忍たま乱太郎のエロ小説at EROPARO
忍たま乱太郎のエロ小説 - 暇つぶし2ch600:名無しさん@ピンキー
07/08/04 22:47:41 3CucRPTD
いやいや町の忍術教室でやったかもしれないぞ房中術w

601:名無しさん@ピンキー
07/08/04 22:59:51 odiitDI3
習ったかもしれないけど何の事を言ってるのか分かってない小松田でw

いまだに赤ちゃんはコウノトリさんが運んで来ると思ってます

602:名無しさん@ピンキー
07/08/04 23:28:47 eJ95tcvv
乱太郎は人選誤りすぎww保健委員なら左近か数馬に聞けww

603:名無しさん@ピンキー
07/08/05 00:12:16 mFX/6bF6
>>596
「土井先生 童貞」でぐぐったら出てきたwww

大木先生は杭瀬村で夜這いしまくっていそうだ
しゃどう先生やマツチヨ先生は……?

604:名無しさん@ピンキー
07/08/05 12:43:59 T9UNJawq
保険委員と言えども2、3年生じゃセクロスを説明するにはまだ若いさ。多分
新野先生早く助けてやれw

605:名無しさん@ピンキー
07/08/05 15:20:01 rHZFFvSc
タカ丸あたりに聞けば一発な気がしてきた

606:名無しさん@ピンキー
07/08/05 18:59:40 hU9yDbNA
>>605
高○は団蔵タイプな気がするw

607:はぐみひみつにっき
07/08/05 22:16:58 ZcLuptKT
流れぶった切ってすまん。
本編の前振りで書いてたのが長くなったんで、ちょっと番外。
はぐみでひみつにっき。



『虎若』

今日は、生物委員会の日だった。
でもぼくはそうじ当番だったので、委員会には出なかった。
なので夕方、三治郎に委員会のことを聞いた。
そしたら三治郎はこっそりと、実はぼく、委員会で『乱太郎のぎもん』について
聞いてみたんだ、といった。
ばくだん発言だ。すごくおどろいた。
さいしょ一年生だけで話してたけど、よくわからなくて、でも竹谷八左ヱ門先輩が
実習でいらっしゃらなかったので、みんなで伊賀崎孫兵先輩に聞いたのだそう。
三ちゃんは意外と勇気がある。
それでわかったのと聞いたら、けっこう淡々と教えてくださったそうで、
だいたいわかった、ということだった。
だいたいというのが気になったので、ちょっとくわしく聞いてみたけど、多分
あってるみたいだった。
孫兵先輩も勇気があると思う。ぼくはちょっと尊敬した。
考えてみれば、生物の生態に関しては、孫兵先輩は学園内でもかなり詳しい方だし、
こういう話の先生には向いているんじゃないだろうか。
ちょっとびっくりしたけど、わかってよかった、と三ちゃんが照れながらいうので、
ぼくも照れたけど、よかったと思った。

ただ一つ気がかりなのは、三ちゃんが、父上と母上は、ぼくの卵の殻も取っておいて
くれてるかなあ、と呟いていたことだ。

乱太郎に教えてあげようかなというので、それはとりあえず止めておいた。
明日、竹谷先輩に相談してみよう。

『三治郎』

夕刻、部屋で兵太夫と歓談。新しい踏んだらふっとぶ罠について相談。
次回は踏んだらふっとぶ湯船に決定。
図面を起こしながら、委員会の件について話す。虎若と同じくらいおどろいていたけど
やったなと喜んでくれた。うれしい。
でも話しているうちに、兵太夫はなぜかだんだん無口になってしまった。
どうもぼくの知識は、何かがおかしいらしいと推測。
さんざん聞いたら、まず入れる場所がちがう、といわれたが、意味がわからない。
もっと教えてほしかったけど、頑固な兵ちゃんは、それ以上はどうしても
教えてくれなかった。
けんかになる前に、早々に布団をかぶって就寝。
明日また、孫兵先輩に聞いてみることとする。


608:はぐみひみつにっき2
07/08/05 22:19:19 ZcLuptKT

『伊助』

今日の朝食・ご飯、大根の味噌汁、アジの干物、青菜のおひたし、香の物。
庄左ヱ門は最近ずっと、ご飯を残している。
残したぶんはしんべヱが食べてくれるけど、だんだん痩せていくので心配だ。
なんだか思いつめた顔をしているのも気になる。大丈夫だろうか。

