【涼宮ハルヒ】谷川流 the 36章【学校を出よう!】 at EROPARO
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 36章【学校を出よう!】 - 暇つぶし2ch450:名無しさん@ピンキー
07/01/18 01:09:58 VJvZ8BP0
>>444
見通しどころか、すでに準備まとめが立ってるけどな

451:名無しさん@ピンキー
07/01/18 01:21:01 L3y7Yxsd
今度会長書くから憤慨研究中
うはーおもすれー



452:名無しさん@ピンキー
07/01/18 01:40:01 02LTOvj/
>>449
あそこの点数なんて殆ど自作自演だろ。
中学生が書いたSSがしかも18禁が(゚Д゚)ハァ?
みたいなんが載ってるようなサイトが一位になったり

もはやランキングの意味ねぇ
SSサイトの良いところは辞書攻撃のごとくくまなく探すしかない

453:名無しさん@ピンキー
07/01/18 12:33:05 QrR8hY0d
ここは職人さんの質はプリンやキャラスレ含めたSSあるスレの中で最高級だが住民の質は最低級と言う面白いスレだな。

9月ごろ、度を越した批評家気取りの横行で多くの職人流出、投下激減、スレ過疎をしていて
んで最近、職人さんの良作低下でやっとこ良い流れが回復してきたと思ったら
また変な批評家気取りが台頭しだして悪い流れに逆戻り気味ってのは学習効果皆無で笑える。

てか批評=挙げ足取りと勘違いしているのか変な挙げ足取りばっかでバランス感覚が取れてない阿呆が多過ぎで困るな。

あと、他スレとやたら比較してここが一番、とか言う人がこのスレにはやたら多いが(つか定期的に出るな)
このスレの作品は確かに質高いのは分るが、だからと言って(少なくとも自分は)自分が投下しているわけでも無いんだし
他と比較して何を自慢したいんだかよく分からんな。
もしや、自分達が住民が批評して質維持しているから質高いと勘違いしている痛い低脳?
それは手前のお陰じゃなく、職人さんの良作投下のお陰だってコト分ってんのかね?

454:名無しさん@ピンキー
07/01/18 12:52:58 NmluZSI0
>>453
わかってないねえ。
初心者への注意=揚げ足取り=批評だと勘違いしている変な人が多いんだよw
懸賞に応募したところ、このペンネームはいただけません、フロッピーディスクでの送付は受け付けていません、と言われたら、
それを批評だと思うのか?
初心者に徹底して荒療治してるスレだからこそ、良作が投下されてるんじゃないか。
上と下との扱いに差をつけてこそ、上の人はモチベーションが湧く。孫呉の兵法。
初心者(初級者ではない)も神も同じGJ扱いされるようなスレに、神が居着くものかね?
だいたい、18歳以上なんだからさ、間違ったこと書けば叩かれる覚悟くらいできてるだろ。
殴られずに大人になったやつなどいるものか。

455:名無しさん@ピンキー
07/01/18 12:53:05 GX62X7yO
叩きあげて鍛えようとしてるのが空回りしてるよな
でもVIPの馬鹿どもよりいいと思うんだ

456:名無しさん@ピンキー
07/01/18 12:53:16 bchC0VlG
>>453
全面的に同意だが、もう少し幼なじみが照れ隠し(ry


457:名無しさん@ピンキー
07/01/18 13:44:41 l3+VbKHx
>>453
お前みたいな子供が黙っていればそうそう荒れるスレでもないと思う。

458:名無しさん@ピンキー
07/01/18 13:47:16 XFhwLADF
スレ立て直せ

459:名無しさん@ピンキー
07/01/18 13:47:35 5413tEK9
まぁ>>454からは
「俺らがこのスレのクオリティを上げてやっているんだぜ」
という痛い批評家の上から目線をヒシヒシと感じるわけだが

460:名無しさん@ピンキー
07/01/18 13:50:26 NmluZSI0
>>459
だから批評ではないと何度言ったら(ry

461:名無しさん@ピンキー
07/01/18 14:01:49 5413tEK9
じゃあ言い換えよう
「俺らのおかげでこのスレのクオリティが保たれているんだぜ」
というイタい自治厨の(ry

462:名無しさん@ピンキー
07/01/18 14:04:32 NmluZSI0
>>461
そういう目でしか人を見られないのは、当の本人がそういう人間だからだよな。
やれやれ。

463:名無しさん@ピンキー
07/01/18 14:25:03 WA1TErYh
住人はデレであれ

書き手

464:名無しさん@ピンキー
07/01/18 14:38:20 P/aQ4n/n
せめてツンデレのツンのふりでお願いしたいです

同じく書き手

465:名無しさん@ピンキー
07/01/18 14:42:08 bLYYWOme
批評とかは書き手、もしくはものを書くことに精通してる人だけがすべきだと思う
そうじゃない人は「~だと思う」ぐらいの感想に留めておいた方がいいんじゃないか

466:名無しさん@ピンキー
07/01/18 14:47:42 5413tEK9
いやぁ、>>454の内容はもっともなのに、伝え方一つで
>>453の後半部を半ば実証する形になっちゃいますね
というのを分かりやすくしようと煽ってみた、正直スマソ

ただ、間違いは注意されて当然だとは思うが、叩かれて当然だとは思わない


467:名無しさん@ピンキー
07/01/18 14:49:55 aX7HDE1H
ぬこ

たぶん書き手

468:名無しさん@ピンキー
07/01/18 14:52:07 WA1TErYh
>>465
それって鳥つけるとかしないとわかんないし、やったとしても結局荒れるよ。
あるレベルまでは数書かないとダメだし、逆に言えば数書けば上手くなるんだから、誉めるかスルーの二択でいいよ。
誉めとけば荒れないし投下も増えるし、スルーされたら書き手はつまんないんだと分かるから。

469:名無しさん@ピンキー
07/01/18 14:58:27 QrR8hY0d
別に指摘が悪いってんじゃなくて、俺絶対みたいなあまりにも傲慢すぎる意見がやたら目に付くのがな。
>>462とか典型じゃん。それでバランス感覚取れていないというコト。
このスレ、8割くらいは人を見下し視点で指摘しているのが多いからな。
まあ2chやネット上の性質で当然のことではあるが、それにしてもここのスレ住民の見下し視点評価は
プリン・キャラスレ含めた他ハルヒSS投下スレに比べて突出しすぎ。性根が完全に腐っているとしか思えんな。

ツマランならどこがツマランとか言うなら、自分だったらここをこうした方が良いと思うとか
指摘点をきちんと挙げて言うべきだと思うんだが。なんだか自分の意見が偉い!絶対!みたいな人大杉。

470:名無しさん@ピンキー
07/01/18 15:00:07 YED1OoAg
自覚がないってのはとても悲しいことなんだ

471:名無しさん@ピンキー
07/01/18 15:35:50 pTWjySP4
スレ立て直せ

472:名無しさん@ピンキー
07/01/18 15:35:52 XFhwLADF
スレ立て直せ

473:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:07:29 f/aHUcqL
>>465
匿名掲示板でそんなことをどうやって判定するんだ?

>>468
叩きはともかく、問題点を指摘されるのとスルーされるの間には
評者の作品に対する評価に雲泥の差があるんだが

474:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:11:09 wPFBq108
5413tEK9が痛々しくて面白すぎるw

475:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:13:24 WA1TErYh
>>473
誉める以外の評価なんて心の内に留めとけと言っているの。
こんな風に意図が伝わらない事なんて山ほどあって、それが原因で荒れることもあるんだから、黙っておけよと。なんで評価したがるのかなあ。

476:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:13:24 NmluZSI0
>>466


>>465
批評は批評職人が、はよく言われることだが、>>468の通り、現実的には難しい。
情緒や感性に訴える文芸に誰もが納得できる客観的な評価を下すのは、なかなか困難。
SS職人よりもはるかに人材が乏しい上、
「こんな面白いSSにそんな厳しい評価を下すなんて、お前はこの職人が嫌いなんだろ?」
などと筋違いの話を宣う方々が必ず出てくるから。

誰もがそう思う客観的なことというと、
sageない等のお子様らしさ
投稿方法のデタラメさ(誤字脱字はともかく)
内容上の理由のない、明らかな版権との矛盾
結局は、こういうところになってくる。

そして、「~だと思う」とつけても、「何様だ?」と言われるのは同じ、だと思う。

>>469
ずいぶんと人を見下す書き込みだな、おい。
自分は性根が腐ってないと思っているらしいが、その自信はどこから。

自分の嫌いな食べ物のどこが不味いのか説明できますか。好きな食べ物ならどうですか。
説明できなければ、美味いも不味いも言ってはいけないのですか。
そして、説明できるとしたら、もう少しここはこうしたほうがいいんじゃないか、と言うべきですか、料理人さんに。
それこそが傲慢だとは思いませんか?
あいにくと自分は、料理人さんのできなかったことを自分ができるとは思いません。
自分にわかるのはただ、美味いか不味いか、あるいは皿が不潔だとか料理名が下ネタだとか、そのくらいだけです。

>>468
>誉めとけば荒れないし投下も増える
些細なイベントで荒れてしまう、ウィルソンの霧箱みたいなスレになります。
そもそも「荒れる」ってどんな状態?
投下されたトンデモない代物が叩かれるのは、匿名掲示板の常。むしろ健全な状態。
>スルーされたら書き手はつまんないんだと分かる
「義務的GJ」は絶対につけないこと、というLRでもない限り無理。

477:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:21:51 WA1TErYh
>>476
荒れてるって言うのはね、僕とか君のせいでスレの目的が蔑ろにされてるこの状態の事だよ。理想的なスレってのは、つつがなく作品が投下されるスレだよ。
ほんと迷惑かけてごめんなさい。消えます。

478:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:26:54 CMXwcTih
どうでもいーよ
書き手が神
読む香具師は俺含めてみんな虫

479:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:33:38 pHLPsCsT
某キャラスレ→某キャラスレ→VIP→エロパロ→最初に戻る

と言うループで荒れているような気がするんだよな。
俺が書き込むと荒れるというヤツ。
正直に手を挙げろ。

480:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:36:36 3aF4Ftpm
流れを無視してSS投下。
>237に影響されて、数ヶ月ぶりに筆を取ってみましたが……

『へたれキョン』『バッドエンド風』『俺設定』『中二病』『無駄に長い(25KB超)』
のいずれかのワードに引っ掛かる場合はIDをNG指定推奨。
言い訳はこの辺にして、消失IF物を失礼します。20レス予定。本番等無し。

481:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:37:24 3aF4Ftpm

 クリスマスを目前に、突然世界は変わってしまった。
 それともやはり、国木田や朝倉が言うように、変わってしまったのは俺の方なのだろうか?

 まるで誰かに栞の位置をズラされたかのような不快感。
 知っているはずの物語なのに、ストーリーが繋がっていない。
 読み進めていた推理小説は、席を外した間に、スペースオペラに変わっていた。
 飛ばされたページには、いったい何が書かれていたのだろうか。

 そんな栞の錯覚から俺を救い出してくれたのも、やはり栞だった。
 文芸部の部室で見つけた一枚の紙切れだけが、唯一、俺の正気を保証してくれた。

 『プログラム起動条件・鍵をそろえよ。最終期限・二日後』

 どうやら俺は『鍵』とやらを揃えなければならないらしい。
 見事成功すればオープンセサミ。すべての問題が解決するはずだ。
 しかし出来なければ─、
 おそらく、この靴下を裏返しに履いてしまったような世界で、異邦人として暮らすしかないのだろう。

 ちなみに期限を明日に控えた現在、鍵はカタチの見当すらついていない。

482:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:38:21 3aF4Ftpm

 誰かの部屋によく似た、見知らぬマンションの一室。
 三人で囲んだコタツの上では、熱々のおでんが湯気と一緒に良い香りを上げていた。

 上の空で味わう余裕など無かったが、気が付けば腹は膨れていた。
 どうやら消化器官は腕とともに脳から独立宣言をし、せっせと栄養補給に勤しんでいたらしい。
 お腹が膨れたのは他の二名も同様のようで、自然とお開きの流れとなった。


「明日も部室に行っていいか?」

 別れ際に長門に尋ねた。
 今の俺にとって、文芸部の部室が最期の砦だった。

「放課後さ、ここんとこ他に行くところがないんだよ」

 朝比奈さんも古泉も─ハルヒもいない放課後。
 この世界で、唯一、変わらずに俺を迎えてくれた相手が、目の前の寡黙な少女だ。

 多少性格が違ってしまっているが構わない。
 宇宙人の何とかインターフェイスである必要なんか無い。
 いつも通り、部室でパイプ椅子に座って、黙々と本を読んでいるだけでいい。
 お前が居てくれるだけで─……


 長門は俺をじっと見つめ、それから……。 
               、 、 、 、
 薄く、だが、はっきりと微笑んだ。


                             ──目眩がした。


483:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:39:12 3aF4Ftpm

 エレベータで降りている最中、朝倉は含み笑いを浮かべて言った。
「あなた、長門さんが好きなの?」

「……がう、」

 返答は言葉にならなかった。
 目眩がする。足場が揺れる。吐き気がする。
 もしここに朝倉がいなかったら、遠慮無く吐いている。
 すべてを吐き出して、楽になってしまいたかった。
 居なければ……、いなければ……、

 ……居ない、

 おい、  …はどこに居るんだ? 

