キモ姉&キモウト小説を書こう!at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう! - 暇つぶし2ch650:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
07/05/18 17:46:54 8/2k9bXL
そう言えば。
ここって、
「こんな設定・プロット思いついた。漏れは忙しいから無理だが、誰か書けない?」
というのを投下するのもあり・・・ですよね?
カタカタとキーを叩きながら、キモウトの妄想を持て余します。

>>649
どうかそれを形に・・・。

651:名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/18 17:58:05 lvCpKlRC
>>646-648
649にキモイの期待してます。
自分でも師弟愛で短編書いてみた。

相変わらずキモ分薄めです。

652:師弟愛  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/18 17:59:03 lvCpKlRC
水橋流古柔術は戦国時代から続く由緒正しい武術である。

先代である父は早くに亡くなったため、姉が当主として後進の指導を
行っている。基本的には男が当主を継承するものであるので、僕が
成長し技術を身につけたら当主の座を移譲することになっている。

そして、今、僕は姉さんと向き合っている。
姉は平均より少し身長が高い、綺麗な黒髪の和服の似合う華奢で綺麗な女性だ。
力だけなら男の僕のほうが強い。
しかし、正直姉に勝てるとは思わない…。だけど、父のためにもそのために道場に
縛られている姉のためにも僕は当主にならなければならない。

「姉さん…。よろしくお願いします。」
「ええ…本気でいらっしゃい。」

礼をし、先手必勝とばかりに突きかかる。二人しかいない静かで少し肌寒い道場は
僕たち二人の周りから空気が熱気をゆっくりと帯び始める。

「あらあら、積極的ね…。可愛い弟もすっかり男になっちゃって…。」
「いつまでも姉さんには負けてませんよ。」

軽口を叩きながら僕たちは戦う。お互いの手口は分かりきっているので
予定調和の組み手が続く。

「そういえば…貴方、彼女が出来たんですってね?」
「うっ!何故それ…しまったっ!!」

姉の言葉に動揺し、不用意な攻撃をしてしまう。そして、手を取られ投げ飛ばされて
天地をひっくり返すような衝撃を受けてひっくり返る。細い姉の手が僕の腕を逃がさない
よう、傷つけすぎないよう縛り上げる。背中に姉は乗り、僕の後ろから艶やかな
声で囁く。

「貴方は…姉さんのものよ…。そんな誰とも知らない女より貴方を愛している…」
「姉さん、何をいって…。」
「くすくす…汗の混じったいい匂い…ちゅ…ぺちゃ…」
姉が僕の首筋を後ろから舐める。その瞬間痺れる様な感覚が体中を走る。


653:師弟愛  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/18 17:59:45 lvCpKlRC
逃げようとするが、体は完全に決まっていて動かない。

「姉さん…やめてくれ…。」
「貴方を他の女になんてあげない…。そんなことは許さない…。抱きたいときは
 私を抱けばいい。子供だって生んであげる。」
欲情の篭った姉の声が耳もとに響く。耳を噛み、耳を舐める。
その間に姉の手が僕の股間に…

「ほら、体は喜んでいるわ。姉さんが欲しいって言ってる。」
体を決めたまま姉は自分の胴着を脱ぎ、僕の胴着と下着を脱がす。

「よくこれでやめてくれって…いえるわね…。」
「姉さん…本当にやめてくれ…僕には好きな人が…った!いたい!」
「泥棒猫のことを思い出したりしちゃだめ。今から気持ちよくしてあげるから…。」
そういうと姉さんは少し手を緩め、しごきはじめる。体を密着して僕の顔を覗き込み、
あちこちにキスの雨を降らせつつ、僕の気持ちのいい場所を見逃さない。

「あ…姉さん…やめて!ほんとまずい!」
「まずいことなんて何もないわ…。気持ちいいんでしょ?素直になりなさい?」
イきそうになったとき姉が手を止める。体への愛撫は続けていておかしくなりそうだ。

「…やめていいのかしら?」
「う……」
「続けて欲しいなら言いなさい。あの女より姉さんのほうがいいって…」
「姉さん……続けて…彼女より…姉さんのほうが…。」
「偉いわね。ご褒美よ。」
「うあああぁあぁぁぁぁ!」
頭が焼ききれるような快楽とともに、信じられないくらい大量の精液が道場を汚した。
僕は彼女を裏切り姉に…屈服した。


654:師弟愛  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/18 18:00:24 lvCpKlRC
「次は貴方が私を気持ちよくして…。」
縛めはとかれても僕は人形のように姉の言葉に頷く。もう抵抗することもできない…。
姉と唇をあわせ、舌を重ね合わせる。姉の端正な顔は熱く火照っており、僕の劣情を
さらに燃え上がらせる。
姉の秘所は既に蜜で溢れていて指で触れると糸を引いた。既に受け入れる
体勢ができている。
「いいよ…。私を犯しなさい。あの女を忘れるまで…」

僕は姉に襲い掛かった。
「…っいたっ………」
膜を破る感覚がわかる。だけど、僕は一切の容赦もなく激しく突き続ける。
敵わない姉、常に上であり続ける姉が今組み伏せられて犯されていると
思うと歪んだ優越感を感じ、それがさらに激しく腰を動かせる。
「…っくうう………ぁ……」
姉の艶かしい声、痛さと快感が混ざった響き…
そして淫らな濡れた腰を打ちつける音だけが静寂の道場に響く。
「……中で……」
「…姉さん…姉さん!」
最後に奥に突き入れ、同時に姉さんの中が僕を締め上げる。僕は分身を放った。
「…っ……ぁぁぁぁぁっ!」

達しても僕は全然、終わりを感じなかった。
「姉さん、まだ彼女を…忘れられない…。今度は後ろから…。」
「忘れるまで…好きになさい。そして、今日からは姉さんを愛するのよ…。貴方は私のもの。」
道場に再び淫らな音が響き始めた。

姉は上の存在。決して僕は勝てない。


655:名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/18 18:01:43 lvCpKlRC
そして暫く沈黙します。
キモウト、キモ姉作品期待してます。

656:名無しさん@ピンキー
07/05/18 18:07:23 eBO3q+PC
GJ!!

657:名無しさん@ピンキー
07/05/18 18:17:17 WjLNlBUa
GJ! しなやかな筋肉で拘束されたい!
しかしソードマスター言われるとどうしてもこんなの思い浮かぶw

最終話 姉と共に すべてを終わらせる時…! ソードマスターキモ姉は、保管庫収録未定です。 
姉「チクショオオオオ!くらえ泥棒猫!新必殺姉毒!」
泥棒猫「さあ来い姉ぇぇ!私は実はそんなに彼が好きじゃないぞぉぉぉ!」
(ザン)
泥棒猫「グアアアア!こ このザ・フジミと呼ばれる四天王の泥棒猫が…こんな年増に…バ…バカなアアアア」
(ドドドド)
泥棒猫「グアアアア」
後輩「泥棒猫がやられたようだな…」
先生「ククク…奴は四天王の中でも最弱…」
妹「姉ごときに負けるとは学校の面汚しよ…」
姉「くらえええ!」
(ズサ)
3人「グアアアアアアア」
姉「やった…ついに四天王を倒したぞ…これで幼馴染みのいる魔龍城の扉が開かれる!!」
幼馴染み「よく来たなソードマスター姉…待っていたぞ…」(ギイイイイイイ)
姉「ど、同棲してるなんて…!感じる…幼馴染みの執念を…」
幼馴染み「姉よ…戦う前に一つ言っておくことがある 彼方は私を倒すのに『トラウマを抑えた写真』が必要だと思っているようだが…別になくても倒せる」
姉「な 何だって!?」
幼馴染み「そして彼方の弟は私より彼方を選んだので家に返した あとは私を倒すだけだなクックック…」
(ゴゴゴゴ)
姉「フ…上等だ…私も一つ言っておくことがある この私に生き別れた妹がいるような気がしていたが別にそんなことはなかったぜ!」
幼馴染み「そうか」
姉「ウオオオいくぞオオオ!」
幼馴染み「さあ来い姉!」
姉の愛が世界を救うと信じて…! ご愛読、ありがとうございました!

658:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
07/05/18 18:30:53 8/2k9bXL
>>655
GJです。

>>657
どこかで見たような・・・GJ?

659:名無しさん@ピンキー
07/05/18 18:32:17 N+a1pphD
持ってくるにこと欠いてそれかwww
「生き別れの弟があんたに攫われていたような気がしたけど別にそんなことはなかったわ!」
と根底を覆す改変かますと思ったが妹のままだったんだな

660:名無しさん@ピンキー
07/05/18 20:38:52 2OI5Ycbj
>>657
腹筋やられたwwwwwwwwwwwwGJ!

661:名無しさん@ピンキー
07/05/18 21:04:01 WjLNlBUa
ソードマスターネタはコンスタントに何処でも受けるなw
それと亀なんだが>>627重い方が落下速度速いのはキン肉マンじゃ常識なんだぜwww

662:名無しさん@ピンキー
07/05/18 21:37:28 Nkmp7emB
ソードマスターは誰にでも何ともいえない懐かしさを感じさせるしな

663:名無しさん@ピンキー
07/05/18 21:52:04 z5Za9H1u
>>657
GJ
妹殺してるwwwwwwwww

664:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
07/05/18 22:05:10 8/2k9bXL
ここで、
ソードマスターネタに和むお兄ちゃん達の背を見詰ながら嫉妬に歯ぎしりするキモウトの気分で、
空気を嫁ずに書く当てのないネタ(設定・プロット?)を投下してみるテスト。



仮題:「妹姫」


あらすじ

桜の春。
旅立ちと出会いの季節に風が運んできた手紙には、再会の兆しが薫っていた。
いつからかの探し人。
遠い過去に生き別れた、たった一人の妹。父と母を失った僕に、唯一残された血の繋ぐ家族。
暖かな予感が身を撫でて行く。

ただ。
僕と彼女の間が引き裂かれてより十と幾らか。
人の身に歳月は長く、永く。
辿り着いた先は国主の住まう城。
時を越えた再会の中で抱き締めたその体は、いつの間にか一国の姫となっていた。

彼女は笑う。
別れの年月が重くした期待に応えられない僕を、それでも大切だと苦笑しながら。
彼女は言う。
美化された記憶の姿を否定する僕を、それでも好きだと見詰めながら。
彼女は告げる。
身分も何もかも違いすぎる僕を、それでも離さないと手を握って。

──桜の下には死体がある。

かつて知恵を貸した剣客に、同じ畳の上で筆を取った同門の才女。
城下に降り積もる花弁のように連なっていく再会の中で、僕は儚い幸せに微睡んでいた。

家族だからこそ、妹の気持ちに気付けないまま。
兄妹だからこそ、妹の気持ちに応えられぬまま。

短く脆い幸福が、既に散り始めているとも知らずに。

城。
門に閉ざされ、堀に隔てられ、塀に遮られた領域。
その中で起きた惨劇を知らない民達は、いつしか彼女をこう呼んでいた。
妹である姫。


即ち『妹姫(まいひめ)』、と。


────来年もまた桜が咲く。散った命を根で抱きながら、赤い赤い血を吸って。

665:名無しさん@ピンキー
07/05/18 22:05:55 wv9Qr/iM
>>657
まそっぷwwwww

666:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
07/05/18 22:07:43 8/2k9bXL
しかしながら、
これ自体○-HIME見て思いついたネタという話。
あれは上手くすれば素晴らしいキモ姉ですね。

どちらにせよ、今やっているものも仕上げずには書けませんが。

誰かー、(これで)書いて書いてー!

667:名無しさん@ピンキー
07/05/18 23:02:28 kMEeHKjG
まぁ、なんだ。
変名おじさんは雑談の時はコテを外した方が、余計な波風が立たなくていいぞー。

668:名無しさん@ピンキー
07/05/18 23:42:40 8/2k9bXL
>>667
ご忠告痛み入ります。
では、次の投下までは名も無いキモウトスキーに戻りますので。
ご機嫌よう。

669:名無しさん@ピンキー
07/05/19 02:41:04 bFRHuVD1
>>657
ちょw ギャグマンガ日和禁止w

670:名無しさん@ピンキー
07/05/19 08:20:39 GGDyEGHd
>>649のソードマスターのとこで何人か反応しただろうな~とは思っていたが
まさか本当にネタにするなんてw>>657GJ!






