【涼宮ハルヒ】谷川流 the 40章【学校を出よう!】 at EROPARO
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 40章【学校を出よう!】 - 暇つぶし2ch600:名無しさん@ピンキー
07/02/22 21:41:15 cbHuEjHk
>>592
赤い服と聞いてテクノカットを想像した俺(´・ω・`)

601:名無しさん@ピンキー
07/02/22 21:42:26 Z8ohaZMy
人民服ーに着替えたかー、
もみあげはちゃんと揃えたか♪

602:名無しさん@ピンキー
07/02/22 22:15:48 3S0vWGB3
>>598
部長「1体のキョンに12体の長門が全滅だとぉ!?」
そこで対抗策として量産される古泉。

603:名無しさん@ピンキー
07/02/22 22:15:50 09l7LIo2
VIP板少し覗いてみたのだが、
アタマがどうにかなりそうだった。
なんだ、あのカオスは?

604:名無しさん@ピンキー
07/02/22 22:18:38 Y1UDjGdb
>>603
タイミングがあまりに悪い。新鯖移転でありえんほど荒れてる。

605:名無しさん@ピンキー
07/02/22 22:21:07 R5/poUaf
まあ、ハルヒスレ荒らしなんてVIPじゃ日常茶飯事だけどな

606:名無しさん@ピンキー
07/02/22 22:21:22 7acm1qXa
 部室の中にはハルヒが独り。
 扉を叩くとハルヒが二人。
 も一度叩くとハルヒが三人。
 叩いてみる度ハルヒが増える。
 こーんな不思議なハルヒが……

 いらんっ! 全身全霊を以て否定させてもらうぞ!

「「「「「こら、キョン!」!」!」!」!」

 くそっ、こいつはなんて悪夢、いや悪なんて表現では生温い、なんて最悪夢だ。
 目覚めの条件は何だ。白雪姫か、眠り姫か。このハルヒに囲まれた状況を抜け出せるなら何だってやってやるぞ。

「「「「「え……キス、するの?」?」?」?」?」

 あぁいややっぱりちょっと待て。本物を探せなのか唇の耐久テストかによって再検討させてく

「「「「「うるさい、ぐたぐた言わずに覚悟を決めなさいっ!」!」!」!」!」

607:名無しさん@ピンキー
07/02/22 22:28:38 gtvn2Ep1
>>600
俺は「THE MAN MACHINE」のジャケを創造したぜ

608:名無しさん@ピンキー
07/02/22 22:43:05 e6VUUuEs
分裂って変な女登場でハルヒが増えたみたいだなぁ的な話なんだと勝手に妄想

609:名無しさん@ピンキー
07/02/22 23:06:22 gAQx1Gno
ハルヒは精神分裂症だったってバッドエンド

だったら嫌

610:名無しさん@ピンキー
07/02/22 23:25:57 cbHuEjHk
>>607
KRAFTWERKか?

611:名無しさん@ピンキー
07/02/22 23:30:33 cbHuEjHk
てか親父のCDラック見たらそれあった。

612:名無しさん@ピンキー
07/02/22 23:39:40 go9WUPhX
>>596
「あと、今回配備された量産型の基本OSは今までの私の観察記録を元に構築されていr

ズドドドドドドドドドド

「「「「「「あっ、お姉ちゃんとキョンくんだー!や――っほぉ――!!」」」」」」
次の瞬間、俺と長門(オリジナル)の周囲は無数のハイテンションユッキーによって完全に包囲された。
ああ神よ、いったい俺が何をしたというのですか。

613:名無しさん@ピンキー
07/02/22 23:59:37 gnOyJixd
>>612
書いちゃえば?と思いたくなる内容w

614:名無しさん@ピンキー
07/02/23 00:01:28 9LoeoSTa
>>571
宮野は相変わらずカッコいい奴だな。乙乙

615:名無しさん@ピンキー
07/02/23 01:49:48 51HK8vqr
URLリンク(ga.sbcr.jp)
さすがにこの大きさはないよね?

616:名無しさん@ピンキー
07/02/23 01:58:18 ANM0VDq6
>>615
 あ り え な い

617:名無しさん@ピンキー
07/02/23 02:01:31 69JlmRCh
>>615
それ情報操作されてる

618:名無しさん@ピンキー
07/02/23 02:03:39 sj91E9Jl
>>615
※掲載しました写真は試作品も含まれるため、実際の製品とは異なる場合がございます。

619:名無しさん@ピンキー
07/02/23 02:14:55 wlYPQwm/
>>615
「……びっくりするほどユートピア」

620:名無しさん@ピンキー
07/02/23 02:15:19 ygNJtTDj
少し前で触れてたVIPの「涼宮ハルヒの微笑」を読み終えた。
良かった。これだけ言おう。そして長かった。文庫1冊分あるだろ。

621:名無しさん@ピンキー
07/02/23 02:18:56 qBVBjS5O
>>615

「おい長門」
 Webを適当に見ていた俺は、とあるフィギュア商品のHPを発見した。
 そしてすぐさまこの無口な宇宙人(略)インターフェイスに声をかけた。
「なに」
 本から視線を上げもせずにこの宇宙人は聞き返してくる。
「おまえ、このフィギュアのページを改竄しなかったか?」
「していない」
「いや、あきらかにこれはおかしいだろう。いくらなんでも、こんなにボリュームたっぷりなのは
ありえない。画像を書き換えたりしてないか?」
「していない」
「・・・・・・」

「・・・商品の金型を、ほんの少しだけ情報操作しただけ」

622:名無しさん@ピンキー
07/02/23 02:43:28 O+OzLfmN
>春休みの些細な出会い
ってことは、やっぱり新キャラかな。変な女だったら「再会」になるしな。

623:名無しさん@ピンキー
07/02/23 03:00:13 vzbZubFm
>621
さすがながもん、嘘はついてないな

624:名無しさん@ピンキー
07/02/23 03:05:20 wlYPQwm/
>>621
 それはそれとして、何故ずっと俺を見つめているんだ。
「……色は三色」
 あぁ、そうだな。
「観賞するにも、飾っておくにも手頃なサイズ」
 1/6だもんな。
「…………」
 …………。
「……注文ボタンは下の方」
 いや、別に買わないぞ。
「そう」
 ああ。なんせ俺には本物のお前がいるしな。そうだろ?
「……いる」




『部長! 幾つ注文するんですか!』
『もちろん『買えるだけ』に決まっておろうっ!!』
『了解しましたっ!!』


 …………。
「…………」
 …………。
「……注文ボタンは下の方」
 あ、いや、その。


『しかし部長、この造形若干本物と相違する箇所がありますが?』
『その点は問題ない。ちゃんと我が魔改造技術を以て削り取るからな』
『ああなるほど!』
『それなら安心です!』


「…………」
 ……ど、どうしたー長門ー? そんな壁をじーっと穴を開けるかのように見つめてー?
「……許可を」
 ……あー、この世の人間のできる範囲内で、な。
「そう」




 十七時十一分。
 決着がついてから約十分後、部室に帰ってきた者がいた。
 ところでその手にしていた赤く分厚い本、行く時は白くなかったか

625:名無しさん@ピンキー
07/02/23 03:52:31 /zTk/dRR
さすが、長門

人間に出来る事しかしてない

626:名無しさん@ピンキー
07/02/23 09:05:40 WsVLQRoJ
部長魔改造できたのかw

627:名無しさん@ピンキー
07/02/23 13:00:35 +mSmTvUr
なるほど。
高校生が最新式のPCを買える理由はそれか。

628:名無しさん@ピンキー
07/02/23 14:56:49 cHiV78/S
今時、そこらのリーマンなんかより高校生の方が遊び金持ってんだろ

629:名無しさん@ピンキー
07/02/23 15:07:46 ilezrU3J
部長はボンボンなんだよ。つかハルヒ世界の人物みんな。

630:名無しさん@ピンキー
07/02/23 15:09:52 S2NWrbg/
部長はあれだろ、校長室に行って部員の一人の尻を校長に触らせる
その写真で脅して買わせたのさ

631:名無しさん@ピンキー
07/02/23 18:42:25 /zTk/dRR
違う。コン部長はエロゲを会長氏に渡し、会長氏は会費を横領した金を払っているのだ

632:名無しさん@ピンキー
07/02/23 19:19:16 +Vh02Dc5
普通に部費+バイトとかそういう発想はないのか

633:名無しさん@ピンキー
07/02/23 19:22:52 FePCGBMH
>>632
つまらん!
お前の話は本当につまらん!!

634:名無しさん@ピンキー
07/02/23 19:29:11 VRpAH9Fl
>>631
これまでの仕返しに、みくるとかハルヒの着替え盗撮して、ネット上で売ってそうな気がするw

635:名無しさん@ピンキー
07/02/23 19:33:29 UfY1GB8S
みくるは被害者側なのに仕返しするコンピ研は鬼畜

636:名無しさん@ピンキー
07/02/23 19:42:23 Vf2aHyik
あの部長にそんな度胸はない

637:名無しさん@ピンキー
07/02/23 19:55:07 VRpAH9Fl
まあ、ただの妄言だよ、っていうかそんなネタ見たことあるような気もするし

638:名無しさん@ピンキー
07/02/23 21:01:47 y1jEar5m
>>633
これって何かのネタですか?
632ではないんですが気になったんで

639:名無しさん@ピンキー
07/02/23 21:02:51 3489ixqL
>>638
昔、テレビでやってたコマーシャルの中で役者が喋ってた台詞。

640:ある清涼飲料水のお話
07/02/23 21:08:31 zp3VDLFg
突然な話だが、
大概の高校生というのは、昼休みというのは食事を済ませると結構暇だったりする。
そりゃ中には部活の昼練に行くような体育会系の奴もいれば、図書室に行くような奴もいる。
まぁただ、だいたいの無所属の奴らというのは、そういうのが面倒くさいから無所属なので、
昼休みというのは家から持って来てすっかり冷めちまった飯を友達と
ダラダラ喋りながら食べることによって、時間と飯を消化するのであり、
後から思い返すとその時間は案外くだらないが楽しかったりする。
谷口や国木田や俺なんかという…まぁいつものメンバーなんだが、とにかくそこら辺の
生徒はその典型的なパターンなのだ。
さて、こんな事を説明しているのには訳がある。
結論から言わしてもらおう。
それは俺にとってはなかなか面白い昼休みであった。

ある雨の日の昼。毎度のごとくやる事がない俺は部室にぶらぶらしながら行ってみることにした。
雨なので、中庭を通じてのショートカットが出来ないのは残念だがまぁそれは今度でいいか。
別に俺は急ぐ事もないので、だらだら歩いて自販機の前で阪中が
「新しいジュースはコンプリートするのね。」
とか言いながらこの前入った新しいジュースを一気飲みしてるのを眺めたりしながら歩いていった。
我が校は立地条件の割には狭いので、あっという間に部室の前に着いた。
昼休みだから朝比奈さんの着替えもないし、恐らく長門が本を読んでるだけだろうから
ノックもせずに入ろうかと思ってたが、
どうも一度身に付いた習慣は簡単に抜けないのか、無意識下でノックをして、
我が部室のドアを開けた。
すると先程ジュースをコンプリートしていた阪中が何故か部室の中にいた。
「どうしたんだ?」
「あ、こっちに…来ちゃ…」
どこか熱っぽい阪中がこっち向いたと思ったその時。
急に阪中の体が光り出して、光が止んだ時にそこにはヤツがいた。
俺の頭の中で色んな映像がフラッシュバックされる。
夕焼けの教室。飛んでいる椅子。夜の学校。ナイフ。
そう。


朝倉が出て来た。
待て。落ち着け。この状況は何なんだ。ナイフは?まだ見えない。
でもアイツなら一瞬でナイフでもランチャーでも戦車でも出せちまう。

641:507
07/02/23 21:09:32 vrShP0Ey
 507の続きになります。予想外に長くなったのでもう一回位に分割して書く
ことになりそうです。ではでは投下させていただきます…。

642:ある清涼飲料水のお話
07/02/23 21:09:32 zp3VDLFg
ヤバいヤバい。とにかく俺の脳細胞フル稼働で脱出方法を考え…
そんな事を考えてる間に朝倉は一瞬で俺との間にあった5mくらいの間合いを詰めてきて…

キスをしてきた。
わけがわかんねえ。何が起きてるんだ?
阪中がこっち向いて、フラッとしたと思ったら朝倉が出て来て、キスをした。
そしてキスしてる奥の方で…とんでもない殺意の波動に目覚めた長門がいた。
俺が色々困ってる今も朝倉は俺とディープにキスをしている。
「んむっ…んっ…ぢゅっ」
どうやらこいつもキスする時は目をつぶる派らしい。どアップで真っ赤な朝倉の顔を見ながら、
次に俺に降りかかる災難を考えていた。
そうすること約15秒。
ついに長門がキレた。
20倍速ぐらいで何かを喋り、
「情報連結解除」
ただ静かにそう言い放つと、朝倉がまたいつもの様に砂のようになって散っていった…
と、思いきや朝倉がキスしたままだったので、そのまま阪中にバトンタッチされた。
自分が置かれている状況を理解したのか顔が赤くなりきった阪中は
「ふわ、え?キョ、キョ…」
と、何か言った後にぐったりとして、そのまま床に倒れた。
わけがわからなさすぎる状況に戸惑っていた俺に長門が静かに話しかけてきた。
「その清涼飲料水のコピーに目をつけた朝倉涼子が自分の情報を
混入し、誰かが飲んだと同時に侵食を開始するように構成されていた。
こういう手段は想定していなかった。彼女が標的になったのはまったくの偶然。
しかし、未然に防げなかった私に過失がある。」
まぁ別に今回はナイフで刺されるとかそういうのじゃなかったから、
誰もお前を責めたりはしないだろ。
「…そう。」
長門の闇のような瞳を見つめていたら俺はふと、あることに気付いた。
「そういえば、阪中が飲んだのその…清涼飲料水って何だったんだ?」
「これ。」
そう言って長門が指差した机の上に置いてある赤いアルミ缶を見た。
あぁそういやそんな宣伝だったな。
っつーか阪中これ一気飲みしてたのかよ。


「―いいほうに考えよう
    Coca-Cola―」

643:名無しさん@ピンキー
07/02/23 21:10:29 zp3VDLFg
あ―!かぶってすいません!

