嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ この29●●!at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ この29●●! - 暇つぶし2ch211:リボンの剣士 最終話B ◆YH6IINt2zM
07/02/19 23:08:45 qfatviFI
では投下します。

212:リボンの剣士 最終話B ◆YH6IINt2zM
07/02/19 23:09:36 qfatviFI
不吉な予感に引きずられて伊星先輩の家に着いた時には、既に何もかもが終わっていました。
切断された扉からこぼれている血の匂い。室内の明かりがはっきりと、倒れ伏している御三方を私に見せて
くれました。
その内の女性二人、新城先輩と木場先輩は、事切れていました……。
木場先輩の胸を貫通している日本刀、床に散らばっているダーツ。
何が起きたのかは、概ね想像できました。
二人の争いは殺し合い、という形で終結したのです……。

後日、その事件は新聞の一片に載りました。本物の新聞沙汰になり、私が記事を書くどころではありません
でした。
一人気を失っていただけの伊星先輩は、現場からすぐに警察署に引っ張られて、もう何日も姿を見せません

もちろん、学校やその周辺では大騒ぎです。

冬休みが終わってからも校門前で新聞記者が、出入りする生徒を捕まえては、何だかんだと
質問責めにする、という光景が繰り広げられました。
ワイドショーによくある、被害者はどういう人だったのか、と云うやつですね。
私は答えるのが嫌なので、集団に紛れてこっそりと、目立たぬようにして回避しました。
記者に根掘り葉掘り尋ねられることがいかに不快か、この立場に来て強く感じます。

卑怯ですね。

しかし、あまり心苦しい、等とは思わない自分がいます。
二人の相打ち、共倒れは、私の理想とするところではありませんか。
伊星先輩に固執する二人が一気に消えたことにより、私の狙いはずっと外れにくくなったのです。

理解を得るためのテクニックとして、感情の共有、というものがあります。

強いショックを受け、苦しんでいる人には、同じように苦しんでいる人に気持ちが解りやすいのです。
今回は全て同じではありませんが、親しい人を失って辛い伊星先輩と、己を偽って生活している私の心に共

通点を見出し、繋ぎ合わせることによって深い理解が得られるようになるはずです。
そしてそれは、伊星先輩の立ち直りを早める効果も期待できるでしょう。
先輩が学校に復帰したときには、私がすぐに秘密を打ち明ければいいのです。

互いの利に沿った、最良の展開ですね。
頭痛を引き起こすノイズは無視です。無視。



213:リボンの剣士 最終話B ◆YH6IINt2zM
07/02/19 23:10:37 qfatviFI
事件の日から二ヶ月あまり。
ついに伊星先輩が、学校に復帰したとの情報を得ました。
早速、休み時間に直撃しようとした……のですが、やはりと言うべきか、教室内は気まずい空気が漂ってお
り、私がずけずけと入っていける気がしませんでした。
かつて新城先輩と木場先輩が下駄箱前で対峙していた時とは、質が違います。
一触即発という感じではなく、むしろエネルギーが根こそぎ吸い取られているかのようでした。
二つの机にそれぞれ置かれた花瓶、それによるものだったのでしょうか。

仕方なく放課後に出直したら、肝心の伊星先輩は教室から姿を消していました。
もう返ったのかと思いつつ捜して回ったら、意外な所で見つけました。

―剣道場。

そこで伊星先輩は、女子剣道部部長と向き合っていたのです。
何事かと入って尋ねようとしたら、部員に竹刀で叩き出されてしまいました。
うう……先輩は中に入れるのに、私は追い払うなど不公平です。
それから部活終了まで、先輩は出て来ませんでした。
夜になり、部長たちと一緒に出てきたところで、ようやく私は先輩を捕まえるのに成功しました。

