【友達≦】幼馴染み萌えスレ11章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ11章【<恋人】 - 暇つぶし2ch250:名無しさん@ピンキー
07/04/02 00:01:30 A5OPQels
いきなりお風呂とは予想できなかった・・・。
あと3話、がんばれ。

251:名無しさん@ピンキー
07/04/02 00:34:30 DajOC/S0
うわぁ、GJです!!
お風呂で二人っきり……。果たしてどんな甘々なプレイが展開されるのでしょうか! 期待しております!

……ところで余談ですが、綾乃の体の描写の所で陰毛に関する描写が無かったのを良いことに、彼女はパイパンだと
妄想した私は破廉恥な男かも知れん……。

252:名無しさん@ピンキー
07/04/02 01:02:38 +E+J1WA8
GJでした。続き楽しみにしてます。

内容もさることながら啓介の口ずさんだうろおぼえの鼻歌に
思わず反応してしまった特オタは自分だけでいい。

253:名無しさん@ピンキー
07/04/04 15:54:45 vhTRo/dT
なぜか最後で脳内音声が橘さんの人に……

254:名無しさん@ピンキー
07/04/06 03:22:04 xW3Y9N6S
淫語スレッドに投稿しようとおもったけど、前フリが幼馴染みなのもで。

255:カナのシロ
07/04/06 03:24:57 xW3Y9N6S
同じマンションに住むクラスメートのシローは小学校からの仲だ。
シローは高校生になってすぐに陸上部のホープとして注目され、県大会で走り高跳びと走り幅跳びの県記録を更新し、
整った容姿と控えめで人当たりのよい性格で男女からの受けも良く、校内で最も有名な一年生となった。
当然、女子生徒がこのような好物件を放っておくわけがないのだが、彼の傍でカナがその縄張りを主張していては
おいそれと近づくこともできない。揃いのマフラーと手袋をして登校する二人は、雪をも溶かす程の熱愛ぶりを
みせつけ、生徒達をドキドキ、教師達をドギマギさせていた。


期末テストを前にカナは内心、焦っている。テストの事ではない。シローについてだ。
仲が良いとはいえ二人は恋人同士ではない。今はまだ。
中学3年生になるまではカナの方が背が高く、控えめというよりも気弱なシローは守るべき弟のような存在だった。
カナちゃんと同じ高校に行けば安心と可愛い事をいう“弟”の勉強もみてやった。成績のあまり良くなかったシローも
県内有数の進学校に入学することができた。やればできる子。カナはシローをそう評価していた。
「背も伸びたのだから部活でも始めてみれば?陸上部とかどうかな。ひ弱なままじゃモテないよ。」
カナは何気なく勧めたのだが、シローは陸上部に入部した途端に頭角を現し、県記録を塗り替えてしまった。
日に日に男らしくなってゆくシロー。一躍有名人となったシロー。クラスで人気者のシロー。
そんなシローを誇らしく思った。カナちゃんカナちゃんと慕ってくるシローは、やはり可愛い弟のようだった。
しかし、一学期の半ばを過ぎた頃になると、何か、カナはシローに違和感を覚え始めた。
部活のせいで一生に登下校する機会が減り、互いの家を行き来する事も殆んどなくなった。
シローを家に招いて食事をしたり何気ない会話や本を読んで過ごし、シローの家に行ってパソコンやTVゲームで
遊ぶ時間が、何物にもかえがたいものだったと気付かされる。
カナ以外の女子生徒と会話する事などこれまでは殆んど無かったのに、最近のシローは他の女子ともよく話す。
昼食は二人だけで一緒に食べるのが昔からの習慣だったのだが、今は大勢で食べるようになった。
たくさんの友人と食事をするのは嫌いではない。しかし二人の時間をこれ以上削られるのはたまらない。
そして一緒に食事をしている女子生徒の何人かはあきらかにシローが目当てなのだ。
放課後、シローを呼び出して交際を申し込んだ上級生がいるのも知っている。
カナは自分の感情の変化をはっきりと認識した。嫉妬と独占欲と焦燥感。
「このままでは、いけない。これは、ずっと前から私のものだ。」

256:名無しさん@ピンキー
07/04/06 03:28:31 xW3Y9N6S
カナはシローの家に足繁く通うようになっていた。
シローは以前の中間テストの結果が散々な結果で、次の期末テストでも同じような結果なら補習どころでは
済まないと教師に釘を刺されていた。元々成績の良くなかったシローは授業についていけなくなってきたのだ。
「部活なんてやってる暇があるなら、勉強しなさいよ。ほら、スペル間違ってるし。ここってテスト範囲だよ。」
部活を勧めたのはカナちゃんじゃないか。と屁理屈を言えばぶたれるので素直にごめん、と答えるシロー。
小学校の頃、ささいな事でケンカをして乳歯を二本へし折られてからというもの、カナには逆らえない。
実際、部活やその他に夢中で、家に帰ってからも予習復習をせずにいたのはシローの自業自得である。
「カナちゃんに勉強をみてもらうと、すごくはかどるんだ。自分でやってもよくわからなくて。
 ごめんね、僕、カナちゃんがいないとてんでダメだなぁ。」
シローの何気ない言葉に、カナはピクっと反応する。自分の体温が上昇するのが分かる。横を向き、眼鏡を
かけ直すふりをして誤魔化そうとする。窓の向こうでカエルが大合唱をしている。外はすっかり暗くなっていた。
「もうこんな時間。ちょっと休憩しよ。シローはその問題を解いてからね。」

火照った顔を覚まそうとベランダに出る。見慣れた景色。10年前とずっと同じ。
「なーんも変わらないねぇ。カエルも飽きないよねぇ。毎年毎年うるさいのなんのって。」
シローが後ろに立っている。田んぼのカエルがうるさいというのはこの時期のシローの口癖だ。
手すりにもたれながら、そうねと相槌を打つ。去年と同じ景色、去年と同じ会話。でも
「シローは高校になってから変わった。なんか、違う人みたい。私の知らない人みたいな時が、ある。」
「カナちゃん…?」
思っていた事がつい言葉に出てしまった。慌てて部屋に戻り、いそいそと帰り支度を始める。
なんとなくきまずくなり、勉強どころではなくなっていた。何より、シローの顔をまともに見る事ができない。
リビングでくつろぐシローの両親に挨拶をし、逃げるように家を出る。
突然の事に驚いたシローは、呆然とその場に立ち尽くしていた。

カナは部屋に篭もってさっきまでの事を思い出す。あの状況は、あの状況ならシローに自分の気持ちを伝え、
シローの気持ちを聞き出す千載一遇の機会ではなかったか。何故自分はあそこで逃げ出したのかと後悔するが、
後の祭りであった。メールで謝っておけばいくらか気が軽くなるのだろうが、携帯電話をもっていない身が恨めしい。
「ああー、明日どんな顔で会えばいいんだろう…私、かっこわるいな。」
カナはその晩、カエルの鳴き声が聞こえなくなるまでベッドの上でジタバタしていた。

257:名無しさん@ピンキー
07/04/06 03:30:27 xW3Y9N6S
うああ、3つめの上にコピーしたものを上書きしてしまった
ごねんなさい

258:カナのシロ
07/04/06 04:54:26 xW3Y9N6S
翌朝、いつもより遅く目覚めたカナがもそもそと登校の準備をしていると玄関のチャイムが鳴る。
少しして、シロー君が迎えにきたのよ早く用意を済ませなさいと母親に言われる。一緒に登校した日は
数えきれないがほどあるが、朝寝坊のシローから迎えにくるのは今日が初めてだった。
「朝練に慣れちゃってさ、早く目が覚めるようになったんだ。今まではカナちゃんに迎えにきて
 もらってばかりだったからね。僕から迎えにいくのは今日が初めてだよね。」
「うん…ゆうべはごめんね、その、コンタクトにゴミが入っちゃって。」
つい出任せを言ってしまい目線を落とす。昨日は眼鏡をかけていたのだがシローはそこに気付かない。
「そっか。ホント、びっくりしたよ。あの後さ、お前カナちゃんに何したんだーってお父さんに詰め寄られてさ。
 お母さんは大泣きするし、大変だったんだから。」

いつも通りのシローの笑顔にカナはホっとすると同時に、昨夜あれだけ悩んだ事がバカらしくなって、
カナは笑い出した。それにつられてシローも笑う。笑い声と一緒にここ数日の間、胸の中でモヤモヤしていたものも
流れ出ていくようだった。いつもの会話。一緒に登校しているだけで、こんなに楽しい気分になるなんてとカナは思う。
「シローから迎えに来るなんて、今日は雪が降るかも。もしかして、今のシローは別人だったりして。」
梅雨も明けかけて夏が近づこうかという朝。久しぶりの太陽が心地よい。
「そんなことないよ…そんなことないから!」
シローらしくない語調にハっとして、カナは振り返る。立ち止まって俯いていたシローは震えている。
「僕を知らない人だなんて言わないでよ。大好きなカナちゃんにそんな事言われたら、悲しいよ。
 ぼ、僕はずっとカナちゃんの事が大好きなんだ!カナちゃんしかいないんだ!」

大好きなカナちゃん。カナちゃんしかいない。シローは確かにそう言った。
頭の中で何度も繰り返していても、口にだせなかった言葉。
シローは顔を真っ赤にながら、カナを見つめている。もう震えていない。
大好き。シローから聞きたかった言葉。今度はカナが言えなかった言葉を言う番だ。
「ありがとう…私も大好きよ、シロー。私、シローの事が大好きなの。」
カナは自然に言葉を紡ぐ。簡単な事なのに、何故それができなかったのだろうと不思議に思う。

どちらからともなく手を繋ぎ、歩き始める。今までどおりの二人はもう今までとは違う。


259:名無しさん@ピンキー
07/04/06 12:50:59 ZHyto41S
連投支援たーん

260:名無しさん@ピンキー
07/04/07 07:47:05 ZxXjUESq
>>255
GJ!!

261:名無しさん@ピンキー
07/04/08 00:23:48 pMaxKCxs
いかん……この気が付いたら大切な人だったってシチュエーションと初心っぷりがたまらんな
何が言いたいかというと王道GJという事だ!

しかし欲を言えばこう、短いというかもっと未満な関係が見たかったりしたぜ

262:Sunday
07/04/09 03:09:16 UY/uNlAj
   _、_
| ,_ノ` ) やはり、甘い菓子の後には渋い茶が必要かと思われる



   _、_
| ,_ノ` ) 味は稚拙やも知れぬが堪能していただきたい



   _、_
| ,_ノ` ) よくセットで扱われるからか、お菓子の人に勝手に親近感持ってしまったり
   


   _、_
| ,_ノ` )ノ 迷惑極まりなく関係ない話で本当に申し訳ない  




263:Sunday
07/04/09 03:10:39 UY/uNlAj

「……怖いか?」
またその身体に覆い被さるように、崇之は紗枝の腰の横に手をつく。布団の傍には、
既に脱ぎ捨てられたカーゴパンツとトランクス、封を切られ四角いビニールが転がっていた。
この格好には、流石に若干の恥ずかしさを覚えてしまう。

「……わかんない」
紗枝の方も、下腹部を覆い隠していたスカートを剥ぎ取られていた。下着も片足首に
辛うじて引っ掛かる程度で、他に身に付けているのは汗ばんだシャツに解けかけた紐タイ、
殆ど役割を果たしていないブラと紺色のソックスという様相だった。
 両手で拳を作り胸元を隠そうとしているその様子は、何かに祈りを捧げているようにも
見える。

「…そか」
スカートを脱がせてから、その表情は今にも舌を噛みきりそうなくらいに強張っている。
こんな顔を目の当たりにすれば、さすがにこれ以上脱がせるのは躊躇われた。もっとも、
半端に着衣を残しているからこそ、余計に興奮してしまっているのも確かなわけだが。

「……」
「ぁ…っ……」

両脚を抱え下腹部を近づけ、よく見えていなかったその場所を眼下に映す。
 紗枝は胸の前で組んでいた拳を解いて、腕で自分の目線を隠してしまう。既に指で弄った
とはいえ、見られるとなるとまた違った恥ずかしさがこみ上げてくるのだろう。
己の昂ぶりの先端を、静かにあてがう。それと同時に、顔を組み隠す両腕の手首を握り締め、
ゆっくりと解いていく。
「あっ…やぁあ…!」
「…落ち着け」
どれだけ頑張ろうとしても、この時ばかりは羞恥心に打ち勝つことは出来ないのだろう。
半ば脚を開かれ、じたばたともがく彼女をゆっくりと宥める。再び指ごと絡めて腕の動きを
封じると、落ち着かせるように唇を重ねた。

「いくぞ?」

 風を受けた窓ガラスが、震えてガタンと音を立てる。

「……」

 雫を目の縁にたくさん溜めて、口許をやんわり握った手で隠して、紗枝は微かに頷いた。

下腹部に力を込め、少しずつ腰を押し進めていく。

「ひっ…うっ……!」

徐々に抵抗が増していくものの、崇之は止まらない。歯を強く食いしばって、快感とも
言い表し難い窮屈な感覚が局部を襲う。


264:Sunday
07/04/09 03:12:23 UY/uNlAj

「いっ……ぅああっ…!」
「……っ」
 痛々しく見えるほどに強張ったその表情は、極度な程に緊張しきっている。シーツは
最早布団ではなく、彼女の身体を覆い尽くそうとしていた。

ずちゅ…

 音が跳ねる。根元まで突き入れると、丁度奥にまで到達した。
「は…はいった……の?」
「……ああ」
 全部繋がってるぞ、そう付け加えると紗枝は握り締めていたままのシーツで顔を隠す。
 とりあえずしばらくはこの状態にいて、彼女が慣れるのを待とうとふっと息をついた。

「……動いて」

 端から両方の瞳をちろりとはみ出させて、申し訳なさげに懇願される。自分から動く勇気が、
まだ持てないでいるのだろう。
「……」
 崇之は目を丸くした。全く逆のことを言われると思っていただけに、一瞬呆然としてしまう。
「…痛くないのか?」
 数滴の赤い跡がそこに走っているのに、恥ずかしがってはいてもあまり痛がる様子は
見えない。まず間違いなく無理していると分かっているのに、思わず問い掛けてしまう。


「大丈夫……いちばん大好きな人なんだから…」


 言い終えると同時に、その瞳から涙が零れ落ちる。
「……」
 肯定とも否定とも受け取れてしまう、一番大事にしたい彼女の言葉は、またしてもその心を
燃え上がらせてしまう。

 顔を覗きこめば、視線が絡み合う。答えを返す必要は、もう無かった。

「んっ…うぅん……あっ…はぅぅ…」
 ゆっくりとぎこちなく、身体を揺り動かし刻んでいく。眉間に強い皺を寄せるその表情が、
やっぱり隠しきれなかった本心を伝えてくる。
「紗枝…っ」
「いやぁ…みっ、見ないでぇぇ…!」
 だけど触れてほしくなかったのか、手の平で様々な身体の箇所をまさぐっていた時には
投げかけられなかった台詞を、今になって突きつけられる。
 慣れない感覚に玩ばれる身体を目の当たりにされた時ではなく、痛みをこらえる表情を
盗み見られた時にそれを言うのは、やはり意地っ張りという性格が作用したからなのだろう。

