地下牢+拘束具+エロ拷問のSSスレッド 2at EROPARO
地下牢+拘束具+エロ拷問のSSスレッド 2 - 暇つぶし2ch93:796
07/06/17 22:48:44 WiAz0nSu
ヴィオネラの指示で隊員が人質の子達を飛行機に連れて行く。
人質の中には安心のあまり泣き出す子もいた、そんな彼等に隊員達は優しく話しかけて、彼等の不安を取り除こうとしていた。
「もう大丈夫だよ奈美さん。あの子達の事は心配ないから」
治療を受ける人質の子達を見ながら烈緒が奈美に言う。
「捜査官の人たちが受けた身体と心の傷も、ボク達が責任を持って治して見せます。後の事は任せてください!」
続けて、隊員にケアを受けている女性エージェント達を見ながらミーアも続けて言う。
「そうか、皆助かったんだね、あの地獄から…。もう、誰も苦しまなくてもいいんだ…ね」
奈美の呟きに烈緒達が頷く。
「よかった…。本当に…よかっ…た…」
彼女達の無事を見て、ようやく奈美の張り詰めていた緊張が解けた。
安堵の気持ちが奈美の心を覆い、彼女の身体から力が抜ける。そして、奈美の身体は糸の切れた操り人形の様にゆっくりと地面に倒れた。
「…!奈美さん!?」
洋子が慌てて奈美の元に駆け寄る。
「奈美さん!?こ、これは…」
ミーアが青ざめた奈美の顔を見て言葉を失う。呼吸も弱くなっているのが一目で分かった。かなり危険な状態だ。
「しっかりして!奈美さん!」
烈緒が涙を浮かべながら奈美を抱きかかえて必死に声を掛ける。
「止めろ!乱暴にするな!…救護班、応急処置の用意を。蘇生処置もすぐ行えるようにしておけ!何をしている、大至急彼女を病院に運ぶぞ!急げ!」
(彼女は私達の恩人、絶対に死なせはしない!)
普段は冷静なヴィオネラが声を張り上げながら隊員達に指示している。
だが、それらの声を奈美は聞くことは無かった、既に彼女の意識は底なしの闇に沈んでいたのであった…。

94:796
07/06/17 22:56:20 WiAz0nSu
長すぎたこの話も次回の投下で終わりです。
軽い気持ちで書き始めたこの話もいつの間にやら2年(3年だったっけ?)以上続いてしまいました。
最後の部分も他の職人さんの降臨を待ちながら書いていこうと思っています。
それでは、今回はこれで失礼します。

95:名無しさん@ピンキー
07/06/19 15:05:14 OS1bqGE+
乙( ・∀・)っ旦~

96:名無しさん@ピンキー
07/06/29 03:25:17 U7rP3pHq


97:名無しさん@ピンキー
07/07/04 21:58:01 kjOjNPIz
796さん、乙です

98:名無しさん@ピンキー
07/07/12 12:44:58 2XLdtqW6
ほしゅ

99:名無しさん@ピンキー
07/07/19 01:22:31 ds5lPiyk
捕手

100:796
07/07/22 13:38:51 6yl8IDBZ
お待たせしました、奈美のお話もこれが最後の投下です。

―ここはどこだ?―
奈美は不可思議な空間を漂っていた。
澄んだ水の中と見まがう空間に奈美は浮きながら横たわっている。
奇妙な感覚ではあったがそれは不快なものではない、むしろあまりの心地よさについ脱力して空間にその身を委ねてしまう。
―そうか、これは夢なんだな―
奈美は思った。
自分で意識できる夢を見ていると言う事は、自分の目覚めが近いと言う事。ならば、目覚めるまでこの心地よい空間で少しでも休んでおこう。そう思い、奈美は再び安らぎの空間に身を横たえるのであった。

「う、うぅん…」
軽いうめき声を上げて奈美が瞼を開ける。
「…!?奈美さん!」
奈美の視界に見覚えのある女性の顔が映し出された。
「…洋子さん」
奈美の呟きに、洋子の目から涙があふれる。
「奈美さん…、よかった…本当に、よかった…」
ぽろぽろと涙を流す洋子に奈美は優しく微笑みかける。
「洋子さん…、ずいぶんと心配をかけてしまったね。でも、もう大丈夫だから…」
その言葉に、洋子はワッと奈美の胸の上で泣き崩れる。泣きじゃくる彼女の頭を、奈美は優しく撫でるのであった。

