一部分だ。そこから発生した膨大な熱が、放射状にタバサの全身を冒している。まるで悪性の疫病か何かのように。

 タバサはそっと、その器官―股間に指を下ろす。
 触れるか、触れないか、それこそギリギリのタッチで。

―くちゅり。
「くうううううっっっ!!!!」
 湿った音と共に、全身に十数回目かの電流が走る。
 はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!

―気持ちいい。
 人間の体というものが、こんな感覚を発生させる機能を持っているということを、彼女はこの夜初めて知ったのだ。かつて読破した、どんな論文にも古文書にも研究資料にも記載されていなかった、禁断の知識。


 すなわち、自慰行為。


 膣孔も乳首も肉芽も、いや、その指、掌が触れるところは全て快感の電流が走り、こすり合わせる太腿さえも、たまらぬ陶酔感を彼女に与えてくれた。
 昨夜からほぼ夜明けまで、タバサはこの一人遊びに没頭し、いつ眠ったのかも気がつかずに目覚めたのち、彼女はその生涯で初めて、朝寝坊という行為をしてしまった事を知った。

―――――――――――――――――――― 

 熱い湯が、きめの細かいタバサの肌を流してゆく。
 昨夜来の汗の脂が、みるみるうちに清められてゆく。
 自慰の快感とは、また別種の心地よさがタバサの身体を支配していた。

(サイト……)
 意識がハッキリするにつれて、昨日の一件がまた、彼女の脳裡を占めてゆく。


486:契約(その4)
07/05/17 07:02:42 NsYJzJhi

「ああああああっ!! やめっ!! やめっ!! はぁぁぁっっっ!!」
「んふふふふ……違うでしょう? 『気持ちいいです。もっとして下さい、お姉様』でしょう?」
「はっ、はひぃっ! ひっ、ひもひ、いいれしゅうぅ……!」
「だめでしょう、ちゃんと言われた通りに言いなさいっ!」

 ここは、風の塔の一室。窓から彼女たちを照らすのは、太陽ほどにまぶしい二つの月光。
 そのスポットライトのなかで、二人のメイドが、互いに荒い息を吐いて身体を重ねあっていた。
 一人のメイドが、犬のように四つん這いになり、もう一人のメイドがその背後から、彼女に何かをしているようだった。

 最初、タバサは彼女らが一体何をしているのか、分からなかった。
―というのは、嘘に近い。

 確かに何をしているのかは分からなかった。
 しかし、その二人が発散する“淫気”は、性行為に関しては非常に幼い知識すら持たないタバサにすら一目瞭然なほど、露骨なものだった。

(これって……えっち、なの……?)

 キュルケから聞いていたのとは違う。
 小説で呼んだものとも違う。
 男子生徒が昼休みに話しているのを、何となく聞いた行為とも違う。
 そもそも、性行為とは、男と女がするものであって、眼前のメイドたちのように女同士でするものではない。
 でも、これは―いや、これこそが“えっち”なのだ。

 タバサは、胃液が逆流するような不快感を覚えた。
 同性愛に対する嫌悪感もあった。
 それ以上に、人としての矜持を捨て、獣のようにまぐわう彼女たちの“淫気”に、たまらない『だらしなさ』をおぼえたのだ。
 その『だらしなさ』は、年齢相応に潔癖なタバサという少女が、最も嫌悪してやまない要素であった。

 そう思った瞬間には、目を逸らしていた。
 目を逸らした瞬間には、きびすを返していた。
 もともと、この塔にも特別な用があって来たわけではない。
 ただ、この塔の、この一室から見える二つの満月が、彼女は好きなだけなのだ。
 タバサは、彼女たち二人によって、宙空の双月すらも汚されたような気がした。
 その声が、彼女の耳に届くまでは。


「しえす……しえすたぁぁぁ……!! あああああ……!!」
「違いますっ!! 何度言ったら分かるんですサイトさんっ!! わたしの事は『お姉様』って呼びなさいって、言ってあるでしょうっ!!」


 タバサは凍りついた。


487:契約(その4)
07/05/17 07:05:44 NsYJzJhi

―ぱぁんっ!!

 掌が、何かを平手打ちする音が聞こえた。ついでに、泥の中から何かを引っこ抜くような音も。

「ひっっ!! おっ、おねえさまぁっ!! やめないでっ やめないで続けてくださいっ!!」
「続ける……? 何を続けて欲しいんですか?」
「~~~~っっっ ひっ、ひじわるいわないれぇぇ」
「ですから、ちゃんと言いなさい。な・に・を・続けて欲しいんですか?」
「おっ、おれの……おしりマンコを……おっ、おかしてくらさいっ!!」


 タバサは信じたくなかった。
 これ以上見たくも無かったし、聞きたくも無かった。
 でも、やはり彼女の理性は、眼前で行われている、とてもとても淫らな二人の正体を確認せざるを得なかった。
 タバサは、そのバラの花びらのような唇で素早くルーンを唱える。
 と、同時に、彼女の小柄な身体は、かき消すようにその場から消えてしまった。

 ステルス。―空気の屈折率を変化させて、自分の姿を透明にする呪文。
 トライアングル・メイジであるタバサにとっては、そう難しい呪文ではない。
 そのまま足音を消し、呼吸を殺し、彼女たちが最も欲見える場所……部屋の中央まで移動する。

「おれ? おれって誰です? あなたは今の自分の立場が、まだ分からないんですか!?」
 そう言いながらメイド―シエスタは、四つん這いになったもう一人のメイドのスカートをめくり上げ、そこから見える剥き出しのお尻に、強烈な平手打ちを食らわしている。


488:契約(その4)
07/05/17 07:07:23 NsYJzJhi

 ぱぁん!
「ひぎぃっ!!」
「“あたし”でしょ、サイトさん?」
 ぱぁん!
「ったぁぃっ!!」
「自分の事は“あたし”って呼ぶ。そう決めたでしょっ!」
 ぱぁん!
「はっ、はひっ!!」
「わかったんですか? 本当に理解したんですか? 一体何回言わせれば気が済むんですかっ!!」
 ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん!!
「しゅいましぇん! しゅいましぇん!! ぁぁぁぁぁ!!!!」

―サイト……!!