644:507
07/02/23 21:11:10 vrShP0Ey
いえいえ、ではこっちがwktkしつつ待機します><b

645:名無しさん@ピンキー
07/02/23 21:13:10 trQM75On
別に順番が決まってるわけでも、予告が合ったわけでもないし、
お前さんが先に投下してたんだから何も謝る必要はないよ。

646:名無しさん@ピンキー
07/02/23 21:15:37 VRpAH9Fl
殺意の波動吹いたwwww

そんなことになったら終わりだな…

647:名無しさん@ピンキー
07/02/23 21:23:17 zp3VDLFg
>>644
いや、あれでもう終わりです。ちょっと小ネタが浮かんだので。
こちらこそwktkさせていただきます。

648:名無しさん@ピンキー
07/02/23 21:28:14 ygNJtTDj
>>644投下お願いします。

649:507
07/02/23 21:38:17 vrShP0Ey
 周囲の空気が秒で氷結したとしか思えない沈黙が辺りを支配した。待て待て
状況を落ち着いて考えろ。俺の背後の席に座っているこの女は、俺の人生の最
大の転機を作った元凶にして、天下無敵ご意見無用なSOS団団長、涼宮ハル
ヒに間違いないはずだ!…はずだが。

 「えっと、あたしの顔に何かついてる?」

 などと遠慮がちに伺いを立てつつ、自分のほっぺたを撫でるような行動を取
るような乙女ちっくな発言、行動は少なくとも俺の知りうるハルヒのそれでは
ありえない!というかあってたまるか!これは一体何なんだ?俺は白昼夢でも
見てやがるのかこの野郎!

 などと、俺が自分の内面世界で延々とこの状況へのツッコミを入れまくって
たときに…俺は背筋が寒くなるような言葉を、ハルヒの口から聞く事になった!


 「えと…白昼夢とかそう言うのではないんだと思うけど?」


 小首を軽くかしげ、遠慮がちに微笑みつつ小声で話しかけてくるハルヒ。


 断言しよう、先ほどの俺の台詞はその全てが俺のモノローグである。当然な
がら俺はさっきの文節を一言たりとも声を出して発言していない…。にも関わ
らず、ハルヒはまるでさも当然の様に俺のモノローグに応対しやがった。

 …きっと偶然だ、もしくは何かの聞き間違いか何かの勘違いだ。いくら何で
もハルヒの奴が俺の心を読んだとか、そういうのはありえないしあってはなら
ん!というかあってたまるかこの野郎!

650:507
07/02/23 21:38:49 vrShP0Ey
 などと、俺が自分の内面世界でどこの誰とも知らぬ第三者にひたすら延々と
ツッコミじみた台詞を入れまくっていたときに、ホームルームが始まったわけ
だ。

 正直に言おう、俺はその日一日の授業のほぼ全てをまるで記憶にとどめる事
ができなかった!何せ背後にいるハルヒの豹変振りがあまりに突飛な上に、そ
の言動全てが『昨日与太話で話した脳内での理想の女性像』のそれを綺麗にな
ぞったものばかりだったからだ。

 例えば英語の授業中、動揺しすぎで教師の不意打ち朗読命令にまったく応対
できず完全フリーズした俺にそっと小声で救いの手を差し伸べ、あまつさえ軽
く手を振ってウインクして見せたり。

 例えばシャーペンの芯を切らして難儀したときに、何にも予兆らしきことを
口にしていないにも関わらず、阿吽の呼吸を極めた夫婦でもこうは行かんぞと
いう絶妙なタイミングで軽く背中を指でつついてから代え芯を差し出してきた
り。


 まるでハルヒの奴が、常時俺の考えを読んでいるような錯覚さえ…。


 と、その時。俺が何とはなしに抱いていた嫌な予感が音速に匹敵する速度で
爆発的に膨れ上がり、俺のチキンハートを瞬時に木っ端微塵に粉砕した。

 『まさか…ハルヒは俺の考えをある程度以上読んでいるのか?』

 そう考えると、何も話すこともないのに絶妙のタイミングで立て続けに入る
ハルヒの(本来ありえない程の!)献身的なアシストの数々にもある程度説明
がつく。俺の表層心理がハルヒにある程度以上のレベルで筒抜けになってりゃ
俺が現在困ってる事柄なんか一発で判明するに違いない。

 だが、それだけでは現在のハルヒの豹変振りが完全に説明しきれない…。か
くて俺は自分の脳内会議場で居眠りしかけていた脳内人格どもを叩き起こして
延々とこの現状についての検証会議を行わせ…。会議開始後10分も経たずに結
論が出ないままに音速で脳内会議が空転し続けたという事実に深く溜息をつい
た訳だ。やっぱり、柄にもないことはすべきじゃないね。畜生。

651:507
07/02/23 21:39:27 vrShP0Ey
 かくて、昨日とはまったく真逆の意味でこの世の地獄かと思えるような時間
を延々と過ごした俺は、昼休みの到来を待って即座に教室から飛び出そうとし
て…その直前にまさに鬼でも即死しかねないほどの超弩級の不意打ちを受ける
羽目になったっ!


 「あ、えーっと。今日はあたしもお弁当を持ってきてるの、だから…よかっ
たら、一緒に食べないかなー?とかね?…迷惑なんだったら、別にいいけど」

 
 などと、伏目がちに軽く頬を染めつつ話しかけつつ、鞄の中からピンク主体
の包みに包まれた自分の弁当箱を取り出して見せたのは誰あろう!涼宮ハルヒ
その人であるっ!

 ここで基本的なことを再確認しよう。

 涼宮ハルヒはその内面的な部分に致命的過ぎるほどの問題を抱えてはいるが、
その容姿・スタイルなどは一般的高校女子の平均的なそれを軽々ぶっちぎる程
の美少女と言っても過言ではない。

 従来ならばその致命的すぎる内面部分によってその容姿などが話題に上る事
はないのだが…ことこの状況ではまったく勝手が違う。んで、この状況を見た
第三者が何を思うのかと言うと…だ。

 谷口、その鬼でも殺せそうな視線を無言でこちらに送りつけるのは止せ。つ
か国木田もしたり顔で頷くな!というかクラス中の面々から送りつけられる視
線が猛烈に痛いのは気のせいではあるまい!視線にも物理的な殺傷力があると
いう事実の検証を二日連続でやる羽目になるとは思いもしなかったぞ、俺は。

 
 かくて、俺は遠慮がちに微笑むハルヒと差し向かいになりつつ弁当をつつく
という、この世の終末でも訪れない限りまず絶対にありえない状況に陥る羽目
になった!

 阿吽の呼吸で持ち込んできた水筒から温めになったお茶を差し出し微笑むハ
ルヒ。軽く会釈しつつずぞぞと音を立てて飲んでみる。温度の加減もさること
ながら、煎茶をきちんと蒸らしてから出してなけりゃ出ない味が何とも言えな
い。これが今までの事象とかその辺がない、ごく普通の日常の延長で起こった
出来事なら俺は心の底から寛げたりするのかも知れないが…ってちょっと待て
俺!相手はあのハルヒだぞ一体今何を考えたんだ俺は!?

652:507
07/02/23 21:40:08 vrShP0Ey
 と、俺が内面世界で怒涛のカオスを展開しつつハルヒにカップを返した矢先
に、俺の制服のポケットの中で携帯が軽く振動を伝えてきた!

 
 これが早撃ちの勝負ならばビリー・ザ・キッドすら軽く蹴散らせる速度で即
座に携帯を取り出し、流れるようにメールの発信者名を確認。そこに書かれて
いる名前は…長門?

 「あ、すまんハルヒ。ちょっとメールが来たみたいだ」

 「気にしないでいいわよ、むしろ無理に同席したのはあたしなんだし」

 …なんというか、普段の団長閣下に今のハルヒの爪の垢でも煎じて飲ませた
くなったのは俺だけなのかね?などと他愛もないことを考えつつメールを確認。


 『涼宮ハルヒについての重要な話がある。放課後、部室にて』

 最低限の内容しか書かれていない、無愛想にも取られかねないメール。だが
この文章は今の俺にとっては、他の何にも変えがたいほどの福音に見えた。
 

 かくて放課後までの時間を上の空で過ごし切った俺は、殊勝にも教室清掃に
自ら率先して参加するという態度を見せたハルヒに先に部室に行っているとの
断りを入れてから、まさに神風を受けたかのような速度で部室へと直行した!

 16ビートのギグを演奏する心臓の鼓動を無視して、動揺のあまりに普段の習
慣である部室のドアのノックすら省略してドアを開けて飛び込む。
 
 そこにいるのは…SOS団きっての万能選手にして、他の誰にも代え難い仲
間の一人。無口系の文芸部員、長門有希その人である。

 ついでに視界に飛び込んできたイカサマスマイル野郎の存在は、俺的にはす
ぱっと視界の外に送るついでに意識の中からも綺麗に流してやりたかったのだ
が…それでは埒が明きそうもないので古泉にも軽く視線を送ることにする。

 と、俺が部室に入るや否や。

 いつもの定位置にて朱色の装丁のなされた文芸書を読んでいた長門がすっく
と立ち上がり、流れるような足運びで俺の前までついっと進み出て。


 おもむろに俺の後頭部にその手を回し。

 
 …目の前に火花が飛び散ってもおかしくない程度の勢いで、俺の額を自分の
額に叩きつける様に押し付けた!ってマジで痛ぇ!?一体なんだこりゃ!?

 「黙って」

 長門、わかったから最低限の事情の説明を先にしてくれないか?ただ黙々と
額同士を押し付けたままでじっと目を見据えられると何というか、色々と心象
的に複雑なものが…って古泉、お前はこっち見んな。その真剣そのものの表情
も気味が悪い。これは一体何事だ?

653:507
07/02/23 21:41:31 vrShP0Ey
 「…やはり。あなたの表層意識の一部に外部からの思惟共有用の情報種子が
仕掛けられている」

 
 …長門のいってる事はその一切が正直理解できない。だが何となくだが、俺
はこのハルヒの豹変自体がただ事ではないのだなぁ…と何とはなしに実感して
いた。

 「要するに、今のあなたには涼宮さんから…恐らく彼女すら無自覚なうちに
思惟の表層部分の情報を読み取るための枝葉のようなものが仕掛けられている。
 そう思っていただいてかまわないと思います」

 ってさらっと解説役に回るな古泉!というか今さらりと吐いた台詞はあまり
にも洒落になってないような気がするのは気のせいか!?

 「あー…一応確認する。これは何だ、所謂ところの世界の危機がどうとか言
う話につながる重大事項なのか?」

 脳内で立て続けに鳴り響く嫌な予感の大輪唱をあえて無視しつつ、俺は念を
押すように長門に話しかける。長門は何故か額を押し付けたままでその清冽な
湖水のような目を俺に合わせつつ、ただ淡々と言葉を続ける。


 「そういう問題に発展する危険は低い。だが可能性はゼロではない」


 …おお神よ。またこういう事態なのですか。今度なんかの拍子でお見かけし
たら、その機会には是非に渾身の鉄拳をその顔面に叩き込ませてください。

654:507
07/02/23 21:44:02 vrShP0Ey
 などと俺が脳内で盛大な溜息交じりの述懐を述べていると、長門が言葉を続
けだした。

 「現在涼宮ハルヒは、本人すら無自覚のうちに大規模な情報フレアを自分自
身を対象にして発生させ続けている。

 その対象は『涼宮ハルヒの個性・人格などの個人情報』

 涼宮ハルヒはあなたの表層意識に仕掛けた情報種子から、あなたの理想とす
る異性像の情報を読み取り、それに自身を適応させるべく情報フレアを利用し
て自分自身の固有情報を延々と改築し続けている。

 涼宮ハルヒがこのような行為に及んだ原因は不明。
 
 ただこのままの状態が維持され続ければ、遠からず涼宮ハルヒの本来の人格
情報に致命的なダメージが及ぶ結果になる。

 そうなった後、彼女が内包している情報フレアがどのような規模・威力で拡
散する結果になるのかがまったく不明。

 下手をすると世界全ての環境情報を巻き込むレベルでの世界改変が起きる危
険性も否定できない」

 
 …ええと、つまりだ。

 ハルヒの奴は昨日の俺のたわ言を真に受けて、何をトチ狂ったか『理想的な
異性像』を演じるために無意識に自分を作り変えるような阿呆な真似に及んだ。

 そういうことになるんだよな…ったく。もし叶うなら昨日の昼飯時の俺の前
まで時間遡行かましてその後頭部に蹴りの一発でもくれてやりたい心境だよ、
畜生めっ!

