嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その27at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その27 - 暇つぶし2ch500:赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6
07/02/03 02:41:30 N98iVNv+
「あのさ、若菜。」
「なぁに?」
朝飯も食べ終わり、何をするでもなく無駄な時間を過ごしている。
だが俺にはずっと気になっていた事があった。
―布袋葵。
あんな5分にも満たない、あの夢のような時間を今まで何度頭の中で再生したか…。
あの人が頭から離れない。あの仕草、声、笑顔、全てが俺の脳裏に刻まれている。
もう一度会いたい、だがあの人がどこにいるのか、俺に解る筈が無い。
…でも若菜なら…、若菜ならきっと何か知っているだろう。
小さな手がかりでも良い。だが露骨に聞けば怪しまれる。それとなく…聞き出す…!

「昨日会った葵さん…だけどさ、仲良いのか?」
「うん。輪ちゃんとあおちゃんは私の大事な親友だもん。」
「親友か……、いつからなんだ?」
「小学生の頃から…だね。 この村には小学校があるんだけど、田舎だから子供の数がすごく少ないの。
私達の頃は同年代っていったら、輪ちゃんとあおちゃん抜かしたら後は男の子だけで…、それでいつの間にか一緒に遊ぶようになったって感じなの。」
「へぇ、じゃあずっと一緒だったって事か。」
「当然! 悲しい時も楽しい時もずっとずっと一緒!これからも一緒…私はそう信じてるよ。」
本当に心から信頼しきっているかのような笑顔。
きっと俺には解らない固い絆がその笑顔を引き出しているのだろう。そう思える相手がいるというのはとても幸せな事だ…。
「…良いよな、そういうのってさ。」
「えへへ…、まあね。」
はにかみながら自信たっぷりにそう言う若菜はとても可愛かった。
…と、違う違う!葵さんの事を聞かないと!
「えーっと…、最近は3人で遊ぶ事とかって無いのか?」
「そうだねぇ、輪ちゃんは神社があるし、あおちゃんはバイト始めちゃったし…。」
「バイト…!?バイトってな、何の?」
「あおちゃんは図書館でバイトしてるんだよぉ~。 昔から本が好きだったから、あおちゃんらしい仕事場なんだぁ。」
「そ、その図書館って……近くにあるのか?」
「ううん、バスに乗って…1時間かな? 終点まで乗らないといけないから。」
「そっか……。」
図書館………。葵さんが居るとは限らない。けど、行く価値はある!
そうと決まれば俺のすべき事はただ1つ。
「ありがとう若菜!」
感謝の気持ちを籠め、思いっきし若菜の頭をわしわし撫でる。
「わっ、わわぁっ!?」
「じゃあな!行ってくる!!」
「ふえっ!?」
突然の俺の奇功に若菜が困惑した表情を浮かべているが、そんなものは無視だ。
俺は急いで家を出た。


出る時に一瞬見えた若菜の表情なんて気にも留めずに――


501:赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6
07/02/03 02:42:14 N98iVNv+

――10分後。

……ここ、どこだ?
辺りを見渡す。田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ田んぼ。
小さな古い家はぽつぽつと見えるが、目当てのバス停は影も形も無い。
…失敗した。若菜に聞けば良かった。
「考えなしにも程があるよな……。」
自分の馬鹿さ加減を呪うしかない。
俺は深い深い溜息をついた。

「…七原…ちかさん?」

俺を呼ぶ静かな声に振り向く。
そこには案の定、巫女姿の少女。
「あれ?錨…?」
「七原ちかさん、こんな所で何をしているのですか?」
道の真ん中に突っ立って途方に暮れている俺を不思議そうな表情で見つめている。
「ちょっとバス停を探してたんだけど……どこにあるのか若菜に聞くの忘れちまって。」
ははは…、と力なく笑う。ホント、情けない。
「…バス停でしたら、私が案内しましょうか?」
「なんだって!?」
錨の提案に思わず大きな声を出してしまった。
突然大きな声を出され、少し眉を顰めるが。
「嫌なら無理にとは言いませんけど。」
「い、いや!行く行く!! 是非案内してください!!」

錨と並び、同じような景色が続く道を歩いていく。
もし錨に会わなければ俺はどうなっていた事か…、感謝しないとな。
「ありがとな、忙しいのに案内してもらって。」
「別に、忙しいわけじゃないです。 野菜を貰ってきただけ。」
そういえば手にビニール袋を下げている。
「野菜ってやっぱり採れたてなのか?」
「ええ。」
「おおっ、新鮮な野菜が手に入るなんて凄いな!」
「そんな事ないです。ここでは普通の事ですから。」
「ここでは、な。 俺はこの村の人間じゃないから、少し羨ましいよ。」
「…私は学校行く時くらいしかこの村から出ないから…他の所の事はよく解らない。」
「学校だけなのか!?」
学校だけっていったら、殆どこの村から出ていないって事じゃないか。
「私はここを捨てられないから…。 それに…………。」
「それに?」
一呼吸置いて、寂しさと悲しさが入り混じったような表情を浮かべて錨は続けた。

502:赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6
07/02/03 02:46:42 N98iVNv+


「…約束だから…、あの方との……。」


―風が舞う。
髪が風に舞い、表情は解らないが悲しい声が響いた。
「あの方って…?」
「…言えない。言ってはいけないから。」
「そういう事なら…まあ気になるけど、聞かないでおくよ。」
多少気にはなるが、言えない事をあれこれ詮索するのは失礼だろう。 それに錨はどんなに聞いても言わないような気がする。
悲しそうな瞳を見ていれば…、何か事情があるだろう事は俺にだって解るから。

「バス停、着きましたよ。」
「え?あ、ホントだ。」
どうやらバス停に着いたようだ。 さっそく時刻表を見る。
「え…っと……、………どうやら後10分で来るみたいだ。」
一時間に来るか来ないかの運行状況なのに、このタイミングの良さは神に恵まれているとしか思えない。
俺は胸を撫で下ろし、ペンキが所々剥がれ落ちた古びたベンチに腰を下ろす。
「じゃあ私はこれで。」
「ああ、本当にありがとう。お陰で助かったよ。」
「どういたしまして。」
そう言うと、錨は何事も無かったかのようにその場を後にした。

しばらくすると予定通りバスが来て、1時間かけて多少大きな町でバスを降りた。
途中人に道を尋ねたりして、ようやく目的地へと着いた。
中へ入ると、涼しい空気が俺の体を撫で、本の匂いが広がってきた。
「ここ…だよな?」
受付を覗いてみると…………。

―――居た。

葵さんは隣に居る同僚らしき人と楽しそうに何か話している。
俺は高鳴る胸を抑えながら、受付へと歩き出す。

「あ、あのっ…!」
「はい?本の返却ですか?」
会話を中断して、眼鏡から覗く瞳をこちらに向ける。
「…あれ? 貴方確か………。」
「ど、どうも。七原です…。」
まさか忘れられてる…?そんな嫌な予感が脳裏によぎる。
「ああっ!七原さんですね。 こんにちは。」
そう言って、優しく微笑みかける葵さん。
…俺は心臓の音が一際高鳴るのを感じた。

503:赤い瞳と栗色の髪 ◆y5NFvYuES6
07/02/03 02:50:09 N98iVNv+
短いですけど今回はこれまでです。
ペースが落ちてしまって申し訳ないです。
そして修羅場がまだ訪れない事も申し訳ないです。
次の話は今回程間を開けずに投下します。

あと、この話を楽しみにしてくださっている方がいてくれたようで…、とても励みになりました。
これからも期待に添えられるよう、頑張りたいと思います。

504:名無しさん@ピンキー
07/02/03 09:00:34 bq3CJqeD
久しぶりに赤い瞳キテルー! (*゚∀゚)ムッハー
GJGJ!
鈍感で分かりやすい七原に泣いた
赤い瞳じゃない輪も修羅場に混じってはこないんだろうか
なんにせよ展開が気になるー

505:名無しさん@ピンキー
07/02/03 12:14:40 59ewTXrL
>>503
赤い瞳キタキタキタキタ━━!
田舎モノ好きな俺も待ってる信じてる!

506:名無しさん@ピンキー
07/02/03 12:57:31 kW3EvB4x
投下しますよ

507:『甘獄と青』Take23
07/02/03 12:58:32 kW3EvB4x
 時計塔に向かい、疾走する。
 背後から聞こえてくるのは連続で金属がぶつかり合う高い音、それなりに離れたという
のに聞こえてくるのは戦いが激しいからなのだろう。リサちゃんのことを信頼し時計塔に
向かうことにしたのだが、堪えきれずに一度だけ後ろを向いた。
「リサ様のことですか?」
「リサちゃんは、大丈夫だろうか?」
 とうとうスピードが落ちてしまった。ナナミは眉根を寄せ、こちらを鋭い目で見つめて
くる。理由は分かっている。リサちゃんにユカリの相手を頼み置いてきたのは僕自信だし、
今になって心配すれば信頼をしていなかったということになるからだ。
 けれど信頼と命の重さを秤にかけた場合、どちらが大事なのだろうか。命、という言葉
は文字通りの意味を持つ。ユカリの覚悟は本気だったし、殺すことも躊躇いはしなかった。
それにユカリの強さは、ナナミよりも遥かに上だったのだ。サラさんとリサちゃん二人を
相手に勝利したナナミを制し、それでもまだ底が見えなかった。そんな化物のような者が
相手で、リサちゃんは勝つことが、生きることが出来るのだろうか。
 彼女は目的があると言っていた。暴走したときでもなく、普段のリサちゃんの姿として
でもなく、ありのままのフランチェスカとして僕の前に現れたとき。普通の人ならば無理
だと思う以前に馬鹿馬鹿しいと思うような計画を立て、真剣な目で言ってきたのだ。
 姉を生き返らせる、と。


508:『甘獄と青』Take23
07/02/03 12:59:29 kW3EvB4x
 命を落としてしまったら、そこで彼女の全てが終わりになってしまう。だから、心配に
なっとしまう。姉への気持ちを失ってしまうかもしれないのに、それで良いのかと。
 そこまで考え、僕は苦笑を浮かべた。いけない、これでは彼女への侮辱になる。
「ナナミ、頼む。叱ってくれ」
「青様」
 一瞬だけ間を置き、ナナミは頷いた。
「かしこまりました」
 白杭を地面に突き立てスピードを完全に殺し、腕を掴んで僕の体も引き留める。そして
二人で向かい合う形になると、ナナミは左の平手を高く掲げ、
「失礼致します」
 勢い良く振った。
 快音。
 頬に強い痛みが走るが、それで目が覚めた。
「青様、公園で私が戦ったとき、最後まできちんと見ていて下さいいましたね?」
「それを今度は、リサちゃんにしなければいけない。それが僕に出来ることで、するべき
ことだ。そうしなければ、リサちゃんの覚悟が無駄になる」
 分かっていたことだが、こうして口に出すと意思はより固まる。
 もう、揺るがない。
「すまん、迷惑かけた」
「本当です」
 それに、とナナミはそっぽを向き、
「恋人の前で、他の女の心配をするなんて失礼にも程がございます。今だって、サラ様の
為に頑張っているなんて……青様、もう一発如何でしょうか?」
「遠慮しとく」


509:『甘獄と青』Take23
07/02/03 13:01:28 kW3EvB4x
 可愛いらしい嫉妬だが、ナナミの表情は真剣そのものだ。個人的にビンタはさっきので
終わりにしてほしいと思う、今度殴られたら奥歯がきっと取れてしまうだろう。この場の
真剣な雰囲気を壊したくないので言っていないが、実は先程のビンタで既に奥歯が危ない
感じでぐらついているのだ。恐ろしいのは、機械人形の嫉妬である。
「行きましょう」
 頷き、走り出す。
 頭に思い浮かんでくるのは、ユカリが僕に言っていた言葉だ。慕う母親に怒られるかも
しれない可能性が高いのに、そんな危険を犯してまで僕を殺そうとした理由。
 僕はサラさんを、殺すことが出来るのか。
 殺したくはないし、出来ることなら平和に解決したいと思っている。その考えは公園で
ナナミ達が戦いをしたときから今に至るまで、全く変わっていない。寧ろ公園で皆が死に
かけ、ナナミを失ってしまいそうになり、シャーサが完全に居なくなってしまったことで
その考えは強くなっている。誰が死んでも、良いことも嬉しいことも何もない。辛いこと
ばかりで、誰もが耐えきれなくなってしまう。
 しかし、どうしても殺さなければいけなくなった場合、僕にそれが出来るのだろうか。
「ナナミ、僕はサラさんを殺せるだろうか?」
「心配は無用です。青様ならば、きちんと解決できます」
 断定系で言われて、苦笑が溢れる。しかも論点が微妙にずれているが、これはナナミの
気遣いなのだろう。逆に考えれば僕はサラさんを殺せないということだが、その可能性は
考えていないのだろうか。いや、考えていないのだろう。


510:『甘獄と青』Take23
07/02/03 13:02:28 kW3EvB4x
「そんなに立派な人間じゃないんだけどなぁ」
 軽口を叩き、加速する。
 時計台は近い。息が切れるが気にせずに、強引に身を前へと飛ばす。震える左右の足を
交互に出せば、それに付いた胴体は自然と前へ進んでゆく。当然、頭も前へと進み、その
中に存在する思考や視界も前へと進む。後はそれの繰り返しで、目的地まではひたすらに
動くだけだ。やりたいことが決まっていれば躊躇いは無いし、現に決まっている僕は前へ
進むことに遠慮も何もない。感じとることが出来るのは、時計台塔の姿と併走するナナミ
の足音、そして自分の鼓動だけだ。
 辿り着く。
 見上げると針は11時45分を示している。かなりのハイペースで進んできたつもりだった
けれど、ユカリの相手をしていたせいで大幅に時間を取られてしまったらしい。
「間に合って良かった」
 深呼吸をして息を調え、中に入る。
『いらっしゃい、ブルー。わたしは展望台に居るわ』
 僕が言ったことを覚えていてくれたらしい。高い場所から見下ろせば、自分も普通の人
であると分かる。そう言って時計塔に来る約束をしたとき、サラさんは本当に嬉しそうに
笑っていた。自身を普通ではないと責めていた彼女からしてみれば、確かに嬉しかったの
だろう。今までの重圧から解放されたのだから。
 そう、彼女は普通の人間なのだ。