「お久しぶりです、先輩」
「屋聞か。何をしにきた?」

あまり重さを思わせない声でした。しかし何をしに来たとは、何かしに来ると想定していたのですか。
まあいいでしょう。

「復帰との事らしいので、顔を見に。ついでに少し話したいことがあるのですが」
「お前に見せるほどの顔ではないよ」

なぜか先輩は苦笑しました。
……はて、今何か、違和感が……。

「伊星、別件か?」
「そのようです」

一度先輩は剣道部部長と目を合わせて、また私のほうに向き直りました。
「部長さんはお先にどうぞ」
「わかった。お前も……しっかりな」

剣道部部長は先に帰るようです。残ったのは私と伊星先輩の二人。

「話したいことって、取材だろ?」
「違います」

これは本当に、新聞部とは全く無関係です。そんなものより持った大事な、未来が掛かった話……などと言
って引かれては困りますから、少しずつ。
「場所を変えてもいいですか?」

214:リボンの剣士 最終話B ◆YH6IINt2zM
07/02/19 23:11:19 qfatviFI
無人の教室に移動して、私と先輩は適当な席に座りました。
電灯はつけません。時間的に、全生徒は下校していることになってますから。
「話が見えないな」
「まだ何も話していないから当たり前です」
事件があっても、その不可解な部分は変わりないようです。

では、始動します。
「直球で言います。私、女なんです」
「……」
先輩のリアクションはありません。
続けて、私は男の振りをしている理由、過去についてざっとシンプルに説明しました。
「……」
先輩は口を閉ざしたままです。
「女である証拠、見せましょうか?」
「それはいい」
否定的なニュアンスで即答でした。こういう時だけ早いですね。

「……」
「……」

さすがにこっちも深い事情を持ち出しているので、うまく口が回りません。
というか、そんなほぼ無反応では、私が間抜けではないですか。

「……何故、俺にそんな話を?」
「それは……」
馬鹿正直に理由は言えません。ここからが勝負です。

うつむいてから上目遣いで先輩を捉えます。
「先輩に、何か慰めになればと思って……」
本来、私が女である事と先輩への慰めは、何の脈絡もないのですが、繋ぐポイントがあります。
席を立ち、先輩の前で私は服に手をかけます。これで気付くでしょう。“女”“慰め”“服を脱ぐ”、この
三つから生み出されることは……。

「やめろ」

よく通った声が教室内に響きました。
私は服を直して座ります。実は、これで上手くいったと言えるのです。
ほんのわずかな時間の出来事ですが、それによって流れは急に変えられました。
親しい人を失った先輩への新たなショックを与えて強引に苦しみをやわらげ、且つ私が女だという意識を持
たせる。だからここは、誘いを蹴るほうが正解なんです。

まあ先輩はすぐ女に手を出すような人ではないですから、始めから私の計算通り。
足掛かりの場、獲得です。


215:リボンの剣士 最終話B ◆YH6IINt2zM
07/02/19 23:12:09 qfatviFI
「剣道部で、何をしていたんですか?」
「……マネージャー登録をしてきた」
一度悪くなった空気を時間を待って立て直し、話の再開です。
「男子剣道部ではなく、ですか」
「明日香がやってた剣道……」
先輩は言葉に詰まった、のでしょうか。少し溜めか何かの後、言葉が続きます。
「……を、支えたくなった。支えなくてはいけないと言うか……」

……ふむ。
伊星先輩にとって、新城先輩の剣道とはどういうものなのか、気になります。
聞きたいですが、あまり深入りしては危険な予感がします。
私の目的の初期段階も達成されましたし、控えたほうがいいですね。
「そう思うなら、そうするしか無いですね」
何かしなければならない、と思っている限りは、必ず何かしらの目的を探し続けますから、即ちそれが落ち

込んだ状態からの回復とも取れるでしょう。
先輩の精神が立ち直ったようで、安心しました。



安心、してしまいました。



「女なのに、男としてやっていくとなると……」
教室を後にした校門までの道、珍しく先輩から話し掛けてきました。

「体育はどうしてるんだ?」
「見られないように、こっそり着替えてるんですよ」
「プールは?」
「見学です」
「……別にそのままでいってもバレないと思うが」
「それはどういう意味ですか」
「こういう意味だ」