 「で、これが肝心なんだが…長門、対策はあるのか?」

 「涼宮ハルヒがあなたに無意識のうちに仕掛けている表層意識に根を張った
情報種子を枝にして、あなたと私、あと古泉一樹を意識体として涼宮ハルヒの
表層意識下に『飛ばす』
 そこで改変され続けている涼宮ハルヒの人格情報を元の形に復元すればいい」

 と、言われてもだ…頼むから、もう少し凡人代表選手である俺にもわかるよ
うに説明していただきたい。古泉、お前もその即座に得心したように頷く癖を
どうにかしろ。当事者であるところの俺を放置したまま話を進めるな。

655:507
07/02/23 21:45:43 vrShP0Ey
 …今回はここまでで申し訳ない。続きは近日中にということで…。

656:名無しさん@ピンキー
07/02/23 21:47:30 ygNJtTDj
GJなんだぜぃ!続き待ってます。

657:名無しさん@ピンキー
07/02/23 21:53:09 GQ3A/cIZ
wktkしながら待ってるよ

658:名無しさん@ピンキー
07/02/23 22:32:32 zp3VDLFg
>>655
うぉ!俺が書いたのよりも口調のトレースが格段にうめぇな。
というかこのハルヒはヤバいな。喜緑派から寝返りそうな勢いだ。
そして…SSになると主人公にならない限り空気なみくるw

659:名無しさん@ピンキー
07/02/23 22:38:15 gFCgDJVp
今思えば、ハルヒってすごいな!
容姿端麗、スポーツ万能、成績優秀、歌がうまい上、さらには
いろんな人に超能力マガイなもの授けるし、季節はずれに桜は咲かせるし、
時間をループさせちゃうし、異世界に行っちゃうし、もう何でもありだね。

もちろん、そんなハルヒにしぶしぶついて行ってるSOS団のメンバーもすごいがね。

660:名無しさん@ピンキー
07/02/23 22:43:47 f2cDygRh
SOS団メールマガジンの3回目のキョンの語り口調が素人のSSよりも酷いな。
芸が細かいのは良いんだがなぁ・・・。
誰が作成しているんだ?角川の広報?編集?
谷川が書いてたら笑うところなんだろう。

661:名無しさん@ピンキー
07/02/23 22:46:24 y1jEar5m
>>659
しかしハルヒ視点から小説が書かれたとしたら、
実は悩みを抱えた主人公の、割りと普通(?)の青春小説になってしまうんだよな。
ハルヒは何ひとつ事実を知らんから。
編集一直線っていう話なんかハルヒサイドから見たら、学園物のマンガだよね。ストーリー的に。

662:名無しさん@ピンキー
07/02/23 22:53:02 +gQkdMl8
しかしあのメルマガにはザ・スニーカーのコトが全く触れられていないね。
同じ角川の出版部門でもアニメ系出版部門とラノベ出版部門は仲がよくないのかね?

663:名無しさん@ピンキー
07/02/23 23:10:53 ilezrU3J
俺も思った。つうかアニメのキョンと原作のキョンに最近開きを感じる。

664:名無しさん@ピンキー
07/02/23 23:21:43 GhXKDNQn
あっそ。だから?

ま~たアンチ京アニ厨っすか┐(´ー`)┌

665:名無しさん@ピンキー
07/02/23 23:22:39 VyPnPVpc
>>664
最近いる連中はむしろ逆な気がしてならない

666:名無しさん@ピンキー
07/02/23 23:23:13 O+OzLfmN
俺はどっちのキョンも同じ感じだな。
ま、個人個人の印象なんてそんなもんかもな。

667:名無しさん@ピンキー
07/02/23 23:25:55 trQM75On
原作のキョンもアニメのキョンもどっちもキョンだ
だがしかし、キャラソンのアレだけはキョンとは認めん
あれは銀さんだ

668:名無しさん@ピンキー
07/02/23 23:26:53 7ia3JQXm
>>667
俺は後ろに銀さんが背後霊の如く引っ付いている図を想像したw

669:名無しさん@ピンキー
07/02/23 23:27:04 ilezrU3J
>>664
そんなしょうもないこと言うなよ……。俺アニメも好きだし。

670:名無しさん@ピンキー
07/02/23 23:46:44 IRw2jNJE
>>669
君のレスはどう見ても嫌アニ派にしか見えなかったよ?

671:名無しさん@ピンキー
07/02/23 23:53:06 ygNJtTDj
俺は「涼宮ハルヒの憂鬱」そのものが好きだ。
媒体は関係ない。

672:名無しさん@ピンキー
07/02/24 00:10:23 1JFyJGgb
じゃあ俺は長門が好きだ。

673:名無しさん@ピンキー
07/02/24 00:14:44 Sf8eTBo2
俺なんてキョンの妹が一番好きだぜ!

674:名無しさん@ピンキー
07/02/24 00:24:14 BnWw4dZX
俺は部長が好きだ

675:名無しさん@ピンキー
07/02/24 00:28:14 pOWYKmY6
みくるが一番好き

676:名無しさん@ピンキー
07/02/24 00:36:13 QTnj7lwm
この流れが嫌い

677:名無しさん@ピンキー
07/02/24 00:53:09 BSy+wWDc
実際、俺は原作から入っていたけど惰性で買っていた。
大賞取ったていうから読んでみたけど実際何が凄いのかが判らない。
アニメ化して再度読み直したら小説の印象が変わっていた。
だが、今でも大賞って言うほどの物なのかと言われれば疑問に思う。

が面白く読めれば良いかと思う俺はENOZの榎本美夕紀が好きなんだ。

独り言、あいすまぬ。

678:名無しさん@ピンキー
07/02/24 00:53:49 jiFC83Xs
メルマガはキャラアニの製作でしょ?

679:名無しさん@ピンキー
07/02/24 01:01:44 p/nMO40B
だったらなんだって言うんだよこの馬鹿。

680:名無しさん@ピンキー
07/02/24 01:04:12 XNHql4uH
>>676僕は貴方が好きです

681:名無しさん@ピンキー
07/02/24 01:04:27 1JFyJGgb
ところで雪、無音、窓辺にて。のジャケットの胸、意外とあるね
長門バニーの画像見てたら思い出した。

長門バニーは情報操作されt……サラサラ
URLリンク(ga.sbcr.jp)



682:名無しさん@ピンキー
07/02/24 01:05:42 1JFyJGgb
誤爆

683:38-822
07/02/24 01:13:00 EBuWxKkD
投下します。
エロなし。21レス予定。
『SOMEDAY………』ラストです。


684:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:14:33 EBuWxKkD
 最初に感じたのは『冷たさ』だった。

 目を開けると、雪が降っていた。『冷たさ』はそのせいのようだ。
 ………さて、あたしは誰で、どうしてここにいるんだろう。
 そう疑問に思った瞬間、何かと繋がると同時に膨大な情報が流れ込んできた。
 あたしの名前は『朝倉涼子』、この銀河を統括する情報統合思念体、その急進派によって造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス、………だった存在。
 原因不明の『エラー』により暴走し、最重要観測対象の一人である少年を殺そうとしたあたしは、同じインターフェイスである『長門有希』によって情報連結を解除された。
 ただ思念体による『エラー』の原因解明のため、完全な消滅ではなく凍結状態に置かれていたようだ。

(………命令を)
 凍結が解除されたのには何らかの理由があるはずだ。『あたし』でなくてはいけない理由が………。
 しかし、思念体からの返答はあたしの予想を裏切るものだった。
(為すべき事を為せ)
 ………なによ、それは?
 何度か質疑を行うも答えは全て一緒だった。
(あたしが為すべき事は………)
 考える。………分からない。………思いつかない。
 そもそもあたしは道具なんだから、自分の為すべき事なんて考えなくて良いはずよね。考えた事だって、一度しかないし………。
 ………結局、そのたった一度、凍結前にあたしがやろうとした事、それくらいしか思いつかなかった。
(涼宮ハルヒを刺激し、情報を引き出す)
 ………どうせあたしには、他に何もする事無いしね。

 雪が降っている。『あたし』は冷たいままだった。


SOMEDAY in the MORNING Rside




685:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:16:07 EBuWxKkD
 あたしは今、特急列車に乗り『涼宮ハルヒ』が来るのを待っている。
 あたしが凍結されている間に長門さんにもいろいろあったらしく、涼宮さんと彼女を引き離すために思念体はいろいろやったようだ。これから彼女達が向かう別荘に出る幽霊もその一つだ。
 えーと、たしか、盗作騒ぎに巻き込まれて自殺した画家の幽霊、だったかしら。
 あたしは思念体に彼女達と一緒に別荘のある土地まで向かうよう指示された。
 ただその後、どう行動するかはあたしに一任されている。………いや、はっきり言うと丸投げされている。
 数時間前に起きたばかりだというのにこの放置っぷりはどうなのよ、などと思いはしたが、しがない一端末に反論なんて出来るはずもない。
 とりあえず行き当たりばったりでやってみるしかないわね。
 この状況を言い表す言葉を三年ちょっとの少ない記憶領域の中から検索してみる。
 うん、これね。………呟いてみた。
「やれやれ」
 ………むなしさ当社比120%アップだった。えーと、これだと220%だわ、何だか疲れてるみたいね、あたし。


 今回『涼宮ハルヒ』と一緒に来るのは『朝比奈みくる』と、もう一人は鶴屋っていう人だ。………『彼』と一緒だと思っていたから少し拍子抜けする。ていうかあの二人、まだ付き合ってなかったんだ。
「お家に帰らせてくだしゃーい!!!」
 電車が駅から発車してすぐ、そんな情けない声が聞こえてきた。どうやら涼宮ハルヒと愉快な仲間達のご登場らしい。

 涼宮さんと見知らぬ女性(多分、この人が鶴屋という人なのだろう)がこちらに向かって歩いてくる。………まあ、あたしの隣の席を予約してるんだから当然だろうけど。涼宮さんが首根っこを捕まえ引きずっているのが『朝比奈みくる』だろう。
 三人があたしの近くまで来たところで、鶴屋さんと思われる人が話しかけてきた。
「ちょいとごめんよっ! あたし達三人でね、あなたの隣とー、その後ろの二列をとってるんだよっ。そこでお願いなんだけどもっさ、この席、ちょろっと反転させてもいっかな?」
 ………何となくだけど、この人もちょっと変だと思う。だから涼宮ハルヒの近くにいるんだろうとは思うけど。
「ええ、良いですよ」
 作り笑顔でそう答える。そこで涼宮ハルヒと目が合った。
「あら、あんた、」
 声に驚きが交っている、どうやら覚えていてくれたようだ。
「ひょっとして、朝倉涼子じゃないの」
 正解。彼女の中に自分の痕跡がちゃんと残っていたのだと考えると少しだけ嬉しくなる。
 叫びだしそうになった朝比奈さんを黙らせてから、こう返した。
「お久しぶりね、涼宮さん」


 あたしは、親が実家に用事が出来たため日本に一時帰国した、という内容を涼宮さんに説明した。………まあ、もちろん嘘なんだけどね。
 朝比奈さんが、あたしは騙されませんよー、というような顔をしている。
(あら、脳を直接いじってあげましょうか?)
 彼女だけにそう思念を伝えると、ふみいっ、と声を出し隣に座っている鶴屋さんにしがみついた。………この人、ちょっと楽しいかもしれない。
「おっ、なになに。求愛行動かい?」
 照れるにょろー、と頭をかく鶴屋さん。思念が聞こえない彼女からしたら、朝比奈さんが急に抱きついてきたようにしか見えないのよね。
 彼女達の携帯も圏外にしたし、未来人も思念体が抑えているらしい。長門さんもここまでは来られないだろうし、もう邪魔者はいないわね。じゃ、とりあえず、
 
「えっと、朝比奈さんと鶴屋さん、ですね。はじめまして。あたしは朝倉涼子と言います。よろしくお願いしますね」
(余計な事を喋ったら、………分かってるわね)
 言葉で挨拶を、思念で脅迫を。
 朝比奈さんが泣きそうな顔をする。………何だろう? これが楽しいという感情なのだろうか?




686:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:17:18 EBuWxKkD
 お昼の少し前に、あたし達四人は目的の駅のプラットホームに降り立った。雪のせいで電車が遅れたので、切符を買い換える必要があるようだ。この雪も思念体が降らせているらしいのだがその理由はよく分からない。
「んじゃあ、ちょろっと行ってくるっさ」
 改札を出た後、鶴屋さんが四人分の切符をまとめて買い替えに行ってくれた。
「みくるに行かせっとすっ転んで小銭をそこいらへんに盛大にぶちまけそうだからねー」
 ほっぺたを膨らまして反論しようとする朝比奈さん。本当にダメな人だ、ここは周囲の期待通りすっ転ぶところだろうに。
 彼女の足元の床を滑りやすく情報操作しようとした時、

(情報生命体の反応を検出)

 あたしの頭の中にアラート音と共に情報が流れ込んできた。

(この情報生命体は涼宮ハルヒの居住する地の図書館を中心に、半径200mの球状情報制御空間を形成。内部にいる生命体を吸収し、自己の複製として再構成するのが目的。生命体自体の持つ能力は極めて微弱、当該空間内に取り込まれたインターフェイス、
パーソナルネーム長門有希単体、能力制限モードでも処理は可能、と判断。これを同インターフェイスに命じる。他のインターフェイスは引き続き各個体に与えられた命令を続行せよ)

 何でわざわざ今日に目覚めるの! と、まだ見ぬ情報生命体に心の中で悪態をつく。
 今回、涼宮ハルヒを刺激するという目的のもと、不測の事態に備えて思念体の力の大部分はこちらに割かれている。長門さんが単体で生命体の相手をする事になったのはそのせいだろう。
 唇を噛み締める。どうにかしないといけない。

 ………あれ? 何で?

