【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合15at EROPARO
【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合15 - 暇つぶし2ch300:名無しさん@ピンキー
07/05/11 01:22:24 65gpDEqd
サイトのケツまんこは俺んだー!

301:名無しさん@ピンキー
07/05/11 01:24:25 vyniySbR
アッー!


302:名無しさん@ピンキー
07/05/11 03:26:06 F0B82HFB
ちょwwwwww

303:名無しさん@ピンキー
07/05/11 08:57:00 OZBj9gj7
なにこのスレ(´・ω・`)

304:名無しさん@ピンキー
07/05/11 08:59:38 LLC4E9v1
そんなことよりルイズ中出しだってよ

305:名無しさん@ピンキー
07/05/11 09:14:47 kPHdP0h2
嫉妬で荒らしているんだろうなw

306:名無しさん@ピンキー
07/05/11 09:31:48 tk/eAlkS
糞スレage

307:名無しさん@ピンキー
07/05/11 10:38:56 RBcEpNV+
だれかSS書いてくれ

age

308:名無しさん@ピンキー
07/05/11 11:01:49 VVMH/jD9
>>307
エロ無しの短編でいいなら

309:名無しさん@ピンキー
07/05/11 11:38:06 f5kq4r1I
>>308
エロが無くてもOK、OK。

310:名無しさん@ピンキー
07/05/11 12:21:20 OZBj9gj7
>>309
職人さんに任せなさい。

311:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/05/11 12:31:11 ykD8rpA3
はーい、5月入ってから夜勤しかしてないせんたいさんがきましたヨー(泣

そういうわけで、空気読まずにSS投下!
それが俺のジャスティス!

312:戦技教官雪風 ◆mQKcT9WQPM
07/05/11 12:32:27 ykD8rpA3
「今までの訓練から、分かった事がある」

今日は、水精霊騎士団の定例訓練の日。
騎士団員の前に立ち、才人は木剣を地面に衝き立てて、そう言った。
才人は、副隊長でありながら、水精霊騎士団ではその実戦経験を見込まれて、教導官をしていた。
ちなみに隊長のギーシュはといえば、訓練の際には教えられる側に回る。

「君たちメイジに、俺と同じ剣を教えても、あまり意味がないということだ」

その言葉に真っ先に頷いたのはマリコルヌ。
何故なら、才人の剣の訓練に一番ついていけてないのが彼だからである。
そしてそのまま才人に尋ねる。

「じゃあ今日はどうするんだい?訓練はお休み?」

その言葉に、一部の怠け者たちが歓喜の声を上げる。
その中にギーシュがいたのは言うまでもない。

「いや。今日の訓練は、別メニューで行う。
 そこで、本日は特別講師をお招きした」

才人はそう言って、手招きをする。
水精霊騎士団の集会所になっているゼロ戦の格納庫から、小さな人影が現れた。
その青い髪の人影はすたすたと才人の隣まで歩いてくると、団員たちに無表情な顔を向けた。

「紹介しよう。
 今日から我が水精霊騎士団の魔術顧問になった、タバサだ」

才人の紹介を受けたタバサは、短い髪を揺らして、小さく礼をした。
以前騎士団への勧誘を断ったタバサだったが、何を思ったのか突然、『騎士団員に魔法戦の指導をしてあげる』と言い出したのだ。
才人としてはダレてきている水精霊騎士団に活を入れられるので、その申し出は願ったりかなったりだったのだが。

「よろしく」
「ちょっとまてえええええええ!」

タバサの挨拶に異論を唱えるものが一人。
なんのことはない、休みを期待していたマリコルヌである。

「なんだよ!なんでそんな娘が魔術顧問なんだよ!」

才人はマリコルヌの言葉に、やれやれと肩をすくめる。

「少なくともタバサはお前よっか強いぜ?」

才人のその言葉に、騎士団員の誰もが頷く。
褒められて、タバサはちょっと頬を赤らめて嬉しそうにしていた。才人くらいにしか分からない程度の変化だったが。
マリコルヌは顔を真っ赤にしながら激昂した。

「な、なんだよ!皆して僕を馬鹿にして!
 いいよ、わかったよ!」
「お、やるか?」

てっきりマリコルヌがタバサに決闘でもふっかけると思った才人だったが。

313:戦技教官雪風 ◆mQKcT9WQPM
07/05/11 12:33:18 ykD8rpA3
「ギーシュとどっちが強いか勝負だっ!」
「えっ僕っ!?」
「お前がやるんじゃないのかよ…」

半分呆れた才人だったが。

「よし、んじゃタバサがギーシュに勝ったら講義受けるな?」
「え、ちょっと待」
「ああもちろん」
「タバサはどーするよ?」
「構わない」
「だってよギーシュ」
「……わかったよやればいいんだろ…」

そして結局。
ギーシュはタバサと決闘する羽目になった。

「『貧乏くじ』ってのはこのことなんだねモンモランシー…」

ギーシュとタバサの二人は、10メートルほどの間を空けて対峙していた。
審判役の才人が、そのちょうど中央で木剣を真横に突き出す。

「いいか、俺が剣を振り上げたらスタートだからな?」

周囲には遠巻きに水精霊騎士団の面々。
どっちが勝つんだ、と盛り上がっていたが、大勢はギーシュ有利に傾いていた。
当然といえば当然だが騎士団の面々はタバサの実力など知らなかったし、ギーシュがある程度使えることを知っているからだ。
『正直勝てる気がしません』
でもできるだけ頑張らないとかっこ悪いよなぁ、とか内心考えながら、ギーシュは離れた位置にいるタバサを見つめる。
相手は『風』のトライアングルメイジ。
まず最初に土の魔法で壁を作って、タバサの周囲の大地を『錬金』で油に…。
なんて考えていると。

「はじめっ!」

才人が景気よく木剣を振り下ろして開始の合図を送る。
早いってサイト早いって空気読め!
しかし始まったものはしょうがない。ギーシュは当初の計画通りに土の魔法を詠唱

どこん。

できなかった。
ギーシュの頭上から振り下ろされた『エア・ハンマー』が、ギーシュを一瞬で大地に叩き伏せ、気絶させたのだった。

314:戦技教官雪風 ◆mQKcT9WQPM
07/05/11 12:33:54 ykD8rpA3
「い、今の反則じゃないかっ!」

タバサの勝利を告げる才人に抗議したのは、気絶したギーシュではなくマリコルヌだった。

「何がだよ」

タバサの頭をなでなでして勝利を祝っていた才人が手を止めてマリコルヌを振り向く。
途中で止められたタバサはちょっと不機嫌そうだ。

「その子勝負が始まる前から呪文を詠唱してただろう!
 だってそうだろう?あんなに早く呪文が完成するわけないんだ!」
「…戦闘前の詠唱準備は基本中の基本」

マリコルヌの言葉に思わず考え込んだ才人の前に立ち、タバサが言った。

「でも、勝負ははじめの合図があってからだろ!」
「あなたは、戦場で相手がいちいちはじめの挨拶をしてくれると思うの?」
「…う」
「それに、彼には私の詠唱が見えていなかった。
 詠唱時に魔法の種類を悟られないようにするのも基本」

才人にはタバサの言いたい事が理解できた。つまり、ギーシュは基本がなっていない、というのだ。
ギーシュはこれでも一応、水精霊騎士団の中では『使える』方だ。
タバサからすれば、水精霊騎士団の面々も、基本のなっていない素人なのだろう。
タバサの指摘に間違いはない。マリコルヌを含め、騎士団の面々は口をつぐむ。

「…だってさ。やっぱタバサに教わったほうがいいんでない?」

才人は肩をすくめて騎士団の面々を見る。
今度は、反論する者はいなかった。

そしてタバサによる地獄のような訓練が開始された。

「そうじゃない。相手に見えないように俯いて」
「こ、こうかな」
「違う。もっと顎を引いて」

タバサの細い指を顎に当られ、『相手に見えない詠唱法』を教わるギーシュ。
…なんだか嬉しそうだ。

315:戦技教官雪風 ◆mQKcT9WQPM
07/05/11 12:34:34 ykD8rpA3
「ちょ、ちょっと僕の方も見てもらえないかな」
「構わない」
「ま、待てよマリコルヌ、俺が先だってば」
「あ、あのさ、僕呪文の組み合わせ考えてみたんだけど」
「どんなの」
「あっこら抜け駆けすんじゃねえっ!」

…地獄のような訓練になる予定だったが、どうやら団員たちには天国のような時間になっているようだ。
ぱっと見は地味で無口なちびっこでしかないタバサだったが、近くで見ればその認識は変わる。
肌は絹より繊細で、その青い髪はあくまで細く美しく日の光を蒼に換え、眼鏡に隠された瞳は深く吸い込まれそうな深淵を湛えている。
ぶっちゃけ、間近で見るタバサはものすごく可愛かった。
遠目に見るなら、たしかにキュルケのような、メリハリのきいた肢体と身長が必須だ。
しかし、近くで鑑賞するなら、各所の造形が控えめなタバサの愛らしさは、キュルケのそれを上回る。
ちょっと見下ろせば全身がくまなく視界に入る可憐さは、はっきり言って育ちすぎた女の子が醸し出すには無理な魅力だった。
才人はそれを誰よりもよく知っているわけで。
一生懸命騎士団員の間で講義を続けるタバサと、それにちやほやしまくる騎士団員を見て。
…ヤバい。こいつらが目覚める前に。

「さーて、今日の講義はこの辺にしようかー?」

才人は声を張り上げ、騎士団員に訓練の終了を告げる。
団員たちからは案の定、えー、と不満の声が上がる。
才人はそんな団員たちには目もくれず、タバサの隣に立って、続けた。

「タバサもいい加減疲れただろうしな?」

そして、タバサの肩を掴む。その手には、必要以上の力が篭っていた。

「…かかった」

小さく呟いたタバサのその言葉を聞き取れたものは、誰もいなかった。

316:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/05/11 12:35:16 ykD8rpA3
でも途中で終わりなのねすまぬー。

つーわけでちょっくら買い物いってくらあノシ

317:名無しさん@ピンキー
07/05/11 12:43:13 6gNiEARx
タバサ……恐ろしい子。
続きにwktk!

318:名無しさん@ピンキー
07/05/11 12:43:34 VVMH/jD9
せんたいsリアルタイム遭遇ktkr!
支援and続き待ちつつ期待

319:名無しさん@ピンキー
07/05/11 13:27:58 f5kq4r1I
>>316
せんたいさんイイヨー!
俺もう、くらくらです。


320:名無しさん@ピンキー
07/05/11 14:10:55 cIFI0sy6
まさにジャスティス…これこそが正しい流れ…

続きwktk

321:名無しさん@ピンキー
07/05/11 14:25:35 42dwZnJv
タバサ……何という策士。
これぞ正に騎士団の連中は当て馬。

322:名無しさん@ピンキー
07/05/11 16:29:59 FHfhAZo2
かかったってw
タバサ怖い子。

323:名無しさん@ピンキー
07/05/11 17:14:32 5jCvdqu2
なんという釣り士www

324:名無しさん@ピンキー
07/05/11 18:04:27 H2+qvZ5Q
釣られないクm(ryコウメイノワナジャー

325:名無しさん@ピンキー
07/05/11 18:33:17 HpzLCoLG
そんな餌にこの俺が釣られクマー

326:名無しさん@ピンキー
07/05/11 19:02:33 DQCfLDKD
神が舞い降りた~

327:名無しさん@ピンキー
07/05/11 19:19:01 /vxedkMW
買い物なんて待てないんだかんねっ

328:名無しさん@ピンキー
07/05/11 20:58:52 Hkz1pghr
もうネタバレスレに11巻の感想きてんのな、はえー
明日FG店行ってみっか…

329:名無しさん@ピンキー
07/05/11 21:01:52 f5kq4r1I
>>328
あのスピードは異常。
マガジンのネタバレを木曜日に入手するぐらいに異常。

330:名無しさん@ピンキー
07/05/11 21:09:24 VVMH/jD9
どういう経由で入手してんだろうな・・・・
やっぱ印刷業者とか出版社関連とかとパイプあんだろうか?まぁ25日まで待つけど。まったり、待つ。待てる、さ。

331:名無しさん@ピンキー
07/05/11 21:27:34 H2+qvZ5Q
ネタ元は作者




なわけないか

332:名無しさん@ピンキー
07/05/11 21:53:33 VVMH/jD9
へんたいさんの続きを待ってたら、暇つぶしに書いた糞SSがなんか完成しちまいそうだぞ
(´・ω・`)オラナンカワクワクシテキタッゾー

333:名無しさん@ピンキー
07/05/11 23:30:22 fU8iyXtx
>>332
何か俺もワクワクしてきたぞ

334:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/05/12 01:05:25 p2vgbHSM
寝たら日付またいじゃった。マジスマソ
続きいくよー

335:戦技教官雪風 ◆mQKcT9WQPM
07/05/12 01:06:43 p2vgbHSM
しかしいきなり講義を中断されておもしろくないのはまだタバサと絡んでいない団員たちだった。

「まだ途中じゃないかっ!中途半端は良くないぞサイトっ!」

主にこの丸いのが。
そしてそれに釣られるように他の団員達も同意の声を上げる。
確かに講義は中途半端で、さらにマリコルヌはこれからタバサの個人指導を受けようという所だったのだ。
憤るのもむべなるかな、である。
しかし才人は。

「でもなあ。もうそろそろいい時間だし」

日は中天にあり、まだお茶の時間を少し回ったあたり、といったところだ。
いい時間というには多少無理があるのではなかろうか。

「よし、だったらこうしようじゃないか」

ガンを飛ばしあう二人に割り込むように、ギーシュが声を掛ける。

「サイトとタバサが試合して、タバサが勝てば講義継続。
 サイトが勝ったら今日の講義はここで終わり。これでどうだい?」

ギーシュの提案に、才人は。

「ちょ、待てよなんだよそれ」

案の定否定した。
タバサとやりあうなんて正直勘弁願いたかったし、どうせなら無条件でこのまま終わりにしたかった。
しかし。

「それでいい」

タバサはすんなりと了承してしまった。
そして結局多数決という名の数の暴力に屈して。
才人はタバサと再び戦う事になったのだった。

先ほどギーシュとタバサがそうしていたように、タバサと才人は10メートルほどの間を空けて対峙する。
今度は、ギーシュが審判を買って出た。

「それじゃあ二人とも準備はいいかい?僕がこの剣を振り上げたら試合開始だ」

そして、木剣を真っ直ぐ横に構える。

「なー相棒、なんで試合なんかで俺っち使うんだよ?」
「…勝たなきゃいけないからだよ」

才人は、デルフリンガーを手に、タバサに対峙していた。
これ以上タバサを飢えた騎士団の面々の中で放置しておいたら。
奴らの事だ、シャルロットをオカズにしかねん…!
シャルロットをオカズにして許されるのは俺だけだっ!
独占欲丸出しで、才人はデルフリンガーを構える。

336:戦技教官雪風 ◆mQKcT9WQPM
07/05/12 01:07:14 p2vgbHSM
左手に刻まれたガンダールヴの印が、才人の心の震えに反応して、光り輝く。

「…どーでもいいけどさ、最近相棒心の震え自由自在よな」
「俺は今っ、猛烈にっ、熱っっっ血しているぅっ!」

そして先ほどの仕返しとばかりに、ギーシュは吼える才人を無視して剣を振り上げる。

「はじめっ!」

真横からのエア・ハンマーによる最初の一撃は、思い切り後方に跳び退って避けた。
タバサが不意打ちでエア・ハンマーを使うのは目に見えていた。
問題は次の手。
一度跳び退った才人とタバサの間合いは、さらに開いた。
タバサに到達するまでに、けっこうな猶予を与えてしまう。
つまり、それだけ大きい魔法をタバサは準備する余裕があるということだ。
しかし才人はそのまま正面からタバサに突っ込む。
最初の間合いから半分ほど詰めた時。タバサの詠唱は完了していた。
アイス・ストーム。それも地上すれすれに効果範囲を限定する事で、一瞬で足元を凍りつかせ、相手の足止めだけを狙ったものである。
あくまでこれは模擬戦闘。才人を傷つけるわけにはいかない。しかし、範囲は広い。殺傷力を削った分を、範囲の拡大にまわしたのである。
凍える大気が渦を巻き、才人が踏み出そうとしている大地を覆う。
そして次の瞬間。

ガッ!

