.hackのエロパロ vol.11.at EROPARO
.hackのエロパロ vol.11. - 暇つぶし2ch200:名無しさん@ピンキー
06/12/04 22:28:42 Dtb5r1f5
ん?からす玉氏とGORRE氏ごっちゃになってないかい?

201:名無しさん@ピンキー
06/12/04 22:45:17 sgws0eCn
>>200
うおっ、恥ずかし!
しかし、朔受け、望受け、望×朔と見たかった物全部やって下さったからなぁ…
前にも誰か書いてたけど、
そろそろテンションゲージの貯まった、朔、望、智香が覚醒!
…しかし、あっさりと『反撃』を喰らうのであった、とか。
ジャンケンに負けた智香が、裸のままM2D付けてログイン。
ジョイスティックは亮に奪われたまま、双児に嬲られながら
マクアヌを強制的に歩かされるバーチャル露出プレイとか。

202:GORRE
06/12/05 00:55:46 C45Lca60
お久しぶりです。ツンデレラ系を見たい方が多いようですね。
亮×朔望はだいぶ固まってきたのでそろそろ再開するかもしれません。

思いついたら欅でも出してみようかと思うんですけど、誰か楓と欅のしゃべり方教えてくださいませんか? あと呼び方も…
近所の本屋にザ・ワールドが売ってなくて、注文したら絶版らしくて無理でしたとか言われたし…

203:名無しさん@ピンキー
06/12/05 01:29:04 K8887ee1
>>202
欅 一人称は僕 呼ばれ方は月の樹メンバーには欅様 話し方は身内(月の樹隊長とかアトリとか)には砕けた感じだが他の人にはみんな敬語
楓 一人称は私 呼ばれ方は欅には楓 隊長には楓殿 隊員には楓様 話し方は全て敬語(欅には一応敬語だが内容は母が子に対する感じの物)
スマン 俺の乏しい表現力じゃこれが限界だorz

204:GORRE
06/12/05 01:35:02 C45Lca60
>>204ありがとうございます。参考にさせてもらいます。

205:名無しさん@ピンキー
06/12/05 02:11:38 vuQ1+qTN
欅は♪を多用するな、「~ですよ♪」ってな感じで

206:名無しさん@ピンキー
06/12/05 07:10:39 VaMwqgGI
後は…彼は結構思わせぶりっこだね

他人のミスリードを誘発する

207:GORRE
06/12/05 14:56:48 C45Lca60
っしゃあ! 久々に投下!

「さて…いろいろやったが、後何があったけな…」
亮は次はどうしようかと考えあぐねていた。
「よし、あれで行くか」
亮は朔と智香を起こすと、二人を重ね合わせた。
「これだな…丼」
「ちょっと、亮。まだやるの?」
「ウチもう嫌や…」
「安心しろよ。俺も限界が近いしな。ちょっと望で調子に乗りすぎた」
その証拠に、望はどこかトロンとした目をしていた。
「ふあ~~~……」
やりすぎた。亮はそう思った。
「まあいいか」
「よくないわ! 望に何しとんねん!」
「調教?」
「な!」
「した、つもりはねえんだけどな…なんか、俺の言う事はよく聞くんだ」
「しとるやないか!」
「だって、しょうがねえだろ。望が可愛いんだから」
「あたしは?」
「智香もな」
「何で望なんや! ウチは!? ウチは可愛かないんか!」
「もうちょっと、大人しくて素直だったら可愛いかもしれねえな」
「う~~~~~!」
朔はなんか悔しかった。
「まあいい。さっさと始めるぞ」


208:GORRE
06/12/05 14:58:35 C45Lca60
亮は話はここまでだとでも言う様に、元気を取り戻した肉棒を智香の秘部の隙間に押し込んだ。
「んあっ」
亮はそのまま腰を振り始めた。
「い、いきなり!? んぐっ」
朔が物欲しそうな目をしてるので、亮は朔と智香、交互に攻めてみることにした。
「ひうっ、あっ」
「くっ、さすがに、俺もやばいかもな」
亮もどうやら限界らしい。
「あっ、はっ、あんっ、ひうっ」
「あんっ、はあっ、んんっ、んあっ」
亮も朔も智香も、もはや限界だった。これ以上はもう無理だ。亮は先に智香をイかせる事にした。
「ちょ、そんな早めたら、んあっ、あっ、くうっ、駄目、あたし、イッちゃう」
「イッちまえ」
亮は一気に智香を絶頂へと誘った。
「あっ、あああああ!」
「うっ!」
亮は間一髪のところで、智香から肉棒を抜き去った。
「はあ…あう」
智香はパタリと気を失った。亮はベッドに腰を下ろした。
「朔、次はお前だ」
亮は朔を持ち上げると、自分の方に向かせ、秘部に肉棒を押し込んだ。
「ふあっ」
亮は腰を振り始めた。
「くっ、はあっ、んんっ、んあっ、ひうっ、あんっ」
朔は堪えながら亮に抱きついた。
もう駄目だ。亮は一気にスパートをかけた。
「ひっ、はあっ、んっ、んんっ、ふあっ!」
「朔…!」
「ハ、セヲ…」
「ぐっ!」
「ふあ、ああああああ!」
亮は腰を深く打ち付けると、一気に精を放出した。
「ふあっ……」
朔は小さな体を震わせながら、それをすべて受け止めた。亮は肉棒を引き抜いた。
「ウチ、やっぱりハセヲが好きや…」
そう言うと、朔は気を失った。
「あ、やべ…」
それにつられて、亮もベッドに倒れた。

209:GORRE
06/12/05 14:59:58 C45Lca60
うっし! とりあえずここまで。やっとエンディングが見れそうだ…

210:名無しさん@ピンキー
06/12/05 16:17:11 1tMJEkwp
GJ!!
最高!!他に言うこと無し・・

211:名無しさん@ピンキー
06/12/06 00:25:22 3mzCTGBc
ハセヲ×ボルドーの人マダー?(´・ω・`)

212:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/06 01:46:55 M5kMeqM5
お久しぶりです。
今更になってしまって申し訳ありませんが、前スレでレスをくれた皆様ありがとうございます。
正直長く続け過ぎてしまって不安になっていたので、大げさかもしれませんが救われる想いがしました。
本当にありがとうございます。

都合が付きましたので、今夜から予告していたハセ志乃を投下します。
例によって、連載形式です。
一応以前書いた「夢から覚めても」の続きという形になっていますが、
捏造だったリアル設定を公式に合わせたので厳密には繋がっていません。
微妙な例えを使えば、仮面ライダークウガとアギトみたいな関係ですか。

「オーヴァン失踪後、紆余曲折を経てハセヲと志乃はくっ付いた」程度に認識してもらえれば
今までのを読んでいなくても楽しめるようにしたつもりですので、
最近このスレを見始めたという方でも楽しめるようになっている・・・・・・はずです。

それでは、前書きはここまで。本編行きます。

213:花火まであと少し 1
06/12/06 01:48:08 M5kMeqM5
網戸だけを残して窓を開くと、少しだけ冷たい外気が入り込んできた。
季節は初夏。
花が咲き、木々が緑に揺れる季節だが、
窓の外に見えるのは芝生が植えられた庭とその先にある住宅街だけだった。
既に太陽は沈み、見慣れたその景色は街灯の薄明かりに照らされている。
初めてこの家にやってきたあの日以来、この窓から見える風景は変わっていない。
今年もきっと、変わらないのだろう。
そんな益体もない事を考えて、窓際の少年―三崎亮は溜息をついた。
別に、大仰な青春の悩みとやらを抱えているわけではない。
むしろ、今の亮はこの上なく幸せなはずである。
ただ時間を食いつぶしていくだけだった去年までとは違い、今の自分には夢中になっているものがある。
体の調子もよく、学業も問題なし。
親は忙しく家にいる事が少なくなったが、裏返せばそれは仕事が順調だと言う事である。
そして何より、今の亮には相思相愛の恋人がいるのだ。
しかも年上だ。
本当に、これで不幸だといったら罰が当たるだろう。
にもかかわらず、亮の心は都会のスモッグのように翳っていた。
理由ははっきりしている。
その年上の恋人―七尾志乃のせいだった。

214:花火まであと少し 2
06/12/06 01:49:39 M5kMeqM5
志乃のせい、といっても彼女に冷たくされたとか言うわけではない。
彼女はいつだって優しく、そして正しい。
亮が彼女の事で悩むとすれば、それは大抵独りよがりな袋小路にはまっているだけなのだ。
「はぁ……」
再び溜息をつき、亮は自分自身に絶望した。
思えば今までの悩みも相当のものだったが、それも今度のに比べればまだましだろう。
今回の悩みは―会えないこと、ただそれだけだった。
会えない苦悩と言っても、織姫と彦星のように一年に一度しか会えないと言う訳ではない。
亮の家は都内。志乃が住んでいるのは埼玉だから、電車を乗り継げば二時間程度で行ける。
この程度の距離で遠距離恋愛と言ってしまったら、
全国遠距離恋愛同盟(そんなものがあれば、の話であるが)に撲殺されてしまうだろう。
それに、直接は会えなくても声は毎日聞いているし、会話だってしている。
彼女と亮は、同じMMORPG・The Worldをプレイしているのだ。
それでも。亮は、志乃に会いたくて仕方が無かった。
我侭なのは自分でもわかっている。
片道二時間という距離は学校の事を考えれば日帰りできるものではないし、
最後に会ってからまだ五日しか経っていない。
――志乃と初めてリアルで会ってから、もうすぐ一月。
その間に本当に色々なことがあった。小説を書いたら、原稿用紙百枚では足りないぐらいのことが。
亮が今いる場所は、その結果としては望みうる最高のものだろう。
しかし。
「はぁ……」
三度目の溜息をついて、亮はようやく椅子に座った。
机の上の置時計に目を落とすと、時計の針は午後八時を示していた。
大学から帰った志乃が、そろそろログインしてくる時間である。
亮は顔を俯かせ、心の中で中途半端な気分で会いたくないと言う想いと
話だけでもしたいという想いを秤にかけた。
三十秒ほど考えたところで、亮はPCの電源を入れた。


215:花火まであと少し 3
06/12/06 01:50:17 M5kMeqM5
ローディング画面を経て、M2D(マイクロ・モノ・ディスプレイ)の視界に幻想的な青空が広がった。
野晒しの草原に石畳を引いただけの町並みなど、現代ではそうそうあるものではない。
しかし、最先端の情報工学によって造りだされた架空の世界は、時として現実よりもリアルに感じられる事があった。
舞い散る木の葉がハセヲ―PCの体に触れるような錯覚を覚えながら、亮はメニューバーを呼び出した。
「パーティ」の項目を選択し、彼女の状態がOnline―呼び出しOKなのを確認してパーティに誘う。
程なくしてショートメールの返事が届き、黒衣を纏った短髪の呪療師(ハーヴェスト)―志乃が姿を現した。
どういうわけか、彼女はPCにリアルの自分と同じ名前を付けている。
「こんばんわ、ハセヲ」
「こ、こんばんわ」
女神と言うのがいるとすればこんな声をしているのだろうか。
亮は彼女の声を聞くたび、そんな事を考えてしまう。
「最近ずっとハセヲの方から呼んでくれるね。ふふっ、何だか嬉しいな」
「……」
少し複雑な気分になって、亮は口をつぐんだ。
以前はいつも志乃がハセヲを冒険に誘うと言うと言う形が多かったが、最近はそれがすっかり逆転してしまっている。
元々亮自身が志乃に好意と言うか、憧れに近い感情を持っていた事を考えれば当然のことなのだが。
今の亮は、それが少しだけ悔しかった。

216:花火まであと少し 4
06/12/06 01:51:07 M5kMeqM5
「どうしたの?なんか、元気ないね」
「っ!何で、わかるんだよ……!」
「ふふっ、誘導尋問。ハセヲ、やっぱり素直だね」
志乃が笑って、亮はようやく自分が引っ掛けられた事に気づいた。
「………っ!」
腹は立ったが、無邪気に笑う彼女の姿―たとえそれがグラフィックだとしても―は信じられないぐらい可愛くて、
亮はそれを見た瞬間何も言えなくなってしまう。
「ごめんね、でもこれでちょっとは元気出たでしょ?ゲームなんだから、楽しくやらなきゃ。ね」
少し声のトーンを落として、志乃が言う。
亮はそれに答えないで、顔を背けた。
「もう、拗ねないで。茶化したのは謝るから。ね」
「……別に拗ねてなんかねぇよ」
拗ねていますと言外に認めているような口調で、亮は答えた。
志乃がその声を聞いて、小さく笑う。
「ふふっ、良かった。ハセヲに嫌われたら私、生きていけなくなっちゃうよ」
「なっ……」
志乃の言葉に、亮の胸が高鳴った。
しかし、その口調が冗談めいたものだった事を思い出し、すぐに高揚は焦りに変わった。
「ね、今日はちょっと行きたいところあるんだけどいいかな?」
「あ、ああ。別に、いいよ」
焦りを隠そうと、亮は一も二も無く志乃の言葉にうなずいた。
リンクからエリアワードを呼び出し、エリア情報を見もしないで決定ボタンを押す。
程なくして転送が始まり、二人のPCが光に変わる。
ローディング画面を見ながら、亮はもう数えるのも億劫になった溜息をついた。
全く、どうしてこう空回ってしまうのだろう。
一週間前までは、志乃さえ居てくれれば全てうまくいくと思っていたのに。

217:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/06 01:51:40 M5kMeqM5
以上。次回、土曜日。

218:名無しさん@ピンキー
06/12/06 02:09:13 vG5Yo9yk
>>217
ハセ・・・ハセ・・・ハセ志乃キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!
GJ!!!(´Д`;)ハァハァ
おまいさんが書く展開、また楽しみにしてるんで頑張ってくれ

219:名無しさん@ピンキー
06/12/06 05:10:52 V8bnrF9J
>>204
追加
松に限り楓の事を確か姐さんって読んでたはず

>パック氏
お久しぶり&GJ!ハセ志乃期待あげ

220:名無しさん@ピンキー
06/12/06 07:57:20 3mzCTGBc
>>217
あんたのハセ志乃大好きだ(*´д`)GJ

221:名無しさん@ピンキー
06/12/06 20:00:56 EUllia13
※コルベニクが更なる進化。
※ボルドーとヤタがPTになってる映像。
※AIDAにハセヲが感染。
※椅子に座っているのはおそらくアウラ。しかも服はゴスロリの白ワンピ。
※クビアらしきものがでてくる
※アバター3rdフォームになるとき、みんなで「みんなはここにいる!スケィーーーース!!!」とかいってる。

PVネタバレ


222:名無しさん@ピンキー
06/12/06 22:19:49 f4D3zltf
>>221
それどこのPV?