511:『甘獄と青』Take23
07/02/03 13:03:31 kW3EvB4x
 だから皆と一緒に笑ったり食事をしたり歌ったりしたし、振られてかなしかったときは
泣いて暴れて気持ちを伝えようとした。寂しかったから温もりを求めたのだし、その温度
が忘れられないから世界が滅びれば良いと思っている。程度の差こそあれ、これは誰でも
考えることだし、普通のことだと言うことが出来る。サラさんだけが特別なのではない。
 エレベーターの前に着くと、ナナミは一歩下がった。
「それでは、私はここまでです」
「来ないのか?」
 離れないでほしいと言っていたのはナナミの方だったのに、随分と思い切りが良い。
「私も、そこまで野暮なことは致しません」
 ですが、と続け、
「絶対に、帰ってきて下さいませ」
 言って、抱き付いてくる。背中にパイルバンカーが当たるが、それすらも気にならない
程の必死の抱擁。何度も繰り返し、家を出るときにもしたけれど、これが最後だと思った
ことはない。これから先も、大事なことがある場合、何度でもしたいと思う。
 エレベーターに乗り込むと、もう本当に最後だなと実感する。これが最上階に辿り着き、
一歩踏み出せば展望台だ。きっとそこに居るだろう、独りで寂しく僕を待っている人が。
「伝えよう」
 言うべきことは山程あるし、それが僕の成すことだ。
 見上げれば、階を表示するランプの速度は遅い。昔に来たときはそれ程遅いとも思わな
かったけれど、それは僕が今一人だからだろうか。そう考えると、橙色の光もなんとなく
寂しい色に思えてくる。色の暖かみすらも、遠いものに感じてしまうのだ。
「サラさんも、こんな気分だったのか」
 独りで見る光は、どれだけ孤独を浮彫りにしたのか。
「伝えよう」
 僕の、サラさんの。
「伝えよう、全ての為に」
 扉が開き、黒髪を風に翻しながらサラさんが振り返った。


512:ロボ ◆JypZpjo0ig
07/02/03 13:05:05 kW3EvB4x
今回はこれで終わりです


513:名無しさん@ピンキー
07/02/03 13:11:31 yXV9rP+K
田舎モノか…。それなら、古い習慣に引き離されたカップルによる修羅場、とかもありかな。
十六になると男女ともに、村の決めた相手と婚約しなくてはならない、とか。
選ばれなかった幼馴染みがキレて、一緒に村を出ようと誘うけど、すでに男は婚約者とやっちゃってたり、結婚後の地位に目が眩んでいたり、とか。
実は選ばれるのは幼馴染みだったのを、婚約者は裏で操作して自分がその場に納まった。それを知った幼馴染みは…、とか。
不正を知った男は婚約破棄をして、幼馴染みと結ばれようとするが、それを婚約者が許すはずも無く…、とか。

514:名無しさん@ピンキー
07/02/03 15:01:13 YsZfbkd9
>>513
そういうのをおまいが書くんだな?

515:名無しさん@ピンキー
07/02/03 15:19:47 gXl5KmQV
>513
見事な発想力と妄想力だ
ぜひともそれをプロットに作品を書き上げてくださいませ

ところで話は変わるが
ある職人様に○○ばっか書かないで△△と□□の続きを書いて
とせがむのはルール違反なのだろうか?
学園百合モノと異種族幻想モノが不足気味で禁断症状が出そうなのだが

516:名無しさん@ピンキー
07/02/03 15:24:47 cUs2FcQ+
>>513
そのプロットで書いてみようかな・・・・、と思ったけど文章力が無いのでやめておこう


517:名無しさん@ピンキー
07/02/03 15:34:04 lvGDJhgE
>>512
GJ!
ついにこの時が……wktkが止まらない!

>>515
作者様は自分のペースでやってんだから急かすようなことはせんほうがいいと思うが

518:名無しさん@ピンキー
07/02/03 17:57:11 hQGmdxmx
>>515
自分の趣向だけしか考えないクレクレは、荒れる元になるからやめれ
いい大人ならそこらへん分別つけないと

519:名無しさん@ピンキー
07/02/03 18:05:54 ZNNYqvep
サウンドノベルを作ってくれる奴いないのかな

誰かまとめの作品の全部をサウンドノベルで読めるようにするんだ

520:名無しさん@ピンキー
07/02/03 18:32:01 bq3CJqeD
>>519……お前はなんて献身的な住人なんだ
わかった、そこまで言うなら全てお前に任せる

521:名無しさん@ピンキー
07/02/03 18:33:34 yXV9rP+K
サウンドノベルツクールとかあったな、昔。

522:名無しさん@ピンキー
07/02/03 18:49:51 nMoPt/hR
そういやサウンドノベルを丸々作ってくれた神も居たな、昔。

523:名無しさん@ピンキー
07/02/03 18:55:58 iEFoRZOZ
立ち絵さえ何とかしてくれれば、サウンドノベル作れなくない。まぁ、かまいたちみたいな奴でいいなら立ち絵もいらんが。

ただ、作るにしても仕事が今詰めだから、時間かかるとオモ。

524:名無しさん@ピンキー
07/02/03 19:01:21 rgsymKaW
まあ、有志で金を集めてプロの絵師さんに書いてもらい
完成度の高いサウンドノベルを作ることは夢ではないがなww

コミケで売れば話題になることは間違いなし?
前に張られていたヤンデレの同人即売会なら少し売れるのかな



525:名無しさん@ピンキー
07/02/03 19:11:59 HtlxGwDs
コミケに夢を見るのは止めようぜ
修羅場スキーは特殊な嗜好なんだから

526:魔女の逆襲16話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/03 19:33:31 K5fpEQNK
 早百合は廊下を歩いている。キンコンカンコンと三時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り、生徒たちの喧騒が消えて廊下には人影は居なくなった。
「はじめてのサボりになるわね」
 早百合はそう呟く。早百合の無遅刻無欠席の目標、崩れ去り。しかし、いまはそんなことはどうでもよかった。別に無遅刻無欠席だからって欲しくもない皆勤賞が貰えるだけだ。
しずるはなるべく教師に見つからないように、目立たない通路を歩いていた。
 早足でカツカツと足音を響かせ、しずるの姿を探していた。
 魔女。早百合はいますぐ魔女に会いたかった。
 廊下を歩いて、ふとした瞬間に止まりきょろきょろと見渡してみる。そして誰も居ないことを確認するとまた歩き出す。神出鬼没のしずるだ。いつも授業中どこに居るのかはよくわからない。
しかし、しずるを探しつつ早百合はあるところへ向かって歩いていた。
「茶道室……」
 階段をちょうど校舎の三階のはじっこに位置する開かずの間。早百合にはしずるがいそうな所はそこしか知らない。唯一しずるが案内してくれた場所だ。
 教室のある二階から一階分昇る。特殊教室の近くになってくるとさすがに教師の姿は見えなくなり、薄暗く人気のない茶道室の前は不気味だった。
 しずるが返すと思わないが、茶道室の戸をノックしてみる。
 面接練習のように中指の関節だけでのノック。
「……」
 反応は返ってこなかった。
 まぁ、予想通りだ。早百合は胸ポケットに入れていた茶道室の鍵をとる。鍵穴に差し込むとちゃんと奥まで入った。偽物ではないようだ。ぐるりと回す。カチャと軽い音がしてドアのロックが外れた。
 戸を開ける。居ない可能性も高かったが、早百合は勘で居ると確信していた。
 靴を脱いで畳みの上にのぼる。畳の匂いが漂う茶道室。茶道室に人影は無かった。ただ、六畳分の畳とちいさな釜があるだけであった。
 しかし、暖房はつけられていた。備え付けのエアコンがふうふうと暑い息を吐いて部屋をあっためている。普段この部屋には誰も入らない。しかし、暖房が付いているということはしずるは今日この部屋に来ていたということである。
「………」
 とりあえず学校に来てない可能性は排除してもよさそうである。
 しかし、どうしようか。このまましずるが来るのを待つか、それとも戻って授業を受けるか。三時間目はサボってもあまり自分には支障がないが四時間目は体育のマラソン練習で参加しなければ後でキツい罰をうけることになる。
 待っても一時間か。戻って授業を受けるのもいいが、いまさら帰ってもしょうがないだろう。それにねねこの手前、あまり顔を合わせたくない。
どんどん顔を合わせたくない人が増えてる早百合である。これも全部鈴のせいだ! 早百合は悪態をついた。
 とりあえず、この部屋はあったかいし座って待つかと早百合は足を折り、畳の上に足を崩して座ろうとして、
「ん?」
 茶道室にある小さな押入れの引き戸が少し開いているのを見つけた。なんとなく、早百合はその引き戸のところまでひざ立ちで近づいてみる。
「くー……くー……」
 中から寝息が聞こえていた。めちゃくちゃ平和な寝息である。
 早百合はもしやと思いつつ、ほとんど確信した状態で引き戸を開けた。
「……しずるさん」
 やっぱり、と言ってはなんだが。案の定そこに居たのは魔女こと紅行院しずるだった。
 体操服にスクール水着、そして首にペンギン柄マフラーといういでだちのまま、半畳分のスペースの押入れの中で体育ずわりのまま寝ていた。
 早百合は頭を押さえる。丸まったまま寝息を立てるしずるの顔はまるで天使のように美しく、揺り起こすと福を持って逃げ出しそうなぐらい優しげで儚げだった。
「……しずるさーん」

527:魔女の逆襲16話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/03 19:34:08 K5fpEQNK
 早百合は廊下を歩いている。キンコンカンコンと三時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り、生徒たちの喧騒が消えて廊下には人影は居なくなった。
「はじめてのサボりになるわね」

 ただ、早百合は真面目にしずるの肩をつかむとゆっくりと左右移動を繰り返した。片方の肩に重心をかけるたびにしずるの頭ごとゆらりと重しのほうへ移動する。
 一分ほど、右左に揺れていたしずるの頭だったが、まどろんでいた意識も徐々に覚醒してきたようで早百合の顔に視線を合わせる。
「おはよぅ、鞠田早百合」
「おはよう。しずるさん」
 しずるさんは眠そうな目をこすりつつ、起こした相手である早百合を嬉しそうな表情で迎えた。来てくれて嬉しい、といった表情だ。
 対する早百合の顔はすこし固かった。
「やぁやぁ、いつでも来ていいと言ったがこの時間に来るとは思わなかったよ。すまないな、こっちはおねむしていたもので何も迎える用意はできてないぞ」 
「見ればわかりますよ。別にそんなのいりません。なんで押入れの中で寝てるのかはわからないですけど」
「ふぅむ、しかし今は三時間目のはずでは? サボりかい? ダメだぞ。授業に出て勉強しなければ学校に来る意味などないぞ」
「普段授業なんて出ないしずるさんが何言ってるんですか。説得力ありませんよ」
「……なんだか、今日はやたら言葉にとげとげしさが感じられるのだが、鞠田早百合。どうした? 図書館のほうでも紛失したのか?」
「違います」
「むぅ……、寝起きはボケがうまく浮かばないか」
 しずるはひざ立ちで外へ出ると、むうと腕を組んで唸った。
「なんで、今日もそんな格好で?」
 早百合は聞く。しずるの格好は半そでスクール水着の体操服のクセに今日はマフラーまで巻いている。
 そういえば、早百合はしずるのマフラーを見たのはコレが始めてである。待て……、いや初めてのはずだ……。思い出した。たしかこのマフラー、どこかで見たことがある。夢の中。夢の中だ
 ペンギン柄のマフラーなんてなかなか無い。それなのにどうして私は現実のとおりにペンギン柄マフラーをした魔女を見ることができたのだろうか。単なる偶然か?
 そうではないのなら。……鈴が見せた? 
 夢の中でしずるがこのマフラーをしていたシーンはなんだったか。思い出そうと早百合は頭をひねる。どこかに出てきた……。
 たしか、……しずると良樹がキスしていた時……。早百合が幼子のまま、しずると良樹の蜜月を見ることしかできなかったあの夢。 
ひとつの仮説が浮かぶ。……あれはもしかしたら夢ではなく現実ではないのか?
現実で起こった事実を、私が夢としてみていたのでは? 夢が現実を映したのか?
もし、これが……鈴の力だとしたら。早百合は鈴の力に改めて恐怖が湧いた。
 この鈴は、もしかしたら私をどこまでも追ってくるのかもしれない。私はもう逃げられないのかもしれない。
「鞠田早百合?」
「え、あ?」
「どうした? 君が質問したから答えたが、私の回答をちゃんと聞いていたのか?」
 しまった、ずっと考え込んで聞いてなかった。
早百合は自分は何を質問したのか思い出そうとする。深く考え事をすると前後の記憶が消えると言うのは本当のようだ。自分は何を質問したのだ。なにかを思ってマフラーにつながってたから……。
「では、もう一度言おう。昨日夜巫女装束を着ながら町を闊歩……」
「あ、大丈夫です。聞いてましたから」
 あまり重要な回答じゃなさそうだったので、早百合は嘘をついて打ち切った。
「やはり、なにか刺々しいぞ……」
 しずるは眉をひそめて言った。そうかもしれない。早百合は自分でもそう思う。なにか、自分の中でしずるへの対応が変わってきている。
 いや、そんなことはない。しずるは親友だし、鈴はいまは無いのだ。


528:魔女の逆襲16話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/03 19:34:59 K5fpEQNK
 りぃん

