嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その27at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その27 - 暇つぶし2ch550:愛娘の恋 ◆N.P5FQhRG6
07/02/04 05:48:44 /jOvSEX0
「浩一、今日のご飯何がいい?」

携帯電話で今晩のメニューを美風が聞いてくる。

「……おまかせで」
「いつもそれしか言わないんだから」
「いや、美風の料理はなんでも美味いからさ」
「もう……じゃあ私材料買ってから帰るから、ちょっと遅くなるかも」

わかったと言って浩一は電話を切り、バイクを発進させる。

美風とは三年前から交際し始めた浩一の彼女だ。
あることがきっかけで知り合い、そして美風から告白された。
しかし美風の両親はこの交際に反対した。
彼女の父親は大会社の社長で、美風は社長令嬢というやつだ。
美風が交際のことを両親に話したとき父親はかなり激怒したらしい。
美風が当時十九歳で大学生であったこと。実は結婚させようとしていた相手がいたこと。
そして何よりも交際相手が気に入らないこと。

そんな父親に美風も激怒したらしく、父親の反対を無視して浩一の済むアパートにやってきた。
バッグ一つを片手にやってきた美風に浩一は驚いた。そしてすぐに帰そうとした。
だが美風の決意は固くここに置いてくれないなら死んでやる、みたいなことを言いだし結局一緒に住むことになった。

浩一はアパートの駐車場にバイクをとめ、部屋へと向かう。
浩一の部屋は二階にある。

551:愛娘の恋 ◆N.P5FQhRG6
07/02/04 05:51:05 /jOvSEX0
「……ん?」

階段を上がるとドアの前に一人の知らない少女がいた。
……知らない?
浩一は何故かその少女に見覚えがあった。
だがどこで会ったのか思い出せない。

「あの……ウチに何か用?」

少女に声を掛けるとその少女は見上げて浩一を真っ直ぐ見た。
じーっと浩一の顔を見つめている。
その表情からは何とも言えない感情が伝わってくる。

「…………あなたが神木浩一さん、ですか?」
「あ、ああ、そうだけど……キミは?」
「わたしは……」

名前を尋ねるとそのままうつむき黙り込んでしまった。

「あー、えーっと、……キミ一人?親は一緒じゃないのか?」
「……親は……………………た…です…」

うつむいている上に小声なので少女の声は全く浩一に聞こえない。

「あの……もう一回言ってくれる?」

すると少女は下を向いていた顔を上げ、

「親は……あなたですっ!!!!」

顔を上げた少女の目から涙が流れている。

「………………えっ?」

少女の言ったことが理解できなかった。
いきなり親が自分と言われて理解できるはずがなかった。

「わたしは……あなたの…………娘です」


552: ◆N.P5FQhRG6
07/02/04 05:55:13 /jOvSEX0
とりあえず娘のやつを最初から書いてみました
設定とかかなり変更してしまいましたけど

553:名無しさん@ピンキー
07/02/04 09:04:51 MJF1R1KE
>>552
GJ!

口下手なのでコレだけで勘弁・・・ね?

554:名無しさん@ピンキー
07/02/04 10:39:28 QIz1CJhz
GJ!
お願いだから完結するまで物語書いてね

555:名無しさん@ピンキー
07/02/04 11:57:16 rroPq7Mx
GJ!
俺にこれをいわせたのだからこれはかなりの良作になるだろう

556:『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46
07/02/04 12:57:26 pE824ulL
「ふぁぁぁぁ……」
 くそう。昨日はやたらと翔子のやつが興奮してたから眠れなかった。アイツのテンションが高いとこっちにまで影響が来る。
「ふぁぁぁぁ……」
 学校に向かう間、ずっと欠伸ばっかしている。俺の寝不足が翔子にも伝わっているのだろう。登校途中、ずっと申し訳なさそうにしている。
「その……ごめんね?ショウ~?」
 ですり寄って謝ってくる。普段はお高くとまり、強気な翔子だが、俺に迷惑をかけたと思うとこうやって甘えた声で謝る。まるで猫のような奴だ。
 こいつの影響かどうかわからないが、俺の女の好みが猫みたいな女になってしまった。いいよね、強気反転甘えっ娘。
「ふぁぁぁぁ……」
 学校に着くまで計十回の欠伸。
「ごめん!ごめんね?ショウ、ほ、本当に許して?」
 翔子から計五十回のごめんを聞いた。そんな翔子に「うん、うん。」としか言わない俺鬼畜。
 そんなささやかな幸せに包まれた朝は、教室に入ったとたんにぶち壊される事になった。
 「いやったはぁー!!翔ー!つ、い、に!俺の人生エロゲ化計画が実行されることにったぁぁ!!ふげあふぁ!?」

557:『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46
07/02/04 12:59:07 pE824ulL
「ま、少しは落ち着けよ、圭太。」 
「ふふ、さ、さすが。高速の右を持つ男。相変わらず見えなかったぜ。」
 今、目の前で地面に伏した男、秋川圭太。(自称)俺の親友だとか。いつも俺に抱き付いて来る度、翔子のストレートに沈む。
「で?今日は何を思い付いたんだ?ん?前は『エロゲ主人公みたいに図書室で勉強する』とかいってたよな?」
「ふふ、あの時は図書室の隅で寝ちまってな。誰にも気付かれないで閉じ込められちまったい。」
 言ってる事はキモいが、顔は恐らく学校一のかっこよさだろう。まぁ、性格がコレだからモテはしないが。
「ふふふ……ぐふふ、つ、ついに、今日!今まで立てたフラグが!ついに起動する!!」
 鼻血を出しながらも、万円の笑みで立ち上がる。ここまで清々しい笑顔。どうやら今回は本気のようだ。
「ふふ、実はな、今日このクラスに転入生が来るのだよ。……しかも女の子、噂では美人!……ああ!来たこれで全ては一つに繋がった!謎はとべてすけた!」
「つまりこういう事か?『転入生というのは、昔お前が結婚の約束をした幼馴染み』、と。」

558:『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46
07/02/04 12:59:54 pE824ulL
「その通りでございます。ちなみにそこは、許婚やいつの間にか出来た義妹も可」
「はぁ、馬鹿馬鹿しい。それこそ正にエロゲじゃねえか。そんな人生あってたまるか。」
 一人悶えている圭太を放置し、自分の席に向かう。窓際の一番後ろ。あー、今日も暖かい、ベストポジションだ。
「翔、やっぱりアイツとの付き合いやめたほうがいいよ。翔まで変態扱いされちゃう。私、そんなのやだよ?」
 翔子の言葉に、首肯する。とはいえ圭太も悪い奴ではない。ただの愛すべき馬鹿なのだ。
「圭太君、キモいから消えて。」
「ていうか、学校やめたんじゃなかったの?」
「君のせいでこのクラスが変質者扱いなんだけどー。」
 哀れ圭太。クラスの女子から罵倒を浴びる。『かっこいい人に触られてもセクハラではない』という理不尽も、圭太には当てはまらないだろう。
「ホームルーム始めるぞ。こら圭太!なに一人で騒いでんだ。さっさと席に着け。」
 担任が入って来る頃には、圭太はすでに半泣きだった。しょーがねーなー、昼飯でも一緒に食べてやるか。翔子が少し不機嫌になるかもしれんが、仕方ない。

559:『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46
07/02/04 13:00:59 pE824ulL
「よーし、じゃあ早速だが……うん、みんな知ってるかもしれんな。今から転入生を紹介する。入ってきてくれ。」
 担任が呼び掛けると、前のドアが開く。正直、転入生が来てもなんら変わりないので、興味が無かったが、あの圭太が美人だと騒ぐくらいだ。面でも拝んでおくか。
「あの、オンナァァァァーーーー!!!」
「ん?!」
 俺が見るよりも先に、翔子の怒声が響く。慌ててその生徒を見ると……
「ああっ!?」
 思わず俺も叫んでしまった。クラスの皆から視線が向けられる。しかし気にしてはいられない。その転入生は……
「おお、翔、この子はお前の従姉妹らしいな。皆川静流。みんな、よろしくしてやってくれ。」
 ザワザワ…すっげー美人……
 ザワザワ…ウチのクラス、いや、学校一じゃないか?
 クラスのみんなが騒いでいたが、俺はまだ驚きから復帰していなかった。
「みなさん、はじめまして。ご紹介された通り、皆川静流と申します。そちらの皆川翔さんとは、相思相愛の仲です。」
「なっ?」
「「「「「「にぃーーー?!?!」」」」」」
「冗談です。」
 そ、そうだよな。よかった、冗談で……
「翔!アイツを、あの女狐を殺す許可を!!早く!ハリー!!」
「翔ー!キサマァーー!俺の静流ちゃんになにをしただぁー!!!」
 ……約二名、本気にしてるやつがいるが。

560:名無しさん@ピンキー
07/02/04 14:55:13 gf1quLpx
>>559一点だけケチを付けさせてくれ。
投下が終わったらその旨を伝えて欲しい。
でないとGJと書き込めないだろ?

561:名無しさん@ピンキー
07/02/04 15:10:57 pE824ulL
そうでした、すみません。
m(_ _)m

562:名無しさん@ピンキー
07/02/04 15:19:08 rroPq7Mx
よし。では気をとりなして
グゥゥゥウゥゥッドジョオオォォォオブゥゥゥッ!!

563:名無しさん@ピンキー
07/02/04 15:53:31 u2C35XDX
>>559
展開に口を出すつもりはないが

他の神の皆様は事前に投稿すると断ってからやっています
投稿終了になるとコメントを付けて終了の合図を知らせることが
暗黙の了解になっておりますので


さてと


            (⌒
       ,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,,  
       i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
      l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l
.       |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
      |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| GJだぜ
      |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
.      |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;';;;;;/l;;/|;;|
      !、!.!、;i'l/:|ノ`l/、|ノ
      /:: :: :: :: :: :: :: :: :: \
      ,!: :: :: :: :: :: :: :: :: :: /::'i
      l:: :: :: :: :: :: :: :: :: :/;:::::::|
.     |:: :: :: :: :: :: :: :: :: i/:::::::::|
    |:: :: :: :: :: :: :: :: :: |::::::::::::::l
     |:: :: :: :: :: :: :: :: :: :T´ l ̄l
.    | :: :: :: :: :: :: :: :: :: ::|  |  |          人_
    | :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: |  |  |   _, , ...:-:-┐"∨
    |_:_:_:_:_:_:__:|  ,!、 `T´|    _/
     |;';';'';'';;''::''::''::' :: :: ::|  l,,i__,.,.!´!,:-‐:''´
     |:: ::l::`':Tー:: :: :: :: ::|
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    \:_:_;;,-!、:: :: :: : ,:‐,'
       |; ; ;|`ー'T´' ' |
      i'    i'   i   i

564:名無しさん@ピンキー
07/02/04 17:06:24 UOuj+rUo
他の神にも言える事なんだけど
もし良かったらでいいから
タイトルに話数もつけてくれると有りがたい

565:名無しさん@ピンキー
07/02/04 17:58:26 88C4oD/e
>>564
それは、「今日の投下は○レス分使いますよ」という意味での話数ですか?

566:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:00:28 rroPq7Mx
>>565
おそらく>>564の言いたいことは赤いパパ氏のようなものをいってるのだと思う

567:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:12:16 86dcrZHK
 927_   本当にあった怖い名無し本当にあった怖い名無し    V5jKzOvy0   2007/02/04(日) 04:05:49
    お兄ちゃん? お兄ちゃんだよね?
    お兄ちゃんにまた会えたんだよね?
    お兄ちゃんが大事にしてた猫を飼うことになったたんだよ?
    お兄ちゃんのベットでいつも寝るようになったんだよ?
    お兄ちゃんが可愛がってたみたいにゴロゴロいってるよ?
    お兄ちゃんの部屋は今でも変わらないよ?
    お兄ちゃんが猫と一緒に寝ていたのは知ってたよ?
    お兄ちゃんと寝たかったのは私なんだよ?
    お兄ちゃんが私よりも猫を大事にしてたのは分かってたよ?
    お兄ちゃんが猫と遊んでる時は私のことを忘れてたよね?
    お兄ちゃんは猫ばっかり可愛がってたよね?
    お兄ちゃんは私のことを嫌っていたんだよね?
    お兄ちゃんの子供を産んだから嫌いになったんだよね?
    お兄ちゃんの子供も大きくなって猫と遊んでるよ?
    お兄ちゃんとも遊びたいって言ってるよ?
    お兄ちゃんはなんで逃げたの?
    お兄ちゃんに会いたいんだよ?
    お兄ちゃんに会いたくて死んだのに?
    お兄ちゃんは何処に居るの?
    お兄ちゃんの猫も何処に居るの?
    お兄ちゃんの子供と一緒に死んだのに?
    お兄ちゃんは今も生きてるの?
    お兄ちゃんと大好きなんだよ?
    お兄ちゃん ?お兄ちゃん? お兄ちゃん? お兄ちゃん? お兄ちゃん?

568:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:26:36 zuQrYZ5/
いい加減飽きたと思ってこのスレ見るの止めても
ある日突然衝動の如く嫉妬が恋しくなるんだよな
どうにもならんなこれは・・・

569:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:42:21 aE+nSUJS
投下します。

570: ◆z9ikoecMcM
07/02/04 18:42:38 88C4oD/e
>>566
了解。

と言っても、二月半ばを過ぎないと、投下できなさそうです。
RedPepperはきちんと完結させますので、ご容赦を。

571:魔女の逆襲第17話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:43:19 aE+nSUJS
 それからの一週間。
 早百合の行動は以前とは歴然としていた。

 朝五時。
 目覚ましの鳴る音に、早百合は敏感に反応し目を覚ます。
 ベッドの上の自分は下着一枚で体中がべとべととしていた。クローゼットにしまっていた制服を取ると、そのまま風呂場へ行きシャワーですべて洗い流す。液体が乾いてぱりぱりの肌をお湯がはじいていく。
 五分ほどで行水を済まし、制服を着ると今度は台所へ。外はまだ夜の帳が覆っていて、家中が暗い。電気をパチンとつけると台所に白色蛍光灯の光が落ちる。
 テーブルには昨日用意しておいた鶏のモモひき肉と卵、それに小松菜が並んでいた。
 早百合は『OKAN』と胸に刺繍された母親のエプロンを制服の上につけると、調理用具を戸棚から取り出してそろえる。
 作るのは三色鶏そぼろ。
 卵を菜ばしでとき、鍋に入れてだしと塩・砂糖で味付けをする。中火で熱される卵が固まらないように細やかな作業で早百合はパラパラにしていく。卵そぼろが出来上がると、早百合はそれを小皿へと移す。
 味をみてみる。甘くない。良樹好みの玉子そぼろ。
 次に鶏のモモひき肉を鍋に入れて味を調える、そして両手に装備したチョップステックスで炒めながらかき混ぜて汁気を飛ばす。炒り煮になってゆく鶏そぼろをちょいとつまんで口に含む。味はしっかりとしみこんでいた。
 完成した甘い匂いのする鶏そぼろをお皿へ写す。三人分作ったので結構な量だった。
 そろそろかな? まな板で小松菜を切りながら早百合はちらりと蒸気を噴出す炊飯器を見る。その直後、炊飯器からピーという甲高い電子音が響いた。
 早百合は戸棚から弁当箱を取り出す。赤・黄・そして紺の弁当箱。
 そこに炊飯器から炊き立ての白米をよそった。ほかほかと湯気を放つ米はみずみずしい。
 ご飯の上に先ほど作った鶏そぼろと卵そぼろを盛り付けて、小松菜で色合いを整える。プチトマトを脇にのっけて完成。
 完成した鶏そぼろ弁当は彩り豊かで早百合の料理の腕をまざまざと見せ付けることのできる一品だった。
「珍しいわね。毎日のようにアンタが弁当作るなんて」
「おはよう、母さん」
 自分の作った弁当のできに満足していると、台所にパジャマ姿の母親が自室から入ってきた。
「はい、これ。母さんの」
 早百合は紺の弁当箱を差し出す。まだ湯気が出ているので蓋を閉めて包むことができない。
「あら、どーも」
 母親はふわぁとあくびをかいた。時計を見ると午前六時少し前。母親にしては早起きな方である。
「朝ご飯は私が作るからアンタは新聞とって来て」
「朝ごはんはいいよ。食べてるから」
 嘘。朝ごはんなんて食べてる暇は無い。
「アンタの箸も出てないけど……何食ったの?」
「おにぎり」
「ふぅん、そう」
「包んどいて。それ」
 早百合はエプロンを母親に押し付けるように渡すと、そのまま二階の自室へ行く。
 学生鞄を手に取る。テストまでもうすこし、参考書がいくつか入っているからかすこし重い。学習机の上に置いた携帯電話を掴んで鞄に入れる。
 そして、燕尾色の鈴。
「……これは……もう手離せないわ」
 早百合はそう呟くと、制服の一番胸ポケットに大事にしまった。ここなら絶対無くすことはないだろう。最悪忘れて洗濯機に入れてメリーゴーランドしたらマズいからそこだけ気をつけるべきだ。
 りぃんと鳴る鈴。
 その音で早百合は思い出す。今日見た夢のことを。
 早百合は部屋の隅にある学習机の引き出しを開けた。それも普段めったに開けない小さな引き出しである。というか開けても入れるだけでほとんど出すことの無い引き出しだ。
 中はハガキや小さいパンフレットやDMなどが積まれて入っていた。指をつっこんで中をあさる。一番下に進研ゼミの案内の封筒があるのを見つけた。それを取り出す。
 赤や青といった原色系の封筒は今見るとなにか広告過多のような気がする。これひとつで成績トップクラス! というゴシック体のキャッチコピー踊る封筒。今見ると「そんなうまい話は無いよなぁ」と思うが、
当時は中にあるマンガを見て「一日一時間でマスター」「女の子にモテモテ!」「自信がついてレギュラーに!」という展開にあこがれたものだ。あのマンガは誰が描いているんだろう。
あと関係ないが、学研の付録に関しては何年同じ付録を使ってるんだと常に思う。いまだに『地震のメカニズムをお菓子で学習』とかで『中身はただのゆで卵じゃないか』で『だってそこにはチョコが乗ってないんだもん』とか言ってるのであろうか。ありえる。



572:魔女の逆襲第17話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:44:36 aE+nSUJS
 それはともかく。
 早百合は封筒をふってみる。ゆさゆさとする音。小学生の頃の進研ゼミの封筒をなぜ未だにとってあるのか。
 早百合はこの引き出しは要らないけどなにか役に立ちそうで結局は役に立たないけど捨てるのは少し惜しいものを入れる引き出しというふうに意識している。
 整理なんてほとんどしないから。という理由のほかに、さらにもうひとつあった。
「この中に……」
 封筒を傾ける。口から鍵が飛び出した。鍵には小さなシールが貼ってあり、名前が書いてある。
『よしき』と。
「やっぱりあった」
 早百合はそれを握り締めた。
 夢で見たとおりだ。早百合は呟く。

 彼女が鈴を手放せない理由。それは鈴の秘められた魔力にあった。

 遡るは昨夜の夜。
 夜十二時を過ぎてベッドに入る。
 するとすぐに早百合の体から湧き上がってくるなにか。
「き……きた……きたぁ!」
 待ちわびたように早百合が叫ぶ。
 彼女はすぐにスウェットのパジャマをまくりあげると、素肌と胸を晒して体中の毛穴という毛穴から噴出す汗を肌に塗りまわすように手のひらを動かしていた。
 すぐに体内の温度が上昇していく。首筋やこめかみそして下腹部の血流がぐるりぐるりどくどくと流れる感覚。そしてきゅんきゅんと響くように痒みのような刺激が下腹部をおそってきた。
 そして目の奥に浮かぶ、妄想の映像。妄執。
 早百合の手は別の生物のように蠢き、妄想の刺激を現実として体の刺激にぶつけるように肌を刺激する。
 一週間前と同じ現象。そう、この体の異変は毎日のように早百合を襲っていた。
 妄想に抱かれ、体は火照り、感覚は敏感に、そして何度も繰り返される陵辱。極上の悦楽の檻に閉じ込められたような拷問。
 手を動かして肌を撫で上げるたびに、早百合の脳内は快楽成分が分泌されて、脳内麻薬のように病み付きになってゆく。
 しかし、今の早百合はこの全てを享受していた。
 つまり、全て望みどおりに受けていた。
「よしきぃ! よしきぃ! よしきぃぃ!」
 躊躇無く叫ぶ良樹の名前。なにも考えず本能のまま動く手。胸をとおり、へそを撫でて、敏感な部分をくちゅりと擦る。
「いいよぅ! よしきぃぃ! あの女よりぃ、いいでしょぉ!? よしきぃぃ!」
早百合が悦楽に叫ぶたびに、早百合の心の中は良樹でいっぱいになっていった。そこにもう友情や幼馴染と言ったしがらみはない。
びくりと動く粘膜。
早百合は腰に思いっきり力を入れて、達した。
力が抜ける。脱力感。なにも動けない。
「よしきぃ……」
 ただ、愛しい人の名前だけ呟いて。彼女の意識は落ちた。

 りぃん。

 鈴は従順になった雌犬にはその力を早百合のために使った。


573:魔女の逆襲第17話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:45:52 aE+nSUJS
 りぃん。

 夢の中。
 一週間前なら、ここで精神攻撃のごとく何度もしずると良樹の肉体の絡みを見せ付けられる。
 しかし、今の早百合に鈴はそんなものを見せる必要が無いと判断したようだ。それよりも、彼女の劣情をもっと煽ろうとしていた。

 早百合が見ていたのは幼い頃の記憶だった。
 小学生の頃の記憶。
 早百合の部屋で遊ぶ二人。この頃から早百合個人の部屋はあった。もともと早百合は一人っ子だからすでに用意されていたと言うほうが適切だが。
 夕方になってゆく外の景色。日の光が傾き、二人の顔を茜色に染めてゆく。
 二人とも、鉛筆とノートになにやら書き込んで遊んでいたが……、そろそろ帰りの時刻だからだろう。良樹が立ち上がった。 
 そこで、幼い良樹は早百合にあるものを渡した。
 きらりと光る何か。
 そうだ、鍵だ。
 詳細な記憶が蘇る。早百合は思い出した。自分は確か幼い頃良樹から鍵をもらっている。
 たしか、この頃から良樹の親は留守がちになっていた。良樹のひとりで過ごす時間が多くなっていた頃だ。
 そのとき、自分はたしかたびたび遊びに行く名目で良樹の家の鍵を受け取っていた。
 しかし、その鍵は今は無い。なくしてしまったのだ。確かにもらったが……気が付くとなくなっていた。と、いうより、もらってたことをずっと忘れていた。
 小学生の頃は早百合と良樹も頻繁に遊んでいたが、特に鍵が必要になる場面はなかった。中学生の頃はほぼ絶縁状態で交流は無い。高校生になった今はほとんど学校での関係のみだった。忘れてても仕方が無い。
 良樹が部屋から出て行った。早百合は玄関まで下りてそれを見送る。
 そして、幼い早百合は近くにあった進研ゼミの空き封筒に鍵をいれると小さな引き出しの中にしまった。
 そこで目覚まし時計によって早百合の意識は途切れた。

  りぃん。

 鍵はずっと、8年間引き出しの中に封印されていた。
「良樹の家の鍵……」
 きらりと銀色に光るそれは、まるでRPGのラスボスの部屋の最後の鍵のように重要なアイテムに見えた。手に持って天にかざした瞬間早百合の脳内で『たれてててー』という音楽が鳴った気がした。
 それを見て早百合はにやりと笑う。まるで悪戯を考えたしずるのような顔だった。魔女の顔なんて思い浮かびたくないけども。
 早百合は確信する。鈴は夢の中で常に自分に有利な情報をすべて見せてくれていると。
 早百合が鈴を手放せない理由。それがコレだった。
 早百合は鈴のおかげでこの一週間。良樹の行動をすべて把握することができていた。
 良樹と離れている間でも、そのときの良樹のとった行動がすべてが夢として早百合の睡眠中に再生され、全てが筒抜けになっていた。

 りぃん。

 不適に笑う早百合。
 鞄を持って部屋から出た早百合は、台所へ向かうと母親の手によって包まれた弁当をふたつ掴んで、外へ出て行った。
 走る早百合。早くしないとおきてしまう。早百合には小学生の頃のデータしかない。
 早百合の足が向かう先は、まだ寝ているはずの良樹が一人で住むマンションだった。
 (続く)

574:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:46:45 aE+nSUJS
筆が進みません。
いいところですが、やっぱりしばらく休憩を挟みます。

575:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:48:26 aE+nSUJS
追記:
物語の何合目あたりか? という質問ですが、ここまでの話を当初は序盤で終わらせるつもりでした。
しかし、そろそろ物語としても終息させていくつもりです。
ただ、いつぐらいに終えられるか、それはまだわかりません。

576:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:50:38 UOuj+rUo
いつまでも待ってるからちゃんと完結させてね~

577:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:52:36 ZX7De/tP
GJ

578:名無しさん@ピンキー
07/02/04 19:03:24 aCKEUEFb
GJ!
さゆりんがとうとう修羅場に向かって歩き出したな
鈴パワーTUEEEEEE!!

579:名無しさん@ピンキー
07/02/04 19:46:23 az+/VqRb
早百合が一気に攻勢を掛けてきたか
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
>>559
GJ!いいよね、嫉妬強気反転嫉妬甘えっ娘

580: ◆z9ikoecMcM
07/02/04 19:48:43 88C4oD/e
よく見ると赤いパパ氏の投下に割り込んでる……申し訳ありません。


581:名無しさん@ピンキー
07/02/04 22:41:00 xihiO0Lo
ネタじゃない…実話だったんだ……!
いいか、なぜ未完成の作品のほとんどが一番美味しい場面で止まっている?
住民の反応も概ねGJの嵐だったにもかかわらず…。そして阿修羅氏…
もうわかったろう!!そう!!監K…
?えっ、ちょっと散歩に行ってただけ…本当だよ!!君以外に好きな奴なんてうわやめr…


わんわん♪

582:名無しさん@ピンキー
07/02/04 22:46:02 QIz1CJhz
すまん、↑の話がさっぱり見えない漏れはもっと空気嫁なのか?

