.hackのエロパロ vol.11.at EROPARO
.hackのエロパロ vol.11. - 暇つぶし2ch250:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/10 01:45:13 dhLYjlBk
また日付が変わってしまった・・・・・・
土曜日と言っておきながら申し訳ありません。
気を取り直して、今夜の分。

251:花火まであと少し 5
06/12/10 01:45:45 dhLYjlBk
「あのー、志乃サン?」
「どうしたの、ハセヲ。急に他人行儀になっちゃって」
「このエリア……やば過ぎじゃね?」
目に映るのは、見ただけで冷たさを感じてしまいそうな寒色の回廊。
視線を床に落とすと、罠と言う言葉を具現したような伸縮式の鋸や剣山が蠢いている。
それだけでも気が滅入るのに、エリア自体のレベルもハセヲからすればかなり高い。
まだ一回しか戦闘していなかったが、HPは既に三分の一を切っている。
今更ながら、亮はエリア情報をまともに見なかった事を悔やんだ。
そこにはちゃんと、「今のあなたのレベルではここのモンスターには勝てないでしょう」と書いてあったはずなのに。
とはいえ、それを見ていたとしても今の亮が志乃のお願いを拒めたかどうかは怪しい。
むしろ、志乃が行きたいとさえ言えば適正レベル150の最上級エリアであろうと着いていってしまいそうな気がする。
「うーん、私は好きなんだけどな、回廊型。ハセヲは嫌い?」
「い、いや……その……」
思わぬ質問に、言葉が詰まる。
正直に言えば、回廊型は嫌いだ。
一本道な分通常のダンジョンに比べれば時間はかからないが、その分トラップが多く戦闘の回避も困難になっている。
最深部にはボスが待っているし、それを倒さなければ当然ミッション目標である獣神像には到達できない。
受けるダメージとストレスは、間違いなくゲーム中最高だろう。
それこそ、こんなエリア好きなやついるのかと思っていた。
今の今までは。
隣を見れば、志乃が好きって言って言ってオーラを溢れさせてこちらを見ている。
実際にM2D越しの視界に映っているのは単なるグラフィックに過ぎないのだが、なんとなく気配でわかった。
「あー、その……嫌いじゃなかったって可能性があるとも無いとも言えないことも無い、かな」
「うーん、何だかはっきりしないなぁ……まあ良いや。このエリアをクリアしたら、ハセヲもきっと好きになるよ」
唇を尖らせながらそう言うと、志乃はハセヲの背中を叩いた。
先に進もう、という意思表示のようだ。
「そうなるといいな……行くぜ!」
熱愛自棄という心の新境地を感じながら、ハセヲは回転鋸へ向かって走りだした。

252:花火まであと少し 6
06/12/10 01:47:08 dhLYjlBk
「旋風、滅双刃!」
既に何度目かわからなくなったアーツをお見舞いして、ようやくボスモンスターは沈黙した。
戦闘リザルトが表示される中視線を後ろに流すと、戦闘中援護と回復に徹していた志乃が拍手をしている。
一瞬苛立ちを感じて視線をそらし、亮は目を閉じて呼吸を整えた。
「……死ぬかと思った」
そのまま小さく呟いて、コントローラーを持った右手を振る。
このボス戦に限らず、エリアの難易度とストレスは相当のものだった。
レベル差は後半ハセヲのレベルが上がったおかげでさほど感じることは無くなったが、それでようやく五分。
トラップは相変わらず悪質に配置されていたし、エリアのモンスターは甲殻系が主だった。
甲殻系モンスターは本来のHPとは別に殻自体の耐久力が設定されており、それを削りきらなければまともにダメージが通らない。
巡り合わせが悪い事に、ハセヲの得物は殻へのダメージにマイナスの補正がかかる双剣だった。
「これだから甲殻類は嫌いなんだ……」
殻が剥けなくて海老が苦手だった子供の頃を思い出して、小さく呟く。
思えば黄昏の旅団が解散する前は、オーヴァンに連れられて様々なエリアで特訓を受けた。
その中にはおいおい、ちょっとこれ初心者の行くエリアじゃねぇだろと言うような場所が高頻度で含まれていたが、
今回の回廊はそれらと比べても遜色ないレベルの場所だった。
亮とてゲーマーの端くれである。別に高難度エリアが嫌いなわけではない。
しかし、普段志乃と行くのはオーソドックスな草原タイプのエリアが主だった。
プレイングも、経験値稼ぎやアイテム集めよりお喋り―ここ一週間はデートと言っても差し支えないだろう―がメインとなる。
良く言えば牧歌的、悪く言えば生ぬるい日々だったが亮はそんな志乃との時間にそれなりに―いや、
本音を言えばかなり充足していたのだ。
それなのに、志乃の方からこんなエリアに、それもだまし討ちのような形で引っ張ってこられるなんて。
文句を言おうとして、亮は視界を後ろに立つ志乃に移した。
「志乃、あのさ」
「なぁに、ハセヲ」
呼びかけると同時に、目と目が合った。
志乃が答える。いつも通りの、優しい声音。
「……っ!何でもない……」
耳朶を包み込むようなその声が響いた瞬間、亮は何も言えなくなってしまう。
そんなハセヲの姿を見て、志乃が小さく笑う。
天使のようなその笑い声が、少しだけ苛立たしくて。
ハセヲは踵を返して、獣神像に向かって歩き出した。

253:花火まであと少し 7
06/12/10 01:50:25 dhLYjlBk
多くのエリアでは、そこに置かれた宝箱を開けることがクリア条件になっている。
亮はターゲットアイコンをクリックし、蹴り飛ばすようなモーションで宝箱を開いた。
「はぁぁぁ……」
中から現れたアイテムに、溜息が漏れる。
宝箱に入っていたのは、光式・忍冬(スイカズラ)。
デフォルトで光の属性を持ち、このレベル帯では最高の攻撃力と使い勝手を誇る希少な双剣である。
「これ、俺が貰っていいのか?」
ようやくこのエリアに連れてこられた意図を理解し、亮は再び志乃を振り返った。
「もちろん。ごめんね、いきなり連れ出したりして」
肩をすくめて、志乃が答える。
連れ出すような形になった事を気にしてか、それとも単に内緒にしていた事が恥ずかしいのか。
その口調には、照れとも後ろめたさとも付かない響きがあった。
「そんな……謝る事なんてないよ」
先ほどまでの不満は何処へやら、そう言われて亮は本気で気後れしてしまう。
はっきりって、この双剣は実用性という観点からすれば微妙である。
確かに単独の武器としては優秀だが、
レアアイテム扱いになる為他の武器と練成して攻撃力を上げる事が出来ない。
またデフォルトで光属性とクリティカル補正のアビュリティが付与されている為、
自分の裁量でカスタマイズする事も不可能。
要するに、発展性が無いのだ。
そして、この種の道具は使い手にとってはあまり望ましいものではない。
それが真理である事は第四世代MS(ドーベンウルフやゲーマルクと言ったネオジオン紛争期の恐竜的進化を遂げた機体)
が15mサイズの小型MSに取って代わられていったように、人類の歴史における現実が実証している。
それでも。亮は、志乃が自分のために希少な双剣を送ってくれたと言うだけで、嬉しかった。
「そう言ってくれると嬉しいな……ね、ハセヲ。その双剣―スイカズラの花言葉、知ってる?」
「え?」
突然、志乃が話題を変えたる。
比較的一般的な男子高校生である亮は、当然スイカズラなどというマイナーな花言葉など知らない。
おそらく志乃も、それをわかっていて聞いたのだろう。
程なくして、志乃の形の良い唇が答えを紡ぐ。
「愛の絆……」
「……っ!?」
リアルで顔を真っ赤に染め、亮が声にならない叫びを押し留めた。
「ふふっ」
そんなハセヲを見て、志乃が優しく笑った。
その眼差しは、弟を見守る姉とも年下の恋人を見守る淑女ともつかない。
亮が調子を取り戻すまでの間、志乃はずっとそうやってハセヲを見つめていた。

254:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/10 01:52:18 dhLYjlBk
以上。
例によって妄想による本編の勝手な補完になりましたが、どうかパラレルと言う事で一つ。
話自体はエロも含めてもうちょっと続きます。
次回は12月13日(水)。

255:名無しさん@ピンキー
06/12/10 01:58:21 NoBOgy0k
>>254
リアルタイムキター!!
待ってました!やっぱり最高だな…
むしろパラレルでも何でもこいな所なので全然気にしなくておk
次回も超期待

256:名無しさん@ピンキー
06/12/10 02:06:48 bUQtI2D8
やっぱいいな(*´д`)GJ

257:名無しさん@ピンキー
06/12/10 10:12:26 PbWytN5o
ぐっじょぶです。

> それが真理である事は第四世代MS(ドーベンウルフやゲーマルクと言ったネオジオン紛争期の
> 恐竜的進化を遂げた機体) が15mサイズの小型MSに取って代わられていったように、人類の
> 歴史における現実が実証している

ソレ ジンルイノ レキシ チガウ

258:名無しさん@ピンキー
06/12/11 00:28:02 hcIx6jRu
M、MS人類の歴史ってww
ハセヲもちつけwwwwwwwwww

259:GORRE
06/12/11 00:45:30 dSI2huYc
>>247の続き~

ぎゅう~~~。
亮は思わず望を思いっきり抱きしめていた。
「ハセヲにいちゃん、いたい」
「す、すまん」
亮は望から離れた。
(やべえやべえ。一瞬我を失ってたぜ)
亮はなんとか自我を取り戻したようだ。
ついでに言っておくが、望は断じて裸エプロンではない。が、かなりきわどいと言うか似合いすぎなのである。
(まだ、女子用の体操着着てないだけましか…なんかあったよな…そういうゲーム。
女みたいな弟が体操着にブルマー着けたらまるっきり女みたいで思わず兄貴が襲いそうになっちまったやつ)
「?」
「望おおおおお!」
「わあ!」
亮は思わず望に襲い掛かった。
「だ、だめだよハセヲにいちゃん! デザートはごはんのあとだよ」
望は亮の下でばたばたと暴れながら言った。
「いや、それは分かっているんだが、なんか今のお前を見ていると襲いたい衝動に…って、ちがあああああう!」
亮は流されそうになって望から飛びのいた。
「あぶねえ、一瞬流されそうになった。あぶねえあぶねえ」
「ボクはハセヲにいちゃんにおそわれても、べつにかまわないのに」
そう呟きながら、望は起き上がった。
「え?」
「ううん、なんでもない。あ、すぐにあさごはんつくっちゃうね。ハセヲにいちゃん、おかずなにがいい?」
「望」
「え?」
「いや。そうだな…目玉焼きと野菜が食いたい」
「じゃあ、サラダだね。すぐつくるよ」
望は台所に戻っていった。
亮はそんな望を見て気の毒に思えた。
「望、俺も手伝う」
「え? いいよ、ハセヲにいちゃんはゆっくりしてて」
「そうはいかねえよ。客人に朝飯作らせるなんて悪いしな。本来なら俺が作らなきゃいけないんだしな」
「そう? じゃあ、サラダつくってよ。ボクはめだまやきつくるから」
「分かった」
亮はサラダを作るため、冷蔵庫から野菜を取り出した。
「レタスは千切ればいいとして、トマトときゅうりはどうする?」
「トマトはくしぎり、きゅうりはななめにきったほうがおおきくみえるよ」
「そうか。よし」
亮は早速トマトを切り始めた。もちろん、料理なんて殆どしたことがない。いつ手を切ってもおかしくない。
「イテ」
案の定、亮は指を少し切った。
「だいじょうぶ? ハセヲにいちゃん」





260:GORRE
06/12/11 00:55:45 dSI2huYc
望は亮の怪我した指先の具合を見た。
切り口は小さいようだが、血は結構出ていた。
「くそ、とりあえず消毒しねえと」
亮は食器棚の上にある救急箱を取りに行こうとした。が、
「あむ」
望はその指をくわえ込んだ。
「! 望、お前何してんだ!?」
突然のことで、亮は驚いた。
「? とりあえずおうきゅうしょちだけど」
指を咥えたまま望は答えた。
「いや、応急処置って」
「こうするといいって、おかあさんがいってたよ?」
「ええ!?」
望は亮の指を咥え込んだまま放そうとはしなかった。それどころか、その指全体を舐め始めた。
(望が俺の事を気遣ってくれてるのは分かるが…本人は分かってて俺の指を舐めてるのか、それとも分からずに舐めてるのか、どっちだ?)
と、亮は思った。


とりあえずここまでえ。昨日エプロンネタを書いたらこのネタを書きたい衝動におそわれてしまった。
続きはまた後日。

261:名無しさん@ピンキー
06/12/11 01:06:42 uu9SDf7R
すごく…GJです…

262:名無しさん@ピンキー
06/12/11 15:19:12 hVG8PN3k
ガノタのハセヲバロスwwwwww

263:名無しさん@ピンキー
06/12/12 16:45:19 y2+WU5eJ
www

264:名無しさん@ピンキー
06/12/12 22:27:24 0w6Z3OH5
ここ見てて創作意欲が刺激されてきた
何か書きたい所だ、今まで書いた事など無いんだが

265:名無しさん@ピンキー
06/12/12 23:30:04 IGopFxVv
>>264
構わん、是非書いてくれ!

266:名無しさん@ピンキー
06/12/12 23:35:55 rebPo8Lm
安心しろ。誰でも最初は素人だ。

初投下して、アドバイスやマイナス評価をふまえて
また新たな作品を産みだし、投下する。

傑作を残した作者達も
そうして"神"と崇められるまでになったんだ。

だから、これも修行だと思って書いてみたらどうだろうか?

267:264
06/12/12 23:52:48 0w6Z3OH5
>>265-266
了解した。
カップリングは亮×朔で、望は今の所絡ませる予定なし。
当方文才無い上に遅筆なのでうp速度はあまり期待しないで下さいな

268:GORRE
06/12/13 00:57:52 bCpUU5Xt
かまわんかまわん。じっくり考えてこそいい作品が生み出されるのさ。

最初からうまく出来る奴なんて誰もいない。それはスポーツとか勉強においても同じ事さ。

てか、最近亮×朔が人気だな。

って、俺も続きかかな。あー…でも思いつかねえ…

269:名無しさん@ピンキー
06/12/13 01:01:03 UTo9EaXj
>>268
前も思ったんだがやはり少し自己主張が過ぎないか?
個人のサイト作ったらどうだ
って言いたくなってくるよ

270:名無しさん@ピンキー
06/12/13 01:07:28 P9z0Oh/R
>>268
雑談の時はコテ外そうよ


271:GORRE
06/12/13 01:10:14 bCpUU5Xt
あ、ごめんなさい!