 そこにいたのは、紛れも無い才人その人だった。
 メイドの扮装に身を包み、ウィッグとカチューシャまで装着したその姿は、ぱっと見には女の子にしか見えないけど、それでも、確かに才人であった。

(何で……何でこんな……!?)

 タバサが知る才人は、この世に於ける彼女の唯一の“勇者”であった。

 かつて彼女は才人に命を救われた。
 それだけではない。
 囚われの身であった母すらも、彼は命がけで救ってくれた。それも、平民の身でありながら、せっかく叙勲されたシュヴァリエの称号すら投げ捨てて。
 だからタバサはこの少年に、命すらも捧げる、そう言い切る事が出来たのだ。

 お前は才人が好きなのか? 
 そう問われれば、彼女は赤面して、ただ返答に困るしかないだろう。
 なぜなら、男性としての才人は、すでに自分の手の届くところにはいないのだから。
 彼は元来ルイズの召喚した使い魔であり、理解者であり、戦友であり、そして恋人であり、現段階では婚約者ですらあった。
 この二人の間に、割って入ることは不可能だ。
 タバサはそう思っていた。
 それでいい、そうでなければならない。そう思おうとしていた。


489:契約(その4)
07/05/17 07:09:37 NsYJzJhi

 しかし……。

「“あたし”はぁ……“あたし”はぁ……」
「“あたし”は? サイトさんは一体誰なんですか?」
「“あたし”は、……シッ、シエスタお姉様の、いもうとの……ドジでエッチな……どっ、どうしようもない淫乱メイドですっ!!」

 しかし……。

「んふふふふっ……。よく出来ました。ご褒美は何がいいですか?」
「……ああああ、シエスタお姉様の、堅くて太いのを、……“あたし”のおしりマンコにぶちこんでくださいっ!!」

 しかし……何故、こうも彼らが美しく見える!?
 タバサは、もはや叫びだしたくなる自分を抑えるのに、必死だった。

「ええ、どうぞ……ゆっくり味わってくださいね」
 物凄い顔で微笑んだシエスタが、自らのスカートを捲り上げた時、そこには本来、女性にはあるはずのない器官が、タバサには見えた。
 黒く、太く、逞しい、見事なペニス。
 恐らく才人自身のイチモツよりも更に、立派なサイズであるに違いない。無論そんな事まで、今のタバサには分かるはずも無いが。
 その雄渾なるディルドゥーが、彼のアナルに吸い込まれてゆく。
 ゆっくり、ゆっくり。しかし、その動きはむしろスムースで、無理やり捻じ込んでいるようには全く見えなかった。
「ああああああああ……おねえさま……いいいい、れしゅぅぅぅ……」

 しかし、タバサにも分かる事があった。
 さっきまで彼女自身を包んでいた、身の毛もよだつような嫌悪感が、いまや雲散霧消してしまっているという事だ。
 その理由すらもタバサには分かっている。
 ほんの数瞬前まで、才人への想いを無意識に封印しようとしていた自分自身に対し、その行為が何の意味も持たないナルシシズムである、と彼女は気がついたのだ。
 逆に言えば、今この瞬間にタバサは、自身の才人への慕情に気付き、それを認め、その上で、開き直る覚悟を決めたのである。


―私は、サイトを奪う。このメイドからも。そして勿論、ルイズからも。



490:契約(その4)
07/05/17 07:11:45 NsYJzJhi

 一体その考えの何が悪いというのだ。
 現に、ルイズの居ぬ間に蹂躙されているサイトの、この美しさはどうだ?
 タバサは、今まで才人という少年を、自分が全く理解していなかった事を、つくづく思い知らされた。

 彼は、略奪されるべき存在なのだ。
 他者から虐待され、蹂躙され、屈服させられる瞬間、その瞬間こそ、このサイト・ド・シュヴァリエ・ヒラガという少年は、最大限の魅力を発揮するのだ。

 その後、シエスタというメイドは、四つん這いになった才人のペニスをしごきつつ、気が済むまで彼の尻を掘りまくると、スペルマまみれのメイド服に身を包み、精根尽き果てた才人に水をぶっ掛け、去っていった。
 才人も、ずぶ濡れのまま、よろよろと立ち上がると、そのまま塔から姿を消した。
 タバサが、ステルスの呪文を解除したのは、それからだった。
 それから彼女は自室に帰り、一晩中、狂ったようにオナニーに励む事となる……。

 きゅっ。
 シャワーの蛇口を閉めると、彼女は大浴場から出て、身体を拭く。
 拭きながら考える。
 才人を手中に収める方法を。
 才人を服従させる方法を。
(そもそも、何故サイトは、あのメイドに逆らえないのか)
 ならば、才人本人よりも、メイドに直接当たるべきかも知れない。
 ルイズが帰ってくるのは、もう明日だ。
 なら、万一、手間取ったら命取りだ。

 そこまで、思案した時、彼女はすでに制服を着終えていた。
 きゅっ、とマントを引き締める。
 眼鏡をかける。

―この際、メイドと協同戦線を張るのもアリかも知れない。

 眼鏡を中指で、くいっと持ち上げる。
 そのレンズの奥で、タバサの碧眼が妖しく輝いた。


491:痴女109号
07/05/17 07:15:43 NsYJzJhi
投稿は以上です。
ちなみに、やはりこれから出勤です。
黄色い太陽でも拝めるかと思いきや、雨なんざ降ってます。