583: ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:47:29 RDIfopqN
ほらほら投下だよ、と。

584:君という華 2 ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:48:37 RDIfopqN
 疲れた。足の震えが止まらない。原因は、さっきの体育の時間に行ったサッカー。一体、うちのクラスの男子は、俺に何の恨みがあると言うのだ。
 敵チームだろうが味方チームだろうが関係なかった。俺がフリーの状態なら味方からの強烈なスルーパス。あれに追いつけるなら、俺は今頃ワールドカップ得点王に輝いているだろうよ。
 さらに、俺がボールを持てば敵からの殺人スライディング。人間魚雷と化したアホどもに吹き飛ばされる事、両手の指では数え切れない。
 本当、俺が何をしたって言うんだ。
 何が腹立つって、それを爽やかな表情で行っているのだ。俺のクラスの男子は常軌を逸している。頭のネジが足りてなさ過ぎるんじゃなかろうか。
 さて。しかしそんな少林サッカーも真っ青なオバカサッカーを終え、教室に戻る途中。後ろから呼ばれ、俺は振り返った。
 と、ほぼ同時に、俺の胸に何か当った感覚。突然の事に、俺の思考は数秒停止する。フリーズ。
「……椎名ちゃん?」
 俺の胸元に、黒い塊……椎名ちゃんの頭部がうまっていた。と言うか、椎名ちゃんの息が妙に荒い。と言うか、鼻息が荒いです椎名様。
「椎名ちゃん、あの、椎名ちゃん?」
「……ふぇぁ」
 やばいです。かなり気持ち良さそうな、恍惚とした表情を浮かべているんですけど。なんかメガトロン、違う。目がとろん、としていますよ。とてもエロイです母さん。
 俺が肩を揺すっても、戻ってきません父さん。俺の後輩がピンチです。誰か助けて!
「ちょ、椎名ちゃん!?」
「しぇんぱい……? えへへ」
 ごすん。椎名ちゃんの頭突きが俺の胸に突き刺さる。胸骨と小さく叫んだ。痛いんだよちゃんと受け止めろやボケェ! はい本当すいません。
 椎名ちゃんはまたもの凄い勢いで鼻呼吸を繰り返している。これは確実の俺の体臭を嗅いでますよね? ってうぉぉい!
 ただでさえサッカーで大量の汗をかいた後なのだ。それはもう凄まじい男臭がしているんですけど。え、ちょ、何ですかこれ? 誰か、俺の後輩が! 助けて! 死ぬほど恥ずかしいデス!
「あむっ」
「……あむっ?」
 変な音が聞こえて、視線を向けると椎名ちゃんが俺の体操服をその小さく可愛らしいお口に含んでいる。
 しかも。
「ん、は、あむ、んぅ、じゅ、じゅる、ちゅ、あ、あ、んっ! ふぁ、ん、は、んぅっ!」
 イヤイヤイヤイヤ! ええちょ、ええ!? ナンデスカコノヨクワカラナイオンキョウコウカハ? しかもここ廊下ですよ!? 羞恥プレイなのか、そうなのか!
 本格的に危険な匂いを察知した俺は、椎名ちゃんの首が折れるんじゃないか、と見ている人が思ってしまうほど肩を揺する。可愛い後輩に、人の道を教えるのも先輩の勤めだ。

585:君という華 2 ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:50:13 RDIfopqN
「椎名ちゃん! 汚いから! ぺって! ぺってしなさい!」
「……ふぅえ? あえ? しぇんぱい? どうひたんれしゅかぁ?」
「いろいろ突っ込みたいけど、今は目を覚まして椎名ちゃん!」
 俺の魂の叫び。と、椎名ちゃんはようやくはっ、と我に返った。
「あ、や、す、すいません。つまずいてしまいました」
「いや、俺の突っ込みたい箇所はそこじゃないんだけど」
「そ、その……先輩、すごくイイ匂いがしてましたので、つい」
 そう言って頬を染める椎名ちゃん。何だろう、俺の知っている椎名ちゃんってこんな子だっけ?
「それでつい、その、先輩のあ、汗を吸ってしまいました……すいません」
 待て待て待て。仮に、俺からイイ匂いが発せられたとしよう。でも、それでついその匂いの元である汗を吸いたくなるのだろうか?
 ……いや確かに、そそられる行為ではある。じゃなくて。
「ご迷惑をお掛けしてしまって、大変申し訳ありません。先輩、着替えないと、まずいですよね?」
「え、あ、うん。て言うか、椎名ちゃん、俺に何か用事あったんじゃないの?」
「いえ、『たまたま』先輩の背中が見えましたので、つい嬉しくなって……すいません」
「いや、いいんだよ。そんなに謝らなくても。気にしてないから、ね?」
「でも」
「いいから。ホラッ、椎名ちゃんがそんな暗い顔してる方が、お兄さん悲しいな。ねっ?」
「……はい。では、失礼しました。先輩、また後ほど」
「うん。じゃあね、椎名ちゃん」
 と言うか、ここ二階なんだけどね。椎名ちゃん達一年生の教室は一階なはずなんだけどなぁ。こんな二年生の教室しかない所、用事ないはずなんだけどなぁ。
 でも、どこか元気がない椎名ちゃんを見ていたら、そんな愚問しても自分を殺したくなるだけなので辞めておいた。
 その時の俺は、思考を完全に椎名ちゃんの後姿に向けていた。だから、かどうかは分からないが。
 突然椎名ちゃんの肢体が宙を舞った。その事態に、脳が追いつくには少し時間がかかった。
 混乱する俺の脳。だけど、視線は、真っ直ぐに、それをとらえていた。
 俺はその表情を見るのは、かれこれ六年ぶりくらいになるだろうか。酷く懐かしい、それでいて二度と見たくなかったそれ。
 鬼の形相の祥子が、そこにいた。
 そこで、よくやく俺は理解する。ああ、祥子が椎名ちゃんを殴り飛ばしたんだ。


586:君という華 2 ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:50:49 RDIfopqN
「こンのォォォォ! 雌豚風情が! 今、何をしてた! 畜生、畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生がぁぁ!」

 まさに、咆哮と呼ぶに相応しい、廊下を震わせる叫び。廊下に横たわる椎名ちゃんに、祥子は襲い掛かる。
 マウントポジション、と言うんだけ。馬乗りの状態で、祥子は椎名ちゃんに罵声を浴びせ続ける。
「畜生の分際で! あたしの、あたしの亮に、何をした! 答えろ! 答えろ! 畜生が! 答えろ! クソ、クソクソクソクソクソクソォッ! 答えろ雌豚がッ!」
 祥子の平手が、情け容赦なく椎名ちゃんの頬を殴りつける。何度も。何度も何度も何度も。
 気が付くと、俺は走り出していた。走って、どうするかとか、何も考えず。
 止めろ、止めてくれ。
 俺は祥子に、走った勢いそのままに、体当たりをかます。なおも暴れる祥子を、何とか押さえつける。
 それにしても、凄まじい力だ。かなり体格差があるのに、気を抜けば吹き飛ばされそうになる。
「落ち着けって、祥子。なっ? ほら、落ち着け落ち着け。ほーら、大丈夫大丈夫」
「畜生! 殺す! 絶対に、絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に殺す! 畜生、畜生!」
「ほら、祥子、ゆっくり息吸え。ゆっくり、ゆっくり息を吸うんだ。良い子だから、な?」
 なおも暴れ続ける祥子。正直、椎名ちゃんの事を考えている余裕は無かった。
 今の祥子に、俺の言葉は届いていない。それでも、俺は祥子に話かけ続ける。
 と、俺の横を誰かが通った。一瞬見ると、確か椎名ちゃんの友達の少女二人だ。
 どこかに隠れていたのかどうかは知らないが、助かった。これで、椎名ちゃんの事は、今の段階では考えなくて済む。
「ほら、祥子。俺の目を見て、ゆっくり深呼吸するんだ。な? ほら、ゆっくり吸って、ゆっくり吐き出せ。良い子だから、な?」
「う、ううううぅぅっ! う、あ、りょ、君……あ、う、ううう、ううぅぅぅぁぁ」
「おーし、よしよし。祥子は良い子だな。ほらほら。深呼吸深呼吸」
 祥子の頭を撫でてやる。祥子は興奮した表情で、俺の目を食い入るように、見る。
 少し、息遣いが治まってきた。よし、あと少しだ。
 と、その時。俺の横を、椎名ちゃんの友人二人が、椎名ちゃんを抱えて、通り過ぎた。
 椎名ちゃんの表情を良く見えなかったが、とても驚いているように見えた。そりゃそうだ。いきなり先輩にボコボコに殴られれば、誰だって驚く。
 と、今日の俺はなんとも間が抜けている。本当、もう一度クラスの男子に辛い目にあわせてもらったほうがいいのかもしれない。
 俺の目を見ていた祥子は、当然のように俺の視線の先を見る。そこにいるのは、当然椎名ちゃん。
 見る見るうちに激昂する表情。這ってでも追い駆けそうな勢いだ。
 見ろ。椎名ちゃんの友達もびびっているじゃないか。まったく、こんな先輩ばっかりじゃないからな。と、名も知らぬ後輩二人に届かぬ願いを思いながら。
 俺は、祥子の頬を、渾身の力を込めて叩いた。
「……え?」
「いい加減にしろっ! 何が気に食わないのか知らないけど、人を殴って良い訳ないだろ! 分かってんのか!?」
 俺の怒声に、祥子は顔を真っ青にしてカタカタと肩を震わせている。こんな怒声を上げるのも、六年ぶりだ。
 俺は祥子を無理矢理立たせると、屋上に向かった。授業の事は、後で考える事にしよう。
 途中、椎名ちゃんが、まるで自分が食べたかった物を先に食われたような、怒りの表情を浮かべていた。いや、この例えも変か。ダメだ。俺もかなり混乱している。
 ともかく、だ。まずは祥子をどうにかしないと。俺は右手で握っている祥子の左手首から感じる体温の低さに内心驚きながら、屋上へと向かう足を速めた。

587: ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:52:45 RDIfopqN
取り合えずこんだけ。やばい。最近修羅場シーンと変態行為を書くとニヤニヤしている漏れがいる。
漏れもいよいよここの住人ッぽくなってきたのかな? かな?


588:名無しさん@ピンキー
07/02/05 00:02:49 N5PBvhpW
dぎゅwfhyふdふじぇふぃおpqphyugudとにかくGJ

589:名無しさん@ピンキー
07/02/05 00:16:33 b5ihc/uA
後輩の変態っぷりとわれわれの業界ではごほうびですを先にもらった嫉妬にGJ

590:名無しさん@ピンキー
07/02/05 00:17:59 1GGrK4NT
これがスーパーキモヒロイン4か…
GJ!

591:名無しさん@ピンキー
07/02/05 00:25:51 K8cxV4Sb
>>587ヒロイン達の壊れっぷりにこちらこそニヤニヤが止まりません。GJ!

592: ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:14:28 BsG31NUu
投下します

593:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:15:50 BsG31NUu

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 こんこんと降り続ける雪を聴きながら。
 少女はいつものように夕餉の支度を進めていた。
 
 さゆ、という名で呼ばれる少女は、義父が帰ってくるまでに夕餉の支度を終えねばならない。
 夕餉の支度はそれほど難しい作業ではない。
 だが、多少力の要る仕事なので、さゆの細腕では一苦労。
 特に骨からスジを剥がすのが一番堪える。
 柔らかい肉質なら愛用の包丁で何とかなるが、硬いものだと鋸を持ち出さなければならない。
 鋸の取っ手は、さゆに不似合いな無骨な物で、できることなら使いたくない。
 特に冬場は、骨まで使う料理が多いため、さゆの苦労は増えてしまう。
 とはいえ、夕餉の支度が遅れてしまったら、待っているのは義父の折檻だ。
 竹束の痛みは冬場の肌には厳しすぎるし、火箸の熱さは思い出すだけで気が狂いそうになる。
 故に、今宵もさゆは義父の帰宅時間を気にしながら、夕餉の支度を進めていた。
 
 
 悴んだ手に息を吹きかける。
 竈(かまど)の火はやや遠い。
 突き刺さるような痛みに耐えながら、冷たい塩に浸されていた肉を捌いていく。
 
 ―ああ、今日も、硬い。
 
 スジの部分はガチガチに固まっていて、女子の包丁では切り裂くのは不可能だ。
 この肉は晩秋に仕込んだものなので、上手に保存できていれば、雪が弱くなる頃までは保つはずなのに。
 
 ―また、殴られるのかな。
 
 義父は厳しい人だった。
 間違いを許せない質らしく、さゆが失敗すると拳骨で何度も殴ってくる。
 反抗したら骨が折れるまで殴られるので、さゆは怒られるときは目を瞑るようにしていた。
 目を瞑れば、世界は消える。
 真っ暗な闇の中、たゆたうように自分を忘れる。
 そして目を開けた頃には、折檻も終わっている。
 今晩も、そうなるのかな、と。
 
 さゆは、窓の外をぼんやり眺めた。
 雪がごうごうと降っていた。
 
 ―その横顔を見ていると。
 ―こころが、とても、痛くなった。




594:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:16:46 BsG31NUu

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 
 瞼を開けたら、見慣れた天井。
 
「……なんだ、今の?」
 
 ぼんやりと呟きながら、体を起こす。
 何故か、胸が締め付けられたかのように軋んでいた。
 
 変な夢を見た。
 妙にリアルな夢で、少女の横顔もしっかりと思い出せる。
 豪雪の音も耳に残っている。
 一度だけ修業で雪山に籠もったことがあるが、それよりも激しい雪だった。
 
 というか、初雪もまだなのに、雪夜の夢なんて見てどうするんだよ俺。
 全然脈絡無いし。疲れているのかもしれない。
 
 ぼんやりとした頭を振りながら、取りあえず掛け布団を脇にどける。
 ―途端、肌に冷たい空気が突き刺さり、思わずぶるりと震えてしまう。
 
「……うう、さぶ」
 
 ああ、そうか。
 雪が降ってる夢を見たのは、寒い格好で寝ていたからか。
 そろそろ初冬といってもいいこの時期、裸で寝るのは厳しいだろう。
 下着も履かないすっぽんぽんだ。風邪を引いてもおかしくない。
 
 
 
 ―って、ちょっと待て。
 
 
 
 裸?
 
 
 
 慌てて自分の体を見下ろして、ぺたぺたと触ってみる。
 紛う方なき全裸である。
 そして。




595:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:17:28 BsG31NUu

「―んぅう……? ぉお、もう朝かえ?」
 
 ごそごそと布団の奥から這い出てきたのは。
 いつもの襤褸を脱ぎ去った、鈍色髪の女の子。
 
 
 …………。
 
 
 あー。
 
 
 うー。
 
 
 あー…………ああああああああっ!
 