「やぅ…っ! んんっ、ふう…んぁうっ……!」

 肌が擦れあい、合間合間に水音が跳ねる。
 額から流れてくる汗を拭う余裕さえ、今の崇之は持ち合わせていなかった。同様に身体中が
汗ばみ、微かな光沢さえ放っている紗枝の媚態に、自意識をもぎ取られそうになるくらいに
心奪われる。今身体を動かしているのは、欲望というより本能に近かった。

「いっ…うぅっ……くぅ…んうぅぅ…」
 いつの間にか前傾姿勢になり始め、お互いの間に挟む空気の冷たさを嫌ったのか、首の
後ろに手を回される。


265:Sunday
07/04/09 03:14:00 UY/uNlAj

「……っ」
「ひうっ!?」
 崇之も同様に、紗枝の背中の後ろに手を回す。そのまま起き上がらせ、体勢を座位へと
移行する。擦れあう勢いに重力が加わり、互いにを襲う刺激が増加していく。

「うああっ、あっ…いっ…いうぅ、いあああ!」
 身体の繋げ方を変えてしまったせいか、それまで紗枝の口から放たれていた声とは、
明らかに質が変わってしまう。「痛い」と何度も言いかけて、その度に口をぎゅっと結ばせる。
「……!」
 その様を間近で見てしまい、崇之は自我を取り戻し腰の動きを止めてしまう。息を切らせ
ながら、彼女の頬を撫で様子を伺う。
「……っ」
 すると、潤んだ瞳でキッと睨まれてしまう。痛かったことに不満を抱えているのではなく、
なんで止まるんだよ、そんな意味合いがこめられているような気がした。
「無理するな」
「して…ないっ、してないってばぁ……っ」
 言い返すというよりも、自分に言い聞かせるように紗枝は言葉を紡ぎ続ける。

「いっ…痛くなんか……ない…もんっっ」

 瞳を、ただひたすらに硬く固く瞑り続ける。

「全然…っ、大丈夫……だもんっ」

 だけど崇之は、言葉をそのままに受け止めることが出来ないでいた。目の当たりにする
表情がそれとは裏腹で、首の後ろに回された手には爪を立てられ、皮膚を所々削られている。
優しくするって約束した。だから今は、そうしてはいけないと思ったのだ。

「あたしは……大丈夫だから…」
「……」
 背中に手を回したまま、縋りつかれるような目を向けられ懇願されても崇之は動かない。
随分と焦りを見せている、自暴自棄になりかけている彼女の気持ちを許すのは、躊躇いが
湧いた。 優しくして欲しいと言ったのに、自分を軽んじるその様子に違和感が募ってしまう。

 崇之は知らない。

 紗枝が夢の中で味わった、あまりにも悲痛な想いを知らないのだ。

「焦ることない。俺はちゃんと、お前だけ見てる」
 諭すように、やんわりとした口調で崇之は続ける。それが、彼女を余計に惨めな気持ちに
させてしまうことに、気付かないまま。
「……っ」

どさっ

 その身体を更に慈しむように抱きしめようとしたその時、倒れこむ音と共に、視界が回った。
「……?」
 崇之は一瞬、何が起こったのか分からずに、呆然としながら天井を見つめる。改めて状況を
確認すると、身体を繋げたまま、どうやら押し倒されてしまったらしい。
 彼女の身体はやや猫背になっているものの、もたれかかってくることもなく起きたままだ。
しばらくの間密着していただけに、どうにもうすら寒い。

「……じゃあ、あたしが…動く…っ」
「紗枝っ」
 起き上がろうとするが、両肩を抑えられ阻まれる。いかに体格や力の差があったとしても、
寝そべり跨がれしかも肩を掴まれては起き上がれない。


266:Sunday
07/04/09 03:16:11 UY/uNlAj

「崇兄は…動かなくていいよ」
「やめろって、なんでそんな無理…」
「してない……無理なんてしてない…!」
 ひどくぎこちなくゆっくりと、だけど確実に腰が揺すられ始める。

「いっ……うぅ…ぅ」
「……紗枝…っ」
「つっ……ふぁう…っ…!」
 下半身に極度の快感を伴った痺れを覚え、それに耐えながら名前を紡ぐ。だけど目を閉じ、
腰をたどたどしく動かす行為に没頭しようとする彼女は、反応を示さない。

「くぁぁ…っ! うううっ…ああぁぁっ!」
 反応が、徐々に大きくなる。肩を抑えつけていた手の平は、度重なる振動でそこからずれ落ち、
崇之の頭の両横に添えられていた。口の端からはだらしなく涎が垂れ、重力に従い時折彼の
胸元や首筋に落ちてくる。それが、赤く熱く火照った身体には不可思議なほどに冷たく感じられてしまう。
「あぁっ…あぁっ……うああっ…!」
「……っ…うっ…く」
 下腹部を襲う甘い刺激に襲われ、垂れ下がる紐タイに頬をくすぐられ、彼女が身体を
起こしてもなお形と張りを保ち続ける小ぶりな膨らみを目の前に、またしても理性や自制心が
吹き飛びかける。
 圧し掛かられ、激しい熱を保ったまま繋がれた己の昂ぶりは、抗うことも出来ずに蹂躙
され続けた。

「紗枝…っ、止めろ…!」
 なんでこんなことするんだ、なんでこんな無理するんだ。怒りにも似た感情が湧き上がる。
優しくして欲しいとお願いしてきた癖に、どうしてそれを自分からそれをないがしろにするのか
理解出来なかった。
「やぁ…っ、止めない…もん……!」
「お前…っ」
 髪を振り乱して、紗枝は拒み続ける。腰の動きも、止まろうとはしない。
崇之は困惑する。からかったことは数知れないが、怒ったことは殆ど記憶にない。
だから強い口調で注意すれば、きっと折れると思っていた。動きを止めると思っていた。

「やだ…やだもん…っ……一緒にいたいもん…」
「……っ?」
 動きを止めようと更に言葉を続けようとするが、彼女の台詞を耳にして、それをこらえる。
口走っている内容が、今の状況からずれ始めていることに気付いたのだ。

「置いて……いかれたく…ない…っ……もんっ…!」

 自棄になりかけたようなその台詞に、彼女の異変にようやく気付く。部屋に帰ってきた時、
起こしたばかりの様子が変だったことも、唐突に脳裏に蘇ってくる。
「紗枝…?」
「やぁ……お願い…、いかないで……っ」
 明らかに様子がおかしい。初めての感覚に、現実と夢の境界線を失ってしまっているよう
だった。完全に、自我を失っていた。

267:Sunday
07/04/09 03:17:39 UY/uNlAj


 そんな様相に、崇之は確信する。


「……」
 両手を、身体に沿わせて上らせていく。片方を背中、もう片方を後頭部に置いて、ぐいと
引き寄せた。

「あ…っ!?」

「大丈夫、大丈夫だ」
 また胸元が引っ付いて、互いの肌がこもった熱を奪い合う。後頭部にやった手をすぐに
動かして、背中をさすっていた手と繋ぎ合わせる。そうすることで、また紗枝が身体を
起こせないようにした。
「ちゃんと、ずっと、傍にいる」
 至近距離から、しっかとその目を見つめながら、確かな言霊を放つ。

 プライドも照れ臭さもかなぐり捨てた、本音だけの本心。
「俺も、お前の傍にいたいんだ」

 一番大事にしたい娘を、失いたくない。

 いちばん大好きな人に、置いていかれたくない。

 多少の言葉の違いはあっても、こめられた意味は寸分違わぬ同じものだった。


「だから…そんな無理をするな」


「……っ」
 瞳に色が灯る。どうやら、手放しかけていた正気を取り戻したらしい。
 だけどその表情は、存外に悔しそうな意味合いに染め抜かれている。そのせいで、緊張を
解くことが出来ない。

「今更そんなこと…言わないでよぉ……」
 呟かれたのは恨み言。気持ちがぶり返してしまったのか、情緒不安定になってしまって
いるようだった。そのことに不安を余切らせながらも、それでも彼はじっとその顔を
見据え続ける。

「あたしを…あたしのこと……変えたくせに…っ」
 紗枝はその体勢のまま、半ば無理矢理に腰を動かし始める。しかし今度は、それを咎め
なかった。掴んでしまった確信は、間違いなく核心をついていた。


「崇兄が……崇兄がしたんだ…っ、あたしを…こんな風に……ぃ…っ!」


「……」
 昔は、大人しい奴だった。髪も長くて人見知りで、いつも後ろからついてきていて。

 だけど今の彼女はそれとはまるで別人だった。

 明るくて元気で、友達もたくさんいて。そして随分と意地っ張りな性格になってしまっていた。

 今になってようやく実感する。
 
 彼女の心に常にあり続けた、一番根っこにある心情を。

268:Sunday
07/04/09 03:19:39 UY/uNlAj

「紗枝……っ」
「ひぁっ…!?」
 勢いをつけ、今度こそがばりと起き上がる。倒される前の状態のように、座った状態で
向かい合う。身体が離れてしまわないよう背中に手を回し、首の後ろに回される。

 崇之はそこから更に脚を動かす。あぐらの状態から、膝をつき腰を浮かせたまま正座する。
身体を動かしやすいように。

ずちゅんっ

「うああっ!」

 二人同時に下腹部を前に押し進めてしまったことで、奥の奥まで繋がってしまう。激しい
衝撃に、紗枝の背中が折れそうなくらいに反り上がる。

 限界はもう、すぐそこまで近付いていた。

「あぁっ…、ひぁあ……やっ、やぁ、やあぁー!」
 痛みを無くしたのかのように、紗枝は狂い続ける。意識も視覚も、半ば機能していない
ようだった。明確な意志が感じられるのは、最早首の後ろに回された腕だけだった。

「っつ…!」
 昂ぶった先端が収束し始める。意識や感覚を根こそぎ奪ってしまうほどの強烈な快感が、
すぐそこにまで近付いてきていた。

「あはぁ…ああぁっ、んんっ、ふむうぅっ、んぅぅっ!」
「つ……ぅ…ふっ…く…っ!」
 本能で、半開かれた唇をむさぼりむさぼられる。繋がれるのも一瞬、繋がれないのも一瞬。
キスと言うには、あまりにも拙く理性に欠けていて。全部が、全てが、加速していく。

「やぁ、あぁぁ…た…たかにぃぃ……っ!」
「紗枝……紗枝…っ」

 名前を呼ぶ声が、吐息が混じって交錯する。

 新たな爪痕が、崇之の背中を走る。

 ごちりと、額同士がぶつかり合う。

 互いに目を閉じていても、確かにお互いを感じ取っていた。
「……っ…っ」
「やっ…あっ…あああっ…!」

 五感全てが弾けて爆ぜる。

「……っっ…っつ!」

 それを手放した瞬間、崇之は白く濁った想いの塊を気の赴くままに解き放つ。

「――っ!」
 
 紗枝の華奢な身体が一度だけ、言葉にならない悲鳴と共に大きく律動した――








269:Sunday
07/04/09 03:20:52 UY/uNlAj





ガタンッ


「…ん……」
 風に強く吹かれたのか、はめ込まれた窓ガラスが音を立てて震える。それにつられるように、
紗枝はそれまで閉じていた瞼に力を込める。

「……」

 何だか、とても懐かしい夢を見ていた気がする。

 どんな内容だったのかは欠片も覚えていなかったが、懐かしいという余韻だけが胸に
残り続けていた。ひどく現実離れしていたような気もするが、一体どんな夢だったのだろう。

 ぼやけた視界がやがて定まると、目の前をじっーと見つめ始める。それに従うように、
思考も現実の世界へと傾いていく。そこには、おそらく横たわった時から今もなお腕枕を
してくれてる、いちばん大好きな人の寝顔があった。
 鼻息しか立てずに眠りこける彼の顔は、思ってたよりもずっと幼くてあどけなくて。性格は
ひねくれてるのに、なんでこんな表情を見せるんだろうと、思わず微笑んでしまう。

つん

 そしたら何だかちょっかいを出したくなったりして。数時間前、彼に全く同じ悪戯を
されたことを彼女は知らない。

つんつん

 くすぐったそうに顔を歪める様子にくすくすと笑いながら、人差し指を彼の頬に突き立て
続ける。
「はー…」
 声を出すから起こしてしまったかとも思ったが、目を開く様子は無い。どうやらただの
寝言だったようだ。

「……」

(しちゃったんだ…あたし……崇兄と)
 ふいに思い出して、頬が赤くなる。一糸纏わぬ身体を隠すように体勢を入れ替えうつ伏せに
なると、腕ではない本当の枕を掴んでぎゅっと抱き締める。そのまま顔を半分、口元を
そこにうずめさせた。見られていなくても、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 あの後、ほとんど身体を動かせなかった自分を尻目に彼はせかせかと後始末をしてくれた。
繋がっていた身体を離して、汚れた箇所をティッシュで拭いてくれて、汗で身体を冷やしたら
いけないと半端に身に着けていた衣類を全て脱がせてくれて。それが終わったらすぐに
隣で横になって腕を差し出してくれて、一枚の布団を共に被った。
 その行為全てが嬉しくて、だけどやっぱり違和感を覚えてしまうことに苦笑を浮かべて
しまって。


270:Sunday
07/04/09 03:22:16 UY/uNlAj

 友人に注いでもらった勇気を使い果たし、夢の中の仮初めの思い出にひどく打ちのめされて
いたのに。それ以前からも、ずっと気持ちが沈んでいたのに。

 やっぱり崇兄はずるい。こんなに簡単に、幸せな気持ちにさせるなんて。
だけどその力を持っているのは、崇兄だけなのだ。

「ありがとね…」
 身体を動かした際、下腹部につきりとした痛みを覚えながらも、それを表情には出さない。
ずっと腕を貸してくれてたことに感謝をしながら、また眠った横顔を見つめだす。

『ちゃんと…優しくしてやる』

 ちゃんと、優しくしてくれた。

『今までで……一番優しくしてやる』

 今までで、一番優しくしてくれた。

 溺れてしまいそうになるくらい恥ずかしかったけど、それ以上に嬉しくて。やっぱり、
とっくに幼なじみや妹としては見られてなかったんだと分かって申し訳なくなったけど、
お互いに本心を明かすことが出来て、仲直り出来て本当に良かった。
「……」

ちゅっ

 そんな気持ちが交錯していき、思わず作ってしまう赤い跡。それが一つ二つと増えていって、
やがて同じ箇所をまた重ね合わせてしまう。

「だいすき…」

 まるで小さな子供が、父親に対して言い放つような、たどたどしくも無垢色に染まりきった
愛情表現。
 本当は起きている時にしたいのだけれど。素直になるって、やっぱり難しい。