 それでも……。鈴の音は頭の中でずっと響いている。
 そんな早百合を、しずるはひざ立ちで早百合を見ていた。早百合がその視線に気付いて顔を向けるとしずるは真剣な表情で鴉色の瞳で貫くように見ていた。
「本気で、なにかあったのか? 鞠田早百合。君の心が乱れてるぞ」
「……」
 一瞬だけ、早百合はしずるに全てのことを話そうかと思った。
 しかし、しずるの顔を正面から見据えるうちに……そんな思いは頭の中で崩れてしまっていた。
 そして、早百合が口を開いた瞬間。出てきたのはしずるを責める言葉
「どうして、交際をばらしたんですか?」
「ん」
「どうして、クラスメイトに交際をバラしたんですか?」
「……昨日のことかい?」
 しずるはきょとんとした顔で早百合を見ていた。
「昨日、クラスメイトにバラしましたよね」
 ねねこの言葉を無視したように出ていった早百合だったが、紀要はちゃんと聞いていたようである。早百合はそれなりに優秀だった。
「別にバラしたつもりはないぞ。ただ私には恋人が居るとしか言ってない。で、恋人は君のクラスの中に居ると……」
「バラしましたよね?」
 しずるはふふんと笑った。
「問題ないと思ったからだ」
 やはり、しずるはバラすつもりでやっていたようだった。
「どうして問題ないと?」
「恋人同士なのだし、宣言してみたかったのだよ。それに、この学校で交際してるカップルなんて何組も居るぞ? 全てのカップルが隠しているわけじゃないしな」
「良樹はあなたと付き合っていることを隠してたんです」
「そうか、兼森良樹は私に遠慮してたのかな? ふふふ、私ならかまわんというのに」
「そんなわけありませんよ。あなたのことそんなに気にかけるほど良樹は気遣いがいい奴じゃありません。空気読むの下手ですし」
「ふぅむ、兼森良樹にとっいては耳が痛い幼馴染の君の意見なのだからそうなのだろう」
 おさななじみ。何故かしずるにそれを言われたくなかった。
「そうです。幼馴染です。だからこそ良樹のことは多少は知っているつもりです。だからこそわかるんです」
「ほぅ」
「良樹は、目立つことや注目されることが苦手なんですよ。小学校の頃の発表会なんてどんだけドジしたか……。だから隠してたんです。あなたと付き合っているって言うことがどれだけ大事件かわかっているんですか?」
「………」
「魔女と呼ばれてるんだからわかりますよね?」
 早百合は言いながら自分で思った。こんなに魔女相手に喋れるとは思わなかった、と。
 しかし、一方で思う。私はなんでこんな些細なことで激昂してるのだ? これぐらいのこと、そんなに怒ることではない。少なくとも、三時間目をサボってまでしずるを探してまでやることじゃないだろう。
 もしかしたら…………私は魔女を罵倒したいのか?
 良樹のことなら私のほうが知っている。良樹の気持ちをわかっていないあなたなんかに良樹と付き合う資格は無い。
 そう魔女に罵倒したいんじゃないか? 本当は。
 早百合の言葉を聞いていたしずるは一言
「わかるよ」
 と呟いた。


529:魔女の逆襲16話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/03 19:35:56 K5fpEQNK
「私の理解が足らないのと……、わたしが調子に乗ってたことが原因だろうな」
 しずるは少し自嘲したような表情で言った。
「恋人自慢がしたかったんだよ。みんなに自分の恋人を紹介して、良樹の素晴らしさを知ってもらいたかった。しかし、それが良樹を傷つけることになるとは………。ここまで友人を作ってこなかったツケかな」
 しずるは本当にいい人だと思う。
やりたいことは自分でできる限りやろうと努力し、自分が反省すべきことはすぐに認めて謝罪する。
 それに、早百合はしずるの気持ちがわからなくもなかった。恋人が居ればそれを誰かに紹介して優越感を持ちたい。早百合でも普通に思うことだ。
「君のように、私に注意してくれる者というのは私にとって宝物そのものだ。イエスマンやイエスガールばかりでは私も腐ってしまう。教えてくれてありがとう、鞠田早百合。これからは兼森良樹のことをもっと理解しようと思うよ」
しかし。早百合はもう、そんなことはどうでもよくなっていた。
「注意してくれて感謝する。私と良樹のために、言ってくれてありがとう」

 りぃん。

「いえ」

 りぃん。

「そんなつもりじゃありませんから」
 そんなつもりじゃない。
 私は、しずると良樹のために、こんなこと言ったんじゃない。
 自分のため。自分の感情のため。自分が、魔女に優越感を持ちたかった為!

 頭の中に浮かぶ映像。それは夢の世界で突きつけられた現状。
 ベッドで交わる良樹としずるの姿。
 そしてそれを見ることしかできない自分。
 やっぱり、もう一日休むべきだったのかもしれない。
しずると良樹。二人の姿を見ていると蘇ってくる。
封印したはずの負の感情が。ふつりふつりと、しかし急速に増大して。

 りぃん。

 宣言します。

 りぃん。

 私は、あなたと良樹の間なんて。応援していない。

 りりりりぃぃぃん

「じゃあ、私はこれで失礼します」
 そう言うと、早百合はさっさと立ち上がる。
「おっ、どこへいくのだ? まだ三時間目が始まってすぐだぞ。とりあえずコーヒーでも飲んでいきなよ」
「結構です」
 早百合はくるりと体を180度反転し、しずるに背を向けると茶道室のドアを開けた。脱いだ学生靴を入り口で履きなおす。
 あまりにも早い行動にしずるは何かを感じたようだ。焦った表情になり、早百合に詰め寄ろうとする。
「やっぱり、なにか怒ってないか? ……なにかあったのか? 鞠田早百合!」
 うしろからかけられるしずるの声。しかし早百合は立ち上がろうとして足がしびれて動けなくなっているしずるに一瞥することなく茶道室を出たのであった。

 早百合のポケットの中には、何故か家に置いていたはずの鈴の付いた携帯電話が入っていた。
 それに気付く早百合。携帯電話に付けられた鈴。早百合は力任せにそれを掴むと、リボンごとぶちりと引き抜いた。
 鈴だけが早百合の手に残る。燕尾色の鈴。風もないのに動き小さな音を奏でている。しかし、早百合はそれを見てももうなにも驚かなかった。

 りいんりぃん

 早百合は鈴を握り締めながら大股で歩いていた。
 この鈴と共に崖から投身した、数十年前に生きた女のように。
(続く)

530:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/03 19:36:27 K5fpEQNK
 早百合覚醒。です。ここまで来るのに長かった。
 筆の進みが遅くてあっぷあっぷです。

531:名無しさん@ピンキー
07/02/03 20:40:56 B67pJ3qn
GJ!!めくるめく修羅場の世界へようこそ、早百合ん!!
今は物語全体のどの位置なんでしょうか?作者様としては。五合目くらいですか?

532:名無しさん@ピンキー
07/02/03 21:07:07 fOuBSj07
早百合覚醒キタ━(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)⌒Y⌒(。A。)⌒Y⌒(゚∀゚)━!!!
>>512
ついに最終決戦か
天を焦がすような激しい嫉妬も良いがナナミのヤキモチみたいな嫉妬も好きだぜGJ!
>>503
赤い瞳ktkr!
だんだんと修羅場へ向かって来ているな

533:名無しさん@ピンキー
07/02/03 21:12:20 hgKIvNKi
>>524
これか。
URLリンク(amane.dyndns.info)
発祥がmixiってのが何か微妙な気がするが……この試みはすばらしい。


…………間違っても作者氏の了解を得ずに勝手に売るなよ?

534:名無しさん@ピンキー
07/02/03 21:47:51 rgsymKaW
>>533
作者本人なら自分の作品を自由に使えるぜ

535:名無しさん@ピンキー
07/02/03 22:07:42 ONMts+xu
ストーカー女と寝てしまった場合後の状況について

ストーカー女が彼の彼女になっていると思い込んでそうで恐い

536:名無しさん@ピンキー
07/02/03 23:11:20 +kIFhd4/
魔女の逆襲はたまに入るリアルなネタが気に入っている。
ところで>>526-527の出だしがダブっているが527のは余計かな?
それと風邪の欠席ですでに無遅刻無欠席にならないのでは?

537:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/03 23:26:06 K5fpEQNK
>>536
うわっ。本当にミスだ。
すいません、早百合の無遅刻~の一文を削除の方向でお願いします。

リアルなネタってなんだろう。

538:君という華 1.7 ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 00:02:30 RDIfopqN
 酷い吐き気。ズキズキと尾を引く頭痛。眩暈がする。体調は、最高に最低だ。それはもう、生理の時だってこんな気分にはならない。今日は人生において最悪最低の日だ。孫の代まで言い残してやる。
 だいたい、あの二人……ううん。あの二匹の豚がいけないのよ。あたしと亮君の前をちょろちょろと。目障り極まりない。害虫は早急に駆除すべきよね。あたしと亮君の為にも。
 でも、どうやって駆除しよう。撲殺? 毒殺? んー、どうもピンと来ない。
 それに、日本の警察はなんだかんだと言っても優秀だと聞いたし。あんまり目立った行動をすると、すぐに逮捕されてしまう。それはダメ。亮君と離れちゃう。
 きっと亮君は泣いちゃうわ。亮君、あたしがいないと不安そうな顔、いつもしてるもんね。うふふっ。あたし、亮君の事なら何でも知ってるよ。亮君の事、一番好きなのはあたしだよ? 気付いてるよね? えへへ。
 ああ、それにしも腹が立つ。早くあの雌豚二匹を抹殺したい。そうすれば、亮君はあたしのもの。うふふっ。今度は誰にも邪魔されないように、首輪をつけておかないとね。
 首輪をつけた亮君……イイ。すごく可愛い。ついでに、犬小屋みたいなものも作ってあげよう。最高だ。一気に気分が昂揚としてくる。
 そうだ。あんな薄汚い豚どもの事を考えるのは止めよう。無意味だ。それより、亮君の事を考えた方が、何億倍もマシってものだわ。
 ああ、亮君。その可愛い顔を、あたしの前だけで苦痛に歪ませたい。きっと可愛いわ。
 ほら、亮君。こんな変態さんな格好しながら、反応しちゃったの? こんな大きくして・・・・・・ふふっ。悪い子にはお仕置きが必要だわ。亮君はそんなはしたない子じゃないでしょう? うふふふふふふふ。
 ああ、楽しい。亮君を飼いならせるのは、世界中捜しても、あたしだけだよ、亮君。気付いてるよね? 亮君、あたしの事いつも見てくれてるもんね。
 いいんだよ。気にせず、亮君の為なら夜のオカズにも喜んでなってあげる。本当、亮君はあたしの事が好きなんだねあははははは。
 えへ。えへへ。亮君、そんな媚びた目をして、許して欲しいの? でもダァメ。そんな身体から他の女の匂いさせている犬は、許しあげないよ? うふふ。
 これからは、他の女について行っちゃダメだよ? それと、今日からは朝三回、夜七回はセックスしてもらうからね? 早くその酷い匂いをあたしの匂いに変えないといけないからね。
 無理、なの? 無理じゃないよね? あたしの事愛しているなら、それくらい平気で出来るよね? うふふ。
 いつか、本当にこんな日が来るかな? ううん、絶対に来る。来ないなら、迎えるまで。
 だから、あたしは強くならなきゃいけない。あの雌犬二匹に勝つくらい。いや、世界中の亮君を狙いそうな人間全てに勝てるくらいに、強くならなきゃ。
 これは、亮君と結ばれる為の、宿命。決して逃れる事は出来ない。
 上等だ。それくらい、あたしの敵じゃない。邪魔するもの全て、叩き潰してやる。容赦はしない。
 潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して潰して。
 そうして、あたしの世界は完成するの。そうでしょう、亮君?

539: ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 00:07:01 RDIfopqN
以上、幼馴染編でした。後輩と比べてこの異様な短さはなんでしょうね。
ダメだ眠いんだだからその釘バットをしまっt(撲殺


540:名無しさん@ピンキー
07/02/04 00:13:04 iz8guG6t
>>539
何だこの幼馴染……

異常なくらい可愛過ぎるだろこれは……

541:名無しさん@ピンキー
07/02/04 00:22:59 Uxq3NYzV
40x40で4枚、原稿用紙16枚ぐらいを目安にして投稿している俺にとっては
毎回毎回一話分を一日で仕上げるのはだんだんと辛くなってきたりもするな

一体、原稿用紙何枚ぐらいで投稿すればOKですかかね?

542:名無しさん@ピンキー
07/02/04 00:30:25 AqY5AMdz
>>541
自分のペースで良いんじゃね?
俺は携帯で3000文字以上を目安にしてる
原稿用紙だと、多分十余枚くらいだと思う

543:名無しさん@ピンキー
07/02/04 00:39:53 PvaSwnfp
>>539
GJ!
幼馴染の愛の深さに感動した

544:名無しさん@ピンキー
07/02/04 00:40:37 kXjusumE
>>541
気、気にしたことないよ…

545:名無しさん@ピンキー
07/02/04 00:40:40 iz8guG6t
自分のペースで十分ですよ
無理なさらずに好きなときに好きなだけ

546:名無しさん@ピンキー
07/02/04 01:15:52 4gjTfpJm
こんな子に首絞めてもらいたいなぁ…。
こんな趣味人に話せねぇw

547: ◆rgd0U75T1.
07/02/04 01:18:32 4gjTfpJm


548:名無しさん@ピンキー
07/02/04 01:30:14 tLr6/p3c
一瞬キモ姉かと思った

549:名無しさん@ピンキー
07/02/04 05:08:07 dan933jb
犬エンド という単語が頭をよぎった

くそぉ・・・みんな可愛いなぁ・・・・!!!!!

550:愛娘の恋 ◆N.P5FQhRG6
07/02/04 05:48:44 /jOvSEX0
「浩一、今日のご飯何がいい?」

携帯電話で今晩のメニューを美風が聞いてくる。

「……おまかせで」
「いつもそれしか言わないんだから」
「いや、美風の料理はなんでも美味いからさ」
「もう……じゃあ私材料買ってから帰るから、ちょっと遅くなるかも」

わかったと言って浩一は電話を切り、バイクを発進させる。

美風とは三年前から交際し始めた浩一の彼女だ。
あることがきっかけで知り合い、そして美風から告白された。
しかし美風の両親はこの交際に反対した。
彼女の父親は大会社の社長で、美風は社長令嬢というやつだ。
美風が交際のことを両親に話したとき父親はかなり激怒したらしい。
美風が当時十九歳で大学生であったこと。実は結婚させようとしていた相手がいたこと。
そして何よりも交際相手が気に入らないこと。

そんな父親に美風も激怒したらしく、父親の反対を無視して浩一の済むアパートにやってきた。
バッグ一つを片手にやってきた美風に浩一は驚いた。そしてすぐに帰そうとした。
だが美風の決意は固くここに置いてくれないなら死んでやる、みたいなことを言いだし結局一緒に住むことになった。

浩一はアパートの駐車場にバイクをとめ、部屋へと向かう。
浩一の部屋は二階にある。

551:愛娘の恋 ◆N.P5FQhRG6
07/02/04 05:51:05 /jOvSEX0
「……ん?」

階段を上がるとドアの前に一人の知らない少女がいた。
……知らない?
浩一は何故かその少女に見覚えがあった。
だがどこで会ったのか思い出せない。

「あの……ウチに何か用?」

少女に声を掛けるとその少女は見上げて浩一を真っ直ぐ見た。
じーっと浩一の顔を見つめている。
その表情からは何とも言えない感情が伝わってくる。

「…………あなたが神木浩一さん、ですか?」
「あ、ああ、そうだけど……キミは?」
「わたしは……」

名前を尋ねるとそのままうつむき黙り込んでしまった。

「あー、えーっと、……キミ一人?親は一緒じゃないのか?」
「……親は……………………た…です…」

うつむいている上に小声なので少女の声は全く浩一に聞こえない。

「あの……もう一回言ってくれる?」

すると少女は下を向いていた顔を上げ、

「親は……あなたですっ!!!!」

顔を上げた少女の目から涙が流れている。

「………………えっ?」

少女の言ったことが理解できなかった。
いきなり親が自分と言われて理解できるはずがなかった。

「わたしは……あなたの…………娘です」


552: ◆N.P5FQhRG6
07/02/04 05:55:13 /jOvSEX0
とりあえず娘のやつを最初から書いてみました
設定とかかなり変更してしまいましたけど

553:名無しさん@ピンキー
07/02/04 09:04:51 MJF1R1KE
>>552
GJ!

