07/10/23 00:52:04 vYrFCeCm
『美少女戦隊イリティスファイブ!』
「きゃあああぁぁぁっ!!」
よく晴れた青空を突如つんざく、人々の絶叫。
白昼の往来に爆音が響く。
「はははははは!! 怯えろ人間ども!!」
関東某所の、とある国立銀行。
広々とした中央ロビーに堂々と立った大巨漢は、恐怖に震える人々を見ながら笑い声をあげた。
大男の腕には、滑稽なほど巨大なバズーカランチャーが軽々と抱えられている。
「怯えろ怯えろ。おっと忘れてた。お前ら、怯えるのもいいが、金を持ってこい。
ここにある現金ありったけだ。早く持ってこないと、お前ら全員こうだぞ!」
そう言いながら無造作に振り上げた腕を振り上げると、近場のデスクに撃ち下ろす。
凄まじい破砕音を立て、金属製のデスクと椅子がひしゃげた。
巨大バズーカを片手で振り回す腕力もそうだが、到底人間とは思えない。
再び人々が悲鳴をあげるのを見て、大男はげらげらと笑った。
「やっぱり金よりこっちだな。そうだそうだもっと怯えろ。
このシグマ様は、お前らの怯えた顔が三度の飯より大好きなんだよ」
シグマと名乗った男は楽しくてたまらないというようにバズーカを掲げると、真上に向けて発射した。
凄まじい衝撃と共に天井が爆砕し、中の鉄骨が音を立てて崩れ落ちる。
「ふ、ふえぇっ……」
奥の長椅子に座っていた幼稚園児ほどの少女が、我慢できずに泣き声をあげる。
耳聡くそれを聴きつけ、シグマはじろりと少女を睨みつけた。
「おお子猫ちゃん。俺が怖いか」
「こ、こわぁいぃ……」
目いっぱいに涙を溜めて、少女はぶんぶんと首を縦に振る。
「そうかそうか。正直だな」
シグマはほくそ笑んだ。
「よし、正直者の子猫ちゃんには御褒美をくれてやろう」
「ぴゃ……!!」
バズーカランチャーの巨大な砲穴を向けられ、少女の表情が引き攣った。
「やめてえっ!!」
隣に座っていた母親が弾かれたように少女を抱き寄せ、自らの背をシグマに向けた。
「お願い、この子だけは……」
「おいおい、どけよ母ちゃん。そいつの怯えた顔が見えないじゃないか」
シグマは無情にも母の背中に照準を合わせる。
「どうしてもどかないんならしょうがない、親子揃ってふっ飛ばしちまうか。せーぇのっと」
悪意に満ちた笑みを浮かべたシグマが、バズーカを発射しようとした瞬間だった。