492:名無しさん@ピンキー
07/05/17 07:27:13 CiKBdQnh
GJ

493:名無しさん@ピンキー
07/05/17 09:47:03 wSnynOMk
女装でお姉様・・・・そのハッソウはなかtt
堕ちたサイトとシエスタの淫行にタバサを交え、さてどうなっていくのか。続きwktk
GJ

494:名無しさん@ピンキー
07/05/17 10:24:25 5DyB07Ph
サイトがMなのは知ってったけど
シエスタがドSだなんて…サイトったらいけない子。
仕事の合間にGJあげるぜ

495:名無しさん@ピンキー
07/05/17 10:39:18 pN3r8Ojs
GJ!
いや~こうして見るといかに痴女109号さんの性癖がアブノーマルかがわかるなぁ(いい意味で)

496:名無しさん@ピンキー
07/05/17 14:25:05 TJhUJJgt
全くこのスレはHE☆N☆TA☆IばかりだZE

497:名無しさん@ピンキー
07/05/17 15:04:29 n/eoM3Tu
なんて圧倒的な変態……


ニヤニヤがとまらないぜwww

498:名無しさん@ピンキー
07/05/17 18:58:01 E1DTtMwv
ノボルが一番好きなキャラはアンリエッタらしい。ソースはアニメ雑誌。

これはアンリエッタのスピンオフも期待できる??

499:名無しさん@ピンキー
07/05/17 19:24:55 50KgO3nU
タバサ母子×サイトの親子丼希望

変態だわぁ~

500:名無しさん@ピンキー
07/05/17 19:25:41 wSnynOMk
アイツは全キャラに恋しちゃってるからさ・・・・!無論マリコルヌにm
ぶっちゃけアン様の境遇には同情の感涙を禁じえないし、しょっちゅう身悶えさせていただいているので、俺もルイズに続いて好きなキャラだ。

昔、なんかの病気にかかると、熱のせいで頬に朱が刺して、目が大きく見開かれて、んで体動かすの億劫だから、周りからはやんごとない動きをしてるように見えて・・・・
なんだっけかなぁ、小説のタイトル思い出せないんだわ。とにかく、そんな病気にかかると、女は美人になる、がしかし薄命なのだ。ひどく弱々しいのだ。なんと悲しい、なんと愛しいのだって話だったかな。

要するに。
アン様の魅力はそんな感じだってことだって、なぁ?置かれた境遇を知れば知るほど、垣間見せられる弱さを、たまらなく愛しく思っちまうってヤツ。
彼女が駆り立てるのは、劣情よりも庇護欲・・・・って原作でもまさにソノ通りに描かれてるよな。

んで、そう、スピンオフ。スピンオフだったな。ドラマCD第二弾作ってほしいよな、アニメ化と併行して。

501:名無しさん@ピンキー
07/05/17 20:33:37 n/eoM3Tu
ゲームのタバサに殺られかけた

502:名無しさん@ピンキー
07/05/17 20:43:14 TJhUJJgt
>>501
君のIDに萌えた

503:名無しさん@ピンキー
07/05/17 21:59:07 8OYragOR
>>491
黒シエスタ最高。
続きが楽しみ。

504:名無しさん@ピンキー
07/05/17 22:50:55 WBHyACWw
タバサよ、サイトを救ってくれ…!

505:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:43:29 AkdeR9Vj
プロット(燃料)だけ投下するのはOKなの?

506:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:45:32 MHt9sJhN
>>505
いいじゃないかな。
それに反応してケミストリーを起こす人もいるかもしれないから。

507:名無しさん@ピンキー
07/05/17 23:59:58 A5XWCl4o
自分で書くんだ

508:愛しい人 [1/5]
07/05/18 01:52:35 30JmQmRv
>>507
勢いで書いちゃったよアンチャン。
初投稿だが・・・・まぁ読んでみてやっておくんな。


 熱い・・・・・・。

静まり返った密室。
月光に炙られた窓の桟が、涙でゆらゆらと揺れているのを見ながら、虫の羽音だけを聞いていた。
その白けた青の淡い光が、他の音全てを吸い取っているかのような。そんな静寂の中、彼女の世界は、その羽音だけだった。

頭・・・・・じんじんって・・・・する・・・・・・・。

最後に扉の前を人が通ったのは、いつだったか。もう何時間も経ったような気がする。
足音が耳に届くたびに、胸を高鳴らせ、朦朧とする意識を奮い立たせ、だが眦だけはきつく絞りながら、扉を睨みつけてきた。
今では、もうそんな気力も、ない。

・・・・・・まだ・・・・・・なの・・・?

 夏が近づいているとはいえ、夜中に素肌を晒すには、まだ寒い。
だが、シーツは床に剥がされいる。後ろ手に縛られて、それを拾い上げることもできず、裸のベッドの上をもぞもぞと這い回る。
そうすれば、少しは紛れるかと思ったのだ。仰向け、うつぶせ、横。ひたすらに楽な体勢を探そうとする。
だが、色々と試してみても余計に焦れるだけで、その感覚は紛れるどころか、強くなる一方だ。
その上、「羽音」が「ソレ」が鳴動してることを、休むことなく伝えてくる。その事実が一層、その感覚を煽り立てるのだった。

