【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合11at EROPARO
【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合11 - 暇つぶし2ch37:3/12
07/01/26 01:31:48 ABXgnv/D
 タバサを助けに行こうとしたときの、アンの様子を思い出す。
 俺と違って、まず国のことを考えたアン。
 毎日毎日、あんな事を繰り返して……
「アン、つらいの?」
「……平気。今はサイトさん、いるし」
 ほんの少しの間だけ、素のアンが見える。
 アルコールの力を借りて、それでやっと少しだけ垣間見える彼女。
 俺とルイズはこの人に今日何をしたんだろう。
「行かれるのですね、サイトさん」
 実はそれほど酔っていないのかもしれない、彼女の質問。
 酔ったふりをして、何もかも忘れようとしている、痛々しい演技。
「わたくしを置いて、ルイズと二人で行ってしまうのですね」
 俺は何て答えればいいんだろう。

 黙りこんだ俺の前に、グラスが置かれた。どこから取り出したのか、アンがワインを注ぎ込む。
 おれの身体越しにそんな真似をするから、背中に当たる感触で、飲んでもないのに真っ赤に成ってしまう。
「わたくし、飲まないと寝れなませんの。……寂しくて」
 耳元で囁かれるアンの声。
 口の中がカラカラに乾いて、目の前のワインが凄く飲みたくなった。
 飲む前に、せめて何か伝えようと、アンの方を向いて、暫し硬直する。
「あれ全部飲んだのかよ?」
 空き瓶の山。今日一日で飲んだわけじゃないのだろうけれど、明白に身体に悪そうだ。
 目が逸らされる……飲んだんだな……

「アン、身体に悪いから。お酒はほどほどに」

「寝れないのですわ、お酒無しでどうしろとおっしゃるの?」
「毎日運動するとか」
 アンが悲しそうにたずねる。
「ひとりで?」

 そうか、今のアンは迂闊に皆とはしゃぎまわるどころか、護衛もなしに散歩すら出来ない。
 こんなに若いのに、毎日机に向かう毎日じゃ、ストレスも溜まってお酒に逃げたくもなるだろうなぁ。

俺は

>>38 せめて、お酒に付き合おう。
>>40 ホットミルクとかでも寝れますよ。
>>42 ひとりで出来る運動をアンに指導する。
>>44 ふたりで出来る運動をアンと始める。

38:4/12
07/01/26 01:32:19 ABXgnv/D
「のも……っか」
 無力な俺。
 それでも、一緒に飲むと言うだけで、アンははしゃぎまわる。
 そう、誰かと一緒に思う存分飲むことも出来ないんだ、彼女は。

「えっと、これっ、これ、オススメなんですのよ」
 嬉しそうに瓶を抱えて、俺の元に駆けよ……って
「あぶなっ」
 意識ははっきりしていても、千鳥足のアンを慌てて支える。
「サイトさんの、えっちー」
 密着していると、薄い肌着越しにアンの体温が感じられて……
 飲む前から顔が赤くなっているのが分かった。
「ん~、飲んでませんわよね?」
 顔っ、顔近いからっ。自分の美貌をもう少し自覚して欲しい。

 アンにそんなつもりは無いだろうから、自分ばかりが興奮しているのが恥ずかしい。
「かんぱ~い」
 幼い頃からの躾の成果か、多少挙動が怪しくても、彼女の動きには華が有る。
 無自覚に放たれる色香に迷い、グラスを傾けるアンの仕草の一つ一つから目が離せない。
「どーしましたのですか?」
 だから、近いです。恥ずかしくてアンの方を見ることが出来ない。
 下を向いて、ちびちびワインを啜るしかなくなった俺に、アンは何を思ったのか、妙な提案をする。
「そんな飲み方をしても美味しくありませんわ……飲ませて差し上げましょうか?」
 下ばかり向いていたせいで、あっさり背後からアンに捕まった俺は、逃げられなくなっていた。
「ちょっ、ひ……じゃねぇ、アンっ」
 背中に当たる柔らかいものに引き寄せられて、アンの腕の中に仰向けに寝かせられた。抵抗は無意味。
「はい、あーん」
 酔ってる。さっきまでと違って、間違いなく酔っ払っていることが分かるアンが、俺の口元でグラスを傾ける。……飲まないとこぼれる。
「んっ……んんんっ」
 そんなに強くないはずのアルコールが、喉だけでなく頭の中まで焼き尽くしていく。
 少しだけこぼれたワインを、アンの舌が舐めとる。
「え?」
 錯覚かと思った。
 目が合うと、いたずらっぽく笑うアンが、愛らしかった。 
「今度は……別の飲み方を……試してくださいまし」
 頭の奥がガンガン響いているのは、きっと酒のせいじゃない。何も考えられないまま頷いた俺の前で、アンが自分の分のワインを干す。
 いや……口の含んだまま……唇が重なる。
「いかがですか?」
 結構なお手前で。ではなく。あまりの事に半分ほどこぼしてしまった。
「……こぼれ……ましたね」
 アンが俺の首元までつたうワインを、丁寧に丁寧に舐め上げる。
「っく、ちょ……アン、駄目だ……って」
 地球に居た頃、地元で大型犬にじゃれ付かれた時のように、なす術も無く押し倒される。
「おいし」
 もうワインは無いはずなのに、無心に俺の首を舐めるアンを抱きしめて、上下を入れ替える。
「……やりすぎ」
 怒ったふりをしても、アンはにこにこと笑うだけだった……なら。
「ほら、あーん」
 洒落じゃないぞ? 一声かけてから、ワインを口に含む。
 ……そこでなんで喜ぶか? 飛びつくようにキスを……慣れない上に、唐突だったせいで、殆どがアンの胸にこぼれる。
「……こぼれましたわ」
 ……なんでしょう? その期待に満ちた眼差し。
 もちろん答えるけど。

39:5/12
07/01/26 01:32:53 ABXgnv/D
「はっっ、んっ……あ……」
 ワインで透けるアンの服が、俺の目を楽しませる。
 胸の奥にこぼれた分は、後のお楽しみにとっておく。
 執拗に唇と首筋を責める。
「……ぅ、サイトさん?」
 ある程度から下に触れない俺に、アンが焦れ始める。
 当然無視。
「どうしたの? アン」
 意地悪な質問に、アンの目が潤む。アルコールのせいで緩んだ涙腺が、わずかな刺激であっさりと決壊する。
「い、いじわるですのねっ」
 泣きながら睨まれると、流石にちょっと……いいなぁ。もっとやろう。
「何のこと? ちゃ~んと言わないと分からないよ」
 背中をそっと撫でながら、喉の下に垂らしたワインを舐める。吸血鬼って良い趣味してるよな。実感する。
「くっ……あっ……ひど……るっ……っっっあぅ」
 ぐるぐると回る世界で、アンの声だけが静かに響く。
 喉を焼くように感じられたワインも、いつの間にか甘く、この上なく美味なものに感じ始める。
「……っと、下の方も……舐めてくださいまし」
 小さな懇願が聞こえた頃には、俺も我慢できなくなり始めている。

 ビリィィィィ っと、良い音をさせてアンの服を破る。

「ぁ……」
 アンの怯える顔も、興奮するための材料にしかならない。

 胸をひたすら、むにむにむにむにと揉みながら、お腹の方まで流れたワインを少しづつ舐め取る。
「ひぅ、……そっ……ちがぁ……もっと……違う所をっ……違う所を可愛がってくださいましっ」
 はっきりと口に出せないアンをじわじわと苛める。
 両手で握りしめている所に、舌先を近づけたり、うってかわってショーツのラインの側まで降りたりする。
 でも……触ってやらない。
「ひどっ……おね……がいっ、お願いしますからっ……お慈悲をっ……サイトさんっお慈悲をっっっ」

 アンの悲鳴がどんどん切羽詰ってくる。
 あー、楽しい。
「仕方ないなぁ……いやらしいこだね。アン」
 羞恥で赤く染まるアンの顔を見ながら、限界まで硬くなっている乳首を見つめる。

 ……見つめる。
「あ……の? サイト……さま?」
 いつの間にやら『さま』に昇格。俺エライ。
 もっと焦らすつもりだったけど……ご褒美。

「っっあ……ああぁぁっっ」
 尖った所を口の中で優しく転がすだけで、アンは悶え始める。
「……くっ……あっっぅ、いぃっ……で……す……」
 よほど気に入ったのか、両手で俺の頭を自分の胸に押し付ける。
 顔中が柔らかい感触に覆われて、息をするのも不自由になる。
「っく……」
 呼吸困難から逃れようと、もがいた瞬間に俺の歯がアンの胸を浅く薙いだ。
「ひっっ、だっ……やぁあああああっっ!!……」
 大きく跳ねて、姫さまが動かなくなった……へー、痛いの……良いんだ。

 あれだけ飲んだのに、喉が渇いて……渇いて仕方なくなる。この渇きを癒せるのは……目の前の甘露だけ。
「いっただっきまーーすっ」
 ズボンを脱ぐために勢いよく立ち上がった俺の視界が……真っ暗に成った。

 ―飲みすぎには気をつけましょう。

>>46

40:6/12
07/01/26 01:33:28 ABXgnv/D
「ホットミルクに蜂蜜落とすと、よく眠れますよ」
 せめてお酒は何とかして止めたかった。

 ん~、としばらく悩んだアンが、ツカツカと歩み寄って、アニエスさんを起こす。
「あにえしゅ、ホットミルク、はちみつつき」
「は?」
 ……おや、起き抜けにそんな事言われても。
「はっ、承知いたしましたっ」
 承知しちゃったよ……起き上がったアニエスさんが、ドアを開けて勢い良く走り去る。ひょっとしてよくある事なのか?
「サイトさんの、おすすめ~」
 そ、そこがツボですか。やたらと楽しみにしているご様子。
「持ってきましたっっ……うぇぇぇぇ」
 はやっ、アニエスさん早っ……しかし、酔った直後に全力ダッシュは無謀すぎる。
「……あにえしゅ……これ、違う」
 アンの非情な言葉に、アニエスさんが硬直している。……蜂蜜しかなかった。
「ミルクは~? ミルクどこ~?」
 真っ青な顔で倒れそうになりながら、アニエスさんが最後の力を振り絞って、俺の方を指差す。……って、なんでだ?
「や、ヤツが出します」
「……? ……まてぇぇぇぇぇぇ!!」
 出るけどっ、違うだろっソレ、ってアンもなんか嬉しそうに近寄ってくるぅぅぅ
「サイトさぁん~、ミルクくださいっ!」
 おっけぇぃ、いっくらでもどうぞぉ、っっっじゃねぇぇぇ
「ちょっと、アニエスさんやばい事言わないで……」
『返事が無い、ただの屍のようだ』
 ……酔っ払いは横にして寝かせる。吐くと危ないからね。

 ……いや、そーでなく。
「ミールク、ミルク、ミールク、サイトのミルク、おいしーミルク」
 歌ってらっしゃるし。きらきら輝く瞳で俺の事見つめてるしぃぃ。
「えと……準備が整ってませんので、デマセン」
 手伝ってくれれば、いくらでもオッケーですが。……言えないけど。

 アンの頬が、子供のように膨れる。
「やー、飲むのっ。サイトのミルク飲むのぉぉぉ」
 ……分かってやってないか? 股間が熱くなるような台詞を、目の前の女王が連呼し始める。
 しかし、ここで迂闊な行動は……
「準備手伝う」
「へ?」
「何でもするからぁ、ミルクくださいましぃ」
 ……ゴクリと喉が鳴る。
 アンが何でもする>ミルクを出す>しかも飲んでくれる。
 ……どうしよう。生まれてから今まで、最も悩んでいる瞬間かもしれない。
「っと、じゃあアン、ちょっと脱いでみようか?」
「はぁい」
 しかし、牢に居るルイズを裏切るわけには……タバサだって心配だし。
「よーし、良いこだね、じゃこの蜂蜜を……」
「んー、あん、いいこ、なのー」
 はっっっ、なんだ? 何でアンの服がもう脱げているんだ? これはっ!! 新手のスタンド攻撃か?
 自分が無意識に指示したことなどすっかり忘れたサイトが慌てている間に、アンリエッタの胸にペタペタと蜂蜜が塗りたくられる。
「できたー、……でもでもっ、ミルク出ないよ?」
 アルコールですっかり幼児退行したアンリエッタが、自分の胸に蜂蜜を塗りたくる様に目を奪われていたサイトが正気に返る。
「おっっけぇぇぇぃ、次、いってみよぅ」

 ……正気じゃなかった。

41:7/12
07/01/26 01:34:05 ABXgnv/D
 蜂蜜に濡れた身体が、ランプの明かりをテラテラと弾いていた。
「……サイトさんの目、ちょっと怖い」
 多分限界まで開いた上で血走っているだろうから、無理もないなぁ。
 そんなアンの為に、目が合わない様に視線を胸に向ける。
 ナイス紳士! 俺様。
「アン、今からミルクを出す準備するからね」
「はーい」
 うぉぉぉぉ、アンはええ子や。そんなアンだけ下着一枚だと可哀相。
 響け俺の紳士魂。アンに合わせるために、俺も一瞬でパンツ一丁。無論モーションはルパンダイブ!!
「きゃんっ」
「へっへっへぇ、可愛いひめいだなぁ、ひめーさまだけに」
 軽い親父ギャグなど飛ばしながら、テカテカおっぱいの上の蜂蜜を舌ですくう。
「ふぁっっっ、サイト……なぁに?」
 まだ蜂蜜でベトベトの手で、アンが俺を押しのけようとしていた。
 退くわけあるか。
 媚びるが、引かない。牢屋の中の事も省みない。
「あーべとべとになっちゃった……アン、お願い」
 アンに見えるように、舌で蜂蜜を舐め取ると、無言で頷いたアンも俺の身体に付いた蜂蜜を舐め始める。
 っっっ、けぇぇぇぇぃ。口から少しだけ差し出された舌が、一度に沢山ではなく、少しづつ何度も繰り返して蜂蜜を減らしていく。
 これがハイソな食事法かぁぁぁ!! しかしっ、負けないっ。
「んっ……は……ぅっ……」
 顔や肩を舐めているアンと違って、こっちは急所をダイレクトっっ!!
「ふ……く……んぁっっ」
 はっはっは、ガンダールヴは伊達じゃないっ!
 アンの嬌声が、胸の感触が、なによりえっちぃ光景がっっ
 限界を超えて俺を興奮させる。
「立った、サイトが立ったよっ」
 ずっと立ってたけどなー。マイレコードを更新中の愚息をアンに見せ付ける……更に興奮するっっ、滾るっ、滾るぞぉぉぉアンっっ!!
 興奮しまくっているが、快感の為にアンの目は、ぼーっと見つめるだけで面白くない……
 ならばっ!! 奥義っっ!! と、心の中で叫びつつ、ビクビク震えてるオレ自身に蜂蜜をかける。ヌルヌルしてっっ、グゥゥレィトォォォ!!
 次一人でやる時に、忘れず試してみよう。心のメモ帳にメモメモ。
「ふぁ? ……なめるー?」
 おっけぇ、アンは良い子だねぇ。アルコールと快感にかすんだ目でアンが丁寧に蜂蜜をすくう。
「んっ……はっ……う?」
 首を傾げたアンが、一瞬だけ戸惑う。そして……
 ズッッッ 粘度の高い蜂蜜をソレに負けない勢いで、勢い良く吸い込み始める。
「ぐぁぁぁぁ、ちょっ、きついっ、アン……いやっだめぇぇぇ」
 悲鳴を上げる俺を無視して、アンが……こいつっ、面白がってるぅぅぅ。
 サディスティックな笑みを浮かべたまま、アンがオレの先端に舌をねじ込む。
「ちょっっ、だめぇぇぇ」
 ヤバいっ……洒落にならねぇっ……勢い良く吸い上げられ、限界近かった所にいきなり訪れた別種の刺激に、俺はあっさりと逝ってしまう。
 ビクビク震えながら迸る精を、アンが丁寧に口の中に集めて……飲み下す。
「……おししい……かなぁ?」
 ……そーいや、そうゆうお話でしたっけ?
「もうちょっと、いってみる?」
「うん~」
 へっへっへ、おじょーさん、次はもっと……

