07/03/21 15:18:14 UrnuGHQ7
「はなせ、はなせってば、なによ見せられないものでもあるわけっ!?」
「てめえらっ! 大の男がなに情けねえザマみせてんだっ!」
なおも暴れるゆかりに跳ね飛ばされた保安部員を、黒須が怒鳴りつける。
「宇宙飛行しさんよ、あんたもあんただ。いつまでも手だしできねえと思うなよ」
「痛ッ」
ゆかりの手を抑えていた黒須が、軽く掌を返すと、ゆかりにいままでに感じたことのない
痛みが走る。鋭い痛みが一瞬、その後、鈍い痛みと、妙にしびれた感覚。
黒須の手を振り払おうするが、どうにも手の先まで力が入らない。どこかで感覚が途切れているような…これは――
「オウ、黒須ヨォ。今日ハ辞メテオクワ。リストヲ外サレチマッタ」
「ふふん、アンチェインの真似した所で許しゃあせんぞ小娘」
「な、なによ、許さな…ぐうっ!」
外された右手首に目がいった隙、左肩に、さっき以上の激痛が走る。
また振り払おうとするも、今度は全く力が入らなかった。肩から先が無くなったかのような
錯覚にとらわれる。全身で暴れようと肩を揺すると、一瞬づつ遅れてぶらり、ぶらりと揺れるなにか。
「えっ…」
振り向くと、左肩が外されていた。
「SSAがある今は、安定した稼ぎもあるが、傭兵ってのは中々に自転車操業でな。
俺ァ柔道整復師として骨接ぎをして暮らしてたこともあるんだ。
こういったことには中々詳しいんだ。どうだ、中々上手いもんだろう」
「う、上手いもんだろうってあんたね…ッ!」
「さーて次は右肩、と」
一瞬走る激痛と、なにより腕の自由を奪われるショックに、短く悲鳴を発してゆかりが崩れ落ちる。
「どうした、宇宙飛行士様? まさか自分がこんな扱い受けるとは思わなかったか?
宇宙飛行士なんてのは大人しくロケットに乗ってナンボだ。
暴れて施設壊すような奴にゃあ、ちょっとは躾をしてやらねえとなあ」
「ふ、ふ…」
ゆかりはキッと顔をあげ、黒須を睨み返すと、
「ふざけるなあッ!」
その顔を全力で蹴り上げる。