先輩はペンを持ち、その先で私の胸を突きました。
「っ……」
確かに私は、あの先輩方のように女性としての体躯に全く恵まれていません。
だからこそ、男の振りをしていけるのですが……。
帰り際に少し嫌な話題ですねぇ。
「別にいいではないですか。人それぞれですよ」
「そうだな」
先輩に胸を触られたのは二度目です。ペンだからといって、ノーカウントには出来ません。
後でまた、何か責任を請求しておきましょう。

216:リボンの剣士 最終話B ◆YH6IINt2zM
07/02/19 23:13:02 qfatviFI
「では先輩、また……。あまり気を落としませぬよう」
問題ないとは思いますが、精神的な慰めというのは一応。
「部長さんも似たようなことを言っていたな」
……部長さんだって、新城先輩と言う部員を失って、辛いでしょうに。
「俺は大丈夫だから、そっちもあまり気にするな」
「わかりました」

私は先輩に背を向けて、自転車を飛ばしました。





そして翌朝。























先輩は、自ら命を絶ちました。

217:リボンの剣士 最終話B ◆YH6IINt2zM
07/02/19 23:13:49 qfatviFI

情報に寄れば、先輩が自分の部屋で死んでいるのを母親が発見したそうです。
その死に様は、体を何箇所もためらいもなく包丁で刺し、左右の首の血管を切り、部屋を血の海にしていた
との事。
他殺ではないかというくらい、自分でするには残酷すぎると言った人もいるとか。
遺書は無かったそうです。

クリスマスイブの事件が落ち着き始めた頃にこれですから、再び周辺は騒がしくなりました。
通夜には私も行きました。
新城先輩と木場先輩のときと比べて、人は少なめです。主に集まったのは、今の同級生と、かつての旧友で
しょう。

しかし。

何ですか。目の前に広がるのは、旧友と再会して喋りあう、和気藹々とした光景。
まるで同窓会です。
あちこちで話し声と、笑い声が上がっています。
……今まで生きていた中で、これほど人を殺してやりたいと思った時はありません。
「生きてても死んでてもウザいなあいつ」
今の言葉は、聞かなかった事にしてあげましょう。

そんな中、剣道部部長のあの人は、目から一筋だけ涙を流しながら焼香をしていました。
私は後に続きます。
焼香のとき、ふと見た先輩の遺影が、酷くぼやけていました。

駄目ではないですか。私も部活柄……写真には……うるさい、もので……。

「……っ」

218:リボンの剣士 最終話B ◆YH6IINt2zM
07/02/19 23:14:26 qfatviFI
ぼやけているのは遺影だけでなく、周りの物、人、全てでした。

「っ、うぅ……」

ああ、

ああ――。

あの振る舞いは、全て偽りだったというのですか!?

剣道を支えなければならないという思いは、嘘だったのですか!?

大丈夫だと口で言いながら、奥底では死ぬことしか考えていなかったのですか!?

……死にたいならせめて、それを言ってもらえれば、何が何でも止めたのに……。


―後の調べでわかったことですが、先輩の家庭環境は悲惨なもので、あの事件以来、母親からはいらない
息子だ疫病神だと、毎日のように罵られていたそうです。
また、中学では虐めを受けており、それを助け、支えとなっていたのが新城先輩でした。
それならば。
争いを煽って、間接的に二人を消した私は――!

通夜から帰った私は、まとわりついてくる妹を払って部屋に入り、机から万年筆を取り出しました。
家で新聞や原稿を書くときには、いつも使っているものです。
「……、!!」
意外にも簡単に、手で万年筆はへし折れました。
それは屑籠に放り投げ、ベッドに横になります。

……いくら嘆いたところで、死んだ人は帰ってきません。
それに私は、元々利用するのが目的だったではないですか。
利用しようと思ったけど、死なれておじゃんになった……それだけです。

それだけ……。

もし、利用するだけでなかったら……。

伊星先輩も、救われることがあったのでしょうか……?


