【友達≦】幼馴染み萌えスレ10章【<恋人】 at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ10章【<恋人】 - 暇つぶし2ch207:名無しさん@ピンキー
06/12/11 09:24:39 mtSaU+/o
GJ!
本編にwktk

208:名無しさん@ピンキー
06/12/13 19:26:28 psis4tbq
紗枝ちゃんどこー?

209:名無しさん@ピンキー
06/12/14 03:42:40 11OSMGPp
居酒屋にて。
「かんぱーい!」
「かんぱーい!じゃねぇわよ。せっかく可愛い幼馴染が帰ってきたんだから、洒落たバーの一件も予約しなさいよ」
「お前ごとき、場末の居酒屋で十分。ってか、今日連絡寄越して予約が取れるわけないだろ」
「あぁもう、それくらいの気くらい利かせないと、彼女に逃げられちゃうよ?」
「いねぇよ彼女なんて。大体、職場の同僚なんてオッチャン・オバチャンばっかだってのに、出会いなんかあるか」
「逃げられる以前の問題かぁ。ま、この調子じゃ、出会いがあってもねぇ」
「そういうお前はどうなんだよ。大学の連中と合コンとかやるんだろ?」
「もうダメダメ。何度か行ったけど、ロクな男いないし、狙いつけても、他の子に持ってかれちゃうし」
「どうせ、一番人気のイケメンとか狙ってんだろ?やめとけよ、ちょっと可愛くても、お前の性格じゃ話にならん」
「へぇー、言ってくれんじゃない。その話にならん奴をお嫁さんにするんだーって嬉しそうに言ってたのはどこのどなただったかしら?」
「いつの話だよ!その言い方からすると幼稚園の頃か?んな約束、無いようなもんだろ」
「……もし、今でも本気にしてるって言ったら?」
「本気にしてるような奴は合コンになんか行きませんー」
「ちっ、あんたも成長したわね」

「はぁー、彼女欲しいなぁ」
「はぁー、彼氏欲しいわねぇ」

【続きません】

210:名無しさん@ピンキー
06/12/14 09:36:42 yaRATAgN
いや、続くよ

211:名無しさん@ピンキー
06/12/14 11:50:45 8EQNYLR2
これは続く

212:名無しさん@ピンキー
06/12/14 20:40:32 FG5DOKcp
と言うか続けてくれ

213:名無しさん@ピンキー
06/12/14 23:17:08 MYu3lWr2
「しゃぁねぇ、この際手近なところで妥協するか……(今更マジには言えないからな)」
「ちょっとぉ! 私にも選ぶ権利があるわよ……(とっくに選んでるけどね)」

214:名無しさん@ピンキー
06/12/15 11:28:00 SaHchJN2
なにこの照れ屋さん共

215:名無しさん@ピンキー
06/12/15 20:14:40 VK4j62or
これは良い幼馴染ですね

216:名無しさん@ピンキー
06/12/16 04:15:41 Hq60GiI3
幼馴染みの先生達マダー?

217:名無しさん@ピンキー
06/12/16 04:44:12 o/Dhj2AA
このスレで言うのも何だが、ラブるばかりが幼馴染じゃないと思うんだ。
我々は、恋愛対象外の魅力と言う奴を、今一度見直すべきではないか?

218:名無しさん@ピンキー
06/12/16 08:54:57 fi8e3tAV
>>280
こういう関係マジで(・∀・)イイ!!

激しく続き求む!?

219:名無しさん@ピンキー
06/12/16 16:06:57 twDT2oXy
288さんの意見、激しくわかる気がする。
例えばギャルゲ・エロゲにおいて、非攻略キャラほど魅力を感じたこと
がないだろうか。
ヒロインの親友ポジションのため攻略不能。
だが、選ぶならヒロインよりもその娘を‥‥というようなことが。

220:名無しさん@ピンキー
06/12/16 16:41:09 xSIapLX+
あ~、付かず離れずの関係が個人的にツボ

221:名無しさん@ピンキー
06/12/17 02:16:47 WrAE8R9p
だが実際作品をつくるとなると、ちと難しい気がするなぁ。

まぁ、個々人が書けそうな方で頑張ると。俺も双子の続きを頑張って書くよ。

222:現実逃避の名の元に
06/12/17 02:50:56 XKg678S9
一部ですが投下しようと思います。

223:現実逃避の名の元に
06/12/17 02:58:54 XKg678S9
「俺ってさ、かっこいいのか?」
「えっ?」
何の脈絡も無しに突然聞いてきたのは私の幼馴染みである加勢隆太郎。
そしてそれに対して動揺して立ち止まっているのが私、朝日瞳だ
「なあ俺ってかっこいい?」
私が立ち止まっているのに気付き振り向くながらもう一度同じ質問を繰り返してくる。
「な、何言ってんのよ。あんたなんかがかっこいいわけないじゃない」
早歩きで隆太郎に追い付きながらそう答える。
「やっぱり。俺もそう思うんだよ。」
そう言っていつもの笑顔を見せ、一人で納得して黙りこくってしまった
「ちょっ、ちょっと結局何なのよその質問。」
質問の意図が分からず、少し苛ついてしまう、それにちょっと嫌な予感がした
「いや、ちょっとな。」
そう言って言葉を濁す
「ちょっとって何なのよ、気になるじゃない。ちゃんと言いなさいよ。」
「んー、でもなあ。まあ瞳ならいいか。これは誰にも言うなよ。実はさ今日学校でラブレターをもらったんだよ。」
「えっ?」
その瞬間私の思考が停止する。




続く

224:現実逃避の名の元に
06/12/17 03:13:09 XKg678S9
「おい、瞳?大丈夫か?急に涙流したりして、なあ大丈夫か?」
オロオロする隆太郎。それを見て、少し平静を取り戻した私は慌てて涙を拭う
「な、何でも無いわよ。ちょっと目にゴミが入っただけよ」
「こすっただけでゴミ取れるか?何だったら目薬貸すぞ?」
「大丈夫って言ってるでしょ。それよりそのラブレターって誰からよ。」
「ん?確か五組の黒川さんって人からだったと思う。」
黒川さんって言えば、一年のころ同じクラスで仲良かったからよく知ってる。スタイル抜群で、性格も良くて誰に対しても分け隔てなく接する良い子だった。
それに私なんかとは比べ物にならないほど綺麗で整った顔立ちの子だった。
「それであんたはどうすんのよ、黒川さんと付き合うの?」
恐る恐る核心に近付く
「いやその子とは初対面だったんだよ。だからもしかしたらドッキリかもって思ってさ。」
それで自分の顔がかっこいいか聞いてきたって訳ね。こいつらしいわ、本当に。やっぱりちょっとズレてるわね。






今日の分はこれで終了です。

225:名無しさん@ピンキー
06/12/17 11:31:52 +R+3XcTU
wktk

226:名無しさん@ピンキー
06/12/17 11:51:37 +v5JnTna
wktk

227:現実逃避の名の元に
06/12/18 01:53:46 Et/tMV5g
昨日の続きを投下します

228:現実逃避の名の元に
06/12/18 01:59:36 Et/tMV5g
「瞳は確か黒川さんと一年のころ同じクラスだったよな?外見は見れば分かるんだけど内面は分からないじゃん、それで黒川さんってどんな人だった?」
黒川さんは冗談で告白するような人じゃない、きっと本気なんだろう。ここで私がそのことを言えばきっと隆太郎は黒川さんと付き合ってしまうだろう
隆太郎とは子供の頃からずっと一緒で、その頃からこいつの隣は決まって私、それは高校二年生になった今でも変わってしない。今更誰かに譲れるわけない
「黒川さんって見た目はああだけど本当はすっごい性格悪いの。裏では男女問わずみんなの悪口言ってるのよ、知ってた?」
「知らなかった、全然そんな風には見えなかったよ。見た目はあんなに綺麗なのに性格はそんなに悪いのかよ。」
隆太郎の顔は本当に驚いているようだった。
ごめんね、黒川さん。他のものは譲れてもこいつの、隆太郎の隣だけは絶対譲れない。
「でも黒川さんってめちゃくちゃ性格悪いんだな。」


229:現実逃避の名の元に
06/12/18 02:05:22 Et/tMV5g
ちょうど私の家に着いたとき、ふいに隆太郎がそう呟くのが聞こえた。
「どうして?」
私は家の前で立ち止まってそう聞き返した
隆太郎もそれに気付いて家の前で立ち止まる
「だってさ、俺と瞳って付き合い長いけど、瞳が人の悪口言うの初めて聞いたもん。それに瞳はどんなに嫌われてる奴でも良いところを見付けてたじゃん。そういうところ俺、好きなんだぜ。それじゃあ、また明日な。」
「えっ?」
そう言って隣にある自分の家に入って行く隆太郎。私はそれを本日三度目の間抜けな声でしか見送ることが出来なかった。
「おかえりなさい。あら、まあまあまた隆くんと何かあったの?」
家に帰るとお母さんがいつものように出迎えてきた。
「何にもないわよ」
「嘘。だって瞳ちゃん顔真っ赤よ。」
えっ?私は慌てて顔を触る。熱い。
「やっぱり何かあったのね。何があったの?お母さんが相談に乗ったげるわよ。」
「もうお母さんには関係ないでしょ、ほっといてよ」
私はお母さんを振りきって二階の自分の部屋に入る。そのままベッドに倒れこみ隆太郎の言葉を思い出す。
好き。隆太郎はLIKEの意味で使ったのだろうけど、それでもやっぱり幼馴染みから好きって言われるのは嬉しい。






230:現実逃避の名の元に
06/12/18 02:07:01 Et/tMV5g
今回はこれで終了です。今回、変な文字数ですみませんでした。

231:名無しさん@ピンキー
06/12/18 09:13:44 cxymUa2z
修羅場のヨカーン

232:名無しさん@ピンキー
06/12/18 22:20:17 IY9pmS57
続き投下のヨカーン

233:Sunday
06/12/18 22:21:59 IY9pmS57



 嘘だ。うそだ。ウソダ。



 こんなの嘘だ、信じたくない。



 ずっと崇兄を信じようって決めたのに。その矢先なのに。



 なのに、こんなのない。



 ひどいよ、崇兄。



 あたしのこと、好きだって言ったくせに。



 あたしだって……崇兄のことだけが好きなのに。大好きなのに。



 まだまだ……いっぱい構って欲しいのに。



『しょーがねーだろ、あいつはお前と違って身持ちが堅いんだよ』
『だからって私のところ来る? あーあ、彼女さんかわいそ』
『呼んだのはお前だろ』
『来たのはそっちでしょ』
 だけど、目の前で交わされる会話は紛れもなく現実そのもので。逃げ出したい。今すぐ
背を向けて、反対方向へと走り去ってしまいたい。
 なのに身体はなおも彼らを追いかける。体内の臓器が全て機能を停止して冷え切って
しまったような、そんな冷たさを内に秘めたまま。脚が勝手に進んでいく。
『いいのー? 幼なじみさんと付き合ってるんでしょ? バレたら後が…』

『バレなきゃ問題無いだろ。それに俺が今ここにいんのは向こうに問題があるからだしな』



『問題って何?』



 身体、地面、空気。その瞬間、全てが凍てつく。空間がそこだけ切り取られ、隔離される。

『さ……紗枝…?』

 我慢できずに話に割り込んだわけではなかった。そういう次元の話じゃなかった。気が付けば
問いかけていた。問いかけられた彼は、恐る恐るこちらに振り向き、彼女の名前を掠れた声で呟く。

234:Sunday
06/12/18 22:23:41 IY9pmS57

『ねえ、どういうこと? 問題ってなに? 崇兄……今から何しようとしてたの?』

 目がかち合って、彼の瞳はより一層見開かれ揺れ動く。


 紛れもなく、彼は彼女の「彼」だった。


 今村崇之。物心ついた時にはもう「崇兄」という愛称で呼んでいて、ずっとずっと一緒に
育ってきたのだ。後姿だったとはいえ、今更見間違えるはずもなかった。

『この人……昔崇兄と付き合ってた人だよね? 答えてよ、何しようとしてたんだよ』

 そしてもちろん、崇之の隣にいる女性が誰であったかも紗枝はしっかりと覚えている。
忘れられるはずが無い。泣きそうになるのも、叫びたくなるのも、全てを耐えて、自分の
気持ちを必死に隠しながら、一度はこの二人を祝福したのだから。
『あーらら……お邪魔になりそうだから、私帰るね』
『ちょ、お前待てって…』


『崇兄!!』


 突然の大声に言葉を失う周りの人々の替わりに、その瞬間強く吹いた風に揺られ、並木の
葉っぱが擦れてざわりと騒ぎ立てる。

 修羅場の気配を感じ取り、面倒はゴメンだと退散しかける元カノを彼は呼び止めようと
したものの、それよりも大きな声で名を呼ばれ、起こしかけた行動を止めざるをえなかった。
その間に、彼女は雑踏の中へ姿を溶け込ませていってしまう。

『いや、これはその……偶然そこで出会って…』
 流石に口八丁で鳴らしたこの男も、今回の状況では舌と頭がちゃんと回ってくれない様子。
『……』
『別にさ! その、なんだ…えー、特別な意図があって会ったわけじゃ…』


『話、聞いてたんだよ。あたし』


『……』
『子守の気分だとか、バレなきゃ問題ないとか、こうしてこっそり会ってるのはあたしにも
問題があるとか…全部……聞いてたんだよ…?』
 大きかったのは最初の一言だけで、あとは俯いて、微かに震えて、消え入りそうな涙声で。
顔を手で覆わずに口をギュッと結んだ様子を見せるのは、せめてもの強がりで。
『…と、とりあえずここ人目があるから。な? ちょっと、違う場所で……』
『答えてよ…崇兄……』
 周りの目を気にして、崇之に手首を掴まれようとする。だけどそれを振り払う。そんな
ことよりも先に、答えが聞きたかった。


235:Sunday
06/12/18 22:25:52 IY9pmS57


 悲しいけど、信じたいから。辛いけど、嘘だと思いたいから。


 少しでも早く、この気持ちから解放されたいから。


『ほんとのこと、言って…?』


 だから、なりふりは構わなかった。


『……』
『……』
 
 崇之は大きく息を吐く。頭を掻いて発すべき、返すべき言葉を捜しているようだった。
その眉間に、これまで以上の強い皺が走る。それまでずっと逸らし続けていたこちらの
視線を、今になって初めて見返してくる。

 そして。


『その……悪かった』


『……!』


 刹那の後。



 カッコウの鳴き声に代わりに響いた、ひどく乾いた爆ぜる音。



 ひりつく頬を指先で撫でると、頭を抱えて天を仰ぐ。顔を顰めて舌を打つその様子は
彼女から見ても痛々しく映った。


 赤く染まっていく目でそんな自失した様子の彼を睨みつけると、紗枝は微かな嗚咽と共に、
地面を叩く足音を残して走り去ってしまう。甘く疼き続けた少し前の日々に嘲笑われたようで、
惨めな思いを噛み締める。
 背後から、足音は追いかけてこない。それが余計に悲しくて、視界はただただ歪むばかりだった。
 わずか五ヶ月、まだ半年にも満たない僅かな時間。それなのに、既に大きくすれ違って
しまっていることに、紗枝はこみ上げる悲しさをせき止められなかった。