101:796
07/07/22 13:39:39 6yl8IDBZ
「それで…、ここは一体何処なんだい?」
改めて回りを見渡す奈美。
彼女はベッドの中にいた、染み一つ無い清潔な白いシーツが奈美の身体を覆っている。
彼女の腕にはいくつかの点滴が打ち込まれていた。部屋の壁や天井は真っ白で、かすかに医薬品の臭いが漂っている。
そして、洋子の後ろには白衣を着た初老の男性が立っていた。
「ここは、W.M.P.A直属の病院だよ、久瑠須麻 奈美君」
洋子の代わりに初老の男が奈美の質問に答える。
「貴方は…」
奈美が男に尋ねる。
「私は君を担当していた医者だよ、洋子さんと一緒に君の容態を見守っていたんだ」
「そうですか…、ありがとうございます」
改めて男に礼を返す奈美。
「いや、お礼なら洋子君に言ってくれたまえ。彼女は君が起きるまで片時も傍を離れずに看病してくれていたのだからね」
そう言って、医者は洋子に向かって頷く。
「そうだったのか…、ありがとう洋子さん。…それで、起きるまでって、あたしはどの位寝ていたんですか?」
奈美の言葉に医者は壁に張ってあるカレンダーを見ながら答えた。
「9日、君がここに着てから目を覚ますまで9日間ずっと寝ていたのだよ」
「9日間も…」
答えを聞いて、奈美は言葉を失った。9日もの間、ずっと意識を失っていたままだったのだ。
奈美が受けていたダメージは、彼女が思っていたよりもずっと大きかったのだ。
「まあ、意識が戻って良かった。奇跡といっても言い。本当なら何回も死んでいる程のダメージを君は受けていたのだからね。まあ、今はあまり無理をしない方がいい。私は外に出ているから、洋子さんと話でもしていたまえ」
それは、奈美と洋子に対する心遣いなのだろうか、医者はそのまま病室を出て行く。
そして、病室には奈美と洋子の二人だけが残されたのであった。

102:796
07/07/22 13:40:27 6yl8IDBZ
「奈美さん…、意識が戻って本当に良かったです…」
涙ぐみながら洋子が言う。
「ありがとう、洋子さん…。でも、洋子さんの方こそ大丈夫なのかい?あんな所に何日も閉じ込められていたんだ、身体の具合がおかしくなっていたんじゃないのかい?」
奈美の問いに、頷きながら洋子は答える。
「はい、私もお医者様に見てもらいましたが、少し衰弱していた位で奈美さんを見守る分には何の問題もありませでした。栄養のある食べ物を摂っていたので今ではすっかり元気です」
「そうか…、よかった…。でも、人質となっていた子達はどうだったんだい?」
「最初の頃は、肉体的な衰弱よりもむしろ精神的な障害が大きかったんですけど…。ここのお医者様達の懸命な治療のおかげで今では皆元気に退院しています」
「そうか…、よかった…」
洋子の言葉を聴いて、奈美は安堵のため息をつく。
「…『王狼』の連中はどうなったんだい?」
「はい、首領である綺羅をはじめ、組織の人員はW.M.P.Aの手によって一網打尽にされたようです。特に、綺羅は二度と逃げられないように厳重に勾留されています」
「それで、正治君達は?」
「正治君は施設に保護されました、ただ、やって来た事が事だけに外へ出られるのは当分先だと言う事です。赤坂さん達は…、組織の一員として取調べを受けています」
「…そうか…。あの子達をそんな目に遭わせるのは辛いけど…、でも、これはあの子達が普通の生活に戻る為には避ける事は出来ない事なんだよね…」
少し寂しげな表情を浮かべながら奈美が呟く。
「でも、あの子達が普通の生活に戻れるように手伝うと、あたしは約束したんだ。その為にもあの子達の力になれるように身体を癒しておかないとね」
そう言って、奈美は洋子に力強く微笑むのであった。