 
「? どうした郁夫? 素っ頓狂な顔をしおって。
 もしや、妾を抱いたのが不服だったとでも言うまいな?
 ―昨晩は、猿のように腰を振っておったくせに」
 
 
 ……あー。そうだそうだ。
 やっちゃったんだった。さよなら童貞。こんにちはロリコン。
 じゃなくて。
 
「えっと……その……」
 
 何か言わなければならないのはわかっているが、何を言えばいいのかわからない。
 昨晩の記憶は、それはもうはっきりと記憶に残っている。
 そりゃそうだ。初体験の記憶だし。入口がわからなくて恥ずかしかったとこまで覚えてるぜ。
 ……まあそれはそれとして。
 そんな、俺の初めての相手が、裸で横にくっついているっていう今の状況。
 こんなとき、なんて言えばいいのだろうか。
 ドラマの俳優とかは、こういう大事な場面で格好いいことをさらりと言えるが、
 今の俺は、頭の中が真っ白で、気の利いた言葉どころか日本語さえ危うかったりする。
 
 無言。
 ちょっぴり気まずい無言。
 
 あああ何か言え俺。
 何でもいいから、とりあえずこの微妙な空気を変化させられる言葉を何か―




596:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:18:23 BsG31NUu

 とにかく何かを言おうとして、口を開きかけ、
 
 茅女の白くて細い指先が、唇に当てられた。
 
「伊達男は閨の後、無闇に言葉を重ねぬぞ?
 ……まあ、後とは言っても一晩過ぎておるがな」
 
 そう言って、こちらの胸に、こてんと頭を預けてくる。
 
「それより、どうじゃ? 初めての術だが、それなりに上手くいった感触なのだが」
 
 ……そうだ。
 そもそも茅女と身体を合わせたのは―
 
「……試しに妾を持ってみろ。
 小娘の影響が失われておれば、問題なく持てるはずだ」
 
 ―流が弄った俺の心を、元に戻すため。
 
 そのために、茅女は己の体を差し出して、俺の心を直してくれた。
 初めてのセックスに少なからず浮かれていた気持ちが、途端に冷えていく。
 これでも健全な男子高校生だったので、初体験にはそれなりに幻想を抱いていた。
 しかし、現実は治療のため。
 茅女が俺に好意を寄せてくれていたのは知っている。
 しかし昨夜のは、好意とかそういうのをすっ飛ばした、作業のようなものだった。
 そう思うと、何故か心が妙にささくれ立ってしまう。
 
 茅女が差し出してきた手を、どこかやるせない気持ちで握り締めた。
 
 瞬間。
 茅女は変化を解き、包丁になった。
 
「……あ……」
 
『……どうやら問題なく持てるようだな。
 此度も落とされたらどうしようか心配したが、杞憂だったな。
 ―うむ、術は上手く為せたようじゃの』




597:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:19:19 BsG31NUu

 ―術、か。
 
 そういう言い方をするということは。
 やはり茅女にとって、昨夜のは治療行為に過ぎないのか。
 心が元に戻ったし、気持ちよかったし、俺が不満を言うのは筋違いだが。
 
 どうしても。
 
 ―茅女に、悪いなあ。
 
 そう、思ってしまう。
 
 
『―気に病むことこそ、筋違いだぞ』
 
 
 手に持つ包丁から、そんな思念が伝わってきた。
 思わず、ぽかんとした顔で見下ろしてしまう。
 
『房中術で心を繋げた影響か、ヌシの心が容易に伝わってくるわ。
 ……何やら、妾がヌシに抱かれたのは治療のためとか何とか、
 益体ないことを考えておるようだが、』
 
 そこで、茅女は少女の姿へと変化した。
 鈍色の髪がふわりと揺れる。俺を見上げる一対の瞳は、潤んでいた。
 
「―妾は、こうなりたかったのだ。
 治療行為と銘打って、この状況を利用して。
 郁夫の初めてを奪ったのだ。
 故に、ヌシは妾のことを恨みはしても、気遣う道理は何処にもない」
 
 
 だから、気にするな、と。
 
 
 心を繋げているわけでもないのに。
 茅女の想いが、優しく胸に響いていた。
 
 何故だかどうしようもなく愛しくなって。
 思わず茅女を抱きしめてしまう。
 力を込めたら折れてしまいそうな躰は、抗うことなく受け止めてくれた。




598:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:19:32 nksKzOcn
これ面白いw

599:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:20:06 BsG31NUu

「―ありがとう」
 
 言うべきかどうか迷ったが。
 気付いたときには、素直な想いを伝えていた。
 
 腕の中の少女が微かに震えた。
 そして、唐突にこちらの胸へ体重をかけてくる。
 抗うのは難しく、そのまま布団の上に押し倒された。
 
 ぼすん、と後頭部が枕に埋まり、
 追うように、茅女に口を塞がれた。
 
 入ってくる舌の感触に、思わず背筋がゾクゾクする。
 
「……ぷは。―閨の後には喋らぬものだと言ったろうに。
 聞き分けのない輩には、お仕置きじゃな。
 可愛い声で鳴いて謝っても、許さないから覚悟しろ」
 
「……照れ隠しにコレかよ。茅女って随分直情的なんだな。
 ってちょっと待て、俺が攻められる側かよ―ひにゃあっ!?」
 
 突然、ナニが柔らかいものに圧迫されて、変な悲鳴を上げてしまう。
 慌てて下の方を見ると、茅女が膝の裏で俺の物を挟んでいた。
 フトモモのむにむにした感触が押しつけられて……やば、かなり気持ちがいい。
 
「だから喋るなというのに。此奴の持ち主らしく、黙って固まっていればいいものを」
「いや、硬くなってるのは朝だからであって……。
 ―じゃなくて、朝っぱらからするのは流石に」
 
 なんというか、初体験の翌朝から、そういった行為に耽るのは、
 なんかこう、色々と爛れてるような気がする。
 これでも昨夜までは、清く正しい初物だった俺としては、
 性行為というものを神聖視しているというかなんというか。
 それがこうもあっさりと朝っぱらからに繰り広げられるには凄まじく抵抗があるというか。
 
 と、そんな考えのもと、茅女の侵攻を慌てて止めようとしたのだが。
 

「……郁夫、焦らすでない。
 ―妾はもう、とろとろだぞ?」
 
 
 初めての相手に、潤んだ瞳でこんなことを言われてしまっては。
 陥落するしかないだろ、普通?




600:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:20:55 BsG31NUu

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 ―謹慎として離れに放り込まれてから、一週間が過ぎた。
 
 冷え切った畳の上で、色無地を着込んだ少女が正座をし、瞑想している。
 ぴくりとも動かず、端から見れば、よくできた人形とさえ見間違えてしまうかもしれない。
 
 妖怪故に、足が痺れるということはなく。
 ただひたすら、時間が過ぎ去るのをじっと耐えるだけ。
 
 
 ―謹慎を終えたら、郁夫様のところに行きます。
 
 
 その想いを抱えるだけで、流の全身は暖かくなる。
 謹慎を終えた後に待っているのは、郁夫との心休まる日々。
 だから、謹慎だって真面目に受けているし、不平を言ったりすることもない。
 謹慎を終えるまでは、どんなに愛しくても郁夫に会いに行くのは我慢するつもりだった。
 
 ―郁夫様は決して、私のことを嫌っていない。
 
 胸を刺し貫かれたら、普通は相手のことを怖がるものだ。
 しかし流は、郁夫に限ってそれは無いという確信があった。
 
 
 ―だって、“そのように”したのだから。
 
 
 郁夫が流のことを嫌わず、
 他の雑多に心移ることもないように。
 
 自分が、そう、変えたのだから。
 
 故に、郁夫が流を受け入れるのは確定事項で。
 こんな謹慎なぞ、“焦らし”のようなものでしかない。
 
 そう思うと、どうしても暗い笑みがこぼれてしまう。
 
 郁夫が使う道具は、自分だけ。
 その事実は、流の芯を甘くとろけさせてしまう。




601:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:22:09 BsG31NUu

 郁夫のもとへ戻ったら、何をしようか。
 共に訓練をし、共に退魔を行い、共に在り続ける。
 その間、他の道具が介入することはなく、郁夫の全てを独占できる。
 彼の優しさも、彼の肉体も、彼の心の支えすらも。
 
 何より、あの“瞳”さえも。
 
 
 ―ぜんぶ、ぜんぶ、わたしのもの。
 
 
 想像するだけで、軽く達してしまいそうになる。
 気を抜くと、その場で変化が解けてしまいそうなほど。
 溢れる歓喜に溺れてしまいそうになる。
 
 ―心を弄るのは、便利だなあ。
 
 偶発的に手に入れた能力だったが、
 改めて考えてみると、最高の能力に違いない。
 流にとっては郁夫が全てであり、その郁夫の心を自由にできる。
 それは、他のあらゆる誘惑にすら勝る。
 
 そして。
 
 この能力を使えば。
 
 
 ―『人間に、なりたいなあ』
 
 
 郁夫にとっての、“大事な人”になることも―
 
 
 今度こそ、笑いを堪えきれなかった。
 暗い離れの一室で。
 流は独り、けたけたと歓喜を漏らしていた。





602: ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:23:21 BsG31NUu
お久しぶりです。
忘れられてないことを祈る今日この頃。

とりあえず1部完結するまでは、そこそこ早いペースで投下できるっぽいです。
血塗れ竜ではできなかったことを、九十九ではやっていきたいと思います。

603:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:27:16 y9Cint3/
>>602
よぉお帰り。待ってたよ。
いいなぁ…郁夫がロリコンになって流が実力主義になって…修羅場の匂いがぷんぷんしてきやがるぜ!

604:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:27:54 ZBYGMtws
流が独り妄想に耽ってる間に…茅女、やるじゃないか。

忘れてなどいなかったぜGJ!

605:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:30:56 sCO44oSb
キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!

606:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:32:09 xYZA3kE8
妖刀流ん
かわいいなあ

607:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:35:31 65uEda+A
あとは山本君とノントロと・・・・・・

と言うかすべてが待ち遠しい


608:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:36:58 Af5tNW89
>>602
めっちゃくちゃ待ってたぜ~!GJ!!
これから早いペースで投下出来ると聞いて、不覚にもウッヒョ~って思ってしまいましたよ。

609:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:38:49 BhnLB7uT
>>602
お帰り!!
今まで何してたのかは聞かないから、もうどこにも行っちゃ駄目だよ?

610:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:39:05 42TPoXAj
もうカウパーでまくりで大変だったよ

611:名無しさん@ピンキー
07/02/05 02:04:28 b5ihc/uA
九十九キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
いきなり良質の修羅場の雰囲気がビンビン伝わってくるぜ!

612:名無しさん@ピンキー
07/02/05 02:06:57 c9ccpKjw
>>602

お帰り! ずっとずっとずっと待ってました!


てか割り込んだ奴誰だよ。

613:名無しさん@ピンキー
07/02/05 02:31:48 h47vdrVa
きゃっほーい! キタ━━(゚∀゚)━━!!
全裸で待ち続けてたよ

614:名無しさん@ピンキー
07/02/05 02:48:19 oV9bDU7L
>>602
今でも時々、あの時「全部」を選択して良かったのか考えてしまう事がある。

血塗れ竜では出来なかったこと 期待してます

615:名無しさん@ピンキー
07/02/05 06:58:25 vNEzQB/y
血塗れ竜は何か打ち切りで終わったような感じで、しかもBADENDだったので、九十九
はハッピーエンドでお願いします

616:名無しさん@ピンキー
07/02/05 08:59:11 1GGrK4NT
ワガママ言うない

617:名無しさん@ピンキー
07/02/05 09:20:05 e+3whU1d
九十九きたわーーーーーーー!!
やったーーー!
久々だったから読み返してみたけど
やっぱこれ超面白れぇーーーー!!
GJGJGJ!!

ホント、もう職人の皆さんは、こんな面白さを提供してくれる神々なんだから
自分のペースで自分の好きな時の投下してくだされば十分ですたい。

618:名無しさん@ピンキー
07/02/05 11:19:17 ZEaakHvT
流に絞められたいわー

619:名無しさん@ピンキー
07/02/05 13:39:09 vn+WjCOl
流に刺されたい

620:名無しさん@ピンキー
07/02/05 14:59:44 yWjCuPRG
しかし、投下してくださる神たちのレベルの高さにSHIT!
>>602
GJ!流に色んな事されてぇー

621:名無しさん@ピンキー
07/02/05 17:21:30 Cs6XN5di
流が可愛すぎですわー

622:名無しさん@ピンキー
07/02/05 17:41:20 WFSrqLvP
いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

623:トライデント ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:30:08 yAzJk414
では投下致します

624:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:32:26 yAzJk414
 第19話『始まる予感』

 懐かしい夢の残骸を見た。過去は変えることができない残酷な思い出の欠けら。
記憶の忘却の彼方に置き去っても、夢として蘇る。悪夢に近い過去の再演は目が覚めるといつも驚くことに忘れ去っている。
ただ、胸に密かに潜む痛みだけは別として。
 天草月は残念の事に夏休みの課題を仕上げるために不眠不休で四日ばかり遅れて提出することが出来たが、
長期に渡っての監禁のおかげで体がやつれてしまっていた。

それに気付かずに徹夜で課題を仕上げると体にどれだけの負担をかけてしまっていたのか、全く考えていなかった。
課題を提出した後に学校で意識を失って病院に搬送された。栄養失調、体力的な問題うんぬんで
医者による学校の登校をドクターストップを喰らうはめになるとは。体を壊した俺が学校に通うことができずに
強制的に一ヵ月の入院をすることになっていた。

 すでに学生にとって貴重な一ヵ月が過ぎた辺りには夏の季節が過ぎ去り、秋の紅葉が病院の窓から見える木葉から確認できた。

今月の中旬には中間テストがあり、それを受けないと俺は留年するという恐怖に怯えていた。
仮にも留年して、紗桜と同じクラスになると兄の威厳が失われる可能性すらもある。それだけは避けねばならない。
 これからは絶対に冬子さんの前では女装すると北斗七星に誓いながらも、
病院ですることがないので待合室に置かれている贅沢な大型液晶テレビで暇を潰すことにした。
 階段を降りると入院患者や外来の方。医者や看護士の皆様が忙しそうに働いていた。
俺は虹葉姉から用意してもらった犬と猫柄のパジャマを身に纏いテレビが置かれている場所に向かい席に大人しく座った。
 今、流れているのは最近のニュースであった。


「今年の夏休み明けの学生の死亡者は一万6000人という前年より増しという驚異的な数字が出ました。
これは嫉妬した女性が男性を突き刺した被害者男子生徒の数です。
更に女性の被害者は一万人という冗談で済ませられない数字となっております。
これは女性が女性を殺す被害者です。主な原因は狙っていた男子生徒をと付き合い、
それに嫉妬した女性の脳内思考で泥棒猫さえ排除してしまえば想い人が私の事を見てくれるという根拠のない心理的な状況で
実行するケースが殆どです。
 最近、新たな傾向としては。
 姉妹の家に同居している義理の弟か兄を巡っての修羅場が全国各地で勃発しております。
姉がフォークで妹の目を突き刺したり、妹が兄の大事な性器を真っ二つにしたりと残虐的な行為が見られます。これに政府は……」


 そのニュースに俺は少しだけ驚愕していた。姉妹が一人の男を、
しかも家族として暮らしている男の子を取り合って修羅場というのがどうも他人事とは思えなかった。

「なんて世の中だ」

 景気が低迷しているとか、学力が低下しているとか、某国の自爆テロなんか全然問題にならない程、
この国は堕ちるとこまで行っているんじゃないのかと俺は不安を抱いた。


625:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:35:14 yAzJk414

 社会問題うんぬんと考えている時に時計を見た。すでに夕刻。
この時間帯になると俺の入院している部屋はもっとも騒がしくなる時間帯だ。
昼間に学校があることを俺は幸せに望む。虹葉姉と紗桜と音羽が人の迷惑を考えずに訪問している時間だからだ。
 自分の病室に入ってくると俺のベットには虹葉姉の姿がまずそこにあった。