口下手なのでコレだけで勘弁・・・ね?

554:名無しさん@ピンキー
07/02/04 10:39:28 QIz1CJhz
GJ!
お願いだから完結するまで物語書いてね

555:名無しさん@ピンキー
07/02/04 11:57:16 rroPq7Mx
GJ!
俺にこれをいわせたのだからこれはかなりの良作になるだろう

556:『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46
07/02/04 12:57:26 pE824ulL
「ふぁぁぁぁ……」
 くそう。昨日はやたらと翔子のやつが興奮してたから眠れなかった。アイツのテンションが高いとこっちにまで影響が来る。
「ふぁぁぁぁ……」
 学校に向かう間、ずっと欠伸ばっかしている。俺の寝不足が翔子にも伝わっているのだろう。登校途中、ずっと申し訳なさそうにしている。
「その……ごめんね?ショウ~?」
 ですり寄って謝ってくる。普段はお高くとまり、強気な翔子だが、俺に迷惑をかけたと思うとこうやって甘えた声で謝る。まるで猫のような奴だ。
 こいつの影響かどうかわからないが、俺の女の好みが猫みたいな女になってしまった。いいよね、強気反転甘えっ娘。
「ふぁぁぁぁ……」
 学校に着くまで計十回の欠伸。
「ごめん!ごめんね?ショウ、ほ、本当に許して?」
 翔子から計五十回のごめんを聞いた。そんな翔子に「うん、うん。」としか言わない俺鬼畜。
 そんなささやかな幸せに包まれた朝は、教室に入ったとたんにぶち壊される事になった。
 「いやったはぁー!!翔ー!つ、い、に!俺の人生エロゲ化計画が実行されることにったぁぁ!!ふげあふぁ!?」

557:『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46
07/02/04 12:59:07 pE824ulL
「ま、少しは落ち着けよ、圭太。」 
「ふふ、さ、さすが。高速の右を持つ男。相変わらず見えなかったぜ。」
 今、目の前で地面に伏した男、秋川圭太。(自称)俺の親友だとか。いつも俺に抱き付いて来る度、翔子のストレートに沈む。
「で?今日は何を思い付いたんだ?ん?前は『エロゲ主人公みたいに図書室で勉強する』とかいってたよな?」
「ふふ、あの時は図書室の隅で寝ちまってな。誰にも気付かれないで閉じ込められちまったい。」
 言ってる事はキモいが、顔は恐らく学校一のかっこよさだろう。まぁ、性格がコレだからモテはしないが。
「ふふふ……ぐふふ、つ、ついに、今日!今まで立てたフラグが!ついに起動する!!」
 鼻血を出しながらも、万円の笑みで立ち上がる。ここまで清々しい笑顔。どうやら今回は本気のようだ。
「ふふ、実はな、今日このクラスに転入生が来るのだよ。……しかも女の子、噂では美人!……ああ!来たこれで全ては一つに繋がった!謎はとべてすけた!」
「つまりこういう事か?『転入生というのは、昔お前が結婚の約束をした幼馴染み』、と。」

558:『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46
07/02/04 12:59:54 pE824ulL
「その通りでございます。ちなみにそこは、許婚やいつの間にか出来た義妹も可」
「はぁ、馬鹿馬鹿しい。それこそ正にエロゲじゃねえか。そんな人生あってたまるか。」
 一人悶えている圭太を放置し、自分の席に向かう。窓際の一番後ろ。あー、今日も暖かい、ベストポジションだ。
「翔、やっぱりアイツとの付き合いやめたほうがいいよ。翔まで変態扱いされちゃう。私、そんなのやだよ?」
 翔子の言葉に、首肯する。とはいえ圭太も悪い奴ではない。ただの愛すべき馬鹿なのだ。
「圭太君、キモいから消えて。」
「ていうか、学校やめたんじゃなかったの?」
「君のせいでこのクラスが変質者扱いなんだけどー。」
 哀れ圭太。クラスの女子から罵倒を浴びる。『かっこいい人に触られてもセクハラではない』という理不尽も、圭太には当てはまらないだろう。
「ホームルーム始めるぞ。こら圭太!なに一人で騒いでんだ。さっさと席に着け。」
 担任が入って来る頃には、圭太はすでに半泣きだった。しょーがねーなー、昼飯でも一緒に食べてやるか。翔子が少し不機嫌になるかもしれんが、仕方ない。

559:『貴方と私。いつもいっしょ。』 ◆cLdiSDqJ46
07/02/04 13:00:59 pE824ulL
「よーし、じゃあ早速だが……うん、みんな知ってるかもしれんな。今から転入生を紹介する。入ってきてくれ。」
 担任が呼び掛けると、前のドアが開く。正直、転入生が来てもなんら変わりないので、興味が無かったが、あの圭太が美人だと騒ぐくらいだ。面でも拝んでおくか。
「あの、オンナァァァァーーーー!!!」
「ん?!」
 俺が見るよりも先に、翔子の怒声が響く。慌ててその生徒を見ると……
「ああっ!?」
 思わず俺も叫んでしまった。クラスの皆から視線が向けられる。しかし気にしてはいられない。その転入生は……
「おお、翔、この子はお前の従姉妹らしいな。皆川静流。みんな、よろしくしてやってくれ。」
 ザワザワ…すっげー美人……
 ザワザワ…ウチのクラス、いや、学校一じゃないか?
 クラスのみんなが騒いでいたが、俺はまだ驚きから復帰していなかった。
「みなさん、はじめまして。ご紹介された通り、皆川静流と申します。そちらの皆川翔さんとは、相思相愛の仲です。」
「なっ?」
「「「「「「にぃーーー?!?!」」」」」」
「冗談です。」
 そ、そうだよな。よかった、冗談で……
「翔!アイツを、あの女狐を殺す許可を!!早く!ハリー!!」
「翔ー!キサマァーー!俺の静流ちゃんになにをしただぁー!!!」
 ……約二名、本気にしてるやつがいるが。

560:名無しさん@ピンキー
07/02/04 14:55:13 gf1quLpx
>>559一点だけケチを付けさせてくれ。
投下が終わったらその旨を伝えて欲しい。
でないとGJと書き込めないだろ?

561:名無しさん@ピンキー
07/02/04 15:10:57 pE824ulL
そうでした、すみません。
m(_ _)m

562:名無しさん@ピンキー
07/02/04 15:19:08 rroPq7Mx
よし。では気をとりなして
グゥゥゥウゥゥッドジョオオォォォオブゥゥゥッ!!

563:名無しさん@ピンキー
07/02/04 15:53:31 u2C35XDX
>>559
展開に口を出すつもりはないが

他の神の皆様は事前に投稿すると断ってからやっています
投稿終了になるとコメントを付けて終了の合図を知らせることが
暗黙の了解になっておりますので


さてと


            (⌒
       ,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,,  
       i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
      l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l
.       |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
      |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| GJだぜ
      |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
.      |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;';;;;;/l;;/|;;|
      !、!.!、;i'l/:|ノ`l/、|ノ
      /:: :: :: :: :: :: :: :: :: \
      ,!: :: :: :: :: :: :: :: :: :: /::'i
      l:: :: :: :: :: :: :: :: :: :/;:::::::|
.     |:: :: :: :: :: :: :: :: :: i/:::::::::|
    |:: :: :: :: :: :: :: :: :: |::::::::::::::l
     |:: :: :: :: :: :: :: :: :: :T´ l ̄l
.    | :: :: :: :: :: :: :: :: :: ::|  |  |          人_
    | :: :: :: :: :: :: :: :: :: :: |  |  |   _, , ...:-:-┐"∨
    |_:_:_:_:_:_:__:|  ,!、 `T´|    _/
     |;';';'';'';;''::''::''::' :: :: ::|  l,,i__,.,.!´!,:-‐:''´
     |:: ::l::`':Tー:: :: :: :: ::|
     |:: ::l:: :: :|:: :: :: :: :: ::|
    \:_:_;;,-!、:: :: :: : ,:‐,'
       |; ; ;|`ー'T´' ' |
      i'    i'   i   i

564:名無しさん@ピンキー
07/02/04 17:06:24 UOuj+rUo
他の神にも言える事なんだけど
もし良かったらでいいから
タイトルに話数もつけてくれると有りがたい

565:名無しさん@ピンキー
07/02/04 17:58:26 88C4oD/e
>>564
それは、「今日の投下は○レス分使いますよ」という意味での話数ですか?

566:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:00:28 rroPq7Mx
>>565
おそらく>>564の言いたいことは赤いパパ氏のようなものをいってるのだと思う

567:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:12:16 86dcrZHK
 927_   本当にあった怖い名無し本当にあった怖い名無し    V5jKzOvy0   2007/02/04(日) 04:05:49
    お兄ちゃん? お兄ちゃんだよね?
    お兄ちゃんにまた会えたんだよね?
    お兄ちゃんが大事にしてた猫を飼うことになったたんだよ?
    お兄ちゃんのベットでいつも寝るようになったんだよ?
    お兄ちゃんが可愛がってたみたいにゴロゴロいってるよ?
    お兄ちゃんの部屋は今でも変わらないよ?
    お兄ちゃんが猫と一緒に寝ていたのは知ってたよ?
    お兄ちゃんと寝たかったのは私なんだよ?
    お兄ちゃんが私よりも猫を大事にしてたのは分かってたよ?
    お兄ちゃんが猫と遊んでる時は私のことを忘れてたよね?
    お兄ちゃんは猫ばっかり可愛がってたよね?
    お兄ちゃんは私のことを嫌っていたんだよね?
    お兄ちゃんの子供を産んだから嫌いになったんだよね?
    お兄ちゃんの子供も大きくなって猫と遊んでるよ?
    お兄ちゃんとも遊びたいって言ってるよ?
    お兄ちゃんはなんで逃げたの?
    お兄ちゃんに会いたいんだよ?
    お兄ちゃんに会いたくて死んだのに?
    お兄ちゃんは何処に居るの?
    お兄ちゃんの猫も何処に居るの?
    お兄ちゃんの子供と一緒に死んだのに?
    お兄ちゃんは今も生きてるの?
    お兄ちゃんと大好きなんだよ?
    お兄ちゃん ?お兄ちゃん? お兄ちゃん? お兄ちゃん? お兄ちゃん?

568:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:26:36 zuQrYZ5/
いい加減飽きたと思ってこのスレ見るの止めても
ある日突然衝動の如く嫉妬が恋しくなるんだよな
どうにもならんなこれは・・・

569:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:42:21 aE+nSUJS
投下します。

570: ◆z9ikoecMcM
07/02/04 18:42:38 88C4oD/e
>>566
了解。

と言っても、二月半ばを過ぎないと、投下できなさそうです。
RedPepperはきちんと完結させますので、ご容赦を。

571:魔女の逆襲第17話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:43:19 aE+nSUJS
 それからの一週間。
 早百合の行動は以前とは歴然としていた。

 朝五時。
 目覚ましの鳴る音に、早百合は敏感に反応し目を覚ます。
 ベッドの上の自分は下着一枚で体中がべとべととしていた。クローゼットにしまっていた制服を取ると、そのまま風呂場へ行きシャワーですべて洗い流す。液体が乾いてぱりぱりの肌をお湯がはじいていく。
 五分ほどで行水を済まし、制服を着ると今度は台所へ。外はまだ夜の帳が覆っていて、家中が暗い。電気をパチンとつけると台所に白色蛍光灯の光が落ちる。
 テーブルには昨日用意しておいた鶏のモモひき肉と卵、それに小松菜が並んでいた。
 早百合は『OKAN』と胸に刺繍された母親のエプロンを制服の上につけると、調理用具を戸棚から取り出してそろえる。
 作るのは三色鶏そぼろ。
 卵を菜ばしでとき、鍋に入れてだしと塩・砂糖で味付けをする。中火で熱される卵が固まらないように細やかな作業で早百合はパラパラにしていく。卵そぼろが出来上がると、早百合はそれを小皿へと移す。
 味をみてみる。甘くない。良樹好みの玉子そぼろ。
 次に鶏のモモひき肉を鍋に入れて味を調える、そして両手に装備したチョップステックスで炒めながらかき混ぜて汁気を飛ばす。炒り煮になってゆく鶏そぼろをちょいとつまんで口に含む。味はしっかりとしみこんでいた。
 完成した甘い匂いのする鶏そぼろをお皿へ写す。三人分作ったので結構な量だった。
 そろそろかな? まな板で小松菜を切りながら早百合はちらりと蒸気を噴出す炊飯器を見る。その直後、炊飯器からピーという甲高い電子音が響いた。
 早百合は戸棚から弁当箱を取り出す。赤・黄・そして紺の弁当箱。
 そこに炊飯器から炊き立ての白米をよそった。ほかほかと湯気を放つ米はみずみずしい。
 ご飯の上に先ほど作った鶏そぼろと卵そぼろを盛り付けて、小松菜で色合いを整える。プチトマトを脇にのっけて完成。
 完成した鶏そぼろ弁当は彩り豊かで早百合の料理の腕をまざまざと見せ付けることのできる一品だった。
「珍しいわね。毎日のようにアンタが弁当作るなんて」
「おはよう、母さん」
 自分の作った弁当のできに満足していると、台所にパジャマ姿の母親が自室から入ってきた。
「はい、これ。母さんの」
 早百合は紺の弁当箱を差し出す。まだ湯気が出ているので蓋を閉めて包むことができない。
「あら、どーも」
 母親はふわぁとあくびをかいた。時計を見ると午前六時少し前。母親にしては早起きな方である。
「朝ご飯は私が作るからアンタは新聞とって来て」
「朝ごはんはいいよ。食べてるから」
 嘘。朝ごはんなんて食べてる暇は無い。
「アンタの箸も出てないけど……何食ったの?」
「おにぎり」
「ふぅん、そう」
「包んどいて。それ」
 早百合はエプロンを母親に押し付けるように渡すと、そのまま二階の自室へ行く。
 学生鞄を手に取る。テストまでもうすこし、参考書がいくつか入っているからかすこし重い。学習机の上に置いた携帯電話を掴んで鞄に入れる。
 そして、燕尾色の鈴。
「……これは……もう手離せないわ」
 早百合はそう呟くと、制服の一番胸ポケットに大事にしまった。ここなら絶対無くすことはないだろう。最悪忘れて洗濯機に入れてメリーゴーランドしたらマズいからそこだけ気をつけるべきだ。
 りぃんと鳴る鈴。
 その音で早百合は思い出す。今日見た夢のことを。
 早百合は部屋の隅にある学習机の引き出しを開けた。それも普段めったに開けない小さな引き出しである。というか開けても入れるだけでほとんど出すことの無い引き出しだ。
 中はハガキや小さいパンフレットやDMなどが積まれて入っていた。指をつっこんで中をあさる。一番下に進研ゼミの案内の封筒があるのを見つけた。それを取り出す。
 赤や青といった原色系の封筒は今見るとなにか広告過多のような気がする。これひとつで成績トップクラス! というゴシック体のキャッチコピー踊る封筒。今見ると「そんなうまい話は無いよなぁ」と思うが、
当時は中にあるマンガを見て「一日一時間でマスター」「女の子にモテモテ!」「自信がついてレギュラーに!」という展開にあこがれたものだ。あのマンガは誰が描いているんだろう。
あと関係ないが、学研の付録に関しては何年同じ付録を使ってるんだと常に思う。いまだに『地震のメカニズムをお菓子で学習』とかで『中身はただのゆで卵じゃないか』で『だってそこにはチョコが乗ってないんだもん』とか言ってるのであろうか。ありえる。