223:名無しさん@ピンキー
06/12/06 22:38:58 EUllia13
>>222
アクセスポイントで公開中のvol.3PVだが

224:名無しさん@ピンキー
06/12/06 23:41:02 d0I6w9kb
PV観れねー!!orz   アクセスポイントでいいんだよね?

225:名無しさん@ピンキー
06/12/06 23:58:07 EUllia13
>>224
今日PV流してるとこは通常より1日早いらしい
本来なら明日から

226:名無しさん@ピンキー
06/12/07 00:11:29 Qx0EVpzl
それって公式サイト?それともゲームショップ?

227:名無しさん@ピンキー
06/12/07 00:23:11 bbE1XkcC
>>226
アクセスポイントがあるゲームショップだな

228:名無しさん@ピンキー
06/12/07 00:32:27 Qx0EVpzl
サンクス明日逝ってみるノシ

229:名無しさん@ピンキー
06/12/07 03:42:50 XvB2wm3R
おまいら乙
ハセヲ×カール+不思議幼女投下

230:名無しさん@ピンキー
06/12/07 03:44:46 XvB2wm3R

「んなイベント知らねぇだと? どーいうこった」
「そのままよ。CC社は“子育てイベント”なんて企画しても実施してもいない」
「じゃあ、あのセグってガキは……」
「……」

苦情も兼ねてパイにコンタクトを取ったのは正解だったらしい。
アトリは「イベントでは?」と疑っちゃいたが、
やっぱり子育てイベントなんざ有り得ねぇ。
その気になってるカールにゃ悪いが……家族ごっこに付き合うつもりは毛頭ねぇんだよ、俺は。

「PCでもなければNPCでもない……
 けれどそんなキャラクターがサーバー内をうろつく……だとすれば、残る可能性は1つね」
「?」 
「放浪AI」
「あんだよ、そりゃ」
「R:1からこのゲームを始めた貴方は知らないでしょう。
 4年程前から見かけることも無くなっているし……」

パイの話を参考にするなら放浪AIってのは一種のバグらしい。
特に2010年~2014年が頻出期だったらしく、CC社側が『碧衣の騎士団』っつう
デバッグチームを組織しなきゃならねー程、放浪AIは《The World》に溢れていた。
姿形は何故か少女の姿をした者が多く、ある者は言葉を知らず、ある者は女神の娘を名乗ったと言う。
……設定だけはよく出来たバグじゃねーか。

「セグもその放浪AIだってのか……何でそんなのがカナードのホームに……」
「一応調べてみるわ。それにもし放浪AIだとしても、何処から来たのかは大体検討が付くもの」
「へぇ、何処だって?」
「ロストグラウンド……吹き溜まりの街・ネットスラムの可能性が高いわ」






***************************






「ちゃお。ハセヲ、ひさしぶり」
「……あぁ」
「パパ! おかえり!」
「ぐおっ、セグ……!?」

ホームに戻って来た途端、セグの抱きつきが待っていた。
顔合わせんのは数日ぶりか……いや、それよりもだ。
コイツ、今確かに俺に「おかえり」って……。

「ハセヲったら、ちっともホームに顔出さないんだから。
 暇だったし、あたしが教育しといた」
「マ、マジか……」
「言ったろ。あたしは育児においても頂点に立つ女だ」


231:名無しさん@ピンキー
06/12/07 03:47:14 XvB2wm3R

「ほら、セグ。パパが怒る前に離れな」
「はぁーい」

……驚いた。
つい先日まで「パパ」か「ママ」しか喋らなかったあのガキが
カールの言ってること、ちゃんと理解して……素直に俺から離れやがった。
てんで中身は赤ん坊だったはずだぞ、俺がいない数日に間に何があった……?

「きみが居ない間、シラバス達がこの子の相手してくれてたんだけどねぇ。
 やはり父親役はきみじゃないとダメらしい、ハセヲ」
「うん。セグ、パパはパパじゃなきゃ嫌」
「……なぁ、何で俺がお前のパパなんだよ」

喋れる様になった、となりゃ話は早ぇ。コイツには色々と聞きたいことがあるからな。
パイが調べるまでもねぇ、セグ本人に直接問いただせばいいんだしよ。
俺とカールを親だと思ってるのは何故かとか、何処から来たのかとか、とか。

「分かんない。でもここに来れば、パパとママに会える気がした」
「じゃあお前ここに来る前は何処に居たんだ、つかどーやってギルドに忍び込みやがった!?」
「それも分かんない」
「……おい。カール」
「わーってる。でも無駄だよ、ハセヲ。
 あたしも色々と質問してみたんだが……『分からない』の一点張り。
 本当に分からないのか、プロテクトか何かで『分からない』と答えざるをえないのか……」

仮にカールの推測がビンゴだとして、誰がそんなコトをする?
俺とカールにセグを近づけて何かをやらかそうってのか。
でも俺の見た限り、このセグがそんな物騒な存在には見えねぇが……迷惑ではあるが。
自分の子供でもねーのにパパ呼ばわりされてみろ、ゾッとしねぇぜ。

「けどハセヲ。子守が嫌でホームに近づかなかった……ってワケでもないんだろう?」
「……パイに連絡取って、色々やってた。やっぱこれ、イベントじゃねぇみたいだぞ」
「だな。この子がイベントキャラなんて到底思えない、まるで……」
「まるで……?」
「……人間みたいだ」

……そーいや、パイが言ってたな。
放浪AIの中には女神の構築データ収集のために放たれた者が何体か居た、って。
多くの人間が集まる《The World》の中で情報を集めて、より完璧な究極AIを作ろうとしてた
奴が、R:1時代に居たってことも。それがモルガナなのか? それとも別の誰か……。
オーヴァンが探してた“キー・オブ・ザ・トワイライト”と女神がどう関係してるのかは
知らねぇけど……セグも、もしかしたら“キー・オブ・ザ・トワイライト”と何か繋がりがあるってのか……?
まさかな。話が出来すぎてて気味悪ぃ。

「にしてもアレだな。お前に育児の才能があるとは思ってなかった」
「ふふん。女を舐めたらアカンぜよハセヲ君」
「? パパ、ママを舐めたいの?」
「バカ言え」

……カールに教育任せたのは、マズかったんじゃねぇの?
ったく、とんだマセガキ……ん、なんだ……初めて会った時と何か雰囲気違うな、コイツ。
なんか、こう……あ。

「……お前、リボン付けたのか」
「ママが結ってくれたの。長くて綺麗な髪なのに、そのままは勿体無いよ、って」
「あたしのお婆ちゃんも髪結うの得意でね。チートでちょちょいと作ってやったんだ」


232:名無しさん@ピンキー
06/12/07 03:48:56 XvB2wm3R

「でね。この子の髪、すっごいサラサラしてんのね。ハセヲも触る?」
「あのな……」
「この世界の物質に触れて触感を得ることができるのは
 モルガナ因子を持ってるPCだけなんだ。撫でてやるくらい何でもないだろう?」
「……ちっ」

俺と同い年のくせに、カールはたまに大人びた口調で俺を諭すことがある。
からかってる時は訳の分かんねぇ例え話なんかで誤魔化すのに、こういう時だけ……ったく。
撫でればいいんだろうが。撫でれば。

「ほれ」
「あぁぁ、パパ! ぐしゃぐしゃになっちゃう~!」
「ハセヲ、ダメだって。セグの髪が乱れるだろ、髪は女の命なんだ」
「女の頭なんか撫でたコトねーから加減が分からねぇんだ、悪かったな」

そこまで大袈裟にすることもないだろうに。
カールは乱れたセグの髪をはたいて元の通りに戻しながら、俺に注意を促す。
曰く、「あたしが髪をバッサリした時、お婆ちゃんはすごく悲しんだ」とか
「髪は女の魅力を引き立てるモノの1つ、手荒に扱うのはダメっしょ」とか……。

「気をつけてほしいな。ハセヲは女泣かせるのが上手いんだから」
「オイ。まだ泣かせてねーだろ」
「ママ、パパは女の人を泣かせるが上手いの?」
「そーよ。揺光姉ちゃんもアトリ姉ちゃんも、パパに泣かされたことがあんのよ」
「パパ、甲斐性無し?」
「そーねー。甲斐性無しねぇ」

好き勝手に何か俺の悪口言ってねぇかコイツら……。
つーかこのガキ、誰が甲斐性無しだ、あぁ!?
そりゃま、確かに……な、泣かせたことは否定しねぇけど……
けど、アトリの時も揺光の時も事情があってだな……。

「ふぁぁ……ママ、眠い」
「こんな時間か。パパが来たから嬉しくて疲れた?」
「うん」

まるで本当に人間みてぇに、セグは目を擦って眠気をカールに訴える。
時間は夜11時過ぎ、確かに子供が起きてる時間じゃない。
けど……放浪AIって寝るのか?

「明日もまた遊ぼうね」
「あぁ、遊ぼう。おやすみ」
「うん……」

カールの膝に頭を添えて、そのままセグは目を閉じた。
それ以降、あれだけ騒がしかったアイツはピクリとも動かなくなり、
その姿と相成って、まるで人形を見てる様な気分に陥る。
だが微かに聞こえる寝息が、セグを生き物であると定義づけているのも事実だ。

「どした。ハセヲ」
「いや、その……お前にばっか押し付けて、悪ぃ、つぅか……」
「きみが謝ることじゃない。あたしが好きでやってるんだ……ま、座れって」
「……おう」


233:名無しさん@ピンキー
06/12/07 03:50:39 XvB2wm3R

「子供の寝顔って可愛いだろう?」
「……」
「まだ出会って1週間も経ってないけど……この家族ごっこ、あたし的には結構楽しいんだ」

こいつが、カールがそんなことを言うのも珍しい。
いつもは俺や揺光をからかって、悦に入って喜んでるような奴なのに。
元々カールと知り合ったのは揺光の紹介だが……今思うと、俺は全然コイツのことを知らねぇ。
それに時々、コイツを見てて思うことがある。
何か……昔の、死の恐怖とか呼ばれてた頃の俺に、似てる……って。

「カールはソイツのこと可愛がってるみてぇだが、ソイツは―――」
「自分の子供が可愛くない親なんて、いない」
「自分って……お前が腹痛めて産んだワケでもないだろうに」
「でもあたしをママと呼んで慕ってくれている。
 例えそれがこの子の本意だろうと他意だろうと、あたしはこの子の母親のロールを続けるよ」
「……」
「昔、『中途半端なロールするな!』って言われたことがあんのね。
 だから、さ。どーせ母親やるなら、徹底的にこの子に付き合ってあげるつもり。暇だし」

俺は揺光から紹介されるまでのカールを知らない。
コイツがPKKだったとか、碧星宮の宮皇になった途端にゲームを辞めたとか、
そういう話を聞いたのはずっと後のこと。
俺達のメンバーの中じゃ、クーンと同じくらいネトゲ暦が長くてR:1の頃から
《The World』をプレイしてる……俺が知ってんのはそんくらい。
“謎は女を女にする”とか意味不明なこと言っていつも誤魔化して。

「この子さ」
「あん?」
「きみが……ハセヲがパパで、この子は幸せだと思う」
「そうか? よく、分かんねぇけど」
「あたしには父親がいないから……この子には、そゆ思いさせたくないのね」
「死んだのか?」
「あたしが母さんの腹の中に居た時に離婚した。だから顔も知らない」
「……」

……カールも、カールなりの人生、歩んでんだな。
俺の家だって親父も母さんもいつも居ねぇけど、離婚はしちゃいない。
片方の親がいねぇ気分ってのは……どんなんだろうな。
俺は知らない。けど、カールは知っている。

「だから。あたしの家は、お婆ちゃんが大黒柱。女3人で慎ましく暮らしてる」
「お前がそういうコト俺に話すの、初めてだな」
「ハセヲには知っておいてほしかったから」
「……」
「きみと揺光だけだ。この世界であたしの家の事情知ってんのは」
「……そうか」

膝の上で眠りこけたセグの髪を梳きながらカールは淡々と、それでいて何処か可笑しそうに笑う。
人の心にはいつもズケズケ踏み入って、引っ掻き回して、面白い方向に持って行こうとするのに、
こういう時だけ女の表情を見せるから、コイツはずるい。

「だが顔も知らない父親が残してくれたものもある。この世界だ」
「どういう意味だ?」
「あたしの親父だよ、この世界を作ったのは。
 ハロルド・ヒューイックの黄昏の碑文から構想を得てフラグメントを開発、
《The World》のR:1日本語版を開発したスタッフの責任者が……あたしの親父だ」


234:名無しさん@ピンキー
06/12/07 03:52:59 XvB2wm3R

「もう親父の作ったR:1は無くなってしまったけど……それでもね、ハセヲ。
 R:1時代の名残のあるロストグラウンドに行くと、昔が懐かしく思えてきたりもするの」
「カールでも、そういうこと言ったりすんだな」
「最近はそうでもないけど……この子見てたら、何かね」

誰だって感傷に浸りたい時はある。
俺も志乃がPKされた後、よくグリーマ・レーヴ大聖堂で考え事とかしてたから、分かるさ。
俺の場合は仲間だけど、カールの場合は……親だから。例え顔も知らない相手であっても、親には違ぇねぇ。

「とは言え……少し疲れたな。あたしも少し休もう」
「お、おい」
「いいじゃないか。きみとあたしと、この子しか、いないよ」

ドキリとする様な低い声で呟くと、カールは俺に寄り添って目を閉じた。
コイツも因子持ちだ。俺に触れた感触が伝わってるはず……カールの膝にはセグ、俺の肩にはカール。
無防備な寝顔見せやがって……俺を何だと思ってやがんだか。



**********************



更に数日が過ぎた。相変わらず俺達の惰性的な子育ての日々は続いている。
でもいつまでも続けるワケにもいかない……セグが日を追うごとに色々と学習して行くのを
目の当たりにして、俺は益々そう思うようになっていった。
カールにとっちゃ残酷な選択かもしれねぇけど……やっぱ、確かめなきゃダメだってな。

「あぁ。ネットスラムなら知ってる、行ったことないけど」
「パイに調べさせたんだ。セグは、そこから来た可能性が高いって……」
「帰すべき場所に帰す? そゆこと?」
「あ、あぁ……」
「ふむ……分かった。行こう」

意外だった。セグをこんなにも可愛がってるカールが、あっさりと返事をすることが。
てっきり、いつもみたく何だかんだ言い訳して渋るか話をはぐらかすと思ったんだが……。

「……いいのか」
「帰る場所があるなら、帰すべきだ。違う?」
「まぁ、そりゃな」
「ネットスラム……R:2に移行しても残ってたか。
 今になるまでその名を聞かなかった、ってことはロストグラウンド化してる?」
「らしいな。行くために必要なデータシードはもう俺が集めてある……いつでも行けるぞ」

俺1人で行っても意味がない。
カールと、そしてセグが一緒に行かないと、意味がねぇ。
今回ばかりは。

「セグ、お出かけしよう」
「パパとママとお出かけ?」
「あぁ。お出かけ」

母親としてのロールを最後まで真っ当するつもりなのか、カールの顔に迷いの色はなかった。
もうセグと離れ離れになるかもしれねぇってのに……。

「それじゃ行こうか、ハセヲ。ネットスラムへ」


235:名無しさん@ピンキー
06/12/07 03:54:59 XvB2wm3R
次は前作キャラも登場? カールのパワーうpイベントあり? 何のことです?
おやすみおまいら


236:名無しさん@ピンキー
06/12/07 07:48:48 75wJEC09
GJ

ヘルバ登場の予感(*´д`)ハァハァ

237:名無しさん@ピンキー
06/12/07 14:16:38 priQ64Si
GJ!