「たかにぃ……」

「呼んだか」

かばっ

「うわぁっ!?」

 そしたら突然覆い被され、背後から伸びてきた二本の腕にがっしり捕まえられてしまった。
ただでさえ近かった距離が、更に狭まってしまう。
「こういうことやったりそういうこと言ったりすんのは……起きてる時にして欲しいもんだな」
「ちょっ…お、起きてたの!?」
「最近、年でな。すーぐ目が覚めるんだわ」
 さすさすもぞもぞと、お尻を撫でてくる手を払いのけながら始まる、向こうが主導権を
握ったある意味いつも通りの痴話喧嘩。やっぱり彼との付き合いは、心臓にはとても良くない。
「やっ…触るなぁぁ」
「んー? どこを?」
「あたしのお尻!」
 下腹部に痛みのせいで上手く身体を動かせなくて、わにわにと蠢く指から逃げ出すことが
できない。顔と顔、身体と身体も徐々に狭まっていく。引いていた赤みが、再びさっと
差していく。


271:Sunday
07/04/09 03:23:32 UY/uNlAj

「も…もう! ほんとすけべなんだから!」
「しょうがねーだろ。半年近くお預け食らってたんだからな」
「それは…その、悪かったと思ってるけど。だからってこんな…」
 言い返され言い返そうとした時、紗枝は太ももあたりに妙な違和感を覚える。何か熱くて
固いものが当たっているのだ。しかもそれは強く脈打ちどんどんと大きくなってきて――


「やーーーっ!!」


 それが何なのか気付くと、思わずじたばたと暴れだしてしまう。
「いやぁー! 変態ー! エロー! 痴漢ー!」
「ンなこと言われてもなぁ…生理現象はどうしようもねぇだろ」
 収まっていた腕の中から抜け出して、そのまま起き上がり枕でばっすんばっすんと彼の
頭を叩きつける。しかし何度叩いても意に介されることもなく、首を傾げられ、言い訳される
ばかりだった。
「なんでそんなに元気なんだよ!」
「そりゃー半年近くもお預けを食らったら、一回ぐらいじゃあな」
「うるさいっ!」
「お前から聞いてきたから答えてやったんぢゃねーか」
「うるさいうるさいっ!」
 相変わらずというかなんというか。仲直りしても関係が進んでも、端から聞いてると
"らぶこめちっく"にしか聞こえない二人の喧嘩には、一向に変化が訪れる様子がない。

「ったくうるせーな。何発も叩きやがって」
「あっ!」
 と、意識をそちらに集中させてしまっていたせいか、あっさりと枕を奪われてしまった。
これじゃ彼の頭を叩く道具が無い。
「返してよっ」
「俺のだろうが」
 奪い返そうと素早く手を伸ばすが、悲しいかなあっさりかわされ空を切るばかり。

がしっ

 それどころか、せわしなく動かしていた両腕はあっさりと彼に掴まれてしまう。

がばりっ

「わっ…」
「ほら、暴れるのはもういいからもうちょっと寝とけ」
 しかも、彼の腕の中に身体を閉じ込められてしまう。こうなるともう、どれだけもがいても
無駄な努力に終わるだけだ。
「もう…ずるい……」
「そう言うな。裸だと寒いだろ?」
 鼻腔が、崇兄の匂いで満たされる。同時に、胸が様々な感情で満たされる。昨日までとは
あまりに不釣合いな幸せの連続に、どうにも慣れることが出来ない。
「……もう…」
「ははは」
 たくさん言いたいことがあったはずなのに。文句だけじゃなくて、お礼や伝えたいことが
たくさんあったはずなのに、それがちっとも出てこない。恥ずかしさと悔しさで俯いて
そこに埋まってみせれば、満足げに笑う声に鼓膜をくすぐられた。

 外を見やるとかなり薄暗い。まだ太陽は、地平線の向こうから完全に顔を出してはいない
ようだ。時計に視線を移すと、時刻は四時半を過ぎたあたり。随分眠ったとも思ったが、
この部屋に入った時刻を思い起こし、まだこんな時間なのも仕方ないかと考え直す。


272:名無しさん@ピンキー
07/04/09 03:26:14 Vias7Z2q
支援

273:Sunday
07/04/09 03:32:34 mqaDXy1t

「でも…」
「ん?」
「お腹空いたね」
「……まーな」
 当初は話だけをして帰るつもりだったから、昨晩は夕食をとっていない。意識がはっきり
していけばしていくほど、寝起きとはいえ空腹感を覚えてしまう。
「食べる?」
 部屋を掃除した時、確か流しの傍に食パンが無造作に置かれていた気がする。それを
トースターで焼けばちょっとした腹ごなしにはなるだろう。
「いや、いい」
「……」
 ところそれを拒まれる。お腹が空いてることに同意したのになんで断るんだろうと、
訝しがるように視線をその表情に向けた。


「寒いし、眠い」


「……」
 その瞼は既に、静かに閉じられている。回された腕の力が、ほんの少しだけ強まった気がした。
「へへー」
「…ンだよ」
 言葉に隠れた彼の本心をしっかりと感じ取り、どうにも顔のにやけが収まらなくなってしまう。

 幼なじみだから知っている。

 こんなひねくれた性格で、あまり自分の気持ちとかを語ろうとしない人だから。「好きだ」
とか言う時は決まってふざけてる時で、その本音を表す時は、決まって言葉を濁したり
はぐらかしたり遠まわしな台詞を口にしたりするのだ。

「嬉しい」
「……」
 にこりと笑みを浮かべて、曲がりくねったボールをまっすぐ投げ返してみれば、片方の
瞼が少しだけ開く。少し不機嫌そうに口元を歪めると、ふいと顔を逸らした。
「…調子乗ってるとまた泣きを見るぞ」
「崇兄が……傍にいてくれるもん」
「……」
 布団と彼の暖かさに包まれて、また少しだけ瞳がとろついてしまう。
おかしい。崇兄が珍しく自分に対する気持ちを口にしてくれたっていうのに、こうまで
素直になれる自分は、どうにもおかしい。普段だったら、頬や耳や顔や身体が全部赤くなって
熱くなって何も言い返せなくなってしまうのに。というか、ついさっきまでそんな感じだった
はずなのに。
 もしかしたら、抱きしめて時点でもう眠ってしまっていて、これも夢なのかもしれない。
それならちょっと納得がいく。

274:Sunday
07/04/09 03:34:51 mqaDXy1t

「ま、そう言ってもらえるのは光栄だし嬉しい限りだが」

 背中に回されていた大きな手の平が、少しずつ、少しずつ上に上がってくる。肩、首筋、
後頭部を撫でて、そしてそのまま――


くしゃり


「あんま信用すんなよ?」
 頭を、ゆっくりと撫でられてしまう。

 わしゃわしゃと、跳ね返った癖っ毛を軽く押さえつけられるように。

「……」
「……」

 お互いに、じっと見つめあう。片や目を丸くして、驚いた表情で。片や眠たそうに、
少し不機嫌な表情で。
「……」
 紗枝は、ただ驚いていた。どうして分かったんだろう。どうして、頭を撫でて欲しい
なんて思っていたことを、見抜かれたんだろう。

 昔からずっとされ続けてきた行為は、去年の夏終わりの河川敷で、もう一つの大きな意味を
携えることになった。その時のあの奇妙な色した空の様子は、今でもよく覚えている。

「なんで…分かったの?」
「? 何をだ?」
「その……撫でて欲しいって思ってたこと」
 夢の中でされた時は激しく傷つけられた行為だったけど、一度抱いてもらった今なら、
もう大丈夫だと思っていた。何より、そうされることが、幼い頃から好きだった。そこに
どんな意味があったとしても、相手がそれを込めていなければ大丈夫だと思えたのだ。

 だけどして欲しいなんてまだ口にも態度にも出してなかったし、崇兄の方からしてくれる
なんて思ってもいなかった。

「さぁ、よく分からん」
 首を傾げそう答える彼は、本当に自分でも良く分かっていない様子だった。
「ただ…気付いたらもう撫でてた」
 なんでなんだろうな、そう呟くと彼の手の平は再び背中を掻き抱く。
「お前がそうしてほしいと思ってたなら、良かったけどな」
 ふっと短く息をつくと、それが微かに顔をくすぐる。また距離がぐっと近くなって、
間近で見つめることになったその表情には、明らかに安堵の色が浮かんでいた。

「……」

 その表情を垣間見た時、彼女の心にもまた、不可解な欲求が灯ってしまう。何故なのか、
理由は分からない。だけど彼が頭を撫でてくれたのなら、自分もそうしなきゃいけない
という使命感にも似た気持ちが、ふつふつと湧き上がってきたことだけは確かだった。

275:Sunday
07/04/09 03:36:15 mqaDXy1t

「あ、あの…」
「ん?」
「あ…ありがと……」
「どういたしまして」
 それは、こうしてお礼を言うことじゃない。
 慣れないことだから、というより今まで一度もしたことないことだから。

「…た……たか…」

「…?」
 当然、鼓動はペースを速めていく。胸の前でぎゅっと手の平を握り締めて、彼の胸に
額をトンともたれさせながら。紗枝は消え入るような声で、微かに口を動かした。



「た…崇……ゆ…き……っ」



「……」
「……」
「…………え?」
「~~~~~~~~っ」
 間の抜けた声が頭の上から降ってくると、途端に視界が爆発を起こす。彼から身体を背けて
小さく丸まってしまおうとするものの、更に力強さを増した絡み付く腕が、それを許して
くれない。
「やっ…ご、ごめんなさい」
 何を言われるのか怖くなって、思わず謝ってしまう。そんなことで怒るような人じゃない
ってことは、とっくに分かってるはずなのに。

「呼び捨てしやがってコノヤロー」

 口調の汚さとは裏腹に随分嬉しそうな色合いで響いたその台詞は、彼女の混乱を余計に
助長させることとなった。
「ごめん…っ……ごめんなさい…」
「全くだ。四つも年上の人を呼び捨てとか酷いぞ」

 幼なじみだから知っている。

 こんなひねくれた性格で、あまり自分の気持ちとかを語ろうとしない人だから。「好きだ」
とか言う時は決まってふざけてる時で、その本音を表す時は、決まって言葉を濁したり
はぐらかしたり遠まわしな台詞を口にしたりするのだ。

 だけど、知っていても困惑が止まってくれない。慣れないことはするもんじゃないと、
今になって激しく後悔するのだった。

276:Sunday
07/04/09 03:39:00 mqaDXy1t


「さぁ、じゃあもうちょっと寝るか」
「こ、このまま?」
「このまま」
 裸のままぎゅっと抱き寄せられたこの状態は、眠るには適していない。体勢が悪いし
少し暑苦しいし、何より心臓に多大な負担がかかる。
 彼は、分かっているようだった。どうしていきなり、呼び捨てで名前を呼ばれたのか。
理由を聞いてしまった自分とは違ったその様子が、どうにも悔しい。

「おやすみ」
「……」

 自分の意見や気持ちを丸々無視するその態度を、やっぱり彼らしいと思って微笑んで
しまうのはおかしなことだと思う。冷たくされて喜ぶなんて、考えなくても変だ。だけど、
こうして育ってきた。二人にとっては当たり前のことなのだった。だからこれは、おかしな
ことでもなんでもない。当たり前のことなのだ。

「うん……おやすみ」

 それから少し時間を置いて、自分でも聞き取れないくらいの声で、彼女は囁き目を閉じる。


 その瞬間、瞼の裏には見たこともない、だけどなんだか懐かしい夕餉時の光景が浮かんで
消える。崇兄と、自分と、そして小さな男の子と女の子の四人が並んであぜ道を歩く、
思い出写真にも思える刹那の一幕。


 それが一瞬、浮かんで消えてしまう。


 何を表しているのか、まるで分からなかった。

 
 どうしてそんなものが見えてしまったのかも、分からなかった。


 唯一つ、たった一つ分かっていたのは。


 それがひどく、現実離れしている情景だということだけだった―――




277:Sunday
07/04/09 03:43:11 mqaDXy1t
   _、_
| ,_ノ` ) ……



|ω・`)ノ チナミニマダオワリジャナイヨ、アトイッカイダケツヅキマス



|ω・`;)ノシ ゴメンネ、キタイハズレデゴメンネ



|ω・`;)ノシ サンザンカイトイテ、コンナノデゴメンネ


  サッ
|彡


278:名無しさん@ピンキー
07/04/09 04:48:23 eTXk14pS
べけやろう!
さんざん待たせてこの結果か!
おにんにんがおっきおっきして大変じゃないか!
これだけははっきり言っておくぞ!

超GJ。愛してる

279:名無しさん@ピンキー
07/04/09 23:25:44 99Sr9aUU
ぬはー、GJです!

甘くて幸せで良いですなぁ。素敵です!