『今なら言える、何度でも言えるさ』

『なーに照れてんだよ、恋人同士だろこ・い・び・と』

 痛くて、辛くて、何に対してこの感情をぶつけたらいいのか分からなくて。それを誤魔化す
ように、彼女は人垣の間を縫うように走り続ける。


 全てが、もう遠い昔のことのようだった――



236:Sunday
06/12/18 22:27:51 IY9pmS57





「はー……そりゃもう確定だねぇ」
「疑惑じゃなくて、向こうも認めちゃったんだ」
「どうしようもないわね」
 紗枝の臨場感溢れる詳細を聞き終わり、溜息とともに返される三様の印象。長々とした
体験談を語り終えた当人はというと、喉を潤す為に話の合間に頼んだお代わりのオレンジ
ジュースを口にしている。やがてカラン、と氷の音を立ててそれを飲み干し、今度は鼻から
息を吐いた。食道や胃に冷たい感覚が走り、少しだけ気分が改まる。

「それから会ったり話したりしてないの?」
「……何度か事情を聞こうと思って連絡したんだけどね。はぐらかされるばっかりで」
「話は? 取り付けなかったの?」
「さっきのメールがその返信」
「……はー…っ、大変ね」
 あれから平静を取り戻し、詳しい事情を聞こうとするものの、反応は一向に返ってくる
気配も無いようで。何を考えているかは分からないが、向こうは向こうで傷つけ追い詰め
られてるのは確かなようだ。

「もう…どうすればいいか分かんないよ…」

 経緯を詳しく語ったことで、またまたその時の感情がぶり返してきたのか、またしても
頭を垂れ、周りの喧騒に消え入りそうなほど小さな声で一言だけ漏らす。
「あー……じゃあさ、考え方変えてみようよ」
「……?」
「どういうこと?」
 このまま話題共々彼女が萎れるのをあまりに不憫と思ったのか、三つ編みの娘が提案を
してくる。

「ずっと以前に紗枝から聞いてきたお兄さんのイメージを思い浮かべるとさ、そんなに
悪い人に思えないし。もしかしたら、紗枝の方にも問題があったのかもしれないよ?」

「え…」
 びしいっ、と人差し指を眼前に立てられ、紗枝は思わず面食らう。
 自分に非があるだなんて、考えること自体無かった。彼女にとっては、崇之の行動が
何の前触れも無く突然振って沸いたものだったからだ。
 気持ちだけなら誰にも負けない自信はある。だけど、それを彼が喜んでくれるか、他の
人より自分が勝っていると思える魅力と捉えてくれるかは別問題だった。

「そう? 私が会った限りではいい加減な人だったけど」
「真ー由ー、気持ちは分かるけどいつまでも意固地にならないの。前は『良い人だ』って
言ってたじゃない」
「……自分の見る目の無さを恥じたいわ」
「『おかしな人だけど、紗枝が好きになるのも分かる』だっけ? そう言ってたじゃない」
「なになに、恋愛に興味ない真由がそんなこと言ってたの!? うっわ横恋慕じゃん!」
「ええ!? そんなの困るよ!」
「……」

 ずずずずずずっ

 過去の発言をほじくり返され、真由は残り少なくなった梅昆布茶を啜ることに終始する
ことで話題から逃げ出してしまう。馬鹿らし過ぎてただ単に言い訳するのが面倒なだけ
なのだろうが、普段必要の無い時以外はあまり喋らない彼女だけに、こんな状態になって
しまうとこの場で口を割らせるのはもはや不可能だろう。


237:Sunday
06/12/18 22:31:41 IY9pmS57

「はいはい変な解釈して勝手に盛り上がらないの。話を戻すけど、どう紗枝? 何かない?」
「でも、あたし心当たりとか」
「無くったっていいの。あたし達が判断するから、とりあえずその崇兄との付き合いだして
からの思い出とか言ってくれない?」 
「おぉ面白そう、たまには他人の恋路も聞くもんだよね」
「……うー」
「言いづらいならこっちから色々訊くから、答えてくれないかな」
「…うん、分かった」
 本当はあんまり話したくないけれど、他に手立てがないのなら仕方がない。今更この
友人達に、隠し事をしたってしょうがない。

 
「じゃーさーじゃーさー、早速聞くけどキスは何回くらいしたの?」


「……え゛」


「や、何回くらいしたかでどれくらいお互いに好きなのか分かるじゃん」
 茶髪娘のプレーボール直後の内角ストレートのような質問に、思わずどもる。隣にいた
三つ編みの娘は不躾な質問をする彼女に呆れた目線を送るものの、止めに入らないという
ことは、彼女もまた詳細を知りたいらしい。
「えと……えっと…」
 親友達の猛攻に紗枝はわたつきながら、指を一本一本丁寧に折って数を数え始める。
付き合って半年近く経つのだ。そんな簡単に、しかも確実に数えられるわけない筈なのだが……


「うーん…十回くらいかな」


「少なっ!」
「え、ちょ……それ本当?」
 ところがどっこいあっさり答えを出す紗枝。どうやら彼女達が密に過ごした時間は、
想像以上に少なかったらしい。

「え…少ないのかな」

「少ないって!」
「どう考えても少ないよ!」
 友人達が声高にそう口にするのも無理はない。単純計算すれば一ヶ月に二回という頻度
なのだ。いくらなんでも、あまりにありえない。
「でも…だって、崇兄もそういうことやろうって言ってこないし…」
「いちいち口に出してするもんじゃないでしょうが! 大事なのは雰囲気雰囲気!」
「そ、そういうもんなの?」
「ほんっと大事にされてるね、箱入り娘みたい」
「されてないよ! からかわれてばっかりだし!」
 どうやら世間一般で言う「付き合う」という行為と、紗枝の中での「付き合う」という
行為は随分とズレが生じているらしい。


238:Sunday
06/12/18 22:33:32 IY9pmS57


「はー……流石にお兄さんに同情したくなるわ」
「こういうことに関しちゃお子様だとは思ってはいたけど、まさかここまでねぇ…」
「……お子様で悪うございました」
「だってさー、いくらなんでもあんまりだよ?」
「お兄さんにとっちゃ生殺しのような五ヶ月間だったかもね」
 信じていた友人達が突然敵に回ってしまいそうなこの事態に、紗枝のわたつきはいよいよ
止まらなくなる。


「そんなことないって。だっていきなり、し…舌とか入れてくる時もあったんだよ」


「ほほう舌ですか、これはエロいですね」
「なんかあんたさっきから台詞がオヤジ化してない?」
「あはは、良いじゃん別に。でもまあ、そんな様子じゃまだやることヤってないんだろうね」

「うぅ……」
 恋愛経験の拙さか、別に言わなくていいことまで暴露してしまう。しかも、言っても
いないことまでズバリ当てられてしまう。
 勇気を振り絞ってカミングアウトした爆弾発言も大した効果を示さず話のツマにされる
始末。友人達のそんな反応に、紗枝の中にも自分にも非があるんだろうかという気持ちが
芽生えかける。
「でさ、あんたその時どうしたの?」
「……」
「まさかディープなのやっといてそこで終わったわけじゃないよね?」


「…いきなりだったから、びっくりして、その、崇兄のこと思わず突き飛ばしちゃったん
だけど……別にいいよね? 仕方ないよね?」


「……」
「……」
「……」

「だ、だってあれは崇兄が悪いんだよ? 何も言わずにいきなり、し、してくるし」

 今度こその衝撃のカミングアウトに触発され、信じられないものを見るような目つきに
なった六つの瞳に射抜かれながらも、必死に自分の正当性を訴える。

「採決を取ります。紗枝にも問題があると思う人」

 ばっ

 しかし、そんな必死の主張も虚しく、ほぼ同時に挙がる右腕三つ。二人は当然としても、
崇之に対して否定的なスタンスを取っていた真由まで手を挙げている。


239:Sunday
06/12/18 22:35:14 IY9pmS57

「う~~、なんで真由まで……」

ずずずずずずっ

 梅昆布茶を全て飲み干し、湯飲みをテーブルにゴトリと置くと、不平を口にされた真由は
ゆっくりと紗枝の方へ視線を送る。
「一つ、聞きたいんだけど」
「な、何かな」
 普段口数が少ない友人だけに、こういう時の威圧感は崇之以上である。


「それって付き合ってるって言えるの?」


 見えない拳銃が紗枝の心を貫く。それほど威力のある質問だった。

「付き合ってるよ! 付き合ってなかったら…そんなこと……し、しないよ」

「……」
 いささか誤解を招きそうな発言ではあるものの、確かにその通りなのだが。いかんせん
回数と頻度が少なすぎる為に、そう思わざるをえない。
 
 真由からすれば紗枝の行動の方が不可解だった。あれだけ崇之のことを好きだった彼女だから、
いざ付き合い始めたら、トントン拍子で関係が進むものとばかり思っていた。

 しかし現実は、その真逆。感情が表に出やすい彼女だから、普段ならすぐに考えていることが
分かるのに。今回はまるで気持ちが読めない。こんなこと、今まで一度も無かった。
それは幼なじみの彼も同じなのだろう。でなければ浮気なんてするはずが無い。


 ~~~♪~~~~♪~♪~~♪♪~


 その時だった。紗枝の携帯電話がけたたましい音を放ち始める。流れ始めたこの着メロは
メールではなくて電話の方だ。
友人達に裏切られしょんぼりとしながらも、彼女は携帯の液晶画面を開く。そしてそこに
表示された名前を見ると。


「崇兄だ……!」


 思わず紗枝がそう漏らしたのとほぼ同時に、友人達三人が一斉に彼女の方へ振り向く。
真剣な話をしているはずなのにどこかしら緩んでいた妙な雰囲気が、その瞬間サッと消え
失せてしまった。

 つい数時間前には、まったくもってやる気のない返事をしてきたのに、今更何の用事が
あるんだろう。何か言い忘れていたことでもあるのだろうか。でもそれなら、メールで
伝えた方が手っ取り早い。
 液晶画面を見つめながら、不安が募る。何を言われるのか怖くて、そして何を言ってしまう
のか自分でも分からなくて。何度も話をしようと思って出来なかったのに、突然かかってきた
電話に落ち着きを失いつつあって。あの一連の出来事も、またありありと脳裏に浮かんでくる。

~~~♪~~~~♪~♪~~♪♪~

 そんな紗枝の気持ちを知ってか知らずか、彼女の携帯電話は、淡々と着メロを流し続けるのだった―――




240:Sunday
06/12/18 22:37:59 IY9pmS57
|ω・`)……



|ω・`;)ノシ ゴメンネ、ミンナガオモッテタヨウナテンカイジャナクテゴメンネ



|ω・`;)ノシ ソノウチクルカモシレナイカラマッテテネ


  サッ
|彡


241:名無しさん@ピンキー
06/12/18 23:01:32 zdr20XNq
もどかしい・・・
だがGJ

242:名無しさん@ピンキー
06/12/18 23:07:49 cxymUa2z
久々にGJ!

俺はそろそろこんな展開になってもいいんじゃないかと思ってた

243:名無しさん@ピンキー
06/12/19 00:22:14 lhcgUGf2
紗枝ちゃんキタ━(゚∀゚)━!!!

ずっと待ってたんだよ

244:現実逃避の名の元に
06/12/19 01:08:05 Q9F+29ri
素晴らしい作品の後に投下するのは、大変恐縮ですが、今日の分投下します。

245:現実逃避の名の元に
06/12/19 01:12:14 Q9F+29ri
でも素直には喜べない。それは私があいつに嘘をついたから、ただ隣を譲りたくなかった私のわがままからの嘘。
本当のことを言ったほうがいいのか、でもそれだと…ん~って、そもそも何で私があいつへの告白でいちいち悩まなくちゃいけないの、隆太郎のくせに生意気よ。でも私はそんなあいつのこと…




「瞳、ご飯よ~。」
ん、どうやら私は眠ってしまっていたみたい。
「は~い、今行く。」
返事をして下に降りていく。結局答えは出なかった。
「いただきます。」
どうやら他の家族はみんな食べ終わっいたみたい、私一人の夕食。と、そこに母親が目の前に座ってくる。それもニヤニヤした顔で
「何?」
痺を切らした私が先に沈黙を破る。
「別にィ~。」
明らかに何かあるのに持ったいぶっている態度。どう考えても精神年齢は私より低いだろう。
「そう。」
ここはわざとそっけなくするのが母親との長年の付き合いでわかったこと。
「そんなにそっけなくしないで、もっと聞いてよ~、瞳ちゃん。」
そう言いながら私の隣に移動してくる。移動してくる姿はどっちが子供かわからない。
「はいはい、何かあったんですかお母さん。」
待ってましたとばかりに話始める。


246:現実逃避の名の元に
06/12/19 01:20:10 Q9F+29ri
「実はね、さっき隆くんのお母さんから電話があって知ったんだけど隆くん、告白されたらしいのよ。」
「そうなんだ。」
おばさんのことだ、きっといつもと様子の違う隆太郎に気付いて問いただしたに違いない。
「あれ?慌てないの?」
予想と違う私のリアクションに、少々ガッガリしているようにも見える母の顔。
「当たり前でしょ、何であいつが告白された程度で、私が慌てないといけないのよ。」
「ふ~ん、それでね隆くん、その子と付き合うらしいのよ」
「う、嘘、一緒に帰ったときはそんなこと一言も言って無かっ」
はめられた。案の定、母親の顔は最初のニヤニヤ顔に戻っていた。
「あれ~?隆くんのことじゃ慌てないんじゃなかったのぉ?」
相手の神経を逆撫でするような言い方。私は少し苛立ちながら無言でご飯をかきこみ続ける。
すると今度は急に真剣な顔になったと思うと、
「まあ、さっきの告白を受けるって言うのは嘘なんだけどね。それはそうと瞳、あんた隆くんが告白されてたこと知ってたわよね?」
「う、うん。」
普段とは違う雰囲気に圧倒されて思わず頷いてしまう。
「あんた隆くんが他の人と付き合ってもいいの?」
「あいつが誰と付き合おうと私には関係ないもん。」
母さんは溜め息を一つつきながら、
「瞳、少しは自分の気持ちに素直になりなさい。あんた隆くんから告白されたとき、どう思った?」
「別に。なんとも思わなかったわよ。」
「嘘つきなさい、あんたが嘘ついてもママにはちゃんと、わかるんですからね。」
「お母さんなんかにそんなことわかるわけないじゃん。第一、これはあいつの問題で私には全く関係ないの!」
だんだんと興奮してくるのが自分でもわかる、なに熱くなってんだろ、私。隆太郎のことなんかで。


247:現実逃避の名の元に
06/12/19 01:24:56 Q9F+29ri
以上で今日の分は終了です。大変見苦しいお話ですいません。

248:名無しさん@ピンキー
06/12/19 03:44:17 0yR5+H7t
謙遜は要らない。とりあえず完結させてくれれば良い。話はそれから。

249:名無しさん@ピンキー
06/12/19 06:50:16 zfndow3A
幼馴染み最高ぅダッゼ!!
二人ともGJダッゼ!!!