才人はデルフリンガーを地面に衝き立てる。大地に満ちた魔力は、全てデルフリンガーに吸収されていく。
そして才人は、吸魔の剣を足場にして、高く、遠い距離を一瞬で縮めた。
あっという間にタバサの隣に着地した才人は、一瞬でタバサの右手と杖を絡め取った。

「勝負あり、だな」
「…参りました」

そして、才人は副隊長としての立場と、タバサの独占権を守り抜いたのである。

337:戦技教官雪風 ◆mQKcT9WQPM
07/05/12 01:07:52 p2vgbHSM
訓練が終わると、いつもは打ち上げと称した軽い宴会が催される。
才人はそれには参加せずに、タバサの部屋に来ていた。

「なんだよ、話って」

タバサが部屋で話があるから、と、才人を連れてきたのである。
タバサは才人を見上げ、率直に聞いた。

「妬けた?」

そのダイレクトな言葉に、才人の顔が一瞬で真っ赤に染まる。
確かに、騎士団員にちやほやされるタバサを見てもやもやしていたのは事実である。

「な、なんだよ。妬いちゃいけないのか?」

赤くなって頬などかいている。
可愛い。
タバサは衝動を抑えきれず、そのまま才人に抱きついた。
そして言った。

「私が普段どういう気持ちでいるか、これで少しはわかった?」
「え?」
「他の女の子と一緒にいるあなたを見る私の気持ち」
「あ、あれは」

才人は思わず言いよどむ。
彼が望むと望まざるとに関わらず、ついそう言う状況に陥ってしまいやすい運命というか体質であるのだが、しかしまたこの状況を生み出しているのは彼の煮え切らない性格もその原因の一端であることを、彼は理解していた。
とどのつまりヘタレである。

「…私にあなたを縛る事はできない。でも」
「…でも?」

タバサは視線を上げ、才人の瞳を覗き込んで、続けた。

「…今は。今だけは。
 私だけのものでいて。私だけ、見てて…」

才人はその深い瞳に吸い寄せられるようにタバサを抱き寄せ、そして。
その唇を優しく塞いだのだった。

338:戦技教官雪風 ◆mQKcT9WQPM
07/05/12 01:08:50 p2vgbHSM
二人はしばらく口を吸いあっていたが、やがて息が続かなくなり、どちらからともなく唇を離す。
タバサの身体は脱力し、才人にその身を委ねていた。
才人はそのままタバサの身体をベッドに横たえる。
そして服の上からそっと、タバサの胸を撫で回す。

「…っふッ…!」

服の布の上から敏感な突起が押しつぶされるたび、タバサの喉から艶かしい声が零れる。

「…シャルロットってさ」
「な、なに…?」

不意に語りかけてきた才人に、タバサは尋ねる。
その間も才人の手は休まず、わずかに膨らんだタバサの乳房を、柔らかく揉み解している。

「…こういう時、声抑えようとするよね。なんで?」
「…っは、恥ずかしい、から…」

そうこうしているうちにも、才人は両手でタバサの頂点を押しつぶし、刺激を与える。
タバサは無意識のうちに両手で口を抑えようとする。
才人はそんなタバサの両手を掴み、口を塞がせないように開かせる。

「…っやぁっ…」
「もっと聞かせてよ。シャルロットの可愛い声」

そして今度は。
タバサの白い首筋に吸い付いた。

「ひゃんっ!」
「いい声。もっと啼いてみせてよ」

才人は言いながら、タバサの露になった首筋や耳たぶ、そして軽くはだけた鎖骨に、キスの雨を降らせる。

「っひ!やぁっ…なめちゃだめぇ…」

タバサは才人の下で必死に足を擦りつけ、快感に抵抗する。
しかしその行為は、タバサの身体からより一層牝の匂いを香らせることになる。
最初は衣擦れの音しかしなかったタバサの股間が、やがて湿り気を帯びた音に変わる。

くちゅ…。

明らかな水音が才人の耳に届いたとき。
才人はタバサの上半身を責めるのを止め、手をついてタバサの下半身を覆う。

「…は…はぁ…」

口付けの甘い責めから開放されたタバサは荒い息を整え、潤んだ視線を才人に向ける。

339:戦技教官雪風 ◆mQKcT9WQPM
07/05/12 01:09:51 p2vgbHSM
「さい、と…?」
「もうガマンできないみたいだな、シャルロット」

才人から見える開かれたタバサの脚の間には。
女の子の聖域を護る最後の布が、零れた牝の果汁によって染みを造っていた。
タバサは才人の指摘に、こくん、と頷いた。

「ガマン、できないの…。サイトが、欲しいの…」

そして、自らの指でその布を引き伸ばし、己が裂け目を晒して。
膝を立てて、牡を誘った。

「貫いて…サイトでいっぱい、私を犯して…」

才人は言われるがまま。
タバサの中心を貫いたのだった。


上手くいった。
やっぱりあの本は頼りになる。
今回の仕込みは、
『素直になれない女主人~謝肉祭~「今日の天気は晴れのちアレ」』
からの引用。
執事の煮え切らない態度に業を煮やした女主人が、わざと他の男と仲良くして、やきもちを妬かせるシーン。
それをちょっと応用して、仕掛けてみた。
効果は抜群で、今日のサイトはいつもよりずっと優しかった。
…その、無理やりお尻で、されることもなかったし…。
ずっとキスしながら抱いてくれたし。
私は隣で眠るサイトの胸に顔を埋めて、もう一度幸せを噛み締める。
今だけは。この瞬間だけは。この人は私だけのも

「ん~にゅ、シエスタもっと下だってぇ…」

むか。

結局その後。
私はフルボッコにしたサイトを、格納庫の入り口に簀巻きで逆さづりにしたのだった…。~fin

*教訓:戦闘後が最も虚を衝かれ易い。おうちに帰るまでが戦闘です*

340:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/05/12 01:11:57 p2vgbHSM
いやマジせ許して。
単に戦闘シーンが書きたかっただけなんだってば。
しかも薄味の(ぁ
だからこんな中途半端な内容にorz
精進しなおしてくるから堪忍してつかぁさい…。

というわけで明日も夜勤なのでねゆーノシ

341:名無しさん@ピンキー
07/05/12 01:15:40 irvzPlZa
一番槍

ぐじょーぶ

342:名無しさん@ピンキー
07/05/12 01:24:47 E+s1a6E0
GJ!!
寝言は本当に怖いよね……。自分で何言ってるか分かんないんだもん……。

343:名無しさん@ピンキー
07/05/12 01:29:59 WezGZjnb
GJ!!
あ~ベットの上の寝言が一番怖いよねえガクブル


344:名無しさん@ピンキー
07/05/12 01:52:19 LbAP/cwt
そういう心配を一切しなくていい自分は・・・・負け犬なんだろうな(´・ω・`)

345:名無しさん@ピンキー
07/05/12 02:18:48 rNsINg+/
<<344まあ、がんばれとしかいえない。
ともあれいい仕事してるねせんたいさん。
毎度GJだぜ

346:名無しさん@ピンキー
07/05/12 06:38:26 Ljmixw5P
さすがはせんたいさんだな。gdgdだったスレ雰囲気が・・・・

347:名無しさん@ピンキー
07/05/12 14:50:03 afBVk8op
もうホントにまさしく“神”だと思う。
このスレにはせいたいさんが居ないと成り立たないよ。

348:名無しさん@ピンキー
07/05/12 17:37:06 n1LluHY1
GJ!
本当に洗体さんは素敵です

349:名無しさん@ピンキー
07/05/12 18:42:25 8sSE58sH
>>348
なにっ!次はタバサとお風呂で洗いっことな!

350:名無しさん@ピンキー
07/05/12 20:30:08 COU1ZIdU
やっぱタバサが一番かわいいな

351:名無しさん@ピンキー
07/05/12 20:50:29 +iJVQ0hW
時代は…




ツンデレ(ルイズ)から…



クーデレ(タバサ)だ!


…っていうかこのスレに限ってはヒロイン全員の時代ですがね。

352:名無しさん@ピンキー
07/05/12 20:56:48 pTAAezDj
  |       /\ |  /|/|/|  ドドドドドドドドドドドド!!
  |      /  / |// / /|
  |   /  / |_|/|/|/|/|     (´⌒(´⌒`)⌒`)
  |  /  /  |泡|/ // /  (´⌒(´チャンスで連絡!!`)⌒`)
  |/  /.  _.| ̄|/|/|/    (´⌒(´∧ ∧⌒`)`)`)⌒`)
/|\/  / /  |/ /     (´⌒(´(,゚Д゚ )つ `)`)
/|    / /  /ヽ  (´⌒(´⌒  (´⌒( つ |〕 /⌒`)⌒`)
  |   | ̄|  | |ヽ/|  遅れるな!!   ( |  (⌒)`)⌒`)
  |   |  |/| |__|/.   ∧_∧ ⌒`).ドし'⌒^ミ `)⌒`)ォ
  |   |/|  |/  (´⌒(´( ´∀` )つ  ド  ∧_∧⌒`)
  |   |  |/    (´⌒(´( つ/] /    ォと( ・∀・ ) 突撃―!!
  |   |/        ( |  (⌒)`)  ォ ヽ[|⊂[] )`)
  |  /         (´ ´し'⌒^ミ `)`)ォ (⌒)  |

353:名無しさん@ピンキー
07/05/12 21:08:22 pTAAezDj
すまん誤爆した

354:名無しさん@ピンキー
07/05/12 21:21:03 D12KnJDO
いや、どこと間違えたかは知らんが、絶妙のタイミングだw


ま、何はともあれヘンタイさんグッジョブ!!!!

355:名無しさん@ピンキー
07/05/12 21:33:49 QFBz/UpD
原作ではデレってないからクーデレではないと思うが、
確かに今、時代はタバサだ。
しかし、11巻の内容次第では失速する気もするんだな。
祭るんなら今のうちと思われ

356:名無しさん@ピンキー
07/05/12 23:06:30 Myo5YURZ
GJ!!!
しかし…謝肉祭ww

357:名無しさん@ピンキー
07/05/13 00:47:45 Ya5nB7JG
へんたい先生の方のタバサになれたから、11巻のタバサには
おとなしすぎて違和感が出るようになるんだろうな


まさか、原作ではここ以上に大胆に……なんてことは、ないよな?

358:名無しさん@ピンキー
07/05/13 00:53:19 kR3Xjlu2
261氏のタバサがデフォな俺がきましたよ

359:名無しさん@ピンキー
07/05/13 01:20:09 tEu6EtPu
コーホー

360:名無しさん@ピンキー
07/05/13 01:21:03 tEu6EtPu
ミス…

361:名無しさん@ピンキー
07/05/13 01:22:42 Xx1yW4KK
ウォーズマン乙。

362:名無しさん@ピンキー
07/05/13 01:26:24 1TXoWHqW
11巻はタバサメイン回じゃないだろう。
俺は11巻でのカトレア、エレオノールが待ち遠しくてたまらん><
アンリエッタも可。

363:名無しさん@ピンキー
07/05/13 01:47:56 zCIRD7A+
>>362うむ、だからこそ失速を怖れておるのだよ。
なんの見せ場もなく
「タバサは母親につきっきりである」
とか一行で終わってたりしたらどーするさ。

364:名無しさん@ピンキー
07/05/13 01:58:04 IN1zNARZ
そんな悪夢ナ11巻見たくない

365:名無しさん@ピンキー
07/05/13 02:53:25 R3XmwZsv
ばかだなぁ
そういったときにこそ神職人による補完が生きるんじゃないか
もちろん、本編で綿密に描写されるに越したことはないけどな

366:名無しさん@ピンキー
07/05/13 03:21:19 Cpt29J7Q
俺は、お兄ちゃんっ!なタバサ化すると信じる

367:名無しさん@ピンキー
07/05/13 04:37:27 c8iByxzu
>>366
ドイテ? ソイツコロセナイ?

368:名無しさん@ピンキー
07/05/13 05:02:58 7+Uo2K1c
新刊でのタバサしだいではタバサ祭りが・・・・



こいっ!何が何でもタバサ祭りこい!!

369:名無しさん@ピンキー
07/05/13 08:13:31 FmmUKff+
イージャンイージャンスゲージャンw

370:名無しさん@ピンキー
07/05/13 08:31:56 QhdXQDD2
それこのスレに関係あると思うの?


答えは聞かないよ

371:名無しさん@ピンキー
07/05/13 11:01:29 aXe7ucZS
でも流れ的にはどうなるか。


372:名無しさん@ピンキー
07/05/13 12:59:08 ahTUVDJk
ときに、せんたいさんのオリジナル設定のモノってどれなんだ?

今原作が友人宅に行ってて比較ができん
ていうかせんたいさんオリジナル設定まとめやがれ

おながいします
(´・ω・`)

373:名無しさん@ピンキー
07/05/13 14:15:18 aXe7ucZS
オリジナルってキャラだけじゃなかったっけ?
まとめサイトでせんたいさんのSS見てみれば
わかるんじゃないか?俺も見てこよう

374:名無しさん@ピンキー
07/05/13 14:17:03 zaZ2D8wy
原作をもう1セット自分で買いやがれ

ルイズちゃん全巻くださいと大きな声で言うんだぞ?

