【友達≦】幼馴染み萌えスレ11章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ11章【<恋人】 - 暇つぶし2ch200:名無しさん@ピンキー
07/03/28 00:23:29 upv2BYCD
そして翌朝。登校中の鈴音は、学校へと向かう人の波の中に見慣れた背中があるのを発見した。
思わず笑みがこぼれる。彼女は一気に駆け出すと、その背中を思いっきりどやしつけた。
「痛ってぇっ!!」
「あははっ! おはようっ! 一日ぶりだね正刻っ!!」
背中を思いっきり引っぱたかれた正刻は鈴音を睨むが、笑顔の鈴音につられて思わず苦笑してしまう。
「まったくお前は……。」
「あはは、ごめんごめん。ところで正刻、風邪はもう良いの? キミって一度体調崩すと長引くタイプじゃない? だいじょぶ?」
「あぁ、心配かけて済まないな。でも今回は見ての通り、俺はすっかり完治したぜ! だけど、唯衣が軽く風邪引いちまってな。
 俺の看病をしてくれたんだが……何だか悪いことしちまったな。」

そう言って唯衣に心配そうな視線を向ける正刻に舞衣が言う。どことなく、むっつりと膨れている気がする。
「心配は無用だ正刻。唯衣は自業自得だ。まったく、抜け駆けなんかするから……!」
「抜け駆け?」
鈴音は不思議そうに唯衣と舞衣を見比べる。顔が赤い唯衣。膨れている舞衣。一日で完治した正刻と、入れ替わるように風邪を引いた唯衣。
「……まさか……。」
思わず呟いた鈴音に、舞衣が頷きを返す。
「現場は見ていないが……おそらく、な。」
鈴音は思わず唯衣を見る。唯衣はバツが悪そうに目を逸らした。

「なぁ、お前ら何の話をしてるんだ?」
一人、全く話が読めない正刻が尋ねる。三人は思わず顔を見合わせ、微妙な表情を浮かべる。
「? 何だよ?」
『……にぶちん……』
三人は正刻に聞こえないよう、しかし完全にハモりながら呟いた。


その日の放課後。部活へ向かおうとする鈴音に正刻が声をかけた。
「あ、鈴音すまん。ちょっと良いか? 話があるんだが……。」
「うん、何? 改まってどうしたのさ?」
正刻は周りを見ると、鈴音に告げる。
「いや、ここじゃちょっとな……。悪いが屋上まで付き合ってくれないか?」
その言葉に鈴音の胸がトクン、と鳴る。
(え? ……も、もしかして……!)
しかし、正刻の表情を見てそれはないな、と思い直す。
「……鈴音?」
「……何でもないよ。いこいこ。」
そう言って鈴音はさっさと歩き出した。


201:名無しさん@ピンキー
07/03/28 00:25:05 upv2BYCD
屋上には、正刻と鈴音以外には人は居なかった。告白にはもってこいのシチュエーションだが……。
(そんな訳無いもんねぇ……。)
ほぅ、と溜息をついた鈴音は正刻に向き直る。
「で、正刻? 一体何なのさ?」
鈴音に問われた正刻は、うん、と頷いて言った。

「実は、これをお前にもらって欲しくてな。」
そう言って彼がポケットから出したのは、鍵、だった。綺麗な鈴がついており、チリン、と鳴った。
「え? これ? ……何の鍵?」
正刻から渡された鍵を見ていた鈴音はそう尋ねた。
「俺の家の合鍵だ。」
正刻は何気なくそう言った。

「ふーん、キミん家の……って、え? ええええええ!!?」
鈴音は驚きのあまり鍵を落としそうになった。正刻が自分に、家の合鍵を……!?
「いや、俺一人暮らしだろ? 何か万が一の事……例えば今回みたいに体調崩した時なんかに、唯衣と舞衣が必ず来れるとは限らないんだよ。
 だから、あの二人以外にも鍵を渡そうと思ってさ。そう考えた時、真っ先に浮かんだのはお前だった。正直、俺はある意味じゃあお前の
 事を唯衣や舞衣より信頼してる。何せ、中学の時からずっと同じクラスなんだからな。だから、俺のわがままではあるんだが、お前に鍵を持
 っててもらうと安心だな、と思ってさ。」

鈴音は正刻の話を黙って聞いていた。いや、正確に言うと、何も言えなかった。嬉しかったからだ。
正刻が自分の事を、そこまで信頼してくれていた事が分かって、身震いするほど嬉しかった。
同時に、昨日抱いた不安も消えていた。
確かに唯衣と舞衣には敵わない部分もある。二人のほうが、自分よりも正刻と長い時間を共有してきたという事実は変わらない。

だが、未来は。これからの時間で、誰が正刻と時間を共有するか、絆をより太く強くするかは、まだ決まっていない。
ならばグダグダと悩むより、自分は立ち向かおう。自分を高めて、コイツを振り向かせてやろう。
だって自分は……もう正刻以外、考えられないから。孤独だった自分を変え、光を与えてくれた彼無しじゃ、きっとやっていけないから。

黙ってしまった鈴音に、正刻が恐る恐る声をかける。
「す、鈴音……? その……やっぱり迷惑、だったか……?」
その問いに、顔を上げた鈴音は……とびっきりの笑顔を浮かべてこう言った。
「そんなことないよ! 喜んで頂くよ!」
「そっか……ありがとうな。お礼に、今度何か奢らせてくれ。」
そう申し出た正刻に、鈴音は意地の悪い笑みを浮かべてこう言った。
「いやー、いいよ別にぃ。早速この鍵を使って正刻の夜のお供を探し出して弱みを握らせてもらうからさぁ。」

そんな事を言われた正刻は仰天する。
「おい! 言っとくけどその鍵はあくまで緊急用だからな! 勝手に使ってうちにホイホイ入るんじゃねーぞ!!」
「えー、だってこの鍵もうボクのだしねぇ? どう使おうがボクの勝手でしょ?」
「……やっぱ前言撤回! お前は信用ならねぇ! 鍵返せ!!」
「やーだよーだ。あははっ!」
鈴音は正刻の手をするりと避け、部活へと向かった。その姿はとても楽しくて、幸せそうだった。

その日の夜に正刻からもらった鍵を見ながらニヤニヤしていた鈴音がまた妹に見つかってからかわれたり、鈴音が合鍵を持った事を聞いた
宮原姉妹が微妙に不機嫌になって正刻が冷や汗をかいたりしたにだが、それはまた別のお話。


202:名無しさん@ピンキー
07/03/28 00:26:09 upv2BYCD
以上ですー。ではー。

203:名無しさん@ピンキー
07/03/28 01:22:27 oqrJmDpr
>>202
GJです

204:名無しさん@ピンキー
07/03/28 05:07:40 ql15pWAx
>>202なんと甘々な・・・GJ!三人の奪い合いが楽しみだ

205:名無しさん@ピンキー
07/03/28 05:36:16 ghPX0PE6
>>202
汝こそ三国一の猛将よ!!つまりはGJ!!

206:名無しさん@ピンキー
07/03/28 21:05:21 fonXwgSF
ぐじょーぶっ
ところで、修羅場スr(ry

207:名無しさん@ピンキー
07/03/28 23:33:38 w8jZ5Kgn
今保管庫で真由子とみぃちゃんとか色々読んでみたけどこのスレの職人様レベル高っ!真由みぃシリーズとか文庫版になったら絶対買うよ…

208:名無しさん@ピンキー
07/03/30 03:40:40 mQatV96B
このスレの職人さんはみんなレベル高いよな
個人的に微妙だと思う作品がひとつもなかったし今でも保管庫とかで読み返してしまう

てことで日曜日の続き待ってます

209:名無しさん@ピンキー
07/03/30 21:24:33 8Buh8S1q
日曜日もシロクロもこれから本番というところで止まってるよな。やっぱり本番は書くのが大変なんだろう。

まぁ職人の方々にはじっくり作品を作っていただくとして、我々は雑談でもしてまったりと待ちましょうや。

210:名無しさん@ピンキー
07/03/30 21:37:57 l6UqQFIw
このスレ的に最近やってる昼ドラの砂時計ってどうよ

211:名無しさん@ピンキー
07/03/30 23:22:56 AtC5EZc5
>>210
ドラマは見てないが原作は自分としてはかなりツボだった
というか砂時計を読んで幼馴染モノを書き始めたのはここだけの話だ

212:名無しさん@ピンキー
07/03/31 00:55:42 gbRV7w4O
砂時計を調べてみたけど、確かに面白そうだなぁ。
少女漫画は苦手なんだけど、勉強のためにも読んでみたい。

213:名無しさん@ピンキー
07/04/01 00:26:39 KXC+BgCa
方言で少し萎えそうだがそこらは脳内でry

214:Sunday
07/04/01 01:17:53 28jwSM79

 幼なじみだから知っている。

 口調も乱暴で、がさつな態度を取ることも少なくない奴だけど。それでもその実内面は
普通の女の子とは変わらないくらい、いやそれ以上に弱々しい面を持っているってことを。

 立場を変えることの無いまま接するのは、それは同時に紗枝を妹としても扱ってしまう
という事だったから、出来なかった。一度それを理由に振ってしまったのだから、二度と
そんな扱いをしてはいけないと思ったのだ。
 だから恋人として今までの関係を無視して接してみたのだが、いざそれをやってみれば、
すれ違ってしまうばっかりで。普段なら決してここまで弱気にならないのにそうなってし
まったのは、負い目があるのと、責め立てたい気持ちがあるのと、相手が幼なじみだから
ということ。それらが複雑に絡み合って、彼から自信を奪ってしまっていた。

『大事な話…なんだ』

 沈んだ様子を見せる彼女にそう言われた時、悲観的な感情に支配されていた脳と心は、
勝手に結論を導き出す。それは、予測はしていてもやっぱり受け入れ難いことではあった。

『本当は……会いたくなかったんだろ…?』

 呟く目は、早くも潤み始めていて。自分の行動の迂闊さを、改めて思い知らされる。


 思えば、随分と紗枝を傷つけてきた。


 何をやったかなんて今更言いたくない。それだけ、彼にとってこの数ヶ月間は後悔の
連続だった。
 こんなことされ続けていたら、自分だったら別れを切り出していてもおかしくなかった。
だから、紗枝もそう考えていてもおかしくない。そう思って、思い込んでいただけに、
まったく逆の言葉が彼女の口から紡がれた時、なかなか信じることができなかった。

 崇之は、分かってなかった。

『だからあたしは……崇兄の全部がいい』

 そのことを、付き合い始めるずっと前から知ってはいても。

『あたし…あたしには……崇兄だけだもん…っ』

 例えちゃんと言葉にされても、何度も言われても。

 自分が、どれだけ彼女に想われ続けていたのか。

 彼女が、どれだけ自分を想い続けていたのか。


 知ってはいても、まるで分かっていなかったのだった――



215:Sunday
07/04/01 01:19:51 28jwSM79



「紗枝…」
「崇…兄……」
 お姫様抱っこの状態のまま、泣き止んだものの頬に未だ雫の跡を顔に走らせ、とろついた
瞳で見つめてくる彼女に愛しさを募らせる。らしくもなく、頬と耳が起点となって、カッと
熱さを増していく。
 崇之の頭の中には、もう紗枝のことしか考えることが出来なくなっていた。

 互いにゆっくりと近づいていて。

 先に身体と、額。そして次に零になったのはこの場で三度目となる、口と、口。

ちゅっ…

 その触れ合いが今までと違ったのは、濡れた唇によって微かに音が跳ねたこと。彼は覆い
被さるように、彼女は縋りつくように。繋げるのではなく、食むように赤く濡れた箇所を
触れ合わせ続ける。
「……」
 そして普段なら、そこでこの行為は終わりだった。あとは、身体を離すだけだった。


つちゅっ……


「……!」
 自分の身体がひどく強張るのが、その瞬間分かった。
 笑ってしまいそうになるくらいぎこちなかったけど、距離がまた零ではなくなった直後に、
紗枝に再び追いかけられ、歯を立てず唇で噛み付かれたのだ。水滴が水面を叩いたような
跳ねる音が、また少しだけ大きくなる。

「んんっ……」
 向こうからやっておいて、吐息がくすぐってくる。
そういえば以前、不意に舌を絡めてしまった時、相当嫌だったのか次の瞬間には身体を
突き飛ばしてしまった。あれはおそらく、彼だけでなく紗枝にとっても苦い記憶だったの
だろう。
 その時の申し訳なさが、逆に彼女を積極的にさせてしまっているのだろうか。
「ん…んぅ…」
「…ぅ…っ」
 その身体を抱き留めているのは自身だったから距離は取れない。それでも驚いてしまった
あまりに、背筋を伸ばして引いてしまう。すると、また追いかけられて繋げられてしまった。
本当に彼女は、自分がよく見知った幼なじみの女の子なのかとは思い直してしまうくらいに、
大胆な行動をとり続けてくる。

 それでも、どういう風にすればいいのか分かんないのだろう。
 薄目を開けてその様子を伺ってみると、舌先で半開きになった下唇に唾液を舐めつけ、
それを自分の唇でさらっていくという行稚拙な為を繰り返している。目を瞑ってしまった
ままからか、時々それが口元に外れてしまったりして、半端に生えたヒゲが濡れて妙な
くすぐったさを覚える。
「……っ」

ちゅるっ

「ふぅっ!?」
 優しくするとは言ったものの、彼女は処女で、自分は経験者で。主導権を握られるのは、
少しばかり面白くない。それまでされるがままだった行為をやり返す。吐息で撫でかけ、
唇を口に含み、半開きになったそこに舌をねじ込む。


216:Sunday
07/04/01 01:21:07 28jwSM79

 突然し返され、頭をかくかくと傾けながらも、彼女は必死にその動きについてきた。
そうやって無理をしてくれることが、たまらなく嬉しい。
 
 少しでも身体の緊張を解いてしまえば、頭を巡る意識をすぐにでも手放してしまいそうな
この感覚は、禁断という言葉の中に閉じ込められていた久しぶりの未知の味だった。

ちゅっ…ずっ……ちゅるっ……ぴちゅん…

「…ふ……っつ」
「んんっ……むぅぅ…」
 ねとついた唾液が絡み合い、水音がより一層跳ねていく。相手の吐息を飲み込むたびに
眩暈がして、酒とは違った酔いを覚える。舌を繋げて微かな塩っ気を味わっていくうちに
視界が徐々に狭まっていき、抱き締められ続けた腕の力も少しずつ弱めてしまう。こんな
激しい秘め事は、今までやったこと無かった。それだけ、彼女も欲してくれてたんだと思うと、
顔がくしゃくしゃになるくらいに満たされる。