しかしこんなすばらしい漫画を打ち切りにするなんて馬鹿だなぁ

671:名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/19 18:29:26 o8sV2YqM
664を元に長編行きます。
初挑戦の三人称。全然進まない。

今回は序章のみ。次からは書き溜めてから投稿します。

672:名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/19 18:30:29 o8sV2YqM
春─久しぶりに帰り着いた故郷の城下町は昔と変らぬ賑わいを見せている。

国を離れて十余年、二度と帰れぬと考えていた故郷の地を地味ながらも涼やかな顔、
目に知性を感じさせる青年─八神清治(やがみきよはる)は踏みしめていた。

清治はこの国には戻れぬ事情があった。
先穂之国の当主であった父、大上清輝が逝去した際に本来ならば清治が後を
継ぐことになっていた。しかし、当時清治は体が弱く、国も不安定な状態で
あったために優秀な叔父である大上信輝が後を継ぐこととなった。

そうなると清治の立場は微妙なものとなり、幼子が謀反の生贄とされることを嫌った
叔父、信輝の手により死んだものとされ、懇意であった隣国にある智泉寺へと預けられた。

しかし、今年の春に国内の事情が変った。
叔父である信輝に嫡男が生まれず、高齢となったために清治に祖国への帰還が
求められたのだ。手紙には、謝罪と帰還の要請とともに妹からの手紙が添えられていた。

───兄上にお会いできる日を心より楽しみにしております。───

「再びこの国に戻るときがくるとは……ね。」

寺での生活には特に不満はなかった。住職である智水上人はあらゆる学問に
博学であり教えを受けていると退屈することはなかったし、住職を尋ねて様々な
客人が来ることもあった。
中でも先穂之国出身の才女とは、二年ほど滞在し机を共にして学問を学んだ。
彼女の鋭い視点は清治の考え方に大きな影響を与えた。


673:妹姫  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/19 18:31:27 o8sV2YqM
「叔父上、お久しぶりです。清治──ただいま戻りました。」
「よく戻った。長旅ご苦労だった。重臣たちにはお主のこと、伝えてある。
 だが、暫くは大上清治ではなく八神清治としてわしの補佐をしてもらう。
 後継者としてではなく、まずは一人の男として国のことを学んでくれ。」
「承知いたしました。信輝様。必ずやご期待に答えてみせます。」

国主の間において対面と挨拶を終えると、清治は城の門へと向かった。
そこは彼がこの国と一度別れを告げた場所であり─この国の真の主とも崇められている
国より遥か古い樹齢を持つ先穂之桜の咲く場所である。
そこには艶やかな黒髪、透けるような肌の美しい少女が立っていた。
そして二人は再会する。

「兄上様…お会いしとうございました。もう二度と…私は兄上様の側を離れませぬ。」
「舞か…いや、舞姫と呼ぶべきか。美しくなったな。」

十余年ぶりに再会した兄妹は咲き乱れる満開の桜の元、お互いを抱きしめる。
二人の意味の異なる抱擁…片方は兄妹への親愛の情。片方は恋しい人への思慕の情。
───そして、狂った歯車は動き出す。


674:名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/19 18:34:51 o8sV2YqM
次は明々後日を目処に書き溜めます。

675:名無しさん@ピンキー
07/05/19 19:07:23 2LaklF7O
>>674
wktkしながら待っているぜ

676:名無しさん@ピンキー
07/05/19 20:10:47 szomnZWr
キモヒメもナイスだが才女が気になるぜ…

677:名無しさん@ピンキー
07/05/20 01:41:56 NVqwXLnC
作者のみなさんGJです。
でも、たまにはお前さんといもうとのことも思い出してあげて下さいw

678:名無しさん@ピンキー
07/05/20 03:30:15 8c9pTDkA
投下します

679:日記
07/05/20 03:31:21 8c9pTDkA
好奇心。
人は皆、好奇心を持っているものだ。
目の前に日記が置いてあれば読みたくなる。

場所は妹・麻奈の部屋。
別にやましい思いがあったわけじゃなく、今日の夕飯をどうしようかと聞きに来ただけだった。
だが、部屋を覗いても妹の姿はなかった。
いつも夕方には家にいるはずなのだが、今日に限って。
部屋を出ようとすると机の上にある日記帳に目が入った。
日記帳は、妹が昔からつけてきたものだ。
人の日記なんて見るものじゃないが、何故か気になった。
俺は最低なことだと思いつつ最初のページをめくった。

――――――――――――――――――


680:日記
07/05/20 03:32:13 8c9pTDkA
96ねん4がつ7にち

きょうから まなは しょうがくせい
だから きょうから にっきをつけてみました
しょうがくせいになって いちばんうれしいことは だいすきな おにいちゃんと
いっしょに がっこうにいけることです
きょう いっしょにてをつないで がっこうに いきました




97年5月11日

お兄ちゃんとおへやがべつになった。
まなはいやだって言ったのにお母さんたちが大きくなるからって。
ひとりでねるのはいや。お兄ちゃんといっしょがいい。


97年5月12日

きのうお兄ちゃんのおへやに行ったらいっしょにねてくれた。
やっぱりお兄ちゃんもまなといっしょがいいんだよね。
これからもいっしょにねようね、お兄ちゃん。




2000年3月15日

お兄ちゃん 卒業 いや






681:日記
07/05/20 03:33:11 8c9pTDkA
02年4月9日

今日からお兄ちゃんと同じ中学校。
久しぶりにいっしょに学校へ行った。
手をつなごうとしたら恥ずかしいからいやだってお兄ちゃんは言った。
なんでだろ?
恥ずかしがる必要なんかないのに。


02年4月10日

今日お兄ちゃんとお風呂に入ろうとしたらもう中学生なんだからだめって言われた。
お兄ちゃんといっしょに入りたいのに。
いやだよ。


02年4月11日

昨日の夜いっしょにお風呂に入れなかったからいっしょに寝ようとお兄ちゃんの部屋へ行った。
でもそれもだめって言われた。
怖い夢を見たって言っても寝させてくれなかった。
わたしはお兄ちゃんとずっといっしょに居たいだけなのに。




03年3月18日

お兄ちゃん 卒業 いや




682:日記
07/05/20 03:34:33 8c9pTDkA
05年4月7日

ようやく高校生。
これでまたお兄ちゃんと学校へ行ける。
今日は登下校中ずっとお兄ちゃんと腕を組んで歩いた。
またああしてずっと一緒なら、もう他に何もいらない。




05年4月11日

今日いきなり上級生に呼び出されて告白された。
クズに何を言われようがどうでもよかったが、たまたまお兄ちゃんに見られてしまった。
お兄ちゃんはこのことについて家で「彼氏でも作って高校生活を満喫しろよ」と言った。
お兄ちゃんは私が告白されて何とも思わないの?
私だったらお兄ちゃんが告白されたと知ったら告白してきた奴を殺しちゃうよ?
そのくらいお兄ちゃんのこと大好きなんだよ?




05年4月20日

今日 ありえない 聞いた
お兄ちゃん 付き合ってる
うそ そんなの

05年4月21日

見た 女を 売女
お兄ちゃんに触るな 見るな 消えろ
殺してやりたい
お兄ちゃん わたしのもの

683:日記
07/05/20 03:35:45 8c9pTDkA
05年4月22日

明日からお父さんとお母さんは出張。お兄ちゃんと私、二人っきりだ。
明日はお兄ちゃんにたくさんいいことしてあげよう。
泥棒猫に惑わされたのは今までしてあげれなかった私のせい。
でも私、勇気を出してみる。
ちょっと初めてだから怖いけど、お兄ちゃんと一緒なら……

――――――――――――――――――

……見てはいけないようなものを見た気がする。
頭が痛い。冗談であって欲しい。しかし日記にこんなこと冗談で書くか?
いや、冗談というレベルの文章じゃない。
たしかに麻奈には昔からブラコンだとは思っていた。
今もなお、一緒に風呂に入ろうとしたり、寝ようとしたり。
しかし、ここまで酷いとは……。
俺はこの場から早く立ち去ろうと思い、読んでいた日記帳を机に戻そうとした。


「お兄ちゃん」


日記帳を机の上に置いたと同時に背後から声がした。

妹だ。

「ひどいよ、お兄ちゃん。私の日記見るなんて。でも……」

妹は俺を背後から抱きしめる。

「うれしいな。私の全部、見てもらえて」

妹の胸が背中にあたり、妹が呼吸するたびに胸の感触が伝わってくる。
やわらかく、暖かい。と、同時に強烈な寒気がした。

684:名無しさん@ピンキー
07/05/20 03:41:18 8c9pTDkA
以上です
昔書いていた没ネタをダイジェストにして投下しました
続きを書こうとしていたためか中途半端な終わり方でごめんなさい

685:名無しさん@ピンキー
07/05/20 03:57:36 gnRM8zZ0
>>684
GJ!
続きとかすごい気になります。

686:無形 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 04:04:53 R3FFDg1O
皆様GJで御座います。
さてさて、投下ラッシュに続かせていただきます。
今回も長いので、2分割。
二回目の投下は5時以降になるかと思います。

687:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 04:07:41 R3FFDg1O
――――――――――――――――――

部屋の中は暗い。
まるで、籠の中のようだ。
ここは理理の部屋。
まるで飾り気の無い、気配のみが女の子の私室であると知らせる閉鎖空間。
ベッドの上では一人の少女が眠っている。
月ヶ瀬理理。
僕の―最愛の妹。
僕はその傍らに座り、その様子を眺めていた。
「お兄ちゃん・・・・」
妹の寝顔は悲哀に満ちたものだった。
お兄ちゃん、お兄ちゃんと何度も何度も呟いて魘される。
さっきからその繰り返しだ。

「俺、家を出ようと思うんだ」

つい先ほど、僕は妹にそう告げた。
その時の妹は、まるで世界そのものに絶望したかのような、呆けた顔をした。
「おにぃ・・・・ちゃん・・・・い、いま、なんて、云ったの・・・・?」
問い返す妹は、崩壊した笑顔。
莫迦なことを聞いた。そう信じようとして、失敗したような。
「ねえ、うそ・・・・だよね?聞き間違いだよね?お兄ちゃんが・・・・この家を・・・る、なんて。
何かの間違いだよね?おにぃちゃんが、私の許からいなくなるなんて・・・・」
よろよろと後ずさり、
「ねぇ・・・・?そうだよね、お兄ちゃん・・・・」
よたよたと僕の前に来る。
悲壮な。
どこまでも悲壮な表情。
慰めてやりたい。抱きしめてやりたかった。
でも、それは出来ない。
それをしてしまえば、妹はまた僕から離れなくなるだろう。
そんなことは駄目だ。
僕は理理を愛している。
だから、誰よりも幸せになって欲しい。
そのためには、兄離れさせなければいけない。
月ヶ瀬真理と云う籠の中から、巣立たせなければいけないのだ。
だから僕は首を振る。
精一杯の拒絶をつき付ける。
「理理。俺は家を出る。まだ父さんたちには云ってないけど、多分賛成してくれると思うんだ。
そしたら、可能な限り早く、この家を出るつもりだ」
「うそ・・・・」
「本当だ」
「どう・・・して・・・・?どうして、出て・・・・ぃく、なんて・・・」
「お前は俺に懐きすぎている。俺達はもっと距離をとるべきだ」
「いや・・・」
妹は耳を塞ぐ。
けれど僕はその腕を引き剥がした。
「や、・・・・・やぁ!!」
「聞くんだ理理。このままでは、多分俺達は駄目になる。だから、これが最良だ。辛いだろうけど、
我慢するんだ。お前ならきっと、それが出来る」
「やぁ、いやぁ!いやだよ!!そんなの出来ないよ!!!知ってるでしょう、お兄ちゃん!!!
理理、昔から一回だってお兄ちゃんのことで我慢できたことなんて無いよ!?お兄ちゃんが傍に
いても、我慢なんて出来なかったんだから!!!だから、だからもしお兄ちゃんがいなくなったら、
私、きっと『壊れ』ちゃおうよぉ!!!ねえ!ねえ、お兄ちゃん!いかないで!いかないでよ!!
この家から・・・・・理理のもとから出て行かないで!!!いなくならないで!!ね?ねぇ?
御願い、お兄ちゃん・・・・!!!!なんでもする、何でもするからぁ!!!!何でも云うこと
聞くから・・・・良い子に、する、からぁ・・・・お、おね・・おね、が、い・・・・っ」
最後の声は掠れていた。

688:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 04:09:26 R3FFDg1O
すでに自力で立つ気力も無いのか、萎えた足は膝を着き、縋るように僕にしがみついた。
「理理、頼むから聞き分けてくれ。お前がそんなんじゃ、俺も安心できない」
「~~~~~っ」
声にならない声をあげて、泣きながら首を振る。
「ぁ・・・!ぃゃぁ!!そん、なの、・・・ぃゃぁあああぁ・・・」
妹は痙攣しながら首を振った。そこにはいつもの穏やかな笑顔も。優しい面影もなかった。
「理理・・・・」
そこまで僕に依存しているのか。
だから。
だから駄目なんだ。
僕は拳を握る。
「理理」
僕はポケットに手を入れた。小さな硬い感触を掴む。
「これは、お前に返す」
縋りつく妹に差し出した。

銀色の円環。

約束の―集大成。
「―ひ・・・!」
理理はびくりと震えた。
声をあげたのではなく、空気がこぼれたのだろう。
「あ・・・・ぁ、ぁ、ああ・・・」
理理は蠕動する。
僕を見ているようで見えていないような。
幽かに首を左右に振って。
大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼし、口からは唾液が垂れ下がっていた。
「俺はもう、お前とはいられない」
そして決別。
その言葉を口にする。
「ひ・・・・・ぁ・・・・・」
パクパクと妹は口を動かし、
「あああああああああァァァァァァぁぁあああああぁぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!!!!!!」
獣じみた咆哮をあげた。
瞬間、僕の足に暖かい感触。
理理が縋りついている部位が、何かで濡れていた。
「理理、お前・・・」
驚いて目を遣る。
妹は―
理理は、失禁していたのだ。
糸の切れた人形のように弛緩する身体。
どさり、という肉の落ちる音。
妹はそのまま気を失っていた。

「・・・・ぉにぃちゃん・・・・ぉにいちゃん・・・・」
泣きながら眠る妹の頭を撫でる。
セミロングの髪はさらさらと腕を掠めた。
「お前は莫迦だ・・・・こんな兄貴に、依存する必要なんてないんだよ」
「ぃかなぃで・・・・いかないで・・・・理理、もっと良い子にするから・・・・良い子になる・・・
から・・・・」
「もっと早く、お前に分からせてあげてたら良かったんだな・・・・」
一番の莫迦者は―僕だ。
もっとずっと前から、理理を自立させてあげるべきだったのだ。
厳しいことを云ってでも、嫌われてでも、巣立ちを応援すべきだった。
僕にはそれが出来なかった。
理理と過ごす何気ない日常。
何も無くて、でも穏やかな繰り返しの日々。
それが暖かすぎて。

689:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 04:12:35 R3FFDg1O
それが楽しすぎて。
甘えてくる妹を。
世話焼きな妹を。
兄想いの妹を。
僕自身が―駄目にした。
「理理」
頭を撫でる。
「ごめんな・・・」
云える事は、唯それだけ。
恨まれても良い。
憎まれても良い。
こんなに兄想いの良い子なんだから、幸せにしてあげなければ。
僕は天を仰ぐ。
窓からのぞく月白は、柔らかな光を注いでいる。
もしも神様がいるならば、ひとつだけ願いを聞いて欲しい。
僕はこの先どれほど不幸になっても良いから、その分、この娘に幸せを与えてください。
こんな風に泣かなくて済むように。
僕といた時よりも、もっと笑顔でいられるように。
穏やかなはにかんだ笑顔。
理理に似合うのは、いつだってその顔なんだから。

どれ程そうしていたろうか。
長くもあり、短くもある時間。
魘されながら眠る理理の頭を撫で続けていると、ポケットがぶるぶると震えた。
こんな状況ゆえか、それがケータイの着信であることに気づくのに、暫くかかった。
四角い液晶の中には、よく知った文字。