272:名無しさん@ピンキー
06/12/13 02:38:26 rXinEWgh
(*´∀`)σ)Д`)プニプニ

273:名無しさん@ピンキー
06/12/13 17:51:39 3MJnNlZy
ドンマイドンマイ
(*´∀`)σ)Д`)プニプニ

274:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/14 00:38:28 xSoBfF/v
後二回か三回でこの話は終わりかな?
今夜はちょっと短めです。

275:花火まであと少し 8
06/12/14 00:39:09 xSoBfF/v
「ねぇハセヲ、明日は暇?」
プラットホームからタウンに戻ると、志乃は唐突にそんな事を聞いてきた。
「別に……予定は無いけど」
もしかして……
仄かな期待に胸を高鳴らせながら、亮は答えた。
実は現在公開中のガンダムUC・劇場編集版を見に行くつもりだったが、志乃の誘いに比べれば瑣末なものである。
予定の内にすら入らない。
「なら、じゃあお昼ぐらいから付き合ってくれない?神田に本買いに行きたいの。あ、もちろん、リアルの方ね」
「う、うん……わかった」
待ち望んでいた、志乃からの誘い。
飛び上がるほど嬉しいはずなのだが、照れが邪魔してそれだけしか言えない。
無意識に、ハセヲは志乃から目を逸らした。
少し前まで、亮は志乃の目を見るのが苦手だった。
初日にPKされて人間(PC?)不信ぎみになっていた事もあったが、
旅団に入って仲間たちと普通に話せるようになってからも志乃に対してだけは直らなかった。
正確なところは今でもわからないが、おそらく―彼女の声と言うか、話し方のせいなのだろう。
志乃の声は可憐で、囁くような調子で話す。
それは彼女のお姉さん気質と言うか、冷静で温厚な態度と相まって心に否応無く響いた。
一言で言えば、誠実で一途なのだ。
感情過多な面を隠そうとクールで無気力な仮面をつけていた以前のハセヲには、それがたまらなかったのだろう。
あくまでこれは、後付けの自己評価に過ぎないが。

276:花火まであと少し 9
06/12/14 00:39:57 xSoBfF/v
「良かった。買いすぎちゃった分の本持ってもらうかもしれないけど、いいかな?」
「そんなの……別に、気にしないから」
普段なら叱られる所だが、志乃は気にせず言葉を続けた。
それが少し不満で、亮はぶっきらぼうな調子になる。
呆れられたのか、それとも内心を見透かされたのか。
どちらにせよ、余りいい気分では無かった。
「それじゃ、待ち合わせとかは後で携帯の方で送るね。私は今日中に大学の課題片付けちゃいたいから、今夜は落ちるね」
「う、うん。じゃあ……」
そういって、志乃は足早に姿を消した。
ハセヲは、一人タウンに残される。
別に引き止めるつもりは無かったが、こうなると少し寂しい。
「ログアウトして、メールでもチェックするか……」
思わず口に出して、そう呟いた瞬間。
「やっほー!ハセヲー!」
亮の耳に、無駄に元気な叫びが聞こえた。
反射的に振り向くと、そこには猫の意匠の拳術士(グラップラー)―元黄昏の旅団のメンバー、タビーが立っていた。

277:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/14 00:41:16 xSoBfF/v
以上。
ハセヲが見たがってる映画に関しては、まあ・・・・・・
すいません、調子に乗りました。
次回は18日(月)。

278:揺光モノ「光の中に咲き誇る花」 東京(準備)編2
06/12/14 01:42:52 pQrHTo4J
前スレ>>470の続き かなり間が空きましたが投稿。
「…え~っと、おやつは買ったし、お土産の『白い恋人』は買ったし、夜食用のカップメンも買ったし……うん、これくらいかな」
アタシは今、近場のデパートの食品売り場にいる。
無論、ドサンコデ札幌の東京ドーム日本シリーズ戦を見に行く為である。
クールでカッコ良くてそれでいて実は心優しい(と智香は思っている)オーヴァンからチケットが届いた時には、はっきり言って信じられなかった。
この際オーヴァンが何者で、何でアタシの個人情報を知ってるのかなんてのは気にならない。
彼はアタシとハセヲをくっつかせようとしているんだ。 うん。 そう思いたい。
「う~ん……やっぱり、新しい服も買っておこうかな……」
そう思い、今度は洋服売り場に足を運ぶ。
普段から服装には気を使っているアタシだけど、やっぱり東京に行くんだし、そして……ハセヲにも会えるんだし、少しくらい奮発した服装で行ったほうが良いかな、と思ったからだ。
因みにハセヲにはあの後すぐメールで連絡を取り、東京で会う約束をした上に家にお泊りする約束までしてしまったのだった。(因みにドサンコデ札幌のファンである両親も行くらしいが、彼らは都内のホテルである)
おまけにオーヴァンから貰ったチケットは日本シリーズ中であれば毎日ドームに出入りできるプラチナチケット(一枚11万5000円)であり、シリーズが長引けば最大一週間はハセヲの家にお泊りする事ができる。
嬉しい反面、ひどく緊張してもいる。
「(ハセヲはどんな服が好みなのかな………)」
色とりどりのプリーツスカートをまさぐりながら、ぼんやりとハセヲの事を考える。
三日後だ。
三日後になれば、会える。 ドサンコデ札幌の試合よりも、今はハセヲの事で頭が一杯になっていた。
--------------------
「ありがとうございました。 また御越しくださいませ」

レジの店員から服の入った袋を受け取り、洋服売り場を後にする。
とりあえず無難と思われる色合いの小奇麗なワンピースに、白を基調としたプリーツスカートを購入した。
因みにお菓子代もろもろと合わせて、本日の出費は1万4500円。
アタシはバイトしてないし、正直財布にはかなりの痛手だった。

「(はぁ、お財布がスッカラカンだよ………さて、家帰って、少しログインでもするかな)」
デパートの入り口をくぐり、外の空気を全身に浴びる。
少し冷たい風が頬を打つ。
北海道ではすでに初冬だ。(ハセヲ曰く、東京はまだ残暑が残るような季節らしい)
そしてアタシは、足を家の方向に向けて歩き始める。
と。 歩き始めたアタシは、後ろから加えられた凄い衝撃によって前のめりに倒れてしまった。

「痛っ!」
「いったぁ~」

同時に、アタシの背後からも声が聞こえてきた。
何だか間の抜けた声だ。
振り返ってみると、急いで走っていてアタシにぶつかってきたのだろう、中学生くらいの男の子がしりもちを着いていた。
あたりには彼が買ったのであろう大量のチョコレート菓子の袋が散らばっていた。

「あぁ~、ごめんだぞぉ~、おいら、急いでて………」
間の抜けた以上に、何だか癒される声だ。
それに彼の外見も、少し太めだが愛嬌のある顔つきで、突然後ろからぶつかって来たのを咎める気にはならなかった。
「ううん、大丈夫大丈夫。 それより、君も大丈夫? 怪我とかしてない?」
男の子は「大丈夫、怪我はないぞぉ~」などと言いながらゆっくりと立ち上がる。
外見相応なスローペースである。
だが、彼が持っている独特の雰囲気というのであろうか、それにイライラさせられることも不思議と無い。
「ホントにごめんだぞぉ~、えぇっと………おねえさんのお名前は?」
「アタシ? アタシは、倉本 智香って言うんだ。 君は?」
突然名前を聞かれてびっくりしたが、目の前にいるこの子は悪い子ではない。
別に名前を教えようが住所を教えようが別段問題は無いだろう。
見たところ、この子も北海道在住みたいだし。
「おいらはぁ~、牧 孝太って言うんだぁ~。 札幌ドサンコデ中学の一年なんだぁ~」
「ふ~ん、ドサンコデ中学ねぇ………ん?」
ドサンコデ中学って………
(アタシが去年まで行ってた中学じゃん!!)

久しぶりに投稿したのでいろいろ雑に………次回、おそらく土曜。

279:名無しさん@ピンキー
06/12/14 02:35:46 VPVNwtlw
>>277
乙ですGJ!!
次回も期待してる(´Д`;)ハァハァ

280:名無しさん@ピンキー
06/12/14 06:50:20 WU7gCsZa
>>278
ガスパーktkr!!

281:GORRE
06/12/14 14:21:24 zEZWWrZd
>>260の続き

(まずい、これ以上この状態だと変な気を起こしかねない…)
亮は望の口から無理やり指を引き抜いた。
「望、早く朝飯の続きを…」
「え? うん、そうだね」
望は手早く亮の治療を済ますと、再び朝食の準備に戻った。
「じ―――っ」
と、二人を見つめる視線があった。
「?」
振り向いた望の視線の先にいたのは、朔だった。
「あ、おねえちゃん」
「おお、朔」
「…朝から仲がいい事やなあ」
心なしか朔は不機嫌っぽかった。
「ウチは別に、ハセヲが望と仲良くするのはかまへんよ。けど、朝っぱらからっちゅうのはどうかと思おうんやけど」
朔はつまらなさそうに髪をいじっていた。
「朔?」
「別に、ハセヲが誰といちゃつこうがハセヲの勝手や。けど、何でウチがこんな気持ちにならなあかんねん」
朔はちょっと膨れていた。
「お早う~」
リビングに欠伸をしながら智香が入ってきた。
「? どうしたの?」
智香は全く状況が分かっていなかった。

食事も出来上がり、全員が食卓に着いた。
「はい、ハセヲにいちゃん。ごはん」
「お、サンキュー」
亮は望が差し出した御飯を受け取ろうとった。
「って、大盛りかよ」
亮が受け取った御飯は、その言葉のとおり、こんもりと盛り上がっていた。
その光景を朔は物凄く凝視していた。
(…嫉妬オーラが…)
智香は確かに見た。
「も、もう揃ったんなら、早く食べようぜ。あたしお腹すいちゃったよ。あははは…」
「そうだな、食うか」
「じゃあ、いただきます」

282:GORRE
06/12/14 14:46:43 zEZWWrZd
「さてと、朝飯も食ったしこれからどうするかね」
食後のお茶を飲んでいた亮が言った。
「あたしは後は帰るだけだしなあ」
「飛行機何時だっけ?」
「えーっとね、12時5分だって」
「12時5分? 今が9時5分だから、まあ、もうちょいゆっくりは出来るだろう。ここから1時間弱で空港までいけるしな」
「なあ、亮」
「あ?」
「あたしあそこに行きたい。浜松町」
「浜松町? まあ空港に行くためにはあそこにいかなきゃならねえからいいけど。何か見たいのがあるのか?」
「うん。ラジオ局」
「はあ?」
「一度でいいから生でラジオとか見てみたいんだよね」
「生で見たいって、お前……あそこはカードが無きゃ入れねえんだぞ?」
「亮3つレギュラー番組持ってるんだから、カード持ってるじゃん」
「あれは俺じゃねえ。俺の中の奴だ」
「? なかのヒトって、ハセヲにいちゃんじゃないの? みんないってるよ? なかのヒト=ハセヲにいちゃんだって」
「いや、だから、それは俺じゃなくて、俺の中の人だから。分かる? 三崎亮じゃなくて、さ○○○○○○○だから」
「え? だから亮でしょ?」
「違う!」
「え~絶対亮だよ。あのキャラは」
「何処が!?」
「いじられ具合とか」
「7またとか?」
「ヘタレな所とかな」
「だから、それは違う! 俺じゃない! 俺の中の人が言われてるだけだろ!」
「せやから中の人=ハセヲって言うとるやないか」
「ちが~~~~~う!」
もはや何を言っても通じないことは明らかだった。

283:GORRE
06/12/14 14:48:19 zEZWWrZd
とりあえずここまで。続きを考える時間をください。

284:名無しさん@ピンキー
06/12/14 15:29:54 vJ+g3myk
櫻井考宏は盗作に関与してたから某人気深夜アニメの主役を取られました

285:264
06/12/15 00:57:59 fPVYWkfC
亮×朔現在執筆中です。
筆の進み方が良ければ土曜の夜までには序盤はお見せできるかもしれません。
期待しないでいてね。

286:名無しさん@ピンキー
06/12/15 02:34:39 +imvFHZ7
>>283
中の人ネタ吹いたwGJ!!

>>285
そいつぁ無理な相談だ…
今から全裸でwktkしているぜ…

287:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:48:55 T51nueZD
おまいら乙
ハセヲ×カール投下

288:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:50:07 T51nueZD

「はるばる来られたところ申し訳ないがの……その子は、この街の住人ではない」

ネットスラムの長、タルタルガは確かにそう言った。
俺達がこの吹き溜まりの街にやって来たのは、セグを本来いるべき場所に戻すため。
なのに、この爺さんはこともあろうに「この街の住人ではない」とか抜かしやがる。
何のために俺が苦労してデータシード集めて、ここに来たと思ってんだ?