「…っ……ぷはっ」
「…はっ…んぁ……」

 流れた涙の跡を空いた手の指で拭ってやると、口の端から微かに垂れかけていた涎も、
舌で拭いてやる。そして今度こそ、ようやく顔と顔の距離を挟んだ。

「…びっくりさせやがって」
「あたしの方が…ドキドキしてるもん……」
 自分からしてきた割には、紗枝は焦点の合ってない表情を浮かべていた。これだけ激しく
すれば少しくらい抵抗されるかとも思ってたが、一向に身体を動かす様子も無い。身体の
ほとんどの感覚を失ってしまったかのように、くたりと身体を預けてくる。 
 理性に逆らって、恥ずかしさを超えてまで精一杯頑張って、それでもう限界になりつつ
ある彼女とは違って、こちらはまだ若干の余裕がある。主導権を取り返せたことに、安堵と
満足感を覚えた。
 と同時に、こんな時にもそんな感情が沸き上がってくる自分の性格に、苦笑が止まらない。
「鼻息荒くて……やらしかった」
「…それだけ興奮してるってことだよ」
 それを笑いかけたのだと勘違いされたのか、不満げに顔を歪めて嫌味を呟かれてしまう。
だけどそれも、彼女なりの照れ隠しだということは分かっている。そんな意地っ張りな性格が、
何よりも好きだからだ。

「そいじゃ…」
「ん…」
 天井からぶら下がっていた紐を引っ張って、カチリという音の後に部屋を照らしていた
明かりが落ちる。それでもカーテンの隙間から微かに差し込んでくる月明かりのおかげで、
間近にある紗枝の表情は充分に読み取れた。

「あ…でっ……でも…少しだけ……心の準備…してもいい…かな……?」

 動かせない身体の代わりに、あちこちに視線を移すその様がどうにも可愛らしい。
「そうだな……じゃ、俺もちょっと準備するわ」
 こつんと額を優しくぶつけてから、手を離して紗枝の身体を一旦解放する。へたっと
布団の上で脱力する彼女をその場に置いて立ち上がると、服を脱いで裸になり、下半身に
カーゴパンツを履くだけの状態になった。そのまま移動して部屋の隅に置いてある棚から
紙のパッケージを掴むと、中から一枚薄く四角いものを取り出す。指に引っ掛けて肩から
掛けていたシャツを放り投げ、その四角いものを布団の傍にテーブルの上に置くと、再び
彼女の傍に座り込んだ。


217:Sunday
07/04/01 01:24:13 28jwSM79

「……?」
 紗枝の方はそれが何なのか分からないようで、制服姿のまま両手を胸に当てたまま、
おずおずと見つめだす。それでもピンと来ないようで、思案顔が晴れる様子はない。
「使ったほうがいいんじゃないか」
 一旦は置いたそれを人差し指と中指でそれを挟んで、彼女の眼前にそれを持っていく。
まじまじと見つめていたが、やがて言葉に促されたようにはっとなって目を見張らせると、
ずざっと音が立ってもおかしくないくらいに後ずさった。
「あ…じゃあそれって……」
「まだ母親にはなりたくないだろ?」
「え…うん」
 教えてやったものの、どうにも紗枝の表情は晴れない。寂しそうに、身体を半身にして
背けてしまった。

「? どした?」
「でも…それって……あたしが優しくして欲しいって言ったから?」
「……」
「あたしは別に…崇兄が無いほうがいいっていうなら……」
「紗枝」
 少し強い口調で、崇之は彼女の名前を口にする。少し咎めるような色も含ませてしまった
せいか、その身体がびくりと震えてしまった。

「こういうのは優しくとかそういうんじゃなくて、当たり前のことだぞ」
「……」
 近づいて、横髪をくしゃりと撫でる。本当は、頭を撫でたかったのだが。
「それに……せっかく仲直りできたのに、またお前に苦労を背負い込ませたくないんだ」
 それを手櫛で梳いてやる。耳たぶと手の平が掠めて、彼女はまた小さく身体を震えさせる。
「だから、気にすることない。優しくするのはこれからだ」
「……」
 そう諭すと、紗枝はまたしても顔を少し俯かせる。それは顔を見られたくないとかそういう
意味じゃなくて、単に頭を下げているように見えた。
「もう……優しくしてくれてるじゃん…」
「ははは、そう言うなよ」
 口を尖らせまるで不満事をぶつけられるようなその仕草に、思わず笑い声を上げてしまう。
優しくされて意地を張るなんて、いかにも紗枝らしい。
「ありがと…」
「どういたしまして」
 彼女の腕を引っ張り自分自身もそちらに近づくと、また一瞬だけ唇を番わせる。

「んじゃあ、そろそろ準備出来たか?」
「ひゃっ!」
 そのままぎゅっと抱きしめて、腕の中で紗枝の体勢を入れ替えると、なんとも女の子らしい
彼女らしからぬ悲鳴が響く。それを無視して、彼女の身体を回転させて、背中から抱きしめる
状態になると、そのまま足で囲って、手をお腹の前で繋げてみせる。そして、またしても
ぎゅっと抱きしめた。
「ち、ちょっと!? なんだよ!」
「何って、優しくして欲しいって言われたからそれを続行してるだけだが」
 付き合い始めた頃はよくしていた行為だった。態度ならともかく、言葉でまで甘えられる
ことはそうそう無かったから、彼女がして欲しいなんて言ってきた時は思わず頬が緩んだ
ものである。

「やっ……そんなことされたら…準備なんて出来ないよぉ……」

 座椅子の状態で、自分の胸板を彼女の背中に強く押し付けていると、困ったような声を
吐き出してくる。確かにそこから感じ取ることの出来る鼓動は、それまで控えめだったのが
抱きしめると同時に途端に跳ね上がり、伝わってくる音も壊れたままだ。


218:Sunday
07/04/01 01:25:48 28jwSM79

「大体……なんでこの体勢なの…?」
「俺がやりたかった。他に理由なんかあるか」
 後ろから抱きしめてるはずなのに、何故か紗枝の顔は真横にある。要するにそれだけ
圧し掛かっているということなのだが。肩の上に顎を噛ませるように置くと、それこそ
彼女の身体を包み込んでいるような錯覚を覚える。

「……じゃあ、もういい」
「…ん?」
「どうせ……こんなことされたら落ち着かないもん…」
 拗ねさせてしまったのかぷいと顔を背けられる。こっちは優しくしていたつもりなのだが、
生憎機嫌を損ねてしまったらしい。もっとも、「優しくする」という行為にかこつけてこんなこと
すれば、こうなるだろうとは思っていたが。

「なら…いいか?」
「……ん…」
 顎筋に指を添えて顔をこちら向けさせようとしても、彼女は逆らわない。そのまま近い
距離で視線が結ばれ、敢えて口ではなく頬に唇を落とす。戸惑いながらも顔を強張らせる
その顔が、くすぐったそうに変化していく。
「優しくするけど…やめないからな」
「うん……分かってる」
 崇之は、彼女のお腹の前で繋いでいた自分の手と腕を手放した。過剰に圧し掛かっていた
自分の身体を起こして、楽な体勢をとる。隣り合っていた紗枝の顔が遠ざかり、見えるのは
首筋あたりまで伸びた髪だけになった。当然、表情も伺えなくなる。
 
 自由を取り戻し宙に舞った己の両手を、迷うことなく柔らかく膨らんだ彼女の胸元に
着地させる。胸はすっぽりと覆われ、緩やかに指を動かすと、それに沿うように形を変形
させていく。
「……」
 この箇所を触るのも揉むのも、初めてのことじゃない。何度か悪戯で触れたことがあり、
平均して三回くらい指を動かせば、彼女の拳が飛んでくるのが常だった。だけど今日は、
当然のことながらそれも無い。
 そのことを思い起こすと、不意に心臓が大きく稼動した。
 
「んっ……」

 紗枝は思わず声を漏らす。だけどそれを聞かれるのが恥ずかしいのか、口元をきゅっと
結んで歯噛みをして耐え忍ぼうとする。
「少し大きくなったか?」
「しっ、知らない…っ」
 胸元をさすりながらの言葉と共に、彼女の頬に一層強みが増していく。それにつられて
皮膚がザワリザワリと音を立てて蠢き、勝手に熱さを増していく。それは、普段のような
甘酸っぱさを含んだような感覚とは一味違っていて。
「声、出していいぞ」
 耳元で消え入りそうな声で囁いて、今度は波打ち始める。指先でその髪を梳こうとすると、
紗枝は大きく首を横に振った。振り乱すように、何度も首を横に動かしてそれを否定する。
恥ずかしさや顔が赤みを帯びていくことで発した熱さを、そうすることで必死に誤魔化そうと
しているようにも見える。
「……」
「やぁ……んんっ」
 片や無言、片や途切れ途切れの吐息混じり、二極化していく二人の様相。部屋には
彼女の喘ぎと、制服や布団が衣擦れた音しか響かない。
 座椅子に成り済ましたまま、崇之は腕だけを忙しなく動かし続ける。お互いの想いを
確認しあってから五ヵ月。ようやく訪れたこの時を、じっくりと味わっていた。

 片方の手を、服の下へ滑り込ませて直接お腹を擦る。それまで服の下に隠れていた肌は
十分な暖かさを保っている。その体温を奪い取るようにさすさすと撫でていくうちに、
彼女の腹部が思っていた以上に引き締まっていることに気付いた。


219:Sunday
07/04/01 01:27:22 28jwSM79

 そういえば今まで何度か触った時も、決まって彼女の意外なスタイルの良さに驚いたものだ。
帰宅部でスポーツもやってないし、それなりに食欲も旺盛な奴だし、精神同様にきっと
幼児体型なんだろうという先入観があったせいか、ついつい驚いてしまう。
「お前……結構いい身体してんのな」
 手の動きを休めることなく、思わず抱いた印象を口にしてしまう。
「だって…だってさ……」
 思いの他、悔しそうな色が込められた声だった。身体つきを褒めたのに、どうしてそんな声が
返ってくるのだろう。
「崇兄と付き合う人は…いつも胸が大きかったんだもん……」
「……?」

 
「だけどあたしは…胸ちっちゃったから……お腹引っ込めるしかなかったんだもん…っ」


「……」
 その瞬間、顔中身体中の細胞がぶわっと音を立てて増えたような錯覚を覚える。心臓が
耳の真横に移動したかと思えば、視界がちかちかと明滅してしまう。
「…あー」
 声を出して誤魔化そうとするが、どうにも収まらない。口元に浮いた笑みが、どうやっても
元に戻ってくれない。代わりに、ぎゅっと目を瞑る。

「やっぱ俺、お前のこと大好きだわ」

 どうにも気持ちがこらえられなくなって、溢れそうになる気持ちを言葉で堰き止める。
彼女の自分に対する想いの強さはついさっき分かったばかりだったが、それをこんなにも
早く実感できるとは思っていなかった。
 見えない箇所にまで努力をして自分に好かれようとしたその態度に、尚更に愛しさが募る。
そしてそれと同じくらいに、今までずっと気付いてこなかった自分を嘲笑ってしまう。
「けど……ちっちゃいままだよ」
「俺は『お前が』好きなんだって言ったばっかりだぞ」
「……ばか」
「知ってる」
「…ばかぁぁ」
「知ってるって」
 あまりに恥ずかしいのか急に身悶えし始めるものの、そうはさせまいと紗枝の身体を
収め直す。声が少し潤んでいたのことには、少しだけ驚いたが。

「……じゃ、外すぞ」
「うぅ…」
 いつもならこんなことわざわざ言わないが。ボタンを外すことにさえ確認を取ったのは、
そういった感情が募ったからなのだろうか。全て外してはだけさせると、開かれた向こうからは
少し陽に焼けた淡い肌色と、薄いペパミントグリーンの生地が姿を表す。
「勝負モノか?」
 笑みを零しながらからかってみせる。色が色だけに、その顔色が暗闇の中でも余計に
映えてしまっていた。
 紗枝はというと、自分を蹂躙していく腕にしがみつこうとしながら、ただただ首を横に
振るばかり。そんな初心な動作が、余計に彼の心を燻らせる。小ぶりだけども反発の強い
二つの感覚も、それを後押しする。

「んん……もぅ…っ」
 弄りまわす内に、それまで膨らみをしっかりと覆っていた生地がしわくちゃになり、
徐々にずれ始める。背中を丸めてその胸元を隠すと同時に、また腕の中から逃げ出そうと
するが、崇之がそれを許すはずも無く、捲れた生地の代わりに、自身の手の平でそこを
覆い隠した。



220:Sunday
07/04/01 01:28:38 28jwSM79

「やぁ…恥ずかしい……恥ずかしいよぉ…っ」
「……」
 限界を今にも超えそうなのだろう、声は完全に涙声だった。背後からこねくっているの
だから、崇之からその胸元は見えていない。それでも、紗枝にはもう耐えられないのだろう。
布団の上に投げ出された両脚が、ずりずりと動き回る。


「……」
「あっ!」
 苛まれる思考から逃げ出すように片方の手を宙に舞わせると、内太ももにしゅるりと
這わせる。驚いた紗枝が半開きだった脚を急いで閉じるものの、それは逆に崇之の手を、
自分から挟みこむことになった。
「あっ…? あっ……」
「力抜け」
「…っ…ぅ…」
 そこを触るために前のめりになってしまって、また顔の距離が近くなる。口の傍に位置
していた彼女の耳元に一言囁くと、跳ね返るようにビクリと反応を示してくる。

「……」
 だけど言葉を受け入れてくれたのだろう、徐々に締めつける力が緩んでいく。代わりに
両手を固く握り、拳を作っている。身体のどこかを力ませていないと、どうにもならない
のだろう。

「ぁ……」
 解放された手を太もも沿いに近づけて、プリーツスカートの端に指をかけ、そのまま
ゆっくりたくし上げていく。下着が見えるギリギリのところでそれを止めると、胸の膨らみの
先端に指の節を挟みこんだ。
「ひっ…ぅ…っ……んんっ…!」
 彼女が喘ぐ隙間に、もう片方の手もスカートから手を離し、生地越しに秘所をまさぐっていく。

「やぁっ…! だめ…だめぇ……!」
 ふるふると嫌がりながらの台詞だけれど、もう力をこめられ反発されることも無い。
 手の平全体から指、指から指先。何度も往復させるうちに、弄る箇所を絞っていく。
それに伴って彼女の甘ったるい声も、少しずつ大きくなっていた。


「た、崇兄ぃぃ……」
「…どした?」
 すると突然、名前を呼ばれる。いかにも恥ずかしそうに、いかにも緊張した様子で。

「あ、当たってるってばぁ…」

「……」
 言うまでも言われるまでもなく、崇之のそれはとうに昂ぶっていた。しかも、スカートの中に
手を差し込む為に前のめりになっているのだから、必然的に紗枝のお尻にそれを押し付けて
しまう形となっている。