「なーにをしとるかぁぁぁぁ」
 アニエスのこうげき。クリティカルヒット。サイトはぜつめいした。
「じょーしきてきに考えて、お前が厨房に行けと言うことだろうがぁぁぁ」

 ―いや、そんなん、わからんてー。身体中蜂蜜にまみれたまま、俺はアンのベットに崩れ落ちた。

>>46

42:8/12
07/01/26 01:34:41 ABXgnv/D
「一人で出来る運動も有ります」
 自分でもこれ以上の深酒は危ないと分かっているのだろう。
 アンが身を乗り出す。
「毎日続く運動だと、うれしいのですが」
 アンの視線が自分のウエストの辺りに落ちる……スマートに見えるけど、女の子は大概自分の身体が不満らしいから、あえて何も言わない。
 しかし……毎日続ける……か。何か理由があれば……
「あ!」
 思いついたけど……結構な運動になるし。
「なにかあるのですねっ? 教えてくださいまし」
 ……い、いえねぇ、一人エッチなどいかがでしょう。
 でも、覚えた直後は毎日続くしぃ、良い運動になるし、ストレスだって解消できるしっ……完璧だ。まさにアンの為にある様な。
「そ、そうなのですか?」
 あれ?
「あの……口に出してた?」
「はい、それで……『ひとりえっち』について詳しく教えていただけますか?」
 ……お、俺の……バカ。
「えーあのーそのー、女の人のやり方は詳しく知らないしー」
「つまり、男女で違うやり方なのですね?」
 あ、頭良いよこの人。
「サイトさんのやり方で結構ですので、お手本見せていただけますか?」
「かっ、勘弁してくださいっ」
 アンの前で公開自慰。死ねるぜ。
「では、女のやり方をわかる範囲で教えてくださいまし」
 へ?そ、それって……
「わたくしの身体に『ひとりえっち』を教えてくださいまし、サイトさん」
 ―ぐは……鼻血吹いた。な、なんたるっ。
「えっと……まずは、ベット行きましょうか」
「はい、サイトさん」
 じゅ、従順ですぜ。このお姫さま。
 ベットの上で、後ろからアンを抱きしめる。
「あら? サイトさん?」
「いいから、動かないでアン」
 そんな事を言いながら、アンの髪の中に顔を埋めて甘い香りで胸を満たす。しばらくそんな事をしていると、流石に今の体勢に気が付いたアンが、もじもじとし始める。
「うん、良いよアン。もっと恥ずかしがって」
「え……は、はい」
 俺の指導が始まる。
「ほら……アン、今俺の手、どこに当たってるか言ってごらん」
「む、胸ですわ、サイトさん胸をっっ、そんなぁ……優しくっっ」
 後ろから抱きしめた形で胸を責めると、アンに逃げ場は無い。じっくりと苛め抜きながら、どう感じているのか、実況中継させる。
「ひっ……ぅ、……さきっちょ、だめですっっ、いやっ、な……に……へんっ、へんですのっっ……ひっう………ゆる……許してっ、許して下さいましぃぃ」
 はっはっは、アンはかわいいなぁ。
「だっ……ソコは駄目ですっっ、ソコはっ…………の、でる……所ですぅ……殿方が触ってよい所ではぁぁぁぁぁああ」
 逃げれないのを良い事に、じっくりネチネチと苛め抜く。
 感度が高く、快感を隠そうとしない、触り甲斐のある身体。
 俺の腕がアンの胸と腿とに挟まれて、アンの大切なトコロにしっかりと固定される。無意識にしているのだろうが、ぺったりと俺にくっついていた背中が、じわじわと前に進む。
 ……腰を俺の手に押し付けるために。
「良い子だね、アン」
「……っっ、あっ……ひ……っく……うあああああぁぁぁあ」
 既に何を話しかけても、意味のある返事が返ってこなくなっていた。
 どうやら初めてらしい官能の海の中で、思うさまそれに溺れている。
『そろそろ……いいかな?』
 たっぷりと時間をかけたおかげで二度ほど絶頂に達したアンが、三度目の入り口を叩いた頃……
「え? ……えぇ?」

 俺はアンに快感を送り込むのを止めた。

43:9/12
07/01/26 01:35:15 ABXgnv/D
「サ、サイト……さまぁ?」
 泣きそうなアンが、プルプルと震えながら俺を見つめる。
 何が言いたいのかは、じっとりと濡れた指先が教えてくれている。
 でも……
「と、まぁこんな感じだよ、アン。わかったかなぁ?」
 我ながら意地悪な質問。
「……あの……サイト……さま?」
 途切れた快感を求めて、アンが狂おしく俺を見つめる。
 ほんの一押しで、何度か感じた『凄くキモチイイコト』が与えられると言うのに。唐突の中断。『オアズケ』。自由以外のものは何でもふんだんに与えられてきたアンは、我慢するのが苦手だった。
「後は自分でやってごらん」
「……じ……ぶん……で?」
 思いもかけない指摘に、アンリエッタの目が見開かれる。……が、
「あの……サイトさま?」
「ん? なに? アン」
 目の前にはサイトが居る。この状態で……自分で……顔から火が出るかと思った。
「そ、そんなっっ、そんな恥ずかしいことっ」
 出来るはずない、そう思った。……でも、アンリエッタの身体は、ソレを想像するだけで燃え盛る。
「ひぅ……ぇ? えぇ?」
 自らの変調に戸惑うアンリエッタを、サイトが楽しげに見つめている。
 ―サイトの視線。ソレを感じるだけで、アンリエッタの手は……
「そうそう、そのまま、ゆっくり手を降ろしていって」
 サイトが指摘するまで、アンリエッタは自分の手がソコに近づいて行っているのを自覚していなかった。……そして、自覚しても止まらないという事実は……
「……っっ、だめぇぇぇっ、いやっ、いやっ、いやぁぁぁぁ、見ないでっ、おねがぁぁぁいっ」
 もちろんサイトはそんな哀願一つで見るのを止めるつもりは無かった。
「そうそう、そうやって丁寧になぞって……分ける? アン、もう下着の上からでも形がはっきりと分かるよ」
 サイトの指摘に顔をそむけながらも、指はサイトの指示を忠実に守る。
 見られている緊張感が、絶頂を一歩手前で押しとどめる。
 達することが出来ないだけで、快感は澱のようにアンリエッタの身体の一番深い所に溜まっていった。
「ふ……あ……ゃぁ……みな……っで……」
 羞恥心と快感がせめぎ合い、アンリエッタはもう何度目に成るか分からないお願いをサイトに送る。
「仕方ないね、アンは」
 指一本触れられない距離で、アンリエッタを見るだけだったサイトがのっそりとアンリエッタの横に寝そべる。
「これなら気に成らない?」
 ……動くところを見られないのなら、指先を見つめられないのなら……本の少しマシだから、コクコクと頷いたアンリエッタが勢い良く指を動かし始める。
「じゃ、アンが逝く顔、ゆっくり観察させてね」
「!! ……っっ、やっああああぁぁぁぁぁ」
 さっきまでとは別の羞恥に、アンリエッタの頭が焼ききれそうになる。
「きもちそさそうな表情だね、アン」
 サイトの焦らしに、心の奥の奥で、何かが切れた。

「……いぃっ、もっ、どうなっても良いからっ……見てぇ、サイトさまっ……もっとアンを見てぇぇぇぇ」
 一切の抵抗が無くなったアンの指が、平常時なら痛みすら感じそうな勢いで大切なところを抉る。

 ……そして、もう片方の手で、大切な人を抱きしめる。
「サイト……サイト……いてっっ……ずっとっっ、ずっとアンと一緒にいてぇぇぇ」
 サイトに触れたところから、全身の感覚が狂いだす。
「っっ、あくっ……うぁ……あ、あっっああああぁっ、ぁぁぁああっっっ」
 激しい快感にのたうつアンリエッタの胸の中で……サイトは……

 ―窒息していた。調子に乗りすぎ!!

>>46

44:10/12
07/01/26 01:37:43 ABXgnv/D
「ごめん……友達だから……大切だから、出来るだけ早くタバサ助けに行くけど……さ」
 無慈悲な俺の宣告に、アンの瞳からこぼれる涙を指先ですくう。
「今夜は……アンの為に、なんだってするから……」
 こんなに広い王宮で、まるで一人無く子供の様に見えたから、俺に出来ることをなんだってしてあげたかった。
 涙に濡れた瞳が、おずおずと俺を見上げる。あ、やばい。これは……舞踏会の再現。圧倒的な魅力の前に、操られるように唇を重ねる。
 そっと預けられるアンの身体。甘い香りに包まれながら、もつれ合うようにベットに倒れこんだ。
「……貴方の時間を……少しだけ……一夜だけ、くださいまし」
 ほんの少しの安らげる時間、それが彼女の願い。俺にそれを上げられるとは思えないけれど、アンの想いに答えたかった。
「一晩だけで良いの?」
「……流されてしまいますもの」
 それでも女王であろうとするアンがいじらしくて、悲しかった。せめて……
「今だけは……流されればいい」
 そして貴方に少しでも安らいで欲しい。想いを伝えたくて、何度もキスをする。
 雨のように降る軽いキスに、アンの緊張がほぐれていくのがわかった。潤んだ目でうっとり俺を見つめるアンに、少しいたずらをしたくなる。そう、例えば仕返し。
「きゃっっ、サ、サイトさん?」
 あの時のお返しに首にキスを贈る。そんな時になって、やっと夜中に自分の私室で、しかもベットの上男と二人きり。(潰れてる近衛はノーカウント)
 雰囲気に酔っていたアンの顔が、見る間に赤く染まる。
「わ、わたくし……そ、そんなつもりじゃ……」
 逃げるのなら、抵抗するのなら……それも良いと思った。アンが安らいでくれるためなら、何もせずに一晩過ごすくらいの覚悟はしていた。
「……あ……の……」
 どうして欲しいのか、無言でじっとアンの反応を窺う。真剣に見つめる俺の目の前で、アンの身体から力が抜けていく。
 俺を見つめていた瞳がそっと閉じられ、薄く濡れた唇が僅かに開く。
 アンが一人でも寂しくないように、今から消えないしるしを刻もう。お互いに無言の中で、それでも心の奥で相談を重ねて、そうすることに決めた。
 アンの身体がそこに在る事を確かめるように強く抱きしめると、甘えるように胸に熱い息が掛かる。
 触れ合っている所が熱い。燃えるような……それでいて心地よい、際限なく求めてしまう熱。
 お互いを探るように夢中で抱き合ううちに、アンの胸の中に居た。安らいでもらうつもりが、すっかり安らいでしまう。
 少し悔しくなった俺は、抱きしめるだけで喜んでいるアンの死角から手を伸ばして、服をずらす。
「っ……」
 抱きしめていた背中を、触れるか触れないかのタッチでくすぐるように撫で上げる。
 自分の身体の反応が信じられないアンが、声を押し殺しながら俺の身体を抱きしめる。
「アン、気持ち良いみたいだね」
 恥ずかしい声を押し殺すために、息すらろくに出来ないまま、フルフルと首を振るアンの胸に吸い付いてみる。
「ひぁんっ。……サ、サイトさん」
 驚いたアンが俺の頭を離した隙に、服を捲り上げて胸を露にする。服の上から感じていたふくらみを目の当たりにしたサイトの興奮はいやがおうにも高まった。
 自分の心臓の音を痛いほど意識しながら、肘の辺りで服ごとアンの腕を固定する。
 抵抗できない体勢にしてから、アンの胸をじっくりと観察する。
「はっ、恥ずかしいですわ……あの……サイトさん……」
 人に見られるのは慣れているはずのアンが、自分でも不審に思うほど乱れる。
 臣下としか見ていない者たちの目と比べようも無いほどに、サイトの視線は熱を帯びて、
「綺麗だよ、アン」
 聞き慣れた筈の誉め言葉も、サイトの口から出るだけで、まったく違うものに聞こえる。
 両手を塞がれているアンは、せめても……と、胸を吸うサイトの額に口付ける。
「わたくしも、あなたに何かして差し上げたいですわ」
 それを聞いて笑ったサイトが、アンの耳元で囁く。
「脱がせて、アン」
 顔を輝かせたアンは、慣れない手つきでサイトの服を探るが、人に脱がせて貰うことはあっても人に何かする機会の少ないアンは、何度も挑戦して、やっとの思いでサイトの服を脱がせていく。
「良く頑張ったね」
 シャツを脱いだ所でアンの頭を撫でると、裸の胸にもたれ掛って甘え始める。
 子供のように喜ぶアンが可愛くなって、さっきのように抱きしめると、さっきとは違う感触が身体に密着する。
 裸の身体は刺激が強い。
「サイトさん」
「アン」
 名前を呼びながら、感じる所を探った。
 溶け合う様にベットの上に崩れ落ちる、とても幸せな一時が始まる。