103:796
07/07/22 13:42:34 6yl8IDBZ
「そう言えば、洋子さんも王狼にいたんだよね?洋子さんも取調べなんかは受けたのかい?」
「はい。私や一部の研究員は、組織に騙されて働かせられていた被害者と言う事で逮捕はされませんでした。なので、重要参考人と言う形で聴衆されたんです。
私は、特別にこの部屋で聴衆される事を許されました。奈美さんの横で話していたんですよ、貴女には聞こえていなかったでしょうが…」
少し寂しげに洋子が言う。
「でも…。なんで洋子さんのような優しい人が王狼なんかにいたんだい?あ、気にしているのならごめんよ。言いたくなければ無理に言わなくていいから」
奈美の言葉に、洋子は静かに答える。
「…奈美さんは自分の過去を私に話してくれました。ですから、私もお話します。なぜ、私が王狼にいたのかを―」
洋子が王狼にいた理由、それは早い話が金のためであった。
当時、母と二人暮らしであった洋子は薬剤師への道を志していた。母は苦しい生活の中洋子に自分の道を勧めるべく働き、学費などを全て一人で工面してきた。そんな母に、洋子は深く感謝していたのであった。
母の苦労を無にしない為に懸命に勉学に励む洋子。しかし、今までの過労が祟って、洋子の母親は倒れてしまったのだ。
大切な母を今度は自分が助け出す―そう決心した洋子は一刻も早く働く為、派遣として働き始めた。
しかし、それは大きな間違いの始まりだった。派遣では得られる収入もたかが知れており、母を養うのにはとても足りなかったのだ。
一生懸命働いても得られる収入は僅か、洋子は焦っていた。そんな折、怪しげな就職サイトで薬剤師のスキルを行かせる高収入の仕事がある事を知ったのだった。
それは、今まで聴いたことも無い会社だった。実態は、王狼の麻薬製造部署の隠れ蓑としての会社だったのだが、当時の洋子にはそんな事は知る由も無かった。
そして、そこで働き始めた洋子はすぐにその会社の実態を知る。しかし、病気の母を抱える身である上に、会社を抜ける事はすなわち死であった。
そうして恐怖と後悔に苛まれながら、奈美に出会うまで麻薬製造に関わってきたのであった。
「…ふふっ、本当に私は愚かですね、お金に目が眩んで何も見えていなかったんです。本当は私が人質の人達の分まで苦しまなければいけないのに、それを全て奈美さんに押し付けてしまった…」
泣き出した洋子に、奈美は優しく答える。
「以前、洋子さんはあたしに自分を責めるなって言ってくれたよね。今度はあたしが貴女に言うよ。洋子さん、そんなに自分を責めてはだめだ。洋子さんが勇気を振り絞って王狼から抜け出したから、人質の子達を救出することが出来たんだ」
「奈美さん…」
「洋子さん、貴女は何も悪くない。あたしは洋子さんと会えて本当に良かったと思っている。だって、こんなに優しい人があたしの事を想って苦しみを共に分かち合ってくれたんだからね。
だから、以前も言ったけどまた言うね。洋子さん、ありがとう、本当に…ありがとう」
そっと洋子の頬に手をやって答える奈美、その言葉に洋子の目から大粒の涙が零れ落ちる。
奈美の手に一筋の涙が触れる、それはとても温かい涙だと奈美は思った。