280:名無しさん@ピンキー
07/04/10 00:23:28 1fzAChqw
君は繰り返し寸止めをして、
何度も何度も寸止めをして
見守る僕が眠れない漏れらがクシャクシャになったとしても
一万年と二千年前からwktkしてる
八千年過ぎた頃からもっとwktkなった
一億と二千年後もwktkしてる
君が投下したその日から僕の地獄にGJ!は絶えない



281:名無しさん@ピンキー
07/04/10 21:21:41 ub8IWqGD
自分で書いてみると、いろいろと難しいんだな。
読んでるだけのときには気付かなかったよ。

282:カナのシロ 4
07/04/10 21:52:18 ub8IWqGD
朝の通学路で、大声をあげて大好きだ!などと言ってしまえば他の生徒に目撃されないはずが無い。
シローとカナの一部始終はあっという間に校内に広がっていた。
二人が教室に入ると、耳の早い野次馬達に囲まれて質問攻めに遭ってしまう。カナはどうせ朝会が始まるまでの
騒ぎだろうと適当に受け流すつもりだったのだが、担任の女性教師までもがその輪の中に加わっていてはかなわない。
カナの目論見は脆くも崩れてしまう。シローは恥かしがりながらも、いちいち彼らの質問に答えていた。
その日はずっと、二人でまともに話す時間がないほどに野次馬攻勢を受け続ける事になり、
ようやく解放されたのは放課後になってからだった。

午後になって天気が崩れはじめ、黒く濃い雲が空を覆っている。
天気の良い日なら堤防沿いの遊歩道は人通りが多いのだが、今ここを歩いているのは二人だけだ。
「シロー、余計な事まで言わなくていいのよ。何考えてるのよホントにもう。」
「でも、僕たち別に悪いことしてるわけじゃないし。黙っている方が、逆に感じ悪いじゃないか。」
「だからって、キ、キスしたかとか、セ、えっ…そのアレしたかとか、そこまで答えることないじゃないの。」
律儀で素直な性格はシローの良いところなのだが、その時ばかりは冗談じゃないと筆箱を投げつけた。
「ごめん。ちょっと調子にのってたかも。でも、でもカナちゃんは、僕とそういう事するの、嫌?」
首を傾げてカナを見る。カナにものを尋ねるときの癖だ。心なしか繋いでいる手に力がこもる。

カナはいきなりなんて事を。と言いながら、シローと繋いだ手を一旦放し握り直す。
「いや、じゃない。嫌じゃないけど、まだ早い。と思う。そういうのはもっと大人になってからだよ。
 だって私達まだ高校一年生なんだよ?もっとお互いのことを知ってから、もっともっと好きになってから、
 でも遅くないと思う…んだけど、シローはどう思う?」
ためらいがちにシローを見上げる。彼の唇は女の自分よりも色気を感じる。人並みにセックスへの興味もある。
シローとのセックスを想像しながら自慰に耽った事も、一度ではない。シローと二人きりになると身体の奥が疼く。
本心は今すぐにでも物影に飛び込んでキスしたいシローに抱かれたいもっと触れ合いたいと思ってはいるが、
ここは精神的年長者として、高校生らしい一般常識を披露しておく。

「そそ、そうだよねぇ。カナちゃんの言う通りだよね。僕ってば何言ってんだろ。ごめんねこんな変な事。
 あ、そうだカナちゃん家、今日はおじさんもおばさんも居ないんだよね。よかったら、晩ごはんは家で食べない?
 ってお母さんがカナちゃんに朝、言うようにって。色々あってその、今まで言いそびれちゃって。」
我ながらこんな聞き方はないな、と思いとっさに話題を変える。カナとしてもこの話は早々に打ち切りたかったので、
ごちそうになるお礼に勉強みてあげるからと応え、その後はとりとめのない会話を続けながら帰って行った。
遠くで雷鳴が響く。

エレベーターが九階で止まり、シローはそこで降りる。扉が閉まるまで恋人に手を振る。エレベーターの表示灯が
十階で止まった。シローの見送りは、エレベーターが自動的に一階へ戻り始めるまで続く。
もしかしたらカナちゃんが戻ってくるかも、と期待して。子供の頃からの習慣なのだ。
(僕は今でも充分なんだけどさ。でもカナはちゃんは知らないんだ。もっともっと好きになってって言うけど、
 僕はこれ以上ないくらいにカナちゃんの事が好きなのに。)
声には出さず、心の中でつぶやく。エレベーターは降下を始め九階を過ぎる。

283:カナのシロ 5
07/04/10 21:55:42 ub8IWqGD


小学校一年生の時、最上階に引っ越してきたかわいい女の子。それがカナだった。
初めて会ったときからカナの事が大好きになり、いつも一緒に居たいと思い、後ろをついてゆく。
「シロー君は、カナのお嫁さんみたいねぇ。」
カナの母親にそういわれた時、シローはとても嬉しくて、うん。と胸をはる。
その直後真っ赤になったカナに思いっきりぶたれた。子供時代のカナは気が強く、すぐに手が出た。
夏祭りの帰りがけ、ちょっとした悪戯のつもりでカナが獲った金魚を川に放流した事があった。
乳歯を二本失い、しばらく口をきいてもらえなかった。金魚は川に放されても長く生きられないと
知ったのは少し後の事だった。泣きながらカナに謝り、一緒に金魚の墓標をつくりに行く。
泣きやまないシローの頭を、カナはもういいのぶったりしてごめんねと優しくなでてくれる。
手の温もりを感じたシローの心は安らぎ、涙は止まっていた。

中学生になりたての頃、シローは自慰を覚える。これを見ながらちんちんをこすると気持ちいいんだぜ。
と言う悪ぶりはじめた級友にもらった成人誌により、初めて達した。一度、カナを想像して自慰をしたことがある。
しかし行為の後、敬慕するカナを性欲の対象にし、汚してしまった自分が情けなくそして卑しく感じ、激しい
罪悪感と自己嫌悪に苛まれた。カナを想像して自慰をしたのはあれが最初で最後だった。

中学二年生のある日、カナの友人にデコボココンビと揶揄された事があった。カナは女子の中では最も
背が高く、男子生徒からよくからかわれていた。本人も常にそれを気にしており、少しでも目立たないようにと
やや猫背気味になっていた。
カナとシローが歩くと、背の高さが嫌でも際立ってしまう。申し訳なく思ったシローはカナのために少し
背伸びをして歩く。成長期に入り、ついにカナの身長を追い抜いた時は小躍りをして喜んだ。これでカナが
恥ずかしい思いをさせなくてすむと考えたからだ。得意げに、カナと背比べをするような動作をした時、
調子に乗るなよ小僧め。と小突かれる。大きくなってもまだまだ子供ねと言われた。
カナが猫背でなくなったのは、シローに告白され、手を繋いで歩くようになったあの日からだ。

284:カナのシロ 6
07/04/10 21:57:56 ub8IWqGD
結局、中学時代は一度もカナと同じクラスになれず、シローはカナに会える昼休みと放課後が待ち遠しくて、
授業も身に入らずぼんやりと窓の外を見ているばかりだった。今の成績では同じ高校に進学できないと
わかった時は自我を失いかねないほど慌てた。カナは成績優秀で、一方シローは中の下クラス。このままでは
カナとの距離がさらに遠くなってしまう。
遊んでばかりだったから、自業自得よ。そう言いながらもカナは勉強につきあってくれた。
カナの教え方は上手く、シローはスポンジに水を吸い込むが如くそれを理解した。合格を知らされた時、
周囲は驚いていたが、シローは必死でやったのだから当然だ、カナがつきあってくれたのだから当然だと思った。

カナと同じクラスになれるとわかりシローは合格した時よりも嬉しかった。
放課後にカナと桜見物と称して校内を探検していた時の事、ふと立ち止まりグラウンドに目を向ける。
シローは、体育祭にフォークダンスはあるかなあればいいなぁそうすればカナちゃんと手を繋げるのに。などと
ぼんやり考えていた。カナはシローの視線の先を見て、ああ陸上部の用具を見ているのかと思い話しかける。
「背も伸びたのだから部活でも始めてみれば?陸上部とかどうかな。ひ弱なままじゃモテないよ。」
カナちゃんがそう言うのなら、とその翌日に入部届を提出した。本人は意識していなかったが
シローの身体能力は同年代の男子のそれを大きく上回り、そして身体を上手くコントロールする才能は
目を見張るものがあった。陸上部の顧問がクラスの担任教師だったせいもあり、特に気に入られたシローは
その才能を瞬く間に開花させていく。

教室でカナと一緒にいると、いつしか級友達が周りに集まってくるようになる。
本音を言えばカナと居られる事こそが最良なのだがこういうのも悪くない。
カナが皆と談笑している時の楽しそうな顔をみていると、幸せだなぁ、これが青春ってやつかと思う。

「なんだシローお前、あの“ガリ勉”が好きなのか、変わった趣味してるな。お前なら選択肢は無数じゃないか。
 ああ、東中出身はお前とあいつだけだったな。いわゆる同属意識ってやつか。」
部活の友人と異姓の話題で盛り上がった時、好きな女はいるのかと聞かれてつい正直に答えてしまった。
中間テストでほぼ満点の成績をたたき出したカナもシロー程ではないにせよ、学年では有名人であったが、
背が高いくせに猫背でイマイチぱっとしないつまらなそうな女。シローの周りを衛星のようについて回る
小雀どもの内の一人。男子生徒から見ればその程度のものだった。失礼な、カナの何がわかるのかと思ったが、
辛口な友人の評価に苦笑する。

シローはそれでいいと思った。カナの魅力を知るのは自分だけでいい。カナに恋人ができてしまったらと、
考えるだけでもぞっとする。自分の気持ちをカナに伝えたい想いは日々募るばかりだが、
今まで続いたカナとの関係が全く変わってしまうのではと思うと、どうしても一歩が踏み出せない。

285:カナのシロ 7
07/04/10 22:01:25 ub8IWqGD
シローは職員室で数人の教師に囲まれている。先週から続く雨のせいで湿度が高く、居心地の悪さを助長する。
いくら県大会で好成績を収めていても、学生の本分が疎かになっては意味がない。中間テストの結果を筆頭に
シローの成績は陸上部のそれとは反比例して下がっていた。陸上部顧問でもある担任は責任の一端を感じてか、
夏休みになるまで、部活は私に顔を見せに来るだけでいいわ、今は勉強のほうに専念しなさい。
と異例とも言える措置を言い渡す。自覚はしていたが、自分の成績はそこまでヤバかったのかと落ち込む。

ありがたいことに今度はカナの方から教師役をかってでてくれた。さすがは文殊様天神様カナ様である
カナ先生による毎日の特別個人授業により、シローはさっぱりわかず難渋していた授業内容が、霧が晴れたように、
まるで呪いがとけたかのように理解できるようになった。
「僕、カナちゃんがいないとてんでダメだなぁ。」
数学の問題集をスラスラと解き進めながらシローはつぶやく。授業についていけだしたのはカナのおかげだ。
感謝してもし足りない。カナは急に、休憩しようと言い出した。
さっき紅茶を飲んだばかりじゃないかと思いながらシローは次の問題に取り組む。カエルの声がやかましい。
集中力が途切れ、ああもうと顔を上げてベランダに立つカナを見る。

このごろのカナは様子がおかしい。どことなく落ち着かない雰囲気で、話しかけてもうわの空な時がある。
ぼんやりとこちらを見ているかと思えば、よそよそしい態度をとられたりする。そう言えば、いつもは
肩まで伸ばした髪をゴムで二つにまとめて垂らしているだけなのだが、昨日来た時には三つ編みを後ろで纏め、
ピンを駆使してお団子をつくっていたし、一昨日はワックスを使って髪を左右非対称に分けて流していた。
今日はお団子の位置が左に移動している。似合わないしまだ早いと言っていた、年頃の女性らしいおしゃれに
気を使い始めるなど、いつものカナらしくない行動だ。もしや、恐れていた事が起きたのではと戦慄した。
カナは誰かに恋をしている! 
その羨ましい、いや恨めしい相手は誰だろう自分の知っている男だろうか、それとも。シローの思考は乱れる。
これはいけない、これ以上躊躇している場合ではない。
シローは立ち上がると足音を消して歩き、手すりにもたれているカナの後ろに立つ。いまだ。
カナを後ろから抱きしめようと手を伸ばしたその時、カナが大きくため息をついた。

はっと正気に返ったシローは咄嗟に両手をあげ、物干し竿に手をかける。手の震えが伝わり竿はカタカタを音を立てた
ステンレスの冷たさが心をさまし、さっきまでの決意が霧散する。カナが気付いた。シローは何気ない話題を振り、
その場を取り繕おうとした。

「シローは高校になってから変わった。なんか、違う人みたい。」
知らない人?僕が?誰の?突然、想像もしていなかった言葉を聞かされ困惑する。何を言ってるんだこの人は。
聞き間違いかもしれない、そうだきっとカエルが五月蝿いからだと前向きに考えて、
もう一度聞きなおそうと恐る恐る声を掛けるがカナはシローの顔も見ずに部屋を飛び出して行った。
さらに困惑し声を出せない。動くこともできずにカナを見ているだけだった。
その時、シローの中でなにかが動いた。

286:カナのシロ 7-2
07/04/10 22:10:30 ub8IWqGD
「カナちゃん慌てて出て行ったけど、どうしたの。」
「なんか、用事があるの思い出したって。友達と約束でもあったんじゃないかな。」
「おいおい、カナちゃんになにかしたんじゃないだろうな?んん?」
「はは、まさか。」
カナの様子を訝しげに思った両親だったが、シローがそう言うのならそうなのねとそれ以上は聞かなかった。
シローは普段どおり、リビングでテレビを見て新聞を読み、風呂に入る。あれだけ波立っていた心も今は静かだ。
湯船に浸かりながらさっきの出来事を思い出し、ばしゃばしゃと顔を洗う。明日、カナに想いを伝えよう。
結果なんてどうでもいい、今日みたいな思いを続けるよりはよほどましだ。頬を叩き、気合を入れる。

シローはあれから一睡もせずにいた。朝になり、日差しが目を射る。そろそろか、と朝食をとり歯を磨く。
鏡の前で笑顔をつくってみる。瞼が重い。顔を洗ってもさすがにこの眠気は払えない。
しかし、心は昂揚している。支度をすませて、時計を見る。いつもカナが迎えにくる時間より15分ほど早く家を出た。
カナの家の前で数分ほど逡巡するが、意を決してインターホンに指を当て、えいっと押す。
その日、カナとシローは恋人同士になった。





287:カナのシロ 8
07/04/10 22:11:10 ub8IWqGD

そこで、目が覚める。シローは、夢をみていたのか、子供の頃の僕が夢にでるなんてしかし惜しいところで
目が覚めたな、もっと見ていたかったのにと天井を見る。まだ頭がはっきりしない。いつもと寝心地が違う。
左足に何かが這っているのに気付く。目が覚めたのもこれを感じたからだった。
ん?と思い目を向ける。感覚の正体はカナだった。
「カナちゃん…か。まだ、夢の中なのかな…?」
「おはよう、といってももうすぐお昼ね。こんにちわ、シロー。」
「こっちのシローに、おはようのキース。ふふっ。」
そう言いながらカナはシローの性器に口づけをし、舌を絡めて舐め回し、口に含む。なにされてるの、これ?
左足の膝がぬるぬるする。カナが自分の性器をこすりつけているのだ。え、まじこれどうなってんの?
「んふゎ、シローのチンポおいしい…私とシローの味がする…ゆうべの味…ん、これ好きぃ。」
「うわぁ!カナちゃん!」
シローは文字通り飛び上がった。カナをはねのける。その拍子に左膝がカナの性器を激しくこすり、嬌声が聞こえる。
なんなの、ここはどこ僕はどうしてカナちゃんは今?

「あん、シローのいじわる、まだ途中だったのに。ね…キスしよ。」
シローに顔を近づけキスをする。舌で唇をこじ開け歯を舐り、唾液を貪るように舌をさらに侵入させてくる。
カナのキスは血の味がした。シローの脳は一気に覚醒する。そうだ、ここはカナちゃんの部屋。この味は破瓜の証、
ゆうべの証。カナが唇を離すと唾液が糸を引いた。
「ね、シロ。しよ。私、またしたくなっちゃった。ほら、見て。」
カナは半目でシローを見つめ、シローの前に寝転がり腰を上げて両足を開く。カナの性器が妖しく光る。
「うん。カナちゃんのマンコ、ペロペロ舐めるよ。なめてなめて綺麗にしてあげる。」
「ん…シロ、シロの舐め方すごくえっち。あぁ、それすごくいい、また溢れちゃう、シロ。もっとして、シロ、大好き!」
ベランダの壁にとまったセミが、カナの嬌声に負けるものかとばかりに大きく鳴き始めた。田んぼの稲が風にゆれる。
今日から神社で夏祭りだ。そうだ、金魚すくいをやろう。テキ屋のおじさん僕たちのこと覚えているかな。
カナに腰を打ちつけながら、シローは思った。

288:名無しさん@ピンキー
07/04/10 22:16:21 ub8IWqGD
ここまでかいた。

289:名無しさん@ピンキー
07/04/11 02:56:28 KCqui6Oe
おお、続きがきてましたか!GJですよ!