238:名無しさん@ピンキー
06/12/07 20:47:47 BaTef0IC
超GJ

239:名無しさん@ピンキー
06/12/08 02:40:20 b5RnUGha
マジでぐっっっっじょーーーーーぶ!!!
主ら神すぎる!!!
あと公式サイト覗いたらキャラページにタビーがキテたー!!!この顔めっちゃ好みだわぁ~

240:名無しさん@ピンキー
06/12/09 07:47:05 lNjSeXkK



241:名無しさん@ピンキー
06/12/09 09:26:10 qrOl2QTz
前スレで投下されたボル子話はまだかのぅ

242:名無しさん@ピンキー
06/12/09 14:43:38 CFh2fbIi
>>240
ちょwwwwwIDwwww

243:名無しさん@ピンキー
06/12/09 15:10:46 PHv93e1F
「ハセヲさんもっと私を見てください…!!!」
「もっと見てほしいんですぅ!!」

244:名無しさん@ピンキー
06/12/09 18:27:47 lNjSeXkK
ヘルバはスタイル良い

245:名無しさん@ピンキー
06/12/09 18:31:37 qdUiTwV/
何をトチ狂ったのか揺光×天狼(リアルの)が思い浮かんだ罠
ちょっといってくるわ

246:名無しさん@ピンキー
06/12/09 20:04:21 mL7g6eay
>>245
ま、待ってるんだからねっ!
べっ別にwktkしてるわけじゃないんだからっ!

247:GORRE
06/12/10 01:05:21 RdfGEK69
>>208の続き。4日も待たせて申し訳ない。

翌日、亮は体のけだるさを感じて目を覚ました。
「何で、こんなに体がだりぃんだ?」
全く持って思い当たる節がない。亮は昨日何かしたのか思い出せないでいた。
「ん?」
亮はベッドに違和感を覚えた。
「何で、こいつらが俺のベッドで?」
ベッドで寝ていた朔と智香の姿を見た亮は首をかしげた。
「……まあ、いいか。顔洗ってこよ」
亮は顔を洗うために1階へと降りていった。
「?」
洗面所へと向かう途中、亮はリビングに人の気配を感じた。両親は今日の夜まで帰ってこないはずだから、こんな時間にいるはずがない。泥棒か? いや、だったらこんな朝早くから忍び込みはしないはずだ。
「誰だ?」
亮はリビングにいる人影の正体を確かめるべく、扉を開けた。そこにいたのは……。
「望!?」
エプロンをつけた望だった。
「あ、おはよう。ハセヲにいちゃん」
「お、お早う。てか、お前何してんだ?」
「え? あさごはんのよういだけど…いけなかった?」
望は悪い事をしたんじゃないかと言う気持ちに襲われた。
「いや、悪くはない。てか、お前料理できたのか」
「すこしくらいなら。がっこうのかていかのじゅぎょうでならったし。それに、おかあさんがいそがしいときとかてつだってたし」
亮は感心した。なんて偉い奴だ。
「朔はどうなんだ?」
「おねえちゃんはりょうりできないよ。できたとしてもカップめんとかだよ」
智香並かよ! 亮は心の中でつっこんでおいた。
「?」
望は自分を見つめている亮の視線に首をかしげた。
「………」
「! ハセヲにいちゃん鼻血!」
「うお!」
亮は急いで鼻にティッシュを詰め込んだ。
(いかんいかん…)
亮は思わず望のエプロン姿に萌えてしまったようだ。


248:GORRE
06/12/10 01:07:38 RdfGEK69
と、今日はここで終了。 つづきはまた後日!


249:名無しさん@ピンキー
06/12/10 01:18:26 LSbIEB/3
>>248
エプロンを着けた望だったのか、エプロンを着けただけの望だったのか…
(いかんいかん、ティッシュ、ティッシュ…)
GJ!

250:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/10 01:45:13 dhLYjlBk
また日付が変わってしまった・・・・・・
土曜日と言っておきながら申し訳ありません。
気を取り直して、今夜の分。

251:花火まであと少し 5
06/12/10 01:45:45 dhLYjlBk
「あのー、志乃サン?」
「どうしたの、ハセヲ。急に他人行儀になっちゃって」
「このエリア……やば過ぎじゃね?」
目に映るのは、見ただけで冷たさを感じてしまいそうな寒色の回廊。
視線を床に落とすと、罠と言う言葉を具現したような伸縮式の鋸や剣山が蠢いている。
それだけでも気が滅入るのに、エリア自体のレベルもハセヲからすればかなり高い。
まだ一回しか戦闘していなかったが、HPは既に三分の一を切っている。
今更ながら、亮はエリア情報をまともに見なかった事を悔やんだ。
そこにはちゃんと、「今のあなたのレベルではここのモンスターには勝てないでしょう」と書いてあったはずなのに。
とはいえ、それを見ていたとしても今の亮が志乃のお願いを拒めたかどうかは怪しい。
むしろ、志乃が行きたいとさえ言えば適正レベル150の最上級エリアであろうと着いていってしまいそうな気がする。
「うーん、私は好きなんだけどな、回廊型。ハセヲは嫌い?」
「い、いや……その……」
思わぬ質問に、言葉が詰まる。
正直に言えば、回廊型は嫌いだ。
一本道な分通常のダンジョンに比べれば時間はかからないが、その分トラップが多く戦闘の回避も困難になっている。
最深部にはボスが待っているし、それを倒さなければ当然ミッション目標である獣神像には到達できない。
受けるダメージとストレスは、間違いなくゲーム中最高だろう。
それこそ、こんなエリア好きなやついるのかと思っていた。
今の今までは。
隣を見れば、志乃が好きって言って言ってオーラを溢れさせてこちらを見ている。
実際にM2D越しの視界に映っているのは単なるグラフィックに過ぎないのだが、なんとなく気配でわかった。
「あー、その……嫌いじゃなかったって可能性があるとも無いとも言えないことも無い、かな」
「うーん、何だかはっきりしないなぁ……まあ良いや。このエリアをクリアしたら、ハセヲもきっと好きになるよ」
唇を尖らせながらそう言うと、志乃はハセヲの背中を叩いた。
先に進もう、という意思表示のようだ。
「そうなるといいな……行くぜ!」
熱愛自棄という心の新境地を感じながら、ハセヲは回転鋸へ向かって走りだした。

252:花火まであと少し 6
06/12/10 01:47:08 dhLYjlBk
「旋風、滅双刃!」
既に何度目かわからなくなったアーツをお見舞いして、ようやくボスモンスターは沈黙した。
戦闘リザルトが表示される中視線を後ろに流すと、戦闘中援護と回復に徹していた志乃が拍手をしている。
一瞬苛立ちを感じて視線をそらし、亮は目を閉じて呼吸を整えた。
「……死ぬかと思った」
そのまま小さく呟いて、コントローラーを持った右手を振る。
このボス戦に限らず、エリアの難易度とストレスは相当のものだった。
レベル差は後半ハセヲのレベルが上がったおかげでさほど感じることは無くなったが、それでようやく五分。
トラップは相変わらず悪質に配置されていたし、エリアのモンスターは甲殻系が主だった。
甲殻系モンスターは本来のHPとは別に殻自体の耐久力が設定されており、それを削りきらなければまともにダメージが通らない。
巡り合わせが悪い事に、ハセヲの得物は殻へのダメージにマイナスの補正がかかる双剣だった。
「これだから甲殻類は嫌いなんだ……」
殻が剥けなくて海老が苦手だった子供の頃を思い出して、小さく呟く。
思えば黄昏の旅団が解散する前は、オーヴァンに連れられて様々なエリアで特訓を受けた。
その中にはおいおい、ちょっとこれ初心者の行くエリアじゃねぇだろと言うような場所が高頻度で含まれていたが、
今回の回廊はそれらと比べても遜色ないレベルの場所だった。
亮とてゲーマーの端くれである。別に高難度エリアが嫌いなわけではない。
しかし、普段志乃と行くのはオーソドックスな草原タイプのエリアが主だった。
プレイングも、経験値稼ぎやアイテム集めよりお喋り―ここ一週間はデートと言っても差し支えないだろう―がメインとなる。
良く言えば牧歌的、悪く言えば生ぬるい日々だったが亮はそんな志乃との時間にそれなりに―いや、
本音を言えばかなり充足していたのだ。
それなのに、志乃の方からこんなエリアに、それもだまし討ちのような形で引っ張ってこられるなんて。
文句を言おうとして、亮は視界を後ろに立つ志乃に移した。
「志乃、あのさ」
「なぁに、ハセヲ」
呼びかけると同時に、目と目が合った。
志乃が答える。いつも通りの、優しい声音。
「……っ!何でもない……」
耳朶を包み込むようなその声が響いた瞬間、亮は何も言えなくなってしまう。
そんなハセヲの姿を見て、志乃が小さく笑う。
天使のようなその笑い声が、少しだけ苛立たしくて。
ハセヲは踵を返して、獣神像に向かって歩き出した。

253:花火まであと少し 7
06/12/10 01:50:25 dhLYjlBk
多くのエリアでは、そこに置かれた宝箱を開けることがクリア条件になっている。
亮はターゲットアイコンをクリックし、蹴り飛ばすようなモーションで宝箱を開いた。
「はぁぁぁ……」
中から現れたアイテムに、溜息が漏れる。
宝箱に入っていたのは、光式・忍冬(スイカズラ)。
デフォルトで光の属性を持ち、このレベル帯では最高の攻撃力と使い勝手を誇る希少な双剣である。
「これ、俺が貰っていいのか?」
ようやくこのエリアに連れてこられた意図を理解し、亮は再び志乃を振り返った。
「もちろん。ごめんね、いきなり連れ出したりして」
肩をすくめて、志乃が答える。
連れ出すような形になった事を気にしてか、それとも単に内緒にしていた事が恥ずかしいのか。
その口調には、照れとも後ろめたさとも付かない響きがあった。
「そんな……謝る事なんてないよ」
先ほどまでの不満は何処へやら、そう言われて亮は本気で気後れしてしまう。
はっきりって、この双剣は実用性という観点からすれば微妙である。
確かに単独の武器としては優秀だが、
レアアイテム扱いになる為他の武器と練成して攻撃力を上げる事が出来ない。
またデフォルトで光属性とクリティカル補正のアビュリティが付与されている為、
自分の裁量でカスタマイズする事も不可能。
要するに、発展性が無いのだ。
そして、この種の道具は使い手にとってはあまり望ましいものではない。
それが真理である事は第四世代MS(ドーベンウルフやゲーマルクと言ったネオジオン紛争期の恐竜的進化を遂げた機体)
が15mサイズの小型MSに取って代わられていったように、人類の歴史における現実が実証している。
それでも。亮は、志乃が自分のために希少な双剣を送ってくれたと言うだけで、嬉しかった。
「そう言ってくれると嬉しいな……ね、ハセヲ。その双剣―スイカズラの花言葉、知ってる?」
「え?」
突然、志乃が話題を変えたる。
比較的一般的な男子高校生である亮は、当然スイカズラなどというマイナーな花言葉など知らない。
おそらく志乃も、それをわかっていて聞いたのだろう。
程なくして、志乃の形の良い唇が答えを紡ぐ。
「愛の絆……」
「……っ!?」
リアルで顔を真っ赤に染め、亮が声にならない叫びを押し留めた。
「ふふっ」
そんなハセヲを見て、志乃が優しく笑った。
その眼差しは、弟を見守る姉とも年下の恋人を見守る淑女ともつかない。
亮が調子を取り戻すまでの間、志乃はずっとそうやってハセヲを見つめていた。

254:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/10 01:52:18 dhLYjlBk
以上。
例によって妄想による本編の勝手な補完になりましたが、どうかパラレルと言う事で一つ。
話自体はエロも含めてもうちょっと続きます。
次回は12月13日(水)。

255:名無しさん@ピンキー
06/12/10 01:58:21 NoBOgy0k
>>254
リアルタイムキター!!
待ってました!やっぱり最高だな…
むしろパラレルでも何でもこいな所なので全然気にしなくておk
次回も超期待

256:名無しさん@ピンキー
06/12/10 02:06:48 bUQtI2D8
やっぱいいな(*´д`)GJ

257:名無しさん@ピンキー
06/12/10 10:12:26 PbWytN5o
ぐっじょぶです。

> それが真理である事は第四世代MS(ドーベンウルフやゲーマルクと言ったネオジオン紛争期の
> 恐竜的進化を遂げた機体) が15mサイズの小型MSに取って代わられていったように、人類の
> 歴史における現実が実証している

