06/11/22 09:49:13 PdtH9hTI
気を取り直して>>293の続き。
「うん、やはり君の料理は絶品だな。この味噌汁一つ取っても……」
「そんなにベタ褒めするようなもんでもないけどな」
そう言いながら那美は美味そうに料理を食べる。
喜んでくれるのは素直に嬉しいが、味噌汁でそんな褒められてもな……。
「ごちそうさま。美味しかったぞ」
「お粗末さま」
俺も那美も食べ終わり、食器を一緒に片付ける。
「那美、俺はこの後学校行くから」
「わかった。行ってらっしゃい」
お前も来れたら来い、そう言おうとしたが止めた。
笑みを浮かべながら行ってらっしゃいと言う那美を見たら、何も言えなかったからだ。
こいつだって学校に行きたいはずだ。高校の時みたいに……。
「……んじゃ、行って来る。昼には帰ってくるよ」
「ああ、わかった」
「んで帰って来たら、わかってんな。リハビリついでに買い物だ」
「うっ……あ、ああ。わかっている」
その返事に満足し、俺は再度行って来ます、と言って家を出た。
風が吹く。本格的に冬が始まり、最近はこの風も冷たくなってきた。
……冷たい風が吹くと、今だに思い出す。あの日の事を……。