104:796
07/07/22 13:44:04 6yl8IDBZ
その時、せわしないノックの後に扉が開いた。
「奈美さん、目を覚ましたんだね!良かった!」
そこには嬉しそうな顔をした烈緒がいた。後ろにはヴィオネラとミーアがやはり安心したような顔で立っていた。
「烈緒さん!ヴィオネラさんにミーアさんも!」
奈美の言葉を聞いて、3人は奈美の傍までやって来た。
「ドクターから話を聞いたわ。意識が戻って本当によかった」
ヴィオネラが嬉しそうに言った。
「一時はどうなるかと心配していたんですけど…、洋子さんの想いを込めた看病のおかげかもしれないですね」
そう言うミーアの顔も、また嬉しげであった。
「本当に皆心配したんだからね。ここで洋子さんに事情聴衆している時も、皆貴女の事で気が気じゃなかったんだから」
烈緒が少し怒った様な口調で話す。この部屋で洋子を聴衆していた人物とは、烈緒達のことらしい。
「う、うん、ごめんよ。体力には自身があるつもりだったんだけど、少し無理をしすぎたのかな…」
苦笑いを浮かべる奈美に、烈緒は真剣な表情で言った。
「そんなに自分を粗末に扱っちゃ駄目だよ!ここに来た時の奈美さんの身体はひどいなんてもんじゃなかったんだから!外傷だけでも打撲や裂傷が数え切れない程あったんだよ。身体の内部だってボロボロだったんだから!」
「烈緒…さん?」
強い口調で話す烈緒に奈美は戸惑った表情を浮かべる。
「内部出血も酷かったし、内臓にも傷があったんだよ!それに…、体内から高濃度の劇薬が検出されていたし…。組織の人達の供述内容を見てみたら、クロス・マインドを原液で注入されていたって言うじゃない!」
「う、うん…」
「本当だったら、奈美さんはもう何回も死んでいる程のダメージを負っていたんだよ!なんでそこまで無茶をするの?奈美さんの馬鹿!もっと自分を大切にしないと駄目だよ!そんな…、そんな苦しみを一人で背負うなんて…。馬鹿!馬鹿!奈美さんの馬鹿!」
烈緒は泣いていた、泣きながら大声で奈美に怒鳴っていた。
この時、奈美は烈緒がいかに自分の事を心配していたかを痛いほど理解した。烈緒の気持ちを想い、奈美は言葉を失う。
「止めろ、烈緒。奈美さんが無茶をしたからこそ、今我々はここにいられると言う事を忘れたのか。恩を仇で返すような真似はするな」
「…。す、すいません、隊長」
ヴィオネラの一喝で烈緒は押し黙る。そして、ヴィオネラはベッドで横になっている奈美に深く頭を下げるのであった。

105:796
07/07/22 13:44:54 6yl8IDBZ
「烈緒が犯した無礼は代わりに私が謝ります。でも、烈緒も悪気があってあのような事を言った訳ではない事は理解して欲しいの」
ヴィオネラが烈緒を見やりながら言う。
「彼女は貴女一人に苦しみを与えてしまった事をすごく気にしているの。私達が医師に診て貰う時も『奈美さんの意識が戻るまで私は診察や治療は受けない』なんて言っていた位にね」
「…」
「もちろん、私達にはすることが山ほどあったから無理やり治療は受けさせたけど…。ここで洋子さんから話を聴いていた時も貴女の方ばかり見ていたわ。貴女に何かあったら私も死ぬ何て事も言っていた」
「…」
「全ては貴女を想うからこその言葉…。だからと言って暴言が許される訳ではないけど、それだけは分かって。烈緒は貴女の事が好きなのよ」
ヴィオネラの言葉に奈美はゆっくりと頷いた。
「うん、烈緒さんの気持ちは良く分かっているよ。あたしは少しも気分を悪くなんかしていない、むしろ、あたしの事をここまで心配してくれた事がとても嬉しかった」
「奈美さん…」
「あたしは何も気にしていないから…、だから烈緒さんも気にしないで」
その言葉に、烈緒が涙ぐみながら答える。
「…ありがとう奈美さん。でも、ごめんね、あんなひどい事言っちゃって。悪いのは私達の方なのに…」
今度は反省の弁が延々と続きそうな空気を感じて、奈美は慌てて話題を逸らす。
「そ、そう言えば貴女達を陥れた連中ってのはどうしたんだい?」
その質問にミーアが答えた。
「犯人はすぐに見つかりました。やはり、前々からボク達の事を疎ましく思っていた人達がボク達を秘密裏に始末しようと仕組んでいたんです」
烈緒が続ける。
「自分達では到底私達には敵わないし、そんな事をしたらすぐにばれてしまうからね。だからこそ私達が犯罪組織の手に落ちるよう仕組んでいたって訳なの」
ヴィオネラが更に続きを言う。
「連中の誤算は王狼が私達を処刑しなかった事。綺羅の下劣な性格までは読めなかったと言う事ね。おかげで、私達は生き延びる事が出来、彼等は軍規に乗っ取って処分される事となった訳よ」
「処分って…」
「心配しないで、銃殺とかじゃないから。除隊の上、王狼の共犯者と言う事で懲役刑と言う事で許してあげたわ」
ヴィオネラの答えに、奈美は何故と言う事も無くホッとする。
そんな奈美に、少しもじもじしながら烈緒が声を掛ける。
「え、と、それでね…。奈美さんに少し話しがあるんだけど…、ちょっとだけ、いいかな…?」
話が良く分からないままとにかく頷く奈美、それを見て烈緒は話を続けるのであった。