 自分の考えに疑問を抱く。もし長門さんがいなくなったら、『涼宮ハルヒ』は確実に情報爆発を起こすだろう。それはあたしの狙い通りのはずよね、………うん。
 何の問題も無い、と結論し涼宮さんの方へ意識を戻した。




687:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:18:23 EBuWxKkD
 生命体の力で図書館内には普通の携帯は繋がらなくなっている。涼宮さんは長門さん達に連絡がつかない事を不審がっているようだ。先程から携帯でいろんな人に連絡を入れている。
「キョン、家にはいないらしいわよ。妹ちゃんは『お前が行っても面白くない場所だ、ついて来るな』って言われて置いてかれたらしいわ」
 その様子を見て、まだ早いけどここで少し涼宮さんを突付いてみるのも良いかもしれない、と思った。
 彼女に近寄り、喋りかける。

「ねえ、長門さんとキョンくんって付き合ってるの?」
 
 ………見た瞬間に恐怖を覚えるような笑顔、友愛の精神なんて欠片も見当たらないわね。朝比奈さんがすごい勢いで顔をそらしているわよ。
「朝倉、何言ってんの?」
 平和の象徴がショック死しそうな、感情を押し殺した声。刺激としては十分だわ。よし、もう一押し………、
「あら、だって、話を聞いてると、長門さんとキョンくんって今二人きりみたいじゃない。で、確かキョンくんの妹さんって小学生だったと思うんだけど、あってるわよね?」
「………ええ、それが」
 平然と話を続けるあたし。完璧に感情を殺している涼宮さん。胃に穴が開きそうな顔の朝比奈さん。………三つ巴ね、一つが弱すぎるけど。
「だから、小学生が行ってもつまらないような場所で、携帯の電源を切って、二人きりでいるんだよね。だから、ひょっとしたらそういう関係なのかな? って思ったんだけど」
 穴だらけの推論、というか大嘘。でも、これは彼女も疑っている事のはずだ。そうでなければ生命体が何をしようが、彼女の力で携帯は繋がるはずなんだから。
「へー、団長様を差し置いて、二人きりで、そんな事を、ね………」
 フィッシュ! さらにもう一押し。
「ラブラブ、なのかな?」
 言葉の後、プツッという音が聞こえたような気がした。………ゴールってやつね。

 涼宮さんが払い戻しの列に並んでいた鶴屋さんのもとへ行き、言葉を交わした後、無言で券売機の方へ歩いていく。………あれ、なんで切符なんか買ってるの?
「じゃ、あたし一度帰るから」
 あっちゃー、やりすぎたか。
 朝比奈さんが引き止めたのだが、
「団員の不祥事は団長の責任よ! 大丈夫、ちょっとキョンを調………懲らしめてくるだけだから。鶴屋さんには後で合流しますって言っておいたわ。もう電車来るから、じゃ」
 そう言って涼宮さんは改札の向こう側へと戻っていった。………どうやらオウンゴールだったようね。

 任務失敗。………あれ、おかしいな? こういう時って悔しいものではないのだろうか?
「失敗しちゃったかな」
 呟いてみると、何故か嬉しそうな声が出た。
「ふえ、何の事ですか?」
 朝比奈さんがそう聞いてくる。………思念体からの次の命令がくるまで、とりあえず彼女をからかって遊ぶ事にしよう。




688:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:19:17 EBuWxKkD
 鶴屋さんの別荘がある土地について、別荘に向かう二人と別れる。
 さて、当たり前の事ではあるが、存在しない実家になど帰れるはずもない。あたしがする事無く、一人夕焼けに染まる田舎道を歩いていると、ようやく思念体からの命令がきた。
(為すべき事を為せ)
 また、それなの? 
 うんざりしながらも方法を考える。涼宮さんがいない以上、ターゲットは朝比奈さんよね。………あたしは、あの人を殺すのだろうか?
 たしかに思念体には何の問題もないはずだ。大人になった朝比奈さんの存在する可能性が消失するだけ。だから、後はあたしの問題で………。
 ………仕方無いと思う事にする。だってあたしには他に何も無いのだから。でも………、

 迷いながらも、見つからないよう山道を通って鶴屋さんの別荘に向かう。別荘が見えたところで、
「そいじゃあ、食材を狩りに行ってくるっさー!」
 と、別荘の中から鶴屋さんが元気良く飛び出していった。………法治国家日本ではまず手に入らないようなものが、肩にかかっていたように見えたのはあたしの気のせいよね、うん。
 まあ、細かい事は置いておいて、朝比奈さんが一人取り残されたというのは好都合よね。
 二階の西側の部屋に入る。どうやらここは寝室のようだ。廊下を見るとどうやら二階にはここを含め四部屋寝室があるらしい。………よし、決めたわ。
 彼女がこの部屋に入ってきたら、その時は迷わず殺す事にしよう。違う部屋に入ったら失敗だと報告して別の手段を考えよう。………臨機応変ってやつね、少し違うかもしれないけど。

 そう決めてすぐに階段を上ってくる音が聞こえ、無情にもあたしの待つ部屋のドアが開いた。………なんで四分の一を引くかなぁ、この人は。


 夕日に照らし出され赤く染まる朝比奈さん。それがまるで血に染まっているようで………、嫌だな、と思った。
「やっほ!」
 気分を吹き飛ばすように軽く手を上げて挨拶、もう既に賽は投げられたのだ。
「お久しぶり、………って言っても別れてからまだ30分もたってないんだけどね」
 笑顔で話を続ける。彼女を殺す方法を考えながら。
「ど、どうして朝倉さんがここにいるんですかぁ?」
 驚きで裏返りかける声、必死でもとに戻そうとする彼女に、
「うん、それはね………」
 あなたを殺すためよ、と伝えようとした時、
(最優先指令あり、現行動を一時中断せよ)
 思念体からの命令が、あたしの頭に響き渡った。




689:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:20:17 EBuWxKkD
 どうやら今回あたしは朝比奈さんと一緒に時間遡行をするようだ。もっと早くに伝えて欲しい。殺してからでは遅いじゃないか!
「ふむふむ、今回の時間遡行は二つですね。お昼の十二時二十二分と十六分、場所は前者があたし達の町の図書館で、後者が………えーと、ここは?」
「古泉一樹の部屋よ」
 あたし達が行うのは今回涼宮ハルヒの住む町で起こった、というか思念体が起こした、事件の解決を手伝う事だ。
「ふえー、古泉くんの部屋ですか。そんな場所で一体何をやるんですか?」
 彼女には遡行の理由が何一つ伝えられていないようだ。
 今回の事件中ずっと、古泉一樹は『機関』により軟禁されているのだが、この調子だとその事も知らないのだろう。
「ごめんなさいね。あたしにはそれを話す権限がないの」
 本当は話しても良いんだけど、朝比奈さんを見ると何故かいじめたくなっちゃうのよね。
「良いんですよー、こんな扱いには慣れていますから。………慣れたくはなかったですけれどね」
 床に『の』の字を書きながらそう呟く朝比奈さん。
「古泉一樹のところから行きましょう。そっちの方が早く終わるから。じゃ、お願いね」
 スルーすると、本気で泣きそうな顔をされた。ゾクゾクするわね。何かしら、これは?
 
 多分この事件が、あたしが今回凍結を解除された理由なのだろう。結局、彼女を殺す必要性はなくなったらしい。
「………また失敗しちゃったな」
 呟いた声はやっぱり何故か嬉しそうに響いた。




690:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:21:58 EBuWxKkD
 十二時十六分、古泉一樹の部屋。

 ………何もない部屋、ま、それもそうよね。
「古泉くん、こんな寂しい部屋に住んでいるんですかー」
 何も知らない朝比奈さんは何故かショックを受けているようだ。
「違うわよ。ここは『機関』が用意した、『古泉一樹という存在』のための部屋ね。涼宮さんにあわせて、いくらでも内装を変える事が出来るよう、こんなシンプルな造りになってるってわけ。古泉一樹本人の部屋は別の場所にあるわ」
 軟禁されているという事は伝えない事にする。手間がかかるのは少し嫌だ。
「そうなんですかー。部屋は人を現すって言いますし、ちょっと古泉くんの事を心配していたんですけど、それを聞いて安心しましたよー」
 急病で休んでいるはずなのに、病院でも本当の自分の部屋でもなく、こんな何もない『機関』の部屋にいるという不自然さに、何故この人は気付かないのだろうか?
「ところで朝倉さん。何であたしに抱きついているんですか?」
 ………無意識だったわ。
 とりあえず、そこにあなたがいるからよ、と心の中で返事をしながら逆に質問を投げかける事にする。

「どうして? 何もない部屋でも満足してる人はいるでしょう? 彼がそうではないとなんであなたは言いきれるの?」
 悩みながら、何とか答える朝比奈さん。
「えっと、あたしがそう言いきれるのは、………はて、何ででしょう? 多分、あたしがそうであって欲しいと思っているからですかね?」
 その返答に思わず笑ってしまった。お詫びに胸を揉む事にしよう。
「ところで朝倉さん。どうしてあたしの胸を揉んでいるんですか?」
 ………そこに胸があるからよ、とまたも心の中で返答し行為を続ける事にした。
「ひゃあうっ! ちょ、朝倉さん。そ、そこはダメですー」
 ………そこに○○があるからよ!
 不可視遮音シールドを張っているため邪魔が入る事はない。………では、いただきます。
「いやーーーーー!!!!!」
 シールド内に朝比奈さんの悲鳴が響き渡った。


 あたしがひとしきり楽しんだ後、古泉一樹が呟いた。
「僕が行ったところで何の力にもなれませんが、行くしかありませんか、………行けるかどうかすら分かりませんけどね」
 コートを着こんで外に飛び出そうとする、その額を、とんっ、と軽く押した。
「な………、ん………」
 倒れこむ古泉一樹。
「ちょ、朝倉さん! 何をしているんですか!!」
 慌てる朝比奈さん。………復活早いわね、もしかしたら襲われ慣れてるんじゃないかしら?
「何って、眠らせただけだけど」
 古泉一樹を抱き上げ、ベッドに戻す。規則正しい寝息が聞こえてきた。
「でも、どういう事なんですか? どうして古泉くんを眠らせる必要があったんですか?」
「特に意味はないわ。今回、彼がどう動こうが、どれだけ傷つこうが、あなた達がいうところの既定事項は何も変わらない」
 そう、これは既定事項には何の関わりもない。
「意味ないんですかっ! じゃあ、あたし達は何のためにここに来たんですか?」 
「そうね、昔の友人を助けようと頑張った人がいるっていう事じゃない」

 これは大人になった朝比奈さんの個人的なお願いなのだから。

 頭にクエスチョンマークを浮かべている彼女に少しだけヒントを出す。
「あたしにはよく分からない概念なんだけど、朝比奈さんは、彼の事、友人だと思ってる?」
「………はい」
 素直に答える彼女。彼女は本当にSOS団という集まりを大事に思っているのだろう。
「だから、それが答えよ」
 これ以上のヒントは禁則事項ってやつかしらね。
「多分、『機関』の人達も同じような事を思ったんじゃないかしら」
 彼が大事だから、彼を傷つけないように、この部屋に軟禁したのだろう。
 その行動が正しいかどうかなんてのは、人間じゃないあたしには分からない。ただ、
「………彼は、恵まれてる、そういう事よ」
 うらやましいな、そう思った。




691:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:23:32 EBuWxKkD
 次の指定時間、十二時二十二分、図書館前、長門さんが無数の『槍』に串刺しにされていた。

 いや、目的のためとはいえこれはやりすぎなんじゃないだろうか? なんか長門さん、自分の存在情報を攻性因子に変えてぶつけようとしてるんだけど。………って、まだ攻撃続ける気なの。
 無数の『槍』が長門さんに発射されそうになる。長門さんが自己存在を解体しようとした瞬間、
 ………朝比奈さんが血まみれの長門さんの小さな体を、かばうように抱きしめた。
 ダメージが大きかったせいか、あたし達が来ていた事には気付いていなかったんだろう。抱きつかれた長門さんの動きが停止する。
 『槍』が遠慮なく発射された。………だからやり過ぎだって。

 慌てて二人に走り寄りながら、シールドを張り全ての『槍』を吹き飛ばす。
「あのねぇ! 余計な動き、しないで欲しいんだけどな!」
 朝比奈さんにそう言う。
 本当は思念体が余計な事をしたせいでこうなってるんだけど………、黙ってたら分からないわよね、うん。
「ふみぃ、ごめんなさい。………それと、ありがとうございます」
 ………うう、少しだけ罪悪感。
「朝倉…涼子」
 長門さんが彼女にしては珍しく驚いたようにそう呟いた。
「お久しぶり、そしてお休みなさい長門さん。大丈夫よ、あなたが起きる頃には全てが終わっているわ」
 そう言って彼女の額を押し、強制待機モードへ移行させる。………長話をして真相がばれちゃったら後が怖いからね。まあ、あたしに後があれば、の話だけど。
「な、長門しゃん、長門しゃーん、大丈夫でしゅかー?」
「強制待機モードになっただけよ。周りの情報が断片的にしか捉えられなくなるし、前後の記憶がバラバラなうえ曖昧なものになっちゃうけれど、彼女の存在情報、それ自体には特に問題はないわ」
 パニック状態の朝比奈さんにそう説明した。

 思念体に長門さんを、彼女の『エラー』を傷つけようという気はないだろう。思念体からの情報によると、今回の事件は思念体が『長門有希』と『喜緑江美里』の感情、要するに『エラー』そのものを観測、解析しようとして起こしたものなのだから。
 まあ、それに未来人や『機関』の都合が絡み合って複雑になっちゃたらしいんだけどね。
 普通の人間よりも、感情がもとからゼロであるあたし達インターフェイスの方が解析しやすいという事だろう。そのための舞台は全て思念体や未来人、それに『機関』が用意した。


 ふと、気付いた事がある。
(結局、今回の事件では涼宮さんは何もやってないのね)
 『機関』が今回、基本的に静観しているのはそのせいなのだろう。

 いつも世界の中心にいる彼女、でも今回………、
   ………今回の事件では、『涼宮ハルヒ』は完璧に脇役なのだ。


「じゃ、もとの時間に帰りましょうか」
「………はい?」
 疑問詞をうかべる朝比奈さん。無理もない。
 長門さんは『槍』に貫かれて気を失ったまま、そしてその『槍』を放った何者かは、あたしが張ったシールドに、今も攻撃を加え続けている。真相を知らない朝比奈さんにとっては、この状況はそう思えるのだろう。だから、
「な、何も解決していないような気がするんですけどー?」
 という疑問を持っても仕方ない事だ。
「あたし達の役目はこれでおしまい。後は『彼女』に任せましょう」
 朝比奈さんには悪いけど、あたし達の仕事は『喜緑絵美里』が来るまでの時間稼ぎ、それだけなのよね。