「月君がいつも寝ている布団。月君の温もりが気持ちいいよ」
 あろうことか、以前と同じ過ちを繰り返している時点で俺は思わずため息を吐くことができなかった。
すぐに目を離すと弟の所持品や布団に忍び込む悪い癖が虹葉姉、いや、姉妹にあるのだろう。
こういう細かいことをいちいち気にしていれば、水澄家に暮らしていくことは難しい。
 俺は虹葉姉の肩を優しく叩いて、あっちの世界に引き戻す。
「に、にゃんと? 月君。いつ、帰ってきたの?」
「今帰ってきたんだよ」
「そ、そうですか。わ、私は別に何もし、してないんだからね」
 虹葉は顔を赤面させて頭から白い煙が立っていた。余程、弟相手に今の光景が目撃されたのが恥ずかしかったのだろう。
「紗桜は来てないの?」
「うーんとね。紗桜ちゃん。運悪く文化祭の実行委員に選ばれて、今日は委員会で遅くなるんだって。
本当はすぐに病院に向かうつもりだったんだけど、さすがに日常生活を疎かにしてまで月君の見舞いはしちゃだめって、
私がき~つ~く言っておきました」
「で、本音は?」
「紗桜ちゃんがいない間は私が月君独り占め。てへ。嬉しいな」
 気まずい空気が一瞬だけ流れる。
 いつものパターンだ。これが逆に紗桜だったら、同じ事を言うに違いない。所詮は姉妹。
行動パタ-ンは似てしまうことがお約束なのだ。だが、俺は夏休みに起きた体験を思い出すと、
ブラコン姉妹による暴走で俺は精神的にも体力的にも限界まで追い詰められてしまった。同じあやまちを繰り返すつもりはない。
 俺はベットの近くに置かれているナ-スコールを持つとボタンを押した。

「天草さん。どうかしましたか?」
「ちょっと頭のおかしい女子学生が……わけのわからないことを」
「変質者ですね。はい。わかりました」
 若い看護士さんが俺の必死の演技に動かされて焦った口調で応えてくれた。虹葉姉はぽかんと開いた口が塞がらなかった。
「変質者って、もしかして、お、お姉ちゃんのことなの?」
「リベンジです。少しは反省してくださいお姉さま」
「うにゃ~。お姉ちゃんは月君に恨まれるような事はやってないよぉぉ」
「体を壊した可愛い弟の休息に俺の胃痛の原因になっている人が見舞いに来るなぁぁ。

 病院の検査であなたは本当に10代の体ですか? って聞かれた時はちょっと死にたくなったぞ。
 誰かに黒いオーラーを浴び続けると体によくないって、医者が断言していたぞ」

「う、うにゃにゃ。そんなことないよ」
 思わず、動揺している虹葉姉の頬から冷たい汗が流れているのを見た。やはり、確信犯なんだろうか。
「虹葉姉と紗桜は見舞いの立ち入り禁止!! 病院患者と美少女姉妹が見舞いにやってこない男性患者の総意です。今、決めちゃました」
「月君と一緒に喋るのが私の生き甲斐なのに。お姉ちゃんの楽しみを奪うつもりなの?」

「ふふっ。俺は一夏の経験で悟ったんだ。あえて、修羅場を避けるよりも戦うと。顔を上げて、戦う覚悟をした俺は最後まで絶対に引かないっての」

626:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:37:18 yAzJk414

 冬子さんの監禁で完全に精神と体を病み、一ヵ月も入院しておかげで学業の方は疎かになっており、単位も危ないと新担任は言う。
 ちなみに前担任のメガネは夏休み中に別れた奥さんが無理矢理復縁を迫ってきたので
 男らしく『もう、束縛される生活は嫌なんだ』と叫んだ途端に。奥さんに心臓を隠し持ってきた包丁で刺されてお亡くなりになった。
 別にこれは珍しい事でも何でもない。
 夏休みが終わり新学期を迎えるために学校に登校すると自分のクラスは2~3人ぐらい花瓶が机の上に置かれていた。
 恐らく、ストーカーかヤンデレのどちらかに恋人になってくださいと迫られて、断られた途端に殺されるケースが多発しているのである。
 他のクラスでは花瓶がクラス半分以上も置いてあった実話もある。

「天草さん。変質者はそちらのお姉さんですね。今すぐに確保して病院の外にまで追い出します」

 看護士のお姉さん方数人が虹葉姉の両腕を見事にぎっちしと掴んで連行してゆく。

「ひ、酷いよ月君。うぇ~ん」
 反抗しようとジタバタ暴れていると看護士さんが面倒臭そうに鎮痛剤らしきモノを虹葉姉の腕に注射する。
 そして、問答無用に連れて行かれた。

「ふぅ。虹葉姉ももう少しだけ距離を置いて欲しいもんだよ」

 弟にべったりな姉と兄に依存と溺愛している妹を家族に持つと一日一日が命懸けのガチンコ勝負である。
 少し嘆息してから、買い溜めしてある缶コーヒーを片手に憂欝な気分でいると次の来訪者が現われた。

「月ちゃん。今日も見舞いにやってきたんだけど、さっき、あなたのお姉さんが看護士の皆さんに神輿にされて連れていかれたよ」
「音羽。あれはきっと変質者だからあんまり気にしなくてもいい」
 身内の恥を音羽に説明するのも恥ずかしいすぎる。
「あれぇ。紗桜ちゃんはどうしたの? いつもなら、この時間になると私を妨害するために水澄姉妹がきっちりとガードしているはずだけど」
「紗桜なら文化祭の実行委員に選ばれて今日はその委員会に出席するので来られないってことを虹葉姉が言っていた」
「へぇ。そうなんだ」
 音羽は嬉しそうに微笑んでいる。その笑みが俺にとっては嫌な予感が脳裏をよぎったと言えば、
 彼女にとってはとても不謹慎な事なので口には出さないが。


「じゃあ。ようやく、私は月ちゃんに宣戦布告することができる」


627:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:40:48 yAzJk414
「はい?」
「今日は邪魔な水澄姉妹がいないおかげで月ちゃんをたっぷりと独占できるんだけど。
 もう、私は嫌なの。何も変化がないってことは月ちゃんと私の関係が全く進んでいないことだもん。
 だから、私はここに宣戦布告する」

 音羽。どうした、何かおかしい物を食べてしまったのか。
 ここは病院だからすぐに医者を呼んでやるよと言いたかったが。音羽の様子がいつもと違い、その眼差しは俺に真っすぐに向けられている。

「私は月ちゃんに復讐する。その復讐は私と月ちゃんが恋人同士になって、幸せな生活を送る事なんだよ。言っている意味がわかる?」
「はあ? なんだけど」

 音羽は睨み付ける視線は俺に向けられていた。
 再会してから、ずっと仲のいい幼なじみとしてこれまでやってきたはずだった。
 それが突然に復讐すると言われても俺はただ狼狽えるしかできない。

「月ちゃんは全く覚えていないんだよね。まだ、小さかった頃だったし。
 私が引っ越しする原因になったのはお父さんが友人の保証人になって、多額の借金を背負ってしまったから。
 でも、お父さんは保証人の書類には全くサインも印鑑は捺さないと私とお母さんにきっちりと言った。
 だから、私はお父さんが保証人になったとは今では考えられない」

 俺は思わず缶コーヒーを力なく落としてしまった。連帯保証人関連の記憶で思い出される事はただ一つ。

「ガキの頃に音羽の家で遊んだ連帯保証人ごっこか」
「そうよ。それが鷺森家の不幸、私のどん底人生の始まりだった」
 音羽が俯いて長い髪が彼女の表情を隠す。
 あの遊びが原因で彼女は父親や母親を失い、俺と同じく独りぼっちになってしまったのだ。

「まさか、夢にも思ってもいなかったわ。月ちゃんと私がお父さんの机にあった連帯保証人に関する書類を見つけて、
 書き込んだ内容がほぼ正確で判子を押した状態でお父さんの友人が尋ねてくるなんて。
 私達は疑うことなくその友人に書類を渡しちゃった……」

「そ、そうだったのか……」
「私と月ちゃんがお父さんとお母さんを死なせてしまったんだよ」
「おじさんとおばさんはどうして死んだんだ」

「お父さんとお母さんは私のために借金を返済するために自殺したの。
 死んだ後に入ってくる多額の生命保険金で借金を返して、私が人間らしい生活を送れるように。
 でも、私は借金を返済しなかった。
 だって、親の借金は親の借金だもの。親の遺産を相続せずに遺産放棄してしまえば私は借金を支払う必要はなくなる。
 更にちゃっかりと親の生命保険金をしっかりと頂いたよ。
 だって、生命保険金は受取人が指定していた場合は遺産にはならないから。
 受取人の私にはきちんと貰える権利があったの。
 そのお金のおかげで私は今のように自由に生活を送っているけど、心の中ではどこか寂しかった」

 過去のことを思い出しているのか、音羽の目蓋から涙が頬を伝って流れてゆく。
 感情的になっているのか、体が小刻みに震えている。

「だから、月ちゃんに復讐する。きちんと責任を取ってもらうの。

 ううん……私の所有物になってよ。そうじゃないと私の心はいつまでも穴が空いたままになっちゃうよ」

「音羽……」
「月ちゃんは誰にも渡せないんだから……。

 水澄姉妹には絶対に指一本だって触れさせないんだから。うふふふふふふっっっっ」
 
 俺は言わずともナースコールのボタンを押した。いや、普通に押すだろ。

628:トライデント ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:46:59 yAzJk414
影の薄い音羽がついに黒化・・。ようやく、修羅場を迎えることができる♪
まあ、黒化した女の子に立ち向かうにはデザートイグールだけでは心細いですw


新作のプロットの事ですが
皆様の書き込みの意見を見て、私が長考して考えた結果
今まで学園モノの作品を書いていたので、たまには新たな分野に挑戦するのもいいかもしれないので
本来のプロット通りにプロットAでやってみようと思います。
まあ、社会人編はいろいろと設定やら難しいですけどねw

629:名無しさん@ピンキー
07/02/05 18:52:31 LmMEUhhQ
>>628
連帯保証人ゴッコバロスwwww
月ちゃん達何やってんだwwwwwwww

連続ですいません、投下しますよ

630:『半竜の夢』Take3
07/02/05 18:54:21 LmMEUhhQ
 今日は久し振りに仕事が入っておらず、図書館も休みなので遊びに出ることになった。
天気も良く、風が涼しく過ごしやすい。普段店番を頼んでいるせいで閉じ籠りがちなササ
からしてみたら、1日外に居られるというのは嬉しいのだろう。基本的には建物の中より
外で体を動かすのが好きな娘だ、竜害のせいで体が弱っていても基本的な部分は簡単には
変わらないものだ。それどころか普段体を動かすのを禁止されている分、余計に活動的に
なっているのかもしれない。そんな訳で、ササは始終上機嫌だ。
「次はどこに行く?」
 竜尾を楽しそうに揺らしながら、こちらを見上げてくる。
「はい、そろそろお腹が好いたので何か食べたいです!!」
 元気に手を上げて自己主張をするチャクムの方へ視線を向けると同時、まるで地獄の底
から鳴り響いているような豪快な音が聞こえてきた。そろそろどころか、こいつは物凄く
腹が減っているらしい。いつものことだ。元気に動くのは良いが、必要以上に元気なので
腹の減りも激しいのだ。タックムも喋らないだけで意外と活動的なので、二人揃って大量
の飯を食う。お陰で我が家の食費は半端じゃない額になっているのだ。この小柄で細い体
のどこに入るのか不思議だったのだが、先日チャクムが分かりやすく図で説明してくれた。
個体差があるので他の魔物はどうなのかは分からないらしいが、どうやら二人は食物自体
を摂取するのではなく、その中にある魔力を食べるらしい。魔物は魔法の余剰魔力や残留
魔力が固まって出来たものだから、納得といえば納得かもしれない。因みに人を襲うのも、
そうした体質が関係しているのだろう、とチャクムが教えてくれた。人や動物の体は魔力
が前進に満ちているから、それを吸収する為に襲って食べようとする。俺達が肉や野菜を
食べようとするのと同じような感覚かもしれない。水分や金属を食って生きていくことが
不可能なことと同じ理屈だ、腹は満たせても栄養が取れない。


631:『半竜の夢』Take3
07/02/05 18:56:03 LmMEUhhQ
 何とか出来ないものかな、と考えて歩いていると、大きな雄叫びが聞こえてきた。
「あれ、クリヤさん?」
「何してるのかしら?」
 見ればクリヤが、女性と口論をしているようだった。相手に見覚えはないが、どこかで
聞いたことがあるような声と口調。もしかしてユマだろうか、鎧を脱いでいる姿を見るの
は初めてだが、なかなか整った顔立ちをしている。疲れているのか仕事柄なのか、目元が
やけに鋭いことを除けば親父さんに瓜二つの顔だ。彼女は父親に似たのだろう。
「と、止めた方が良いんじゃないですか!?」
「いつもの喧嘩でしょ? 放っときなさいよ」
 慌てているチャクムとは対照的に、ササは呆れたような顔で二人を眺めていた。確かに
珍しいことではないが、この四人の中で魔物が一番平和主義というのはどうなのだろうか。
因みにチャクムは興味深そうに二人の喧嘩を眺めていた。但しこいつの場合は喧嘩に興味
があるのではなく、その際に使われる魔法に好奇心が向いている。勉強家であるチャクム
はいつの間にか、多数の魔法が使えるようになっていた。喧嘩を見て覚えているので自然
と使えるものも戦闘用のものばかりに片寄っているのだが、それを上手く応用して生活に
役立ててくれているから大したものだと思う。片方が争いを嫌っていたり、片方が勉強家
だったり、つくづく魔物らしくない。そこらの奴よりも、よほど立派に出来ている。
 それとは正反対に喧嘩を続けていたユマとクリヤだが、とうとう二人とも我慢の限界に
来たらしい。ユマのヒステリーはいつものことだが、クリヤまでもが激昂するなど余程の
ことでもあったのだろうか。二人の溢れ出る魔力に怯えてしまって、チャクムなどは俺の
背後に隠れてしまった。ササも竜の血が高まってきたらしく、タックムに支えられている。