ただ、初体験シーンの描写が無いのが気になりますが……。
これは、もちろんたっぷりと書いて下さるということですよね!? 期待してますー!!

290:名無しさん@ピンキー
07/04/11 03:27:41 IuYzdpct
初夏→夏の間になにがあったんですか
貼り間違ったとか?

291:名無しさん@ピンキー
07/04/11 22:19:15 5Nefmv5J
後一回で終わってしまうのか・・・・
神。この一言でもまだ足りない。だからもう一言
ありがとう

この後は結婚、そして・・・・

292:名無しさん@ピンキー
07/04/12 02:23:57 UNs3rG2F
age。>>288GJ!いいねー名作だこれ。

そして最近来ない>>202を待ち続ける俺。早く正刻と誰かのエロを見たい

293:名無しさん@ピンキー
07/04/12 02:33:08 LXbUL9Qd
正刻の話は、どっちとくっつくのか展開読めないからそこが新鮮だわ
288氏本人も筆進めながら未だに迷ってるんではなかろうかw

294:名無しさん@ピンキー
07/04/12 02:38:11 LXbUL9Qd
もとい、202氏だった
両氏とも申し訳ない

295:名無しさん@ピンキー
07/04/12 04:52:45 f7+3hyj3
久々に保管庫の梅子読み返したらこんな時間だが後悔はしてない。
もー、なんでこんなぐっと胸に詰まるんだこの方の描く話は。
読むと必ず涙が出るので目蓋が腫れぼったい。

296:名無しさん@ピンキー
07/04/12 13:24:32 4rErL4kw
絆と想いのキャラは結構好きだから、もういっそのことハーレムにして双子や眼鏡っ娘と大乱交も良いんじゃないかと
妄想する俺はきっと少数派。

297:名無しさん@ピンキー
07/04/12 22:02:40 kXkPxATX
このままいくと次スレにまたぐ作品が出そうなふいんき

298:名無しさん@ピンキー
07/04/13 00:28:20 rA23VoeO
自分としては唯衣舞衣より鈴音と結ばれて欲しい

だがやはり作者の書いた展開が楽しみ。はやくカモーン

299:名無しさん@ピンキー
07/04/14 03:07:06 ZetaE63D
投下します! 一部設定に変な所があるので、気になる方はスルーして下さい!

それでは、いきます!

300:絆と想い 第10話
07/04/14 03:08:29 ZetaE63D
とある日曜日。正刻達の住む街にある合気道の道場で、息詰まる試合が展開されていた。
片方は風格すら漂わせる男。そしてもう片方は、全身から闘気を噴出させている少年だった。
試合は少年が疾風のような動きで男に挑み、男がそれを捌く、という展開だった。
技術は男の方が上だが、少年の動きは男の反応を超えており、決定的な反撃には至らない。

両者暫しの硬直の後、少年がゆっくりと深呼吸を始めた。
それがこの試合における、少年の最後の……そして最大の攻撃の始まりだと直感した男は感覚を研ぎ澄ます。
少年は深く息を吸った後……「ふっ!」と鋭く息を吐き、そして突進する。

男へ向かって一直線に少年は突っ込む。予測していたかのように自分を捌きにくる腕をくぐり抜け、フェイントをかけつつ男の懐に飛び込む。
まるで疾風、そして稲妻のような動き。少年はそのまま男の腕を極めようとして……捕らえられた。

少年がかわしたのとは逆の手が、胴着をしっかりとつかんでいたのである。少年の動きがそれにより止まり、男はそのまま流れるように
投げ飛ばす。

少年は宙を舞い、背中から畳に落ちた。ギャラリーからわっ、と歓声が上がる。彼は受身はしっかりと取ったようだが、それでもやや辛そうだ。

男が少年を見下ろし、笑顔を浮かべながら言った。
「惜しかったですねぇ正刻君。あそこで私に動きを止められなければ、そのまま私の腕を極められたのに。」
それを受けて少年……高村正刻は憮然とした表情で答えた。
「よく言いますよ。俺の動きをきっちり見切って、その上で誘ったくせに。」
よっ、とジャックナイフで起き上がる。その様子を見て男……佐伯兵馬(さえき ひょうま)は苦笑を浮かべる。

「きっちり見切って、ですか……。」
あれは半分は勘だったんですがねぇ、と内心で呟く。技は兵馬の方がまだ上だ。しかし、正刻の才能は恐るべき早さで開花しつつある。
先ほどの動きもそうだ。正刻の疾風の如き動き。今はまだそれを完全には自分のものには出来ていないが、それを自分の意志でコントロール
出来た時、彼がどれほどの使い手になるか。それを想像し、兵馬は身を震わせる。

(流石は君の息子ですね……大介……。)
兵馬もまた、大介・夕貴・慎吾・亜衣達の幼馴染であった。彼は離れた地の大学へと進んだため、しばらくはこの街を離れたが、結婚を機に
再びこの街へと帰ってきたのである。

今彼は陶芸家として活躍している。年に何回か個展を開くほどの人気振りで、彼が作る器のファンは多い。
そして彼にはもう一つの顔がある。それが合気道の師範としての顔だ。
その腕は全国でもトップクラスであり、彼が日曜に開く合気道教室では、老若男女、様々なレベルの人達が集まる。


301:名無しさん@ピンキー
07/04/14 03:09:15 ZetaE63D
その中に正刻も居た。まだ大介が生きていた頃から、一緒にこの道場に通っていたのである。
大介と兵馬は子供の頃からのライバルであった。共に全国トップレベルの使い手であり、二人の組み手は道場の名物でもあった。
残念ながら大介は事故で逝ってしまったが、その後を継ぐように正刻は強くなった。
兵馬もまた、正刻に自らの業を伝授し、鍛え上げている。
それは、事故で両親を失いながらも悲しみに暮れる事無く生きようとする正刻への兵馬なりの気遣いでもあった。

体を鍛えることは、心を鍛えることに繋がる。そう考える兵馬は、正刻を心身共に鍛え上げた。悲しみに負けないように。絶望に押し潰されないように。
その意志を理解した正刻も、兵馬を「先生」と慕い、ずっと道場に通い続け、今に至る。

さて、今の試合は午前の部を締めるものであった。午前の部の最後に正刻と兵馬が試合をし、それを皆で見学するのが一連の流れとなっている。
皆が帰っていくなか、自分も着替えようかと汗を拭いていた正刻を……

「お兄ちゃーん!! またお父さんに負けちゃったねっ!! 私が慰めてあげる! よーしよしよしっ!!」
「ね、姉さんやめなよ、まー兄ぃに迷惑だよ……。」

……二人の少女が急襲した。

正刻に飛びついて頭をなでなでしているのが佐伯香月(さえき かづき)。中学3年生。その割には発達はあまり良くなく、身長も150
前後とあまり高くない。体型も、凹凸の少ないものである。しかし中々の美人で、いつも明るくきらきらとした瞳をしており、人気者であった。
髪はショートでまとめている。リボンを頭にしているが、子供っぽい香月には良く似合っていた。

もう一人が佐伯葉月(さえき はづき)。中学2年生。背は145と香月より更に小さいが、胸は中々発達している。日本人形のように
整った顔立ちをしており、姉とは違い大人しく控えめな性格をしている。しかし、良く気が利き周りのフォローをしてくれる彼女もまた人気者であった。
黒い髪をボブカットにしており、カチューシャをつけているのが印象的だ。

正刻と二人の出会いはやはり幼い頃まで遡る。幼稚園の時から大介と共に道場へと通っていた正刻は、必然的に佐伯姉妹とも知り合った。
出会った時、姉妹はまだ幼かったが、大きくなるにつれ正刻のことを兄のように慕い始め、兄弟のいなかった正刻も二人を実の妹のように可愛がった。
さらに正刻を通じて宮原姉妹とも知り合い、やはりすぐに懐き、二人を「唯衣姉」「舞衣姉」と慕うようになった。
ちなみに正刻のことは、香月は「お兄ちゃん」、葉月は「まー兄ぃ」と呼ぶ。
もっとも、成長するにつれ、二人の正刻に対する想いは「兄」に向けるものとは違ったものになってきたようだが……。

302:名無しさん@ピンキー
07/04/14 03:10:19 ZetaE63D
それはさておき。ぐりんぐりんと撫で回されながら正刻が香月に言う。
「おい香月、慰めてくれるのはまぁ良いが邪魔だ。そんなに引っ付くな。」
すると香月はニヤリ、と笑う。その表情に何か嫌な感じを覚えた正刻は香月に尋ねる。
「おい、何だその嫌な笑いは。」
「ふふふー。照れなくっても良いんだよお兄ちゃん! あは、これってやっぱり効くんだね! 凄いや舞衣姉!」
そう言うと香月はさらに正刻に引っ付いてくる。

舞衣の名前が出て更に嫌な予感がした正刻は、香月に再度尋ねる。
「おい香月、お前何を言ってるんだ? 舞衣にどんなロクでもない事教わったんだよ?」
「えへへー、本当に照れちゃって、可愛いなーお兄ちゃんは! やっぱり舞衣姉直伝の『当たってるんじゃなくて当ててるのだ攻撃』は凄いね!」
香月は正刻に引っ付く……というよりは胸を押し当ててにこにこと笑う。

正刻は思わず深い溜息をついた。
(あのバカ、本当にロクでもないことばっかり教えやがって……!)
内心で舞衣に憤慨し、会ったら即アイアンクローを食らわす事を固く心に誓うと、正刻は香月に引導を渡すべく口を開く。
「おい香月、いい加減に離れろ。大体、『当ててるのだ』って言われるまで俺は全く気づかなかったぞ。」

香月は笑顔のままぴしり、と固まる。その様子を見て少し可哀想になる正刻だったが、しかしこいつを舞衣のようにする訳にはいかない、
それが兄貴分たる自分の役目だ、と再び心を鬼にし続ける。
「大体だな、コレは舞衣や、まぁ唯衣や葉月レベルの娘がやるから効果があるのであって、お前のように断崖絶壁な娘がやっても効果は……。」
しかしそこまで言った所で正刻は言葉を切った。香月がふるふると身を震わせ始めたからだ。

(あ、ヤバ……。)
正刻は自分の説得が失敗した事を悟る。まぁ当たり前といえば当たり前だが。
きっ! と正刻を涙目で睨みつけた香月は、大音量の声を張り上げ始める。
「うわぁぁぁぁぁぁんっっっっ!!! お兄ちゃんに……お兄ちゃんに汚されたぁぁぁぁぁっっっ!!! 辱められたぁぁぁぁっっっ!!!」
正刻は、ひぃっと上擦った声をあげる。可憐な少女が「お兄ちゃん」に「汚されて」「辱められた」と大声で喚いている。
知らない人が見たら通報すること間違い無しだ。

香月は少し我侭なところがあり、自分の意にそぐわない事があると駄々をこねることがしばしばあった。成長するにつれてその悪癖は収まり
つつあったが、何故か正刻に対してはよく発動した。
何で俺にだけ……と愚痴る正刻を、唯衣や舞衣、葉月が複雑そうな目で眺めるのは、割と良く見られる光景である。

それはともかく、泣き叫ぶ香月に正刻は弱かった(誰でもそうだろうが)。すぐにさっきの発言を訂正する。
「いや香月! さっきのはその……そう! 照れ隠し! そう、照れ隠しなんだよ!」
その言葉を聞き、香月は泣き喚くのを止める。目に涙を溜めたまま、正刻を見つめてくる。
「ぐすっ……。ほ、本当……?」
「あ? ああ……ああ! 本当だ!」
正刻は半分自棄になって叫ぶ。

303:名無しさん@ピンキー
07/04/14 03:11:10 ZetaE63D
「いや本当はさ! もうお前に当てられて俺のリビド-はもう暴走寸前だったよ! とっても気持ち良かったしね! だけど年下の女の子に
 そんなにさせられただなんて恥ずかしいじゃないか! だからさっきみたいな嘘ついちゃったんだようん!」
正刻の捨て身の台詞を聞いていた香月は、段々と笑顔を浮かべ始めた。正刻が喋り終えるとその輝きは頂点に達した。
「まったくお兄ちゃんったらホント、ケダモノなんだから……。でも無理無いよね! だって私に『当てられて』るんだもんね!」
そう言って香月はまた正刻に引っ付く。それを疲れた顔で眺める正刻は、不意にもう一人も不味い状態に陥っていることに気がついた。

葉月が胸を抱いて、何やらブツブツと言っている。さっきの「唯衣や葉月レベル」あたりの発言が不味かったか、と正刻は後悔する。
「お、おい、葉月……?」
正刻が恐る恐る声をかけると、葉月は濡れたような瞳を正刻に向けた。
「まー兄ぃ……。まー兄ぃは……私の胸を『当てて』欲しいの……?」
(やっぱりスイッチが入っちまってやがる……!)
正刻は内心で歯軋りした。

葉月は基本的には大人しい娘である。しかし、人並み外れた妄想癖という困った性癖を持っていた。ふとした事で、妄想に没頭してしまうのである。
それだけならまだしも、その後少しの間、その妄想に引っ張られた性格に変わってしまうのである。具体的に言うなら、エロい妄想をすると、
普段の清楚さからは考えられない位のエロさを発揮してしまう、という事だった。
ただこれも、いつでも誰にでも発動する訳ではなく、主に正刻の発言に反応して起こるようであった。
何で俺の言うことに反応すんのかねぇ、と嘆く正刻を、唯衣や舞衣、香月が呆れたような目で眺めるのはよく見られる光景である。

それはともかく、熱い視線を自分に向けてくる葉月に対し、正刻は危険物処理斑のような気持ちで話しかける。
「と、とにかく落ち着け葉月。いいこだから、な?」
「うん分かった……。分かってるよまー兄ぃ……。まー兄ぃにだったらいくら当てても……それ以上でも……良いんだから……。」
分かってない。全く分かってない。次の手を考えている正刻に、葉月が女豹のようににじりよる。
後ろには香月、目の前には葉月。二人の吐息を感じる中、そういや酔った唯衣と舞衣にも同じような事されたっけな、と場違いな事を
現実逃避に考え始めた時……。

ぱぁんぱぁん。

小気味のよい音が二つ、響き渡った。

「はうぅー……。」
「あいたぁ……。」
「二人とも。その辺にしときなさい? 正刻君に愛想つかされても知らないわよ?」
竹刀を持った美女がそう言って笑いかける。
「助かりましたよ弥生さん……。」
正刻がほっとしたように言う。

