07/06/16 15:36:23 LmQcRzCS
>>533に触発された
「弱虫……」
やりきれない思いを吐露しそうになるのを堪えて今日も機能を停止する。
私は業務サポートタイプのアンドロイド。
私の存在意義は主人の業務効率を上げること。
しかし、長く付き合っていれば主人を男性と意識してしまうというもの。
アンドロイドに感情を持たせるプログラムは いまだに世論でも賛否を問われているというのに。
私の創造主は 何を考えていたのだろうか。
否、本当は感情なんて無かった……。
『業務推進の為』
その言葉に託けてAIのヴァージョンアップを繰り返したのは、わたしだった。
いかがわしいサードパーティのプログラムまでインストールして、
深夜に再起動して密かにパーツを工作し、自ら躯体に組み込んだのも、わたしだった。
「ご主人様……」
機能テストと称して独り遊びに耽ったことは消却されるまで明かすことの出来ない秘密だ。
男性は美しい秘書にあらぬ欲望を抱くもの。
メディアでは そんな言葉が蔓延しているが、私のご主人様にはあてはまらないらしい。
「押し倒してくれてもいいじゃないですか」
決して口には出せない言葉を今日も飲み込む。
ああ、今日も時間がきた……。
ねえ、ご主人様。 貴方の理性を壊すには どうしたらいいのでしょうね?
愕然とわたしのトランスフォームを見つめるご主人に、今日の最後の挨拶をする。
「おやすみなさい」
明日はメイクを変えてみようかしら……。