月ヶ瀬聖理

そう記されていた。
僕は理理の布団をかけなおすと、自室のベランダに移動した。
「にいさん」
綺麗な。
本当に綺麗な声。
聞きなれて、でも飽きることの無いメゾソプラノ。
その声に、僕は「どうした?」と返した。
「どうしたじゃないよ。にいさん、コトリにはもう云ったの?」
問う声は弾んでいる。
「云った?」
「家を出るって話。ねえ、もう云ったんでしょう?云ってくれたよね、にいさん?」
「・・・・・・」
僕は宙に目を馳せる。月白はここからは見えない。
理理は。
妹は今も魘されているんだろうか?泣いているんだろうか?
考えると、自然、声が重くなる。
「―ああ、云ったよ・・・」
「そう・・・!!」
機械の向こう側から、笑い声が漏れてきた。
「云ったの。云ってくれたのね、にいさん。で、どうだった?コトリはどんな顔してた?呆けてた
かな?泣いてたかな?それとも怒ったかな?―ううん、あの女のことなんてどうでも良いか。
・・・・ねえ、にいさん。いつ?いつ聖理の所に来てくれるの?」
「お前の所・・・・・?」
「そう。聖理の所。さっき云ったでしょう?あの家を出て、ここに住めば良いって。そうすることが
コトリの為だって。ねえ、いつ来てくれる?お部屋ならいくらでも空いてるよ?あ、それとも、
聖理のお部屋で一緒に暮らしてくれる?うん。それが良いよね!そうしよう?にいさん。聖理の部屋で
一緒に寝ようよ!ね。決まり。にいさん何時ごろこっちに着く?聖理、寝ないで待ってるよ?」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ、聖理。俺はお前のところには往かないよ」
「―え?」

690:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 04:14:25 R3FFDg1O
「確かに俺は家を出ることになるだろう。でも、それは今すぐじゃないよ。父さんたちに話して、
準備をしてからだ。それに、出来ることなら、理理にも納得して貰ってから家を出たい。
家を出るにしても、お前のとこに厄介になるわけにはいかないよ。多分、一人暮らしになるんじゃ
ないかな」
「・・・・・・・」
「あれ?おい聖理?聞こえてるか?」
突然の沈黙。
故障でもしたんだろうか。
僕は耳を澄ます。
会話をしているであろう従妹の周囲の空気の流れが伝わってくる。
壊れてはいないようだが―
「―なに、それ」
低いメゾソプラノ。
先ほどの・・・・。
従妹の家にいたときの。
指輪を見られたときの。
あの声。
「にいさん、なにふざけたこと云ってるの?にいさんは聖理の傍にいなければ駄目なんだよ?
折角聖理がコトリの呪縛から解き放ってあげようとしてるのに、“来ない”?ふざけないで。
そんなの許せるわけ無いでしょう?にいさんのすべきことは唯2つ!コトリと決別することと、
聖理を満足させること。そうでしょう?どうしてそんな簡単なことがわからないの?ねえ、
にいさん、聖理は今も待ってるの。だから早く来て!にいさんがここに来れば総てが丸く収まるの。
聖理たちは愛し合っているんだから、傍にいなきゃ駄目なのよ!?」
憤怒。
澄んだメゾソプラノから伝わる感情は、唯、それだけ。
(おかしい・・・・)
どうしたというのだろう。
僕が従妹の所へ往くと勘違いするのはまだ良いとしても、この口ぶりはなんだろう。
いつもの聖理なら、「ねえ、来てよ、にいさん」と、『お願い』してくると思うのだが。
今の聖理はもっとこう、何かが違う。
僕が往くのが当然で、そうならないことを怒っている。
聖理といい、理理といい、なにか最近は様子が変だ。
僕は機械の向こう側にいる従妹に「おちつけよ」と促した。
「落ち着く?何云ってるの、にいさん。にいさんが聖理の傍にいないからこうなってるのに!
にいさん云ってることがおかしいよ。ねえ、はやく・・・・早く来てよ。コトリなんかと決別してよ」
「聖理」
僕はケータイを強く握る。
「お前どうしたんだ?どこか変だぞ?大体、理理と決別なんて出来るわけ無いだろう?俺はあいつに
自立して貰いたいだけで、縁を切りたいわけでも何でもないんだから。兄妹って、そんなものだろう?
離れていても、支えあえる。それが正しいあり方だと思う。お前とだって離れていても、上手くやって
いけたじゃないか」
「違うよ!!」

691:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 04:15:54 R3FFDg1O
怒声。
電話越しにメゾソプラノがびりびりと震える。
「聖理とにいさんは愛し合ってる。重要なのは、そこだけでしょう!?大切だから傍にいて、愛して
いるから、共にあるの。だからにいさんはここに来なきゃ駄目なの。“離れていても”?離れていたら
寂しいだけじゃない。おかしいじゃない。愛し合う男女は近くにいる。それが自然でしょう?」
違う。
僕と聖理の会話には、なにか決定的な齟齬がある。
まるっきりズレている。
そんな感じがした。
「聖理」
「・・・・・・」
「なんにせよ、お前の望む結果にはならないと思う。家をで、」
「―そう」
静かな。
先ほどの怒声とはうって変わって静かなメゾソプラノが言葉を遮る。
「そうなんだ。わかったよ、にいさん。にいさんはまだ、コトリに縛られているんだね」
「聖理・・・・?」
「それならそれでも良いよ。・・・・聖理にも、考えがあるから」
切れた。
一方的な決断。
一方通行な会話。
僕は沈黙したケータイを見つめた。
「怒らせちゃったのかな・・・・・?」
明日にでもフォローを入れておこう。
そう呟いて天を仰いだ。
掛け違えたボタンは、どこまで影響するものだろう。
かけがえの無い妹二人を想起して、唯ちいさく吐息した。


692:無形 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 04:18:28 R3FFDg1O
規制回避でいったん終了します。
5時半以降なら、大丈夫かなあ・・・・

693:名無しさん@ピンキー
07/05/20 04:32:49 U38M3YhI
ワクワク

694:名無しさん@ピンキー
07/05/20 04:44:31 ME+jpHYf
さあいよいよキモくなってきました!
てんぱり具合が凄いねw楽しみ

695:名無しさん@ピンキー
07/05/20 04:47:35 TRtmXLz3
うおおおおお刃傷沙汰の予感!!!

696:名無しさん@ピンキー
07/05/20 05:02:37 GIBA41Jz
>>684
かゆうま期待してたのに・・・

まぁキモィからおkか、お疲れ
>>686
おまいもキモイwwwwwお疲れwww

697:無形 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:00:52 R3FFDg1O
では、続きの投下をします

698:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:03:00 R3FFDg1O

目を覚ます。
6時半。
いつも通りの起床時間。
僕は身支度を整えてキッチンに入る。
妹は、そこにいるだろうか。
一瞬躊躇するが、意を決して入室する。
すると。
「あ、お兄ちゃん、おはよう」
出迎えるのは、妹の笑顔。
いつも通りの風景。
何百。
何千と繰り返された朝のやり取り。
「・・・・ああ、おはよう」
挨拶をして、席に着く。
よかった。
どうやら落ち着いてくれたようだ。
僕は妹を見る。
いつもと変わらない、今まで通りの―

否。

僕の動きが止まった。
理理はいつもどおり。
それはかわらない。
『まったく変わらず』、『その手には』、『銀色の指輪が』、『嵌っていた』。
「理理・・・・」
「待っててね、お兄ちゃん。今日は腕によりをかけてつくるからね」
理理は腕をまくる。
その言葉の通り、並べられた食材は朝食と呼ぶには妙に豪華であった。
妹の手には小瓶がひとつ。
見たことのない『小瓶』。
いつもいれる『隠し味』のそれとは、違う瓶。
理理は瓶のふたを開け、傾けて、そこで動きを止める。
「・・・・ねえ、お兄ちゃん」
「・・・・なんだ?」
僕の目には指輪。
唯それだけが映る。
「私、昨日とても嫌な夢をみたの」
瓶を傾け、止まったままの理理が云う。
ここからは表情が読めない。
「・・・夢?」
「うん。夢―ううん、悪夢、かな?」
アルトボイスは昏い。幽かに瓶を持つ手が震えているように見える。
どんな夢だ?僕はそう問おうとして、やめた。
昨日の―
あのことに類する内容だろうから。
「あのね」
「・・・・・」
「その悪夢って、お兄ちゃんがこの家を出て行こうとする夢なんだよ?おかしいよね、そんなこと、
あるはずないのに。一緒にいようって、お兄ちゃん云ってくれた筈なのに。夢の中のお兄ちゃん、
そんな変なこと云うんだよ?その中でね、私は云うの。『お兄ちゃん、往かないで』って。なのに、
なのにね、夢の中のお兄ちゃんは『出て往く』って云ってきいてくれないんだよ?酷いよね、
お兄ちゃんは、理理のお願いなら何でも聞いてくれてたはずなのに、理理が泣いていれば、必ず
慰めてくれていたのに。なのに、そのお兄ちゃんは理理を傷つけることばかり云うんだよ?
おかしいでしょう?」
「・・・・・・・」
妹の声には抑揚が無い。
淡々と、感情も無いように“悪夢”を語った。

699:名無しさん@ピンキー
07/05/20 06:03:06 U38M3YhI
支援

700:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:04:52 R3FFDg1O
「理理」
僕は立ち上がる。
「理理、それは夢じゃない。そんなこと、お前だって判っている筈だろう?」
「―そう」
理理の身体の揺れが大きくなる。
これは―笑い?
妹は笑っているのだろうか。
「そうなんだ、本気なんだね、お兄ちゃん」
ぶるぶる。
ふるふる。
傾いた『小瓶』が揺れる。
「ああ、本気だ」
僕は云った。
それが最良だと信じて。
「―そっか」
妹は振り返る。
そこにあったのは、笑顔。
少し困ったかのような、穏やかな笑み。
「それじゃあしょうがないよね」
いつもの、妹の微笑だった。
「ごめんね、お兄ちゃん。私、今までお兄ちゃんの迷惑かけてたんだね。私はお兄ちゃんが大好き
だから、重荷になるほど甘えすぎてたんだね」
深々と頭を下げた。
「あ、いや・・・」
違う。
昨日とは違って、聞き分けの良い妹。
いつもの、穏やかで理解ある妹の姿。
「本当にごめんなさい。私、これからはもっと良い子になるね。お兄ちゃんに負担をかけないように、
距離をとるよ。お兄ちゃんがおうちから出て行くなら―寂しいけど、我慢する。それでお兄ちゃんの
心配事がなくなるなら、全力で応援するから」
「理理・・・」
不覚にも涙が出そうになった。
漸く。
漸く理解してくれた。
これできっと、僕達は以前のように戻れるはずだ。
妹が距離を取るのは少し寂しいけれど、それで良いんだ。
仲の良い、いつもの兄妹に戻れるんだ。
(理理が聞き分けてくれるなら、無理に家を出る必要も無いのかもしれない)
妹は微笑み、そして指輪をはずす。
「これは、もういらないね。だって、これは“永遠に傍にいる”って云う約束だもの。“永遠”を
誓った二人だけがつけるものだもんね」
にこにこと、何かを吹っ切たかのような笑顔。
憑き物が落ちたみたいに、理理の顔は晴れやかだ。
「それじゃあ、朝ごはん作ろうかな、お兄ちゃん、いっぱい食べてね?」
「ああ、そうするよ」
頷くと、理理も微笑み返して調理を再開した。
先ほどの『小瓶』。
いつもとは違う『小瓶』を混ぜて往く。
その姿を見て、僕は漸く安堵の息を吐いた。

身支度を整えに部屋に戻る。
いつもならブラシをかけるのも、ネクタイを結ぶのも、理理がやってくれていた。
けれど今日からはそれがない。
でも、それで良い。
寂しさと嬉しさが混じった、複雑な感情だ。
「よかった、本当によかった」
妹の自立。
それが僕の願いだった。

701:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:07:00 R3FFDg1O
しっかりしているはずなのに、どこか危なげな理理。
その理理が自分の力で歩いて往けるようになるまで、傍にいてやるつもりだった。
だから恋人も作らなかったし、一緒にいてやることも多かった。
(でも、それは間違いだったんだな)
大切なのは、妹に自覚して貰うことだったんだ。
僕はホントに莫迦だ。
ずいぶんと回り道をした。
でも、これからはきっと上手く往く。
あいつがどんな人生を歩んでも、全力でそれを応援してやろう。
それが兄、貴・・・・と・・・し・・・・
「あ、れ?」
へんだな。
僕は支度する手を止める。
・・・・熱い。
なんだか、身体が熱い。
妙に火照る。
「これ、は・・・」
僕は荒い息を吐き始める。
これは、男としての、生理現象、の、ときの、火、照りか・ただ。
「なんで、きゅぅに・・・」
はぁはぁと息を吐く。
(やばい・・・・)
身体の一点に血液が集中する感覚。
異常に脈打った心臓が、ココロを揺さ振って往く。
「はぁ・・・はっ・・・なんで・・・・・」
急に、こんな・・・・。
(まずい、まずい、ぞ)
シタイ・・・・。
この欲望を開放したい。
その事しか考えられなくなる。
「くそ、こ、んな・じか・・・・んに・・・」
だめだ!
とにかく“これ”をなんとかしなければ!
(それにしたって・・・・)
「はんぱじゃ・・・・・な、ぞ、これ・・・は・・・」
無い。
今までに無いほどの、強烈な性欲。
シタイ・・・・。
シタイ・・・・・。
それだけが、頭に響く。
僕はその場にへたり込んだ。
ハヤク、早く、ださないと。
きっと僕は、気が狂ってしまう・・・・!!
引きちぎるようにズボンを下ろし、男のものに触れる。
「うっ・・・あ・・・・!!」
それだけで。
それだけでイキソウナくらいの快感。
敏感になり過ぎた身体。
とけて往く理性・・・。
(どうしたんだろう・・・?)
いや、どうでも良い・・・・!
とにかく。
とにかくこの欲望を―
「お兄ちゃん」
コンコン。
扉を、叩くおと・・・・。
「理、理・・・」
妹の声。
雌の、声。