(無残)

219:リボンの剣士 最終話B ◆YH6IINt2zM
07/02/19 23:15:10 qfatviFI
何エンドかは説明不要かと。

220:名無しさん@ピンキー
07/02/19 23:18:13 JksodeSu
どっちも明日香エンドか…明日香つよすぐる。

221:名無しさん@ピンキー
07/02/19 23:19:29 Acfc3Wd8
GJ!
でもカワイソス。・゚・(ノД`)・゚・。

222: ◆9tOKtjrIAs
07/02/19 23:37:39 jiOLLU43
>>64のつづき
投下いきます。

223:名無しさん@ピンキー
07/02/19 23:43:13 9oxzh5iT
>>219

il||li orz il||li

224: ◆9tOKtjrIAs
07/02/19 23:43:40 jiOLLU43
「……な、何で?」

霞が走り去ってから少しして、僕は一人呟いた。
デレデレはしてない……つもりだけど、もしデレデレしてたからって、何であんなに怒ったの?
うーん……わ、わからない。
でも、霞泣いてたような……。
よくわかんないけど、泣かせてしまったのだから僕が間違いなく悪いのだろう。

「あとで謝るか……」

一人立ち尽くしたまま、結論をだした。



「ただいま~」
「お帰りなさいなーくん!!!」

玄関の扉を開けるなり、速攻で僕に抱きついてきたのは姉さんだ。
姉さん──神谷 奈々は正真正銘僕の姉だ。
僕より1歳年上で、現在高校三年生。ちなみに僕と同じ学校だ。
僕と姉さんはよく似ていないと言われる。
姉さんは美人、僕は凡人だからだ。
なのに、今までのやり取りで分かるとおり、姉さんは弟思い、と言うかブラコン気味だ。
学校では生徒会長で弓道部で全国優勝で模試とかもトップクラスの文武両道な姉だ。
だけど、大学へは行かないらしい。姉さんが言うには、準備期間がほしいんだそうだ。
海外の大学でも狙っているのだろうか?
だとしたら、すこし寂しく感じる。

225: ◆9tOKtjrIAs
07/02/19 23:45:24 jiOLLU43

「くんくん……あれ?何か変な匂いするよ?なぁくん?」
「え?どんな匂い?」

姉さんが突然、胸の辺りに顔を押し付けるようにして匂いを嗅ぎだした。
自分でも嗅いでみたけど、別に変な匂いはしなかった。
ただ少しカカオの香りがするだけだ。

「……チョコ」
「……は?」
「チョコの匂いがする!!!」
「あ、あぁ、さっきお向かいのお姉さん達からもらったんだ」
「……出して」

いきなり声を低くして言う姉さん。

「な、何で?」
「いいからっ!!!
出して!!!」

姉さんの迫力に負けて、チョコをしまっていたカバンを差し出す。
姉さんはなんの感情も映さない瞳でそれを一瞥して、それを掴んで台所の方へむかった。
呆然と姉さんを見送る僕。

「ちょっと!どうしたの姉さん!」

遅れて、台所まで姉さんを追いかける。
が、姉さんは既にチョコを持っていなかった。

「ね、姉さんチョコは?」
「しまっちゃった」
「どうして?」
「だって、なぁくん持ってたら、一遍に食べちゃって鼻血出しちゃうかも知れないでしょ?」
「そ、そうだけど……」

226: ◆9tOKtjrIAs
07/02/19 23:47:55 jiOLLU43
なぜかちょっと感情的になってるみたいだけど、
姉さんにそこまで言われちゃったら、ご飯を作って貰ってる僕は反論できない。