 崇之は既に上半身裸である。素肌で背後から抱きしめられ、硬くなった昂ぶりをお尻に
感じ取ってしまっているのだから、彼女がどれぐらい緊張しているかは、想像に難くない。
 それでなくても、紗枝は初めてなのだ。まだ前戯の段階で、それに若干の抵抗感を示しても、
仕方のないことだと言える。


221:Sunday
07/04/01 01:30:09 28jwSM79

「紗枝…」
「……?」
今度は彼の方から呼びかける。少し、切羽詰まった声で。それは演技だけど、演技じゃない。
隠すまでもない本心でもあるのだ。

「お前が見たい」

背後から抱き留めているから、触れることは出来てもまだその姿を視界に捉えていないのだ。
今の体勢を嫌がったのは彼女が先だけど、それを自分から変えたがる。それも一つの、
彼なりの優しさなのだろうか。
 背中の向こうから、一度だけ心臓が強く働いたのを感じ取る。紗枝は振り向かない。
かろうじて見える耳たぶは、熟れた林檎のように染まりきっている。
「……笑わない?」
「笑わない」
 胸元を腕で隠しながらの言葉をそのままに、イントネーションだけを組み換え返す。
自分の身体つきのことを言っているのだろうけど、彼女の健気な努力を知った今、全力で
それに応えたいと思った彼には、そんな思いを抱くこと自体が思考の埒外にあった。

 絡みつけていた腕を戻して、両肩をそっと掴む。そのまま後ろ襟に手を入れて、ブレザーを
肩からずざりと剥ぎ取る。
「あっ…」
彼女の腕をとって、片方ずつ袖から抜き取っていく。そして完全に脱がし終えると、布団の
傍に静かに置いた。

「見たい」

 ブレザーを剥いだことで、体温と鼓動と匂いがより一層感じ取れるようになる。そして
それは、彼女も同じに違いない。

「うぅ…~~っ」

ひどく恥ずかしげな声をあげながらも、紗枝は重心を前に前に傾けていく。
 手を離すとそのままどさりと布団に倒れ込み、横向きの体勢になる。仰向けにならないのは、
すぐさま見せる勇気を持てなかったのだろう。

 しかし見せないとは言っても、シャツのボタンは既に全部外され、腕で隠しきれていない
隙間の向こうから薄緑の生地が見え隠れしている。鎖骨あたりからは半端に緩んだ肩紐も
微かに見えていて、スカートも限界のところまで捲れ上がっている。少しでも顔を傾ければ、
ついさっきまで指先で弄っていたその奥が、今にも見えてしまいそうだった。
弱々しく怯え、それでいて縋りついてきそうに潤んだ瞳に見つめられ、崇之はぐっと
言葉に詰まらされる。驚かされたわけでもないのに、心臓が口から飛び出しかける。
何より、半端に乱れている着衣に、胸と気持ちが疼いて仕方がない。

つくづく、女は魔性の生き物だと思う。

 幼なじみで、綺麗というよりは可愛い顔立ちで、いまいち色気に乏しくて、そんな彼女でも、
こんな艶やかな表情を持っているのだ。
しかも無意識なのだから、余計に性質が悪い。

「……」
「あっ…」
片方の手で肩を抑え、お互いに正面で向き合えるよう力を込めて、身体ごとこちらを
向かせる。その目尻には、やっぱり雫が貯まっていて。

「怖いか?」
「……わかんない」
胸元を両腕で隠したまま、表情に変化はない。


222:Sunday
07/04/01 01:31:31 28jwSM79


頭の両隣に手をついて、ちょうど下腹部あたりを跨ぐ。四つん這いの状態で覆い被さった。
「少し、緊張してきた」
「……鈍感」
 うそぶいてみれば、ほんの少しだけ視線と声色が鋭くなる。その様子は、拗ねるという
よりも悔しそうに見える。
「嘘だよ」
腕を折り曲げ、静かに肘をつく。ほとんど、紗枝の身体に圧し掛かっている状態になった。

「お前にしがみつかれた時から、最初にキスされた時からずっと緊張してる」

距離が狭まり、必然的に呼吸し辛くなる。互いの吐息が、口元に届きだす。
「心臓の音も、聞こえてただろ?」
「なら……いいけど…」
さらさらと前髪横髪を手で梳いて、熱を測るように額を撫でる。

「前に…」
「ん?」
「前に、今と同じようなこと…あったよね」
「……あぁ」

言われてふと、思い出す。まだ関係が変わる前、関係が変わるきっかけになったあの日の
出来事。

「あの時あたし…本当にされるって思ったんだからね」
「ちょうどいい時に、真由ちゃんが来たんだったかな」

紗枝の友達と一緒に海に出掛ける日、まだ人数が揃ってないタイミングを見計らって、
崇之は彼女に悪戯を仕掛けた。掃除している最中に背後から忍び寄り車の後部シートの上で、
今と同じように圧し掛かり、額をあわせ吐息を浴びせ顔を近づけたのだ。

「けど…今日は途中で止めたり……しないぞ…?」
「うん……分かって…る……」

華奢な身体を覆い隠すように、また深く睦み合う。
 
 今度は、舌は絡まない。代わりに、紗枝の腕が崇之の髪に絡みつく。控えめに膨らんだ胸も、
平べったくなるくらいに押し付けられる。
 そのまま頭の位置を下に下にずらしていく。舌先を口からはみ出させたまま、顎や首筋を
通り、濡れた道筋を谷間まで作っていく。
「あぁ…ん…っ……ふぁぁ…っ」
「…っ」
 半端に緩んでしまった胸元の紐タイを手で弄りながら、柔らかい膨らみに挟まれたところで
いったん動きを止める。紗枝のことだから、距離を挟んでまじまじと見つめていたら、顔から
火を噴出すくらいに恥ずかしがるに違いない。そう考え、密着しながらその場所を楽しんでいく。

「んんっ……ふぅぅ…っ…恥ずかしいよおぉぉ…」

自分の頬に柔らかい丘をぎゅむりと近づけ、手だけでなく肌でも楽しむ。荒い息が風となり、
唾液と汗が混じりあって、赤く染まった身体を流れていく。
「ゃぁ……ぁっ」
「…ふ……ぅ…っ」
密着しあってなかなかに呼吸が難しいが、それでも二人は離れない。


223:Sunday
07/04/01 01:33:40 28jwSM79

崇之は谷間に顔を埋めたまま、どれだけ息が乱れようとも動かない。というより動けない。

 離れようと思っても、後頭部に紗枝の両腕が絡みついていて、抱きしめ抱き留められて
いるのだ。
「……っ、っは」
「んっ…ぅぅ…く、くすぐったいってばぁ……」
 顎を擦って、まばらに生えた短いヒゲでちくついた感触を与えると、いよいよ腕の力が
強くなる。それこそ、窒息してしまいそうになるくらいに。


「紗枝…少し……苦しい」
「…ぁ……ぅ…ごめん…」
 流石に、限界が間近に差し迫って、それを伝える。
 それがあまりに幸せな苦しさだといっても、死にかけてしまっては何にもならない。
少し情けなかったが、彼女に腕の力を弱めてもらい、一旦起き上がる。

「ふー…っ」
「あ…」
 それでも大きく空気を吸い込み、息を整えれば再び同じ位置に飛び込んでいく。今度は、
胸を弄っていた両手を、紗枝の背中と布団の間に滑りこませて。
「ここすげー落ち着く」
「やっ…もう……すぐ…そんなこと、言うんだから…ぁ……っ」
 首はふるふると横に振られるものの、また腕が頭に纏わりつく。半ば朦朧とした意識の中で、
自然とこうしてくれているのなら。叫んでしまいそうになるくらい、感情が溢れ出す。

「もぉ…っ…ほんとに、すけべなんだからぁ……あっ!?」
 その減らず口を待っていたかのように、崇之は薄く染まった丘の先端を口に含んだ。
舌先でころころと転がすと、彼女の身体が弓のように反りあがる。
「あぁっ…ふあ…っ…!」
 途端に反応が大きくなる。彼女の腕が、反射的に頭を引き剥がそうとしてくるものの、
崇之は背中に回していた腕を抜き出し自由にして、紗枝の腕の自由を奪い取る。手の平同士を
合わせて指を絡め、布団に押し付ける。

「はぁ…! あぁ……いやぁ…! んぅぅ…っ……」

 どうやらここが紗枝の性感帯らしい。もっと重点的に責めてやろうかとも思ったが、
生憎「優しくする」という約束を交わしている。今日初めての彼女にここばかりひたすら
責め続けるのもどうだろうと思い直し、これ以上は次回のお楽しみということにして口を離す。
涎で出来た糸の橋が、伸びて垂れて音も無く切れた。

「もう…こんな……赤ちゃんみたいな真似…やめてよね…」
「……」 
 こんなでかい赤ん坊がいてたまるか、思わず言い返そうとして、口の中で押し留める。
彼女との水掛け論は嫌いじゃないが、結末はいつもケンカ染みているので、今の状況には
好ましくない。
「ま、予行演習ということで」
「なっ…なんのだよぉ……!」
 だから軽口を叩いてみたのだが、普段はもっと強い調子のそれが、弱々しく消え去っていく。
ふわついた感覚に、頭がついてこないのだろう。

 繋ぎ合わせていた両手の平をほどいて、更に身体を下にずらす。そのまま彼女の腰元に
這わせてホックを探し当てると、躊躇うことなく指先で外してスカートの締まりを緩めた。


224:Sunday
07/04/01 01:35:59 28jwSM79

「やぁぁ!?」

 途端に紗枝が抵抗し始める。ずり下げ取り払おうとしたら、思いの他強い力でそれを
止められてしまう。
「やっ…やめてっ……やだぁ…!」
「……やめないってもう言ったぞ」
「うぅ…っ!」 
 ふっと溜め息をついて、少しだけ咎めるように声を強める。

「だって、急に…外すなんてひどい…っ!」
 
「あー…」
 非難めいた涙目の訴えに、崇之はバツが悪そうに頬を掻く。
 何も言わずにスカートを脱がそうとしたことにじゃない。実は既に、胸元に顔をうずめて
背中を掻き抱いていた時に、ブラジャーの紐をさっと外していたのである。
 もっとも、外す前から本来の位置からずれてたわんでいた上に、今の紗枝はスカートの方に
気持ちを集中しているのだから、まだ気が付いてないようだが。

「…それもそうか」
 そのことは顔にも口にも出さず、彼女の言葉に同意を示す。跨いでいた脚を外してまた
尻餅をつきあぐらをかくと、彼女の上半身をゆっくりと起こした。
「じゃあ…脱がしていいか?」
 なんとなしにではなく、じっと目を見つめる。顔全体ではなく、その瞳だけを。

「……今言うなんて、ずるい」
「そう言うなよ」
 悔しそうに口元をゆがめて、紗枝は真横に向いて視線を逸らす。身体の後ろに両手をついて、
斜めに反った身体を支える。
 至るところに皺が走った真白いシャツは、ボタンを全て外され前は完全にはだけており、
汗を吸ったのか所々透き通り始めている。首からぶら下がった少し結び目が崩れた深緑色の
紐タイと、もはや肩に引っかかっているだけのペパミントグリーンのブラが控えめな彼女の
胸を必死に隠し通そうとし、ホックが外されたスカートは太ももあたりにまでずり落ちて、
秘所とお尻を覆った薄緑色の生地はほとんど露出してしまっていた。

「お前にどう見えてるかは分からんが……俺だって、そんな余裕があるわけじゃないんだぞ?」

 恋人である彼女のこんなあられもない姿を見せつけられて、平静でいられるはずもないのは、
当然の話なわけで。

 崇之自身、紗枝にどれだけ想われていたかなかなか気付くことが出来なかった。だけど、
逆もまた然りなのだ。
 紗枝だって、崇之がどれだけ彼女のことを大事にしたいと思っているか、まだちゃんと
分かっていないのだ。

「だから、見たい。全部見たい」
「……」

 そう口走った瞬間、明らかに鼓動が速くなる。胸に何かが詰まったような息苦しさに、
一瞬だけ表情をくぐもらせてしまう。



225:Sunday
07/04/01 01:38:09 28jwSM79

「崇兄が…そんなこと言うの…ずるいよ……」

「……」
 その台詞を勝手に肯定と受け取って、ずり落ちていたスカートを元の腰の位置にまで
戻すと、両手を音も立てずその中へ差し込んでいく。下着に親指を引っ掛け、ゆっくりと
ずらしていく。
「……っ」
 紗枝は何も言わない。恥ずかしげに顔を背け身体も微かに震えているのに、何も言っては
こない。口をきゅっと噤んで耐え忍ぶ姿が、崇之にはたまらなかった。

 両膝あたりまで下げたところで、下着から手を離す。その方がより扇情的な姿に映ると
いうことを、彼は知っているのだ。というか、単なる個人的嗜好による行為なのだが。

ずちゅ……

「ひぅっ…っ!」
 右人差し指と中指の先を舐め、その指先をスカートの奥にある秘所にあてがい擦りつけると、
間髪入れずに怯えた声が跳ね返ってくる。所在なさげだった彼女の両手も、思いきりシーツを
掴んで皺を幾重にも走らせていく。

「あっ…はぁ…、やっ…やぁ……いやぁぁっ……!」

 お互いの声と衣擦れの音しか響かなかった部屋に、淫猥な水音が立ち上がり始める。 
 強く目を瞑ったまま、紗枝は首を左右に振り乱す。しかし脚をばたつかせようとしても、
膝に掛かった下着に邪魔されちゃんと動かせていない。
「ひっ…ぃ…っ…ひうぅっ…やだぁ……やだぁあぁぁっ…!」
 指の動きを少しずつ速めていく。それに身体が敏感に反応してまうのか、その華奢な身体が
弓のように反り返った。スカートで見えはしないが、自分の指がびしょびしょに濡れて
しまっていることだけは分かる。

「んんっ……うううっ…ひうぅ…」
「……っ」
 ずっと見知っている彼女の、まるで別人のような激しい媚態を見せつけられ、崇之の理性も
激しく揺さぶられる。どくんと跳ねた心臓が、彼女の、紗枝の甘く悲痛な声をかき消して
しまうほどに。

じゅぷっ

「いっ…やぁぁ……やぁぁーっ!」
「…っ!」
 一瞬だけだが、理性が消し飛んでしまう。指を無意識のうちに深くつき入れてしまっていて、
悲鳴にも近い声が耳を貫き我を取り戻す。


226:Sunday
07/04/01 01:40:24 28jwSM79

 あまりに唐突な感覚に怖くなったのだろう、紗枝は指から逃げるように身体を横向きに
傾ける。ばたつかせた脚の片方は膝を折り曲げており、下着は足首あたりのところまで
ずり下がっていた。もっとも、もう片方の脚には未だに膝あたりに掛かっていて、下半身の
動きを少し拘束されてしまっていることに変わりはないが。