「確かにここはバグPCや破損データの集落だがね……その娘はワシらとは違う存在に思えての」
「どーいうこった、そりゃ」
「その娘はPCでもNPCでもない。ましてや放浪AIでもない。
 正体は分からんが……ワシはそう感じた。だが君の言うように何かが欠損しているフシもある……。
 珍しいお客だとは思うがね、これ以上はちょっと分からんわい」
「ネットスラムの長老にも分かんないか……お手上げだな、ハセヲ」

ここでなら何か手掛かりがあると思ってた。
勝手にギルドに押し掛けて来て、勝手に食い散らかして、俺のことをパパと呼ぶチビ。
銀色の髪、黒いドレス、紅い瞳……俺とカールにカラーリングがそっくりなガキ。
セグと名付けられたそいつとの日々をカールは楽しんで居たけど、俺はやっぱ何か違うと思った。
だから本当の両親がいるなら(例えゲームの設定でも)探してやろう、って。
なのに、ここにもセグの居場所は無い。

「力になれんで申し訳ない。
 だが久々にここを尋ねてくれるプレイヤーがいてくれて、嬉しかったわい」
「こんな色気のねぇ廃墟、物好きじゃなきゃ確かに来ねーわな」
「ここってバグPCとか放浪AIとか、しょっちゅう来るの?」
「昔ほどではないがの。最近来たのは……ほれ、アイツじゃ、あの頭に角の生えた仮面男。
『漢と書いて男と読む』などと、うわ言の様に繰り返しておるじゃろう?
 もう自分がPCなのかNPCなのかの区別も付かなくなっておる……何かショックなことでもあったのかのぅ」
「女にでもフラれたんだろ」 

世の中、つまんねーコトで大袈裟にショック受ける奴多いからな。
でもあの仮面男……どっかで会った気がするようなしないような……ま、いーか。
しかし参った。
セグがネットスラムの住人じゃねーとなると、何処から来たんだ、コイツ。
人の気も知らねぇでカールの膝で気持ちよさそうに眠りやがって……頬っぺた抓るぞ。

「ところでそちらのお嬢さん」
「んー。あたし?」
「そう、あんたじゃよ。お前さん、実に勿体無いの」
「あん? カールの何が勿体無いってんだ、爺さん」
「お嬢さん、あんたには素晴らしい才能がある。
 だが惜しいことに半分以上が眠ったままの様でな……それが勿体無くての」

……いきなり何言ってんだ、このジジイ。

「まっさか。もうレベルもカンスト状態だよ、あたし」
「数値で表せる様なモノではないのじゃよ。
 ワシが見たところ、お主はモルガナや女神に縁のある者と見たが……違うかの?」
「へぇ……よく分かるね、長老サン」

モルガナ? モルガナ因子のモルガナのことか?
てかモルガナって何だ? 今思うと俺は、そんなことも知らずに憑神を、スケィスを使っていた。
そのスケィスももう居ねぇ。スケィスは、今はカールが使っている。
俺のスケィスとはまた違う、別のスケィス。全身を紅い包帯で拘束されたスケィスを―――。


289:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:51:50 T51nueZD

「で? 勿体無いから? それだけ?」
「わざわざ辺鄙な場所まで尋ねて来てくれたお客を、手ぶらで帰すのも可哀想じゃろ。
 お詫びと言っては何だが、ワシがお嬢さんの眠った力を引き出してやろうかと思っての」
「オイオイ。ここはナメック星じゃねぇんだぞ、爺さん」

って、ありゃ最長老様だっけか。
つーか、カールに眠った力がある? 嘘くせー何か嘘くせー。
前に一度戦ったことあるから分かるけど、この女が本気になったら
Xthフォームにでもならなきゃ俺でも勝てる気がしねぇ。
憑神まで使えるってのに、まだ隠された力があるだ? 冗談キツイぜ、オイ。

「その“眠った力”ってのが開放されれば、あたし、もっと強くなれる?」
「お嬢さん次第かの。お主自身の救いにも滅びにもなる……良いも悪いもリモコン次第じゃ」
「んー、どーしよっかなぁ」
「カール、こんな胡散臭ぇ爺さんの言うこと信じるのか?」
「でもせっかく引き出してくれるって言ってるし?
 その引き出す方法ってのがやらしー方法だったらお断りだけど」

そりゃそうだ。
その手のパワーアップ方法ってエロゲとかエロノベルとかだと
十中八九の割合でエロい方法って相場が決まってやがんだからな。
もしそのつもりならタダじゃおかねーぞ、ジジイ。子供の前で乱痴気騒ぎなんかさせてたまるかっての。

「何もしやせんよ。この杖で軽く叩くだけじゃからの」
「……すげー簡単に引き出せるのな」
「見た感じでは、お嬢さんのPCには未知のブラックボックスがあるようだ。
 ワシはただ、それを開いてやるだけ……さっきも言ったが、後はお嬢さんの意志に任せよう」
「あたしの中に……ね。全然気が付かなかった」

カールはタルタルガを信じたらしく、一歩前に歩み出る。
この爺さん、すげー背が低いから176cmあるカールと比べると大人と子供にしか見えねぇ。
俺は眠ったセグをあやしながら、2人のやり取りをじっと見る。

「では行くぞい」
「ん。どんとこーい」

するとタルタルガは徐に杖の先端で、軽くカールの腹を叩く。
それだけ、ただそれだけだった。
少なくとも、俺には何も変わらないように、そう見えた。

「あ……?」
「お、おい、カール!?」

なのに、突然カールはフラついて倒れそうになる。
PCがゲームの中でフラつく、ってのは妙な表現だが確かにそうなんだから仕方ねぇ。
銀色の髪が揺れて、黒衣が俺の腕に倒れこむ刹那、カールに触れた俺にも
何かが……よく分かんねぇけど、何かが伝わった、そんな感じがした。

「(これは……スケィスが発動しかけた時と同じ感覚……?)」
「変なの……あの時と同じだ……何かが、あたしの中で……生まれたみたいな……」

あの時? カールがスケィスを手に入れた時のことか?
俺はコイツのこと知ってるようで何も知らねぇ、ホント今更だけど。
お前は、俺と出会う前に何をしていた? モルガナと女神との縁って何だ?
なぁ、カールよぅ……。


290:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:53:32 T51nueZD

**********************







「気分、どうだ?」
「さっきは何か変な感じだったけど、もー大丈夫」
「そっか」

ネットスラムから帰還後、俺達はカナードに戻った。
カールは気分が優れないらしく、一旦落ちるもののすぐに復帰。
セグはカールが居ない間、俺が面倒を見たんだが……子供の相手ってのは結構ムズいと思い知った。
特にここ最近のセグはカールが言葉を教えたせいか、言いたいこと言い放題で困る。
かと言ってギルドの外を歩いて「宮皇のハセヲが子供連れて歩いてるw」とかBBSに
カキコされんのは避けたい。ロリコン趣味はクーンで十分だ。今は遊び疲れて眠っちゃいるが。

「なぁ。カール」
「んー」
「お前、何だかんだで俺達と距離置いてないか」
「そう?」
「俺は……お前のこと、揺光に紹介されてから……ずっと仲間だって……。
 前はカールが昔何やってたとか、そういうのは興味なかったけど……」
「にょう? ハセヲはあたしのこと、知りたいの?」
「……あぁ」

知りたい。お前のこと、知りたい。
俺の前で語らない、お前の昔のこととか、全部。
まるで小さな子供が、好きな絵本を読む時、母親に「早く次のページのお話して」とせがむ様に。
カールは誤魔化す時に“謎が女を女にする”なんて言っちゃいるが……コイツは、十分すぎる程に女だ。

「ふむ……そうだね。面倒だから端折って話すよ、それでもいい?」
「あぁ」
「……あたしはね。前のバージョンで、スケィスにデータドレインされたことがある」
「スケィスに……?」
「8年前だな。あの頃のスケィスはモルガナってオバサンの手下だった。 
 あたしは……ちょっとワケありで“キー・オブ・ザ・トワイライト”持ってて狙われてたのね、スケィスに」
「キー・オブ・ザ・トワイライト!? マジか! カールが持ってたのか!?」

驚いた。
オーヴァンが探してた……いや、俺達「黄昏の旅団」が探していた、あのアイテムを。
カールが、かつて持っていた……?

「持ってた、ってのは語弊があるな。連れてた、ってのが正しいかも」
「連れて……?」
「キー・オブ・ザ・トワイライトはね、ハセヲ。
 伝説のアイテムなんかじゃない……あたしから見たアレは……小さな女の子だった」
「……女神?」 
「ご名答。あたしが連れてた頃は、まだ赤ちゃん同然だったけどね。
 そうだね、セグと同じ……見た目、5歳くらい?
 とにかくあたしはその子を連れて、ウィッチブレイドよろしく親子で逃避行してたんだ。
 あたしがスケィスにデータドレインされて意識不明になった後のコトは覚えてないけど」


291:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:55:31 T51nueZD

「あたしの中にモルガナ因子があるのは、そのせい。
 スケィスが使えるようになったのは、ハセヲが使ってたスケィスが消滅した後だね。
 言ってみれば繰り上げ当選の碑文使いなんだよ、あたしは」

俺が碑文使いじゃなくなったから、代わりにカールが……?
でも確かに話を聴く限り、俺よりもスケィスを使役する因果が強いのはカールだ。
前のバージョンの《The World》からプレイしていて、スケィスにデータドレインされて
意識不明になって……でもそれなら、パイのタルヴォスやクーンのメイガスも
他の誰かが繰り上げになって今、使ってるってことになるんじゃないか?
パイからは、そんな話聞いてねぇけど……。

「他の憑神はどうか知らないけど……スケィスはね、ハセヲ。特別なんだ」
「特別?」
「モルガナのあらゆる悪意が、特に強く込められて作られてる。
 娘を殺すためだけに作った、殺人マシーンだかんね。
 あたしのスケィス、全身を紅い包帯で拘束されてただろう?
 あれをしたのは、あたし。昔のあたしもね、《The World》に悪意をバラまくとか
 ガキっぽい理想持ってたけど……モルガナに比べりゃ、大したもんでもなかったんだ。
 だからスケィスの力を抑えるための拘束具なのね、あの包帯は。
 あれがなきゃ、モルガナの悪意に飲まれて……頭おかしくなっちゃうもん。あたし、脆いから」

確かに、一理ある。
俺もクーンとの戦いで一度、スケィスを暴走させたことがあるから分かるんだ。
何かこう、言葉じゃ言い表せられないようなおぞましいモンが俺の中に入ってきて……
自制が聞かなくなって、気がついたらメイガスをタコ殴りにしてて……。
カールは、だからスケィスをああやって全身拘束してたのか……。

「使うべきもんに使われるようになっちゃ、ダメってことだな」
「ほほう、名言だね。天狗のオッサンから聞いた?」
「あぁ……まぁ、な」

誰かを傷つけてから悟る様じゃ……遅すぎたけどな。

「あたしがセグとの親子ごっこが楽しいって思ったのは……
 やっぱ、あの頃が楽しかったからかな……命がけの鬼ごっこだったけど……好きだったんだ。
 あたしを追いかける鬼がね、好きだったの。
 ハセヲを見た時、あいつのコトちょっと思い出したな……うん、以上でダサイ昔話、終了」

初めて見た、カールが照れ笑いなんかするの。
いつも俺や揺光をからかう時に見せる意地の悪い様なものではなくて、
グラフィック処理された架空の笑顔だってのに……何か、少しだけ見惚れるくれーに。

「くっくっく……不思議だ。きみと一緒にいると、あたし、時々ヘンなくらいに素直になれる」
「……いつも変だろ?」
「ハセヲ。あたしはきみが笑う顔を見るのが好きだ。
 きみが怒る顔を見るのが好きだ。きみが揺光と一緒に居るのを見るのが好きだ。
 きみがセグと一緒に遊んでいるのを見るのが好きだ。きみが戦う姿を見るのが好きだ。
 でもね、やっぱり一番は……あたしだけに話しかけてくれる、きみが好きだ」

……えーっと、つまり?

「おっと。おばあちゃんが呼んでる、夕飯の時間だ。ハセヲ、じゃあ」
「あ、あぁ……」

言いたいことだけ言って……お前はいつも、そうやって行っちまうのな。


292:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:58:00 T51nueZD
寂しくないと強がってみた でも顔にウソつけなくて?
キミ求め彷徨っている どうか見失わないように? 何のことです? 
おやすみおまいら


293:名無しさん@ピンキー
06/12/15 12:12:17 7BgQhgYp
        _,,:-ー''" ̄ ̄ ̄ `ヽ、
     ,r'"           `ヽ.
 __,,::r'7" ::.              ヽ_
 ゙l  |  ::              ゙) 7
  | ヽ`l ::              /ノ )
 .| ヾミ,l _;;-==ェ;、   ,,,,,,,,,,,,,,,_ ヒ-彡|
  〉"l,_l "-ー:ェェヮ;::)  f';;_-ェェ-ニ ゙レr-{   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ヽ"::::''   ̄´.::;i,  i `'' ̄    r';' }   | 久々にドゥフー・・・じゃなくてGJ!
 . ゙N l ::.  ....:;イ;:'  l 、     ,l,フ ノ   | こういう良SSで溢れていた
 . |_i"ヽ;:...:::/ ゙'''=-='''´`ヽ.  /i l"  < のが昔のスレなんだよな今のスレも
   .| ::゙l  ::´~===' '===''` ,il" .|'".    | 良SSで溢れているから困らない
    .{  ::| 、 :: `::=====::" , il   |     \________
   /ト、 :|. ゙l;:        ,i' ,l' ノト、
 / .| \ゝ、゙l;:      ,,/;;,ノ;r'" :| \
'"   |   `''-、`'ー--─'";;-'''"   ,|   \_



294:名無しさん@ピンキー
06/12/15 12:28:05 TQR+QRGv
>>292
GJ!!!時間経つの忘れて読んだ!!
法規の講義、完璧に遅刻だ…

295:名無しさん@ピンキー
06/12/15 23:15:20 OT8cv2aG
age

296:名無しさん@ピンキー
06/12/16 12:26:37 /O5rYtnk
GJ!!次回も楽しみだ!

297:264
06/12/18 02:03:07 ys/KO4BR
SS書くのって難しい、職人の方々はすごいと思いますよ、本当に
とりあえず冒頭部分できたので投下します。

ゲームは一通りプレイしたけど言葉遣い間違ってないか不安だ…

298:264 亮×朔 その1
06/12/18 02:03:59 ys/KO4BR
その日の朔はやけに気合が入っていた。

「今日こそ……今日こそ決着をつけるんや……」

朔はそう呟きつつThe Worldへログインした。
標的はハセヲだ、今日までハセヲを振り向かせようと様々な行動を起こしてきたが、
どうもハセヲは恋愛沙汰に関してはかなり鈍いようで、
朔の行動が成功した試しはこれまで一度も無かった。

「……遅い、いつまで待たせる気だ?朔は。」

同日、ハセヲは朔に呼び出されていた。
場所はエルディ・ルー、2人にとって何かと縁のあるエリアだ。

「朔に指定された時間が20時だから……もう30分も過ぎてるじゃねーか……
あと少しだけ待って来ないようだったら戻るか」

しかし、ハセヲは同時に違和感を感じていた。
これまで幾度と無く朔とパーティーを組んで行動する機会があったが、
彼女は一度たりとも集合時刻に遅刻することは無かった。
それが何故か今日は遅れている、しかも30分以上もだ。

更に10分ほど経過した時、ハセヲは足音がこちらに近づいてくるのに気付いた。

「…よぉ、遅かったじゃねーか。」
「……まだ、待ってたんやね。ゴメンな、遅れてしもて。」
「(……やけに素直だな、なんか不気味だ)
ま、そろそろ戻るつもりだったけどな。」
「そか……間に合って良かったわ……」
そう言ったきり朔は黙り込んでしまう。

何分ほど経っただろうか、突然朔が話を切り出してきた。

「今日来てもらったのはな、ハセヲにちょっと話があるからなんや。」
「話…?何の話だよ?」
「ええか?1回しか言わんからよく聞いとくんやで。」

そう言うと朔は深呼吸をし、ハセヲの目を見据えてこう言った。

「……ウチ、ハセヲのことが好きや。」

299:264
06/12/18 02:06:21 ys/KO4BR
冒頭はこんな感じになります。
改善点等ありましたらどんどん指摘してください

投下ペースはかなり遅くなりますが今後も宜しくお願いします。

300:名無しさん@ピンキー
06/12/18 02:09:36 +SAPFbUr
>>299
GJ!
期待して待ってるよ

301:名無しさん@ピンキー
06/12/18 11:07:17 HafcRX70
>>299
GJ!
朔かわいいよ、朔。
いまんとこ指摘できるのは『」』の前の『。』は不要って事くらいか?

302:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/18 15:33:45 I6izWgKC
すみません、今日の投下を予定していましたが延期します。
次は多分、12月20日(水)。

303:GORRE
06/12/19 00:12:51 rQvpOhQk
>>299
来たああああああああああああ!
もしや、この朔はツンデレでは無いのか!?いや、これはこれでいいか。
続きが楽しみだよ~。待ってるよ~。

304:名無しさん@ピンキー
06/12/19 00:20:16 WTbVzvxp
>>302
楽しみにしてます(*´д`)

>>303
雑談するならコテ外せと(ry
これで何回目だろうな?(´・ω・)

305:名無しさん@ピンキー
06/12/19 00:25:11 46mx8cUl
>>303
まとめサイト作れば?と言いたい

306:名無しさん@ピンキー
06/12/19 01:19:38 XarY1b9j
専ブラだとクッキー残るからな
GORRE氏も面倒だろうが頑張れ

307:名無しさん@ピンキー
06/12/19 03:55:37 taYCUc2J
おまいら乙
ハセヲ×カール投下
バトルオンリー


308:名無しさん@ピンキー
06/12/19 03:56:49 taYCUc2J

俺達がセグと出会ってから8日目。
それまで騒がしくもそれなりに楽しかった俺達の日常は一変した。
世界の終わりってのは案外と呆気なく来るもんなんだな……ってくらい、それは突然に。

「あわわわ! シッ、シラバスゥ~!」
「ていっ! やぁっ! ガスパー、クーンさん達の所までもう少しだから頑張って!」

闇に覆われたタウン、グラフィック崩壊、街中で徘徊を始めるバグモンスター。
まるで地獄の釜の蓋を開けたかのように、次々とカオスゲートから湧き出てきた奴らはプレイヤー達を襲う。
レベルの高ぇ奴は勇猛に、レベルの低い奴は恐怖に足を竦ませながら、それを迎え撃つだけ。
選択肢は迎撃のみ。逃げることは許されねぇ。

「何なんだコイツら……しつっこいなぁ!」
「揺光さん、うしろうしろ!」
「おっと! ナイス、アトリ!」

街中を埋め尽くさんばかりに行軍する化け物の群れ。
地獄にでも迷い込んだみてぇな気分……修羅場は幾つか潜ってきちゃいるが、今回は少しヤバイ。
アリーナバトルならともかく、街中での戦闘なんて誰も経験したことねーだろ?
しかも、敵の数がハンパねぇと来てる。

「楓。状況はどうなってますか?」
「現在、月の樹とケストレル、CC社が連携して各タウン内のモンスター殲滅に当たっています。
 ですが状況は圧倒的にこちらが不利のようです。我々の@ホーム陥落も時間の問題かと……欅様?」
「うーん。またハセヲさんに頼らなきゃ、ってコトになりそうだなぁ」

モンスターの数は際限ない。
でも戦うしかない。何故逃げない? 
逃げれねぇからだ。

「AIDAサーバーの時と同じだね……。ログアウト出来なくなっている……“彼女”も、怯えているみたいだ……」
「また直接《The World》を見るハメになるなんてなぁ……ったく、これで合コンがパーだ!」

かつて碑文使いだった連中は一箇所に留まらず、
各タウン(マク・アヌ、ルミナ・クロス、ドル・ドナ、ブレグ・エポナ)に分散して交戦中。
中でも一番の激戦区はここ、ブレグ・エポナだ。
奴らは……何かを狙って、このタウンに押し寄せている……そんな気がする。

「秘奥義・重装甲破ッ!」
「環伐乱絶閃!」

カナードのホーム周辺は完全に包囲されていた。
俺とカールの2人で群がる化け物どもを何とか食い止めちゃいるが、さすがにキリがねぇ。
もう1人、誰か援軍が欲しいところだが……奴らは泣き言を言ってる暇も与えちゃくれない。
これは……何かとんでもねーことが起こってるんじゃないだろうか?
ただのシステムトラブルとは思えねぇ、何か、とてつもない悪意みたいなものをビリビリ感じる。
AIDAサーバーなんか比較にならねぇ程の、とんでもない何かの悪意を。

「やれやれだぜ……倒しても倒しても出てきやがる!」
「ばみょん! ハセヲ、回り込まれないように!」
「んなこと言ったってよ!」

戦力に差がありすぎんだよ! いくら俺達がレベルカンストでも、さすがにこの数の相手は無理だ。
けど、このままじゃここを拠点に戦うのが精一杯で他のPCのヘルプにまでは廻れない。
多分、化け物どもにやられちまったPC達は……チッ。今は、ここを切り抜けねぇと話にならねぇ!


309:名無しさん@ピンキー
06/12/19 03:58:24 taYCUc2J

『ハセヲ、聞こえるかしら』
「! パイか!?」
『敵の本拠地がやっと割り出せたわ。
 奴らは【Δ 輪廻する 煉獄の 祭壇】から送り込まれている可能性が高いみたい』

ジリ貧状態の今、パイからの通信は吉報だった。
守るだけが能じゃねぇ、こっちから攻めねぇと永久にこの戦いは終わりそうもねーからだ。
けど、Δサーバー……マク・アヌまで移動するっつーことは……カオスゲートまで行く必要があるってこった。
こいつらを退けて、だぞ?

『8年前、かつてドットハッカーズ……勇者のパーティが最後の戦いに臨んだ場所よ。
 ロストグラウンド化しているから、カールのスケィスもそこなら使用可能なはず。
 私も今から合流す……きゃっ!? ザザッ、ザ――――――――――ッ!』 
「パイッ!? おいっ、返事しろ! パイッ!!!」
「CC社が落ちたか……サーバーを乗っ取られた時点で負けも同然だったんだろうけどね」

……一刻の猶予もねぇって感じになってきやがった。
最悪の場合、もし俺達までやられちまったらどうなる?
誰がこの世界を救う? てか、救えるのか? この絶望的な状況で?
いくら竜賢宮の宮皇っつたって、一介の工房の俺が? 無理だろ、どう考えても。

「ハセヲ、今はオバサンを信じて進むしかない。
 何とかカオスゲートまで行って、マク・アヌ経由でそのエリアまで行くんだ」
「行くって……カール……お前、怖くねぇのか……?」
「怖いよ。でも、きみが居るから大丈夫」

相当に修羅場慣れしている、そんなカールの笑顔。
俺とこうやって会話している間もカールは攻撃の手を休めることなく、
モンスターの大群と対峙、薙ぎ払いながら活路を見出そうとしている。
カールの揺ぎ無い闘争本能は、こんな状況においても健在だった。
……だよなぁ。怖がってちゃ、いつまで経っても、前には進めねぇ!

「ハセヲ。きみが【Δ 輪廻する 煉獄の 祭壇】に行け。ここはあたしが食い止めるから」
「!? 俺はもう憑神が使えねぇぞ、お前が行かなきゃ意味ないだろうが!」
「あたしは……ここでセグを守らなくちゃいけない。娘を置いて逃げ出す母親が何処の世界にいる?」
「けどよ!」
「憑神は……スケィスは、きみに譲ろう」


【第一相スケィスR:1のデータがインストールされました】


「!」
「あたしの大事なモノだけど……ハセヲにあげるよ」

戦禍の最中、俺の胸にカールの指先が軽く触れると何かが俺の中に流れ込んでくる。
久しく忘れていた感覚……枯渇していた俺の中のモルガナ因子が瞬時に沸騰するみてぇな……!
居る。俺はここに居る。アイツも、俺の傍に居るのが理解る!

「行って。ハセヲ」
「……わーった。ただし、俺もお前に渡すもんがある」

俺の手中に顕現した大鎌、それを俺は無言のまま地面に突き刺す。
カールはここに残ってセグを守ると宣言した以上、てこでも動かないだろう。
だから、俺は振り返らずにカオスゲート目掛けて駆け出した。
群がり纏わりつく化け物どもを蹴散らしながら、逃げるためではなく、勝ちに行くために。


310:名無しさん@ピンキー
06/12/19 04:00:59 taYCUc2J

「ママ……。パパは……何処に行っちゃったの……?」
「悪者退治。セグ、危ないからホームの中に隠れてな」
「うん……」

ハセヲを送り出せてカールは満足していた。
傍から見れば、どう考えても分の悪い賭けにしか思えない。
だがカールはハセヲの強さを、可能性を信じている。だから希望を彼に託した。

「ロストウエポン……万死ヲ刻ム影。
 スケィス無しの状態のあたしでも使いこなせるかどうか……」

去り際にハセヲが地面に突き立てた大鎌・万死ヲ刻ム影。
第一相の碑文使い専用のロストウエポンである死ヲ刻ム影がウイルスコアを貪り喰い、
成長した結果がこの武器である。
以前のスケィスを所持していたカールならば適応もできただろう、
しかし先程ハセヲにスケィスを譲渡してしまった今、カールに適正があるのか?

「ふむ……はぁっ!」

躊躇している場合ではない。
とっさに地面から万死ヲ刻ム影を引き抜き、引き抜いた反動を利用しながら敵を薙ぐ。
……使えないこともなさそうだ。けれど、やはり100%の力を引き出すには至らない。
だが先程までカールが使用していた大鎌に比べれば、その破壊力は歴然。
この武器をもっと上手く使いこなせたら、もう少し時間が稼げるのに。

「……アレやるか。まだ不完全だけど」

さながらタウンは阿鼻叫喚の地獄絵図。
あちこちからプレイヤーらの怒声や悲鳴が響き、かき消えていく。
モンスター達にPKされて意識を奪われ、未帰還者となってしまったのだろう。
ハセヲがこいつらを操っているボスを倒すまで、何とかここで粘らねばならない。セグのためにも。
女として、母親としての器を試される時であるとカールは知る。

「すぅ……はぁっ!!!」

迷いを振り切ったカールの叫びに呼応して、ブレグ・エポナの空気が震えた。
銀色の髪が、黒衣が揺れ、白い光に包まれながら粉雪の様に舞い散ってゆく。
それと同時に闇に覆われたタウンに一閃の眩い光が疾り、思わず化け物どもも目を背ける。
そして静寂。しかしカールを倒さんと、再び彼らが己は眼を開く。それが本能。
いや、或いは開かなかった方が良かったのかもしれない。光の中ではなく、闇の中で死ねたのだから。

「タルタルガに感謝しなきゃ……おかげで、あたしはまだ戦える」

ホームに押し寄せた闇の軍勢は視た、白雪の様な無垢なる白さを思わせる色の髪の少女を。
見様によっては限りなく白に近い銀。“らしさ”を残しながらも光に溶け込むかの如く、白を基調としたドレス。
だが何と言っても手足や髪留のアクセントに紅い帯があしらわれていることが顕著か。
両の腕が不釣合いな大鎌さえ握っていなければ、異国の聖人か姫君と見紛うばかりであるのに。
これは彼女の奥底に眠っていたモルガナ因子の具現、意志の強さ、負けられないという確固たる決意の顕現。

「Xthフォーム参上、かな?」

8年前、カールは女神を狙う邪な存在から女神を守ることができなかった。
子殺しを熱望する母親、そんな者が居てはいけない。否定したい。そんなのおかしい、と。
そして散るなら今度こそ母親らしく……そんなことを頭の片隅で考えながらカールは鎌を振るい、立ち向かっていった。


311:名無しさん@ピンキー
06/12/19 04:03:37 taYCUc2J
カールクリスマス仕様? エロマダー? 何のことです?
おやすみおまいら

312:名無しさん@ピンキー
06/12/19 04:08:10 ELA6Ubrq
こんな時間にGJ!! &おやすみw

313:名無しさん@ピンキー
06/12/19 20:20:28 eF/Nefqk
母は強し! 燃える展開だ! GJ!

314:名無しさん@ピンキー
06/12/19 23:04:34 s7GR5bss
なんかスゲェことになってきた!GJ!
カールかっけぇ

315:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:24:25 fqp+hEPZ
前誰かも言ってたが…カールをVol.3に出せ!
とにかくGJ!!

316:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:32:03 tpRj6z7c
刀剣とか大剣を使うキャラが飽和してるから1人削っても問題ないようにも…
カール出してくれたら泣く、毎度毎度GJ!

317:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:41:13 NNB/Jccg
カールいいなあ…GJ!

>>316
刀剣使いは飽和してるが大剣使いは人材不足だw


318:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:52:40 FjyoaGKT
氏のカールは魅力的だが実際のZEROのカールは
正直ハセヲと違ってタチの悪いDQNだからな…
流石に今は更正してると思いたいがどうなんだろうか

319:名無しさん@ピンキー
06/12/20 02:20:09 hKMjoWdM
カールは外伝キャラの割には優遇されてると思う。
付録のサントラにテーマ曲収録されてたり全員応募のテレカに描き下ろしで載ってたり。

320:GORRE
06/12/20 15:52:01 oUOgSK6I
>>282の続きを

智香の申し出は却下され、時間が近づいたので一同は空港へとやってきた。
「まだもうしばらく時間がありそうだし、ちょっとぶらぶらしてみるか」
「そうだね」
そんなわけで、登場時刻まで空港内をぶらぶらしていた。
「東京の空港はこんなに広いんか」
「まあな」
「あ、そろそろ時間だ」
智香は腕時計を見た。
「そっか、じゃあ、搭乗口に行こうぜ」
で、搭乗口へとやってきた。
「あーあ、もうお別れかあ」
智香はつまらなさそうに言った。
「何言ってんだよ。また来ればいいじゃねえか」
「そうだね、亮が来るって言う手もあるし」
「何~」
「う~~~~~」
「おねえちゃん?」
朔はそんな二人のやり取りに焼きもちを焼いていた。
「ま、楽しかったよ。色々とネタも手に入ったし」
「ネタ? ネタって何だ!」
「知らない方があんたのためになるって事もあるよ」
「待て、気になるぞ! 何だ!」
(あれのことかな…)
望は昨夜の出来事を思い出していた。
(あれか…)
朔も思い出していた。
(思い出したら、なんかごっつう恥ずかしいなぁ…勢いとは言え、あんな状態で告ってもうたし…)
思い出したらなんだか恥ずかしくなった。朔は自分の顔が赤くなっている事に気づいたのか、慌てて手を振ってそれを隠そうとした。
「何してんだ、朔」
「何でも無いわ!」
「なら、いいんだが」
それに気づいたのか、智香は亮を自分のほうに向かせると、キスをした。
「!」
「あ~~~~~!」
「あ」
一番驚いたのは亮だった。
「い、いきなり何すんだよ。初めてだったんだぞ!」
「あたしだってそうだよ」
智香は顔を赤くしていた。

321:GORRE
06/12/20 16:04:46 oUOgSK6I
「う~~~~~~~~~~~~~!」
そんな二人を見て、朔はメラメラと嫉妬の炎を燃え滾らせ、ワナワナと震えていた。
智香はそんな朔をちらりと見ると、朔を挑発するかのように、言った。
「なんなら、今度はちゃんとしてみる?」
「駄目えええええええええええええええ!」
そんな二人の間に朔は割ってはいると、亮を引き剥がし、その腕に抱きついた。
「あんまりハセヲに近寄らんといてえ! いくら智香ねえと言えども、それは絶対に駄目や!」
「さ、朔?」
朔の突然の行動に、亮は驚いた。

と、ここまで書いてひとまず終了。 続きは夜にでも。時間があれば書きますんで。

322:名無しさん@ピンキー
06/12/20 20:27:05 izvl1q9G
ウボアアアア!生殺しか!!
GJ!!