45:11/12
07/01/26 01:38:14 ABXgnv/D
 じっくりとお互いの身体に触れる。
「サイト……こう……ですか?」
 いつの間にか呼び名から『さん』は外れる。距離が近くなった実感があって嬉しい。
「アンは、ここだよね?」
 背中から手を回して、お尻の側から熱く湿った入り口を触る。
「……んっ……あ、っあ……う……ぁ……」
 人に何かしてもらう事に慣れきっているアンは、守勢に回ると弱かった。
「わたくしもっ……してあげたいのにっっ」
 快感に溺れながら、それでも俺に尽くそうとするアンだけど、アンにしてもらうより、アンが乱れる所を見るほうが楽しい。
「うん、沢山気持ち良い事してね、アン」
「は……ぃ……がんば……ひぃっっ」
 頑張ろうとするアンの行動を封じるために、すっかり解れた入り口に指を滑り込ませて中を擦る。
「いっ……あぅっ……あっ、あぁあ……あっ、そ……んなっ……」
 軽く指を捻るだけで、身動き取れなくなる敏感な身体。荒い息を吐く身体を仰向けに寝かせる。
「いい? アン」
 そろそろ我慢も限界。俺を求めるように開き始めたアンの入り口に、硬くなったモノを押し付ける。
「……」
 無言で頷くアンを見て、決意を固める。指で確かめた所に押し込もうとするが、焦っているため、上手く入らず何度もアンの敏感な突起に、自分のソレを擦り付ける事に成った。
「ひっっ、な、なにっ? サイトっ……なんだかっ……き……気持ち……」
 サイトが焦燥に駆られる前で、アンの身体がどんどん昂ってゆく。もちろんそんなところを見れば見るほど、アンの中に侵入したいと言う欲求は高まった。
「っっ、たっっ」
 押し開く感触と共に、サイトが暖かいもので包まれる。
「アン……気持ち良いよ」
「いたっっ……いたいっ……」
 アンの柔らかい肉が、幾重にも重なって俺を締め付ける。痛みを訴えるアンに心が痛むけど、さっきまでおあずけ状態だったため、自分の身体なのに言うことを聞かなかった。
「アン……ごめっ……と、とまらなっ……」
「……っ、よっ……よいのです、サイト……わたくしで、存分によくなってくださいまし」
 かみしめられた唇に血を浮かべながら、シーツを掴んで痛みに耐えていた。
 そんな仕草を見ても、気持ち良すぎるため、一切手加減が出来なかった。
「アン……ごめんっ……いぃっ……これっ……すぐに……」
 少しでも早く終わらせようと、乱暴なくらいに強く中で暴れさせる俺に、アンの腕が絡む。……動きを止めるためではなく、柔らかく抱き寄せるために。
「サイト謝らないで下さいまし、わたくしは……しあわせですわ」
 微笑みながら掛けられた言葉に、俺の胸は熱くなる。そして、アンにも感じて欲しくなって、動きを止める。
「アン……ごめんね、今から優しくするから」
「……サイト……無理はなさらないで下さいましね?」
 どれほどの痛みが彼女を襲っているのか俺には分からないが、痛みを感じながらも俺を気遣ってくれることが嬉しい。
 時間をかけて息を整える。じっとしているだけで果てそうな快感を押しとどめながら、アンの中にじっくり馴染ませる。
「……ふっ……く……サイト……ちょ……っとだけ……その……」
 潤み始めたアンの目を見て、ゆっくりゆっくり動き始める。
「っっぁ……ぅ、な、なんだか……さっき……と……」
 さっきより気持ち良いのはお互いさまだった、いつ果てるとも知れない快楽の底で、アンの為にもがき続ける。
「……ぅ?……あっ……あ、あっ……あくっ……」
 甘いものが混じり始めるアンの声に、頭の奥が痺れる。ねだる様なアンの目に答えて、何度目か知れないキスを交わす。
「……サイ……ト……すき……です」
 快感に浮かされたアンの小さな告白に、俺はあっさり限界を超えてしまった。
「……アンっ、いくっ……も、我慢できなっ……」
 限界ギリギリで、これ以上耐え切れない俺がアンから離れようとすると、アンの脚が俺に絡み付いた。
「サイト……最後までっ……一緒にっっ」
 押し付けられる身体の与える快感が、最後の駄目押しをして、アンの一番奥に熱い滾りを叩きつける。

 息が整うまでの小休止の後、意識がなくなるまでアンの身体を貪った。

46:12/12
07/01/26 01:38:46 ABXgnv/D
 痛む頭を振って、あちこちがおかしい気がする身体を起こす。
「もうすぐ夜明けだぞ」
 アニエスさんの無慈悲な声。

 昨夜の事を思いだ……そうとした瞬間。
 ガチャリと、重たい音と共に銃口が俺のほうを向く。

「夢だ、忘れろ」

 ……そういうことらしい。
 まだ眠るアンを少し見つめてから、アニエスさんに押されるようにして、部屋を後にする。

 牢に戻ると、出かけたときとまったく変わらない状態で、皆いまだに眠っていた。
 一息ついて定位置……ルイズの隣に潜り込む。
 ルイズのふらふら揺れる頭に肩を貸す。
 ずっと揺れていた頭がやっと落ち着いて、深い息を吐いたルイズがボソリと呟いた。
「あの女の匂いがする」
 寝言だよな?
 寝言に間違いは無いと思うんだが……

 怖すぎですよ、マイ・マスター

 ルイズが今からどんな夢を見るのか、想像するだに恐ろしい。
 部屋を出る前とは違う意味で悶々と眠れないまま、時間ばかりが過ぎていった。


 それにしても……もし、あの時別の行動をしていたら、どうなったんだろう?
>>37へ?

47:名無しさん@ピンキー
07/01/26 01:42:36 ABXgnv/D
思ったより難しいと言うか、投下が一番緊張しました。
連投規制は起きませんでした。起きる時は何で起きるんだろう?
が、行数は兎も角、文字数で落とせなかったのは初めてだ。
あわてて編集しましたよ。

一個一個きっちり書いたほうが読み応えあるのかもしれませんが、思いついたらやってみたくなったので……

ごめんなさい、もうしません。

アンの性格がばらばらなのはきっとお酒の所為っ。

……ごめんなさい、いや、真面目にもっと頑張るよ。

では、またっ



48:名無しさん@ピンキー
07/01/26 01:45:58 OlMXv7Hj
>>47
はじめてリアルタイムで読ませていただきました。
更新するたびに新レスが増えていて面白かったです。
深夜、お疲れ様でした

49:名無しさん@ピンキー
07/01/26 09:04:21 5+hCZm9O
こっここ、このやろう、GJ!

50:名無しさん@ピンキー
07/01/26 12:00:59 qfjgMRq3
>>47
「あの女の匂いがする」
MIAですか?

51:名無しさん@ピンキー
07/01/26 12:47:28 VJkTjkE/
>>47
なんか何やっても死にまくる某アドベンチャーを思い出しましたw
…サイトはしんのゆうしゃだったんだね!

52:名無しさん@ピンキー
07/01/26 13:58:23 JV7lyUuv
>>47
GJ!です。
アドベンチャーゲームブックだっけ?あれ思いだしたw 火吹き山の魔法使いとかw
ラストが一つに収束するのもうまいなぁ。
書くのも投下するのも通常より大変だったかと思います。乙!

53:名無しさん@ピンキー
07/01/26 14:09:09 Yk67XnX1
新型のタイプのSSだね、サイトは
どうがんばっても駄目みたいw
乙&GJ!

54:名無しさん@ピンキー
07/01/26 16:38:59 hJULi9+4
>>47
「あの女の匂いがする」ってところが来たるべき修羅場シーンを幻視させてくれますなぁ。

55:名無しさん@ピンキー
07/01/26 21:29:47 cAwi113J
>>47GJです!
ハッピーエンド?は4番目だけかぁ
アン様の性格が多少違うのは、酔ってるからなんでもアリってことで目を瞑れると思いますよ。
へんたいさんをはじめ、選択式最近増えたね。
選択とは言っても全部読んでしまうがww

56:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/01/27 01:43:59 XZSOX453
遅くなったけど続き投下いきますよー

57:雪風の贈り物 ◆mQKcT9WQPM
07/01/27 01:44:47 XZSOX453
贈り物は、贈って喜ばれるものが基本。
だから、タバサは、才人の喜びそうなモノを探した。
で、裏町まで探しに行ったら。

『ちょっとアレな旦那様にぴったり!』

という売り文句に惹かれて、入った店でオススメされたのがコレだった。
で、結果はといえば。
才人はタバサの目の前で固まっている。
どうリアクションしていいかわからないのだ。

「…サイト?」

沈黙に耐え切れなくなったタバサが、真っ赤な顔で才人を四つん這いになりながら見上げる。
当の才人は、何度か深呼吸したあと、タバサに向かって言った。

「あのさ、どういう理由でソレ選んだわけ?」

タバサは俯いて、才人から視線を逸らしながら応えた。

「…ちょっとアレな彼氏にぴったりって…」

…あの、俺そういう風に見られてるんすか。
あーそーですか。
才人の中で何かがキレた。
才人はベッドに上がると、タバサの首輪から垂れる紐を手にした。
それを軽く引くと、タバサの顔を自分の方に向かせる。

「…それでこういう格好するシャルロットもそーとーアレだと思うけど?」

その才人の言葉に、やっぱり赤くなって、タバサは。

「う、うん…。
 私も、サイトと同じくらい…その、アレだと思う…」

なんと、頷いて見せたのだ。
才人はそんなタバサを見て、くは、と息を吐くと。

「じゃあ思いっきりアレなことしちゃおうかねー!?」

ケダモノになった。

58:雪風の贈り物 ◆mQKcT9WQPM
07/01/27 01:45:33 XZSOX453
とりあえず俺は裸になると、シャルロットをベッドに押し倒した。
シャルロットは抵抗らしい抵抗もせず、ベッドにころん、と仰向けになる。
頭の犬耳と尻尾のおかげで、それはまるで犬の服従のポーズのように見えた。
そっかー、犬なんだっけね今は。
そこで。
俺は、ペットの犬がもしそうしたらするであろうことを、シャルロットにもしてあげた。

「ふぁっ、やあっ」

無防備なお腹を、右の掌で撫で回す。
絹のような肌理の細かい肌が、俺の手に吸い付いてくる。

「やぁっ…サイトぉ…」

タバサが潤んだ目で訴えかけてくる。
わかってますよー。お腹じゃ物足りないんですよねー?
でも俺はその視線を無視して、執拗にお腹を撫で回す。

「シャルロット、どうして欲しいか言ってくれなきゃ?」

お約束だけども、やっぱこれは外せません。
するとシャルロットは、赤くなって視線を外して、言って来た。

「お願い、胸も…アソコも…もっといじって…」

はいよくできました。
今度は、両手でもってシャルロットの胸を覆う。
ほんの少し膨らんでいるそこを、俺は掌で押しつぶす。
そして、自己主張を始めたシャルロットの胸の核を、指の間に挟んで磨り潰す。

「あっ、あっ、はぁっ、ふぁっ」

シャルロットの声が、先ほどよりもずっと艶を含んだものになる。
表情も、先ほどまでの不満げなものと違って、完全にとろけてイヤラシイ笑顔になっている。
そんな顔がまた、嗜虐心をそそるわけで。

「シャルロット、イヤらしい顔してる」

耳元でそう囁いてやる。
するとみるみる赤くなり、俺の視線から顔を逸らし、顔を隠す。
むはー。たまりませんねー。
そんなシャルロットを見てたら、ガマンきかなくなってきた。
俺はシャルロットに覆いかぶさると、シャルロットの膝の裏に手を当ててM字に開かせ、すでに臨戦態勢の息子をシャルロットの入り口に押し当てた。

「あっ…」

それを感じ取ったのか、シャルロットの視線が俺の息子とそれに蹂躙されようとしている割れ目に注がれた。
少し腰を進めて入り口を割り開くと、ちいさな喘ぎとともにシャルロットの表情がとろけ始める。
しかし、俺の責めはこんなカンタンに済んだりはしないのである。
特に今日のシャルロットは犬なのだからして。
俺は先っちょだけ入った息子をシャルロットから引き抜いた。

「えっ…?」

これから訪れる快感に胸躍らせていたであろうシャルロットの顔が、困惑に彩られる。
さーて、本番イキマスヨー?

「今日のシャルロットは犬だから…。後ろからしようか」

59:雪風の贈り物 ◆mQKcT9WQPM
07/01/27 01:46:38 XZSOX453
だ、だめ!後ろはだめ!
私は必死に頭を振って否定する。

「だぁめ。シャルロットの飼い主は俺だからね。どうしようと俺の自由でしょ?」

だ、だめなの!今日はだめ!
だって、あんな、あんな恥ずかしいのっ…!
でも、抵抗する間もなく、サイトは私を四つん這いにしてしまった。
だめっ…!見られるっ…!

「な、なんだこれ…?」

うー、は、はずかしいよぉ…。
サイトの目には今、私のお尻から生えている尻尾が丸見えになっているだろう。
そう、問題は尻尾だった。
これ、貼り付けたりしてるんじゃなくて…。

「お尻から…出てる…?」

お尻の穴に、挿して…ある。
それも、外から見える尻尾だけならいいんだけど…。

ぬぽんっ!

やっ!だめっ!引っ張ったらだめぇっ!

「うわ、すご…」

こ、この尻尾の根っこから先は…柔らかい棒に通された、不ぞろいの球体が続いている…。
だから、引っ張ると…。

ぽんっ、ぬぽんっ!

「ひ!や、だめ、ひっぱっちゃだめぇっ!」

さ、サイトが引っ張るたびに、球体が肛門を押し割りながら出てきて…まるで、出しているみたいな…!

ぬぽっ、ぬぽっ

「やぁ、だめ!だめぇっ!」

だめ、これ以上、だめぇぇっ!

ぬぽぽっ!ぬ…ぽんっ!

「ひ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

一番最後の、一番大きな球体が引き抜かれると同時に…私は逝ってしまった。
心地よい闇に、意識がしずんでいく…。
でも次の瞬間。

60:雪風の贈り物 ◆mQKcT9WQPM
07/01/27 01:47:20 XZSOX453
ぬぷっ!ぬぷぷっ!

「ひゃぁぁっ!?」

お尻から走る電流に、私の意識が無理矢理覚醒する。

「尻尾ちゃんと戻さないとね?」

サイトがっ…!尻尾をっ…!押し込み始めたっ…!

ぬぷんっ!ぬぷっ!