250:名無しさん@ピンキー
06/12/19 08:46:56 B9NDgYhZ
イイヨイイヨー

251:名無しさん@ピンキー
06/12/19 09:46:15 2zTPw3Qi
どっちも切ない!でもGJ!

252:名無しさん@ピンキー
06/12/19 10:09:43 jWviv1eQ
どっちも良い!続きまってる、GJ!

253:名無しさん@ピンキー
06/12/19 13:29:53 FzTeRO2y
>>318
良い作品をありがとう
ただ、前の作品が投下されてあんまり時間経ってないのにすぐ投下するのは
ちょっとどうかと思うな

254:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:19:04 x6BpwYbW
幼馴染の双子の美人姉妹と同時に結婚した男…
うらやましぃ

URLリンク(ameblo.jp)

255:名無しさん@ピンキー
06/12/20 01:29:52 iD8tIeS+
>>325
両親も公認ということで最早言うべき言葉が思い当たらぬw
末永く三人で幸せに生きて頂きたいものだ。しかし世界は広いよなw

…双子姉妹が同じ男が父親の子供を産むと、いとこであり、異母兄弟だが、
DNA的には実の兄弟?

256:名無しさん@ピンキー
06/12/20 02:10:41 r0mkHkqp
>>326
一卵性ならそう言うことになるのかなぁ

257:名無しさん@ピンキー
06/12/20 13:05:46 XBPJ35bx
いや、ならんでしょ。
確率だけの話なら双子でなくとも同一の遺伝子を持つ兄弟姉妹も有り得るわけだから。
“DNA的には”って考え方自体間違ってると思うんだ。

つうか幼馴染みスレの話題じゃねえやな。

258:名無しさん@ピンキー
06/12/21 01:19:54 aMKv4SSi
a


259:名無しさん@ピンキー
06/12/21 01:21:29 aMKv4SSi
age

260:名無しさん@ピンキー
06/12/21 01:23:49 aMKv4SSi
俺は今京都に来ている。昔住んでいた懐かしい故郷だ。まぁ10年以上前の話なんだが。じゃあなぜ俺がここにいるかって?
まぁなんやかんやで色々あってな、説明するのは面倒だからここまでにしておこう。
京都に来たのは観光などのためじゃあない。ここにちょっと居座る事になったから出向いたのだ。しかも高校生の俺一人で!
ふざけた話だよまったく・・・。
今江恭介それが俺の名前、16歳で高校2年生。ルックス普通、ほんとに普通だ。
そんな俺だがあても無くここに来たわけじゃない、何だか知らないが親の知り合いか何かの家で俺を預かってくれるらしい。
親にもらった地図とバックを抱え途方にくれてる俺・・・俺に明日はあるのかな・・・・。
とまぁ馬鹿なこと言うのもこれくらいにしといてさっさと俺を預かってくれる家を探さないとな。

恭介:「えーっと地図地図っと・・・なになに、目印は有名なお寺金閣寺、その周辺の家、家主の名前は有賀さん・・・んだよこれ!
説明ばっかで道が分からねーじゃねーか!
あんのバカ親どんだけ適当に書いてやがんだ!・・・どーすんだよ、来て5分でもう最悪の事態を招いてるよ・・・。
仕方ない、聞いてみるか・・・」
俺は近くの交番に向かい道を教えてもらう事にした。生まれて初めて入った交番に少し緊張しながら道を聞いてみると意外と近くにある事が分かった。
丁寧に地図までもらい一応もう大丈夫そうだ。ここから20分程度で着くらしい。さすがは警察官、細かいところまでよく把握してる。
俺は警官にお礼の挨拶をし地図を見ながらそこへ向かった、途中地図を見ているのに迷ったりしながら進んだため倍の40分かかってやっと有賀さんの家に到着した。
そこは家・・いやお屋敷と言った方いいか、とにかく大きな建物が目の前に現れた。
恭介:「ほんとにここであってるのか・・・?うちの親がこんなお金持ちの人と友達っていうのが信じられない。
けど表札に有賀って書いてるしな・・・・・よ、よし!とりあえず入ってみ・・・」
?:「どちら様ですか?」
恭介:「え?」
不意にかけられた声に驚き体が止まる。一呼吸置いてから声のしたほうに振り返ってみる。
するとそこには制服姿で弓道の道具らしいものを持っている今時に珍しい綺麗な黒髪のストレートヘアの女の子が立っていて、自分の事を少し怪しげに思ってるような目でこちらを見ている。
胸はC・・いやDはあるだろう。ルックスは抜群、これが美少女っていうのかな・・・?
そんな事を考えていると

261:名無しさん@ピンキー
06/12/21 01:24:33 aMKv4SSi
美少女:「あのー・・・どちら様でしょうか・・・?何かうちに用でも・・・?」
恭介:「あ、えっと俺は・・その・・・あ、有賀さんに御用があって来た者でしてそれで・・その・・」
突然の事であって対応がきかずアタフタしていると
美少女:「ちょっと待っててください、今家の者を呼んで来ますから」
そういうと彼女は家の中に入っていった。その間俺は頭の中が真っ白でボーっとしているだけだった。数分後、彼女は自分の母親らしい女性を連れて家から出てきた。
母親:「えっと・・どちら様でして?」
恭介:「い、今江恭介です!名前を言えば分かるって親に言われて来たのですが・・・?」
母親:「恭介君!?恭介君なのね!大きくなったわねー、おばさんの事覚えてる?昔はよく遊びに来たでしょう」
・・・・・え?俺この人と知り合いだったっけ?よく遊びに来た・・・?
恭介:「あの・・・どこかでお会いしましたっけ・・・?」
母親:「あら、覚えてない私の事?まぁ仕方ないわよね、10年も前の話ですもの。ね、恭ちゃん」
その呼び名で呼ばれたとき一瞬にしてすべての記憶が蘇った。
恭介:「く、久美子おばさん!?」
母親:「そうそう!やっと思い出したみたいね。」
恭介:「じゃ、じゃあまさかあの子は・・・・」
彼女の方を見てみると彼女も何かを思い出したように驚いた様子の顔でこちらを見ている。
恭介:「み、美琴・・・?」
美少女:「恭介君・・・・?」
恭介:「お、お前・・な、なんで・・・」
もはや言葉にならなかった、彼女は俺の幼馴染の有賀美琴。10年前によく遊んだ女の子だった。
美琴:「きょ、恭介君こそ・・・な、なんでここに・・・?」
母親:「色々あってね、恭介君をうちで預かることにしたのよ。教えてなかったっけ?」
美琴:「そ、そんな事聞いてないよお母さん!何で教えてくれなかったの!」
母親:「いいじゃない、結果分かったんだから。びっくりした?」
美琴:「びっくりするに決まってるじゃない!もう、お母さんのバカ!」
そういうと美琴は家に走って入っていった。俺は呆然と立ち尽くすしかなかった。これから無期の時間、幼馴染の家に住む事になった事だけは俺の頭の中に刻まれていた。
恭介:「・・・・マジかよおい・・・」


262:名無しさん@ピンキー
06/12/21 01:25:38 aMKv4SSi
朝を迎えた。昨日の事があってあまり眠ることが出来なかったためか妙に体が重い。
重い体を無理矢理起こして辺りを見渡してみる、目についた時計はもう10時を過ぎていた。こんな時間まで寝ていたのは初めてだ、よほど疲れていたのだろう。
そんな事を考えながら部屋を出てみる。どうやら今日も天気は快晴のようだ、強い日差しが俺の瞼に差し込んできた。
目を擦りながら台所に行ってみる。
「あら、起きたのね恭ちゃん。よく眠れた?」
そこには和服姿で家事を淡々とこなす久美子おばさんの姿があった、寝ぼけているせいか反応が少し遅れる。
「あ・・はい睡眠はよく取る事が出来ました。けど何か体が重くて・・・」
「そう・・まだ寝てても良かったのよ?今日は特に用事があるわけじゃないでしょう?」
「用事はないんですけどあんまり寝てるのもあれかなと思って・・・とりあえずもう起きます、だいぶ体も軽くなってきましたし」
「ならいいんだけど・・・あ、朝食はここに置いといたから適当に食べててね。おばさんちょっと買い物に行ってくるから」
「すみませんわざわざ。あれ、そういえば美琴は・・・?」
「ん?ああ、あの子なら部活に行ったわよ弓道の、もうすぐ帰って来ると思うけど・・・」
「弓道・・・あいつまだ続けてたんですか?」
「そうなのよ。弓道の試合である人にどうしても勝ちたいって言っててね、かれこれもう10年以上続けてるのよ。
よく飽きないで続けられるわよね」
「そうだったんですか。そういえば・・・ある人ってのは一体誰なんですか・・・?」
「それがね、ある人っで誰なの?って聞いても教えてくれないのよ。約束したからとしか言わなくてね。あの子頑固だから」
「そうですか・・・頑固なのはあの頃から変わってないんですね」
そんな事を話していると玄関の開く音が聞こえてきた、どうやら美琴が部活を終えて帰ってきたらしい。
「ただいまー・・・あれ、恭介君その格好・・・もしかして今起きたの?」
「あ、ああそんなとこかな。それよりお前まだ弓道やってたのか・・?」
「うん、悪い?」
「いや・・そういうわけじゃないけどさ・・・ただ随分と長続きするなーと思って」
「色々あってまだやめたくない・・・いややめれないの方が合ってるかな」
「ある人との約束でか?」
「そうそう約束・・・って何で恭介君がその事知ってるの・・・?・・・お母さんね恭介君に話したの・・・!」
「お、お母さんちょっと買い物に行ってくるから」
「ちょっとお母さん!誰にも喋っちゃ駄目って言ったのに!」
美琴は苦笑しながらそそくさと家を出て行こうとする久美子おばさんに文句を言っている、すると久美子おばさんが何かを思い出したように
ぴたりと体を止めて俺の方に向けた。
「そうそう恭介君、明日からあなたも美琴と同じ学校に行ってもらうことになってるの。だからそのつもりでいてね、それじゃあ」
「え、学校!?ちょッ、久美子おばさん!そんな急に言われて・・・行っちゃったよ・・・明日から学校かよ、それに美琴と同じ学校か・・・
というわけだからそこんところはよろしくな・・」
美琴の方に振り返ると同じように驚いた様子だった。美琴は我に返り持ち物を持って自分の部屋に戻っていく
「学校で変なことしないでよ恭介君・・・私にも迷惑かかるんだからね」
「変な事って何だよ・・・別にそんなやましい事しねーっての。はぁ・・・とりあえず朝飯食っちゃお・・・」
俺は少し冷めた朝食を食べながらため息ばかりついていた・・・

今日はここまでです

263:名無しさん@ピンキー
06/12/21 02:15:41 WM9foBJc
URLリンク(same.u.la)
何だかなぁ…

264:名無しさん@ピンキー
06/12/21 09:20:15 tARdfR6j
句点の位置がおかしい。おかしすぎる。

地の文がくどい・・・一人称形式をうまく読ませるだけの
文章力が足りてない気がする。

悪いがあまり読む気がしなかった。

265:名無しさん@ピンキー
06/12/21 12:24:54 lLFKOj5f
会話文の時に
人名:「台詞」
って形にするのは止めた方がいい。
あと冒頭でそれまでのいきさつを色々あったで済ませるのは手抜きだと思う。
詳しくなくて良いから軽く言及すると良いかな。

266:名無しさん@ピンキー
06/12/21 14:34:42 UudeBI9n
和風美少女スレにもまったく同じものが投下されているんだが。

267:名無しさん@ピンキー
06/12/21 21:11:46 xhDY3BaA
幼馴染みで和風だからどっちにも投下しちゃえってことか?

268:名無しさん@ピンキー
06/12/21 23:52:10 agTpqDN7
IDが違うね。
和風美少女スレに投下されたのを、aMKv4SSiが転載してるんだろ。

向こうのスレで、シナリオ風のは指摘されてたし、本人なら直すだろ。

269:現実逃避の名の元に
06/12/22 01:16:14 jlytNUlK
>>317の続きです

270:現実逃避の名の元に
06/12/22 01:17:34 jlytNUlK
「やっぱり気付いてないのね、あんた、嘘つくとき必ず耳たぶを触るクセがあるのよ、知ってた?」
嘘、と言いかけたがいつのまにか私の手が耳たぶを触っていることに気付きその言葉を飲み込んだ。
そして母さんは今度は優しい顔になって諭すそうに言葉を続けてきた。
「いい、瞳。ここで自分に正直にならないと、一生あなたはこのことで後悔することになるわよ、それはちゃんと覚えておきなさい。」
「……」
「瞳、返事は?」
「…はい。」
ご飯を食べ終え、流しに食器を置く。
「あっ、洗い物はお母さんがやっとくから。先、お風呂入っちゃってて。」
そう言ったお母さんの顔は、また元の無邪気な子供の顔に戻っていた。
「うん。じゃあ、先入るね。」
私の頭の中は、ぐちゃぐちゃだった。お風呂で体を洗いながら、髪を洗いながらもずっと考えていた。
私はあいつのこと本当は、どう思ってるのか、そして隆太郎は私のこと、どう思ってるんだろうか。
―ザアァ
真っ正面からシャワーを浴びる。水圧が強くて顔が少し痛い。
「うぅ、私、わたしどうしたらいいの?隆太郎の隣も離れたくないし、嘘ついたままも、嫌。ねぇ!私どうしたらいいの?」


271:現実逃避の名の元に
06/12/22 01:21:13 jlytNUlK
―ザアァ
その瞬間、溜め込んでいたものが溢れ出すのがわかった。




「お風呂、空いたから。」
母親にそう告げ、二階に上がろうとする。
「泣いて少しはすっきりした?」
「うそ、声漏れてた?」
驚いて、振り返る。
「その顔見ればわかるわよ、でもやっと答えが出たみたいね。」
「うん。」
「じゃあ幸運を祈ってるわね。」
「うん、ありがと、お母さん。じゃあ、おやすみ。」
そう言って二階に上がり部屋に入る。そして私は携帯を取り隆太郎にメールを送る。
―コンコン
しばらくして窓を叩く音がした。来たみたいだ。深呼吸を一回して窓を開ける。
「ごめんね、こんな遅くに。」
「ん?いーってそんぐらい、気にしないって。それより話って何だ?」
時刻が時刻だけに早めに用件を聞きたいらしい。ここまで来たら後戻りはできない、さあ言うのよ、私。言いなさい。
「うん。あのね黒川さんのことなんだけど。」
「黒川さんがどうかしたのか?」
「黒川さんがすっごい嫌な人って言ったけどね、本当はすっごい良い子で性格も優しい子なの。それでね、それでね、私、隆太郎の隣を譲りたくなかった、だからそんな。嘘ついちゃったんだ、ごめんね、本当にごめん。」