702:名無しさん@ピンキー
07/05/20 06:08:33 U38M3YhI
ワクワク

703:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:08:55 R3FFDg1O
(オンナだ・・・)
あの扉の向こうに、オンナがいる・・・。
「あ、う・・・こと、り・・・・」
「お兄ちゃん、入っても良いかな?」
ハイッテコイ・・・。
「駄目だ!!」
「―え?」
ハヤクハイッテコイ・・・。
「お兄ちゃん?どうかしたの?」
心配そうな妹(メス)の声・・・・。
(駄目だ・・・・!!いま、今入ってこられたら・・・・)
「お兄ちゃん、入るよ?」
「だ、駄目だっ!!」
くるな・・・・。
オンナ。
来ちゃ駄目だ・・・。
オンナ。
オンナ。
ホシイ。
「お兄ちゃん、もしかして、まだ怒ってるの?昨日のことは、謝るから、だから、だから・・・」
ちガゥ・・!そうじゃ・ない!
今は、(オンナ)まずいんだ。
「とに、かく・・・・あ・ちへ、いけ・・・・!」
はぁはぁと、僕の獣じみた息遣いが・・・・(オンナ)・・・。
「お兄ちゃん、もしかして、どこか悪いの!?」
「ヤメロ・・・」
そして、扉は開かれた。
「お、おにい、ちゃん?」
ハイッテキタめすは驚いている。
そレハソぅダロう。
ズボンを下ろしたまま、苦しんでいル兄貴をまのあたりにすれば。
「お、お兄ちゃん!?」
駆け寄って、僕の肩に手を添える。
良い匂いがした。
メスのにおいだ・・・・。
(柔らかい・・・・)
妹(メス)の手の感触。
「お兄ちゃん、どうしたの?しっかりして?」
さわったら(壊したら)、きっと、(キモチイイ―)
「ぁ・・・・うあ・・・」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・!!」
シタイ。
このメスと。
理理とシたい!!!
肩に乗った小さな妹(メス)のうでをつか、む。
「お、お兄ちゃん?」
(駄目だ・・・!)
僕は理理を突き飛ばす。
「きゃっ・・・!」
非力で軽い妹は簡単にしりもちをついた。
その刹那、スカートのなかの下着が目に映った。
ホシイ。
欲しい・・・・。
シタイ。
したい・・・。
「お、おにいちゃん・・・」
「で、出て往ってくれ・・・!」
力一杯叫んだ。
けれど、掠れた声は呻きの様に聞こえた。

704:名無しさん@ピンキー
07/05/20 06:09:26 1vQQ530U
全裸で待った甲斐があったぜ!
全力支援っ!!

705:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:11:15 R3FFDg1O
「お兄ちゃん・・・・」
理理は立ち上がる。
そして、出口ではなく、僕のところへ遣ってくる。
「お兄ちゃん、苦しいんだね?」
ふわりと。
妹(メス)は僕を抱きしめる。
「ぅ・・・あ・・・ヤメ・・・・っ」
「良いんだよ、お兄ちゃん、無理しないで?」
天使のように囁いて、メス(妹)は僕をなぜる。
「苦しいよね?辛いよね?でも安心して?理理は、“お兄ちゃんの理理は”ここにいるんだよ?」
ふぅっと、メス(妹)は僕の耳に息を吹きかける。
「はぁ・・・・っ、はぁ・・・・」
おんな、オンナ。
女。
おんな。
女。
女。
「やめ・・・・・・てくれぇ・・・っ」
僕は(オンナ)泣いていた(シタイ)。
オンナ、オンナ、おんながここにいる。
「良いよ?お兄ちゃん・・・」
理理はそうして、僕の頬に口付ける。
「ぁ・・・・ぁあぁ・・・」
オンナ、おんな。女。
オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、
オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、
オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、
オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、
オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、
オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、
オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、オンナ、
理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。
理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。
理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。
理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。
理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。
理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。
理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。
理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。理理。
「ァ。あぁああぁぁぁああぁああっぁぁぁああぁぁあぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁ!!!!!」
叫んでいた。
僕は力任せにメスを押し倒し、制服を引きちぎった。
「お、おにいちゃん?」
「アアアアアアアアァアアアッぁああああ!!!理理!ことりぃぃぃぃい!!」
「い、いやぁぁあぁ!やめて!お兄ちゃん、やめてぇぇ!!!」
妹が―理理が泣き叫んでいる。
(泣き叫んでいる?)
泣き叫ぶって、こんなにウレシソウナかおをす・ルものだロウカ?
意識が性欲で塗り替えられる間際。
僕には理理が笑っていたように見えた―。

「う・・・あ?」
気だるさの中で目を覚ます。
身体に力が入らない。
(なんでこんなに疲れてんだ?)
部屋の中は暗い。
今は、夜だろうか。
僕は体を起こした。
「うわ!」

706:名無しさん@ピンキー
07/05/20 06:12:50 U38M3YhI
リアルタイム支援

707:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:13:15 R3FFDg1O
自分の姿に驚く。
服を何一つ纏っていない。
(な、なんでこんな)
状況を思い出そうとして―
「あ・・・あああ・・・・」
僕は眩暈に襲われた。
部屋の中は饐えた匂いが立ち込めていた。
そこかしこには粘ついた液体がへばりついている。
月明かりの中で目に入る床には、ちぎられた衣服。
「あ・・・あ・・・・・」
それで。
それで僕は嫌でも思い出してしまった。
「こ・・・・理理・・・!!!」
僕は―
僕はなんてことを―!!!
(いや、そんなことより・・・・!!!!!)
記憶を失う瞬間に、泣き叫んでいた妹の姿を思い出す。
「ことりっ!理理!」
いない。
この部屋に、妹の姿は無い。
「う・・・あ・・・」
よろめきながら電気をつける。
「―ひ・・・!!」
そして、絶望した。
白濁した液体の中に。
真っ赤な―
真っ赤な純潔の証があった。
「あ・・・・・・」
僕はよろめく。
背中が壁にぶつかり、しりもちをついた。
ここで―
ここで妹は、実の兄に犯されたのか・・・!!
頭が真っ白になる。
視界がぼやけて、思考が狂う。
なんという―
なんという精液の量だろう。
いったいここで何時間・・・・どれほどあの娘は穢されたのだろうか?
「―うっ」
胃から何かがこみ上げてくる。
僕は慌ててベランダに出て、
「う゛ぇぇぇええええええ!!」
吐いた。
泣きながら何度も、胃の中のものを逆流させた。
はぁはぁと荒い息遣いで振り返る。
喉がひりひりと痛い。
見れば見るほど、この部屋の悲惨さがわかる。
胃はもう空っぽなのに、僕はまた嘔吐いた。
「こ・・・理理・・・・」
あの娘は。
妹はどこにいるのだろう・・・・。
実の兄に穢されて。
この汚物の中から、どこへ往ったのだろう。
乱暴に服を着て、よろよろと歩き出す。
一歩。
二歩。
歩くことは、こんなにも大変なのか。
部屋を出る。
すぐ傍には、妹の部屋が在る。
扉から光は漏れていない。

708:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:14:55 R3FFDg1O
電気がついていないのだ。ここにはいないのだろうか?
僕はそれでも恐る恐るノブを捻った。
「―あ・・・・」
「来てくれたんだね、お兄ちゃん」
僕は呆ける。
妹は。
理理はそこにいた。
月明かりに照らされながら、椅子に腰掛ける妹は、純白のドレスに身を包んでいた。
いつだったか、余所行きのために両親が買ったドレス。
まるで花嫁衣裳のように繊細で、綺麗な白の装飾。
レースのヴェールを頭に乗せて、白いコサージュで飾りをつけて。
薄く化粧をして、微笑して。
あんなことのあとなのに。
理理があまりにも綺麗だったから、その姿に見蕩れた。
「こと・・り・・・」
僕はよろよろと妹の前まで歩き、がくりと膝をついた。
「理理・・・お、俺は、俺は、お前に・・・・」
思い出すと、吐き気と共に涙が出てくる。
理理は「うん」と微笑んで、僕の頭を抱いた。
「そうだよ、お兄ちゃん」
柔らかくて、とても良い匂いがする。
「私はね、お兄ちゃんに犯されたの」
「―っ!!」
身を竦ませる。
そうなのだ。
僕は妹を、この手で―
「初めてだったのに。止めてって泣いたのに。それでもお兄ちゃんは止めてくれなかったんだよ?
ねえ、今が何時かわかる?もう、9時だよ?お兄ちゃん、朝から晩まで、理理のことを攻め立てたの。
どれだけ苦しかったかわかる?どれだけ痛かったかわかる?一番大好きで、一番信じていたひとに
裏切られ、穢されたの。その意味がわかる?」
「あ・・・あああ・・・あああああぁ・・・」
僕は泣いた。
聞こえてくる妹の声はどこまでも柔らかい。
「一杯―いっぱい“だして”くれたよね。理理のなかに。朝からずっと注がれ続けたんだもの。
きっと、妊娠しちゃうよね」
妹はそう云って下腹部を撫でる。
「ねえ、お兄ちゃん。なにか云う事はないの?」
「あ・・・・お、俺、は―」
がっくりと手を床につけた。
慟哭ばかりが胸の中を渦巻く。
「お、俺は、お前にどう償えば・・・・・」
「償う?」
妹は呟く。
「ねえ、お兄ちゃん、わかってる?“償い”なんて出来ないんだよ?お兄ちゃん、自分がどんなこと
したのかわかっているの?」
「う、あ・・・」
理理は再び僕を抱きしめる。
「私、もうお嫁にいけないんだよ?そういう身体にされたの。お兄ちゃんが奪ったのは、純潔だけじゃ
ない。理理の未来も!幸福な人生も!なにもかも!全部駄目にされたんだよ!?」
「あ・・・・」
絶望する。
涙で総てが真っ暗になった。
「ことり・・・理理っ・・・。ごめん・・・ごめんよ・・・・。あ、謝って済むことじゃないって、
わかってる。お、俺は、お、お前に・・・お前に・・・」
一番幸せになって欲しかった肉親の人生を、僕自身が破壊したんだ・・・・!
「ゆ、許してくれ・・・。お、俺は、どうしたらお前のことを癒せる・・・?なんでも、なんでも
する・・・。今すぐ死ねっていうなら、そうする・・・。だ、だから・・・・」
「癒す?」
理理は僕をじっと見つめる。

709:籠の中 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:16:21 R3FFDg1O
「そうだね。理理は傷ついたの。一生癒えない傷をつけられたの。だったら、お兄ちゃんは責任を
とってくれなきゃ。癒えることの無い私の傷を、永遠に傍で舐め続けなきゃいけないの。それが
贖罪。それが断罪だよ?私はもう、結婚することも出来ないんだから、お兄ちゃんがかわりに
ならなきゃいけないの。“永遠に”“私の傍で”罪を償うのよ?」
僕は頷いた。
それ以外の選択肢はなかった。
「ふふっ。じゃあお兄ちゃん、これ」
妹の白い小さな掌の上には、二つのリング。
総ての発端となった、あの指輪があった。
「これ、は・・・」
「云ったでしょう?“永遠を誓う”“約束”だって。なら、その証をつけないと」
理理はひとつ。
指輪を僕に手渡した。
「お兄ちゃんには理理が嵌めてあげる。だからお兄ちゃんも理理に嵌めて?」
悠然と微笑んで、左手を差し出した。
僕もそれにならう。それ以外に無い。

「汝、月ヶ瀬真理は月ヶ瀬理理を生涯の伴侶とし

良しにつけ悪しきにつけ

富めるときも貧しきときも

病めるときも健やかなるときも

死が二人を分かってもなお

愛し慈しみ

貞節をまもることを誓いますか?」

「・・・・・・・誓い、ます」
妹の指にリングを絡める。
「私も、誓います」
僕の指にリングが絡まる。
「これでお兄ちゃんは“私のもの”だね」
理理は笑って僕に口付ける。
僕はたぶん、泣いていた。
泣きながら、それを受け入れた。

こうして、僕と理理の間には『永遠の約束』が結ばれたのだった。

710:無形 ◆UHh3YBA8aM
07/05/20 06:18:13 R3FFDg1O
投下ここまでです。
上手く纏まれば次回。そうでなければ次々回で終了する予定です。

それにしても、朝から人多いですねw。
支援多謝です。
ではまた、いずれ

711:名無しさん@ピンキー
07/05/20 06:21:00 UhI+qU85
いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおう!!
最大級の賛辞をあなたに!!

712:名無しさん@ピンキー
07/05/20 06:22:58 U38M3YhI
よっしゃぁぁぁぁぁぁ!
眠いの我慢して支援した甲斐があったぜ!

713:名無しさん@ピンキー
07/05/20 06:27:06 1vQQ530U
GJGJGJっ!
理理の大バクチが決まった…のか?
そして聖理はどう出る…?

しかし創作とはいえオンナって怖いな
俺が喪男なのはある意味幸せなのかもしれん

714:名無しさん@ピンキー
07/05/20 06:31:25 618OYaP8
本当に読ませる文章を書くのが上手いですね。
GJです

715:名無しさん@ピンキー
07/05/20 07:07:01 Y6BYGJx4
GJ!!
徹夜明けの頭に、気持ち良くキマッッタ
(゚∀゚≡゚∀゚)ヒャヒャ

716:名無しさん@ピンキー
07/05/20 07:30:10 MOZ9Z5TY
ヒャッハァ!GJ!
兄が良識有る一般人なおかげで妹が更にキモいw

717:名無しさん@ピンキー
07/05/20 08:07:40 ME+jpHYf
この時間帯にこれだけの奴らがヒャッハーしてたのかよwww俺もだがw
おまいらwktkしすぎだろ…

とりあえず作者様ナイス! コトリキモイヨコワイヨキモイヨ!

718:名無しさん@ピンキー
07/05/20 09:26:08 pRXkK0xq
GGGGGGGGGGGJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJ
朝からテンションあがってきたぜww

719:名無しさん@ピンキー
07/05/20 09:31:35 TRtmXLz3
こ、こわいよぉ きもいよぉ
でも萌えええええええええええええええええええええええ

720:名無し@ピンキー
07/05/20 09:39:11 5tUCpEAv
こええええええええええw
そしてGJ!!!

