06/12/22 21:40:40 SpzcEFul
「要様…。申し訳ございません」
長い黒髪が彼にかからないよう片手で束ねながら、凜は要の唇に自身のそれを重ねる。
唇が触れるか触れないか程度の、幼い接吻。
要の暖かい唇にどれだけ自分が冷えきっていたのかを感じた。
唇を離した後も、凜はそのままの体勢で彼の顔を見つめていた。
「お慕い申上げております」自分にしか聞こえないくらいの声で呟く。
どんなに恋い焦がれていても、自分と要が結ばれることはけしてない。
不意に涙で彼の顔が歪んだ。
「…っ!!」
凜は思わず起き上がり、今更ながら自分の取った行動に羞恥を感じて俯いた。
しばらくの間、要の寝息だけを聞き、そして立上がった。
障子に手をかけながら、ふと振返る。
「要様…。さよなら」
これ以上彼に迷惑をかけてはいけない。
その為に、私は…、消えてしまおう