「………あたし達は何のために時間遡行したんですか?」
 朝比奈さんがあたしに聞いてくる。教えるわけにはいかない。この図書館前での出来事は、未来人にとっては本当の意味で禁則事項だ。大人になった彼女だって知っているかどうか怪しい。
 彼女の質問には答えず、ただ後ろに視線をやる。
 将来、未来人に必須の技術を開発するきっかけとなる絵を描くことになる少年が、呆然とこちらを見つめていた。
 彼の一生が情報として流れ込んでくる。全てを失ったはずの彼は最期に、良い人生だった、と笑って死んだ。
「どうして、あなたは、そんな風に思えるの?」
 思わずそう呟いた次の瞬間、あたし達は強制的にもとの時間に戻されていた。




692:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:25:28 EBuWxKkD
 鶴屋さんの別荘に過去から強制的に戻されたあたしは、先程の少年について考えていた。
 彼が、先程の戦闘にインスピレーションを受けて描いた絵は、ある技術者に影響を与え、未来世界になくてはならない技術の礎となる。
 ただし、未来世界においてその絵を描いたとされているのは彼ではない。

 ………盗作。

 名誉もお金も社会的地位も全てが彼ではなくその盗作者の物となった。
 その盗作者は未来世界において要人となり、その後、子孫代々要人であり続けている。
 おそらく、今回の指令自体、歴史に残らず消える事になるだろう。
 彼は、歴史に名を残すはずだった彼は、何者にもなれず消えていくのだ。
(あたしと、同じはず、………なのに、)
 彼は最期に笑うのだ。あたしにはそれが理解できない。………理解できないあたしが、なんだか、悲しい。

「ちょ、またエッチな事ですか?」
 気付いたら、朝比奈さんに抱きついていた。
 何でかは分からないけれど、離れたくない。
「こうしてるだけでいいから。………駄目?」
 理由は分からない。ただ、そう思った。
「何であたしを抱きしめる必要があるんですかー」
 分からない、と素直に答える。
 朝比奈さんはぎゅっと抱きしめ返してくれた。暖かいな、そう感じた。


 一階から鶴屋さんが朝比奈さんを呼ぶまで、彼女の暖かさを感じていた。
   ………生まれて初めて、だと思う。
     ………『暖かさ』を、感じていた。


 朝比奈さんの服に付いていた長門さんの血を取り除いた後、じゃ、またねと言い、窓から出る。扉の前に山積みになっていた謎肉を見なかった事にしながら、一人、山道を歩いた。

(またね、か)
 自分で言っておいてなんだが、またはないと思う。前科もある事だし、役目が終わったあたしはまた凍結されるのだろう。
 嫌だな、と思う。何でそう思うのか、理解できない自分が更に嫌になる。
 情報統合思念体からの命令が来た。

(為すべき事を為せ)

 思考が止まる。どうやらあたしの役目はまだ終わってないらしい。
(為すべき事を為せ)
 何の感情も感じさせない思念が、あたしの頭の中で鳴り響く。
 何故だろう、頭が上手く回転しない。
 えーと、あたしの為すべき事は涼宮ハルヒを刺激し、情報爆発を引き出させる事よね。
 どうやって、刺激しようとしてたんだっけ?
 何故か結論が出てこない。

 ………嘘だ。

 本当は結論を認めたくないだけ。

「朝比奈みくるを………殺すの?」

 自分の声じゃないみたいに響いたその声に、答えてくれる人はいなかった。




693:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:26:58 EBuWxKkD
 来た道を戻りながら朝比奈みくるを殺す方法を考える。
 ………いい加減あたしだって、自分が彼女を殺したくないって事くらい気付いてるわ。
 でもしょうがないじゃない。このままだとあたしは何も無いまま消えちゃうのよ。

 自分が消える事を考えると、何だか良く分からない感情がわきあがってくる。
 分からない、けれど一つだけ確かな事がある。
 あたしは、あの少年のようにはなれない。
 一度、長門さんに消されかけた時の事は記憶領域には残っていない。いや、残ってはいるのだが、何故か思い出せない。理由は分からないが、どうやらプロテクトがかけられているようだ。
 思い出せない、けれど、たとえ顔は笑っていたのだとしても、きっと心は泣いていたのだろう。

 結局良い方法を思いつかなかったあたしは、『彼』を殺そうとした時と同じようにする事にした。
 二階西側の朝比奈みくるの部屋に入り、情報制御空間を形成する。
 外はもう真っ暗だったが、『彼』の時と同じように、あたりの景色を夕焼けに。『彼』とした会話を思い出し、記憶領域に刻み込む。
 ………もし心が止まったとしても、体が止まらないように。


 ………ドアを開けた朝比奈みくるを、真っ赤な夕日が照らし出した。

 あたしは不可視遮音シールドを張り、ドアのそばで隠れている。
「あれ? あたし、確かさっきカーテン閉めましたよね?」
 間抜けな声をあげながらカーテンに近寄る朝比奈みくる。………なんで、気付かないの! 外はもう真っ暗でしょう!
「遅いですよ」
 ………声。それと同時にあたしの体が動き、ドアが閉じられる。
 始まりのゴングがなった。きっとあたしはもう止まれない。
「いらっしゃい」
 ………そして、あたしは殺人鬼である『朝倉涼子』になった。………なってしまった。

「あ、朝倉さん………」
 そう言ってくる朝比奈みくるに対し感情の無い声で質問する。
「意外、ですか?」
 言葉遣いも敬語に戻している。
 だってあたしは殺人鬼、『朝倉涼子』なんだから。
「な、何の用ですか!」
 恐怖をごまかすためか精一杯の虚勢を張る朝比奈みくる。そんな彼女に最期に一つだけプレゼントを贈る事にする。冥土の土産というやつだ。

「この別荘に出るっていう幽霊がいますよね。それが、先程行った時間遡行の目的に関するヒントです」
 考え込む朝比奈みくる。

 ………なんで逃げないの!

 ………うるさい、あたし!

 あたしの心はもうバラバラで、どうやらここが限界のようだ。

「えっと、良く分かんないんですけど、ありがとうございます」
 朝比奈みくるのお礼を合図に、体に支配権を譲り渡した。




694:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:28:23 EBuWxKkD
「いえ、あたしもお願いがありますから。………あ、でも、その前にちょっと聞きたい事があるんですけど、いいですか?」
 口が自動的に動き、何の意味もない言葉を紡ぐ。
「ふえ? いいですけど、あたしに分かる事を聞いてくださいね」
 律儀に答える朝比奈みくる。残念ね。本当はもう、あなたの意見なんて聞いてないのよ。
「人間はですね、よく『やらなくて後悔するよりも、やって後悔した方がいい』って言いますよね。これ、どう思います?」
「そ、そのままの意味じゃあないでしょうか」
 やはり、よく分からない事だったらしい。当然だろう、あたしにだって分からないんだから。

「じゃあ、たとえ話なんですけど、やる必要性は無いって分かっているんですけど、他にやることが無い人って、どうなんでしょう?」
「えーと、日本の政治のお話ですか?」
「やっても何一つ変わりはしない。100%後悔する事は分かっている。でも、他にはもう何も無い。そんな状況です」
 おそらく必死に考えて出したであろう答えを無視して話を進める。
「上の方にいる人はただ動けと言うだけで、何の方向性も示しません。それどころか末端の混乱を観察しているような節さえあります」
 朝比奈みくるは逃げようとしない。いや、おそらくは自分が危機的状況にあると認識してすらいないのだろう。

 ………朝比奈みくるは、逃げてくれない。

「ひょっとしたら最初からだったのかもしれません。ずっと気付かない振りをしていたのかもしれません。………ただ、今言える事は一つ、あたしには、他にはもう何も無いんです、だから………」
 本当は、あなたを傷つけたくはない。だけれども、あたしはもう止まれない。
 ………だって、止まり方が、分からない。

「あなたを殺して涼宮ハルヒの出方を見ます」


 あたしの言葉に腰を抜かし、その場にへたり込む朝比奈みくる。彼女の頭を貫こうとしたナイフは何もない空間を切り裂いた。そのままの勢いで彼女を飛び越え、窓のそばに降り立つ。………ドアの封鎖を忘れていた。このままだと逃げられるかもしれない。
「ふえええええーーー!!!」
 座り込んだままパニック状態の朝比奈みくる。………空気を読め! あたしは逃げて欲しいのよ!
「あら、逃げないんですか?」
 促すために質問をする。
「こ、腰が抜けてて動けましぇーん!」
 情けなさに思わず涙が出そうになった。

「………そうですか」
 言って、指を鳴らす。ドアを壁に変え、封鎖完了。
「脱出路は封鎖しました。これでもう、あなたに逃げ場はありません」
 本当に追い詰められているのはあたしの方だ。やらなきゃいけない事だけど、あたしは失敗したいのに。………殺したくなんて、ないのに。
「あきらめるんですか?」
 体は笑顔をうかべているけれど、心はずっと泣いている。
「一応ですけれど、こうしておきますね」
 朝比奈みくるの体を動けないようにする。もう、本当に止まる事は出来ない。
 こんな追い詰められた状況になって、いや、だからこそなのかもしれないが、プロテクトが外れ、あたしは以前長門さんに消された時の事を思い出した。

 ………思い出してしまった。




695:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:30:15 EBuWxKkD
「あなたが死ねば、必ず涼宮ハルヒは何らかのアクションを起こします。多分、大きな情報爆発が観測できるはずですよ」
 体は無感情な、以前言った事をそのまま繰り返しているだけの棒読みのセリフを発している。
 でも、あたしの心は思い出された記憶に衝撃を受けていた。

 消される瞬間、あたしは確かに安堵していた。
 誰も傷つけずにすんだ、と安心し、そして笑顔をうかべていた。
 誰も傷つけなかった自分に満足して、笑って最期を迎えたのだ。
 それはまるで、あの絵描きの少年のようで………

 それなのに、あたしは今何をやってるの!

 体は止まらない。止まってくれない。仕方ないじゃない、あたしは人間じゃないんだから。バラバラになっちゃった心と体を、再度一致させる方法なんて知らないんだから。


「じゃあ、死んでください」
(やだよぉ! 殺さないでよ!! 誰か、誰かあたしを止めてぇ!!!)

 心が泣き叫ぶのも聞かずに、体がナイフを振り下ろそうとしたその時、

「みくるー、なんっかさっきものげっつい叫び声が聞こえてたけど、大丈夫かいっ!」
 鶴屋さんが、ごく普通に『壁』を開けて、登場した。


「「えっ!」」
「にょろっ!」

 三人同時に声を上げて、そして沈黙。………あれ、いつの間にか情報制御空間がなくなってるわ。………失敗、できたのかな?
「えっと、朝倉涼子ちゃんだったっけかな? そんなもの持ってると危ないよっ。早いとこしまうっさ」
 最初に喋りだしたのは鶴屋さんだった。
「っ!」
 あたしの心はもうやめてと叫んでいる。それでも体は部屋の更に奥へと飛び下がり、情報制御を行う。
「………? どしたのかなっ?」
 鶴屋さんには効果が無いようだ。
「そんな、どうして効かないの?」
 心は別の意味でパニックに陥り、体は鶴屋さんにナイフを投げつける。
「にょろり!」
 ナイフは鶴屋さんの手前で方向転換、そのまま床に突き刺さった。………うそーん。
 呆然という状態で、心と体がやっと一致した。

「ん! キミはやっちゃいけない事をやったよっ!」
 鶴屋さんはそんな状態のあたしに歩み寄り、そのまま、
「めっ!」
 と、かわいらしく怒って、

 ドガスッ!!!
 と、グーでおもいっきり殴ってきた。




696:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:31:59 EBuWxKkD
「ちょ、鶴屋さん。助けてもらってなんなんですけど、ちょっとやり過ぎなんじゃあ………」
 諌めようとする朝比奈さんに、鶴屋さんが言い返す。
「みくるっ! いいかいっ、うっとこのおやっさんが言ってたのさ! たとえ人様の子供であろうとも、他人を本っ気で傷つけようとするよーな子には、こっちも全力で怒らないといけないってね!」
 二人が言い争っている間、あたしは殴られた頬を押さえ、俯き、座り込んでいた。
 良かった、と思う。でも、心の中にずっとよく分からない別の感情があるのだ。あたしをここまで暴走させた、その感情は全然消えてなんかない。
 それが何なのか理解できないのは、あたしが人間じゃないからなのだろうか? ………あたしが道具でしかないからなのだろうか?