今日の昼食・実習だったので梅干お握り。香の物。山で採ったアケビ少々。
午後は委員会だった。委員会室に行ったら、久々知先輩に、一年どうかしたのか、
と聞かれた。
生物委員の竹谷先輩が、委員会の一年生から『ちょっといいにくいこと』を聞かれたらしい。
あいつ責任感が強いから、どうしようってすごく悩んでるんだよな、とのこと。
生物委員といえば虎若と三治郎。発端はたぶん、ときどき大胆な三ちゃんだろう。
ろ組とい組にも飛び火しているのか。僕こそどうしよう。
考えてたら、もしかして伊助も聞きたいのか、と遠まわしに言われた。
ちょっと恥ずかしかったけど、僕は大丈夫ですと答えて、先輩と話をした。

先輩も昔、こういうことを同級生から相談されたときに、説明するのが恥ずかしくて、
逃げてしまったことがあったそうだ。
そしたら後々、そのことをきっかけに、その同級生が『口に出すのもはばかられるような、
とっても悲惨な目』にあってしまったので、今でも後悔しているのだそう。
なんだか胸が痛くなった。

すみっこでひそひそ話してたら、タカ丸さんが三郎次先輩を引っ張って乱入してきた。
明るい顔で、子どものころはそういうこと、気になるよねーとのほほんと言われて、
ちょっとだけ気が軽くなった。
でも、あんまり早いうちからそういうことしてると、すぐに飽きちゃうから、程ほどに
しておいたほうがいいよ、ともいわれた。
タカ丸さん自身も、何回か『打ち止め』までいったら、今ではもうすっかり『枯れちゃった』
のだそうだ。
人生つまんなくなるから気をつけなね、といわれた。
後半よくわからなかったけど、とりあえず三郎次先輩と、タカ丸さんはまだまだ若いですよと
なぐさめておいた。
久々知先輩は青くなって、お前、どん引きだ、といった。

今日の夕食・ご飯、きのこの味噌汁、野菜の煮物、冷奴、香の物。
庄ちゃんは、予習復習もしないでもう寝ている。
うなされているので、とても気になる。
さらに気になるのは、別の部屋から、ほかの誰かのうなされ声も聞こえてくることだ。
僕は友達として、なにができるだろう。


609:名無しさん@ピンキー
07/08/05 22:21:18 T9UNJawq
バロスったwwww孫兵ダメスwww
踏んだらふっとぶ湯船にも、不覚にもワロタ
GJ!!

610:はぐみひみつにっき3
07/08/05 22:26:48 ZcLuptKT

『金吾』

○月×日
快晴。気温やや高め。
は組の一大騒動、事態の収束は未だ見込めず。
乱太郎活気なし。庄左ヱ門疲労困憊。友の窮地に、剣術三昧の己が知識のなさ、
恥ずるばかり也。

委員会出席。滝夜叉丸先輩に呼び止められる。
昨日タカ丸さんから、は組の騒動について聞いたとの由。事態の拡大甚だしき。困惑す。
が、乱太郎には先刻、先輩が『真実をご教授』くださったとの由。
安堵と、また少なからず興味を覚える。
内密に、ご教授の内容をば問うてみたが、なぜか先輩の話は白菜についてのみ。
無知なれば理解不能。傍らに次屋先輩、時友先輩おられたが、ともに無言。
次屋先輩、四年生超ヤバイと呟かれしが、意味不明也。

会話中、七松先輩なぜか窓より入室。
笑顔満面にて、その手の話なら任せておけ、わたしがばっちり指導してやる!と仰せられ、
よくわからぬまま全員校庭に連行される。
本日は、塹壕でなく蛸壺掘り。一本松の下、十尺ばかり掘り進むよう命じられ、
かようにいたせば、土の中より油紙に包まれし、数冊の本発見。
中身はどうやら絵と、文少々にて構成されしもの也。
今日はこれを『忍たまの友』と思え、との仰せにて、こはいったい何かと問えば、
図書室より借受されし『秘密文書』とのお答え也。

忍術学園図書室には、六年生だけが、金銭を払うことにより閲覧を許されし
『秘密文書』ありて、こは先生方にも秘密とされ、隠し場所も、代々の図書委員長のみに
伝えられしものとの由。
生徒間の金銭やり取りは如何と思われしが、隠匿に費用がかかること、また
『あだるとは有料』なものなれば、仕方がないとの先輩の仰せ也。
以下秘密文書表題。
『壮絶・かまきり女対くも男』
『淫乱奥様のナマ腰巻き・さくらんぼくん剥かず丸かじり』
『解決熟女・美少年集団ハメ殺し七日間』
思い出すだに恐ろしげ也。

