嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 修羅場の28at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 修羅場の28 - 暇つぶし2ch49:名無しさん@ピンキー
07/02/07 07:37:41 E3OXmo6u
ふと思った
ヤンデレ症候群で男性が減る→つまり夫婦の数が減り少子化に拍車がかかる→政府は緊急の措置として一夫多妻制を導入
まぁそれが吉と出るか凶と出るかはこのスレ的に色々とアレですがw

50:名無しさん@ピンキー
07/02/07 07:38:32 jMPxqadT
>>49
修羅場発生率増加w

51:名無しさん@ピンキー
07/02/07 08:10:24 1LMqrf9a
トライデント氏の作品はやってることや言ってることはいいんだけど描写とか主人公の思考とかがいちいち大げさで萎える

52:名無しさん@ピンキー
07/02/07 08:53:27 2F1C2Xgb
それがいい

53:名無しさん@ピンキー
07/02/07 09:33:42 82TUQiVJ
君という華を読むと胸が苦しくなるから困る。
つまり俺が言いたい事はもうらめぇ~!ってことでGJってことだ!!!(意味不

54:名無しさん@ピンキー
07/02/07 10:44:26 kSJEnBGF
>>51
同意だ

確かに日本語がおかしいトライデント氏の最近の投稿は
さすがに目を瞑ることができない程に酷くなってきている

他の神々様は嫉妬と修羅場を書いているのに
彼一人だけ何か違うものを書いているような気がする

最近の展開も先が読めるし、どうでもいい描写や
主人公の脳内妄言がうざくなっていることは確かだよ

スレの住人ですらも誰もトライデント氏に感想を書いてないのが
その証拠だw

誰も感想を1レスも書かなかった時はちょっと吹いたけどなw

いい加減にこいつ追放しようぜ

55:名無しさん@ピンキー
07/02/07 10:54:18 s1ZbJ0Ny
また現れたよ

56:名無しさん@ピンキー
07/02/07 10:55:32 UxFDI7ON
>>55
NG指定で頼むぜ。

57:名無しさん@ピンキー
07/02/07 10:56:03 OP6p7dqk
>>32
「私は月ちゃんのせいで両親が自殺……」

のセリフは、正直ちょっと不謹慎だと思った。修羅場どうこう以前に、人として。
シリアス調の物語ならともかくコメディ系の物語だし。主人公もそのことを特に気にしてないし。
「雪桜~」の時も似たようなテーマがあったけど、その時は心理描写とかしっかりしてたから、今回は特に感じた。
せっかう全体的にGJなのだから、そのあたりもう少し考えてほしいと思う。


もちろん54に同意する気はこれっぽっちもないですけど。

58:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:00:12 +CQF54lV
トライデント氏の作品があまり面白くないのは同意だけど、追放するほどのことではない。
氏の作品が異質なのはヤンデレにおけるデレの比重が多すぎてヤン(病ん)が
ただのコミカルな性格になってしまってることと、別作品からの引用・パロディが
多すぎてそちらの描写に重点が置かれてしまってるから。
でも>>1のテンプレに浅いヤキモチからと書いてある以上、スレの趣旨にはあっているため
嫌いな人は見ないだけでいい。

59:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:08:20 kSJEnBGF
>>58も追放しろと言っているじゃないか・・wwww

つまらない作品に無駄なレスを消費させる必要はないだろ
かろうじて、スレの趣旨にあっている程度ではいてもいなくても同じ


ようするにトライデントに投稿されるのは皆迷惑だと思っているんだろ
いい加減にこんな便所の落書きの住人どもに相手してもらえると思ったら
大間違いだぞwwwwwww

他の神々もびしびしとこれからはきつく行くからな
覚悟をしておけよ

60:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:14:13 kSJEnBGF
>>でも>>1のテンプレに浅いヤキモチからと書いてある以上、スレの趣旨にはあっているため
>>嫌いな人は見ないだけでいい。

そうだな
>1のテンプレに浅いヤキモチの部分を削除すれば
トライデントはここに投稿することができない
何故なら、スレ外になるからなw

安心しろお前ら
嫉妬スレ住人代表として俺が次スレを立てて
テンプレを排除してやります

面白くない作品は叩かれて当たり前
追放されるのは当然ですからね

61:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:14:59 +CQF54lV
>>59
誰も追放賛成とは言ってません。
あなたは無駄口叩く前に日本語の読解力を身につけましょう。

62:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:20:40 kSJEnBGF
大臣の失言でいろんな風に解釈されて過熱報道される世の中で
あなたの書き込みが悪意に取られる可能性が高いよ

客観的に見ると

あまり面白くないのは同意だけど
嫌いな人は見ないだけでいい



トライデントうざくない?

って言っている同意だぞwww

63:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:21:36 YMWjDYTz
このgdgdな流れが割と好きな俺ガイル

64:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:29:12 +CQF54lV
「追放するほどのことではない」や「スレの趣旨にはあっている」が抜けている。
悪意もなにもそうやってトリミングして主張を捻じ曲げるのは客観的とは言いません。

65:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:30:38 OP6p7dqk
>>60の書き込みがデスノのキラみたいで普通に笑った。
仮に新スレ立てたとしても末路が見えた気がして更に笑った。


66:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:33:36 kSJEnBGF
言っておくが俺は荒らしではない
>>51が大いに煽ったおかげで荒れたということを皆に認識して欲しいです
トライデント叩きは彼が成長するために必要な事だw
プロの野球選手やプロサッカー選手は地元のホームグランドで物をぶつけられたり
叩かれたりして選手の器を広げてゆくものだ。公共の場において作品を投下するならば
それなりに覚悟がある人間じゃないとこの嫉妬スレでは生きてはいけない

嫉妬スレ作家ランキングでは


トライデントは遥かに最下位を争っている

ゆえに彼が毎日更新と寝ぼけたことを書き込んでいたので
私は思いました


  身  の  程  を  知  れ    と

67:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:36:47 +CQF54lV
>>66
悪い部分を指摘せずただ追放を叫ぶあなたは立派な荒らしです。
トライデント氏のことを思うのなら「ここはこうしたほうがいい」など
改善点を指摘してあげましょう。

68:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:37:33 2F1C2Xgb
>>66
つまらない人間だね。
生きてて楽しいことないでしょ。

69:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:38:39 WctVcjsy
とりあえず、全員へ
>>3

70:名無しさん@ピンキー
07/02/07 11:58:43 5Nbuf8kE
URLリンク(up2.viploader.net)

71:名無しさん@ピンキー
07/02/07 12:16:18 8RvvmoKW
死を軽く扱うのはやめとけ。

72:名無しさん@ピンキー
07/02/07 12:33:14 kSJEnBGF
>>67
改善点を指摘だと・・
していいのか俺は厳しいからな

1・日本語がおかしい箇所が多すぎる

  小学校の国語からやり直しましょう。文章の基本的な部分からアウト


2・パロネタは禁止

  パロネタを使うというのは自分に面白い話を作る基礎能力がないと断言しているの同じです


3・話の展開が読めるのでもう少しストーリーを捻って考えましょう
  伏線を張っているつもりだが、誰もそんなとこまで覚えていない


4・ヒロイン層が薄い

  このスレの住人すらもヒロインの名前を覚えられていない=
  ヒロインの魅力が読んでいても全然通じてこない
  描写不足であり、登場人物が増える度に他のキャラクターの描写がいい加減に


5・描写力がないに等しい

  誰がどこでいつ何をするのかという基本が全く出来ていない
  主人公視点だが、キャラクター達がどこにいるのか読者側には伝わらない

6・スレの住人から嫌われている

 スレの住人と馴れ合うような態度がまずうざい。文章だけでいい
 トライデントの書き込み一つ一つが他人を不愉快にしている



以上だ

反論があるならいつでもどうぞ

俺は大歓迎だぜ

73:名無しさん@ピンキー
07/02/07 12:36:34 vNd0pMaU
山田優が弟と同居していると聞いて、キモ姉じゃないかと期待した俺は末期です。

74:名無しさん@ピンキー
07/02/07 12:36:45 p8Xp4fGq
俺はトラさんのコミカル嫉妬好きだけどな。
こういう奴らなど気にせずどんどん投下してください。
とりあえずは、マターリ仲良く修羅場はゲームかssの中で。


75:名無しさん@ピンキー
07/02/07 12:37:30 B7XL5P3x
>>3かNG指定でよろ

76:名無しさん@ピンキー
07/02/07 12:38:52 edWRT2cB
>>73
ヤベェおっきしちゃうぜ!

77:名無しさん@ピンキー
07/02/07 12:39:17 dgD5ll7v
>>73
姉ちゃんと暮らしてるだけで弟が羨ましいぜ、これで弟が修羅場を起こしてくれたら弟はこのスレの現人神

78:名無しさん@ピンキー
07/02/07 13:03:02 ENcfciEn
千の理屈より一つの感謝、俺はトライデントさん風の作品が好きです。お気にせずどんどん投下しちゃってください。


79:名無しさん@ピンキー
07/02/07 13:09:17 Q/Zb55E8
オレもトライデント氏の作品が好きだし面白いと思うので
うんこ臭い荒らしは気にしないでほしい。

80:名無しさん@ピンキー
07/02/07 13:48:48 5UmCmJ1j
よーし、釣られちゃうぞ

>>72
1.第一声がそれだといつもの荒らしと勘違いされて
 レス自体の価値をさげるからやめとけ。
 具体的にどこかを言え、違和感を覚える人が少なければスルー出来る範囲だ。
 あと5でも同じ事言ってるね、自分の書いたことくらい覚えておこう

2.これは概ね同意。元ネタがわからない人にはつまらないから。
 かと言って禁止する必要はない。

3.覚えてないのは君の記憶力の問題。
 先が読めるのは先を匂わす伏線のおかげ。

4.ヒロインに魅力を感じるかは各個人の嗜好によるから君がとやかく言うことじゃない。
 あと覚えてないのは君の記憶力のm(ry

5.統計を取ったわけではない以上「読者側に」ではなく「君に」。
 そして伝わらないのは君の読解力の問題。

6.統計を取っt(ry
 不愉快ならスルー。そういった取捨選択は2chの基本(と、釣られながら書くことじゃないがw)


自分の主観をスレ住人全員が受ける印象にすり替えすぎです、もっと頑張りましょう

81:名無しさん@ピンキー
07/02/07 14:01:16 CALHrmjR
意見は色々あるだろうが、トラ氏のような週刊誌があるからスレが維持できるという事実を忘れないほうがいい
何よりスレタイで揉めるよりマシ

82:名無しさん@ピンキー
07/02/07 14:13:19 RJwHjGcl
>>80
構うなアホ

83:名無しさん@ピンキー
07/02/07 14:20:07 Mw0ExLGu
スルーが一番だが、いつもいつものことなので、いい加減うざい。

この人って、その昔ヤンデレスレでスカトロSSを貼って荒らしてた人と同一人物なんでしょ?
二次スレの鼻つまみ者、『ググル君』とも同一人物くさい。
系統スレで一番のゴミだから、もうテンプレに要注意として挙げておいてもいいと思うんだけど。

『日本語がおかしい』『追放』と言っている人は、自分の日本語と頭の方がおかしい荒しさんです。
スルーを推奨します。

と入れておくことを提言したいのだが、どうか? どうせいつまでも粘着してるに決まってるし。
ただそのままスルーするだけでは、新規の住人に対して職人さんの名誉を守れなくなってしまう。
これならテンプレをポップアップするだけで、あとは全く構う必要がなくなる。

84:名無しさん@ピンキー
07/02/07 14:25:18 UxFDI7ON
>>83
>>3にもう書いてあるぜ

85:名無しさん@ピンキー
07/02/07 14:33:37 Mw0ExLGu
あぁいや、一般論ではなくて、『日本語クン』を名指しで荒し認定してもいい時期だと思ってさ。
>>3があったとしても、こういう流れにならざるを得ないのが口惜しいのだ。

86:名無しさん@ピンキー
07/02/07 14:42:17 qIjmD07T
おいおい荒れているな
また、トライデント氏が謹慎なんて言い出した日には
お前ら誰か責任取れよマジで

こういう事件が起きると連鎖して神々が呆れて投稿しなくなったら
このスレは終りだぞマジで

87:名無しさん@ピンキー
07/02/07 14:47:55 F94NsEMc
そんなに見たくなきゃNG指定でもすればいいじゃん。
トラ氏は気にせず投下してください。wktkしながらまってます。

88:名無しさん@ピンキー
07/02/07 14:50:01 UWn/32Xb
粘着される職人様は本当に気の毒だし
何もしてあげられないのが申し訳なくて歯痒いけど
2chじゃこうゆう粘着荒らしに絡まれる危険性はどうしたってあるし
悪意あるレスにめげないで頑張ってほしいな。

89:名無しさん@ピンキー
07/02/07 15:48:42 b/egffsf
これは凄い荒れ方だ

90:名無しさん@ピンキー
07/02/07 15:50:23 EypVXGDa
晴れのち修羅場 ところにより流血

91:名無しさん@ピンキー
07/02/07 16:01:30 tkulWac2
これテンプレ追加しようぜ

・「日本語」「追放」をNGワード指定推奨

92:名無しさん@ピンキー
07/02/07 16:34:20 NsdkC+8P
荒らしは一種の病んデレだと思えばよろしおす

93:名無しさん@ピンキー
07/02/07 16:37:35 NvNTmmQ5
趣向に合わないものは読まなきゃいいだけのこと、俺はそうしてる

94:名無しさん@ピンキー
07/02/07 16:49:23 fox4PXGM
大量投下キタ━(゚∀゚)━!!!
って思ってwktkした俺が馬鹿だった。

95:名無しさん@ピンキー
07/02/07 17:11:34 jMPxqadT
>>94
ナカーマw

一言いわせてもらうと何も書かない奴がケチをつけるもんじゃない、これだけだ。

96:名無しさん@ピンキー
07/02/07 17:14:22 wuXShMA2
アメリカ・NASA発の新ジャンルが発表されたぞ。

『宇宙で修羅場』

オムツはいて泥棒猫を追い掛け回すなんてさすが国の機関は違うな

97:名無しさん@ピンキー
07/02/07 18:04:12 cUZrkV5S
>>96
ああ、拉致未遂かw

つーか、文句あるなら読まなくていいだろ。
こんな雰囲気だから投下もされなくなってくるし

98:名無しさん@ピンキー
07/02/07 18:31:54 82mmz3YX
まあ、言いたいことはノントロマダー?ってことだけだな

99:名無しさん@ピンキー
07/02/07 18:41:22 +LBwezsu
ノントロはあれだけ面白そうな伏線張りまくってwktkが最高潮に達し
いよいよ本格的に修羅場突入かって時にこれはキツイ。

100:名無しさん@ピンキー
07/02/07 18:58:58 UwXUParz
なんていうか…ここのスレは書き手も読み手もレベル高すぎて、新参者には敷居が高すぎるな…

101:名無しさん@ピンキー
07/02/07 19:08:06 wPKBMAfm
>>98-99
まあ、限界まで膨らませた風船にこれから針を突きたてようとしたもんだからなw
体が疼いてしょうがないぜ

102:名無しさん@ピンキー
07/02/07 19:15:58 /Hs88PQq
(♯()ω()♯) ダマレッ!!