ソレ ジンルイノ レキシ チガウ

258:名無しさん@ピンキー
06/12/11 00:28:02 hcIx6jRu
M、MS人類の歴史ってww
ハセヲもちつけwwwwwwwwww

259:GORRE
06/12/11 00:45:30 dSI2huYc
>>247の続き~

ぎゅう~~~。
亮は思わず望を思いっきり抱きしめていた。
「ハセヲにいちゃん、いたい」
「す、すまん」
亮は望から離れた。
(やべえやべえ。一瞬我を失ってたぜ)
亮はなんとか自我を取り戻したようだ。
ついでに言っておくが、望は断じて裸エプロンではない。が、かなりきわどいと言うか似合いすぎなのである。
(まだ、女子用の体操着着てないだけましか…なんかあったよな…そういうゲーム。
女みたいな弟が体操着にブルマー着けたらまるっきり女みたいで思わず兄貴が襲いそうになっちまったやつ)
「?」
「望おおおおお!」
「わあ!」
亮は思わず望に襲い掛かった。
「だ、だめだよハセヲにいちゃん! デザートはごはんのあとだよ」
望は亮の下でばたばたと暴れながら言った。
「いや、それは分かっているんだが、なんか今のお前を見ていると襲いたい衝動に…って、ちがあああああう!」
亮は流されそうになって望から飛びのいた。
「あぶねえ、一瞬流されそうになった。あぶねえあぶねえ」
「ボクはハセヲにいちゃんにおそわれても、べつにかまわないのに」
そう呟きながら、望は起き上がった。
「え?」
「ううん、なんでもない。あ、すぐにあさごはんつくっちゃうね。ハセヲにいちゃん、おかずなにがいい?」
「望」
「え?」
「いや。そうだな…目玉焼きと野菜が食いたい」
「じゃあ、サラダだね。すぐつくるよ」
望は台所に戻っていった。
亮はそんな望を見て気の毒に思えた。
「望、俺も手伝う」
「え? いいよ、ハセヲにいちゃんはゆっくりしてて」
「そうはいかねえよ。客人に朝飯作らせるなんて悪いしな。本来なら俺が作らなきゃいけないんだしな」
「そう? じゃあ、サラダつくってよ。ボクはめだまやきつくるから」
「分かった」
亮はサラダを作るため、冷蔵庫から野菜を取り出した。
「レタスは千切ればいいとして、トマトときゅうりはどうする?」
「トマトはくしぎり、きゅうりはななめにきったほうがおおきくみえるよ」
「そうか。よし」
亮は早速トマトを切り始めた。もちろん、料理なんて殆どしたことがない。いつ手を切ってもおかしくない。
「イテ」
案の定、亮は指を少し切った。
「だいじょうぶ? ハセヲにいちゃん」





260:GORRE
06/12/11 00:55:45 dSI2huYc
望は亮の怪我した指先の具合を見た。
切り口は小さいようだが、血は結構出ていた。
「くそ、とりあえず消毒しねえと」
亮は食器棚の上にある救急箱を取りに行こうとした。が、
「あむ」
望はその指をくわえ込んだ。
「! 望、お前何してんだ!?」
突然のことで、亮は驚いた。
「? とりあえずおうきゅうしょちだけど」
指を咥えたまま望は答えた。
「いや、応急処置って」
「こうするといいって、おかあさんがいってたよ?」
「ええ!?」
望は亮の指を咥え込んだまま放そうとはしなかった。それどころか、その指全体を舐め始めた。
(望が俺の事を気遣ってくれてるのは分かるが…本人は分かってて俺の指を舐めてるのか、それとも分からずに舐めてるのか、どっちだ?)
と、亮は思った。


とりあえずここまでえ。昨日エプロンネタを書いたらこのネタを書きたい衝動におそわれてしまった。
続きはまた後日。

261:名無しさん@ピンキー
06/12/11 01:06:42 uu9SDf7R
すごく…GJです…

262:名無しさん@ピンキー
06/12/11 15:19:12 hVG8PN3k
ガノタのハセヲバロスwwwwww

263:名無しさん@ピンキー
06/12/12 16:45:19 y2+WU5eJ
www

264:名無しさん@ピンキー
06/12/12 22:27:24 0w6Z3OH5
ここ見てて創作意欲が刺激されてきた
何か書きたい所だ、今まで書いた事など無いんだが

265:名無しさん@ピンキー
06/12/12 23:30:04 IGopFxVv
>>264
構わん、是非書いてくれ!

266:名無しさん@ピンキー
06/12/12 23:35:55 rebPo8Lm
安心しろ。誰でも最初は素人だ。

初投下して、アドバイスやマイナス評価をふまえて
また新たな作品を産みだし、投下する。

傑作を残した作者達も
そうして"神"と崇められるまでになったんだ。

だから、これも修行だと思って書いてみたらどうだろうか?

267:264
06/12/12 23:52:48 0w6Z3OH5
>>265-266
了解した。
カップリングは亮×朔で、望は今の所絡ませる予定なし。
当方文才無い上に遅筆なのでうp速度はあまり期待しないで下さいな

268:GORRE
06/12/13 00:57:52 bCpUU5Xt
かまわんかまわん。じっくり考えてこそいい作品が生み出されるのさ。

最初からうまく出来る奴なんて誰もいない。それはスポーツとか勉強においても同じ事さ。

てか、最近亮×朔が人気だな。

って、俺も続きかかな。あー…でも思いつかねえ…

269:名無しさん@ピンキー
06/12/13 01:01:03 UTo9EaXj
>>268
前も思ったんだがやはり少し自己主張が過ぎないか?
個人のサイト作ったらどうだ
って言いたくなってくるよ

270:名無しさん@ピンキー
06/12/13 01:07:28 P9z0Oh/R
>>268
雑談の時はコテ外そうよ


271:GORRE
06/12/13 01:10:14 bCpUU5Xt
あ、ごめんなさい!

272:名無しさん@ピンキー
06/12/13 02:38:26 rXinEWgh
(*´∀`)σ)Д`)プニプニ

273:名無しさん@ピンキー
06/12/13 17:51:39 3MJnNlZy
ドンマイドンマイ
(*´∀`)σ)Д`)プニプニ

274:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/14 00:38:28 xSoBfF/v
後二回か三回でこの話は終わりかな?
今夜はちょっと短めです。

275:花火まであと少し 8
06/12/14 00:39:09 xSoBfF/v
「ねぇハセヲ、明日は暇?」
プラットホームからタウンに戻ると、志乃は唐突にそんな事を聞いてきた。
「別に……予定は無いけど」
もしかして……
仄かな期待に胸を高鳴らせながら、亮は答えた。
実は現在公開中のガンダムUC・劇場編集版を見に行くつもりだったが、志乃の誘いに比べれば瑣末なものである。
予定の内にすら入らない。
「なら、じゃあお昼ぐらいから付き合ってくれない?神田に本買いに行きたいの。あ、もちろん、リアルの方ね」
「う、うん……わかった」
待ち望んでいた、志乃からの誘い。
飛び上がるほど嬉しいはずなのだが、照れが邪魔してそれだけしか言えない。
無意識に、ハセヲは志乃から目を逸らした。
少し前まで、亮は志乃の目を見るのが苦手だった。
初日にPKされて人間(PC?)不信ぎみになっていた事もあったが、
旅団に入って仲間たちと普通に話せるようになってからも志乃に対してだけは直らなかった。
正確なところは今でもわからないが、おそらく―彼女の声と言うか、話し方のせいなのだろう。
志乃の声は可憐で、囁くような調子で話す。
それは彼女のお姉さん気質と言うか、冷静で温厚な態度と相まって心に否応無く響いた。
一言で言えば、誠実で一途なのだ。
感情過多な面を隠そうとクールで無気力な仮面をつけていた以前のハセヲには、それがたまらなかったのだろう。
あくまでこれは、後付けの自己評価に過ぎないが。

276:花火まであと少し 9
06/12/14 00:39:57 xSoBfF/v
「良かった。買いすぎちゃった分の本持ってもらうかもしれないけど、いいかな?」
「そんなの……別に、気にしないから」
普段なら叱られる所だが、志乃は気にせず言葉を続けた。
それが少し不満で、亮はぶっきらぼうな調子になる。
呆れられたのか、それとも内心を見透かされたのか。
どちらにせよ、余りいい気分では無かった。
「それじゃ、待ち合わせとかは後で携帯の方で送るね。私は今日中に大学の課題片付けちゃいたいから、今夜は落ちるね」
「う、うん。じゃあ……」
そういって、志乃は足早に姿を消した。
ハセヲは、一人タウンに残される。
別に引き止めるつもりは無かったが、こうなると少し寂しい。
「ログアウトして、メールでもチェックするか……」
思わず口に出して、そう呟いた瞬間。
「やっほー!ハセヲー!」
亮の耳に、無駄に元気な叫びが聞こえた。
反射的に振り向くと、そこには猫の意匠の拳術士(グラップラー)―元黄昏の旅団のメンバー、タビーが立っていた。

277:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/14 00:41:16 xSoBfF/v
以上。
ハセヲが見たがってる映画に関しては、まあ・・・・・・
すいません、調子に乗りました。
次回は18日(月)。

278:揺光モノ「光の中に咲き誇る花」 東京(準備)編2
06/12/14 01:42:52 pQrHTo4J
前スレ>>470の続き かなり間が空きましたが投稿。
「…え~っと、おやつは買ったし、お土産の『白い恋人』は買ったし、夜食用のカップメンも買ったし……うん、これくらいかな」
アタシは今、近場のデパートの食品売り場にいる。
無論、ドサンコデ札幌の東京ドーム日本シリーズ戦を見に行く為である。
クールでカッコ良くてそれでいて実は心優しい(と智香は思っている)オーヴァンからチケットが届いた時には、はっきり言って信じられなかった。
この際オーヴァンが何者で、何でアタシの個人情報を知ってるのかなんてのは気にならない。
彼はアタシとハセヲをくっつかせようとしているんだ。 うん。 そう思いたい。
「う~ん……やっぱり、新しい服も買っておこうかな……」
そう思い、今度は洋服売り場に足を運ぶ。
普段から服装には気を使っているアタシだけど、やっぱり東京に行くんだし、そして……ハセヲにも会えるんだし、少しくらい奮発した服装で行ったほうが良いかな、と思ったからだ。
因みにハセヲにはあの後すぐメールで連絡を取り、東京で会う約束をした上に家にお泊りする約束までしてしまったのだった。(因みにドサンコデ札幌のファンである両親も行くらしいが、彼らは都内のホテルである)
おまけにオーヴァンから貰ったチケットは日本シリーズ中であれば毎日ドームに出入りできるプラチナチケット(一枚11万5000円)であり、シリーズが長引けば最大一週間はハセヲの家にお泊りする事ができる。
嬉しい反面、ひどく緊張してもいる。
「(ハセヲはどんな服が好みなのかな………)」
色とりどりのプリーツスカートをまさぐりながら、ぼんやりとハセヲの事を考える。
三日後だ。
三日後になれば、会える。 ドサンコデ札幌の試合よりも、今はハセヲの事で頭が一杯になっていた。
--------------------
「ありがとうございました。 また御越しくださいませ」

レジの店員から服の入った袋を受け取り、洋服売り場を後にする。
とりあえず無難と思われる色合いの小奇麗なワンピースに、白を基調としたプリーツスカートを購入した。
因みにお菓子代もろもろと合わせて、本日の出費は1万4500円。
アタシはバイトしてないし、正直財布にはかなりの痛手だった。

「(はぁ、お財布がスッカラカンだよ………さて、家帰って、少しログインでもするかな)」
デパートの入り口をくぐり、外の空気を全身に浴びる。
少し冷たい風が頬を打つ。
北海道ではすでに初冬だ。(ハセヲ曰く、東京はまだ残暑が残るような季節らしい)
そしてアタシは、足を家の方向に向けて歩き始める。
と。 歩き始めたアタシは、後ろから加えられた凄い衝撃によって前のめりに倒れてしまった。

「痛っ!」
「いったぁ~」

同時に、アタシの背後からも声が聞こえてきた。
何だか間の抜けた声だ。
振り返ってみると、急いで走っていてアタシにぶつかってきたのだろう、中学生くらいの男の子がしりもちを着いていた。
あたりには彼が買ったのであろう大量のチョコレート菓子の袋が散らばっていた。

「あぁ~、ごめんだぞぉ~、おいら、急いでて………」
間の抜けた以上に、何だか癒される声だ。
それに彼の外見も、少し太めだが愛嬌のある顔つきで、突然後ろからぶつかって来たのを咎める気にはならなかった。
「ううん、大丈夫大丈夫。 それより、君も大丈夫? 怪我とかしてない?」
男の子は「大丈夫、怪我はないぞぉ~」などと言いながらゆっくりと立ち上がる。
外見相応なスローペースである。
だが、彼が持っている独特の雰囲気というのであろうか、それにイライラさせられることも不思議と無い。
「ホントにごめんだぞぉ~、えぇっと………おねえさんのお名前は?」
「アタシ? アタシは、倉本 智香って言うんだ。 君は?」
突然名前を聞かれてびっくりしたが、目の前にいるこの子は悪い子ではない。
別に名前を教えようが住所を教えようが別段問題は無いだろう。
見たところ、この子も北海道在住みたいだし。
「おいらはぁ~、牧 孝太って言うんだぁ~。 札幌ドサンコデ中学の一年なんだぁ~」
「ふ~ん、ドサンコデ中学ねぇ………ん?」
ドサンコデ中学って………
(アタシが去年まで行ってた中学じゃん!!)

久しぶりに投稿したのでいろいろ雑に………次回、おそらく土曜。

279:名無しさん@ピンキー
06/12/14 02:35:46 VPVNwtlw
>>277
乙ですGJ!!
次回も期待してる(´Д`;)ハァハァ

280:名無しさん@ピンキー
06/12/14 06:50:20 WU7gCsZa
>>278
ガスパーktkr!!