272:現実逃避の名の元に
06/12/22 01:23:41 jlytNUlK
言葉を入れられないように一気に喋った。でもこれでいい。隆太郎に嫌われても本当のことだけは伝えたかったから。
「なんだそんなことかよ。話があるって言うからドキドキしてたのに。」
「えっ、えっ?どういうこと?」
予想外の隆太郎の返答に気が動転してしまう。
「だから、黒川さんのことが嘘っていうのは、最初っからわかってたってこと。」
「何でそんなことわかるのよ、あんた黒川さんとは会話したことないんでしょ。」
「俺が十何年お前と付き合ってると思ってるんだよ。瞳が嘘つくときの癖ぐらい知ってるって。」
「じゃあ黒川さんの話が嘘って知っててあんたは…」
だんだんと怒りが込み上げてくる。私の苦しみは何だったの?
「あの~瞳?その黙ってたのは悪かったけど―「うるさいっ!」」
「最低、私がどれだけ悩んだか知ってるの?もうあんたなんて知らない、黒川さんと付き合っちゃえばいいのよ!この馬鹿、アホ、早く出てってもうあんたの顔なんて見たくない。出てって、出てってよ!」
隆太郎を部屋から追い出し、枕に顔を押し付ける。さっき涙を流し切ったと思ったのに、涙は止めどなく溢れてきた。






273:現実逃避の名の元に
06/12/22 01:28:09 jlytNUlK
―ピピピピピ
機械音が頭に響いてくる。
泣き疲れて寝てしまったらしい。我ながら情けない。
しかし習慣とは恐ろしいもので精神は疲弊しきっているのに、体は無意識の内に学校の準備を始めている。
でも学校に行く途中も、着いてからも、そして授業中も周りの声は全く頭に入ってこなかった。
途中、友達も心配して話しかけてきてくれたようだが、頭に入って来ず、気のない返事しか返すことはできなかった。
そして気が付いたら放課後になっていた。帰ろう、そう思い靴箱で靴を履き変えていると男子の話し声が聞こえてきた。
「ぉいっ聞いたか?……さんの告白。まさか加勢に……とは信じられないだろ、加勢のくせに。」
ふいに聞こえてきたのは隆太郎の話題。どうやら黒川さんの告白の話のようだ、よく聞き取れはしなかったがおそらく二人は付き合うことになったのだろう。おめでとう、加勢と黒川さんなら末永く付き合っていけるだろう。
私はそう思いながら、フラフラと家路に着くのだった。



家に着いて最初に母親が何か言ってきた、しかしそれすらも頭に入って来ず、そのまま自分の部屋に入る。昨日と同じようにベッドに倒れ込む。心の底から絞り込むように呟く。
「隆太郎…。」



274:現実逃避の名の元に
06/12/22 01:30:32 jlytNUlK
何時間経ったのだろうか。いつの間にか外は真っ暗になっていた。
何もする気になれない、私はこれからどうするのだろう。私は並んで歩く隆太郎と黒川さんを見て笑って祝福できるだろうか、たぶん今はとてもじゃないけどできない。もしかしたら一生できないかもしれない。
―コンコン
えっ?
ガバッと、身体を起こす。
嘘、だよね。ただの空耳と思い込もうとするのにダメ押しのようにもう一度窓が叩かれる音がする。
急いでカーテンと窓を開ける。
「よっ、元気か?」
そこには捨てられた子犬のようにブルブルと震えた隆太郎だった。「ちょっ、あんたいつからそこにいるのよ、早く部屋に入りなさいよ。」
「おう、悪いな。じゃ、上がらせてもらうわ」
隆太郎を部屋に入れ、窓を閉める。外は吐く息が白いほど冷えていた。
「ごめん、隆太郎。今、何かあったかい物持ってくるから。」
こんなに寒い中にいて風邪でも引かれた、私のせいみたいじゃない。
「動くな!」
後ろに振り返ろうとすると、突然隆太郎に命令される。
「何?突然どうかしたの?」
「瞳の顔見るとちゃんと言えないかもしれないから、そのままの格好で聞いてくれ。」






275:現実逃避の名の元に
06/12/22 01:32:14 jlytNUlK
今回はこれで終了です。なんかバラバラですみませんでした

276:名無しさん@ピンキー
06/12/22 02:06:55 0ZSI0KKx
ひ、ひどい・・・。こんなところで止めるなんて・・・。

ね、ねぇ・・・お願いだから・・・続き・・・早くして?

277:名無しさん@ピンキー
06/12/22 03:13:29 5mlj937v
>>280の続き。

「よぉ~し、もう一軒行くぞぉ~!」
「そんな千鳥足でまだ呑む気かよ。てか、いい加減帰らないと、おばさん達心配するぞ」
「だーいりょーぶ!おかーさんにアンタと一緒だって連絡したら、なら安心ね、だってー」
「それでいいのかよおばさん……」
「おかーさんってば、孫が楽しみねって言ってたよー」
「…オイコラ、お前意味わかって言ってるか?」
「わーってるってー。だーから、もう一軒はしごしてもらーいりょーぶー!」
「イカレてやがる。呑みすぎたんだ」
「ほら早く早くぅ~!……うぷっ、ぎぼぢばるい……」
「ほら言わんこっちゃない。ほら、そこの公園まで頑張れ」
「青姦するほど安くないぞぉ……うくっ」
「ワケわかんねぇ事言ってんじゃねぇっ!レディは道の真ん中で吐かない!せめて吐くなら側溝に……うわぁっ吐いたっ」

【今度こそ続かない】

278:名無しさん@ピンキー
06/12/22 03:44:13 U76wt+j+
続け!

279:名無しさん@ピンキー
06/12/22 05:28:02 hmUbPOOY
ドキドキ

280:名無しさん@ピンキー
06/12/22 06:38:14 /arSrQZ1
続いて欲しい単発ものといえば>>226なんかもろにそうだな

281:名無しさん@ピンキー
06/12/22 08:32:34 eud7znHo
イイヨイイヨー

282:現実逃避の名の元に
06/12/22 23:54:37 jlytNUlK
>>345の続きです

283:現実逃避の名の元に
06/12/22 23:56:07 jlytNUlK
「う、うん。」
いつもなら反論するところだが、いつもとは違う真剣な隆太郎の口調に圧倒される。
隆太郎の深呼吸する音が聞こえる。
「瞳。俺、瞳のこと好きだ。ずっと俺の隣にいて欲しい。俺の隣はお前しかいない。」
目の前が真っ白になる。心臓も呼吸もありえないぐらい早くなってきている。でも、
「何言ってんのよ、あんたは黒川さんと付き合うことになったんじゃないの。」
そう。隆太郎は黒川さんと付き合うことになったはずなのに。
「黒川さんからの告白は断った。」
「嘘。だって黒川さんは性格も良いし、スタイルだっていいし、文句のつけようがないくらい美人なのに。もしかしてまた私をからかってるの?」
「からかってなんかいない、俺は真剣だよ。黒川さんは確かに美人かもしれない、でも俺はお前が好きなんだ。」
「私なんか黒川さんみたいにスタイルも良くないし、顔だって普通だし。私なんか全然ダメきゃっ」
突然後ろから抱き締められる。
「それでも、それでも俺はお前が好きだ。」
突然の隆太郎の行動に私の中で塞き止められていたものが溢れてくる。






284:現実逃避の名の元に
06/12/22 23:58:31 jlytNUlK
「ぐすっ、私なん、か嫉妬深くてひっく、隆太郎に、も素直になれないのに、そんな、そん、な私なんかで、も、ぐすっ、好きって言っ、てくれるの?」
泣きながら隆太郎に本音をぶつける。
「あぁ、好きだ。側にいてほしい。瞳はどうなんだ?俺のこと、好きか?」
最後の部分は明らかに語気が弱い。きっと隆太郎も不安なんだろう。でも私の答えは決まってる。涙を拭き、隆太郎の方に振り返る。








「――俺のこと、好きか?」
今までの会話からフラレる可能性は高い。でもこれを言わなきゃ一生後悔するし、黒川さんにも悪い。瞳がゆっくりと振り返ってくる。一瞬のはずなのにすごくゆっくりに見える、心臓は限界を越えて脈打っている。
「やっぱり無理だよな、お前のことむぐっ」
言葉を何かで遮られた。いや、その何かというのはわかってる。瞳の口唇だ。
「プハァッ、お前いきなり何してんだよ。」
やっと口唇同士が離れる。おそらく俺の顔は真っ赤だろう。
「う、うるさい、これが私の返事なの!」
なんだよそれ、ていうか瞳も顔真っ赤だし。
「あのできれば、口で返事をしてもらいたいんだが。」
告白の返事がキスとは、いくらなんでも大胆すぎるぞ。






285:現実逃避の名の元に
06/12/23 00:03:56 qSfOJKQe
「何言ってんのよ、ちゃんと口で返事したじゃないのよ。文句ある?」
なんかヤケクソみたいだけど、瞳は瞳なりに素直になった結果なんだろう。
「わかった。じゃあ今から俺と瞳は恋人同士だ。」
「ま、まあ、そういうことになるわね。」
「じゃあ、その今度はいきなりじゃなくてお互い同意の上で、したいんだけど。」
とりあえずちゃんとキスはしときたい。
「何言ってんのよ、私たち今付き合い始めたばかりなのよ、そんないきなり、し、したいとか言われても困るし。」
「頼む。俺が好きならさせてくれ。」
ずるい言葉だけど、こう言わなきゃきっと瞳はキスさせてくれないだろう。
「……わかった。でも、恥ずかしいから、ちょっと目瞑ってて。」
「マジで?わかった、しばらく目瞑っとく。」
ヤバい、緊張してきた。落ち着け俺。ここで失敗すれば末代までの恥だ。落ち着け。精神統一しろ。明鏡止水の心だ。よし、だいぶ落ち着いてきた。
「もう、いいよ。」
ゆっくり目を開ける。そこには目を閉じて口唇をちょっと突きだして待ってるぅ―ってそこには明鏡止水の心を一瞬で破壊する光景が広がっていた。
「ヒトミサン、ヒトミサン、アナタハナゼシタギスガタナノデスカ?」






286:現実逃避の名の元に
06/12/23 00:06:19 qSfOJKQe
一応今回はここまで終了です。途中でID変わってしまいましたが同一人物です、すいません。

287:名無しさん@ピンキー
06/12/23 00:11:39 LbJ9Sr8W
ショクニンサン、ショクニンサン、アナタハナゼワレワレヲナマゴロシニスルノデスカ?

GJです。暴走娘カワイスw

288:名無しさん@ピンキー
06/12/23 02:46:23 cv1i3l6x
下着姿ワロスww
このままつっぱしるんだ

289:名無しさん@ピンキー
06/12/23 10:07:29 hk1i+9/P
イイヨイイヨー

290:現実逃避の名の元に
06/12/24 01:24:05 4HzYiPzd
>>356の続きです

291:現実逃避の名の元に
06/12/24 01:25:26 4HzYiPzd
「う、うるさいわね。いきなり裸は、そのやっぱり恥ずかしかったのよ。」
なんともズレた返答だよ。しかし瞳って意外と胸、あるなぁ。着痩せするタイプなのか。それにしても綺麗な胸だなぁ、それに柔らかそうだっていかん、いかん。後ろに向いて何とか見ないようにする。このままじゃいろいろヤバい。
「その、したいってどういう意味かわかってる?」
「わ、わかってるわよ。そのセッ、って女の子になに言わせるのよ、この変態。」
「いやいや、違うよ。俺はただ瞳とキスしたかっただけだったんだけど。」
「えっ?」
後ろから瞳の驚いた声。おそらく瞳は真っ赤になってるだろうな。それで慌てて服を着て、今日は終わりだな。
「わかったんならちゃんと服着ろよな。風邪引くぞ。」
「…あんたさっき私の下着姿見たよね?」
「いやそのえっと。」
「見、た、の、よ、ね?」
俺の頭を後ろからガッチリと固定して、無理矢理瞳のほうに振り向かされる。
「痛い、痛い。俺が悪かった。」
「見、た、の、よ、ね?」
俺の頭を持ったまま再度尋ねてくる。
「はい、見ました。すいません。」
即座に土下座をして許しを乞う。
「私の下着姿だけ見ておいて自分は見せないなんて不公平よねえ?」





292:現実逃避の名の元に
06/12/24 01:30:25 4HzYiPzd
おかしいだろうと思い、顔を上げて反論する。
「いや、それは瞳が勝手に脱いだだけであって…。」
「不公平よねえ?」
顔を近付けて明らかな脅迫行為をしてくる瞳。そして顔と一緒に近付いてくる二つの膨らみ。そして俺にも一つの膨らみが出来上がる。これはまずい、とりあえず瞳を落ち着かせないと。
「お、落ち着け、瞳。お前の言ってることは、めちゃくちゃだぞ。下着見たから下着見せろとか小学生の発想だぞ。」
「だって、だって私、隆太郎の言葉勘違いしてこんな格好しちゃって後戻りできるわけないじゃない。それとも私の身体そんなに魅力ない?」
「いえ、十分魅力的です。」
急にしおらしくなって、うわめづかいでそれを言われると、絶対否定できない。いや事実魅力的だし。
「じゃあ、隆太郎も脱ぎなさい。」
一転、俺に下着姿のままで襲ってくる瞳。突然のことに慌て、そのまま押し倒される。
「ちょっ、さっきのは演技かよ。」
「さあ、脱ぎなさい。」
「ま、待て。何でズボンからなんだよ。下はまずい、本当まずいから。」
「「あっ」」
予想通り大きくなった俺の息子を掴み、固まる瞳。
「いや、これはそのあのあれだ一種の生理現象、生理現象だから。」
しどろもどろに弁明する俺。そして固まったままの瞳がゆっくり口を開く。



「骨?」




293:現実逃避の名の元に
06/12/24 01:32:26 4HzYiPzd
今回はこれで終了です。エロまでいけなくてすいません。長ったらしくてすいません。

294:名無しさん@ピンキー
06/12/24 10:00:50 dY2O6b/M
イイヨイイヨー

295:名無しさん@ピンキー
06/12/26 22:42:58 WrvyNoVe
シンクロ

296:名無しさん@ピンキー
06/12/26 23:27:46 GRO2Dl8/
それはまるで

297:名無しさん@ピンキー
06/12/27 00:17:11 RTttoaAL
シロクロ

298:名無しさん@ピンキー
06/12/27 00:49:20 umluZKM7
綾乃タンマダー?