103:名無しさん@ピンキー
07/02/07 19:19:58 o6QAsC7v
>>100俺もこの道に目覚めたばかりの頃はそう考えていました。
今では立派な修羅場ジャンキーです。

まあ、他のスレと同じよ。
荒らし以外はみんなウェルカム。俺と一緒にいたり先輩にフライパンで殴られようぜ!

104:名無しさん@ピンキー
07/02/07 19:37:59 2zYV67aL
修羅場モノはワンパターンに陥りやすいのがネック、とか思ってた俺も
このスレ来ていろいろと目から鱗な発見をしてすっかりハマった

どんなものでもハマると奥が深いな


105:名無しさん@ピンキー
07/02/07 19:40:39 YNjwMLPA
>>96
まさかNASAから新しいジャンルが出てくるとは・・・イカスぜ

106:名無しさん@ピンキー
07/02/07 19:44:48 UwZHT3Rl
>>101
まさか監禁されて・・・

107:名無しさん@ピンキー
07/02/07 19:53:10 oCtaNCYx
ノントロの最後の投下が17日だから
もう監禁されて20日以上立ってるな。

もう調教され終わってるかもしれんな。

108:名無しさん@ピンキー
07/02/07 20:29:57 tkulWac2
わんわん

109:名無しさん@ピンキー
07/02/07 20:31:07 4VwxFEVW
もうノントロないから餓死しそうだ

110:名無しさん@ピンキー
07/02/07 20:34:34 Wark6O5Y
>>107
きっと、妹が二人に増えたんだよ

111:名無しさん@ピンキー
07/02/07 21:02:58 UwXUParz
>>110
ツイスター?

112:名無しさん@ピンキー
07/02/07 21:09:21 82mmz3YX
ageたりsageたりせわしない奴だな

113:名無しさん@ピンキー
07/02/07 21:12:39 UwXUParz
>>112
すみませんsage忘れました。

114:名無しさん@ピンキー
07/02/07 21:13:03 0XFD1WI9
おまえら落ち着け
つ 旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦旦

115:名無しさん@ピンキー
07/02/07 21:36:46 pFTTwZgO
流たん(;゚∀゚)=3ハァハァ

116:名無しさん@ピンキー
07/02/07 21:46:09 Wark6O5Y
>>114

 一杯貰って行くか・・・・・・
  _、_
( ,_ノ` )旦 

117:名無しさん@ピンキー
07/02/07 21:56:25 dnHhP945
>>114
傍観者だが貰ってもいいかい?
媚薬とか入ってないよね?

118: ◆WIhkQEicx2
07/02/07 22:33:08 /976prAL
前スレの終わりの方で『バッドラック樋口』を投下したものです。
あれで終わりにしようと思ったんですが、続きが浮かんだんで書きました。2話目。
前回よりは長いです。

119:バッドラック樋口 ◆WIhkQEicx2
07/02/07 22:35:45 /976prAL
「ごめんね、ごめんね、私あの時何が何だか分かんなくなっちゃって…。
樋口君が憎かったとか、そういうことじゃないの!他にどうすればいいか分かんなくて!」
ベッドに手を置き、詰め寄りながら梅村さんは必死に語りかけてくる。
片手で彼女の肩を押しとどめつつ、残る手で僕は小さなホワイトボードに文字を書いた。
『もう大丈夫だから』
書いた言葉を梅村さんの前に示す。
それを見て、彼女は少し落ち着いたようでまた椅子に腰を戻した。
もう何回繰り返しているのか分からないが、そういった繰り返しに僕は慣れていたので、
あまり苦にはならなかった。
ここでは本を読むかテレビを見るくらいしかやることがないので、
梅村さんとこういう押し問答をやってるのも暇が潰れていいかな、と思えるほどだ。

頭頂部に綺麗な一撃を食らった僕は、そのまま机に沈み顎を叩き付けられて気絶した。
昼下がりの教室で起こった突然の凶行に、その場が騒然としないはずはない。
行動が早い人がすぐに先生を呼びに行き、僕は救急車で病院に運ばれ、彼女は職員室に連れ込まれた。
高校から逮捕者が!真昼の学校で起きた惨劇!という形でワイドショーに報道されちゃってもおかしくない事態だった。
が、彼女の父親が県の議員らしく、すぐに学校に手を回したのと、
問題を大きくされると困るらしい学校が緘口令を敷いたおかげで、大騒ぎにはならなかった。
緘口令も何も、梅村さんは泣くばかり、僕は病院に担ぎ込まれて手術中という状況で、
誰も詳しく事件の原因やらなにやらを知っている人はいないのだが。
意識を取り戻した僕は自分の不幸を有耶無耶にされたわけで、
本来なら梅村さんちや学校に怒鳴り込んでもいいはずだった。(今は怒鳴れないが)
ただ、一応剣道部員という身でありながら、同じ部員とはいえ彼女の一撃を外すことすらできなかったとか、
「他人の修羅場に巻き込まれる」という非常に説明しづらい事情だったこととか、
彼女の父親から治療費&多額の見舞金を僕の親が既にもらっちゃったこととか、
いろんなことが重なって、騒ぎ立てることはしないことに決めたんだ。


120:バッドラック樋口 ◆WIhkQEicx2
07/02/07 22:38:09 /976prAL

それに、目の前の彼女はこうして誠心誠意謝ってるわけだから。
「うう…本当に、ごめんね。」
湧き出す涙をハンカチで押さえながら、また僕に詫びる。
実は、彼女がこうして1人で僕に謝りに来ていることは意外なことだった。
梅村さんは僕が知る限り寝ても覚めても部長部長、といった感じで、
彼に勘違いされることは悲しくても僕を怪我させたことは大して心に留めていないんじゃないかと思っていたからだ。
梅村さんにとってはひどい認識かもしれないが、実際僕は消し去られそうになったわけだし。
しかし、そうでもなかったらしい。僕は彼女にとって謝る価値ぐらいはある人間だったようだ。

「樋口君は私の話をずっと聞いてくれてたのに、傷つけるようなことしちゃって…。
私、本当に反省してるの。もう二度とあんなことしないから…。私に出来ることなら、何でも言って!」
再び僕の方に詰め寄ってきた梅村さんが、僕の両手をひっしと掴んで叫ぶ。
想像して欲しい。
目の前に、綺麗な黒髪をたたえ目筋の整った顔をした美少女が、
長いまつ毛を持った目に涙をいっぱい浮かべて迫ってくるんだ。
僕は健康な男子だし、病院に長く留め置かれていたわけだし、
こういう状況は嬉しくはあるけど、とても始末に悪いものだろう?
僕はすぐにその手を振り解こうとした。口で「離してくれ」といえば良さそうなものだが、今の僕にそれはできない。
顎は打ちつけたせいでひびが入ってしまったらしく、ガチガチに止められているのだ。
栄養補給は点滴のみという有様で、明瞭な言語を発することなどできはしない。
「な、何で暴れるの?駄目なの?やっぱり許してもらえないのッ?」
何も言わず振りほどこうとする僕の態度は、彼女には否定の姿勢に見えたらしい。
より強い力で僕の腕を掴んで離さない。
困ったな…ボードにもペンにも手が伸ばせないので、打開する手立てがない。
そのまましばらく「ごめんね」を連発するだけの梅村さんと
振りほどこうとする僕、という構図が続いた後、病室をノックする音が響いた。

返事をする暇もなく(できないが)開けられたドアから姿を見せたのは、部長だった。


121:バッドラック樋口 ◆WIhkQEicx2
07/02/07 22:40:26 /976prAL

「よー樋口、見舞いにきてやったぞー。っと…梅村?
…ごめん、何か取り込んでたのかな…また、後で来るわ。」
よりにもよって、何で貴方なんですか?部長。
こちらに弁解の一言を与える暇もなく、ドアから顔だけ出して悪魔の矢を放って。
そんなに僕を殺したいんですか?僕が貴方に何かしましたか?
部長に対する怒りが心に湧いたものの、それは一瞬で吹き飛んだ。

パターンだ。良くあることだ。
僕がしなければならないのは、生存に向けて行動を起こすことだけだ。
目の前の梅村さんを見ると、顔を下げて何かに耐えるようにふるふると震えている。
今度こそ、僕という存在をこの世から消し去るつもりだろう。
今度は何が使われる?辺りを見回す。とりあえず、彼女が座っている椅子ぐらいにめぼしい凶器は…。
いや、あった。母親がりんごを切ってくれた時に片付け忘れたナイフだ。
積まれた本の上に皿とともに無造作に置かれている。
ああ、神は僕を見放したのか?前世に何か悪行を重ねたのだろうか。
頭の中で不吉の鐘がけたたましく鳴り響く。このまま手をこまねいていたら間違いなく死ぬ。
どうするか。
説得?無理だ。筆記している暇なんてない。
先にナイフを取る?これも駄目だ。
彼女に手を掴まれている状態では、彼女がナイフに手を伸ばす方が僕が振り解いて手を伸ばすより速い。
助けを呼ぶ?僕は叫べない。運の悪いことに大怪我だった僕は個室にいるので相室の患者もいない。
ナースコールを押しても看護婦が来る前に僕は死ぬ。
こうなったら…目の前の彼女を押し倒すしかない!
そうすればとりあえず彼女が攻撃してくることは防げるし、大騒ぎになれば誰か駆けつけてくれるだろう。
「入院患者の男が見舞いに来てくれた女性を襲う!」というセンセーショナルな記事になるかもしれないが、
命には代えられない。
僕の生存本能が僕の背中をプッシュして、彼女を押し倒そうとする。その瞬間に。

梅村さんが、ばっと突然顔を上げた。
てっきりまたこの世の終わりのような泣き顔だと思っていたら、意外にも笑顔だった。
その目から涙はこぼれていたが、長い雨が今終わったと告げているような、さばさばした笑顔だった。
「私が、また君を襲うと思った?…あの時は、ごめんね。
でもね、もういいの。部長とのことは、終わったの。」
これまで聞いたことのある彼女のどんな声よりも明るい声で、梅村さんは言った。


122:バッドラック樋口 ◆WIhkQEicx2
07/02/07 22:43:04 /976prAL

そこからは、また長い話だった。
時折涙を浮かべる梅村さんを慰めつつ、また話が戻り、と行きつ戻りつ聞き出した事情は次のようなものだった。
部長にアプローチしていた女と部長は、もう随分前から付き合いだしていたらしい。
僕らにも交際しているという事実は伏せていたので、分からなかったのだ。
僕が怪我をして入院している間に、梅村さんはそれを他の部員から教えてもらった。
すごく悩んで、相手の女を殺そうかとまで考えて、父親の力を借りてでも…とまで思いつめたらしい。
しかし、そうやって暴力で解決しようとする姿勢が、樋口敬太という何の罪もない一般男子高校生を
死の淵を経て入院生活に叩き込んだのだ、と彼女は自覚した。
それで、部長とのことは縁がなかったんだ、と諦める気になった、というんだ。
全て話し終わった彼女は、涙を拭いて笑顔を浮かべた。
「人を殴る前に、こんなこと気づくのが普通だよね。
でも私馬鹿だから…樋口君をこんなにするまで分からなかった。
君のおかげで気づいたの。ありがとう、樋口君。」
真摯な目を向ける彼女に、僕は何を言ってあげたらいいか分からなかった。
とりあえず、
『僕は何もしてないよ 梅村さんが自分で気がついたんだよ』
と事実をありのままに書いておいた。
「ありがとう。君はやっぱり、優しいね。」
にっこり笑って、照れることを言ってくれた。

「今日は私もう行くね。また、必ずお見舞いに来るから。その、私のこと、嫌わないでね…。それじゃあ。」
手を振って病室から出て行く梅村さんを、僕も手を振って見送る。
何も悪くない僕がこんな痛い目を見るなんて、世の中は理不尽だ、神なんかどこにもいないんだ、
とまで思っていた僕だったが、今の僕の心には一陣の涼風が吹き抜けていた。
1人の女の子が、人の道を踏み外しかけたものの、何とかギリギリの線で押し留まって、
これから正しい道を歩んでいこうとしているのだ。素晴らしいじゃないか。
僕の怪我には、それだけの意味があったんだ。
特に何か能動的にしたわけではないが、それでも何かを成し遂げたような達成感に包まれた。

久しぶりに、「幸せ」という感情を味わっていた僕の耳に、またノックの音が聞こえた。
ガラガラとドアを引いて現れたのは、活発そうな茶色の髪の女の子だった。
山下和美。現在の僕の彼女だ。
「お人よし」「ヘタレ」「いつか人に騙される」「いや殺されるね!」といわれ続けた情けない僕の性根を、
「そのずば抜けたお人よしぶりに惚れたの!これからは私が守ってあげるから!」
とか何とかおっとこ前に言いのけてくれて以来付き合っている。
入院以来、一度もお見舞いに来てくれなかったので、とうとう愛想を尽かされたと覚悟していた。
その彼女が、会いに来てくれたんだ。今日はとても幸運な日だと思った。
浮かれていた僕は、彼女が沈み込んだ表情をしていることに、気づかなかったのだ。