「はぁ…っ…はっ……ぁ…」
「…ごめんな」
 息も絶え絶えになりながらくたりと布団に身を預けるその様子を、じっと見つめる。
散々約束を守れなかったというのに。また破ろうとしてしまったことに、激しい自己嫌悪を
後悔に襲われる。

「あ…あたしも……」
「…?」
「その……ごめん」
 うっすらと目を開け視線がかち合うと、何故か彼女も謝ってきた。
崇之は首をかしげる。紗枝が申し訳なさを感じるようなことなんて、何一つ無いはずなのに。
自分は当然としても、その行動がよく理解できない。

「せっかく崇兄が優しくしてくれてるのに……怖がっちゃったりして…その…」

「……!」
 身体の内側に火を放たれたように、カッと身体の内側が熱くなる。

「あたしからして欲しいって言ったのに…文句言ったり……すぐ嫌がっちゃったりして…」
 
 今にも泣き出しそうなその表情が、それを余計に後押ししていく。意地っ張りな奴だから、
嘘なんてつけない奴だから、今口に出して言っていることも全部本心なのだろう。

「ほんとに…ごめんなさい」

 そんな健気なことを言う彼女に、自分の気持ちを、想いを、注ぎ込みたい。

 視界にバチッと火花が走る。意識と視界が刹那的に途絶え、気が付いた時には、再び紗枝の
身体を覆いこむように抱きしめていた。 
「崇…兄……?」
「……」
 そのままうなだれかかって、短く息を放つ。素肌同士の触れ合いは、彼女の鼓動の変化を
確かに伝えてくれる。


227:Sunday
07/04/01 01:41:27 28jwSM79



 ここまで真っ直ぐに気持ちを向けてくれる彼女を、ずっと勝手に妹扱いし続けていた。
付き合い始めてからも余所を向いてしまったりと、改めて彼女への態度の酷さを省みる。

「紗枝…」

 今になって気付く。関係がなかなか進展しなかった理由は、自身にも大いにあった。
優しくゆっくりとなんて聞こえはいいが、単に臆病だっただけだ。

 改めて、思う。


「……いいか?」


 失わなくて、無くさなくて本当に良かった。


「……」
 あまりの安堵感に視界が微かに揺らぐ。その顔を見られないように、紗枝の頭を肩口に
埋もれさせた。


「……うん」


 半ば無理やりの所作だったのに、反発されることもなく頭も動かない。おそらく、彼女も
今の表情を見られたくないのだろう。
天井を向いて、今度は深く太く長く息を吐く。自分のとも紗枝のとも分からぬ不規則な
音階が、ただただ耳を劈き続けた。

 前髪をかき上げ露出したおでこにそっと唇を落とし、空いた手を、テーブルの上にそっと
伸ばす。


 置いてあった四角く小さなビニールに包まれたそれを、がさりと掴むのだった――





228:Sunday
07/04/01 01:45:12 28jwSM79
   _、_
| ,_ノ` ) ……



   _、_
| ,_ノ` ) くどい上に肝心のシーンが薄くて本当に申し訳ない  



   _、_
| ,_ノ` ) おっと、コーヒーブレイクの時間だ



   _、_
| ,_ノ` )ノシ 期待せずにお待ちいただきたい   



  サッ
|彡


229:名無しさん@ピンキー
07/04/01 01:54:20 TejbpKIM
肝心な所で逃げやがって……!

230:名無しさん@ピンキー
07/04/01 02:06:19 x/88jOVk
だが俺は待っていた! 待っていたよGJ!!

経験者である崇も紗枝が相手で緊張してってのが何だか甘くてとっても良いです!
こうなったらもうこってりと蜂蜜塗りたくったように甘いものを書いて下さい! 待ってます!

231:名無しさん@ピンキー
07/04/01 03:17:56 g7TFlfyd
この甘さと焦らしは…!
間違い無い、ヤツのSSだ!!
おのれ…我々を飼い殺す気か!?
俺はもう焦らさせられすぎて気が狂いそうだ…

232:名無しさん@ピンキー
07/04/01 15:35:39 9VMoeNo9
あ~、なんだ、アレだ、アレ。
焦らされすぎて、死にそうだ。
だから、コーヒーブレイクの暇など与えん!!
続きを書いて貰おうか!!!

233: ◆6Cwf9aWJsQ
07/04/01 23:23:48 7eNvF/mV
投稿行きます。

234:シロクロ 13話【1】
07/04/01 23:25:15 7eNvF/mV
ら~らら~らら~ら~ら~ら~ら~~ららら~、ら~らら~らら~ら~ら~ら~ら~~♪」
啓介の家に泊まりに行く前日の夜、
私はどこかで聞いたようなフレーズを口にしながら荷物の整理をしていた。
「ら~らら~らら~ら~ら~ら~ら~~ららら~♪っと、こんなもんかしら」
そういいながら作業の手を止める。
荷物の方は大丈夫としても確認しなければならない。
鏡に映る自分の姿を眺めてみる。
「問題ないわよね・・・多分」
ちゃんと胸やお尻も大きいしおなかも二の腕も細い・・・はず。
シミとかニキビとかそばかすとかもないし体の方は万全。
・・・多分。
「・・・・・・大丈夫だといいんだけど・・・・・・」
彼は私のカラダを気に入ってくれるだろうか。
今更こんなこと気にするのも我ながらどうかと思う。
けど気になるのも事実だし、現在の状況に満足して何もしない方が問題だろうと思う。
そう考えると、今用意した荷物では心許ない気がした。
「・・・やっぱり変えよう。下着を」
決心した私は早速鞄の中から持っていく予定だった下着を取り出し、
それとは別にタンスの中からお気に入りのモノを二,三枚ひっぱり出して、それらを見比べる。

235:シロクロ 13話【2】
07/04/01 23:25:59 7eNvF/mV
目の前の下着は五着。
それに対して実際に使うのは一、二着。慎重に選ばないと。
とりあえず、一番お気に入りの紫のモノは決定として鞄の中にしまっておき、
二着はタンスにしまっておく。
「・・・問題はあと一枚ね・・」
そういいながら私は目の前の二つの下着を見比べる。
片方は鞄の中から取りだした、所々がシースルーになった淫靡な雰囲気の黒の下着。
もう片方はタンスの中から出した、リボンをアクセントにした可愛らしい白の下着。
無論、どちらも上下セットだ。
「やっぱり、白にしようかな・・・」
初めてなのに黒下着というのはちょっとあざとすぎる気もする。
それに正直な話、私は黒より白の方が好きだ。
黒も大人っぽいし全てを内包するという意味もあり優しい感じだけど、
白は清楚、純粋といった感じだし何より啓介を連想する色だし。
というわけで白にしよう。
そう思った私は白の下着に手を伸ばし―
「・・・やっぱりやめ」
―途中でその手を引っ込めた。
白はもっと後。
今はまだ黒で。
そう思い直した私は黒の下着を手にした。

236:シロクロ 13話【2】
07/04/01 23:27:02 7eNvF/mV
そして当日。
「・・・遅い」
俺は自室で思わずそう呟いた。
俺の視線の先に置かれた時計の短針は既に『11』を通り越して『12』に近づいている。
要するに今は昼前。
ついでに言うと俺が起きたのもついさっきだ。
にもかかわらず、綾乃はいまだ我が家に到着していなかった。
「まあこの天気じゃ仕方ないけどな」
窓から見渡せる景色は雨に濡れている。つまりは大雨だ。
そして手元の携帯を見ると、
『題名:愛しの啓介へ
本文:今すごい雨なんだけど
傘持ってきてないのでそっちに着くのが遅れます。
お風呂沸かせて待っていて下さい。
P.S.昔みたいに背中流しあいっこする?』
などという文章が表示されていた。
「『了解。P.S.丁重にお断りします。』と・・・」
とりあえず彼女の要請の両方に回答しておく。
ちなみに、これが送られてきたのは
その上着信履歴には彼女の名前が一分おきに表示されていた。
『ストーカーかお前は』とツッコミを入れたいところだが起きない俺のせいだろうからやめておく。
って、なんで俺は彼女の到着が遅いってだけでこんなにさっきからそわそわしてるんだ。
まあいつもそうなんだけど今回はエロイことをするという約束をしているので期待と緊張が増加。
「なんか欲求不満のエロガキみたいだな・・・」
実際そうなんだけど。
と、突然携帯が着メロと振動を全開にして騒ぎ出した。
慌てて携帯のディスプレイを見るとそこには『馬鹿兄』の3文字が表示されていた。

237:シロクロ 13話【4】
07/04/01 23:30:14 7eNvF/mV
・・・普段ならメールで済ませようとするのに、何故電話?
嫌な予感がするが無視するわけにもいかず、通話ボタンを押す。
「あ~はい、もしもし?」
《・・・なんか嫌そうだな。まあ、それはともかく早速だが、頼みがある》
スピーカー越しの兄のその台詞を効いた瞬間、予感が確信になった。
「・・・・・あのお兄様?当方はたった今何やらとてつもなく嫌な予感がしたのですが・・・・・」
《そのしゃべり方気持ち悪いからやめろ。そんで本題だけど洗濯モン取り込んどいてくれ》
・・・嫌な予感的中。
「って干してたのかよっ!?こんな大雨の中!?」
《今朝の天気予報じゃ大丈夫だったんだけどな~。それと干したのは母さんだから苦情はそっちに》
全く、こんな肝心なときに当てにならんとは・・・。
お天気キャスターに裏切られた気分だ。
《じゃ、頼んだ》
「な、ちょ・・・!」
少しの間現実逃避した隙をつかれ、兄は俺の抗議を聴きもせずに通話を切った。
「ちっ、いつもながら役立たずどもめ・・・」
我が家に一人きりなのをいいことに本人達の前では言えもしない不満を口にする。
だがもしそれが聞かれてても洗濯物は減りはしないわけで。
そう思うと自然とため息が出た。気だるさ三割増で。
正直な話、したくない。濡れるし面倒だし。
「綾乃がいたら手伝ってくれるだろうけど・・・」
そう呟きながら俺はまだ姿を現さない恋人に思いを馳せる。
そういえば綾乃は今どうしてるだろう。
傘忘れたらしいから俺が傘持っていった方がいいかもしれない。
もしかしたら相合い傘・・・。
俺の脳裏に過去の―具体的には海に行ったときの―場面が蘇った。
あの時は柔らかかったいや楽しかった。
まあそれはともかく思考を元に戻す。

238:シロクロ 13話【5】
07/04/01 23:31:15 7eNvF/mV
洗濯物と彼女。どちらを優先させるか。
「・・・考えるまでもないな」
そう呟き、俺は着替えを手早く済ませて部屋を飛び出した。
「待ってろよ、綾乃・・・!」
当然俺は家族よりも恋人との愛を優先することにした。
愛しの彼女を濡れネズミにさせるわけにはいかない!恥ずかしいから本人の前では言えないけど!
そんな大義名分をとってつけた俺は親切半分下心半分(自己査定)で傘を片手に自宅から飛び出した。
「せっかっいっじゅうにっ、1人しっかっいなっいっ、
自分に~、嘘~をつ~い~ていっきっられないっ♪」
うろ覚えの歌を口ずさみつつ俺は玄関から飛び出そうとする。
――直後。
俺の目の前を車が通りすぎた。
――玄関前にあった水たまりの水をぶちまけながら。
その直撃を浴び、俺は一瞬で濡れ鼠となった。
「・・・やっぱりやめ。洗濯物回収して風呂入れてこよう。多分綾乃もびしょ濡れだろうし」
前言をあっさり撤回して俺は自宅に戻った。
「許せ、綾乃・・・」
何となく雨雲に覆われた空を見上げながら俺はそう呟いた。

239:シロクロ 13話【6】
07/04/01 23:32:17 7eNvF/mV
そこからの俺の行動は速かった。
まず濡れた服を着替え、風呂掃除を済ませて湯を入れ始める。
湯がたまるまでの間、無事な―流石に数えるほどしかないが―洗濯物を即座に回収し、
びしょ濡れになった洗濯物と同じく先ほど脱いだ服を乾燥機に放り込む。
「ここまでわずか7分23秒(自己査定)・・・。また一つ世界を縮めてしまった・・・」
自分の成し得た偉業に恍惚としながらそう呟く。
俺って実はやれば出来る子だったんだな。
普段は自慢とかはしないが今回ばかりは自画自賛してもいいんじゃないだろうか。
ああ、今ここに綾乃がいないことが本当に悔やまれる。
そう思いながら俺は乾燥機が正常に動いてることを確認し――
「・・・・・・あれ?」
――しようとしたところで動きを止めた。
乾燥機の窓から見える洗濯物に違和感を感じたからだ。
「今、何か見慣れぬモノが見えたような・・・」
俺はそれを確かめるべく目を
「・・・っう゛ぇっくしっ!?」
盛大にクシャミをした。
「・・・う~、冷えるな~」
そういって身を縮こまらせながら、もう一度乾燥機に目を向けるが、
「・・・・・・あれ?」
そこから見える洗濯物には何の異常もない。
「・・・気のせいか」
そう判断した俺は乾燥機から視線を外した。
それが間違いだったと気付かずに。

240:シロクロ 13話【7】
07/04/01 23:34:04 7eNvF/mV
手早く服を脱ぎ捨て、洗濯機の上―我が家は脱衣所に洗濯機と乾燥機を置いている―に置く。
「・・・う~、寒~」
寒さに身を縮こまらせながら扉を開ける。
「・・・・・・え!?」
と、そこにはすでに先客がいた。
兄貴か、と一瞬思ったが兄貴はこんなに髪が長くないし腰が細くないし女みたいな顔してないし
乳があるわけないし足の間に男根がないはずがないと俺的時間0,05秒で判断。
つまり眼前にいるのはジャイアントさらばな姿になりはてた兄ではなく、
ましてやついに豊胸手術に手を出した義姉さんや飴をなめて若返った母でもなく、
当然どこぞの温泉の力で女になった父でもない。
そこにいるのは俺のよく知る少女―黒田綾乃その人だった。
「「・・・・・・なんで?」」
お互いに全裸のまま頭に疑問符を浮かべる俺達二人。
何をするでもなく、裸体を隠そうとすらせずにただバカみたいに棒立ちになっていた。
何かしなくては、とは思うが頭の中は真っ白になっておりマトモな思考すら出来ない。
こういうときどうすればいいかわからないよ笑えばいいと思うよいや思わないかそうだよなあ。
ええい落ち着け俺!無理だけど!
だが、混乱するばかりの頭脳とは逆に体の方は本能に忠実に動いていた。
こんな時でも性欲は正直で、目線は彼女の艶姿をなめ回すように上から下、
下から上へとエンドレスで行き来している。
なんだか他人事みたいな言い方だが実際俺もあまり意識せずにこうしてるので
自分の意志でしてる実感がない。止める気もないけど。
一方、綾乃は胸や足の間などの重要な箇所を隠すことも忘れ、呆然とこちらを見つめ返していた。
流石にこの状況は綾乃にも衝撃的だったらしい。
が、俺は気付いた。
彼女が俺と同じように俺へと向けた視線を上から下、下から上へとエンドレスで行き来してることに。
俺の視線と彼女の視線がこの状況そのもののようなメビウスリングを描きだす。