「ん? 何か言った?」

 エレベータが停止し、扉が開く。
 朝倉は、こちらを気にする様子を見せながらエレベータを下りた。

「やっぱり調子が悪いみたいね。早く寝た方がいいわよ。長門さんを心配させちゃダメよ」

 そのセリフを認めるわけにはいかず、貼り付いた喉から絞り出すように言葉を発した。


「……違う。……あいつは、   …じゃない」


「─?? あなた何を言って─、」
 朝倉の言葉は、最後まで伝わることなく、分厚い扉に遮られた。
 一瞬の浮遊感とともに、エレベータが再下降を始める。

484:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:40:12 3aF4Ftpm
 壁に寄り掛かり、そのままズルズルと崩れ落ちた。
 いっそこのまま、このエレベータが世界から切り離されてしまえばいいのに。

 あんな誰も居ない世界になど戻りたくない。
 そこに、俺の居場所はない─

 願いなんてものは、得てして叶わないものと相場が決まっているらしい。
 神様なんて信じていないが、仮に居るとしたら、とんでもなく底意地の悪いやつに違いがない。
 エレベータは一階に到着し、元の世界へと繋がる扉が開いた。
 俺はヤモリの改造人間のように不格好な動きで、エレベータから這い出した。


 それからどうやって家まで帰ったかは覚えていない。
 気が付くと家で、俺の顔を見て心配する妹や母親に生返事で対応し、ベッドに倒れ込んだ。

 目蓋を閉じても、網膜に焼き付いて離れない。
 別れ際の光景が脳裏で勝手にプレイバックし続ける。
                                   、 、 、 、
 あいつと同じ黒曜石のような瞳で、あいつは、はっきりと微笑んだ。

 目眩がする。
  、 、 、 、
 長門有希は微笑んだりしない。                    、 、 、 、
 分かり切っていたはずのことだが─あいつも、俺の知る長門有希じゃなかった。


 思い知らされ、打ちのめされた。
 ─ここには、俺が知る人間は、誰もいない。




                   『 長門有希の不在 』
                      She's nowhere.




485:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:41:06 3aF4Ftpm

 翌日、俺は学校を休んだ。
 ずる休みってわけじゃない。本当に体調が悪く、ベッドから出られそうもなかった。
 それなりの熱も出てるし、何より母親が学校に連絡を入れた次点で正式な欠席だ。

 今日が栞の定めた期限だった。
 すでに昼時も過ぎて、学校では午後の授業が始まっているころだろう。
 後先のことを考えるなら、寝込んでいる場合などではない。
 今日中に『鍵』を探し出さないと、おそらく二度とチャンスはないだろう。

 ……しかし、何もかもがどうでもいい気分だった。
 捨て鉢な気持ちというのは、こういう状態を言うのだろう。

 ─静かだった。
 時計の秒針の音すら、どこか遠くに感じた。
 聞こえるのは、自分の呼吸音と心音、あとは身体を動かした際に布団がこすれる音。
 この部屋は、昨日のエレベータと変わらない。
 俺だけが取り残された、俺だけの、静かで孤独な空間。

 それは学校に行っても変わらない。
 他人だらけの空間なんて、本質的に独りと何ら違いはない。
 世界はエレベータを相似拡大しただけのものなのだろう。

 ……いかん、熱のせいか思考が樹海の中の方位磁針のように行き先を見失っている。
 俺はそういうダウナーキャラか? 違うだろ? こんな時は寝てしまうに限る。
 後は野となれ山となれだ。

 眠りにつく寸前、間抜けな神が俺の言葉を勘違いするという妄想が浮かんだ。
 目を覚ましたら、一面が荒廃した焼け野原になっていて、誰も居なくなってしまう。
 そんな、くだらない願望─

 ──、

486:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:41:51 3aF4Ftpm

 ノックの音で目が覚めた。
 悪い夢でも見たのか、寝汗で服がピッタリと貼り付いて気持ち悪い。
 喉もマーズパスファインダーが映した火星の表層のように、カラカラに乾燥しきっていた。

 ノックの主は母親だった。
 何でも俺にお見舞いが訪ねてきたらしい。
 女の子よ、と、何を勘違いしたのか嬉しそうな声で付け加えてきた。

 当然、思い当たる節は一人しかいない。
 少し前までだったら、やたらと喧しいのや、心優しい上級生などの候補もあった。
 だが今この状況で俺を訪ねてくる女性と言ったら、あいつしかいない。

 少し待ってもらうように言って、ベッドから起きあがった。
 外はもう真っ暗で、たっぷり寝たお陰か、体調もだいぶ良くなっていた。

 今更ながら、約束を破ってしまったことを思い出す。
 おそらく文芸部の部室で、一人でずっと待っていたのだろう。
 仕方がないとは言え、悪いことをしてしまった。

 寝間着から着替え、目に付く範囲に見られてはマズイ物が無いか確認する。
 どうやら大丈夫のようだ。
 下に向かい、上がってもらうように伝える。

 階段を上ってくる音がする。
 妹の騒々しいのとは違い、想像通り静かでゆったりとした足音だった。
 部屋の前まで来て、コンコン、と控えめなノック。
 どうぞ、と返事をした。

 下校途中に、そのまま寄ってきたのだろう。
 ドアが開き、制服に身を包んだそいつの姿が現れた。


「あら、意外と元気そうね? よかったわ」


 ──、
 まるで予想だにしなかった登場人物に、しばし呆然とする。

 まったく、何だってこう次から次へと予想外のことが起こるのだろうか。
 俺は目の前に立つ少女の名を呟いた。




                   『 朝倉涼子      』
                     Now, she's here.






487:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:42:36 3aF4Ftpm

「……どうしてお前がここにいる」

「随分な言いようね。それ、一昨日も言われたわよ」
 朝倉涼子は、さして気にした風もなく、いつもの微笑み顔で答えた。

「そりゃ言いたくもなるさ。何せお前は─あ、いや、何でも無い」

 あからさまな誤魔化しをしたが、朝倉は相変わらず顔色を変えたりしない。
 ……今更ながら、本当にこいつは出来た人間だと思う。

「最後まで言わなくていいの? 遠慮しないでいいわよ?」
         、 、
「いや、これはお前には関係ないことだ。気にしないでくれ」
                       、 、
 『鍵』探しを放棄した今、いつまでも昔のことを引きずるわけにはいかない。
                  、 、 、  、 、 、 、    、 、 、
 サンタクロースはいないし、未来人も超能力者も、宇宙人なんかもいやしない。
 そんなことは小学生だって知っている。それが当たり前だ。
         、 、 、 、
 ─それがこの世界の常識だ。

 朝倉だってそうだ。確かに宇宙人みたいにハイスペックだが、歴とした地球人だ。
 クラスの人気者で、勉強も委員長の仕事も完璧にこなす。
 病気で休んだクラスメイトを気づかって見舞いに来てくれる優しい奴だ。
 おまけに顔もスタイルも良く、男子垂涎のAAプラス。
 間違っても、放課後の教室で、クラスメイトをナイフで襲いかかったりなどは─


「ふぅん、素っ気ないのね。やっぱり、殺そうとしたことを根に持ってるの?」

488:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:43:06 3aF4Ftpm

 ──、
 ─今、何て言った?

「殺そうとしたことを根に持ってるの? そう訊いたの」
 朝倉は、いつも通り、変わらなさ過ぎる笑顔のままで繰り返した。
「謝罪すればいい? あたし人間のそういう感情、よく理解出来ないけど」

 ……こいつ……、ぜんぶ、知って──

 沸点に達した水分子の気持ちってのは、こんな感じだろう。

「お前の仕業か!!」
 体中の筋肉が不随意筋に変わり、脳の指令を待たずして朝倉に掴みかかった。
 セーラー服のカラーを捻るように掴み上げ、至近距離から睨み付ける。
 脳の中では断線したコードからバチバチと火花が弾け、思考が赤で染まった。

 しかし朝倉の表情は変わることが無く、笑顔のまま冷静に見返してくる。

「それで終わり? 他にすることがないなら離して。時間がないから」

 急激に力が抜けた。
 まるでバッテリー切れを起こしたロボットみたいに、だらりと弛緩する。
 元々、俺は熱容量も熱許容量も大きい人間じゃない。
 瞬間的にヒートすれば、冷めるまでも早い。

「質問の答えは『いいえ』。あたしも巻き込まれた側よ」
 朝倉の言葉は予想に反した物だったが、どうでも良かった。
「涼宮ハルヒの力が失われた世界を作るだなんて、まったくどうかしてるわ」


 なかば投げやりに、絞り出すような声で問い掛けた。

「何しに来た」
「独断専行。本当はいけないんだけど、見てられなかったから」

 内容に反して、にっこりと笑う。
 いつだってこいつは本当に嬉しそうにしゃべる。

「それより」
 ─初めて、朝倉の顔から笑顔が消えた。

「あなたこそ、何をしてるの?」

489:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:43:40 QrR8hY0d
>>467
あんさんは内容批評自体は難しいと思っているわけか。

>sageない等のお子様らしさ
>投稿方法のデタラメさ(誤字脱字はともかく)
>内容上の理由のない、明らかな版権との矛盾

まあそこら辺はまあ最低限投下のルールと言うかやってもらわんと見辛くて困るというかそもそも評価以前レベルのだしな。
だったら、せめてきちんとルールのっとって困る、くらいの言い方しときゃいいものを
何で>>453みたくわざわざお高くとまったような言い方するのかね。それが問題という事。

490:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:43:55 3aF4Ftpm

 ─俺が、何を?

「メッセージは見たんでしょ? 期限は今日までよ。どうするつもりなの?」
 再び笑顔に戻ったが、言葉には逃避を許さない厳しさがあった。

「元の世界に戻りたくないの? 『あの娘』はそれを望んでいるのよ」
「『あの娘』は自覚してないだろうけど、あなたに期待して待ってるのよ?」
「あなたは、こんなところで、何もやらないまま終わるつもり?」


「もう一度訊くけど─、あなた、何をしてるの?」


「─っっ、知るか! だいたい手掛かりも何も無しに、どうしろってんだ!」

 完全に逆ギレだった。ガキの癇癪の方が、まだ可愛げがある。
 思考の崩壊を周囲に示して、責任義務からの逃避を企てた。

 しかし朝倉は許してくれない。
 あくまで冷静な口調で、問いかけの形を借りた糾弾が続く。

「ねえ、『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』って言うよね?」

 それは、いつかどこかで聞いた問いかけだった。
 あの時も俺は、答えから逃げようとしていた覚えがある。
 だってそうだろ。
 そんな重い選択肢なんて、『選ばない』が正解だ。
                        、 、 、
 『やる』でも『やらない』でも、どちらか選べるのは強い人間だ。
 俺は巻き込まれるだけのキャラでいたかった。
 自分からは何も起こさず、状況に流されていたかった。
 ハルヒや他の人間が引き起こす騒動に、文句を言いながら喜んでいた。
 自分から行動を起こす勇気が無く、誰かが引っ張ってくれるのを待っていた。

「あたしはね、やらなくて後悔するのも、やって後悔するのも嫌い」

 しかし、朝倉は恐れることなく第三の選択肢を提示する。


「『やることはやるし、後悔もしない』っていうのが一番だと思うの」

491:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:44:47 3aF4Ftpm

 誰もが望み、誰もが言い躊躇う回答を、驚くほどにあっさりと口にする。
 どこぞの迷惑な団長の言葉にも似た力強さがあった。   、 、 、 、 、
 それは、やると言ったからには周りのことなどお構いなしにやり遂げる者の言葉。

「……お前、何をするつもりだ」

「だからさっき言ったでしょ?」
 朝倉は、にっこりと八月のヒマワリのような笑顔で笑い、

「独断専行」

 物騒な響きの言葉を口にした。


 次の瞬間、足場が溶けた。
 突然の溶解は、床に留まらず、壁や天井まで達し、部屋全体を包み込む。
 住み慣れた部屋は、まるで水銀のように鈍く輝きを放ち、原型を留めていない。

「あなたを元の世界に戻してあげる。『あの娘』のためにね」

 はっきり言って、何が起きているのか全然理解できない。
 だが、はっきりと、何かとてつもないことが起きていることだけは分かった。
 ごく普通の、何の取り柄もない高校生にすぎない俺だ。
 だが、こと不思議現象に巻き込まれた回数に掛けては、そこいらの奴らに引けを取らない。

 そんな俺から見ても、今回の現象はぶっ飛んで凶悪だ。

 目に見えている変化なんて微々たるものだ。
 薄膜を一枚隔てた向こう側では、とにかくヤバい何かが起きている。
 まるで、目の前で、世界が無理矢理に作り替えられようとしているほどの圧迫感。
  、 、 、 、
 天地創造なんていう、天に棲まうお偉い様方の所行を彷彿させる、何かが起きていた。

「バックアップだからって、機能的に劣るわけじゃないのよ」
 変異の中心で、朝倉は力を存分に振るっていた。
 何をしているのかは分からないが、何かをしていることは目を瞑ったとしても分かる。
              、 、 、
 はっきり言って、これ程のものだとは思わなかった。

「むしろ涼宮ハルヒの力が失われ、長門さんがああなった今」

 にやり、猫のように嗤い

「あたしが最強よ」

492:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:47:36 3aF4Ftpm

 世界がゆっくりと回転を始める。
 やがて回転は一箇所を中心に螺旋を描き収縮を始めた。
 ちょうど朝倉の真上を中心に、世界が閉じようとしていた。

 空間は粘性が高いらしく、ぐぐぐ、と固い雑巾を絞るかのような緩慢さだった。
 見ていてもどかしくなるような動きは、ぎぎぎ、とやがてそれ以上進まなくなった。

 抵抗する空間を、無理矢理に捩子曲げようとしているのだろう。
 だが、いまや力は完全に均衡し、これ以上は進みそうもない。
 それどころか、徐々にではあるが、歪みが元に戻ろうとする様子を見せ出した。

 しかし、朝倉は慌てた様子など見せない。

「あーあ、やっぱりこれじゃ足りないか」

 まるで、月曜は憂鬱だから休みにならないかな、なんていうくらいの口調で言う。
 最初から、そんな都合のいいことは起きないと分かり切った上での言葉。
 日本中のどこにでもいる、普通の高校生のような顔だった。

 そして、仕方ないから諦めて学校に行こう、というくらいの気楽さで、


「  倉  子……存在 ─を、    して ─ 情報爆発 … を補  ─ 」


 不明瞭な言葉の後、パキ、と、ガラス細工が折れるような、取り返しの付かない音がした。

 次の瞬間、朝倉の身体を光が包み込んだ。
 いつかの放課後の教室のようなキラキラした輝きではない。
 ひとつひとつの光の粒子が生命を持っているかのような、そんな煌めきだった。
 まるで珊瑚の産卵だった。色彩々のイルミネーションが、渦を巻いて流れ出す。

 光の奔流は収縮上昇し、停滞していた歪みの中心点を突き破った。

 ぽっかりと空いた穴から、嘘みたいに清々しい青空が覘く。
 ─それで、最後の枷が外れた。

 穴を補填するかのように、周囲の空間が回転しながら呑み込まれていく。
 爆縮とでも表現したくなるような勢いで、あらゆる空間が再生の坩堝に投じられる。

 今度こそ抵抗のしようがなく、世界は断末魔の悲鳴を上げながら、終点へと走り出した。

493:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:48:48 3aF4Ftpm

 ふぅ、という溜め息が聞こえた。

 言うまでもない、朝倉だ。
 これだけの現象を引き起こしておきながら、「まあ、こんなもんかな」くらいの態度だった。

 光は相変わらず朝倉の周りに渦巻いている。
 よく見れば、一番輝きが強いのは足先や手先などの末端─


 ちょっと待て。
        、 、 、
 それって、あの時と同じじゃないか!