281:GORRE
06/12/14 14:21:24 zEZWWrZd
>>260の続き

(まずい、これ以上この状態だと変な気を起こしかねない…)
亮は望の口から無理やり指を引き抜いた。
「望、早く朝飯の続きを…」
「え? うん、そうだね」
望は手早く亮の治療を済ますと、再び朝食の準備に戻った。
「じ―――っ」
と、二人を見つめる視線があった。
「?」
振り向いた望の視線の先にいたのは、朔だった。
「あ、おねえちゃん」
「おお、朔」
「…朝から仲がいい事やなあ」
心なしか朔は不機嫌っぽかった。
「ウチは別に、ハセヲが望と仲良くするのはかまへんよ。けど、朝っぱらからっちゅうのはどうかと思おうんやけど」
朔はつまらなさそうに髪をいじっていた。
「朔?」
「別に、ハセヲが誰といちゃつこうがハセヲの勝手や。けど、何でウチがこんな気持ちにならなあかんねん」
朔はちょっと膨れていた。
「お早う~」
リビングに欠伸をしながら智香が入ってきた。
「? どうしたの?」
智香は全く状況が分かっていなかった。

食事も出来上がり、全員が食卓に着いた。
「はい、ハセヲにいちゃん。ごはん」
「お、サンキュー」
亮は望が差し出した御飯を受け取ろうとった。
「って、大盛りかよ」
亮が受け取った御飯は、その言葉のとおり、こんもりと盛り上がっていた。
その光景を朔は物凄く凝視していた。
(…嫉妬オーラが…)
智香は確かに見た。
「も、もう揃ったんなら、早く食べようぜ。あたしお腹すいちゃったよ。あははは…」
「そうだな、食うか」
「じゃあ、いただきます」

282:GORRE
06/12/14 14:46:43 zEZWWrZd
「さてと、朝飯も食ったしこれからどうするかね」
食後のお茶を飲んでいた亮が言った。
「あたしは後は帰るだけだしなあ」
「飛行機何時だっけ?」
「えーっとね、12時5分だって」
「12時5分? 今が9時5分だから、まあ、もうちょいゆっくりは出来るだろう。ここから1時間弱で空港までいけるしな」
「なあ、亮」
「あ?」
「あたしあそこに行きたい。浜松町」
「浜松町? まあ空港に行くためにはあそこにいかなきゃならねえからいいけど。何か見たいのがあるのか?」
「うん。ラジオ局」
「はあ?」
「一度でいいから生でラジオとか見てみたいんだよね」
「生で見たいって、お前……あそこはカードが無きゃ入れねえんだぞ?」
「亮3つレギュラー番組持ってるんだから、カード持ってるじゃん」
「あれは俺じゃねえ。俺の中の奴だ」
「? なかのヒトって、ハセヲにいちゃんじゃないの? みんないってるよ? なかのヒト=ハセヲにいちゃんだって」
「いや、だから、それは俺じゃなくて、俺の中の人だから。分かる? 三崎亮じゃなくて、さ○○○○○○○だから」
「え? だから亮でしょ?」
「違う!」
「え~絶対亮だよ。あのキャラは」
「何処が!?」
「いじられ具合とか」
「7またとか?」
「ヘタレな所とかな」
「だから、それは違う! 俺じゃない! 俺の中の人が言われてるだけだろ!」
「せやから中の人=ハセヲって言うとるやないか」
「ちが~~~~~う!」
もはや何を言っても通じないことは明らかだった。

283:GORRE
06/12/14 14:48:19 zEZWWrZd
とりあえずここまで。続きを考える時間をください。

284:名無しさん@ピンキー
06/12/14 15:29:54 vJ+g3myk
櫻井考宏は盗作に関与してたから某人気深夜アニメの主役を取られました

285:264
06/12/15 00:57:59 fPVYWkfC
亮×朔現在執筆中です。
筆の進み方が良ければ土曜の夜までには序盤はお見せできるかもしれません。
期待しないでいてね。

286:名無しさん@ピンキー
06/12/15 02:34:39 +imvFHZ7
>>283
中の人ネタ吹いたwGJ!!

>>285
そいつぁ無理な相談だ…
今から全裸でwktkしているぜ…

287:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:48:55 T51nueZD
おまいら乙
ハセヲ×カール投下

288:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:50:07 T51nueZD

「はるばる来られたところ申し訳ないがの……その子は、この街の住人ではない」

ネットスラムの長、タルタルガは確かにそう言った。
俺達がこの吹き溜まりの街にやって来たのは、セグを本来いるべき場所に戻すため。
なのに、この爺さんはこともあろうに「この街の住人ではない」とか抜かしやがる。
何のために俺が苦労してデータシード集めて、ここに来たと思ってんだ?

「確かにここはバグPCや破損データの集落だがね……その娘はワシらとは違う存在に思えての」
「どーいうこった、そりゃ」
「その娘はPCでもNPCでもない。ましてや放浪AIでもない。
 正体は分からんが……ワシはそう感じた。だが君の言うように何かが欠損しているフシもある……。
 珍しいお客だとは思うがね、これ以上はちょっと分からんわい」
「ネットスラムの長老にも分かんないか……お手上げだな、ハセヲ」

ここでなら何か手掛かりがあると思ってた。
勝手にギルドに押し掛けて来て、勝手に食い散らかして、俺のことをパパと呼ぶチビ。
銀色の髪、黒いドレス、紅い瞳……俺とカールにカラーリングがそっくりなガキ。
セグと名付けられたそいつとの日々をカールは楽しんで居たけど、俺はやっぱ何か違うと思った。
だから本当の両親がいるなら(例えゲームの設定でも)探してやろう、って。
なのに、ここにもセグの居場所は無い。

「力になれんで申し訳ない。
 だが久々にここを尋ねてくれるプレイヤーがいてくれて、嬉しかったわい」
「こんな色気のねぇ廃墟、物好きじゃなきゃ確かに来ねーわな」
「ここってバグPCとか放浪AIとか、しょっちゅう来るの?」
「昔ほどではないがの。最近来たのは……ほれ、アイツじゃ、あの頭に角の生えた仮面男。
『漢と書いて男と読む』などと、うわ言の様に繰り返しておるじゃろう?
 もう自分がPCなのかNPCなのかの区別も付かなくなっておる……何かショックなことでもあったのかのぅ」
「女にでもフラれたんだろ」 

世の中、つまんねーコトで大袈裟にショック受ける奴多いからな。
でもあの仮面男……どっかで会った気がするようなしないような……ま、いーか。
しかし参った。
セグがネットスラムの住人じゃねーとなると、何処から来たんだ、コイツ。
人の気も知らねぇでカールの膝で気持ちよさそうに眠りやがって……頬っぺた抓るぞ。

「ところでそちらのお嬢さん」
「んー。あたし?」
「そう、あんたじゃよ。お前さん、実に勿体無いの」
「あん? カールの何が勿体無いってんだ、爺さん」
「お嬢さん、あんたには素晴らしい才能がある。
 だが惜しいことに半分以上が眠ったままの様でな……それが勿体無くての」

……いきなり何言ってんだ、このジジイ。

「まっさか。もうレベルもカンスト状態だよ、あたし」
「数値で表せる様なモノではないのじゃよ。
 ワシが見たところ、お主はモルガナや女神に縁のある者と見たが……違うかの?」
「へぇ……よく分かるね、長老サン」

モルガナ? モルガナ因子のモルガナのことか?
てかモルガナって何だ? 今思うと俺は、そんなことも知らずに憑神を、スケィスを使っていた。
そのスケィスももう居ねぇ。スケィスは、今はカールが使っている。
俺のスケィスとはまた違う、別のスケィス。全身を紅い包帯で拘束されたスケィスを―――。


289:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:51:50 T51nueZD

「で? 勿体無いから? それだけ?」
「わざわざ辺鄙な場所まで尋ねて来てくれたお客を、手ぶらで帰すのも可哀想じゃろ。
 お詫びと言っては何だが、ワシがお嬢さんの眠った力を引き出してやろうかと思っての」
「オイオイ。ここはナメック星じゃねぇんだぞ、爺さん」

って、ありゃ最長老様だっけか。
つーか、カールに眠った力がある? 嘘くせー何か嘘くせー。
前に一度戦ったことあるから分かるけど、この女が本気になったら
Xthフォームにでもならなきゃ俺でも勝てる気がしねぇ。
憑神まで使えるってのに、まだ隠された力があるだ? 冗談キツイぜ、オイ。

「その“眠った力”ってのが開放されれば、あたし、もっと強くなれる?」
「お嬢さん次第かの。お主自身の救いにも滅びにもなる……良いも悪いもリモコン次第じゃ」
「んー、どーしよっかなぁ」
「カール、こんな胡散臭ぇ爺さんの言うこと信じるのか?」
「でもせっかく引き出してくれるって言ってるし?
 その引き出す方法ってのがやらしー方法だったらお断りだけど」

そりゃそうだ。
その手のパワーアップ方法ってエロゲとかエロノベルとかだと
十中八九の割合でエロい方法って相場が決まってやがんだからな。
もしそのつもりならタダじゃおかねーぞ、ジジイ。子供の前で乱痴気騒ぎなんかさせてたまるかっての。

「何もしやせんよ。この杖で軽く叩くだけじゃからの」
「……すげー簡単に引き出せるのな」
「見た感じでは、お嬢さんのPCには未知のブラックボックスがあるようだ。
 ワシはただ、それを開いてやるだけ……さっきも言ったが、後はお嬢さんの意志に任せよう」
「あたしの中に……ね。全然気が付かなかった」

カールはタルタルガを信じたらしく、一歩前に歩み出る。
この爺さん、すげー背が低いから176cmあるカールと比べると大人と子供にしか見えねぇ。
俺は眠ったセグをあやしながら、2人のやり取りをじっと見る。

「では行くぞい」
「ん。どんとこーい」

するとタルタルガは徐に杖の先端で、軽くカールの腹を叩く。
それだけ、ただそれだけだった。
少なくとも、俺には何も変わらないように、そう見えた。

「あ……?」
「お、おい、カール!?」

なのに、突然カールはフラついて倒れそうになる。
PCがゲームの中でフラつく、ってのは妙な表現だが確かにそうなんだから仕方ねぇ。
銀色の髪が揺れて、黒衣が俺の腕に倒れこむ刹那、カールに触れた俺にも
何かが……よく分かんねぇけど、何かが伝わった、そんな感じがした。

「(これは……スケィスが発動しかけた時と同じ感覚……?)」
「変なの……あの時と同じだ……何かが、あたしの中で……生まれたみたいな……」

あの時? カールがスケィスを手に入れた時のことか?
俺はコイツのこと知ってるようで何も知らねぇ、ホント今更だけど。
お前は、俺と出会う前に何をしていた? モルガナと女神との縁って何だ?
なぁ、カールよぅ……。


290:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:53:32 T51nueZD

**********************







「気分、どうだ?」
「さっきは何か変な感じだったけど、もー大丈夫」
「そっか」

ネットスラムから帰還後、俺達はカナードに戻った。
カールは気分が優れないらしく、一旦落ちるもののすぐに復帰。
セグはカールが居ない間、俺が面倒を見たんだが……子供の相手ってのは結構ムズいと思い知った。
特にここ最近のセグはカールが言葉を教えたせいか、言いたいこと言い放題で困る。
かと言ってギルドの外を歩いて「宮皇のハセヲが子供連れて歩いてるw」とかBBSに
カキコされんのは避けたい。ロリコン趣味はクーンで十分だ。今は遊び疲れて眠っちゃいるが。

「なぁ。カール」
「んー」
「お前、何だかんだで俺達と距離置いてないか」
「そう?」
「俺は……お前のこと、揺光に紹介されてから……ずっと仲間だって……。
 前はカールが昔何やってたとか、そういうのは興味なかったけど……」
「にょう? ハセヲはあたしのこと、知りたいの?」
「……あぁ」

知りたい。お前のこと、知りたい。
俺の前で語らない、お前の昔のこととか、全部。
まるで小さな子供が、好きな絵本を読む時、母親に「早く次のページのお話して」とせがむ様に。
カールは誤魔化す時に“謎が女を女にする”なんて言っちゃいるが……コイツは、十分すぎる程に女だ。

「ふむ……そうだね。面倒だから端折って話すよ、それでもいい?」
「あぁ」
「……あたしはね。前のバージョンで、スケィスにデータドレインされたことがある」
「スケィスに……?」
「8年前だな。あの頃のスケィスはモルガナってオバサンの手下だった。 
 あたしは……ちょっとワケありで“キー・オブ・ザ・トワイライト”持ってて狙われてたのね、スケィスに」
「キー・オブ・ザ・トワイライト!? マジか! カールが持ってたのか!?」

驚いた。
オーヴァンが探してた……いや、俺達「黄昏の旅団」が探していた、あのアイテムを。
カールが、かつて持っていた……?

「持ってた、ってのは語弊があるな。連れてた、ってのが正しいかも」
「連れて……?」
「キー・オブ・ザ・トワイライトはね、ハセヲ。
 伝説のアイテムなんかじゃない……あたしから見たアレは……小さな女の子だった」
「……女神?」 
「ご名答。あたしが連れてた頃は、まだ赤ちゃん同然だったけどね。
 そうだね、セグと同じ……見た目、5歳くらい?
 とにかくあたしはその子を連れて、ウィッチブレイドよろしく親子で逃避行してたんだ。
 あたしがスケィスにデータドレインされて意識不明になった後のコトは覚えてないけど」


291:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:55:31 T51nueZD

「あたしの中にモルガナ因子があるのは、そのせい。
 スケィスが使えるようになったのは、ハセヲが使ってたスケィスが消滅した後だね。
 言ってみれば繰り上げ当選の碑文使いなんだよ、あたしは」

俺が碑文使いじゃなくなったから、代わりにカールが……?
でも確かに話を聴く限り、俺よりもスケィスを使役する因果が強いのはカールだ。
前のバージョンの《The World》からプレイしていて、スケィスにデータドレインされて
意識不明になって……でもそれなら、パイのタルヴォスやクーンのメイガスも
他の誰かが繰り上げになって今、使ってるってことになるんじゃないか?
パイからは、そんな話聞いてねぇけど……。

「他の憑神はどうか知らないけど……スケィスはね、ハセヲ。特別なんだ」
「特別?」
「モルガナのあらゆる悪意が、特に強く込められて作られてる。
 娘を殺すためだけに作った、殺人マシーンだかんね。
 あたしのスケィス、全身を紅い包帯で拘束されてただろう?
 あれをしたのは、あたし。昔のあたしもね、《The World》に悪意をバラまくとか
 ガキっぽい理想持ってたけど……モルガナに比べりゃ、大したもんでもなかったんだ。
 だからスケィスの力を抑えるための拘束具なのね、あの包帯は。
 あれがなきゃ、モルガナの悪意に飲まれて……頭おかしくなっちゃうもん。あたし、脆いから」

確かに、一理ある。
俺もクーンとの戦いで一度、スケィスを暴走させたことがあるから分かるんだ。
何かこう、言葉じゃ言い表せられないようなおぞましいモンが俺の中に入ってきて……
自制が聞かなくなって、気がついたらメイガスをタコ殴りにしてて……。
カールは、だからスケィスをああやって全身拘束してたのか……。

「使うべきもんに使われるようになっちゃ、ダメってことだな」
「ほほう、名言だね。天狗のオッサンから聞いた?」
「あぁ……まぁ、な」

誰かを傷つけてから悟る様じゃ……遅すぎたけどな。

「あたしがセグとの親子ごっこが楽しいって思ったのは……
 やっぱ、あの頃が楽しかったからかな……命がけの鬼ごっこだったけど……好きだったんだ。
 あたしを追いかける鬼がね、好きだったの。
 ハセヲを見た時、あいつのコトちょっと思い出したな……うん、以上でダサイ昔話、終了」

初めて見た、カールが照れ笑いなんかするの。
いつも俺や揺光をからかう時に見せる意地の悪い様なものではなくて、
グラフィック処理された架空の笑顔だってのに……何か、少しだけ見惚れるくれーに。

「くっくっく……不思議だ。きみと一緒にいると、あたし、時々ヘンなくらいに素直になれる」
「……いつも変だろ?」
「ハセヲ。あたしはきみが笑う顔を見るのが好きだ。
 きみが怒る顔を見るのが好きだ。きみが揺光と一緒に居るのを見るのが好きだ。
 きみがセグと一緒に遊んでいるのを見るのが好きだ。きみが戦う姿を見るのが好きだ。
 でもね、やっぱり一番は……あたしだけに話しかけてくれる、きみが好きだ」

……えーっと、つまり?