375:名無しさん@ピンキー
07/05/13 14:42:53 zvqc1gRI
>>374 372ではないが・・・

店に行って、シャルロット全巻下さい・・・・・・言ったさ!

店員つ 4巻 5巻 9巻 10巻 外伝

・・・漢だ・・・ぜ?

負けた

376:名無しさん@ピンキー
07/05/13 15:56:24 sn8Zj+DJ
>>375
その店員は素人だよ。
タバサの寝巻き姿が拝める2巻を出さないんだからな。
全く、ケツの青いガキはこれだから。ふんとにもう。

377:◇ZGK46RsE
07/05/13 17:56:48 +cGMEEgS
タバサで盛り上がっているところだけど女王様で。

378:女王様の散歩 ◇ZGK46RsE
07/05/13 17:57:56 +cGMEEgS
夜のしじまに陰陰とした水音があった。硬い物と布地が擦れ、その間にある水が跳ねたり、滴ったり、
弾けたりで音が発生している。有体に言えば洗濯の音であり、それを人力で行っているのは月明かり
の下、ただ一人だった。

そよ風が草を揺らす音が聞えそうな静けさの中で一人洗濯、これだけも侘しい。時偶汚れの落ち具合
を確認する為に掲げられるのは小さな布切で足を通す穴が二つあいてて、つまりは下着だった。

もうこれだけで侘しさは一杯一杯な気がする。止めとばかりに下着は自分の物ではないのに、洗う当
の本人、才人は結構嬉しそうであった。殆ど痛ませないで綺麗にしている己の力量に満足感さえ抱い
たりする。

「う~む、飛騨の職人さんにも匹敵するレベルになってきたな、俺。参加資格が男だってパンツ洗い
大会があれば絶対に優勝できる」

お立ち台の一番高い位置にいる自分を想像して才人は爽やかな笑みを浮かべる。人間、何事も力量が
上がれば嬉しいものだが、なかなか怪しい眺めであった。

「しかしそんな洗濯上手で素敵な使い魔にご主人さまときたら厳し過ぎるっての! すぐ怒るんだか
らな~。まったくカルシウム不足に違いない」
「カルシウムって何ですか?」
「骨になる物資。これが足りないと骨が弱くなったり、あとイライラしたりする。小魚とか牛乳に豊
富に含まれてる憎いヤツがカルシウム」
「まあそうなんですか、博学ですね」
「ああ、そんなに詳しくはないんだけど…………えっ???」

何気なく受け答えをしていた才人だが、自分がただ一人で洗濯をしているのを思い出し慌てて声の方
を向くと、ほんとう間近に高貴なオーラがあって驚愕した。

「って、お姫さん!? な、なにしてるんですかこんな時間にって言うか、なんでここに居るんです
か!」

才人の驚きとは対照的に嬉しそうな微笑みを浮かべるのは、自身の紋章である白百合がそのまま人の
姿になったような美しい人影、アンリエッタその人であった。

フード付きのマントの下には純白のドレス、頭には水晶みたいな輝きを放つ冠、夜の学院の裏庭に存
在するには勿体無いほどの違和感がある。

379:女王様の散歩 ◇ZGK46RsE
07/05/13 17:58:58 +cGMEEgS
しかし、月の光で幻想的に浮かび上がるアンリエッタは、この世のものとは思えない程に美しい。こ
の時間、この場所に自分が存在してはいけないのを自覚して、それでも来てしまった喜びを消せない
葛藤が、うら若き女王の美貌へ更なる磨きをかけていた。

それは、火急の事件でも発生したのか、そんな普通なら直ぐに浮かぶ考えを才人から奪い、唐突な来
訪者を見詰めるだけにさせ、またアンリエッタも才人の問いに正面から答えられない。

夜には完全な静寂が訪れる。回りには誰も居ない、人の声も、人が作り出す音も無い。けれど不思議
な事に二人の内で鮮やかに甦ったのは同じ舞踏会の光景であった。そこにあった熱く短い沈黙の時間。

「あの………」
「な、なんですか?」

つとアンリエッタが口を開き、才人は緊張した。アンリエッタの瞳に熱を帯びた光が宿っているのに
気付いたのだ。あの夜は他人も居たから有耶無耶になったが、今夜は二人だけ、突発事態も起こりそ
うに無い。

大丈夫だろうか?
何がとは、はっきりしない才人の心配を余所に、アンリエッタの問いはごく普通のものだった。

「あの、サイトさんは何をなさっているのですか、このような時間に?」
「え? あ、ああ、パンツあら―――い、いえ、洗濯してました」
「洗濯ですか?」
「あ、もう終わりましたです、完璧に」

緊張からコレを洗っていたと、女王さまへパンツを見せてしまいそうになったが、才人は慌てて小さ
な布切を後ろ手に隠す。あまりにあからさまな動き、追求されて自分がパンツを洗っていたとバレて
しまわないかと思ったが、アンリエッタは特に感心を持たなかった。

「でしたら、散歩にお付き合いしてくださいませんか?」
「散歩……ですか?」
「ええ、ダメでしょうか?」

たぶん、いや絶対に無断で城から出ているのだと才人は思ったが、どしゃ降りの中で見捨てられそう
な仔犬みたいな目をされては首を縦に振るしかなかった。

「ちょっとだけですよ?」
「ええ、もちろんです!」

380:女王様の散歩 ◇ZGK46RsE
07/05/13 17:59:47 +cGMEEgS
躊躇いつつも才人が言うと、アンリエッタは喜色満面となり、その頬は薔薇色に染まる。一国の頂点
に立ち、どんな願いでもかないそうな女王さまが、自分が散歩に付き合うだけでこんなにも嬉しそう
なのが才人にはこそばゆかった。一刻も早く城へ帰すなりした方が良いのは理解していたが、才人は
少しだけだと自分に言い聞かせる。

「では、エスコートしていただけませんか?」
「エ、エスコート?」

ただ一緒に歩くだけだと思っていたので才人は狼狽える。そんな様子が寧ろ好ましくアンリエッタは
笑みを深め、たおやかな手を差し出す。

「手をつないでください」
「あ、それでいいんですか。」
「ええ、それで十分です」
「いや、エスコートなんて聞いたから難しい作法とかがあるのかと思ったです、ハイ」
「間違いですか? うふふ」
「な、なんです? 俺、なんか間違えました?」
「いいえ、思い出しただけです。サイトさんに手をゆるした時のこと」
「あ、ああ、あれですか? 姫さまが気絶しちゃった時………って、いや、あの時は本当にそう思っ
たんです! わざと間違えたとかじゃないです!」
「うふふ、そんなに慌てないでくださいな」

お姫さまと平民の使い魔、二人の関係をそんな単純に割り切れる頃の出来事が、緊張をやわらげてく
れた。二人はどちらからともなく手を繋ぎ、月明かりに照らされる学院の塔から離れる方へと歩き出
す。

「今夜は月が綺麗ですね。サイトさんの世界でもこうして月を見て散歩などするのですか?」
「う~ん、月を見るのが目的で散歩とかはあんまりしないですね。そもそも夜空を見るのが少数派か
も。ああ、でも十五夜には月見ってことになってます。月を見る日かな?」
「そうなのですか、月を見る日があるなんて面白いですね」

学院の敷地から出て街道を歩くその間、ずっとアンリエッタの話は他愛ない物だけに始終している。

騎士団の事、使い魔のご主人さまの事、戦争の事も、ガリアの事も、そこに関連しそうな話題さえ慎
重に避けている。散歩道では肩の力を抜いた話を楽しむと言うのではない。少しでも二人の間に横た
わる問題に迫ると、全てが終わってしまうと思っているかのようだった。


381:女王様の散歩 ◇ZGK46RsE
07/05/13 18:00:40 +cGMEEgS
しかし敢えて避けられると逆に気になる。辺りの様相も、学院の回りを囲む高い石塀が見えなくなっ
てからは、コンクリートに溢れた世界で育った才人から見れば完全に森。さすがに不安がもたげてく
る。

「あの、そろそろ帰りませんか? 」
「もう少しだけ、お付き合いくださいな」
「でもやっぱりマズイですよ、姫さまが……いや、女王さまがこんな時間に」

アンリエッタは皆まで言わせず才人にしがみつく。細身のどこにこれ程の力があるのかと言う勢いで、
才人は背後の木立にぶつかり、逃げ場を失った。

高貴な甘い香りが才人の鼻を擽り、包み込まれるみたいに柔らかな肉の感触が纏わりつく。アンリエ
ッタの腕に力が入り、才人に密着している胸の膨らみはその量感を強調する。

「ひ、姫さま」
「アンリエッタ……いえ、アンと呼んでください。そして抱きしめてくださいまし」
「姫さまは寂しいだけなんですよ。だから誰かにいて欲しいって思ってこんなふうに……」

才人は安宿での雨夜を思い出す。あの時のように、しばらくすれば落ち着いてくれると思った。しか
しアンリエッタの目には、縋るようなか弱さとは対照的な強い意思の光が宿っていた。

「寂しい、ではいけないのですか?」
「い、いけないって言うか、よく考えてくださいって言うか」
「つまりこうなのですか、誰かを求めるのには立派で正統な理由が必要であり、寂しいなど利己的で
弱さをさらけ出しているだけ、好意に発展するなど言語道断だと」
「え? あ、あの、そういった感じではないと思います」
「でしたら始まりがどうであれ関係ないではないですか。
それにサイトさん、あなただって寂しいと感じているはずです」

アンリエッタはそう断定し、真紅の薔薇の花びらみたいな唇を才人のそれへと寄せて行く。麗しい光
沢に才人は背筋が震える魅惑を感じて顔をそむけるなど出来なかった。焦りながら爪先立ちになって
少しでも唇との距離をあけるのが精一杯。

「そ、そんな寂しくはないですよ。こっちの世界は結構気に入ってるし、皆いいやつばかりだし、そ
れにこっちで何かしたいって思ってますから」
「では、少しも寂しくないのですか?」
「ちょ、ちょっとだけです!」


382:女王様の散歩 ◇ZGK46RsE
07/05/13 18:01:28 +cGMEEgS
アンリエッタは上目遣いになり、才人を追い掛けるように背伸びをする。そしてゆっくりと目を瞑る
と、そこには微笑ましいほど女王さまらしくない普通なキスをねだる格好が出来あがった。

貴族の頂点に君臨する高貴な少女の見せる平凡さ、そのギャップが犯罪的に可愛らしくて才人の脳髄
を激しく揺さぶるのに、当のアンリエッタは自分の蠱惑的な要素に微塵も気付いていない。

それどころか、ふうっと息を吐いた女王さま背伸びを止め、心臓の鼓動を聞くように才人の胸板に頬
をくっつけてくる。

「立派ですね、サイトさんは」
「そ、そんなことないです」

才人はブルブルと頭を振る。あと三秒遅かったら、ちゅう、してました。ダメダメな犬です、と内心
冷や汗たっぷり。

小鳥のような可憐さからは、想像もできない肢体の吸い付く感触に才人はかなり危険な状態になって
いた。実際、後ろの木を折るくらいに腰を引かないと、女王さまの高貴な腹部に不埒なものが当たっ
てしまいそうなのだ。

「本来ならば女王である私こそ毅然としていなければならないのに、心惑わせてばかり」
「プレッシャーが桁違いなんですからしょうがないですよ」
「お優しいのですね。でも私は駄目です」
「ダメなんて、そんな事ないですよ。俺も力になりますから。まあ、何ができるかぜんぜん分らない
んですけど」
「でしたらお願いがあるのですが」
「え、いま?」
「ええ、キスしていただけませんか?」

ほんの少しの慰めが欲しいとアンリエッタは言う。才人は再び情感に濡れてるみたいな女王さまの唇
に惹き付けられる。だからこそ流されそうで首を縦に振るわけにはいかない。

「え、えっと……別のことじゃダメでしょうか? なんと言いますかもっと別の方向で」
「別といいますと温もりをいただきたいと言うのはいけませんか?」
「それもちょっとダメっぽいです。といいますか、それって何かレベルアップしてません?」


383:女王様の散歩 ◇ZGK46RsE
07/05/13 18:03:51 +cGMEEgS
こんなんで如何?

384:名無しさん@ピンキー
07/05/13 18:07:23 IN1zNARZ
一番槍頂戴

いい感じデスゼェ、旦那

385:名無しさん@ピンキー
07/05/13 18:08:26 QOTwchU8
質問質問!なぜ◇?◆じゃだめなの?

386:名無しさん@ピンキー
07/05/13 18:13:31 b37PzPhR
>>383
アン様キタ━(゜∀゜)━!!
雰囲気がいいかんじにでてて良かったです。GJ!!!!!