「ひゃぁっ、またぁっ、だめえっ」
「犬に尻尾は必要だもんね?ちゃんと戻してあげる」

今度はいくつも球体がお尻に入り込む感覚に、私の中のケダモノが吠え狂う。

「らめっっ!またぁっ、くるぅっ!」

さっきとは違う快感に、また私の意識が高みに持っていかれる。
でも、トドメを刺したのは、押し込まれる球体の感覚じゃなかった。

「こっちもヨダレたらしてかわいそうだから、入れたげる」

ぐちゅうっ!

「あ、あ、あ、あ、ああぁぁぁーーーっ!」

涎を垂らして震えていた私の入り口を、サイトが思い切り貫いた。
一番奥まで貫かれる快感と、お尻を犯される快感に、私はまた…達した。

才人は腰を一切動かさず、タバサの尻尾を抜き差ししてタバサを責めていた。

「や、だめ、またくる、きちゃうっ!」

何度も肛虐で達し、タバサの秘裂は容赦なく何度も才人を締め上げる。
しかし、一切動かない才人は、その責めに耐え抜いていた。

「ふぁぁっ!」

達するたびに意識を失いかけるタバサだったが、止まない才人の責めに、強制的に意識を繋ぎとめられる。
眼鏡は止まない責めにずり落ち、その顔は涎と涙でベトベトになっていた。

「も、らめ、ひぬ、ひんじゃうっ!」

すでに上半身を支える役割を放棄した両腕は、枕を抱え込んでいた。
その枕は、タバサの涙と涎でベトベトになっている。
股間から溢れた液体は、タバサの内腿を満遍なく濡らし、シーツに染みを作っていた。
才人はそんなタバサに背中から密着し、その耳元で囁きかける。

61:雪風の贈り物 ◆mQKcT9WQPM
07/01/27 01:48:04 XZSOX453
「頑張れよシャルロット、ここからが本番だからな」
「…え…」

一瞬止んだ責めと、才人の言葉に、タバサの理性が戻る。
…本番、って…?
しかし、それは一瞬だけの平穏だった。
才人は腰の封印を解除し、グラインドを開始した。
それと同時に、タバサの尻尾を抜き差しするのも忘れない。

「やぁっ、だめぇっ!なにっ、これなにぃっ!?」

膣道の中を熱く灼けた才人が前後する感覚と、腸内を球体が行き来する感覚が、破壊的な快感となってタバサの脳髄をかき回す。
今まで感じたことのない快感の奔流に、タバサの意識は焼き切れ、そしてその快感の電流に覚醒する。

「ふぇ?ふぁ、あぁ、やぁっ!らめぇっ、ひぁ、ふぁぁっ!」

もう、逝っているのかどうかすらわからない。
才人が達するまで、この責め苦は終わらない。

「ひぁ、ふぁ、あひ、やぁ、ひぃ、あふぅっ」
「しゃ、シャルロットっ…!」

そしてついに、才人が限界を迎える。
緩みきったタバサの子宮口を押し割り、才人の先端から大量の欲望が吐き出される。

「ふぁっ、はっ、あはぁっ」

その迸りを感じ、タバサはもう何度目かも分からない絶頂を迎えた。
才人は、脱力舌タバサから脱力した己自身を引き抜く。二人の間に、牡と雌の混合液の橋が渡される。
そして、ようやく、タバサは夢に落ちる事を許されたのだった。

62:雪風の贈り物 ◆mQKcT9WQPM
07/01/27 01:49:47 XZSOX453
「お散歩♪」

帰ろうとした才人の後ろに、にっこにっこしながらタバサが着いて来た。
制服に、犬耳と首輪と、才人のプレゼントしたリボンをつけて。

「あ、あのーう、シャルロットさん?」

俺これからルイズの部屋帰るんだけども、と言おうとした才人を、タバサの台詞が遮る。

「私はサイトのペットだから」

言って、首輪から伸びた紐を両手で突き出してくる。
にっこにっこしながら。

「いや気持ちは嬉しいんだけどもさ」

首輪つけたタバサを引き回しているとこなんか見られたら、究極のへんたいさん呼ばわりされるに違いない。
才人はなんとかしてタバサを部屋に戻そうとしていると。

「へーーーーーーーえ」

もんの凄く冷たい声が、廊下の先から響いてきた。

「サイトさん、そういう趣味あったんだぁぁぁぁぁぁ?」

全てを凍らせる地獄の風。
その風の源は、まるで箒を剣のように背負い、廊下を一歩一歩歩いてきた。

「し、シエスタ…!」

地獄からやってきたメイドは、周囲の空間を歪ませながら、才人に近寄ってくる。

「あ、あのシエスタさんこれには色々とわけがですねっ!?」
「言い訳は後で聞きます。とりあえず今はお仕置きさせてください♪ミス・ヴァリエールのぶんまで♪」

ぱしんぱしんと箒を手にたたきつけながら、シエスタは間合いを詰めてくる。
才人はその殺気に足がすくみ、動く事すらままならない。
才人は、後ろで控えるタバサに助けを求める。
しかしタバサは、いやな笑顔を貼り付けていた。
・・・あれ?

「私も聴いてみたいな、サイトの言い訳」

しまった墓穴掘ったーーーーーーーーーーーーーーー!?
その後才人は、箒と杖でさんざん小突き回され、女子寮の外に簀巻きにして放り出され。、『究極のへんたいさん ここに眠る』と書いた紙を貼り付けられたのだった。~fin

63:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/01/27 01:51:37 XZSOX453
はいしゅーーーりょーーー。
ああどんどんおばかになっていく。
既に本筋とは全く違う話になりつつあるし。
ていうかこれどこのエロ(ry

まあ明日も仕事だしもう寝ます。んじゃノシ

64:名無しさん@ピンキー
07/01/27 01:52:23 HmY6tjun
リアルタイムキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
GJです!


65:名無しさん@ピンキー
07/01/27 03:05:20 RC6BSuq5
>>61
見よ我が日本槍GJ!
むしろ『究極のへんたいさん』とは貴公の事じゃ(ry

66:名無しさん@ピンキー
07/01/27 03:06:18 RC6BSuq5
あぁ間違えた。
>>63
です

67:名無しさん@ピンキー
07/01/27 03:18:16 rjaVs7gW
>>63
続きktkr!! GJ。
寝る前にのぞいてみて良かったぜー

68:名無しさん@ピンキー
07/01/27 04:03:46 8tJdaVPf
>>1
遅くなったが乙。

久々のアン様&へんたいさんのタバサの続きキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

69:名無しさん@ピンキー
07/01/27 04:14:10 /sCgj0gb
>>63
GJ!何時もエッチで笑えるSSをありがとう。

70:名無しさん@ピンキー
07/01/27 05:00:07 Blq1P9vL
いやほんといい仕事してますよへんたいさん。
てか感想の書き込み一気に増えるな~
みんな潜んでんですねw

71:名無しさん@ピンキー
07/01/27 06:20:11 8tJdaVPf
ところでこのスレ住人のPS2ゲーム購入は既定路線か?

まぁこのスレにはタバサ&アンリエッタ好きが多そうだからそうかな?

72:名無しさん@ピンキー
07/01/27 07:47:52 ArDzVStu
アン様だけじゃないぞ、シエシエテファあにえすさんも大好きだぞ

73:名無しさん@ピンキー
07/01/27 09:34:23 jKq1G9Nl
>>63
朝っぱらからむらむらしちゃいました・・・GJ!

74:名無しさん@ピンキー
07/01/27 17:55:12 Bx7WTdOC
>>63なんてエロいんだ…!
ついに…ついにへんたいさんが自らSSの舞台に上がったぞ!
今度は誰をどうしてくれるんだ?!

PS2版かぁ…発売直後どっかにROM落ちてると嬉s(ry

75:205
07/01/28 03:47:41 7omlHF1N

へんた……いやせんたいさんを始めとした他の職人さんたちが良質なエロやギャグを書いてくれるおかげで、
自分のような場にそぐわない男のSSもそこそこ受け入れられていると実感する今日この頃。
やっぱバランスって大事ですよねはい。自分エロとギャグは苦手っつーか自信ないッス。
だってこの間従姉妹に過去に書いたもの見せたら「ギャグがくどくて若干不愉快になる」とか言われて(ry
エロに関してはそもそも自分まだど(ry

そんなこんなでSS投下。短編。ゼロらしくないのにゼロらしい、そんな話を目指しました。

76:平賀さん
07/01/28 03:48:36 7omlHF1N
 そのときのわたしは賑やかな居酒屋を出て、数年ぶりに再会した友人たちと、再び長いお別れを交わしたところだった。
 心配する友人たちに大丈夫だと笑って別れを告げ、女一人で夜の街を歩き出す。
 酔っているために頭が朦朧としていて、今一体何時ごろなのかもよく分からない。
 ぐらつく視界とふらつく足取り。せめて家までは自分一人で帰り着かなければと必死で念じながら、うるさい客引きを無視しつつ歩いていたのだ。
 その内気分が悪くなって立ち止まり、道端の電柱に右手を突いて左手で口を押さえた。
 嘔吐感が胸の奥からじわじわとせり上がってきたが、寸でのところで戻すのだけはこらえた。
 そうして数十秒ほど。ほんの少しだけ気分が良くなってきたとき、わたしは何となく軽く頭を上げた。
 特に、意味のある動作ではなかったと思う。まだもう少しだけその場に立ち止まって休んでいようと思っていたし、誰かに呼び止められた訳でもなかったから。
 だから、そのとき彼を見つけられたのは本当に、それこそ奇跡的と言ってもいいぐらいの偶然なのだった。
 わたしがここで立ち止まらなければ、立ち止まったとしても何となく顔を上げなければ、彼は夜の猥雑な雑踏に紛れ込んでいただろう。
 目立つ人ではなかったのだ。髪は染めていないし、特別体が大きい訳でも、小さい訳でもない。
 美形とも不細工とも言いかねる、どこにでもいそうな外見。
 本当に、彼は普通の人だった。群衆の中で黙っていれば絶対に見つけられないような、普通の人。
 だからこそ、かもしれない。
 わたしは直感的に悟ったのだ。ここで呼び止めなければ、もう一生彼に会うことはできないだろう、と。
「平賀さん」
 わたしが大声で呼ばわると、彼は驚いた様子で振り返った後、わたしを見つけて嬉しそうに微笑んだ。
 数年前と全く変わらない表情だった。嬉しそうで楽しそうで、でもどこか寂しげな、あの微笑。
 平賀さんはわたしの名前を呼びながら駆け寄ってきて、片手を上げて気楽な調子で声をかけてきた。
「よう、久しぶり」
 何の躊躇いもなくそう言われたとき、わたしは自分の心臓が一つ高鳴ったのを聞いた気がした。

77:平賀さん
07/01/28 03:50:03 7omlHF1N

 平賀さんは高校のときのわたしの同級生だった。でも、年齢はわたしより一つ上。つまりは留年生なのだった。
 わたしより一年早く入学して、わたしが二年生だった年の夏ぐらいから同じクラスになった。
 留年した理由については様々な噂が飛び交っていて、今でも正確には分からない。
 確かなのは、成績が悪かったために留年した訳ではないということと、出席日数が足りなかったことが決定的な理由になったらしいということだった。
 分からないのは、何故出席日数が足りなかったのかということ。
 さすがに平賀さん本人に問いただす人はいなかったから、自然と様々な憶測が生まれることになった。
 当時一番信じられていた噂は「一年ほど行方不明になっていた」だったが、それにしたって何故行方不明になっていたのかは誰にも分からなかったのだ。
 そんな風にあれこれと噂の種になっていた平賀さんだったが、本人はこれと言って変わったところのない人だったように思う。
 いや、むしろ普通の人よりも活動的で、楽しい人という印象が強い。
 留年生のくせに躊躇もなくわたしたちの輪の中に入ってきて、持ち前の明るさでいつの間にやらすっかり馴染んでいるのだ。
 文化祭などのイベント事では大抵騒ぎの中心にいたし、その癖雑用や裏方仕事の手伝いなども好んで引き受けていた。
 そんな風に人当たがいい人だったが、女子に対しては格別優しかったように思う。
 自分の前では重い荷物など絶対に持たせなかったし、具合が悪いのを我慢しているのも敏感に見抜いていた。
 とは言え下心がある風でもなく、ただ体に馴染んだ動作を自然に行っているだけのように見えていた。
 一度、わたしの友人に「平賀さんって何でそんなに優しいんですか」と単刀直入に聞かれて、
 「多分犬の根性が体に染み付いてるんだろうなあ」と苦笑していたのを覚えている。その言葉の意味は未だに分からないが。
 そんな風に飾らない人だったし顔も凄く悪いという訳ではなかったから、留年生のくせに女子の間でもなかなか人気が高かった。
 何故だか「この人なら危ないことがあっても守ってくれるかも」という妙な期待を抱かせる人だったのも、人気の理由の一つだった。
 考えてみれば変な話だ。平賀さんは格別体格がいい訳でも、強そうに見える訳でもなかったのに。
 とにかくそういう事情があって、平賀さんにアプローチをかけて実際に告白までした人は幾人かいたようだったが、
 彼の返事は決まってノーだった。理由を問いただすと、とても寂しそうに「他に好きな人がいるから」と答えていたという。
 好きな人、というのが誰なのかも、女子の間でたびたび話題になることだった。やはり、誰なのかは分からなかったけど。
 だが、それ以上に話題になったのは、その女子が誰なのかということよりも、何故その子のことを話すとき平賀さんが寂しそうにするのか、ということだった。
 何か悲しいエピソードがあるに違いない。あのいつも明るい平賀さんが、あんなに寂しそうな顔をするんだから、と。
 だが、私は知っている。彼が寂しそうにするのは、そのときだけではない。彼はいつだって、どことなく寂しそうだった。
 男子の輪の中で騒いでいるときも、体育で走り回っているときも、それこそ女の子に言い寄られているときも。
 そういうことをしているそのときこそ、本気で楽しそうだったりはしゃいでいたり困っていたりするのだが、
 一度そこから意識を離した途端、彼は決まって寂しそうな雰囲気を身に纏ってしまうのだ。
 そういうとき、彼は大抵微笑んでいた。ここにいるということがとても嬉しくて、だけど同時にとても寂しい。そんな微笑を浮かべていた。
 彼の微笑をよく覚えている。数年経った今でも、心の中に思い描くことができる。
 ずっと、彼のことを見つめていたから。