299:現実逃避の名の元に
06/12/27 03:03:09 JPk/lzR1
>>363の続きです

300:現実逃避の名の元に
06/12/27 03:03:55 JPk/lzR1
「……」
もはや俺は何も言わなかった。いや、何も言えなかった。ただ瞳の発した言葉に固まっていた。しかしその間も瞳は止まらなかった。
「ん~、骨よりはちょっと柔かいかなぁ。」
瞳よ、触りすぎだ。
「もうズボン剥いで直接見ちゃえ。」
脱がせようとする瞳の手を掴みながら、注意する。
「待て、瞳。このズボンはパンドラの箱と同じだ。脱がしたら、もう後戻りはできん。だから止めろ。」
「そっか、ごめん。嫌だったね。じゃあ止めるね。」
「わかればよろしい。」
そうそう、素直が一番だぞ。ん?でもこれさっきと同じパターンじゃ―
「えいっ。」
はい、脱がされましたよ。しかもパンツごと。そして出てきたのは既に臨戦態勢の俺の息子。
「隆太郎…、病気、なの?」
なにこの純粋少女。いくらなんでもそれはないだろ。もしかして子どもの作り方とか知らないんじゃないのか。と心配してしまう。
「あぁもう後戻りできないからな。」
ガバッと立ち上がり、上着を脱いで全裸になる。そしてそのまま瞳に覆い被さるように上に乗る。
「いいのか?」
最終確認をする。しかしダメと言われても止まれないだろうけど。
「うん。その優しく、してね。」




301:現実逃避の名の元に
06/12/27 03:06:41 JPk/lzR1
ぐはっ、かわいい、かわいすぎるぞ、瞳。
了承を得て、ゆっくりとブラジャーのホックを外す。かわいらしい純白のブラから現れたのは、お茶碗をひっくり返したような形の良い綺麗な胸。
「ごめんね、胸、小さくて。」
本気ですまなさそうにする、瞳。「何言ってんだよ、こんな綺麗な胸、嫌いになるわけないだろ。」
それに、俺は巨乳はそんなに好きじゃないしな。
いよいよ胸に触ろうと手を伸ばす。若干、震えているのは気のせいにしておいてくれ。
そしてとうとう胸に触れた瞬間。
「きゃっ」
驚いて、手を離す。
「す、すまん、瞳。大丈夫か?どこか痛かったか?」
動揺する、俺。まさかここまで無器用とは。我ながら情けない。
「ううん、違うの。隆太郎の手が。」
「俺の手?」
意味を理解できない俺に、瞳は俺の手を取って俺の顔に当てる。
「冷たい…。」
暖房の効いた部屋にいるとはいえ長時間外にいたんだ。すぐに暖まるものでもない。
「そうか、じゃあ手は使わないほうがいいな。」
「手を使わないってどうするつもりよ?」
「こうするんだよ。」
その言葉と同時に乳房に顔をうずめる。
「きゃっ」
この悲鳴はただの驚きとしてとらせてもらおう。はっきりいって顔はさっきから真っ赤になってりして十分暖かいからな。




302:現実逃避の名の元に
06/12/27 03:08:13 JPk/lzR1
最初は乳房に顔をうずめて胸の感触を楽しむ。やわらけぇ、こんなに柔かいなんて反則だろ。これは病み付きになりそうだ。
「なんか隆太郎、子どもみたい。」
「男はみんないくつになっても子供なんだよ。」
そうしてしばらく胸の感触を楽しんだ後、いよいよ本格的に愛撫に取り掛かる。
ふいに右の淡いピンク色の乳首を口に含む。
「あんっ」
なかなか感度はいいようだ。そのまま舌で乳首をねぶるように口の中で転がす。
「―んぅ、ふぁっ。」
右ばかり攻めるのをやめて、今度は左を攻めようと口を離す。右の乳首は見事に固くなっていた。
「すごっ…、本当にたつんだ。」
「女の子にそういうこと言うな、変態。」
何度目かの変態の称号の授与。俺はめでたく変態の地位になれたんだな。
「よし、じゃあ今からもっと変態なことするぞ。」
開き直って左の乳首にむしゃぶりつく。
右は舌で転がすだけだったが、左は甘噛みも混ぜてみる。
「あんっ、噛むの、だ、だめぇ。」
どうやら甘噛みがお気に召したらしい。そのまま左右の乳首を交互に甘噛みしたり、舌で転がしたりしていた。
「はぁ、はぁ、隆太郎ばっかりにさせて、はあ、られない。私にもなにかさせて?」





303:現実逃避の名の元に
06/12/27 03:10:23 JPk/lzR1
今回は以上です。空気読んでなくてすいませんでした。

304:名無しさん@ピンキー
06/12/27 04:36:56 Qp6kkLVL
イイヨイイヨー!

305:名無しさん@ピンキー
06/12/27 23:48:30 umluZKM7
イイヨイイヨイイヨー!

306:現実逃避の名の元に
06/12/28 01:09:30 DvtTd0I0
>>373の続きです。

307:現実逃避の名の元に
06/12/28 01:12:42 DvtTd0I0
息も絶えだえに瞳はそう訴えてくる。
「わかった、じゃあ、その口でしてもらえるか?」
「口で?」
何を?と言いたけどな顔。やっぱりわかってないみたいだな。
「これを瞳に嗜えてほしいんだけど。」
目線で教えてる。瞳もゆっくりと俺の目線の先を追う。
「無理無理、そんな大きいの嗜えられるわけないわよ。」
そうだよな、お互い初めてなのに、何いきなり無理難題を押し付けてるんだよ、俺は。
「でも、あんただからしてあげる、ううん、したい。隆太郎を気持よくしてあげたいの。」
「瞳…、わかった。頼む。でも無理はすんなよ。」
「うん。」
体を入れ換えて、瞳が俺の上になる。こらっ、ツン、ツンするな。そんなに汚いものじゃないぞ、多分。
「えっと、どうすればいいの?」
「じゃあ、とりあえず舐めてくれるか?」
俺の指示に従い恐る恐る舌を出し、まるでアイスクリームを舐めるかのようにチロチロと舐め始めた。
「どう?」
「ん?かわいいよ。」
「そ、そうじゃなくて気持ちいいかどうかを聞いてるの。」
「今し始めたばっかりだろ。」
「まだ気持ちよくないんだ…。」
アイスクリームを舐めるようなやり方から、急に口に嗜わえだす。
「うおっ!」
突然のことに思わず腰を引いてしまう。
「ごめん、大丈夫?」
「大丈夫だ。ちょっと瞳の歯が当たっただけだから。あんまり無理するなよ、初めてなんだからさ。」




308:現実逃避の名の元に
06/12/28 01:14:50 DvtTd0I0
「う、うん。」
明らかに元気がない。なんとかしないと…、そうだ!
「じゃあさ、手コキしてもらえるか?」
「テコキ?」
エロに対して無知すぎるぞ。これは後で教育しないとダメだな。
「つまり俺のを瞳が手で掴んで上下に動かしてほしいってこと。」
「わかった、やってみる。」
そう言ったものの、しばらく躊躇していた。しかし意を決して俺の愚息を掴み、きごちなく扱きだす。
「こ、こんな感じ?」
「うん、結構いいかも。」
嘘だ。実は結構いいどころか、相当いい。瞳の柔らかな手の感触とぎこちないが絶妙な扱き。とても初めてとは思えない。
「ひ、瞳、本当に初めてか?」
「あ、当たり前じゃない。どうしてそんなこと聞くのよ。」
「いや、お前の手コキかなり気持ちいいからさ。」
「へぇ~、気持ちいいんだ。じゃあこんなのはどう?」
そして急に扱くスピードを加速させる、と思ったらゆっくりと扱きだす。微妙な緩急が一気に絶頂感へと導く。
「うぉっ、ヤバい。ちょっ、やめろ、瞳。出るから。ヤバい。」
なんとか瞳の手を止めさせる。
はぁはぁ、ヤバかった。もう少しで瞳の顔に発射するところだったぜ。
「なに?気持ちよかったんじゃないの?」






309:現実逃避の名の元に
06/12/28 01:19:02 DvtTd0I0
「いや、気持ち良かったからすぐにでもお礼をしたいと思ってな。」
納得していないようだったが強引に態勢を入れ換えさせる。
いよいよ最後の砦に取り掛かる。
「脱がすぞ。」
「うん。」
瞳の純白の下着をゆっくりと脱がす。
そこには薄く生えた茂みとうっすらと濡れた割れ目。そしてぷっくりとしたピンク色の肉豆。
「ん?濡れてる…のか。」
「な、何言ってんのよ。濡れてるわけないじゃない。」
「だって、ほら。」
指ですくって、瞳に見せる。
「こ、これは汗よ、汗。この部屋暑いじゃない。きっとそれが原因よ。絶対、あんたのさっきの胸への愛撫のせいじゃないんだからね。」
「はいはい。」
瞳の言葉はスルーして、本格的に愛撫に取り掛かる。
まずぴったりと閉じた割れ目に人指し指をゆっくりと挿れる。
「あん、ふぅん、ぁあ。」
拙い指使いながら、敏感に感じてくれる。
しばらくすると愛液で指もシーツもびちゃびちゃになる、そして指を動かす度に、くちゅくちゅと音がでる。
「ぁ、あ、ン、ふぅん。もう、ダメだ、から」
何度もびくびくと小刻に痙攣しながら言葉を発する。
その言葉で人指し指を抜き、真っ赤に充血にした肉豆を摘む。
「ひィん、それダメ、ん、だめ。ぁん、おかしくなっ、ちゃうから。」
どうやらここが一番感じるみたいだな。それがわかると肉豆を集中的に攻めだす。そして、
「だ、だめ。イく、イっちゃうっ―」
びくんっと大きく跳ねたあと、それっきり体をぐったりと弛緩させる。
「おいっ、おいっ。大丈夫か?瞳。」
ペチペチと頬を叩く。調子に乗って無茶しすぎたみたいだ。
「ん、り、隆太郎?」
「瞳、気が付いたのか?ごめんな、俺無茶しすぎたみたいだ。今日はもうこれで止めるよ。」
「もう、そんな状態で言われても説得力ないわよ。」
瞳の目線には限界まで隆起し、たっぷりとヨダレを垂らした俺の愚息が。
「はははっ」
もう俺は笑うしかなかった。何せ言ってることとやってる状態が違うんだからな。
「最後まで、して、いいよ。」
「…わかった。でも無理はするなよ。」
「うん。」
愚息を掴み、ゆっくりと瞳の割れ目に当てる。
「行くぞ、瞳。」
「うん。」




310:現実逃避の名の元に
06/12/28 01:20:23 DvtTd0I0
今回は以上です。最後までいけませんでした、すいません。

311:名無しさん@ピンキー
06/12/28 02:16:13 tn1RM3k3
豆エロイヨエロイヨー!

312:526 ◆3T03eKWVoU
06/12/28 06:41:18 P7pM7cpQ
うつむた剣太の耳が赤く染まっている。
私に動揺してくれていることに何だか物凄い優越感を感じてしまって、口元が緩む。
木の根元に座り込んだ剣太を見下ろしたまま、何か言いたくて、でも何を言ったらいいのかわからない。
「……私ばっかりじゃずるいから」
結局私の口から出てきたのは、奇襲に対する言い訳だった。
だってなんか、今更だけど……かなり、恥ずかしいことをした気がする。
「は?」
訝しげに見上げてくる剣太が私の言葉を理解していないことがわかり、ちょっとムッとしてしまう。
「だからっ!私ばっかり剣太にドキドキするのが悔しいの!だからっ……!」
私の言葉が途切れたのは、剣太のせいだ。
剣太が、私の手首を掴んだから。
掴んだ挙げ句に引っ張って、私をまた白いワイシャツにくっつけたから。
「鞘子、俺にドキドキしてんの?」
「なっ……何でっ……!そんなのしてない!」
予想外の剣太の言葉に、反射的に否定の言葉が出る。
してない、なんて真っ赤な嘘だ。説得力の欠片もない。
だってこんなに頬が熱い。
「今自分で言ったじゃん」
小さく笑いながら、剣太が腕の力を強めた。
あぁ……もう本当に勘弁して欲しい。
これ以上抱きしめられたら、羞恥心を飛び越して心地いいと思ってしまう。
そんなのはなんだか負けたみたいな気分になるから……本当に勘弁して欲しい。
「だから違うって……!」
黙ってたら剣太の言葉を肯定しているみたいで、それが嫌で向きになって私は否定の言葉を重ねる。
そんな私に「うん」と頷いた剣太はなぜだか腕に更に力を込めた。
「ちょっと……苦しいって」
「俺、嬉しい。鞘子が俺にドキドキするの」
剣太は卑怯だ。
こんなこと言われたら、私はもう何も言えなくなってしまう。
強がりの言葉さえ奪われてしまったら、私はもうどうすればいいんだろう。
剣太の腕の力は緩められたけど、やっぱり私は顔を上げることすらできなくて……次の行動が起こせない。
「鞘子」
ゆっくりと、でも逆らえない力で剣太が私の肩を掴み上半身を起こす。
私達の間にできた距離は、それでも数時間前までには考えられなかったくらいに近くて。
なのに、私はもう、視線を逸らすことが出来なくなっている。
熱くなった頬も、過呼吸寸前の心臓も、悲しさも優越感も……自分で手に負えなかった全ての感情が、剣太の視線に捕らわれてしまっている。
距離が出来たことで視界に入るはずの、土の茶色も枯葉の黄色も空の青色も……全部の色が頭から消えてしまう。
先に瞼を伏せたのは私だったのか、剣太だったのか。
重ねられた唇の柔らかさに、そんな疑問は全て呑み込まれてしまった。
(男の子の唇も柔らかいんだ……)
そんな当たり前のことを初めて知った気になる。
角度を変え、触れ合う面積を変え続けられるこの行為に私がグチャグチャの思考を手放した頃。
頭のてっぺんに、剣太の手が添えられた。
グイッと頭を前に押され驚いた私の唇が、何か柔らかく熱い物に触れられた。
続いて強引にソレが進入してくる。
「ん…………っ!」
くぐもった私の声は無視されてしまった。
舌が絡められ、唇が舐められ、歯列がなぞられ――――息継ぎすらままならないそれらの行為が何度も繰り返され、私の息があがっていく。
なぜだか、非道くもどかしい気分になる。
舌をなぞり舐め、互いの唾液が混じって、吐き出す息さえも呑み込まれるこの距離がもどかしい。
(もっと)
白くなった思考でそれだけを思う。
(もっと)
こういう思いを、本能と言うのだろうか。
(もっと)
近付きたい。
欲しい。
全部が。
幼馴染みの全部が、欲しい。


313:526 ◆PGuMXHUDvk
06/12/28 06:42:06 P7pM7cpQ
時間の感覚なんてとうになくなっていた。
ようやく離れた唇を、今度はひやりとした風がなぞる。
「……は、ぁっ……はぁ……」
酸欠、だ。
呼吸が上手くできない。
それでも。
「鞘子……鞘子……」
私の名を呼びながら再び何度も私に口づける剣太を拒否できない。
(全部、剣太のせいだ……全部……)
剣太以外の景色が見えない、なんて思ってしまうのも。
何も考えられないのも。
もっと、剣太に近付きたいと思ってしまうのも。
剣太が欲しいと思うのも。
全部剣太のせいだ。
だから――――剣太の掌が私の胸に触れても、私は拒否できないんだ。
「……鞘子」
耳元で囁かれた自分の名前をどこか遠くで聞きながら、私は無言で剣太に視線を向けた。
「……いい、か?」
何が、って聞き返したかった。
剣太の言葉の意味をはっきりと受け取っているのにそれを言葉にして欲しいと思った。
だけど。
酸欠と眩暈がそれを許さなくて……私は小さく頷くことしかできなくて。
「……鞘子」
幼馴染みが私の名を呼ぶ声が世界で一番好きな音なのだと、私はその時初めて知った。


314:526 ◆PGuMXHUDvk
06/12/28 06:42:46 P7pM7cpQ
久しぶりすぎて鳥間違えました。ごめんなさい。

315:名無しさん@ピンキー
06/12/28 10:23:10 MDQRjJ0w
久しぶりすぎて不覚にも会社で勃ちました。ごめんなさい。

GodJOB!!