「あたしはキミが誰なのかは知んないよっ! 何となくふっつーの人間じゃあないなってのは分かっけど、そんだけ! キミが何なのかは分かんないよ! でもそんな事はどーでもいいのさっ!」
 鶴屋さんがあたしに向けて本気の言葉を伝えてくる。
「当たり前の事かもしれないけどさっ、本当に当たり前の事だから、あたしは大声で言うよっ! キミんとこの親御さんは今までキミに何も言わなかったのかもしんない。それどころか、ひょっとしたらキミは、今まで誰にもなーんも言われなかったのかもしんない。
だったら、だからこそっ、あたしが、今、キミに、言うよっ!」
 鶴屋さんはあたしの隣に座り、あたしの目を真っ直ぐ見て、
「キミがどんな存在であったとしてもさっ、どんな境遇であったとしてもさっ、それはキミが誰かを傷つけて良い理由にはならないんだよっ!」
 ………あたしの今までを否定した。
「キミのやった事は、間違ってるよっ!」

 ………はっきりと、『朝倉涼子』を否定した。


 分かってる! 違う、分かってた! 自分が間違えてるって事なんて最初から分かってた! でも、誰もそう言ってくれなかったから。間違ってるって言ってくれなかったから。………あたしは一人だったから! あたしは一人だったんだ!
 心の中はぐじゃぐじゃで、何を言ったらいいのかなんて分からなくて、でも何か言わなきゃいけないような気がして、何故か朝比奈さんの暖かさを思い出して、自分がそれを消そうとしたんだと実感して、
「ごめ………な……い」
 涙と共に、そんな言葉が出てきた。
「ごめ…なさい」
 木の床にポツリ、ポツリという音と共に黒いシミが広がっていく。あたしの涙が床を黒く染めていく。それがまるで生きているだけで周囲に迷惑をかけている自分を表しているようで、
「ごめん…なさい」
 それでもまだ消えたくないと思う自分が申し訳なくて、そう思う自分の感情が理解できなくて、あたしは泣きながら、ただただ謝罪の言葉を繰り返すだけだった。

 ん、と声をかけ、鶴屋さんがそんなあたしを抱きしめてきた。
 暖かいな、と思った瞬間、
「う、うあ、うああああーーー!!!」
 よく分からない感情が爆発し、泣き声なのか叫び声なのかすら分からない声をあげながら、あたしは鶴屋さんの胸に飛び込んだ。
 しばらくの間、彼女の胸で泣き続けた。

 そうか、と思う。泣きながら、実感する。
 『暖かさ』に触れながら、やっとあたしは理解した。
 あたしを暴走させた感情の正体、あたしが生きたいと思う理由。

 あたしはずっと………、
   ずっとあたしは………、
      ………あたしは『寂し』かったんだ。




697:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:33:59 EBuWxKkD
「ん、落ち着いたかいっ」
 泣き止んだあたしに鶴屋さんがそう声をかけてきた。朝比奈さんは鶴屋さんに、ここはあたしに任せるっさ、と言われて席を外している
「はい、えっと、あの、………」
 ………なんか、言いたい事が多すぎて何も言葉が出てこないわね。
「………ありがとう」
 結局、そんな言葉しか出てこなかった。

「気にする事ないっさ。あたしだけの力じゃなかったしねっ! 何となくだけど」
 確かに先程の力は彼女のものではない。彼女は普通の人間だ。情報処理能力なんて持っているはずがない。では、どうしてあたしの力が効かなかったのかというと、
(情報統合思念体よね)
 どうして気付かなかったのだろう。『長門有希』と『喜緑江美里』が観測対象であるならば、自分だって、『朝倉涼子』だって観測対象になり得るではないか。あたしの記憶領域にプロテクトをかけたのも思念体だろう。………ふざけるな、と思う。
 彼等の目的はあくまで観測。だから朝比奈さんに危害が及ばないよう、涼宮さんに刺激を与えないよう、最初から手を回していたに違いない。
 鶴屋さんの力もその一つだろう。でも、
「それでもあなたは来てくれましたから、居てくれましたから。だから、ありがとう、ですよ」
 素直な気持ちを言葉に出した。
「いやー、照れるにょろよー」
 鶴屋さんはひとしきり体をくねらせた後、あたしを見て、意地悪そうにこう言った。
「ところでさっ! もう一人ほど素直な気持ちを伝えたい人がいるんじゃないっかな!」

 何故か朝比奈さんの顔がうかんできた。頭を振って打ち消す。今うかんできたこの感情は、同じ女性に抱くには少しまずいんじゃないだろうか?
「鳥の赤ちゃんはねっ、卵から孵って初めて温もりをくれたものに恋をするのさっ!」
 いろいろ間違えてるわよ、それ!
「大丈夫! あたしは応援するよっ!」
 人の話聞いてないわよ、この人!
「いや、だって女の子同士っていろいろまずくないですか?」
「んっふっふーん。あたしは女の子だなんていった覚えはないんだけどっねー」
 ………ハメられたわ。ていうかハマるなよ、あたし!

「うーん、まどろっこしいねっ! ………ていっ!」
「ふひゃあ!」
 ベッドの上に放り投げられるあたし。え、え、何? 何が起こるの?
「ふっふっふ。男だとか女だとかそんなどうでもいい事、考えられなくしてやるのさっ!」
 何その悪役スマイル! や、ちょっと待って、すり足で近寄ってこないでー!!!
「めがっさーーーー!!!」
 ………ル、ルパンダイブ!!!
 そのまま押し倒されるあたし。

 や、あ、鶴屋さん。服脱がさないで! ちょ、どこ触って、ふわっ! そ、そうだ情報操作………なんでまだ効果がないのよー、思念体のバカー! きゃうん。だ、だから、そこ、ダメだったら………。うわーん、もう、許してよー。あ、そこ、そこ、ダメ、ひうっ、や、あ、
や………、あーーーーーー!!!!!!!

 ………シーツお化けが、できました。




698:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:35:39 EBuWxKkD
 あたしがいろいろ奪われたショックでシーツに包まって泣いていると、ノックの音がした。どうやら、朝比奈さんが戻ってきたらしいわね。
 鶴屋さんがドアを開け、朝比奈さんを迎え入れる。あたしが何をされたかなんて床一面に広がっている二人分の服を見れば想像つくだろうに、おずおずと部屋に入ってくる朝比奈さん。
 まるでライオンの口の中に自ら入っていくウサギのようね。どうしてひどい目にあうと分かりきってるのに、わざわざ部屋の中に入ってくるのかしら?

「あの、どうですか?」
 声と共に、シーツお化けの前にコップが差し出される。………えっと、もしかして、あたしのために入ってきたの?
 顔が真っ赤になる。それを見られたくなかったのでシーツをかぶったまま、腕だけを伸ばしてコップを受け取った。
 お茶をすする。味なんて正直よく分からなかったけど、美味しいと思った。

「あった、かいな………」
 自分の中から勝手に言葉が出てくる。
「冷たいままで、良かった、のに………」
 別に誰かに伝えようと喋っているわけじゃない、でも誰かに聞いていて欲しい言葉。
 朝比奈さんはただ黙って聞いていてくれる。
「ごめ………なさい」
 そんな自分勝手な言葉を喋る自分が本当に情けなくて、申し訳なくて、思わず謝罪の言葉が出てきた。
 後ろから朝比奈さんがシーツごとぎゅっと抱きしめてくれる。
 ………シーツを通して彼女の温もりが伝わってきた。

 暖かいな、と思う。そして実感する。
(この暖かさ、なのよね)
 男だとか女だとかは関係ないわね。素直に認める事にするわ。
 鶴屋さんの言葉じゃないけれど、この暖かさに触れた時に、生まれて初めて暖かさというものに触れた時に、あたしは彼女を選んだのだ。
 もっと感じたいと思い、振り返って抱きしめ返そうとしたその時、

「にょ、ろーん!」 
 ………鶴屋さんが暴走した。空気読んでよ、お願いだから!


「やー、めんごめんごっ! ついつい押さえがきかなくなってさっ!」
 何とか朝比奈さんの純潔を守り通したあたしは、鶴屋さんを絶対零度の瞳でにらみつけた。
「にょろー、………ごめんなさい」
 しゅんとする鶴屋さん。なんだかさっきまでとのギャップが大きくて面白いわ。
「ところで、朝倉さん。何でさっきからずっとあたしにくっついているんですか?」
 ………無意識だったわ。でも離れたくないわね。
「………ダメ?」
 上目遣いでそう質問。………本当にダメなら離れるけど。
 朝比奈さんは、うー、なんだか変な気分です、と言いながら抱きしめ返してくれた。

「あっはははっ! あたしがお父さん役で、みくるはお母さん役なんだよっ!」
 そんなあたし達を見て大笑いする鶴屋さん。
「鶴屋さん、復活早いですね。………というか、それってどういう意味ですか」
「言葉通りの意味さっ!」
 ………もしそうなら、とても嬉しいな。そう思い、期待を込めて質問する。
「朝倉みくる、って良い響きだと思わない?」
「………あー、あー、聞こえましぇーん」
 ………いぢわる。




699:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:36:53 EBuWxKkD
 その後、お風呂場で、
「めがっさ、にょ、ろーーーん!!!」
「ちょ、いきなり再暴走でしゅか!」
「あたしも、にょ、ろーーーん!!!」
「ひょえー、いつの間にか二対一になってましゅよー!」
「「ふっふっふ」」
「いやーーーーー!?!?!?!?!」
 などと騒いでいたらいつの間にか、かなり遅い時間になっていた。

 燃えつきかけている朝比奈さんと、まだまだ元気いっぱいの鶴屋さんに見送られ、別荘を後にする。
 思念体からの命令はまだ無いけど、この二人をこれ以上巻き込むわけには行かないわよね。

 大丈夫かいっ、という鶴屋さんの問いに笑顔で、はい、と答える。
 保証なんて何も無いけれど、でも大丈夫! あなた達にいっぱい暖かさをもらったから。たとえ再凍結されたとしても、完全に消失させられたとしても、暖かいものがここにあるから。
 それだけで、きっとあたしは、笑顔で最期を迎えられる。………そう、思う。


 鶴屋さんの別荘を出て人気の無い道を行く。
 与えられた命令に対する結果だけで言うと、今回もあたしは失敗したのだろう。でも、それで良い、と思った。………それで良かった、と思った。

「こんにちは。良い夜ですね」
 肌に当たる夜風を心地良いと感じながら歩いていると、いきなり誰かがあたしに話しかけてきた。こんな時間にこんな辺鄙な場所で、いったい誰が、

「あらあら、わたしの事、お忘れですか?」

「え、何で………」
 穏やかな物腰、感情の読めない笑顔、………喜緑江美里がそこにいた。




700:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:38:25 EBuWxKkD
「報告を、求めます」
 喜緑さんは事務的な口調でそう切り出してきた。どうして彼女がここに来たのかは分からない。けれど、
「………失敗したわ」
 そう言いながら、覚悟を決める。
「そうですか、ではもう一度言います。為すべき事を為しなさい」
 為すべき事? またあたしに彼女達を傷つけさせようというのか! あたしの感情が動くからという、たったそれだけの自分勝手な理由で!

「………イヤ」
 言う。感じる。思いは言葉となり、止まらない。
「イヤだ! イヤなの! あたしはこんな事なんてやりたくない。本当は誰も傷つけたくない。もう遅いかもしれないけど、あたしにこんな事いう資格なんかないのかもしれないけれど、でも気付いちゃったんだから。あたしは、『私達』は間違えてるって、
気付いちゃったんだから。だからあたしはもう誰も殺さない。………殺せない」
 ただわきあがる感情をぶつけただけの、バラバラな言葉の群れ。いつの間にか、またあたしは泣いていた。
 決めたの! 守りたいのよ! 三年ちょっとしか生きてないあたしだけど、彼女達の暖かさは、確かに嬉しかったんだから!

 喜緑さんはあたしの叫びを聞いた後、空を見上げてこう言った。
「なるほど………面白いですね」
 ………え?
「長門さんは『私達』をまったく考えずに、わたしは『私達』である事に誇りを持ち、そしてあなたは『私達』を否定する。それでいて三人とも同じように『人間』を求めている。………なるほど、『私達』も結構面白いのかもしれません」
「………」
 彼女は何が言いたいのかしら?
「では、最後のタネ明かし、と参りましょうか」
 そう言って喜緑さんは話しだした。


「今回の事件、未来人は彼等の未来に必要な技術を発明するために、思念体は感情というものの観測のために、『機関』はそれらの監視のために動いていました。ここまでは良いですね?」
 コクン、と頷く。
「では、質問です。感情を観測するためだけだというのに、思念体は何故こんな回りくどい方法を取る必要があったのでしょうか?」
「えっと、もともとゼロから作られた存在であるあたし達インターフェイスのほうが、普通の人間と比べてデータの比較がしやすいからじゃないのかな」
「50点ですねー」
 無いはずの眼鏡を持ち上げるふりをしながら、そう答える喜緑さん。
 ………もしかしてこの人、楽しんでるんじゃないだろうか?

「正確にはインターフェイスの中で、最も人と接した期間が短い個体が、最も良いデータが取れるという事ですよ」
 ………えっと、それは………、
「新しくインターフェイスを作っても良かったのですが、思念体自身にも感情という詳細不明な情報因子の影響が出ていますので、データとしては疑問が残るんですよね」
 ………もしかして、
「そこで調べてみたら凍結され、そしてそのおかげであの終わらない夏を経験せずにすんだ、一つの個体が出てきたんですよ」
 ………本命は、あたし?
 予想外の内容に頭が追いつかないあたし。でも、喜緑さんが次に言った事はもっとあたしを混乱させるものだった。

「まあ、これは表向きの理由なんですけどね」




701:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:40:06 EBuWxKkD
 ふえーん、分かりましぇんよー、と朝比奈さんの真似をしてみる。………よし、大丈夫ね。まだあたしには余裕があるわ。
「さっき、言いましたよね。思念体にも感情の影響が出ているって」
 そうらしい。あたしにはよく分からない事だけど。
「でも、思念体は今まで感情に任せて動いた、という経験がないんです。動くには理由が必要だったんですよ。12月の事件でも、長門さんを消したくないという感情はありましたが、『彼』に理由を作ってもらわなかったらそのまま消していたでしょうしね」
 確かにあんな存在が感情に任せて動いていたら今頃世界は大変よね。101人長門さん大行進………、リアルにありそうで恐いわ。
「目的のために手段を選んだのではありません。手段のために目的を作り上げたのですよ」
 目的はさっき言ってた感情の観察よね。じゃあ手段って………。

「思念体が本当は何を考えたのか、なんて事は一端末に過ぎないわたしには、正確には分かりません。ただ、単純に事実だけを述べますと………」
 次の言葉は完璧に予想外だった。


「思念体は今回、凍結されている一人の女の子のために、この事件を起こしました」


「ふえ?」
 え? 何? ここ笑うとこ?
「………残念ですが、事実です」
 笑顔をたやさない喜緑さん。心なしか疲れた笑顔に見えるのは気のせいなのかな?
「はあーーー」
 あ、ため息ついた。まあ気持ちは分かるけど。でも、だったら、
「今回の事件はあたしのせい、なの?」
 『槍』に全身を貫かれている長門さんや、苦しそうな表情の古泉一樹を思い出す。鶴屋さんや朝比奈さんだけじゃなかったのね。あたしはどれだけ周りに迷惑をかければいいのかしら。ちょっと、落ち込むわね。