572:魔女の逆襲第17話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:44:36 aE+nSUJS
 それはともかく。
 早百合は封筒をふってみる。ゆさゆさとする音。小学生の頃の進研ゼミの封筒をなぜ未だにとってあるのか。
 早百合はこの引き出しは要らないけどなにか役に立ちそうで結局は役に立たないけど捨てるのは少し惜しいものを入れる引き出しというふうに意識している。
 整理なんてほとんどしないから。という理由のほかに、さらにもうひとつあった。
「この中に……」
 封筒を傾ける。口から鍵が飛び出した。鍵には小さなシールが貼ってあり、名前が書いてある。
『よしき』と。
「やっぱりあった」
 早百合はそれを握り締めた。
 夢で見たとおりだ。早百合は呟く。

 彼女が鈴を手放せない理由。それは鈴の秘められた魔力にあった。

 遡るは昨夜の夜。
 夜十二時を過ぎてベッドに入る。
 するとすぐに早百合の体から湧き上がってくるなにか。
「き……きた……きたぁ!」
 待ちわびたように早百合が叫ぶ。
 彼女はすぐにスウェットのパジャマをまくりあげると、素肌と胸を晒して体中の毛穴という毛穴から噴出す汗を肌に塗りまわすように手のひらを動かしていた。
 すぐに体内の温度が上昇していく。首筋やこめかみそして下腹部の血流がぐるりぐるりどくどくと流れる感覚。そしてきゅんきゅんと響くように痒みのような刺激が下腹部をおそってきた。
 そして目の奥に浮かぶ、妄想の映像。妄執。
 早百合の手は別の生物のように蠢き、妄想の刺激を現実として体の刺激にぶつけるように肌を刺激する。
 一週間前と同じ現象。そう、この体の異変は毎日のように早百合を襲っていた。
 妄想に抱かれ、体は火照り、感覚は敏感に、そして何度も繰り返される陵辱。極上の悦楽の檻に閉じ込められたような拷問。
 手を動かして肌を撫で上げるたびに、早百合の脳内は快楽成分が分泌されて、脳内麻薬のように病み付きになってゆく。
 しかし、今の早百合はこの全てを享受していた。
 つまり、全て望みどおりに受けていた。
「よしきぃ! よしきぃ! よしきぃぃ!」
 躊躇無く叫ぶ良樹の名前。なにも考えず本能のまま動く手。胸をとおり、へそを撫でて、敏感な部分をくちゅりと擦る。
「いいよぅ! よしきぃぃ! あの女よりぃ、いいでしょぉ!? よしきぃぃ!」
早百合が悦楽に叫ぶたびに、早百合の心の中は良樹でいっぱいになっていった。そこにもう友情や幼馴染と言ったしがらみはない。
びくりと動く粘膜。
早百合は腰に思いっきり力を入れて、達した。
力が抜ける。脱力感。なにも動けない。
「よしきぃ……」
 ただ、愛しい人の名前だけ呟いて。彼女の意識は落ちた。

 りぃん。

 鈴は従順になった雌犬にはその力を早百合のために使った。


573:魔女の逆襲第17話 ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:45:52 aE+nSUJS
 りぃん。

 夢の中。
 一週間前なら、ここで精神攻撃のごとく何度もしずると良樹の肉体の絡みを見せ付けられる。
 しかし、今の早百合に鈴はそんなものを見せる必要が無いと判断したようだ。それよりも、彼女の劣情をもっと煽ろうとしていた。

 早百合が見ていたのは幼い頃の記憶だった。
 小学生の頃の記憶。
 早百合の部屋で遊ぶ二人。この頃から早百合個人の部屋はあった。もともと早百合は一人っ子だからすでに用意されていたと言うほうが適切だが。
 夕方になってゆく外の景色。日の光が傾き、二人の顔を茜色に染めてゆく。
 二人とも、鉛筆とノートになにやら書き込んで遊んでいたが……、そろそろ帰りの時刻だからだろう。良樹が立ち上がった。 
 そこで、幼い良樹は早百合にあるものを渡した。
 きらりと光る何か。
 そうだ、鍵だ。
 詳細な記憶が蘇る。早百合は思い出した。自分は確か幼い頃良樹から鍵をもらっている。
 たしか、この頃から良樹の親は留守がちになっていた。良樹のひとりで過ごす時間が多くなっていた頃だ。
 そのとき、自分はたしかたびたび遊びに行く名目で良樹の家の鍵を受け取っていた。
 しかし、その鍵は今は無い。なくしてしまったのだ。確かにもらったが……気が付くとなくなっていた。と、いうより、もらってたことをずっと忘れていた。
 小学生の頃は早百合と良樹も頻繁に遊んでいたが、特に鍵が必要になる場面はなかった。中学生の頃はほぼ絶縁状態で交流は無い。高校生になった今はほとんど学校での関係のみだった。忘れてても仕方が無い。
 良樹が部屋から出て行った。早百合は玄関まで下りてそれを見送る。
 そして、幼い早百合は近くにあった進研ゼミの空き封筒に鍵をいれると小さな引き出しの中にしまった。
 そこで目覚まし時計によって早百合の意識は途切れた。

  りぃん。

 鍵はずっと、8年間引き出しの中に封印されていた。
「良樹の家の鍵……」
 きらりと銀色に光るそれは、まるでRPGのラスボスの部屋の最後の鍵のように重要なアイテムに見えた。手に持って天にかざした瞬間早百合の脳内で『たれてててー』という音楽が鳴った気がした。
 それを見て早百合はにやりと笑う。まるで悪戯を考えたしずるのような顔だった。魔女の顔なんて思い浮かびたくないけども。
 早百合は確信する。鈴は夢の中で常に自分に有利な情報をすべて見せてくれていると。
 早百合が鈴を手放せない理由。それがコレだった。
 早百合は鈴のおかげでこの一週間。良樹の行動をすべて把握することができていた。
 良樹と離れている間でも、そのときの良樹のとった行動がすべてが夢として早百合の睡眠中に再生され、全てが筒抜けになっていた。

 りぃん。

 不適に笑う早百合。
 鞄を持って部屋から出た早百合は、台所へ向かうと母親の手によって包まれた弁当をふたつ掴んで、外へ出て行った。
 走る早百合。早くしないとおきてしまう。早百合には小学生の頃のデータしかない。
 早百合の足が向かう先は、まだ寝ているはずの良樹が一人で住むマンションだった。
 (続く)

574:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:46:45 aE+nSUJS
筆が進みません。
いいところですが、やっぱりしばらく休憩を挟みます。

575:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/02/04 18:48:26 aE+nSUJS
追記:
物語の何合目あたりか? という質問ですが、ここまでの話を当初は序盤で終わらせるつもりでした。
しかし、そろそろ物語としても終息させていくつもりです。
ただ、いつぐらいに終えられるか、それはまだわかりません。

576:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:50:38 UOuj+rUo
いつまでも待ってるからちゃんと完結させてね~

577:名無しさん@ピンキー
07/02/04 18:52:36 ZX7De/tP
GJ

578:名無しさん@ピンキー
07/02/04 19:03:24 aCKEUEFb
GJ!
さゆりんがとうとう修羅場に向かって歩き出したな
鈴パワーTUEEEEEE!!

579:名無しさん@ピンキー
07/02/04 19:46:23 az+/VqRb
早百合が一気に攻勢を掛けてきたか
+   +
  ∧_∧  +
 (0゚・∀・)   ワクワクテカテカ
 (0゚∪ ∪ +
 と__)__) +
>>559
GJ!いいよね、嫉妬強気反転嫉妬甘えっ娘

580: ◆z9ikoecMcM
07/02/04 19:48:43 88C4oD/e
よく見ると赤いパパ氏の投下に割り込んでる……申し訳ありません。


581:名無しさん@ピンキー
07/02/04 22:41:00 xihiO0Lo
ネタじゃない…実話だったんだ……!
いいか、なぜ未完成の作品のほとんどが一番美味しい場面で止まっている?
住民の反応も概ねGJの嵐だったにもかかわらず…。そして阿修羅氏…
もうわかったろう!!そう!!監K…
?えっ、ちょっと散歩に行ってただけ…本当だよ!!君以外に好きな奴なんてうわやめr…


わんわん♪

582:名無しさん@ピンキー
07/02/04 22:46:02 QIz1CJhz
すまん、↑の話がさっぱり見えない漏れはもっと空気嫁なのか?

583: ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:47:29 RDIfopqN
ほらほら投下だよ、と。

584:君という華 2 ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:48:37 RDIfopqN
 疲れた。足の震えが止まらない。原因は、さっきの体育の時間に行ったサッカー。一体、うちのクラスの男子は、俺に何の恨みがあると言うのだ。
 敵チームだろうが味方チームだろうが関係なかった。俺がフリーの状態なら味方からの強烈なスルーパス。あれに追いつけるなら、俺は今頃ワールドカップ得点王に輝いているだろうよ。
 さらに、俺がボールを持てば敵からの殺人スライディング。人間魚雷と化したアホどもに吹き飛ばされる事、両手の指では数え切れない。
 本当、俺が何をしたって言うんだ。
 何が腹立つって、それを爽やかな表情で行っているのだ。俺のクラスの男子は常軌を逸している。頭のネジが足りてなさ過ぎるんじゃなかろうか。
 さて。しかしそんな少林サッカーも真っ青なオバカサッカーを終え、教室に戻る途中。後ろから呼ばれ、俺は振り返った。
 と、ほぼ同時に、俺の胸に何か当った感覚。突然の事に、俺の思考は数秒停止する。フリーズ。
「……椎名ちゃん?」
 俺の胸元に、黒い塊……椎名ちゃんの頭部がうまっていた。と言うか、椎名ちゃんの息が妙に荒い。と言うか、鼻息が荒いです椎名様。
「椎名ちゃん、あの、椎名ちゃん?」
「……ふぇぁ」
 やばいです。かなり気持ち良さそうな、恍惚とした表情を浮かべているんですけど。なんかメガトロン、違う。目がとろん、としていますよ。とてもエロイです母さん。
 俺が肩を揺すっても、戻ってきません父さん。俺の後輩がピンチです。誰か助けて!
「ちょ、椎名ちゃん!?」
「しぇんぱい……? えへへ」
 ごすん。椎名ちゃんの頭突きが俺の胸に突き刺さる。胸骨と小さく叫んだ。痛いんだよちゃんと受け止めろやボケェ! はい本当すいません。
 椎名ちゃんはまたもの凄い勢いで鼻呼吸を繰り返している。これは確実の俺の体臭を嗅いでますよね? ってうぉぉい!
 ただでさえサッカーで大量の汗をかいた後なのだ。それはもう凄まじい男臭がしているんですけど。え、ちょ、何ですかこれ? 誰か、俺の後輩が! 助けて! 死ぬほど恥ずかしいデス!
「あむっ」
「……あむっ?」
 変な音が聞こえて、視線を向けると椎名ちゃんが俺の体操服をその小さく可愛らしいお口に含んでいる。
 しかも。
「ん、は、あむ、んぅ、じゅ、じゅる、ちゅ、あ、あ、んっ! ふぁ、ん、は、んぅっ!」
 イヤイヤイヤイヤ! ええちょ、ええ!? ナンデスカコノヨクワカラナイオンキョウコウカハ? しかもここ廊下ですよ!? 羞恥プレイなのか、そうなのか!
 本格的に危険な匂いを察知した俺は、椎名ちゃんの首が折れるんじゃないか、と見ている人が思ってしまうほど肩を揺する。可愛い後輩に、人の道を教えるのも先輩の勤めだ。