316:名無しさん@ピンキー
06/12/28 12:02:17 K9joxQry
うお―――
続きがキター!
待ち続けた甲斐があった

317:名無しさん@ピンキー
06/12/28 12:33:30 qOTq1rQR
一瞬、自分の目を疑ったぜ

キタ-のAA貼りたいけどアク禁㊥…

318:名無しさん@ピンキー
06/12/28 14:05:06 iJilP8GN
キタ━(*´Д`)━!!

319:名無しさん@ピンキー
06/12/29 15:51:40 QBACw9VH
キタ━(*゚ω゚)━!!


320:名無しさん@ピンキー
06/12/31 14:10:53 Pu9DlrN7
久々に
         ∧∧  ∧∧
キタ━━ (*゚∀゚) (∀゚*)━━━!!!!!!!!!!!!
     彡 ⊂   つ⊂  つ  ミ
   ((   ⊂、 /   \ ~つ   ))
     ミ   ∪  ≡  U′  彡

321:名無しさん@ピンキー
07/01/03 01:37:11 Y63/uAwR
保守

322:名無しさん@ピンキー
07/01/03 16:31:14 mYzwPBwK
(・A・)保守

323:名無しさん@ピンキー
07/01/03 18:51:31 5s0OghYx
紗枝ちゃんどこー?

324:名無しさん@ピンキー
07/01/06 15:24:15 6BE9oh2Q
多分ここー

325:Sunday
07/01/06 15:25:19 6BE9oh2Q

『……』
『……』
 物言わぬまま、二人は対峙する。彼は、疲れきった表情のまま。彼女は、随分と居心地の
悪そうな表情のまま。

『あ、あの…ごめんね?』
 
『……』
 おずおずと頭を下げると同時に、彼はそこから視線を逸らす。煙草を再び吸わなくなって
から口に寂しさを覚えることが多くなったのか、代わりに飴玉を口の中で転がし続ける。
『…た、崇兄』
『いいよ、もう』
 溜息交じりの言葉に、彼女の顔に失意の色が浮かび上がった。そんなつもりで言ったわけ
じゃないのに、相手を誤解させてしまって。顰めた面のまま額を掻くと、腰を上げ、膝を
立てて彼女に近づく。

『怒ってないから』

 悪いことをしてしまって、罪の意識を覚えた子供をあやす様に。顔を間近に近づけて、
できる限り優しい声が出せるように気を付けながら、ゆっくりと囁く。
『……』
『誤解するのも仕方ねえさ。俺がそういう奴だっていうのは間違ってないしな』
 ポンポンと軽く肩を叩きながら、あらぬ誤解から激しく自分を責め立てた彼女を慰める。
本当は頭を撫でたかったのだけど、出来なかった。それが彼と彼女の間でどういう意味を
表すかを考えた時、出来るはずもなかった。
『でも…』
 話が進まない。さっきからこの繰り返しだった。気にしてないと何度言って聞かせようと
しても、彼女は全く耳を貸してくれない。
『紗枝』
『……っ』
 そんな苛立ちが、名前を呼ぶ時に僅かにこもってしまう。幼なじみだったから、そんな
微かな気持ちの変化にも気付かれて、彼女の身体はビクリと震えてしまう。

ぎゅっ

 埒が明かなくなって、慰める意味合いも込めて、腕を巻きつけ彼女の頭を胸元に抱え込む。
手の位置をずらして背中を優しく叩いて、紗枝が落ち着くようにゆっくりと撫でまわす。そうしたことで
深く吐き出された息が、微かに首筋を撫でた。
『それでも悪いと思ってるなら、せめて謝るのはやめてくれ』
『……』
 だけど普段、こういう時は絶対に寄り掛かってくる身体が、この時は頑なにそれを拒み
続ける。不自然な体勢のまま、それは宙に浮き続ける。

『ごめんなさい、ごめんなさい……』

 やっぱり、彼女は謝るのを止めない。それまでの自身の行動言動が、あまりにも酷いもの
だったという自覚が、あったのだろう。
『……』
 気付かれないように、浅く短く息をつく。


 バレている。


 怒ってるわけじゃなかったけど、辛かった。同僚と歩いてるところを目撃されただけで
しこたま殴られひたすら罵倒されてしまったのは、悲しかった。


326:Sunday
07/01/06 15:26:23 6BE9oh2Q

 しかも誤解を解いたのは自分の言葉ではなく、バイト先の後輩であり彼女のクラスメイト
でもある人物の証言であり、結局自身の言動行動は何ら影響を及ぼすことはなかった。
その事実が、あまりに虚しくて。

 俺は、そこまで信頼されてなかったのか。

 俺のこと、そんなに疑ってかかってたのか。

 揺れる回る、そんな言葉。混じる乱れる、複雑な感情。
 だけど、相手が彼女なら、幼なじみの彼女なら。意地っ張りですぐ怒鳴るくせに、そんなに
気持ちが強くない彼女が相手なら、不平不満を言い出す気持ちにはなれなかった。付き合いだす
以前のことも思い出せば、それは仕方なかった。

(落ち着かせるまで……待つしかないか)

 舌で飴玉を弄びながら一人ごちる。鬱屈した気分が胸の奥から延々と湧き上がってくるのを、
いつまで経っても止めることが出来ないでいた――




「まぁ、…そーいうわけだな」
 バイトを終えて、横に並びながら歩道を練り歩く男が二人。無精ヒゲを蓄えうなだれている方の男が、
もう一人の背の小さな男に話しかけている。言うまでもなく崇之と兵太だ。

「長々と説明してもらってありがたいんですけど、俺そこら辺の事情を知ってるんですけど」
「? なんでだよ」
「や、だって。今村さんの話の中にも出てきたじゃないですか。俺の名前が」
「あぁ…そういやそうだな」
 誰だって分かる話でさえ把握できていないと言うことは、余程ダメージが大きいらしい。
「……重症っすね」
「怪我した覚えはねぇ」
「そういう意味じゃなくてですね」
「うるせーな、分かってんよ」
 心に余裕を持てないと、人はこうまで言動が変わってしまうものなのか。眉間に皴を
寄せたこの気難しい顔が彼にとっていつもの表情になってしまったのは、一度目の浮気騒動が
起こってからのことだ。


『嫌いだ……、崇兄なんか……大っ嫌いだ……っ』


「……」
 ふと思い出す、かの意地っ張りな言葉。言葉とは真逆の意味がこもった告白の返事は、
いかにも彼女らしくて、いじらしかったのを覚えている。

 だけどあれからもう五ヶ月。なのに関係は思っていた以上に進展していない。それが今回、
この男が不埒な考えを彼女以外の女性に抱いた原因だった。
 
 確かに最初は、恋愛に慣れてない彼女に合わせてあげようと腐心した。煙草の煙を嫌う
相手の為に、また常習性がつき始めていたそれを再び禁止することにした。向こうから
甘えてきたがるなら全て受け入れたし、自分から無理やり何かを求めるようなことは、
なるべくしないように心がけた。冗談交じりではあったが、座椅子になって欲しいなんて
言われた時は顔の緩みが止まらなかった。


327:Sunday
07/01/06 15:27:51 6BE9oh2Q

 だけど甘やかせば甘やかすほど、彼女はその状態に満足するばかりだった。デートを
重ねても、手を繋ぐことにさえ一向に慣れてくれる様子が無かった。口付けした回数も、
両手で数えることが出来る程度だった。
 理由は分かっていた。数ヶ月ぶりに、いつも通り話すことの出来る環境に舞い戻れただけ
で嬉しかったんだろうと、理解はしていた。だけど、納得するのがどうにも難しかった。
態度は以前と何も変わっていなくて。それは昔から親に言われ続けたような「兄妹」の
ような関係そのままで。気付いた時の失望感は、相当なものだった。

 だから、まあ、なんと言うか。そういった機会が久々にあった時に、らしくもなく暴走して、
舌を絡めてしまったわけで。

 紗枝の嫌悪感は想像を超えていた。驚かれるかもしれない、そのくらいに考えていた
だけに、彼女に口を抑えられ突き飛ばされたのはショックだった。やっぱりまだ、「恋人」
よりも「兄妹」に近い対象として捉えられていることも合わせて。
 
 違う異性の味を知っている崇之には、それは浮気の理由としては充分すぎた。

 彼女がようやく見せてくれた恋人としての表情が、無実の罪を事情も聞こうともせず
先入観だけで責め立て泣きじゃくる姿だったのも、あまりにもあんまりな現実だった。


『嫌いだ……、崇兄なんか……大っ嫌いだ……っ』


 詰問の時に最後に吐かれた台詞は、いつぞやのものと同じもの。一度目は嬉しかった言葉に、
二度目はこれ以上ないくらいに落胆させられた。

 大事にしたかった。だけど、大事にしすぎた。俺とあいつと、どっちが発端だったんだろう。

 いつまで経っても、答えは出ない。
 妹として扱ってきた幼なじみと、恋人として付き合うことがここまで難しいとは思わなかった。



「まぁ、なんとなく事情は分かりましたけど。それでも今村さんに落ち度が無いわけじゃ
ないと思いますけどね」
「それに関しては……気の迷いって奴だな」
 直接言葉は出てこないものの、それが何を言っているのかは明らかだった。こちら側にも
擁護されるべき点は多々あるものの、だからといって犯してしまった行為を正当化する為の
ものにはならない。
「平松……すっかり落ち込んでますよ」
「……」
「見てらんないですよ、ほんと」
「……だろうなぁ」
 
以前なら、後輩に今のような歯に衣着せぬ言い方をされれば、すぐさま手を飛ばすか、
威嚇し返すのが常だった。

「はぁー……やべーよな」

 なのに今では、そんな気分はなかなか沸いてこず、逆に自分を責めるばっかりなのが、
どうにもらしくない。


328:Sunday
07/01/06 15:28:47 6BE9oh2Q

「最近会ってないしなぁ。どうすっか」
「? なんで会わないんすか? 早く言い訳しとかないと余計こじれると思うんですけど」
「そうなんだけどな……気が乗らなくてなー」
「ンな理由で連絡とらなかったら、取り返しのつかない事態になると思いますよ」
「……」
 意地っ張りな奴だから、いくら好きでいてくれたって態度に腹を立ててしまって衝動的な
行動に出るかもしれない。実際、それが原因で別の人と付き合ってた時期もある。

「……ちっ」

 あんな思いはもう二度としたくない。もう半年近く前のことではあるが、あの時の最悪な
気分は今でもはっきり思い出せる。
 
「よぉし電話かける!」

 気持ちの切り替えが早いのが、崇之の一つの特徴でもある。
 そんな思いに後押しされて、ポケットからシャキーンという擬音と共に携帯を取り出す。
素早くボタンをカコカコ押して紗枝の番号を液晶に映して、決意を込めた叫びを上げた。
何事かと傍を歩いていた通行人に振り返られるが、そんなこと気にしない。

「……」
「……」
「……電話、かけるぞ」
「どうぞ」
「……」
「……」
「……本当に、かけるぞ」
「……だからどうぞ」
「……」
「……」
「……止めるなら、今のうちだぞ」
「かける勇気無いんなら無いって言えばいいじゃないですか」

「ぐっ……!」

 
げしっ!