女性の名は佐伯弥生(さえき やよい)。兵馬の妻で、香月と葉月の母である。
兵馬とは大学で知り合い、卒業後も付き合いを続け、結婚した。
兵馬は合気道の達人であるが、弥生は剣道の達人である。日曜は合気道教室が開かれているが、土曜は彼女による剣道教室が開かれている。

弥生は正刻に苦笑を返す。
「正刻君、この子達にはもっと厳しくして良いのよ? あなたはちょっと甘やかし過ぎなんだから。」
「まぁ確かに……。これじゃあ兄貴失格ですね。」
そう言って正刻は頭をかく。彼はそのまま更衣室へと向かった。


304:名無しさん@ピンキー
07/04/14 03:12:45 ZetaE63D
それを見送った後、姉妹は母に噛み付いた。
「お母さんひどいよ! お兄ちゃんは悪くないよ!」
「うん……。まー兄ぃは凄く優しいし……。悪いのは私たちだもん……。」
そう言ってくる娘達を面白そうに眺めた後、弥生は言った。
「でも良いんじゃない? 兄貴失格の方が。兄貴合格だったら、あなた達ずっと妹扱いされるわよ?」
その台詞に姉妹は固まる。その様子を見ながら弥生は更に言い放つ。
「強力なライバルも居ることだし、ね。」

強力なライバル。それは正刻の周りにいる女性達。幼馴染である宮原姉妹と、中学からずっと同じクラスだという大神鈴音である。
香月と葉月は、宮原姉妹は当然だが、鈴音とも知り合いであった。学校帰りに遭遇したこともあるし、鈴音が道場に遊びに来たこともある。
更に、鈴音の妹と香月は同じクラスであるため、色々な情報を仕入れていたのだ。

「確かにライバルは強大だよねぇ。」
腕を組んで香月は呟く。全員が美人な上に、それぞれが強力な個性を持ち、正刻を一途に想っている。一筋縄ではいかない相手達、だ。
しかし。
香月と葉月は……不敵に微笑んだ。
娘たちの様子を見て、弥生が驚いた声を上げる。
「何よあなたたち? 相手が強力なのに、随分と余裕じゃないの。」

しかし二人は首を振ってそれを否定する。
「違うよお母さん、余裕なんか無いよ。だけど……不思議だね。相手が強大だっていうのに、何故か私達は怖くないの。むしろ、何か燃えて
 きちゃうんだ。」
武道家であるお父さんとお母さんの娘だからかな、そう言って香月は笑う。
その後を葉月が受けて言う。
「私達の、『妹』っていうポジションは……確かに一歩間違うと本当にそのままになっちゃうけど、でもこの関係をまー兄ぃと結んでいる
 のは私と姉さんだけなの。この関係は、私たちとまー兄ぃを繋ぐ大切な『絆』なの。だから、私たちは敢えて『妹』としての立場から頑張
 ろう思うの。今までまー兄ぃと築いた時間は……唯衣姉や舞衣姉、鈴音さんにも負けないって信じてるから。」
その後は姉さんとの一騎打ちかな、そう言って葉月もまた笑った。

弥生はそんな二人を見つめていたが……やがて、黙って二人を抱きしめた。
「まったく……あんたたちは、本当に自慢の娘たちだわね!」
親バカであるのを自覚しつつ、弥生は言った。姉妹はくすぐったそうに笑っている。
「よし! 二人とも精一杯頑張りなさい! 骨は拾ってあげるわ!」
竹刀をかざして叫ぶ弥生、そしてうなずく佐伯姉妹。まるで一昔前のドラマのようであった。

「お、何か盛り上がってますねー。何やってるんです?」
そこへ着替えを終えた正刻が現れる。そのあまりの緊張感の無さに……三人は、思わず笑ってしまった。

「じゃ、今日はこれで。」
正刻はそう言って帰る準備をする。それに対し、香月は文句を言う。
「えー、いつもはお昼を一緒に食べてから帰ってくれるのに!」
先程のこともあり、気勢を削がれる形になってしまった。葉月も落ち込んだ顔をしている。

そんな二人の頭をわしゃわしゃとなでながら、正刻は言った。
「まぁそう言うな。今日はこれから勉強会なもんでな。代わりに来週は一日付き合ってやるから。」
その言葉に姉妹の目は輝く。
「本当に!? 嘘ついたらお仕置きだからねお兄ちゃん!!」
「今からプランを練っておかないと……。ふふ……楽しみ!」

姉妹のあまりの気合の入れように正刻はたじろく。
「えーと、お前ら、お手柔らかにな……。」
そう言って正刻は佐伯家を辞し、家へと向かった。



この後の勉強会でも正刻はまた色々とぐったりするような目に遭い、さらに次の週の日曜には佐伯姉妹に振り回されまくってまたぐったり
するのだが、それはまた別のお話。

305:名無しさん@ピンキー
07/04/14 03:14:36 ZetaE63D
以上ですー。
それと、ちょっと設定を捏造してます。合気道は基本的に試合をしないって知りませんでした……。

設定では、合気道は柔道や剣道と同じくらい普及しており、大会も行なわれています。
ルールとしてはほぼ柔道と同じです。ただ、寝技が無い点と打撃が有りなのが違う点です。

まぁアレだと思う部分はスルーでお願いしますー。ではー。


306:名無しさん@ピンキー
07/04/14 04:39:38 ZosWP1RY
よし!一番槍GJ!!!相変わらず上手いよな本当。
とりあえずこれで七人フラグたったな。

え?二人多いって?何言ってんだ?

唯衣・舞衣・鈴音・香月・葉月・亜衣・弥生で七人だろww

307:名無しさん@ピンキー
07/04/14 05:00:36 osu9tn44
GJです!妹かわいいよ妹。
さらに人間関係複雑になってるなあ。続きに期待期待。

竹刀で叩かれるのは結構痛いかも。合気道の試合は現実でも見たいな。無理だけど。

308:名無しさん@ピンキー
07/04/14 09:40:28 IDvZYX+l
>>306
そうか、二人にとっても「大介さんの息子」だもんねぇ。
特殊な感情があっても岡歯科内科。

なにはとまれ、GJ!>305

309:名無しさん@ピンキー
07/04/14 13:27:24 Jnk7Xxoa
>>307
Youtubeで塩田剛三で検索すべし。
俺は初めて見た時は目玉が飛び出るほど驚いた。

310:名無しさん@ピンキー
07/04/14 15:27:05 osu9tn44
>>309
塩田剛三の映像は見た。あれはすげぇ。
映像じゃなくて生で見たいってこと。近くに合気道の道場とかなくて技を習う機会もないから。田舎だからか?
でも教えてくれてありがとう。久しぶりに塩田先生の映像見てみるわ。

スレ違いスマソ

311:名無しさん@ピンキー
07/04/17 22:39:12 Fi1xhmw4
過疎だ保守あげ

312:名無しさん@ピンキー
07/04/17 22:53:31 FD5P+G6S
ぬお、同じことを考えていた人がいたとは。

でも一応人はいるんだな。何か雑談でもするかねぇ。

そういやキラメキ銀河商店街って少女漫画を読んだことある人っている?
何か、結構良い幼馴染話らしいんだが……。

313:名無しさん@ピンキー
07/04/17 23:06:24 23SnyMOW
キラメキ☆銀河商店街

少女漫画を読むのは吝かではないけれど、タイトルで敬遠してしまう。

314:名無しさん@ピンキー
07/04/17 23:39:49 Fi1xhmw4
内容kwsk

315:名無しさん@ピンキー
07/04/17 23:52:31 imydZGkZ
その作者だったらむしろ前作の『となりのメガネ君』がいい幼なじみっぷりだった。
あれはよかったなー。

幼なじみの両親が亡くなってから自宅に引き取られて兄弟として育ってるという。

316:名無しさん@ピンキー
07/04/18 00:04:19 zBQCz+UU
俺的には空鐘と神様家族かなぁ


317:名無しさん@ピンキー
07/04/19 19:33:56 ZBt7X25z
test

318:カナのシロ 9
07/04/19 20:39:47 ZBt7X25z
今年は冷夏だといわれているものの、やはり夏の日差しはじりじりと身を焦がす程に熱い。
業を煮やした部長の進言により部活は午前中までに切り上げられ、陸上部員達は生ける屍の如く帰路に着く。
亡者の一群にはシローも混じっていた。ふらふらと歩いていたが校門の日陰に立つ人に気がつき、足を速める。
カナが立っていた。大きな手提げ袋を持っている。中にはシローの着替えと弁当が入っているのだろう。
「シロー、お疲れ様。おばさん出かけちゃって、代わりに私がきたの。今日はもうお終い?」
「うん、こう暑いとやってられないって、部長が先生にお願いしてくれてね。僕も助かった。
 ゆうべゲームやりすぎて寝坊してさ、慌ててたからお弁当とか色々忘れてたんだよね。
 カナちゃんが持ってきてくれるなんてうれしいなぁ。ありがとう。」
言いながら手提げ袋をカナの手から取り、肩を並べて帰り始めた。途中、部活の先輩や友人達に冷やかされるが、
シローは慣れたもので、照れながらも愛想よくそれに応える。調子に乗ってカナの肩に手を廻そうとしたが
カナに小突かれた。手を繋ぐ以上のスキンシップは二人きりの時だけという暗黙のルールができていたのだ。
一方カナはそれが恥ずかしく、背を小さく丸めて歩く。デリカシーのないやつらめ、と心の中で毒づいた。

「カナちゃん、赤くなったよねー。昨日の海、暑かったし。もっと強い日焼け止めにしとけばよかったね。
 顔なんてりんごみたいだよ。それ、ヒリヒリして痛いでしょ?僕はもう慣れちゃったけどね。」
真っ黒に日焼けした腕を上げ、どうよとカナに見せつける。
「シロー君も男らしくなって。お姉さん、うれしいぞ。」
お世辞ではないのだが、冗談と受け取られたのだろう、シローはかなわないなあと苦笑する。
カナの顔が赤いのは、日焼けのためだけではない。シローの発する汗の匂いに酔っていた。男の匂いに欲情している。

着替えを持ってこなかったせいで、シローはまともに汗を拭えていない。
これではカナが嫌がるだろうと思いやや距離をとって歩いていたのだが、
それでもカナには刺激が強すぎた。下腹の奥が疼き、体が熱くなってくる。呼吸も深く大きくなった。
もう一度シローに肩を抱かれたら、シローの体に触れたなら、歯止めが効かなくなりそうだった。
人目も憚らず抱き合って唇を貪るかもしれない。そんな自分の姿を想像してさらに興奮してくる。
頭が朦朧としてきた。こんなところではしたないと思い、カナの理性が総動員される。シローとの会話を繋げつつ、
鎌倉室町江戸の歴代将軍に続き、歴代総理大臣を暗誦しアメリカ大統領を18代目まで数えた頃にようやく理性が勝った。
堤防沿いの遊歩道で子供たちが元気よく駆け回っていた。それを見ながらカナは小さくため息をつく。

「僕、先にシャワー浴びるから。またあとでね。」
「えぇっ?し、シャ、シャワー!?なんでいきなり!?」
エレベーターの中でカナは取り乱す。まだ完全に理性を取り戻せていないようだ。
離れて立っているシローは手のひらで首元をぱたぱたと扇ぎ、暑い、とジェスチャーで示す。
「だって、汗が気持ち悪い。あとで家においでよ。こないだのリターンマッチしようよ。じゃあね。」
シローが降り一人になったエレベータの中で、カナは大きく深呼吸をした。いつもより濃い、シローの残り香。
チン、と音が鳴って扉が開き、また空気が入れ替わる。

「私も、シャワー浴びよ…」
カナのショーツは、下着の用を為さない程に濡れ、溢れた液体が足首まで垂れていた。

319:カナのシロ 10
07/04/19 20:41:17 ZBt7X25z
昼食はシローの家でとった。情欲と闘っていたカナは良く覚えていないが、
帰りがけにそういう事になっていたらしい。弁当のおかずを二人で分け、足りない分はカナが作る。
子供の頃から互いの両親が留守の時には、カナがシローの面倒を見てきた。
シロー家の厨房は、カナの厨房でもあった。

馴れた動作で食器をしまう恋人の後姿を、椅子に座ったカナはじっと見つめている。
食器洗いと後片付け、これはカナの厳しい躾の賜物だ。同棲カップルってこんな感じかしらと思い、照れる。
「ごちそうさま。じゃあカナちゃん、しよっか。部屋に行こ。」
「す、する!?え、な何を…? 
 あ。そうね。」
妄想に耽っていたところを、シローの呼びかけでこっちの世界に引き戻されたカナは、椅子を蹴り
一瞬うろたえたが、すぐにここへ来たもう一つの目的を思い出す。今月のゲームの戦績は4勝3敗1戦無効。

格闘ゲームでカナが仁義にもとる行為をした、とシローから物言いがついて1戦分が棚上げにされている。
シローはここで勝って五分五分に持ち込み、次回のレースゲームで逆転勝利を狙っているのだ。
たかが息抜きでそんなに必死になることはないかと思うがシローはいつになく食い下がる。
先月の罰ゲームがそんなに堪えたのか、今度の罰ゲームはもう少し軽くしてやろうとカナは考える。

勝負は本気を出したカナの完全勝利であっさりと幕を閉じる。これで3勝5敗。逆転勝利の目は潰えた。
昨夜の特訓も無駄となり、ああー、と背後のひときわ大きなスポーツバッグにどすんと体を投げ出したシローは
心底落ち込んでいる。勝利の賞品に、カナにキスをねだるつもりだった。
「シロー、合宿はあしたから、なんだね。もう準備できた?」
「まだ。本当は明後日からなんだけど、合宿する所が遠いですから。明日出ないと間に合わないんですよー。
 荷物も重くて大変なんですよねー。」
カナに背を向けながら応える。シローは拗ねていた。敗北感だけではない。合宿が億劫で仕方ないのだ。

県内の有力な選手を集めた十日間の特別強化合宿。インターハイには出場しなかったが、顧問の強い後押しによって
シローの参加する枠が用意されていた。若いながらも各方面に強力なコネをもつあの女教師が頼もしくもあり、
恨めしくもあり、シローは複雑な気分だった。勧められてなんとなく始めた陸上だったが、続けているうちに
だんだんと楽しくなっていたし、結果が出せた時の達成感が良い。そして恋人の応援がなによりも励みになった。
しかし合宿は別だ。シローは陸上選手を目指している訳ではない。たかが部活にそこまでする程の価値はあるのかと思う。
往復合わせて十二日も我が家に帰れないのは初めてのことで、不安がある。そして、

「僕さ、これだけ長いことカナちゃんの顔をみれなくなるのって初めてなんだよね。こわいっていうか、
 寂しいっていうか。緊急時以外は電話もだめなんだって。そう考えると合宿、イヤだな、行きたくないなーって。」

320:カナのシロ 11
07/04/19 20:42:27 ZBt7X25z
以前のカナならば、子供のような駄々をこねるシローを叱っていたところだろうが、今は。
会えなくて寂しいなどとしおらしい事を言う恋人を愛しく、それを言わせた自分を誇らしく思った。
先ほどと違い、下腹の奥ではなく胸の奥が熱くなる。心と心が繋がっているという充実感に満たされる。
シローを後ろから抱き締め、優しく手を握る。恋人のように姉のように。行っておいでと耳元で囁き、
頬に口づけをする。シローは体を硬直させ、黙って頷く。
「帰ったら美味しい物、食べさせてあげる。そうだ、夏祭り。去年は行けなかったから、
 今年は一緒に行こうね。浴衣着て、夜店廻って、たこやき食べて…ね?」
「うん。なんかやる気出てきた。合宿なんてあっという間だよね。浴衣姿のカナちゃん、きれいだろうなあ。」
目の前にニンジンを提げられて走る馬の心境が、シローには理解できた。

家を辞する際、カナはシローの着替えの洗濯を申し出た。シローは汚いよと拒んだが、早く洗わなければ
もっと汚いと言われ、ユニフォームだけを渋々差し出す。靴下と下着は自分でやるからと固く断った。
「じゃあ、洗ったら、おばさんに渡しておくから。シロー、頑張ってね。」
ありがとう、大好きだよ。とシローの方からカナの頬にキスをする。
今度はカナが体を硬くさせ、顔を真っ赤にしながら何度も頷いた。

カナはベッドに寝転がり天井を見つめている。シローが合宿に行って二日目が経っていた。
朝から雨が降っていたので、夏期講習は自主休講している。サボりなんて初めて。と自嘲する。
シローが抱いていた不安はカナも同じく感じていた。あと十日。長すぎると思った。
格好をつけて行ってこいと言ったものの、いっそ泣きじゃくって引き止めた方がよかったのかとも考える。
そっと頬に触れる。シローに口づけされたところを人差し指と中指で撫でた。

321:名無しさん@ピンキー
07/04/19 20:47:56 ZBt7X25z
ここまでかいた。

322:名無しさん@ピンキー
07/04/19 22:13:53 SURPdYWx
GJです!
合宿から帰ってきたシローとカナが、獣のようにまぐわりあう展開を期待してます!!