123:バッドラック樋口 ◆WIhkQEicx2
07/02/07 22:46:32 /976prAL

「今のが、敬太の浮気相手?」
彼女の口から発せられたのは、思いもかけない一言だった。
浮気?何を言っているんだろう。まったく意味が分からない。
僕は完全に混乱している状態で、彼女の方を見ることしかできない。
「学校で噂になってるよ。敬太が学校一の美女に別れ話を持ち出して、殺されそうになったって。」
きっと和美がこちらを見据える。
大体事情は飲み込めた。学校の敷いた緘口令は、事実を捻じ曲げて人口に膾炙させる結果になったようだ。
僕が梅村さんに別れ話を持ち出して、結果椅子で殴られた。
非常に分かりやすい構図だ。くそっ、一般大衆の思考回路が憎い!
とりあえず、目の前の和美の誤解を解かなければ。こんな誤解で愛しい恋人を失いたくない。
慌ててペンを探す僕を尻目に、和美は言葉を続ける。
「でも、別れるのはやめたんだよね?…だって出てきた彼女笑ってたもん。
あの娘を許して、付き合うんでしょ?」
しまった。和美は病室から出てきた梅村さんと出くわしたのか。
そういえば最初の一言は「今のが」、だったっけ…まずい、まずいぞ。
彼女のあのさっぱりした笑顔から、和美は悪い方向に想像を膨らませたようだ。
転がっていたペンを見つけ、僕は必死で弁解の言葉を考える。
『違うんだ 彼女が好きなのは部長で 僕はその話を聞いていただけで
聞いていたら突然その当人である部長が 』
ううっ、長いな。単純な話だが書くとなるとそこそこの分量がある。
必死でペンを走らせる僕は、彼女が間合いを詰めているのに気づかなかった。
気づいたときには、目の前に和美が迫っている。

「私はどうなるの?あの娘のかわりに私が捨てられるの?
そうだよね、あの娘綺麗だもんね。
お節介で煩いだけの私より、ああいう綺麗で大人しそうな女の方がいいんだよね。
私を捨てて、二人で仲良く学園生活送るんでしょ?同じクラスだしね。
…何か言ってよッ!そんなことないとか何とか、言ってよ!!
何で何も言わないの?もしかして本当に本当なの?私を捨てるの?私の何がいけなかったの?
私に不満なんて一言も言わなかったじゃない!!
あんたが変えろって言うなら、私どんな風にでもしたのにッ!!
何がいけなかったのよ!!もうあの女を抱いたの?抱かせてくれる子のほうが良かったっていうの?
言われれば、私だってあんたになら、って思ってたのに!!
…ねぇ、何か言ってよぉ!!!」
和美が泣きながら叫ぶ。恋人が誤解で泣いているのを見るのはつらい。
言わないんじゃなく、言えないんだ。その一言すら伝えられない。
まずその一言を書くべきだった。それを書こうとする僕を無視して、彼女はナイフを手に取った。


124:バッドラック樋口 ◆WIhkQEicx2
07/02/07 22:48:20 /976prAL

そう、あのナイフ。さっき僕が生命の危機を感じて、対処しようとしていたナイフだ。
防いだと思ったのに。こうして僕の目の前に凶器として戻ってくるとは。
既に般若の形相になっていた彼女が、ナイフを腰だめに構える。
「私を捨てるなんて、許さないよ…。私は、あんたのことが好きなんだから。
あんな女と付き合って、私を捨てるなんて、ずるいよ…。」
静かになった和美の口調は、決意を感じさせた。
僕は、書くのをやめた。諦めた。今何を示しても彼女は分かってくれないだろう。
助けを呼べないのは先刻検討したとおり。
どうしようもないな、こりゃあ。神様は、やっぱり僕に死ねと言ってるらしい。
「大丈夫、あんただけ殺したりしないから。私もすぐに死ぬからね。
守るって、約束したでしょ?死んだ後も、ずっと一緒にいて守ってあげるからね?」
涙を流しながら、にこっと和美は笑った。
綺麗な笑顔だ。さっきの吹っ切った梅村さんの浮かべた表情に似ている。
つまり、和美も何かを吹っ切ってしまったんだろう。


彼女の足を動かして僕の方に迫ってくる。ナイフを構えながら。その光景が、ゆっくりと見えた。
死ぬ直前にアドレナリンがどうとかって奴かな。二度も味わうとは思わなかったや。
もしもあの世が本当にあるのなら、そこで和美に事情を話さなきゃ。
「あんたがお人よしだから、私まで死んじゃったじゃない!」
とか何とかいうかな。和美は。ごめんな、和美。好きだよ。


125: ◆WIhkQEicx2
07/02/07 22:49:03 /976prAL
これで終わりです。投下してる最中に気づいたんですが、この話エロがないですね。すいません。

126:名無しさん@ピンキー
07/02/07 22:51:11 dnHhP945
>>125
それでもGJ
エロく無くても個人的に好きだな。

127:名無しさん@ピンキー
07/02/07 22:56:57 B7XL5P3x
GJ!
このスレの住人は嫉妬で(*´Д`)ハァハァできるからモーマンタイだぜ

128:名無しさん@ピンキー
07/02/07 23:03:08 wPKBMAfm
>>125
キタ━━(゚∀゚)━━ !!!!!
こ、これは是非この後が読みたいですぜ!!

129:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/07 23:18:33 9welyov7
さすが修羅場スレ。スピードは桁違い。
というわけでたぶん3日ぶりに投下します

130:魔女の逆襲第18話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/07 23:19:44 9welyov7
 早百合は早足で歩きながら、住宅街を抜け、十字路を曲がり良樹のマンションまでやってくる。
 良樹の住むマンション、『メゾンドロンリ』は名前は聞こえはいいが(いや、よくないか)実際は学生や単身赴任のサラリーマンなど、一人暮らしの人用の集団住宅だ。
 マンションと言う名前だが、アパートと言ったほうがいいくらいである。ただ、階数はやたら多く最上階にいけばほとんどの周りのマンションを見下ろすことができるくらいである。
 なんというかバランスの悪いマンションだ。縦に長く伸びた部屋の列はまるでジェンガを連想させる。
 早百合はそんなジェンガのようなマンションの玄関を入ると、エレベーターは使わず階段を昇り良樹の部屋の前まで来た。
 階段を昇る運動と良樹の部屋の前と言う理由で動悸が荒くなっていたが、胸に手のひらを押さえてそれを落ち着かせる。

がちゃりがちゃり。

早百合はドアノブを回すが当たり前のように鍵がかけられていた。
「ふん」
 しかし、いまの早百合にはなにも問題は無い。
 大事に握っていた、八年間まったく使う機会の無かった鍵を取り出すと、それを銀色のドアノブの鍵穴に差し込む。
 もし、この8年。良樹が鍵を変えてたのなら……この鍵はゴミ同然と成り下がる。しかし鍵はするすると穴の中へ差し込まれていき奥まですべて飲み込まれた。
 ごくりと鳴る早百合の喉。
 息を止めて鍵を回す。ぐるりと手の甲をひねり、回す指に力を加えてゆく。刹那、
 がちゃっ。
 何かが引っ込んだ音。静かに作業を進めていたからか、想像以上に鳴った音に早百合はすこし驚いた。
「……開いた」
 呟く。ドアノブをもう一度掴むと今度はゆっくりとひねる。
 抵抗無く緩んでゆく扉。限界までひねると早百合はゆっくりと扉を引いた。きぃぃと静かな音を立ててドアが開いた。
 開いたドアにするりと体をひねらせて、中に入る。後ろ手で静かにドアを閉めた。
良樹の部屋は1LDKで玄関の土足スペースの横には鍋と皿が何枚、タオルの上に裏向きで置かれてあった。一人暮らしだと言うのに清潔感漂うキッチンである。
早百合は時刻を確認する。六時一○分。良樹の生活ペースはあまり掴めていないが、自分と良樹が出会う時間まではかなり間がある。まだ寝ている時間だろう。
一応台所を通ってひとつしかない部屋へ行ってみることにする。
早百合はゆっくりと足を滑らす。今の自分の行動は完璧に不法侵入である。あまり音も立てられないし、目立った行動もできない。というか見つかったら大目玉食らうことになるだろう。しかしそのドキドキ感が逆にたまらなくて早百合の脳にドーパミンを分泌させていく。
良樹の姿を確認しようとしたが、台所と部屋を仕切る引き戸が遮っている。引き戸は閉められていた。
音を立てないようにしのび足で歩くと、早百合は引き戸を少しだけ開けた。すすすと静かな音を鳴らしてスライドする戸。ちょうど三センチほど開けた所でとめた。
中を覗いてみる。カーテンが閉められてよくわからないが、意外と広めの八畳ほどの部屋だ。大きなベッドと勉強机とクローゼットとテレビデオが見える。壁には銀行のカレンダーが掛けられていて、その横に押入れがあり少しだけ押入れの戸が開いていた。
男の一人ぐらしといえば散らかり放題というのが定説で、ちゃぶ台にはカップラーメンの容器が箸と一緒においてあったり床にマジックザギャザリングのカードがばら撒かれていたり、ゴミ箱があふれ出ていたりとするものだが、良樹の部屋は綺麗に片付いていた。
良樹の性格だろうか。いつも綺麗にしているのだろう。意外と綺麗好きなのだな。早百合は思う。
大きなベッドには毛布がかけられていて、こんもりと山になって膨らんでいた。
「寝てる……」


131:魔女の逆襲第18話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/07 23:20:38 9welyov7
 りぃん

 進入したついでに下着の一枚でも持って帰ろうと思っていたのに。

 りぃん

 まぁいい。みやげ物はいつでも持ち帰れる。
 なんたって、今の私には八年間封印されていたこの鍵があるのだから。一回使ったら粉々になってしまうおぼろ丸の錆びた鍵とは違う。何回でも使える万能の鍵。
 ここまで考えて、早百合は自分はこんなキャラだったか? と自問する。いままで感じていた罪悪感というものがだんだん薄れているような気がしていた。
 普通なら、鍵を見つけたのなら良樹に返却するか、一応報告だけしておいて予備の鍵として持っておく。そうだろう? 少なくとも、こんな不法侵入のために使うか?
 しかし、そんな自問をしても。早百合は二秒で忘れる。鈴のせいか、それとも早百合の屈強な意思か。罪悪感という鎖縄はもはや早百合には効かない。鎖鎌なら装備する。
 早百合は台所をぐるりと見渡す。
 彼女はある場所を探していた。手ごろな場所。ちょうどこの台所と扉一枚向こうの良樹の部屋での良樹の声が録音できるような場所が……。
 あった。ちょうど引き戸の上に湘南の海のイラストのジクソーパズルが飾られている。椅子に登ってその裏を覗いてみると、埃が積もっていた。どうやら飾ってあるだけでほとんど動かしてないようだ。
 ちょうどいい。
 にやりと口元が緩む。早百合はあることを考えていた。
 早百合は半年前、母親から中古のICレコーダーをもらっていた。もともと母親が自分用に使っていたレコーダーだが、最新式に買い換えた時に頂いたヤツである。早百合はもらってから一切使ってなかった。
 たしかフル使用で二十時間はいけた気がする。そのICレコーダーをここに配置するのだ。
 朝、ここに装着して録音を開始する。そのままフルで使用して昼と夜をまたぎ、次の日の早朝に合鍵で侵入して回収する。時間の関係上、深夜の数時間ほど空きができてしまうが、この方法ならほぼ一日の良樹の家での会話が盗聴可能である。
 ただ、充電と回収した後の音声チェックのために盗聴するのは一日おきではないといけないのが弱点だが……。
「これで、良樹の家での行動を監視できるわ」
 
 早百合は魔女と決別して以来(魔女はいまだに早百合のことは親友と言っている。けっ、反吐が出る)、早百合はどうすれば魔女にアドバンテージを持てるか考えていた。
 今の状態で早百合が良樹に告白すれば多少は良樹の心を揺さぶることはできるだろうが、最終的には良樹は魔女のところに行くだろう。当たり前だ、いままで自分は何のアクションも起こしてないのだ。成功は絶対しない。
 しかし今告白しなければ、魔女は良樹と恋人関係のままどんどん濃密になって行く。あの魔女のことだ、同棲や結婚、それに子作り。私ら女の子が躊躇するようなことも、ほとんど考えることなく自分のセンスと本能で思い立ったら即座に実行してしまうことだろう。
そうなると、良樹に好かれるのも良樹を奪うのもどんどん難しくなってゆく。
早百合はこう考えていた。
「遅くても、一週間以内には魔女から良樹を離さなければならない」
 一週間。七日間。
 これは戦争だ。早百合は思う。
 目標、良樹の奪還。魔女と破局させて、良樹を自分のものとする。魔女と良樹の間を離れさせて最終的にはコミュニケーションを停止する状態まで持ち込む。
 早百合はこの七日間で実行に移さなければならないことをひとつひとつ考えていた。それこそ戦争のように選択肢をいくつも広げて考えた。
 良樹に気持ちを伝えるか、アピールし振り向いてもらうか、魔女に良樹を嫌いになってもらうか、良樹に魔女を嫌いになってもらうか、

りぃん

 魔女を排除するか。

132:魔女の逆襲第18話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/07 23:22:09 9welyov7
 この五つか。

 一週間という数字に根拠は無いが、一応一区切りと言う意味で早百合はこれを期限とした。まぁ、後から思えばこれはとてつもなく認識の甘かった数字だったのだが。
 早百合は時刻を確認する。携帯電話のディスプレイには午前六時二〇分と表示されていた。
 そろそろ逃げたほうがいいかもしれない。
 早百合は、作業は十五分までと決めていた。それこそ、どこかの泥棒猫のように愛する男の下着についた汗といろんな匂いに時間を忘れて夢中になって最終的に本人に見つかって嫌われてしまったら、すべてが水の泡だ。
 まぁ早百合の場合はその吸うモノ自体が無いのだが。
 早百合は持ってきていたICレコーダーを取り出す。携帯電話より一回り小さい黒く光るボディ。早百合はフルモード設定にし、録音ボタンを押した。録音マークが赤く二・三度点滅
し録音を開始する。
 音のチェックは……やってなかったがたぶん大丈夫だろう。
 ジクソーパズルの後ろに置く。なんとか置くことができた。不意に動かさない限り、落ちることは無いだろう。
「……作業完了」
 早百合は口で手袋を脱ごうとしたが、そもそも手袋などしてなかった。なに片平なぎさを気取っているのだ自分は。
 早百合は椅子を戻し音を立てずに台所を歩くと玄関に戻る。
 もう一度台所を見渡す。
 綺麗に片付けられた台所。綺麗に片付けられすぎている気もしないでもない。
 しかし、今はそんなことは考えないでおく。良樹に気付かれることなくこの部屋を出ることが大事だ。家に帰るまでが遠足だし、外へ脱出するまでが侵入。語呂はどちらも良い。
 扉を開ける。廊下に誰も居ないことを確認した後。早百合はするりと扉の間を抜けて外に出た。身長に扉を閉める。
 ガチャリ。
 鍵をかける音が大きく響いたような気がして、早百合のからだから汗が吹き出た。
 しかし、これでミッションは終了だ。早百合は満足げに笑う。
 早百合はニヤつく顔を抑えながら、廊下を歩きマンションから脱出した。
「明日の録音内容が楽しみ」
 そう呟いて。早百合はマンションを見上げる。
 長く縦に伸びたマンション。
 ジェンガ。
 以前までジャンガのように崩れてしまいそうな心。しかし、今は違う。早百合は胸ポケットの上からぎゅっと鈴を握り締めた。握った手から自分の胸の荒々しい鼓動がどくんどくんと伝わってくる。
 ここは落ち着いて対処したほうが得策か……。
 早百合は良樹が出てくるまで待って一緒に登校するつもりだったが、ここは離れておこう。いくら時間が無いとは言ってもがっついたら事を仕損じる。
 走って十字路を曲がり、バス停まで行くとまた今日もいいタイミングでバスが来ていた。乗り込むんで開いていた席に着く。
 早百合は「もし指紋取られたら終わりかしら?」と馬鹿なことも考えながらバスの中揺られ学校へと向かっていく。