「そうですね。まあ、死人は一応ゼロでしたけど、あなたのせいでとても大勢の人が被害にあったという事は事実です。でも、大丈夫ですよ」
 喜緑さんが天使のような声で慰めてくれる。
「責任なんてものは全部思念体に押し付ければいいんです。それに、黙っていたら誰もあなたの責任だ、なんて分かりませんよ」
 ………黒っ! 喜緑さんが悪魔のような声で誘惑してくる。
「まあ、冗談はこのくらいにして」
 嘘だっ! 今のは絶対本気だった!
「うふふふふふふふ」
「うん、冗談だったわよね!」 
 ………仕方ないでしょ、世の中には絶対に逆らえない場面っていうのがあるのよ。

 喜緑さんは変わらない笑顔で、だけど少し嬉しそうにこう言った。
「少なくともわたしは今回の事件があって良かったと思っています。だからあなたが迷惑をかけた人に謝りに行く、というのでしたらわたしもお付き合いしますよ」
 ………ありがとう、と思う。思ったらあたしはまた泣いてしまった。
 喜緑さんがそんなあたしを抱きしめてくれる。
 あたしは彼女の暖かさを感じながらふと思った。

 ………彼女もまた暖かい誰かに出会えたのだろうか、と。




702:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:42:00 EBuWxKkD
「それでは情報統合思念体からの命令です」
 あたしが泣き止んだ後、喜緑さんは少しあたしから距離をとり、真面目な顔になった。
 多分これが、インターフェイスとして誇りを持っている、という彼女の顔なのだろう。
 あたしには真似できそうにないわね。まあ、あたしはあたしだって事かしらね。
 そしてそんな彼女から、思念体の命令を聞いた時、あたしはまた泣きそうになった。

「為したい事を為せ、我々はそれを観測しよう」

 言葉を失う。一体どれだけの存在にあたしは助けられているのだろう。
 泣く前に感謝しようと思う。
 思念体だけでなく、あたしと関わってくれた全ての存在に、感謝を。

 喜緑さんはそんなあたしを見て、深く頷いた後、
「意訳しますと『パパ見守ってるでちゅよ、涼子たーーん』という事になりますね」
 ………うん、台無しだわ。
「伝わりましたか?」
 ええ、思念体は明らかにメッセンジャーの選任を間違えたな、という事が伝わってきたわね。
「………泣かないんですか?」
 一発で泣き止みましたが、何か?
「残念です」
 奇遇ね、あたしもとっても残念だわ。

「それはそれとして、わたしからも一つ………」
 喜緑さんは何故か意地悪そうな笑みでこう言った。
「ようこそ、朝倉涼子さん。この世界は、人間というものはなかなかに面白いですよ」
 それは、………同感かな。

 では、連れを待たせていますので、と言って喜緑さんはその場から消えた。
 あたしも振り返り、来た道を引き返す事にする。

 ………為したい事を為すために。


 鶴屋さんの別荘へと戻ってきた。
 ………えっと、それで、どうしよっか? 
 とりあえず二人に会いたいな、と思って戻ってきたのだが、それ以外の事を何も考えていない自分に気付く。………普通に入ったんじゃあつまらないわよね。
 そんな考えが浮かんできた自分に苦笑する。これじゃまるで涼宮さんみたいじゃない。ほんの二ヶ月ほどの学園生活で、しかも全く話をしてくれなかったというのに、彼女があたしに与えた影響は大きいって事かしら。
 ………まあ、そんな彼女も今回は脇役ぽいっけど。
 とりあえず窓から潜入してベッドにでも潜り込んでおこう。そう決めて、使われていない二階東側の寝室から不法侵入することにした。

 窓を開けたところで、今まさに部屋のドアを開けたところの朝比奈さんと目が合った。




703:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:44:09 EBuWxKkD
「「………」」
 沈黙の中で考える。彼女がどうしてここにいるのかしら?
 
1. 彼女が部屋を間違えた。
   ………ありえる、正解候補に入れておこう。
2. あたしが部屋を間違えた。
   ………あたしは朝比奈さんじゃない、却下。
3. 彼女が部屋を変えた。
   ………面白くない、却下。
4. デステニー
   ………なんか良い響きだわ。

「えっと、どうしてここに?」
「………運命、かな」
 脳裏に浮かぶ見慣れない制服を着たあたしと朝比奈さん。あたりに咲き乱れる一面の………、
「だから、なんで朝倉さんがここにいるんですか?」
「………お姉さまって呼んでもいいよね」
 そして数々の障害を乗り越え(ボスキャラは喜緑さん)、二人はついに………、
 ふと気付くと、おね………朝比奈さんがドン引きだった。
「ごめんなさい。段階を飛ばしすぎたわ」
 えっと、とりあえず今は………

「その、ね、」
 どうしよう、何で? ちょっとお願いするだけなのにどうしてこんなに恥ずかしいのよ! うわー、あたし多分今顔真っ赤だ。
 ひょっとしたらこれがパニックというやつなんだろうか? ………常にこの状態の朝比奈さんはひょっとしたらすごい人なのかもしれない。
 朝比奈さんの顔をちらっと見ては顔が真っ赤になり落ち着くためにうつむく、という仕草を繰り返すあたし。でも、頑張って言わないと!
「今日、同じベッドで寝ちゃ、ダメ?」
 頑張ったつもりだけど、出た声はすごくか細かった。朝比奈さんの服の袖を軽くつかむ。………ダメ、なのかなぁ。

 断られたら、あたしにはどうしようも無い。だから、
「へ、変な事したら、怒りますからね」
 その答えを聞いて、嬉しい、素直にそう思った。


 二人でベッドに入った瞬間、我慢できなくなって朝比奈さんに後ろからぎゅっと抱きつく。はー、やっぱりあったかいよー。
「い、いきなりでしゅか!」
 否定の言葉。頭が真っ白になった。
「ち、違うの! その、何処かに触れてないと………、怖くて。………その、ごめんなさい」
 泣きそうだ。何でだろう、すごく弱くなってるあたしです。

「………そうですか」
 朝比奈さんはくるりと一回転してあたしの方を向き、離れないようぎゅっと抱きしめ返してくれた。
「あ………、」
 涙が出てきた。多分、嬉しすぎるからよね。
「こうすると、怖くないですからね」
「………うん」
 おずおずと、朝比奈さんの背中に手を回す。
 お互いの温もりを感じあいながら、あたし達は眠りに落ちた。




704:SOMEDAY in the MORNING Rside
07/02/24 01:47:30 EBuWxKkD
 次の日の朝の話だ。
「う………、んー………、あれ」
 目覚めると朝比奈さんの胸の中だった。鶴屋さんがこちらを見て微笑んでいる。朝比奈さんが何か言ってるわね。容疑? 無罪? 良く分かんないけど、とりあえず、
「おはようございます、お姉さまー」
 そう言って抱きついてみる。うん、朝から良い気持ちね。

「え、冤罪でしゅよー」
「あっはははっ! まっ、楽しそーでなによりだっ!」
 そうよ。巻き込まれ型不条理系ドタバタ青春ラブコメディー、楽しいわよ。
「お、お花の名前が一つぬけているような気がするんですけどー?」
「大丈夫! お姉さまのためなら、生やすわ!」
 真剣な誓いの言葉。
「みぎゃーーー!!!」
 ………何故?

 うつろな目をした朝比奈さんがカーテンを開けると、すでに昇っていた朝日が、あたし達を祝福するかのように陽だまりをプレゼントしてくれた。………大自然もあたしの味方をしてくれてるようね。 

「お姉さまー!」
「みっくるー!」
 鶴屋さんと一緒に朝比奈さんに抱きつき、ベッドに押し倒した。陽だまりが、二人が、あたしに『暖かさ』をくれる。………あたしは生かされてるんだ、そう実感する。

 陽だまりをくれた朝日と『暖かさ』をくれる二人、そしてあたしを生かしてくれる全ての存在に誓う。


 ありがとう、あたしは、生きる事にします。
   ………笑って生きる事にします、と




705:38-822
07/02/24 01:49:07 EBuWxKkD
以上です。
長くなってしまいましたが、お付き合いくださりありがとうございました。
では、また。


706:名無しさん@ピンキー
07/02/24 01:58:08 XW87XQmR
キャラの性格を変えすぎ、正直微妙。二次創作の二次創作って感じ。
初回は良かっただけに勿体ない。
まあ、3回目くらいから読んでないんだけどね。とりあえず、完結お疲れ。

707:名無しさん@ピンキー
07/02/24 02:02:51 pHZw4b1D
GJ!
やっぱり感情を持つに至る経緯ってのが、この手の醍醐味よね~ SSで書くのは難しいけど。
どうしても内面の掘り下げと、展開が性急になっちゃうから。
もっと長くても良かったかなーとは思うけど、ワガママかな。
ハッピーエンドは予定調和だけど、それがイイ。

あと、ちゃんとお姉さましてる朝比奈さんの話とかみてみたいですねー
次回もガンガレ!

708:名無しさん@ピンキー
07/02/24 02:26:35 XEnIAzoe
細かいところで時系列の違和感があったが(楽しい の後に これが楽しいって感情か みたいな)、
非常に楽しめました

また多視点ものに挑戦していただきたいです


読んでいないといいつつ内容にけち付ける人はいつも反応はやいなぁ
リロードしながらスタンバっているんだろうか

709:名無しさん@ピンキー
07/02/24 02:40:16 R8vS7RSX
来た、来た来た来ましたよー!「SOMEDAY in the」シリーズ最終章!
やっぱり好きです。いろいろひっくるめて好きです。
私はこれほど心温まる二次創作は見たことがない。
GJ!だけじゃ少なすぎますが、今の私にはこれ以上の言葉が浮かびません。

最後に、ありがとうございました!

710:名無しさん@ピンキー
07/02/24 02:54:53 SrZZ4ozT
ケチをつけてるのは荒らしの人なのでスルーしましょう
とりあえず叩いておけば自分が賢く見えると思ってる可哀相な子なので
と言うか、全部読んでない奴が偉そうに感想なんか書くなよとw

>>705
GJ!完結お疲れさまでした
なんと言うか、ただただ面白かったです!
次回作もwktkして待ってます

711:名無しさん@ピンキー
07/02/24 03:36:20 XW87XQmR
自分に合わない物を合わなかったと言っただけで荒らし扱いされるこんな世の中じゃ……

712:名無しさん@ピンキー
07/02/24 03:42:36 6N4Y7ubQ
情報統合思念体がやけにかっこ良く見える…。
やっぱり朝倉涼子は一発キャラで終わらせるのは勿体無いですね。
原作では自分の意思や感情で動いていない人形のような役割を当てられたまま退場してしまったので、
自らの存在を確立して帰ってきて欲しいと思ったのは自分だけでは無いはず。
長門も大きく成長したのだから、朝倉もこんなふうに感情を持った存在として
復活して欲しいものです。

>>711
読んでない人の感想など荒らしととられても仕方ないのでは?
読んでから批評するならともかく。

713:名無しさん@ピンキー
07/02/24 03:44:19 A6ct3Ihb
>>711
……ポイズン

714:名無しさん@ピンキー
07/02/24 03:52:51 r78vCiUt
ぽいずん、ぽいずん、と。

715:名無しさん@ピンキー
07/02/24 03:58:14 XW87XQmR
>>712
単に違和感を感じた人もいるって事と、
完結させた事に対する労いのつもりだったんだけどな。
まあ、次からは何も言わずに黙ってスルーしておくことにするよ。

716:名無しさん@ピンキー
07/02/24 04:18:40 NSQ/U/Ik
ハルヒやキョンを使ってないってのは、すごいなー。

パパ見守ってるでちゅよ、とはナイス翻訳だエミリーw
「お花の名前が抜けてる」って、そーゆーことは知ってるのね
みくるちゃんは・・・ 鶴屋さんの仕込みですか?

717:名無しさん@ピンキー
07/02/24 04:34:04 Kl86qbX9
>>715
疑問なんだけどわざわざ自分には合わなかったって書き込む必要ある?
万人に合う作品なんて存在しないし、批評ですらないしお前の好みの問題だし
そもそも読んでないって問題外、上から物言ってる感じがして気分が悪い

718:名無しさん@ピンキー
07/02/24 04:52:27 g9qDgxxO
まあ待て。そのうち>>715が我らを唸らせる名作を書いてくれるはず。
待ちわび、恋焦がれようではないか!

719:名無しさん@ピンキー
07/02/24 06:39:03 BNwOlsq0
つーか、無駄に長すぎ。
面白いんだけど。
面白いだけに勿体ないと言うか、無駄な長さにイライラさせられると言うか。

つまんない話だったら長くても「ふ~ん」で済んじゃうんだけどな。

720:いきなり少年漫画的展開1/3
07/02/24 07:13:53 erwvveDz
 閃光、爆発。
 わたしの体は衝撃に耐えられず、床に転がる。

 ――勝てない

 思考が頭をよぎる、わたしの体は意思に従わず、血塗れのまま動かない。
 わたしはここで消えるのだろうか。

 記憶のログが突如蘇る。エラー。こんな時に。
 ――平和で、何もなかったけど、とても充実していたあの部室の出来事。
 ――涼宮ハルヒ
 ――朝比奈みくる
 ――古泉一樹


 ―――彼。

 それを見ても、わたしの喉はヒューヒューと狂った音を上げるだけで。
 何も出来ない事に気付いて、少しだけ、悲しくなった。





『なにやってるの』





 声。


 聞こえるはずのない声。今ここにいるはずのない声。わたしが自ら消したあの声。


『ダメねえ』


 ―――朝倉、涼子。


 ―――なぜ。

721:いきなり少年漫画的展開2/3
07/02/24 07:14:53 erwvveDz
『ねえ、なにやってるの』
 
 問いかける彼女。出そうとした声の代わりに出て来たのは血。

『悔しくないの?』

 返事など意味が無いかのように、一方的に語りかける。

『ねえ、悲しくないの?』


 ――悔しい、のかもしれない。何も出来ず一方的に倒されるだけの自分にが。
 悲しいのかもしれない。もうあの部屋に戻る事が出来そうにないから。


『なんで諦めてるの?』


 ―――――な、ぜ?