585:君という華 2 ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:50:13 RDIfopqN
「椎名ちゃん! 汚いから! ぺって! ぺってしなさい!」
「……ふぅえ? あえ? しぇんぱい? どうひたんれしゅかぁ?」
「いろいろ突っ込みたいけど、今は目を覚まして椎名ちゃん!」
 俺の魂の叫び。と、椎名ちゃんはようやくはっ、と我に返った。
「あ、や、す、すいません。つまずいてしまいました」
「いや、俺の突っ込みたい箇所はそこじゃないんだけど」
「そ、その……先輩、すごくイイ匂いがしてましたので、つい」
 そう言って頬を染める椎名ちゃん。何だろう、俺の知っている椎名ちゃんってこんな子だっけ?
「それでつい、その、先輩のあ、汗を吸ってしまいました……すいません」
 待て待て待て。仮に、俺からイイ匂いが発せられたとしよう。でも、それでついその匂いの元である汗を吸いたくなるのだろうか?
 ……いや確かに、そそられる行為ではある。じゃなくて。
「ご迷惑をお掛けしてしまって、大変申し訳ありません。先輩、着替えないと、まずいですよね?」
「え、あ、うん。て言うか、椎名ちゃん、俺に何か用事あったんじゃないの?」
「いえ、『たまたま』先輩の背中が見えましたので、つい嬉しくなって……すいません」
「いや、いいんだよ。そんなに謝らなくても。気にしてないから、ね?」
「でも」
「いいから。ホラッ、椎名ちゃんがそんな暗い顔してる方が、お兄さん悲しいな。ねっ?」
「……はい。では、失礼しました。先輩、また後ほど」
「うん。じゃあね、椎名ちゃん」
 と言うか、ここ二階なんだけどね。椎名ちゃん達一年生の教室は一階なはずなんだけどなぁ。こんな二年生の教室しかない所、用事ないはずなんだけどなぁ。
 でも、どこか元気がない椎名ちゃんを見ていたら、そんな愚問しても自分を殺したくなるだけなので辞めておいた。
 その時の俺は、思考を完全に椎名ちゃんの後姿に向けていた。だから、かどうかは分からないが。
 突然椎名ちゃんの肢体が宙を舞った。その事態に、脳が追いつくには少し時間がかかった。
 混乱する俺の脳。だけど、視線は、真っ直ぐに、それをとらえていた。
 俺はその表情を見るのは、かれこれ六年ぶりくらいになるだろうか。酷く懐かしい、それでいて二度と見たくなかったそれ。
 鬼の形相の祥子が、そこにいた。
 そこで、よくやく俺は理解する。ああ、祥子が椎名ちゃんを殴り飛ばしたんだ。


586:君という華 2 ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:50:49 RDIfopqN
「こンのォォォォ! 雌豚風情が! 今、何をしてた! 畜生、畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生畜生がぁぁ!」

 まさに、咆哮と呼ぶに相応しい、廊下を震わせる叫び。廊下に横たわる椎名ちゃんに、祥子は襲い掛かる。
 マウントポジション、と言うんだけ。馬乗りの状態で、祥子は椎名ちゃんに罵声を浴びせ続ける。
「畜生の分際で! あたしの、あたしの亮に、何をした! 答えろ! 答えろ! 畜生が! 答えろ! クソ、クソクソクソクソクソクソォッ! 答えろ雌豚がッ!」
 祥子の平手が、情け容赦なく椎名ちゃんの頬を殴りつける。何度も。何度も何度も何度も。
 気が付くと、俺は走り出していた。走って、どうするかとか、何も考えず。
 止めろ、止めてくれ。
 俺は祥子に、走った勢いそのままに、体当たりをかます。なおも暴れる祥子を、何とか押さえつける。
 それにしても、凄まじい力だ。かなり体格差があるのに、気を抜けば吹き飛ばされそうになる。
「落ち着けって、祥子。なっ? ほら、落ち着け落ち着け。ほーら、大丈夫大丈夫」
「畜生! 殺す! 絶対に、絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に殺す! 畜生、畜生!」
「ほら、祥子、ゆっくり息吸え。ゆっくり、ゆっくり息を吸うんだ。良い子だから、な?」
 なおも暴れ続ける祥子。正直、椎名ちゃんの事を考えている余裕は無かった。
 今の祥子に、俺の言葉は届いていない。それでも、俺は祥子に話かけ続ける。
 と、俺の横を誰かが通った。一瞬見ると、確か椎名ちゃんの友達の少女二人だ。
 どこかに隠れていたのかどうかは知らないが、助かった。これで、椎名ちゃんの事は、今の段階では考えなくて済む。
「ほら、祥子。俺の目を見て、ゆっくり深呼吸するんだ。な? ほら、ゆっくり吸って、ゆっくり吐き出せ。良い子だから、な?」
「う、ううううぅぅっ! う、あ、りょ、君……あ、う、ううう、ううぅぅぅぁぁ」
「おーし、よしよし。祥子は良い子だな。ほらほら。深呼吸深呼吸」
 祥子の頭を撫でてやる。祥子は興奮した表情で、俺の目を食い入るように、見る。
 少し、息遣いが治まってきた。よし、あと少しだ。
 と、その時。俺の横を、椎名ちゃんの友人二人が、椎名ちゃんを抱えて、通り過ぎた。
 椎名ちゃんの表情を良く見えなかったが、とても驚いているように見えた。そりゃそうだ。いきなり先輩にボコボコに殴られれば、誰だって驚く。
 と、今日の俺はなんとも間が抜けている。本当、もう一度クラスの男子に辛い目にあわせてもらったほうがいいのかもしれない。
 俺の目を見ていた祥子は、当然のように俺の視線の先を見る。そこにいるのは、当然椎名ちゃん。
 見る見るうちに激昂する表情。這ってでも追い駆けそうな勢いだ。
 見ろ。椎名ちゃんの友達もびびっているじゃないか。まったく、こんな先輩ばっかりじゃないからな。と、名も知らぬ後輩二人に届かぬ願いを思いながら。
 俺は、祥子の頬を、渾身の力を込めて叩いた。
「……え?」
「いい加減にしろっ! 何が気に食わないのか知らないけど、人を殴って良い訳ないだろ! 分かってんのか!?」
 俺の怒声に、祥子は顔を真っ青にしてカタカタと肩を震わせている。こんな怒声を上げるのも、六年ぶりだ。
 俺は祥子を無理矢理立たせると、屋上に向かった。授業の事は、後で考える事にしよう。
 途中、椎名ちゃんが、まるで自分が食べたかった物を先に食われたような、怒りの表情を浮かべていた。いや、この例えも変か。ダメだ。俺もかなり混乱している。
 ともかく、だ。まずは祥子をどうにかしないと。俺は右手で握っている祥子の左手首から感じる体温の低さに内心驚きながら、屋上へと向かう足を速めた。

587: ◆35uDNt/Pmw
07/02/04 23:52:45 RDIfopqN
取り合えずこんだけ。やばい。最近修羅場シーンと変態行為を書くとニヤニヤしている漏れがいる。
漏れもいよいよここの住人ッぽくなってきたのかな? かな?


588:名無しさん@ピンキー
07/02/05 00:02:49 N5PBvhpW
dぎゅwfhyふdふじぇふぃおpqphyugudとにかくGJ

589:名無しさん@ピンキー
07/02/05 00:16:33 b5ihc/uA
後輩の変態っぷりとわれわれの業界ではごほうびですを先にもらった嫉妬にGJ

590:名無しさん@ピンキー
07/02/05 00:17:59 1GGrK4NT
これがスーパーキモヒロイン4か…
GJ!

591:名無しさん@ピンキー
07/02/05 00:25:51 K8cxV4Sb
>>587ヒロイン達の壊れっぷりにこちらこそニヤニヤが止まりません。GJ!

592: ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:14:28 BsG31NUu
投下します

593:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:15:50 BsG31NUu

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 こんこんと降り続ける雪を聴きながら。
 少女はいつものように夕餉の支度を進めていた。
 
 さゆ、という名で呼ばれる少女は、義父が帰ってくるまでに夕餉の支度を終えねばならない。
 夕餉の支度はそれほど難しい作業ではない。
 だが、多少力の要る仕事なので、さゆの細腕では一苦労。
 特に骨からスジを剥がすのが一番堪える。
 柔らかい肉質なら愛用の包丁で何とかなるが、硬いものだと鋸を持ち出さなければならない。
 鋸の取っ手は、さゆに不似合いな無骨な物で、できることなら使いたくない。
 特に冬場は、骨まで使う料理が多いため、さゆの苦労は増えてしまう。
 とはいえ、夕餉の支度が遅れてしまったら、待っているのは義父の折檻だ。
 竹束の痛みは冬場の肌には厳しすぎるし、火箸の熱さは思い出すだけで気が狂いそうになる。
 故に、今宵もさゆは義父の帰宅時間を気にしながら、夕餉の支度を進めていた。
 
 
 悴んだ手に息を吹きかける。
 竈(かまど)の火はやや遠い。
 突き刺さるような痛みに耐えながら、冷たい塩に浸されていた肉を捌いていく。
 
 ―ああ、今日も、硬い。
 
 スジの部分はガチガチに固まっていて、女子の包丁では切り裂くのは不可能だ。
 この肉は晩秋に仕込んだものなので、上手に保存できていれば、雪が弱くなる頃までは保つはずなのに。
 
 ―また、殴られるのかな。
 
 義父は厳しい人だった。
 間違いを許せない質らしく、さゆが失敗すると拳骨で何度も殴ってくる。
 反抗したら骨が折れるまで殴られるので、さゆは怒られるときは目を瞑るようにしていた。
 目を瞑れば、世界は消える。
 真っ暗な闇の中、たゆたうように自分を忘れる。
 そして目を開けた頃には、折檻も終わっている。
 今晩も、そうなるのかな、と。
 
 さゆは、窓の外をぼんやり眺めた。
 雪がごうごうと降っていた。
 
 ―その横顔を見ていると。
 ―こころが、とても、痛くなった。




594:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:16:46 BsG31NUu

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 
 瞼を開けたら、見慣れた天井。
 
「……なんだ、今の?」
 
 ぼんやりと呟きながら、体を起こす。
 何故か、胸が締め付けられたかのように軋んでいた。
 
 変な夢を見た。
 妙にリアルな夢で、少女の横顔もしっかりと思い出せる。
 豪雪の音も耳に残っている。
 一度だけ修業で雪山に籠もったことがあるが、それよりも激しい雪だった。
 
 というか、初雪もまだなのに、雪夜の夢なんて見てどうするんだよ俺。
 全然脈絡無いし。疲れているのかもしれない。
 
 ぼんやりとした頭を振りながら、取りあえず掛け布団を脇にどける。
 ―途端、肌に冷たい空気が突き刺さり、思わずぶるりと震えてしまう。
 
「……うう、さぶ」
 
 ああ、そうか。
 雪が降ってる夢を見たのは、寒い格好で寝ていたからか。
 そろそろ初冬といってもいいこの時期、裸で寝るのは厳しいだろう。
 下着も履かないすっぽんぽんだ。風邪を引いてもおかしくない。
 
 
 
 ―って、ちょっと待て。
 
 
 
 裸?
 
 
 
 慌てて自分の体を見下ろして、ぺたぺたと触ってみる。
 紛う方なき全裸である。
 そして。




595:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:17:28 BsG31NUu

「―んぅう……? ぉお、もう朝かえ?」
 
 ごそごそと布団の奥から這い出てきたのは。
 いつもの襤褸を脱ぎ去った、鈍色髪の女の子。
 
 
 …………。
 
 
 あー。
 
 
 うー。
 
 
 あー…………ああああああああっ!
 
 
「? どうした郁夫? 素っ頓狂な顔をしおって。
 もしや、妾を抱いたのが不服だったとでも言うまいな?
 ―昨晩は、猿のように腰を振っておったくせに」
 
 
 ……あー。そうだそうだ。
 やっちゃったんだった。さよなら童貞。こんにちはロリコン。
 じゃなくて。
 
「えっと……その……」
 
 何か言わなければならないのはわかっているが、何を言えばいいのかわからない。
 昨晩の記憶は、それはもうはっきりと記憶に残っている。
 そりゃそうだ。初体験の記憶だし。入口がわからなくて恥ずかしかったとこまで覚えてるぜ。
 ……まあそれはそれとして。
 そんな、俺の初めての相手が、裸で横にくっついているっていう今の状況。
 こんなとき、なんて言えばいいのだろうか。
 ドラマの俳優とかは、こういう大事な場面で格好いいことをさらりと言えるが、
 今の俺は、頭の中が真っ白で、気の利いた言葉どころか日本語さえ危うかったりする。
 
 無言。
 ちょっぴり気まずい無言。
 
 あああ何か言え俺。
 何でもいいから、とりあえずこの微妙な空気を変化させられる言葉を何か―




596:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:18:23 BsG31NUu

 とにかく何かを言おうとして、口を開きかけ、
 
 茅女の白くて細い指先が、唇に当てられた。
 
「伊達男は閨の後、無闇に言葉を重ねぬぞ?
 ……まあ、後とは言っても一晩過ぎておるがな」
 
 そう言って、こちらの胸に、こてんと頭を預けてくる。
 
「それより、どうじゃ? 初めての術だが、それなりに上手くいった感触なのだが」
 
 ……そうだ。
 そもそも茅女と身体を合わせたのは―
 
「……試しに妾を持ってみろ。
 小娘の影響が失われておれば、問題なく持てるはずだ」
 
 ―流が弄った俺の心を、元に戻すため。
 
 そのために、茅女は己の体を差し出して、俺の心を直してくれた。
 初めてのセックスに少なからず浮かれていた気持ちが、途端に冷えていく。
 これでも健全な男子高校生だったので、初体験にはそれなりに幻想を抱いていた。
 しかし、現実は治療のため。
 茅女が俺に好意を寄せてくれていたのは知っている。
 しかし昨夜のは、好意とかそういうのをすっ飛ばした、作業のようなものだった。
 そう思うと、何故か心が妙にささくれ立ってしまう。
 
 茅女が差し出してきた手を、どこかやるせない気持ちで握り締めた。
 
 瞬間。
 茅女は変化を解き、包丁になった。
 
「……あ……」
 
『……どうやら問題なく持てるようだな。
 此度も落とされたらどうしようか心配したが、杞憂だったな。
 ―うむ、術は上手く為せたようじゃの』




597:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:19:19 BsG31NUu

 ―術、か。
 
 そういう言い方をするということは。
 やはり茅女にとって、昨夜のは治療行為に過ぎないのか。
 心が元に戻ったし、気持ちよかったし、俺が不満を言うのは筋違いだが。
 
 どうしても。
 
 ―茅女に、悪いなあ。
 
 そう、思ってしまう。
 
 
『―気に病むことこそ、筋違いだぞ』
 
 
 手に持つ包丁から、そんな思念が伝わってきた。
 思わず、ぽかんとした顔で見下ろしてしまう。
 
『房中術で心を繋げた影響か、ヌシの心が容易に伝わってくるわ。
 ……何やら、妾がヌシに抱かれたのは治療のためとか何とか、
 益体ないことを考えておるようだが、』
 
 そこで、茅女は少女の姿へと変化した。
 鈍色の髪がふわりと揺れる。俺を見上げる一対の瞳は、潤んでいた。
 
「―妾は、こうなりたかったのだ。
 治療行為と銘打って、この状況を利用して。
 郁夫の初めてを奪ったのだ。
 故に、ヌシは妾のことを恨みはしても、気遣う道理は何処にもない」
 