106:796
07/07/22 13:45:59 6yl8IDBZ
「奈美さん…。もし良かったら、私達と一緒にW.M.P.Aで働いてくれないかな」
「W.M.P.Aに?」
唐突な烈緒の話に、奈美はいささか面食らう。
「うん、私達の所属する第37大隊に士官として来て欲しいの。もちろん、その前に士官学校に行く必要はあるけれど…、奈美さんなら問題なく卒業出来ると思うから」
「…はぁ」
「最初は私やミーアと同じ少尉から始まるんだけど、奈美さんならすぐに階級も上がると思うんだ。そうなれば、ヴィオネラ隊長の様に一個大隊を率いる事も出来るんだよ」
「あの…」
「私、奈美さんと一緒に仕事をしたいんだ。始めは同じ階級なんだけど、奈美さんが昇級したら奈美さんの下でずっと働きたいなぁ、って思っているの」
熱っぽく話しかける烈緒にさすがに辟易しながら奈美が尋ねる。
「え…と…。なんで、烈緒さんはあたしなんかをスカウトする気になったのかな。あたしの実力なんて貴女達の足元にも及ばないって言うのに」
「それは、奈美さんが私の理想の人だから…」
「あたしが?」
「うん。私ね、自分に厳しくしても他人に優しく出来る人になりたいんだ。奈美さんは綺羅に捕らえられていた時、自分の身を犠牲にしても洋子さんや人質の子達を守ろうとしたよね」
「…うん」
「私達が奈美さんを責めさいなんでいた時も、貴女は私達を憎むどころか何とかして私達を正気に戻そうとしてくれたでしょ?あんなひどい事をされたら罵声の一つも上げるのが普通なのに、奈美さんはずっと私達の事を考えてくれていたよね…」
「…」
「私も貴女のようにどんなにひどい事をされても他人に優しく出来る強い人になりたいの。貴女は私の理想の人…。だから、一緒に仕事が出来ればな、って思ったんだ」
奈美の顔を見つめながら、烈緒は真剣な面持ちで言う。
「奈美さん、私達と一緒に行こうよ。世界には王狼より大きな犯罪組織なんていくらでもあるんだよ。闇の世界から皆を守るのに奈美さんの力が必要なの。だから、私達と共に戦って、お願い!」
必死の顔で奈美に訴える烈緒。奈美を見つめるその瞳は恐ろしいまでに鋭く、そして澄んでいた。