323:名無しさん@ピンキー
06/12/20 23:26:05 tpRj6z7c
朔のデレっぷりが凄まじくなってきたああああああああ
GJ!

324:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/21 00:47:27 UAA6LRSJ
ちょっと遅れました。
今に始まった話ではありませんが、今回はちょっと暗め。

325:花火まであと少し 10
06/12/21 00:48:21 UAA6LRSJ
線路と車輪が軋み、振動を反響させながら地下鉄が走る。
地下鉄都営新宿線の車内で、亮はポケットから携帯電話を取り出した。
画面に映った時間は午前十一時四十三分。
今九段下を過ぎたあたりだから、志乃との約束には十五分近い余裕を持って間に合う事になる。
しかし、亮の心は梅雨時の日本列島のように沈んでいた。
溜息を付く代わりに吊革を握る手に力を込める。
折角のデートだというのに、昨日志乃が気を遣ってくれたというのに。
それもこれも、昨日あんな事があったせいだ。

326:花火まであと少し 11
06/12/21 00:49:45 UAA6LRSJ
「おまえなぁ……恥ずかしいから大声出さないでくれよ」
「ごめんごめん。久しぶりだったからさー」
タビーはそういって、招き猫のように片手を上げて手首を曲げた。
ハセヲは苦々しい気分でそのアクションを見る。
周囲のチャットに耳を澄ますと、何人かのPCが二人の事を喋りはじめていた。
以前は余り意識しなかったが、二人がかつて所属していた黄昏の旅団というのはこのゲームの中ではかなり有名な存在だった。
そんな現状は、以前目立ったおかげで散々な目にあったハセヲにとっては余り歓迎するべきことではない。
まあ、今はタウンなのですぐにどうこうということはないだろうが。
「で、何だよ。もしかして挨拶する為だけに俺を呼び止めたのか?」
「別にそれでも良いんだけど……そうだ、ハセヲ。よかったらこれからどっか行かない?」
早めにログインして志乃からのメールをチェックしたい為か、ハセヲの言葉は自然と少し荒くなる。
しかし、タビーはそれを気した様子もなく言った。
基本的に根暗の亮は、彼女のこういう明るさが時々羨ましくなる。
もちろん、タビーにもそれなりの影はあるのだろうが。
「わりぃ、今日はもう寝ないといけないんだ。お袋が門限に煩くってなw」
少しも悪いと思っていない調子で、ハセヲは答える。
そう、自分はこれから志乃のメールを待たなければいけないのだ。
それ以外にも明日着ていく服の選定、交通案内の調査などやらなければならない事は少なくない。
野良猫に構っている余裕などないのである。

327:花火まであと少し 12
06/12/21 00:50:17 UAA6LRSJ
「そっかー……ねー、もしかして志乃さんとデート?」
「いっ!?」
タビーの言葉に、思わず亮が声にならない叫びを漏らした。
何で、と言いそうになるのを寸前で思い留まったが、うろたえてしまった時点でもうアウトだろう。
「あー、瓢箪から駒が出ちゃった……いやー、ハセヲも隅には置けないね」
それを証明するように、タビーはにやにや笑いながらハセヲに体を寄せてきた。
「うーん、やっぱりあたしは正しかった。だからハセヲ志乃さんの目見れなかったんだね」
指でハセヲの二の腕のあたりをつつきながら、タビーが耳元で囁く。
ここまで来たら誤魔化すことも出来ないので、ハセヲは思い切って開き直る事にした。
「ああそうだよ。デートだよ。だからお前と遊んでる暇はないんだ」
ハセヲはそういってそっぽを向いた。
それを聞いたタビーは何を思ってか、無言で体を離す。
……少し言い過ぎたか?
俯いた猫娘の姿を横目に、ハセヲは舌打ちした。
苦手ではあったが、この少女(多分)の事は決して嫌いではない。
取り立てて好きでもなかったが、知り合いを傷つけて平気なほど亮は無神経ではなかった。
そうしてハセヲがとるべき態度を決めかねていると、タビーが唐突に口を開いた。
「……そんなに志乃さんの傍にいたい?」
「は?」
意味がわからない。
確かに、自分は志乃の傍にいたい。
だが、それは―好きなら当たり前ではないだろうか。
大体、その言葉はこっちの台詞だ。
旅団にいた頃から、タビーはずいぶん志乃に懐いていた。
時々それで都合がある志乃を困らせた事もあった。
苛立ちながらハセヲがそう言おうとした瞬間。
「でも、ハセヲにオーヴァンの代わりは無理だよ」
タビーが小さく、そう言った。
「お前、それどういう」
「じゃあね、ハセヲ」
反射的にハセヲが激昂した時、タビーの姿は既に消えていた。

328:花火まであと少し 13
06/12/21 00:51:28 UAA6LRSJ
「くそ……」
昨夜の会話を反芻して、亮は片手の携帯電話に力を込めた。
ここが自分の部屋だったら、壁を殴っていただろう。
オーヴァンの代わり、だと。
確かに姿を消した黄昏の旅団のギルドマスター、オーヴァンと志乃は親密な関係だった。
リアルでも面識があったらしいし、彼の失踪による志乃が酷く沈んでいるのも事実だ。
しかし、それは亮と志乃が付き合いだした事とは関係ない。
他でもない、志乃本人がそう言っていた。
だが―
亮は目を閉じた。
今の関係が、オーヴァンの失踪なしには成り立たないのは事実だった。
彼がいたら、二人の距離がここまで近づく事は無かっただろう。
(―違う!)
首を振って、亮はその考えを打ち消した。
それはあくまで時間の問題に過ぎない。
オーヴァンがいても、自分はいつか志乃に想いを告げていただろうし、彼女はきっとそれに応えてくれていた。
それに、自分と志乃は既に一度体を重ねている。
仮にオーヴァンの事で彼女の心が弱っていたとしても、そんな理由で彼女は好きでもない男に体を許したりはしないだろう。
志乃はそんなに安い女ではない。
それでも。
(なのに、どうして俺はこんなに不安になるんだ)
目を開いて、列車の無機質な天井を見上げる。
そうしないと、亮は泣いてしまいそうだった。

329:花火まであと少し 14
06/12/21 00:52:12 UAA6LRSJ
そんな少年の感傷に、やけに気の抜けた停車案内が水を差した。
(ん?浜町?)
聞きなれない単語に、亮が思わず視線を動かす。
神保町は九段下の次の停車駅だったはずだ。
と言う事は……
真っ青になって、亮は携帯の時刻表示を見た。
時刻は、十一時五十六分になっていた。

330:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/21 00:52:44 UAA6LRSJ
以上。次回、12月23日(土)。

331:名無しさん@ピンキー
06/12/21 01:49:19 2IqXiQLn
>>330
渡英真珠苦戦、乙! GJ!

332:GORRE
06/12/23 00:51:04 i4eCifoo
>>321の続き。オリキャラあり。

亮の腕に抱きついた朔は、智香にハセヲを盗られまいと、ぎゅっとその腕に抱きついた。
「おい、朔?」
何故朔が抱きついてきたのか理解できない亮は、一人訳が分からなかった。
「ハセヲはウチのもんなんや! ぜえったいに他の女には渡さへん! 智香姐かて同様や!」
「え!?」
亮は一人いまいち状況が理解できていなかった。
「こりゃ手強いなあ。あたしだって亮の事を好きだし、好きな気持ちじゃ負けてないよ」
「せやけど、駄目なんやぁ! ハセヲはウチのもんやあ!」
朔は駄々をこねた。
「でも、あたしは亮から告白されてるし、あたしのほうが一歩勝ってるよ」
「してねえだろ」
「忍冬くれたじゃん」
「あれは、そんなつもりじゃあ」
「う~~~~~~!」
朔は腕に抱きつく力を強めた。
「いてえ! 何でそんなに強くするんだよ」
「ハセヲが他の女といちゃついとるからやぁ!」
「いちゃついてねえだろ!」
そんな光景を、黒いオーラ丸出しで見ている者がいた。搭乗口にいる女性スタッフである。
「あの~、お客様」
「あ、はい」
「お乗りになるのかならないのか、はっきりしやがれこんちくしょう」
「え?」
「もうすぐ飛行機の出発のお時間なのですが、さっさと乗るのかののらねえのかはっきりしやがって下さい」
満面の笑みを智香達に見せながら言った。
「こちとら生まれて28年間彼氏もいないって言うのに、目の前で彼氏争奪戦見せられたらたまったもんじゃねえってもんですよ。
おまけに、夏休みで今日はオフの日なのに、急に来られない娘がいるから代理で来る羽目になるし」
「えーっと…」
「それなのに何なんですか? これ見よがしに私に彼氏争奪戦を見せ付けて。いじめですか? 新手の嫌がらせですか? 私があなたに何かしましたか?」
「え、いや…その」
「いいんですよ別に。あなた方が彼氏争奪戦を繰り広げようが構いませんし。でも、私の前で繰り広げるのは止めて頂きたいものですね。
さっきから見てると、無性に腹が立って腹が立って仕方が無いわけなんですよこんちくしょう」
もはや何て言ったらいいのか智香達は分からなかったが、さっさと飛行機に乗ったほうが良さそうなことだけは分かった。


333:GORRE
06/12/23 01:01:46 i4eCifoo
「…えっと……じゃあ、あたし行くね。亮」
「ああ」
「じゃあね、ちかねえちゃん」
「またね、望」
「気いつけてな」
「ありがとう、朔。負けないよ」
「ウチ勝て負けへん」
「早く乗れやこんちくしょう!」
「じゃあ、またね~」
智香はゲートの中に消えていった。
「いっちゃったね」
「何だったんだ一体…」
亮は訳が分からなかった。

飛行機が飛び立つのを見届けると、亮達は空港を後にした。
「さて、お前達は深夜バスだろ? どっか行きたいところあるか?」
「ウチあれ行きたいねん」
「ん?」
「呪○」
「…ホラーか…」
「不満か?」
「不満じゃねえけど」
「なら、ええやないか」
「望はどうだ?」
「ボクはあんまりすきじゃないんだけど、がんばる」
望は小さくガッツポーズをとった。
「そ、そうか…なら、決まりだな。目的地は、銀座だ」
一路銀座へ。亮達は映画館へ向かった。

334:GORRE
06/12/23 01:03:32 i4eCifoo
とりあえずここまで。続きはまた思いついたときにでも。

335:名無しさん@ピンキー
06/12/23 02:13:37 a0V/sJbl
GJ!! もう,その才能を奪ってやりたい!!
 ・・・・・・次回を待つとするか・・・・・

336:名無しさん@ピンキー
06/12/23 13:36:40 35hHFStT
>>334
できればその思いついた時にまとめて投下してくれないか
ひらめいた時にひらめいた分だけ投下→思いつかねー、書けねーの書き込み→エンドレス

ってのはなあ…

337:名無しさん@ピンキー
06/12/24 00:36:21 FJtEA0+X
>>336
そう?このスレがもっと賑わってるならそれもわかるけど
今の状態ではちょうどいいペース&量だと思うけどな。

338:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/24 01:27:57 z7xTQSsv
流石に年末は忙しい……
予定では今頃は次のネタに取りかかっているはずだったのですが。
では、今回の分。

339:花火まであと少し 15
06/12/24 01:28:31 z7xTQSsv
結局、待ち合わせの場所―神保町の地下鉄A6出口に辿り着いたのは正午を十五分以上過ぎてからだった。
慌てて階段を駆け上がり地上に出ると、すぐに志乃の声が聞こえた。
「おそーい」
「ご、ごめん!」
慌てて振り向くと、一週間ぶりになるリアルの志乃の姿があった。
明るい夏の日の中で、彼女はシンプルな黒いワンピースの上に
白い半袖のジャケットを着込み、大きなピンク色のバックを抱えている。
初夏という季節をそのまま衣装にしたような、彼女らしいいでたちだったが、
今の亮にはそれに見惚れる余裕はなかった。
「電車、乗り過ごしちまって……」
「遅れそうなんだったら連絡くらい入れてよ。心配したじゃない」
そういって、志乃は亮を睨んだまま唇を尖らせた。
まさか、悩み始めて気がついたら浜街に着いていましたとは言えない。
馬鹿の考え休むに似たりとはよく言ったものである。
俯いたまま黙った亮を見て、志乃は溜息をついた。
「……まあ、いいよ。待たされるのはThe Worldで慣れちゃってるしね」
「ほんとにごめん!お詫びになるなら何でもするから」
「そこまで言わなくても……そうだ、じゃあ今日買う本持ってもらえる?」
「ああ、そんなことでよければ」
ようやく穏やかになった志乃の言葉に、亮は一も二もなく頷いた。
本など余りかさばるものではない。
むしろ、その程度でいいのだろうか。
「じゃあ、行こうか」
そう思いながら、亮は促す志乃と並んで歩き出した。