 正確には違った。
 あの時の朝倉は、光の砂粒になって消えていった。

 だが、今の朝倉は──

 光の浸食が、膝のあたりまで来た。           、 、 、 、
 膝から下は、まるで虚空に蝕まれたかのように、何も無い。
                                           、 、
 ただ見えないだけではなく、何故だか、もっと根本的な─致命的な消失。
 『朝倉涼子』という存在が、徐々に失われつつあった。

 光はなおも上昇していく─いや、浸食していく。

 それに伴い、朝倉涼子が消えていく。

494:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:49:44 3aF4Ftpm

 周囲の空間は、もう放っておいても、勝手に呑み込まれて消えてしまうだろう。
 核反応のように、一度スイッチが入ってしまえば、あとは終焉に向かって突き進むだけだ。
 それでもなお、世界は轟々と唸りを上げながら、最期の悪足掻きを続けている。

 朝倉がこっちを見て、何かを言っている。
 すでに胸より下は虚空に蝕まれていて、辛うじて残っている顔も、光のせいでよく見えない。

 そんな状況にもかかわらず、朝倉の輪郭は、笑っているように見えた。

「 …さんと…付 ─  なら、まじ… 考え ─ダメ  。でな  とわ  ……許さ ─ わ 」

 ……何……言って─??
 圧力を伴う光に押し流されて、もはや朝倉が何を言っているのか聞こえない。
 渦巻く空間が嵐のように唸りを上げて、朝倉の言葉を掻き消していく。

「   …    ……   ─  … 、 ……。」

 向こうだって、聞こえてないのは分かっているはずだ。
 それなのに─自分が消えようとしているのに、笑顔のままで、何かを伝えようとしている。

 浸食はとっくに首を越えている。
 もはや朝倉のカタチなど残っていない。
 なのに、その残骸は、どうしようもなく笑顔のままで─

 その姿から、あろうことか、線香花火を連想してしまった。


 パチパチと火花を散らし、ぽとり、と消える寸前──、



 世界から雑音が消え、最期の言葉だけは、はっきりと耳まで届いた。




      「  …さんとお幸せに。じゃあね」




 ぱっ、と光が爆ぜた。

495:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:50:31 3aF4Ftpm






                   『       の不在 』
                  HER Existence / I'm HERE.






496:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:51:28 3aF4Ftpm

 ぱっ、と目が覚めた。

「おや。お目覚めですか?」

 寝起きの一発目に見たのは、よりにもよって古泉の顔のアップだった。
 思わず両手を使って、はじき飛ばすようにその顔を押しのける。
 古泉はひどいですね、などと言っているが無視を決め込んだ。お前が悪い。

 状況は掴めないが、思考は驚くほどクリアだった。
 さっきまで眠っていたなど信じられない。
 まるで覚醒状態から、ここまで瞬間移動をさせられた気分だった。

 周囲の様子から、状況を推測する。
 どうやらここは病室で、今まで俺はそこで寝ていたらしい。
 それもちょっと貧血で、などというレベルではなく、入院が必要な程度のものだ。
 そこに至るまでの過程の記憶は、すっぱりと抜け落ちているけどな。

 顔を巡らせれば、古泉の他にも見慣れた顔ぶれが並ぶ。
 朝比奈さんは両手を口元にあて、何やら感極まっているようだ。
 長門は相変わらず何を考えているのか分からない無表情だ。
 だが、病室に居てくれたというだけで十分に嬉しい。
 ハルヒは……まあ、あえて言うまでもないだろう。

 そして── 、 ……あれ?


「おい、   …はどこだ?」

497:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:52:27 3aF4Ftpm

 病室に、不思議な沈黙が流れる。

 沈黙はやがて困惑に。
 そして更に別の何かへと変わりつつあった。
 とっさにマズいと警戒する。もちろん、後の祭りなのは言うまでもない。

「ちょっとキョン! 開口一番に他の女の名前を言うなんて良い度胸ね!」

 病院だという考慮は一切無しの怒声が響き渡った。
 当然、病み上がりの俺に対する配慮も一切無く、首元を締め上げ揺さぶられる。
 朝比奈さんが慌てて助けに入ろうとしてくれたが、いかんせん役者不足だ。
 ハルヒという名の猛獣を宥めるのに必要なのは天使の慈悲ではない。

「白状しなさい! その女は、どこの誰よ!」

 誰って、そりゃあ……


                                 ──誰だ?

「…………あれ?」

 記憶の網目に引っ掛かっていた小さな欠片が、ポロリと落ちてしまった。
 もう、どうやっても思い出せそうにない。

 よほど間抜けな顔をしていたのだろう。
 怒っていたはずのハルヒが、心配そうな顔に変化していた。

「キョン、あんた本当に大丈夫?」
「ああ、どうも寝惚けてたみたいだ。あと、みんなに心配掛けたみたいだな。すまん」

 ハルヒは一瞬きょとんとした顔をすると、
「べ、別に、あたしは団長として……」
 などと、ぶつぶつと何かを言っていた。

498:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:53:24 3aF4Ftpm

 その後、医者が呼ばれて、色々と検診や問診があった。
 ついでに病院に運ばれた経緯も教えてもらったが……やはり記憶には無かった。
 医者と入れ替わりに、母親や妹なんかが来て、これまた色々と話をした。
 とりあえず、みんな俺の平気そうな顔を見て安心したようだった。


 ようやく一人になれたのは、目が覚めてから三時間も経ってからだ。
 一人部屋を設えてもらっていたため、本当に一人っきりだった。

 しかし、俺には妙な確信があった。
 確信はすぐに、コンコン、と小さなノックによって裏付けられた。

 返事をすると、ドアが開き、制服に身を包んだそいつの姿が現れた。

「何となく、来る気がしてた」
「そう」

 現れたのは、もちろん長門だった。
 ベッドの脇まで来ると、わざわざ壁に掛けられたパイプ椅子を開いて座った。

 それっきり、何もしゃべり出す様子はない。
 じっと何かを待っているようにも見えた。

 かと言って、こちらから提供する物に思い当たる節はない。
 仕方がないので、時間稼ぎに気になっていたことを訊ねた。

499:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:54:25 3aF4Ftpm

「なあ長門。俺が目覚めたときに言ってた名前に聞き覚えはないか?」

「………………」

 長門は数瞬の間、思案するような顔をすると、

          、 、 、 、
「あなたが言う     …は、過去、現在、未来すべてにおいて存在し得ない」


 ──?
 気になる言い回しだったが、まあ長門が居ないと言うのなら、居ないんだろう。

 再び沈黙が支配する。
 相変わらず長門はしゃべる様子は見せない。
 まるで、今回は聞き役に徹すると言わんばかりの態度だった。

 さて、どうしたものだろう。

「……長い夢を見ていた気がする」

「どんな?」
 珍しく、長門が話題に食いついてきた。
 少なくとも、話題の選択は不正解ってわけじゃなかったようだ。

500:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:55:16 3aF4Ftpm

 いや、詳しくは覚えてないが、普通に学校に行ったりする夢だ。
 学校と言っても、普段とは違ってたな。どこが違っていたかは覚えてないが。
 部室には長門が居て、教室には……あー、誰か居た気がするんだけどな。
 ああ、長門の家にも行ったな。おでんを食べた。教室にいた誰かも一緒だった。

 ……喋っていて、何だかどうでもいい夢の気がしてきた。
 こんな話を聞かされたところで、長門だって困るだろう。

 しかし、予想に反して長門は、熱心に聞き入っていた。
 特に、顔も名前も覚えていない『もう一人の誰か』に興味があるようだ。
 そうと分かれば、話題の中心をそいつに移す。


 そいつは長門のことを色々と気に掛けていたこと。
 そいつは長門のことを大切に思っていたこと。

 そいつは、長門と友達のように接していたこと……

501:名無しさん@ピンキー
07/01/18 16:56:39 3aF4Ftpm

「もし長門にお姉さんがいたら、あんな感じだろうな」

 言ってから、マズったと自分の迂闊さを呪った。
 家族の話題というのは、いつだって慎重に扱うべきだ。
 居ることを当たり前と思ってはいけない。
 世の中には、そうでない人間も意外なほど多くいる。
 やや特殊な例だが、目の前のこの少女だって、その大勢の一人だ。

「……姉さん」
 長門は呟くと、その言葉をじっくりと味わうかのように黙り込んだ。

 無表情の長門からは、何を考えているのかまったく読み取れない。

「すまん長門。気に障ったか」
 沈黙に耐えきれず、恐る恐る尋ねる。
 幸いなことに、俺の目の錯覚でなければ、長門の首は左右に揺れた。
 ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間─



 長門は俺をじっと見つめ、それから……。 
                          、 、 、 、
 薄く、だが、はっきりと─嬉しそうに微笑んだ。


 目眩がした。






                   『 朝倉涼子の不在 』
          "She's nowhere," the girl said, "but she's still here".
            She smiled and touched the chest of herself.
                 "Who is the 'she' ?" I asked.
             "My sis," she replied, "...and my best friend".
                        -end-


502:名無しさん@ピンキー
07/01/18 17:24:01 KQuXATY0
GJ

503:名無しさん@ピンキー
07/01/18 18:12:22 pHLPsCsT
うまいな。
消失~if~物は多いがこういうパターンは初めて見た
良かったよ

504:名無しさん@ピンキー
07/01/18 18:14:06 YAXUOutr
香ばしい中二病のかほりがしたけどGJ。

505:名無しさん@ピンキー
07/01/18 18:14:11 L3y7Yxsd
>>501おつです

506:名無しさん@ピンキー
07/01/18 19:01:55 YUuFNyfZ
80%の確立でBLEACHファン

507:名無しさん@ピンキー
07/01/18 19:08:17 hfb9Bb1Q
何かここ最近SSのオチのつき方がよくわかんないな…
誰かこの作品の解釈をしてくれない?

508:名無しさん@ピンキー
07/01/18 19:10:58 NmluZSI0
面白かった。
キョン一人称文体らしい投げっぱなしが、らしくていい。
やっぱりキョンは朝倉の前ではみくる並の被害者にならなきゃw

509:名無しさん@ピンキー
07/01/18 19:39:38 A58nIMpp
最後の英文はなんなの…?

510:名無しさん@ピンキー
07/01/18 20:21:15 YAXUOutr
英文そのままの意味でしょ

511:名無しさん@ピンキー
07/01/18 20:36:41 3aF4Ftpm
失礼します、作者です。
良いと言ってくれた皆さん、ありがとう。

>507,509
すまん、ぶっちゃけ深いコトは何も考えてない。
初めに少し触れたとおり、中二病要素を詰め込んだだけなんで。
某同人誌(少年フ○イト)を読んだせいで、
少年誌的なムダに熱い展開を入れたくなった。
長文使ってオナって悪かった。

>506
ファンじゃないが、ああいうノリを目指した。それが伝わったなら嬉しい。

512:名無しさん@ピンキー
07/01/18 20:45:47 5vd2/eSj
>>501
こんなに魅力的な朝倉描写ははじめてなんじゃなかろうか
今までスルー対象だった朝倉が好きになってしまいそうです
こういうのを読むと自分も頑張らないと、って思うなぁ

513:名無しさん@ピンキー
07/01/18 21:32:12 RtjflZMn
>>512
> こんなに魅力的な朝倉描写ははじめてなんじゃなかろうか

って書いてしまうあたりに、保管庫を読んでないなと思わせる何かを感じてしまうんだが、
でもまあ、がんばれ。

514:名無しさん@ピンキー
07/01/18 21:36:36 7uzmoqwk
よしんば保管庫には目を通していたとしても、
他板や外部サイトなんかは8割方ノータッチだろ。

515:名無しさん@ピンキー
07/01/18 21:54:03 yq9h2mi9
保管庫や他板や外部サイトの前に
ログをしっかり読みましょう

516:名無しさん@ピンキー
07/01/18 22:17:02 P/aQ4n/n
人の好みはそれぞれだ。皆の一番が同じじゃあるまい。

>>501 乙です。
中二病とか言われると回れ右したくなるんだが、読んでみたらとてもよかったよ
少女漫画と通じる感じというか。
キョンの若さがよく見えて、そういえばこいつ若いんだよな、と思ったよ。
なんか時々忘れるんだよね。

517:名無しさん@ピンキー
07/01/18 22:28:53 OCH0w1+U
俺達は今、真夜中に冷たい僅かに濡れている草原を背にして仰向けに寝転がっている。こんな夜中、まして冬の寒い寒い夜に、何故こんな事をしているかというと、これはこういうものだからである。

そう、俺達は今、天体観測をしている……と言ってもただ見てるだけだがな。

空を眺め続け、もう見飽きてき、早く終わらないのかと考えていた時、ふと俺の方に近づいてくる、人の気配に気がついた。
その人は、今まで遠くの方を見ていた為か誰なのか見分けることが出来ないが、俺には分かる、こいつは長門だ。
その人ー長門はどんどん俺に近づき、俺の隣で寝転がった。そこで俺は兼ねてから疑問に思っていたことを口にした。
「そういえば、長門、一体全体、暗黒物質ってのはほんとは何なんだ?」
「……人類はまだ正体を知らない、だから言えない……」
はは、やっぱりね
「……でも、あなたには言っておく……」
ってことは教えてくれるんだな。暗黒物質の正体が初めに分かった人に、俺はなるのか。あぁ、理科の教科書に名を残したいねぇ。
「……暗黒物質は私のお父さん」
えっ、何だって
「私のお父さん。正確に言うと私の産みの親、情報統合思念体」


518:名無しさん@ピンキー
07/01/18 22:43:49 OCH0w1+U
こんな事を言うなんて、やっぱり長門は変わってきているんだな……って、暗黒物質は情報何とか思念体!?
「……そう」
なるほど……っておい、長門、情報何たら体ってのは実体が無いんだよな?
「……そう。だから見えない、発見されていない。そして、発見されることもない」
しかし長門よ、どうして実体が無いのに、力だけはあるんだ?
「……うかつ」
て言うことは、やっぱり……
「そう、私の冗談」

最近はよく長門の冗談をよく聞くようになった。喜ばしい事ではあるのだが、長門よもう少し分かりやすい冗談を言ってくれ。
「……検討する」

519:名無しさん@ピンキー
07/01/18 22:46:39 dzP12JkA
どっかで読んだ思念体SSが頭に浮かんだ。
主流派と穏健派と急進派の掛け合いみたいなやつ

520:名無しさん@ピンキー
07/01/18 22:48:59 OCH0w1+U
うわっメッチャ駄文。山に行こ

521:名無しさん@ピンキー
07/01/18 22:58:03 ncuz+XrZ
主要キャラの性別が反転してるSSってあったけ?