「痛って!」
 やっぱり勢いだけの行動には、限界があるようで。
 不躾な言葉ばかり浴びせかけてくる後輩に強烈なローキックを浴びせ、容赦ない攻撃を
加える。久方ぶりの制裁も、その理不尽ぶりは相変わらず健在のようである。
「何すんですか!」
「お前こそ、随分偉そうな口叩くじゃねーか」
 口元は笑っていながらも目はまるで笑ってない不自然すぎる表情で、不躾な態度を取る
後輩を脅しにかかる。

「あいつのことで頭抱える俺がそんなにおかしいか? あ?」

「え、あ、いや……お、おかしくないと思いまっす!」
 襟元をぐっと掴み上げて更に威嚇すると、兵太は直立不動になって声を変なところで
裏返らせながら言葉を返してくる。


329:Sunday
07/01/06 15:29:58 6BE9oh2Q

「けっ」
 戒めの意味を込め開いた方の手で生意気な口を叩いていた後輩の頭をバシッと叩くと、
押し飛ばすように手を放す。その後輩の方はというと、忘れかけていた恐怖感がぶり返して
きたのか、そのまま近づくことなくどんどんと距離をとっていく。

「おい、どこ行くんだよ」
「あ、じゃあ、俺、このまま、失礼、したいと、思い、ます、ええ」
「あー? お前の家こっちだろ」
「いえ、あの、ちょっと、所用を、思い、出しまして、はい」
 あまりの恐怖感にあてられたのか、まばたきの回数が段違いに増え、口調までカタカタ
と途切れがちになる始末。誰がどう見ても変な人にしか見えない。

「そ、それじゃあ失礼しまっす! 何とか頑張ってくださいっす!」
「おーい」

 すたこらさっさと逃げ出していく後輩に声をかけるも、振り返ることも無く逃げ去っていく。
やりすぎた気がしないでもないが、まあこれで奴の舐めた発言を今後封殺できるのだとしたら、
然るべき処置だったと考えるべきだ。
「……」
 さて。
「……」
 さてさて。あんなどうでもいいのは置いといて、問題は本題である。

 改めて液晶画面を見つめなおす。そこにある名前は、さっきと変わらず一番見知った、
一番大事なはずの存在の名前が表記されたままだ。
「……んー」
 立ち止まり、携帯電話の角をカツカツと額にぶつけながら、考え込む。こんなことなら、
さっきあんなやる気のないメール返さなければ良かった。

 話しかけるのはいいとして、問題はどうやって彼女と円滑に会話をするかだ。電話なら
お互い黙り込むわけにもいかないが、かといって直接会いに行く勇気は今のこの男には
無いわけで。他の女の子ならともかく物心つく頃からの知り合いであり、妹のように大事に
してきた娘が相手なのだから、それだけ慎重にならざるを得なかった。だったら理由が
あったにせよ浮気するなよという話になるのだが、今更そんなこと言っても仕方ない。

「……ちっ」
 素直に謝ったとしても、それをすんなり受け入れてくれるだろうか。疑惑だけであそこ
まで怒り悲しんだ彼女である。

(まぁ……あそこまで怒ったってことは、それだけ俺のことを好きだってことだよな)

 謝るだけでダメなら、せめて喜ばせてあげないといけない。ここ最近、彼女とは距離を
とっていたから、そのことで寂しさを感じていたのかもしれない。あの時、無言で横っ面を
叩かれたのも、そこらへんに一つの理由があるのだろう。
(……誘うか)
 併せてデートに誘えば、頑なな気持ちも少しは溶かすことが出来るのではなかろうか。
本来なら一緒にすべきものではないが、他の娘ならともかく、相手は紗枝なのだ。恋人と
しての面が薄く、未だに兄妹やら幼なじみとしての面が強いのなら、むしろその方がいい
かもしれない。謝るだけだと事態が好転しないのは、逆の立場ではあったものの既に立証
されている。色々と皮肉な話であるが。


330:Sunday
07/01/06 15:31:21 6BE9oh2Q

 場所はどこでもいいが、時期は早い方がいい。謝るのはその時だ。幸い明日はバイトが
昼過ぎには終わる。もし断られたら、次の約束を取り付けられるまで粘る。もし向こうが
指定してきた日時にバイトがあっても兵太と交代すればいい。奴が断ったら殺せばいい。
「……」

ピッ

 そこまで考えた時、親指が勝手に動いた。今の今まで尻込みしていたわりには、思ってる
以上に気持ちが逸っていたらしい。やっぱり、なんだかんだ言いながらも彼女の存在は
たくさんの意味で特別なのだ。

プルルルルルルッ、プルルルルルルッ

 コール音が鳴り始めてから一つ胸を撫で下ろす。着信拒否にされてなくて良かった。まあ、
向こうから何度か連絡もあったから元々その可能性は低かったろうけど、それでも安心
出来たことに変わりはない。

ピッ

『……も、もしもし』
 向こうが電話に出た途端、ホッと一息ついていた心臓が、軽く跳ね出す。声を聞く限り、
相手も若干身構えているようだ。早まる鼓動に連動するように、脳から信号を送ったわけ
でもないのに、脚が勝手に前へ前へと動き出した。

「あぁぁぁ、も、もしもし?」
『……何その声』

 せめて冷静な振りだけでもするつもりだったのに、裏返った第一声で余裕が無いのが
あっさりバレてしまった。らしくない、とことんらしくない。頭をガリガリと掻いて気分を
改めながら、咳払いをして声色も改める。
「あーー、元気か?」
『……誰かさんのおかげで元気じゃない』
「そっ…か。まぁ……そうだよな」
少し疲れたような声が、電話の向こうから聞こえてくる。やっぱり、随分と気持ちを
傾けてしまっていたようだ。
『何か用?』
「…いやな、明日バイトが昼上がりなんでな。その後にどこか出かけないかと思ってだな」
 やばい、焦りっぷりがいつまで経ってもどこまでいっても止まらない。一聞かれただけ
なのに二も三も答えてしまって、向こうが若干引き気味なのが見なくても分かる。
『……』
 その証拠に、デートのお誘いをしてみても反応が一向に返ってこない。いつもなら、
何かしらすぐに言ってくるのに。まあ、事態がいつもじゃないからこういう状況なのだが。
「おーい、聞こえてるかー?」
 不安に駆られて、問いかけ直してみる。
『そんな大声出さなくても聞こえてるよ…』
「……そうか。…で、どうだ?」
 もう体裁を保つのがもうどうでもよくなって、逸る気持ちを押しとどめるのを諦める。
というか、こっちも必死な様子を表した方が、向こうの気持ちもより揺り動かされるかも
しれない。まあ、そんな打算を考える以前に本当に必死なわけで。
『…この前、あたしが誘った時は断っただろ』
「まぁ…その罪滅ぼしも含めて、な。他にも色々話しないといけないこともあるだろ?」
『それは……そうだけどさ』
 拗ねだす紗枝を相手に、必死に食い下がる。


331:Sunday
07/01/06 15:33:15 6BE9oh2Q

 一時の紗枝の所業反応に、少しばかり鬱陶しさを感じだして浮気に走ってしまったものの、
やっぱり一番好きなのが今電話で話してる相手だっていうのは変わってなくて。それを
再確認させられてしまう自分の行動に、苦笑が漏れ後悔が募る。

「……ダメか?」

 だけどその感情を、はっきり口にするのは嫌なわけで。自分から一歩引いて、向こうの
反応を窺う。


『……………………………………………………わかった』


「そうか」
 長い沈黙の後の承諾の言葉に、崇之は携帯電話を握っていない方の手を、一瞬だけ強く
ぐっと握り締めた。

「どっか行きたいところとかあるか?」
『別にどこでもいいよ』
「分かった。んじゃ昼の一時に駅前で待っててくれ」
『うん』

 湧き上がる感情を右手右腕心臓だけに押しとどめ、他の箇所は平静を保ち続ける。明日
どこへ連れて行ってやろう。とにかく、機嫌を直しつつ楽しませてやらないといけない。
非常に難題ではあるが、何とかなるだろう。相手の性格は、ちゃんと把握しているわけだから。
「それじゃ、明日な」
 とりあえず帰って算段を立てないといけない。今まで紗枝とのデートで特に肩肘張らず
自然体で楽しんでたのが幸いした。普段との格差を見せ付ければ、それだけ機嫌を直せる
可能性も高くなる。
 アドレナリンが分泌され、急速的にテンションが高くなっていく。
『あ…崇兄』
「ん?」
 と、電話を切ろうとした寸前、向こうから呼び止められた。


『……遅れてもいいから、ちゃんと来てよね』


 一抹の寂しさと、ほんのちょっとの苛立たしさが入り混じったような声色が、そんな台詞を
電波に乗せて耳に届いてくる。
 

332:Sunday
07/01/06 15:34:16 6BE9oh2Q

 速足になりかけていた両脚が、再び速度を落としていく。少し俯いて、痒くもないのに
頭をぼりぼりと掻き乱す。

「……ああ、分かってる」
『……うん』
「それじゃな」
『…うん』

ピッ

「……っ」
 再び携帯電話の角で、自分の額をカツカツと軽く殴りだす。
 
 随分、寂しそうだった。会って浮気のことを問い詰めようだとか、会ったら思いっきり
殴り飛ばしてやろうだとか、そんな感情よりも、ただ本当に寂しそうな声が印象に残った。

(あ゛~~~~~っ!)

 自分の浅はかな行動に反吐が出る。寂しがり屋な奴だってことも、分かってたはずなのに。
彼女に対する想いや印象が、多々抜け落ちてしまっていて戸惑いを隠せない。

 まあ起きてしまった、過ぎてしまったことはこの際しょうがない。とりあえず、考える
べきことは、明日のことだ。とりあえず、本屋に寄って洒落た飯屋を紹介している本でも
探すことから始めよう。いつもはファミレスばっかりだったわけだし。

 ポケットに残っていた飴玉を袋から取り出し口に含むと、舌先で転がす。伝わる微かな
甘みが、ほんの少しだけ疲れた頭を癒してくれる。そこでようやく、ほんの少しだけ余裕を
取り戻すことが出来たのだった。

 
 しかししかし、晴れ間が垣間見れた彼の心とは裏腹に。広い空は今日もまた、いつもの
ように白く黒く濁り続けるのだった――





333:Sunday
07/01/06 15:35:57 6BE9oh2Q
|ω・`)……



|ω・´)9m ハナシガダルッダルナヨカン!



|ω・`;)ノシ ゴメンネ、トウカオソイクセニテンカイモオソクテゴメンネ


  サッ
|彡



334:名無しさん@ピンキー
07/01/06 16:02:10 jZV1jSab
なんかニヤニヤのしすぎで顔が攣りそう

335:名無しさん@ピンキー
07/01/06 16:06:44 OgoX6FD6
相変わらずGJです!次が楽しみだ~

336:名無しさん@ピンキー
07/01/08 00:14:06 5wr1xqv3
遅れながら>>404 GJ!

337:名無しさん@ピンキー
07/01/08 12:00:47 mC905XG4
「何ぃ告られたぁ!?」
「はっはっはっ、どうだ羨ましかろう」
「しかも相手は芹沢かよ!チクショウ狙ってたのに!」
「これでオレもめでたくモテナイ同盟から脱退だな」
「コイツ調子に乗りやがって!許さねぇ!」

「あ、おっはよー。お二人さん、朝からラブラブだねー」
「オッス。お、そうだ。『わたし、綺麗?』」
「ふががっ!?」
「あははははは!今時口裂け女かい!」
「いやー伸びる伸びる。いい男が台無しだなぁ?」
「ふがごっが、ふがぐがっ」
「ん?『 い い ぞ、も っ と や れ 』?」
「ふぉんふぁわふぇ……あるかぁぁ~い!」
「うわぁっキレた!」


「………朝っぱらから男3人でじゃれあうなよ」

338:名無しさん@ピンキー
07/01/09 01:54:42 BxhLH8nG
……どうして男の幼馴染は話題にされないのか。

339: ◆K4f74q9XQ6
07/01/09 10:26:59 irwRqGf5
>>44からの続きを投下します。
結局エロ無しで、今回で完結となります

340:それはまるで水流の如く 1
07/01/09 10:28:13 irwRqGf5

私が思っているよりも、人は私の事なんて気にしていないのかも知れない。
そう思う程に、新学期を迎えても、私の回りには何の変化も無かった。

冬休みの、たった一時間やそこらの出来事なんて、彼にとっては大した事じゃなかったみたいで。
学校が始まってから、顔を会わせた門田先生は、憎らしいぐらいにいつも通りだった。

私が意識し過ぎなのかな……。
いや、でも普通は意識するよね。
好きな人と手を繋いで、頭だけとは言えハグされて。
今思い返しても心臓がいつもより早く脈打つし、頭の芯は麻痺したみたいに真っ白になるし。

だけど。
どうしてあんな事をしたのか、なんて訊ける訳がない。


そんなこんなで、どうにも宙ぶらりんな気持ちを抱えたまま、慌ただしい日々は過ぎて行った。


マラソン大会も近付いた一月末の金曜日。
いつものように出勤すると、教務の玉置先生が私に近付いた。
「長谷部先生。今、茜ちゃんのお母さんから電話があって、茜ちゃん風邪でお休みしますって」
「茜ちゃんが?」
「インフルエンザも流行ってるし、そうじゃなきゃ良いんだけど」
言われてみれば、昨日は茜ちゃん、少し具合いが悪そうだったのよね。
クラスでも二人、風邪で休んでる子が居るし。
「長谷部先生も気を付けて下さいね」
「はい」
狭い教室の中じゃ、一人が風邪をひくと芋蔓式と言っても良いくらい、二人三人と風邪をひく。
それは勿論生徒だけじゃなく、毎日一緒に居る私達教師にも有り得る話。
一応、基本の手洗いとうがいは欠かさずやっているけども、ひく時はどうやったってひく。それが風邪ってもんだと思う。
玉置先生が自分の席に戻ったので、私は荷物を纏めると更衣室へと向かった。
私服からジャージに着替え職員室に戻る。一時間目の国語の用意をしていると、カタリと隣の席の椅子が引かれた。

341:それはまるで水流の如く 2
07/01/09 10:29:04 irwRqGf5
「おはようござい…ま……」
隣の席の主は門田先生。
顔を上げた私の言葉は最後まで紡がれなかった。
いつものようにジーパンにダウンジャケット、マフラーと言った姿の門田先生の口許に、見慣れない代物が見えたせいだった。
「おはよ」
少し掠れた、篭った声。
眉間に皺を刻んだ門田先生は、マフラーを椅子の背もたれに掛けると鞄を机に置いて椅子に腰を下ろした。
「門田先生…風邪ですか?」
「あ?…あァ。ちょっと喉がな」
忌々し気にマスクを引っぺがし咳払い。
思わず眉根を寄せた私の方を見る事もなく、門田先生は今日の授業の準備を始めた。
「大丈夫?熱は?」
「薬飲んで来たから。…それに金曜だし」
「…どんな理屈ですか、ソレ」
「明日明後日休めるし、一日ぐらい無茶しても平気って事」
あっさりと言い切りながら、それでも喉の調子が悪いらしく、喉の奥で咳をする。
その様子を横目で見ながら、私はひっそりと溜め息を吐いた。
─子ども達にうつったらどうすんのよ。
子ども達から貰ったのか、門田先生の日頃の不摂生のせいなのか、それはこの際問題じゃない。
問題があるとすれば、子どもを預かる身であるなら、悪影響を与える状態で学校に来るべきじゃないって事だ。
「……無理しないで下さいよ」
門田先生と子ども達。それぞれに対する心配と不安を半分半分で告げると、門田先生は横目で私を見て、分かってるとでも言いたげに小さく笑った。



342:それはまるで水流の如く 3
07/01/09 10:30:13 irwRqGf5

放課後。
子ども達を送り出して職員室に戻ると、先に教室に戻っていた門田先生が、ノートパソコンと格闘していた。
酷い猫背でキーボードを叩いては、時々ゴホと喉を唸らせている。
「お疲れ様です」
「ん?お疲れ」
声を掛けて席に座る私に、一瞬視線を寄越しはするけれど、直ぐにその視線はディスプレイに向けられた。
職員室には共用のデスクトップ型パソコンが四台設置されていて、それとは別に二台のノートパソコンもある。
父兄への配布プリントや学校便りは、基本的に学校のパソコンで製作する事になっているからだ。
ひょいとディスプレイを覗き見ると、二月に配布する学校便りの文字が見えた。
「風邪、大丈夫ですか?」
「ん~、まぁまぁかな」
話し掛けても、半分ぐらいは聞いてないんだろう。
生返事にも似た口調で言いながら、門田先生は眉間に皺を刻んだ。
学年別に配布する学校便りの製作は、主に門田先生の担当。
生徒指導や広報と言った風に、教師にも色々と役割があるのだ。