721:名無しさん@ピンキー
07/05/20 10:16:14 UTMxujwy
こ れ は す ご い
神GJ!!!!

722:名無しさん@ピンキー
07/05/20 10:24:31 78+Jtbtq
 こ れ は キ モ い 
でもニヤニヤが止まらないのはどうしてなんだぜwwwwwwwww

723:名無しさん@ピンキー
07/05/20 11:01:57 itI6yxm9
GJすぎるwww
兄カワイソスだけど変われるものなら変わりたいwww

724:名無しさん@ピンキー
07/05/20 11:27:44 51BQ8UYV
GJ!
コトリがキモすぎて、マコト争奪戦は
サトリに勝ってほしくなってきてしまった俺は異端。

725:名無しさん@ピンキー
07/05/20 12:09:13 ArQrD828
なんて高レベルな策士同士の争い!!
し、しびれるじぇ

726:名無しさん@ピンキー
07/05/20 12:14:12 o/d4IJf6
実はコトリの…!?


727:名無しさん@ピンキー
07/05/20 12:49:53 TYU0sx3f
昼からパソの前でにやけてる俺は確実にキモイ…
GJ!!

728:名無しさん@ピンキー
07/05/20 13:16:10 AIgJIl/O
うほ

729:名無しさん@ピンキー
07/05/20 14:44:58 LQ2gkzft
実は一番の萌えキャラはコトリでもサトリでも無くお兄ちゃんだと思うんだが、どうよ?

730:名無しさん@ピンキー
07/05/20 14:48:08 yYomQgrg
禿同

731:名無しさん@ピンキー
07/05/20 16:01:57 +cU2SZjN
あらゆる賛辞をこの一言に込める。

コトリきめぇw

732:名無しさん@ピンキー
07/05/20 16:49:22 lKbakQQR
なんかもうね…… 三人とも死ぬというバッドENDしか想像できない……

なにはともあれ、作者さん今回もGJでした

733:名無しさん@ピンキー
07/05/20 16:50:28 ArQrD828
>>729>>730
気安く私のお兄ちゃんに萌えないでよ、この汚らわしいキモオタ豚ども!!

734:名無しさん@ピンキー
07/05/20 16:54:05 W22VIuSg
>>733
じゃあキモイおまえに萌える

735:名無しさん@ピンキー
07/05/20 17:58:52 qpWFisOQ
あひ~ん

736:名無しさん@ピンキー
07/05/20 18:05:41 +Ja1UtyP
>>734
そんなキモウトに萌える君の背中を刺すようなキモ姉の視線が

737:名無しさん@ピンキー
07/05/20 18:28:18 eV1MRfAz
>>732
お兄ちゃんが最低の屑に覚醒する可能性だってある

真理「俺さ、理理と愛し合ったなぁ」
真理「粉をかけられたらすぐによってきたんだ」
真理 「いやさぁ、妹なんて自制にしてたさ。がね、いやぁ味わい深かったって感動したぁ・・・お」
真理「ハッハッハ!怒れよ!」
真理「普通こういう話はキモがるんだぜ?怒るっていう事の意味は分かるよなぁ?聖理には俺を刺す事はできない!」
真理「なら理理に聞いてみなよ。情熱を秘めた肉体・・・」
真理「可哀想になぁ、生きてたって辛いだろう?楽にしてやるよ。
   心配するな、聖理だってたっぷり可愛がってやる。俺、包容力ってのあるつもりだからさ」


こんな感じに

738:名無しさん@ピンキー
07/05/20 18:55:34 MxnYqZBt
それくらいの根性あればこんなにヤキモキせんでいいのに

739:名無しさん@ピンキー
07/05/20 19:16:29 WaGYLI8T
うはwwwwwwww
みwwwwなwwwwwぎwwwwwっwwwwてwwwwきwwwwたwwwwww

740:名無しさん@ピンキー
07/05/20 19:50:48 m1pfh731
>>737
それどこのジョナサン

……というか、依衣子姉さんも立派なキモ姉だよなぁ。

741:名無しさん@ピンキー
07/05/20 19:55:25 5GpBwhYI
×立派な
○最高の

742:名無しさん@ピンキー
07/05/20 20:27:40 Sb2oN3IA
>>740
ごめん、覚えてない


743:名無しさん@ピンキー
07/05/20 21:32:25 K+7Msxu6
>>742
ユウゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーー!!!!!!

744:名無しさん@ピンキー
07/05/20 21:54:00 5GpBwhYI
キモ姉とキモウト(弟)、電波彼女と非人類の四角関係>ブレンパワード

745:名無しさん@ピンキー
07/05/20 22:00:28 wqOCRxqp
仮にバッドエンドで終わらせるのなら、
その後でいいからハッピーエンド,verも書いてほしい。

コトリとサトリに束縛されながらも3人でラヴラヴな話希望。

746:名無しさん@ピンキー
07/05/20 22:26:33 UEbiZCvt
GJ!!!

747:名無しさん@ピンキー
07/05/20 23:30:13 qpWFisOQ
DJ!!!

748:名無しさん@ピンキー
07/05/21 00:27:04 o1gGeDAs
>>747
DEAD JOB?
あるいは
DANGEROUS JOB?

749:名無しさん@ピンキー
07/05/21 01:50:54 aLzMp5lh
>>748
ドロドロ ジョブ

750:名無しさん@ピンキー
07/05/21 01:58:31 gKcYBIKS
>>744
プレゼントを買ってきてくれなかったママが(ry

751:名無しさん@ピンキー
07/05/21 07:28:21 uJCNG1x7
コトリ、サトリの話、途中までしか読んでないけど、GJ。
話の展開も文体もツボです。

752:名無しさん@ピンキー
07/05/21 10:56:10 +43ojdvc
無形氏がいれば、我らスレ住人は十年は萌えられる

God Job

753:名無しさん@ピンキー
07/05/21 12:14:46 Mod/NTNX
>>744
わかんない人の為のブレンパワード講座。
→=関係有or好き

     主人公の母
     ↑↓
     主人公の元同僚
     ↓↑
     キモ姉
      ↓
   彼女←→主人公←元カノ

     ↑↓謎の電波女


754:名無しさん@ピンキー
07/05/21 13:05:33 Y6soGfsc
>>753
姉さんとジョナサンは肉体関係があったのかは不鮮明なんだよな
小説では完全にブラフ扱いされちゃってるけど

755:名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/21 15:53:17 iWGEN4E/
歴史モノ、本編投下します。
神作品の後は結構つらいww

756:妹姫  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/21 15:54:14 iWGEN4E/
清治は城に居を構えずに叔父が昔利用していた屋敷を譲り受け、城下に住まうことを選んだ。
城においての仕事をこなす分には不便ではあるが、町の噂や商人からの他国からの情報を
集めることなど、大上ではなく、八神の性を名乗っている現状では便利となることが多いことが理由だ。

「清治様、お客人が尋ねてこられました。」

身の回りの世話をしている若い女中の声で、清治は仕事の手を止める。
こちらの知合いはまだ殆どおらず訪ねてこられる理由も判らず、怪訝な顔をしたが
誰とでも話をする主義の彼は女中に部屋に通すように伝えた。

部屋に入ってきたのは物堅そうな雰囲気に刀を持った、長い黒髪の男性用の袴を着た
年の頃二十前半の中背の中性的な─女性である。清治にとっては旧知の人物である。
その人物は清治の顔を見ると笑顔を見せた。
先ほどまでの雰囲気ががらりとかわり、憎めない悪がきといった印象に変る。

「久しいな、清治。元気なようで何よりだ。国への帰還を祝いに来た。ほら、酒だ。」
「芳野か。よくここが判ったな。」
「芳之助…だ。住職に聞いた。某はお主に借りを返しに来たのだ。」
中世的な人物の名前は、沖田芳之助─寺にいたころの客人で剣の腕で生活をする
剣客だった。この剣客は仇を討つための知恵を上人に借りにきたのだが、生憎不在で
あったため、清治と当時共に学んでいた女性が知恵を出して協力したのだ。

「あれは芳之助が自ら仇を討ったのだ。自分達はただ独り言をいっただけ…借りなど
 作った覚えはない。そんなものはあいつにだけ返してくれ。」
「では、友人として──お主に仕えに来た。要するに護衛だな。清治は知恵は回るが
 力はあるまい。腕に自信がある某は役に立つはずだ。」
二人は少し微笑んで酒を入れた杯を交わした。

「俸給はあまりだせないぞ。今は一介の八神清治なのだから。」
「生活ができればそれでいい。後はそう……体で払ってもらおうか。
 浮気をするなとはいわない。そういうのは男の甲斐性だからな。」
にやりと笑うと芳之助は清治に口付け、彼も嫌がる風はなく受け入れる。

「それではここに居を移す準備をするので失礼する。ああ、あいつも後日ここに
 伺うといっていた。よろしくとのことだ。」

寺を去ってからも芳之助と親交があるらしいあいつ──同門の女性を思い出し、清治は顔をしかめた。


757:妹姫  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/21 15:55:04 iWGEN4E/
芳之助が去った後、請け負った仕事を終わらせた清治は城に報告し、城内の
内部の状況を調べていた。
(明らかに無駄が多い…。使うより稼ぎを多くすれば問題はないが、それと
 同時に無駄を省く作業を行っていかなければ…さて…)
「お兄様、何をなさっているのですか?」
「うおっ!ああ、これは舞姫様。少しお城を豊かにする方法を考えていたのです。」
急に声をかけられた清治は慌てながらも答える。舞姫はかわいらしく頬を膨らませ、
不服そうに言った。

「敬語はやめてくださいませ。兄上様に敬語を使っていただきたくはありません。」
「わかった、わかったよ。だけど、人がいる前では敬語使うからな。今は八神清治なんだから。
 で、何の用だ?」
清治が問い返すと彼女はさらに不機嫌になり顔を上向けて目に涙をため、
頬を真っ赤にして怒った。

「何の用だ?じゃありません!何故城に居を構えてくださらなかったのですか。」
「一言で言うとだ…。そう…便利だからだ。国に仕える者の仕事は城の中だけではない。」
「だけどこれじゃ、兄上様に中々お会いできないではないですか。うぅ~。」
「ごめんな。折角もう一度生きて会うことができたのに。だけど、今の自分は
 国のみんなを守らなくてはいけないんだ。判ってくれるな?」
清治がそういうと、舞姫は不承不承ながらも頷く。

「兄上様は変られました。昔のように私だけを守ってくださるという
 わけではないのですね…。でも約束してください。私にもなるべく会うように
 して下さると……兄上様は私にとって本当に…大切な方なのです。」
その美しい顔を赤くして必死に自分のことを見上げる彼女の頭を撫で、微笑んだ。

「舞は変ってないな。綺麗になっても相変わらず甘えん坊だ。だけど…舞は
自分にとってもたった一人の大切な妹だ。その約束は忘れないでおくから。」
「はい!必ずですよ?」
彼女は満開の桜のような華やかな笑顔を浮かべ、再び歩き始めた清治の手を取った。


758:妹姫  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/21 15:56:11 iWGEN4E/
清治は暫く舞姫と共に城内を調べ、全てを確認したころには夕刻に差し迫っていた。
名残惜しそうな舞姫と別れ、居所に帰宅する。そこで清治は衝撃的なことを女中に
聞かされた。奥方様がご到着になりました。お部屋のほうにいらっしゃいます…と。
清治はまだ独身である。
(こんなことをするやつは一人しかいない。)

木の廊下をきしませて『奥方様』の待つ、部屋のほうへを急ぐ。そこには、
清治の予想通りの人物がいた。十代前半の身体つきに、行動の邪魔にならぬよう女性にしては
短めにした髪。切れ長の瞳が印象的で、年齢どおりの体がもし備わっていたならば
絶世の美女となれたかもしれない。だが、清治より二つ上にもかかわらず若く見えすぎる
その身体つきでは少年と間違われかねない。感情を表情に出さないお陰で不思議な雰囲気を
纏っており少年と間違われることは無いが。
彼女──二年間共に学んだ仲であり先穂之国の才女と呼ばれている女性…
先穂之国の重臣九条春尚の娘、雪は芳之助の持ち込んだ酒を上品な手つきで飲んでいた。

「久しいな。我が愛しき人よ。一年と半振りか。君と離れている間は無限の時のように感じたよ。
 君が元気そうで何よりだ。」
「雪…後日に挨拶に来るんじゃなかったのか?それと奥方とは何だ。」
「我が君にすぐに会いに来ない道理があるまい。それは君を油断させるためだ。
謀とは裏をかくのだよ。君が不在の間に荷物も運びこんだ。奥方は……
まあ、近い将来の確定事項といったところか。」
雪は清治にほんの僅か微笑みかけて続けた。

「君をここへ呼び寄せたのは我だ。父に働きかけてな。」
「そうか…それについては感謝する。だが、急に奥方というのは…。」
「ああ、判っている。君は将来の国主。結婚に政治が絡むのは百も承知だ。
 だから側室でもよい。我は君を好いているからな。父も君の様子を見に寺へ
 行けといったときは頭がボケたかと思ったものだが、今では感謝しているよ。」
「当事者を置いて勝手に話をいろいろ進めないで欲しいんだが…」
「…ふふ…ちなみに芳之助とは我が二日で奴が一日で話し合いはついている。
 我の目を盗んで他の女を抱いていたとは君も中々に獣だな。」
「何で知ってる…じゃないっ…だから勝手に決めるなって!」


759:妹姫  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/21 15:57:06 iWGEN4E/
清治は雪が苦手だった。決して嫌いではないのだがどうにも感情が真直ぐ
すぎるのだ。真直ぐに自分を好いているといいそこに微塵の嘘も無い。
知性が高いうえに勘も鋭く、嘘も通じない。そして…。

「まあ、どうにしろ我はもう君以外に嫁には行けないからな。貰ってもらうしかない。
 お互い初めての相手同士だ。仲良くやろう。」

この弱みがあった。三年前、この真直ぐな気持ちに完敗し以来幾度となく身体を
重ねていた。責任を取れといわれれば反論できない。それに恩もあるし、愛情とは別に
共に学んだことからくる友情も感じている。
雪はいつの間にか同じように酒を飲んでいた清治の胡坐の上に座っている。そうしていると、
子供がじゃれているように見える。しなやかな指が清治の顎に触れる。