387: ◆5rH3TvFLiY
07/05/13 18:20:48 QhdXQDD2
トリップは#(←半角ね)の後に好きな文字列を。
例:#タバサで私が着けているトリップになります

388:名無しさん@ピンキー
07/05/13 18:28:44 coSsqST0
>>385
もしかして NG入れるの楽にするための2ch特有のルールと勘違いしてる

389:名無しさん@ピンキー
07/05/13 18:31:15 dNUup7os
トリップの意味がわかってない◇ZGK46RsEに萌えた
アン様わざとなのか天然なのかわからないよアン様
続きwktk

390:こんなデルフは超嫌だ
07/05/13 19:03:42 sn8Zj+DJ

「なあデルフ」
「なんだい相棒」
「お前っていろいろ変な力持ってるよな」
「変ってのは失礼だね。俺一応伝説よ伝説」
「いやでもな。用途がよく分かんねえ能力ばっかりだし。でさ、なんか他にないの、変な能力」
「だから変なってのは……まあいいや。そうだねえ……あ、あれがあるな。人間に変身する奴」
「マジか!?」
「ああ。変身っつっても、イリュージョンの応用で、剣本体の周りに幻影を作り出してそれらしく見せるだけなんだけどね」
「え、それ今もやれんの?」
「んー、まあ、問題ねえはずだよ」
「おお、じゃ、やってみせてくれよ」
「あいよ。じゃ、ちょっと俺っちを地面に突き立ててくれ」
「こうか?」
「そうそう。よし、じゃ……むむむ……カーッ!」
 デルフが気合をいれて叫んだ瞬間、彼の刀身から眩い光が迸った。目を庇いながら、才人はあれこれと想像する。
(しかし、デルフが人間の姿に……どんなだろ。声からすると渋いオッサンって感じか?
 美形だったらとりあえずルイズには内緒にしておこう)
「よっし、出来たよ相棒」
「おっし、それじゃ見せてもらおう……か……」
 目を開けた才人は、目の前に立っていた人物にぽかんと大口を開けることとなった。
 そんな才人の間抜けな姿に、目の前の人物がきょとんとした顔で首を傾げる。
「ん、どったの相棒」
「幼女じゃねえか!」
 人間になったデルフリンガー……いや、正確にはデルフリンガーが作り出した幻影は、
 人間と言っても大人の男のものではなかった。かと言って、大人の女でもない。それどころか、少女ですらない。
 才人の認識で言うと、身の丈80cmほどの小柄な体格。ちょうど、膝の上に乗せたらすっぽり収まりそうな大きさだ。
 髪は透き通るような銀色で、すぐにでも撫でたくなるほど柔らかい巻き毛である。
 目蓋はぱっちりとした二重で、長い睫毛の下には空よりも青い瞳がある。
 小鼻の下には大人しい大きさの唇があり、肌はいかにも子供らしい瑞々しさと柔らかさを備えているように見える。
 その上、着ている服はふんだんにフリルをあしらった白いドレス……とまあ、これ以上ないほどに幼女幼女していた。
(っつーか、正直狙いすぎだろ。今時誰も描かねえぞこんなデザイン)
 その直球具合に恐れおののく才人の前で、デルフリンガーが怪訝そうな顔をした。
「さっきからどうしたのよ相棒。何か変だぜ」
「デルフ、一つ聞いておきたいんだけどよ。お前のこの外見にはどういう狙いがあるんだ?」
「趣味じゃない?」
「そんなアッサリ!?」
「いやだってよ。そもそも剣の周りに幻影張るだけだから、自分で動ける訳じゃねえし。使い道ないよこんなもん」
「うーむ。確かに。とすると、始祖ブリミルってのはずいぶんと嫌な趣味の持ち主だったんだな……」
「まー、数多ある機能の中じゃ、使いどころのないようなもんもあるよ、相棒」
 そう言って、デルフリンガーはぴらぴら手を振りながらカラカラと笑う。
 外見はいかにも大人しそうな美少女であるから、そういう親父くさい仕草は違和感抜群である。
(その上いつも通りのオヤジ声だしなあ。もうちょい何とかならんものか)
 腕を組んで唸る才人の前で、デルフリンガーは最初と同じようにきょとんとした顔で首を傾げた。
「どったの、相棒」
「いやそれだよデルフ」
「何が?」
「もうちょっと、今みたいな可愛らしい仕草ができんもんか」
「何のためによ」
「……何のためにだろう? いやほら、折角可愛い外見なのに、勿体ねえじゃん」
「人間の考えることはよく分からんねえ。んーと、こういう感じ?」
 デルフは両手を握って口元を隠し、いかにも不安そうな眼差しで、上目遣いに才人を見上げた。
「うおっ、そうそう、そういう感じだよデルフ。なんかうめえじゃん」
「ま、これでも何千年も生きてるしね。人間の仕草ぐらい覚えてるわな」
「あー、ついでに、その声と口調。なんか台無しだから、どうにかならん?」
「今日は注文細かいね相棒……えーと、一応この形態のときの声が入力されてるね……あー、あー。
 口調は……相棒の好みから考えて……えと、こういうのでいいのかな、サイトおにいたん」
 完璧だ、と才人は思った。変化したデルフリンガーの声は、まさに人間の大人しい幼女そのものである。
 神秘的な響きを持つ声ながら、まだまだ成長途上にある、一生懸命喋っていると思しき舌足らずな口調。
(ちくしょう、サービス良すぎるぜデルフ。その声で『おにいたん』なんて言われたら、俺はもう、もう……!)

391:名無しさん@ピンキー
07/05/13 19:05:43 sn8Zj+DJ

 激しく身悶える才人を、デルフは若干気味悪げに見つめていたが、やがて大きくため息を吐き出した。
「なあ相棒、もう止めていいかい? なんか疲れるんだよねこれ。変に注目浴びるし」
「駄目だ! っつーか声と口調戻さないの!」
「ふえ……ごめんなたい、サイトおにいたん」
 涙目になって謝るデルフリンガー。瞬時にこの切り替えである。
「くおーっ! プロだ、プロすぎですよデルフリンガーさん!」
「おにいたん、こういうのしゅきなの?」
「だいしゅき!」
「そうなの。えへへ。うれしいな」
 にっこりと、いかにもご機嫌な感じに笑ってみせるデルフリンガー。
(もう辛抱たまらんッスデルフリンガーさん……!)
 少し息を荒げる才人の前でも、デルフリンガーは大人しくにこにこと笑っている。
 本物の子供相手ではこうはいかないはずである。最高。デルフ最高。
「……いや、こんな可愛い女の子にデルフリンガーはないな。ちょっともじって……
 よし、この形態のときのデルフはデルフィと呼ぶことにしよう」
「それ、わたちのおなまえ? わあい、うれしいなあ。ありがとう、サイトおにいたん」
「くふーっ……よ、よし、じゃあおにいたんとちょっとお話しようかデルフィ」
「うん、いいよ、おにいたん」
 嬉しそうに、小さな体全体を使うように大きく頷くデルフリンガー。
 これが元々親父的な感性を持つ剣であることなど忘れかけながら、才人はまた腕を組んで唸った。
「えーと、じゃ、何の話を……」
「……ねえ、サイトおにいたん」
「ん、なに?」
 デルフリンガーは下を見つめ、口を尖らせながら地面を蹴っていた。
 いじけたようなその姿勢のまま、上目遣いでこちらを見上げながら問いかけてくる。
「おにいたん、デルフィのこときらい?」
「え、いや、嫌いな訳ないって。すき。もうだいしゅき!」
「ほんとう? でもおにいたん、あんまりデルフィとおはなししてくれない。デルフィ、さみしいの」
「いや、そんなことは……」
「だって、ルイズおねえたんといっしょにいるとき、いっつもデルフィのことむしするもん。
 おにいたん、ほんとうはデルフィのことじゃまだとおもってるのね。デルフィかなしいの」
 段々と声に涙が滲んでくる。その内目元をこすって泣きじゃくり始めたデルフリンガーの姿に、才人は胸を貫かれた。
(な、なんてこった、こんな小さな女の子を泣かせちまうなんて! 俺は卑劣漢だ、ロクデナシだ!)
 デルフリンガーの演技の巧みさに、才人はもうそもそも何でこんなことをしているのかも忘却の彼方に捨て去った。
 泣きじゃくるデルフリンガーのそばに屈みこみ、視線を合わせながら必至で彼を……いや彼女をなだめる。
「そんなことないよデルフィ。おにいたん、お前のこと大好きだよ」
「うそつき。サイトおにいたんのうそつき。おにいたん、ルイズおねえたんの方がしゅきなんでしょ」
「いや、そんなことないって。おにいたん、世界で一番お前のことが好きだなあ」
「ほんとう?」
「ホント、ホント」
「じゃあね、いちにちいちじかんはデルフィとおはなししてほしいの」
「分かった分かった、もう一時間でも二時間でも好きなだけ話してやるよ」
「わあい、うれしいな。デルフィねえ、ずっとさみしかったの」
「そっか。ごめんな、寂しい思いさせちまって」
「ううん、いいの。これからもずっといっしょだよね、サイトおにいたん」
 邪気のない瞳でにっこりと見上げられて、才人は地面を転げまわりたくなるほどに身悶えた。
(もう駄目だ。この円らな瞳と一日中見つめ合っていたい。このちっちゃなお手手といろいろ手遊びしてみてえ。
 肩車してキャアキャア騒いだり、夜は抱きしめて眠り、日差しが穏やかな休日は草原で膝の上に乗せてお喋りしたい!)
 そして才人は唐突にガバッと身を起こすと、デルフリンガーの小さな体にダイビングした。
「だいしゅきだ、デルフィー!」
「あ、それはだめだよサイトおにいたん……っていうか、マジでやべえって相棒!」
 おいおいデルフ声と口調戻すなって言ってるだろ……などと考えた瞬間、才人は―

392:こんなデルフは超嫌だ
07/05/13 19:07:34 sn8Zj+DJ

「たたた、大変ですよミス・ヴァリエール!」
「なに、どうしたのよシエスタ」
「なんか、サイトさんが大怪我したって!」
「ええ!? どういうこと、また何か変な連中の襲撃!?」
「いえ、よく分からないんですが、デルフさんに抱きついて頬擦りしたとか何とか……」
「……何やってんの、あの馬鹿は」

「いやあ、災難だったね相棒」
「デルフ、もうちょっと早く警告してくれよ頼むから!」
「まあまあ、良かったじゃないの腕も脚も顔も無事なんだし」
「ったく、お前がノリノリになるから……」
「いや、っつーか俺相棒もふざけてるんだと思ったんだよな。まさか本気で俺っちの演技に参っちまってるとは思わなくてよ」
「へん、別に参ってねえやい」
「……ひどい、やっぱりうそついたんだ、サイトおにいたん」
「げっ、デルフ、てめえまた声変えやがって」
「そんなこわいこえだしちゃいやぁ」
「……く、クソッ、もう騙されねえぞ俺は」
「ひどい、サイトおにいたんのいじわる……えーん、えーん」
「……だーっ、悪かったよ。機嫌直せよデルフ」
「デルフじゃないもん、デルフィだもん」
「おいデルフ、お前いい加減に」
「やだやだ、デルフィって呼んでくれなきゃやーだ!」
「……わーったよ、デルフィ。ほら、これでいいか?」
「わーい。ありがとう、だいしゅきサイトおにいたん」
「ちっ、全く……あれ、なんか今扉が開いて」
「……サイト」
「げえっ、ルイズ!」
「あんた、なんか今小さな女の子と話してなかった?」
「ち、違う、これは孔明……いやデルフィの罠で」
「あ、その女の子なら相棒がさっき窓から逃がしたよ嬢ちゃん」
「デルフ、てめえ!」
「どうやらお仕置きを日課にしなくちゃならないらしいわね、わたしは……」
「いや、やめて、許してルイズおねえたーっん!」
「何がおねえたんだこのクソ犬があぁぁぁぁぁぁっ!」
 そんなこんなでいつも通りの馬鹿騒ぎを眺めながら、「今度鞘に突っ込まれそうになったら、その度に声を変えよう」と
 決意するデルフリンガーであった。

「ちくしょうデルフ、後で覚えてろよテメエ」
「おこっちゃいやよサイトおにいたん」
「この野郎……」
「ねえおにいたん?」
「なんだよ」
「ほんとうは、いつものおじちゃんみたいなのがうそで、
 ほんとうのデルフィはこっちのほうなのっていったら、おにいたんうれしい?」
「なんですと!?」
「いや冗談だよ冗談。いやー、いちいち反応が面白いね相棒」
「……いやしかし、実際人間のときの仕草が全く違和感なかったし、デルフ、お前まさか本当に……」
「まさかね。いやどうだかねー。俺剣だから分かんないねー」

393:名無しさん@ピンキー
07/05/13 19:08:47 sn8Zj+DJ

こんなんじゃ萌えねえよクソが。死ね、俺死ね、マジで死ね。
ついでにsage忘れスマン。

394:名無しさん@ピンキー
07/05/13 19:30:03 IN1zNARZ
引くーまじで引くぜサイト、おま、こんな趣味持ちだったのかよまじ引くー
は?ばっか、いや、ちげ、ちげーってニヤけてなんかねーよ、ちが、ちょ、違うっつってんじゃん、いやまじニヤけてなんかないって!

あ、GJ いや、違うってだから!

395:名無しさん@ピンキー
07/05/13 19:32:22 0TAEV74x
GJだ!!!!ニヤニヤが止まらない


396:名無しさん@ピンキー
07/05/13 19:42:42 Ywai1JPp
投下ラッシュ来た~!

397:名無しさん@ピンキー
07/05/13 20:09:43 XembNDiG
GJだが、しかしどんどんカオス化していくなこのスレはw

398:名無しさん@ピンキー
07/05/13 20:49:04 aXe7ucZS
それもまた一興だ。
姫様分も補給できたし思いもよらないデルフ分
まで補強できた。作者さん達GJ!

399:翼よごらん
07/05/13 22:51:04 sn8Zj+DJ

 日が傾くと共に、春の穏やかな日差しが徐々に黄昏の色に染まっていく。
「そろそろ今日は上がろうか」
 父の声と共に家族皆が家の中に入ったあとも、少女は家の近くにある一本の大木の根元で、東の空に向かって祈りを捧げていた。
 もちろん、宗教的な儀式ではない。祖母が教えてくれた、一種のおまじないのようなものである。
「お婆様、どうして東の空に向かって祈るの。東は怖いエルフが住んでいる土地なのでしょう」
 この行為について疑問に思い、口にしてみたことがある。すると祖母は笑って答えてくれたものだ。
「昔ね、わたしの大切な人が東で姿を消してしまったの」
「死んじゃったの?」
「死んではいないわ。でも、ずっと遠くへ行ってしまったのね」
「大切な人なのに?」
「そうよ。その人も、わたし……いえ、わたしたちのことを大切に思っていてくれた」
「そんなのおかしいわ。それなのにどうして遠くへ行ってしまったの」
「そうね。その人はとても立派な人だったから。だからこそ、わたしたちの元にはいられなかったのよ」
「よく分からない」
「そうかもしれないわね。でも、わたしたちはお互いのことをとても大切に思っていたの。
 だからこそ、わたしたちも彼を止めなかったし、彼も私たちを置いて帰ることができたのね」
 結局、祖母の理屈を理解することは出来ていない。。
 ただ、東の空に向かってお祈りをするのには、そういう経緯があるのだということは理解できた。
 だから、彼女は今日も祈る。東の空に向かって、祖母の大切な人を想いながら、形にならない漠然とした祈りを捧げる。
「その人はとても強い人だったからね。きっと、わたしたちを見守ってくださるわ」
 祖母は、そんな風に言っていた。
 いつもは祖母と共に捧げる祈りだが、今日は一人きりだ。
 祖母は三日前ほどに何かの便りを受け取り、以来魂が抜けたように呆けてしまっている。
 今日は、祖母の回復を願って、いつもよりは具体的な祈りを捧げるつもりだった。
 燃えるような夕日の色を背負いながら、もう夜に沈み始めている東の空に向かって手を組む。

