07/01/16 10:45:07 IZh5f9R+
「涼宮さんの様子はどう?」
「どうって、俺にそんなこと訊かれても困るんだがな」
彼は訊くたびにこんな反応をよこす。
「大体どうして俺なんだよ。意味が分からん。納得も行かん」
「あなたが一番近くにいるからよ」
そう。あらかじめ分かっていたこと。
涼宮ハルヒが彼に接近すること、彼が涼宮ハルヒに接近すること。
そして、わたしが彼を殺そうとすること。
わたしが、消えてしまうこと。
―わたしたちがいなくなる日―
朝倉涼子。高校一年生。
広域宇宙体たる情報統合思念体急進派の対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェー
ス。
同主流派のインターフェース、長門有希のバックアップを兼任。
……このマンションで暮らして、三年になる。
観察対象、涼宮ハルヒの動向は高校入学を期にふたたび変化を始めている。
わたしの時間制限も、間もなく尽きる。
それはあらかじめ決まっていたことなのだ。
「長門さん。今日の夕飯はどうする?」
「ひとりで作る」
「あ、また簡単に済ませちゃうつもりでしょう。ダメよそれじゃ。あなたはわたしより観察期間も長い
んだから。もっと有機体としての自分の身体をいたわらないと」
長門有希は涼宮ハルヒが作った団体の部員。
統合思念体が配置したインターフェースの中で最も対象に近い位置にいる。
わたしたち端末に、思念体の意図はわからない。
わたしたちは基本的には観測に徹し、時に課せられる役割を全うする。
「そろそろだなぁ。あと二週間と少し」
それでわたしの役目はおしまい。
「……」
長門有希は黙って味噌汁をすすった。
「これまでありがとうね」
わたしは言った。なぜそのような事を言ったのか、特に理由はない。
「……べつに」
「ふふ」
長門有希は思念体のインターフェースの中でも特別制限が多い。こと感情面において。
彼女でなくてはならない理由があることはわたしにも推測できるが、それが何故なのかは分からない。
予定ではわたしの消失日が今月二十五日午後五時五十二分四十一秒。
長門有希の消失日が十二月十八日午前四時二十三分。
そこでわたしたちは役目を終える。
わたしに関して言えば、この星の生命体そのものに未練はない。