07/01/09 10:33:31 irwRqGf5
言い淀む私の事をどう思ったのかは分からないけれど、門田先生は一度大きな咳をすると、深々と溜め息を吐いた。
「……んな顔されっと、期待すんだけど」
…………はい?
─期待……する?
言われた言葉を脳裏で反芻。耳の奥が張り詰めたような錯覚が、私の思考回路を奪う。
顔を上げると不意に私の体に強い圧力が掛った。
目に映るのは黒い髪と白い壁。
身体中を包むのは熱い何か。
抱き締められていると気付いたのは、後頭部に回された手が私の髪を優しく梳くのを感じたからだった。
「あんま心配されると、俺の事が好きなんじゃねぇかって思う訳。……まぁ、あながち間違いじゃねぇんだろうけど」
「え……あ、えぇ!?」
「うっさい」
私を抱き締めたまま、門田先生が小さく笑う。
動揺を丸出しにした私は彼の腕の中で目を丸くして、身動きも出来ない。
私の髪から首筋、耳の裏へと触れる門田先生の指が熱い。
「……勘違いなら謝るけど、チィちゃん、俺の事好きだろ」
熱い吐息が耳に掛る。
問掛けじゃない。
断定的な口調で告げられた言葉が頭の中を揺さぶる。
その声は少し震えていたけれど、それに気付いたのはかなりの時間が経ってからだった。