107:796
07/07/22 13:47:07 6yl8IDBZ
「…ごめん、烈緒さん。その話は無かった事にしてもらえるかな…」
少し間を置いてから、奈美は烈緒に答えた。
「えっ!?どうして、奈美さん!」
こうも簡単に拒否されるとは思っていなかったのだろう、少し声を荒げて烈緒が尋ねる。
「理由って言うのは特に無いんだけど…、あたしは他人に命令するのもされるのもあまり好きじゃないんだよね…。ガラじゃないって言うか、どうも集団で行動するって言うのが苦手でさ」
「大丈夫だよ、少し皆と一緒に過ごせばすぐ慣れるから!一人では無理な事も、皆で一緒に頑張れば出来るようになるんだよ。どんなに困難な事も、奈美さんと私達が力を合わせれば必ず乗り越えられるよ!だから、私達と一緒に行こうよ!」
必死に奈美を説得しようとする烈緒に対して、少し困ったように奈美が答える。
「…あたしは、誰にも迷惑をかけたくないし、かけられたくも無いんだ。それに、一人でやる方が自由に出来るしね。確かに烈緒さんの言う通り、皆で力を合わせればより大きな事が出来るけど、一人だからこそ出来る事もあると思うんだ。だから…」
「でも!」
「止めろ」
なおも声を掛ける烈緒を止めたのはヴィオネラだった。
「いつまで我侭を言っているんだ、我々に奈美さんを束縛する権利などないんだぞ。烈緒、貴女は自分の都合だけで恩人を縛りつけようとする人間だったのか?」
ヴィオネラの言葉に、興奮から冷めた烈緒はバツの悪そうな顔で奈美に謝った。
「…ごめんね、また奈美さんを困らせちゃったみたいだね…。そうだね、私に奈美さんをどうこうする権利なんてないんだし…、今の話は忘れて」
「ごめん、烈緒さん…」
「謝らないで奈美さん、悪いのは全部私の方なんだから。私、奈美さんには奈美さんの道があるって事、少しも考えていなかったから…。でも、道は違っても志は同じだよね。だから、またいつか一緒に仕事をしよ、奈美さん」
烈緒の言葉に奈美はゆっくりと頷いた。
「ありがとう奈美さん、約束だからね。後で私への連絡先を教えるから奈美さんの連絡先も教えて。じゃあ、私達もあまり長くはいられないからこの辺で失礼するね。後は洋子さんとゆっくりしていて」
「じゃあ、ボク達はこれで失礼します。ボクも奈美さんと一緒に仕事をする日を楽しみに待っていますね」
ウィンクをしながらミーアが言う。
「奈美さん、貴女は強いわ…。貴女のその強き心、私はいつまでも忘れない」
ヴィオネラがゆっくりと言った。
「じゃあね、奈美さん。ゆっくり休んで早く身体を治してね。…そうだ、最後に私の本名を教えるね。私の名は、三木堂 烈緒(みきどう れお)って言うの。…奈美さん、私、貴女に会えて本当に良かった」
そういい残し、3人は部屋から出て行った、己がなすべきことをなす為に。奈美との語らいは、彼女達に許されたほんの少しの休息だったのだろう。だが、その少しの時間は、彼女達にとって大いに意義のある時間だったに違いない。

108:796
07/07/22 13:47:54 6yl8IDBZ
3人が部屋から出て行くのを見送った後、奈美は洋子の方を向いて尋ねた。
「洋子さんは、これからどうするつもりなんだい?」
「ええ…、私は母を養わなければいけませんから、すぐにでも新しい仕事を探すつもりです。犯罪組織にいた私にどんな仕事が見つかるか分かりませんけれど…」
少し寂しそうな表情を浮かべながら洋子が答える。
「あのさ…、烈緒さんじゃないけど、よかったらあたしと一緒に仕事をしてくれないかい?」
「え?」
奈美の以外な言葉に洋子が驚いた声を上げる。
「いや、別に洋子さんを危険な目に合わせる訳じゃないよ。パソコンを使っての情報収集とか、身の回りの世話とかしてもらえればいいんだ」
「…」
「ちゃんと洋子さんに給料は出すよ、あたしの仕事は危険だけどその分収入はいいんだ。でも、あたしはあまりお金を使う事がないから無駄に貯まる一方なんだよね。洋子さんのお母さんを養う位のお金は払えるからさ、洋子さんが良ければ来てくれないかな」
少し気恥ずかしそうに話す奈美。
洋子には、その言葉が自分を気遣ってのものだと言う事が分かっていた。そして、自分もこの優しい女性と共に居たいと言う想いを強く持っている。
しかし―と洋子は考える、自分はこの人と一緒にいる資格があるのだろうか―
「奈美さん、ありがとうございます。わたしも奈美さんと一緒に居たいです。でも、今回私のせいで奈美さんにご迷惑をお掛けしました。私は、これ以上貴女に迷惑をかける事は出来ません」
洋子の言葉に奈美は優しく微笑みながら答えた。
「迷惑をかけたなんてとんでもないよ。さっきも言ったよね?洋子さんが勇気を出して、王狼から逃げ出してきたおかげで皆が助かったって」
「…」
「それに、あたしも洋子さんが傍にいてくれたからあの地獄に耐える事が出来たんだ。今度は、あたしが洋子さんにお礼をする番。だから、あたしに貴女のお母さんを助ける手助けをさせて欲しいんだ」
そう言って、奈美は洋子の手をそっと握り締める。
そして、洋子も奈美の手を握り返した。
「…はい、分かりました。…奈美さん、どうかこれからもよろしくお願いいたします」
手を握り締めながら、互いの顔を見つめあう二人。もはや、二人に言葉は不要であった。
今、二人の心は一つとなったのだ。それは、何者にも裂く事の出来ない強い絆そのものであった。