78:平賀さん
07/01/28 03:51:17 7omlHF1N

 夜の雑踏を遠く離れて、静まり返った小道を二人で並んで歩く。この道をずっと行けば、わたしの家が見えてくる。
 同窓会も終わって、一人で帰るところだと言ったら、平賀さんが心配してついてきてくれたのだ。
「俺もそっちの方に用事があるんだ。最後は別方向になるから、家までは送っていけないけど」
 そんな風に言って、平賀さんは酔っ払っているわたしを時折心配げに見ながら、こちらのペースに合わせてゆっくり歩いてくれている。
 そういう訳で、隣に平賀さんがいる。そのことが信じられず、酔っ払って深く眠り込んだわたしが
 見ている夢なのではないかと疑ってみたりもするけれど、やはりこれは現実なのだった。
「同窓会、行けなくて悪かったな。どうしても外せない用事があってさ」
 申し訳なさそうな平賀さんの言葉に、わたしは頭が痛むのを我慢して首を振った。別にわたしが許すことではないのだけれど。
 すると、平賀さんは心配そうにわたしの顔を覗き込みながら言うのだ。
「具合悪そうだな。ちょっと休んでいこうか」
 これにもわたしは首を振った。少しでも長く話をしたいから、本当は立ち止まりたいところなのだが、
 座ると気が抜けて寝込んでしまいそうな気がして怖い。そういうみっともないところは、出来れば見せたくなかった。
 平賀さんはやはり心配そうな表情で少しの間考えていたが、やがて気遣うような微笑を浮かべてみせた。
「じゃあ、休みたくなったら言ってくれな。別に急いでる訳じゃないからさ」
 わたしは素直に頷くことしか出来ない。彼の微笑は、数年前と全く変わっていなかった。
 楽しそうだったり、優しそうだったり。でも、その中には必ず隠し切れない寂しさが漂っているのだ。
 ということは、やはりまだ「好きな子」のことは解決していないのだろうか。
 そのことを訊ねてみたい気はしたが、後一歩というところで質問が口から出てこない。
 代わりに出てきたのは、「今は、なにを」という、ありきたりで当たり障りのない質問だった。
 平賀さんは何気ない口調で、
「ニート」
 と一言だけ答えた。
 予想もしなかった返答に、頭が真っ白になる。何も言えずにいるわたしを見て、平賀さんは大きく吹き出した。
「おいおい、そんなに固まんないでよ。会社辞めたの一ヶ月ぐらい前なんだからさ」
「あ、そうなんですか」
 わたしは話が気まずい方向に進まなかったことにほっとすると同時に、強い疑問を覚えた。
 わたしの記憶では、平賀さんはかなり成績がよかったはずである。
 騒がしい印象や留年生という立場とは裏腹に、一人でいるときはかなり勉強していた様子で、大学もレベルの高いところに進んだはずだ。
 進路に悩む様子は微塵もなく、他の生徒と比べて目的意識がはっきりしているように見えたのだが、そんな彼でも望んだ道は進めなかったということなのか。
 憑かれたように見えるぐらい何にでも一生懸命な人だったから、いわゆる「最近の若者」のように転々と職を変えるというのはどうもイメージに合わないのだが。


79:平賀さん
07/01/28 03:52:35 7omlHF1N

 そんなことを考えてみるものの、実際にどうなのかは本人に聞いてみなければ分からなさそうだった。
 だが、聞けない。そういう問いをするのは怖い。
 平賀さんの寂しげな微笑を覚えているからこそ、そういう問いが彼を傷つけるのではないかと思ってしまう。
 そうしてわたしは黙り込み、平賀さんもわたしの迷いを察したように何も言わなくなってしまったので、
 わたしたちはかなり長い間、お互いに無言のままで歩き続けることとなった。
 その内に平賀さんに呼ばれたわたしが慌てて顔を上げると、平賀さんが二つに分かれた道の一方を手で指し示していた。
「家、あっちなんだろ」
 そう説明したし、実際にその通りだった。平賀さんはもう一方の道を示して、
「俺はこっちだから、ここで」
「はい。ここまで、ありがとうございました」
 何かを言わなければと思いながらも何も頭に浮かばず、わたしは機械的に頭を下げる。
 平賀さんはそれを見て、穏やかに微笑んだ。穏やかで、それでいて寂しそうな、あの微笑だった。
「悪いね。気をつけて帰ってくれな。変な人についてっちゃダメだぜ」
「何歳だと思ってるんですか」
「実際の年よりゃ若く見えるからさ。じゃ、元気で、な」
 冗談交じりに別れを告げて、平賀さんは踵を返した。
 思わずその背中に手を伸ばしかけて、引っ込める。わたしは何をしようとしているのだろう。
 転々と住宅街を照らす、頼りない街灯の下。平賀さんの背中は、その足取りに何の迷いもなく小さくなっていく。
 わたしの胸に、今日平賀さんを見つけたときのあの奇妙な直感が蘇ってきた。
 ここで呼び止めなければ、平賀さんとはもう二度と話すことが出来なくなってしまう。
 わたしは消えかける平賀さんの背中に向かって、大声で叫んでいた。
「待って」
 遠く、去りかけていた平賀さんは、何故か必要以上に驚いた様子で、勢いよくこちらに振り返った。
 暗くてもよく分かる。平賀さんは、呼び止められることなど予想だにしなかったと言いたげな驚愕の表情で、こちらを見ている。
 わたしはもはや迷いなく駆け出した。どうせ今日で最後なら、疑問に思ったことを全部聞き出してやろうと決意しながら。
 暗い住宅街を歩きながら、わたしは今まで溜め込んできた疑問のほとんどを平賀さんにぶつけていた。
 平賀さんは急に饒舌になったわたしに驚いている様子だったが、問いの全てに実にあっさりと答えてくれた。
 その答えというのは、わたしにとっては全く予想外のものばかりだったのだけれど。


80:平賀さん
07/01/28 03:53:14 7omlHF1N

「ええと、まずは何から話せばいいんだっけ。質問いっぱいするもんだからさ、頭がこんがらがっちまったよ。
 ああそうそう、俺が高校生のときに行方不明になってたことだっけ。
 あれなあ、実は異世界に行ってたんだよ、異世界。
 そう。異世界。地球とは別の世界。あの頃流行してた、ファンタジー映画みたいな世界だったんだけどさ。
 ファンタジーだよ。分かるだろ。なんか魔法とかあってモンスターとかいて剣で切りあったり、そういうの。
 おいおい、この段階でそんな顔されても困るよ。俺はこっからもっと信じられないような話すんだからさ。
 俺はその世界で英雄になったんだよ。妙な力を偶然手に入れて、孤軍奮闘の大活躍をしてな。
 周りの人にもかなり持ち上げてもらって、いろいろ褒美ももらっちゃったりしてさ。
 でも大体一年ぐらい経ったごろにようやく帰れる目途が立ったんで、帰って来た訳さ」

 平賀さんがそこまで話し終えたとき、わたしたちはとある一軒家の前に到着した。
 広くて大きな家だ。大分古くて所々が傷んでいる様子だったが、洋風の石塀に囲まれた空間はそこらの家など比較にならないほど広く、
 庭だって走り回れるほどの広さだ。ただ、手入れされていない様子で雑草が茂り放題、池の水も枯れている様子だったが。
 こんなところに住んでいるくせに、庭の惨状には全く興味を示さない人物が主人らしい。
 だが、平賀さんはこんな屋敷に何の用があるのだろう。
 わたしが疑問に思ったのと、平賀さんがインターホンに向かって喋り出したのとはほぼ同時だった。
「あ、教授ッスか。才人です。時間よりちょっと遅れたけど、来ましたよ」
 鉄の門が勝手に開き始めた。どうやら、これが返事代わりらしい。躊躇いなく中に入っていく平賀さんを、わたしは黙って追いかけた。

「帰ってくるのに抵抗はなかったかって? そりゃあったさ。
 でもそれはあっちの世界での地位が惜しかったからでもないし、あっちの世界が凄く面白いところだったからって訳でもない。
 いたんだよ、好きな人がさ」

 わたしは立ち止まった。平賀さんもそれに気付いて立ち止まる。「どうした」と平賀さんが目を丸くしているが、
 わたしは何も答えられなかった。
 好きな人。平賀さんがあんな風に寂しそうに微笑む、その原因ともなっている人。
 異世界にいるのでは、会いたくても会えるはずがない。だからこそ、平賀さんはあんなに寂しそうだったのだ。
 わたしは「なんでもないです」と答えた。平賀さんも首を傾げながら、また歩き始めた。


81:平賀さん
07/01/28 03:54:47 7omlHF1N

「だから、本当は迷ったんだ。多分こっちに帰ってきたら二度とあっちには帰れない。
 正直、ほとんど直前まで考えてたんだよ。『いっそこっちに定住しちまおうかな』とかさ。
 そうしなかったのは、こだわりがあったせいだろうな。こだわりってのは、もちろん好きな人に関することさ。
 その人は、凄い人でさ。貴族のくせに魔法が使えなかったんだけど。ああ、その世界では貴族って皆魔法使えるんだ。
 で、そのせいでたくさんひどいこと言われたりしたんだけど、それでもくじけずに頑張り続けてた人なんだ。
 そういうの、全部横で見てたからさ。俺がその人に惚れるのもそんなに時間はかかんなかったな。
 だから俺は頑張ったよ。今まで生きてきた中で一番頑張ったと思うよあのころは。
 それで、さっき言った妙な力のおかげもあって、それなりにその人の役に立てたんだよ俺。
 その内、まあほんのちょっとだけどその人も優しくしてくれるようになってさ。
 気持ちも通じ合って、多分、あっちも俺のことを大切に思ってくれてたと思う。
 自惚れやすい性格だけど、これだけは確かだって断言できるよ。
 だからこそ、このままこっちの世界にいついてしまおうか、なんて考えた訳だしな」

 平賀さんは、廊下の途中にあった階段を下り始めた。どうやら地下に続いているらしい。
 階下の暗闇からは、何やら機械が動いているような音が響いてきており、今の平賀さんの話の内容も相まって、
 わたしはなんとなくゲームか漫画の世界に入り込んでしまったかのような錯覚まで覚えていた。

「でも、本当にそれでいいのかとも思ったよ。
 俺がその人の役に立ててたのは、偶然妙な力を手に入れたおかげだった。
 そうでなけりゃ、俺なんざほとんど何の役にも立たなかっただろうって思うよ。
 もちろんその力がなくてもその人のために頑張ろうって気はあったけどな。
 そういうこだわりがあったから、本当に自分とその人で釣り合いが取れてるのかなんて、散々悩んだりしたもんさ。
 その人は、妙な力や恵まれた才能なんかなしに、逆境に立ち向かってきた人だったからさ。
 それと比べれば、俺は恵まれすぎてたんだ。
 それに、こっちの世界にいたって大して面白い人生遅れそうもないからって理由で、
 いろいろ自分に都合のいいあっちの世界に留まるってのはさ、何ていうか、逃げみたいに思えたんだな。
 だって、そうだろ。逆境とか大変な目に遭うこととか、うまくいきそうにないこととか。
 そういうのを恐れて都合のいい方に逃げるってのは、その人がやってきたこととは正反対の生き方だ。その人の生き方を侮辱することだ。
 だから、俺は帰って来た。自分はあれこれと窮屈なこっちの世界でも頑張れる人間だって、自分に証明するために。
 ちっぽけなこだわりかもしれないけどさ、そうでもしなけりゃ、とても自分に自信が持てなかったんだな。
 だからこそ、俺は帰ってきてから必死に努力したよ。
 学校の行事やら勉強やら、あっちの世界に行く前の数倍も数十倍も頑張ってさ。
 そのおかげで、いい大学やらいい会社やらにも入れたし、友達も前よりたくさん出来た。
 自分が、何にもない状態からそこまで出来たってのはやっぱり嬉しかったし、これできっと大丈夫だとも思えるようになった。
 またあいつに会いにいけるって。そう思えたから、俺は今日ここに来たんだ」


82:平賀さん
07/01/28 03:55:44 7omlHF1N

 地下は地上の建物以上に広かった。向こうの壁が遥か向こうに見える、鉄でできた巨大な長方形の部屋。
 中央にはやたらと大きな装置があった。何かの機械というだけで、何に使うものなのかはさっぱり分からなかったけど。
 その装置の中央辺りに首を突っ込んでいた人が、こちらに気付いて体を起こした。
 平賀さんはその人物に向かって親しげに声をかけた。
「どうも教授。この子、俺の高校のときの同級生。作業の邪魔にはなりませんから、少しここにいさせてあげてもいいッスかね」
 教授と呼ばれたその人物は、頭がすっかり禿げ上がった眼鏡の小男だった。
 庭の惨状同様、自分の格好にも無頓着と見えて、着ている白衣はやたらと汚れていてもはや白衣とは言い難い。
 顔が皺だらけで、明らかに老人という風体だったが、目だけが異様に鋭かった。
 腰は曲がっていたが、こちらを睨みつけてくる視線にはやたらと力がこもっていて、わたしは思わずのけぞりそうになった。
 教授は「好きにせい」と鼻を鳴らすと、また装置に取り付いて何やら弄り始めた。

「ここで何をするのかって? そりゃ、帰るのさ、あっちの世界に。
 驚くこたないだろ。俺の話聞けば、俺がいよいよ自分の心に踏ん切りつけたってのは分かりそうなもんだ。
 むしろ、必死こいて勉強なんかしてたのは、半分ほどそれが理由だからな。
 つまり、こっちの世界であれこれと心の整理つけた後、自力であっちの世界に帰ろうと思ったんだな。
 魔法の力で世界を飛び越えられるんだ、科学の力を使ったってきっと飛び越えられるはずだ。
 そう思ってたんだけど、どうも現代科学じゃ無理っぽいなあって、大学のときに思い始めててさ。
 ちょっと焦り始めた頃、この人の噂を聞いたのさ」

 この人、というのはもちろん教授のことだ。わたしも名前を耳にしたことのある、有名な大学の教授なのだそうだ。
 とは言っても、年が年なだけにもう講義等はしていないらしい。
 今は専ら、この装置の開発に没頭しているのだそうだ。
「俺は財産家の一人息子って奴でな。親父もお袋も結構早くにおっ死んじまったが、そのおかげで金だけはそれなりにあった。
 だから、大学で情報収集しながらこの異世界間跳躍装置を開発してたのさ。
 俺がこの装置を開発するきっかけになったのは、そう、忘れもしない太平洋戦争当時、俺の親友がゼロ戦に乗ったまま行方不明になって」
 と、饒舌に語り始めた教授の声を、わたしは半ば無視していた。
 この人自身もかなり変な人らしかったけど、今のわたしにとっては平賀さんの話の方がよほど重要だったから。