241:シロクロ 13話【8】
07/04/01 23:35:13 7eNvF/mV
が、やがて彼女の目線はある一点で停止した。
俺のそびえ立つ股間で。
そこで俺の中にようやく羞恥心が戻り、我に返る。
「・・・失礼しました、レディ」
そういいながら俺は扉を閉め――
「・・・・・・ってちがうだろっ!!!」
――ツッコミを入れながら再び扉を勢いよく開いた。
「・・・・・・・・・・・・・あれ?」
扉を開け放った体勢になってようやく我に返るが、綾乃はそんな俺に冷めた目で答えてくれた。
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
流石に二度目となるとお互いに先ほどのように慌てたりはせず、
俺達の周囲にはただ白けた空気が漂うだけだった。
「・・・結局、何がしたいの?」
「・・・俺にも分からん」
お互い半目になってそう言い合うと、頭も冷静になれた。
「まあゆっくりと・・・」
しておけ、という言葉は綾乃の言葉に遮られた。
「せっかくだし、一緒に入る?」

242:シロクロ 13話【9】
07/04/01 23:36:41 7eNvF/mV
「つまり到着したのはいいけど俺が洗濯物取り込んでる最中だったんで、
先に風呂入ってたら俺が入ってきた、ということか」
俺の言葉に綾乃は首を小さく縦に振る。
「乾燥機の中に、見慣れない黒とか紫の女物の下着が見えたんだがもしや・・・」
「・・・うん。そのまさか」
驚愕の事実に、俺は目を見開いた。
そんな色の下着を持ってくるとは綾乃の本気具合が半端じゃないというのが分かる。
ってそんなことはどうでもいい。いやよくはないけど後回しだ。
「せめて一言声かけるとかしろって・・・」
「『忙しそうだったんで先にお風呂はいらせてもらいます』ってメール送ったんだけど」
「・・・マジっすか」
「マジです」
言われてみれば濡れた服のポケットから取りだした携帯のランプが点滅してたかもしれない。
・・・悪いの俺じゃん。
「・・・ごめん」
「謝らなくていいって。私だって連絡不足だったんだし」
そういいながら綾乃は俺の頭を撫でてくれた。
・・・そういえば最近俺って頭『撫でる』側じゃなくて『撫でられる』側になってるような気がする。
まあこれはこれで気分いいからいいけど。
「まあそれはともかく」
「うん」
綾乃は頷くと手を俺の頭から離す。
その手が降りていくのを見届けながら、俺は言った。
「・・・まさかいくらか段階すっ飛ばしてお前と一緒に風呂はいることになるとは」
「・・・うん。私も予想外」
そういって俺達は湯船の中で同時に肩を竦める。
ついでにうなだれると、俺の目に向かい合わせに座った綾乃の裸体が目に飛び込んできた。
どうやら以前にも言っていた『啓介なら裸見られても構わない』というのは本気らしく、
彼女はタオルどころか手で大事な箇所を隠そうともしていない。

243:シロクロ 13話【10】
07/04/01 23:38:57 7eNvF/mV
いやいくら何でも無防備すぎだろ!
そう思いながら出来るだけ綾乃から視線を外そうとしているが、やはり横目で彼女の姿を見ようとしてしまう。
父さん母さん兄さん義姉さん驚きです。乳はお湯に浮きます。
それを誤魔化すために、何か言おうとする。
「「あの・・・」」
だが、その声は綾乃の声と同時に出てお互いのそれ以上の発言を封じてしまった。
「・・・」
「・・・」
そしてお互いに沈黙。
だが、何が言いたいかは目を見れば分かる。
『・・・お先にどうぞ』
『・・・いや、正直何喋ればいいのか分からん』
俺もそういう思いを目で表す。
と、綾乃は驚いたように目を見開き、
『じゃあなんで喋ろうとしたのよ?』
俺はふんぞり返って答えた。
『何も考えてなかった』
『胸張って言うことじゃないでしょうが!』
『じゃあお前はどうなんだよ』
『そ、それは・・・』
痛いところを突かれたらしく、彼女は俺から目をそらす。
どうやら俺と同じらしい。
それならそうとちゃんと言えよ。いや実際には喋ってないんだけど。
と、そこで俺は視線だけで語り合う無意味さにようやく気付いた。
綾乃の方を見ると、どうやら彼女も同感らしく疲れに満ちた目を俺に向けていた。
「・・・普通に喋ろう」
「・・・そうね」
同時に溜め息をつくと、今度は綾乃の方から口を開いた。

244:シロクロ 13話【11】
07/04/01 23:41:31 7eNvF/mV
「何年ぶりかな?こうやって二人で一緒に風呂に入るのは」
「ん~~~、あの事件のちょっと前が最後だったから十年ぶりかな」
「・・・ホントによく覚えてるな」
「あと私が入浴中に溺れた啓介に人工呼吸したのが十一年前かな。
ちなみにそれが私のファーストキス」
「だから何でそんな余計なことまで覚えてるんだお前はっ!?」
思わずいつもの調子でツッコミを入れる。
が、なぜか綾乃はそんな俺の様子を見て吹き出した。
「・・・なんだよ」
「いや、こういうリアクションしてる方が啓介らしいって思っちゃって」
「・・・やかましい」
そう答えても彼女の苦笑は止まるどころか増すばかりだ。
くそう。結局いつも通りの展開だ。
「・・・というわけでさ」
「何が『というわけ』なのかは知らんがなんだ?」
「私もいつも通りに戻っていい?」
「へ?」
俺が間抜けな声を出した瞬間。
綾乃は俺が返事してないにもかかわらず、俺に抱きついてきた。
「・・・な・・・!?」
何するんだ、という抗議は俺の唇が彼女のそれにふさがれてしまい、出すことが出来なかった。
あまりの状況の変化について行けずに混乱したままの俺を尻目に、綾乃は唇を離す。
「あの時のキスのやり直し」
そういって綾乃は息が触れるほどの距離で俺に微笑みかける。
それはいつも通りの行動のハズだが、お互いに全裸でその上風呂場の中で密着してるという
特殊な状況が彼女のそれを普段よりも淫靡なモノに感じさせていた。

245:シロクロ 13話【12】
07/04/01 23:43:18 7eNvF/mV
それだけでなく綾乃の二つのふくらみというかでっかい二つのメロンというか、
まあ要するに彼女の乳房が俺の胸に押しつけられてその形を胸板にフィットするように変え、
彼女の細い腕は俺の背に回され、指が背のラインに沿って滑っていく。
普段としている―というかされてる―こと自体は何ら変わらないのに、
身体全体から伝わる彼女の感触が俺に『女』特有の素肌の柔らかさと暖かさを伝えてくる。
・・・ヤバい。このままじゃ理性が持たん。
流石に綾乃も今は避妊薬飲んだはずないだろうし安全日だからといって遠慮なくする訳にもいかない。
だが既に俺の男の象徴というか主砲というか、
つまりその俺の股間がいわゆる勃起という生理現象を引き起こしてしまっており、
その上その先端が彼女の太ももに触れている。
既に身体の方はヤる気マンマン。その上それを向こうに知られていてもおかしくない状況だ。
ケダモノとか思われないかなと不安になってると、超至近距離にある綾乃の顔が口を開いた。
「大きくなったね・・・」
「へっ!?」
バレた!?
焦りのあまり素っ頓狂な声を出してしまうが、綾乃はあまり気にせず俺の背中をなでながら言った。
「背中」
「あ・・・、ああ。まあ、そりゃあ、なあ・・・」
口ごもりながらも返事を返す。
どうやら先ほどの目つきは懐かしさからだったらしい。
なんとなく自分の下心を指摘されたような気になり、俺は彼女から視線を逸らした。
「ってこら。どこ見てるのよ」
そうしたら、なぜか綾乃に頬をつねられた。
「イタタタタタ!なんでつねるんだよ!?」
「今、私のお尻見てたでしょ」
「尻?」
言われてみれば、まあ確かに俺の視線の先には湯船からつきだした綾乃の丸い尻があった。
表面に無数の水玉を張り付かせたそれは、
乳房とはまた違った柔らかさと丸いラインを見る者にアピールしている。
とか思ってるとまた頬をつねられた。

246:シロクロ 13話【13】
07/04/01 23:44:11 7eNvF/mV
「ほらまた見た!」
「イタタタタタ!なんで怒るんだよ!?
いつもだったら『啓介にだったら見られても・・・』とか言うのに!」
「それはそうだけど、そういう一部分よりも私自身を見てほしいって言うか・・・」
最後の方にはごにょごにょと口ごもりながら綾乃は俺から目をそらしていく。
「とどのつまりは、俺がお前以外のモノを見てるみたいでなんとなくイヤだと」
「・・・うん」
案外素直に肯定する綾乃。
・・・自分のカラダに嫉妬するとはやっかいな女だ。
まあそれはともかく男の誇りにかけて自己弁護。
「・・・そうは言うがな。これは男として仕方のないことなんだ」
「なんか言い訳くさい」
「いいから聞けって。この状況ってすごく生殺しなんだぞ」
「・・・そうなの?」
俺の言葉に綾乃はきょとんとした表情になり、俺に尋ねてくる。
「そうなんです。だって好きな女の子が抱きついてきたりキスしたりして、
今息がかかるほどの超至近距離にいるんだぞ。それも全裸で」
表情をますます
「それって、私だからってこと?」
「・・・そうだよ悪いか」
「ううん」
そういって綾乃は小さく首を左右に振り、
「ありがとう。すっごく嬉しい」
「それは光栄で」
多少精神的に余裕が出来たため、俺も軽口で返す。
「だからってワケじゃないけど・・・」
そう言いながら綾乃は俺から身体を離し、浴槽を出る。

247:シロクロ 13話【14】
07/04/01 23:45:45 7eNvF/mV
ああなんで離れるんだやわらかくて気持ちよかったのにでも俺に向けた肌の背や尻がなんエロイな
と思ってると彼女は身体全体をこちらに向け、俺にこう言った。
「どう?私の裸」
「どうって・・・」
そう言われて―言われる前からそうしていたが―俺は彼女の肢体に視線を集中させた。
いつもはストレートロングにしている濡れた漆黒の長い髪は
彼女の肌の表面に無数の水玉と共に張り付き、
その名とは対照的なシミ一つない白い肌も今までにない色気を醸し出している。
何かを挟めそうなほど豊かに実った彼女の乳房は彼女の髪でも隠しきれずに、
その大きさと形の良い曲線、小さな桃色の先端を自己主張している。
キュッとくびれたウェストも丸みを帯びた尻も凹凸がハッキリしてお互いの存在を引き立てている。
体つきは乳と尻を覗けば華奢だが細すぎるということもなく、
肋骨が透けて見えるというわけでもない無駄な肉が一切無い身体つきだ。
それら全てを目の当たりにした俺はポツリと呟いた。
「凄く・・・、綺麗だと思う・・・」
俺がたどたどしくそう言うと綾乃は俺の前に座り込み、浴槽を隔てて俺と向きあうと、
「・・・ホントに?」
「ウソ言ってどうする」
と、なぜかそこでまたも綾乃は吹き出した。

248:シロクロ 13話【15】
07/04/01 23:50:31 7eNvF/mV
「・・・なんで反論とかツッコミの時は即答できるのよ」
「やかましい」
そう反論しても彼女の苦笑は止まるどころか濃くなるばかりだ。
ちくしょう。俺のプライドはボロボロだ!・・・元からあんまりないけど。
「・・・でも」
そこで綾乃は言葉を切ると身を乗り出し、お礼のつもりか触れるだけのキスをした。
「ありがと♪」
笑顔でそういうとよし、と小さく呟き立ち上がった。
現在の俺の目線からは自然と下から見上げる形になり、
俺の目の前に彼女の隠しもしていない魅力的な裸体をさらけ出した。。
このアングルからの光景を楽しんでいると綾乃は前屈みになって俺に右手をさしのべ、
「カラダ、洗いっこしよ。昔みたいに」
「・・・ああ」
俺はその言葉に頷くと、彼女の手を取った。

249: ◆6Cwf9aWJsQ
07/04/01 23:52:57 7eNvF/mV
今回は以上です。
本番まで行くのにあとに、三話かかりそう・・・。

250:名無しさん@ピンキー
07/04/02 00:01:30 A5OPQels
いきなりお風呂とは予想できなかった・・・。
あと3話、がんばれ。

251:名無しさん@ピンキー
07/04/02 00:34:30 DajOC/S0
うわぁ、GJです!!
お風呂で二人っきり……。果たしてどんな甘々なプレイが展開されるのでしょうか! 期待しております!