340:花火まであと少し 16
06/12/24 01:29:28 z7xTQSsv
そう、本などかさばるものでもなければ、重くもない。
それが亮の紙の書籍に対する認識だった。
しかし、それは一時間もしないうちに覆された。
(お、重い……)
いくつかの書店を回るうちに志乃が買い込んだ本は相当の量だった。
神保町にはいくつかの大型書店に加え、様々な分野に特化した小規模な古書店が林立している。
それが神保町を日本が誇る「本の町」に成さしめているわけであるが、そこで扱われているのはかなり専門的なものだ。
そして、その手の専門書はほぼ例外なく、分厚いハードカバー―つまり、重いのである。
元々、亮はそれほど本を読むタイプではない。
自宅の本棚にあるのはいくつかの漫画のシリーズぐらいで、活字は現代文の教科書を除けば図書館で文庫本をたまに借りる程度だ。
だから、この手の本の存在を知ってはいても実感してはいなかったのである。
志乃が買い込んだ専門書はハロルド・ヒューイック、番匠屋淳という著者のものが合わせて三冊だったが、
いずれも厚さは三センチを超えている。

341:花火まであと少し 17
06/12/24 01:32:06 z7xTQSsv
それに加え、志乃は大型書店でいくつかの新書版の小説(ノベルス、というらしい)を買った。
その中には亮が名前だけは聞いた事のある直木賞作家の新刊が含まれていた。
百鬼だったか、今昔徒然だったか、とにかくそんな古典の授業でしか聞いた事のないような題の小説だ。
これがとにかく分厚い。
なぜ分冊しないのか理解に苦しむが、志乃曰に言わせるとノベルスでは珍しい事ではないらしい。
それどころか、彼女は本を持つ亮に「今回は軽いと思うよ。短編集だからね」とまで言い放っている。
これが短編集?
冗談ではない。何本収録すればこんな厚さになるのだろう。
それともこの作家の尺度からすれば普通の長編が短編になるのだろうか。
それに加え、志乃はジャンルを問わず大量の本や雑誌を買い込んだ。
水原遥「彼岸花と連星」、「エマ・ウィーラントの謎」、
「月刊ネットワークミステリー」の2010年と13年のバックナンバー……
彼女が看護系の大学生なのは知っていたが、いずれもそのイメージとは合致しないものばかりである。
いわゆる書痴、ビブリオマニアというやつなのだろうか。
意外な一面を見た気がした。
だからといって、両腕にかかる負担が減るわけではないが。
「大丈夫?少し持とうか?」
「い、いや、いいよ。これぐらい」
おかげで少し遅れがちな亮を、志乃が振り返る。
ありがたい申し出ではあったが、ここで受けては面子が立たない。
「そう?ごめんね、久しぶりだから思わずはしゃいじゃって」
志乃はそういって、少しだけばつが悪そうに笑った。
それがひどく愛らしくて、亮の体に少しだけ力が戻る。
この表情が見れただけでも、本を持った甲斐があった。
「じゃあ、そろそろお昼にしようか。カレーでいいかな?」
「ああ」
亮が頷くのを見て、志乃は静かな古書街を再び歩き出した。

342:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/24 01:34:04 z7xTQSsv
以上。少しネタを仕込みすぎたかな・・・・・
次回、12月28日(水)。

343:名無しさん@ピンキー
06/12/24 01:36:28 l4D/Gwo1
リアルタイム遭遇ktkr、GJ!
志乃は本に一月いくらかけるんだろうか、気になる

344:名無しさん@ピンキー
06/12/24 01:37:18 kRIEZ6nj
番匠屋淳GJ!

345:名無しさん@ピンキー
06/12/25 17:35:49 b0vsEZuU



346:名無しさん@ピンキー
06/12/26 01:48:50 Om/vMOiR
>>342
いつも楽しみにしてるGJ!!
ほんと見てる最中顔のにやけが止まんなくてヤバイわあ

347:名無しさん@ピンキー
06/12/27 00:15:54 6PCJfmJF
G.U作品の在る保管庫無いの?

348:名無しさん@ピンキー
06/12/27 00:41:46 TOzmkuKK
残念ながらないね

349:名無しさん@ピンキー
06/12/27 17:51:01 n5E0pcGJ
>>310
続きマダー

350:名無しさん@ピンキー
06/12/28 00:10:33 CNUxHSPY
>>349
ヒント:年末

351:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/28 10:49:23 18PET9wN
>>343
ざっと試算してみましたけど、この段階で二万近く行ってるはずなんですよね。
あまり無駄遣いせず、一気に使うタイプなのではないかと。

今見返したら、日付と曜日がずれてました。
正確には12月28日(木)ですね、すみません。

では、今回の分。

352:花火まであと少し 18
06/12/28 10:50:11 18PET9wN
志乃に連れられた店は、神保町の中ほどにあるビルの二階にあった。
亮はカレーと聞いてエキゾチックなアジア風の店を想像していたが、
店の内装はシックな洋風のインテリアで統一さたものだった。
メニューは確かにカレー中心だったが、喫茶店と言っても通りそうな佇まいである。
大学生と高校生のカップルが昼食をとっても違和感のない雰囲気である。
少し考えた末、亮はアサリカレーを中辛で注文した。
カレーは味に関してはどう作っても外れることのない万能メニューであるが、辛さに関してはふり幅が激しい。
これの何処が辛口なのやらと言いたくなるくらいマイルドな店もあれば、
絶対中辛じゃないだろというぐらいピーキーに味付けされているカレーも存在する。
この店がどちらの傾向を強く持つかはわからないので、中辛という選択は必然だった。
ちなみに具にアサリを選んだのは、単なる趣味である。
年頃の少年らしく肉は嫌いではなかったが、それより亮は魚貝類の方が好きだった。
向かいに座る志乃は、チーズカレーの中辛。
別段理由はないが、なんとなく志乃らしいチョイスのような気がした。
「ふぅ……」
注文を取り終え店員が去ると、亮は小さく息を吐いた。
ようやく人心地ついた気がした。
まさか本でこんな目にあうとは。
元をただせば自分に原因があることなので文句は言わないが、それで受けたダメージは結構なものだった。
普段亮が余り重いものを持たないと言うこともあったが、それを差し引いても志乃が買い込んだ本は相当の重量である。
それを証明するかのように、亮の掌は真っ赤に染まっていた。
「ほんとにごめんね、重い物ばっかり買い込んじゃって」
そんな亮の思いを見透かしたかのように、志乃が少し伏目がちに口を開いた。
「いいよ、別に……でも、こんなの何に使うの?志乃って、看護系だろ」
気を遣われるのも嫌だったので、亮は話題を少しずらした。
学術書はともかく、ネット関係のオカルト雑誌などが志乃と縁があるようには思えない。
まさか、そういう趣味なのだろうか。

353:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/28 10:52:04 18PET9wN
今回は中継ぎ。
本当はもうちょっと先まで行くつもりでしたが、間に合いませんでした。
重ね重ね申し訳ない。次回は都合がつき次第、明日か明後日に。

354:花火まであと少し 19
06/12/28 10:56:58 18PET9wN
「うーん、まあ旅団の活動の延長って言うか……個人的な趣味、って言うのが近いかな」
「旅団?」
「まあ、その内説明するよ。まだちゃんと纏まってる訳じゃないから」
「ふーん……」
彼女にしては珍しい曖昧な説明に、亮は少しだけ不満になった。
旅団と言うキーワードも引っかかった。
昨日のタビーの言葉は志乃と歩いているうちに大分気にならなくなったが、
それでもこうしていざ旅団と言う語が出されると少しだけ地下鉄での欝気分が蘇るような気がした。
亮は無言のまま唇を尖らせたが、志乃はそんな年下の恋人の姿を微笑みながら見ていた。
すぐにその視線には気づいたが、口は開かなかった。
志乃の曖昧な態度が気に入らなかったし、彼女にオカルト趣味があったこともちょっとショックだった。
そう意識して、亮は小さく息を吐いた。
こんな風に考えるのも、空腹で頭が回っていない証拠だ。
とにかくまずはカレーを食べて気を落ち着かせよう。
亮がそう気を取り直した時、丁度店員がテーブルに飲み物と小さな皿を運んできた。
飲み物は注文どおり、志乃にアイスコーヒー、亮には紅茶が運ばれてきたが、隣の皿は一体何なのか。
恐る恐る覗き込んでみると、そこには大粒のふかしたジャガイモが皮付きでそのまま鎮座していた。
一瞬、亮は目の前が真っ暗になった。
なぜジャガイモ?俺はカレーを頼んだはずだ。
注文したのはアサリカレーだし、メニューにはジャガイモなんて一文字も書いていなかった。
だとすると、これは付け合わせなのだろうか。
そういえば、ハンバーガーでも大抵付け合せにポテトがついてくる。
しかしあれはあくまでフライドポテトと言う形で食べ易くされているし、ちゃんとメニューの中で独立している。
「どうしたの、ハセヲ?」
囁くような志乃の声に、目をぐるぐるさせてジャガイモを凝視していた亮がようやく我に返る。
「いきなりジャガイモすごい視線で見ちゃって。もしかして苦手だった?」
「い、いや、そういうわけじゃねぇけど……何でこんなの出てくるの?」
「さぁ……このお店何度か行ってるんだけど、いつも出てくるんだよね。前菜兼舌休め、ってかんじじゃないかな」
そういって、志乃は細くしなやかな首をかしげた。
こういう仕草が嫌味にならず、いちいち様になるのは一種の才能だろう。
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、遠慮なく頂くか」
一瞬頬に差した赤みを誤魔化すように、亮はジャガイモを掴んだ。
「あんまり食べ過ぎちゃうとカレーが入らなくなっちゃうからね、気をつけて」
美しい管弦楽のようにも思える志乃の声を聞きながら、亮はとりあえずジャガイモにスプーンを指した。

355:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/28 10:57:29 18PET9wN
送信順ミスりました、今日は19までです。

356:名無しさん@ピンキー
06/12/28 11:41:03 +ngOlAW6
>>355
GJ!期待してます

357:名無しさん@ピンキー
06/12/28 18:47:20 Kh6UPBEC
神保町でじゃがいもがでてくるカレー屋って
あそこかなww


358:名無しさん@ピンキー
06/12/28 21:59:44 SEQpsZaz
GJ!!サイコーです!!

359:名無しさん@ピンキー
06/12/29 02:03:08 msh7/mwq
>>355
っていつのまにきてた
毎回超GJ!!!

360:名無しさん@ピンキー
06/12/30 00:42:30 wiIlFPlM
続きを…早く!

361:名無しさん@ピンキー
06/12/30 05:05:18 /3gc2rZI
ただでさえ年末の忙しい時期に職人を急かすなよ…
誰もが暇人じゃないんだ、それぞれの執筆ペースってもんがある

362:名無しさん@ピンキー
06/12/30 15:56:46 geXqLyai
うむ、職人さんにはマイペースで頑張って欲しい。
のんびり待ってるぜ。

363:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/30 20:40:45 oT8HlgYE
どうも焦らしてしまったみたいで申し訳ありません。
年末だけにまあ、色々ありまして・・・・・
自分としてもこの話をvol3発売までに終わらせたいので、
劣化しない程度に急ぐようにします。

>>357
たぶんそこです。
俺も初めて行ったときは随分驚いたものですが、
まさかSSのネタになるとは……

それでは、今夜の分。

364:花火まであと少し 20
06/12/30 20:43:53 oT8HlgYE
「ふふ、それにしても不思議なものだね。初めて会ったときはハセヲと付き合うなんて想像もしなかったよ」
舌休めだろうか、志乃はスプーンを一旦収めて唐突にそんなことを言った。
手元には、星雲のように広がったチーズを乗せたカレーが半分ほど残ったまま置かれている。
亮はそれを直ぐには答えずに、口を閉ざしたままカレーを噛み締めていた。
別に志乃の言葉が反発した訳ではない。
単純にものを食べている最中に口を開くと、にちゃにちゃと不快な音が立つからだ。
しばらくして口の中のカレーを飲み込み、水で一息ついてからやっと亮は口を開いた。
「俺もあの頃の自分に教えてやりてぇよ、お前は志乃と付き合うようになるんだぜって」
「あはは、そしたらどんな顔するだろうね、あの頃のハセヲは」
亮の冗談に、志乃が声を立てて笑う。
夏場の水撒きのような笑顔を見ながら、亮はおもむろに口を開いた。
「あ、そうだ、志乃。前から思ってたんだけど……」
「なぁに?」
「その、ハセヲって言い方、そろそろ変えね?」
本名はちゃんと教えているにもかかわらず、リアルで会っている時も彼女は亮の事をThe WorldでのPC名で呼ぶ。
それが、亮には少しだけ嫌だった。
少し前までならともかく、今の二人は恋人同士なのだ。
別に親から貰った名前にそこまで愛着があるわけでもなかったが、
PC名というのは何だかあだ名みたいで、恋人同士という言葉が持つ甘い響きからは遠い。
「うーん、それもそうかもね……じゃあ、なんて呼んで欲しい?」
「え!?べ、別に……本名だったら何でもいいよ」
いきなり聞き返され、亮は混乱した。
本当は、そう、自分が彼女を呼ぶのと同じようにして欲しかったのだが……
それを口に出せるほど、亮はまだ素直ではなかった。
「うーん、それじゃ……三崎君?」
「……今更それはねぇだろ」
「三崎?」
「それはそれで味があるけど、志乃のキャラとはちょっと……」
志乃は口元を少し吊り上げて、亮に一つ一つ呼び方を上げていく。
亮は先ほどの言葉は何処へやら、それに一つずつ駄目出しをしていった。
「亮君?」
「それだけはやめてくれ……」
志乃のキャラクターを考えれば妥当な線かもしれないが、母親と同じ呼ばれ方はされるのはなんとなく嫌だった。
これならまだ名字呼び捨ての方がいい。
「じゃあ……亮?」
志乃が少し声のトーンを落として、呟いた。
雲の白さと空の蒼さしかない天上から響いてくるような、余りにも綺麗なその響き。
それが自分の名を呼ぶものだということを意識した瞬間、亮の心臓が一瞬止まった。
心臓は直ぐに動き出したが動悸は不安定で、喉が急に渇く。
多分、今の脳波は強化人間のように滅茶苦茶だろう。
「ご、ごめんっ!やっぱり、ハセヲでいいよ」
「そう?ふふふっ」
やっとの思いで、亮はどもりながら言葉を吐き出した。
駄目だ、この呼ばれ方は。別の意味で精神衛生上よろしくない。
亮はしばらく意味もなく息を吐くと、志乃から顔をそらし手元のカレーに視線を移した。
そのままスプーンをつかむと、亮は一心不乱にカレーの盛りを崩し始めた。
そんな亮の姿を見ながら、志乃は絡めた両手に頭を乗せて微笑んだ。

365:花火まであと少し 21
06/12/30 20:46:21 oT8HlgYE
「ねえ、ハセヲ」
「……何?」
「あのさ、これから何処か行きたい所とか、ある?」
しばらくして亮がカレーの皿を空けると、それを待っていたかのように志乃が再び口を開いた。
亮が話を聞こうと視線を上げると、その瞬間志乃の手元の皿が目に入った。
いかなる手品を使ったのか、亮より長くスプーンを置いていたはずの彼女のカレーは綺麗に片付いている。
自分が食べるのに集中していたから断言はできないが、慌てて食べているような様子はなかったはずなのだが……
不思議に思ったが、亮はとりあえずそれを無視して会話を続けることにした。
まあ、女と付き合っていれば不思議な事の一つや二つ、無い方がそれこそ不思議だろう。
「……別に、ないけど」
「じゃあさ、良かったらでいいんだけど」
亮の答えが終わる前に、志乃が少しだけ上ずらせた声で口を開いた。
顔をよく見ると、頬に赤みが差し呼吸が少し乱れている。
「そ、その……ハセヲの家に行ってみたいんだけど、良いかな?」
「…………!!」
その言葉を聴いた瞬間、亮の心臓がまた止まった。
一瞬してすぐに鼓動は蘇ったが、呼吸はやはり乱れたままである。
助けを求めるように志乃を見ると、彼女は耳まで真っ赤に染めて俯いてしまっていた。
「べ、別に大したものがあるわけでもないけど……その、志乃が来たいんだったら……別に、いいよ」


366:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/30 20:48:02 oT8HlgYE
ずっとこのカップリングでやろうと思っていたネタができました。
しかもついに色気のある展開に突入できそうです。
次回投下は1月4日(木)。
言ってる傍から間が空きます、本当に申し訳ありません。

367:名無しさん@ピンキー
06/12/30 20:57:34 9kYfbwC6
GJ!元旦とかはゆっくりしたいですからのんびり待ちます

368:名無しさん@ピンキー
06/12/30 21:53:15 V1Hnn/zu
>>366
GJ ハァハァ(*´д`)

369:名無しさん@ピンキー
06/12/30 23:49:57 zhcqVzEB
毎回毎回GJ!!1月4日が待ちどうしい!!