109:796
07/07/22 13:48:44 6yl8IDBZ
それから数ヵ月後―
「準備はどうだい?洋子さん」
人気の無い所に建っているビルの屋上で、奈美が口元のマイクに向かって呟く。
「…ええ、と。…はい、ハッキング終了です。ビルの管制システムは掌握しました」
少し離れた所で駐車しているワゴン車の中で、洋子が答えた。
「了解、これから突入するよ。サポートは頼んだからね」
「はい、気を付けて下さい、奈美さん」
奈美の言葉に、ワゴンの中に詰め込まれているパソコンをいじりながら洋子が返す。
あの日以来、洋子は奈美の補佐として働いていた。
今、彼女は身体にフィットした特殊スーツを着ていた。身体能力増加や防弾機能を備えた特注の品だ。
ベルトに巻かれたホルダーには拳銃が入っている。最も、入っている弾は殺傷能力の無い特殊スタン弾である。
洋子は奈美の世話係で終わることに満足せず、もっと奈美の役に立てるようになるべく自らを鍛え始めた。
始めは少しでも危険な目に会わせたくない奈美に反対されたが、危険な任務は行わず、あくまで奈美の補助役に徹すると言う約束で共に仕事を行う事を許されたのであった。
今では射撃のみならず素手や各種武器の格闘もこなし、今ではそこらのチンピラでは相手にならない程の実力を持っている。
格闘に関しては、護身術の意味合いも込めて奈美が丁寧に指導していた事もあって、短期間でここまで成長したのであった。
その他、奈美の補佐として必要なスキルを必死に学んで、今では奈美にとって欠くことの出来ない相棒となっていた。
洋子は、奈美の役に立てる事が何より嬉しかった。そして、奈美も洋子と共に居る事が何よりも幸せであった。
苦楽を共に分かち合う二人はこれからも戦い続けるのであろう。例え、傷つき、苦しむ事になろうとも、二人の間に絆がある限りどんな困難にも負けはしない。
「行くぞ」
一声呟いて、ビルの屋上から内部へと侵入する奈美。
満月の夜の元、新たなミッションが幕を開けるのであった。

~完~

110:796
07/07/22 13:54:01 6yl8IDBZ
長く続いた久瑠須麻 奈美の話もこれで終わりです。
話を書くのに時間がかかりすぎた上、最後の方はエロなしなどとんだ話になってしまいました。
ですが、こんな話に最後までお付き合いいただいて、皆様にはいくら感謝しても感謝しきれません。
おかげさまで、なんとかこの話も終わらせることが出来ました。
どうもありがとうございました。

111:名無しさん@ピンキー
07/07/22 14:50:23 JodWGedp
796氏、乙!!
お茶ドゾー(・∀・)つ旦~

112:名無しさん@ピンキー
07/07/22 19:34:39 /M3w8thQ
乙です!
エロ無しでもいい話でした!
完結してうれしいです。

ラストもハッピーエンドで良かった。
奈美も良かったけどヴィオネラがかっこよくて好きでした。

113:名無しさん@ピンキー
07/07/22 23:09:56 OMc4JeNY
物語を最後まで書ききるというのは素晴らしいことだ。
途中で様々な苦悩もあっただろう。その栄光を全力で称えたい。

G J ! !


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