……ところで余談ですが、綾乃の体の描写の所で陰毛に関する描写が無かったのを良いことに、彼女はパイパンだと
妄想した私は破廉恥な男かも知れん……。

252:名無しさん@ピンキー
07/04/02 01:02:38 +E+J1WA8
GJでした。続き楽しみにしてます。

内容もさることながら啓介の口ずさんだうろおぼえの鼻歌に
思わず反応してしまった特オタは自分だけでいい。

253:名無しさん@ピンキー
07/04/04 15:54:45 vhTRo/dT
なぜか最後で脳内音声が橘さんの人に……

254:名無しさん@ピンキー
07/04/06 03:22:04 xW3Y9N6S
淫語スレッドに投稿しようとおもったけど、前フリが幼馴染みなのもで。

255:カナのシロ
07/04/06 03:24:57 xW3Y9N6S
同じマンションに住むクラスメートのシローは小学校からの仲だ。
シローは高校生になってすぐに陸上部のホープとして注目され、県大会で走り高跳びと走り幅跳びの県記録を更新し、
整った容姿と控えめで人当たりのよい性格で男女からの受けも良く、校内で最も有名な一年生となった。
当然、女子生徒がこのような好物件を放っておくわけがないのだが、彼の傍でカナがその縄張りを主張していては
おいそれと近づくこともできない。揃いのマフラーと手袋をして登校する二人は、雪をも溶かす程の熱愛ぶりを
みせつけ、生徒達をドキドキ、教師達をドギマギさせていた。


期末テストを前にカナは内心、焦っている。テストの事ではない。シローについてだ。
仲が良いとはいえ二人は恋人同士ではない。今はまだ。
中学3年生になるまではカナの方が背が高く、控えめというよりも気弱なシローは守るべき弟のような存在だった。
カナちゃんと同じ高校に行けば安心と可愛い事をいう“弟”の勉強もみてやった。成績のあまり良くなかったシローも
県内有数の進学校に入学することができた。やればできる子。カナはシローをそう評価していた。
「背も伸びたのだから部活でも始めてみれば?陸上部とかどうかな。ひ弱なままじゃモテないよ。」
カナは何気なく勧めたのだが、シローは陸上部に入部した途端に頭角を現し、県記録を塗り替えてしまった。
日に日に男らしくなってゆくシロー。一躍有名人となったシロー。クラスで人気者のシロー。
そんなシローを誇らしく思った。カナちゃんカナちゃんと慕ってくるシローは、やはり可愛い弟のようだった。
しかし、一学期の半ばを過ぎた頃になると、何か、カナはシローに違和感を覚え始めた。
部活のせいで一生に登下校する機会が減り、互いの家を行き来する事も殆んどなくなった。
シローを家に招いて食事をしたり何気ない会話や本を読んで過ごし、シローの家に行ってパソコンやTVゲームで
遊ぶ時間が、何物にもかえがたいものだったと気付かされる。
カナ以外の女子生徒と会話する事などこれまでは殆んど無かったのに、最近のシローは他の女子ともよく話す。
昼食は二人だけで一緒に食べるのが昔からの習慣だったのだが、今は大勢で食べるようになった。
たくさんの友人と食事をするのは嫌いではない。しかし二人の時間をこれ以上削られるのはたまらない。
そして一緒に食事をしている女子生徒の何人かはあきらかにシローが目当てなのだ。
放課後、シローを呼び出して交際を申し込んだ上級生がいるのも知っている。
カナは自分の感情の変化をはっきりと認識した。嫉妬と独占欲と焦燥感。
「このままでは、いけない。これは、ずっと前から私のものだ。」

256:名無しさん@ピンキー
07/04/06 03:28:31 xW3Y9N6S
カナはシローの家に足繁く通うようになっていた。
シローは以前の中間テストの結果が散々な結果で、次の期末テストでも同じような結果なら補習どころでは
済まないと教師に釘を刺されていた。元々成績の良くなかったシローは授業についていけなくなってきたのだ。
「部活なんてやってる暇があるなら、勉強しなさいよ。ほら、スペル間違ってるし。ここってテスト範囲だよ。」
部活を勧めたのはカナちゃんじゃないか。と屁理屈を言えばぶたれるので素直にごめん、と答えるシロー。
小学校の頃、ささいな事でケンカをして乳歯を二本へし折られてからというもの、カナには逆らえない。
実際、部活やその他に夢中で、家に帰ってからも予習復習をせずにいたのはシローの自業自得である。
「カナちゃんに勉強をみてもらうと、すごくはかどるんだ。自分でやってもよくわからなくて。
 ごめんね、僕、カナちゃんがいないとてんでダメだなぁ。」
シローの何気ない言葉に、カナはピクっと反応する。自分の体温が上昇するのが分かる。横を向き、眼鏡を
かけ直すふりをして誤魔化そうとする。窓の向こうでカエルが大合唱をしている。外はすっかり暗くなっていた。
「もうこんな時間。ちょっと休憩しよ。シローはその問題を解いてからね。」

火照った顔を覚まそうとベランダに出る。見慣れた景色。10年前とずっと同じ。
「なーんも変わらないねぇ。カエルも飽きないよねぇ。毎年毎年うるさいのなんのって。」
シローが後ろに立っている。田んぼのカエルがうるさいというのはこの時期のシローの口癖だ。
手すりにもたれながら、そうねと相槌を打つ。去年と同じ景色、去年と同じ会話。でも
「シローは高校になってから変わった。なんか、違う人みたい。私の知らない人みたいな時が、ある。」
「カナちゃん…?」
思っていた事がつい言葉に出てしまった。慌てて部屋に戻り、いそいそと帰り支度を始める。
なんとなくきまずくなり、勉強どころではなくなっていた。何より、シローの顔をまともに見る事ができない。
リビングでくつろぐシローの両親に挨拶をし、逃げるように家を出る。
突然の事に驚いたシローは、呆然とその場に立ち尽くしていた。

カナは部屋に篭もってさっきまでの事を思い出す。あの状況は、あの状況ならシローに自分の気持ちを伝え、
シローの気持ちを聞き出す千載一遇の機会ではなかったか。何故自分はあそこで逃げ出したのかと後悔するが、
後の祭りであった。メールで謝っておけばいくらか気が軽くなるのだろうが、携帯電話をもっていない身が恨めしい。
「ああー、明日どんな顔で会えばいいんだろう…私、かっこわるいな。」
カナはその晩、カエルの鳴き声が聞こえなくなるまでベッドの上でジタバタしていた。

257:名無しさん@ピンキー
07/04/06 03:30:27 xW3Y9N6S
うああ、3つめの上にコピーしたものを上書きしてしまった
ごねんなさい

258:カナのシロ
07/04/06 04:54:26 xW3Y9N6S
翌朝、いつもより遅く目覚めたカナがもそもそと登校の準備をしていると玄関のチャイムが鳴る。
少しして、シロー君が迎えにきたのよ早く用意を済ませなさいと母親に言われる。一緒に登校した日は
数えきれないがほどあるが、朝寝坊のシローから迎えにくるのは今日が初めてだった。
「朝練に慣れちゃってさ、早く目が覚めるようになったんだ。今まではカナちゃんに迎えにきて
 もらってばかりだったからね。僕から迎えにいくのは今日が初めてだよね。」
「うん…ゆうべはごめんね、その、コンタクトにゴミが入っちゃって。」
つい出任せを言ってしまい目線を落とす。昨日は眼鏡をかけていたのだがシローはそこに気付かない。
「そっか。ホント、びっくりしたよ。あの後さ、お前カナちゃんに何したんだーってお父さんに詰め寄られてさ。
 お母さんは大泣きするし、大変だったんだから。」

いつも通りのシローの笑顔にカナはホっとすると同時に、昨夜あれだけ悩んだ事がバカらしくなって、
カナは笑い出した。それにつられてシローも笑う。笑い声と一緒にここ数日の間、胸の中でモヤモヤしていたものも
流れ出ていくようだった。いつもの会話。一緒に登校しているだけで、こんなに楽しい気分になるなんてとカナは思う。
「シローから迎えに来るなんて、今日は雪が降るかも。もしかして、今のシローは別人だったりして。」
梅雨も明けかけて夏が近づこうかという朝。久しぶりの太陽が心地よい。
「そんなことないよ…そんなことないから!」
シローらしくない語調にハっとして、カナは振り返る。立ち止まって俯いていたシローは震えている。
「僕を知らない人だなんて言わないでよ。大好きなカナちゃんにそんな事言われたら、悲しいよ。
 ぼ、僕はずっとカナちゃんの事が大好きなんだ!カナちゃんしかいないんだ!」

大好きなカナちゃん。カナちゃんしかいない。シローは確かにそう言った。
頭の中で何度も繰り返していても、口にだせなかった言葉。
シローは顔を真っ赤にながら、カナを見つめている。もう震えていない。
大好き。シローから聞きたかった言葉。今度はカナが言えなかった言葉を言う番だ。
「ありがとう…私も大好きよ、シロー。私、シローの事が大好きなの。」
カナは自然に言葉を紡ぐ。簡単な事なのに、何故それができなかったのだろうと不思議に思う。

どちらからともなく手を繋ぎ、歩き始める。今までどおりの二人はもう今までとは違う。


259:名無しさん@ピンキー
07/04/06 12:50:59 ZHyto41S
連投支援たーん

260:名無しさん@ピンキー
07/04/07 07:47:05 ZxXjUESq
>>255
GJ!!

261:名無しさん@ピンキー
07/04/08 00:23:48 pMaxKCxs
いかん……この気が付いたら大切な人だったってシチュエーションと初心っぷりがたまらんな
何が言いたいかというと王道GJという事だ!

しかし欲を言えばこう、短いというかもっと未満な関係が見たかったりしたぜ

262:Sunday
07/04/09 03:09:16 UY/uNlAj
   _、_
| ,_ノ` ) やはり、甘い菓子の後には渋い茶が必要かと思われる



   _、_
| ,_ノ` ) 味は稚拙やも知れぬが堪能していただきたい



   _、_
| ,_ノ` ) よくセットで扱われるからか、お菓子の人に勝手に親近感持ってしまったり
   


   _、_
| ,_ノ` )ノ 迷惑極まりなく関係ない話で本当に申し訳ない  




263:Sunday
07/04/09 03:10:39 UY/uNlAj

「……怖いか?」
またその身体に覆い被さるように、崇之は紗枝の腰の横に手をつく。布団の傍には、
既に脱ぎ捨てられたカーゴパンツとトランクス、封を切られ四角いビニールが転がっていた。
この格好には、流石に若干の恥ずかしさを覚えてしまう。

「……わかんない」
紗枝の方も、下腹部を覆い隠していたスカートを剥ぎ取られていた。下着も片足首に
辛うじて引っ掛かる程度で、他に身に付けているのは汗ばんだシャツに解けかけた紐タイ、
殆ど役割を果たしていないブラと紺色のソックスという様相だった。
 両手で拳を作り胸元を隠そうとしているその様子は、何かに祈りを捧げているようにも
見える。

「…そか」
スカートを脱がせてから、その表情は今にも舌を噛みきりそうなくらいに強張っている。
こんな顔を目の当たりにすれば、さすがにこれ以上脱がせるのは躊躇われた。もっとも、
半端に着衣を残しているからこそ、余計に興奮してしまっているのも確かなわけだが。

「……」
「ぁ…っ……」

両脚を抱え下腹部を近づけ、よく見えていなかったその場所を眼下に映す。
 紗枝は胸の前で組んでいた拳を解いて、腕で自分の目線を隠してしまう。既に指で弄った
とはいえ、見られるとなるとまた違った恥ずかしさがこみ上げてくるのだろう。
己の昂ぶりの先端を、静かにあてがう。それと同時に、顔を組み隠す両腕の手首を握り締め、
ゆっくりと解いていく。
「あっ…やぁあ…!」
「…落ち着け」
どれだけ頑張ろうとしても、この時ばかりは羞恥心に打ち勝つことは出来ないのだろう。
半ば脚を開かれ、じたばたともがく彼女をゆっくりと宥める。再び指ごと絡めて腕の動きを
封じると、落ち着かせるように唇を重ねた。

「いくぞ?」

 風を受けた窓ガラスが、震えてガタンと音を立てる。

「……」

 雫を目の縁にたくさん溜めて、口許をやんわり握った手で隠して、紗枝は微かに頷いた。

下腹部に力を込め、少しずつ腰を押し進めていく。

「ひっ…うっ……!」

徐々に抵抗が増していくものの、崇之は止まらない。歯を強く食いしばって、快感とも
言い表し難い窮屈な感覚が局部を襲う。


264:Sunday
07/04/09 03:12:23 UY/uNlAj

「いっ……ぅああっ…!」
「……っ」
 痛々しく見えるほどに強張ったその表情は、極度な程に緊張しきっている。シーツは
最早布団ではなく、彼女の身体を覆い尽くそうとしていた。

ずちゅ…

 音が跳ねる。根元まで突き入れると、丁度奥にまで到達した。
「は…はいった……の?」
「……ああ」
 全部繋がってるぞ、そう付け加えると紗枝は握り締めていたままのシーツで顔を隠す。
 とりあえずしばらくはこの状態にいて、彼女が慣れるのを待とうとふっと息をついた。

「……動いて」

 端から両方の瞳をちろりとはみ出させて、申し訳なさげに懇願される。自分から動く勇気が、
まだ持てないでいるのだろう。
「……」
 崇之は目を丸くした。全く逆のことを言われると思っていただけに、一瞬呆然としてしまう。
「…痛くないのか?」
 数滴の赤い跡がそこに走っているのに、恥ずかしがってはいてもあまり痛がる様子は
見えない。まず間違いなく無理していると分かっているのに、思わず問い掛けてしまう。


「大丈夫……いちばん大好きな人なんだから…」


 言い終えると同時に、その瞳から涙が零れ落ちる。
「……」
 肯定とも否定とも受け取れてしまう、一番大事にしたい彼女の言葉は、またしてもその心を
燃え上がらせてしまう。

 顔を覗きこめば、視線が絡み合う。答えを返す必要は、もう無かった。

「んっ…うぅん……あっ…はぅぅ…」
 ゆっくりとぎこちなく、身体を揺り動かし刻んでいく。眉間に強い皺を寄せるその表情が、
やっぱり隠しきれなかった本心を伝えてくる。
「紗枝…っ」
「いやぁ…みっ、見ないでぇぇ…!」
 だけど触れてほしくなかったのか、手の平で様々な身体の箇所をまさぐっていた時には
投げかけられなかった台詞を、今になって突きつけられる。
 慣れない感覚に玩ばれる身体を目の当たりにされた時ではなく、痛みをこらえる表情を
盗み見られた時にそれを言うのは、やはり意地っ張りという性格が作用したからなのだろう。

「やぅ…っ! んんっ、ふう…んぁうっ……!」

 肌が擦れあい、合間合間に水音が跳ねる。
 額から流れてくる汗を拭う余裕さえ、今の崇之は持ち合わせていなかった。同様に身体中が
汗ばみ、微かな光沢さえ放っている紗枝の媚態に、自意識をもぎ取られそうになるくらいに
心奪われる。今身体を動かしているのは、欲望というより本能に近かった。

「いっ…うぅっ……くぅ…んうぅぅ…」
 いつの間にか前傾姿勢になり始め、お互いの間に挟む空気の冷たさを嫌ったのか、首の
後ろに手を回される。


265:Sunday
07/04/09 03:14:00 UY/uNlAj

「……っ」
「ひうっ!?」
 崇之も同様に、紗枝の背中の後ろに手を回す。そのまま起き上がらせ、体勢を座位へと
移行する。擦れあう勢いに重力が加わり、互いにを襲う刺激が増加していく。

「うああっ、あっ…いっ…いうぅ、いあああ!」
 身体の繋げ方を変えてしまったせいか、それまで紗枝の口から放たれていた声とは、
明らかに質が変わってしまう。「痛い」と何度も言いかけて、その度に口をぎゅっと結ばせる。
「……!」
 その様を間近で見てしまい、崇之は自我を取り戻し腰の動きを止めてしまう。息を切らせ
ながら、彼女の頬を撫で様子を伺う。
「……っ」
 すると、潤んだ瞳でキッと睨まれてしまう。痛かったことに不満を抱えているのではなく、
なんで止まるんだよ、そんな意味合いがこめられているような気がした。
「無理するな」
「して…ないっ、してないってばぁ……っ」
 言い返すというよりも、自分に言い聞かせるように紗枝は言葉を紡ぎ続ける。

「いっ…痛くなんか……ない…もんっっ」

 瞳を、ただひたすらに硬く固く瞑り続ける。

「全然…っ、大丈夫……だもんっ」

 だけど崇之は、言葉をそのままに受け止めることが出来ないでいた。目の当たりにする
表情がそれとは裏腹で、首の後ろに回された手には爪を立てられ、皮膚を所々削られている。
優しくするって約束した。だから今は、そうしてはいけないと思ったのだ。