「おっと。おばあちゃんが呼んでる、夕飯の時間だ。ハセヲ、じゃあ」
「あ、あぁ……」

言いたいことだけ言って……お前はいつも、そうやって行っちまうのな。


292:名無しさん@ピンキー
06/12/15 04:58:00 T51nueZD
寂しくないと強がってみた でも顔にウソつけなくて?
キミ求め彷徨っている どうか見失わないように? 何のことです? 
おやすみおまいら


293:名無しさん@ピンキー
06/12/15 12:12:17 7BgQhgYp
        _,,:-ー''" ̄ ̄ ̄ `ヽ、
     ,r'"           `ヽ.
 __,,::r'7" ::.              ヽ_
 ゙l  |  ::              ゙) 7
  | ヽ`l ::              /ノ )
 .| ヾミ,l _;;-==ェ;、   ,,,,,,,,,,,,,,,_ ヒ-彡|
  〉"l,_l "-ー:ェェヮ;::)  f';;_-ェェ-ニ ゙レr-{   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  | ヽ"::::''   ̄´.::;i,  i `'' ̄    r';' }   | 久々にドゥフー・・・じゃなくてGJ!
 . ゙N l ::.  ....:;イ;:'  l 、     ,l,フ ノ   | こういう良SSで溢れていた
 . |_i"ヽ;:...:::/ ゙'''=-='''´`ヽ.  /i l"  < のが昔のスレなんだよな今のスレも
   .| ::゙l  ::´~===' '===''` ,il" .|'".    | 良SSで溢れているから困らない
    .{  ::| 、 :: `::=====::" , il   |     \________
   /ト、 :|. ゙l;:        ,i' ,l' ノト、
 / .| \ゝ、゙l;:      ,,/;;,ノ;r'" :| \
'"   |   `''-、`'ー--─'";;-'''"   ,|   \_



294:名無しさん@ピンキー
06/12/15 12:28:05 TQR+QRGv
>>292
GJ!!!時間経つの忘れて読んだ!!
法規の講義、完璧に遅刻だ…

295:名無しさん@ピンキー
06/12/15 23:15:20 OT8cv2aG
age

296:名無しさん@ピンキー
06/12/16 12:26:37 /O5rYtnk
GJ!!次回も楽しみだ!

297:264
06/12/18 02:03:07 ys/KO4BR
SS書くのって難しい、職人の方々はすごいと思いますよ、本当に
とりあえず冒頭部分できたので投下します。

ゲームは一通りプレイしたけど言葉遣い間違ってないか不安だ…

298:264 亮×朔 その1
06/12/18 02:03:59 ys/KO4BR
その日の朔はやけに気合が入っていた。

「今日こそ……今日こそ決着をつけるんや……」

朔はそう呟きつつThe Worldへログインした。
標的はハセヲだ、今日までハセヲを振り向かせようと様々な行動を起こしてきたが、
どうもハセヲは恋愛沙汰に関してはかなり鈍いようで、
朔の行動が成功した試しはこれまで一度も無かった。

「……遅い、いつまで待たせる気だ?朔は。」

同日、ハセヲは朔に呼び出されていた。
場所はエルディ・ルー、2人にとって何かと縁のあるエリアだ。

「朔に指定された時間が20時だから……もう30分も過ぎてるじゃねーか……
あと少しだけ待って来ないようだったら戻るか」

しかし、ハセヲは同時に違和感を感じていた。
これまで幾度と無く朔とパーティーを組んで行動する機会があったが、
彼女は一度たりとも集合時刻に遅刻することは無かった。
それが何故か今日は遅れている、しかも30分以上もだ。

更に10分ほど経過した時、ハセヲは足音がこちらに近づいてくるのに気付いた。

「…よぉ、遅かったじゃねーか。」
「……まだ、待ってたんやね。ゴメンな、遅れてしもて。」
「(……やけに素直だな、なんか不気味だ)
ま、そろそろ戻るつもりだったけどな。」
「そか……間に合って良かったわ……」
そう言ったきり朔は黙り込んでしまう。

何分ほど経っただろうか、突然朔が話を切り出してきた。

「今日来てもらったのはな、ハセヲにちょっと話があるからなんや。」
「話…?何の話だよ?」
「ええか?1回しか言わんからよく聞いとくんやで。」

そう言うと朔は深呼吸をし、ハセヲの目を見据えてこう言った。

「……ウチ、ハセヲのことが好きや。」

299:264
06/12/18 02:06:21 ys/KO4BR
冒頭はこんな感じになります。
改善点等ありましたらどんどん指摘してください

投下ペースはかなり遅くなりますが今後も宜しくお願いします。

300:名無しさん@ピンキー
06/12/18 02:09:36 +SAPFbUr
>>299
GJ!
期待して待ってるよ

301:名無しさん@ピンキー
06/12/18 11:07:17 HafcRX70
>>299
GJ!
朔かわいいよ、朔。
いまんとこ指摘できるのは『」』の前の『。』は不要って事くらいか?

302:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/18 15:33:45 I6izWgKC
すみません、今日の投下を予定していましたが延期します。
次は多分、12月20日(水)。

303:GORRE
06/12/19 00:12:51 rQvpOhQk
>>299
来たああああああああああああ!
もしや、この朔はツンデレでは無いのか!?いや、これはこれでいいか。
続きが楽しみだよ~。待ってるよ~。

304:名無しさん@ピンキー
06/12/19 00:20:16 WTbVzvxp
>>302
楽しみにしてます(*´д`)

>>303
雑談するならコテ外せと(ry
これで何回目だろうな?(´・ω・)

305:名無しさん@ピンキー
06/12/19 00:25:11 46mx8cUl
>>303
まとめサイト作れば?と言いたい

306:名無しさん@ピンキー
06/12/19 01:19:38 XarY1b9j
専ブラだとクッキー残るからな
GORRE氏も面倒だろうが頑張れ

307:名無しさん@ピンキー
06/12/19 03:55:37 taYCUc2J
おまいら乙
ハセヲ×カール投下
バトルオンリー


308:名無しさん@ピンキー
06/12/19 03:56:49 taYCUc2J

俺達がセグと出会ってから8日目。
それまで騒がしくもそれなりに楽しかった俺達の日常は一変した。
世界の終わりってのは案外と呆気なく来るもんなんだな……ってくらい、それは突然に。

「あわわわ! シッ、シラバスゥ~!」
「ていっ! やぁっ! ガスパー、クーンさん達の所までもう少しだから頑張って!」

闇に覆われたタウン、グラフィック崩壊、街中で徘徊を始めるバグモンスター。
まるで地獄の釜の蓋を開けたかのように、次々とカオスゲートから湧き出てきた奴らはプレイヤー達を襲う。
レベルの高ぇ奴は勇猛に、レベルの低い奴は恐怖に足を竦ませながら、それを迎え撃つだけ。
選択肢は迎撃のみ。逃げることは許されねぇ。

「何なんだコイツら……しつっこいなぁ!」
「揺光さん、うしろうしろ!」
「おっと! ナイス、アトリ!」

街中を埋め尽くさんばかりに行軍する化け物の群れ。
地獄にでも迷い込んだみてぇな気分……修羅場は幾つか潜ってきちゃいるが、今回は少しヤバイ。
アリーナバトルならともかく、街中での戦闘なんて誰も経験したことねーだろ?
しかも、敵の数がハンパねぇと来てる。

「楓。状況はどうなってますか?」
「現在、月の樹とケストレル、CC社が連携して各タウン内のモンスター殲滅に当たっています。
 ですが状況は圧倒的にこちらが不利のようです。我々の@ホーム陥落も時間の問題かと……欅様?」
「うーん。またハセヲさんに頼らなきゃ、ってコトになりそうだなぁ」

モンスターの数は際限ない。
でも戦うしかない。何故逃げない? 
逃げれねぇからだ。

「AIDAサーバーの時と同じだね……。ログアウト出来なくなっている……“彼女”も、怯えているみたいだ……」
「また直接《The World》を見るハメになるなんてなぁ……ったく、これで合コンがパーだ!」

かつて碑文使いだった連中は一箇所に留まらず、
各タウン(マク・アヌ、ルミナ・クロス、ドル・ドナ、ブレグ・エポナ)に分散して交戦中。
中でも一番の激戦区はここ、ブレグ・エポナだ。
奴らは……何かを狙って、このタウンに押し寄せている……そんな気がする。

「秘奥義・重装甲破ッ!」
「環伐乱絶閃!」

カナードのホーム周辺は完全に包囲されていた。
俺とカールの2人で群がる化け物どもを何とか食い止めちゃいるが、さすがにキリがねぇ。
もう1人、誰か援軍が欲しいところだが……奴らは泣き言を言ってる暇も与えちゃくれない。
これは……何かとんでもねーことが起こってるんじゃないだろうか?
ただのシステムトラブルとは思えねぇ、何か、とてつもない悪意みたいなものをビリビリ感じる。
AIDAサーバーなんか比較にならねぇ程の、とんでもない何かの悪意を。

「やれやれだぜ……倒しても倒しても出てきやがる!」
「ばみょん! ハセヲ、回り込まれないように!」
「んなこと言ったってよ!」

戦力に差がありすぎんだよ! いくら俺達がレベルカンストでも、さすがにこの数の相手は無理だ。
けど、このままじゃここを拠点に戦うのが精一杯で他のPCのヘルプにまでは廻れない。
多分、化け物どもにやられちまったPC達は……チッ。今は、ここを切り抜けねぇと話にならねぇ!


309:名無しさん@ピンキー
06/12/19 03:58:24 taYCUc2J

『ハセヲ、聞こえるかしら』
「! パイか!?」
『敵の本拠地がやっと割り出せたわ。
 奴らは【Δ 輪廻する 煉獄の 祭壇】から送り込まれている可能性が高いみたい』

ジリ貧状態の今、パイからの通信は吉報だった。
守るだけが能じゃねぇ、こっちから攻めねぇと永久にこの戦いは終わりそうもねーからだ。
けど、Δサーバー……マク・アヌまで移動するっつーことは……カオスゲートまで行く必要があるってこった。
こいつらを退けて、だぞ?

『8年前、かつてドットハッカーズ……勇者のパーティが最後の戦いに臨んだ場所よ。
 ロストグラウンド化しているから、カールのスケィスもそこなら使用可能なはず。
 私も今から合流す……きゃっ!? ザザッ、ザ――――――――――ッ!』 
「パイッ!? おいっ、返事しろ! パイッ!!!」
「CC社が落ちたか……サーバーを乗っ取られた時点で負けも同然だったんだろうけどね」

……一刻の猶予もねぇって感じになってきやがった。
最悪の場合、もし俺達までやられちまったらどうなる?
誰がこの世界を救う? てか、救えるのか? この絶望的な状況で?
いくら竜賢宮の宮皇っつたって、一介の工房の俺が? 無理だろ、どう考えても。

「ハセヲ、今はオバサンを信じて進むしかない。
 何とかカオスゲートまで行って、マク・アヌ経由でそのエリアまで行くんだ」
「行くって……カール……お前、怖くねぇのか……?」
「怖いよ。でも、きみが居るから大丈夫」

相当に修羅場慣れしている、そんなカールの笑顔。
俺とこうやって会話している間もカールは攻撃の手を休めることなく、
モンスターの大群と対峙、薙ぎ払いながら活路を見出そうとしている。
カールの揺ぎ無い闘争本能は、こんな状況においても健在だった。
……だよなぁ。怖がってちゃ、いつまで経っても、前には進めねぇ!

「ハセヲ。きみが【Δ 輪廻する 煉獄の 祭壇】に行け。ここはあたしが食い止めるから」
「!? 俺はもう憑神が使えねぇぞ、お前が行かなきゃ意味ないだろうが!」
「あたしは……ここでセグを守らなくちゃいけない。娘を置いて逃げ出す母親が何処の世界にいる?」
「けどよ!」
「憑神は……スケィスは、きみに譲ろう」


【第一相スケィスR:1のデータがインストールされました】


「!」
「あたしの大事なモノだけど……ハセヲにあげるよ」

戦禍の最中、俺の胸にカールの指先が軽く触れると何かが俺の中に流れ込んでくる。
久しく忘れていた感覚……枯渇していた俺の中のモルガナ因子が瞬時に沸騰するみてぇな……!
居る。俺はここに居る。アイツも、俺の傍に居るのが理解る!

「行って。ハセヲ」
「……わーった。ただし、俺もお前に渡すもんがある」

俺の手中に顕現した大鎌、それを俺は無言のまま地面に突き刺す。
カールはここに残ってセグを守ると宣言した以上、てこでも動かないだろう。
だから、俺は振り返らずにカオスゲート目掛けて駆け出した。
群がり纏わりつく化け物どもを蹴散らしながら、逃げるためではなく、勝ちに行くために。


310:名無しさん@ピンキー
06/12/19 04:00:59 taYCUc2J

「ママ……。パパは……何処に行っちゃったの……?」
「悪者退治。セグ、危ないからホームの中に隠れてな」
「うん……」

ハセヲを送り出せてカールは満足していた。
傍から見れば、どう考えても分の悪い賭けにしか思えない。
だがカールはハセヲの強さを、可能性を信じている。だから希望を彼に託した。

「ロストウエポン……万死ヲ刻ム影。
 スケィス無しの状態のあたしでも使いこなせるかどうか……」

去り際にハセヲが地面に突き立てた大鎌・万死ヲ刻ム影。
第一相の碑文使い専用のロストウエポンである死ヲ刻ム影がウイルスコアを貪り喰い、
成長した結果がこの武器である。
以前のスケィスを所持していたカールならば適応もできただろう、
しかし先程ハセヲにスケィスを譲渡してしまった今、カールに適正があるのか?

