07/11/05 04:10:06 kbgznIe1
ランプの発するオレンジ色の光に惹かれた小さな蛾がランプの周りを飛び回るのをぼんやりと眺めながら
三回目を終えたラムザはアグリアスを後ろから抱きかかえて寝転んでいた。
ラムザのものは既に萎んでいたが、アグリアスが抜かないでと言ったので入れたままにしている。
尻をぴったりと背後のラムザに押し付けているアグリアスがラムザの腕の中で呟いた。
「ドーリスとかいう男に用意してもらった額は百万ギルだったな? 今までに返済出来た額は?」
「六十万……です」
残り四十万ギル。確かに大金だが、アグリアスには一日で用意出来る金額だ。ここで使う金もそうだったが、アグリアスには財産があるのだ。
「ラムザ……私はもう他の男を代用品にしたくないし、他の女を抱いて欲しくもない。私はラムザを自由にしてあげられる。
アルマ殿の事も心配しなくていいから、ラムザは明日の晩はここへ来ずに家で待っていて」
「アグリアスさん……?」
「何も心配しなくていいから……私を信じて待っていて」
その後に続く言葉は無く、二人はそのまま深い眠りに入っていった。
朝食の時間に姿を見せなかった娘が、昼前になって書斎で書き物をしていた父の前に現れて言った。
「父上、お話があります」
「アグリアス、どうしたというのだね。戦にでも出る様な格好ではないか」
アグリアスは繕い直してあった近衛騎士団の正装を纏った上に鎧まで着込んでおり、腰には帯剣さえしている。
「私は旅に出たいと思います。すぐには戻っては来れないかも知れません。どうかこの身勝手を許して下さい」
娘の目に以前の光が戻り、一文字に結ばれた唇に力強い意志が宿っているのを見た父は驚きのあまり何も言えずにうなずくばかりだった。
暗い部屋に篭るばかりだった娘はどこかへ消え、毅然とした凛々しい騎士アグリアスがそこにいた。
家の門をくぐる娘の後ろ姿の眩しさに目を細め、父はいつかこんな光景を見たと思い、もう会う事は無いのかもしれないと漠然と感じた。
しかし、何故か声をかける事も追いかけて引き止める事も出来ず、父は呆然として姿が見えなくなるまで娘を見送った。
アグリアスは戦時中に小さな楽しみとして集めていた香水や装飾品の類の残りを市場で惜しげもなく全て売り払った。
香水の類はいずれも一般の市場には出回らないものばかりだったため、予想通りかなりの高値で売れ、総額でおよそ四十万ギルほどになった。
これで金は出来た。ドーリスの所へ直談判に行かなければ。が、その前に準備が必要だ。あの手の輩との交渉にはそれなりの準備がつきものだ。