【涼宮ハルヒ】谷川流 the 42章【学校を出よう!】at EROPARO
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 42章【学校を出よう!】 - 暇つぶし2ch50:ワンハングドグラウンドゼロ 20
07/02/27 03:27:41 FPsz/NCb
 そこからはすぐだった。
 俺はマンションの敷地内への出入り口辺りに目をやる。
 
 ―いた。

 降り注ぐ凶器めいた建造物の破片にも逃げ出さず、俺の言いつけ通りに待ち続けていた。
 なんて奴だ。
 お前こそが忠犬ハチ公の生まれ変わりなんじゃないだろうか。きっと未来の渋谷にはお前の銅像が建っているに違いない。今度朝比奈さんに訊いてみよう。
 俺が未来の渋谷駅前の妄想に思考を奪われていると、犬っころはこちらの存在に気付いたようで、左後ろ足を引きずって近づいてくる。
「無理するな! 待ってろ!」
 俺も駆け寄ろうとするが、すぐさま停止を余儀なくされる。
 俺と小犬が作る距離のちょうど中間辺りに、カノン砲なんざメじゃなさそうな手刀が降り注ぐ。
「のわっ」
 マンションを囲うコンクリートの壁が砕かれ、水道管が破裂し、凄まじい水圧の即席噴水が作られる。
 いよいよ本気でやばい。
 続けざまに拳が振り下ろされる。小犬に近い。血の気が引き、大量の冷や汗が噴き出す。
 ドゴッという感じの擬音と共に、再び小犬が見えなくなる。
 ……おい、まさか。
 最悪の事態が頭をよぎる。
 俺は杞憂であることを祈りながら前に視線を固定する。すると拳が取り払われ、小犬との間の障害物が消える。俺はすぐさま安否を確認。
 いた。無事だ。
 どうやら杞憂だったようで、俺は胸を撫で下ろす。
 だが、おそらく小犬の真下だったんだろう。そこに埋められてある水道管が破裂し、その水圧がまともに小犬を直撃した。
 キャンッという痛々しい声と同時に小犬は横倒しにされる。

 そこで俺は決定的なものを目にした。

 こいつが纏っていたムラのある灰色。これはおそらく長期の野良生活で毛に染み付いた汚れだったんだろう。
 雨程度では流されることなく、むしろ雨だと余計に汚れる場合もあるかもしれんが。
 とにかく俺は見逃さなかった。
 凄まじい水圧でそれが流された一部分。
 そこに見えたこいつ本来の姿。

 白馬にも勝らん純白に輝く毛並みが、俺に姿を見せた。

 そして瞬時に。


 俺は全てを理解した。


 そうか。そういうことだったのか。
 きっとこれが、俺に課せられたこの時間旅行での役割。
 暴走車も、クッキーも、植木鉢ミサイルも、全ては俺がこの役目をやり遂げる為。
 朝比奈さんにとっての鶴屋さんが居るように、きっとハルヒにとってあの少女は、いずれそういう存在になってくれるのかもしれない。
 だから、仕方ねえ。
 あいつにとって大事な、そのきっかけを作ってやる為に、俺は何があろうと必ずこいつをここから無事に連れ出してやるさ。
 ハルヒ、俺の体を酷使させた借りは、いずれきっちり返してもらうぜ。


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