323:名無しさん@ピンキー
07/04/19 22:19:35 CkDlZPhI
wktk!wktk!
体育座りで続きを待ちます。いつでも、いつまでも待ちます。

324:名無しさん@ピンキー
07/04/19 23:58:02 ug3r1gbv
もどかしいがそれがイイ

325:名無しさん@ピンキー
07/04/20 00:38:37 mY/LWhv/
>>322
獣のように…そのフレーズいただき!
エロくなるようにがんばる。

326:名無しさん@ピンキー
07/04/20 21:50:59 Labaw0DM
エロいのは1レス分が限界ぽい。
がんばらないと。

327:カナのシロ 12
07/04/20 21:51:37 Labaw0DM
その指を口につけ、二度三度と唇をなぞる。ついばみ、咥え、押し付け、キスをするように。
今度は舌を伸ばし舐め始める。口の中に含み、念入りに唾液を絡ませ、そして吸う。
この指がシローの唇だったなら、と思うとたまらなく切なくなる。
指は自然とアゴをなぞり、首筋を経て、寝巻きの中の乳房に辿りつく。
「ぅん…シロー…そこは…だめ…」
二本の指は乳首を挟み交互に擦りはじめる。先を爪で軽く引っかく。体が小さく波打った。
カナの中のシローは乳首を甘噛みし、尖端の割れ目を舐め回している。もう一度、キス。

“唇”はショーツの中に侵入してくる。今日のシローはせっかちね。と思った。
カナは身体を反してうつ伏せにになり、膝を立て尻を高く上げる。“唇”に恥丘を弄られながら、片手で
もどかしく動かしながら性器を露わにしてゆく。今日はショーツに染みをつける前に脱ぐことができた。
身体を動かす度に、日焼けした肌が衣服で擦れて痛むが、それさえも快感にすげ替わるような気さえしてくる。
「そんなところ、はずかしいから、なめ、ないで…あんっ!」
思わず大きな声を上げてしまった。枕の下から、シローより強奪してきたユニフォームを取り出す。
声が漏れないようにその裾を噛み、大きく息を吸い込む。洗剤の匂いがする。

あの日、シローの家から帰るとすぐに自慰を始めた。
ユニフォームに顔を埋め、匂いを嗅ぎ口に含み、舐め回し、抱きしめ股間にすりつけまた匂いをかぎ、
それを繰り返し、全身を使って貪る。その日、カナの中のシローは獣の如く乱暴に、何度もカナを犯した。
自慰の果てに気をやったのは初めてだった。
唾液と愛液塗れにしてしまったシローの置き土産を、自己嫌悪に苛まれつつ洗濯したのは夜中のことだ。

記憶に残ったシローの匂いを反芻するように、鼻を鳴らして、ユニフォームへ顔をつけた。
指は陰唇を割り、膣口の周りを撫でる。愛液が、指で掻きださなくとも溢れ長い太腿を伝う。
シーツに染みをつけないよう片手にはティッシュペーパーを持ち、あふれたそれを手早く拭きとってゆく。
乾いた紙が腿の内側に触れるだけで背筋が伸びる。しかしそれも一瞬。ティッシュはすぐに水分を含んだ
重い塊へと成れ果ててしまう。
(いやだ…もうこんなに使ってる…)
ティッシュの箱を膝元まで寄せその動作を数回反復させる。
前にかかる体重を、首だけで支えるのが辛くなってきた。両足を開き重心を移動し、いくらか楽になった。
顔を動かし時計を見ると、正午が近い。

カナの理性が、このはしたない行為を早く済ませろと抗議を始めた。指の、いやシローの“唇”の動きが速まる。
(ここ、は…はじめてだからやさ、しく…)
“唇”がクリトリスを摘み、皮を剥き、恐る恐る触れ、さする。
痛く、こそばゆく、淫らで心地よい感覚。初めての刺激に、カナは軽く昇りつめた。
下半身が痙攣し、ぎゅっとつま先を丸める。身体が震え、あはっと息が漏れる。ほんの一瞬だが、意識が飛んだ。
(シロー、シロー。早く、はやく帰ってきてね。私、このままじゃ、おかしくなりそう。)
わずかの間余韻に浸ったあと、起き上がり自慰の後始末を始める。

「勉強、しなきゃ。シローの分の、ノートもつくらないと。」
気だるげにカナが机に向かったと同時に母親から、昼食ができたわよと呼ばれた。
短く返事をし、部屋を出る。いつものカナに戻っていた。


328:カナのシロ 13
07/04/20 21:52:30 Labaw0DM


「えぇー!?ちゅーもまだって、ありえない!何よソレつまんない!」
「今日びブラトニックラブなんて、小説じゃないんだから。」
「夏休みなのに、なーにもしてないって、なーにやってんのよ!」
「ちょ、ちょっと。声が大きいわよ、外に聞こえちゃうじゃない…」
夏期講習の息抜きにとカラオケに誘われたカナは、三人の女子生徒から歌そっちのけで突き上げを食らっていた。
声が外へ漏れにくいカラオケボックスは、年頃の女性たちの憩いの場、そして密談の場として重宝されている。
カナもたびたび参加しては、女子同士のぶっちゃけた会話とBGM代わりに歌う流行歌を楽しんでいた。
今日の誘いも二つ返事で了解したのだが、議題がシローとの交際経過報告だと判った時には、カバンを放り出し
この場から逃げ出そうかと思った。渋々ながらもこれまでの事を話すと、この有り様である。
「なにもしてない訳じゃ、ないわ。毎日会ってるしデ、デートもしてる。映画館ではずっと手を握り合ってたもの。
 ほら、先週はみんなで海に行ったじゃない。私その次の日、シローのほっぺたにキスしたんだから。」
カナは三人の態度にムキになっている。

「カナさん、それじゃダメだよー。そんなの小学生でもできるじゃーん。なんで唇にちゅーしないのよーもー!」
元気のいい茶髪の少女はまるで自分の事のように悔しがる。外見も態度も子供っぽさが抜けていない。
精神年齢もシローと近いのか、よく二人で冗談を言い合っている。カナの次にシローと仲の良い女子はこの茶髪だろう。
カナと席が近く、色々と話をしている内に仲が良くなった親友で、今回の密談会の発起人は彼女だ。

「シロー君は見た目通り奥手なのね。ああいうタイプはこっちからリードしなきゃいけないのよ。
 私がシロー君に告白されていたら、その日にキスどころか最後までシてあげたのに。ざーんねん。」
細い銀縁眼鏡が似合いすぎる美女は隣のクラスなのだが、茶髪とは長年のつきあいで、それが縁となりカナ達と
親しくしている。長い髪をさらりとかきあげながら、メガネは恐ろしい事を言う。実際、彼女はそれを易々と実行できる
魅力と行動力を持っている。校内で人気投票を行えば、一年生の部は男子ならシロー、女子ならこのメガネが
トップになる事は間違いない。シローがメガネに手をつけられなかった事をカナは神に感謝した。メガネは続けて言う。

「女と男が心だけで繋がっていられるなんて嘘よ。男を自分だけのモノにしたいなら身体に言い聞かせるのが一番なの。
 カナは背も高くてスタイルもいいんだから、それを武器にしてシロー君を押し倒すくらいの勢いがないとね。
 あなた達付き合い始めてもう二ヶ月になるんだからとっくにシてるかと思ってたのに。」
年上の“下僕”がいる高校一年生は言う事が過激だ。

「そ、そんなっ、シローはそういうコじゃ…それに、まだ二ヶ月と十日よ。私達は健全な交際を…」
「シロー君はもてるんだから、そんな奇麗事言ってるうちに泥棒猫に寝取られちゃうぞー?」
カナの言葉を遮り、茶髪は意地悪そうに言う。泥棒猫とはクラス委員長の事を指しているのだろう。
シローに対して委員長が積極的にアプローチを仕掛けていたのはクラスの誰もが知っていた。

それを敏感に察知した委員長はなーによ、と唇を尖らせるが、やおら立ち上がり胸をはった。
「あたしはもうシロー君に未練はないよ。だってあたし、彼氏いるもん。えっちもしてるし。」
委員長の宣言に三人とも同じタイミングで、マジか!?と聞き返していた。

329:カナのシロ 14
07/04/20 21:53:26 Labaw0DM
「そうよ。相手はほら、海に行った時にシロー君と一緒に来てたアイツ。終業式の日から付き合い始めたの。
 意外といいヤツでさ。付き合いだしてから解る良さ?っていうのかな。アイツには全部あげられるっていうかー」
人が変わったようにでれでれと身をくねらせはじめた委員長ののろけ話に三人は呆然としている。
委員長のいう彼氏とは、彼女には悪いが、シローと較べれば月とスッポンの冴えない男子だった。
「…でね、最初はね、適当に付き合ってすぐに振ってやるつもりだったんだけど、その、いろいろあってさ…って、
 今回の議題はあたしじゃなくてカナさんとシロー君でしょ!」
一通りのろけた後正気に返り、彼女はクラス委員長らしい態度で場を仕切り始めた。
「はい!カナさん!あたしもね、そこの淫乱メガネとは同意見。元ライバルとして、もうぶっちゃけて聞くけどさ。
 あんたは、シロー君とえっちしたいの?したくないの?」
メガネが淫乱とは何よと抗議するが、委員長はそれを制して、呆気にとられていたカナに詰め寄る。

「したい…です。ホントは。キスだけじゃなくてその先も。いつも考えてます。でもシローに、私がそんな事ばかり
 考えてるって知られるの、怖い、んです。…がっかりされるんじゃ、嫌われるんじゃ、ないかって思うとっ。」
委員長の剣幕に呑まれて正直に答えてしまう。しかも敬語で。話しているうちにカナは感極まって涙声になっていた。
部屋が静まり返る。どこのボックスからか、下手糞な歌声が聞こえて気まずさに拍車がかかる。
「カナさんて意外と子供ねー。そんな事で嫌われるわけないよーきっと、シロー君も同じ事考えてるよよよょょ」
沈黙を破ったのは茶髪だった。マイクごしに喋ったので語尾の残響音が外まで漏れる。
カナたちはその声色がおかしくて一斉に笑い転げる。

「そう、なのかな。シローもそんな事考えてるのかな?」
「当然じゃないの。男は皆スケベ。もちろん女も…ね。」
メガネは男を誘うように、豊かな肢体をくねらせてソファに寝そべる。髪の毛一本の流れまで計算されている
蟲惑的な動きに、三人は思わず顔を赤くしてしまう。カナもこれくらいできなきゃね、と微笑んだ。
「だってさ、海に行ったあの日シロー君、カナさんの水着姿に見とれてたじゃない。なんか目つきもいやらしかったし。
 あれはオオカミの眼だったね。あたしはその晩に、あんたらはやっちゃったと思ったんだけど。」
それはあなた達の事でしょうとメガネが委員長に、さっきの仕返しとばかりにちゃちゃを入れる。
「あーもう、話を混ぜ返さないで。…ええそうよ、その日は朝までよ。文句ある?」
「わ、いいんちょもオトナだねー。夏なんだねー。三人ともいいなぁ、わたしもカレシ欲しくなったなー。」
「私の知り合いでよければ、紹介してもいいけど、どうかしら?でもあなたにはちょっと早いかもね。」

「ねえ、委員長…あの、初めての時は痛いって聞くけど、本当…?」
「ん、ああ。最初はとても痛かったね。まあ慣れてくるよ。さすがのあんたもそうだったでしょ?」
委員長も女になったのは最近なのだが、彼女は遠い目をして語り、メガネに水を向ける。
「私は最初だけだったわ、我慢できない程じゃなかったけど。でもそれは人によると思うわ。
 相手のサイズもあるんだし。そうだ、シロー君のは大きそうだからカナは覚悟した方がいいかもね。」
「もー脅かしちゃだめだよー。カナさんはシローくんの事大好きなんだから、そんなのきっと平気だよ。ね!」
メガネの脅しにたじろぐが、茶髪がフォローに入り、カナを励ました。

「やーね。さっきまで健全な交際とか言ってたのにさ。やっぱひと皮剥けばみんなえっちなのよね。 
 えっちなカナさんの、この胸がこの胸がもうすぐシロー君の物になるのか!」
委員長が両手を蠢かせてカナの胸を揉む仕草をする。この娘は言動がいちいち親父くさい。

330:カナのシロ 15
07/04/20 21:55:24 Labaw0DM
メガネと委員長の、見事に息の合ったデュエットに聴き惚れていると茶髪が話し掛けてきた。
「ごめんね。シロー君がいなくて、カナさん寂しいだろうと思って誘ったんだけど、こんなのになっちゃって。
 でもわたし達、悪気があったわけじゃなくて…」
目を伏せて申し訳なさそうにする茶髪の頭を、何も言わずに撫でる。柔らかい髪の感触が心地よい。
ありがとうっと顔を綻ばせた茶髪が抱きついてきた。曲が終り、カナの歌う順番が回ってきた。
茶髪を誘い二人で、演歌をこぶし付きで熱唱する。
カナ達がカラオケボックスを出たのは八時を過ぎた頃だった。
普段は喧騒に包まれる商店街も、この時間帯になると人通りはまばらになる。
店のシャッターが下ろされ静まりかえった商店街はまるで別世界のように新鮮に映り、カナ達は探検隊気分で歩く。