「あたしは……大丈夫だから…」
「……」
 背中に手を回したまま、縋りつかれるような目を向けられ懇願されても崇之は動かない。
随分と焦りを見せている、自暴自棄になりかけている彼女の気持ちを許すのは、躊躇いが
湧いた。 優しくして欲しいと言ったのに、自分を軽んじるその様子に違和感が募ってしまう。

 崇之は知らない。

 紗枝が夢の中で味わった、あまりにも悲痛な想いを知らないのだ。

「焦ることない。俺はちゃんと、お前だけ見てる」
 諭すように、やんわりとした口調で崇之は続ける。それが、彼女を余計に惨めな気持ちに
させてしまうことに、気付かないまま。
「……っ」

どさっ

 その身体を更に慈しむように抱きしめようとしたその時、倒れこむ音と共に、視界が回った。
「……?」
 崇之は一瞬、何が起こったのか分からずに、呆然としながら天井を見つめる。改めて状況を
確認すると、身体を繋げたまま、どうやら押し倒されてしまったらしい。
 彼女の身体はやや猫背になっているものの、もたれかかってくることもなく起きたままだ。
しばらくの間密着していただけに、どうにもうすら寒い。

「……じゃあ、あたしが…動く…っ」
「紗枝っ」
 起き上がろうとするが、両肩を抑えられ阻まれる。いかに体格や力の差があったとしても、
寝そべり跨がれしかも肩を掴まれては起き上がれない。


266:Sunday
07/04/09 03:16:11 UY/uNlAj

「崇兄は…動かなくていいよ」
「やめろって、なんでそんな無理…」
「してない……無理なんてしてない…!」
 ひどくぎこちなくゆっくりと、だけど確実に腰が揺すられ始める。

「いっ……うぅ…ぅ」
「……紗枝…っ」
「つっ……ふぁう…っ…!」
 下半身に極度の快感を伴った痺れを覚え、それに耐えながら名前を紡ぐ。だけど目を閉じ、
腰をたどたどしく動かす行為に没頭しようとする彼女は、反応を示さない。

「くぁぁ…っ! うううっ…ああぁぁっ!」
 反応が、徐々に大きくなる。肩を抑えつけていた手の平は、度重なる振動でそこからずれ落ち、
崇之の頭の両横に添えられていた。口の端からはだらしなく涎が垂れ、重力に従い時折彼の
胸元や首筋に落ちてくる。それが、赤く熱く火照った身体には不可思議なほどに冷たく感じられてしまう。
「あぁっ…あぁっ……うああっ…!」
「……っ…うっ…く」
 下腹部を襲う甘い刺激に襲われ、垂れ下がる紐タイに頬をくすぐられ、彼女が身体を
起こしてもなお形と張りを保ち続ける小ぶりな膨らみを目の前に、またしても理性や自制心が
吹き飛びかける。
 圧し掛かられ、激しい熱を保ったまま繋がれた己の昂ぶりは、抗うことも出来ずに蹂躙
され続けた。

「紗枝…っ、止めろ…!」
 なんでこんなことするんだ、なんでこんな無理するんだ。怒りにも似た感情が湧き上がる。
優しくして欲しいとお願いしてきた癖に、どうしてそれを自分からそれをないがしろにするのか
理解出来なかった。
「やぁ…っ、止めない…もん……!」
「お前…っ」
 髪を振り乱して、紗枝は拒み続ける。腰の動きも、止まろうとはしない。
崇之は困惑する。からかったことは数知れないが、怒ったことは殆ど記憶にない。
だから強い口調で注意すれば、きっと折れると思っていた。動きを止めると思っていた。

「やだ…やだもん…っ……一緒にいたいもん…」
「……っ?」
 動きを止めようと更に言葉を続けようとするが、彼女の台詞を耳にして、それをこらえる。
口走っている内容が、今の状況からずれ始めていることに気付いたのだ。

「置いて……いかれたく…ない…っ……もんっ…!」

 自棄になりかけたようなその台詞に、彼女の異変にようやく気付く。部屋に帰ってきた時、
起こしたばかりの様子が変だったことも、唐突に脳裏に蘇ってくる。
「紗枝…?」
「やぁ……お願い…、いかないで……っ」
 明らかに様子がおかしい。初めての感覚に、現実と夢の境界線を失ってしまっているよう
だった。完全に、自我を失っていた。

267:Sunday
07/04/09 03:17:39 UY/uNlAj


 そんな様相に、崇之は確信する。


「……」
 両手を、身体に沿わせて上らせていく。片方を背中、もう片方を後頭部に置いて、ぐいと
引き寄せた。

「あ…っ!?」

「大丈夫、大丈夫だ」
 また胸元が引っ付いて、互いの肌がこもった熱を奪い合う。後頭部にやった手をすぐに
動かして、背中をさすっていた手と繋ぎ合わせる。そうすることで、また紗枝が身体を
起こせないようにした。
「ちゃんと、ずっと、傍にいる」
 至近距離から、しっかとその目を見つめながら、確かな言霊を放つ。

 プライドも照れ臭さもかなぐり捨てた、本音だけの本心。
「俺も、お前の傍にいたいんだ」

 一番大事にしたい娘を、失いたくない。

 いちばん大好きな人に、置いていかれたくない。

 多少の言葉の違いはあっても、こめられた意味は寸分違わぬ同じものだった。


「だから…そんな無理をするな」


「……っ」
 瞳に色が灯る。どうやら、手放しかけていた正気を取り戻したらしい。
 だけどその表情は、存外に悔しそうな意味合いに染め抜かれている。そのせいで、緊張を
解くことが出来ない。

「今更そんなこと…言わないでよぉ……」
 呟かれたのは恨み言。気持ちがぶり返してしまったのか、情緒不安定になってしまって
いるようだった。そのことに不安を余切らせながらも、それでも彼はじっとその顔を
見据え続ける。

「あたしを…あたしのこと……変えたくせに…っ」
 紗枝はその体勢のまま、半ば無理矢理に腰を動かし始める。しかし今度は、それを咎め
なかった。掴んでしまった確信は、間違いなく核心をついていた。


「崇兄が……崇兄がしたんだ…っ、あたしを…こんな風に……ぃ…っ!」


「……」
 昔は、大人しい奴だった。髪も長くて人見知りで、いつも後ろからついてきていて。

 だけど今の彼女はそれとはまるで別人だった。

 明るくて元気で、友達もたくさんいて。そして随分と意地っ張りな性格になってしまっていた。

 今になってようやく実感する。
 
 彼女の心に常にあり続けた、一番根っこにある心情を。

268:Sunday
07/04/09 03:19:39 UY/uNlAj

「紗枝……っ」
「ひぁっ…!?」
 勢いをつけ、今度こそがばりと起き上がる。倒される前の状態のように、座った状態で
向かい合う。身体が離れてしまわないよう背中に手を回し、首の後ろに回される。

 崇之はそこから更に脚を動かす。あぐらの状態から、膝をつき腰を浮かせたまま正座する。
身体を動かしやすいように。

ずちゅんっ

「うああっ!」

 二人同時に下腹部を前に押し進めてしまったことで、奥の奥まで繋がってしまう。激しい
衝撃に、紗枝の背中が折れそうなくらいに反り上がる。

 限界はもう、すぐそこまで近付いていた。

「あぁっ…、ひぁあ……やっ、やぁ、やあぁー!」
 痛みを無くしたのかのように、紗枝は狂い続ける。意識も視覚も、半ば機能していない
ようだった。明確な意志が感じられるのは、最早首の後ろに回された腕だけだった。

「っつ…!」
 昂ぶった先端が収束し始める。意識や感覚を根こそぎ奪ってしまうほどの強烈な快感が、
すぐそこにまで近付いてきていた。

「あはぁ…ああぁっ、んんっ、ふむうぅっ、んぅぅっ!」
「つ……ぅ…ふっ…く…っ!」
 本能で、半開かれた唇をむさぼりむさぼられる。繋がれるのも一瞬、繋がれないのも一瞬。
キスと言うには、あまりにも拙く理性に欠けていて。全部が、全てが、加速していく。

「やぁ、あぁぁ…た…たかにぃぃ……っ!」
「紗枝……紗枝…っ」

 名前を呼ぶ声が、吐息が混じって交錯する。

 新たな爪痕が、崇之の背中を走る。

 ごちりと、額同士がぶつかり合う。

 互いに目を閉じていても、確かにお互いを感じ取っていた。
「……っ…っ」
「やっ…あっ…あああっ…!」

 五感全てが弾けて爆ぜる。

「……っっ…っつ!」

 それを手放した瞬間、崇之は白く濁った想いの塊を気の赴くままに解き放つ。

「――っ!」
 
 紗枝の華奢な身体が一度だけ、言葉にならない悲鳴と共に大きく律動した――








269:Sunday
07/04/09 03:20:52 UY/uNlAj





ガタンッ


「…ん……」
 風に強く吹かれたのか、はめ込まれた窓ガラスが音を立てて震える。それにつられるように、
紗枝はそれまで閉じていた瞼に力を込める。

「……」

 何だか、とても懐かしい夢を見ていた気がする。

 どんな内容だったのかは欠片も覚えていなかったが、懐かしいという余韻だけが胸に
残り続けていた。ひどく現実離れしていたような気もするが、一体どんな夢だったのだろう。

 ぼやけた視界がやがて定まると、目の前をじっーと見つめ始める。それに従うように、
思考も現実の世界へと傾いていく。そこには、おそらく横たわった時から今もなお腕枕を
してくれてる、いちばん大好きな人の寝顔があった。
 鼻息しか立てずに眠りこける彼の顔は、思ってたよりもずっと幼くてあどけなくて。性格は
ひねくれてるのに、なんでこんな表情を見せるんだろうと、思わず微笑んでしまう。

つん

 そしたら何だかちょっかいを出したくなったりして。数時間前、彼に全く同じ悪戯を
されたことを彼女は知らない。

つんつん

 くすぐったそうに顔を歪める様子にくすくすと笑いながら、人差し指を彼の頬に突き立て
続ける。
「はー…」
 声を出すから起こしてしまったかとも思ったが、目を開く様子は無い。どうやらただの
寝言だったようだ。

「……」

(しちゃったんだ…あたし……崇兄と)
 ふいに思い出して、頬が赤くなる。一糸纏わぬ身体を隠すように体勢を入れ替えうつ伏せに
なると、腕ではない本当の枕を掴んでぎゅっと抱き締める。そのまま顔を半分、口元を
そこにうずめさせた。見られていなくても、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

 あの後、ほとんど身体を動かせなかった自分を尻目に彼はせかせかと後始末をしてくれた。
繋がっていた身体を離して、汚れた箇所をティッシュで拭いてくれて、汗で身体を冷やしたら
いけないと半端に身に着けていた衣類を全て脱がせてくれて。それが終わったらすぐに
隣で横になって腕を差し出してくれて、一枚の布団を共に被った。
 その行為全てが嬉しくて、だけどやっぱり違和感を覚えてしまうことに苦笑を浮かべて
しまって。


270:Sunday
07/04/09 03:22:16 UY/uNlAj

 友人に注いでもらった勇気を使い果たし、夢の中の仮初めの思い出にひどく打ちのめされて
いたのに。それ以前からも、ずっと気持ちが沈んでいたのに。

 やっぱり崇兄はずるい。こんなに簡単に、幸せな気持ちにさせるなんて。
だけどその力を持っているのは、崇兄だけなのだ。

「ありがとね…」
 身体を動かした際、下腹部につきりとした痛みを覚えながらも、それを表情には出さない。
ずっと腕を貸してくれてたことに感謝をしながら、また眠った横顔を見つめだす。

『ちゃんと…優しくしてやる』

 ちゃんと、優しくしてくれた。

『今までで……一番優しくしてやる』

 今までで、一番優しくしてくれた。

 溺れてしまいそうになるくらい恥ずかしかったけど、それ以上に嬉しくて。やっぱり、
とっくに幼なじみや妹としては見られてなかったんだと分かって申し訳なくなったけど、
お互いに本心を明かすことが出来て、仲直り出来て本当に良かった。
「……」

ちゅっ

 そんな気持ちが交錯していき、思わず作ってしまう赤い跡。それが一つ二つと増えていって、
やがて同じ箇所をまた重ね合わせてしまう。

「だいすき…」

 まるで小さな子供が、父親に対して言い放つような、たどたどしくも無垢色に染まりきった
愛情表現。
 本当は起きている時にしたいのだけれど。素直になるって、やっぱり難しい。

「たかにぃ……」

「呼んだか」

かばっ

「うわぁっ!?」

 そしたら突然覆い被され、背後から伸びてきた二本の腕にがっしり捕まえられてしまった。
ただでさえ近かった距離が、更に狭まってしまう。
「こういうことやったりそういうこと言ったりすんのは……起きてる時にして欲しいもんだな」
「ちょっ…お、起きてたの!?」
「最近、年でな。すーぐ目が覚めるんだわ」
 さすさすもぞもぞと、お尻を撫でてくる手を払いのけながら始まる、向こうが主導権を
握ったある意味いつも通りの痴話喧嘩。やっぱり彼との付き合いは、心臓にはとても良くない。
「やっ…触るなぁぁ」
「んー? どこを?」
「あたしのお尻!」
 下腹部に痛みのせいで上手く身体を動かせなくて、わにわにと蠢く指から逃げ出すことが
できない。顔と顔、身体と身体も徐々に狭まっていく。引いていた赤みが、再びさっと
差していく。


271:Sunday
07/04/09 03:23:32 UY/uNlAj

「も…もう! ほんとすけべなんだから!」
「しょうがねーだろ。半年近くお預け食らってたんだからな」
「それは…その、悪かったと思ってるけど。だからってこんな…」
 言い返され言い返そうとした時、紗枝は太ももあたりに妙な違和感を覚える。何か熱くて
固いものが当たっているのだ。しかもそれは強く脈打ちどんどんと大きくなってきて――


「やーーーっ!!」


 それが何なのか気付くと、思わずじたばたと暴れだしてしまう。
「いやぁー! 変態ー! エロー! 痴漢ー!」
「ンなこと言われてもなぁ…生理現象はどうしようもねぇだろ」
 収まっていた腕の中から抜け出して、そのまま起き上がり枕でばっすんばっすんと彼の
頭を叩きつける。しかし何度叩いても意に介されることもなく、首を傾げられ、言い訳される
ばかりだった。
「なんでそんなに元気なんだよ!」
「そりゃー半年近くもお預けを食らったら、一回ぐらいじゃあな」
「うるさいっ!」
「お前から聞いてきたから答えてやったんぢゃねーか」
「うるさいうるさいっ!」
 相変わらずというかなんというか。仲直りしても関係が進んでも、端から聞いてると
"らぶこめちっく"にしか聞こえない二人の喧嘩には、一向に変化が訪れる様子がない。