83:平賀さん
07/01/28 03:56:27 7omlHF1N

「俺より頭のいい人が、俺より長い間そういう装置の研究をしてるって聞いてさ。
 他の連中は『あの人は頭がおかしいんだ』なんつって相手にしてなかったけど、俺は飛びついたね。
 だって、俺は知ってたからな。異世界が本当にあるってこと。
 結果は大当たりさ。教授は助手なんか必要ないぐらい頭のいい人だったけど、実験体だけには恵まれなかった。
 そりゃそうだ、異世界に行けるなんて言われたって、魅力に感じる人間なんかほとんどいねえからな。
 でも、俺は違う。無償どころか金払えって言われても手伝いたかったさ。もっとも、このニ、三年ほど、ほとんど教授の話聞くだけだったけどな。
 で、そろそろ装置の完成が間近だってんで、会社も辞めて身辺整理ってのも済ませて、今夜ここに来たって訳だ。
 ま、俺の話はこんなところだな。俺が何しようとしてるのか、少しは理解してもらえたかな」

 壁際に座り込んで話を聞いていたわたしは、平賀さんの問いかけにすぐには答えられなかった。
 もちろん、話があまりに荒唐無稽なせいもある。異世界がどうのだなんて、この人たちは確かにどうかしてるとしか思えない。
 こんな装置を作っている暇があったら精神病院にでも行った方がいいのではないかと勧めたいぐらいだ。
 でも、平賀さんの言うことに嘘はないとも思う。
 異世界の存在を信じる訳ではないが、この人の中ではそれは確かに存在するものらしいのだ。
 その、好きで好きでたまらない人、というのも、また。
「一つだけ、聞いてもいいですか」
 気付くと、わたしはそう言っていた。
「こっちの世界に、未練は何もないんですか。一度帰って来たってことは、少なくとも帰って来たいとは思ってたんでしょう」
 平賀さんは困ったように頬をかきながら、懐かしむようにどこか遠くの方に視線をやった。
「そりゃ、ね。あっちの世界はすげえ不便だったし、何より化け物がうろついてたりしてて危ないんだ。
 貴族ってのは大抵いけ好かない連中だったし、悪い王様がひどいことをしてたりもした。
 何よりやばかったのは戦争だ。こっちの世界じゃ、まず体験できない経験だったな。もう二度と体験したくないとも思うけど。
 正直、住もうって思ったらこっちの世界の方が百倍マシさ。安全だし便利だし、死ぬような目に遭うことも滅多にない。
 身分制度なんてのもないから、頑張ればそこそこ幸せになれるってのが、ある程度とは言え保証されてる」

84:平賀さん
07/01/28 03:58:09 7omlHF1N

「それでも」
「ああ、俺は行く」
 平賀さんの答えには、微塵も迷いがなかった。わたしはなおも問いかけた。
「それは、やっぱり好きな人がいるからですか」
「ああ、もちろん。それ以外の理由なんて、ないよ」
 正直言って、わたしには理解できなかった。
 平賀さんは、こっちの世界(という言い方をすると、なんだか異世界というものの存在を認めているようで嫌だが)でも、
 かなりいい人生を歩んでいるように思う。さっきついでに聞いたところだと、
 勤めていた会社というのも安定した大企業のようだったし。
 それに、家族のことはどうするのだろう。そういうものを放り捨ててまで好きな人のところに行くだなんて、
 映画なら感動を呼ぶお話なのかもしれないが、現実に実行するというのはかなり身勝手だ。
 その行動が多くの人を悲しませ、また迷惑をかけると分かっていてなお、この人は行こうというのか。
「ああ。ってよりな、無理なんだなきっと」
 平賀さんは、またあの寂しそうな微笑を浮かべてそう言った。
「俺も一度は考えたんだ。こっちの世界でうまくやれるなら、それが一番なんじゃないかってな。
 だからこそ、何だって一生懸命やった。勉強も遊びも、それこそ舐め尽すみたいに全身込めて打ち込んだよ。
 でも、ダメだった。どんなところで何をやってようと、どんなに楽しんだり悩んだりしてても、ふと気付くと心の中で誰かが囁いてるんだ。
 ここはお前の場所じゃないぞ、お前が本当にしたいことはそんなことじゃないだろうってな。
 多分俺は、もうあっちの世界の住人になっちまってるんだなあ。それこそ、体も、心もさ」
 その言葉を聞いたとき、わたしの心の隅にわだかまっていた疑問がいくつか氷解した。
 ずっと、疑問に思っていた。平賀さんは、何故平賀さんと呼ばれるのだろうと。
 留年生で、年の差などにこだわらずにわたしたちのクラスに馴染んでいた平賀さん。
 でも、わたしたちは何故か自然と彼に敬語を使っていたし、
 誰もが平賀さん平賀さんと呼んで、呼び捨てにする者は一人もいなかった。
 平賀さん自身、そういうのを好く人ではないはずなのに、何故かそのことについては一言も言及したことがない。
 きっと、わたしたちも平賀さんも、どこかで分かっていたのだ。
 平賀才人というのが、ここに馴染める人間ではないのだということを。
「心の底からそう思い知ったのは、本当につい最近なんだ。でも、自覚したら今度こそ歯止めが利かなくなった。
 こっちの世界での安定した安全な生活のことも、積み上げてきたいろんなもののこと、仲のいい友達のこと。
 それに、俺がいなくなったら親父たちが悲しむだろうなってことも。
 全部分かってても、そういうことで迷いがあってもなお、俺は間違いなくあっちの世界に行くって、そういう確信があったんだな」
 そこまで喋り終えて、平賀さんは長い長いため息を吐いた。ずっと背負っていた重い荷物を、今になって下ろしたように。
「親父たちには、もう話してあるんだ。最初は信じてくれなかったし、異世界に帰るって言ったときは殴られもした。
 今も喧嘩別れみたいな形で出てきてさ。最後がそんな形になっちまったのは残念だけど、それでも」
「あっちの世界に行くんですね、あなたは」
 平賀さんは深く頷いた。わたしは何も言えなくなって黙り込む。

85:平賀さん
07/01/28 03:59:33 7omlHF1N

 いや、本当は言いたいことが一つだけあった。だが、それを言うのには躊躇いがある。
 そうしてわたしが迷っている内に、装置の準備はすっかり完了したらしかった。
 教授がこちらに歩いてきて、興奮した面持ちで言ったのだ。
「乗り込め。いよいよ世紀の瞬間だぞ、才人」
 平賀さんは「分かりました」と呟くように言って、ゆっくりと立ち上がった。
 そして、迷いのない足取りで真っ直ぐに装置の中央に向かう。わたしも黙ってそれに続いた。
 装置の中央、先程まで教授が弄っていた部分には、人一人座れる小さな座席のようなものがあった。
 周りの機械からケーブルやらチューブやらが所狭しと差し込まれており、SF映画のセットのような雰囲気を漂わせている。
 教授の言によると、この部屋を埋め尽くすほどの巨大な機械は、そのほとんどが動力源に過ぎないらしい。
 この座席に座った人を転移するためのエネルギーは、そこまでしないと作れないのだとか。
「本当に成功するんですか」
 わたしが問いかけると、教授は難しそうな顔つきで唸った。
「分からん。何せ人類史上初の試みだからな。だが安心しろ」
 と、大笑した。
「なんせこのエネルギーだ。失敗したとしても人間の体なんか欠片も残らん。完全犯罪だ」
 この人は精神病院よりむしろ警察に出頭するべきなのかもしれない、と思いながら、わたしは平賀さんの方を見る。
 平賀さんは、やはりどことなく寂しそうな表情で、自分が数分後には座っているであろう座席を見下ろしている。
 声をかけたい、問いかけたい、と思う。しかし、やはり出来ない。
 そのとき教授が「じゃ、準備しろ」と言ったので、平賀さんは座席に腰を下ろした。
 そうしてから、ベルトやらハーネスやらで体を何重にも固定する。
 たくさんのケーブルが装着された、顔が半ば隠れる型のヘルメットも装着する。
 その姿が何故だか電気椅子で処刑される直前の囚人のように見えて、わたしは気がつくと顔をしかめていた。
「よし、じゃ、いってらっしゃいだな、才人」
「いや、この場合はさよならッスよ博士」
「お約束とは逆って訳だな」
 そう言って笑いながら、教授は座席の上で開きっぱなしになっていた、大きなカバーを下ろし始めた。
 やたらと厚くて重たげなそのカバーで、平賀さんの姿が隠れようとする直前、
「待って」
 と、気付くとわたしは叫んでいた。教授が顔をしかめて振り返る。平賀さんは「どうした」と不思議そうに返してきた。
「最後に、あと一つだけ言わせてください」
 わたしは大きく息を吸い込み、言った。
「わたし、ずっとあなたのことが好きでした。この数年間は会えなかったけど、それでもあなたのことだけが好きでした。
 わたしがこう言っても、あなたは異世界に行くことを少しも躊躇いませんか」
 意地の悪い問いかけだったとは思う。だが、わたしがこの問いを口にするのを躊躇っていたのは、
 それが平賀さんを困らせたり、傷つけたりするからではなかった。
 ただ単に、分かりきっていたからだ。
「ああ」
 と、一言だけ言って、平賀さんがあの寂しそうな微笑を浮かべるのが。
 わたしは引き下がった。引き下がるしかなかった。無性に悔しく、また、悲しかった。
 平賀さんの心の天秤は、もう片方が地面につくぐらいに傾いてしまっているのだ。
 好きな人がいる異世界、という重りの前には、わたしの好意など埃ほどの重さもない。
 分かっていて、それを現実に確認しただけなのだ、わたしは。
 確認したかっただけだ。
 わたしが好きになった人は、ただ好きな人のそばにいたいという理由だけで、
 今の生活も友人も家族も、自分を慕う女のことも放り捨てて、
 遠いところへ飛んでいけるパワーと身勝手さを持った人なのだということを。
 そのとき、不意に平賀さんがわたしの名前を呼んだ。
 わたしが顔を上げると、平賀さんはあの寂しそうな微笑を浮かべたままで、言った。

86:平賀さん
07/01/28 04:01:23 7omlHF1N

「本当は知ってたよ。俺のこと、どう思ってくれてるかってこと。
 今日君をここに連れてきたのはさ、話しておきたかったからなんだ。
 俺が何をしようとしてるのか。そして、多分もう会えないってことも。
 俺をずっと見つめててくれた人だからこそ、話しておきたかった」
 そう言い終えた平賀さんの顔には、やはり寂しそうな微笑が。
 なんて身勝手で傲慢な男だろう。
 そこまで分かっていて、こちらの気持ちなんか微塵も考えずに異世界なんかに行ってしまうなんて。
 だが、そんな男にずっと恋焦がれていた女が、ここに一人いるのだった。
「予言してあげる」
 わたしは腹の底から突き上げるような衝動に任せて叫んでいた。
「あなたは絶対不幸になる。こっちのことを全部無視して飛んでっちゃう極悪人だもの、きっと天罰が下るわ。
 都合のいい妙な力なんか手に入らないし、あなたを持ち上げてた人もあなたのことなんかすっかり忘れてるし、
 それに好きな人だってもうとっくに他の男と一緒になってるに決まってるわ。
 あなたは誰にも受け入れてもらえずに、こちらの世界やわたしを捨てたことを後悔しながら死んでいくのよ。
 生まれた場所でもない冷たい異世界で、それこそ野良犬のように惨めになってね」
 それでも、と続けると、平賀さんは全てを吹っ切るような微笑を口元に浮かべて、叫び返してきた。
「行くさ。だって、俺はあいつのことが大好きなんだからな」
 言葉に迷いはない。平賀さんは表情を変えないまま、実にあっさりと言った。
「じゃ、さよならな」
 わたしは何も言い返さなかった。
 カバーが閉まって彼の姿が見えなくなり、装置全体が眩い光に包まれ出す。
 振動と光と耳障りな音。わたしは唇を噛み締めて、そういう不快なもの全てを見守っていた。
 やがて全てが過ぎ去り周囲が再び静寂に包まれたとき、教授は装置の中央に駆け寄ってカバーを開いた。
 中にあったのは座席だけだった。平賀さんの姿はどこにも見当たらない。
 飛んでいってしまったのだ、あっちの世界に。
 空っぽの座席を眺めていると、わたしの心も空っぽになってしまったようで、何をどう考えたものかも分からなくなってしまう。
「ああ、しまった」
 と、不意に背後で教授が叫んだ。
「これじゃ、果たして実験が成功したかどうか分からんじゃないか」
 この人はやっぱり精神病院に行くべきかもしれない、とわたしが思っていると、不意に教授がこちらに身を乗り出してきて、手を合わせた。
「頼む、あんたも行ってくれ。大丈夫、今度はあっちからでもなんか連絡つけられる手段確保しとくから」
 それはつまり、やっぱり片道切符になるということだろうか。
 わたしは再び、空っぽの座席に目を戻す。
 平賀さんの最後の微笑が、いくつもの寂しげな微笑を全て塗りつぶすほどの濃密さで、わたしの心を満たしていた。
 あの表情以外、何も思い出せなくなっている。
 わたしはこれから、寂しげな微笑ではなくてあの吹っ切れた微笑だけを思い出して生きていくのだろう。
 だが、それも当然かもしれない。わたしはさっき初めて、平賀才人という人間の本来の姿を見ることが出来たのだろうから。
 あの人の存在が、わたしの心にいつまで残り続けるのかは分からない。
 もしも消えるどころか強くなっていくようなら、わたしがこの座席に座る日もそう遠くはないかもしれない。
 未練も迷いも全て吹っ切って飛んでいく力というのは、そういう気持ちから生まれてくるのだろうから。


87:205
07/01/28 04:05:49 7omlHF1N

 以上ッス。ちょっとでも楽しんで頂けたならこれ幸い。
 苦手ではありますけれどもギャグやエロにもまた挑戦したいッスね。

 あと、>>261氏、いつも保管庫の運営お疲れ様です。
 最初に書くタイミング逸して以来結局書いてなかった気がするので、遅いですが改めて。
 自分、何も手をつけなくてごめんなさい。なんか躊躇してしまうのです、編集画面を見ると。
 ここはそういう人間でも安心して書けるいい環境だと思います。

 それではまた機会がありましたら。

88:名無しさん@ピンキー
07/01/28 04:12:30 Kufx8XhY
>>87
GJ!!
リアルタイムでこんなにも素晴らしい作品が読めるとは…
貴方のお蔭で今日はいい夢が見れそうです!!