「じゃ、わたし達はここから別働隊ー。隊長、また明日ねー。」
店が途切れたところで茶髪とメガネが別れる。茶髪が委員長に敬礼をした。探検隊ごっこのつもりらしい。
「カナ、これ。持っておきなさい。」
メガネが小さな袋を渡してくる。なんだと思い中を覗くと可愛らしい包装をされたコンドームが入っていた。
「こっこんなの!ちょっと、何を、返す。い、いらない!」
見た事はあるが、まさか自分が手にするなど思ってもいなかった。
「ダーメ。一応の、ね。シロー君のサイズに合えばいいんだけど。持っていればいつでもできるって思うと、
 気分も楽になるでしょ。これは女のお守りよ。」
ありがたい物ではないが、嬉しい心配りに礼を言い、袋をカバンの奥にしまう。

談笑をしながら離れていく別働隊を見送り委員長と歩きだす。シローは全く、完全に意識すらしていなかったのだが
カナと委員長は形式上シローを取り合った間柄だ。会話の糸口がみつからず、正直、気まずい。
「カーナさん!シロー君の事、考えていたね?妬けちゃうなーもう。」
委員長が首に腕を回し、重って来た。20センチ程の身長差があるので、よろけたカナは大きく身を屈めた姿勢になる。
「火照った体をもてあましたカナさんに、コレあげる。無修正ものとか、色々あるから。
 パソコン持ってたよね?いとしのシロー君が帰って来るまで、使いなさいコレおかずに使っちゃいなさい!」
バッグから数枚のディスクを取り出し、カナのカバンに無理矢理突っ込む。
正体を聞けば、委員長の彼氏が秘蔵していた猥褻な動画を集めたDVDだという。
「あたしがいるんだから、アイツにはもう必要ないでしょ。だから全部巻き上げてやったの。
 ま、中身は一見の価値ありね。参考になるよ。いろいろとねー。」
鬼嫁がいたずらっぽく笑い、聞いてもいないのにDVDの中身を語りだした。やがて委員長自身の話も混じりだす。

委員長の話は、カナには刺激というか衝撃が強すぎた。時には道具を用い、手を口を体中を使って相手を自分を悦ばせる。
愛や恋という感情ではなく、快楽と欲を追究する、肉体の為の性交。言葉の端から窺える委員長の性体験に較べれば
カナの自慰など児戯に等しい。シローも、こういう事を望んでいるのだろうか。自分は悦ばせる事ができるだろうか
聞いているうちに頭がクラクラしてきた。
「なーに想像してんのよ、むっつりスケベ!カナさんはシロー君とラブラブだしねー。もう辛抱たまらんってかー?」
勢いよく背中を叩かれたカナはゴホゴホと咳をする。見知らぬ人間にされたなら問答無用で殴り倒していたが
委員長に悪意はない。彼女なりの親愛表現なのだ。
「…体で繋がってないと、不安なのよ。えっちして、アイツと気持ちよくなっていないと、シロー君のこと…」
咳き込んでいるカナの後ろで、委員長は何かを言いかけ下唇を噛みしめた。

331:名無しさん@ピンキー
07/04/20 21:58:36 Labaw0DM
ここまでかいてた。

332:名無しさん@ピンキー
07/04/20 22:03:51 Labaw0DM
シロー帰ってくるまでオナニー三昧なのはかわいそうだから友達つくった。
姦しい三人娘特に委員長はどっかで書きたい。

333:名無しさん@ピンキー
07/04/20 22:20:59 2XL2m1c7
おお、早速続きが! GJです!

ただ、時系列がどうなってるのかちと分からんです……。8では、もうやりやりですよね?
これからそうなっていくのでしょうか? 出来ればどういう流れになっているか説明して下さると有難いです!
何にせよ、続きを期待してますよ! 頑張ってください!

334:名無しさん@ピンキー
07/04/20 23:07:53 Labaw0DM
わかりにくくてほんとごめん。

小学生シローカナに一目惚れ → 二人しょぼい中学生活 → 中学カナに弟扱いされて(´・ω・` ) → シロー愛の力で高校合格 →

シロー高校で部活始める → シローモテる → カナ勝手に嫉妬色気づく → カナ成績落としたシローに下心ミエミエ個人レッスン →

色気づくカナに勘違いシロー慌てて告白 → カップル誕生 → (期末試験→ 終業式→ 夏休み突入→ デートとか海とか省略)

→ シロー合宿行く → 待ち切れないカナオナる → (友達とカラオケ行っておかずget軽くオナる・これ追加)いまここ → シロー帰ってくる

→ シロー発情カナに犯される →(犯された後が8 →)俺達の戦いはこれからだ!車田先生の次回作にご期待ください

こんな感じのを考えてた。
最初はさっさとカナにちんこまんこ言わせて終わるつもりだったけどこのスレ読んでるうちに、エッチさせるまでの経過も書きたくなった。
他の話読んで書き方の研究してくる。

335:名無しさん@ピンキー
07/04/21 02:09:43 C1ec3pKs
打ち切りはアカンだろwwwwwwwwwwwwwwww

336:名無しさん@ピンキー
07/04/21 02:16:36 6OCE6i0k
男坂かよwwwwww
未完でいいから続きお願いしますwwwww

337:名無しさん@ピンキー
07/04/21 12:39:33 fJeuShsA
車田御大も良いけど、どうせなら故・ケン・イシカワ先生のように壮大過ぎて結局宇宙にいっちゃうぐらいに突き抜けた
ものを期待してるぜ!!

338:Sunday
07/04/22 22:51:38 um8QoTBM


 どこにいたのか、何をしていたのか。

 一体いつから、いつの間にこんなところにいるのだろう。

 彼に抱きしめられるように眠ったはずなのに、紗枝は何もない空間を歩き続けていた。
その意識は、まどろみの中を漂っている。ただぼやけていただけの視界はやがて形を成し、
見慣れた情景をかたどっていく。

 形となったのは、黄昏時の河川敷。

 その坂の上を通るあぜ道を、彼女はいつの間にか歩いていた。

 そういえば崇兄に一度振られた時も、周りの様子はこんな感じだった気がする。そんな
悲しいだけだった思い出にも、今では懐かしさすら覚えてしまう。あの出来事も、いつかは
笑い話として語ることが出来るような気がした。

「ひっく……ひぅ…」

 ふと前を向くと、小さな女の子が目をこすりながら泣きじゃくっている。年はまだ四、五歳
くらいだろうか。大人しそうな印象とは裏腹に、身につけている白いワンピースのあちこちを、
泥や土で汚してしまっている。

「どうしたの?」
 こんな年端もいかない子供がこんな時間に一人きりなら、さぞかし寂しいに違いない。
迷子なのだろうと分かっていながらも、しゃがみこんで声をかける。
「……おいてかれたの」
 すんすんと泣きじゃくりながら、女の子は呟く。周りには誰もおらず、ひどく心細かった
のだろう。
「そっか……家の場所分かる?」
「……」
 無理だろうと思いながら聞いてみたが、案の定首をぶんぶんと横に振られてしまう。
交番は遠いが、家の場所が分からないのであればそこ以外に連れて行く場所も思い当たらない。
まさか、自分の家に連れて行くわけにもいかないわけで。
「じゃあ、おまわりさんのところに行こっか」
「……」
「ね?」
 不安げに見つめ返されるが、ニコッと笑い返すと、女の子はおずおずと手を伸ばしてきた。
差し出されたそれを握り返すと、女の子の歩調に合わせて、またゆっくりと歩き始める――


「そっか、酷いお兄ちゃんだね」
「……」
 手を繋ぎながら、紗枝は呟く。
 女の子がなかなか口を開いてくれず、事情を知るのはなかなか難儀だった。簡潔に
言ってしまえば、一緒に遊んでいた男の子と、家路につく途中ではぐれてしまったらしい。
「ち、ちがうの…お兄ちゃんはひどくないの。わるいのは…ちゃんとついていかなかった
あたしなの」
 普段からあまり口を開かない子なのだろう。どうにも口調がたどたどしい。
「そう、ごめんね」
 泣きそうな顔になる女の子をあやすように、素直に謝る。この子にとって、そのお兄ちゃんは
とても大切な存在らしい。あまりに可愛らしいその仕草言葉に、思わず微笑んでしまう。

「お兄ちゃんのこと、大好きなんだ」
「……」
 女の子は、思いきり顔を縦に振る。だけど置いていかれた寂しさからか、表情は冴えない。
「どんなところが好きなの?」
「……」
「……そっか」

339:Sunday
07/04/22 22:53:45 um8QoTBM

 今度はぶんぶんと、思いきり横に振る。その理由は、女の子自身も分からないのだろう。
分からないけど、「好き」なのだ。

「お姉ちゃんは…いるの?」
「ん?」
「…すきな人」
 聞かれて少し逡巡する。言うにしても、ちょっとは躊躇ってしまう質問だし、何より
この大人しそうな娘にそんなことを聞かれるとは思っていなかった。

「いるよ」

 だけど次の瞬間には、そう口走っていた。こんな小さな子にのろけるなんて、我ながら
おかしいと思う。
「その人は…お姉ちゃんのことすきなの?」
 弱々しいながらも、しっかりと視線を向けられる。似たような形の瞳で、それをやんわりと
見つめ返す。
「……ずっと言ってくれなかったんだけどね。この前大好きだって言ってもらえたよ」
「そっか…」
 しょんぼりとうなだれる女の子を見て、大人気なかったかなと直後に感じてしまう。
だけど言ってもらえた時は、それくらい嬉しかったのだ。それくらい、気持ち想い全てが
あの瞬間に爆ぜたのだ。

「いいなぁ……」

 いかにも羨ましいといった声に、微笑みと苦笑が入れ替わる。そのお兄ちゃんに、
既にしっかりと大事にされてるってことには、まだ気付くことが出来ていないらしい。
「でも、あたしも頑張ったから」
「……そうなの?」
「うん、どうしても好きになってもらいたくて、その人が好きな性格になろうとしたり、
褒めてもらった髪型をずっとそのままにしたりね」
 大したことじゃないんだけどね、と付け加えてはにかんでみせる。横から降り注いでくる
オレンジ色の太陽の光が、どうにも眩しい。

「じゃあ…あたしもがんばれば、お兄ちゃんもあたしのこと……みてくれるのかな…」

 そう言うと、女の子は顔を真っ赤にして俯いてしまった。「お兄ちゃん」なんて呼んで
しまっているけど、ほんとは一人の女の子として見てもらいたいのだろう。その気持ちは、
痛いほどによく分かる。紗枝自身も、ずっと、ずっと矛盾した想いと戦い続けてきたのだから。

「ずっと…好きでいられればね。きっと見てもらえるよ」

「……うん」
 すると、女の子はそこで初めて口元に笑みを浮かべる。綻んだその表情は、とっても
可愛らしい。

「でもそれだけじゃ大変だよ? ちゃんと繋ぎ止めておかないと、お兄ちゃん他の娘の
ところに行っちゃうよ?」
「え……」
 くれぐれも油断しないように注意をつけ加えると、途端に浮かんでいた笑みは消え去って、
今にも泣き出しそうになる。
 かわいそうなことしたかなとも思うが、望んだ未来を手に入れるためには、想いだけじゃ
足りないのだ。彼の不条理な行動に耐えるために必要な強さも、ちゃんと手に入れてないと
いけないのだ。

「どう…どうしたらいいの……?」
「ん?」
「どうしたら…お兄ちゃん、ほかの女の子のところに行かなくなるの……?」
「そうだね…」


340:Sunday
07/04/22 22:55:50 um8QoTBM

 少しだけ考え込む。どう行動したら、もっと早く彼に異性として意識されていたか。
どんな態度で接していれば、もっと早く彼と両想いになれていたか。

「もっと素直になって…もっとワガママになって……それで一番大事なのは、もっと勇気を
持つことじゃないかな」
 考えぬいた結果、あの時の自分の心の中には無かったものを、彼女は探り当て言葉にこめる。
沈みかけた太陽はなかなか傾いていかず、地平線から半月状の姿を晒している。

「素直になれないと誤解を生んじゃうことがあるし、ワガママになれないと大事な時に
引いちゃうし、それに……勇気を持てなきゃいつまで経っても関係は変わらないままだからね」
 
 少し難しい言葉を使ってしまったから、理解してもらえないかもしれない。実際に、
女の子は何も言わずじっと見つめてくるものの、その瞳には戸惑いの色が浮かんでいる。
顔を傾け思案に暮れるものの、それが晴れる様子は一向に訪れない。
「今は分かんなくても、覚えていればそのうち分かるよ」
 頭の上にぽすんと手を置いて、ゆっくり撫でる。猫のように顔をむず痒そうに歪める
女の子の表情に、たまらず微笑みを零してしまうのだった。

 そういえば、彼にはもう随分としてもらっていない。仕方ないこととはいえ、そうされるのが
嫌いじゃなかっただけに、それが少しだけ寂しかった。

「さえーっ!」

 すると突然、背後から大きな声をかけられる。二人が同時に振り返りその目に映ったのは、
いかにも活発そうな少年と、自転車にまたがった彼女の彼が、こっちに向かって駆けてくる
ところだった。


 とくんと一つ、音が跳ねる。


 追いかけてくる青年と少年の姿に、紗枝は軽く目を見張り、女の子はくしゃりと顔を
歪めてしまう――





 どこにいたのか、何をしていたのか。

 一体いつから、いつの間にかこんなところにいるのだろう。

 彼女を抱きしめるように眠ったはずなのに、崇之は何もない空間を歩き続けていた。
その意識は、まどろみの中を漂っている。ただぼやけていただけの視界はやがて形を成し、
見慣れた情景をかたどっていく。

 形となったのは、駅前のスクランブル交差点。

 それなりに人ごみで溢れかえっているのに、彼は何故か見覚えの無い自転車を手でカラカラと
押し続けている。それが自分でもよく分からない。まあ折角あるのだから、人ごみを抜けたら
このまま漕いで家に帰るとしよう。
 ふと、駅前の様子をぐるりと見渡す。一度彼女との関係が終わって久々に顔を合わせたのも、
正直に向き合って初めて秘め事を交わしたのもこの場所だった。あれからまだ半年も経って
いないのに、なんだかひどく懐かしい。それなりに辛い思い出だったはずなのに、思い起こせば、
ついつい頬と口元が緩んでしまうのはどうしてなのだろう。
 時間はそろそろ夕餉時で、太陽は赤く焼け落ちようとしている。そういえば随分と腹が
減った。早く家に帰って何か食いたい。



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