「ったくうるせーな。何発も叩きやがって」
「あっ!」
 と、意識をそちらに集中させてしまっていたせいか、あっさりと枕を奪われてしまった。
これじゃ彼の頭を叩く道具が無い。
「返してよっ」
「俺のだろうが」
 奪い返そうと素早く手を伸ばすが、悲しいかなあっさりかわされ空を切るばかり。

がしっ

 それどころか、せわしなく動かしていた両腕はあっさりと彼に掴まれてしまう。

がばりっ

「わっ…」
「ほら、暴れるのはもういいからもうちょっと寝とけ」
 しかも、彼の腕の中に身体を閉じ込められてしまう。こうなるともう、どれだけもがいても
無駄な努力に終わるだけだ。
「もう…ずるい……」
「そう言うな。裸だと寒いだろ?」
 鼻腔が、崇兄の匂いで満たされる。同時に、胸が様々な感情で満たされる。昨日までとは
あまりに不釣合いな幸せの連続に、どうにも慣れることが出来ない。
「……もう…」
「ははは」
 たくさん言いたいことがあったはずなのに。文句だけじゃなくて、お礼や伝えたいことが
たくさんあったはずなのに、それがちっとも出てこない。恥ずかしさと悔しさで俯いて
そこに埋まってみせれば、満足げに笑う声に鼓膜をくすぐられた。

 外を見やるとかなり薄暗い。まだ太陽は、地平線の向こうから完全に顔を出してはいない
ようだ。時計に視線を移すと、時刻は四時半を過ぎたあたり。随分眠ったとも思ったが、
この部屋に入った時刻を思い起こし、まだこんな時間なのも仕方ないかと考え直す。


272:名無しさん@ピンキー
07/04/09 03:26:14 Vias7Z2q
支援

273:Sunday
07/04/09 03:32:34 mqaDXy1t

「でも…」
「ん?」
「お腹空いたね」
「……まーな」
 当初は話だけをして帰るつもりだったから、昨晩は夕食をとっていない。意識がはっきり
していけばしていくほど、寝起きとはいえ空腹感を覚えてしまう。
「食べる?」
 部屋を掃除した時、確か流しの傍に食パンが無造作に置かれていた気がする。それを
トースターで焼けばちょっとした腹ごなしにはなるだろう。
「いや、いい」
「……」
 ところそれを拒まれる。お腹が空いてることに同意したのになんで断るんだろうと、
訝しがるように視線をその表情に向けた。


「寒いし、眠い」


「……」
 その瞼は既に、静かに閉じられている。回された腕の力が、ほんの少しだけ強まった気がした。
「へへー」
「…ンだよ」
 言葉に隠れた彼の本心をしっかりと感じ取り、どうにも顔のにやけが収まらなくなってしまう。

 幼なじみだから知っている。

 こんなひねくれた性格で、あまり自分の気持ちとかを語ろうとしない人だから。「好きだ」
とか言う時は決まってふざけてる時で、その本音を表す時は、決まって言葉を濁したり
はぐらかしたり遠まわしな台詞を口にしたりするのだ。

「嬉しい」
「……」
 にこりと笑みを浮かべて、曲がりくねったボールをまっすぐ投げ返してみれば、片方の
瞼が少しだけ開く。少し不機嫌そうに口元を歪めると、ふいと顔を逸らした。
「…調子乗ってるとまた泣きを見るぞ」
「崇兄が……傍にいてくれるもん」
「……」
 布団と彼の暖かさに包まれて、また少しだけ瞳がとろついてしまう。
おかしい。崇兄が珍しく自分に対する気持ちを口にしてくれたっていうのに、こうまで
素直になれる自分は、どうにもおかしい。普段だったら、頬や耳や顔や身体が全部赤くなって
熱くなって何も言い返せなくなってしまうのに。というか、ついさっきまでそんな感じだった
はずなのに。
 もしかしたら、抱きしめて時点でもう眠ってしまっていて、これも夢なのかもしれない。
それならちょっと納得がいく。

274:Sunday
07/04/09 03:34:51 mqaDXy1t

「ま、そう言ってもらえるのは光栄だし嬉しい限りだが」

 背中に回されていた大きな手の平が、少しずつ、少しずつ上に上がってくる。肩、首筋、
後頭部を撫でて、そしてそのまま――


くしゃり


「あんま信用すんなよ?」
 頭を、ゆっくりと撫でられてしまう。

 わしゃわしゃと、跳ね返った癖っ毛を軽く押さえつけられるように。

「……」
「……」

 お互いに、じっと見つめあう。片や目を丸くして、驚いた表情で。片や眠たそうに、
少し不機嫌な表情で。
「……」
 紗枝は、ただ驚いていた。どうして分かったんだろう。どうして、頭を撫でて欲しい
なんて思っていたことを、見抜かれたんだろう。

 昔からずっとされ続けてきた行為は、去年の夏終わりの河川敷で、もう一つの大きな意味を
携えることになった。その時のあの奇妙な色した空の様子は、今でもよく覚えている。

「なんで…分かったの?」
「? 何をだ?」
「その……撫でて欲しいって思ってたこと」
 夢の中でされた時は激しく傷つけられた行為だったけど、一度抱いてもらった今なら、
もう大丈夫だと思っていた。何より、そうされることが、幼い頃から好きだった。そこに
どんな意味があったとしても、相手がそれを込めていなければ大丈夫だと思えたのだ。

 だけどして欲しいなんてまだ口にも態度にも出してなかったし、崇兄の方からしてくれる
なんて思ってもいなかった。

「さぁ、よく分からん」
 首を傾げそう答える彼は、本当に自分でも良く分かっていない様子だった。
「ただ…気付いたらもう撫でてた」
 なんでなんだろうな、そう呟くと彼の手の平は再び背中を掻き抱く。
「お前がそうしてほしいと思ってたなら、良かったけどな」
 ふっと短く息をつくと、それが微かに顔をくすぐる。また距離がぐっと近くなって、
間近で見つめることになったその表情には、明らかに安堵の色が浮かんでいた。

「……」

 その表情を垣間見た時、彼女の心にもまた、不可解な欲求が灯ってしまう。何故なのか、
理由は分からない。だけど彼が頭を撫でてくれたのなら、自分もそうしなきゃいけない
という使命感にも似た気持ちが、ふつふつと湧き上がってきたことだけは確かだった。

275:Sunday
07/04/09 03:36:15 mqaDXy1t

「あ、あの…」
「ん?」
「あ…ありがと……」
「どういたしまして」
 それは、こうしてお礼を言うことじゃない。
 慣れないことだから、というより今まで一度もしたことないことだから。

「…た……たか…」

「…?」
 当然、鼓動はペースを速めていく。胸の前でぎゅっと手の平を握り締めて、彼の胸に
額をトンともたれさせながら。紗枝は消え入るような声で、微かに口を動かした。



「た…崇……ゆ…き……っ」



「……」
「……」
「…………え?」
「~~~~~~~~っ」
 間の抜けた声が頭の上から降ってくると、途端に視界が爆発を起こす。彼から身体を背けて
小さく丸まってしまおうとするものの、更に力強さを増した絡み付く腕が、それを許して
くれない。
「やっ…ご、ごめんなさい」
 何を言われるのか怖くなって、思わず謝ってしまう。そんなことで怒るような人じゃない
ってことは、とっくに分かってるはずなのに。

「呼び捨てしやがってコノヤロー」

 口調の汚さとは裏腹に随分嬉しそうな色合いで響いたその台詞は、彼女の混乱を余計に
助長させることとなった。
「ごめん…っ……ごめんなさい…」
「全くだ。四つも年上の人を呼び捨てとか酷いぞ」

 幼なじみだから知っている。

 こんなひねくれた性格で、あまり自分の気持ちとかを語ろうとしない人だから。「好きだ」
とか言う時は決まってふざけてる時で、その本音を表す時は、決まって言葉を濁したり
はぐらかしたり遠まわしな台詞を口にしたりするのだ。

 だけど、知っていても困惑が止まってくれない。慣れないことはするもんじゃないと、
今になって激しく後悔するのだった。

276:Sunday
07/04/09 03:39:00 mqaDXy1t


「さぁ、じゃあもうちょっと寝るか」
「こ、このまま?」
「このまま」
 裸のままぎゅっと抱き寄せられたこの状態は、眠るには適していない。体勢が悪いし
少し暑苦しいし、何より心臓に多大な負担がかかる。
 彼は、分かっているようだった。どうしていきなり、呼び捨てで名前を呼ばれたのか。
理由を聞いてしまった自分とは違ったその様子が、どうにも悔しい。

「おやすみ」
「……」

 自分の意見や気持ちを丸々無視するその態度を、やっぱり彼らしいと思って微笑んで
しまうのはおかしなことだと思う。冷たくされて喜ぶなんて、考えなくても変だ。だけど、
こうして育ってきた。二人にとっては当たり前のことなのだった。だからこれは、おかしな
ことでもなんでもない。当たり前のことなのだ。

「うん……おやすみ」

 それから少し時間を置いて、自分でも聞き取れないくらいの声で、彼女は囁き目を閉じる。


 その瞬間、瞼の裏には見たこともない、だけどなんだか懐かしい夕餉時の光景が浮かんで
消える。崇兄と、自分と、そして小さな男の子と女の子の四人が並んであぜ道を歩く、
思い出写真にも思える刹那の一幕。


 それが一瞬、浮かんで消えてしまう。


 何を表しているのか、まるで分からなかった。

 
 どうしてそんなものが見えてしまったのかも、分からなかった。


 唯一つ、たった一つ分かっていたのは。


 それがひどく、現実離れしている情景だということだけだった―――




277:Sunday
07/04/09 03:43:11 mqaDXy1t
   _、_
| ,_ノ` ) ……



|ω・`)ノ チナミニマダオワリジャナイヨ、アトイッカイダケツヅキマス



|ω・`;)ノシ ゴメンネ、キタイハズレデゴメンネ



|ω・`;)ノシ サンザンカイトイテ、コンナノデゴメンネ


  サッ
|彡


278:名無しさん@ピンキー
07/04/09 04:48:23 eTXk14pS
べけやろう!
さんざん待たせてこの結果か!
おにんにんがおっきおっきして大変じゃないか!
これだけははっきり言っておくぞ!

超GJ。愛してる

279:名無しさん@ピンキー
07/04/09 23:25:44 99Sr9aUU
ぬはー、GJです!

甘くて幸せで良いですなぁ。素敵です!

280:名無しさん@ピンキー
07/04/10 00:23:28 1fzAChqw
君は繰り返し寸止めをして、
何度も何度も寸止めをして
見守る僕が眠れない漏れらがクシャクシャになったとしても
一万年と二千年前からwktkしてる
八千年過ぎた頃からもっとwktkなった
一億と二千年後もwktkしてる
君が投下したその日から僕の地獄にGJ!は絶えない



281:名無しさん@ピンキー
07/04/10 21:21:41 ub8IWqGD
自分で書いてみると、いろいろと難しいんだな。
読んでるだけのときには気付かなかったよ。

282:カナのシロ 4
07/04/10 21:52:18 ub8IWqGD
朝の通学路で、大声をあげて大好きだ!などと言ってしまえば他の生徒に目撃されないはずが無い。
シローとカナの一部始終はあっという間に校内に広がっていた。
二人が教室に入ると、耳の早い野次馬達に囲まれて質問攻めに遭ってしまう。カナはどうせ朝会が始まるまでの
騒ぎだろうと適当に受け流すつもりだったのだが、担任の女性教師までもがその輪の中に加わっていてはかなわない。
カナの目論見は脆くも崩れてしまう。シローは恥かしがりながらも、いちいち彼らの質問に答えていた。
その日はずっと、二人でまともに話す時間がないほどに野次馬攻勢を受け続ける事になり、
ようやく解放されたのは放課後になってからだった。

午後になって天気が崩れはじめ、黒く濃い雲が空を覆っている。
天気の良い日なら堤防沿いの遊歩道は人通りが多いのだが、今ここを歩いているのは二人だけだ。
「シロー、余計な事まで言わなくていいのよ。何考えてるのよホントにもう。」
「でも、僕たち別に悪いことしてるわけじゃないし。黙っている方が、逆に感じ悪いじゃないか。」
「だからって、キ、キスしたかとか、セ、えっ…そのアレしたかとか、そこまで答えることないじゃないの。」
律儀で素直な性格はシローの良いところなのだが、その時ばかりは冗談じゃないと筆箱を投げつけた。
「ごめん。ちょっと調子にのってたかも。でも、でもカナちゃんは、僕とそういう事するの、嫌?」
首を傾げてカナを見る。カナにものを尋ねるときの癖だ。心なしか繋いでいる手に力がこもる。

カナはいきなりなんて事を。と言いながら、シローと繋いだ手を一旦放し握り直す。
「いや、じゃない。嫌じゃないけど、まだ早い。と思う。そういうのはもっと大人になってからだよ。
 だって私達まだ高校一年生なんだよ?もっとお互いのことを知ってから、もっともっと好きになってから、
 でも遅くないと思う…んだけど、シローはどう思う?」
ためらいがちにシローを見上げる。彼の唇は女の自分よりも色気を感じる。人並みにセックスへの興味もある。
シローとのセックスを想像しながら自慰に耽った事も、一度ではない。シローと二人きりになると身体の奥が疼く。
本心は今すぐにでも物影に飛び込んでキスしたいシローに抱かれたいもっと触れ合いたいと思ってはいるが、
ここは精神的年長者として、高校生らしい一般常識を披露しておく。

「そそ、そうだよねぇ。カナちゃんの言う通りだよね。僕ってば何言ってんだろ。ごめんねこんな変な事。
 あ、そうだカナちゃん家、今日はおじさんもおばさんも居ないんだよね。よかったら、晩ごはんは家で食べない?
 ってお母さんがカナちゃんに朝、言うようにって。色々あってその、今まで言いそびれちゃって。」
我ながらこんな聞き方はないな、と思いとっさに話題を変える。カナとしてもこの話は早々に打ち切りたかったので、
ごちそうになるお礼に勉強みてあげるからと応え、その後はとりとめのない会話を続けながら帰って行った。
遠くで雷鳴が響く。

エレベーターが九階で止まり、シローはそこで降りる。扉が閉まるまで恋人に手を振る。エレベーターの表示灯が
十階で止まった。シローの見送りは、エレベーターが自動的に一階へ戻り始めるまで続く。
もしかしたらカナちゃんが戻ってくるかも、と期待して。子供の頃からの習慣なのだ。
(僕は今でも充分なんだけどさ。でもカナはちゃんは知らないんだ。もっともっと好きになってって言うけど、
 僕はこれ以上ないくらいにカナちゃんの事が好きなのに。)
声には出さず、心の中でつぶやく。エレベーターは降下を始め九階を過ぎる。


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