『戻りたいんじゃないの?』

 ……………………

『守りたいんじゃないの?』

 ……………………






『―――好きなんでしょう?「彼ら」の事』

 ……………
 ……………
 ……………
 ……………そうだ。わたしは―――



 …………あそこに、戻りたい。
 ………………彼らが、好きだから。

722:いきなり少年漫画的展開3/3
07/02/24 07:15:42 erwvveDz
 ……けれど。
 決意した所で私の体はもう殆ど機能停止状態だ。
 だけど、戦う。
 もう一度、あそこに行く為に。
 もう一度、彼らと話す為に。



 ――諦めない。



 ――突如、わたしの怪我が治っていく。


 視界が開く、はっきりと。
 手が動く。足で立てる、しっかりと。



『だから、少しだけ、手伝ってあげる』

 声。

 わたしは、全てを了解して、語りかける。


「朝倉涼子」


 伝えたい、伝えたかった、わたしの言葉を。


「ありがとう」


『…………どういたしまして』

 ―――きっと、微笑んでいたのだろう。


 走り出す。倒すべき敵に向かって。
 不安はない。きっと勝てる。








 彼女が一緒にいるから。

723:名無しさん@ピンキー
07/02/24 07:39:28 TP3AsgpI
>>642
リアルの何気ない日常からSSのネタを着想するのも才能ですよ。
ただ、小ネタ向けのネタなのに説明過剰。あっさりしたスピーディな文体のが笑えたと思う。
このレスもいいほうに考えてください。

>>655
キョン語りはうまいし、キョンばりに語彙もネタの引き出しも豊富。
何より、豹変したハルヒの描写が雑にならず丁寧。こういう細かさが小説のリアリティを引き立たせます。
ハルヒの脳内でどんなバトルになるのか、後編が楽しみ。
惜しむらくは、論理や表現に念が入りすぎて、くどくてしつこい感もある。バランス考えて。
よく考えてみると少々無理のあるプロットかもしれない……と書くのは余計か。

>>677
メタ・ライトノベル!

>>705
最後の円鐶が無事閉じたようで何よりです。謎がすべて解けた!
穏健派主流派急進派問わず愛してるツンデレ親バカの思念体ワラタ。
キョンどころかハルヒまでも脇役で、主役二人に気付かれることなく助演男優女優により事件が起き解決するというパターンの発想、
しかもそれぞれのキャラを主役としたドラマ、それを細部まで楽しめるほど逐一こだわって書ききれる筆力。第一級のものと思います。
……でもさこれ、一人称多元で一本にまとめられなかったの?
一本にすれば、スリルが出てかえってギャグも種明かしも引き立ったはず。
普通に書いたら面白い話を、何故に5倍に薄めて添加物たっぷりに味付けして別々に飲ますんだよ。
前とかぶってる箇所がひたすら多すぎて読むのがウザッテーし(音読派の俺にゃ辛い!)。
半独立した一人称SSにして価値があったとすれば、種明かしの楽しさ(ミステリー性)、各キャラに起きるドラマと語り口の面白さ(キャラクター性)だろうけど、
上で書いた通り、ドラマは薄めたものに無理矢理味付けして小説としての体裁に(書き手当人から見て)仕立てたってだけのシロモノが過半数。
語り口については、ほぼすべてのSSにも言えること。でもほとんどの人は別視点からなんて書かない。二次創作の二次創作になる。そのイタサを心得てる。
種明かしも、度が過ぎてこれでもかこれでもかともったいぶるのは、自己陶酔にほかならない。
せっかく湧いたこのアイディアを1話で終わらせて他を切り捨てたりするのはもったいない、などという感情こそ捨ててしまえです。
読者としては、これだけ物書きとして素晴らしいエネルギーとタレントがあるんなら、完全に別々な話に注いでほしかった。
場面は変わる。
論理だけの知性体に感情が芽生えて云々、というプロットは、「意図的なラノベらしさ」が根底にあるハルヒシリーズのSSらしいと言えます。
で、朝倉が長門に比べても極度に人間的過ぎる(感情もさることながら別荘内のスキャンさえ制限されている)のは、思念体の意向なんですよね?
思念体は全宇宙で唯一知性を持った有機生命体に対し、ほとんど感情の研究もせず今まで何やってたんだろう。
やはりハルヒによって3年前に「発生」したのか。ラッセル仮説のように、ビッグバン以来の記憶を背負って。
そのへん、新刊で明らかになるのかなあ。

>>722
殺し合っても仲良い長門と朝倉。『消失』でないほうの二人は、あのマンションで3年間どういう付き合いしてたんだろう。
ともあれ、こういった助っ人的展開で、朝倉が味方として本編にも再登場してくれるのを望むのは俺だけではあるまい。
アニメ版の朝倉のあの早回し口調は、本当にああ言わせて縮めたんだろーか。

724:名無しさん@ピンキー
07/02/24 07:47:49 h6evHR0G
いや、なげ~よw

725:名無しさん@ピンキー
07/02/24 08:44:42 r0jhZvFO
批判もあるからこそ職人は成長すると思うのだが。
待て、そんな邪険な目で俺を見るな。
だいたい「作品が投下された→褒める褒める褒める」
流れってのはちょっと淋しいじゃないか。
ぬるま湯に浸かったままでは誰あろう職人が可哀相だ。
が、最近は作品をただ叩く事を”仕事”と
勘違いした評論家気取りが多いから
真面目に良い部分悪い部分を評価している人間も
荒らし扱いを受けるから困る。
何事も程々が大事なのかね。

726:名無しさん@ピンキー
07/02/24 09:05:05 bJgwxIMI
心の目で縦読みするんだ

727:名無しさん@ピンキー
07/02/24 09:15:36 +x+MvPKc
>>720-722
なんか、演出狙ってるんだろうけど過剰な空白がキモい。
うざいとか読み辛いじゃなくて、キモい。



728:名無しさん@ピンキー
07/02/24 09:41:41 BlDbROFo
>>723くらい具体的に言ってもらえると俺だったらありがたい。
こんなんばっかになってもつらいけど>>727みたいな感情的カキコでもないし。

729:名無しさん@ピンキー
07/02/24 09:59:48 Z4CXAGMn
何故かしらんがハルヒの感情データをとる為にキョンが情報制御能力を与えられて
ハルヒの私生活を観察者の目線で追っかける話を思いついた

730:名無しさん@ピンキー
07/02/24 10:00:50 5aV++V++
>>727
キモいのはお前じゃね?

731:名無しさん@ピンキー
07/02/24 10:34:16 BBI9JG5x
>>730
お前のIDすげぇな

732:名無しさん@ピンキー
07/02/24 10:37:44 kZG1Seid
>>730
すげぇ勝負運が強そう

733:名無しさん@ピンキー
07/02/24 11:06:05 7VX6ZTRh
>>705 GJ!!
多少キャラ設定が暴走気味だけど、それこそSSの醍醐味ですよね。
インターフェイス3人娘の思念体へのスタンスの取り方がいい感じです。
次は百合+委員長属性でSOS団に迎え入れられた朝倉が、
キョンと朝比奈さんの接近を妨害するために、
ハルヒと結託してドタバタを起こす話が読んでみたいw

734:名無しさん@ピンキー
07/02/24 11:08:42 jVvm5n9F
うん。>>727はキモいな。確かに。

735:名無しさん@ピンキー
07/02/24 11:32:39 1+1piMBw
>>272
IDの +x+ がキモい

736:名無しさん@ピンキー
07/02/24 11:33:17 1+1piMBw
安価失敗
× >>272
○ >>727

737:名無しさん@ピンキー
07/02/24 12:20:35 BlDbROFo
ぬいぐるみの顔みたいなIDだな。

738:名無しさん@ピンキー
07/02/24 12:30:28 r0jhZvFO
なんかうさぎのミッフィーがKOされた時みたいな顔だな

739:名無しさん@ピンキー
07/02/24 13:01:51 lmb/GJEj
>>735
答えは2!!!

740:乾燥スルー
07/02/24 13:16:02 sN7qocUd
>>684   長編乙でした。
誰かが「最初は良かっただけに~」なんてレスをしてたけど、俺もその一人です。
並行した話をそれぞれの語り部で別の場所から書く、しかもオチは全部読んでからなんていう
俺なら書く事自体を避けたいものでした。難しいから。こういう反応がある事は織り込み済みだったのでしょか。

最近のゲームでそれぞれのキャラクターにスポットを当てたシナリオが描かれることがありますが
最初の話ですばらしい世界にプレイヤーを引き付け、その後の展開を楽しませる。
これって絵等色々な要素があって初めて可能になると思うんですが、実は2,3キャラ(シナリオ)だけやって
やめてしまう人も少なくないんです。どんなに魅力があっても「緩慢さ」「グダグダ感」を感じてしまうんです。
だからそれをどうにかする工夫をして、それで成り立ってる。作者さんはいかがでしたか?十分だったでしょうか。

三点リーダーや改行、エクストラメンションも漫画じゃないのだから
もう少しだけバランスを取って、読み手に委ねてもいいんじゃないでしょうか。
言質や行間を読ませる為の手法として使うのであればなお更です。
狂ったようにそれらが来る独特の文章や、自分の特徴として利用するのであれば別だとは思いますが。

何はともあれ、あわよくば次回作をお待ちしております。 つプレミアムモルツ










741:名無しさん@ピンキー
07/02/24 14:20:14 2YeCnctp
>>705お疲れさん。俺は無駄に長いとは思わなかったけどな。
最初は全く意味が分からんかったけど、ネタが全部バレてスッとした。
確かにキャラが違うのもあったけど、俺は大まか合っていれば気にしないけど、
それがSSらしい所でもあるだろうよ。GJ。

742:名無しさん@ピンキー
07/02/24 14:31:03 /J+K24oq
折角良作が立て続けに投下されたってのに
アホな批評家気取りのせいでスレが変な感じになってるな
つまらんと思ったのならブログかチラシの裏にでも書いてろ

743:名無しさん@ピンキー
07/02/24 14:46:45 AjBLYgaD
【ハルヒ】ディ○ニーが著作権を主張【訴えられる?】
スレリンク(2chbook板:6番)

人気ライトノベル『涼宮ハルヒの憂鬱』のストーリーが
過去自分たちが制作し、未発表だったシナリオに酷似するとして
あの鼠会社が出版社を相手どり、訴訟を起こした。
日本ではなく米国での裁判だが
ハルヒ側の勝訴は絶望的で、今後アメリカでのハルヒの配給権は
鼠社が獲得するものと思われる。

ってかふざけんなよ!!

744:名無しさん@ピンキー
07/02/24 14:47:33 PMMsC/C0
紫だwww

745:名無しさん@ピンキー
07/02/24 15:41:30 P7y6+o/7
キョンスレでsos+kyonという神なIDがいたんだが

746:名無しさん@ピンキー
07/02/24 15:56:29 BlDbROFo
あれネタじゃないのw

747:名無しさん@ピンキー
07/02/24 16:12:11 jP6S+cHW
100%ネタだろ。あり得ねーよw

748:名無しさん@ピンキー
07/02/24 16:49:52 NbhGPjK4
>>705
朝倉のキャラ設定と古泉の立ち回りがイマイチ分からなかったが、どうもお疲れ
さん。ちょっと長くなりすぎて中だるみ感が否めなかったってのが正直な感想
かな。個人的には喜緑×会長SSがかなり良かった。会長が格好良すぎるw

749:名無しさん@ピンキー
07/02/24 17:57:34 fkFSuIXq
472kB じすれのきっせっつっ

750:名無しさん@ピンキー
07/02/24 18:26:12 r8Gyaokm
ネタだね

751:ナガト伝説
07/02/24 20:05:15 1aA/upIl
 平和だ。
 しみじみと思う、平和だ。

 日本のどこにでも有る様な高校の、どこにでも有るような昼休み。
 俺コト、キョンもそんな平和な昼休みを、同級生兼悪友の谷口・国木田と
共に、談笑しながら弁当を貪っている。
 何故ならこの一週間ほど、俺の後ろにいる人間災害発生装置の我がSOS団
団長、涼宮ハルヒはこのところ、何らの問題行動も起こしていないからだ。

 最近のSOS団内でも、この空気は変わらない。
 未来から来た我が癒しの天使、朝比奈さんは未来からの任務も無く、メイ
ド服で俺たちSOS団のために美味しいお茶を入れてくれる。今では独自に調
合したハーブティーを振舞ってくれている。
 SOS団最強の切り札。宇宙人製ヒューマノイド長門も、相変わらず部室に
一番に来てハードカバーを読みふけっている。心なしかその読書スピード
も、最近は今までの1.5倍程早くなった気がする。
 エセスマイルエスパー古泉も、急なバイトも無く、俺とのゲームで順調に
黒星を更新している。最も夜中、ハルヒが悪夢にうなされて小規模ながら閉
鎖空間を作り出すことが、何度か有るので気は抜けないとも言っていた。
 だが特に危険視する程ではないとも言っていた。
 平和だ。今谷口がまた彼女に振られたと嘆いているが、今の俺ならコイツ
に暖かい言葉の一つも掛けてやれそうな気がする。
「キョン後ろ」
 購買のパンをかじりながら、国木田が言う。するとそこにはいつの間にか
長門がつっ立っている。
 あーすまん、無視してたわけじゃないんだ。
「…いい、今来た」
 そっか、で、なんかあったのか?
 今まで俺は散々、長門の世話になってきたんだ。多少の頼みくらい、いく
らでもやってやるよ。
「非常事態発生」
 ………遺書でも書くか。


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