りぃん。

 早百合が出ていって数分たったぐらい。
 良樹の部屋の閉められた窓枠のカーテンから
 布団がもぞもぞと動く音。毛布で頭までかぶっていた体がだるそうに起き上がる。
 立ち上がると、部屋の寒さにおおうと身震いした。腕で自分の体を抱き、寒さを逃がさないように体をあっためる。
「布団が違うとなかなか寝にくいものなのだなぁ……」
 早百合は良樹がまるまって寝ているとばかり思っていた布団。そこで寝ていたのは実は良樹では無く、魔女こと紅行院しずるだったのである。
(続く)


133:魔女の逆襲第18話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/07 23:23:16 9welyov7
執筆中、迷走しかけましたがなんとか修正できる流れを作れそうです。

134:名無しさん@ピンキー
07/02/07 23:46:22 hwYcHRU4
すかさずGJ

135:名無しさん@ピンキー
07/02/08 00:05:25 og0oIkkY
さゆりんのストーカー全開の行動にwktkが収まりきらないぜ
ラストのしずるさんの状況を知ってどういう行動にでるのか

136:名無しさん@ピンキー
07/02/08 00:34:06 7nJRteva
ていうか良樹はドコニネテンダwww

137:名無しさん@ピンキー
07/02/08 00:37:12 4bbkgRk6
GJ

小ネタがどんどん冴えてきて俺好みだ。
「鎖鎌」って俺と同世代かよww

↓多分「鎖鎌」の元ネタ
URLリンク(www.geocities.co.jp)

138:名無しさん@ピンキー
07/02/08 00:44:30 B3pKIDCq
次に流行るのは『鎖銃』だな。
(元ネタは双葉)


139:名無しさん@ピンキー
07/02/08 00:47:06 pKaOwyKi
早百合――!!布団布団!!

140:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/08 01:46:59 I20DV8yW
時間たってからすいません。130-131の間が落丁していました。
コレの間に

 顔は見えないが良樹だろう。冬場なので布団を目深にかぶってまるまって寝ている。その様子が可愛くて早百合は寝顔を見たくなる。しかし、すぐさまふるふるとその欲望を振り払うかのように頭を振ると、音を立てずに引き戸を閉めた。
 今は中に入るのは止めておいたほうがいい。時計は微妙な時間でいつ起きるかわからない。早百合は今の自分は不法侵入者と言い聞かせる。まぁ見つかってもいくらでも言い訳はできるが……、今は避けとくべきだ。
 早百合は戸をしめて振り返る。台所スペースには流し台と電気コンロが通常設備として用意されている。床には一人用の冷蔵庫がある。その上の棚には電機ジャーが置いてあった。
コードは抜かれている。電気代節約のために保温せず、その都度炊くようだ。電気代はこちらのほうがお得。よく実践している。
 しかし、本当に綺麗にされている。三角コーナーは生ゴミが一切無いし、ゴミ箱は全て新しいビニール袋に変えられている。
 洗濯物を入れる籠を発見するが、中身は空。昨日のうちにすべて近くのコインランドリーでメリーゴーランドしたらしい。ということは全ての衣服は戸一枚隔てた隣の部屋のクローゼットにしまわれてるのが濃厚だ。
 早百合は内心舌打ちをしたい気分だった。やろうとしたときには全て片付けられている。孝行したいときに親は無しと言ったフレーズと似てるが、意味は違う。
 くっ、タイミングが悪い。悪すぎる。せっかく、せっかく、

を挿入してください。

あと、すいません。鎖鎌の元ネタはわかりません(汗

141:名無しさん@ピンキー
07/02/08 07:03:54 GZ75MxCw
投下します

142:名無しさん@ピンキー
07/02/08 07:05:20 GZ75MxCw
名無しさん@ピンキー sage 2007/02/07(水) 19:22:22
投下ラッシュktkr!!!
神々よGJ!!!



「やっぱり修羅場はいいな!」
そうパソコンに一人語りかける男、つまりは俺、永山 茂はエロパロ板修羅場スレの住人である。
まだ二十歳を過ぎてない(高2)けど、そこら辺は精神年齢でカバーだ!
それはそうと、今日も修羅場スレで神々の作品にGJを送っていた。

コンコン

誰かがノックをしてきて、慌てて修羅場スレを閉じる。
「だ、誰だ!」
焦って、思わず声を荒げてしまった。
「何よ!そんな言い方ないじゃない!」
そう怒りながら部屋に入ってきたのは幼馴染みの音子(ねね)だった。
音子は、誰もがハッとするような美少女だ。
去年は学祭のミスコンで優勝したし、まさに誰もが認める美少女だろう。
だが、如何せん性格が…
「なんだ、音子か…」
「なんだ、って何よ!
せっかく幼馴染みの音子様が来てやったってのにお茶も出してくれないの?」
「へいへい…」
渋々お茶を淹れに行く俺。

143:名無しさん@ピンキー
07/02/08 07:06:39 GZ75MxCw
はぁ、音子は何でああなったんだ?
小学生まではもっと素直で可愛かったのになぁ…。
今の音子はツンデレ…いや、ツンツンツンツンツンツンツンツン………デレだ。
これじゃあ修羅場にならないな…。
音子は俺の事好きじゃなさそうだし。
おっと!考え込んでる内に結構時間が経ってしまった。
あぁまた音子にどやされる…。
そもそも、何でウチに来たんだよ…。


お盆にお茶と茶菓子を載せ、部屋の前に立つ。
すると、部屋の中から不審な音が…。
『…カタカタカタ…』
なんだこの音?
も、もしかして…キーボードか!
「ね、音子!お前なに勝手に人のパソコンさw……」
キーボードの音を聞き、思わず部屋に飛び込んだ。



そこには、虚ろな目で画面を見つめ、激しくキーボードを叩く音子がいた。
音子ってブラインドタッチできたの?
いや、そんな事考えてる場合じゃないって俺!
「ね、音子!なにやって……ぁ」
後ろから画面を覗き込むと、そこには見慣れた修羅場スレが…。
「ちょ、止めろって」
音子は反応しない。

144:名無しさん@ピンキー
07/02/08 07:10:54 GZ75MxCw
画面をもう一度よくみると、音子は何か書き込んでいるようだった。
なになに…『なんなの?あなた達。
あなた達のせいで、ウチの茂が私に構ってくれないの!
いい加減にしろ!この雌豚ども!
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……』
このような文章が10レスぐらい続いている。

ちょ、どういうこと?
いや、修羅場スレのみんなはネタだと思ってくれるだろうが、さすがにこれ以上は迷惑だろう。
「音子!いい加減にしろ!」
すると音子はキーボードを打つのを止め、ゆっくりと振り向いた。
機械的な、人形のような笑みを顔にはりつけて。
音子って、ヤンデレ?
「何で庇うの?こんな雌豚共を」
背筋がゾクッとした。
恐怖と、少しの、されど濃密な歓びに。
「め、迷惑だろ?」
「雌豚共を気遣う必要なんてない!」
段々心拍数が上がっていく。
これは、俺が望むモノ?

145:名無しさん@ピンキー
07/02/08 07:12:17 GZ75MxCw
「あたし、ずっと待ってた…。
茂が、あたしを茂のモノにする事を。
今日だってそう、でも、分かった。
茂には、あたしだけだって自覚して貰わないといけないって。
もう、待てない、から」
そう言って音子は、部屋の隅に置いてある鉄バットを掴み、振り上げ、パソコンに向けて振り下ろした。
ガキッ!と音を出し、パソコンは粉砕された。
「音子!やめ…グッ」
思わず止めようとした俺のボディに音子の一撃が入った。
「しげる?おとなしくまってて。
これがおわったら、ふたりで、ひとつだってこと、おしえてあげる。
ちょっといたいけど、がまんしてね?」
そう言って振り下ろされた鉄バットは俺の頭を捉えた。
それっきり、俺の意識はブラックアウトした。

146:名無しさん@ピンキー
07/02/08 07:13:35 GZ75MxCw
以上です。
要望があれば続きを書きたいとおもってます。

147:名無しさん@ピンキー
07/02/08 08:12:31 jtNsK7nS
言うまでもない


wktk

148:名無しさん@ピンキー
07/02/08 09:27:29 53+tlGH7
\         /_ /     ヽ /   } レ,'           / ̄ ̄ ̄ ̄\
  |`l`ヽ    /ヽ/ <´`ヽ u  ∨ u  i レ'          /
  └l> ̄    !i´-)     |\ `、 ヽ), />/        /  地  ほ  こ
   !´ヽ、   ヽ ( _ U   !、 ヽ。ヽ/,レ,。7´/-┬―┬―┬./  獄  ん  れ
  _|_/;:;:;7ヽ-ヽ、 '')  ""'''`` ‐'"='-'" /    !   !   /   だ.  と  か
   |  |;:;:;:{  U u ̄|| u u  ,..、_ -> /`i   !   !  \   :.  う  ら
   |  |;:;:;:;i\    iヽ、   i {++-`7, /|  i   !   !  <_      の  が
  __i ヽ;:;:;ヽ `、  i   ヽ、  ̄ ̄/ =、_i_  !   !   /
   ヽ ヽ;:;:;:\ `ヽ、i   /,ゝ_/|  i   ̄ヽヽ !  ! ,, -'\
    ヽ、\;:;:;:;:`ー、`ー'´ ̄/;:;ノ  ノ      ヽ| / ,、-''´ \/ ̄ ̄ ̄ ̄

149:名無しさん@ピンキー
07/02/08 10:01:09 VJ/sLXGL
ちょっと会社休んで幼なじみの旅に出てくるわ…

150:名無しさん@ピンキー
07/02/08 12:31:20 0YhrM0Yc
気をつけろよ、最近は幼馴染み詐欺ってのがあるらしいから。

詐欺から生まれる修羅場も、世界にはあるかもしれんが。

151:名無しさん@ピンキー
07/02/08 12:49:26 5CEL+DPj
続きwktk



しかし、実際このスレにあんな書き込みされたら住人はびっくりだ。
俺は、ネタでもマジでもあんな書き込みは歓迎だがな!!

152:名無しさん@ピンキー
07/02/08 15:48:36 piItzVsy
便乗wktk

俺もそんな書き込みがあったら色んな意味でwktkするだろうな。

153:名無しさん@ピンキー
07/02/08 16:19:26 EoYX92Is
>>133
日本語おかしくないか? むしろ、文章そのものがおかしいよ

154:名無しさん@ピンキー
07/02/08 16:23:31 B3pKIDCq
 荒 ら し キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!

155:名無しさん@ピンキー
07/02/08 17:36:02 pKaOwyKi
>>153
先生!正しい日本語とうまい文章を馬鹿な僕に教えてください!!

156:やや地獄な彼女
07/02/08 17:37:10 /slmpppJ

「え~、『十一月十五日―スケキヨが帰ってきてから丁度半月。金田一耕助がやってきて、そろそろひと月になろうかという十一月半ばの日。
 この日こそは犬神家の一族の間に、最初の血が流された日であり、悪魔がいよいよ行動開始した日であったが、しかし、ここでは、その殺人事件に言及する前に―』
 つまり、この段落ではやな……」
 
 普段だったら、とても退屈な現国の授業。
 相も変わらず眠気を誘う、初老の先生の教科書の朗読が教室に響く。
 でも今日は、それどころじゃない。居眠りなんかしてる場合じゃない。
 といってもそれは、あくまで授業に集中しているって意味じゃない。
 結論から言うと、ボクは、いつも以上に先生の声なんか聞いちゃいなかった。
 ボクが耳を澄ませて聞いていたのは、

―ぶぶぶ、ぶぶぶぶ、―うぃん、うぃん、うぃん、うぃん……。
 という、無気味な振動音と、
「……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……ぁぁぁぁ……くぅぅぅ……!」
 という、歯を食いしばって何かをこらえる呼吸音。

 音の発信源は、このボク―落合静香の一つ前の席。そこで震えながらも腰を降ろす一人の男子生徒。そのアナルで凶暴なサンバを踊り続けるパールローター。
 彼の名は柴田遼太郎―遼くん。
 ボクの幼馴染みにして、親友にして、義兄にして、恋人にして、婚約者にして、そして命よりも可愛いボクの……奴隷クン。

 ここは席替えの際、クラスメートに小銭を払ってまで獲得した、彼の真後ろの席。
 ボクは今、吐く息すら彼の背にかかるその席で、遼くんに“罰”を与えていたんだ。
 罪状は、姦通罪。
 早い話が、浮気。
 だってしょうがないじゃない。自業自得だよ、遼くんのさ。
 ボク以外の女子生徒との接触を、厳しく厳しく禁止してあるにもかかわらず、遼くんったら、それを守れなかったんだから。
 それも、よりによってあの女と……!
 ああ、いま思い出しても、身震いがしてくるよ、全く!
 ボクが、このクラスで一番キライな、それこそ吐き気のするほど大嫌いな、あの女……山口由利。
 よりによって、そんな女と……!!
 確かに、一瞬でも遼くんから眼を離したボクだって、全くの無責任とは思わないよ。
 でも、ボクだって仮にも女子高生なんだから、友達と行くトイレって行為が、人間関係を保つ上で、どれだけの意味があるか、遼くんだって、分かってくれるよね?
 それなのに、ちょっとボクがいない隙に、ボク以外の女と……それも、それもよりによって、あの、ヤマグチなんかと……!!