「ふむ……はぁっ!」

躊躇している場合ではない。
とっさに地面から万死ヲ刻ム影を引き抜き、引き抜いた反動を利用しながら敵を薙ぐ。
……使えないこともなさそうだ。けれど、やはり100%の力を引き出すには至らない。
だが先程までカールが使用していた大鎌に比べれば、その破壊力は歴然。
この武器をもっと上手く使いこなせたら、もう少し時間が稼げるのに。

「……アレやるか。まだ不完全だけど」

さながらタウンは阿鼻叫喚の地獄絵図。
あちこちからプレイヤーらの怒声や悲鳴が響き、かき消えていく。
モンスター達にPKされて意識を奪われ、未帰還者となってしまったのだろう。
ハセヲがこいつらを操っているボスを倒すまで、何とかここで粘らねばならない。セグのためにも。
女として、母親としての器を試される時であるとカールは知る。

「すぅ……はぁっ!!!」

迷いを振り切ったカールの叫びに呼応して、ブレグ・エポナの空気が震えた。
銀色の髪が、黒衣が揺れ、白い光に包まれながら粉雪の様に舞い散ってゆく。
それと同時に闇に覆われたタウンに一閃の眩い光が疾り、思わず化け物どもも目を背ける。
そして静寂。しかしカールを倒さんと、再び彼らが己は眼を開く。それが本能。
いや、或いは開かなかった方が良かったのかもしれない。光の中ではなく、闇の中で死ねたのだから。

「タルタルガに感謝しなきゃ……おかげで、あたしはまだ戦える」

ホームに押し寄せた闇の軍勢は視た、白雪の様な無垢なる白さを思わせる色の髪の少女を。
見様によっては限りなく白に近い銀。“らしさ”を残しながらも光に溶け込むかの如く、白を基調としたドレス。
だが何と言っても手足や髪留のアクセントに紅い帯があしらわれていることが顕著か。
両の腕が不釣合いな大鎌さえ握っていなければ、異国の聖人か姫君と見紛うばかりであるのに。
これは彼女の奥底に眠っていたモルガナ因子の具現、意志の強さ、負けられないという確固たる決意の顕現。

「Xthフォーム参上、かな?」

8年前、カールは女神を狙う邪な存在から女神を守ることができなかった。
子殺しを熱望する母親、そんな者が居てはいけない。否定したい。そんなのおかしい、と。
そして散るなら今度こそ母親らしく……そんなことを頭の片隅で考えながらカールは鎌を振るい、立ち向かっていった。


311:名無しさん@ピンキー
06/12/19 04:03:37 taYCUc2J
カールクリスマス仕様? エロマダー? 何のことです?
おやすみおまいら

312:名無しさん@ピンキー
06/12/19 04:08:10 ELA6Ubrq
こんな時間にGJ!! &おやすみw

313:名無しさん@ピンキー
06/12/19 20:20:28 eF/Nefqk
母は強し! 燃える展開だ! GJ!

314:名無しさん@ピンキー
06/12/19 23:04:34 s7GR5bss
なんかスゲェことになってきた!GJ!
カールかっけぇ

315:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:24:25 fqp+hEPZ
前誰かも言ってたが…カールをVol.3に出せ!
とにかくGJ!!

316:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:32:03 tpRj6z7c
刀剣とか大剣を使うキャラが飽和してるから1人削っても問題ないようにも…
カール出してくれたら泣く、毎度毎度GJ!

317:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:41:13 NNB/Jccg
カールいいなあ…GJ!

>>316
刀剣使いは飽和してるが大剣使いは人材不足だw


318:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:52:40 FjyoaGKT
氏のカールは魅力的だが実際のZEROのカールは
正直ハセヲと違ってタチの悪いDQNだからな…
流石に今は更正してると思いたいがどうなんだろうか

319:名無しさん@ピンキー
06/12/20 02:20:09 hKMjoWdM
カールは外伝キャラの割には優遇されてると思う。
付録のサントラにテーマ曲収録されてたり全員応募のテレカに描き下ろしで載ってたり。

320:GORRE
06/12/20 15:52:01 oUOgSK6I
>>282の続きを

智香の申し出は却下され、時間が近づいたので一同は空港へとやってきた。
「まだもうしばらく時間がありそうだし、ちょっとぶらぶらしてみるか」
「そうだね」
そんなわけで、登場時刻まで空港内をぶらぶらしていた。
「東京の空港はこんなに広いんか」
「まあな」
「あ、そろそろ時間だ」
智香は腕時計を見た。
「そっか、じゃあ、搭乗口に行こうぜ」
で、搭乗口へとやってきた。
「あーあ、もうお別れかあ」
智香はつまらなさそうに言った。
「何言ってんだよ。また来ればいいじゃねえか」
「そうだね、亮が来るって言う手もあるし」
「何~」
「う~~~~~」
「おねえちゃん?」
朔はそんな二人のやり取りに焼きもちを焼いていた。
「ま、楽しかったよ。色々とネタも手に入ったし」
「ネタ? ネタって何だ!」
「知らない方があんたのためになるって事もあるよ」
「待て、気になるぞ! 何だ!」
(あれのことかな…)
望は昨夜の出来事を思い出していた。
(あれか…)
朔も思い出していた。
(思い出したら、なんかごっつう恥ずかしいなぁ…勢いとは言え、あんな状態で告ってもうたし…)
思い出したらなんだか恥ずかしくなった。朔は自分の顔が赤くなっている事に気づいたのか、慌てて手を振ってそれを隠そうとした。
「何してんだ、朔」
「何でも無いわ!」
「なら、いいんだが」
それに気づいたのか、智香は亮を自分のほうに向かせると、キスをした。
「!」
「あ~~~~~!」
「あ」
一番驚いたのは亮だった。
「い、いきなり何すんだよ。初めてだったんだぞ!」
「あたしだってそうだよ」
智香は顔を赤くしていた。

321:GORRE
06/12/20 16:04:46 oUOgSK6I
「う~~~~~~~~~~~~~!」
そんな二人を見て、朔はメラメラと嫉妬の炎を燃え滾らせ、ワナワナと震えていた。
智香はそんな朔をちらりと見ると、朔を挑発するかのように、言った。
「なんなら、今度はちゃんとしてみる?」
「駄目えええええええええええええええ!」
そんな二人の間に朔は割ってはいると、亮を引き剥がし、その腕に抱きついた。
「あんまりハセヲに近寄らんといてえ! いくら智香ねえと言えども、それは絶対に駄目や!」
「さ、朔?」
朔の突然の行動に、亮は驚いた。

と、ここまで書いてひとまず終了。 続きは夜にでも。時間があれば書きますんで。

322:名無しさん@ピンキー
06/12/20 20:27:05 izvl1q9G
ウボアアアア!生殺しか!!
GJ!!

323:名無しさん@ピンキー
06/12/20 23:26:05 tpRj6z7c
朔のデレっぷりが凄まじくなってきたああああああああ
GJ!

324:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/21 00:47:27 UAA6LRSJ
ちょっと遅れました。
今に始まった話ではありませんが、今回はちょっと暗め。

325:花火まであと少し 10
06/12/21 00:48:21 UAA6LRSJ
線路と車輪が軋み、振動を反響させながら地下鉄が走る。
地下鉄都営新宿線の車内で、亮はポケットから携帯電話を取り出した。
画面に映った時間は午前十一時四十三分。
今九段下を過ぎたあたりだから、志乃との約束には十五分近い余裕を持って間に合う事になる。
しかし、亮の心は梅雨時の日本列島のように沈んでいた。
溜息を付く代わりに吊革を握る手に力を込める。
折角のデートだというのに、昨日志乃が気を遣ってくれたというのに。
それもこれも、昨日あんな事があったせいだ。

326:花火まであと少し 11
06/12/21 00:49:45 UAA6LRSJ
「おまえなぁ……恥ずかしいから大声出さないでくれよ」
「ごめんごめん。久しぶりだったからさー」
タビーはそういって、招き猫のように片手を上げて手首を曲げた。
ハセヲは苦々しい気分でそのアクションを見る。
周囲のチャットに耳を澄ますと、何人かのPCが二人の事を喋りはじめていた。
以前は余り意識しなかったが、二人がかつて所属していた黄昏の旅団というのはこのゲームの中ではかなり有名な存在だった。
そんな現状は、以前目立ったおかげで散々な目にあったハセヲにとっては余り歓迎するべきことではない。
まあ、今はタウンなのですぐにどうこうということはないだろうが。
「で、何だよ。もしかして挨拶する為だけに俺を呼び止めたのか?」
「別にそれでも良いんだけど……そうだ、ハセヲ。よかったらこれからどっか行かない?」
早めにログインして志乃からのメールをチェックしたい為か、ハセヲの言葉は自然と少し荒くなる。
しかし、タビーはそれを気した様子もなく言った。
基本的に根暗の亮は、彼女のこういう明るさが時々羨ましくなる。
もちろん、タビーにもそれなりの影はあるのだろうが。
「わりぃ、今日はもう寝ないといけないんだ。お袋が門限に煩くってなw」
少しも悪いと思っていない調子で、ハセヲは答える。
そう、自分はこれから志乃のメールを待たなければいけないのだ。
それ以外にも明日着ていく服の選定、交通案内の調査などやらなければならない事は少なくない。
野良猫に構っている余裕などないのである。

327:花火まであと少し 12
06/12/21 00:50:17 UAA6LRSJ
「そっかー……ねー、もしかして志乃さんとデート?」
「いっ!?」
タビーの言葉に、思わず亮が声にならない叫びを漏らした。
何で、と言いそうになるのを寸前で思い留まったが、うろたえてしまった時点でもうアウトだろう。
「あー、瓢箪から駒が出ちゃった……いやー、ハセヲも隅には置けないね」
それを証明するように、タビーはにやにや笑いながらハセヲに体を寄せてきた。
「うーん、やっぱりあたしは正しかった。だからハセヲ志乃さんの目見れなかったんだね」
指でハセヲの二の腕のあたりをつつきながら、タビーが耳元で囁く。
ここまで来たら誤魔化すことも出来ないので、ハセヲは思い切って開き直る事にした。
「ああそうだよ。デートだよ。だからお前と遊んでる暇はないんだ」
ハセヲはそういってそっぽを向いた。
それを聞いたタビーは何を思ってか、無言で体を離す。
……少し言い過ぎたか?
俯いた猫娘の姿を横目に、ハセヲは舌打ちした。
苦手ではあったが、この少女(多分)の事は決して嫌いではない。
取り立てて好きでもなかったが、知り合いを傷つけて平気なほど亮は無神経ではなかった。
そうしてハセヲがとるべき態度を決めかねていると、タビーが唐突に口を開いた。
「……そんなに志乃さんの傍にいたい?」
「は?」
意味がわからない。
確かに、自分は志乃の傍にいたい。
だが、それは―好きなら当たり前ではないだろうか。
大体、その言葉はこっちの台詞だ。
旅団にいた頃から、タビーはずいぶん志乃に懐いていた。
時々それで都合がある志乃を困らせた事もあった。
苛立ちながらハセヲがそう言おうとした瞬間。
「でも、ハセヲにオーヴァンの代わりは無理だよ」
タビーが小さく、そう言った。
「お前、それどういう」
「じゃあね、ハセヲ」
反射的にハセヲが激昂した時、タビーの姿は既に消えていた。

328:花火まであと少し 13
06/12/21 00:51:28 UAA6LRSJ
「くそ……」
昨夜の会話を反芻して、亮は片手の携帯電話に力を込めた。
ここが自分の部屋だったら、壁を殴っていただろう。
オーヴァンの代わり、だと。
確かに姿を消した黄昏の旅団のギルドマスター、オーヴァンと志乃は親密な関係だった。
リアルでも面識があったらしいし、彼の失踪による志乃が酷く沈んでいるのも事実だ。
しかし、それは亮と志乃が付き合いだした事とは関係ない。
他でもない、志乃本人がそう言っていた。
だが―
亮は目を閉じた。
今の関係が、オーヴァンの失踪なしには成り立たないのは事実だった。
彼がいたら、二人の距離がここまで近づく事は無かっただろう。
(―違う!)
首を振って、亮はその考えを打ち消した。
それはあくまで時間の問題に過ぎない。
オーヴァンがいても、自分はいつか志乃に想いを告げていただろうし、彼女はきっとそれに応えてくれていた。
それに、自分と志乃は既に一度体を重ねている。
仮にオーヴァンの事で彼女の心が弱っていたとしても、そんな理由で彼女は好きでもない男に体を許したりはしないだろう。
志乃はそんなに安い女ではない。
それでも。
(なのに、どうして俺はこんなに不安になるんだ)
目を開いて、列車の無機質な天井を見上げる。
そうしないと、亮は泣いてしまいそうだった。

329:花火まであと少し 14
06/12/21 00:52:12 UAA6LRSJ
そんな少年の感傷に、やけに気の抜けた停車案内が水を差した。
(ん?浜町?)
聞きなれない単語に、亮が思わず視線を動かす。
神保町は九段下の次の停車駅だったはずだ。
と言う事は……
真っ青になって、亮は携帯の時刻表示を見た。
時刻は、十一時五十六分になっていた。

330:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/21 00:52:44 UAA6LRSJ
以上。次回、12月23日(土)。

331:名無しさん@ピンキー
06/12/21 01:49:19 2IqXiQLn
>>330
渡英真珠苦戦、乙! GJ!