「わ、わかった……」
「でも、どうしても食べたくなったらお姉ちゃんに言ってね?」
「う、うん、わかったよ姉さん」

まぁ、そこまでチョコが食べたい訳じゃないけど……。
お姉さん達のチョコ、期待してたのになぁ……。

とぼとぼと歩きながら自室へと向かう。
後ろのゴミ箱にチョコが捨てられている事に気づかずに。



「なぁくん!ご飯出来たよ!」
「今行くー!」

階下から姉さんの声がした。
急いで下へ向かう。

「今日も美味そうだね!姉さん!」
「今日はちょっと頑張っちゃった!」

テヘッ☆なんて続きそうな感じで言う姉さん。
実の姉さんなのに、可愛いなぁ、なんて思ってしまう。

「今日はちょっと高い挽き肉で煮込みハンバーグにしてみたんだけど……どう?」
「おいひぃよねぇさん」
「えへへ……ありがと」

僕が一口目を口に入れたところで姉さんが尋ねてきた。
口の中に食べ物が入っている状態で答えるのは行儀悪いが、答えた。
照れくさそうに笑う姉さん。

227: ◆9tOKtjrIAs
07/02/19 23:49:42 jiOLLU43
端から見れば、これは幸せな家庭そのもの。
──両親が居ないことを除けば。

父さんと母さんが死んだのは三年前。
何の前触れもなく、結婚記念日に旅行へ行くといって、そのまま帰ってこなかった。
死因は単純に交通事故だった。
二人が乗っていた車に、対向車線から走ってきたトラックが正面衝突した。
僕たちの両親に、トラックの運転手も即死。
僕らに残されたのは、この家と沢山の遺産だった。

あの時の事は今でも忘れられない。
死体の状態が酷いので、誰の目にも触れる事なく火葬された両親。
葬式では遺骨を手に、弔問客に頭を下げ続けた。
姉さんはただ泣くばかりの僕の代わりに喪主を務めてくれた。
葬式の間中、泣き続ける僕の傍にいて、「大丈夫だよ、お姉ちゃんがずっと傍に居るからね?」と言って僕を慰めてくれた。
たぶん、姉さんのこの言葉を僕は一生わすれないだろう。

お葬式の事で、姉さんが親戚の人達から信頼されているおかげで、僕らはこの家に住んでいられるんだ。
姉さんには感謝しても感謝しきれない。

228: ◆9tOKtjrIAs
07/02/19 23:50:51 jiOLLU43
「姉さん、……ありがとう」
「なになぁくん?いきなりありがとうだなんて」
「いや……、お礼が言いたくなったのさ」
「フフッ、変ななぁくん」

二人しておかしくなって、二人で笑った。
姉さんとこーやって過ごすの、好きだな……。
煮込みハンバーグを再び口に運びながら、ぼんやりそんな事を考えた。






食事の後、お風呂に入って、部屋に戻ってきた。
時計を見ると、もう12時を回っていた。
そろそろ霞に謝りに行くかな……。
そう考え、僕は窓に近づいた。
窓を開けると、すぐ向かいが霞の部屋だ。
窓を開けて呼び掛ける。

「おーい、霞ぃ~!」

反応なし。

「霞ぃ~、入るぞ~」

反応なし、強制突入する。

手を伸ばし、霞の部屋の窓を開ける。
窓の桟の上に乗り、飛び移る。

「ほっ!」
……侵入完了。

ちょっとしたスパイ気分になりながら、霞の部屋に入る。

「霞ぃ~」

霞の部屋の中は真っ暗で、周りが見えなかった。
霞に小さな声で呼びかける……が返事はない。
とりあえず、机を探し出し、備え付けのライトを点ける。
ぼんやりと照らし出される霞の部屋。
所々に人形が飾ってあったりする、普通の女の子の部屋だ。

229: ◆9tOKtjrIAs
07/02/19 23:52:46 jiOLLU43
ふと机の上を見ると、何やら綺麗にラッピングされた赤色の箱が……。
なんだこれ?