 許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!許せない!!
 そう思った瞬間、ボクは無意識にリモコンのつまみを最強にひねってしまっていたんだ。


157:やや地獄な彼女
07/02/08 17:39:33 /slmpppJ

「~~~~~~~~!!!!!」 
 びくんびくんびくん!

 遼くんの身体が、まるで魚みたいに痙攣する。
 机にがばりと伏せ、声を出さないように学ランの袖口を噛みしめる。
 やがて遼くんは、精根尽き果てたように脱力し、それまでの机にしがみつくような前傾姿勢から、くたりと椅子に崩れ落ちた。
 ボクはそれに合わせて、リモコンの電源を切り、背中越しに遼くんの耳元に囁いた。
「イっちゃたの遼くん?」
 
 次の瞬間、耳まで真っ赤になった遼くんがボクを振り返るけど、やがて、眼を伏せ、俯いて前を向いた。
「違うよ」
 と、呟いて。
 でも、嘘だ。
 ボクには分かる。
 遼くんはイったんだ。
 それも授業中に、ズボンとパンツの中で、おもらししちゃったんだ。
 うふふふふ……恥かしいね遼くん。
 仮にも学級委員長のキミが、授業中にこんな事をしているなんて、クラスのみんなが知ったら、ホントどう思うんだろうねえ?
 誰も知らないキミの素顔を、このクラスで知っているのはボクだけなんだ……。

「―!」
 あっ、いっけない、そんな事考えたら今、一瞬軽くイキそうになっちゃった……。
 んふふふふ……すっごいな、ボク。遼くんの事を考えるだけで、こんなに気持ちよくなれちゃうなんて。我ながら信じられないよ。
 こんなボクたちが結婚なんかしたら―。
 毎日毎日、こんな気分が味わえるんだとしたら―。
 あああ、すごい……ひょっとしたらボク、幸せ過ぎて狂っちゃうかもしれない……。
 でもね、遼くん、まだまだだよ。
 ボクはキミを、まだまだ許してられあげない。

 「遼くん」
 もう一回、彼の耳元で囁く。ちょうどボクの吐息が遼くんのうなじをくすぐるように。


158:やや地獄な彼女
07/02/08 17:41:16 /slmpppJ

「……何?」
 遼くんが青ざめた表情で、おそるおそる振り向く。
 そんなに恐がらなくてもいいのに。
「気持ちよかった?」
「……」
 顔面蒼白だった遼くんが、たちまち真っ赤になる。
 彼は俯いて何も言わなかったけれど、ボクにとって答えとしては、それで充分だった。
「じゃあ、遼くん、これが済んだら終わりにしてあげるよ」
 その瞬間、遼くんの表情がまたまた青くなった。
「……まだ、やるの?」

「え~、では次の段落ですが―」
 その時になって、先生はようやく、一人ひっそりと挙手している遼くんの事に気がついたみたいだった。
「ん、どうした柴田?」
「あ、その、いえ……」
「次の段落、読んでくれるんか?」
「あ……はい」
「ふ~ん。どういう風の吹き回しや?」
「……」
「ま、ええわ。ほなら、読んでもらおか。105ページの3行目から」
 もそもそと、遼くんが立ち、教科書をひらく。

「『十一月十六日。―その朝、金田一耕助はいつになく朝寝坊をして、十時だというのに、まだ寝床の中でモゾモゾしていた。―』……うっ……!」
「ん? どないした?」
「あ―いえ……。『耕助がそんなに朝寝坊をしたというのは、昨夜……んんんっ……』」

 うぃん、うぃん、うぃん、うぃん、うぃん、……。
 ポケットの中の、リモコンの電源を再びオンにする。
 遼くんのアナルでローターがまたもや、ビートを刻み始める。
 強、中、弱、中、弱、強、最強、オフ、最強、弱、……。
 前の席だけに、遼くんのお尻と背中が小刻みに揺れているのが、手に取るように分かる。
 いま、遼くんの全神経を支配しているのは、ボクの指先一つなんだ……!


159:やや地獄な彼女
07/02/08 17:44:41 /slmpppJ

 くちゅり。

 ああ、だめ。
 そんな事考えたら、あそこが疼いて疼いて、もう我慢出来ない。
 もう、指が……我慢出来ない。
 んんんんんんっっっっ!!!!!
……ああ……まただ、……また、ちょっと触っただけで、イっちゃいそうになるっ!!
 いやっ! ひとりでっ! ひとりでなんてイキたくないっ!!
 遼くんっ、 助けてっ!

「『昨日、那須神社で……ぐううぅぅっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ、……スケキヨの手形を……んぐっ!!……手に……入れた……ぁぁぁぁ……、あの、奇妙な仮面を被ったお、と、こ、に……ぅぅぅぅぅ……!!』」
 んふふふ……遼くんも、またまたイキそうになってるよぉ。
 一緒にイこっ!
 ボクと一緒にイっちゃおっ!!
『イク時は一緒に』 
 それが、ボクが制定した“遼くん刑法”の第5条だもんねっ?
 ああああ……もう、限界ぎりぎり……っ!
 じゃあ、じゃあ、いくよっっ!!
 ボクは、リモコンのつまみを最強にした。
 
 遼くんは、膝から崩れ落ちた。
 のけぞり返り、一瞬天を仰いだ遼くんは、教科書を取り落とし、そのまま脱力して床に膝をついた。
「おい柴田、どないしたんや? オイ! しっかりせえ!?」
 嬉しい……。遼くんも……イってくれたんだね……。
 ボクもイったよ。そんな、美しいまでにブザマなキミの姿で、あそこが音を立てるくらい感じて、……そのままイっちゃったよぅ……。
「……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……」

「おいシバ遼、マジで大丈夫か?」
「体調悪かったの、お前!?」

 まずい。
 遼くんがいきなりぶっ倒れたもんだから、先生やクラスのみんなが、騒ぎ始めた。
「先生、柴田君を保健室まで連れて行きます」
 そう言うや否や、つかつかと寄ってきて、遼くんに肩を貸そうとする女。
 おい、ちょっと、アンタ、―何やってんのよ!? ヤマグチィィィィ!!!!


160:やや地獄な彼女
07/02/08 17:48:58 /slmpppJ

「山口? お前確か……?」
「はい、この組の保健委員です。あたしが柴田君を保健室に連れて行きます」
 ヤマグチィィィィ!! 何ボクの遼くんに勝手に触ってんのよぉぉぉ!!!!
「そやな。ほんならちょっと、頼んでええか?」
「分かりました。―じゃ、行きましょう柴田君」
 そう言ってヤマグチの不潔な手が遼くんに触れた瞬間、彼はびくりと身体を震わせ、ボクを見た。おそるおそると。
「……柴田君?」

 遼くんのその怯えた眼を見た瞬間、ボクは一目でわかったんだ。
 ああ、遼くんは‘正気’に戻ったって。
 そうだよ。
 そうだよね、遼くん。
 キミだってイヤなんだよね? こんな腐れゾーキンみたいな女の手を借りて立ち上がるなんて。そんなのキミのプライドが許さないよね?
 分かってる。
 キミがどれだけ誇り高い人か、そんな事はボクが一番分かってる。
 だってキミは、もうボクのものなんだもの。
 いくらヤマグチが“元カノ”だっていっても、今じゃ単なるベンジョムシ。そんなムシケラに触られるのは、耐えられないよね、遼くん?
 
「ヤマグチさん」
「……なに、落合さん?」
「柴田君はボクが連れて行くよ。委員長を助けるのは、副委員長のボクの役割だからね」
 そう言ってボクが手を差し出すと……遼くんは俯きながら、その手を取ってくれたんだ。

 ぎりっ!!
 その瞬間、ヤマグチの歯ぎしりの音が聞こえた気がした。
 だけど、無視。
 ムシケラだけに無視。
 んふふふ、だめだよ、そんな物凄い眼でこっちを睨んでも。
 ばかだなぁ。ボクと遼くんの間には、もう1ミクロンも隙間なんか無いっていうのに。
 ボクは、勝利の微笑みでヤマグチを軽くいなすと、遼くんを連れて教室を出た。
「いい子になったね、遼くん。……ご褒美はなにがいい?」
「……」
「んふふふふ……遼くんは本当に遠慮深いなぁ。それじゃあ、これから人気の無いところで、たっぷり可愛がってあげる。それでいいかい?」
「……うん」
「じゃあ、せめて場所くらい選ばせてあげる。どこがいい? 体育倉庫? 旧校舎裏? 音楽準備室? それとも屋上?」

(続)

161:名無しさん@ピンキー
07/02/08 17:52:16 7h3EYPkl
時代はMか・・・。
続きwktk!

162:名無しさん@ピンキー
07/02/08 17:55:47 pKaOwyKi
こ、これは新感覚の予感!!それはともかくGJ!!

163:名無しさん@ピンキー
07/02/08 18:14:47 7nJRteva
やばいこれはやばいGJ

164:名無しさん@ピンキー
07/02/08 18:18:16 1W+Z/mlF
GJ!

関係ないがシバ遼って・・・某国民作家?

165:名無しさん@ピンキー
07/02/08 18:21:20 PvviLiKf
アッー!と叫びたくなるような始まりだった
こりゃ遼の命より肛門のほうが心配な展開だ、だがGJ!

166:名無しさん@ピンキー
07/02/08 19:00:33 5CEL+DPj
超GJ! なんか怯えた男にすぐにでも逃げられそうw 今からwktk

167:トライデント ◆mxSuEoo52c
07/02/08 19:30:43 I7VR+0TO
では投下致します

168:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/08 19:35:08 I7VR+0TO
 第21話『迷子の迷子の狐さん。あなたのお家はどこですか?』

 階段から降りてゆく駆け足は思っている以上に軽い。
俺は溢れだしそうになる笑いを両手で抑えるので大変であった。
恋する女の子は好きな異性から冷たい素振りを見せると自分が捨てられてしまうような感覚を受けると聞く。
ヤンデレ症候群の女の子は常人よりも想っている人に依存している傾向にあるから、音羽は今頃屋上の方で泣いているのであろう。
 これも計画の内だ。
 音羽の武器であった復讐はあっけなく効果はなくなり、秘密兵器であった『約束』も俺の勝手で破棄させてもらった。
これで俺と音羽の繋ぐ糸は完璧に消え去った。恋する女の子は一方的に想い人から傷つけられて、自暴自棄に動きだす事になる。
単純に言えば、ヤンデレ症候群の進行速度が進み、精神的異常が見られる。
下手をすれば、狂気を振りかざす可能性もある。火加減を間違えばこちらも火傷を負うが俺は音羽の優しい心を信じる事にする。
 独りぼっちになった俺に声をかけてくれた音羽。
別れる時に泣きそうになっても、その純粋な心はどんな物よりも美しかった。

 放課後になると文化祭の作業のために机は隅の方に運ばれて、皆は作業に没頭する。
うちのクラスの出し物はただ単にポスターを提示するという。
そのポスターは市販で売っている皆の自慢のポスターを教室内にあちこち張るだけという文化祭の行事としてはとても楽な作業である。
花山田がエロゲーやアダルト関連のポスターを持ち込んだ時は女子全員からブーイングを受けたりしたが、
最終的にはアニメやゲームやアイドルと言った普通のモノに収まったらしい。
(花山田はロッカーに監禁されているが)俺は出し物が上手く進んでいるのを確認して、休んでいた時のノートを移し作業を辞めて。
ある程度完成しているノートを提出しようと教室の外に出た。
廊下に沢山の書類の山を抱えた見慣れた人物が頼りない左右に足を取られていたので俺は心配になって声をかけた。 

「紗桜。大丈夫か?」
「に、兄さん」
 ツインテールの髪を左右にふわりと揺らして、不自然な足取りで紗桜は頼りなさそうな足腰で立ち止まってくれた。
病院で入院している間に文化祭実行委員という役職を友達の代わりに任命された紗桜と最近話す機会が少なくなっていた。
思わず、俺は呼び止めてしまったが、特に用はなかった。
でも、小柄な姿で頑張っている紗桜を見てると俺はつい手助けしたくなるのだ。
「どこに持っていくんだ。半分ぐらい運んでもいいぞ」
「職員室です」
「よし、目的地は同じだ。一緒に突入するぜ」
「兄さんも職員室に用があるんですか。今度は一体何をやらかしたことやら」
「人を問題児のように扱うなっての。休んでいた間に溜まっているノートを提出して点数を稼いでおかないと。後々、大変な事に」
「兄さんも頑張っているんですね。別に手伝わなくてもいいですよ。私は自分の任務を全うするために全力を尽くしますから」
 とはいえ、抱えている書類の山が視界を遮っているせいなのか足元に余裕はない。
一生懸命に背伸びして頑張っていても見ているこっちとしては紗桜は何だか頼りなかった。
 強引に書類の山を奪おうとして、紗桜の身体に触れた時であった。
 パチン。
 ボタンが大きく弾ける音が聞こえてきたのだ。
「まさか……」
「ううっ……兄さん。ブラが取れちゃった」
 顔を紅潮させて冷静を装っていた紗桜が激しく動揺している。
俺は女の子の事はよく理解できないが、今が紗桜に関する緊急事態ということはわかる。
 どうする?
「に、に、に、兄さん」
「ちょっと落ち着け紗桜」
 落ち着くのは紗桜だけど、俺自身に同じ事を言ってやりたい。
「うぇぇ~~ん。兄さん付け直してよ」
「女のブラジャーの付け方なんか男の俺が知っているとでも」
「あぅあぅあぅあぅあぅあぅ……」
 書類を片手に紗桜が今にも泣きだしそうな表情を浮かべて狼狽えていた。許せ。紗桜よ。兄でもできないことがあるんだ。

169:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/08 19:37:16 I7VR+0TO
 混乱していい策も考えられないまま時間が過ぎ去って行く。紗桜のブラが外れたぐらいで俺はとんだ騒動に巻き込まれたもんだ。
 だが、救いの手というものはどうやら俺達に存在していたらしい。
「月君。紗桜ちゃん。こんなとこで何しているの?」
 この学園最高上級生の証である紺色の胸のリボンを身に付けている、水澄家で最も頼りになる虹葉姉が何事かと心配そうに尋ねてきた。
「お姉ちゃん。お姉ちゃん」
「虹葉姉」
 役に立たない男よりも数段頼りになる虹葉姉がやってきたら事態は大きく変わる。
女の子のブラが取れようが、そんな事は別に大したことでもないだろう。
「ブラが取れちゃったの。女の子もいろいろと大変だからね。
ここはお姉ちゃんに任せなさい。月君は紗桜ちゃんが持っていくはずだった書類を持ってあげてね」
「わかった」
「ありがとう。お姉ちゃん」
 緊急事態を迅速に行動し冷静に判断を下せる虹葉姉は、俺達の立派な姉だった。
 だが、