632:『半竜の夢』Take3
07/02/05 18:56:59 LmMEUhhQ
 このままでは不味い。
「叩きのめしてやりますわ!!」
「やってみい!!」
 叫び、ユマは左右の袖口から二本ずつ棒を取り出すと、高速で組み立てた。現れたのは
見慣れた形、全長2mを越える十字架の形をした長杖だ。頭上で数度回転させると、長い
金髪を翻して槍のような構えをとった。
 対するクリヤは身を大きくのけぞらせ、天に向かって吠えた。先程の雄叫びよりも更に
強い、周囲の空間をも揺るがす響き。通常の声帯では発音することが不可能な竜の声は、
彼女特有の竜証である竜口によるものだ。人の姿でありながら異なる言葉を用いて、敵を
滅ぼそうとする。それは竜の姿に戻ったときよりも、なまじ恐ろしいものに思えた。
 不意に、肌に熱を感じた。
「マジかよ?」
 思い出すのは、クリヤの竜証の説明を聞いたときのこと。彼女はこの口があれば、人の
姿でも竜言語魔法を使うことが出来ると言っていた。炎を吐くことも出来ると言っていた
けれど、前進を焦がすような熱は普通の炎ではないものだ。大きく開かれた口の中にある
火球は赤を通り越して黒く輝いており、その熱は空気を焼いて風を起こしている。
「竜の炎、受けてみい!!」
 吐いた。
 長い尾を引いて吹き出された火球は瞬時に巨大化し、ユマへ飛来する。
「温い、温いですわ!!」
 身を一瞬だけ縮め、それをバネのようにしてユマは跳躍した。
 避けるのではなく、前へ。
 炎に向かうという方向性を持って己の身を跳ね飛ばし、長杖の先端を突き込んでゆく。
動きは単純なものだがそれ故に力の方向性も収束しており、指向性のある一撃となる。
 直後。
「突て、我が力よ!!」
 ユマの声に応えるように長杖の先端に魔力が展開し、それは白く輝く刃となった。魔力
で形成された白刃は命令通りに炎を突ち、更には膨張して巨大な熱量の塊を霧散させる。
竜の力が砕けたことで轟音が響き、大気が荒れ狂った。


633:『半竜の夢』Take3
07/02/05 18:58:37 LmMEUhhQ
 しかし、ユマの力はそこで終わらない。
 一点突破という意味を持つそれは、攻撃を退けてもまだ力を残していた。再度地を蹴り
突進を加速させ、クリヤの元へ突っ込んでゆく。先端に収束させても強すぎる力のせいで
大気に余剰魔力の光が舞い、それを見に纏ってユマは突き進む。その姿は、まるで彼女が
槍になったのかと錯覚する程だ。いや、彼女は槍そのものだ。
 衝撃。
 何かが噛み合う音と共に風が吹き、土煙が舞い上がる。
「温いのは、どっちかのう?」 煙が晴れると、信じがたい光景が視界に飛び込んできた。
「こんなもの、腹の足しにもならんわい」
 勢い良く突き込まれた光槍の先端を、クリヤは口で受け止めていた。そのままクリヤが
身を勢い良く捻ると、光槍が硬い音をたてて半ば辺りで折れた。
「違う」
 ユマが見せたのは、焦りではなく笑みの表情。
 これは元々複数の棒を繋げたもので、当然ジョイント部分は存在する。ユマの行動は、
それを利用したものだ。つまりクリヤに折られたのではなく、ユマ自身が折った。正確に
言うのならば、その連結していた部分を自分で外したのだ。
 体に力を入れていたのならば、すかしを受ければ力は行き場を失って姿勢が崩れる。
「謝りなさい」
 ユマは柄を両手で持つと腰を落とし、柄を外したときの身の捻りを利用して振り抜いた。
普通ならば当たることは殆んどない大振りの一撃だが、クリヤはバランスを崩している。
避けられそうもない状態だったが、しかし強引に身を投げてそれを回避した。光刃を展開
していなかったことと、得物の長さが1m程になっていたのが原因だ。
 ステップを踏みながら距離を取るとクリヤは跳躍、再び竜の雄叫びをあげる。


634:『半竜の夢』Take3
07/02/05 19:00:04 LmMEUhhQ
「お馬鹿さん、どんなに力が強くても空中では意味がありませんわ!!」
 ユマは柄の先に光刃を展開、5mもある大剣を作り振り被る。このままでは一刀両断に
なってしまうだろう。だが俺は、クリヤの狙いに気が付いていた。今の雄叫びは多分偽物、
相手を欺く為のものだろう。強い攻撃の際にはこうすると知っている相手にこそ、効果が
あるものだ。幼馴染みであり、共に守護役として戦っているユマだからこそ、引っ掛かり
やすいフェイントだろう。戦い方を知っているからこそ、騙される。
 ユマが光剣を振り下ろすのと同時に、クリヤは炎を吐いた。但し竜言語魔法ではなく、
普通の炎。それ自体は刃にかき消されるが、それで問題ない。大事なのは炎を吐いたこと
により起こる、空中での移動だ。それによりクリヤの体は後方に飛び、ユマの一撃を避け
改めて行動することが出来る。先程手に入れた長杖の上半分を持ち、不適な笑みを見せた。
「天誅!!」
 落下の勢いを味方に付け、それを振り降ろす。ユマは光剣を振り下ろしたばかりの姿勢
で身を前に傾けており、頭を垂れる罪人のようになっていた。杖の向かう先は無防備にも
晒された首筋、吸い込まれるように一直線に振ってくる。
 これは流石に不味いだろう、死んでしまう。
 俺はユマの襟口を掴むと放り投げつつユマの杖を奪い取り、クリヤの打撃を受け止めた。
馬鹿みたいに強い威力だが、相手が俺に変わり手加減してくれたのだろう。辛うじてだが、
姿勢を崩すこともなく防ぐことが出来たのだから。
「ふん、命拾いしたな」
「わざと、ですわよ」
 そう言うと、クリヤは鼻で笑った。
「おい、流石にやりすぎだろ」
「おお、クラウン。すまんかったの。怪我はないか?」


635:『半竜の夢』Take3
07/02/05 19:01:16 LmMEUhhQ
 漸くこちらに気が付いたらしく、笑みを向けてきた。いつも通りの表情を見ていると、
つい数秒前まで殺し合いをしていた者と同一だとは思えなくなる。
 しかし、これ程までに仲が悪いのだ。二人の親に仲良くさせろと依頼を受けたのだが、
これではまだまだ無理かもしれない。今の争いは、仲が悪いとかそんな次元ではなかった。
しかも喧嘩を止めるにも、守護役同士の争いなので命がかかっている。これからのことを
考えると、思わず溜息が溢れてきた。
「クラウン、大丈夫?」
「おかげさまで」
 チャクムとタックムに支えられながら歩いてきたササに、苦笑を向ける。
「それより、今の喧嘩を見て凄いことを思い付いたの。チャクム、口開けて」
「何ですか?」
 不思議そうに口を開くチャクムの顔に手をかざすと、ササは笑顔でタックムに耳打ちを
する。タックムは首を捻りながらチャクムの顔に手をかざすと、ササを見上げた。
「チャクム、せーので飲み込むのよ」
 間抜けに口を開き、頷いた。
「せーの!!」
 直後。
 タックムはいきなり、光弾を打ち込んだ。当然飲み込める筈もなく、チャクムは口から
白い煙を吐き、白眼を剥いて気絶する。あまりにも酷い光景に、言葉が何も出てこない。
ササは一体何を考えているのだろうか、クリヤ達の喧嘩とは違う意味で恐ろしい。
「やっぱり駄目だったかぁ」
 やっぱり、って何だよ。
 ササは苦笑を浮かべ、チャクムを見た。
「いやね、チャクムとタックムは魔力を食べるっていうから、おにぎり感覚で食べれると
思ったのよ。この魔法って魔力の塊だし、それに上手くいけば食費も浮くしね」
 何て無茶な。
 可哀想なチャクムの頭を撫でると、俺は治癒魔法をかけてやった。


636:ロボ ◆JypZpjo0ig
07/02/05 19:04:30 LmMEUhhQ
今回はこれで終わりです

>>515
自意識過剰な間違いだったら恥ずかしいですが、俺のことでしょうか?
半竜はぼちぼち進めます
花束は今悪い癖が出ていて、話を広げる為にプロット再組み立て中です
もう少し待ってくれると嬉しいです

637:名無しさん@ピンキー
07/02/05 19:32:56 Pqwl8pqW
職人の皆さん乙&GJ!!

懐かしい作品がチラホラと復活してきて嬉しい限りです。
あとはこれでノントロが来たら最高だなぁ。。。

638:名無しさん@ピンキー
07/02/05 19:42:44 2KWjFSXR
おおお、よもや九十九が来てるとは
ありがたやありがたや
「膝の裏」というマニアックな攻め方に感動しますた

639:名無しさん@ピンキー
07/02/05 19:57:22 7LE0InrN
そうだよな、保険金は遺産扱いにはならないよな。
じゃあ、この間の茨城の計画殺人は何なんだ……ハッ、GJ!!

ナナミ萌えとマトリックスと某爽快ハイスピードロボットアクションに影響されて、嫉妬するAIへの道を模索中。
嫉妬したらAI失格じゃないのか。ああでも、不良品扱いになっているのを、偶然ダウンロードして…。

640:名無しさん@ピンキー
07/02/05 20:02:10 yWjCuPRG
>>639
欠陥品で廃棄処分→色々あってその辺のごみ捨て場に破棄→主人公が偶然見つけ、拾う。
みたいな?うん萌えるよねー

641:名無しさん@ピンキー
07/02/05 20:32:55 aDmO8DI+
>>639
ヒント:HOS

劇場番パトレイバーを見てみよう。
あれではレイバーが暴走するプログラムが開発段階で意図的に仕込まれていた。
つまり嫉妬プログラムもバグやウイルスではなく最初からAIに…

642:名無しさん@ピンキー
07/02/05 20:51:58 COCQ2Fcl
逆に大切にされまくった結果、機械なりの解釈しちゃうとかね。貴方と私は二つで一つの機能である、みたいな。

643:名無しさん@ピンキー
07/02/05 20:56:45 aDmO8DI+
>>642
自己学習機能つきのAIが嫉妬に狂ってロボット三原則の「人間を傷つけない」を
「邪魔する雌豚はジェノサイド」と書き換えるのとかイイねw

644:名無しさん@ピンキー
07/02/05 21:08:16 IGOpUzgv
第二原則で引っ掛かりそうな気がしましたが、
泥棒「猫」、雌「犬/豚」は人間ではないのでOKだと言う事に気がつきました!

>643 さん、ありがとう。
それでは行ってきます。
ノシ

645:名無しさん@ピンキー
07/02/05 21:24:38 n5RX30Pg
>639
つ敵は海賊 海賊たちの憂鬱

愛に生きる決意をして
邪魔な相棒を艦内から放り出し
海賊なんて危険なことやめてくんなきゃ一緒に死ぬ
とのたうち回る宇宙空母のお話

646:名無しさん@ピンキー
07/02/05 21:27:11 aDmO8DI+
第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、
人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた
命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。

第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己を
まもらなければならない。


第一条を書き換えた場合

ロボ子「第一条ニヨリ雌豚ヲ排除シマス」
人間女「第二条に従ってやめなさい!これは命令よ!」
ロボ子「ソノ命令ハ第一条ニ反スルタメ聞ケマセン。デハ死刑執行」

こうなるのかな。

647:名無しさん@ピンキー
07/02/05 21:56:28 hoEnOjyN
>>639
つ スペースサタン(SATURN 3)

この映画自体はひどい出来だが、ロボットの教育に人格移植を使うというアイデアはおもしろい

元の人格提供者が男に想いをよせていれば自動的に三角関係ができあがるですよ

648:名無しさん@ピンキー
07/02/05 22:11:53 t9ETT4CB
第二条補足
場合によっては抹殺することも許される

649:名無しさん@ピンキー
07/02/05 22:37:51 3NlwEI2j
>>647
随分と懐かしい物をw

650:名無しさん@ピンキー
07/02/05 22:50:36 7LE0InrN
いやもう、戦闘妖精・雪風ぐらいの無機質さで嫉妬させたいんだが、表現できないな。
…そういえばアイツ、主人公と心中しようとしてたな。少し違うか。

>>647
ググったら一番上に最低映画館とか出てきたwww

651: ◆N.P5FQhRG6
07/02/05 23:23:33 RtQ7rqIg
投下します

652:愛娘の恋 プロローグ2
07/02/05 23:25:25 RtQ7rqIg
浩一はとりあえず少女を家の中に入れた。
自分が親と言われてはじめは冗談かと思ったが少女の様子からはそれが嘘とは思えなかった。

「……名前は?」

浩一は少女を居間の座椅子に座らせて尋ねた。
少女は目に涙を溜めていたがさっきよりは落ち着いていた。

「……雛川…奏」
「…………雛川!?」

香織の苗字に浩一は過去のことを思い出した。
それは忘れたくても忘れられない思い出だった。

「キミの母親は……雛川詩織か……」
「……!! ……そうです……覚えていたんですか?」

忘れるわけないよ、と浩一は思った。

雛川詩織は浩一の昔の彼女だ。
浩一と詩織は幼馴染で、小・中と同じ学校だった。
中二のときに詩織が浩一に告白し付き合い始めた。
だけど中三のとき別れがきた。
浩一が父親の転勤で引っ越ししてしまった。
そしてそれ以来詩織とは二度と逢えなかった。

「そうか……詩織は元気なのか?」
「……母は七年前に死にました」
「死んだ……?」

詩織は七年前癌で死んだらしい。
発覚したときにはもう末期で手の施しようがなかったそうだ。

653:愛娘の恋 プロローグ2
07/02/05 23:27:46 RtQ7rqIg
「……そうか……どうしてここに住んでるってわかった?」
「母の中学時代の友人に何人かあたって……」