370:名無しさん@ピンキー
06/12/31 04:33:55 k6hq5mRR
おまいら乙
今年最後のハセヲ×カール投下
少しだけ痛い描写あり

371:名無しさん@ピンキー
06/12/31 04:35:36 k6hq5mRR

暗い世界。
全身が泥を被って引きずるかのような重さと気だるさ。
化け物どもの軍勢を掻い潜って【Δ 輪廻する 煉獄の 祭壇】に
辿り着いた俺を待っていたのは無穹の牢獄だった。
あれから何時間が経過したのか……それすら分からねぇ。
意識は完全にこっち側、即ち《The World》に持っていかれちまってるようだった。
敵の親玉が潜んでいると思われるエリアに転送され、スケィスをすぐさま喚び、
片っ端から敵を消し飛ばしたのは覚えている。
カオスゲートを潜る前、大火のオッサンが「勝てよ」と言っていたように、必ず勝つつもりでここまで来た。
でなきゃ報われねぇ。オッサンだけじゃねぇ、他の連中だってそうだ。

「俺は……どうなった…………?」

何も見えないせいで皆目検討がつかない。
けど、身震いする程に嫌な感じのトコってことは理解できる。
ここは人間の居るべき場所じゃねぇ、ここは……死人の匂いがする場所だ!

「おはよう。パパ」
「! 誰だッ……!?」

俺以外の声がする。
何処かで聞いたことがあるようで、聞いたことがないような、女の声で。
黒いインクをブチ撒けたような黒の世界に、まるで最初からそこに存在していたかのように。
女が立っていた。

「また来たのね、パパ。これでもう何度目かな……数えるのも面倒になっちゃった」
「お前は……」

いや、俺は知っている。
ただ知らないと思い込みたいだけで、本当は、この女を、俺は―――――知っている。
見間違えるはずがねぇんだ。
銀色の髪と、紅い瞳と、黒のドレスと、紅いリボン。こいつを俺はよく知っている。

「あたしがここに閉じ込められてから随分経つけど、パパはいつも変わらないね」
「お前……セグ、か……?」

俺のことをパパなんて呼ぶ奴はこの世界に1人しかいない。
でも、セグならついさっきまでカールと一緒に居たし、何よりコイツはどう見ても12~13歳って感じだ。
俺の知っているセグは見た目5歳ちょっと、一気に成長でもしない限り、計算が合わない。
しかし俺の口から「セグ」と言う名を聞くと、目の前の女は懐かしそうに小さく復唱を続け、噛み締め始める。
何かを確かめるように。

「……ここは何処だ。どうしてお前以外、何も見えない!?」
「嫌だなぁ。パパはしっかりと視えてるじゃない。
 見えない、と思っているのはパパが『視たくない』と思っているだけなのに」

何だと……。
でも、コイツの言ってることも強ち嘘ってワケでもない。
確かに視えはしないが、何かの存在をそこらじゅうに感じる。
この闇の中に、さっきまで俺達が戦っていた化け物どもが潜んでいるんだろうか?
いや、気配がない……なのに、何かの気配が確かに感じられる。それもたくさん。

「ヒントをあげるわ、パパ。あたしはね、パパが来る間……ずっとママ達と一緒に居たんだよ?」

ママ……達だと……今、ママ達って言ったのか。
達って、何だよ、複数形じゃねぇか……。もし、こいつが俺の知ってるセグなら、ママってのは……まさか……。


372:名無しさん@ピンキー
06/12/31 04:36:48 k6hq5mRR

「カール……?」

瞬間、世界が開けた。
聖書に出てくるサウロ(パウロ)の「目から鱗のようなもんが落ちた」、ってのはこんな感じだったのかもしれない。
俺には最初から、この光景が視えていたんだ。
なのに俺は、怖くて、目を背けて……こんなの現実じゃない、って勝手に決め付けて……!
彼のは墓場。誰の? 決まっている。
俺の足元やそこらに転がっている躯を見れば一目瞭然だった。
ここは……カール達の墓場!

「なッ……あっ……あぁ……あぁぁぁっ!!!!!」
「パパが来るまでママで遊んでたの。
 もっとも、どのママもこの空間に運ばれてきた時点で死んでるんだけどね。
 見てよ。ねぇ見て。酷いものでしょう? どのママもロクな死に方してないよ」

腕の無いカールが転がっていた。脚の無いカールが転がっていた。
腹の無いカールが転がっていた。首の無いカールが転がっていた。
カールかどうかも分からないカールが転がっていた。見たことも無いくらいに歪んだカールが転がっていた。
積み重なったカールの山が、何処までも何処までも延々と続く。
AIDAにやられたPCとはまた違う感じでのキルのされ方。何処を見てもカールしかいない世界。
そうだ、俺はここに飛ばされて最初にコレを見て……頭がどうにかなりそうだったから……!

「ここはね、牢獄なの。ううん、拷問部屋って言った方が早いかも」
「拷問部屋……」
「最初にママとあたしがこの空間に飛ばされた時、1人目のママは既に死んでた。
 パパも覚えてるでしょう? あの化け物どもに結局やられちゃったの……結構奮戦してたけどね。
 以来、あたしはずっとこの空間に取り残されて……次にキルされるママと、パパを待っている」
「次にキルされる……だと……待てよ、それじゃまるで……時間が……ッ!」
「そう。繰り返しているのよ、8日周期で。
 あたしとパパ達が初めてホームで出会った日から、化け物達がカオスゲートから溢れてくるまでの
 楽しい楽しい家族ごっこの時間がね、もう延々と繰り返されている」

待てよ……ふざけんじゃねぇ……8日間が繰り返してだぁ……?
そんなこと、有り得る訳がっ……!

「モルガナ」
「ッ……!?」
「AIDAが作り出した擬似サーバーが『AIDAサーバー』。別名『AIDAの観察室』。
 ならあの8日間は……そうね、言うなれば『MOLGANAサーバー』。『モルガナの拷問部屋』ってとこね」
「MOLGANAサーバーだと……ざけんなッ!」
「AIDAサーバーで過ごした時間は、パパ達のリアルではほんの数分の出来事だったんでしょう?
 AIDAに出来てモルガナに出来ない道理は無いじゃないの。モルガナの力を使えば8日間なんて刹那の時間……ね? 
 モルガナはね、憎くて憎くて堪らないママを殺すためだけに、この8日間を用意したんだってさ」
「セグ……てめェ、モルガナの仲間か……!?」
「それは違う。うーん、元仲間かもしれないけど、今は違うよ」

ただでさえカールの躯の山を見て気が動転しかけてんのに、
コイツの人を小馬鹿にしたような態度は俺の怒りを更に助長させる。
まどろんでいたかのような意識はハッキリとして、ただただ当ての無い憎悪が滾るのが分かる。

「んなコトを言うために……俺が目ェ覚ますまで待ってたってのか……!?」
「だって誰も話し相手がいないんだもん、ここ。
 ママはいつも死んだ状態で転送されてくるし、パパはいつもすぐ出て行っちゃうし。
 酷い時なんかね、パパはあたしを食い殺そうとしたんだよ? あの時のパパは恐かったなぁ」
「……」
「それにね……よーく耳を澄ますとね、聞こえてくるの。モルガナの呪詛の声が」


373:名無しさん@ピンキー
06/12/31 04:38:30 k6hq5mRR

「呪ってやる。死ね。お前さえいなければ。消えてしまえ。狂え。狂い死ね、って。
 ママが8年前、アウラを庇って逃げたりなんかしなきゃ、モルガナはドットハッカーズに倒されずに済んだのに。
 MOLGANAサーバーをサーバーとして成り立たせているのは、モルガナの怨念とか執念とか
 そんな感じのものがプログラムになって動作しているとあたしは考えてる。
 そしてママを苦しめ続けるの……7日間の休息の次に、8日目の地獄を与えることで」
「それが……モルガナの……カールへの復讐ってワケか……!」
「《The World》はママのパパ……徳岡純一郎が作ったセカイ。
 そのセカイを穢して犯し尽くすことが、ママへの嫌がらせになると思ったんだろうね。
 ママ、何だかんだで父親にコンプレックス持ってたし。会ったこともないのにね。
 でも何故8日間なのかしら? 8年前に起因するから? それとも八相とかけてるのかも?」

散逸したモルガナ因子……CC社の火事で散逸したのは……碑文だけじゃなかった!
モルガナの怨念は《The World》がR:2に移行しても何らかの方法で……誰にも気づかれないように
ひっそりと世界に根付いて……カールがこの世界に戻ってくるのを待ってやがったのか……!
蜘蛛が糸を張って、獲物が巣にかかるまでじっと待つように……カールを苦しめるためだけに、こんな茶番……!

「許せねェ……自分の身可愛さに娘殺そうとしたばかりか……カールまで……!」
「パパがいくら吠えたってダメ。いつも結末は決まってるもの。
 どのパパも同じだった、だってそうでしょ?
 『モルガナは必ず俺が倒す!』とか言ってたのに、こうやってパパもママも
 延々とこの空間に送られ続けてるし……パパも、今ここに転がってるママの数だけ死んでるんだよ」
「へっ……その割には、お前だけ1人きりなんだな」
「うん。何かね、あたしは特別なんだって。生き証人にでも慣れって言うのかな」

よーく分かったぜ。
モルガナのクソババアのやろうとしてること、やってきたこと、カールにしたこと。
フザけやがって。フザけやがって……結局は自分の独りよがりじゃねぇか。
とんだ八つ当たりだ。なら俺はどうする? 俺は、こんなとこで立ち止まってる場合じゃねぇ……
アトリに言ったこと、自分ですっかり忘れてた……涙で目ェ曇らせるには、まだ早ぇ!

「くっ……だぁぁぁぁ―――――――ッ!!!!!」
「おぉ、すごーい」

身体を捕らえていた重力球を強引に引き裂き、不安定な力場からの脱出。
さっきまでの気だるい感じはもうないし、外傷もない……手も脚も、ちゃんと動く!

「終わらせりゃいいんだろろうが。モルガナをブッ倒せばよ」
「どのパパも同じこと言ってたよ。でもXthフォームとスケィスだけで勝てると思ってるの?」
「やってみなきゃ分かんねぇ」
「……ま、いいよ。あたしは、次のパパとママが来るのをまた待つからさ」
「もう来ねぇよ」
「どうかな?」
「来ねぇよ。俺が……何千番目か何万番かは知らねぇけど……今度の俺が止めてみせる」

どっからそんな根拠のねぇ自信が沸いてくるのか、自分でも不思議だった。
セグの話が本当なら、俺も今ここに転がってるカールと同じ数だけ死んでる。
そして何も知らずにまた1日目が始まって、8日目に死ぬまで延々と……MOLGANAサーバーに囚われた
俺達は、そんなことも知らずに8日間の非日常を過ごしていく。
けどよ、それももう仕舞いだ。俺が今日、終わらせるから。

「にしても随分とヒネた性格に育ったもんだな、カールそっくりだぞ。お前」
「こんな所にずっと閉じ込められてたら、そりゃおかしくなるって」
「でも……」
「?」
「お前も、もうすぐここから出してやる」
「……期待しないで待ってるよ、パパ」


374:名無しさん@ピンキー
06/12/31 04:40:28 k6hq5mRR

************************





耳を劈く「パリン!」という音がそこらに響く。
あのしみったれた陰気臭い墓場みてぇな空間をXthフォームの力でブチ抜き、俺はもう一度この世界に戻ってきた。
場所も間違いなく【Δ 輪廻する 煉獄の 祭壇】、戻ってきた、戻ってこれた!

「って、ハセヲ? どっから降ってきたの?」
「……カールか? って、お前、無事なのか!? てか何でここにいんだよ!?」

エリアに戻った途端、化け物の群れの中で鎌を振るうカールとバッタリ会あう。
ちょっ、おまっ、幽霊じゃねぇよな!?

「ん。ブレグ・エポナで戦ってたはずなんだけどね。
 何か強制サーバー転送?みたいな感じで移動させられちゃってさ。この子と一緒に」
「うわぁぁーん! パパぁ!!!」
「セグまで……」

もしかすると今回の繰り返しはイレギュラーなのかも知れない。
あの拷問部屋の空間で会った成長したセグは「ここに来た時、ママはいつも死んでいる」と言っちゃいたが、
まだカールは死ぬどころかピンピンしてやがる。何だ、何がその原因を生んだ?