 パチン。

「うにゅ。月君。お姉ちゃんのブラも外れちゃった。どうしよう……」

 真性のアホだ。こいつ。

 昔、憧れていた虹葉姉も今となってはただのドジっ子に成り下がってしまった。

170:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/08 19:40:40 I7VR+0TO
 羞恥。
 その二文字の言葉通りにブラを外れた虹葉姉と紗桜の制服を半分ぐらい脱がせて、
男の俺が慣れないブラのホックを付ける作業は長年顔を合わせている家族だとはいえ、女の子の柔らかい体に触るのはとても恥ずかしかった。
さすがの虹葉姉と紗桜も顔から下まで赤くなって、双方とも恥ずかしい時間を過ごしてしまった。

 放課後の時間を過ぎ去ると陽が沈み時間が早くなってきたのか、校内が真っ暗に変わってきた。
廊下の上にある蛍光灯が電気の明かりを照らしている。
とはいえ、夜の校舎は思っている以上に不気味で学園七不思議が実際に起こりだす雰囲気になっている。
俺は教室で学友達が文化祭の作業に没頭している間に、借りてきたノートを移す作業が大体終わったのでいい加減に家に帰ろうと思っていた。
下駄箱までやってくると俺は思わず絶句してしまう。
 薄暗い電灯が照らす下駄箱に女子生徒が立っていた。
立っている場所は俺の下駄箱の目の前だ。
しかも、その顔は今日の昼休みに奈落の底に突き落としたはずの音羽だというので俺は驚愕していた。

「月ちゃん。私は月ちゃんが帰ってくるのをずっと待っていたんだよ。さあ、帰ろうよ。私達の家に」
「うわっ……」

 思わず小さな悲鳴が俺の口から漏れる。
 ヤンデレ症候群に感染された音羽の行動は間違っていない。
自然な事だ。だが、その症状の進行速度は俺の想像を遥かに超えていた。
このストーカーと同じ行動を取るのは俺の考えていた計画より断然に早かった。
 更に驚愕する理由は……。
 音羽の右手にしっかり握られているのは、サバイバルナイフであった。
キャンプ用で使うあのライトのせいで捕まった条例違反のナイフである。

「きゃはははは……。ねぇ……早く一緒に帰ろう。そして、今度は絶対に月ちゃんをあの家から出さないようにするから。
一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝ましょう。それが私達にとって、とても幸せな事なんだよ」
「ちょっと待て。音羽」
「欝陶しい虹葉さんや紗桜ちゃんが邪魔ならこのナイフでメチャクチャに刻んであげる。

月ちゃんを拘束する鎖なんて私が切り裂いてあげるから。ねえ、一緒に」
 狂気に犯された者に俺の言葉は通じない。何かを言う前に音羽は俺に向かって突進してきた。
ナイフを両手で持ち、突き刺すように俺の腹部を狙っている。
 こういう事態は予測できたが、まだ準備は全然やっていなかった。
 舐めていた。ヤンデレ症候群をただの女性が発狂する程度の病にしか思ってなかった。
そんなもんに殺されるのは間抜けかただのアホだと見下していた。だが、この病の恐ろしさを理解してしまうと以前のように笑えない。
 これでは殺されるはずだ。

「どうして、避けるの? 私のことを嫌いなんですか? こ~ん。嫌いなの」
「ナイフで突き刺して来たら、普通は逃げるっての」
「ダメです。今日は絶対に月ちゃんを連れて帰るんだから」
 ナイフを水平に構えて、今度は身軽に左右前後にステップを取り出した。
音羽はタイミング狂わせて、俺が読み間違えることを誘っている。
距離は音羽のナイフの間合い並みに離れているがこれ以上無駄な動きをすると音羽に余計な隙を与えることになる。
 ウチの担任も別れた奥さんにこんな風に殺されてしまったのだろうか。全国で犠牲になっている奴も無残に女の子に殺されたのか。
 切れ味のいいナイフが薄暗い明かりに照らされて銀色に光りだす。
見惚れるわけはないが、音羽が俺を殺そうとする現実をどこかで認めたくなかった。


「やめるんだ。音羽」
「月ちゃんと一緒。ずっと、一緒なんだから」

 そう、僕らはずっと一緒だった。


171:トライデント ◆mxSuEoo52c
07/02/08 19:47:41 I7VR+0TO
というわけで第21話終了です

次回は明日。明後日に23話で音羽編は一応終了する予定です


上の方で私が投稿した事が原因で荒れてしまったり
神々が投稿できない雰囲気を作ってしまい申し訳ありませんでした。
前にもこんなことがありましたが、今回も粘着な荒らしに気がちょっと参ります

私の作品が面白くない又は不愉快な気分にさせてしまっていると言うならば
今現在連載している水澄の蒼い空を打ち切りする事も考えていますが

どうでしょうか?

172:名無しさん@ピンキー
07/02/08 19:55:39 X9Q1jXna
>>171
気にするな
一人の粘着があらしてるだけだから。
とりあえずあなたもNGワードを登録することをオススメする。

神が減るのは全裸で待っている俺にはきつい仕打ち

173:名無しさん@ピンキー
07/02/08 19:56:15 og0oIkkY
音羽((((((((*´Д`)))))))ガクガクハァハァブルブルハァハァガタガタブルハァハァガタガク

トライデントさんに非は無く粘着荒らしが全部悪いのですから、気に病む必要はありませんよ
それにこの作品が打ち切られたら楽しみにしている俺が物凄く悲しむ(´・ω・`)
おまいら荒らしは>>3の対応でいこうぜ

174:名無しさん@ピンキー
07/02/08 19:56:59 8cELBFzS
テンプレも読めない連中は華麗にスルーでお願いします。
水澄は個人的に気に入ってるのでぜひ続けて下さい。

175:名無しさん@ピンキー
07/02/08 19:57:04 T84FhBUH
GJ

この一言で全てが伝わるはずだ・・・

176:名無しさん@ピンキー
07/02/08 20:01:42 WKvu/b5r
だめぇ・・・ずっと一緒にいてくれなきゃ・・ヒック・・・いやだもん・・・

この状況ですらこんな考えしか浮ばないのは俺だけでいい。

177:名無しさん@ピンキー
07/02/08 20:04:13 0YhrM0Yc
GJ。そういえばトラさんって、濡れ場書かないよねーと、さりげなくお願いしてみる。

荒らしはスルー。これは読み手も書き手も共通事項です。無視無視!

178:名無しさん@ピンキー
07/02/08 20:04:42 Rz/ky+Ho
>>171
GJ

作者の皆様が気に病むことじゃないさね。

それよりもヒロインを病ませて欲しいさね。

179:名無しさん@ピンキー
07/02/08 20:11:37 6UVAIFz4
>>171
続けるかやめるかはトライデント氏自身で決めてほしいと思う。
かまってちゃんだと思われるでしょうし。

けど、ほとんどのスレ住民の気持ちは同じだと思います


180:名無しさん@ピンキー
07/02/08 20:14:27 Cjw8/ROv
>>171
叩かれるのは有名税ですよ。
逆にどこの世界でも叩かれない奴なんて存在しないし。
叩き=テロですんで屈しないでください。
打ち切ったら他の神に矛先を向けるだけですし。

181:名無しさん@ピンキー
07/02/08 20:24:27 QhSbOJF+
フォォォォォォォォ!GJです、続き期待してます!

182:名無しさん@ピンキー
07/02/08 20:57:54 ++tlcknT
>>171
トライデント氏GJです!やめるなんて言わないで下さい!
全裸の俺には厳しすぎます!

183:名無しさん@ピンキー
07/02/08 21:00:26 piItzVsy
おまいがssを投下してくれるかぎりGJの支援は惜しまんぜ。
てか、マジでやめて打ち切りなんて俺のwktkを奪わないで。
とはいえ、無理はなさらぬように。

184:名無しさん@ピンキー
07/02/08 22:12:00 iBjsNbyW
誘い受けも控えめにね…。

185:名無しさん@ピンキー
07/02/08 23:24:13 a7oK5kql
>トライデント氏
今更ここで反応するとかちっとは空気嫁よ

186:名無しさん@ピンキー
07/02/08 23:37:57 7nJRteva
この流れで煽りかますとか、お前が空気嫁よ

187:名無しさん@ピンキー
07/02/08 23:38:11 gPg2n5Zz
有名税、ね・・・w

まあ続けたけりゃ続ければいいんでない

188:名無しさん@ピンキー
07/02/08 23:38:19 6Cp9dp+2
>>185
自分のせいじゃなくても荒れると凹むのはしょうがないよ
トライデントさん、一人のせいで大勢が悲しむ決断になることは辛いことだよ・・・

189:名無しさん@ピンキー
07/02/08 23:40:29 EI23NszO
教えてくれ、ゼロ。今年のバレンタインはどれだけ血が流れるのか

190:名無しさん@ピンキー
07/02/08 23:49:45 WFrqdc7I
                               ヽヽ:::::::::::::ヽ_ヽ
                 _ -----、          \ヽ::::::::::::::::ヾ
       //      /       `ヽ、        ヽヽ::::::::::::::
      /フ/     ., '             }::\       ヽヽ:::::::::::: 全力でバレンタインの悲劇を未然に防ぐために
    /:::::/{     /            l:::::::ヽ、      ',. }:::::::::::: 我々、黒の騎士団は活動する
   //::::::::l l     f            /:::/::::イ       | |::::::::::: 
.  //::::::::::l {     |ヽ         /::://:::::|        | |:::::::::::君達に委ねられる選択は一つ
.  //::::::::::::l !     l、::\       /::::/ノ:::r-‐フ       ,' |:::::::::::
  l/::::::::::::::| |      !ヽ::::`ー―r―´r‐ニ-:´::::::::::::::/      / /::::::::::
  |{:::::::::::::::l l     、」ヽ=.ァ::::::::::::::::}「:::::::::::::::::::::/      / /::::::::::: 私と生きるか:
  ll::::::::::::::::〉l      \:::::::::l {:::::::::::::://::::::::::::::::::/   _ -.ノ /::::::::::::::
  ヾ::::::::::::::ヽヽ      \_::::`ヽ 、 /::::::::::::::::::∠ -‐´ /./::::::::::::::::::/
   \::::::::::::ヽヽ       ヽ::::::::::::::::::::::r-、::::/   //:::::::::::::::::::/
    \:::::::::ヽヾー――?>-‐-ノフ´ ∧lミ-ニ ´- ´:::::::::::_ -―<― 私と死ぬかだ!!
      `ヽ:::::::\ヽ     くイ  | | /  | ゝニ‐":::::-=‐" -―: ̄:::>
     ヽー、 \::::\ヽ、   //  | L/- ニ-‐´:::::::/:::::/::::::::/:::::/:::::
       ヽfニニ‐ゝ、_::`ヽニムト-ニニ‐ ´:::::_::/:::::::::::::::::::://:::::::/:::::::::::
      -} lヽ\^―― ´:::::::::::::/ヘ ヽー―‐ ´ , '::::::::::〃::::::::::::::
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191:名無しさん@ピンキー
07/02/08 23:59:25 xs9Wujx5
↑誰? さっぱりわからん

192:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:02:22 EI23NszO
バレンタインに貰ったチョコの数で男の格は決まる訳ではない。だが貰った数に比例して修羅場フラグ上がるものだと鉄郎は思うのだ。
メーテルは何も言わない。

193:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:04:26 1BkwGUye
この状況なら、しっとマスクのAAの方がしっくりくる気がするな。

194:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:09:21 ZUlkayMP
>>189はガンダムWのゼロシステムだと思ったんだが違うのか?
なんか電球ジョークができそうなお題だな。
答え・一人
生方先輩から義理チョコを貰ったのを勘違いされたエースケが、フライパンと糸鋸の餌食になるため。
なんかいまいちだ。オチが無い。

195:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:09:46 /cxIXuhu
チョコいっぱい貰って嫉妬されたいぉ

196:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:28:42 3uYt2fRq
脇をしめて・・・
        _           (⌒_
      '´/ ,、ヽ         '´^`ヽヽ   ?
      i (ノノ"))i       ハ((ソ从 〉}
___ li l|゚ ヮ゚ノl|       |l、ヮ゚ !)リ)
|l,、,、,、,、l|lリ./)允i )       ⊂i允(つ
     ((゙く/_lj〉))       〈|_ヽ>
        じフ          しヽ.)
━━━━━━━━━━━━

えぐりだすように・・・
        _           (⌒_
      '´/ ,、ヽ         '´^`ヽヽ   !!
      i (ノノ"))i       ハ((ソ从 〉}
      li l|゚ ヮ゚ノl|  ___ |l、ヮ゚ !)リ)
      リ./)允iつ =l|l,、,、,、,、l}⊂i允(つ
     ((゙く/_lj〉))       〈|_ヽ>
        じフ          しヽ.)
━━━━━━━━━━━━

引くべし!!?
                            ~,;`
キャハハハハハ♪        (⌒_      **'
        _          '´^`ヽヽ   **''
      ´/ ,、ヽ        ハ((ソ从 〉},* **' 
     i (ノノ"))i       |l、Д゚ !)リ)*;:~,;`
     i l| "ワノl|__   "*'★';**' *”*:
     リ./)⊂l|l,、,、,、,、l} ミ”*;:⊂i允⊂   
     (( く/_lj〉  ;*     〈|_ヽ>    
       じフ    ・゚'      しヽ.)    
━━━━━━━━━━━━


バレンタインには血の雨が降る
このように

197:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:30:11 I7uedTft
>>194
ひとり、だと?
ふ、ふ、ふざけるな!たったひとりしか死なないのか今年のバレンタインは!
よろしい!ならば私が2/14にチョコを貰えない男同盟の盟主として、
大量虐殺を約束しようではないか!うぉぉぉぉぉぉ、モテ男に死を!

198:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:40:32 2sCV+zLK
URLリンク(bbs9.fc2.com)

ねるまえのらくがき。
いたりせんぱいっぽいけど 脅迫りすかしたのは あいかぎだったきがする
おさっしください

なかよくね

199:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:45:58 fUSREF3v
>>198
あ、あなたはまさかあの女装の似合うと評判のうわなにすr(ry

200:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:46:21 /DsBanc4
>>198
うお!GJ!

201:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:59:21 eSRBVESr
DOKUMEGU氏 GJ!!!!!!!!!!

202:名無しさん@ピンキー
07/02/09 00:59:28 Mirx4h1O
>>198
あなたが神か?

203:名無しさん@ピンキー
07/02/09 01:01:10 V3TLSnf/
流石神…GJ…

204:名無しさん@ピンキー
07/02/09 01:02:35 +B6YULmd
モテ男に死を!!!

205:名無しさん@ピンキー
07/02/09 01:05:01 3uYt2fRq
普通に同人誌原作で嫉妬スレの作品は売れる夢を見てしまうわけだが
絵は癒されるぅぅぅぅぜ

206:名無しさん@ピンキー
07/02/09 01:27:56 KSjbrLDM
>>198
 よくや にハンパなく癒されたwww

207:名無しさん@ピンキー
07/02/09 02:38:34 w8/waXTy
合鍵は俺のバイブル

208:名無しさん@ピンキー
07/02/09 03:29:34 tXvS3Zy+
>>198
毒メグたんGJ!

209:名無しさん@ピンキー
07/02/09 12:32:17 w/WihB95
このスレの住人は全員



バレンタインデーに刺されて死んでしまえばいいんだ!!
(その日は誰にも修羅場フラグが立つ日です)

210:名無しさん@ピンキー
07/02/09 12:40:36 w/WihB95
発狂した女の子に背中から包丁を突き刺される瞬間を俺達は待っているぜぇ!!

「他の女の子からチョコをもらわないでよぉ」

こんな感じで死んだら本望だろ

211:名無しさん@ピンキー
07/02/09 13:08:49 gzPs5z7M
俺は自殺願望も自傷願望もないんでな。


自分にばれない様に着々と暗躍する黒い女の子を傍目から見守りたいぜ。

212:名無しさん@ピンキー
07/02/09 13:11:26 6v2jdTdN
気持ちはわからんではないがな。男女の割合は基本1:1なわけで。
そのシチュの最低ラインが男一人につき女の子二人であることを考えれば、男の半分は余りになるわけで。
さらに世の中はそれよりも風当たりが厳しいわけで。
まあつまり、俺が言いたいのは今年は諦めて、来年男の人口が半分になってからのんびり刺されようぜ、ということだ。

213:名無しさん@ピンキー
07/02/09 13:13:54 batY9i6w
まあ、俺は一度も彼女を作ったことないが
他人の修羅場を見ているだけでそれなりに満足している
第三者はどんな発言しても責任取らなくてもいいから気が楽だよ

214:名無しさん@ピンキー
07/02/09 15:25:00 y9l1fDqz
「……なあ、なんか今日皆ソワソワしてないか?」
「バレンタインデーだからじゃない?」
「……あぁ、そっか。まぁ、なんだな。俺には縁のないイベントだな」
「……そうでもないよ」
「え? なんか言った?」
「んーん。何にも言ってないよ?」
「ふうん? どうでもいいけど、何でお前のカバン、そんなにチョコ入ってるんだ?」
「え? あ、あはは! こ、これはその、祥太郎くんの下駄箱に入っていたゴミっていうか、その、え、えへへ。そ、それより、祥太郎くん、はい」
「んぁ? おーサンキュー。悪いなー毎年こんな冴えない幼馴染みの為にいつも作ってくれて」
「いいよ、えへへ。祥太郎くんが美味しく食べてくれるだけで、私幸せだから」
「……日向子?」
「あ、いや、あはは! じゃ、じゃあまた放課後ね!」
「おーじゃあなー」

放課後。

「うーし。帰るか……しかし、今年も日向子一人にしか貰えないとは、相変わらず寂しい人生だなぁ」
「い、石橋祥太郎君!」
「あい? あれ、委員長。どうかした?」
「そ、その! こここ、これ! き、今日友達にあげる為に作ったら余っちゃって、す、捨てるのもバチが当たりそうだし、だ、だからその、よ、よかったら食べて欲しいなって……べ、別に変な意味はないからね!? い、言うなら義理チョコだから!」
「いや、あ、うん。ありがとう」
「か、感謝しなくてもいいわよ! 捨てるのが勿体ないだけだから!」
「わ、わかったよ。でも、やっぱりありがとう。美味しく食べさせていただきます」
「あ、う、うん……じゃ、じゃあまた明日!」
「おーまたなー」
「……今の、誰?」
「うぉ!? ひ、日向子! びっくりさせるなよ」
「……折角、祥太郎くん宛てのチョコ全部回収したのに」
「え? 何?」
「ううん。何でもないよ?えへへ。ね、ね、今日祥太郎くんの家に行っていい?」
「え? あ、ああ。いいよ」
「えへへ。今日祥太郎くんに美味しいチョコの食べ方教えてあげる!」
「そんなのあるのか?」
「うん。えへへ。祥太郎くんきっと夢中でむしゃぶりついてくるんじゃないかな? えへへ」
「むしゃぶりつくって……?」
「秘密! えへへ。きっと祥太郎くん気に入ってくれるよーえへへ。楽しみー!」
「何でお前が楽しみなんだよ。ほら、帰るぞ」
「うん。えへへ」
「……あれ? うわぁ。誰だよゴミ箱にこんなチョコ捨てるやつは。なんて贅沢なやつだ!」
「……えへへ。そうだね」

こんか学園生活を送りたかったぜ……!

215:名無しさん@ピンキー
07/02/09 16:52:17 +B6YULmd
言うな・・・。
人生真っ暗闇・・・orz。

216:名無しさん@ピンキー
07/02/09 17:03:24 GU+TYvcM
>>214の妄想の影には、淘汰された数知れない男子生徒の屍があるわけだから…。

217:名無しさん@ピンキー
07/02/09 17:46:51 gzPs5z7M
>>214
最後の1行邪魔じゃい!!素直にSSとして楽しみ、続きにwktkしたかったぜ。

218:名無しさん@ピンキー
07/02/09 18:19:00 2y8XUz2b
>>217
メモ帳にコピペして最後の行を削ればあらびっくり

219:名無しさん@ピンキー
07/02/09 18:22:17 gzPs5z7M
>>218
そう事は簡単じゃねぇ

220:名無しさん@ピンキー
07/02/09 18:34:20 z9ZkKNUy
こんか学園生活を送りたかったぜ……!


↑はつまり「こんか学園」での生活を今後も送りたかったが、
願い叶わず無理心中食らったって意味じゃないのか?

221:名無しさん@ピンキー
07/02/09 18:53:44 GJkPPnnx
>>210
それは少し違う。
あくまで嫉妬に狂った女の子に「殺される」事に憧れているんだ。


俺は刺殺より馬乗りで絞殺されたい…。

222:214
07/02/09 18:57:18 y9l1fDqz
うむ。なんか怒られた。いや、違う。これは期待されているのだ。だから俺は書く。携帯からだけど書くぜ!

223:名無しさん@ピンキー
07/02/09 18:58:14 I7uedTft
『「……えへへ。そうだね」』
『こんか学園生活を送りたかったぜ……!』

おっと、"こんか"じゃない"こんな"だ。

「あれ?山田君ノートになに書いてるの?」

ノートの誤字を消しながら顔を上げると同じ文芸部に所属する鈴木さんが覗き込んでいた。

「うん、ちょっと小説をね」
「見せて見せて…へぇ、嫉妬に狂った女の子が男の子のチョコをねぇ」

そう言って首を傾げる鈴木さん。今部室にいるのは俺たち2人だけだ。
入部したときは他にも沢山いたが、何故かみんな最近は顔を出していない。
おかげで親しい友人の間には俺たちは付き合っているという噂まで流れている。

「ところで最後は幼馴染と委員長、どっちとくっつくの?」
「まだ決めてないな」
「でもこれだと幼馴染が断然有利だよね。オッズで言うと100対1くらい」
「え?なんでそうなるの?」
「だってほら幼馴染は委員長の顔を覚えちゃったじゃない」
「…それだけで?」

「そうよ、殺す相手を間違えないために雌豚の顔を覚えるのは必要だもの」

ゾクリ。と背筋が凍る。
思わず鈴木さんの顔を見ると能面のように表情が消え、その瞳は虚ろに濁っていた。
ドクン。ドクン。ドクン。ドクン。心臓が警鐘を鳴らしている。ここにいるのは不味―!

「ところで山田君、今日の昼休みに妹さんを文芸部に誘ってたけど、どういうことかな?」

224:223
07/02/09 19:00:53 I7uedTft
勝手に電波を受信した。
>>214氏が続きを書くらしいので黒歴史としてスルーして欲しい。
もちろん反省はこれっぽっちもしていない!

225:名無しさん@ピンキー
07/02/09 19:05:32 bd9FPAv6
>>214 待ってる!
>>223 おーい!続き続き!鈴木さんと妹の対決になるのかd(゚∀゚)b

226:名無しさん@ピンキー
07/02/09 19:15:25 EMrtKZyO
>>214
ってレス番号は狙っているのか

>>214=2/14=2月14日=バレンタインデーの悲劇

狙いすぎだろ!!

227:223
07/02/09 19:20:42 I7uedTft
>>225

『ところで山田君、今日の昼休みに妹さんを文芸部に誘ってたけど、どういうことかな?』

「えーと『文芸部員が少ないから妹を―
「あれ?渡辺君ノートになに書いてるの?」

以下、エンドレスワルツ

228:名無しさん@ピンキー
07/02/09 19:29:36 GJkPPnnx
嫉妬 駆除 独占ってか

229:名無しさん@ピンキー
07/02/09 19:36:35 Lx7qaBuy
>>223
ナイス電波だGJ!って>>225ちょw
>>214
期待してるぜ

230:225
07/02/09 19:40:07 bd9FPAv6
誰が上手い事を… 。・ ゚・。* 。 +゚。・.。* ゚ + 。・゚・(ノД`)

231:トライデント ◆mxSuEoo52c
07/02/09 19:40:43 aE+lj6Xv
では投下致します


232:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/09 19:43:01 aE+lj6Xv
 第22話『今宵の月は黒い』

 鷺森音羽と出会ったのは、俺が両親を亡くして水澄家に引き取られてから1ヵ月後ぐらいであった。
虹葉姉と紗桜が男の子らに苛められて少し男性恐怖症だった頃は、俺はいつも一人で孤独な時間を過ごしていた。
両親を失った悲しみを味わった俺は同じ年頃の男の子達と無邪気に遊ぶことも出来なかったし、一人でいる時間を日々増やしていく。
そんなある日。隣の家に住んでいる女の子がずっと俺の事を見つめていたのだ。
水澄家と鷺森家の付き合いは余りにも希薄で俺も隣には誰かが住んでいるなぁ程度の認識しか持っていなかった。
だが、俺と同じ年頃の女の子が隣にいたなんて言うのは初耳である。
 その女の子は俺が玄関に入ろうとする姿を不思議そうに眺めていた。無理もないだろう。
俺が隣の家に女の子がいる事を今知ったばかりってことは、あちらの女の子もお隣に男の子がいると初めて知ったはずだ。
お互いの視線が合うと、その女の子は初対面の相手にこう言った。

「あなたも暇なの? じゃあ、私と一緒に遊ぼうよ」
 
 それが天草月と鷺森音羽の出会いであった。

 単純に誰かと遊ぶというのは両親が死んでから。水澄家に引き取られてから。
初めての事であった。音羽の無邪気な笑みに救われていた。
知らぬ内に俺は周囲から孤独する事もなく、音羽経由でたくさんの友達ができた。
落ち込んで沈んでいる時間よりも笑っている時間が多くなった。
それは音羽と俺がずっと一緒にいた時間があったおかげなのだ。

 だから……。
 
 音羽に本当に感謝している。過去の自分は音羽が必要であり、現在においては特に必要ではない。
俺は音羽以外の人間を、護りたいと思っているから。音羽の気持ちを受け取る事ができない。
果たされる約束を破棄しなくちゃいけない。
 ヤンデレ症候群に感染した音羽の凶行を俺は過去の彼女の思い出を汚されないために止める。

233:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/09 19:46:19 aE+lj6Xv
 迫ってくるナイフの刃が銀色の輝きを照らして、その軌道は真っすぐに俺の腹部を狙う。
俺は下駄箱という足場が悪い場所に離れようと無意識的に後方に移動するが、廊下との段差に足が引っ掛かって転倒してしまう。
襲いかかる音羽はこれが機会だと倒れ込むようにナイフを下手に握って、俺を刺す。

「くっ……」
 思わずのとこで音羽のナイフを避けると、俺は彼女の腹底に蹴りを放つ。
自分の命の危機的状況で数回彼女の腹を蹴り続けた。音羽が女の子だという事も忘れて、俺は手加減なしに蹴ってしまった。

「きゃあ……」

 鈍い声が聞こえてきたが、俺は音羽の声を無視して距離を取ろうと必死であった。
殺されるという状況下では冷静な判断もできずに頭の回転もいつもより鈍る。
精神的に追い詰められると人間という生物は本性が表れると言う。
 そう、俺は無様なことにヤンデレ化した音羽に怯えていた。あの純粋な瞳が純粋すぎる想い、純粋な心が何もかもが恐い。
いや、恐すぎるのだ。かつて、俺はヤンデレ症候群に感染した女の子と命懸けの戦いができると胸を踊らせていた。
だが、現実は親しい人間に凶器を振りかざしただけで俺は震えてしまっていたのだ。

「はぁはぁ……」

 胸の呼吸が激しく乱れていたので、俺は必死に落ち着こうとしていた。
今まで計算された策で相手を翻弄してきた。必ず最後には勝利してきた。
今度も俺が望む勝利を手に入れるために音羽を。音羽を……。
 視線を音羽に向けると彼女は腹部を抑えて嗚咽を漏らしていた。
先程、無意識に蹴ってしまった事を俺はだんだんと思い出して行く。