522:名無しさん@ピンキー
07/01/18 23:14:44 uSs4ZyC4
>>513
いや、俺もこの朝倉は良いと思ったよ。
原作での「悪」のイメージを壊してないのに、何か女の子的な魅力を感じた。

523:名無しさん@ピンキー
07/01/18 23:16:45 L3y7Yxsd
>>520
GJだけど、
謙遜と誘い受けは違うよ。
一回SS書きの控え室に行くことをお薦めする。

駄文だったら投下する前に推敲するなりで少しは改善できたんじゃない?



524:名無しさん@ピンキー
07/01/18 23:18:07 +7tp6oWc
やはり朝倉には、人(有機生命体)を小馬鹿にしたような、イノセントな
余裕がないといけないな。

525:名無しさん@ピンキー
07/01/18 23:31:49 dzP12JkA
>>521
キョンハル反転ならいくつか保管庫にあると思う。イレカワリLOVERとか。
SOS団全員が反転ってのは、少なくとも保管庫では見たことない気がするな。
個人サイトにはあったりするが。

526:名無しさん@ピンキー
07/01/18 23:44:26 7uzmoqwk
>>521
SOS団のみならず、家族、クラスメイト、街行く人々、
すべての性別が入れ替わってるSSを読んだ覚えがあるが
どこで読んだかは覚えてないや。

527:名無しさん@ピンキー
07/01/19 00:01:48 CDd8V9SF
想像してみた
女キョンが親父と妹にからかわれ
無口読書少年に世話を焼き
元気いっぱいクラスメイトと部活

転校生は百r・・・
上級生の着替えをを見てしまったら巨k・・・
後半一気に電波っぽくなった

528:名無しさん@ピンキー
07/01/19 00:04:13 7LSeakH5
妹は妹のままなのか

529:名無しさん@ピンキー
07/01/19 00:11:53 PsM0qN+Q
コギャル化した谷口、国木田らと馬鹿話で盛り上がり
美少女化した古泉に顔を覗き込まれドキドキし
男化したハルヒに振り回される日常
それなんてホストb(ry

530:名無しさん@ピンキー
07/01/19 00:37:28 nDaEgJc6
ここも○ネタが来ると荒れるんだね

531:名無しさん@ピンキー
07/01/19 00:47:57 88YJindr
管理人が共有財産のはずのまとめごとバックレるようなスレにはもう投下する気はないよな

その点、VIPとここは過去の実績がイコール信頼感につながってる。

どちらの管理人さんもご苦労様です。(_o_)

532:名無しさん@ピンキー
07/01/19 01:19:35 fq0k5tBL
>>531
sageろ
「管理人さんもご苦労様です」を伝えるのに人を貶す必要あるのか?
お前の書いたSSなんざ読みたくない
どうせハルヒスレに沸いてた荒らしなんだろうけどな

533:名無しさん@ピンキー
07/01/19 01:24:39 03Gp9gQG
嵐のないスレなんて張り合いがないわ!

534:名無しさん@ピンキー
07/01/19 01:25:31 An9LGSG4
おじちゃん悲しいよ

535:名無しさん@ピンキー
07/01/19 01:27:15 Fr1wQ15j
>>532
嵐というよりストーカーらしいぞそれ。前にもID変え忘れて失笑されてたw

536:名無しさん@ピンキー
07/01/19 01:34:23 nDaEgJc6
スレチなんだが前から聞きたかったんだけど
ここの保管庫の管理人さんって、エロパロ板のあらゆるSS
一人でまとめてるの? すっげーなあ…。本当にご苦労様です。


>>535
荒らしならスルーすればいいけど、ストーカーがまとわりつき続けていたので
閉鎖せざるをえなかったんだと思ってるけど。スルーして耐え続けろってのは
可哀想な状況だった。本人一度も文句や反論すらせず謝るばかりだったしね。

537:名無しさん@ピンキー
07/01/19 02:02:21 dOlJKQkU
スレの流れからして
>>530のレスが不自然過ぎる
まぁ、いつもの何故か常に荒らしとセットで現れる○儲さんなんだろうけど

538:名無しさん@ピンキー
07/01/19 02:08:53 TYGZ9+Pc
>>537
どっちでもいいよ。とにかくお前ら全員ハルヒスレに帰ってくれ

539:名無しさん@ピンキー
07/01/19 02:31:57 Fr1wQ15j
>>536
同情の余地なしの一方的なストーカーっぽいね。何のために生きてるんだろう?

540:名無しさん@ピンキー
07/01/19 03:49:57 +/98qCXX
よーし初めて言ってみるぞー



なんでこのスレは私が帰ってくると必ず荒れてんだ。


541:名無しさん@ピンキー
07/01/19 04:11:11 6vO+wu5R
>>540
おまいはこんな時間まで何処に行ってたのかと?
てか人のこと言えねえwww

542:名無しさん@ピンキー
07/01/19 04:38:38 mfWPXFzR
>>521
保管庫の15-146様「涼宮ハルヒの転換」だと思われる

543:名無しさん@ピンキー
07/01/19 04:46:56 /IUNp5TF
いつも荒れているからだな。
ゲーム系、一部アニメ系、女性系、エロのアニメとゲーム系、ニュースは
いつでもどこでもこんな感じだ。

544:名無しさん@ピンキー
07/01/19 10:18:40 u13VExxz
ふたばみたいな臭い連中の巣窟と比べれば、エロパロだろうがVIPだろうが
キャラスレだろうが、実に居心地がいい。

545:名無しさん@ピンキー
07/01/19 11:46:41 f8xDB3lG
他板の管理人の話はどうでもいいよ。ましてや撤退した人の話はね。

ところでハルヒスレの新まとめが出来たってホント?
好きな短編とか久々に読みたいんだが。
スレチスマソ

546:名無しさん@ピンキー
07/01/19 12:02:47 FKGbwRGv
>>545
まだ移転途中で最近のはまとめに上がったが古いのはまだみたいだな。

ただ問題は、ハルヒスレにはハルキョンSSはいらない、ハルヒは俺の嫁というちょっとおかしいヤツが
まとめサイトいらねと工作活動をしているみたいなので今後、まとめ自体が無くなるかもしれん

547:名無しさん@ピンキー
07/01/19 12:04:35 MxyLr1gV
>>545
まだ移行作業半分も終わってないけど
URLリンク(wikiwiki.jp)

548:名無しさん@ピンキー
07/01/19 12:11:04 X7YV9XcC
他のスレの話題こそどうでもいいだろ。
ハルヒスレなんて見てないし、興味ない奴も多い。
そんな奴からしたらこの会話も荒らしを呼び込み、さらに雰囲気を
ギスギスさせる可能性の高い全く理のないものになっている。

言いたいことがあるなら直接ハルヒスレに行け。
こんな所で陰口モードに入ってないでな。

549:名無しさん@ピンキー
07/01/19 13:28:09 oEpcxyBb
以下、ショウヘイヘーイを挟みいつもの流れに

550:名無しさん@ピンキー
07/01/19 13:34:43 rbmVjRMp
いつも、ってなんだったっけ……

551:名無しさん@ピンキー
07/01/19 13:39:28 MxyLr1gV
投下があるまでスレスト
時々思い出したようにおすすめSS談義

552:名無しさん@ピンキー
07/01/19 13:47:53 KMlqR9eT
基本的には投下されるまで放置。
あとVIPとの比較、好きなカップリングについて、厨房と大人の違い、罵りあい、「sageろ」、好きなSSの話、
「こんなの無い?」、「エロ少ないな」とか「エロ必要か?」などの四方山話、日本語がなってない話、空気嫁、カエレ!
○○の続きキボン、「最近はまった。おもすれー」、「学校ようやく読んだ」、他スレを羨んだり生暖かく見たりなど。

なんだ、あんま変わらないじゃん。

553:名無しさん@ピンキー
07/01/19 14:03:14 03Gp9gQG
ハ「アナル大拡張! いくわよ、キョン」
キ「あふぅっ! んあっ、ひぃぃん」
ハ「すごいわ、もう手首まで入っちゃった……直腸が丸見えね」

554:名無しさん@ピンキー
07/01/19 14:11:37 q6cXFOKn
そういうのをもっと洗練したネタがアナルスレVIPの管轄だ

555:名無しさん@ピンキー
07/01/19 15:58:34 soPqXIUf
流れぶったぎるけど、
古泉が鶴屋さんに膝枕してもらう話ってタイトル何だったっけ。

556:名無しさん@ピンキー
07/01/19 16:08:54 MxyLr1gV
6-363氏の鶴屋さんの陰謀じゃないか

557:名無しさん@ピンキー
07/01/19 16:17:15 soPqXIUf
それだ!これ読んで、この二人もいいなって思い始めたんだが、
あろうことかタイトル失念しちまってて。とにかく、ありがとう!

558:名無しさん@ピンキー
07/01/19 16:24:15 I3NxurDG
>>552
何と的確な常態調査www

559:名無しさん@ピンキー
07/01/19 17:27:37 f8xDB3lG
>>547
トン!
てかまとめいらないとかあり得ないだろ。何考えてんだか。

俺もあの古鶴は好きだ。
ていうか古泉と鶴屋さんは似合うよな。
古泉が冗長な説明をしながら、隣りで鶴屋さんがオーバーリアクションで踊ってる、みたいな図とか。

560:名無しさん@ピンキー
07/01/19 17:42:55 LF93r9lQ
あのグロSSか…

561:名無しさん@ピンキー
07/01/19 19:01:59 J2yT2SqX
対岸の喧嘩を持ってきて何がしたいんだ?

562:名無しさん@ピンキー
07/01/19 19:20:07 P1rGBpgp
終わってる話題を唐突に蒸し返して何がしたいんだ?

563:名無しさん@ピンキー
07/01/19 19:41:25 oMGsrrkx
―ここで時空改変―

564:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:04:46 Kr3AnaZt
ハルヒって誰だっけ?

565:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:07:44 Fr1wQ15j
中華人民共和国の東北にある都市の名前じゃね?

566:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:09:13 0WUEghwW
中華人民共和国?
そんな国はないぞ。

567:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:10:41 MeYhd6px
キョンの名前って何だっけ?

568:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:21:00 +OKwsev4
はて、上は確か涼宮だったと思うが、下はなんだったかな…

569:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:34:52 GrwDSh6Q
>>568
ちょwwwwおまwwwww
10年後の未来からカキコしてるwwwwwww

570:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:44:34 n826Hwgt
>>568
あれ?キョンの名字ってたしか「古泉」じゃなかったか?


571:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:45:14 Kr3AnaZt
>>570
おまえの名字だろそれは

572:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:45:48 J3T1m1mM
>>570
え?古泉はハルヒの名字だろ?

573:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:46:06 QzeEUdJT
で、ハルヒって誰だっけ?

574:名無しさん@ピンキー
07/01/19 20:58:50 rbmVjRMp
ホスト部所属

575:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:02:31 aFNtBdHl
そう言えばなんかあと2年で太陽が寿命らしいな

576:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:03:02 I3NxurDG
そういうノリはあるのかお前らwww

577:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:14:00 //SWAjVM
投下します!
今回はちょっと短め!