「サ・・・・イトォ・・・・」

いつしか、くぐもった声が口吻から漏れ出る。
ふと己の声色の淫靡さに気付き、彼女の頬にサッと赤みが刺す。それと同時に、僅かに身じろいだ体を、電流が走った。

「くひっいっ・・・・!」

瞳に涙をため、歯を噛み締め、甘美な電撃に耐える。

 も・・・・・だ・・・・・・め・・・・・ぇ・・・。

このままじゃ、おかしくなる。
彼女は直感的に、そう悟った。今や、自分の霞がかった脳が考えている事は、たった一つ。
 さ い と 
後にはもう、何も考えられない。少しでも気を抜けば、彼との記憶が、彼への想いが、とめどなく溢れ出すのだ。

509:愛しい人 [2/5]
07/05/18 01:55:23 30JmQmRv
「さぁっ・・・・・いんぅ・・・・とっ・・・。さい・・・・・とぉ・・・・・っ」

いつか盛られた惚れ薬とは違う。
脳全体を一瞬で覆い付くし、彼への想いをあらゆる事に優先させようとした、暴力的なまでの、魔性の感覚。
それとは対称的で、この感覚は、じっとしたっきり、動こうとしないのだ。
そう。
じっ・・・・・と、動かず。ただ、そこに在るのだ。いつしか、私自身が精神を明け渡すまで、じっと待ち続けているのだ。
時を経るにつれて、その誘惑が強くなるのが分かる。頭の疼きが、どんどん強くなっている。さっきよりも、今の方が確実に強い。
体が叫ぶ。何でこらえるのだ、と。楽になろうよ、と。
羽音が、止まない。

「だッ・・・・・・・めぇ・・・・・っ」

いけない。
彼には・・・・・・・サイトには・・・・・・帰る場所が、故郷がある。
この感覚に委ねれば、もう止まらなくなる。感情のままに、私はサイトを求め、そして恐らく、彼も喜んで私を受け入れるだろう。
約束した。帰る方法を一緒に探す、と。それを・・・・嘘にしたくない。何より・・・・・彼の想いをないがしろに、できない。
誰よりも大事な使い魔。私の・・・・・愛しい人・・・・・・・・。彼の想いを、踏みにじるようなことだけは・・・・・・・・。

・・・・ッ、トッ、トッ、トッ、

その時、心臓が跳ねた。
「!? っひ、きゃうっ!」
不意に耳に飛び込んできたその規則的な音は、紛れもなく足音。

「っ・・・・!・・・・・んくっ・・・・・ぅんっ・・・・・・!」

瞬時に事態を悟り、体を駆け巡る電流も構わず、身体をなんとか起こそうとする。
やっとの思いでベッドの上に座り、ふにゃふにゃに崩れた顔に、なんとか力を込めようとする。
寝静まった寮。階段の側からゆっくりと近づいてくる、その足音。それが誰なのかを、彼女は悟っていた。

「くっ・・・・・・・・・・・ふぅっ・・・・・・・・んすーっ、はっ・・・あぁ・・・・うっくっ・・・!」

とめどなく身体を襲う痺れをこらえ、平静を取り戻そうと呼吸を整える。
だが、今や体全体が浮かんでいるようだった。どこからが自分の足で、どこからがベッドなのか、よく分からない。
益々大きくなるその足音を、扉越しにきっと睨みつけようとする。快楽に耐え、身を振るわせながら、緩みに緩んだ顔の筋肉を必死に強張らせる。
この感覚に、負けないように。彼を、求めてしまわないように。

510:愛しい人 [3/5]
07/05/18 02:03:26 30JmQmRv
「さぁっ・・・・・いんぅ・・・・とっ・・・。さい・・・・・とぉ・・・・・っ」

いつか盛られた惚れ薬とは違う。
脳全体を一瞬で覆い付くし、彼への想いをあらゆる事に優先させようとした、暴力的なまでの、魔性の感覚。
それとは対称的で、この感覚は、じっとしたっきり、動こうとしないのだ。
そう。
じっ・・・・・と、動かず。ただ、そこに在るのだ。いつしか、私自身が精神を明け渡すまで、じっと待ち続けているのだ。
時を経るにつれて、その誘惑が強くなるのが分かる。頭の疼きが、どんどん強くなっている。さっきよりも、今の方が確実に強い。
体が叫ぶ。何でこらえるのだ、と。楽になろうよ、と。
羽音が、止まない。

「だッ・・・・・・・めぇ・・・・・っ」

いけない。
彼には・・・・・・・サイトには・・・・・・帰る場所が、故郷がある。
この感覚に委ねれば、もう止まらなくなる。感情のままに、私はサイトを求め、そして恐らく、彼も喜んで私を受け入れるだろう。
約束した。帰る方法を一緒に探す、と。それを・・・・嘘にしたくない。何より・・・・・彼の想いをないがしろに、できない。
誰よりも大事な使い魔。私の・・・・・愛しい人・・・・・・・・。彼の想いを、踏みにじるようなことだけは・・・・・・・・。

・・・・ッ、トッ、トッ、トッ、

その時、心臓が跳ねた。
「!? っひ、きゃうっ!」
不意に耳に飛び込んできたその規則的な音は、紛れもなく足音。

「っ・・・・!・・・・・んくっ・・・・・ぅんっ・・・・・・!」

瞬時に事態を悟り、体を駆け巡る電流も構わず、身体をなんとか起こそうとする。
やっとの思いでベッドの上に座り、ふにゃふにゃに崩れた顔に、なんとか力を込めようとする。
寝静まった寮。階段の側からゆっくりと近づいてくる、その足音。それが誰なのかを、彼女は悟っていた。

「くっ・・・・・・・・・・・ふぅっ・・・・・・・・んすーっ、はっ・・・あぁ・・・・うっくっ・・・!」

とめどなく身体を襲う痺れをこらえ、平静を取り戻そうと呼吸を整える。
だが、今や体全体が浮かんでいるようだった。どこからが自分の足で、どこからがベッドなのか、よく分からない。
益々大きくなるその足音を、扉越しにきっと睨みつけようとする。快楽に耐え、身を振るわせながら、緩みに緩んだ顔の筋肉を必死に強張らせる。
この感覚に、負けないように。彼を、求めてしまわないように。