雑務をこなしながら時折隣の様子を伺う。
不機嫌そうな表情は変わらないけれど、手は休む事なくキーボードを叩き、視線は会議の内容をまとめた資料とディスプレイを往復している。
宿題にしていたプリントを片付け、来週の授業で使う教材を準備すると、今日の仕事は終わり。
黙々とそれらをこなした頃には、もう外は薄暗くなっていた。
「終わったぁ」
カクリと門田先生が頭を垂れたのは、私がジャージから私服に着替え更衣室から戻った時だった。
「お疲れ様です」
「ん~。あ、悪ぃんだけどコレ、印刷頼めるか?」
「良いですよ」
フロッピーディスクを抜き取った門田先生は喉を鳴らしながら顔を上げる。
いつもなら印刷まで自分で済ませるんだけど、流石に今日はそこまで気力がないらしい。
快く了承した私がフロッピーディスクを受け取ると、門田先生はもう一度「悪ぃな」と苦笑した。
「来週で構わねぇから」
「今日やっちゃいますよ。もう仕事もないし」
「働き者だねぇ、長谷部センセは」
「わお、皮肉ですか?」
「誉めてるんだよ」
冗談めかして態と唇を尖らせた私を見て、門田先生はいつもの薄い笑みを浮かべる。
私も頬を緩めると、手近なパソコンを立ち上げて、受け取ったばかりのフロッピーディスクを差し込んだ。

343:それはまるで水流の如く 4
07/01/09 10:31:13 irwRqGf5

プリントアウトを終え印刷室へと向かう。
人気のない印刷室で印刷機を回している間にも、外はどんどん暗くなって行く。
何気無く時計を見上げると、午後五時を少し回った時刻。
特に用事のない先生方が次々に学校を出て行く中、私はぽつんと印刷機の前で印刷が終わるのを待っていた。
─大丈夫なのかな、門田先生。
一人になると想うのは、やはりと言うか門田先生の事。
風邪が心配だから、なんて理由じゃないのは、もう充分分かっている。
この際開き直らせてもらうけど、好きな人が風邪をひいて心配しない方がどうかしてる。

とは言っても、門田先生は実家暮らし。
私みたいに独り暮らしだと、色々と大変だろうけど。おばさんがいるんだから、早目に帰って休む方が良いんだろうな。
お見舞いなんてしなくても、たぶん来週にはケロッとした顔で学校に来るだろうし。

そんな事を考えているうちに、印刷機が動きを止める。
吐き出された藁半紙の束を掻き集め、明かりを落として職員室に戻ると、玉置先生が一人残っているだけだった。
「あれ?……門田先生は…」
門田先生の机には、まだ鞄が残っている。
いつもなら煙草を吸いにパーテーション奥の来客室にいるんだけど、奥にも人の気配はない。
プリントを机に置いて、きょろきょろと辺りを見回す。
せめて一声掛けて帰らないと、このままってのはどうにも落ち着かない。
すると、私の様子に気付いた玉置先生が、資料から顔を上げて私に声を掛けた。
「門田先生ですか?」
「あ、はい。印刷が終わったんで」
「少し休んでから、薬かっぱらって帰るって。保健室に行きましたよ」
「じゃあ、保健室見て来ます」
礼を言って職員室を出る。その足で直ぐ向かいの保健室の扉を開けると、電気もついていない部屋の中で、門田先生がベッドに倒れているのが見えた。

344:それはまるで水流の如く 5
07/01/09 10:32:30 irwRqGf5
「ち、大丈夫ですか!?」
思わず駆け寄る私に気付き、門田先生がのっそりと体を起こす。
具合いが悪いのか何なのか、半目で私の姿を確認すると、門田先生はまたベッドに転がった。
「薬、場所分かんなかったから……人前で転がる訳にゃいかねぇだろ」
「……あぁ」
言われて納得。
養護の池上先生は、今日は昼から出張中。それに加えて、仕事に対するプライドの高い門田先生が、同僚の前で情けない姿を見せる筈がない。
熱がどれくらいあるのかは分からないけれど、門田先生が平気な顔をしてるからって、見抜けなかった私も馬鹿だ。
「印刷、終わりましたから。大丈夫ですか?」
「たぶん。……チィちゃん、薬持ってねぇ?」
「あ~…絆創膏しかないですね」
辛そうに額に手を遣りながら門田先生が軽く咳をする。
生憎、私も薬のある場所なんて分からない。
心配になって近付くと、門田先生は目を閉じたままで深い溜め息を吐いた。
「帰れますか?」
「……ん~」
私の声に門田先生は小さく頷く。けれど一向に動く気配はない。

どうしよう。
放って帰る訳にも行かないし……。

ただただ門田先生を見つめるしか出来ない私は、困り顔のまま手近な丸椅子を引き寄せた。
そんな私の気配を察したか、門田先生が薄らと目を開ける。
椅子に座る私を見て、門田先生は額を滑らせるようにして前髪を掻き上げると、困ったように小さな笑みを浮かべた。
「何で帰らないんだ?」
「何でって……」
「少し休んだら俺も帰るし、チィちゃんが心配するこっちゃねぇだろ?」
「でも…」
門田先生の声は優しい。
子どもを叱る時のような、言い含める時のような穏やかな声。
それでも席を立てずにいると、門田先生は再び体を起こした。
「そんなに心配すんなって。単なる風邪だろ」
「…でも……心配だし」
「何で」
「っ……」
門田先生の表情は変わらない。
ただ視線は真っ直ぐに私に向けられていて、私は思わず視線を逸らして俯いてしまう。

答えは簡単。
だけどそれを告げるのは、はっきり言って難しい。

345:それはまるで水流の如く 6
07/01/09 10:33:31 irwRqGf5
言い淀む私の事をどう思ったのかは分からないけれど、門田先生は一度大きな咳をすると、深々と溜め息を吐いた。

「……んな顔されっと、期待すんだけど」

…………はい?

─期待……する?

言われた言葉を脳裏で反芻。耳の奥が張り詰めたような錯覚が、私の思考回路を奪う。
顔を上げると不意に私の体に強い圧力が掛った。



目に映るのは黒い髪と白い壁。
身体中を包むのは熱い何か。



抱き締められていると気付いたのは、後頭部に回された手が私の髪を優しく梳くのを感じたからだった。

「あんま心配されると、俺の事が好きなんじゃねぇかって思う訳。……まぁ、あながち間違いじゃねぇんだろうけど」
「え……あ、えぇ!?」
「うっさい」
私を抱き締めたまま、門田先生が小さく笑う。
動揺を丸出しにした私は彼の腕の中で目を丸くして、身動きも出来ない。
私の髪から首筋、耳の裏へと触れる門田先生の指が熱い。
「……勘違いなら謝るけど、チィちゃん、俺の事好きだろ」
熱い吐息が耳に掛る。
問掛けじゃない。
断定的な口調で告げられた言葉が頭の中を揺さぶる。
その声は少し震えていたけれど、それに気付いたのはかなりの時間が経ってからだった。

346:それはまるで水流の如く 7
07/01/09 10:34:40 irwRqGf5
真っ白になった頭の中で必死になって門田先生の言葉を辿る。
答えは遠の昔に分かっているのに、喉の奥で色んな言葉が詰まっていて、声が上手く出せない。
耳の後ろに心臓が移動したみたいに、うるさくて何も聞こえない。体の芯が酷く熱くて、このまま蒸発しそうな錯覚を覚える。
「返事は?」
黙りこくった私を促すように、門田先生が少しだけ腕の力を緩めた。
でも、まだ顔は見えない。
どんな顔で─どんな眼差しでいるのか分からないのが不安を煽る。

気付けば私は門田先生の背中に手を回していた。

「好き…です。……凄く」

しがみつくようにして力を込めた手とは裏腹に、私の声に力はない。
だけど、理性や羞恥心を無理矢理押さえ込んだ言葉は、静かな保健室の中でやけにはっきりと自分の耳に返って来た。

「ナァくんじゃなくて…門田先生じゃなくて。……直樹さんが、好きです」

想いが完全に伝わる事は有り得ない。
心の奥で感じる気持ちを言葉にするのは余りにも難しい。
それでも、言葉にしないよりはする方が、自分の想いは伝わりやすい。

いつだったか、私の先生が言った言葉だ。
その時は良く分からなかったけれど。今は先生の言いたかった事が良く分かる。

伝えなきゃ駄目なんだ。
気持ちも。想いも。心の中で感じる全てを、言葉に出来る限りは。

色んな気持ちが内混ぜになっていて、動揺しているのか興奮しているのか。
ただ、ぎゅっと門田先生の服を掴んで目を閉じていると、門田先生の腕は再び力を増して私の体を包み込んだ。
「良かった。勘違いじゃなくて」
「……?」
「俺も好き。千草の事」
はっきりと私の名前を口にして、門田先生は私の顔を覗き込んだ。
目を開けると、門田先生の笑顔が目に入ったけど、それはいつもの薄い笑みじゃない。
冬休みに見た、酷く穏やかな眼差しと優しい笑顔が、私の視界いっぱいに映る。
「チィちゃんじゃなく、長谷部センセでもなく、俺も千草の事が好きだから」
ゆっくりと門田先生の顔が近付く。
熱った頬とジンジンと響く耳鳴りの中、反射的に強く目を閉じると、熱く柔らかな感触が私の唇に触れた。

347:それはまるで水流の如く 8
07/01/09 10:37:09 irwRqGf5
しがみつく手に力を込めながら思わず息を飲む。
私の頭を支える門田先生の指が耳に触れる度にくすぐったいけれど、それよりも唇に与えられる刺激の方が強くて、頭の中は完全に真っ白になっていた。
息をするのも忘れて、門田先生にしがみつくのが精一杯。
二度三度、緩く唇を吸い上げられ解放されると、私は大きく息を吐く。
そこを狙ってでもいたかのように、再び唇が塞がれた。
あらがう間もなく舌先が差し込まれ、私の舌を絡め取る。
「っ…ん……」
鼻に掛った、声にもならない音が鼻先から漏れた。
少し苦い門田先生の舌が私の舌に絡められ、その感触が私の頭を麻痺させる。
ドクドクと耳のすぐ近くで聞こえる鼓動がうるさい。
少し開いた唇の隙間からあえぐような呼吸をしていると、やがて名残惜しそうに門田先生の唇が離れた。
「……熱、上がりそう」
そんな事を呟いて私の肩に顔を埋める。
時間にしてほんの数秒。
だけど恥ずかしさは並大抵じゃない。
顔を見るのも見られるのも恥ずかしい。
照れ隠しに私も門田先生の肩に顔を押し付けながら、もう一度門田先生を抱き締めた。
「熱上がったら、チィちゃんのせいな」
「……自業自得って言いません?」
「言わね」
私の後頭部を撫で回す門田先生がおかしくて、ついくすくすと笑いを溢すと、門田先生は不服そうに、更に私の頭をぐしゃぐしゃにした。



348:それはまるで水流の如く 9
07/01/09 10:38:15 irwRqGf5

いつまでも抱き合ってる訳にはいかないと、保健室を出たのは数分後。
私と門田先生は、揃って帰路についていた。
まぁ、名目上は風邪の門田先生を私が駅まで送るって事にはなってるんだけど。
私の手は、しっかりと門田先生の手に繋がれている。
─誰かに見られたらどうすんのよ。
なんて事を考える。

でも。
離せないし、離したくない。

「熱だけでも計れば良かったな…」
再びマスクを着けた門田先生は、時折咳を繰り返す。
隣を並び歩く私は同意も否定も出来ず、曖昧に頷いた。
体温計の場所も分からなかったんだから仕方ない。
「あ、そうだ」
もうすぐ駅への分かれ道と言う所まで来て、不意に門田先生が立ち止まった。
交差点の信号は赤。
前にも一度、こんな事があった気がする。
門田先生が私を見下ろすけれど、マスクとマフラーに顔の半分以上が隠されていて、その表情は全然読めない。
─……何か…ヤな予感。
つられて門田先生を見上げると、門田先生は目を弧にして口を開いた。
「チィちゃんち、近いよな」
「……近いけど…」
「泊まって良い?」

…………。

「ハイ?」

思わず固まった笑顔で首を傾げた私だけど、門田先生は飄々とした態度でさらりと言い切った。
「離れ難いと思わねぇ?」
「っ……!!」
へ、変化球とかナイ訳!?この人はっ!
直球ど真ん中ストレートな言葉に、私の言語中枢は真っ二つ。
「俺は離れ難いけどな」
目を真ん丸にして凝視する私の前で、空いた手でマスクをずり下ろした門田先生は面白そうに笑う。
「な、う……あ…」
パクパクと開いたり閉じたりする隙間から声は出るけど、言葉になる気配は全くない。

349:名無しさん@ピンキー
07/01/09 10:39:13 OJhoEUYK
支援!

350:それはまるで水流の如く 10
07/01/09 10:39:40 irwRqGf5
いつの間にやら青に変わった信号で、通り掛る人達が私達をチラチラ見ては通り過ぎる。
「……へ」
「ン?」
「変な事…しない?」
返事を待つ眼差しに耐えきれなくなり、俯いてボソボソと呟く。
真っ赤な頬はたぶん、髪に隠れて見えないだろう。良い歳してと思うかも知れないけど、恥ずかしいもんは恥ずかしいんだって。
私の表情は門田先生に見えない。私にも門田先生の表情は分からない。
でも、返ってくる答えは容易に想像がつく。
「保障は出来ねぇな」
予想通りの答えを返した門田先生は、私の手を引くと駅ではない方角に向け歩き出した。
「な、ナァくんっ!」
「『直樹』」
「へ?」
マンションへと半ば引きずられるような形で歩きながら抗議にも似た声を上げる。
けれど門田先生は、私の方なんて見向きもしない。
「直樹って呼べるまで帰らねぇ」

……。


…………何ですと?


「さっき呼んでくれたろ?『直樹さん』って」
「いや、アレは不可抗力で!て言うか風邪なら帰ろ!?」
「嫌。千草に看病して貰う」
「ぐっ!」
どさくさに紛れて名前を呼びながらも、門田先生の歩みが緩む様子は欠片もない。
子どもの我が儘だって此処まで酷くないんじゃない?
第一、こんな調子じゃあ心臓が幾つあったって足りやしない。
「いつまでも餓鬼の頃みてぇな呼び方しててもしゃあねぇだろ。もう、単なる幼馴染みじゃねぇんだからさ」
必死になって制止をかけようとする私に、門田先生はニヤリと笑って足を止めた。
見下ろす表情はいつものそれで。
この九ヶ月、見飽きるぐらいに見慣れた薄い笑顔をした門田先生に、勝てる筈なんてない。
ずるくて、意地悪で、人を玩具にして楽しむこの人の性格は、もう嫌と言う程分かっている。
「……悪化しても知らないから」
軽く睨み上げながら精一杯の憎まれ口を叩いた私は、繋いだ手に態と力を込めて歩き出す。
門田先生は咳にも似た笑い声を溢したけれど、それ以上は何も言わずに、素直に私に手を引かれていた。


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