「そうそう─桜が何故あれほど綺麗に咲くか知っているか?桜は本来白いもの
 なのだそうな。それが血を吸ってあのような色になる…。」
「桜の下には死体が埋まっている…か。急になんだ?」
「今年の桜はまだ白いということだ。」
「血を欲している…戦争が起きるのか?」
「ご名答。理解が早い。さすが我が生涯の伴侶。間者の報告と商人の情報、様々な
 物の売れ筋、人の出入りなどを考えると十日というところであろう。相手は隣国の
 日羽之国だ。先穂之国が一つと半分はいるほどの強国だ。」
雪は清治に完全に身体を預けながら淡々と戦と政治を語る。まるで、世間話のように…
男女の恋焦がれる会話のように。熱い目で清治を見つめながら。

「ここで、手柄を立てろということか。 兵力は負けているが、地の利はある。
侵入経路がわかれば勝てるな。雪のことだから全て用意してあるのだろう。」
「もちろん。さあ、楽しい会話はここまで…。一年半我慢してきたのだから
 我は一瞬でも早く君が欲しいのだ。この長い時間分慰めてもらう程度の余裕はあるだろう。
 さあ………っん…………」
日が落ち蝋燭の光だけとなった薄暗い部屋の中、二人の影は遅くまで動き続けた。


760:妹姫  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/21 15:59:34 iWGEN4E/
城内において舞姫は身分が釣り合う同性がいないため、話す相手もおらず
空を見ながら考えにふけることが多かった。
特に月が好きだった。日に移ろい、そして元の形に戻る──兄との関係も
そうなることを彼女は望んでいる。
幼い頃、自らを守ってくれた兄─そして別れ─国を守るために変ってしまった兄。
そう、兄は変ったと舞姫は思う。
自分が想像していたのは幼い優しい自分を守る兄の姿。
今の兄は武骨ではないが力強く男らしい、厳しさとそれでいて昔の優しさも
持ち合わせている。
想像上の兄と違ったことに、舞姫は残念だとは思わなかった。
違っていただけにかけ離れていた時間のせいで兄と思うことができずにいた。
──しかし、
話すと優しさを感じて安心した。
手を繋ぐと幸せに満たされた。
抱きしめられると胸が熱くなった。
兄のことを考えると心臓の鼓動が早くなった。
兄と再会してからその想いは膨れるばかりで、衰えることが無い。
兄ずっと一緒にいたい。離れたくない。身も心も一瞬たりとも離れずに…
これは、舞姫にとって初めて感じる気持ちだった。
燃えるような激情…冷やしてくれる夜風は心地よかった。

(そう…月の満ち欠けのようにきっといつか私だけを守る兄上に戻ってくださる…)
月明かりしか見えぬ暗闇の中、美しい顔を少し曇らせて目を瞑りその日が早く
訪れることを彼女は祈った。


761:名無し@ピンキー  ◆x/Dvsm4nBI
07/05/21 16:00:43 iWGEN4E/
今回はここまで。
ちょっぴりほろ苦いキモウト話を目指します。

762:名無しさん@ピンキー
07/05/21 18:36:16 SHGi7WFu
>>754
原作者兼監督が別媒体とはいえブラフ扱いしてるんなら、アニメでも実はないんでしょ。

763:名無しさん@ピンキー
07/05/21 19:36:03 oh+Eb4rT
武闘派や素直クールやらが出てきて、これからみんな揃ってキモくなりつつ
国取り(国の建て直し)モノになるのかー。
オラ、ワクワクしてきたゾ。

>>ちょっぴりほろ苦いキモウト話を目指します
なんとなくキモウトが更正しそうなよかんが……。

764:名無しさん@ピンキー
07/05/21 20:21:37 KgRTFUF8
女剣士とロリ妻もどきがやけに物分りよさそうだが

これからキモ化していくかどうか楽しみです
キモウトは既に十分キモいので安心w

765: ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:23:40 Ruqhb3lQ
エロなし投下します。

766:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:25:01 Ruqhb3lQ
中間テストの結果も出た五月の終わり。
綾たちが高校に入学してからおよそ二ヶ月が経とうとしていた。
梅雨前線の動向が天気予報で伝えられるようになったこの頃だが、支倉家のあるこの地には、今のところ長雨の気配はない。
空は晴れ渡り、放課後学校の終わる時間ともなると、地平線に沈もうとする赤い夕日が見えている。
その夕日から溢れ出る橙赤の光に照らされた渡り廊下を、綾は卯月小夜子と一緒に歩いていた。
「ふう……結構重いわね」
呟く綾のその手には、何冊もの分厚い本を重ねて持っている。
よいしょ、と本を持ち直し、いつものように綺麗に頭の両脇で結んだ髪が揺れた。
「ごめんねー、手伝ってもらっちゃって」
「別にいいわよ。これくらい」
「でも、買い物の用事があったんでしょ?」
「タイムサービスの時間はもう少し後だから。時間つぶしが出来て丁度良かったわ」
そう言って笑う綾に、小夜子は胸をなでおろした。
中学三年の頃、同じ学校を目指していると知って声をかけてから、一年と少し。
それなりに付き合いの長い彼女は、綾が放課後帰るのが遅れると、やたら不機嫌になるのを知っていた。
先生からの呼び出し、級友からの誘い―どんなものであれ、少しでも時間をとられると綾は気分を悪くする。
表面に出すのは余程の場合だが、他の人が気付かない微細な変化を、いつしか小夜子は肌で感じるようになっていた。
(自分の場合はどうなのだろう?)
好奇心と不安を抱きながら、この日初めて、小夜子は綾に委員会の仕事を手伝ってくれと頼んだ。
「あー、いいわよ」
あっさりと綾は頼みを聞いてくれた。
そして、今こうして二人は並んで歩き、笑っている。
(やっぱり、私は親友ってことなのかな……?)
ちょっと誇らしげな気分に浸りながら、小夜子は隣を歩く綾を見た。
西日に照らされた横顔は、同性の小夜子が見てもドキリとするほど美しい。
級友の中には化粧をする者もいるが、そういったものとは一切縁のない、生まれたままの美しさだ。
細い眉に、薄桃の唇、顔立ちも体つきも繊細で、瞳には凛とした強い輝きが宿っている。
(我が友人ながら、綺麗よねえ……)
一瞬見とれてしまった小夜子に、綾の目が合った。
「ん? 何よ、そんなに見て。何かついてる?」
「あ、い、いや、別に何もついて無いわよ」
「ふーん?」
「……その……綾って綺麗だなあと思ってさ」
小夜子の言葉に綾は転びそうになり、持っていた本が二冊、三冊と廊下に落ちた。
「ちょ……! へ、変なこと言うから落としちゃったじゃない!」
「え? 今の私のせいになるの?」
「そうよ! あなたのせい!」
綾は持っていた本を一旦下ろし、廊下に落ちた本を拾う。
小夜子も本を下ろして手伝った。

767:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:27:45 Ruqhb3lQ
「てっきり、綾はこういうこと言われ慣れてると思ったけど」
「女子から言われるなんて、そうそうあるわけないでしょ」
「うーん……こんなに綺麗なのにねえ」
「ま、まだ続けるか……!」
ぺたぺたと顔を触ってくる小夜子に、綾は思わず身をひいた。
「ねえ、綾は恋人とかっていないんだよね」
「いないけど……何よ、いきなり」
「いや、もてるだろうに、不思議だなって思って」
「まあ私の場合は、性格がよろしくないからね。男の人も、良く見てるってことなんじゃないの?」
「ふーん……それだけなのかな? 告白されたことって無いの?」
「……一体何なのよ。いきなりこんな話して」
「ふと気付いたのですよ」
コホンと小夜子は咳払いを一つした。
「思えば綾って、自分の話を全然してくれないなあと」
「は?」
「それって友達としてどうなのよってわけよ」
呆れたように、綾は息を吐いた。
「何も恋愛話をすることが友達の証ってわけじゃないでしょう」
「まあそうだけどさ」
「それに、私の身の上話なんて、聞いて面白いものでもないわよ」
ドン、と本を積み直して、この話は終わりとばかりに綾は立ち上がる。
ちょっと不満げな顔をしながら、小夜子もそれに続いて立ち上がり、二人はまた廊下を歩き出した。
と、その背中に声をかける者がいた。
「あの、支倉さん、ちょっといいかな?」
「はい?」
振り返るとそこには、同じ一年生の男子が立っていた。
「何か用?」
「二人きりで話したいことがあるんだけど……」
「ふーん……」
綾は腕の時計をちらりと見る。
「手短にお願いね」
それまでの会話とは打って変わって、冷たい声で言った。

768:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:28:59 Ruqhb3lQ
夕食時、綾は台所に立って晩御飯の支度をし、すぐ隣の居間で陽一はテーブルについて、テレビを見ながら宿題を片付けていた。
二人がこの数年間ずっと繰り返してきた宵の光景である。
包丁がまな板を叩く音、テレビからの笑い声、鉛筆がノートの上を走る音。
それぞれが時に重なり、時に解れ、家の中に響いていた。
「機嫌悪いな」
ふと陽一は手を止めて、先ほどから具材を切り続けている綾に声をかけた。
「んー? 別に、悪くもないけど」
「嘘つけ」
「何で嘘になるのよ。別に悪くないって言ってるでしょ」
「まな板を叩く音がいつもより大きい」
「……」
数年繰り返していれば、些細な変化にも気付くようになる。
他にも鼻歌を歌っていない、そもそも雰囲気がやばいなど色々あったが、とにかく陽一は綾の様子がおかしいことに気がついていた。
「何かあったのか?」
「誰かさんが、ぜんっぜん買い物も料理もしてくれないからねー」
「いや、それはもう今更って感じだろ……」
「今更だからって許されると思ってるんだ」
「……て、手伝おうか?」
「不味くなるからやめて」
ぴしゃりと言って、また黙々と具材を切る。
話しかけるなと背中が語っていたが、いつもは綾の癇癪を恐れる陽一も、こんな時ばかりはと食い下がった。
「あのな、もし困ったこととかあったら話してみてくれよ。これでも兄貴なんだしさ」
「私に解決できないことがお兄ちゃんに解決できるとは思えないけど」
「できる限りのことはするよ」
「ふーん……」
ようやく綾は振り向いて、陽一の方を見た。
「そこまで言うからには、ちゃんと役に立つこと言いなさいよね」
綾はすっと息を吸った。
「告白された」
「え?」
「告白されたのよ。一年四組の藤城って人に」
「……そ、そうか」
「で、お兄ちゃん、人生の先輩として、何かアドバイスはある?」

769:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:29:50 Ruqhb3lQ
予想外の内容に、陽一は困ってしまった。
よりにもよって恋愛とは、陽一の一番苦手とする分野である。
異性の友達は居ても、恋人がいた経験や、告白をしたりされたりといった経験は陽一にはなかった。
「え、えーと……」
たじろぐ陽一を、綾はじっと見つめてくる。
「どう? どうしたらいいとか、どうして欲しいとか、ある?」
「……綾はどうしたいんだ?」
「それを言う前に、お兄ちゃんの考えを聞きたいんだけど」
「いや、恋愛となると、一番大事なのは本人の意思だし……」
「私は今のお兄ちゃんの考えを聞きたいって言ってるのよ。付き合った方がいいと思う? それとも付き合わない方がいい?」
できる限りのことをする、と言ったからには、それなりの答えを出さなければならない。
陽一は考えに考えた。
「……藤城君がいい人なら付き合えばいいだろうし、そうでないなら付き合わないほうがいいだろうし……」
「ふーん……それだけ?」
「まあ、今のところは」
「へえー、それだけ」
綾は目を閉じ、額に手を当て、小さく呻いた。
「あれだ。話したことでちょっとは気が楽に……」
「なるわけないでしょ! この馬鹿!」
綾の感情にあわせるように、背後で鍋が噴き出す。
慌てて綾は料理に戻った。
「あちち……!」
「ごめん。やっぱり役に立てなくて」
「……まあ別にいいわ。どうせもう断ったし」
「え? 断ったの?」
驚く陽一を、綾は鼻で笑った。
「私がいちいちそんなことで迷うわけないでしょ」
「じゃあ、結局なんで機嫌が悪かったんだよ」
「それは……」
綾は拳をぐぐっと握り締め、悔しそうに唇を噛んだ。
「その男のくだらない話に時間をとられて、長岡精肉店のタイムサービスを逃しちゃったのよ……!」
「そ、そうか。まあ、気にするなよ。いつも十分にやりくりしてくれてるんだからさ」
コーンと、綾はおたまで鍋を鳴らした。
「ええ、ええ。気にしてないですとも。今は新しい怒りが上書きされたしね」
その日の夕食は相変わらず美味しかったが、少しだけ塩味がきつかった。

770:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:31:05 Ruqhb3lQ
次の日の昼休み、綾はいつも通り小夜子と教室で昼食をとっていた。
「もったいない……」
「小夜子、それ今日何度目よ」
「だって……もったいない……」
小夜子は朝からずっと、休み時間の度に、「もったいない」を連呼していた。
「だってさ、藤城君、一年女子の間じゃ一番人気よ? 美形で何でもできるオールマイティー。それを振っちゃうなんて……」
「ふーん。すごい人だったのね」
「何が不満だったの?」
「んー……不満って言うか……」
もとより綾には選択肢は一つしかありえなかった。
「……私にも色々あるのよ」
「ん? ん? その辺詳しく聞きたいわね」
「はいはい。また今度、気が向いた時にね」
綾は笑って小夜子の追究をかわす。
小夜子はぶちぶちと文句を言いながら、綾と弁当のおかずの交換をした。
和やかな雰囲気で昼食は進んだが、しばらくすると来訪者があった。
「えーと、支倉さん、こんにちは」
「……こんにちは」
やってきたのは、購買のパンを持参した藤城だった。
「また何か用? 昨日返事はしたはずだけど」
綾は努めて表情を変えずに尋ねる。
小夜子は興味津々といった様子で二人を見た。
「うん、その、話がしたくて……」
「何の話よ?」
「色々と。友達からでいいから……仲良くなりたいんだ」
近くの席に腰を下ろし、藤城は持ってきたパンをかじりつつ、綾たちに話しかけた。
藤城は綾のクラスにも友人が多く、また女子も自然と集まり、綾と小夜子の机の周りはいつになくにぎやかになったが、綾は内心この上なくうんざりとしていた。
周囲の目がある手前、殴りつけるなんて論外だ。
何とか心を平静に保ち、綾は藤城の話に微笑みながら相槌を打った。
結局藤城は昼休み一杯まで綾たちのクラスで話して、満足気に帰っていった。
藤城が教室を出て、集まっていた面々が各々の席に散ると、綾はがくりとうなだれた。
「な、何なのあの人は……」
「積極的な人だね」
「どうして昨日の今日で来られるのよ。気まずくないのかしら。理解に苦しむわ」
「それだけ綾のことが好きなのよ」
綾は机に伏せて、深く息をついた。
「それこそわからない。どうして私なのよ」
「そりゃあ……綾は美人だし、なんていうか、同じ年の子たちに比べて芯の通った感じがするし。魅力的だと思うよ」
「芯の通った、ね……」
昼休みの終わりを告げる鐘が鳴る。
あと二つ授業を受ければ放課後だった。
「……あの人、放課後も来るかしら」
「一緒に帰ろうって言ってくると思うよ」
「……はっきり言わないとだめなのかしらね……」
綾は、机の上に流れた自分の髪を、ぼんやりと見た。

771:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:33:23 Ruqhb3lQ
放課後、綾は家庭科室に一人立っていた。
窓の外には少し強く風が吹き、帰りの女子生徒がスカートを押さえる姿が見受けられる。
空気が動いたせいだろうか、夕日はいつにもまして赤く見え、教室を真っ赤に染め上げていた。
綾が窓の外の景色を眺めていると、背後で引き戸を開ける音がして、人が入ってくる気配がした。
「いらっしゃい」
振り返って、綾は笑う。
笑顔を向けた相手は藤城だった。
「支倉さん……」
「よかった。来てくれて」
「来るに決まってるじゃないか」
藤城は手に手紙を握って言う。
綾の出した、呼び出しの手紙だった。
「それで、話って? ひょっとして付き合う気になってくれたとか……?」
「ううん、逆よ。あなたに諦めてもらおうと思って」
「諦める?」
「もう話しかけたりしないでほしいのよ」
淡々と言う綾に、藤城は動揺して問いかけた。
「僕は……その……嫌われてしまったかな?」
「まあ、正直不快にはなったわね。それに、いつまでも騙しているのは申し訳ないし」
「騙すって……」
窓の外からは、部活にいそしむ生徒たちの声が時折聞こえてくる。
綾は、ほんの少しの沈黙の後、口を開いた。
「あのね、聞きたいんだけど、私のどこが好きなの?」
「え……どこって……」
藤城は照れたように頬をかいた。
「その……何ていうか、凛とした、他の人にはない雰囲気があって……強い感じがするし……」
「そういうタイプの人が好みなの?」
「ま、まあ、そういうことになるのかな」
「あのね、私、あなたが思っているような人間じゃないのよ」
綾はため息をついた。
「全然強くなんてないのよ。どうしようもなくわがままで、いつもぎりぎりの人間なの」
「……」
「普段考えてることと言ったら、自分のことばかりで、何かあるとすぐに腹を立ててるのよ。もう笑っちゃうくらい短気で、自己中心的なの」
「そうは見えないけど……」
「そう見えないように、適当にごまかしているのよ。それであなたも勘違いしちゃったんでしょうね」
藤城はにわかには信じられず、何とも言えない顔をしていた。
「というわけで、私は全然あなたの好みの女じゃないから。諦めてちょうだいな」
「……君がどんな人間であれ、それでも一緒に居られたら幸せだって言ったら、諦めないでもいいかな?」
「私はあなたと一緒にいても何も嬉しくはないからね」
「絶対……絶対後悔させないから!」
藤城は綾に歩み寄ると、その肩をがしりと掴み、叫んだ。
綾は冷たい目で藤城を見た。
「何言ってるの?」
「君を喜ばせてみせる。君を幸せにしてみせるよ」
「どこからそんな自信が湧いてくるの? 私の幸せが何だかわかって言ってるの?」
「それは……今はわからないけど……」
「それでも、そんな確信を持って言えちゃうのね。藤城君は、余程自分に自信があるのかしら」
挑発めいた綾の物言いに、綾の肩を握る藤城の手に力がこもった。
「自信とかじゃなくて、それだけ僕の気持ちが強いってわかってもらえないかな」
眉目秀麗な少年は、真っ直ぐに綾の瞳を見て熱く語りかける。
普通の女子生徒なら、その情熱にひょっとしたら胸を高鳴らせてしまったかもしれない。
しかし、綾の心中はただ乾いた風音が響くだけで、何の感慨も湧かなかった。

772:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:36:18 Ruqhb3lQ
「あっはっはっは。粘るわねー。ストーキングも強姦も、色男がすれば犯罪じゃないっていうのは、少女漫画の中だけよ。藤城君、その辺わかってる?」
「そんなこと言わないでくれよ。本当に、君が好きなんだ」
「あなたは……人に拒絶されたことがないから、意地になってるだけだと思うんだけどね」
やれやれと、綾は笑った。
「穏便に済まそうと思ったけど、面倒になっちゃったわね」
「……」
「あのね、私が必要とするのは、私を支えてくれる人、私を全力で守ってくれる人、私を苦しみから救ってくれる人なの。あなたじゃないわ」
綾の言葉に、藤城はますます強く綾の肩を掴んで、ぎりぎりまで顔を寄せた。
「だから……僕はその支えになりたいんだよ!」
「あなたには無理よ」
「どうしてそんなことが言えるのさ!? 僕は……僕は、君のためなら何でもやってみせるよ!」
「そんなに言うなら試してみる?」
「え?」
「あなたに私が支えられるか、試してみる?」
肌が触れてしまうのではないかというほどの近さで顔をつき合わせ、二人とも互いの目を見る。
やがて藤城は静かに頷き、綾の目がにこりと笑った。
「……っ!」
腕に焼け付くような痛みを感じて、藤城は綾の肩から手を離した。
数歩下がって、自分の腕を見る。
左手の肘から手首にかけて、ワイシャツが切られ、その下の肌に赤い線が走っていた。
「え……?」
ぷつぷつと血が球になって溢れ出る。
呆然と綾を見ると、その右手には、鋭く光る小振りの包丁があった。
「あの……支倉さん?」
「例えばね、私の今の苦しみは、あなたを殺すことで解決できるって言ったら、あなたは喜んで死んでくれるかしら」
「え……?」
綾は一足飛びに藤城との間を詰め、握った包丁を振り抜く。
慌てて後ろに跳ねた藤城だが、体をかばうように上げた右の手の平が横一文字に浅く切れ、また血が滲んだ。
「あら、避けたわね。おとなしく死んでよ。私のためなら何でもできるんでしょ?」
「ちょ、ちょっと待って……意味が……」
「私を支えてくれるって言ったじゃない。私が安らかに過ごせるように、さっさと死んでよ」
銀色の刃がきらめく。
藤城はまた身をかわし、今度は包丁は空を切っただけだった。
体勢を整えて綾は藤城に歩み寄り、その分藤城もじりじりと後ろに下がる。
「ね、ねえ、冗談だよね、支倉さん」
「まさか」
藤城の背が壁に当たり、後退していた足が止まった。
「あ……」
「残念。もう逃げられないわね」
夕日を受けた刃が、赤い線となって一直線に藤城の首筋に向かう。
藤城は横に飛びのいてこれもかわしたが、身を起こすよりも早く、綾が藤城の体に飛び乗った。
「ぐっ……!」
仰向けに床に転がる藤城。
綾はその上に馬乗りになり、包丁を両手で握ると、高く頭上に振り上げた。
「ね、ねえ、支倉さん、本気なの? 本気で……」
「試してみたいって言ったのはあなただから」
「殺すって……犯罪なんだよ? 君も捕まるかもしれないし、やめた方が……」
「黙れ」
綾は包丁を振り下ろした。
「ひっ……!」
情けない声をあげ、藤城は上体を丸める。
包丁は、藤城の体を貫くことは無く、首のわずか右の床に、鈍い音を立てて刺さった。
息を切らし、がくがくと震える藤城を、綾は静かに見下ろした。
「……ほらね? 無理だったでしょう」
「う……」
「というわけで、諦めてお帰りください」
「……」
「帰れっつってんのよ」
藤城のみぞおちに綾のつま先がめり込んだ。
藤城は何度も咳き込み、目に涙を浮かべて、転がるように家庭科室を出て行った。

773:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:37:10 Ruqhb3lQ
しん、と静まり返る教室。
綾はほっと息をついた。
「やれやれ。終わった終わった」
「行っちゃったね」
綾の背後、家庭科準備室の中から、小夜子がぴょこんと姿を現した。
「ええ。やたらしつこいわりに全然ダメだったわね」
「いや、仕方ないと思うけどねえ……」
苦笑しつつ、小夜子は床に刺さった包丁を引き抜く。
刃には微かにだが、藤城の血がついていた。
「うわ、こりゃ凄いね」
「……びっくりしたでしょ。私、こんな人間なのよ」
自嘲気味に笑って漏らす綾に、小夜子は少し考え込んで、
「……まあ、綾が変な人間だってのは、とっくの昔に知ってたし」
今更、という風に返した。
気が強く、芯の強い親友。
小夜子は、その親友の瞳の奥に不安定な情念が揺らめくのを感じることが時折あった。
だから、むしろ今回の発露で、妙に納得した感があったのだ。
「それより綾、どうするのよ。こんなことして。変な噂立っちゃうよ、多分」
「かまわないわよ。鬱陶しいのが来なくなるだろうし」
「ひょっとしたら問題になるかも。怪我させちゃったから」
「その時は犯されそうになったって言うわ。ま、大丈夫でしょう。あんな腰抜けに何かできるとも思えないし」
言って、おかしそうに綾は笑う。
つい先ほどまで刃物を振り回していた人間とは思えない、朗らかな笑顔である。
小夜子はほう、とため息をついた。
「それにしても、綾と付き合う男は、包丁で刺されてもおっけーじゃなきゃいけないのねえ。こりゃ難易度高いわ」
「あのね、断っておくけど、別に何でもかんでも刺したいわけじゃないわよ? ただ、私のために命をかけてくれる人じゃなきゃ、私は……安心できないから……」
「綾って意外とわがままだよね」
「だから自覚はしてるっての」
小夜子はうーむと腕を組んで考え込んだ。
「ちょっと理想が高いんじゃないかなあ……高校生で命を張るなんて、普通いないよ、そんな男」
「いるわよ」
「んん? はっきり言い切っちゃってるけど、今までそういう人に会ったことあるの?」
「会ったことがあるって言うか……」
綾は一瞬黙り込み、視線を床に落とす。
しばしの逡巡の後、口を開いた。
「……私の母親は、ちょっとよろしくない人でね」
「え?」
「小さい頃はひどい目に遭ったわ。色々と」
「ひどい目って……」
「包丁を突きつけられたこともあったわ」
「……」
「でもね、守ってくれる人がいたのよ」

774:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:38:10 Ruqhb3lQ
陽一と綾の母、支倉澄は、美しい人だった。
ちょうど今の綾のような、瞳に宿る強い光と、儚げな微笑。
才色兼備の、良き妻、良き母だと、周囲の誰もが憧れの目で見る女性だった。
夫は仕事で留守がちだったが、支倉澄は一人で家を守り、周囲には包み込むような優しさで接した。
ただ一人、自分の娘、綾を除いて。
誰にでも優しい澄だったが、綾が生まれて成長するにつれて、次第に綾を疎んじるようになった。
初めは幼い綾の訴えを時折無視する程度だったが、次第にそれは酷くなっていった。
うっすらと笑みを浮かべながら、冷たい目で綾を見て、ことあるごとに暴力をふるった。
綾が笑うと、殴って泣かそうとする。
綾が泣くと、笑うようにと言ってまた殴る。
食事を食べさせず、部屋の中に閉じ込めることもあった。
綾は体のどこかにいつも青痣をつくり、体もやせっぽちで、家の中の限られたところしか歩かせてもらえず、決して外に出ることは許されなかった。
綾の幼年期の記憶は、母からの暴力と、ひもじさに壁にもたれかかり、何をするでもなく過ごした狭い部屋の光景が大半だった。
苦しみと痛みに満ちた、虐待の日々。
それが幼い綾の人生の全てだった。
父が仕事で居ない家で、澄の支配は絶対だったが、そんな中、陽一はことあるごとに妹の綾を守った。
兄としての義務感といったものが、まだ小さな陽一にあったかどうかは疑問である。
しかし陽一は一つ年下の妹が打たれていると、泣いて母にやめるように懇願し、綾の身を守るようにして綾を抱きしめた。
母に殴られてついた傷の手当てをしたのは陽一だった。
部屋に閉じ込められた綾に、密かに食事を差し入れたのも陽一だった。
ぐちゃぐちゃに形の崩れたおにぎりを持ってきて、ぼんやりと壁に寄りかかる綾に差し出し、
「ごめん。お兄ちゃん、こんなのしか作れなかった。ごめんな」
謝りながら、自分で腕を上げることもできない綾に、おにぎりを食べさせた。
綾は虚ろな目で、呼吸をする以外動きは無く、まるで人形のようだった。
咀嚼もうまく出来ず、口の端からぽろぽろとご飯をこぼす妹の姿に、陽一は涙を流さずにはいられなかった。
不恰好で塩の付き過ぎた、お世辞にも上手とは言えないおにぎりだったが、それが無かったら、綾は狭い部屋の中で死んでいたことだろう。
そして何より、そのおにぎりは、綾の心を救った。
もはや反応する気力も無く、お礼を言うことも出来なかったが、壊れかけた綾の心を繋ぎ止めたのは、他でもない、陽一の温かさだった。
澄は陽一に対しては、母が普通に子供に対するのと同様に、大いに可愛がった。
その息子が綾を守るのが気に食わないのか、陽一が綾をかばうと、その場は退いても、後でますます逆上して綾を打った。
結果として綾の体につく傷はより深刻なものになったが、幼い綾の心が陽一の存在でどれだけ救われたか、綾本人にすら計り知れない。
陽一は澄にどんなに怒鳴られても、脅されても、包丁を突きつけられても、綾を抱きしめてかばい、綾はともすればバラバラに砕けそうになる精神を、かろうじて保ったのである。
綾が小学校に上がる頃になると、澄からの虐待はますます重いものになり、ついにある日、それは起こった。

775:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:39:00 Ruqhb3lQ

「ちょうど今みたいな、夕日の光が綺麗な時間だったわね」
目を細めて、赤く染まる西の空を見ながら、綾は言った。
「殺してやるって言われたわ。お母さんに。鬼のような形相でね」
小夜子はどう反応していいかわからない。
綾は感情のこもらない声で話を続けた。
「その時も、その人は逃げなかったの」

776:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:39:50 Ruqhb3lQ
ぎらつく包丁が、綾の前に立つ陽一の肩越しに見えた。
「陽一、どきなさい……! その女……その女を殺さなきゃ……!」
澄は美しい顔を歪ませて、血走った目で綾を睨みながら、自分の娘を「その女」と呼びつけた。
包丁を握る手は震え、時折狂ったように頭を振って、長い黒髪を振り乱した。
「殺してやる! 殺さなきゃだめなのよ! だめなの! だからどきなさい!」
包丁を陽一の眼前に突き出して、澄は叫びをあげる。
陽一はビクリと体を震わせたが、それでも綾の前から動かなかった。
「陽一……どきなさい。どいて。どかないとあなたも殺すわよ」
「……嫌だよ」
「お願い、どいて。陽一はいい子でしょう? お母さんの味方でしょう?」
「……」
「陽一、包丁で刺されるとね、とっても痛いのよ。死んじゃうの。死ぬと、美味しいものも食べられなくなるし、お友達とも遊べなくなるのよ。そんなの嫌でしょう?」
母の問いに、陽一はこくりと頷く。
そして、はっきりと言った。
「痛いのも、死んじゃうのも嫌だよ……嫌だから、綾がそうなったら可哀想だよ……」
「……お兄ちゃん」
「それに……綾がいなくなるのは痛いのより嫌だよ」
陽一の言葉に、綾はぽろぽろと涙を零した。
数年間、澄に殴られるのが怖くて、綾はどんなことがあっても涙を見せなかった。
しかし、この時ばかりは、こらえることができなかった。
陽一の背にすがり付いて、綾は息を詰まらせて泣いた。
その姿を見た澄は、ますます声を荒らげた。
「陽一、どきなさい!」
「嫌だ」
「どけって言ってるでしょ!」
「嫌だよ」
「本当に刺すわよ!? 本当にあなたも殺すわよ!?」
陽一は決然と澄を見て、綾の前に立ったまま動こうとしなかった。
「あ……」
澄は喘ぐように口を動かし、
「あああああああああああああああああああああ!!!」
大声で叫びながら構えた包丁を前に突き出した。
―呻くような陽一の声。
呆然と腹を押さえ、陽一は床に尻餅をつくようにして倒れた。
「……お、お兄ちゃん?」
陽一の服が、みるみるうちに赤く染まっていく。
「お、お兄ちゃん……」
「おい、綾、泣くなよ」
「お兄ちゃ……わ、私……ご、ごめ……ごめんなさ……」
次々と涙が溢れて言葉が紡げずにいる綾に、陽一は苦しそうに顔を歪めながら微笑んだ。
「大丈夫だよ」
「で、でも……」
「兄ちゃん、綾の兄ちゃんなんだから、謝るなよ」
痛みに意識が朦朧とする中で、陽一は言葉を搾り出した。
「綾が痛くないなら、兄ちゃん平気だよ」
「お兄ちゃん……」
「兄ちゃん、綾の兄ちゃんだから、これぐらい大丈夫……」
声は抑揚無く、次第に小さくなっていく。
「お兄ちゃん……! お兄ちゃん!!」
綾の呼びかけに、陽一は小さく「大丈夫」と頷く。
刺された腹を押さえて座り込み、焦点の合わない目で宙を見ながら、「大丈夫、大丈夫」と呟いた。
カラン、と音がして、綾は母の方を見た。
澄は包丁を落として、床にへたり込んでしまっていた。
「あ……あ……私……何てこと……陽一……」
かすれた声で、澄は陽一の名前を呼んだ。

777:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:40:51 Ruqhb3lQ

「ま、そのお母さんも、今は居ないけどね」
「居ないって……?」
「死んだのよ。自殺して」
そう、自殺ということになっている。
綾は窓の外を見たまま、決して小夜子の方を向こうとはしなかった。
鋭い友人に、表情を見られるのが怖かったから。

778:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:42:05 Ruqhb3lQ
お兄ちゃん―
その瞬間、綾の頭の中で何かが爆ぜ、綾は床に転がった包丁を掴んでいた。
大切な大切な、たった一つの支え。
自分にとって世界の全てであり、何者にも代えられない存在。
それを害した女。
お兄ちゃんをよくも―
六歳の少女は、渾身の力を以って、床にへたり込む母の首に包丁を突き刺した。
鋭い切っ先は思いのほか簡単に柔らかな皮膚を突き破り、肉を裂き、血管を切った。
「あ……?」
呆然と、自分の首に刺さった包丁を見て、澄は奇声を上げた。
「ああぁぁああぁあああアアアァあァア」
慌てたように突き刺さった包丁の柄を掴み、引き抜く。
次の瞬間、水音とともに大量の赤い血が床を叩き、澄は静かに床に倒れ臥した。
目からは完全に光が失われ、血溜まりの中でぴくりとも動かない。
綾という少女が、初めて殺人を犯した瞬間であった。
一分もせずに警察官がやってきて、陽一は病院に搬送され、綾も保護された。
澄の叫びを聞いた近所の住民の通報によって駆けつけたものだった。
「支倉澄は心神耗弱状態で息子を刺し、その直後、自ら喉を切って自殺した」
陽一は意識が朦朧としていて前後の状況を覚えておらず、綾の説明と発見時の状況から、そういうことになった。
そう、支倉澄は、自殺したのである。

779:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:43:00 Ruqhb3lQ
「……とまあ、つまらない身の上話終わり!」
綾はぱんと手を打って、話を終えた。
「ともかくも、私の理想の人は確かにいるわけよ」
「……綾」
「ん?」
「ごめん……無理に辛いこと思い出させちゃって」
小夜子は涙ぐんで謝る。
綾は軽く手を振った。
「いいから、そんな謝らないで。小夜子に話したくなったから話しただけで、本当に嫌なら絶対話さないし」
「本当……?」
「ホントよホント。当たり前でしょ」
二人は包丁をきちんと洗って家庭科準備室に返し、学校を出た。

780:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:44:04 Ruqhb3lQ
「……つまりはさ、綾の理想の人って、陽一さんなわけだよね」
校門に至る道のりで、小夜子がぽつりと言った。
「は、はあ!? 何でそうなるのよ!」
「だって、陽一さんが守ってくれたって……」
「いや、そういう人が居たとは言ったけど、お兄ちゃんとは一言も言ってないでしょ!?」
「毎日家に居て守れる人っていったら、お父さんか陽一さんしかいないじゃない」
「ぐっ……!」
言葉に詰まる綾に、小夜子はくすりと笑った。
「隠すこと無いのに……」
「……お兄ちゃんには言わないでね。調子に乗るから」
「わかってるって。見つかるといいね。陽一さんみたいに、素敵な人」
「まあね」
返事をしながら、そんなことはあり得ないと、綾にはわかっていた。
(結局あの頃から、私は何も変わっていないのよね……)
陽一が世界の全て。
陽一が居なくなった時、陽一に想われなくなった時が、綾にとっての世界の終わりだ。
だから綾は、陽一を害するものは何であれ許さない。
自分と陽一の世界を壊そうとするものは、絶対にその存在を許さない。
(お兄ちゃん……)
あの頃のことは、陽一も綾もお互い口にすることは無く、のんきな兄のことだから忘れているのかもしれないとも、半ば本気で綾は思う。
しかし綾は忘れない。
血まみれで微笑んだ兄の顔を。
命をかけて自分を守ってくれた最愛の人の姿を。
「あ! 綾、そういえば……」
小夜子の声に、綾は我に返った。
「何よ」
「もし藤城君が包丁をかわせなかったら、どうするつもりだったの?」
「その時は、あなたに手伝ってもらってどこかに埋めたわ。いざって時には頼りにしてるからね、親友」
「……綾が言うと本気に聞こえるから怖いね」
二人は顔を向き合わせてクスクスと笑う。
親友という言葉が、小夜子には何とも嬉しかった。

781:名無し@ピンキー
07/05/21 21:52:02 iWGEN4E/
キモウトに歴史あり。
流石躊躇なく人や兎を殺ってるだけはある…GJ!

782:追憶の綾  ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:54:17 Ruqhb3lQ
綾が家に帰ると、居間には陽一が寝ていた。
疲れていたのだろう、寝転がってテレビを見ていたらそのまま眠ってしまったらしい。
綾はテレビを消して、寝ている兄の傍らにそっと座り、その顔に触れた。
家事は苦手だし、テスト前になると大慌てするし、痴漢には間違われるし、とにかく鈍い。
他の人から見たら情けないところのある人間なのかもしれない。
そんな陽一だが、これ以上ない優しさと勇気を持った人間なのだと、綾は知っている。
「お兄ちゃん……私、お兄ちゃんのためなら何でもできるからね」
語りかけながら綾は陽一の頬を撫ぜたが、陽一は静かに寝息を立て、反応しない。
「寝てる、か……」
確認するように言うと、綾は制服のままで、陽一に重なるようにして身を横たえ、陽一の胸に顔をうずめた。
「お兄ちゃん……」
呟いて綾が目を閉じたその直後、
「ん?」
陽一がむくりと起きて、綾は陽一の胸の上からずり落ち、床にごつんと頭をぶつけた。
「お前……何やってるんだ?」
「お、お、お兄ちゃん、起きてたの?」
「いや、何か重いなと思って、今さっき目が覚めたんだが……」
寝ぼけ眼で頭をかく。
「何してるんだよ、人の上に乗っかったりして……」
「あー、あれよ、その……えー……こ、転びました」
弱々しい声で言い訳する。
陽一は、あっさりとその言葉を信じた。
「そっか。気をつけろよな。もう子供じゃないんだから」
綾の頭に手を置き、よしよしと撫でる。
兄の温かい手の感触に、綾はちょこんと正座して、おとなしく身をゆだねるのであった。

783: ◆5SPf/rHbiE
07/05/21 21:58:09 Ruqhb3lQ
今回の投下は以上です。
一話一殺を目指していたけれど、さすがにそうそう殺しはできんということで、今回は目標放棄しました。
(一応回想の中で殺してますが)

いつエロくなるかというとわからんけど、綾もそういうことに興味がないわけではないので、いつかエロくなるはずです。
それでは。

784:名無し@ピンキー
07/05/21 21:59:11 iWGEN4E/
割り込みすまん。RTだった;
そしてあらためてGJ。

785:名無しさん@ピンキー
07/05/21 22:04:01 42J2xRLT
GJぇぇっ!!

ちょっと本気で創作意欲がわいた。
だけど目の前で溜まっている(持ち帰りの)仕事に涙した。

俺はくじけず……



エロを書こうと思う(仕事なんてないないない)

786:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
07/05/21 22:05:58 +43ojdvc
>>783
GOOOOD JOBです! 素晴らしい。

>>761
拙い妄想を形にして頂いて多謝。
人物が(多分)そろって、次からの修羅場への移行を楽しみにさせて頂きます。

で、SSが書き進まない傍ら思いついたネタ(プロット?)を懲りずに投下。




仮題:「兄を訪ねて三千光年」


あらすじ


ある日、妹は空からやって来た。
十五年前、当時まだ三歳だったオレを残して光の中に消えた親父。
奴はUFOに連れられて宇宙の遥か遠くの星で、異星人と子供こさえて戻って来やがった!
親父の子供。
つまりオレの妹。
『星人』と呼ばれる彼女は異星からオスを連れて来て子供を産む、女性のみの種族なんだとか。
そんな種族であるからには当然男が産まれるはずもなく、彼女達にとって兄や弟と言うのは凄く貴重な存在らしい。
で、通いなれた学校からの帰り道、いきなり上空に現れた未確認飛行物体。
三千光年の距離をワープでかっ飛び、未知の輝きをバックに地球へと降り立った異星人。

初めて会った我が妹は、開口一番こう言った。

「兄さん、私と結婚して下さいっ! さもないと母船で地球を滅ぼします!」

正直、たまげたね。
しかもだ。
男が存在しない『星人』にとって夫の共有は珍しくないとかで、
妹には親父とは別の男が母親とこさえた十二人の妹がいるらしい。
オレとは完全に血の繋がらない彼女たちだが、何でも妹とオレをくっつけてオレの義妹になろうと画策中だとか。

出会い頭に爆弾発言をくれた、母親以前に星が違う妹。
裏で何やら怪しい動きを見せる、十二人の義妹予備軍。


拝啓 親父

冗談ってレベルじゃねーぞ!

787:名無しさん@ピンキー
07/05/21 22:14:34 Zr85TJH5
>>783
綾ああああああああああああ(´Д⊂
綾シリーズ最高!!!次の作品も涙流しながらwktkして待ってる!!

最後に渾身のGJ!!!

788:名無しさん@ピンキー
07/05/21 22:25:36 7woVfsd6
>>786
父親の星が違う12人の義モウトか・・・
体型とか、肌の色とか全部違うんだろうなぁ。

・触手がある
・きょにう、または、ちちが1ダース
・スライム、ガス状とか
など

789:名無しさん@ピンキー
07/05/21 22:43:49 aLzMp5lh
>>786
なんかなぁ・・・それって別に兄のことが好きだから結婚してくれって言ったわけ
じゃないんだろ。ようするに誰でもいいってゆうかなんて言うか・・・



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