07/03/29 17:18:31 Rpvk3NOl
コンコン、と、ドアを叩く乾いた音がした。サザかしら。
「どうぞ。開いてるわ」
少ししてドアが開き、隙間からよく見知った顔が覗いた。やっぱりサザだ。
「不用心だろ、鍵をかけないのは」
サザは不機嫌そうに言いながら部屋に入ると、後ろ手に錠を下ろした。
「今夜来るって言ってたから……」
近づいてくるサザに言って、書き物をしている手を止めた。今日はここまで。
「ずいぶん遅くまで仕事してたんだな」
振り向くと、サザはベッドに腰掛けていた。私は机の上を軽く片付け始める。
「サザが来るまでって決めてたの。
遅かったじゃない? あんな切羽詰まった顔してたくせに」
軽く嫌味を言ってやると、サザは、悪かったな、とそっぽを向いた。こうい時の表情は年相応で、
つい微笑んでしまう。口に出すと怒られるから言わないけど、すごく可愛い。
「怒ってる訳じゃないの。気にしないで」
サザの隣に座って天井を見上げると、まだ幼い頃のサザが思い出された。
枝のように細い指、鋭い目。体も小さくて、私の傍から片時も離れなかったせに、
三年離れたらこんなに大きくなってしまっていた。成長しない私の体とは違って。
ふと自分の体を見下ろす。目に写ったのは、何年も変わらない大きさの手。それから、僅かに膨らんでいる胸と、
凹凸の少ない腰回り、肉付きのない足……。
(だ、大丈夫。多少は成長してるってば!)
……こんな事考えたい訳じゃなかったのに。
「そ、そう言えば、こんな風にサザと二人きりで話すのって久し振りね。
この所、ずっと慌ただしくて……!」
バカな考えを振り切るようにサザに話しかけた。
急に話しかけたら不自然だけど、サザなら気にしないで相づちを打ってくれる、よね。
「そうだな。ミカヤはずっと……いや、なんでもない」
「私がどうかした?」
少しでも早く頭を違う話題に切り変えたくて、別に気にならなかったけれど、私は敢えて尋ねた。のに。
「なんでもないって。
それより何考えてたんだ? ずいぶん長く考え込んでたみたいだけど」
私が考えてたのは、自分のカラダの事よ。……なんて言える訳もない。
ふう、とため息をつくと同時に下を向いてしまい、嫌でも目に入る自分の体。
こんな時に限ってサザは核心を突いてくるし、忘れようとすればするほど、逆に意識してしまう。もうこれから逃れられないって事かしら。
……もう、いい。考えるのはやめ。
私は顔を上げて、真正面からサザを見た。
「サザ、訊きたい事があるの」
「な、何だ? 急に……」
サザがうろたえているけど気にしない。不自然でも構わない。
恥ずかしくなんてないんだから! と自分を鼓舞して、サザの両肩に手を置き息を吸い込む。
「私の体、確かめて!」
「!!!」