89:名無しさん@ピンキー
07/01/28 04:21:08 6BjXlavC
ぬう・・・寝ぼけてるのか俺は・・・

何か神の姿を拝見したような気がするぜ・・・寝なおすか・・・



ぐ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っじょぶ・・>>87

90:名無しさん@ピンキー
07/01/28 04:23:46 urWpE1S/
>>87
こういう毛色のは好みです! 余韻あるなーGJでしたー

91:名無しさん@ピンキー
07/01/28 04:36:52 rRp0+5h9
>87GJ!!!!!
再会シーンを書かないのがまたニクイ。
色々想像しちゃうじゃないですか!

92:名無しさん@ピンキー
07/01/28 06:21:14 AiwCJp1b
>>87
なるほど、なるほど。実に興味深いな・・・・。別の観点から新たなゼロの使い
魔を描き新鮮で賞賛に値する。次回作も期待

93:名無しさん@ピンキー
07/01/28 09:18:05 komx4Ptk
神だ!神が降臨なされた!

94:名無しさん@ピンキー
07/01/28 09:41:22 5e3P+1oR
こういうのもありなんだと、新鮮な驚きと感動を覚えました、GJ

95:名無しさん@ピンキー
07/01/28 11:23:16 TC7t6D9N
これはすごい…。
久しぶりにエロ無しSSで引き込まれた。

96:名無しさん@ピンキー
07/01/28 17:39:51 X39CN+C9
続きがすごい読みたい

97:名無しさん@ピンキー
07/01/28 17:41:16 r3VNMWer
>>87
世の中スゲェやつがたくさんいるなぁ
GJ!引き込まれた
久々にサイトがかっこいいと思えた

98:名無しさん@ピンキー
07/01/28 18:37:43 OA6cbV52
205さんは魔王以来のファンだけど
やっぱすごいな。すげえ斬新ですた。つーか見たことない
タイプのssでしたよ~。乙&GJ!


99:名無しさん@ピンキー
07/01/28 19:51:27 dr2C3n5Y
>>87
なんだこれ・・。めちゃくちゃ感動するじゃないか!激しくGJ!!

100:名無しさん@ピンキー
07/01/28 21:18:15 I/Lk+fBY
>>87
ま、まさかこんな手段があったとはぁぁぁ~~!!!
すごいすごすぎるよアンタ最高だっ

101:名無しさん@ピンキー
07/01/28 22:15:14 VP25uRiX
>>87
巧すぎ!!!!!
プロとして通じるレベルじゃないか?

102:284 ◆yJjGBLHXE6
07/01/28 22:38:08 I/Lk+fBY
で、流れ豚切りでスマンが、節分ネタが途中まで完成したので
投下します。キャラがおかしいのはご容赦を。

103:鬼は外 ◆yJjGBLHXE6
07/01/28 22:39:55 I/Lk+fBY
「あ~寒ぃ、そろそろ日本だと二月ぐらいだなこの寒さじゃ」
建物の裏の広場でごそごそと動く一つの影があった。才人だ。
彼はいささかボロボロのパーカーを着ていて、手に洗濯籠を持っていた。
「・・・よっと、うわ・・・水凍ってら」
どうすっかなぁ・・・めんどくせえなぁ・・・でも怒られるしなぁ・・・
と水汲み場で才人がしゃがみこんでぶつくさ言っていると、後ろからゆっくりと近づいてくる影があった。

「サーイートーさんっ・・・え~い鬼は~外ぉ~!!」
「あ、シエス・・・うわぁったっとぉっっぐぴゅ」
振り向いた才人はシエスタに思いっきり砂利のようなものを投げつけられて水汲み場の方へとすっころんだ。
見事に頭から。ご主人様の下着をぶちまけて。

・・・・うわ、変な声した・・・・・・
自分が原因の癖に、他人事のように笑顔を引きつらせながら後ずさるシエスタ。
少し・・・いや、かなり非道い。
「いちち・・・な、何なんだよいきなり!!びっくりするじゃないか!」

そうか、びっくりですむのか。

「ご、ごめんなさい・・・懐かしんでくれるかと思って・・・」
そこで才人はシエスタが持っている籠の中身と周りに散らばっているものに気付いた。
「ん、なんだこれ?大豆?嫌でもこの世界にこんなもんあるわけねぇし・・」
いぶかしんで手で弄んでいるそれは大豆よりも若干小さく、黒ずんでいた。
「あ、それ家の村の周りに生えてるんです。お父さんが、ひいおじいちゃんから
『この時期には豆をまいて鬼を追っ払うんだ』って聞いたって言ってたから、
もしかしたらサイトさん何か知っているんじゃないかと思って。
でも変ですよね、こんなので鬼が逃げるわけないのに」


104:284 ◆yJjGBLHXE6
07/01/28 22:41:03 I/Lk+fBY
コロコロと可笑しそうに笑うシエスタを見ていて、才人は、あぁ、と頷いた。
「そうか節分かぁ、確かにここには鬼が実際に居るからな」
「セツブン?セツブンって言うんですかこれ?」
興味深そうに覗き込んでくるシエスタに、才人はようやく身体を起こして昔、親やおじいちゃんたち、
学校で聞いた知識をフル動員して噛み砕いて説明してやった。

「へぇ~やっぱり楽しそうですね、サイトさんの世界って」
「まぁ行事なら年がら年中あるけどな・・・で、これ何の実なの?日本じゃ最後に豆を年の数だけ食べるんだけど・・・・」
そういって適当に実をひっつかんで口の中に放り込んだ。

「あぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

シエスタが普段は絶対に出さないような大声で叫んだ。
才人はその声に押されるように口に入れた物を飲み込んでしまった。
「んぐっ・・・んっ・・・な、何だよいきなり!」

「・・・た、食べちゃった・・・・・」
打って変わって青ざめたような赤らめたような顔で呆然とするシエスタ。
「なに、まずいの?毒があるとか?」
「い、いえ毒は無い、ん・・・ですけど・・・あの・・・その・・・」
今度は顔を真っ赤にしてしどろもどろになるシエスタ。
「それ・・・チダコンピの実って言って、害はないんですけど・・・」
「うん、何か身をもって理解した」
二人が一斉に視線を向けたそこは当社比1.5倍ほどにパワーアップしていた。
才人の息子さんだ。今にもズボンをはちきらんばかりに引き伸ばしている。
「これ、男の人専用の性欲増幅成分が入ってて、普通は大人の人が一日一粒で十分なんですけど・・・」

そんなもんを撒き散らすな。


105:鬼は外 ◆yJjGBLHXE6
07/01/28 22:41:59 I/Lk+fBY
誰かに見つかってはまずいということで、取りあえず人の来ないところに移動することにした。
「どのぐらいで収まるのこれ?」
「わかんないんです・・・使ったの見たことないですし・・・」
天を仰ぐ才人としょぼんと俯くシエスタ。
きっとシエスタが才人を見据えるとしゃがみこんで才人のズボンを一気に引き下ろした。
「わっ、シ、シエシエ?」
「こうなったのも私の責任ですし、それに豆で鬼は出て行くんですよね?」

豆?豆なんて・・・ってまさかぁぁぁぁっ
そのまさかだった。シエスタはパンパンの怒張をあらわにさせるとおもむろに服を脱ぎ捨て、胸で挟み込んだ。
「サイトさんの、いつもより大っきくて・・・すごい熱い・・・」
先っぽを口に咥えて、双丘の先端にくっついている小さい豆をこすりつけながら柔らかなそれで包み込むようにこすりあげていく。
「シ、シエスタ、むねっ胸すごい気持ちいいっ」
シエスタが先端を舐め上げる度、先端で擦り上げる度に
才人は腰をガクガクと震わせながらそれでもシエスタの口に自らを押し付けていく
「いきなりだけど・・・ごめんっもう出るっ」
才人がシエスタの喉奥に怒張をねじ込むと、音が聞こえそうな勢いで濁った迸りを流し込んでいく。

んくっんくっとシエスタが喉を鳴らして飲み込んでいくが、常軌を逸した量に飲みきれずに顔をはなしてしまった。
「んっ・・・ぷはぁっ・・・あは、サイトさんすごい量・・・まだ出てる」
抑えを失った怒張がシエスタの顔、胸、身体を白く染め上げていく。
「はぁっはぁっ・・・ごめん、シエスタ大丈夫?」
「はい♪サイトさんのなら全然平気ですっ」
話しながらも身体についたネバネバを指で掬い取って飲み込んでいく。

「・・・あ、でもやっぱりこの程度じゃ収まんないですね・・・」
「う、うんそうみたい」
才人のそれは先っぽに先ほどの残り物を軽く這わせながらも不満げに波打っている。
「それじゃあ・・・」
そういってシエスタは身体を持ち上げ自分の花弁を広げてウインクして言った。
「こんどはこっちの豆で鬼退治ですっ♪」

やたらと楽しそうである・・・


106:284 ◆yJjGBLHXE6
07/01/28 22:43:58 I/Lk+fBY
今回はここまでということで・・・
次は完成したら投下すると思います。
もっと、もっとおいらに電波をわけてくれぇ~~~!
では、また

107:名無しさん@ピンキー
07/01/28 22:47:43 9fBlyDlh
電波送信開始!
GJだります

108:名無しさん@ピンキー
07/01/28 23:09:11 VP25uRiX
シェスタさん・・・・狙ったね

284氏GJ

109:名無しさん@ピンキー
07/01/29 00:30:36 YAbGbr7L
GJ!
そうか、そろそろ節分かぁ…
つうかシエスタ、豆ってwwwwwww

110:261のひと
07/01/29 01:37:17 /4Nyh+We
>>4-10 の続き、やっと終わりです。

111:1/4
07/01/29 01:37:51 /4Nyh+We
「……我の使い魔となせ」
 サイトノ記憶を消すと、その日のうちに彼はルイズさんの使い魔に戻った。
『……これでいいのよね?』
 サイトが笑ってる。
 ルイズさんも笑ってる。
 シエスタさんも、デルフさんも喜んでる。

 ……だったら、これで良いのよね?

 二人が何かを囁いて、キス。
 キス―それだけの事なのに、わたしだって、何度も何度も唇を重ねたのに、心の奥で炎が燃え盛る。
 ……サイトは覚えていないけれど。
 悲しい認識がわたしの頭を冷ましてくれたおかげで、二人のソレを見つめ続ける。

 二人が離れた瞬間、サイトがその場にうずくまる。
「ぐぉおおおおおお!」
 サイトの悲鳴に、何も考えられなくなる。
 無言で見つめるルイズさんを、殺しかねないほどの憎しみがわたしを埋め尽くす。

 ―苦しめるために、サイトの記憶を消したんじゃないのに。
「サ、サイトさん!」
 ルイズさんを睨む間に、シエスタさんがサイトに駆け寄る。
 あ……
『ほら、ティファニア、お前じゃサイトは幸せにできない、心配するよりも憎む方が大事なんですもの』
 どこかでわたしを哂う声がした気がする。

 サイトに守ってもらうルイズさん。
 サイトを誰より気遣うシエスタさん。
 ……わたしは……?

 呆然と自問している間に、サイトの声が聞こえる。
「だ、大丈夫……、使い魔のルーンが刻まれているだけだから……」
 サイトの声に胸をなでおろすけど、苦しそうなサイトに何もしてあげられないことが辛かった。

 でも、そんな辛さはほんの始まり。

 何かを確かめたルイズさんが、いきなりサイトに抱きついた。
「……っっ」
 声が出そうになる。近づいて引き剥がしたくなる。

 でも、そんな事にお構いなしに、サイトは優しく肩を抱きしめて……

 目をそらす事も、この場から逃げる事も出来ないまま、ゆっくり心を炙られた。

112:2/4
07/01/29 01:38:23 /4Nyh+We
 適当な理由をつけて、部屋を去る。
「ど……してなのかなぁ?」
 家の外に出て空を見る。
 真っ暗な空が、今のわたしの心のよう。
 大切な思い出も、星の光のように今や誰にも触れられない。

 ぽろぽろと涙を零しながら、ゆっくりと目的の場所に向かう。
 そこに着いても、辛いだけなのは分かっていた。

 どうしようも無い。でも……少しでもサイトの声が聞けるから。

 ―暗い闇の中、サイトの部屋の窓の外に座り込む。

 ルイズさんの泣き声が聞こえる。
 サイトの優しい声がそれをなだめている。
 いいな。
 もし……わたしがルイズさんだったら……
「もう、どこにも行かないで」
 そう……だね……そう言うね。
 聞きたくなかった言葉、サイトはこれにどう答えるんだろう。
「うん」
 サイトの声が、ルイズさんの側を選ぶ。

 空の星がぼやけて、目に写るのは暗い闇だけ。

 胸の奥がぎゅって締め付けられる。
 辛いよ……サイト。
 わたしも……抱きしめて欲しいよぉ。
 こんなに側に居るのに、伝わるはずの無い想い。

「ちゃ、ちゃんとそばにいて」
「うん」
 わたしの側には居てくれなくなるんだね。
 ほんの少し前までは知らなかった、甘い痛みに心が壊れそうになる。

 二人の囁きがまだ聞こえてくる。
 辛くて……辛くて、何も考えられないまま、夜の空気がわたしの身体を冷やしていく。

 居た堪れなくなったわたしは、静かに走り出した。

「ティファニアさん?」
「シエスタさん?」
 ほんの少し走った所で、シエスタさんとぶつかりそうになった。

「その……覗きですか?」
「っ!」
 見上げるようなシエスタさんの目に見つめられるのが辛い。
「……わたしも……なんですけど……止めといた方が良さそうですね」
 シエスタさんも?
 見つめるわたしを、シエスタさんが抱き寄せてくれる。
「辛そうですから……わたしは、止めときます」
 シエスタさんのハンカチが、優しく頬を撫でる。
「ズルイですよね? ミス・ヴァリエール」
 あぁ……この人も……サイトの事が好きなんだ。本当に大好きなんだ。

 ルイズさんを見るサイトの側に留まれるこの人は、何て強いんだろう。
 抱き寄せてくれる暖かい胸の中で、わたしは何もかも忘れて泣いてしまった。

113:3/4
07/01/29 01:38:56 /4Nyh+We
「……でね、学園でも大変だったんですよ」
 わたしが泣き止むまで側に居てくれたシエスタさんが、わたしの部屋でルイズさんの話をしてくれる。
 サイトから聞いた話もあるけれど、視点と捕らえ方が違って面白かった。
「で、結構人気なんですけど、サイトさん気付いてないんですよ」
 帰ったらサイトがどれだけ皆に愛されているのか分かって安心
 そして……ほんの少しだけ悲しい。
「サイト……いいひとだから」
「男の人にしたら悪い男ですけどねー」

 男の人。
 サイトが居なくなったら……わたしは……
「ティファニアさん?」
 サイトが……居なくなったら……
 子供たちの手が、わたしに触れることを想像した瞬間、わたしは窓に駆け寄った。
「ちょっ、ティファニアさん」
「ぐぅっ……ぅぇ……」
 胃の中のものが逆流しようとしていた。
 駆け寄ったシエスタさんの手が、背中をさすってくれた。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」

 惨めだった。
 多分今頃……ルイズさんは……サイトを……
 少しそんなことを考えただけで、涙が止まらなくなる。
「ひっ……っく……サイト……サイトぉ……」
 おろおろしていたシエスタさんが、服が汚れるのも構わず、ぎゅってしてくれる。
「わたし達と来ますか? ティファニアさん」
 無理。
 シエスタさんはまだわたしがエルフだって知らないから……
 だから優しくしてくれるんだ。
「無理……だよ」

 シエスタさんを怖がらせたくないから、理由は言わずに断る。
「……そうですね、○○中に、旅はしんどそうですし」
 え?