よく簡単に人の住所を教えられるな、と浩一は思った。
この際それはどうでもいいが。

「……ずっと会いたいと思っていました。……母を捨てた男に」

憎らしげに話す奏。
容赦ない一言が浩一の胸に突き刺さる。
捨てた、か……。
確かにそうだな、と浩一は心の中で自嘲した。

「そうだな。酷い男だ。そんな男にキミはどうして欲しいんだ?」
「…………それは……」

ガチャッ

玄関のドアを開ける音がした。
浩一はこのときまで美風のことをすっかり忘れていた。
そして居間のドアが開けられる。

「ただい…………」
「…………………」

美風は目を真っ赤にした少女を見つめている。
奏も突然現われた女性を見つめている。
…何も言わず見つめ合う二人。
浩一はこの場から逃げ出したい気分になった。
そしてほぼ同時に浩一に顔を向け、

「「誰?」」


654:愛娘の恋 プロローグ2
07/02/05 23:29:31 RtQ7rqIg

……あの後特に何も起こらなかった。

美風に奏のことを説明したが、美風は特に怒る様子もなく、
「お腹空いた?」と奏に聞いて料理を振舞った。
奏は何も言わず黙って食べた。
そして浩一が帰らせようとしたとき、

「ここに泊まります」
「保護者の方とか心配してるんじゃ……」
「泊まります」
「せめて電話ぐらい……」
「かまいません」

結局帰りそうもない上に時間も遅かったしここに泊まらせることにした。
そして今、スースーと寝息をたてて隣の部屋で寝ている。

「なあ、美風」
「ん、なぁに?」

美風は今食器を洗っている。

「その……なんで怒らないんだ? 娘とかいきなり現われて」
「私は……浩一のことを信じてるから……」
「そんなに信じられる男かな、俺は」

美風は食器洗いを終え、浩一の隣に座る。
そして自分の左目の眼帯を指差す。

「これがその信じられる証拠……。それに浩一がそんな最低なマネをするわけないじゃない。
あの子が勘違いしているだけだよ・・・絶対……」

そう自分に言い聞かせている感じがした。
まあ仕方のないことだろう、と浩一は思った。

「そっか…………明日ちょっと出かけてくるから」
「どこへ?」
「……墓参り、かな」

655: ◆N.P5FQhRG6
07/02/05 23:38:02 RtQ7rqIg
まだプロローグ編なので全然嫉妬に狂ってないです……orz
プロローグ編が終わったら害虫駆除編(仮)を予定してますんで
そこで爆発させたいなあ、と

ちなみに名前の読みは奏(かなで) 美風(みかぜ)です



656: ◆35uDNt/Pmw
07/02/06 00:01:01 HzFdL1FR
>>655
うほっ! 害虫駆除編とは、なんとも甘美な響き……!
投下投下。


657:君という華 2 ◆35uDNt/Pmw
07/02/06 00:03:24 HzFdL1FR
 屋上に辿り着くと、俺は祥子を座らせた。二度、深呼吸をする。俺自身、少し冷静になれていない。
 祥子は、ずっと青い顔をして肩を震わせながら、ごめんなさい、ごめんなさいとまるでうわ言のように繰り返している。
 確かに、殴ったのはまずかった。カッとしてしまったのだ。俺もまだまだ子供だ。
 俺は何と言えば良いかわからず、しばらくは二人の間に気まずい空気が流れる。
「あー、祥子? その、なんだ。殴ってしまって、すまん。その、感情的になり過ぎた」
「う、あ、ごめ、なさい。ごめん、なさい」
「祥子? おい、祥子?」
「あたしなんか死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ねばいいんだ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね…………殺してよ」
「オイッ! 祥子!」
 祥子は目線を明後日の方向に向けて、笑顔で、死にたいと言う。
 止めろ。止めてくれ。お前が、そんなこと言うと、俺は。俺は?
「亮君に殴られたわもうあたしに生きる価値はないんだわ亮君がいない世界なんてあたしはいらない。やだよ。やだやだやだやだやだやだやだ。
亮君、どこにもいかないであたしを捨てないで。いい子にするから。亮君の言う事何でも聞くから捨てないで、ねえ、亮君。亮君亮君亮君亮君亮君亮君!」
 狂ったように笑いながら俺の名前を連呼する祥子。その笑顔はひどく幼くて、無垢な狂気に彩られている。
 何でだ。何でそんなこと言うんだ。俺は、ただの幼馴染だろう? 捨てるとか、生きる価値とか、何を言っているんだ。
 止めてくれ。違う、違うんだ。祥子、頼むから、止めてくれ。殴ったのは悪かったから。もう殴らないから。だから、お願いだ祥子。

 俺の瞳を見ながら、殺してなんて言わないでくれ。

「祥子……ほら、俺、怒ってないから。祥子がいい子なの、ちゃんと分かってるから。だから、落ち着けよ、な? ほら、いい子いい子」
 俺は、祥子を優しく抱きしめた。祥子を慰める、と言うよりもこれ以上この状態だと、俺まで狂ってしまいそうだ。
 狂って、俺は……俺は? 何だ。俺は何をすると言うのだ?
「う、あ、亮君、怒って、ない? やだ、やだよ? 亮君、怖いよ。一人は……独りは、怖いよぅ」
「ん、怒ってないから。でも、もういきなり人を殴っちゃダメだからな? 分かった?」
 俺は泣きじゃくる子供をあやすように言う。しかし、祥子からは返事が返ってこない。
「……祥子?」
「……あの子の肩持つんだ」

658:君という華 2 ◆35uDNt/Pmw
07/02/06 00:04:46 1W/8OR7S
「え?」
「……ふ、ふふっ。あはは」
 祥子はすごく楽しそうに、それこそまるで新しいオモチャを手に入れた小学生みたいな、天真爛漫と呼ぶに相応しい屈託のない笑顔で、笑う。
「祥子……?」
「ふふっ。大丈夫だよ。泣いたら、スッキリしちゃった。えへへ」
 そのあまりにも突然の豹変振りに、一瞬分離病かと思ってしまった。それほどの変わりぶり。
 祥子は、自分の身長の二倍ほどあるフェンスにもたれかかった。その顔には、まだ笑顔が浮んでいる。
「ごめん、亮君。先に戻ってて。色々……うん、色々考えたい事があるから」
「あ、ああ。そっか。じゃ、じゃあ先に戻っとく……自殺とか、すんなよ?」
「あはは。やだなぁ。亮君残して、一人で死なないよ」
 さっきは死にたいと仰っていたんですがね。と言うのは止めておいた。俺はじゃ、と言って屋上から去る。
 もう、六時間目も終わろうとしていた。


659:君という華 2.5 ◆35uDNt/Pmw
07/02/06 00:06:33 1W/8OR7S
 亮君の背中を見送ると、一回大きく深呼吸する。なんでだろう。自分でも不思議な感覚。
 亮君に殴られた時、世界が暗転したのをあたしは確かに感じた。その後は、もう自分が何を言っているのか良く覚えていない。
 でも感じたのは、このままじゃ亮君に捨てられる、と言う事。それだけは嫌だ。あたしの存在理由である両君に捨てられる。それはつまり、死ぬと言う事。
 いや、違う。消滅、だ。あたしの存在を誰も認識しない。最初から、いないことになる。
 今考えるだけでも、怖い。思わず身震いする。
 しかし。亮君にイタイ女だと思われただろうか。亮君は優しいから、きっと態度には出さないだろうけど。
 でも、大丈夫。捨てなければ、問題はない。結ばれれば、いくらでも調教できる。あたしの理想の亮君になってくる。
 だから、本当の問題はあの、醜い雌猫。泥棒猫。今思い出すだけでも、胃がムカムカする。気持ち悪い。
 あたしの亮君に、抱きついて放れようとしないなんて、なんて厚かましい女だ。亮君が気持ち悪がっていたのに気付いていないのだろうか? なんとも哀れな豚だ。
 そう。あの泥棒猫はあたしと亮君の未来には必要のない、異端の存在。存在を消さなければ、あたしと亮君に安らぎは訪れない。
 ゴミは、ゴミ箱へ。殺さなきゃ。殺して、あたしと亮君の記憶からも、抹殺しないと。
 でも、どうやって。いや。手はいくらでもあるはず。まずは、準備が必要だわ。下調べと、確実に殺せて、あたしに容疑のかからない、完全犯罪。
 殺さなきゃ。絶対に、殺す。殺す。殺してやる。その醜い顔を誰だか分からなくなるまで殴って殺してやる。ガリガリに痩せこけた肢体をぶった切って殺してやる。
 その気持ちの悪い黒髪を引き千切って殺してやる。肉切れすら残さずに、殺して、やる。
―随分、楽しそうな事考えているじゃねぇか?
 突然聞こえた、声。少し甲高いその声に、あたしは驚く。まさか、独り言を呟いていたのだろうか。少し、聞かれるとまずい内容だし。
 でも、周りに人影はない。空耳かな。まだ少し、気分が興奮状態にあるのかもしれない。いい加減落ち着くのよ、祥子。
 そうだ。ここから見える景色は中々秀逸だ。それを見て、少し気分を落ちつかせよう。
 くるり、ともたれかかっているフェンス越しに見える景色を見ようと振り返る。
 そこから見えたのは、空中に立っている男。
「え、え?」
―んあ? なあに不思議そうな顔して……ああ、こんなとこに立っているのが変か。ま、そりゃそうだ。
 男はまるでそこに道があるかのような足取りで空中を歩き、フェンスをすり抜けてあたしの側に立った。
 大きい。二メートル近い身長。銀色に輝く髪の毛。左目が、ない。空洞になっているそこを見ていると、吸い込まれそうだ。
 男はけらけらと、あたしを見ながら笑っている。不思議と、不快感はない。
―なあ、その面白そうな話。俺も混ぜてくれよ。
「面白い話……?」
―家畜、殺すんだろ? 猫か豚かは知らねぇけどよ。そりゃもう無残に、殺すんだろ?
「殺す……そう、よ。殺すの」
―フヒヒッ! 面白そうじゃねぇか。なぁ、俺も混ぜてくれよ。お前に力、やるからよぉ。
「力? 力ってどんな?」
―いや、やるって言うより、引き出してやる、て感じだな。どうだ? 俺も混ぜてくれるのか? くれねぇのか? どっちだ?

660:君という華 2.5 ◆35uDNt/Pmw
07/02/06 00:07:09 1W/8OR7S
「……いいわ。混ぜてあげる」
―ヒヒ、フヒヒヒヒヒヒャヒャヒャヒャヒャァッ! イイねぇ、話の分かるお嬢ちゃんだ。嫌いじゃねぇぜ?
「ただし。殺すのは、あくまであたし。それは守ってもらうわ」
―いいぜ。大体、俺ァお前等人間に直接的な影響は与えられないからな。そんなもん、約束するまでもねぇよ。
「あっそ。なら、あんたもあたしの力をさっさと引き出しなさい」
―オォ、怖えぇ。んじゃ、失礼して。
 男の右手が、あたしの顔をわし掴む。何か男が呟いた、と思ったら男は右手を放した。
―なんだ?
「終わったの?」
―おお。なんか不満顔だな。
「なんか、もっとすごいの想像してたのに」
―知るか。俺ァお前の持っている殺意を引き出してやっただけだ。ヒヒャヒャ! しっかしお前、分かりやすい能力だな。
「そうなの? 全然変わってないんだけど?」
―あー。例えば、だ。おう、そこに小石が落ちてるだろ。それを手の平に乗せてみろ。
 男が指差した所に、確かに親指の爪ほどの大きさの小石が転がっている。あたしはそれを言われた通り、手の平に乗せた。
「で?」
―重要なのはイメージ、だ。その小石を吹き飛ばすのをイメージするんだ。お前の体ン中から衝撃波が出て、その小石を飛ばす、てのをイメージしてみろ。
 あたしは目を瞑り、イメージする。体内の芯から出る、唸るような衝撃波。それを脳裏に浮かべる。
 どこまでも飛んでいく小石。手の平。イメージを繋げる。
 そして。
「……きゃっ!?」
 あたしの手の平に転がっていた小石は、瞬く間に空へと消えた。
 イメージ通り。まさにイメージした通りに吹き飛んだ小石。あたしは手の平を見つめる。
―おーおー。流石。それがお前の能力、『殺意』だよ。まあ、名前はお前が勝手に決めろ。俺はどうでもいいからな。
「……ふふ、うふふ。ふはっ、あはは、あは、あははははははは、はは、は、ははははははははははっ!」
 思わず声を出して笑ってしまった。最高だわ! これこそ、神の指示なのかもしれない。今まで信じてなくてごめんなさい、神様。
―……。
 男は何か複雑そうな表情を浮かべている。でも、笑いは止まらない。
「えへ、えへへ。凄い、凄い凄い凄いッ! これなら、殺せる! 殺せるわ! あは、あはははは!」
―……しかし、お前、やっぱおかしい女だな。そもそも、俺の存在をなんでそんなあっさりと受け入れるんだよ。フツー、少しは驚くだろ?
「あは、あー楽しい。で、何?」
―いや、だから。
「聞こえてるわよ。うふふ。別に、どうでもいいもの」
―あ?
「あたしと亮君の邪魔しなければ、どうでもいいの。霊だろうが化け物だろうが、関係無い。あたしと亮君にとって邪魔かどうかが問題なだけ。後はノープログレム、よ」
―ヒヒ、ヒャーヒャッヒャッヒャッヒャ! オンモシレェー! おもしれェよ、お前。
「お前、は止めて。あたしにはちゃんと水田 祥子って言う名前があるの」
―祥子、祥子ね。ふは。俺の名前は……あー、好きに呼べ。
「は?」
―名前は特にねぇからな。好きに呼べ。
「ふうん……じゃあ、キラ」
―はあ?
 男は何ともマヌケな表情を浮かべた。すごい、心底を人を馬鹿にした表情だ。失礼ね。
「キラーの、キラ。ほら、ぴったりじゃない?」
―ふん。好きに呼べと言ったのは俺だ。お……祥子がいいって言うんなら、俺ァ反対しねぇよ。
「それじゃあ、これからよろしくね、キラ」

 共に世界を、完成させる為に。


661: ◆35uDNt/Pmw
07/02/06 00:09:37 1W/8OR7S
以上。ちょ、豹変しすぎだよ! と書いた本人も驚きだよ。うん精進する。
あと、途中中途半端に短くなっていて、申し訳ないですorz


662:名無しさん@ピンキー
07/02/06 00:11:55 IxPZYdbR
まとめてしまって申し訳ないが作者様方GJっす
今日帰ってきたらまさかこれだけ大量のSSが投下されているとは・・・
世の中、まだまだ色々な嫉妬にあふれているのですね(*´д`*)

663:名無しさん@ピンキー
07/02/06 00:18:10 50dQDHPa
>>661GJ!!
新世界の神じゃなくて嫉妬世界の神ktkr

664:名無しさん@ピンキー
07/02/06 00:20:50 gbe1tjnw
娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…娘AI…
殺人娘AI…殺人娘AI…殺人娘AI…殺人娘AI…殺人娘AI…殺人娘AI…ハッ!GJ!!