400:名無しさん@ピンキー
07/05/13 22:52:30 sn8Zj+DJ

 ふと、何か聞きなれない音がした。顔を上げて、眉をひそめる。
 何か、東の空から光るものが近づいてくる。最初は星に紛れてしまうような小さな光だったそれは、
じょじょに大きさと力強さを増していき、最後には目を開けていられないほどにまぶしい光になった。
 そして、それはゆっくりと空から降りてきた。激しい音と風を巻き起こしながら、まるで鉄の竜のように。
 夕日を浴びて鈍く光っているのは、明らかに鋼鉄で出来ていると思しき、どこか疲れたような感じのする体である。
 竜ではない。その翼は真っ直ぐで、こんなものが今飛んでいたなどとはとても信じられなかった。
 だが、それは事実飛んでいたのだ。夕日の光を跳ね返し、もう日の光も届いていない、東の夜空から飛んできた。
 今は西の方を向いている鋼の竜から、不意に誰かが降りてきた。見慣れぬ服に身を包んだ、一人の老人である。
 その老人は懐かしそうに周囲を見回してから、ふとこちらに気付いて声をかけてきた。
「やあ小さなお嬢さん。驚かせてしまったすまんね」
 そう言ったあと、不意に何かに驚いたように目を瞬いた。
「これは驚いた。お嬢さん、あんた、俺の知り合いにそっくりだよ」
 どう返していいか困惑するこちらのことなど気にもせず、老人は躊躇いながら質問してくる。
「ところでお嬢さん、あんたに聞きたいんだが、この名前に聞き覚えはないか。多分、結構有名な貴族なんだがね」
 老人が口にしたのは、この国でも相当有名な貴族の名前であった。
 黒髪の少女が頷くと、老人は興奮したように目を光らせて、さらに問いかけてくる。
「そうか、知っているか。それで、その領地はどっちの方向にある」
 嘘をつく必要も感じなかったので、黒髪の少女は西の方角を指差した。
 老人は暮れ行く空を見つめて、じっと目を細めた。その黒い瞳が、潤んだように煌いた。
 老人は鋼の竜に近づき、何かが刻まれた左手で、その翼を愛しげに撫でた。
「翼よ見ろ、あれが俺達の目指していた空だ。おお、今すぐに会いに行くぞ、飛んでいくとも」
 老人は元気に呟き、こちらに一つお礼を言って、また鋼鉄の竜に飛び乗った。
 再び凄まじい音と風を巻き起こしながら、鋼鉄の竜が重々しく空に舞い上がる。
 少しずつ小さくなりながら西の空に飛んでいくその影を見送っていたとき、家の扉が開いて誰かがこちらに走ってきた。
 祖母だった。今朝、魂が抜けたような状態で椅子に据わっていた祖母が、何かに驚いた様子でこちらに駆けて来る。
 手には、あの便りが握られていた。
「ああ、今、ひょっとして」
 多分、祖母が聞いているのは先程の老人のことだろうと思った。だから、西の空に指先を向けた。
 祖母はその方向を見て、遠ざかる影を見つけて息を呑んだ。そして、あの便りを握り締めて絞り出すように呟いた。
「ああ、あなたは約束通り帰ってきてくださった。でも、ほんの少しだけ遅かった。あと、ほんの少しだけでも、早く来てくだされば」
 肩を震わせて涙を流す祖母の背中越しに、黒髪の少女は西の空を見つめた。
 もう日が完全に沈みかけて、夕暮れから宵闇へと移り変わろうとしている、西の空。
 東の夜空から飛んできた男が、今また、西の夜空へと消えていく。
 少女と祖母は、完全に見えなくなってしまうまで、そこに立ち尽くしたまま鋼鉄の竜の影を見守っていた。

401:名無しさん@ピンキー
07/05/13 22:54:27 sn8Zj+DJ

馬鹿なもの書いた口直しと言うか。

402:名無しさん@ピンキー
07/05/13 22:57:42 b37PzPhR
サイトが帰って数十年後のシエスタの話かな?あっさりしてて良かった。

403:名無しさん@ピンキー
07/05/13 23:04:00 UgFaQpEi
才人はルイズに会いに帰ってきたんだけどルイズは死んで落胆していた
シエスタ視点でのSSか

404:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:05:54 5bs6rUMc
日曜丸一日使って書いた、俺的脳内11巻。
無駄に冗長な上に非エロだが、とりあえず投下。
初投下なんで、ミスったらすまん。10連投の予定。

405:脳内11巻
07/05/14 00:07:19 5bs6rUMc
 タバサたち母娘を救出した後、才人たちは陸路でゲルマニアへ向かった。
 数日かけて荷馬車でゴトゴト。窮屈な旅である。モンモランシーはさっさとこの衣装を脱ぎたいとしきりに訴えていたが、元の服は『魅惑の妖精』亭に預けっぱなしである。新しい服を買う余裕もないので仕方なかった。
 それでも旅は順調だった。二日目の午後にはゲルマニア入りし、安宿で才人たちは大きく安堵した。
 ここまでくれば、もう追っ手の心配はほとんどない。
 部屋はベッドが二つある大部屋と、普通の小部屋の二つを借りた。人数が増えたためである。
 小部屋にタバサの母と、タバサ。シルフィードももちろん一緒だ。しゃべれるのが嬉しいのか、シルフィードはずっと人間の姿をしたままだった。
 大部屋にはその他全員。とはいっても、キュルケはほとんどタバサに付ききりだし、モンモランシーはタバサの母に薬を飲ませたり世話をしているので、寝る場所だけの問題である。交代で荷馬車の中で睡眠をとっていたので、全員一緒に寝る必要はないのであった。


「なあ、ルイズ。どうしたんだ」
 夕食を済ませ、部屋で一息つくと、才人はベッドに腰掛けているルイズに声をかけた。少し前からルイズの様子がおかしかったのだ。
 もう一つのベッドでは、ギーシュとマリコヌルが早くも寝息を立てている。モンモランシーは隣室でタバサの母に夕食を食べさせているはずだ。タバサも一緒にいる。
 キュルケはいない。さきほど唐突に「ごめん、忘れものがあったわ」と言ってシルフィードと一緒にどこかへ行ってしまった。そんなわけで、現在部屋で起きているのはルイズと才人の二人だけであった。
「ううん、なんでも」
 ルイズはそっけない素振りで首を振る。
「なんでもないってことないだろ。さっきからため息ばっかだし、目はきょろきょろしてるし、ヘンだぞお前」
 はあ、とルイズは大きくため息をついた。

406:脳内11巻
07/05/14 00:08:19 5bs6rUMc
 今、彼女の抱えているものは些細な問題である。まあ、彼女にしてみれば大問題ではあったが、極めて個人的な葛藤であった。
 ルイズはジト目で才人を見る。
 この使い魔は、普段相談したいことがあっても気付かずにメイドとイチャイチャしたりするくせに、どうしてこういうどうでもいい時だけ鋭いんだろうか。
 それでも、単純に気にしてくれたことが嬉しくもあったので、ルイズは渋々といった口調で話し始めた。
「あのね、わたし達これからキュルケの家に向かうわけよね?」
「ああ」
「わたし、キュルケのご家族になんて名乗ればいいと思う?」
「は?」
 問われて才人は面食らった。そんなの普通に名乗ればいいじゃないか。
 と、そこで気付く。ルイズの家とキュルケの家は、不倶戴天の仇敵同士だったっけ。
「もしかして、キュルケの家の世話になるのが嫌なのか?」
「そんなわけないでしょ」
 ルイズは目を細めて才人を睨んだ。
「もう先祖の確執とか、わたしはどうでもいいのよ。キュルケは誠意を示してくれたんだから、今度はわたしが示す番だわ。それが貴族としての礼儀だもの。でもわたし、姫さまにマント返しちゃったでしょ」
 才人は頷く。
「だから本来、名乗りたくても名乗れないの。でも、キュルケのご家族にとってはわたしはやっぱりラ・ヴァリエールのはずなのよね。それを隠して世話になるのは卑怯だと思うの。でも名乗ったら多分ただじゃすまないし、まあ……、名乗れないんだけど」
 言いながらだんだん声が小さくなっていく。どうやらルイズの中では複雑な葛藤があるようだった。
 仕方ないので、才人は正直に答える。
「悪い。複雑すぎて俺にはよくわからん」
 はあ、とルイズは再び大きくため息をついた。
 目が、この役立たず、と言っている。
 言われても困る。才人は未だに、そうした貴族の意地とかプライドとか礼儀とかいった機微がよくわからないのだ。貴族を辞めたといっても、ルイズはやはり誇り高い貴族のままだった。
 やがて、ルイズは諦めたようにもぞもぞとシーツをかぶり、
「……寝るわ」
 と言った。

407:脳内11巻
07/05/14 00:09:32 5bs6rUMc
 昼間に馬車で仮眠を取ったせいか、才人は目がさえてしまっていた。まだ眠る気にはなれない。
 隣室を覗くと、モンモランシーが椅子に座ったまま舟を漕いでいた。タバサの母も深く眠っているようだ。夕食も、夕食後の薬も摂り終えたらしい。
 タバサはいない。どこかへ出掛けたのだろうか。
「モンモン。椅子なんかで寝てたら体壊すぞ」
 声を掛けると、モンモランシーは虚ろな目で「ふわ」と声をあげた。
「ああ……、つい寝ちゃったわ。だめね、昼間寝とくべきだったか」
「薬の追加作ってたんだろ、馬車の中で。しょうがないさ」
 眠り薬は調合が簡単とはいえ、揺れる馬車の中ではそうもいかない。随分と目を疲れさせてしまったようだ。
「部屋に戻って寝ろ。歩けるか」
 モンモランシーは片手を挙げて返事しながら、ふらふらと立ち上がる。
「ルイズの方のベッドで寝とけな。ギーシュが寝てる方はぽっちゃりさんがいるから、狭い」
「ふあーい」
 貴族らしからぬ返事に、すっかりモンモンも砕けたなぁ、と才人は苦笑する。
「あ、タバサどこ行ったか知ってる?」
「ん……、ああ、さあ。散歩じゃない?」
 そう言いながら、モンモランシーはふらふらと大部屋に入っていった。
 しょうがないなぁ、と才人は一度部屋に戻ってデルフを背負い、階段に向かう。
 ゲルマニア入りしたとはいえ、追っ手の可能性が消えたわけではない。軍はさすがにもう追ってこないだろうが、特殊な刺客がこっそり狙ってる可能性は依然としてあるのだ。その上、タバサは今、杖を持っていない。
 アーハンブラの城に、タバサの杖はなかった。隠されたのか捨てられたのか、折られたのかわからない。彼女を捕まえた連中にしてみれば不要のものだろう。取っておく理由がない。
 杖のないタバサは、ただの少女と変わりなかった。
 階段を降り、一階の酒場を抜けて玄関を出る。
 外はすっかり日が暮れて、人通りもほとんどなくなっていた。
 左右を見渡すと、左手を流れる川の橋の上に、見慣れた目立つ青い髪があった。
 才人は安堵の息をつくと、そちらへと向かう。
 タバサは橋の欄干にもたれ、空を眺めていた。とっくに才人には気付いているはずなのに、その視線はぴくりとも動かない。
 月明かりに照らされたタバサの幼い顔は、神秘的な美しさを湛えていた。

408:脳内11巻
07/05/14 00:11:52 5bs6rUMc
 季節は春とはいえ、夜風が吹くとまだ肌寒い。橋の上は風の通り道だった。
「寒くないか?」
 近付きながら声を掛けると、タバサは首を小さく横に振って答えた。
 タバサはルイズと同じような、質素なワンピースに身を包んでいる。幽閉時に着せられていた豪奢な寝巻き姿のままではいくらなんでもまずいので、昨日キュルケが適当に選んで買ったものだった。その際、靴も一緒に買っている。裸足だったからだ。
 余ったお金でシルフィードの服装も整えたら、それでキュルケの持ち金はほとんど尽きてしまった。あとは宿代くらいしかない。
 いつもの白タイツも白ニーソもはいてないので、スカートからは細い生脚が覗いていた。
 月は二つとも満月だった。そのせいか、夜なのに随分と明るい。太陽とは違う冷たい光が、夜の空をやわらかく照らしていた。
 才人はタバサに並んで欄干に寄りかかり、同じように空を仰いだ。
「……はあ。相変わらずすごい月だよなぁ。参っちゃうよなぁ」
 思わず呟く。
 ハルケギニアに召喚されてほぼ一年。何度も見ているとはいえ、未だにこの二つの月には慣れない。堕ちてきそうなほど大きいので、なんだか不安になるのだ。
 ふと見ると、タバサが不思議そうに才人を見つめている。
 才人は言い訳でもするかのように言葉を継いだ。
「俺の世界には、月は一つしかないからな。こんなにでっかくもないし」
 言ってしまってから、才人は気付いた。
「あ、俺、別の世界から来たんだ。言ってなかったっけ」
 タバサはこくりと頷き、そのあと首を横に振って、
「竜の羽衣の時に、そんな気はした」
 と言った。
「そっか」
 才人はなんだか意外な気がした。才人が異世界から来たことは、ルイズはもちろんオスマンにアンリエッタ、コルベールだって知ってる。キュルケもコルベールから聞いてるような感じだった。
 どこまで理解してるかは不明だが、シエスタだって知ってるのだ。すっかりみんな知ってるものだと思っていたのである。
 そういえば俺、ギーシュたちに言ってたっけ、と才人は考える。言ってなかった気がする。こう考えてみると、ルイズの虚無よりも周囲の認知度は低いのかも知れない。
 というか、東方のロバなんとかの出身ってことになってたんだっけ、と才人は思い当たる。そんなことまで忘れていた才人であった。

409:脳内11巻
07/05/14 00:12:52 5bs6rUMc
「まあいいや。俺はこことは違う、別の世界で生まれたんだ。月は一つしかなくて、魔法使いはいない。竜とかエルフとかもいない。貴族もいない」
「貴族もいない?」
 不思議そうなタバサの問いに、才人は頷く。
「大昔はいたし、今もいる国もあるのかも知んないけど、俺の国にはいなかったな」
「誰が国を治めてるの?」
 タバサが素朴な疑問を口にした。貴族がいないということは、王さまもいない。地方を治める領主もいない。どうやって国政を執っているのか興味がわいたのだろう。
「えーと、総理大臣」
「ソーリ大臣?」
 重ねて訊かれて才人は困った。民主主義の詳しい仕組みなんて知らない。
「うーん、選挙するんだ。政治家になりたい人が何人か立候補して、国民がその中から投票で選ぶのかな。総理大臣ってのは、政治家の中で一番偉い人……かな」
 言ってて自分でも自信がなくなってくる才人であった。
「ごめん、俺もよくわかってない。二十歳になるまで選挙権ないし、公民苦手だったし」
 頬をかいてそう言うと、タバサは「そう」と言って視線を戻した。
 タバサはもう空を見ていない。なにか考え込むかのように、川の水面を見つめていた。
 心地よい沈黙が流れた。風が二人の髪を絶え間なく梳いてゆく。
 川面を魚が跳ねた。鱗が月光を弾いて、きらきらと光った。才人はそれをぼんやりと眺めていた。
 ここしばらくなにかと忙しかったので、こうした安寧な時間は久し振りだった。もちろん今だってタバサの護衛のつもりなのではあるが、それでもこうして二人でいると、なんだかほっとするのだった。
 なんでだろう、と才人は考える。ルイズと一緒だと、嬉しくてドキドキする。たまに怖ろしくてドキドキする。シエスタの場合は、落ち着くし懐かしい感じがするけど、やっぱりドキドキする。
 タバサの場合、このドキドキがない。干渉してこないからだろう。ずっと傍にいても不自然でなくて、でも、いないとなんとなく物足りない。
 不思議な子だな、と才人は思った。
「……サイト」
 と、唐突にタバサが才人を呼んだ。名前で呼ばれるのは初めてだったので、不覚にも才人はどきりとした。
 タバサは顔を上げ、まっすぐに才人を見つめている。
「わたしはあなたに二度、救われた」
「へ?」
「一度目は命を。二度目は心を。だからわたしの命と心はあなたのもの」