 
 だから、気にするな、と。
 
 
 心を繋げているわけでもないのに。
 茅女の想いが、優しく胸に響いていた。
 
 何故だかどうしようもなく愛しくなって。
 思わず茅女を抱きしめてしまう。
 力を込めたら折れてしまいそうな躰は、抗うことなく受け止めてくれた。




598:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:19:32 nksKzOcn
これ面白いw

599:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:20:06 BsG31NUu

「―ありがとう」
 
 言うべきかどうか迷ったが。
 気付いたときには、素直な想いを伝えていた。
 
 腕の中の少女が微かに震えた。
 そして、唐突にこちらの胸へ体重をかけてくる。
 抗うのは難しく、そのまま布団の上に押し倒された。
 
 ぼすん、と後頭部が枕に埋まり、
 追うように、茅女に口を塞がれた。
 
 入ってくる舌の感触に、思わず背筋がゾクゾクする。
 
「……ぷは。―閨の後には喋らぬものだと言ったろうに。
 聞き分けのない輩には、お仕置きじゃな。
 可愛い声で鳴いて謝っても、許さないから覚悟しろ」
 
「……照れ隠しにコレかよ。茅女って随分直情的なんだな。
 ってちょっと待て、俺が攻められる側かよ―ひにゃあっ!?」
 
 突然、ナニが柔らかいものに圧迫されて、変な悲鳴を上げてしまう。
 慌てて下の方を見ると、茅女が膝の裏で俺の物を挟んでいた。
 フトモモのむにむにした感触が押しつけられて……やば、かなり気持ちがいい。
 
「だから喋るなというのに。此奴の持ち主らしく、黙って固まっていればいいものを」
「いや、硬くなってるのは朝だからであって……。
 ―じゃなくて、朝っぱらからするのは流石に」
 
 なんというか、初体験の翌朝から、そういった行為に耽るのは、
 なんかこう、色々と爛れてるような気がする。
 これでも昨夜までは、清く正しい初物だった俺としては、
 性行為というものを神聖視しているというかなんというか。
 それがこうもあっさりと朝っぱらからに繰り広げられるには凄まじく抵抗があるというか。
 
 と、そんな考えのもと、茅女の侵攻を慌てて止めようとしたのだが。
 

「……郁夫、焦らすでない。
 ―妾はもう、とろとろだぞ?」
 
 
 初めての相手に、潤んだ瞳でこんなことを言われてしまっては。
 陥落するしかないだろ、普通?




600:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:20:55 BsG31NUu

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
 
 ―謹慎として離れに放り込まれてから、一週間が過ぎた。
 
 冷え切った畳の上で、色無地を着込んだ少女が正座をし、瞑想している。
 ぴくりとも動かず、端から見れば、よくできた人形とさえ見間違えてしまうかもしれない。
 
 妖怪故に、足が痺れるということはなく。
 ただひたすら、時間が過ぎ去るのをじっと耐えるだけ。
 
 
 ―謹慎を終えたら、郁夫様のところに行きます。
 
 
 その想いを抱えるだけで、流の全身は暖かくなる。
 謹慎を終えた後に待っているのは、郁夫との心休まる日々。
 だから、謹慎だって真面目に受けているし、不平を言ったりすることもない。
 謹慎を終えるまでは、どんなに愛しくても郁夫に会いに行くのは我慢するつもりだった。
 
 ―郁夫様は決して、私のことを嫌っていない。
 
 胸を刺し貫かれたら、普通は相手のことを怖がるものだ。
 しかし流は、郁夫に限ってそれは無いという確信があった。
 
 
 ―だって、“そのように”したのだから。
 
 
 郁夫が流のことを嫌わず、
 他の雑多に心移ることもないように。
 
 自分が、そう、変えたのだから。
 
 故に、郁夫が流を受け入れるのは確定事項で。
 こんな謹慎なぞ、“焦らし”のようなものでしかない。
 
 そう思うと、どうしても暗い笑みがこぼれてしまう。
 
 郁夫が使う道具は、自分だけ。
 その事実は、流の芯を甘くとろけさせてしまう。




601:九十九の想い 1-11 ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:22:09 BsG31NUu

 郁夫のもとへ戻ったら、何をしようか。
 共に訓練をし、共に退魔を行い、共に在り続ける。
 その間、他の道具が介入することはなく、郁夫の全てを独占できる。
 彼の優しさも、彼の肉体も、彼の心の支えすらも。
 
 何より、あの“瞳”さえも。
 
 
 ―ぜんぶ、ぜんぶ、わたしのもの。
 
 
 想像するだけで、軽く達してしまいそうになる。
 気を抜くと、その場で変化が解けてしまいそうなほど。
 溢れる歓喜に溺れてしまいそうになる。
 
 ―心を弄るのは、便利だなあ。
 
 偶発的に手に入れた能力だったが、
 改めて考えてみると、最高の能力に違いない。
 流にとっては郁夫が全てであり、その郁夫の心を自由にできる。
 それは、他のあらゆる誘惑にすら勝る。
 
 そして。
 
 この能力を使えば。
 
 
 ―『人間に、なりたいなあ』
 
 
 郁夫にとっての、“大事な人”になることも―
 
 
 今度こそ、笑いを堪えきれなかった。
 暗い離れの一室で。
 流は独り、けたけたと歓喜を漏らしていた。





602: ◆gPbPvQ478E
07/02/05 01:23:21 BsG31NUu
お久しぶりです。
忘れられてないことを祈る今日この頃。

とりあえず1部完結するまでは、そこそこ早いペースで投下できるっぽいです。
血塗れ竜ではできなかったことを、九十九ではやっていきたいと思います。

603:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:27:16 y9Cint3/
>>602
よぉお帰り。待ってたよ。
いいなぁ…郁夫がロリコンになって流が実力主義になって…修羅場の匂いがぷんぷんしてきやがるぜ!

604:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:27:54 ZBYGMtws
流が独り妄想に耽ってる間に…茅女、やるじゃないか。

忘れてなどいなかったぜGJ!

605:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:30:56 sCO44oSb
キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
キタ━━(゚∀゚)━━ッ!!

606:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:32:09 xYZA3kE8
妖刀流ん
かわいいなあ

607:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:35:31 65uEda+A
あとは山本君とノントロと・・・・・・

と言うかすべてが待ち遠しい


608:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:36:58 Af5tNW89
>>602
めっちゃくちゃ待ってたぜ~!GJ!!
これから早いペースで投下出来ると聞いて、不覚にもウッヒョ~って思ってしまいましたよ。

609:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:38:49 BhnLB7uT
>>602
お帰り!!
今まで何してたのかは聞かないから、もうどこにも行っちゃ駄目だよ?

610:名無しさん@ピンキー
07/02/05 01:39:05 42TPoXAj
もうカウパーでまくりで大変だったよ

611:名無しさん@ピンキー
07/02/05 02:04:28 b5ihc/uA
九十九キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
いきなり良質の修羅場の雰囲気がビンビン伝わってくるぜ!

612:名無しさん@ピンキー
07/02/05 02:06:57 c9ccpKjw
>>602

お帰り! ずっとずっとずっと待ってました!


てか割り込んだ奴誰だよ。

613:名無しさん@ピンキー
07/02/05 02:31:48 h47vdrVa
きゃっほーい! キタ━━(゚∀゚)━━!!
全裸で待ち続けてたよ

614:名無しさん@ピンキー
07/02/05 02:48:19 oV9bDU7L
>>602
今でも時々、あの時「全部」を選択して良かったのか考えてしまう事がある。

血塗れ竜では出来なかったこと 期待してます

615:名無しさん@ピンキー
07/02/05 06:58:25 vNEzQB/y
血塗れ竜は何か打ち切りで終わったような感じで、しかもBADENDだったので、九十九
はハッピーエンドでお願いします

616:名無しさん@ピンキー
07/02/05 08:59:11 1GGrK4NT
ワガママ言うない

617:名無しさん@ピンキー
07/02/05 09:20:05 e+3whU1d
九十九きたわーーーーーーー!!
やったーーー!
久々だったから読み返してみたけど
やっぱこれ超面白れぇーーーー!!
GJGJGJ!!

ホント、もう職人の皆さんは、こんな面白さを提供してくれる神々なんだから
自分のペースで自分の好きな時の投下してくだされば十分ですたい。

618:名無しさん@ピンキー
07/02/05 11:19:17 ZEaakHvT
流に絞められたいわー

619:名無しさん@ピンキー
07/02/05 13:39:09 vn+WjCOl
流に刺されたい

620:名無しさん@ピンキー
07/02/05 14:59:44 yWjCuPRG
しかし、投下してくださる神たちのレベルの高さにSHIT!
>>602
GJ!流に色んな事されてぇー

621:名無しさん@ピンキー
07/02/05 17:21:30 Cs6XN5di
流が可愛すぎですわー

622:名無しさん@ピンキー
07/02/05 17:41:20 WFSrqLvP
いやっほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

623:トライデント ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:30:08 yAzJk414
では投下致します

624:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:32:26 yAzJk414
 第19話『始まる予感』

 懐かしい夢の残骸を見た。過去は変えることができない残酷な思い出の欠けら。
記憶の忘却の彼方に置き去っても、夢として蘇る。悪夢に近い過去の再演は目が覚めるといつも驚くことに忘れ去っている。
ただ、胸に密かに潜む痛みだけは別として。
 天草月は残念の事に夏休みの課題を仕上げるために不眠不休で四日ばかり遅れて提出することが出来たが、
長期に渡っての監禁のおかげで体がやつれてしまっていた。

それに気付かずに徹夜で課題を仕上げると体にどれだけの負担をかけてしまっていたのか、全く考えていなかった。
課題を提出した後に学校で意識を失って病院に搬送された。栄養失調、体力的な問題うんぬんで
医者による学校の登校をドクターストップを喰らうはめになるとは。体を壊した俺が学校に通うことができずに
強制的に一ヵ月の入院をすることになっていた。

 すでに学生にとって貴重な一ヵ月が過ぎた辺りには夏の季節が過ぎ去り、秋の紅葉が病院の窓から見える木葉から確認できた。

今月の中旬には中間テストがあり、それを受けないと俺は留年するという恐怖に怯えていた。
仮にも留年して、紗桜と同じクラスになると兄の威厳が失われる可能性すらもある。それだけは避けねばならない。
 これからは絶対に冬子さんの前では女装すると北斗七星に誓いながらも、
病院ですることがないので待合室に置かれている贅沢な大型液晶テレビで暇を潰すことにした。
 階段を降りると入院患者や外来の方。医者や看護士の皆様が忙しそうに働いていた。
俺は虹葉姉から用意してもらった犬と猫柄のパジャマを身に纏いテレビが置かれている場所に向かい席に大人しく座った。
 今、流れているのは最近のニュースであった。


「今年の夏休み明けの学生の死亡者は一万6000人という前年より増しという驚異的な数字が出ました。
これは嫉妬した女性が男性を突き刺した被害者男子生徒の数です。
更に女性の被害者は一万人という冗談で済ませられない数字となっております。
これは女性が女性を殺す被害者です。主な原因は狙っていた男子生徒をと付き合い、
それに嫉妬した女性の脳内思考で泥棒猫さえ排除してしまえば想い人が私の事を見てくれるという根拠のない心理的な状況で
実行するケースが殆どです。
 最近、新たな傾向としては。
 姉妹の家に同居している義理の弟か兄を巡っての修羅場が全国各地で勃発しております。
姉がフォークで妹の目を突き刺したり、妹が兄の大事な性器を真っ二つにしたりと残虐的な行為が見られます。これに政府は……」


 そのニュースに俺は少しだけ驚愕していた。姉妹が一人の男を、
しかも家族として暮らしている男の子を取り合って修羅場というのがどうも他人事とは思えなかった。

「なんて世の中だ」

 景気が低迷しているとか、学力が低下しているとか、某国の自爆テロなんか全然問題にならない程、
この国は堕ちるとこまで行っているんじゃないのかと俺は不安を抱いた。


625:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:35:14 yAzJk414

 社会問題うんぬんと考えている時に時計を見た。すでに夕刻。
この時間帯になると俺の入院している部屋はもっとも騒がしくなる時間帯だ。
昼間に学校があることを俺は幸せに望む。虹葉姉と紗桜と音羽が人の迷惑を考えずに訪問している時間だからだ。
 自分の病室に入ってくると俺のベットには虹葉姉の姿がまずそこにあった。

「月君がいつも寝ている布団。月君の温もりが気持ちいいよ」
 あろうことか、以前と同じ過ちを繰り返している時点で俺は思わずため息を吐くことができなかった。
すぐに目を離すと弟の所持品や布団に忍び込む悪い癖が虹葉姉、いや、姉妹にあるのだろう。
こういう細かいことをいちいち気にしていれば、水澄家に暮らしていくことは難しい。
 俺は虹葉姉の肩を優しく叩いて、あっちの世界に引き戻す。
「に、にゃんと? 月君。いつ、帰ってきたの?」
「今帰ってきたんだよ」
「そ、そうですか。わ、私は別に何もし、してないんだからね」
 虹葉は顔を赤面させて頭から白い煙が立っていた。余程、弟相手に今の光景が目撃されたのが恥ずかしかったのだろう。
「紗桜は来てないの?」
「うーんとね。紗桜ちゃん。運悪く文化祭の実行委員に選ばれて、今日は委員会で遅くなるんだって。
本当はすぐに病院に向かうつもりだったんだけど、さすがに日常生活を疎かにしてまで月君の見舞いはしちゃだめって、
私がき~つ~く言っておきました」
「で、本音は?」
「紗桜ちゃんがいない間は私が月君独り占め。てへ。嬉しいな」
 気まずい空気が一瞬だけ流れる。
 いつものパターンだ。これが逆に紗桜だったら、同じ事を言うに違いない。所詮は姉妹。
行動パタ-ンは似てしまうことがお約束なのだ。だが、俺は夏休みに起きた体験を思い出すと、
ブラコン姉妹による暴走で俺は精神的にも体力的にも限界まで追い詰められてしまった。同じあやまちを繰り返すつもりはない。
 俺はベットの近くに置かれているナ-スコールを持つとボタンを押した。