578:国木田の接吻
07/01/19 21:15:44 //SWAjVM
俺は今、かわいい女の子と二人きりで買い物に来ている。
かわいい女の子と二人きりで買い物なんて、そりゃデート以外の何物でもないという奴もいるだろう。
俺の悪友の一人なら間違いなくそう言う。ついでにウザい俺理論も披露してくれるだろう。
しかし、俺自身はこの状況を「デート」と呼ぶのにはいささか抵抗がある。
別に買い物につきあわされたのが嫌なわけじゃない。相手が嫌いな訳でもない。
ただ・・・どうもまだ慣れないのだ。
こういう状況と、隣で無邪気に俺の腕を抱きしめている・・・コイツが実は女だったってことにな。


579:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:17:01 //SWAjVM

「どうしたのキョン?ボーっとしちゃって。」
俺の腕を抱きしめた国木田が、上目遣いで俺を見上げてくる。ぐっ、かわいいなコイツめ。
「いや、ちょっと考えことをしていてな。
・・・まさか、お前とこんな風に買い物に出かける日が来るとは夢にも思わなかったってな。」
「そう?あはは、そりゃそうか。
だけど、ボクは中学の時からこんな風になることをずっと夢見ていたんだ。
実際に何度も夢に見たよ。起きる度に、「あぁ夢か」って悲しい気持ちになったけどね・・・。」
「国木田・・・。」
「でも!今はもう大丈夫!だって、キョンがボクを嫌わずにいてくれて、
女の子であることも受け入れてくれたんだし!
しかもデートにまで付き合ってくれるなんて!ボク本当に嬉しいよ!」
そういって眩しい笑顔を浮かべ、俺の腕をさらに強く抱きしめる国木田。
その笑顔と、腕にあたるささやかだがその存在をしっかりと主張するふくらみを感じ、俺は落ち着かなくなる。
「どうしたのキョン?そわそわしちゃって。」
あー、そのなんだ国木田。大変言いにくいことなんだが・・・。
というか、お前も男として生きてきたなら多少は察してほしいんだが、その・・・。
「あ、ひょっとして胸のこと?大丈夫、コレ当たってるんじゃなくて当ててるんだから。
こうでもしないと涼宮さんたちとのスキンシップには勝てそうにないしね。」
確信犯ですか。何が大丈夫なのかはよくわからんが。
しかし、最初に女の子の服を着た国木田を見たときはささやかだと表現した胸だが、
こうして感触を感じると、結構あることがわかる。
ハルヒや朝比奈さんには敵わないだろうが、長門には勝ってると思うぞ。
・・・というか!
「国木田!俺とでかけられたりして嬉しいのは分かるが少し離れろ!」
お前とくっついていると、頭や股間がヤバいことになりそうなんだ。
「あ!嬉しいな。キョンがそんなに照れるってことは、ボクのことをちゃんと女の子だと認めてくれてるってことだもんね!」
国木田はえへ、と笑って俺の腕をがっちりと抱く。離そうとする気配は微塵も無い。やれやれ。

しかし、とふと思う。クラスでの国木田は普通だが、俺と二人きりの時は、かなり甘えてくるようになったなぁと。
俺はこいつのことを飄々とした奴だと思っていたが、それは俺に対する想いを外に出さないようにするための、
こいつなりの努力だったのではないだろうか。
そう思うと、その枷を解き放たれて、自分の想いを一生懸命ぶつけるコイツのことが、
愛しく・・・じゃなくて、その、いじらしく思えた。
別にこいつと付き合おうってんじゃないんだから、恋愛感情なんて俺にはない。ないったらないんだ。
この間まで「男」友達だったんだし。
「キョン?」
国木田が不安そうな目を俺に向けてくる。
「ちょっと・・・はしゃぎすぎ・・・だったかな?」
確かにそんな感じは少しするが、そんな潤んだ目で問いかけられたら男の95%はNOと答えるぞ。
俺は国木田の頭をくしゃっとなでてやった。
「わっ!キョン・・・!」
「ほら国木田。せっかくの買い物なんだから、楽しくいこうぜ。」
「!うん!ありがとうキョン!」
そうして俺たちは買い物へと出かけた。


580:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:18:30 //SWAjVM
国木田と色んな店をまわる。
男友達としての時にも買い物はしたが、その時に比べ、はるかに時間を費やしている。
女は買い物が長いというが、やはりコイツも女の子なんだね。
服やら何やら意見を求められる。どれも国木田には似合っていて、そう言ってやるが国木田は不満顔だ。
「もうキョン!似合っているって言ってくれるのもうれしいけど、かわいいとかきれいとかも言ってよ!」
お断りだ。大体そんな台詞は俺のキャラじゃないことは知っているだろう。
しかもお前が意見を求めている、その手に持っているモノはなんだ。ブラとパンツじゃないか。
女性下着売り場にいるだけでも拷問なのに、このうえさらに羞恥プレイをさせる気か。
「だって、やっぱり好きな人が選んでくれた下着をつけていたいし・・・。」
そう言ってはにかむ国木田。
確かに色々意見も言うし選んでやることもやぶさかではないと言ったが、下着はちょっと・・・。
「あはは!ごめんごめんキョン。ちょっとからかい過ぎたね。
キョンの好みはちゃんと知ってるから、それっぽいのを選んでおくよ。」
何で俺好みの下着を選ぶんだ。大体さらしをまいてるのにいつ使う・・・と、そこまで考えて思考を止めた。
これ以上は考えたくない。考えてはいけない気がする。

その後、アクセサリーショップに入った。さっきは選んでやらなかったが(やれなかった)が、
何か一つくらいは俺が選んだものをプレゼントしたいと思ったからだ。
そう思って店内を物色すると、よさそうなものを見つけた。
それはチョーカーだった。派手すぎず、しかしかわいいデザインが国木田に合うと思った。
早速呼びよせて試着してもらう。予想どおり、よく似合っていた。
「え?キョン・・・これ買ってくれるの?」
ああ、そんなに高くないし、何よりお前によく似合っているからな。
「嬉しい・・・ありがと・・・。えへへ、チョーカーかぁ・・・。
つまり、ボクはキョンのモノっていう証だね。首輪みたいなものだね!」
確かに首輪みたいなものだがそんな意図は無い。これっぽっちも無い。


581:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:20:03 //SWAjVM
そんなこんなで買い物を終え、家路に着く。
国木田は、さっそく買ってやったチョーカーを着けている。本当に嬉しそうだ。
途中で公園によりたいと国木田が言うので立ち寄った。
国木田とならんで公園のベンチに腰かける。ふう、しかし、ちょっと疲れたかな。
「あはは、キョン、年寄りくさいねー。」
うるさい、誰のおかげでこんなに疲れたと思っているんだ。
まぁ楽しかったから良いけどな。
「ふふ・・・。でもキョン・・・。今日、実は結構色々気にしてたでしょ?
特に・・・SOS団の人たち・・・涼宮さんに見られたらどうしよう、とか。」
む、と俺は言葉に詰まる。実は今日、その思いは常に頭の中にあった。
そりゃそうだろう。
国木田が実は女だったとハルヒに知れたらどんなオモチャにされるか分かったもんじゃない。
色々ごまかそうとしても、あいつ相手じゃごまかしきれる自信もあまり無いしな。
それ以外にハルヒに見つかって困る理由は無い。断じて無い。
そう言ってやろうとしたのだが、何故か上手く言葉が出てこなかった。

「いいよキョン。確かに女の子としての付き合いは涼宮さんたちの方が長いしね。
だけど、女の子とのデート中に他の娘のことを考えるのは・・・どうなのかなぁ?」
これはデートだったのかとかハルヒを気にしたのはお前のためだとかいう反論をしようとしたが、
俺の口から漏れたのはいつもの口癖・・・「やれやれ」だった。
「すまん、俺が悪かった。埋め合わせはするよ。」
「ホントに?・・・じゃあキョン、目をつぶってよ。」
目をつぶれ・・・とは。まさか、張り手の一つも張られるのだろうか。
まぁ国木田の腕力を考えればそれほどの威力は無いだろうし、それで国木田の気が済むなら安いものだ。
俺はそう考え、ベンチに座ったまま目を閉じる。さぁ、いつでもいいぞ国木田。
「そう?じゃあ・・・いくね。」
次の瞬間、俺の唇に柔らかいモノが押し当てられた。予想していた事態と違う展開に、俺は困惑する。
しかし、この感触は何だ?初めて味わう感触・・・。いや違う、前に一度・・・。
そこまで考えた俺は驚愕に目を開く。そこには目を閉じて、俺にキスをする国木田の姿があった。
俺が目を開いた気配を感じたのか、国木田も目をあけ、ゆっくりと俺から唇を離す。
離れていく感触を、名残惜しく感じたのは内緒だ。
「ふふ・・・。ボクのファーストキス・・・キョンにあげちゃった・・・。」
実は俺はファーストキス・・・閉鎖空間でのアレをいれるなら、だが・・・じゃないのもナイショだ。
「しかしキョン・・・。やっぱりにぶいねぇ・・・。普通この流れできたら、
キスされそうなものだと分かりそうなものだけどねぇ・・・。
どうせ横っ面を張られるとでも思ってたんでしょ?」
俺は考えていたことを当てられ憮然とする。くそ、何かくやしいな。
そんな俺を優しい目で見つめて、国木田はくすりと笑う。
「でも、そんなキョンだから・・・ボクは大好きなんだけどね。
・・・無自覚にフラグをたてまくるところは困りものだけど・・・。」
ん?国木田、何かいったか?
「ううん、なんでもない!」
そう言って国木田はぴょん、と俺から離れる。
「キョン!今日は本当にありがとう!とっても楽しかった!また行こうね!それじゃまた・・・学校で!」
言うが早いか国木田は家へと帰っていった。
まったく、人のことをさんざんもてあそびやがって・・・。
そして俺は、自分の唇に指をあてる。
あいつの唇・・・すごく、柔らかかったな・・・。
そんなことを考える自分が急に恥ずかしくなって。
色々とごちゃごちゃとしたきた気持ちやこれからのことをとりあえず頭から一時振り払うため、
俺は肩をすくめ、一言呟いた。


やれやれ。

582:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:25:30 //SWAjVM
以上です。もう完全に別キャラですな。
で、こういう流れできたので次は本番を書こうと思います。
ハードルが一気にあがりますが、何とか書き上げたいと思います。
ではー。

583:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:27:18 J3T1m1mM
国木田とならアッーしてもいい!

584:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:36:02 9MWm661U
ほ…、本番…!?
正直、この国木田は大好きだがそこまでいっちゃうのか?
もうちっとハルヒ達とドタバタしてからでもいいんでね?

585:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:44:51 9MWm661U
ボクっ娘って2次元の中の生物だよな。
たゆねと蒼星石と緑先輩くらいしか知らんが。
ちなみに俺の一人称、外では僕w

586:名無しさん@ピンキー
07/01/19 21:46:44 0WUEghwW
今年のセンター試験にも出たりして、ボクっ娘。

587:名無しさん@ピンキー
07/01/19 22:22:48 LessgiIT
>>584
ボクっ娘は結構いる
まぁ狙ってるのだろうがな

588:名無しさん@ピンキー
07/01/19 23:01:21 fq0k5tBL
SS読んだ後にアニメ見直したら国木田が女にしか見えなくなってた


589:名無しさん@ピンキー
07/01/19 23:45:46 aIzLKBdj
もしハルヒ板とか言うのが作られてたら性別反転スレもあっただろうな。
まあ住人が分散しなかったからこそここもこれだけ続いてるんだから
悪い事ばかりでもないか。

590:名無しさん@ピンキー
07/01/20 00:53:22 fbvutXqW
ボクっ娘よりもはるかにオレっ娘(娘?)のほうが多い現実。

絶望(ry

591:名無しさん@ピンキー
07/01/20 02:06:46 /2ehuFS6
俺っ子がたまに「私」と言うと凄くキュンとくるんですが。
異常でしょうか?

592:名無しさん@ピンキー
07/01/20 02:09:48 PR/m/0Ma
名物「あいつに胸キュン」やな

593:名無しさん@ピンキー
07/01/20 02:12:20 /2ehuFS6
>>592
どうしよう。そいつ男なんだよね

594:名無しさん@ピンキー
07/01/20 02:40:26 SweHRK/C
>>593
アッー!

595:名無しさん@ピンキー
07/01/20 02:49:50 PR/m/0Ma
《いつか、どこかの時間線上で。できればごめんなさい》

こんな感じやな。

596:名無しさん@ピンキー
07/01/20 06:39:38 XYPdCL6K
何か思ってたよりここの人は国木田ネタを受け入れてくれてんだな。
こりゃもう一本書くしかないな。

597:名無しさん@ピンキー
07/01/20 11:55:19 WGIJjK/K
薔薇

598:>>597
07/01/20 11:58:01 WGIJjK/K
うわぁ、ごめん!なに意味不明なこと言ってんだろう、俺は!

599:名無しさん@ピンキー
07/01/20 12:09:29 TZ0GNgjD
ワロスww

「いてっ」
なんでこんなところに薔薇があるんだか。
「血が出てる」
「大丈夫だ。ツバ付けときゃ治るさ」
「貸して」
そう言うと長門は俺の手を取って指を口に咥えた。猫などを飼っていると解ると思うが、指先は神経が集中していて舐められると結構気持ちいい。以下略

600:名無しさん@ピンキー
07/01/20 12:29:23 pv6DuDTI
ろつぴやく

601:名無しさん@ピンキー
07/01/20 13:26:05 5Hf/RZBr
キョンの記憶喪失の話が読みたいなぁー

602:名無しさん@ピンキー
07/01/20 14:37:35 X3CONuiB
キョン記憶喪失はいつか本編で読める

603:名無しさん@ピンキー
07/01/20 15:05:12 lz41R17u
久々にSSを投下します。
非エロで14レス程度

604:ハルヒの野望・戦国群雄伝1
07/01/20 15:06:09 lz41R17u
僕はいったいどうしてしまったんだ?
忘れたいはずなのに、あの時のあの感触が今も手に残っている。
これまで、こんなことなどなかったというのに……。
でも……、今まで必死にこの気持ちを否定してきたけれど、もう抑え切れそうにない。
僕は彼女のことを……。
しかし、この初恋には大きな障害がある。策が必要だ。

しばらく黙考した後、僕はあるものを携えて、重く立て付けが悪くなった部室のドアを開け
て、SOS団の部室へと足を向けた。



「ねえ、キョン。あんたの理想のタイプってどんなの?やっぱりみくるちゃんなの?それと
もミヨキチって子みたいなのが好みなのかしら?」
春休みを間近に控えたある日の放課後、SOS団部室で二人きりになるという偶然のなか、
束の間の時間にハルヒはそんな突拍子もないことをのたまった。
一瞬背筋に冷たいものが走り、驚きを隠せないまま、俺は油の切れた扇風機のごとくギギギ
とハルヒの方に視線を向けると、彼女は俺の顔を直視はせず、腕を組みあぐらをかきつつ窓
の外へ視線を向けたままだった。

ハルヒがこんなことを言うなどとは、かの高名な予言者エドガー・ケイシーでも彼女の奇矯
な言動や行動の予測は不可能だろう。無論、一般人の俺に予想できようはずもない。
これは天変地異の前触れか?それとも何か悪いものでも食ったのか?
いずれにしても、ハルヒの意外すぎる質問に、俺にできることといえば驚愕と困惑、それと
なぜかはわからないが、浮気を責められるしがない亭主のような感情が入り交じった表情を
浮かべることだけだった。


「はあ?何言ってんだ、お前……。あれだな、さては昨日の夜に『檸檬』や『葡萄』なんか
の漢字の書き取りでもやってて熱でも出したのか?」
返答に窮した俺としては、考えをまとめる時間稼ぎにこんな答えを返すしかないわけだ。
すると気に入らない返答だったらしく、ハルヒは俺の方に顔を向けてギロッと睨め付けると、
「はあ?あたしがそんなことをするわけないでしょ!いいから教えなさい!」
……逆効果だった。
ハルヒはまさに猪突猛進の字を体現するかのごとく、俺の席の前まで神速で移動し、顔には
泣く子も黙るほどの威圧感のある笑みを浮かべながら、俺の胸ぐらをつかんで顔を近づけて
きた。
「ほら、キョン。隠すと身のためにならないわよ!」
「なんでそこまでされて、お前に教えなきゃならんのだ」
俺にはハルヒのこの詰問の意図するところがまるでわからないが、妙に寒気がするのは気
のせいか?