「ん…なお…?」

いきなり後ろから霞の呼び声がして、驚きつつ振り返った。
霞はまだ寝ぼけているようで、僕を見る目の焦点が定まってなかった。

「か、霞……?」
「あのねぇ、そのチョコねぇ……」
「なおにあげるのぉ……」
「それでね、なおにあやまるのぉ……zzz……」

話の途中でふにゃふにゃと枕に突っ伏す霞。
やっぱり寝ぼけてたみたいだ。
ありがとう霞。と心の中で呟く。
やっぱり霞は優しいなぁ。
ま、霞を起こすのも酷だから、仲直りは明日にするか。
そう決めて、霞に布団を掛け直してあげて、部屋を出た。



明日、霞から手渡されるであろうあの箱に期待を寄せながら、自室に入る。

「……なぁくん」
「うぉ!!!……って姉さんか……
どうしたの?こんな夜遅くに」

部屋のベッドの上の方からいきなり声を掛けられた。
目を凝らすと、姉さんらしき人影がベッドの上にいた。

「それはコッチの台詞よ?なぁくん?
……霞ちゃんの部屋で何してたの……?」

声を低くしてそう言い放つ姉さんからは、何故か怒りのオーラが漂ってきた。

230: ◆9tOKtjrIAs
07/02/19 23:55:57 jiOLLU43
お、恐ろしい……!!!
僕は姉さんがこれほど怒っているのは一度しか見たことがない。

「ひ、昼間に泣かせちゃって、謝りにいったんだけど……
ね、寝てたよ……はは、ハハハハ……」

姉さんの余りの恐ろしさ乾いた笑いを漏らす僕。
しかし、なおも姉さんのオーラは健在だ。

「本当に……?」
「ほ、本当だよ?」

僕がそう言ったら、姉さんの怒りのオーラは雲散霧消した。
かわりに、僕に媚びるような柔らかく、甘い声で話しはじめた。

「ならいいの……」
「な、なんだか良く分かんないけど、ごめんね?姉さん」
「違うの!
なぁくんは謝らなくていいのよ?
お、お姉ちゃんが悪いの……
う、疑ってごめんね?
お姉ちゃん、疑い深くって……グスッ」
「な、泣かないで姉さん」
「だって、だってお姉ちゃん、なぁくんに嫌われちゃう……ヒック…」

あぁ、姉さんまで泣かせてしまった……。
僕は女の人を泣かせてしまう呪いでもかけられてるんじゃなかろうか。
それは兎も角、姉さんを泣き止めさせないと。
こーゆう時はたしか…

「姉さん、僕はこんな事じゃ姉さんの事、嫌いになんかならないよ?」

と言って抱きしめ、頭を撫でてあげる。

231: ◆9tOKtjrIAs
07/02/19 23:58:29 jiOLLU43
依然も似たような慰め方をしたが、効果は抜群だった。
姉さんの機嫌は瞬時に良くなり、翌日から夕食はご馳走が続いた。
要はそれ位機嫌が 良くなると言うこと。
僕の期待どうりに、途端に姉さんのしゃくりあげる声は聞こえなくなり、顔を見なくても分かるくらい喜んでいるのが感じられる。
姉さんがもし猫だったら、ゴロゴロと嬉しそうに喉を鳴らしているだろう。

「あのね、なぁくん、お願いがあるの……」
「なに?姉さん? 僕に出来ることなら何でも……」

姉さんからお願い?
も、もしかして……

「あのね、一緒に……寝ていい?」

ぐはぁ!!!
姉さんがたまに頼んでくるこの『添い寝』は僕にとっては地獄だ。
姉さんのメリハリのある肢体が僕に引っ付いてくるのだ。
いくら実の姉と言えども、そんな事をされては息子がハッスルしてしまう。
寝ている間、姉さんが離してくれないので、処理しようにも処理できずに、一晩中悶々とさせられるハメになるのだ。
だからいつもは断っていたのだけど……。何でもやる、と言ってしまった手前、断る事は出来ない。
仕方ない…今日は完徹だな……。

「わ、わかった」

そうして僕は一晩中、性欲と言う名の化け物と戦うハメになったのだ。


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