06/11/28 19:04:59 cET1ae+J
>>11
珠美は安ホテルのベッドに腰掛けると、腰を抜かした冴島を見下ろして話し始める。
「驚いた? 冴島のオジサン。調べによるとあんたはその図体で周りを従わせて、かなり
無茶やってきたみたいね。今の子は、あんたらの虐めで自殺した子の一人よ。
あらら? 他にも何体か取り憑いてるね~。その太り方もただの中年太りじゃないなぁ。
オジサン、死相が出てるよ? なんかもう、すっかり運に見放されてる~って感じ?」
冴島は珠美の言葉に青ざめながらも、精一杯の虚勢を張った。
「お、脅かそうったってそうはいかねぇぞ! な、なんかの仕掛けがあるんだろっ!?」
珠美はまるで悪魔の様に微笑んだ。
「仕掛けねぇ……。後ろの人に貰ったものはあるけど、これだけだよ」
そう言うと、首にかけていたポシェットからポラロイドの様な物を床にばら撒いた。
―それは、冴島が珠美とこのホテルに入る場面の写真だった。
ちゃっかり珠美の顔だけはうまく隠れて映っており、日時まで入っていた。
これには冴島も度肝を抜かれたようだが、まだしぶとく喰らいつく。
「ど、どうやってこんな物……!? ついさっきなのに何でお前が持ってるんだ!」
珠美は興味を失った様に、手に取った安ホテルのカラオケカタログをめくりながら言う。
「だからさぁ~。言ったじゃん。オジサン、かなりの故人に恨まれてるよって。
それってさ、念写っていうらしーんだよね。オジサンの背中に憑いてる人がくれたの。
会社とか自宅にも届くかもね。こうやっていつの間にかバックに入ってたみたいにさ」
さすがの冴島もこれがトドメとなったらしい。
「こ、困るよ! お嬢……いや、君! き、君なら何とかできないのか!?」
「なんとかって?」
「お、お払いとか。供養とかさ! さっきの化け物を消したみたいにで、出来るんだろ?」
珠美はカラオケカタログからゆっくり視線を上げ、冴島を見下ろした。
「出来るけど。あたし、別にボランティアじゃないしな~」
「か、金なら出すよ! た、頼む! い、今5万ならある!」
「……オジサン。相手が子供だからって嘘はよくないよ。財布には10万とカードあるよね。
小銭も結構あるなぁ。図体の割に『しみったれ』ってやつ?」
冴島はみっともない程狼狽し、財布の入っているポケット数箇所を無意識に押さえてい
た。
「オジサンさ。自分の命を値切る人? まぁ、今払ってもそういう心構えじゃね。
また新たに取り憑かれるだろうから無駄だね。……さて。ここ、新曲無いし帰ろっかな」
珠美はベッドにカラオケのカタログを放り投げると立ち上がった。
冴島は慌ててあちこちから財布を取り出すと、珠美の前に差し出して懇願する。
「す、すまん! こ、これが今の全財産だ! 全部渡すから助けてくれ!」
全ての財布から金を抜き取り、ポシェットに入れた珠美は、空の財布を冴島に返した。
「しょうがないな。言っとくけど、オジサンが態度改めないとまたきっと憑くよ?」
「わかった。わかったから今憑いてるのだけでも何とかしてくれ!」
「了解。商談はスムーズかつ迅速にね。足元見てたら大成しないよ?」
やけに大人ぶった口をきくと、珠美は医者がメスを求めるような手付きをした。