「何をためらっているの?ただ、あたしに好みのタイプを教えてくれればいいだけじゃない」
「……それを聞いて、お前はどうしようと言うんだ?」
ハルヒは少し答えに詰まりかけたが、すぐに答えを見つけたのか、こう切り返してきた。
「別にどうもしないわ。ただ、あんたがデートした相手って、どっちも少し似た感じの
女の子じゃない?だから、あんたみたいなさえない男は、そういうのが好きなのかなと
思っただけ。別に深い意味はないわ」


605:ハルヒの野望・戦国群雄伝2
07/01/20 15:07:05 lz41R17u
……深い意味がないと言うなら、お前のその形相と、全力で疾走するディープインパクトさ
え跳ね飛ばしてしまいそうなその勢いは何なんだ?

しかし、こんな問答をしているうちにもさらに迫り来るハルヒ。これは精神的にもそうだが、
ハルヒを阻止しようと精一杯の抵抗を見せる俺の腕のあたりに2つのプレッシャーを感じる
のは落ち着かない。
なにやら、不覚にも妙な気分にもなっちまいそうだ。
・・・・・・こんなところを他の部員にでも見られでもすれば、いらぬ誤解を与えてしまうことに
なるに違いないだろうぜ。

「ガチャッ」

「遅れちゃってごめんなさぁい」
……最早説明するまでもないだろう。俺の脳髄をしびれさせるえもいわれぬその声、だが……。
お約束ですね、朝比奈さん。
まるで、タイミングを見計らって入ってきたとしか思えない、未来からやってきたポンコツ
天然少女(失礼)我が天使の朝比奈さん。
彼女は謝罪の言葉を口にしつつ、俺とハルヒが繰り広げる攻防戦を目撃し、その光景に唖然
とした。そして彼女は熟れたリンゴのように頬を真っ赤に染め上げた。
「お…お取り込み中でありますか。ご…ごめんなさぁい!」
微妙に口調が変だが……。

こんなこと前にもあったな、と俺があきらめと悟りの境地で、もごもごしながらあたふたして
いる挙動不審の朝比奈さんを見つめていると、第二の目撃者がやってきてしまった。
解説好きのスマイル野郎、古泉だ。
古泉は、端から見れば修羅場か、あるいは遺憾ながらじゃれあっているようにしか見えない
この状況を認めると、微笑ましそうな表情を浮かべ、朝比奈さんを促して部屋の外へとU
ターンしようとした。

すると時を同じくして、珍しくも遅れてきた長門が部室にやって来た。


606:ハルヒの野望・戦国群雄伝3
07/01/20 15:07:50 lz41R17u
長門は遅れてきた割にはいつものごとく一言も発さず、喧噪甚だしいこの部室のその状況に
反比例するかのような静寂を伴って入ってきた。
そして彼女は俺とハルヒを一瞥したが、この騒動には興味がないらしく、テーブルの上に鞄
を置いてパイプイスに腰をかけ、ダンベル代わりになりそうな一冊の極厚本を取り出しそれ
を広げた。

その長門の落ち着いた行動の効果と言っていいのか、ハルヒにとって幾分の鎮静剤となったよ
うで、まるで業務用冷蔵庫に放り込まれた温度計のように、興奮のバロメータをみるみるう
ちに引き下げ、繊維がバラバラになってもう修復不可能かと思えるような俺のシャツから
ようやく手を離した。
そしてハルヒは俺から顔をそらすと、何事もなかったかのように自分の席まで戻り、イスに
静かに腰を下ろした。

それにしても、俺に迫っているを皆に目撃されて、恥ずかしがったり照れたりすりゃ、ち
ょっとはかわい気があるんだが、ハルヒの奴、平然としていやがる。
まあ、ハルヒのそんな姿なんぞ想像できないし、した日には体中に湿疹が出そうだ……。
そのハルヒはといえば、パソコンの画面を見つめながら、制服姿のままの朝比奈さんにお
茶を要求し、それを受け取ると高級茶葉の価値をみじんも感じさせないほどにすぐさま飲
み干した。

そしてハルヒは、さっきまで俺に迫っていたことは、まるで忘却の彼方に追いやったかの
ように、朝比奈さんに対するセクハラ行為を行っている。
廊下で足音がこいらに向かってきたようで、部室のドアの前で立ち止まった。

「たのもう!」
ここはいつから道場になったんだ?
だが、ハルヒは部室の外から聞こえる声を完全に無視して、朝比奈さんの口から悩ましげな
声が漏れるほどに、彼女の胸を揉みしだいている。
「だから、たのもう!と言っているじゃないか!」
こちらからの返事を待ちきれず、ある人物が部室のドアを開け、押し入った。
不機嫌そうな表情を見せるハルヒ。
いいところだったのにちょっと惜しい、と思ってしまった青い自分が呪わしい。
だが、俺は入ってきたその人物の顔を見るやいなや、再び騒動の種が持ち込まれたことを感
じざるを得なかった。一難去ってまた一難だ。
その人物とは、お隣さん兼SOS団下部組織と成り果てたコンピ研の部長氏だ。

部長氏の姿を見た朝比奈さんは、最早彼女にとって、トラウマと化したかつてのパソコン強奪
事件における恐怖体験を想起させるのか、気の毒にも怯えの表情を浮かべた。
もちろん、悪いのはハルヒであって部長氏ではないのだが、彼自身が朝比奈さんのトラウマ
の対象となってしまっていることには同情の念を禁じ得ない。

「あら、誰かと思えばコンピ研の部長じゃない。なぁに?またパソコンをくれるの?でも、
今のところ間に合っているから無理しなくてもいいわよ」
……この女は、罪の意識というものを感じたことがあるのか?
コンピ研の部長氏はSOS団に―というよりハルヒにだが―目をつけられたがために、
その運勢が凋落の一途をたどることになった気の毒な存在だ。
だが、その部長氏のことを、ハルヒはパソコンの配達業者程度にしか思っていないようだ。


607:ハルヒの野望・戦国群雄伝4
07/01/20 15:08:23 lz41R17u
「ちがう!僕はそんな用で来たんじゃない。別のことで来たんだ。それとも、君たちはこれ
以上僕たちからパソコンを巻き上げるつもりか?なんなら、以前君たちがやった卑劣きわ
まりないパソコン強奪劇のことを生徒会の耳に入れてもいいんだぞ」
ああ、あれだ、こんなことわざがあったな。馬の耳に念仏ってやつが。
さしずめハルヒの耳に苦情。とでも言った方がいいか。
言葉の通り、こんな抗議や脅しでは、ハルヒのチタン合金より頑強な神経は、地球の裏側で
おきた地震ほども揺るがない。

だがそんな部長氏の勢いは、ハルヒが一言も発さず昂然としていることに怖じ気づいて、まる
で商店街のアーケードに引っかかったゴム風船のように、徐々にしぼんでいった。
「そ、そんなことはどうでもいい。実は、今日おもしろいイベントを提案しに来たんだ」
と、ついには前言を撤回し、本題に入った。

イベントと聞いて、退屈を嫌うことの甚だしいハルヒは、俄然瞳の色を輝かせた。
「なに?校長の髪の毛を本人に気づかれずに全部抜いてくるとか、それとも『テロが起き
た』って警察にイタ電でもするの?」
どんな罰ゲームだ?それは。……おまえは無期限停学処分でも食らいたいのか?
「違う!僕が持ってきたのはこれさ」
と部長氏が差し出したのは、一枚のDVD-ROMだった。どうやらゲームソフトらしい。
「なあに、これ?またゲームで対戦をやるの?それに勝ったらパソコンを返せっていうん
だったら容赦しないわよ。今度は北口駅前であんたたちのストリーキングをやってもらうか
ら覚悟しなさい。その時には村上ショージのギャグを叫びながら歩くのよ」

……二重の意味で寒さと羞恥に打ち震えることになるような、およそ常人には考えもつかな
い世にも恐ろしい罰ゲームを提案するハルヒ。
しかし、これは俺の勘だが、おそらく部長氏の目的はパソコンの返還などではなかろう。
彼は、前回の件でSOS団に勝負を挑むことがどれだけ実のないことかわかったはずだ。
なにせ完璧超人の長門に、超がつくほどの負けず嫌いのハルヒが相手では、彼らには荷が
重い。相手が一般人じゃないのだからな。
程なくしてハルヒの一方的な罰ゲームの発表が終わると、部長氏はいささか顔を引きつらせ
て口を開いた。
「ち…違う。パソコンのことはもういいんだ。実は……」

部長氏の説明によると、今回は純粋にゲーム大会だ。このSOS団の面々に部長氏を加えた人数
だけで行うということで、コンピ研の他メンバーは参加しないとのことだ。
ただ、今回の大会における最大のポイントは、優勝者にある特典が与えられるということ。
それは部長氏提供のファミレスの食事券。そしてそれに加え、優勝者にはそれを使ってメン
バーのうちの誰かを誘う権利が与えられるらしい。もちろん指名された者は拒否できない。

……俺には正直、部長氏の意図を計りかねた。
誰かを誘いたいというなら、直接誘えばいいのだが、これまでパソコン一筋の部長氏には無
理な話か。だが、こんな提案をハルヒが受け入れるわけがないよな。
だろ?ハルヒ。
「……いいわ。おもしろそうじゃない?やりましょう!」
……って、即決かよ。


608:ハルヒの野望・戦国群雄伝5
07/01/20 15:09:21 lz41R17u
「みんなは不服はないわよね?古泉君は問題なし。有希も反対意見はなしと。みくるちゃんも
OK……なに?その顔は。みくるちゃん、い・い・わ・ね?……はい決定と」
俺たちに、拒否権などありはしないのさ。ハルヒ独裁体制のこのSOS団にな。
「みんな賛成してくれてるし、やりましょ」
しかもあからさまに俺をスルーしていきやがった。この女は。まあ、どうせ俺が反対したと
ころで、無駄な努力だろうがな。


「でも、食事券だけじゃ優勝賞品としては貧弱よね。……そうね、あたしからはこれを提供
してあげるわ。だからこれも賞品にしてちょうだい」
と、ハルヒが鞄の中から取り出し、テーブルの上に差し出したのはペアの映画鑑賞券だ。
しかし、そんなものをハルヒが持っているなんて、どういう風の吹き回しだ?
それに、なんでハルヒはこれほどまでに乗り気なんだ?
まさか朝比奈さんを誘って、映画館の暗闇に乗じてイタズラし放題をもくろんでいるのか?
というか、ハルヒは日常からやってるから関係ないな。
他に何か意図があるのかもしれんが、これ以上は考えないでおこう。いや、考えてはいけな
い気がする。

「これはね、昨日、新聞の勧誘員からもらったものよ。もちろん新聞は取らなかったけどね」
などと、満面の笑みを浮かべ、武勇伝を語るかのように誇らしげに胸を張っているハルヒ。
……お前は鬼か?
運悪くも、ハルヒの家を訪問してしまったその勧誘員に、俺は同情するぜ。きっと精神的に
追い詰められて、チケットを提供せざるを得なかったのだろう。
おそらく金輪際、蟻地獄のようなハルヒの家を訪れる勧誘員はいないだろう。

部長氏の説明が終わった後、全員ゲームのマニュアルに目を通し、さあ今から始めるわよと
ハルヒが言い出しのだが、あとわずかで下校時間となるため、今日のところは操作の練習に
とどめておくことになった。ハルヒも不承不承頷いた。
「しょうがないわね。今日のところはこのぐらいにしておきましょう。でも、明日は授業が
午前で終わりだから、お昼ご飯食べたらノンストップでやるからね。勝者が決まるまではみん
な返さないから、そのつもりでいなさいよね」

せいぜい、夕方までには終わらせてくれよ。よもや理科室の標本が動き出すような時間ま
で、ってのは勘弁だぜ、ハルヒ。
「じゃあ、あたしがみんなのお弁当を作ってきましょうか?」
なんと、朝比奈さんはお優しくも、お手製の弁当をその美しい御手で作るとおっしゃっている。
なんという幸福。まさしく重畳の至りだ。
朝比奈さんが作った弁当なら、俺はたとえ中身が白いご飯だけでも、跪いてそれを頂戴するね。