410:脳内11巻
07/05/14 00:13:36 5bs6rUMc
「え?」
 才人は目をぱちくりさせた。突然すぎて、意味がよくわからない。
 なんか、さらっととんでもないことを言われた気がする。
 やがて、水が滲みこむようにその言葉の意味を正しく理解し、咀嚼し、才人は慌てた。
「ちょ、まま待てって、なにトンデモないこと言ってんだお前!」
 いつか見た夢を思い出す。あれは悪夢だったが、これは夢じゃない。
 才人はぐるぐると目を回した。
「それに、そんなこと言ったら俺だってお前に何度も助けられたし、お互いさまだろ!」
 タバサはゆっくりと首を振る。
「わたしはただそこにいて、できることのために杖を振ってただけ。あなたはできるはずのないことに挑んでくれた」
「いや、でも、だって、俺こう見えても一応伝説だし。できないかどうかなんて、やってみないとわからないし」
「だからこそ」
 そう言って、タバサは才人に向き直った。直立したまま、右手を胸に添える。優雅な動きだった。
 ガリア王家の正式な敬礼の作法なのであるが、もちろん才人にはわからない。
「雪風のタバサ。世をはばかる名を、元ガリア北花壇騎士七号、シャルロット・エレーヌ・オルレアン。今は捧げる杖すらなく、すでに貴族の身でもないけれど、この命とこの心、あなたに捧げます」
 くらくらした。ワインをがぶ飲みした時みたいに、頭が揺れる。
 タバサはじっと黙って、才人の言葉を待っているようだった。
 外見こそ幼いけれど、タバサの年はルイズと一つしか違わない。才人と二つしか違わない。才人の世界でいえば、この春に高校入学するはずの年齢である。信じられないが。
 改めて気付くまでもなく、タバサは綺麗だ。白磁のような肌も、宝石のような艶やかな髪も、全体に纏った気品も、ルイズに少しも劣らない。
 夢で見たよりも、タバサは綺麗だった。
 ティーカップのような、白くて丸い頬。
 形の良い貝殻のような、桜色の清楚な唇。
 眼鏡の奥の、深碧の湖のような神秘的な瞳。
 混乱する頭のまま、どこか冷静な思考で才人はそっと手を伸ばし、タバサの眼鏡を外した。考えて取った行動ではなく、ただ、もっとその瞳を覗き込みたくなったのである。

411:脳内11巻
07/05/14 00:14:37 5bs6rUMc
 しかし、タバサはその瞳を閉じてしまった。別に意地悪をしたわけではない。目を閉じ、ややあごを上げて、胸の前で手を抱えただけである。
 どこで習ったのか、誰に聞いたのか、はたまた本で読んだのか、それは男性に眼鏡を外された時の正しい少女の仕草だった。
 どきん! と才人の心臓が跳ね上がる。
 これは……もしかして?
 いいのかな? しちゃっていいのかな?
 いいもなにも、ほかに考えられる可能性はなかった。蛾が蝋燭の火に誘われるかのように、才人はタバサの両肩に手を置き、腰をかがめてその端正な顔に唇を寄せた。
 顔を寄せると、甘い匂いがした。才人はたまらず、そのままタバサの唇に唇を押し付けた。
 いつの間にか、こういう流れに慣れてしまった才人である。
 タバサの唇はやわらかく、しっとり冷たかった。
 唇を離すと、思ったよりも長いタバサの睫毛が震えてるのが見えた。両手は胸元でぎゅっと握りしめられている。
 ああ、緊張してたんだな、と思うほど、いつの間にか才人には余裕があった。とんだスキル獲得である。
「キス、初めて?」
「……初めて」
 タバサは目を開きながら、かすれた声で短く答える。
 才人は彼女の頬にかかった青い髪を梳きながら、ふと思ったことを口にした。
「でも、シルフィードとは?」
 使い魔として召喚した時に、コントラクト・サーヴァントの儀式でキスしたはずである。
 しかしタバサはついと目を逸らし、やや頬を染めながら、
「あれはノーカン」
 と呟くように言った。
 無愛想な子供だと思っていたタバサの、そんな女の子らしい発言に才人は脳幹を撃たれた。
 洒落ではない。直撃である。思ってもみなかった攻撃だけに、一撃必殺であった。
 余裕は吹き飛んだ。本能的な愛しさが込みあげてくる。才人はほとんど無意識にタバサの背中に手を回し、ぐっと抱き寄せた。
 羽のように軽いタバサが、才人の腕の中に納まる。
 ずっと強張っていた肩から力が抜け、タバサは体重を才人に預けた。
 あったかくて、やわらかい。
 じっと見つめる瞳が月の光を反射して、心なしか潤んで見える。
 やばい。なんかずるい。こんな不意打ちひどい。
 こんなに可愛いなんて反則だ。よくわからないけど反則だ。
 ピピー。レッドカード、退場。俺の胸の中へ退場。次の試合には出られません。
 意味不明のことを考えながら、才人は憑かれたようにタバサの肩を抱き、もう一度唇を寄せた。

412:脳内11巻
07/05/14 00:15:33 5bs6rUMc
 一瞬だけタバサの体が強張るが、すぐに力は抜ける。才人に体を預けたまま、タバサはそっと目を閉じた。
 二人の息が重なる。
 その、瞬間。
 ぞくり! と才人の背筋に悪寒が走った。同時にタバサが神速で飛び退く。
 数々の修羅場をくぐった二人である。殺気に対しては敏感だ。特に才人は文字通り“数々の修羅場”を経験している。この悪寒には嫌というほど憶えがあった。
 はっと振り返るいとまもなく、上空からきゅいきゅいと声がして、目の前を大きな影がよぎった。
「え、シルフィード?」
 気付くとその足に、いつの間にかしっかりタバサを捕まえている。風でスカートがめくれてパンツが見えた。シルフィードの背中には、キュルケともう一人の影がある。
 そのまま川の上を滑空して遠ざかり、ばさりと羽ばたいて急上昇。シルフィードに掴まれたタバサは困ったような顔で「ごめんなさい」とだけ言い残した。
 呆然としたのは一瞬。パンツ見えた、と思ったのも一瞬。才人は“戦場”に一人取り残されたことを悟った。
 今なお殺気というか怒気というか、肌を焼くような感覚は続いている。むしろ激しさを増していた。
 恐る恐る、才人はその源泉と思しき宿の方向を向く。首が意志に逆らって言うことを聞かなかったが、それでもなんとか首を回す。
 はたしてそこには、寝ていたはずの桃色の髪が夜風に舞っていた。
「ル、ルル、ルルル……」
 鳥を呼んでいるわけではない。動転して言葉にならないのだ。
 月下に佇むルイズは美しかった。
 風になびく草色のワンピース。どこか遠くを見るような目で、高貴な微笑すら浮かべながら彼女は才人を見つめた。どことなく、悟りを開いた高僧のような雰囲気すらあった。
 右手にはすでに杖を抜いている。唇が震えて見えるのは、なにか呟いているからだった。
「そうなんだそうなのねやっぱり犬は犬なのねわたしのこと好きとか言いながら機会があればほかの女の子押し倒すのねキスするのね尻尾ふるのねわたしよりちっちゃいのにわたしよりちっちゃいのにわたしより」
 ぶつぶつと呪詛の言葉を吐きながら、ルイズは一歩、また一歩と近付いてくる。

413:脳内11巻
07/05/14 00:16:36 5bs6rUMc
 小悪魔? 冗談じゃない、あれは悪魔だ。正真正銘。
 だって、なんか髪が生き物みたいにうねってるし。
 怖い。七万の軍勢より、エルフより怖い。多分エルフが七万いるより怖い。
 恐怖の余り、声も出ない。抜けそうになる腰に鞭打って、才人は逃げるために震えの止まらない足を懸命に反対側へ向けた。
 振り向くと、そこに鬼がいた。
 いつの間に起き出してきたのか、どうやって回り込んだのか、最強のぽっちゃり系ことマリコルヌが、ドットメイジとは思えない迫力で立ちはだかっていた。
「マ、ママママリマリマルマレ……」
「黙れ。息すんな」
 言下にマリコルヌは言い放つ。取り付く島もない。
「不公平だろ不公平だよね誰だってそう思うよね教えてよ誰か教えてくれよ幸せってなにさ幸せってどこにあるのさ誰かぼくにも幸せをくれたっていいじゃないかぼくにもご褒美くれよぼくにもご褒美くれよぼくにも」
 本当に才人は息ができなくなった。
 前を向けば、魔王。
 周りの景色が歪むほどの瘴気を纏い、夜の空気を震わせながら、ルイズが迫る。
「体に覚えさせても無駄なら魂に刻むしかないわよねどうすればいいのかしらやっぱり体から魂を追い出すしかないのかしらわたしよりちっちゃいのにわたしよりちっちゃいのにわたしより」
 後ろには、修羅。
 ゆらり……、と暗殺者のような見事な動きで、マリコルヌは音もなく歩を進める。
「おかしいよね絶対おかしいよねなんでサイトばっかりなのさ今回ぼくがんばったよねすごくすごくがんばったよねぼくにもご褒美くれよぼくにもご褒美くれよぼくにも」
 前門のルイズ。後門のマリコルヌ。
 才人はひいっ、と叫ぶと背中のデルフリンガーに手をかけた。心はさっきから震えている。別の意味で。
「あー相棒。なんつーかな、ぶっちゃけ無理。俺のことはかまわずその辺の茂みにでもうっちゃってくれ。頼むから。ごめん、巻き込まないで。お願い」
「つ、つつつ冷たいこと言うなー!」
 才人は声を裏返して叫ぶ。それが合図であったかのように、
「わたしより胸ちっちゃいのにーッ!」
「ぼくにもご褒美くれよおおおーッ!」
 渾身のエクスプロージョンとエア・ハンマーが才人を吹き飛ばした。
 閃光と轟音。橋は粉々に砕けて塵と化し、才人は枯葉のようにきりもみながら宙を舞う。
 遠ざかる意識の中、才人はふと、“後門のマリコルヌ”って厭な響きだな……、と思った。

414:脳内11巻
07/05/14 00:17:43 5bs6rUMc

 さて、上空を舞うシルフィードの背中。
 眼下の惨劇を綺麗さっぱり素敵に無視して、キュルケは拾い上げたタバサに明るく声をかけた。
「ただいまー。あれタバサ、眼鏡どうしたの?」
 タバサは黙って下を指差す。
「あちゃ、壊れてなきゃいいけど。まあいいわ、はいタバサ。あんたの杖よ」
 キュルケが差し出したものは、まさしく失くしたはずのタバサの杖だった。
 タバサは目を丸くしてそれを受け取る。
「瓦礫の中に埋まってたのをシルフィードが見つけてくれたのよ。それからこっちが……」
「シャルロットさま……」
 キュルケの後ろからひょこりと老人が顔を出す。執事のペルスランであった。
「忘れものの本命。あの屋敷に一人でいたってしょうがないし、タバサが逃げたってバレたら王軍に捕まる可能性もあるしね。間に合ってよかったわ、ほんとに」
 得意そうに赤い髪をかきあげて微笑むキュルケ。
 感動の再会のはずだったが、ペルスランは眉を寄せ、じっとタバサを見つめた。タバサはつつ、と目を逸らす。
「今のは……、この年寄りめの見間違いでしょうか、お嬢さま?」
「……」
 タバサは目を合わせずに黙り込む。
「いけません、いけませんぞお嬢さま。あのような街娘のごとき軽挙妄動、この私が許しません。なにより奥さまが悲しまれます。そもそもあの馬の骨はどういった御仁ですか」
 滔々と訓戒を垂れるペルスランに、タバサはちらりとキュルケを盗み見る。キュルケはそんな彼女の様子を、含み笑いをしながら見守っていた。
「いえいえお嬢さまをお助けいただいた恩人であることは重々承知しておりますが、それとこれとは話が別でございます。どこぞ由緒正しい高貴な方なのでございましょうな」
 重ねて問われ、タバサは意を決したように視線を向け、はにかんだような笑顔を見せた。
 その、かつて見せなかった彼女の表情に、ペルスランは言葉を呑む。
 タバサは短く、少し恥ずかしそうな声で言った。
「わたしの勇者」
 ペルスランは目をまん丸にして絶句した。キュルケは爆笑して、タバサの肩をぱんぱんと叩く。
 シルフィードが嬉しそうに、きゅいきゅいっと鳴いた。

415:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:19:09 5bs6rUMc
以上。駄文失礼。
なんか書いてるうちにマリコルヌが妙に好きになったぞな。
変な脳内設定もできちゃったり。ではでは

416:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:20:39 yEqtgpdn
ノボル・・・・・・・・お前がそこまでタバサLOVEだったとは知らなかったぜ・・・・・
しかし執事のじいちゃんか・・・・そうか、その人がいたか・・・・・まったくノーマークなところに・・・・・いやいや、これはこれで・・・・


つか本人だろ?w忙しいだろうけど、12巻も早いトコ仕上げてクレよなwGJw

417:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:22:04 R/dm8L2a
うめえええええ
素晴らしきかなタバサ、GJ!

418:名無しさん@ピンキー
07/05/14 00:22:31 A555G9qO
>>415
タバサステキ杉タバサーーーーー!!!

419:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:05:14 1R49oqA0
仕事しろーw

420:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:10:50 ZMNNNOUv
GJ。俺もゼロの使い魔最終話なら脳内に保管してあるぜ。

ってかこのスレを見てるとタバサ好きの人口が多そうだが実際はどうなんだ
ろうな?一回、公式人気投票でもやってほしいぜw

421:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:11:17 JAfKsIdX
なんだ、作者ご本人がいらっしゃってるではないか

422:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:44:12 Qp1dHhKJ
何かもうタバサは最初からクライマッスだな。

423:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:52:36 760VHSHH
デルフ擬人化=銀髪なイメージきてるな。
ぜひデルフと犯りたいんだが喘ぎ声はどうなるんだ?
そしてデルフエロが広がる事をマジで祈る。

>>420俺はタバサ一番スキーだ。

424:名無しさん@ピンキー
07/05/14 01:59:12 R/dm8L2a
感動したので勢いで書いた 反省はしていない
URLリンク(up.tseb.net)

425:名無しさん@ピンキー
07/05/14 02:02:06 J8AcFO4D
うは、上手いな
ラフなのに特徴でてる

>>405もGJ


426:名無しさん@ピンキー
07/05/14 02:21:41 fCcdNHJw
遂に絵師も降臨とはな・・・

427:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:25:22 lfuyT44m
深読みすれば、いや多分そのままの意味であろうアンリエッタの願いに才人は焦る。無人島に漂着し
てガリガリになるまで痩せたところへ、三ツ星レストランの豪華ディナーが空輸されたみたいな気分
だった。それでも平静を取り繕えている自分の克己心に驚いてしまう才人だが、それでは、それでは
とアンリエッタが願いを続けると、ほとんど訳が分らなくなって反射的に否定するようになった。

するとアンリエッタも駄目の連発に段々と感情的になり、その要求も天井知らずにエスカレートして
しまう。ものの数分で了承してしまうと一体全体どうなるのかのオンパレードになり、最後には国の
根幹に関する問題にまで到達した。

「では、騎士になってください、私だけの。そして常に私の傍にいてください!」
「い、いや、それはちょっと難しいです。何しろ俺、既に使い魔ですから」
「もう! それならばいっそ一緒に国を治めてくださいませ!!」
「それってすなわち王様じゃん! もうこれでもかってくらい完璧にダメでしょ!?」

才人は一ミリの誤解も無いよう完全否定した。一国が自分の物になってしまいかもしれない夢のよう
に素晴らしいお願いだが、素晴らし過ぎて逆に恐ろしく、とても手に負えなかった。

「力になってくださると言って、何もかもいけないではないですか!」
「だって、いけない事ばかりだからです!」

半分叫ぶみたいに才人が言うと、アンリエッタは口を尖らせた。王女として生まれ不満を明確に表情
にしないよう教育されて来たが、ここまで駄目を出されたのは初めてで堪らず拗ねてしまったのだ。

そんな軽く頬をふくらませたアンリエッタは、高嶺の花とは思えないくらい愛らしかった。別に悪く
ないのに才人は自分から謝ってしまい、女王さまの頭を撫でてしまいそうになった。

しかし、才人の前に非を認めたのはアンリエッタの方であった。ただし暴走気味に。

「すみません、我が儘でした」
「え、いや、我が儘までとは。ただ、もうちょっとソフトだと良かっただけですから」
「いいえ、確かに我が儘でした。ですからサイトさん」
「は、はい、何でしょうか?」
「我が儘な私を叱ってくださいまし」

428:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:26:05 lfuyT44m
前にもそんな事があったなと才人は思ったが、今回はだいぶ雰囲気が違い戸惑ってしまう。

「女王さまを叱れませんよ」
「でしたらアンを叱ってください。我が儘なアンを」
「あの~、ムキになってません? てか我が儘はダメですって言えばいいんですか?」

取り敢えず形だけでも承諾しないと引き下がりそうにない女王さまへ、才人は躊躇いがちにお伺いを
立てる。まあ、沈んだ表情よりはずっと良いかもしれないとも思っていたが、返って来た答えに腰を
抜かすとは思ってもみなかった。

「そうですね、お仕置きですから、お尻を叩くのが普通でしょうか?」
「……………………は?」
「知りませんか? 行儀が悪かったり、悪戯をしたりすると罰としてお尻を叩くのです。鞭や杖です
けれど、いまは手でお願いいたします」
「そ、そーじゃなくて! 姫さまのお尻を想像しての幻聴かと思っちまったくらい危険な発言、姫さ
ま、ヤバヤバですってば!!」

才人は顔を真っ赤にして捲し立てた。可愛らしく拗ねた姫君のどこからそんな発想が湧き出すのか全
然ちっとも理解不能だった。血統書無しのバカ犬が高貴中の高貴な方のお尻を叩くなど有り得ない下
剋上。

メイジ様なのだ、貴族様なのだ、女王様なのだ。これでもかと様しかつかない高貴なお尻。きっと庶
民がお目に掛かれない高級店で売られている高級桃に違いない。スーパーで売られてるみたいな誰か
に触られちゃった傷とかなくて、ムチムチに形が良くて、甘い汁がたっぷりジューシーなのだ。

「っは!? あぶねー妄想しちゃったよ俺。だって仕方ねー! 姫さまのお尻なんだもん。って、な、
な、な、なにやってるんですか!?」
「忠誠には報いを我が儘にはお仕置きが必要なんです」

何時の間にか位置が入れ替わっていた。アンリエッタは木に手をつき、腰を曲げた姿勢になっている。
即ち尻を叩かれる格好だ。さすがに恥ずかしく、首を巡らせて才人を見る横顔は上気している。

「あぐ!? へぐぐぐぐがあ!?」

429:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:26:46 lfuyT44m
才人は舌を噛みそうになりながら奇声を上げた。女王さまの御お尻は破壊力抜群であった。月明かり
の下でも白いドレスには、精神を何処かへ連れて行かれそうな艶めかしいお尻の陰影が浮き上がって
いる。二つの膨らみはふっくらと美形で、その間の谷は布で浅くなっているのにどこまでも扇情的。
そしてアンリエッタの若さを象徴するみたいな瑞々しい尻肉の引き締まり感。

想像以上の桃をどうぞと差し出されて、才人の頭の中では回線が切れ、激しくショートする。

「こ、これを叩けと? てか、叩くって触れるんですよ? 手で触るんですよ? お尻ですよ?」
「は、はい、ど、どうぞ」

ドレスをたくし上げ、アンリエッタは夜気に自身の桃尻を晒し出す。後はドレスよりも遥かに薄く小
さな布切があるだけ、柔らかそうな曲線を才人の視線から隠すものは殆ど無くなった。

アンリエッタも自分がおかしな行動を取っていると強く自覚していた。骨の髄まですり込まれてきた
王族の規定に従うべきだと理性も叫んでいる。しかし、限界であった。たまりにたまったストレスが
捌け口を求めていたのだ。それ故、こんな絶対にいけない事をする解放感に抗えなかった。

それに自分自身を吐露する相手は、想い人。単なるスリルを味わうのとは違うドキドキがこの上なく
甘美であった。こんな秘密の行為を共有する親密感も求めて止まなかったものであり、傍目にはどう
であれ、アンリエッタが欲しいものが全て揃っていた。

「な、生桃、生桃ってなんなんですか!? も、もう知りませんよ? お尻だけにしりません! 姫
さまのお尻に接触させていただきます!!」
「は、はい……きゃあん!? く、くすぐったいです。あ、あの、た、叩くのでは?」
「叩きます! 悪いアンのお尻を叩きます! これはその下調べなんです! モチモチと吸い付く感
触とか確かめて、どれくらい柔らかいのか押してみたりしないとペシペシできませんから」
「わ、わかりました。 やっ、はあん!?」

ムニュっと音がしそうなくらいお尻の肉を摘ままれてアンリエッタが甲高い声を出す。才人の指は執
拗であった。ここまで振り回された仕返しするみたいに十本の指を最大限に使用して、女王さまのお
尻の膨らみを捏ね回す。

「あ~売り物の桃を指で押しちゃう気持ちが理解できる。潰しちゃう感触も気持ちいい、買って食べ
る人の前に悪戯するのが最高に気持ちいいッス!」
「サ、サイトさん あっ! そんなに掴まないでください ふくんっ! ひ、ひろげちゃイヤです」

430:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:27:26 lfuyT44m
「だいじょうぶです。パンツが隠してくれてますから問題ないです。紐みたいになっても根性あるパ
ンツです」
「ああ、仰しゃらないで、恥ずかしいです」

アンリエッタがか細い声をもらす。お尻を弄る指先は柔らかい肉に食い込み芯までほぐそうとしてい
る。親指などは谷間の底にまで届いているので握られる度に、普段は意識しない場所までひんやりと
空気を感じてしまうのだ。たとえ下着に隠れていると言われても、羞恥で顔から火が出そうになる。

ただ、それが嫌かと訊ねられれば、アンリエッタは余計に恥ずかしくなっただろう。自分の奥底に秘
めていたものをどんどん才人へ見せてしまうのが、もう快感になっていたのだ。清楚な純白のドレス
に包まれた肢体は、かってない火照りを覚えている。才人の視線が突き刺さるお尻など、オーブンに
入れられているみたいに熱くなっている。アンリエッタは汗とは思えない高温の湿り気を感じて、さ
らに羞恥を昂じさせて切ない声で懇願する。

「はあ、サイトさん、早く叩いてくださいまし。さもないとアンはおかしくなってしまいます」

アンリエッタは悩ましい吐息を漏らし、しっとりと汗ばんだ腰をくねらせる。願いをかなえる為なら
ば、どんな事でも言う事を聞く、そんな媚びた空気を清楚であった肢体は存分に纏わせていた。それ
はアンリエッタの麻薬か毒のような魅力であった。いけないとは思っていても手を出すのを止められ
ない魅力。才人も、うが~っと吠えずにはいられなかった。

「こ、こんな鼻血出そうな色っぽさって、何て悪いお尻なんだ! 有罪決定です!」
「きゃうんっ!!」

ピシっと才人は女王さまのお尻を叩き、アンリエッタは甘い悲鳴を上げた。ほんのりと薄赤の手形の
付いた双丘が、二人ともゾクゾクとした気分にさせる。

「姫さま、喜んじゃダメですよ。お仕置きなんでしょ? 悪いお尻が手に吸いついてくるみたいで
す」
「す、すみません。アンは本当には悪い娘です。ですから、もっと強く叩いてください」
「なんですか、一回じゃ足りないんですか?」
「お、お願いです―――あふ!! ひあぁ きゃん ひぅん!?」

才人の平手がアンリエッタのお尻を甲高く鳴かせる。一、二、三と回を重ねる毎に真っ白な桃尻は艶
めかしい紅に熟して行く。思い切り叩いたには程遠いけれど、お尻に生じるヒリヒリとした感覚はア
ンリエッタの高ぶった神経を程好く刺激して甘い悲鳴をどんどん生々しい喘ぎへと変化させる。

431:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:28:13 lfuyT44m
「ひやぁ は、はあ、サ、サイトさん! ああ、アンリエッタはサイトさんにこうして欲しかったん
です」

身を捩り谷間に食い込んだ下着に擦れる大切な部分が燃えるようで、隠しようもない熱い湿潤を感じ
てしまいアンリエッタは歓喜に啜り泣いた。

「ふあぁ! アンのお尻、熱いです。サイトさんにはたかれる度に熱くなって んくうぅ! お、お
腹の方まで熱いんです」
「姫さま、やっぱり喜んでるじゃないですか。コレ、お漏らしじゃなくて気持ち良くて濡れてるんで
すよね……って思わずベタなセリフで聞いちゃうじゃん!」
「きゃふんんっ!?」

これまでにない高い音が桃尻で鳴り、アンリエッタの腰が戦慄いた。すっかり汗で湿って掌が密着し
た衝撃が堪らない痺れとなり、女王さまは明確な快感の極みを味わったのだ。叩かれたお尻がまだ振
動していて、裡に響き続けているみたいで、その心地好さに身も心も軽くなる。

「あ゛ す、すみません。姫さまのお尻がけっこうなお手前でついつい調子にのってました。痛かっ
たですか?」
「あ、や、サイトさん サイト殿…いいえ、サイトさま! 止めないで、もっとアンを叱ってくださ
いまし」
「さまって立場逆転!? とっても背徳!?」
「お仕置きされているのですから、そう呼ばせて。そして私にはさまなど付けないで」
「お女王さまを呼び捨てって何か漢心を直撃って感じなんですけど!?」

女王と平民の逆転劇、才人がそこから連想した幾つかの物語りは、深夜番組でも放送できないような
タイプの内容であった。とっても元気に興奮してしまう物なのだが、そのメインヒロインの女王とは
比較するのも失礼なくらい本物であるアンリエッタの美貌は輝いている。しかも、寄せられる想いは
真正であれば才人も沸騰してしまう。

「ツボ過ぎるセリフで革命しちゃいますが、姫さま……じゃなくてアンリエッタ、巷で流行りのちょ
っといけない本とか読んでない? てか、好きなんじゃない?」
「いえ、あの、侍女に薦められて………ちょ、ちょっとだけ読みました」
「ふ~ん。女王さまはいじめられてた?」
「あ、あの、私のようにお尻を叩かれてるお話もありました」
「それがアンの好きな話なんだ、で、アンみたいに喜んでた?」
「は、はい、その女王は叩く相手に対する気持ちも私と同じでした。あ、これは本のセリフではあり
ませんので」

432: ◆GO7kPgiHGw
07/05/14 02:33:17 lfuyT44m
使い方知らなかったよ。
ってことで、また後で


433:名無しさん@ピンキー
07/05/14 02:43:16 A555G9qO
>>432
寸止めかよ!!!
GJ
そして続きをwktkッ!!

434:名無しさん@ピンキー
07/05/14 07:38:01 g+0Y9U5w
こ、このっ!変態がああああぁっ!!

続き待ってます

435:名無しさん@ピンキー
07/05/14 13:19:49 0TI+C7jR
>>432
Hなアン様が大好きです。

か、堪忍してなぁ。
URLリンク(p.pita.st)

436:名無しさん@ピンキー
07/05/14 15:49:19 gf8y09MJ
>>432 & >>435 どっちもGJ!!!


437:名無しさん@ピンキー
07/05/14 17:22:03 ShaARziU
2日きてない間にすげー伸びてると思ったら。
みんなGJ!絵師さんもきてるし言うことありませんw


438:名無しさん@ピンキー
07/05/14 23:03:25 yEqtgpdn
サイトの煮えてるセリフがまた最高www何でブレーキが効かないんだとか言いながらアクセル両足で踏み込んでるなww
続きにまじ期待っ!

439:名無しさん@ピンキー
07/05/14 23:55:53 f2vq6VGv
このスレの進行速度はガンダールヴでも追い付けまい

440:名無しさん@ピンキー
07/05/15 00:48:10 Hs1L6U4W
アン様好きなので、もろつぼだったw
続き期待してます。

441:名無しさん@ピンキー
07/05/15 02:58:08 GS/5EKRY
神作品に絵師までキタキタキタキタキタキタキタァ!!
両者GJ!!