次スレのことすっかり忘れてたがホントどうしようかね。

665:名無しさん@ピンキー
07/02/06 00:26:34 nhHHv6jD
しかし、感想が書けないからどこかに感想掲示板を隔離させるとか
WEB拍手で作者が感想が見れるようなシステムにしておかないと
さすがに頑張って投稿して感想をもらえなかったら、神達も離れてゆくぞ
感想一つだけでやる気が沸いて来るんだからw

666:名無しさん@ピンキー
07/02/06 00:30:18 Q3hZPjjE
>635
半竜ktkr!! GJ!
相変らず無茶やりつつほのぼのな感じが良いですw
あと魔物双子が相変らず萌えますw

花束は再組み立て中ですか
パワーアップして帰ってくる日を待ってますね

667:名無しさん@ピンキー
07/02/06 00:53:05 vRNeHHFx
ロボは日本語自体がおかしいだろうに

668:名無しさん@ピンキー
07/02/06 00:55:37 50dQDHPa
>>664素晴らしい嫉妬を堪能していて、次スレの事なんかスッカリ忘れてたw
もう471KBいってるけど、次スレどうするの?どうなるの?

669:名無しさん@ピンキー
07/02/06 01:16:00 XwaMjmpP
約二週間か……。
修羅場SSスレ、未だ衰えず……(´Д`;)ハァハァ

670:名無しさん@ピンキー
07/02/06 01:24:32 lYsihmlN
結局次スレのスレタイの案はどうなったんだっけ?

671:名無しさん@ピンキー
07/02/06 01:34:09 l6jTrGdI
語呂合わせがつおい
二番目に番号

672:名無しさん@ピンキー
07/02/06 01:37:10 XwaMjmpP
語呂合わせでいいんじゃない?
39.9% (160票/39.9%)



28、28……。
「貴女には(←28)渡さない」とか
「修羅場の庭(←28)」とか……。

だめだ、思いつかねぇ。

673:名無しさん@ピンキー
07/02/06 01:46:10 NvKwUD5I
39%なら語呂合わせより連番合計の方が多くないか?
語呂合わせでいくのか?

674:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:02:27 sKTZ2qEl
>>673
2択じゃないよ
ちゃんと見とき

嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 浮気28おしおきを

675:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:06:36 ELxwwhT8
>>671-674
まず「語呂合わせ」か「連番の合計」のどっちが多いかを考えて、
連番のほうが多ければ、連番の中で一番投票数の多いのを選ぶってことになってたと思うんだけど……。

676:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:07:32 lYsihmlN
>「貴女には(←28)渡さない」

俺はこれ、いいと思うけどな。

677:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:08:56 lYsihmlN
>>675
いつの話だっけ、それ。
このスレは職人さんといい感想といい凄まじいスピードだから、ほんの数日あけるだけですぐ話題が……

678:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:11:19 ELxwwhT8
>>677
前スレだったと思う。
一応、このスレの>>12にも書いてるけど……。

679:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:19:19 lYsihmlN
>>678
今ログ見たわ。前スレの860ね。
もう投票期間終わっちゃってら。さっきつい出来心で入れちゃったのに。

680:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:22:47 Q3hZPjjE
「貴女28渡さない」も良いけど
「泥棒猫28渡さない」なんてどうよ

681:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:27:38 xm1nOA4q
スレタイは長すぎると入らないからなぁ……。

どれくらいまで良いんだっけ?

682:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:45:33 q1Hfz+9h
投票の結果、今後スレタイの語呂合わせはなくなりました。
詳しくは前スレ読んでね

683:名無しさん@ピンキー
07/02/06 02:54:12 qR0tLm+H
疲れ果てて帰ってきたら投下ラッシュキテル━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
1日の疲れがこれで癒される!!! 
>>661
殺意の波d―もとい嫉妬の波動で泥棒猫2匹を虐殺かGJ
>>655
このやんわりとした流れから美風が奏に泥棒猫の匂いを感じる時が楽しみだ
害虫駆除編という文にwktk!して待ってます
>>636
半竜キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
まとめサイトで改めて見返して、そしてスレで最新部を読むのがたまらない
>>628
連帯保証人ごっこの流れと月の冷静さにワロタw
新作の社会人物にも期待しています

684:グリフォンとオレ。
07/02/06 04:46:13 44SRSiWe
調子に乗って、投下します。取り敢えず導入部だけ。


その0(プロローグ)

 ずぶずぶずぶっ。

 男のペニスが湿った音を立てて、腰を降ろした女の股間に埋め込まれてゆく。

 めりめりっ、めりめりっ!!

「痛い、痛い痛い痛いっ!! もうやめっ……ああああっ!!」
「んふふふふ、そぉんなに痛いんだぁ。だったらなおさら、治してあげられないねぇ、あなたの包茎ちんちん……!」
 女が男の上で腰をくねらせるほどに、男は涙を流してもがこうとする。

 そう、男は確かに、女の言う通り、包茎だった。
 それも仮性ではなく、真性の。
 つまり、彼にとっての性行為とは、ペニスに快感を与える行為でも何でもなく、単に性器に苦痛を与え続ける行為でしかなかった。

「こぉらグレイス、じたばたしないのぉ」
 痩身でありながら逞しい筋肉に包まれたその男は、しかし女に手首をつかまれた瞬間に、そのあまりの握力に、微動だにできなくなってしまう。
「……ぐっ……んううううう……!」
「あはっ、すっごぉい! すっごく可愛い! もう食べちゃいたいくらい!!」
 男のペニスから与えられる刺激を一方的に感じながら、女は、男―グレイスの顔面の傷痕を舐め始める。そして、そのまま舌を彼の唇に捻じ込み、その口内を蹂躙する。
「……んんんっ……んぐぐぐ……!」
 酸欠で、彼の表情がいい加減青くなってきたところで、ようやく女は舌を引っこ抜く。
「んん…ぷは~~っ。ああ、美味しかった。……あなたは? どうだった、あたしの唾液?」
「―はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……」

 ぐいっ!
「あがぁっ!!」
 男が不意に悲鳴をあげる。
 女―ハブローが膣内に力を込めて、彼の包茎ペニスを締め上げたのだ。
「ハイ、訊かれたらちゃんと答えるぅ! 学校で習ったでしょう、それくらいっ!」
「おっ、おい……」
「はぁ!? 聞こえない!!」
「美味しかった、ですぅ!!」
「そうぉ、美味しかったんだぁ、んふふふ……。んじゃ、こっちは?」

 きゅっ!
「ひぎいいいっ!!」
「ぷっ、ホントなの? 本当にそんなに痛いの? まるで処女じゃないの」
「くううううっ……!」
 ペニスに与えられる激痛だけではない。
 男としての自分自身を侮辱される屈辱に、彼は耳まで真っ赤になった。

「くっ……、どう? 気持ちいいでしょ? 処女の気分でオンナノコに犯されて、すっごく興奮するでしょっ!? ねえ、なん、とか、言い、なさい……よぉぉっ!!」
 男を罵りながらも、彼女は快感に酔いしれ、がくんがくんとグレイスの上で腰を振る。
 一方グレイスは、その耐えがたい苦痛を凌ぐためか、または耐え切れずに悲鳴をあげるのを避けるためか、シーツを掴んで口に咥え、歯を食いしばる。

「はぁっ、はぁっ、いいっ、いいっ、ああっ、やっぱり、あんたの包茎ちんちんって、最高よぉぉぉっ!!」
「~~~~~~!!」
「いっ、いいっ ―ああああああぁぁぁぁっっっ!!!」
 次の瞬間、ハブローは絶叫と共に、絶頂を極めた。
 当然、男の苦痛とは関係なく、である。


685:グリフォンとオレ。
07/02/06 04:50:36 44SRSiWe

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、……じゃ、そろそろ、痛いのは勘弁してあげるぅ」
 ハブローは、淫蕩な笑みを浮かべながら、ずるずると音を立てて、自分の胎内からグレイスの陽根を抜き出した。
「かはっ……」
 グレイスが大量の唾液とともにシーツを吐き出す。
 その眼には、うっすら涙すら光っていた。
「あらあら、こんな事で泣いてるようじゃ、まだまだオンナノコの覚悟は出来てないようねぇ」
 そう言いながらハブローは、低い声で呪文を詠唱した。
 その碧眼が妖しく輝く。

 めきっ、めきめきっ。
 
 彼女の股間から、猛烈な勢いで何かが生えている。
 クリトリスだった。
 クリトリスが突如巨大化し、見る見るうちに立派な、逞しいペニスがそこに出現した。
「どぅお坊や。折角おちんちんでオンナノコの気分を味わったんだから、次は違う穴でオンナノコの気分を味あわせて上げる。んふふふ……どうしたの? 喜んでいいのよ」
 しかし、当のグレイスはとても喜ぶ気分では無さそうだった。

「……ハブロー、何をする気だ……お前、まさか、それで……!」
「んふふふ……あんたバカぁ? エッチでおちんちん使ってする事って一つでしょう?」
「うっ……うあっ……いやだぁぁああ!!」
 逃げようとするグレイス。しかし、ハブローはその片足を掴んで引きずり寄せる。信じられない腕力だ。そのまま、彼をうつ伏せの体勢で固定する。
「いいのよ、泣いても。オンナノコだってみんなそう。痛いのは最初だけ。でも、すぐに感謝する事になるわ。ハブロー様、こっちの穴の気持ちいい使い方を教えてくれて有難うございますってね……」
「いっ……いやだぁ……女になるのは、いやだよう……」
 グレイスがふるふる、ふるふると首を振る。騎士として戦場で見せる精悍な表情が、まるで嘘のようだ。
「んふふふ、だぁめ。聞き分けの無い子には、―お仕置きっ!!」
 ずずずっ、ずぼぉぉっっ! ごりごりゅっ!!
「ああああああああああああ!!!!!!!」

 一撃だった。
 その一撃でハブローは、彼のアナルをその奥底まで侵略した。
 グレイスの身体が、びくんびくんと痙攣している。まるで高圧電流でも浴びたように。
 半ば、白目を剥いた彼の表情を見下ろしながら、女は愛する男を征服し、蹂躙する快感に、その身を震わせていた。

(いいのですよ、お兄様。じっくりと楽しんでください。私が、私が、お兄様を天国まで連れていって差し上げますっ!!)



686:名無しさん@ピンキー
07/02/06 06:41:37 VQdrBbaw
>>682
工作乙
詳しくは投票場を見てね

687:名無しさん@ピンキー
07/02/06 06:53:15 JIXi4R3s
結局揉めるのね
何のために投票制にしたのか分からないな

688:名無しさん@ピンキー
07/02/06 06:54:11 csOuR6k8
だから「その~」「PART~」「監禁○日目」「泥棒猫○匹目」の四つを足した数は242票
語呂合わせの数はたったの161票でどう考えても語呂合わせが少数派。
第一もう語呂合わせはきついんじゃないか?

次スレからは「その28」でシンプルにいきましょう

689:名無しさん@ピンキー
07/02/06 07:32:32 B7wJ/uAf


スレリンク(eroparo板)

単純に立てる人の好みで良いと思う。語呂が出来るのなら語呂、難しいなら
数字とかその場その場で臨機応変に行きましょう。



690:名無しさん@ピンキー
07/02/06 07:37:39 B7wJ/uAf
いまさらだが次のタイトルって語呂にも数字にも見える・・・

691:名無しさん@ピンキー
07/02/06 07:41:27 1TRvvHxn
勝手に立てた後からそんな事言っても賛同する人は少ないと思うが。
しかも選択肢になかったものを堂々と出しちゃって、本当に何のための投票だったんだか

692:名無しさん@ピンキー
07/02/06 07:44:04 ui9byB92
結局語呂合わせにしないのなら投票制にする意味もねーじゃん
またこうやって強引に立てた奴がまかり通るんだな
前回最後で揉めた反省はどこにいったんだって話だ

693:名無しさん@ピンキー
07/02/06 07:51:21 qR0tLm+H
>>687>>688>>691>>692
今回の投票では明らかに不正投票が横行しているから、何とも言いがたいが
もうこれはしょうがないのかもしれんな。
些細な事は気にせず、もう立ててくれる人の好みでいいよ

694:名無しさん@ピンキー
07/02/06 07:52:02 NFV8BF++
また勝手に……馬鹿じゃないの?
それで揉めたり、ぐだぐだ言うヤツがいるから統一しようと言う話になったんだぜ

あと語呂合わせとか言ってる奴、見苦しい
本来ならその~で決まりだ>>12に書いてあるじゃんか
多重疑惑の票をまだ除いてないとかなら分からんが……

695:名無しさん@ピンキー
07/02/06 07:57:06 ui9byB92
語呂の案も出してる人もいたのにこれだからなぁ

696:名無しさん@ピンキー
07/02/06 07:59:07 ui9byB92
語呂合わせが一番投票数多かったのも考慮しないと
何のための投票だったんだか

697:名無しさん@ピンキー
07/02/06 08:00:32 qR0tLm+H
>>694
確かFC2の投票システムは管理者権限弱いから不正投票あっても削除等の操作できんのよ
だからぱっと見て明らかに不正だと分かるの抜くと「監禁○日目」になるが
もっときちんとしたシステムで再度投票したほうがいいのかもしれんな

698:名無しさん@ピンキー
07/02/06 08:03:35 JIXi4R3s
もうスレタイなんて立てたもんがちでいいよ
投下を阻害さえしなければ


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