511:愛しい人 [4/5]
07/05/18 02:05:04 30JmQmRv
そして。

トッ、トッ、トッ、ト・・・・・・カチャ。

一瞬の静寂の後、小気味いい音と共にドアノブが動いた。
音もなく扉が開かれる。
灯火の柔和なオレンジを背負った、見慣れたシルエットが部屋の中に入ってきた。

「ただーいま・・・っと」
「っ・・・・・・・!」

パタン、という音と一緒に、暗がりに声が響く。
ドア脇に洗濯籠を下ろすと、彼はゆっくりとベッドの側にやってきた。
そして、そのまま何も言わず、私を鑑賞する。
「・・・・・・・・・・・・・」
うっすらと笑みを浮かべながら、瞳を妖しく煌かせて、私の隅から隅までを、眺め回す。
「・・・・・ふッ・・・・・・・ぅっ・・・・・・」
胸が高鳴る。誰に縛られたのかも忘れ、素肌を好きな人に晒している羞恥に、顔が赤らむ。
それでも、私は気丈であろうとする。
眉を寄せ、拒否の意思を視線にこめる。歯を食いしばり、怒りの風を装う。
そんな私を見ると、彼はまたいつものように、右手をゆっくりと伸ばしてきて、
「ふ、ぁっ・・・・」
顎に手をかけ、ほんの少し、上を向かせるのだ。
「ぁ・・・・い・・・・・や・・・。ぁぁ・・・・・・・」
洗剤のほのかな香りと、彼の臭いが、する。鼻腔に流れ込んでくる。いつも寝ている胸と同じその臭いを、無意識の内に、私は嗅ごうとするのだ。
それはそのまま鼻を通り抜け、こめかみを通り、脳へと至る。頭を覆う霞が晴れ、あの感覚が、一層強く体を打つ。
「あっ・・・・あぁ・・・・・ひゃぁ・・・だ、めぇ・・・・・・・い、いやぁぁ・・・・・・・」
私の喘ぎを一顧だにせず、そのまま彼は、親指をかけたままで、人差し指と中指を使い、私の唇を、そっと撫ぜる。
触れられた部分が、痺れるように疼く。甘美な電流に耐えるのとは違う理由で、私の体は震え出す。
「はっ・・・・・ふぁ・・・・ぁ・・・・」
うすく開けられた口、その中の歯に、彼の指がそっと触れられる。そのまま、唇と同じように撫でられる。
そして、私の舌が歯の裏側を、物欲しそうになぞり・・・・・・・・・・
「ひ・・っ・・・・あぁ・・・・あぅ・・・・ん・・・・・んん・・・」
僅かに触れられる、彼の指先を、舌先で愛しそうに撫ぜるのだ。
「はっ・・・・・・・ひにゃあ・・・・・あぁ・・・・・・っ・・・・・」
目を、肌を、鼻を、口を、彼が満たしていく。犯していく。
全てに彼が入り込んできて、それでも私は、気丈であろうとする。拒絶の意思を示そうとする。彼を想う故に。彼の願いを叶えるために。

なのに。

512:愛しい人 [5/5]
07/05/18 02:06:49 30JmQmRv
彼はゆっくりと顔を寄せてくる。目を瞑り、私の首筋に唇を近づけてくる。
触れるか触れないかの絶妙さで、首を上がってきて、私の顔の形をなぞり、またゆっくりと首筋をなぞり、また引き返し・・・・・・
「ひゃあ・・・ぁっ・・・・ぁぁぁあ・・・・・・ふ・・・・に・・・う・・・・・ひっ・・・・!」
それだけで、体中が喜びに打ち震える。電流がとめどなく流れ続ける。何も、考えられなくなる。
「ちゃんと・・・・・・お留守番できたか?俺の、ルイズ・・・・・」
そう言って、ふっと、彼が優しく微笑み・・・・・・
「だ、れが・・・・ぁ・・・・・・たの・・・・ルイズなの・・・・よぉ」
締め付けられるような胸の痛みを堪えながら、散り散りになった理性の欠片を必死にかき集めながら、私は抗う。
彼は満足気に目を細め、私の足元に手を伸ばす。
「ひっ!?」
紐を引き、唇の中から、鳴動する楕円形の魔法具を取り出す。
「ふぁッ・・・・ア・・・・・・や・・ぁ・・・・・・み、ない・・・・で・・・・・・・」
彼は糸を引いて魔法具からずり落ちる粘液を眺めながら、紐の先の、太ももにベルトで結わえられた四角い箱をゆびでずらし、鳴動を止める。
ゆっくりと腿に添えられる手に、私はもう抵抗できない。そのまま従順に、彼が押し開くままにしてしまう。
「はは・・・・・・・ぐっちゃぐちゃだ・・・・・」
嬉しそうに囁いて、淫靡にぬめり光っているであろうソコを、彼は啄ばむ。
「あっ、ひにゃあぁあぁぁあああああっ!?」
それだけで、私は達し・・・・・・・・
「ルイズ・・・・・・すげー可愛いい・・・・・・」
「ひゃっ」
彼の暖かい抱擁に包まれ、手の拘束を解かれる。
「可愛いよ、ルイズ・・・・・・・・ルイズ・・・・・・」
「あ!・・・・ぁっぁ、ダメ、さいとだめぇ、だめだめだ・・・・め・・・・え・・・・」
力の入らない腕で、必死に彼を押し返そうとする。だが、彼はぎゅっと力をこめて。
「ルイズ・・・・・・・・なぁ、ルイズ・・・・・・」
「ぁっ・・・・・あ・・・・ぁあ・・・・・だ、めなの・・・・・・に・・・・・・・・ぃ・・・」
耳に響く彼の声が、ゆっくりと、ゆっくりと脳に染み渡って・・・・・・・・。
「今日も・・・・・・・いっぱい、しような?」
「あ・・・・・・ぁ・・・・ぁぁ・・・・・・・っ・・・・・・ぁ・・・・・・・・・」
いつの間にか私は、
「す・・・・・き・・・・すき・・・・ぃ・・・・いと・・・・・さ、いとぉ・・・・・・・・好き、さいとっ・・・・好きっ、好きぃ・・・っ!」
彼を押していた腕を、彼の背中に回して・・・・・・・抱きしめていた。