ぜ ひ タ バ サ の エ ロ 画 も お 願 い し ま す

442:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:37:59 IF3YVvXP
「て、天然でそんな萌えな雰囲気のセリフを放つなんて!? ア、アンリエッタ、なんておそろしい
娘! も、もう、お仕置きよ!!」
「きゃくうぅん!? ああ、サイトさまぁ!」

夜に響き渡る尻打ちの音を合図に、どこかの誰かさんより少し高度な芝居の幕をあける女王さまと平
民。演じていると言う一種の安心が羽目を外させ、二人を真実の混じった役へと没頭させる。

「アンの桃、剥いちゃうから。んで、じっくり観察するから」
「は、はい、お仕置きの成果をご覧になってください」
「んではクルクルっと………ををうぅ! な、なんて桃なんだ!」

遠慮無く、ショーツを捲るみたいに剥いだ才人は出現した素尻に感動した。とっくに下着は谷間へ追
いやられていたから露出面積はあまり変わらない。けれど叩いていた部分は基本的に肌、しかし今見
えているのは生のアンリエッタであった。

「サ、サイトさま、アンのは如何でしょうか? どのようになってますか?」
「綺麗な膨らみ方が絶品だよ。肉付きもコイツめ!って感じで、真ん中の溝はすっきりで、しかも溝
の底まで純白! 文句無しの特級品だ」

アンリエッタは頬を染める。お尻を誉められて嬉しくなる女王さまは可笑しいものだが、想い人の自
分の大切な部分への評価は重要であった。

「ただ………」
「え?」
「潰れて汁が出ちゃってるな。指でツンツンされたみたいに赤い果肉もヤバヤバになって、アン」
「はい」
「叩いて感じちゃったんじゃないか。これじゃもう叩いても無駄だよな? こんな時にはどんなふう
になるのかな? とっても悪いアンをお仕置きするには何がいい?」
「は、はい、手ではなくてサイトさまの杖でアンを叩いてくださいまし」

アンリエッタは、剥かれてしまった桃尻の中心で果汁を溢れさせている部分へ、そっと手をあてがっ
た。自分でも驚くくらいに熱く濡れた感触を、くちゅっと開いて才人へ見せる。エロティックな行為
に心臓が飛び出しそうな羞恥で腰が砕けそうだ。

でもアンリエッタの顔には、麗しい喜びの表情が浮かんでいる。本にもこの展開は頻繁に登場する、
と言うよりもしない方が珍しい。次の場面も同様であり、アンリエッタは慕う相手と迎えるその目眩
く瞬間に胸を高鳴らせる。

「か、可愛い顔でやらしい表情、こ、この二律背反がオレのハートを唸らせるっ!!」
「あ、ふぅん! サ、サイトさまのアンのよりも熱いです ひ、ひぁ!?」

清純な恋心と欲情の淫靡さが程好くブレンドされた女王さまの魅力にすっかりやられ、
才人は猛然と生桃へと襲い掛かる。

「お仕置きなんだからね、エッチなアンリに平民の杖でお仕置きするだけなんだから! べ、別に痛
くて我慢できないくらいに硬くなっちゃったから、トロトロのピンク色に入りたくなったんじゃない
んだから!!」
「は、うぅっ あ、サイトさまが入って……んんっ…き、きつい…あ、あつ……あひぃっ!!」


443:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:38:49 IF3YVvXP
アンリエッタは一瞬躰を強張らせ、その後甘く蕩けて仰け反った。お尻とお腹の奥に才人がぶつかっ
た衝撃と同時に、叩かれていたのとは違う本物の痛みが襲った。だけど尻叩きで恥ずかしいまでに濡
らした以上の本物の快感にいってしまった。ズキズキと痺れる痛みを裡に感じるのに達していた。

「ぬ、ぬわあぁぁ! ヌルヌル柔らかく絡み付いてくる!? い、痛くないの?」
「い、痛いです。だって、こんな、私はサイトさまが以外にいません……で、でも、とても痛いのに、
アンはますます悪い娘に! サイトさまの杖を中で感じていると ふあぁ! 中までアンにお仕置き
してくださるのを思うと、はしたなく熱くなってしまいます!」
「ほ、本当にどんどんウネウネして溶けちゃいそうっス!」

清楚な姫君の純潔を奪った興奮が冷めないうちに、快感に堪え切れないとばかりに腰が蠢いてしまう
アンリエッタの様子に才人の昂揚も成層圏を突き抜けてしまった。

「一番悪いアンはこっちだったんだな。もう抵抗できないくらいトロトロに餅搗きしてやる!」
「はひっ あ、あ、あ、杖の先がアンを叩いてます! ああ、こんなに激しくお仕置きされてるのに、
やっ、やあ、奥から何か溢れてしまうのが止まりません!」

アンリエッタの真っ白なお尻の下側は、ぱっくりと才人に割られて淫靡な紅色を覗かせる。その内側
では破られたばかりの純潔がさらに甚振られているのに、泡立つほどに高貴な蜜が分泌されている。

荒々しい律動にアンリエッタの快感は直結していて、抜け落ちそうな位置から奥を抉じ開けられそう
な深みまで突かれる一回、一回で天にも昇る心地になってしまう。

「い、いや、サイトさま、アンは杖で叩かれて、も、もういってしまいそうです! ああ、いやらし
いアンを叱ってくださいまし」
「も、もう、杖だけじゃダメって事でダメダメだけど最高なお尻も叩くからな!」
「え、サ、サイトさ――はっ ひ、ひぃいん!?」

かつてなく興奮しているアンリエッタが、ここで熱くなっている柔肉をぶたれたら一体どうなるのか
考える間も無く桃尻が音を立てる。破瓜の痛みもすっかり甘美になっていたところへ到来したお尻の
痺れは、蕩けた躰を駆け抜けてアンリエッタを絶頂の高みへと導いた。

「ふ、ふあぁぁ………」
「わっ! ちょ、ちょっと倒れちゃダメだってば って、この柔らかい感触はメロンですか!?」
「きゃふん! あ、あ、あ、サ、サイトさま、い、いま果てたばかりで、ん! む、胸までお仕置き
をっ」
「い、いや偶然だけど、手が勝手にメロン的な胸を揉んじゃうんだ。桃とはまた違った揉み心地が堪
らない!」

才人が、女王さまの崩れかけた肢体を支えた場所は丁度たわわな乳肉の膨らみであった。みっちりと
掌に吸い付き、お尻よりも柔らかく感じて奥が深い。

「手の真ん中辺りに当たっているのはブドウ? くうううう! メロンにブドウって夢のような果実。
さすが魔法の世界! ビバ!くだもの!!」
「くふぅん!? そ、そんなに掴まないでくださいまし む、胸が取れてしまいそうですわ」
「とか言いつつ、こっちもお仕置きで叩いて欲しいとか? でも叩くよりもきつく握っちゃうほうが
簡単だな。どうかなアン?」
「え、ええ、その通りでございます、サイトさま………あ、ひん!」

444:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:39:33 IF3YVvXP
才人が指を沈み込ませるとアンリエッタの背中がなよなよと揺れる。すっかり平民に従うのが板に付
いた女王の胸は、瑞々しい若さの張りに富んでいる。ほんの少し揉まれるだけで、甘い痺れが妙なる
調べとなってアンリエッタの全身に響き渡る。貫かれる花びらと叩かれるお尻、そして揉まれる胸の
三重奏は、少し前までは乙女でだったとは信じられない激しい快感を与え、面白いくらいアンリエッ
タに何度も絶頂を極めさせる。

「果汁で膝のほうまで濡れて光ってるぞ。女王さまの美脚とは思えないエロエロさで困ってしまう桃
とメロンだ! く、くぬぬ、悪い娘すぎて自家製の生クリームでデコレーションしちゃうからな!!
 で、でも、気持ちいい中も捨て難いし、こんなに悩ませて、どこまで悪いんだ!」

お仕置きで乱れ悦ぶ女王さまに、才人はサディスティックに興奮する。喘いでしまう程の絶妙な濡れ
加減と肉棒が千切れそうな締め付けもあり、清楚の象徴みたいな白いドレスごと精液で汚すと決めた。

「ああもう! 両方、両方にします! 才人、どっちも行きます!」
「あ、ひっ! ど、どうぞ、お好きになさってくださいまし! あ、サ、サイトさまぁ~~っ!」

才人は熱いアンリエッタの裡で射精した。高貴な蜜に混じる平民の白濁の高熱と粘りにアンリエッタ
は、甘い悲鳴をあげて躰を震わせる。才人は抽送の勢いのまま腰を引き、脈打つ肉棒からドクドクと
粘った放物線を放った。

「ドレスにも髪にもかけちゃたっス! ドロドロで素敵な桃メロン・サンデーに乾杯!!」
「あ、あふ、たくさんかけられて………これがサイトさまの匂いなのですね」

じんじんと熱さで痺れる中でアンリエッタは穏やか笑みを浮かべた。聖女と称えられる女王は、きら
びやかな宮殿では探せなかった幸せを見付けたのだ。

夜道を帰る才人とアンリエッタ。手を繋ぐのは行きと同じだが、雰囲気はだいぶ異なっていた。張り
詰めたものが消えて、特に才人は一応心配からは解放されていた。

「てか、さすがに吹っ切れたよな」
「なにがです?」
「いや、あの何でもないです。ただの独り言ですから」
「はい、サイトさま………あ、いえ、サイト殿。ふふ、なんだかまた間違えて言ってしまいそうで
す」
「そ、そんな、勘弁してくださいよ」
「大丈夫ですから、そんなに心配なさらないで。皆の前でサイトさまなどと言えば、それこそ大変な
騒ぎになってしまいますもの」
「と、とりあえずかなり気をつけてくださいね。じゃないと犬、泣いちゃいますから」

既に半泣きで才人は冷や汗を流す。自分の不敬な行動もアレだったが、もしもアンリエッタが、ぽろ
りと言ってしまったらと想像すると気が気でない。銃士隊の隊長さんにばれたりしたら、頭と胴体が
別行動するとか、ご主人様だと永久にご飯が要らない身体になるとか、どうなるか知れたものではな
い。

「でも、サイトさんと二人だけの時には間違えてしまいそうです」
「そ、そうですか」
「ええ」

ただ、自分の視線で、はにかむみたいに笑うアンリエッタを見ると、まあそれでも良いかと思えて来
る。行きよりもアンリエッタの魅力は凶悪に増していたから。もじもじと羞う様子など桃メロン・サ
ンデーに匹敵する程ときめいてしまう。

445:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:40:35 IF3YVvXP
いろいろ考えるのは止めて才人は、ほわほわした幸福感に浸るが、ふと前にもこんな事があったなと
思い出した。あの時は学院で、誰かの部屋から帰る途中であったが、無事に到着する前に誰かと出く
わしたのだ。

「そうそう、あん時は突然トゲトゲがあらわれて大変な目にあったんだ。ちょうどこんな感じで……
…って、イ、イヤン! ダ、ダレなの!?」

記憶とそっくりの光景であった。まるで立ち塞がるみたいに小柄な人影が前方に出現して、才人は吃
驚仰天した。

身長に比べて大きな杖、青色の髪と月明かりに光る硝子。才人の見知った中に該当者はただ一人だっ
た。

「タ、タバサかよ? び、びっくりするじゃん、声くらいかけてくれよ」

とか言った才人、隣りに女王さまがいるのを思い出して汗が噴き出したりする。それはそれはダラ
ダラと、才人の身体がこの状況は説明できないと言っている如く大量の汗であった。

「ちょ、ちょっと待って、なんか暑くて汗がどんどんでちゃうよ。こんな涼しげな夜なのに変だな、
ハ、ハハハ」

才人は胡魔化し、間を取るためポケットをごそごそとあさり、布切を取り出して額を拭う。
すると………………

「それ………何?」
「な、なにってハンカチに決まってね~~~~!?」

才人が持っていたのは女王さまの下着であり、間違ってもハンカチではなかった。

「ヤ、ヤベ も、桃を剥いた時についついポケットにしまってた!?」
「桃?」

タバサは小声を聞き逃さなかった。無論、布切の形状も見逃さない。ただし真っ先に気になる筈の女
王さまは無視している。それが才人には怖くて、食べ放題であった果実の事は絶対に秘密にしたかっ
た。

「も、も、桃は関係ない! わ、忘れてちょうだい! メロンも忘れるように先に言っておくから
ネ!!」

あたふたとする才人。タバサは珍しくジト目である。

446:女王様の散歩 ◆GO7kPgiHGw
07/05/15 03:41:57 IF3YVvXP
「何してたの?」
「う゛っ い、いや、お爺さんは山へ洗濯に行ったんだ。散歩のついでに。このパンツはそれだな、
ウン洗濯洗濯」
「夜に?」
「あ、ああ、夜だと月の光が化学変化を起こしてパンツが綺麗に洗えるんだ。パンツ洗いの匠が言う
んだから間違いないぞ。ってことで、疾しいことはないです、ハイ」
「………そう」
「な、納得したか?」
「した」

静かに肯くタバサの顔は氷のように冷たく硬い。そしてたった今まで我が世の春を謳歌していた筈の
アンリエッタの表情も以下同文であり、タバサとの会話を打ち切らせるように口を開く。

「別段、あなたにはサイトさま……」
「ま、間違えてます! 様、いきなり間違えてますから!」
「………サイト殿が何時どこへ散歩に行こうと関係ないのではないですか?」

別に様でも良いじゃないかと言った顔のアンリエッタ、サイトの部分を殊更強調している。タバサと
才人の短い遣り取りで敏感に何かを感じ取ったのである。そんな場合なので横で泣きそうな才人にも
構わない。

「それに誰とも。ね、サイト殿?」
「…………そうなの?」

「ボ、ボクニハナシヲフラレテモコマリマス。イヌダカラネ」

二人の視線が集中して才人はガクガクと震えた。伝説なのにかなり情けない。

「ともかくサイト殿は私を送る途中なのですから、これで失礼します」
「なら私の風竜で送らせる。その方が早い」
「無用です。 あっ! ちょ、ちょっとサイト殿は私とって言っているのに、ど、何処へ行くんです
か!?」
「夜の散歩。ついでに私のも洗濯もしてもらう」

使い魔を呼んだ素振りもみせず、タバサは固まっている才人の腕を掴むと、強引に引きずり才人達が
今来た路を戻り始める。

「お、お待ちなさい!」
「どうして? 散歩は終わったのに」
「もう一度行くんです。それに洗濯もしていただきます!」

アンリエッタはタバサとは反対側の腕を掴んで引っ張った。タバサもさらに力を強めたので、才人は
両側で柔らかな感触に密着する。たわわと小振り、異なる弾力に才人は逆上せ上がる。

「メ、メロンとミカンが同時に!? 連行される宇宙人的な状況なのに、とっても幸せなのは何故で
しょうか? てか鼻血出そうダヨ」

今度の散歩は倍の時間が掛かるかもしれなかった。


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