332:GORRE
06/12/23 00:51:04 i4eCifoo
>>321の続き。オリキャラあり。

亮の腕に抱きついた朔は、智香にハセヲを盗られまいと、ぎゅっとその腕に抱きついた。
「おい、朔?」
何故朔が抱きついてきたのか理解できない亮は、一人訳が分からなかった。
「ハセヲはウチのもんなんや! ぜえったいに他の女には渡さへん! 智香姐かて同様や!」
「え!?」
亮は一人いまいち状況が理解できていなかった。
「こりゃ手強いなあ。あたしだって亮の事を好きだし、好きな気持ちじゃ負けてないよ」
「せやけど、駄目なんやぁ! ハセヲはウチのもんやあ!」
朔は駄々をこねた。
「でも、あたしは亮から告白されてるし、あたしのほうが一歩勝ってるよ」
「してねえだろ」
「忍冬くれたじゃん」
「あれは、そんなつもりじゃあ」
「う~~~~~~!」
朔は腕に抱きつく力を強めた。
「いてえ! 何でそんなに強くするんだよ」
「ハセヲが他の女といちゃついとるからやぁ!」
「いちゃついてねえだろ!」
そんな光景を、黒いオーラ丸出しで見ている者がいた。搭乗口にいる女性スタッフである。
「あの~、お客様」
「あ、はい」
「お乗りになるのかならないのか、はっきりしやがれこんちくしょう」
「え?」
「もうすぐ飛行機の出発のお時間なのですが、さっさと乗るのかののらねえのかはっきりしやがって下さい」
満面の笑みを智香達に見せながら言った。
「こちとら生まれて28年間彼氏もいないって言うのに、目の前で彼氏争奪戦見せられたらたまったもんじゃねえってもんですよ。
おまけに、夏休みで今日はオフの日なのに、急に来られない娘がいるから代理で来る羽目になるし」
「えーっと…」
「それなのに何なんですか? これ見よがしに私に彼氏争奪戦を見せ付けて。いじめですか? 新手の嫌がらせですか? 私があなたに何かしましたか?」
「え、いや…その」
「いいんですよ別に。あなた方が彼氏争奪戦を繰り広げようが構いませんし。でも、私の前で繰り広げるのは止めて頂きたいものですね。
さっきから見てると、無性に腹が立って腹が立って仕方が無いわけなんですよこんちくしょう」
もはや何て言ったらいいのか智香達は分からなかったが、さっさと飛行機に乗ったほうが良さそうなことだけは分かった。


333:GORRE
06/12/23 01:01:46 i4eCifoo
「…えっと……じゃあ、あたし行くね。亮」
「ああ」
「じゃあね、ちかねえちゃん」
「またね、望」
「気いつけてな」
「ありがとう、朔。負けないよ」
「ウチ勝て負けへん」
「早く乗れやこんちくしょう!」
「じゃあ、またね~」
智香はゲートの中に消えていった。
「いっちゃったね」
「何だったんだ一体…」
亮は訳が分からなかった。

飛行機が飛び立つのを見届けると、亮達は空港を後にした。
「さて、お前達は深夜バスだろ? どっか行きたいところあるか?」
「ウチあれ行きたいねん」
「ん?」
「呪○」
「…ホラーか…」
「不満か?」
「不満じゃねえけど」
「なら、ええやないか」
「望はどうだ?」
「ボクはあんまりすきじゃないんだけど、がんばる」
望は小さくガッツポーズをとった。
「そ、そうか…なら、決まりだな。目的地は、銀座だ」
一路銀座へ。亮達は映画館へ向かった。

334:GORRE
06/12/23 01:03:32 i4eCifoo
とりあえずここまで。続きはまた思いついたときにでも。

335:名無しさん@ピンキー
06/12/23 02:13:37 a0V/sJbl
GJ!! もう,その才能を奪ってやりたい!!
 ・・・・・・次回を待つとするか・・・・・

336:名無しさん@ピンキー
06/12/23 13:36:40 35hHFStT
>>334
できればその思いついた時にまとめて投下してくれないか
ひらめいた時にひらめいた分だけ投下→思いつかねー、書けねーの書き込み→エンドレス

ってのはなあ…

337:名無しさん@ピンキー
06/12/24 00:36:21 FJtEA0+X
>>336
そう?このスレがもっと賑わってるならそれもわかるけど
今の状態ではちょうどいいペース&量だと思うけどな。

338:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/24 01:27:57 z7xTQSsv
流石に年末は忙しい……
予定では今頃は次のネタに取りかかっているはずだったのですが。
では、今回の分。

339:花火まであと少し 15
06/12/24 01:28:31 z7xTQSsv
結局、待ち合わせの場所―神保町の地下鉄A6出口に辿り着いたのは正午を十五分以上過ぎてからだった。
慌てて階段を駆け上がり地上に出ると、すぐに志乃の声が聞こえた。
「おそーい」
「ご、ごめん!」
慌てて振り向くと、一週間ぶりになるリアルの志乃の姿があった。
明るい夏の日の中で、彼女はシンプルな黒いワンピースの上に
白い半袖のジャケットを着込み、大きなピンク色のバックを抱えている。
初夏という季節をそのまま衣装にしたような、彼女らしいいでたちだったが、
今の亮にはそれに見惚れる余裕はなかった。
「電車、乗り過ごしちまって……」
「遅れそうなんだったら連絡くらい入れてよ。心配したじゃない」
そういって、志乃は亮を睨んだまま唇を尖らせた。
まさか、悩み始めて気がついたら浜街に着いていましたとは言えない。
馬鹿の考え休むに似たりとはよく言ったものである。
俯いたまま黙った亮を見て、志乃は溜息をついた。
「……まあ、いいよ。待たされるのはThe Worldで慣れちゃってるしね」
「ほんとにごめん!お詫びになるなら何でもするから」
「そこまで言わなくても……そうだ、じゃあ今日買う本持ってもらえる?」
「ああ、そんなことでよければ」
ようやく穏やかになった志乃の言葉に、亮は一も二もなく頷いた。
本など余りかさばるものではない。
むしろ、その程度でいいのだろうか。
「じゃあ、行こうか」
そう思いながら、亮は促す志乃と並んで歩き出した。

340:花火まであと少し 16
06/12/24 01:29:28 z7xTQSsv
そう、本などかさばるものでもなければ、重くもない。
それが亮の紙の書籍に対する認識だった。
しかし、それは一時間もしないうちに覆された。
(お、重い……)
いくつかの書店を回るうちに志乃が買い込んだ本は相当の量だった。
神保町にはいくつかの大型書店に加え、様々な分野に特化した小規模な古書店が林立している。
それが神保町を日本が誇る「本の町」に成さしめているわけであるが、そこで扱われているのはかなり専門的なものだ。
そして、その手の専門書はほぼ例外なく、分厚いハードカバー―つまり、重いのである。
元々、亮はそれほど本を読むタイプではない。
自宅の本棚にあるのはいくつかの漫画のシリーズぐらいで、活字は現代文の教科書を除けば図書館で文庫本をたまに借りる程度だ。
だから、この手の本の存在を知ってはいても実感してはいなかったのである。
志乃が買い込んだ専門書はハロルド・ヒューイック、番匠屋淳という著者のものが合わせて三冊だったが、
いずれも厚さは三センチを超えている。

341:花火まであと少し 17
06/12/24 01:32:06 z7xTQSsv
それに加え、志乃は大型書店でいくつかの新書版の小説(ノベルス、というらしい)を買った。
その中には亮が名前だけは聞いた事のある直木賞作家の新刊が含まれていた。
百鬼だったか、今昔徒然だったか、とにかくそんな古典の授業でしか聞いた事のないような題の小説だ。
これがとにかく分厚い。
なぜ分冊しないのか理解に苦しむが、志乃曰に言わせるとノベルスでは珍しい事ではないらしい。
それどころか、彼女は本を持つ亮に「今回は軽いと思うよ。短編集だからね」とまで言い放っている。
これが短編集?
冗談ではない。何本収録すればこんな厚さになるのだろう。
それともこの作家の尺度からすれば普通の長編が短編になるのだろうか。
それに加え、志乃はジャンルを問わず大量の本や雑誌を買い込んだ。
水原遥「彼岸花と連星」、「エマ・ウィーラントの謎」、
「月刊ネットワークミステリー」の2010年と13年のバックナンバー……
彼女が看護系の大学生なのは知っていたが、いずれもそのイメージとは合致しないものばかりである。
いわゆる書痴、ビブリオマニアというやつなのだろうか。
意外な一面を見た気がした。
だからといって、両腕にかかる負担が減るわけではないが。
「大丈夫?少し持とうか?」
「い、いや、いいよ。これぐらい」
おかげで少し遅れがちな亮を、志乃が振り返る。
ありがたい申し出ではあったが、ここで受けては面子が立たない。
「そう?ごめんね、久しぶりだから思わずはしゃいじゃって」
志乃はそういって、少しだけばつが悪そうに笑った。
それがひどく愛らしくて、亮の体に少しだけ力が戻る。
この表情が見れただけでも、本を持った甲斐があった。
「じゃあ、そろそろお昼にしようか。カレーでいいかな?」
「ああ」
亮が頷くのを見て、志乃は静かな古書街を再び歩き出した。

342:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/24 01:34:04 z7xTQSsv
以上。少しネタを仕込みすぎたかな・・・・・
次回、12月28日(水)。

343:名無しさん@ピンキー
06/12/24 01:36:28 l4D/Gwo1
リアルタイム遭遇ktkr、GJ!
志乃は本に一月いくらかけるんだろうか、気になる

344:名無しさん@ピンキー
06/12/24 01:37:18 kRIEZ6nj
番匠屋淳GJ!

345:名無しさん@ピンキー
06/12/25 17:35:49 b0vsEZuU



346:名無しさん@ピンキー
06/12/26 01:48:50 Om/vMOiR
>>342
いつも楽しみにしてるGJ!!
ほんと見てる最中顔のにやけが止まんなくてヤバイわあ

347:名無しさん@ピンキー
06/12/27 00:15:54 6PCJfmJF
G.U作品の在る保管庫無いの?

348:名無しさん@ピンキー
06/12/27 00:41:46 TOzmkuKK
残念ながらないね

349:名無しさん@ピンキー
06/12/27 17:51:01 n5E0pcGJ
>>310
続きマダー

350:名無しさん@ピンキー
06/12/28 00:10:33 CNUxHSPY
>>349
ヒント:年末

351:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/28 10:49:23 18PET9wN
>>343
ざっと試算してみましたけど、この段階で二万近く行ってるはずなんですよね。
あまり無駄遣いせず、一気に使うタイプなのではないかと。

今見返したら、日付と曜日がずれてました。
正確には12月28日(木)ですね、すみません。

では、今回の分。

352:花火まであと少し 18
06/12/28 10:50:11 18PET9wN
志乃に連れられた店は、神保町の中ほどにあるビルの二階にあった。
亮はカレーと聞いてエキゾチックなアジア風の店を想像していたが、
店の内装はシックな洋風のインテリアで統一さたものだった。
メニューは確かにカレー中心だったが、喫茶店と言っても通りそうな佇まいである。
大学生と高校生のカップルが昼食をとっても違和感のない雰囲気である。
少し考えた末、亮はアサリカレーを中辛で注文した。
カレーは味に関してはどう作っても外れることのない万能メニューであるが、辛さに関してはふり幅が激しい。
これの何処が辛口なのやらと言いたくなるくらいマイルドな店もあれば、
絶対中辛じゃないだろというぐらいピーキーに味付けされているカレーも存在する。
この店がどちらの傾向を強く持つかはわからないので、中辛という選択は必然だった。
ちなみに具にアサリを選んだのは、単なる趣味である。
年頃の少年らしく肉は嫌いではなかったが、それより亮は魚貝類の方が好きだった。
向かいに座る志乃は、チーズカレーの中辛。
別段理由はないが、なんとなく志乃らしいチョイスのような気がした。
「ふぅ……」
注文を取り終え店員が去ると、亮は小さく息を吐いた。
ようやく人心地ついた気がした。
まさか本でこんな目にあうとは。
元をただせば自分に原因があることなので文句は言わないが、それで受けたダメージは結構なものだった。
普段亮が余り重いものを持たないと言うこともあったが、それを差し引いても志乃が買い込んだ本は相当の重量である。
それを証明するかのように、亮の掌は真っ赤に染まっていた。
「ほんとにごめんね、重い物ばっかり買い込んじゃって」
そんな亮の思いを見透かしたかのように、志乃が少し伏目がちに口を開いた。
「いいよ、別に……でも、こんなの何に使うの?志乃って、看護系だろ」
気を遣われるのも嫌だったので、亮は話題を少しずらした。
学術書はともかく、ネット関係のオカルト雑誌などが志乃と縁があるようには思えない。
まさか、そういう趣味なのだろうか。

353:パック ◆JuT3jsxZbo
06/12/28 10:52:04 18PET9wN
今回は中継ぎ。
本当はもうちょっと先まで行くつもりでしたが、間に合いませんでした。
重ね重ね申し訳ない。次回は都合がつき次第、明日か明後日に。

354:花火まであと少し 19
06/12/28 10:56:58 18PET9wN
「うーん、まあ旅団の活動の延長って言うか……個人的な趣味、って言うのが近いかな」
「旅団?」
「まあ、その内説明するよ。まだちゃんと纏まってる訳じゃないから」
「ふーん……」
彼女にしては珍しい曖昧な説明に、亮は少しだけ不満になった。
旅団と言うキーワードも引っかかった。
昨日のタビーの言葉は志乃と歩いているうちに大分気にならなくなったが、
それでもこうしていざ旅団と言う語が出されると少しだけ地下鉄での欝気分が蘇るような気がした。
亮は無言のまま唇を尖らせたが、志乃はそんな年下の恋人の姿を微笑みながら見ていた。
すぐにその視線には気づいたが、口は開かなかった。
志乃の曖昧な態度が気に入らなかったし、彼女にオカルト趣味があったこともちょっとショックだった。
そう意識して、亮は小さく息を吐いた。
こんな風に考えるのも、空腹で頭が回っていない証拠だ。
とにかくまずはカレーを食べて気を落ち着かせよう。
亮がそう気を取り直した時、丁度店員がテーブルに飲み物と小さな皿を運んできた。
飲み物は注文どおり、志乃にアイスコーヒー、亮には紅茶が運ばれてきたが、隣の皿は一体何なのか。
恐る恐る覗き込んでみると、そこには大粒のふかしたジャガイモが皮付きでそのまま鎮座していた。
一瞬、亮は目の前が真っ暗になった。
なぜジャガイモ?俺はカレーを頼んだはずだ。
注文したのはアサリカレーだし、メニューにはジャガイモなんて一文字も書いていなかった。
だとすると、これは付け合わせなのだろうか。
そういえば、ハンバーガーでも大抵付け合せにポテトがついてくる。
しかしあれはあくまでフライドポテトと言う形で食べ易くされているし、ちゃんとメニューの中で独立している。
「どうしたの、ハセヲ?」
囁くような志乃の声に、目をぐるぐるさせてジャガイモを凝視していた亮がようやく我に返る。
「いきなりジャガイモすごい視線で見ちゃって。もしかして苦手だった?」
「い、いや、そういうわけじゃねぇけど……何でこんなの出てくるの?」
「さぁ……このお店何度か行ってるんだけど、いつも出てくるんだよね。前菜兼舌休め、ってかんじじゃないかな」
そういって、志乃は細くしなやかな首をかしげた。
こういう仕草が嫌味にならず、いちいち様になるのは一種の才能だろう。
「ふーん、そうなんだ。じゃあ、遠慮なく頂くか」
一瞬頬に差した赤みを誤魔化すように、亮はジャガイモを掴んだ。
「あんまり食べ過ぎちゃうとカレーが入らなくなっちゃうからね、気をつけて」
美しい管弦楽のようにも思える志乃の声を聞きながら、亮はとりあえずジャガイモにスプーンを指した。


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