そして、またその夜も・・・・・・・・・私は、彼を求め、彼もまた喜んで、私を受け入れた・・・・・・・。

513:愛しい人
07/05/18 02:07:47 30JmQmRv
お粗末様す。

まじ勢いなんで・・・・・・もしオチ思いついたら、週末とかに。
失礼しました。

514:名無しさん@ピンキー
07/05/18 02:40:22 /fAyE0hP
何はともはれGJ

オチに期待

515:名無しさん@ピンキー
07/05/18 03:04:21 ATEvCj33
お粗末なんてとんでもない。
オチに期待してるぜ。乙かれ

516:名無しさん@ピンキー
07/05/18 03:16:47 DK5BphwM
11巻発売1週間前期待カキコ

517:名無しさん@ピンキー
07/05/18 09:09:30 LkIxRsr/
中点連発(・・・・・・)しすぎ。
点字かよ?

せめて三点リーダ使えボケカス。
お粗末じゃなくて、粗雑なんだよ低能。

518:名無しさん@ピンキー
07/05/18 09:20:31 ArxD2rW2
>>517
初投稿なんだからそのくらい大目に見ようよ

519:名無しさん@ピンキー
07/05/18 09:55:31 RTTuJ3FF
素人が気軽に投稿できるのが掲示板のいい所だと思うんだがな
別作品のスレでも似たような話題出てたがプロ読者w多すぎ

520:名無しさん@ピンキー
07/05/18 10:07:56 uiUpNEY6
なんか設定がよくわかんなかったかも。でもまあそれ以外は最高にGJだから次頑張って!

521:通りすがりのマリコルヌ
07/05/18 11:00:57 PMhbD6Gk
>>435>>447
GJ!
遅レスだが、サイトが羨ましすぎてつい、カッとなって作った。

URLリンク(zetubou.mine.nu)
[bomber41538_h24.lzh](米欄に"使い魔す。"が目印)

これでイリュージョン(絵)唱えられる(描ける)メイジがいたら、この魔法も完成するんだが…orz

522:名無しさん@ピンキー
07/05/18 12:33:52 NL4//Ptq
>>517を翻訳

な、何よこれ! ・・・(中点)ばっかりじゃないの!
せっかく面白いのに読みにくくて勿体ないじゃない。 
こういうときは…(三点リーダ)を使うものよ! 覚えておきなさいっ!

523:名無しさん@ピンキー
07/05/18 14:27:13 30JmQmRv
こっそり覗いてみれば先人の職人の方々が! ほんと恐縮です
なるほど、中点じゃなく3点リーダを使うと…こんなこと、今まで全く意識してませんでした。以後気をつけてみます

524:名無しさん@ピンキー
07/05/18 16:37:49 BZnHXL7t
>>522
なるほど>>517はツンデレだったのか。

525:名無しさん@ピンキー
07/05/18 18:07:08 oE0JnGx2
おまえら予約した?
URLリンク(up.tseb.net)


526:名無しさん@ピンキー
07/05/18 21:28:25 moDu42aJ
>>525
とりあえずkwsk

527:名無しさん@ピンキー
07/05/19 02:52:05 crE77haO
>>525
明らかにはめ込み画像な件

528:名無しさん@ピンキー
07/05/19 09:24:03 sb8cRnP6
俺の脳内では、既に発売中。

529:名無しさん@ピンキー
07/05/19 10:04:48 mPoLbqnK
ワシの脳内では108巻まであるぞ

530:名無しさん@ピンキー
07/05/19 11:00:23 ecWtdX2M
漏れ脳内では既にシエスタとアン様クリア済みだぜ

531:名無しさん@ピンキー
07/05/19 11:03:05 2rhLvM/4
ティファのファンディスク待ちですが何か?

532:名無しさん@ピンキー
07/05/19 11:03:13 VBNaTT0G
アニエス攻略中

533:名無しさん@ピンキー
07/05/19 11:04:14 cLfN++hG
コルベール先生攻略完了・・次は魅惑の妖精編だ

534:名無しさん@ピンキー
07/05/19 11:04:42 2a/zSXMJ
ルイズとタバサの貧乳コンビは既に攻略済みですが何か?

535:名無しさん@ピンキー
07/05/19 11:12:00 M2qLtlHn
誰かハーレムルートへの入り方教えてくれ

536:名無しさん@ピンキー
07/05/19 11:26:19 QDaFB6S1
実は、本編だけがハーレムに繋がるたったひとつの冴えたやり方

537:名無しさん@ピンキー
07/05/19 13:21:10 vfVZORfc
で、結局無いのな?