 シエスタさんの一言が、わたしの世界を一変させた。

114:4/4
07/01/29 01:39:27 /4Nyh+We
「テファも元気で。またな」
 サイトが『またな』って言ってくれたことが嬉しかった。
 少しでも覚えていられますように。
 サイトをじっと見つめる。
 うん、ちゃんと覚えてる。

 わたししか覚えてないサイトの指も舌も、いつでも鮮明に思い出せる。

「うん。また……、またね」
 何度もこちらを振り返るサイトの姿が、だんだん小さくなってゆく。
 随分離れた所で、シエスタさんが決然とサイトさんに歩み寄った。
 そしてサイトに向かって何かを言うと、ルイズさんがこちらに向かって走り始める。
 慌ててサイトがルイズさんを抱き上げて、そのまま連れて行った。

 ……どんなに二人が仲良さそうにしていても、今のわたしは平気だった。
 ……少しは……辛いけど。

 とうとう見えなくなったサイトに、心の中で話しかける。
 二人で会いに行くから。
 お腹にそっと手を当てる。
 サイトに似てると嬉しいな。

 まだ見ぬトリステインに向かう日の事が、今からとても楽しみになった。

115:名無しさん@ピンキー
07/01/29 01:42:52 rl39tJX8
続くよね?
テファとサイトの子かー
どんな子になるのかな

116:名無しさん@ピンキー
07/01/29 01:43:38 /4Nyh+We
ながながと……一応終わりです。
あー、ソコの人時期計算しない。
ちょっと微妙ってか……アレですけど、サイトの子です。
……この展開で、黒髪以外生まれたら(あ、テファ似でもいいのか)ティファニア壊れちゃうからっ
黒いこと考えないでっ

原作からずれすぎない範囲で……不幸な人も少なめに……と、目指したんですがいかがでしょうか。
冒頭みたいな黒のまま真っ黒なエンドはちょっとお互い辛いかなと思って……
ダメ?
ともあれ、お付き合いいただき感謝


土日はのんびりしすぎてて、平日の方がお話書けますね。
……とゆうか、10時間眠れるのって休みの日だけなんです。

>>87 205さん 自分もここ何でもかけて好きです。
ただ自分は……質より量な人なのですけどね……手っ取り早くどばーっとレベルアップする方法はないものでしょうか……
自分なんかエロもギャグも話も文章も自信ないですよ……

保管庫は楽なのでお気になさらず……最近更新が数日置きですが……
訂正など有りましたら、掲示板でも結構ですのでご一報を、

ではっ

117:名無しさん@ピンキー
07/01/29 01:58:13 blLxMunV
>>116
GJ!
お疲れ様でした
テファの気持ちの表現とかがいい感じで、面白かったです

>>115の人と同じで続きが気になりますが、次は新シリーズですか?
期待して待ってます

118:名無しさん@ピンキー
07/01/29 02:14:51 pjlfvlTB
>>116
無理な事を言ってるのはわかる。だが、続きがみたいのだ!!!

5年後とかみたいな感じでトリステインで平和に暮らすテファがみたい

・・・・そもそも一夫多妻制はだめなのか?そうするとルイズが暴れるか?

119:名無しさん@ピンキー
07/01/29 17:24:52 vGFZIskI
>>106
「節分」イベントネタGJ! シエシエ… テラ策士w
才人自身が教えたことにすれば、戦後生まれのイベント(バレンタインにチョコ、とか)もありだよな…
ワザとエロ方向に嘘を交えて教えたり……

> そんなもんを撒き散らすな。
まったくだw

>>116
「第一部」完、乙&GJ!
願望はともかくw 原作と整合性を維持しつつも、テファにとって救いのあるラストで良かった。

…子供は黒髪と金髪の双子あたりでお願いしますw

120:名無しさん@ピンキー
07/01/29 22:58:20 YAbGbr7L
金髪と黒髪の双子…なんかDQ5を思い出した。
アッチは金髪か青髪だが。
>>116GJ!お疲れ様です。
一応ハッピーエンドってことでいいよね?
番外編みたいので全然構いませんから数年後の世界を書いてくれると嬉しいです。

121:261のひと
07/01/30 01:28:33 cJYHbtWw
つ、続き……続きですか……
ちょっとがんばってみる。

122:1/10
07/01/30 01:29:05 cJYHbtWw
「おとうさん、貴方は堕落しました」
 は? いきなりこんな事を言われて、納得する奴は滅多に居ないだろう。
 ましてや、俺が堕落?
 今ハルケギニアが平和なのは、俺の努力がその一端を担っている。
 胸を張って宣言してもよかった。

 シエスタがもうすぐ一人目の子を産むし、少し遅れてルイズも……
 姫さまとだって続いてるし、数ヶ月に一度外交名目でガリアに出かけるが、
 仕事なんかしたことねーし。
 それでもトリステインでは英雄扱いだ。他の国に行ってもかなり我侭がきく。
 我が世の春!! そんな状態だった。

「で、君は誰だ?」
 そんな俺の事をおとうさまと……心当たりが無い訳じゃないけど、育ちすぎ。
 日本なら、幼稚園児か小学生か、そんな年頃の男の子だった。
 親に抱かれる年頃ならば、『ルイズとシエスタには内密にィィィ』と、土下座の一つも辞さないが。
「わかりませんか?」

 妙に自信満々な男の子……黒い髪、黒い目……それだ……けで?
 よーくみると結構俺に似ていた。
 俺より各パーツの出来が遥かに良いが、小さな頃の俺の面影が確かにある。
 写真の無いこの世界で、子供の頃の俺を知るのは俺だけ……
 その俺が……似てるって判断できる、この子は……
「僕の母はティファニアですよ、サイトおとうさん」
 にっこり笑う笑顔に、テファの印象が重なる。
「え? でも……テファと分かれたのが……」
 しかも、テファとは肉体関係は無い……あの頃の俺は禁欲的だったなぁ
 あの直後位から、妙に我慢が出来なくなって、手を出しまくった結果……
 戦争よりやばい数々の修羅場をくぐって……俺、よく生きてるなぁ……

 物思いにふける俺を、しばらく眺めていた男の子が洒落にならないことを言い出した。
「母は、記憶を消せるのをご存知でしょう?」
 ……まあ……ご存知ですよ……っまさか!
「貴方がルイズさんの側に居るべきだと、母は判断したそうです」
「ちょっ、ちょっと待て、じゃ……俺……」
「命の恩人に手を出した挙句、捨てて逃げた卑怯者ですね、おとうさん」
 マジでへこむ。
 テファの事は大切な思い出だ。
 美しい森の奥で、ひとり静かに暮らす妖精の美少女。俺だけが知っているその存在。
 思い出すたびに胸が温かくなる彼女の事を、まさか自分で汚していたなんて。

「……母は一人でたまに泣いていました……はっきり言って僕は貴方を許せません」
 静かな宣告に、死ぬほどの後悔が俺を襲う。

 綺麗な姿勢、歳とは不相応な言動、今は冷たいとはいえ、優しそうな顔立ち。
 出来たお子さんだった。どこに出しても恥ずかしくない美少年だった。
 ……いや、多少とはいえ自分に似ているのを誉めるのは面映いけど。
 テファは一人でこの子を育てたんだと思うと、誇らしくて……悔しかった。
 俺にも……何かさせて欲しかった。

 テファは俺の事を気遣ってくれたのだろうし、実際、子供が居ても構う暇が無いくらい激動の数年間だった。
 シエスタやルイズと子供が出来た頃、やっと各国の情勢が落ち着き始めていた。
「母はずっと待っていたんですよ?」
利発そうな少年は、俺を弾劾する手を休める事は無かった。

123:2/10
07/01/30 01:29:39 cJYHbtWw
「貴方をずっと待っていたのに、ここ数ヶ月は諸国も安定したのに……貴方は来なかった」
 ……シエスタとルイズの妊娠も、言い訳にはならない。
『またな』って言ったのは俺だ。
「……すまない」
 この子も……少しは俺に会うのを楽しみにしていてくれたのだろうか?
 怒りも悲しみも無く、訥々と語る姿からは、何も読み取れないけれど。
「今から……タルブに立つよ」
 シエスタとルイズに、何て言い訳しよう。
 多分、本気で起こられるだろう。
 大騒ぎするほど遠い場所ではないとはいえ、出産に立ち会えないかもしれないからだ。
「無駄です」
 どうやって説得するか、どうゆう手段で行くか、そんなことを考えていた俺を、少年は突き放す。
「なっ、なんでっ?」
 嫌な予感がした。
 そうだ、この子なんでこんな所に居るんだ?
「テ、テファはっ? テファに何か有ったのかっ?」
 ……怖い。
 全身からいやな汗が出て、震えが止まらない。
 こんな歳の子が、一人で片親を訪ねる理由なんて……
「タルブには……もう……居ません」
 全身の力が抜けて、その場に崩れ落ちる。
 地面を見つめる俺に向かって、少年の声が響く。
「貴方が危ない事をするたびに……その噂を聞くたびに、母はそうなっていました。
 ラ・ヴァリエールの所から単身令嬢を攫ったり、一人で砂漠を横断したり、
 騎士隊一つだけでガリアに特攻したり……そんなたびに母は泣いていました」
 ……ごめん、テファ……ごめんなさい。

 地面にポツポツと、黒い痕が出来る……どんどん増えていく、俺の涙の痕。

「何度も言うが、僕は貴方を許せない、それでも……母は貴方が好きなんだ……
 僕がここに来たのはね、おとうさん。名前を貰いに来たんだ」
「……なま……え?」
 泣き崩れる俺に、少しは心を許してくれたのだろうか?
 細いが、しっかりとした手で、俺を助け起こしてくれる。

 ……嬉しかった。……こんな些細なことがこんなに嬉しいのなら……
 もっと親孝行しておくんだった……
 呆然と後悔を続ける俺に、テファと同じ優しさを持つ瞳が語りかける。
「母は僕が育つところをおとうさんに見てもらえないから……そう言って、いつもこう言っていました。
 いつか、おとうさんに会ったら、子供と認めてもらえなくても良いから、一生一緒に居られるように、名前を貰いましょうね。
 いつも……そう言っていました」

 テファは……優しい。
 俺が、何も出来なかったって、後悔することも分かってたんだ……
「テファに……会いたいな」
「……来なかった癖に」
 確かに……後悔なんて……何の役にも立たない。

「一言……謝りたかったな……」
 少年が何も言い返さなかったから……
 静寂が辺りを包み込む。
 お互いに、何も言えずぼんやりと道行く人を見ていると、少年がぽつりと言った。
「なら、どうぞ……」

 少年の指し示す先には……、テファが居た。

124:3/10
07/01/30 01:30:14 cJYHbtWw
「テファァァァッァ、テファッ、テファッ、テファァァァ」
「っっ、きゃぁあっ、サイト? どうしたの?」
 数年前からまったく姿の変わらない……いや、姿かたちは同じだが、前よりもまとう空気が優しく……強かった。
「ごめんっ……ごめんっ、テファ……またなって……言ったのに」
「いいのよ、サイト。忙しかったのよね? タルブまで噂が流れてきてたよ」
 柔らかく笑うテファが、潰れそうなくらい強く抱きしめる。
 テファも俺を放さなかった。
「両親の仲が良くて、僕も安心ですね」

 ……こっ、この根性悪がっ、どこの誰に似やがったぁぁぁ、俺でもテファでも無いぞっ絶対!!
 ふつふつと沸き立つ怒りを抑えていると、テファが慌てて謝っていた。
「ご、ごめんなさいっ……あのっ……あのねっ、この子……ね、その……」
 切り出し辛そうな、テファに助け舟を出す。
「「知ってる」」
 ……二人そろって。

 綺麗にハモった声に、お互い苦笑する。
「因みに、嘘は一つもついてません。名前、よろしくお願いしますね?」
「……ぜーーったい、変なのつけてやる」
「おとうさんが付けて下さるのなら、それで結構ですよ」
 俺の大人気ない宣告にもまったくめげずに、さらりと言い返された。
 ……か、可愛くねぇ。

 何も言えずにガルガル吠えてる俺を置いたまま、
 少年はテファに駆け寄って報告を始めた。
「ごめんなさい、おかあさん。薬が効きすぎたみたいです」
「ダメよ? 悪い子っ。めっ!」
 怒られる方も、怒る方も、相手を大事にしているのが分かって、微笑ましかった。
 一生懸命に一つも嘘を吐いていない事を説明していたけれど、テファは笑いながらもきちんと怒るべき事は怒っていた。

 ……疎外感。俺、おとうさんなのに。

「おとうさんっ!!」
「はいっ!!」
 テファとの話が終わったのか、俺の所に来て話かけてくれる。
「ご自宅伺ってよろしいですか? 僕は数時間してから参りますので、母と積もる話でも……」
 ……こいつどんな環境で育ったんだろう?
「……こっから見えてる、ほら、あの屋敷……あと……これ、小遣い」
「うわぁ、ありがとうございます。街っていろいろ有ったから、楽しみです。すこし見物してきますね」

 ……元気な子だ……頭も良いし。
「さすがテファの子だな」
「……サイトの子だもん、恥ずかしくないように……って」
 顔が赤くなっているのが自分でも分かった。

 ……この時間なら、ルイズもシエスタも居ないよな……

 テファと腕を組んで自宅に向かう。
 ……もう少し、時間がゆっくりと流れればいいのにな。二人ともそんなことを考えながら。


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