「ねえ、みくるちゃん。お弁当もいいんだけど、どうせなら調理室で何か作ってくれない?
もう授業もないし、自由に使えるでしょう?」
おいハルヒ、あそこは自由に使っていいところじゃないぞ、先生の許可がいるんじゃねえか?
「そう?『ご自由にお使いください』って書いてなかったかしら」
書いてねえよ。
「そうだったかしら?まあ、いいじゃない。学校の施設はみんなのものなんだから、あたし
たちが使ったって問題ないわよね」
いかにもハルヒらしい。まさしくハルヒならではの論理だ。

俺はハルヒの言葉を聞いて、すぐさま古泉に目配せした。すると、古泉はわかりましたとい
う表情を浮かべて、微笑した。
断っておくが、俺と古泉は目と目で意思の疎通が図れる特別な関係というわけではもちろん
ないのであしからず。ただ、俺は無用なトラブルを避けるため、古泉に調理実習室の使用許
可を取らせるべく合図をしたわけだ。
このように、無茶で無謀で猪突猛進のハルヒの陰には、苦労して根回しなり、後始末なりを
する俺たちの姿があるわけで、それがなくなればどんなにいいかとも思うが、なければない
で物足りなくなるのかもしれんな。


609:ハルヒの野望・戦国群雄伝6
07/01/20 15:09:57 lz41R17u

なんにしろ、朝比奈さんの手料理がいただけるわけで、俺にとっちゃ願ったり叶ったりだ。
明日は至福のひとときを過ごさせてもらうぜ。
「じゃあ、みくるちゃん、明日はお願いね。でも、もし一人で大変ならあたしも手伝うけど、
どう?」
殊勝にも朝比奈さんの手伝いをするというハルヒ。だが、朝比奈さんは軽くかぶりを振って、
「大丈夫です。あたし一人でできますから」
「そ、そう?」
なぜか少し残念そうに見えるハルヒ。

「何かリクエストありますか?あったらそれを作りますけど」
朝比奈さんは柔らかなほほえみを浮かべて、そう提案した。
いえいえ、朝比奈さんが作るものなら、たとえ冷凍食品を暖めただけでも、高級懐石さえも
凌駕する味に変貌します。
それでも、何かリクエストしようかとしばし考えていると、ある女子生徒が唐突に口を開いた。
「……カレー」

さて、誰の発言かは言うまでもないだろう。
カレー大好き宇宙人、長門有希その人である。
ちなみに、俺は今日、初めて長門の声を聞いた気がする。
「カレーですね、わかりました。じゃあ、みなさん、明日は楽しみにしていてくださいね」
もちろんです。俺はこれまで、明日という日をこれだけ待ち望んだことはありません。
もはや、ゲーム大会のことなど、はるか銀河の果てである。
などと、俺の浮かれた気持ちが顔に出ていたのか、ハルヒのジト目にギクッとさせられた。
そんな時、明日の準備のために早めの帰り支度をしていた朝比奈さんが小声で俺に囁いた。
「キョン君、あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」

何でしょう、朝比奈さん。
「カレーって、以前長門さんの家でご馳走になったあの料理でいいんですよね?」
……?未来人である朝比奈さんは、カレーを食べたことがあまりないのだろうか?と、訝しげ
に思いながらも取りあえず肯定しておく。
そうですよ、朝比奈さん。あの時の料理がカレーです。
「やっぱりそうだったんですね。じゃあ、『黄レンジャー』がよく食べていたものと一緒
なんですね?」
……なぜカレーのことはよくわかっていないのに、黄レンジャーは知っているんだ?ってい
うか、あなたは本当は何歳ですか?

朝比奈さんが、まともなカレーを作れるのかを少し不安を感じた俺は、明日悲劇を招かない
ため、念のために助言をしておいた。
「難しい料理ではありませんし、スーパーにはカレーのルーも売っていますから、それを使
えば簡単に作れますよ」
「キョン君、ありがとう。うん、カレーを作るのは初めてだけど、今日お料理の本を読んで
予習するから、たぶん大丈夫。だから、安心して明日を待っててね」


610:ハルヒの野望・戦国群雄伝7
07/01/20 15:10:33 lz41R17u
朝比奈さんの天使の笑顔に促されて頷きはしたものの、なんだ、この言いしれぬ不安感は?
朝比奈さんが、決して料理下手というお約束スキルを保持しているわけではないことは、以前に実証済みなのだが、明日何かが起きそうな予感がしてならない。



下校時間の到来とともに、ハルヒによる解散宣言を受けて、俺たちは三々五々帰路につくわ
けだが、校舎を出ようとしたころ、意外にも明日のイベントの企画者であるコンピ研の部長
に声をかけられた。
「君!キョン君と言ったっけ?ちょっといいかな」
何が悲しくて、コンピ研の部長にまで渾名で呼ばれねばならんのだ?
「ええ、かまいませんが、どういうご用件でしょうか?」
「ここじゃなんだから」
というわけで、俺たちは学校の裏庭に移動し、部長氏から手渡されたコーヒーを手に、ベン
チに腰掛けた。

部長氏はやや思い詰めた表情にも見え、次の発言が待たれた。
「実は話というのは他でもない。君に朝比奈さんのことを聞きたいんだ」
どういうことでしょうか?
「忘れられないんだ」
は?
「だから、あの時のあの感触が忘れられないんだ!」
ますますわからん。部長氏は何が言いたいんだ?
「去年の春、君のとこの団長さんの策略にはめられて朝比奈さんの胸を触ってしまったわけ
だが、それ以来、僕の中にもやもやとした感情がくすぶっていたんだ。それからというもの、ことあるごとにあの日の感触が思い出されてしまって、勉強も手につかないことがあったの
さ。それで最近、これが恋だと言うことに気がついてしまったんだ」

古今東西、恋のきっかけというものは人それぞれだろうが、部長氏は朝比奈さんの胸を触っ
てしまったことで目覚めたという。
俺は16年間生きているが、胸を触って恋に落ちるなどと言う話を聞いたのは初めてだ。おそ
らく、今後も耳にすることはないだろうが。
あまりに突飛かつ、意外な話に呆気にとられている俺にかまわず、部長氏は話を続けた。
「前にもゲームの対戦をしたことがあったろう?あのとき、団長さんは朝比奈さんを賭の対
象として差しだそうとしたしたけど、僕が断ったのは君も知ってのとおりだ。あのころはお
互いトラウマの対象であることの方が大きかったし、僕はこの気持ちを必死に否定していた」

では、今回こんなイベントをハルヒに提案したのは……
「そういうことなんだ。君も回りくどいことだと思っているんだろうけど、今、朝比奈さんに
告白しようとしたところで、彼女は怖がってまともに相手にはしてくれない。だったら、
こんなことでもいいから彼女とデートをして、そこで僕のことを知ってもらって、さらに僕
に対するわだかまりを取り払ってもらった上で告白しようと思ったんだ。幸い、僕のもくろみ
通り、というよりそれ以上にあっさりと団長さんも乗ってきてくれたしね。」

ですが、どうして俺に話をしようと思ったんです?
「君が、あのなかで一番話せる人間だろうと思ったからさ。こんなことを聞いてくれるの
もね」
そういうと、部長氏は本来の目的であったはずの朝比奈さんのことを俺から聞くこともなく、
礼を言って去っていった。
部長氏が去った後、両手に持ったコーヒーカップのぬくもりを感じながら、俺は赤く染まり
つつある空を見つめていた。

611:ハルヒの野望・戦国群雄伝8
07/01/20 15:11:23 lz41R17u
日は変わって翌日の放課後、待ち望んでいた昼飯時だ。
授業の終了とともに帰り支度を始めた谷口が、お前も気の毒だなという哀れむような表情を
浮かべていたが、俺は谷口に対する優越感でいっぱいだった。
理由は簡単、今日は朝比奈さんの手料理を味わえるという貴重な一日なのだ。これでは憂鬱になろうはずもない。

俺は教室を後にし、昼食担当である朝比奈さん以外のSOS団全員と、コンピ研部長がすでに
いるはずのSOS団部室に向かった。そこで時間調整の後、ハルヒを先頭に、俺たちはぞろぞ
ろと調理実習室へと移動する。
さて、今日はカレーがテーブルに並ぶはずだ。心なしか長門もうかれて見える。もちろん俺
も楽しみにしている。

俺たちは調理実習室にたどり着いた。そこからはカレーのいいにおいが……
しない……?
これはひょっとして……。
ドアを開けると、実習室のテーブルに並べられていたものは……

なんと、ハヤシライスだった。

皆の驚きに、まるで気づいていないメイド姿の朝比奈さんに、俺はあわてて耳打ちする。
「朝比奈さん。これはカレーじゃなくて、ハヤシライスですけど……」
「ええ!?そうなんですか?……あたし、間違ってハヤシライスのルーを買っちゃったみた
いです」
驚く朝比奈さん。ていうか、匂いでわかってください。いや、それより前に、ルーの外箱
の表示が違うことに気づいてください。
「……」
長門は少し、ムッとしているようだ。

朝比奈さんのポンコツぶりにますます磨きがかかっている最近の様子を見ていると、今の朝
比奈さんがあの朝比奈さん(大)につながっているとは、正直とても考えられない。
俺には朝比奈さんの健やかな成長を祈るしかなかった。
さて、多少のトラブルは勃発したが、気を取り直して、俺たちは朝比奈さんの手製の料理を十
分に堪能することができた。
若干一名、まあ、朝比奈さんなんだがな、長門の視線に少し怯え気味だったのが気の毒では
あったが……。

そして時は過ぎ、俺にとって幸福きわまる昼食が終わり、いよいよメインイベントであるゲーム大会の時間となった。
俺たちはSOS団部室に戻り、パソコンを立ち上げ各々の席でスタンバイし、ハルヒの開始
宣言を待っていた。
ちなみに言い忘れていたが、ゲームの内容はこうだ。
タイトルは『足利氏の野望』といい、歴史シミュレーションゲームで、コンピ研オリジナル
と言うことだ。なお、内容的には世間的にも有名な某ゲームを踏襲している。ただ、シリー
ズのいいとこ取りをしたシステムということで、ある意味本家を凌駕しているといえなくも
ない。
最後に勝利条件だが、それぞれが好きな戦国大名を選択し、最後まで生き残ったプレーヤーが
優勝者だ。なお、跡継ぎによるプレーの続行は認められない。担当する大名が死ねばそこで
ゲーム終了だ。


612:ハルヒの野望・戦国群雄伝9
07/01/20 15:11:58 lz41R17u
ハルヒは部室を見渡し、全員の準備が整ったことを確認して開始の宣言を行った。
「さあ、みんな、準備はいーい?じゃあ、始めるわよ。戦闘開始!トラ・トラ・トラよ!」
おいハルヒ。それ時代も使うシチュエーションも違うだろ……。
とにもかくにもゲーム大会はが開始されたのだ。
ところで、それぞれが担当する大名だが、ハルヒはその性格に共通点があるのか、予想通り、
織田信長だ。そして、朝比奈さんは当時松平元康と名乗っていた徳川家康。長門は松平家の
直上、甲斐信濃を支配する武田信玄。ハルヒの忠実なる太鼓持ち古泉は、意外にも少し離れ
た相模周辺を統治する北条氏康だ。そして、この大会の提案者であり、優勝を誰よりも欲し
ているであろうコンピ研の部長氏は、このゲームのタイトルもなっている将軍家である足利
氏、足利義昭だ。
ちなみに俺は、人材、地の利など、境遇に恵まれている島津義久を選択しておいた。

さて、ゲームが開始したが、俺はすぐには攻め込まなかった。
ますは内治に努めて国力の増強を図り、力を蓄えることにした。1ターン目は内政のコマン
ドの実行で終えた。
しかし2ターン目、早くも波乱が起きた。
長門担当の武田信玄が、朝比奈さんの担当する松平家の支配する領土にいきなり攻め入った
のだ。
ここで、朝比奈さんは致命的なミスを犯した。彼女はどうも操作がよくわかっていないらしく、籠城戦をすべきところを野戦決戦に出てしまい、武田信玄自ら率いる最強の騎馬軍団により
1兵たりとも残らないという、全滅ではなく殲滅の憂き目にあった。
何が起きた理解できず、茫然自失の朝比奈さん。いくらゲーム音痴の彼女とはいえ、2ターン
目にして早くも敗退するとは思いもよらなかっただろう。

しかし、長門……。おまえ、カレーのことで根に持っていただろ?
普段、ドライアイスのような冷静さを持ち合わせる長門の、意外な一面を垣間見たようだ。

その後、長門は余勢を駆って、疾走する馬のごとく、猛烈な勢いで主に北陸、北関東、東北
をほぼその手中にし、勢力を拡大していった。
この勢いにはさしもの古泉もなすすべがなく、南関東と、東海東北の一部をその版図に入れ
たに過ぎず、現状は長門に圧迫されつつあった。
ハルヒはというと、北陸の一部から美濃、近畿のほとんどを奪取し、現在部長氏の足利将軍
と対峙している。

そして、現在ハルヒと対決中の部長氏だが、本拠である山城の国と、中国地方の東半分をその
勢力下におくことで精一杯だった。
ただ部長氏にとって幸運だったのは、ハルヒが勢力を拡大し続ける長門信玄を無視できず、
その牽制に軍勢を割かれ、部長氏攻略を疎かにせざるを得ないことであった。
これで部長氏は、かろうじて一息ついたと言うことか。
とはいえ、足利氏は将軍家であっても、この時代一個の中堅大名に過ぎず、正直なぜ部長氏
がこの大名を選んだのか疑問ではあるが。

そして、数ターンが過ぎ、長門に包囲されていた古泉は徐々にその勢力を縮小し、ついには
堅固な城である小田原城に籠もることになり、さらに数ターンの兵糧攻めの後、滅ぼされた。
かくしてプレーヤーで生き残っているのは、ハルヒと長門、部長氏に、そして九州を制圧して
その版図を中国四国地方に拡大しつつある俺であった。

613:ハルヒの野望・戦国群雄伝10
07/01/20 15:12:32 lz41R17u
それから数ターンが経過したとき、突然、部長氏が史実の通り、ハルヒ追討令を発布した。
これはこのゲームの独自機能というべきもので、さらに言うと、足利氏のみに与えられた
特権であり、史実よりも遙かに諸大名に対して強制力があった。
つまり、全大名には信長であるハルヒに対して、軍事的圧力をかける義務が課せられたのだ。
その命令を受け、古泉を滅ぼしたことによりほぼ東日本を制圧した長門は、次の攻略勢力で
もあったハルヒにターゲットをしぼり、全力を傾けて圧迫を加えてきた。
戦線は膠着状態にあるが、多方面から侵略を受けるハルヒに対して、兵力の逐次投入を続け
る余力のある長門が徐々に押してきた。
押されて、後退を余儀なくされるハルヒ。
「ちょ、ちょっと有希!少しは手加減しなさいよ!」
たまらず、悲鳴を上げるハルヒだが、長門は容赦しなかった。
長門をそこまで本気にさせているのは何なのか?俺には皆目見当がつかなかった。
そして時間の経過とともに、クレヨンで塗りつぶすかのように、ハルヒの支配地域を浸食し
てゆく長門。もはや戦局は決したか?