538:名無しさん@ピンキー
07/05/19 14:01:28 UDF6G6/h
あるじゃない・・・・・・・お前の心の中に

539:名無しさん@ピンキー
07/05/19 15:39:40 sb8cRnP6
このスレSSを絵にすれば、エロ同人の出来上がり、勿論個人で楽しむ為だけにね。

540:名無しさん@ピンキー
07/05/19 15:43:34 Emc86T8k
俺の脳内では絵どころかフルアニメーションフルボイスでBGMも効果音も完璧だぜ

541:名無しさん@ピンキー
07/05/19 15:54:42 8cfu7k5B
ギーシュとヤムチャはすごく似てる気がする

542:名無しさん@ピンキー
07/05/19 16:49:12 rAhNcOz/
モンモンは寝取られるのか・・・

543:名無しさん@ピンキー
07/05/19 17:40:33 UDF6G6/h
マリコルヌに…

544:名無しさん@ピンキー
07/05/19 17:50:01 J2R/f5ki
そして最後には、サイトとがったゲフンゲフン……

545:名無しさん@ピンキー
07/05/19 18:46:57 6HijOpSw
ギーシュ「は、はいりました・・・」
サイト「あぁ、次はヴェルダンディだ・・・」

546:名無しさん@ピンキー
07/05/19 19:23:07 bFBgegoi
そういえばどこかの個人サイトにキュルケを手玉にとるタバサのマンガがあったな…

547:名無しさん@ピンキー
07/05/19 21:22:02 UDF6G6/h
キュルケとタバサのキャラCDは正直いまいちだなとオモッタ

548:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/05/19 22:07:29 e5uhpI30
さて、遅くなったけど、続き投下しまっす

549:今日の料理 ◆mQKcT9WQPM
07/05/19 22:08:32 e5uhpI30
シルフィードが目を覚ますと、目の前にタバサが座っていた。
その手には、一枚の皿と、その上に『何か』が載っている。
その『何か』は赤と黒の混ざった色をしており、こんもりと皿の上に盛られていた。
タバサはそれを、シルフィードの方へ突き出している。

「…?これナニ?お姉さま?」

シルフィードはちょっと興味を引かれて、匂いを嗅いでみる。
そして眉をしかめた。

「ぐえ」

人の数倍のシルフィードの嗅覚が告げる。
この物体は危険だ。近づいてはならない。
口 に 入 れ る な ど 持 っ て の 外 だ。
上半身だけを起き上がらせた状態で、シルフィードは後ずさる。

「どうして逃げるの」

無表情なまま、タバサはにじり寄ってくる。
あの赤黒いものを抱えたまま。

「ひ…!」

そしてシルフィードは立ち上がり。

「いやあああああああああああああ!」

逃げ出したのだった。

これが、事の顛末である。

550:今日の料理 ◆mQKcT9WQPM
07/05/19 22:09:39 e5uhpI30
「シルフィまだ死にたくないのねー!きゅいー!」

そんな事を言いながらシルフィードは俺の背中でガクブルしている。
…ったく、大げさだな。たかがお仕置きだろうに。
そんなことをしていると。

「おい、シルフィード、どうやら年貢の納め時みたいだぜ?」

俺は中庭の入り口を指差す。
そこには、シャルロットがいた。
ん?手になんか持ってる?皿の上になんか載ってる?
ま、でもとりあえず。

「よ、シャルロット」

中庭には他に誰もいなかったので、俺はシャルロットを本名で呼ぶ。
名を呼ぶとシャルロットは俺に気付いて、俺の方へやってくる。
で、シルフィードはといえば。
俺を盾にするように、俺の背中でガクブルしている。
…ぱっと見、怒ってるようには見えないんだが。
シャルロットは俺の方に歩み寄ってくると、手に持っていた『何か』を突き出してきた。

「何?」

なんだろうこれは。
例えるならそれは、大盛りのチャーハン。イカスミ味の。
その上に、トマトケチャップを遠慮なく1本ぶちまけたらこういう感じになるだろうか。

「…作った」

ちょっと頬を染めて視線を逸らしながら、シャルロットはそう言ってその皿を俺に突き出す。
…ひょっとして料理かこれ。
まあ、こっちの世界の料理なんだろうな。よくわかんないけど。

「俺が食べていいの?」

俺はその皿を受け取って、シャルロットに尋ねる。
シャルロットは嬉しそうに頷き、俺に皿を渡した。
その時。

「だ、ダメなのねサイト!それは食べ物じゃないのねー!」

シルフィードがいきなり後ろから飛びついてきた。
おっと!あぶね!落とすとこだった。
その言葉を聴いたシャルロットの顔から表情が消える。
そしてすたすたと無言のまま俺のほうに、俺に抱きついたシルフィードめがけて、歩いてくる。
…なんか妙な迫力だなおい。
近寄ってくるシャルロットに、それでもシルフィードは俺から離れない。
…そうやって首に抱きつかれると苦しいんですが。

551:今日の料理 ◆mQKcT9WQPM
07/05/19 22:11:00 e5uhpI30
「わ、私はお姉さまもサイトも好きなのね!だから警告してるのねー!」
「…黙れ」

すっこぉん!

言って物凄い勢いで突き出されたシャルロットの杖が、小気味いい音を立ててシルフィードの眉間にクリーンヒットする。

「いったーい!」

その痛みでシルフィードは俺から離れてうずくまる。
うずくまったシルフィードの前に、シャルロットがゆらりと立ちふさがる。

「…お仕置き」

言って振り下ろされたシャルロットの杖を華麗に避け、シルフィードは逃げ出す。

「警告はしたのね!あとはサイトの問題なのねー!」
「…黙れと言った」

そしてシャルロットは逃げ回るシルフィードを追い回す。
…まったく、仲がいいんだか悪いんだか…。
そして俺は。
手の中の、『イカスミチャーハンもどき(仮)』を眺める。
…んーまあ、こういう料理なんだって言われりゃ納得できないでもないな。
日本には、『甘口イチゴスパゲッティ』とか『辛口マンゴーフラッペ』とかいう理解に苦しむメニューもあるし。
ちょっと匂いを嗅いでみる。
…んー、ちょっとスパイシーだけど…。
アレだ、この赤いのは香辛料かなんかなんだろうな。するってえとスタミナ系?
俺は脇に添えられていた木のスプーンを手にして、『イカスミチャーハンもどき(仮)』を一口分、掬う。
まあ、黒い穀物ってのがちょっと気になるけど。
日本にも古代米とかいうのが健康食ブームで出てたし。
ま、マズかったら一口で止めればいいだけだしな。

ぱく。

ん?
なんじゃこりゃ?
味がしないぞ?