「天草さん。どうかしましたか?」
「ちょっと頭のおかしい女子学生が……わけのわからないことを」
「変質者ですね。はい。わかりました」
 若い看護士さんが俺の必死の演技に動かされて焦った口調で応えてくれた。虹葉姉はぽかんと開いた口が塞がらなかった。
「変質者って、もしかして、お、お姉ちゃんのことなの?」
「リベンジです。少しは反省してくださいお姉さま」
「うにゃ~。お姉ちゃんは月君に恨まれるような事はやってないよぉぉ」
「体を壊した可愛い弟の休息に俺の胃痛の原因になっている人が見舞いに来るなぁぁ。

 病院の検査であなたは本当に10代の体ですか? って聞かれた時はちょっと死にたくなったぞ。
 誰かに黒いオーラーを浴び続けると体によくないって、医者が断言していたぞ」

「う、うにゃにゃ。そんなことないよ」
 思わず、動揺している虹葉姉の頬から冷たい汗が流れているのを見た。やはり、確信犯なんだろうか。
「虹葉姉と紗桜は見舞いの立ち入り禁止!! 病院患者と美少女姉妹が見舞いにやってこない男性患者の総意です。今、決めちゃました」
「月君と一緒に喋るのが私の生き甲斐なのに。お姉ちゃんの楽しみを奪うつもりなの?」

「ふふっ。俺は一夏の経験で悟ったんだ。あえて、修羅場を避けるよりも戦うと。顔を上げて、戦う覚悟をした俺は最後まで絶対に引かないっての」

626:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:37:18 yAzJk414

 冬子さんの監禁で完全に精神と体を病み、一ヵ月も入院しておかげで学業の方は疎かになっており、単位も危ないと新担任は言う。
 ちなみに前担任のメガネは夏休み中に別れた奥さんが無理矢理復縁を迫ってきたので
 男らしく『もう、束縛される生活は嫌なんだ』と叫んだ途端に。奥さんに心臓を隠し持ってきた包丁で刺されてお亡くなりになった。
 別にこれは珍しい事でも何でもない。
 夏休みが終わり新学期を迎えるために学校に登校すると自分のクラスは2~3人ぐらい花瓶が机の上に置かれていた。
 恐らく、ストーカーかヤンデレのどちらかに恋人になってくださいと迫られて、断られた途端に殺されるケースが多発しているのである。
 他のクラスでは花瓶がクラス半分以上も置いてあった実話もある。

「天草さん。変質者はそちらのお姉さんですね。今すぐに確保して病院の外にまで追い出します」

 看護士のお姉さん方数人が虹葉姉の両腕を見事にぎっちしと掴んで連行してゆく。

「ひ、酷いよ月君。うぇ~ん」
 反抗しようとジタバタ暴れていると看護士さんが面倒臭そうに鎮痛剤らしきモノを虹葉姉の腕に注射する。
 そして、問答無用に連れて行かれた。

「ふぅ。虹葉姉ももう少しだけ距離を置いて欲しいもんだよ」

 弟にべったりな姉と兄に依存と溺愛している妹を家族に持つと一日一日が命懸けのガチンコ勝負である。
 少し嘆息してから、買い溜めしてある缶コーヒーを片手に憂欝な気分でいると次の来訪者が現われた。

「月ちゃん。今日も見舞いにやってきたんだけど、さっき、あなたのお姉さんが看護士の皆さんに神輿にされて連れていかれたよ」
「音羽。あれはきっと変質者だからあんまり気にしなくてもいい」
 身内の恥を音羽に説明するのも恥ずかしいすぎる。
「あれぇ。紗桜ちゃんはどうしたの? いつもなら、この時間になると私を妨害するために水澄姉妹がきっちりとガードしているはずだけど」
「紗桜なら文化祭の実行委員に選ばれて今日はその委員会に出席するので来られないってことを虹葉姉が言っていた」
「へぇ。そうなんだ」
 音羽は嬉しそうに微笑んでいる。その笑みが俺にとっては嫌な予感が脳裏をよぎったと言えば、
 彼女にとってはとても不謹慎な事なので口には出さないが。


「じゃあ。ようやく、私は月ちゃんに宣戦布告することができる」


627:水澄の蒼い空 ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:40:48 yAzJk414
「はい?」
「今日は邪魔な水澄姉妹がいないおかげで月ちゃんをたっぷりと独占できるんだけど。
 もう、私は嫌なの。何も変化がないってことは月ちゃんと私の関係が全く進んでいないことだもん。
 だから、私はここに宣戦布告する」

 音羽。どうした、何かおかしい物を食べてしまったのか。
 ここは病院だからすぐに医者を呼んでやるよと言いたかったが。音羽の様子がいつもと違い、その眼差しは俺に真っすぐに向けられている。

「私は月ちゃんに復讐する。その復讐は私と月ちゃんが恋人同士になって、幸せな生活を送る事なんだよ。言っている意味がわかる?」
「はあ? なんだけど」

 音羽は睨み付ける視線は俺に向けられていた。
 再会してから、ずっと仲のいい幼なじみとしてこれまでやってきたはずだった。
 それが突然に復讐すると言われても俺はただ狼狽えるしかできない。

「月ちゃんは全く覚えていないんだよね。まだ、小さかった頃だったし。
 私が引っ越しする原因になったのはお父さんが友人の保証人になって、多額の借金を背負ってしまったから。
 でも、お父さんは保証人の書類には全くサインも印鑑は捺さないと私とお母さんにきっちりと言った。
 だから、私はお父さんが保証人になったとは今では考えられない」

 俺は思わず缶コーヒーを力なく落としてしまった。連帯保証人関連の記憶で思い出される事はただ一つ。

「ガキの頃に音羽の家で遊んだ連帯保証人ごっこか」
「そうよ。それが鷺森家の不幸、私のどん底人生の始まりだった」
 音羽が俯いて長い髪が彼女の表情を隠す。
 あの遊びが原因で彼女は父親や母親を失い、俺と同じく独りぼっちになってしまったのだ。

「まさか、夢にも思ってもいなかったわ。月ちゃんと私がお父さんの机にあった連帯保証人に関する書類を見つけて、
 書き込んだ内容がほぼ正確で判子を押した状態でお父さんの友人が尋ねてくるなんて。
 私達は疑うことなくその友人に書類を渡しちゃった……」

「そ、そうだったのか……」
「私と月ちゃんがお父さんとお母さんを死なせてしまったんだよ」
「おじさんとおばさんはどうして死んだんだ」

「お父さんとお母さんは私のために借金を返済するために自殺したの。
 死んだ後に入ってくる多額の生命保険金で借金を返して、私が人間らしい生活を送れるように。
 でも、私は借金を返済しなかった。
 だって、親の借金は親の借金だもの。親の遺産を相続せずに遺産放棄してしまえば私は借金を支払う必要はなくなる。
 更にちゃっかりと親の生命保険金をしっかりと頂いたよ。
 だって、生命保険金は受取人が指定していた場合は遺産にはならないから。
 受取人の私にはきちんと貰える権利があったの。
 そのお金のおかげで私は今のように自由に生活を送っているけど、心の中ではどこか寂しかった」

 過去のことを思い出しているのか、音羽の目蓋から涙が頬を伝って流れてゆく。
 感情的になっているのか、体が小刻みに震えている。

「だから、月ちゃんに復讐する。きちんと責任を取ってもらうの。

 ううん……私の所有物になってよ。そうじゃないと私の心はいつまでも穴が空いたままになっちゃうよ」

「音羽……」
「月ちゃんは誰にも渡せないんだから……。

 水澄姉妹には絶対に指一本だって触れさせないんだから。うふふふふふふっっっっ」
 
 俺は言わずともナースコールのボタンを押した。いや、普通に押すだろ。

628:トライデント ◆mxSuEoo52c
07/02/05 18:46:59 yAzJk414
影の薄い音羽がついに黒化・・。ようやく、修羅場を迎えることができる♪
まあ、黒化した女の子に立ち向かうにはデザートイグールだけでは心細いですw


新作のプロットの事ですが
皆様の書き込みの意見を見て、私が長考して考えた結果
今まで学園モノの作品を書いていたので、たまには新たな分野に挑戦するのもいいかもしれないので
本来のプロット通りにプロットAでやってみようと思います。
まあ、社会人編はいろいろと設定やら難しいですけどねw

629:名無しさん@ピンキー
07/02/05 18:52:31 LmMEUhhQ
>>628
連帯保証人ゴッコバロスwwww
月ちゃん達何やってんだwwwwwwww

連続ですいません、投下しますよ

630:『半竜の夢』Take3
07/02/05 18:54:21 LmMEUhhQ
 今日は久し振りに仕事が入っておらず、図書館も休みなので遊びに出ることになった。
天気も良く、風が涼しく過ごしやすい。普段店番を頼んでいるせいで閉じ籠りがちなササ
からしてみたら、1日外に居られるというのは嬉しいのだろう。基本的には建物の中より
外で体を動かすのが好きな娘だ、竜害のせいで体が弱っていても基本的な部分は簡単には
変わらないものだ。それどころか普段体を動かすのを禁止されている分、余計に活動的に
なっているのかもしれない。そんな訳で、ササは始終上機嫌だ。
「次はどこに行く?」
 竜尾を楽しそうに揺らしながら、こちらを見上げてくる。
「はい、そろそろお腹が好いたので何か食べたいです!!」
 元気に手を上げて自己主張をするチャクムの方へ視線を向けると同時、まるで地獄の底
から鳴り響いているような豪快な音が聞こえてきた。そろそろどころか、こいつは物凄く
腹が減っているらしい。いつものことだ。元気に動くのは良いが、必要以上に元気なので
腹の減りも激しいのだ。タックムも喋らないだけで意外と活動的なので、二人揃って大量
の飯を食う。お陰で我が家の食費は半端じゃない額になっているのだ。この小柄で細い体
のどこに入るのか不思議だったのだが、先日チャクムが分かりやすく図で説明してくれた。
個体差があるので他の魔物はどうなのかは分からないらしいが、どうやら二人は食物自体
を摂取するのではなく、その中にある魔力を食べるらしい。魔物は魔法の余剰魔力や残留
魔力が固まって出来たものだから、納得といえば納得かもしれない。因みに人を襲うのも、
そうした体質が関係しているのだろう、とチャクムが教えてくれた。人や動物の体は魔力
が前進に満ちているから、それを吸収する為に襲って食べようとする。俺達が肉や野菜を
食べようとするのと同じような感覚かもしれない。水分や金属を食って生きていくことが
不可能なことと同じ理屈だ、腹は満たせても栄養が取れない。


631:『半竜の夢』Take3
07/02/05 18:56:03 LmMEUhhQ
 何とか出来ないものかな、と考えて歩いていると、大きな雄叫びが聞こえてきた。
「あれ、クリヤさん?」
「何してるのかしら?」
 見ればクリヤが、女性と口論をしているようだった。相手に見覚えはないが、どこかで
聞いたことがあるような声と口調。もしかしてユマだろうか、鎧を脱いでいる姿を見るの
は初めてだが、なかなか整った顔立ちをしている。疲れているのか仕事柄なのか、目元が
やけに鋭いことを除けば親父さんに瓜二つの顔だ。彼女は父親に似たのだろう。
「と、止めた方が良いんじゃないですか!?」
「いつもの喧嘩でしょ? 放っときなさいよ」
 慌てているチャクムとは対照的に、ササは呆れたような顔で二人を眺めていた。確かに
珍しいことではないが、この四人の中で魔物が一番平和主義というのはどうなのだろうか。
因みにチャクムは興味深そうに二人の喧嘩を眺めていた。但しこいつの場合は喧嘩に興味
があるのではなく、その際に使われる魔法に好奇心が向いている。勉強家であるチャクム
はいつの間にか、多数の魔法が使えるようになっていた。喧嘩を見て覚えているので自然
と使えるものも戦闘用のものばかりに片寄っているのだが、それを上手く応用して生活に
役立ててくれているから大したものだと思う。片方が争いを嫌っていたり、片方が勉強家
だったり、つくづく魔物らしくない。そこらの奴よりも、よほど立派に出来ている。
 それとは正反対に喧嘩を続けていたユマとクリヤだが、とうとう二人とも我慢の限界に
来たらしい。ユマのヒステリーはいつものことだが、クリヤまでもが激昂するなど余程の
ことでもあったのだろうか。二人の溢れ出る魔力に怯えてしまって、チャクムなどは俺の
背後に隠れてしまった。ササも竜の血が高まってきたらしく、タックムに支えられている。


632:『半竜の夢』Take3
07/02/05 18:56:59 LmMEUhhQ
 このままでは不味い。
「叩きのめしてやりますわ!!」
「やってみい!!」
 叫び、ユマは左右の袖口から二本ずつ棒を取り出すと、高速で組み立てた。現れたのは
見慣れた形、全長2mを越える十字架の形をした長杖だ。頭上で数度回転させると、長い
金髪を翻して槍のような構えをとった。
 対するクリヤは身を大きくのけぞらせ、天に向かって吠えた。先程の雄叫びよりも更に
強い、周囲の空間をも揺るがす響き。通常の声帯では発音することが不可能な竜の声は、
彼女特有の竜証である竜口によるものだ。人の姿でありながら異なる言葉を用いて、敵を
滅ぼそうとする。それは竜の姿に戻ったときよりも、なまじ恐ろしいものに思えた。
 不意に、肌に熱を感じた。
「マジかよ?」
 思い出すのは、クリヤの竜証の説明を聞いたときのこと。彼女はこの口があれば、人の
姿でも竜言語魔法を使うことが出来ると言っていた。炎を吐くことも出来ると言っていた
けれど、前進を焦がすような熱は普通の炎ではないものだ。大きく開かれた口の中にある
火球は赤を通り越して黒く輝いており、その熱は空気を焼いて風を起こしている。
「竜の炎、受けてみい!!」
 吐いた。
 長い尾を引いて吹き出された火球は瞬時に巨大化し、ユマへ飛来する。
「温い、温いですわ!!」
 身を一瞬だけ縮め、それをバネのようにしてユマは跳躍した。
 避けるのではなく、前へ。
 炎に向かうという方向性を持って己の身を跳ね飛ばし、長杖の先端を突き込んでゆく。
動きは単純なものだがそれ故に力の方向性も収束しており、指向性のある一撃となる。
 直後。
「突て、我が力よ!!」
 ユマの声に応えるように長杖の先端に魔力が展開し、それは白く輝く刃となった。魔力
で形成された白刃は命令通りに炎を突ち、更には膨張して巨大な熱量の塊を霧散させる。
竜の力が砕けたことで轟音が響き、大気が荒れ狂った。



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