そんな長門とハルヒの戦いを傍観しながら、自分の思い通りの展開になりつつあるのか、ほ
くそ笑みながら、朝比奈さんの方をしきりにチラ見する部長氏。
なるほど、彼が足利家を選択したのはこのためか。自分の力を使うことなく、敵対勢力を
苦しめることができる。さらにその攻撃に参加した連中の力をもそぐことができる。
つまりは一石二鳥か。少し、やり方が気に入らないがな……。
再び戦局に目を向けると、なぜそこまでとおもえるほどに全力の長門に押されに押されて、
ハルヒの運命はもはや風前の灯火だった。
だが、運命の女神は残念ながらというか、それとも幸運にもと言うべきか、ハルヒを見捨てな
かった。
なんと、武田信玄が突然病死してしまったのである。これでも史実よりも遙かに長く生きた
わけではあるのだが……。
突然の死という、まったく思いもよらないことで退場を余儀なくされる長門。彼女は無表情
ではあるけれど、さすがに残念そうに見えるのは俺の気のせいではないだろう。

最強の敵の死により、九死に一生を得たハルヒは、朝鮮戦争での国連軍のように、またたく
まに領国を奪還し、国力を急回復させた。
するとすぐさま身を翻し、まるでネズミを捕食しようとする蛇のように、自分を苦しめる原因
を作った部長氏に対して、全力を持って猛然と襲いかかった。
俺は当初、多少おもしろくなかったとはいえ、朝比奈さんを思う部長氏には理解を示し、や
や協力的ではあった。しかし、かといってこの絶好の機会を逃すわけにも行かず、意を決し、
ハルヒに呼応して部長氏の領国へと攻め入った。
その攻撃は質量ともにすさまじく、戦術を考慮するまでもなく、ほぼ力攻めで押し切ること
ができた。その結果、俺とハルヒの二大強国の挟撃により、部長氏はなすすべもなくあっさ
りと滅びた。部長氏はまさしく、蜘蛛の糸が切れて地獄にまっさかさまに転落したカンダタ
のようだった。

俺は、部長氏の計画を頓挫させてしまったことに、いささか後味の悪いものを感じざるを得な
かったが、同時にほっとする感情も否定できなかった。
優勝を逃してしまった部長氏は、恐らくあきらめきれずに、玉砕覚悟で朝比奈さんに告白で
もするのだろう。
ただし、玉砕する確率は九割、いや九割九分か?まるで、竹ヤリ一本もって単身硫黄島に乗
り込んで、そこで勝ち目を見いだすようなものだが……。

結局、最後まで残ったのは俺とハルヒだった。
部長氏の滅亡とともに一時的な協力関係を解除し、改めて対峙する俺とハルヒ。
勢力は拮抗していると言いたいところだが、ハルヒは滅亡の危機を経験していながら、長門
の撤退後、以前よりもその勢力を拡大し、今や俺を凌駕する存在に成長していた。
ハルヒは己の勝利を確信しているのか意気軒昂、今や飛ぶ鳥を落とす勢いだ。


614:ハルヒの野望・戦国群雄伝11
07/01/20 15:13:38 lz41R17u
そして、ハルヒは何が嬉しいのか、高輝度発光ダイオードもかすむほどの笑顔を満面に浮か
べ、今にも鼻歌を奏でんばかりであり、隣の古泉がニヤニヤとしているのが気に入らない。
…って、古泉、なぜ俺に向かってニヤついているんだ?
朝比奈さんもです。そんな微笑ましそうに、なぜハルヒでなく俺を見ているんです?俺に
は関係ないはずですが?……たぶん。

さて、どうしたもんだろうな。ハルヒの笑顔を見ていると、その笑顔に免じて負けるっての
も悪かない、なんて不覚にも思ってしまったのだが、だからといって、このまま負けるとい
うのはおもしろくない。
現在、投入し得る兵力にしても配下の武将の質にしても、ハルヒの方が勝っていると認めざ
るを得ないのだが、何かつけいる隙はないものかね。
俺は、団長席に座っているハルヒの様子を窺いながら、しばし沈思黙考していた。
………まてよ、あの方法ならば可能か。

と、突如として、俺はあることがひらめいた。今大会の勝利条件と、ハルヒの性格とを利用
すれば、勝ち目は出てくるのではないかと。
ただ、この策はハルヒに気がつかれる可能性もあるのだが、今のままではジリ貧の憂き目に
あう。それならば、それに賭けてみる価値はあるのではないか?俺はその策を実行に移すべ
く、すみやかに周到な準備を行った。

まず手始めに、今現在ハルヒと隣接している備中とその西隣の備後の二国から、金と兵糧を
必要最低限のみ残し、後は周辺国に送った。そして、次のターンには目的とは異なるハルヒの
領国を攻める体を装い、二地域から兵力を送る欺瞞工作を行った。だが、あくまでも減らし
すぎないことが要点だ。
これで、ハルヒへの勝利という豊かな実りへの種まきはほ完了したが、ハルヒはこの策に乗
るか、それとも気がつくのか。
「フッ」
どうやら俺の意図することに、古泉は気づいたようだ。ということはもちろん長門も気づい
ているはずだ。ただし、部長氏と朝比奈さんはまるで気がついていないようだ。

すると、俺が兵力を減らしたことに目をつけたハルヒは、絶好のチャンスとばかりに、大軍
を擁して、隣接する俺の領国である備中へと侵攻した。
――食い付いた。
自らが指揮官として参戦したハルヒ軍との合戦が起こると、俺はなるべく長期戦を志し、さら
には兵力の消耗を抑えた上で敗戦した。
予定通りだ。
ハルヒは俺の領土どころか、そこの敗残兵まで飲み込んだことに、有頂天だ。
気をよくし、次のターンを迎えたハルヒは、ふくれあがった兵力のまま、さらに西の備後へ
と攻め込んだ。

後方からの補給を待たずに、だ。

ハルヒが攻め込んだことを確認した俺は、先ほどハルヒにより陥落した備中を、北方から軍
勢を起こし、速戦即決で奪還した。
これにより、現在備後を奪取してまもないハルヒ軍は、補給路と逃走路を遮断されることに
なった。
包囲され、孤立無援の状態となったハルヒ。ここにいたって、彼女はようやく俺の真の目的
に気づいたようだ。


615:ハルヒの野望・戦国群雄伝12
07/01/20 15:14:13 lz41R17u
つまり、この大会の勝利条件としては、ハルヒの領国をすべて攻めつぶす必要はなく、ハル
ヒ一人さえ倒してしまえばことは足りるのである。しかもハルヒは本国でじっとしていられる
性分ではなく、主要な戦いには必ず指揮官先頭で参戦してくる。
俺はそこに勝ち目を見いだしたのである。幸いにも、俺の考え出した策は見事に図に当たった。
といっても古泉には見破られる程度のもではあったが、ハルヒは騙せたようだ。

俺は最後の戦いとばかりに、動員できる限りの軍勢をハルヒがいる備後へと投入した。ただし、
戦いと言っても無闇に兵力を消耗するつもりも、ハルヒにさせるつもりもなかった。
ただ単に、長期戦を繰り広げればいいだけなのだ。そうすれば大軍団を食わせている兵糧
はやがて尽き、兵士は干涸らび、そして自動的に俺の勝利となるわけだ。
それに今更のように気づき、悔しさと焦りの感情を前面に押し出しているハルヒ。
ハルヒは勝利への執着があるためか、俺をにらめつけたり、画面を凝視したりを繰り返して
いる。だが、もう遅い。
ゲームオーバーだ。

ハルヒ軍の兵糧が、残りゼロを示したことで、俺の勝利が決定した。

「あんなことをするなんて、卑怯よキョン!」
と言うものだと予想していたのだが……。
ハルヒは妙にしょんぼりして、実にハルヒらしくない。
「よかったわね、キョン。あんたは、みくるちゃんか有希でも誘うんでしょ?」
と意外なことを言い、先刻ハルヒが勝利を目前にしているときには、遠足前の小学生のよう
に喜色を満面に浮かべていたというのに、今はやけにあっさりしている。

いささか拍子抜けをした感は否めないが、このたび行われたゲーム大会は、俺の優勝で幕が
閉じた。
したがって、最初の取り決め通り、俺には優勝賞品のファミレスでの食事券と、映画鑑賞券、
それに、その相手を指名する権利が与えられた。
……俺はいったい誰を誘うのか?朝比奈さんか?あるいは長門か?それとも……?
俺は誰かを念頭に置いてゲームに参加したわけではないので、いざ、誰かを選べと言われると、
とたんに躊躇してしまい、にわかには選べないのである。

「さあ、キョン!いったい誰を指名するの?」
気を取り直したハルヒが、挑むような窺うような視線で、俺に結論を急がせようとする。す
ると、部屋にいた人間が俺に一斉に照準を合わせた。
なにやら、期待と好奇の籠もったみんなの視線を一身に受け、逃げ出してしまいたくなる俺
であり、実際一時退却することにした。
「悪い、ハルヒ。忘れ物をしたから、ちょっと教室へ戻るぜ」
ハルヒが声を発する間も与えず、俺は部室から飛び出した。
だが、実際には忘れ物をしているわけではなく、単に考える時間がほしかったのだ。

そういうわけであるから、俺は教室には向かわず、ベンチに座って春の暖かな空気のなか、
誰を指名すべきかを呻吟していた。
「やあ、やっぱりここでしたか」
と言う声が聞こえ、俺の前に立った古泉が、スッと紙コップに入ったコーヒーを俺に手渡した。
何の用だ?もしやお前を誘えって言うんじゃないだろうな?
それを聞いて、古泉はさも愉快そうに相好を崩し、
「それは非常に魅力的な提案ですが、今回は遠慮しておきましょう」


616:ハルヒの野望・戦国群雄伝13
07/01/20 15:14:45 lz41R17u
俺はコーヒーを胃に流し込み、あたりまえだ、と一言返した。
「どうやら、悩んでいるようようですね。僕はもうあなたは誘う相手を決めているものだと
思っていましたが?」
まだ決まっちゃいないよ。ところでお前は何をしに来たんだ?
「いえいえ、僕はあなたにきっかけを与えて差し上げようと思いましてね」
なんのことだ?というと、古泉はやや改まった様子で口を開いた。


「ところで、あなたは、朝比奈さんやミヨキチさんと以前デートをしましたね?」
何を藪から棒に。
……あれがデートだったとは思わないが、確かに一緒に出かけはした。
「それに、長門さんとも図書館デートをしているそうですね?」
なぜお前が知っている、っておい、みんな誤解だ。俺は誰ともデートをしたつもりはないぜ。
「ですが、そう思わない方もいるようで。彼女はそのことをなにやらうらやましく思い、あ
なたと二人きりで出かけてみたいと思いつつも、だからといって素直にあなたを誘うことも
できない。そんな彼女にとって、今回のイベントはまさにうってつけ、渡りに船だったわけ
です。彼女が優勝の暁には、なんだかんだと理由をつけて、あなたを誘うつもりだったので
しょう。ただ、残念ながら、彼女の思い通りの結果にはなりませんでしたが……」

……馬鹿な奴だよ。
古泉が名前を出さずとも、それが誰であるのか、俺にはわかってしまっていた。だが、誰だ
かは言わないでおく。
それで、お前は何が言いたいんだ?
と俺が言うと、古泉はかぶりを振りつつ、
「いえ、これ以上は何も。ただ、ここまで聞いてしまうと、あなたとしては動かざるを得ないでしょう」
と言い、ベンチから立ち上がると、古泉は校門へと向かった。しかし、歩みの途中で振り返
ると、
「ああ、そう言えば、彼女はまだ部室にいるはずですよ。春休みにおけるSOS団の活動を検
討すると言っていましたからね」
とだけ言い残して、再び歩き出した。

古泉が去った後、少し躊躇したが、意を決して俺も立ち上がり、いったん背伸びをすると、
部室に向かって足を進めた。

俺がSOS団の部室のドアを突然開けると、そこにいたハルヒがあわてて何かを隠した。
まあ、それはいいんだが。
「キョン、やけに遅かったのね。あんたが遅いからみんな帰っちゃったわよ。残念ねえ、み
くるちゃんも有希もいなくて」
ハルヒはアヒル口をしながらそううそぶいた。
いや、いいのさ。ハルヒ、お前に用があるんだ。
「……あたしに?な、なんなの?さっさと言いなさいよ。どうせろくでもないことなんで
しょうけど」
やや動揺したが、あわてて体裁を取り繕うように、意味もなく胸を反らせ、俺をにらみつけた。
「……お前がくれた映画のチケットだけどな、あれ上映が来週の金曜日までしかないじゃね
えか。と言うことは、今週の土日のどっちかに行くしかないんだよ」
「そうだっけ?じゃあ、明日にでもみくるちゃんか有希を誘えばいいじゃない?」
「二人とも週末は予定があるそうだぜ」
もちろん、これは俺のハッタリだ。
「なら、古泉君でも誘えばいいじゃない」
なぜ、そっちにいく?


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