ぱく。

もう一度口に入れて、今度はよく噛んでみる。
んー?噛めば噛むほど味が出てくるような?
おいしいかも?

ぱく、ぱく。

うん、うまいかも。いけるかも。
何か目の前がチカチカするし。おいしいかもこれ~。

ぱくぱくぱくぱくぱくぱく


かゆ                    
                   うま

552:今日の料理 ◆mQKcT9WQPM
07/05/19 22:12:19 e5uhpI30
一通りシルフィードをボコボコにし終わると、タバサは才人を振り返る。
その時既に才人の手の中の皿はからっぽで。
そして。
タバサがそれを確認すると同時に。
才人は顔を白黒させてぶっ倒れたのだった。
タバサは慌てて才人に駆け寄り、上半身を抱き上げる。
才人の顔は土気色に染まり、大量の汗をかいている。
まずい!
タバサは慌てて『レビテーション』の魔法を使い、才人の身体を持ち上げ、自室へ運んだのだった。

部屋に戻ると、タバサはまずベッドに才人を横たわらせた。
一見眠っているように見える才人の口元に耳を寄せ、呼気を確認する。
呼吸が止まっていた。
タバサは慌てて才人の顎を上げ、気道を確保する。
そして、少し躊躇った後。
思い切り息を吸い、才人に息を吹き込んだ。
タバサは肺の中の酸素を全て才人に送り込むと、一端口を離した。
まだ、才人は息を吹き返さない。
タバサは才人の胸に軽く手を当てると、胸の中心部より少し下を、思い切り押した。
何度か体重をかけ、思い切り押す。すると。

「ごほっ!ごほっ!」

今度は、息を吹き返した。

「サイト、大丈夫?」

上半身を持ち上げ、咽こむ才人に、タバサは心配そうに寄り添う。
才人の鼻先で、タバサの青い髪がふわりと揺れ、彼女の香りが才人を覚醒させる。
才人の目が、タバサを捉える。
その瞳はどこか虚ろで、いつも宿っているものとは別の光を宿していた。
タバサはすぐに異変に気がつき、才人から離れようとする。

「あっ」

しかし、それは適わない。
才人が勢いよく、タバサを抱き寄せたからだ。

「さ、サイト…」

抱きしめられるう腕の力に、タバサの喉から息とともに才人の名前が零れ出る。
しかし才人は苦しそうなそのタバサの声を聞いても力を緩めない。

「ふぅー、はぁー、はぁぁ…」

才人は抱きすくめたタバサの耳元で、荒い息をついている。
その吐息は、飢えた獣のそれに酷似していた。
才人の異変に、タバサは思い当たる。
…料理に混ぜた…アレのせい…!
微量しか加えていなかったのに、熱を加えたせいで何か変化が起きた…?
そう分析する間にも、才人はきつくきつくタバサを抱きしめる。

「かはっ…!」

みしみしと体が軋むほど抱き締められ、タバサの肺から空気が完全に搾り出される。

553:今日の料理 ◆mQKcT9WQPM
07/05/19 22:13:37 e5uhpI30
一瞬、タバサの意識が遠のく。
その一瞬の間に、タバサはベッドに組み敷かれる。

「はぁー…、はぁー…、はぁー…」

才人は虚ろな目で荒い息をつき、タバサを見つめる。
その手がタバサの上着にかかる。そして。

ぶちぶちぶちっ!

ボタンを引きちぎり、タバサの上着の前がはだけられる。
雪のように白い肌と、桜色の突起が露になる。

「やっ、サイトっ」

抵抗しようとタバサは才人の身体を両手で押す。
しかし才人はその両腕を乱暴に掴むと、強い力でタバサの腕をベッドのシーツの上に押し付けた。

「うぅ…がぁぁ…」

才人の瞳は完全に獣のソレになっていた。
吐かれる吐息は熱く湿って、タバサのむき出しにされた起伏の少ない胸を撫でる。
そしてその舌が、タバサの胸を撫でる。
タバサの背筋を悪寒が走る。
それはいつもの才人の愛撫と違い、優しさのカケラもなかった。

「やめ、て…」

しかしタバサのその声も、今の才人には届かない。
才人はタバサの肌の味を確かめるように舐めまわす。
やがて、タバサの身体に変化が訪れる。
舌の圧力に負けていた小さな肉の芽が、硬くなり始めたのだ。

「ふぅ、あっ…」

乱暴な行為を否定する理性が折れ始める。
たとえ獣のような行為でも、相手は才人なのだ。
才人はタバサの両腕から手を離す。
そして、牝の本体の眠る下半身に目を付けた。
タバサはそんな才人を見つめて、言った。

「サイト…」

才人はそんなタバサには耳を貸さず。
タバサの股間を覆う、小さな布に手を掛け。

ビィィィィィッ!

力任せに引きちぎる。
タバサはそんな才人に、されるがままだ。

「サイト…」

潤んだ目で、タバサは才人を見つめる。
才人はズボンを脱ぎ去ると、タバサの膝を乱暴に割り開き、そそり立つ牡をタバサの入り口に押し当てた。
突然タバサは上半身を起こし、才人の首筋に抱きつく。


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