07/02/05 20:29:49 k7kKMqcm
やばい。今まさに、命の危機が迫っている。
目の前には痛々しい歯形のついた、見るも無残な姿の茶菓子。この
歯型……奴はかなりご立腹の様子だ。
「愚か者め。私に洋菓子を出すという事は、自殺行為に等しいのだ」
あからさまに怒気を含んだ口調である。奴の名は曼荼羅 幸子(ま
んだら さちこ)。至って普通の女性ってやつだ。ただ他人と違う
点は、ちょっとSっ気が混じってることぐらいかなあ。ついでに俺の
妻だ。
「ま、待て幸子!俺が悪かった!だから俺のムスコだけは―」
「黙れ。私を侮辱した罪は重い。そうだな……おい、あれを持ってこい」
幸子は部屋の隅で待機していた、真紅の着物を纏った侍女に顎で指
示を出す。彼女が小さく一礼をすると、長く美しい黒髪が揺れる。
そう、彼女は美しい。だが、騙されてはいけない。洋菓子を用意し
たのはあの女だ。俺はあの女を許さない。でも、やっぱり可愛いな
あ。
侍女は何食わぬ顔で襖を開け、出て行った。
暫しの間、殺伐とした空気が俺を包む。冷や汗はナイアガラ状態に
なっており、お口の中はサハラ状態。モン○ミンすればよかった。
俺は恐る恐る幸子の様子を伺う。幸子の表情はまさに幸子って感じ
だ。