「カール、お前……何か雰囲気が……?」
「これ? Xthフォームだよ。ネットスラムでタルタルガが言ってた眠ってる力、ってのがこれみたい。
 ハセヲから貰ったロストウエポンの“万死ヲ刻ム影”も戦ってる最中に使いこなせるようになったし」

今のカールは確かにXthフォームになった時の俺に似てる。
それに加えてロストウエポン……これだ。
どっちが欠けても、あの化け物の軍勢にカールは勝てない。
でも反対に2つの要素が揃えば―――絶対に負けることはない!

「その顔だと、何か事情掴めたっぽいね」
「あぁ。裏で糸引いてんのは、8年前にお前を追っかけてたクソババアだ」
「へぇ……アイツ、まだあたしのこと恨んでたんだ」

ニヤリと凄む反面、カールは同時に恐怖も感じているようだった。
そりゃそうだ。8年前、スケィスにデータドレインされた時の記憶がまだ残ってるんだろう。
いくらカールが気丈とは言え、当時はまだ小学生だしな。
 
「それじゃ、ま。役者が揃ったところで……やっちゃおっか?」
「だな」

くだらねぇ因果だが輪廻だかは、今日、ここで断ち切る。
カールを苦しめ続けて、カールの父親が唯一残した遺産の《The World》まで穢そうとする大馬鹿野郎。
いつもなら他人に情けとか干渉は極力しねぇつもりだったけどよ、今回は別だ。
モルガナだけは……もう泣いて謝っても許さねぇ!

「いいぜ……来い……来いよ……!」
「あたしは……」
「俺は……」
「「ここにいるッ!!! スケェェェェェェェェィスっ!!!!」


375:名無しさん@ピンキー
06/12/31 04:42:53 k6hq5mRR

『□□□□□――――――――――――!!!!!』

大鎌を振るい、三つ目の巨人が空間を叩き割って権限する。
サンスクリット語で「地上に降りた神の化身」を意味する名を持つ存在、それが憑神。
その第一相である死の恐怖スケィス。カールの因縁の相手にして最愛のパートナー、俺の分身にしてもう1人の戦友。
その姿はもうかつてカールが従えていた頃の赤布で拘束されたものではなく、神々しいまでの銀と金。
大きく広がる翼は天使か悪魔か……んなこと、どうでもいいか。
分かるんだ……お前は俺とカールの想いが生んだ、全く新しいスケィス!

「スケィス、憑神覚醒(データドレイン)ッ!!!!」
『□□□――――――――――――!!!』

神宿り。
PCの状態で憑神の力を行使できる究極のスキル。
1年前、最後の戦いではみんなの力が集まってやっとAIDAを一掃できた。
今回は俺とカールの2人きり、状況は俄然不利。
けど……けどなぁ。変なんだよ。こんなに不利な状況なのに、誰がどう見ても勝てっこねぇ戦いだってのに。
何でだろう……カールが傍に居るって思うだけで、こんなにも力が沸いて来る!

「俺は……諦めねぇっ!!!」
「元はと言えば、あたしが蒔いた種だしね……きっちり摘み取らせてもらおうかな!」
「パパ……ママ……」

俺とカール、双方から放たれたデータドレインが周囲を取り囲んだ化け物どもを浄化してゆく。
粉雪が光の中で解けて消え行くように……そうだ、もうお前らだって、もう……戦わなくて済むんだ……!
エリア全てを埋め尽くす程の閃光、あれだけの数の軍勢が、ほんの数秒で跡形もなく消え去るくらいの眩い光が、疾った。

「やったの?」
「……いや。どーやら親玉のご登場っぽいぞ」

この胸糞の悪い感じ、覚えてるぜ。
1年前、俺達が苦労してブッ倒してやったってのに……まーた蘇って来やがったのかよ。
……そーいや、ここはMOLGANAサーバーだったか。何でもアリってことなんだろうな。

「……来るっ!」

ズシン、と地響きがした。大地が腐り、腐って泡となった黒き土から異形が這い出てくる。
その体躯とグロい姿、忘れろったって忘れられねぇ。わざわざ茶番のためだけに地獄から蘇ったてか?
なら、もう一度冥土に送ってやるぜ。てめぇはケルヌンノスと仲良くやってろ、クビア!

『************************―――――――!!!!!!!』
「おわっ、何アレ?」
「クビア。1年前、俺達が倒したAIDA事件の元凶だ……再生しちまったっぽいけど」
「うぅ……恐いよぉ……」
「だいじょぶ、パパもママもついてる!」

とは言え、ラスボス級の強さであることに変わりはねぇ。しかもセグを守りながら、だ。
俺とカール、2人のありったけの力を込めたデータドレインで1撃で仕留めるしか他に手立てはねぇっぽい
(つか、通常攻撃が空まで届かねぇ)。

「カール、データドレインで一気にケリつけるぞ。やれるな?」
「1度は勝ったんだろう? なら、今度も勝てばいい。それだけだよ、ハセヲ」
「恐くねぇのか」
「恐い? きみとあたしなら、絶対に勝てる。そう思ってるだけなんだけどな」

だな。絶対に勝ってみせる。今のお前となら……俺は、誰にも負ける気がしねぇ。


376:名無しさん@ピンキー
06/12/31 04:45:34 k6hq5mRR
くたばれモルガナ? よいお年を? 何のことです?
おやすみおまいら

377:名無しさん@ピンキー
06/12/31 04:46:34 /eq7Sw5h
リアルタイムキタコレ!!!

GJ!!!

378:名無しさん@ピンキー
06/12/31 05:59:58 Cd1ZtV3v
エロマダー?

379:(o_▽_)o
06/12/31 13:37:44 MuA1k0v0
最近、原作よりこっちの方が面白いと思うようになってきた俺は末期かも知れん
まぁ、そんな俺が言えることはこれだけだ

「Good Job!!」

380:名無しさん@ピンキー
06/12/31 17:30:21 LXXMBfRI
GJ!GJ!
俺はむしろ、本編のサイドストーリー的な感じで読んでる。

381:名無しさん@ピンキー
06/12/31 17:35:35 jGz6r0Re
すごく・・・GJです。そして、よいお年を。

382:名無しさん@ピンキー
07/01/01 00:09:41 zrrwVWY7
明けおめ!!

383:名無しさん@ピンキー
07/01/01 00:31:05 UTfhN8Eg
明けおめことよろ

384:名無しさん@ピンキー
07/01/01 06:33:12 GKgB86NR
あけおめことよろ

385:名無しさん@ピンキー
07/01/02 12:13:21 1E5R7+vN
あけよろ

386:名無しさん@ピンキー
07/01/02 17:27:50 XlRAZLBM
挨拶は公式でやれ、ドア砲

387:名無しさん@ピンキー
07/01/02 18:19:16 bJ/J4wPn
akeomeことよろ

388:GORRE
07/01/03 00:20:21 VVnHt6Dk
>>333の続き

「すいません、呪○のチケット高校生1枚と小学生2枚下さい」
「2500になります」
「じゃあ、5000円で」
「2500円のお釣りになります」
窓口でチケットを受け取った亮達は、エレベーターに乗り込んだ。
目的の階に到着すると、早速劇場に向かった。
劇場の中は、夏休みということもありカップルや家族連れ、友達同士などの人々で込み合っていた。
「東京はホンマ人が多いな」
「仕方ねえだろ。首都なんだから。それより、席探すぞ」
「あ、あそこあいてるよ」
望は真ん中あたりに3人分の席が空いているのを見つけた。
「でかした望」
亮達はその席に腰を下ろすと、亮は腕時計を見た。
「まだ始まるまで時間があるみたいだな。今のうちに飲み物とか食うもの買ってくるか」
「あ、ボクもいくよ」
「ウチは席を取っとくわ。いない間に誰かにとられでもしたらシャレにならんし」
「分かった。いくぞ、望」
「うん」
亮と望は連れ立って出て行った。
この時、朔の頭の中にはある作戦があった。それは、ホラー映画を見てドサクサに紛れて亮に抱きついてしまおうというものだった。
席順は通路側から望、亮、朔となっている。望はおそらく怖いシーンで亮に抱きつくだろう。これは想定の範囲内である。
望は亮に懐いているし、自分以上に亮にべったりしている。そのことにちょっと嫉妬を覚えたわけではないが、そんな事は問題じゃない。
要は、いかにうまく亮に抱きつくかである。朔は二人が戻ってくるまで考えていることにした。

389:GORRE
07/01/03 00:40:16 VVnHt6Dk
一方、売店に来た望と亮は…
「飲み物は何がいいんだ?」
「ボクはオレンジジュース。おねえちゃんはコーラでいいとおもうよ」
「そうか。食い物はポップコーンでいいか?」
「うん」
「うし。すいません、コーラ二つとオレンジジュース一つ、それからポップコーンの一番でかいやつを一つ下さい」
「全部で1500円になります」
1500円きっかり払った亮は、商品を受け取ると、劇場に戻っていった。
「かってきたよ、おねえちゃん」
「ごくろうさん」
「ほれ、お前の分」
「ん」
朔は亮が差し出したコーラを受け取った。
「ウチ、ちょっとトイレ行ってくるわ」
「おお、いって来い」
数分後、朔はトイレから戻ってきた。
「よし、俺達も行って来るか。見ている途中で行きたくなったら困るしな」
「うん」
「はよせんと始まるで」
「分かってるよ」
望と亮はトイレに向かった。
「…絶対、この作戦は成功させたる。ふふ、ふふふふふふ」
朔は周りに聞こえないように笑った。

映画が始まる1分前に、亮と望は戻ってきた。
「ちょうどいいタイミングやな、始まるで」
「ハセヲにいちゃん、ボクなんだかこわいよ」
「大丈夫だって、怖くなったら腕掴んでいいから」
「うん、そうする」
二人が席に着いたちょうどそのとき、映画の開始を告げるブザーがなった。

390:GORRE
07/01/03 00:43:22 VVnHt6Dk
とりあえず今日はここまでです。

ここの所なんか書き込み制限でカキコ出来ませんでしたが復活!
これからもよろしくです。

391:名無しさん@ピンキー
07/01/03 12:01:50 zBpCzJFX
うるせぇよ、屑

392:名無しさん@ピンキー
07/01/03 12:02:42 zBpCzJFX
テラゴバクwwwごめwwwwww

393:名無しさん@ピンキー
07/01/03 12:58:12 tPZZOUkT
>>391
なんか吹いたwwwwwwwwwww



394:名無しさん@ピンキー
07/01/03 13:41:42 NNsQikZY
>>391
ヒドスwwwww

395:名無しさん@ピンキー
07/01/03 13:47:00 mXQggCmX
>>391
ぶはwww

396:名無しさん@ピンキー
07/01/03 14:08:58 tPZZOUkT
>>391の人気に嫉妬wwwwww

397:名無しさん@ピンキー
07/01/03 22:00:17 nHx75yK+
>>391
いい誤爆だな
や ら な い か ?

398:名無しさん@ピンキー
07/01/04 18:04:33 LbHPHHPm
>>391
ビックマック吹いたwwwwwwwww

399:名無しさん@ピンキー
07/01/04 21:18:56 egCtp0+w
パックさんマダー?

400:名無しさん@ピンキー
07/01/04 22:11:46 EQKf8w8i
ボルドーの人マダー?

401:名無しさん@ピンキー
07/01/04 23:11:09 G8oP9Q8s
オーーーーヴァーーーーーーーーン

402:名無しさん@ピンキー
07/01/04 23:45:19 kC1n+Nf/
>>391
ちょwwwwなんてベストタイミングだwwwwお前最高wwwwwwww









誰も感想書いてないな。

403:名無しさん@ピンキー
07/01/05 00:11:43 AaNhx28r
現在ネタ制作中。だがエロい部分がまったく思いつかん・・・。誰かオラにネタを考える力をくれ!!

404:名無しさん@ピンキー
07/01/05 00:13:28 AaNhx28r
現在ネタ制作中。だがエロい部分がまったく思いつかん・・・。誰かオラにネタを考える力をくれ!!

405:名無しさん@ピンキー
07/01/05 00:15:04 qH52sCVh
なぜ二回言う
なぜ二回言うのだ

406:名無しさん@ピンキー
07/01/05 00:22:28 AaNhx28r
スマン、間違えた・・・(^^;)

407:名無しさん@ピンキー
07/01/05 00:26:14 aXdSeaOj
>>406
sageろカス

408:パック ◆JuT3jsxZbo
07/01/05 01:00:13 aZjNgRK7
お待たせしてすみません。
諸事情により今回は少しだけ、しかもまだエロまで行きません。
もう少しだけお待ちください。

409:花火まであと少し 22
07/01/05 01:01:33 aZjNgRK7
「……ど、どうぞ」
「うん。それじゃ、お邪魔します」
どもりながら部屋の扉を開けると、志乃はすっかり落ち着き払った様子で亮の部屋に足を踏み入れた。
(……ああ、畜生)
部屋に他人を招くなど別段特別な事でもないのに、酷く緊張する。
神保町から電車を乗り継いで一時間弱。
その間、亮は殆ど無言で、志乃が話しかけてきても生返事しか出来なかった。
家に入ってからも、志乃の控えめな足音が響くたび心臓が止まりそうになった。
「へぇ……ここがハセヲの部屋なんだね」
部屋に入るなり、志乃は辺りを見回してそう言った。
その呟きに、亮は何も答えず突っ立ったまま俯いていた。
先ほどまで停止しかけては動き出してと繰り返していた心臓は、今度はやたらと短いリズムで鼓動を刻んでいる。
「意外と……って言ったら失礼だけど、綺麗だね。もう少し、散らかってるのかと思ったよ」
志乃はそんなハセヲを真っ直ぐ見つめると、少し悪戯っぽくそう言った。
「最近、片付けたから……」
亮は短くそう答えるのがやっとだった。
喉にも力が入らない。先ほどまで大量の本が入った鞄を抱えていたせいか、手首に痛みがあった。
せっかく志乃が部屋に来てくれたと言うのに、酷い体たらくだった。
このままでは、間が持たない。
「志乃、さ……何か飲みたいものとか、ある?下から持って来ようか?」
僅かでも時間を稼いで気持ちを落ち着けたくて、亮はそんなことを言った。
志乃は花が風にそよぐ様に首を少しだけ傾げ、口を開く。
「うーん……そうだね、冷たいものなら何でもいいよ」
「わ、わかった……じゃあ、ちょっと行って来るよ。どっか適当に、座ってて」
志乃の答えを聞いて、亮はフライングしたランナーのように足早に部屋を出た。
「はーい。あ、居ない間に押入れの中にありそうな雑誌とか探したりしないから、安心してね」
扉を閉める瞬間、彼女がそう言ったのが聞こえた。


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