「い、痛いよ。つ、月ちゃん。た、助けて……」
「音羽……。音羽っっっっーー!!」
「お、お腹が痛いの。お願いだからつ、月ちゃん助けてよ」

 俺が音羽に暴力を振るってしまった。立派なDVだ。
だが、立派な正当防衛だ。ナイフで俺に襲いかかろうとしたから。
仕方なくその過程で俺は音羽を傷つけてしまった。
もし、体のどこかに一生物の傷を負わせてしまったなら、俺はきちんとした責任を取る必要がある。
 慌てて、俺は音羽の元に駆け付けた。殺さそうになった事を忘れて、俺は音羽の体を抱き起こそうと背中に手を回した瞬間。

「なっ……」
 舌が痺れた。口が痺れた。手足が痺れてゆく。何か体中に電気が走ってゆく。
俺が音羽の体に触ろうとした瞬間に起きた事を冷静に分析しようとするが、頭の芯の奥まで痺れは行き届いていた。
 何が起きたのかわからないまま、俺は音羽を見た。彼女の冷たい笑みを浮かべた途端に俺は12の可能性に辿り着いたが。
もう、遅い。体中が倦怠感に襲われて満足に動くすらできやしない。

「月ちゃん。女の子のねぇ。体に暴力を振るちゃダメなんだよぉ」

 彼女のスカートのポケットから取り出していたスタンガンをしっかりと右手に握る。
倒れこんでいるフリをして俺が近付いた時にスイッチONにして、襲いかかる。
俺が音羽の苦しんでいる姿を見れば、どういう状況に陥っても心配になって駆け付けてしまう俺の心理を彼女は上手く読み取った。
 俺は最初から最後までヤンデレ化した黒音羽に敗北の二文字を味わってしまった。

「最初からスタンガンを使っておけば良かったよ。月ちゃんを傷つけるつもりはなかったし。
でも、月ちゃんの顔を見たら、私は思わず興奮してすっかりと忘れてたよ。えへへ」 
虚ろ瞳をして、俺の瞳に訴えるように真っすぐに音羽を見つめる。
「これからはずっと一緒だよ。死ぬほど嬉しいよ。月ちゃんが独占できる日がやってくるなんて。
うふふふ。ちゃんと可愛がってあげるから。今は優しく眠りについてね」
 また、どこに仕込んでいたのかわからないが。音羽はスプレーらしきものを俺の鼻に向けて撒く。
 それは、痴漢撃退用防犯スプレー。
 その名も『親父の靴下の匂い』。
 あまりの臭さに俺は更に意識が遠くなってゆくのがわかる。
 最後に言える事はただ一つ。
 せめて、クロロホルムで気絶させて欲しかった。
 ぐふっ。

234:トライデント ◆mxSuEoo52c
07/02/09 19:51:39 aE+lj6Xv
次回音羽編は一応終了の予定

終了後は姉妹編に突入します


皆様の声援の書き込みはどうもありがとうございます
その書き込みを見て、これからも頑張ろうという気力が沸いてきました
今後は荒らしに関する事は全てスルーすることにします



>>214
GJ
下駄箱に入っていたチョコレートは幼馴染回収しているのに吹いたww

235:名無しさん@ピンキー
07/02/09 19:52:33 9VBniXyy
リアル更新ktkr!!そしてGJ!!

236:名無しさん@ピンキー
07/02/09 20:03:30 I7uedTft
投下乙であります。
音羽とは今までデレ分が強かったので、今回のスタンガンは素晴らしい病みの一撃を感じました。
やはり刃物や鈍器もいいけど、スタンガンも王道ですなぁ。ハァハァ

237:214
07/02/09 20:29:37 y9l1fDqz
「えへへ。お邪魔しまーす」
「いらっしゃいましぇー。あ、そうだ日向子。ものはついでなんだけど、飯作ってくれー美味い飯が食いたいんだよー」
「んもー仕方ないなぁ祥太郎くんは! えへへ。いいよ。冷蔵庫の余り物で作るけど、いい?」
「おーサンキュー! んじゃ俺その間に風呂入っとくわ」
「ふぇ!?」
「ん? 何?」
「う、ううん! 何でもないよ! し、祥太郎くんがおおおお風呂入ってる間にパパっ! て作っとくから、す、好きなだけお風呂入ってて!」
「……? んじゃ飯よろしくなー」
「り、了解でありますよー!……行っちゃった。えへへ。も、もしかしてき、今日チョコのお返しで……!?
そ、そんな祥太郎くん! だ、ダメだよ心の準備が! で、でも祥太郎くんがどうしてもっていうなら、その、い……いよ?
えへへ。うわぁーうわぁーどうしよ!? 一応勝負下着だから、だ、大丈夫だよね? えへ、えへへ。た、楽しみだよ。えへへ。
で、でもまずはご飯作らなくちゃ! よ、よーし頑張らなくちゃ! えへへ。えーと、まずは冷蔵庫には何が入ってる……あれ? このチョコ……確か帰り際にもらってた……」



「ふぁー暑ちぃー……あれ? 日向子?」
「んー? なあに?」
「何だいるなら返事してくれよ」
「えへへ。ごめんなさぁい。あ、ご飯ね、チャーハンだけどいい?」
「お、サンキュー。どれど……」
「ね、ね、美味しそうに出来てるでしょ?」
「な、なぁ日向子。チャーハンってこんな色してたっけ?」
「……そだよ?」
「そ、そうか。最近のチャーハンは赤いのか。そうかそうか」
「……食べたくないのなら、はっきり言ってよ」
「い、いや! わざわざ日向子に作ってもらったんだ!残さず食うよ!」
「……えへへ。嬉しいなぁ……ねぇ、祥太郎くん。今日のあの女、誰?」
「え、あ、えーと、委員長?」
「……仲、いいの?」
「ん、んー? ふ、普通かな?」
「普通……普通な子にチョコあげたりするかな?」
「わ、わかんないな、俺。で、でも日向子が作ってくれたチョコが一番美味いな! ひ、日向子は料理上手いもんな!」
「……そう?」
「おう! 最高だよ! 是非嫁にしたいくらいだよ!」
「……本当に? ほんとのほんとに?」
「あ、ああもちろん!」
「えへ、えへへ。うれしいなぁうれしいなぁ。えへへ」
「……な、なぁ日向子? お前顔色悪くないか……?」
「えへへ。ちょっと、手首切っただけだよぅ。大丈夫大丈夫!」
「無理すんなよ……手首?」
「えへ、えへへ。し、祥太郎くんがいけないんだよ? あ、あんな女と楽しそうに話してさ! わ、私の事無視した! 無視した! 無視した!
私を見てよ! あんな女より、私を見てよ! わ、私は祥太郎くんがいないと死んじゃうの! だからず、ずっと一緒にいてよ!」
「お、おい日向子、お前血が!」
「やだやだやだ! 祥太郎くん一緒にいてよ! さ、寒いよ祥太郎くん。わ、私のチョコだけ食べてよ……祥太郎」
「わかったからしゃべるな! あぁ、クソッ! 血が止まらないってやりすぎなんだよ!」
「えへ、えへへ。祥太郎……大好き。だ、誰にも渡さないから」
「もういいから、じっとしとけって! 死ぬんじゃねぇよ日向子!」
「えへ、えへへ。ね、ね、祥太郎。何で今日はバレンタインデーって言うか知ってる?」
「あ? 今は関係ないだろ!」
「今日はね……バレンタインさんが愛のために死んだ日なんだよ……悲しいね。えへへ」
「救急車呼んだからな! お前に死なれたら困るんだよ!」
「えへへ。う、うれしいなぁ」
「おい……起き……目……なん…クソッ……救急車…ひ……なこ…………日向子!」

そこで、私の意識は途絶えた。


238:214
07/02/09 20:31:39 y9l1fDqz
そして最終回は2月十四日までお預けだ!

239:やや地獄な彼女
07/02/09 21:01:11 d8xtduPe
やべえ!
やべえよ!
ちょっと、投稿してねえ間に、
使おうと思ったネタや小道具が使われちまってるよ!
またプロット組み直しやんか!

でもGJ!

240:名無しさん@ピンキー
07/02/09 21:02:25 4y5hZ2zy
GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOODJOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOB!!!!!!!!

241:225
07/02/09 21:15:27 bd9FPAv6
>>214 何だよお前!!俺の事好きだろ?GJ――!!
続き待ってる!ずっと待ってる!

242:名無しさん@ピンキー
07/02/09 21:20:44 gzPs5z7M
>>222
携帯で小説投稿!?
その粋や好し!応援してるぜ!!

243:名無しさん@ピンキー
07/02/09 21:22:23 smkHRNFu
ときに修羅場スレには、外部のおすすめネット小説リンク集、みたいのは無いんだよね?
ヤンデレスレ、ハーレムスレ、あたりのを便利に使わせてもらったんで、気になったのだけど。

244:『指先チョコレート/鉄の味』 ◆/wR0eG5/sc
07/02/09 22:04:01 zwoMuhcJ
 本日、二月の十四日。
 二百六十九年にヴァレンティヌスが殉教した日だ。
 一説によれば絞首刑らしい。
 そんな彼の殉教の日をどこの誰が勝手に男女の愛の誓いの日としやがったのだろう。
 理解に苦しむ。
 などとさておき、本日はつまりバレンタインデーである。
 世界各地で色んな愛が交錯したり衝突したり許容したり、たぶんそんな感じの日だ。
 そんな感じの日だったが、彼、古市四有は露ほども今日という日の意味を意識せずに、
 飄飄と一日の授業を消化してから放課後、いつものように学校の図書室で読書にいそしんでいた。
 時刻は五時。元元大して人がいなかった図書室の静寂がさらに強まったころあいである。
「せんぱぁ―いっ」
 やかましい女の声が室内に響いたのは。
 委員の眼鏡の女子がびくりとおどろいて震える。遠慮を忘れた力強い足音が四有の背中にちかづく。
「ああ、やあ、鶴見さん」
 ふりかえると見慣れたウエーブのセミロング。
 にぱっ。という擬音が極上に適しているだろう、ひまわりを想起する笑顔。
 高一だけれど平たい胸板が今日も四有に哀愁の念を懐かせる。
 そんな彼女の名前は鶴見芽衣子。
 四月に図書室でしりあってから、なにかと四有に前後の脈絡がない話をふっかけてくるけったいな女子である。
 まあとにかく、しりあいだ。後輩だ。
 特徴としてやたらと生傷が絶えない。
「あれ。左手、怪我したの?」
 みれば、彼女の左手は包帯でぐるぐるに覆われている。
「ほんとう、よく怪我するよね……転んだとか?」
「あははっ。いえいえ、これは転んだとか、そんなどじを踏んだ結果とかじゃないですよ。
 そうですね、愛が故の負傷って感じですかねっ。あは、あははっ」
 左手を右手でなでつつ、芽衣子は快活に笑った。
 芽衣子はよく笑う。四有がわからない場面では特に。
「愛が故の……ふうん。かっこいいね」
「やだなあ。先輩ほどではありませんよぅ」
「そんなことより図書室ではしずかにし―っ」
「ところで先輩今日は二月の十四日ですよ十四日ですよ」
 にこにこ笑顔で四有の言を遮る芽衣子。
「いや、知ってるし別に訊いてないけど……なんかかお近いよ鶴見さん」
「近いと駄目ですか。駄目なんですか先輩」
「笑顔で接近されると妙な迫力が……、な、なに、どうしたのさ」
「ところで先輩の鞄はそれですよね鞄はそれですよね」
 吐息すら感じる距離もそのまま、芽衣子が質問してくる。
 なんだかくすぐったい。
「それだけど……、って、ちょっと、あ、ああ……っ」
「ふんふ―ん、ふんふふ―んっ」
 陽気な鼻歌を披露しながら、鶴見芽衣子は躊躇の意識を欠片も交えずに、先輩の鞄を開けて、右手をつっこむ。
 当然のような物色。
 鶴見さんはほんとうによくわからない……極めて温厚な四有は特に叱咤はせず、そのまま見守る。
 彼女との会話がまともに進展した経験は皆無なのだ。話題はしょっちゅう変わるし、いきなり黙るし、笑うし。
 そんな芽衣子にはなしかけられて表情を歪めないのは、この学校で、四有だけなのかもしれない。
 などとは、四有はおもわないが。

245:『指先チョコレート/鉄の味』 ◆/wR0eG5/sc
07/02/09 22:05:03 zwoMuhcJ
「ふんふふんふふ―んっ。……ぉ。先輩、なんですかこれはなんですかこれは」
「え……っ」
 いいつつ芽衣子が鞄から取り出したモノに、四有はとまどった。
 それは紺の紙で包装された四角い箱だった。
 可愛らしいピンクのリボン。箱にはシールで手紙が固定されている。
 昼に鞄から弁当箱を取り出したときには、そんなモノは鞄にはなかった。
 誰かにもらったわけでもない。ほんとうに知らない。
「誰にもらったんですか」
「いや、しらない。……ほんとうに僕の鞄にはいってたの?」
「それはもう先輩の鞄の奥底にまるで封印するようにおしこまれていました」
「へえ……あっ。手紙だ」
 四有がようやくきづいて、手紙に手をのばす。
「ふんふふんふんふ―んっ」
「あ」
 指先が届く寸前、芽衣子がそれをかっさらう。
「鶴見さん、こらこら、ちょっとそれ渡しなさい」
「ふんふふんふ―ん、ふふふんふふ―ん」
 にこにこしながら、鼻歌を交えながら。
「えいっ」
 鶴見芽衣子は、手紙を破った。
 左手で手紙を固定して、右手で千切る。
 その動作に、ためらいはない。
 四有はぽかんと、半口をまぬけにあけたまま、みていた。
「とりゃりゃりゃりゃりゃあっ!」
「ぁ、あ……あっ」
 何度も千切る。千切る。千切る。
 そのまま窓際に移動して―。
「アリーヴェデルチっ」
 手紙の欠片と紺の箱をなげすてた。
 紙片は雪が宙を舞うみたいにひらひら地面にむかってゆっくりとすすみ。
 箱はかなりの速度で地面に接吻した。たぶんつぶれた。
 ふう。そんな吐息を一つ、芽衣子がふりかえる。
「あはは―っ。えへへ」
「なにしてんのきみは……」
「ごみの処理ですよぅ」
「そうなの? 僕は中身みてないんだけど、あれはごみなの?」
「ごみです」
「そっか……僕、手紙が添付されたごみってはじめてだなあ」
「あははっ」
「でもちゃんと次からはごみばこに捨てようね」
「はぁ―いっ。ごめんなさい」
 まあなげすてられてしまったモノはしょうがない。四有はこれにも特に叱咤は与えない。
 しかしあの紺の箱の中身はなんだったんだろう。


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