滝夜叉丸先輩、これはなにかの極意書ですか、と質問さる。
七松先輩、初心者向けじゃないからある意味そうかもな!と破顔さる。
常のものは読み飽きて、最近は『まにあっく』なものに手を出されているとのこと。
だからちょっと刺激強いかもしれないけど、まあいいよな!との仰せ也。
意味わからず。
次屋先輩逃げ腰、時友先輩ただぼんやり。滝夜叉丸先輩のみ、自分にかかれば
如何なる難題もお茶の子さいさいと、意気揚々也。
が、六年生のみに閲覧を許されるとは、存外貴重な一品と思われ。
秘密文書ならば、下級生が閲覧してよいものか、また七松先輩に迷惑がかからぬか、と
迷うが、かわいい後輩のために、先輩が一肌脱ぐのは当然のことだ!とのお言葉にて、
全員ありがたく拝見いたすこととす。


611:はぐみひみつにっき4
07/08/05 22:31:08 ZcLuptKT

夕刻。
滝夜叉丸先輩、高熱にて寝込む。
次屋先輩、行方不明。
時友先輩、居室に引きこもって食事にも出てこないとの騒ぎ也。

秘密文書は確かに秘蔵の品にて、まさしく超常、驚天動地の知識が詰まりしもの也。
しかるに極意とは深きものにて、未熟者には甚だ毒となりしもの也。
すべては己の鍛錬不足と理解せしが、某も脳内だけでなく臓腑まで、桃紫に染まりし
心持ちにて、眩暈、嘔気止むところを知らず、食事も喉を通らず。
これがきり丸言うところの『大人のかいだんのぼった』状態か。
むしろ、奈落に落ちた心境也。



まんじゅうこわい。



『喜三太』

(中略)というわけで、気になるのは、同室の金吾のことです。
きのうのゆうがたから、きゅうに調子がわるくなって寝込んでるんですが、ぼくのなめさんを
いつも以上にいやがる、というかこわがるし、それに、夜中にすごくうなされて、
ねごとをいうんです。
ずっと、まんじゅうこわい、まんじゅうこわい、といってるので、耳元で、まんじゅうは
こわくないよ、おいしいよ、といってあげたのですが、よく聞くと、まんじゅうじゃなくて、
毛まんじゅうこわい、といっているんです。
毛まんじゅうってなんでしょう。ぼくは食べたことがありません。
それで、食べ物にくわしいしんべヱに聞いたのですが、しんべヱも知らないというんです。
しんべヱが知らない食べ物があるなんて、すごくおどろきました。
組のみんなにも聞いたけど、庄左ヱ門も知りませんでした。
担任の先生はお二人ともいらっしゃらないので、委員会の先輩に聞くことにしました。

食満先輩といって、六年生で、とてもものしりで、しんせつな先輩です。
しんべヱと、ろ組の平太もさそって三人で、毛まんじゅうってなんですか、と聞きました。
いっしょにいた富松先輩は、お茶を吹いたのですが、食満先輩はとても静かに、小平太が
いっていたのはこれか、とつぶやかれました。
先輩は、うでをくんで、しばらく考えこんでました。
ぼくらが、きたいしながら待っていたら、そのうちあきらめたように、ちょっと前置きが
長くなるがいいか、とおっしゃいました。
大丈夫です、と答えたら、とてもむずかしい顔をしながら、『世界がどろどろした
かたまりだったころ』について、おはなしをしてくださいました。

先輩のおはなしは、おもしろかったです。
でも、毛まんじゅうのなぞはわかりません。
前置きがおわったらおしえてくださるそうですが、どうも長くなりそうな気配です。
ぼくははやく知りたいです。だってなんだかおいしそうだから。
なのでしつもんです。与四郎先輩は毛まんじゅうってなんだかしっていますか。
しっていたら、ぜひおしえてください。
おへんじまってます。

(山村喜三太、風魔への手紙より抜粋)


612:はぐみひみつにっき5
07/08/05 22:35:17 ZcLuptKT

『しんべヱ』

きょうは図書室で、まんじゅうについてしらべました。
たくさん本をしらべたけど、毛まんじゅうはのってませんでした。
でも、そういえば、昔パパに一回、聞いたことがあったのを思い出しました。

毛まんじゅうとは大人の食べ物で、一回食べるとやめられないそうです。
南蛮には、金色のものもあるといってました。
しんべヱが大きくなったら、いっしょにたべにいくか、といってたので、
とても楽しみです。
大人になったら、組のみんなもさそって、みんなで食べに行こうと思います。

食満先輩のおはなしは、かみさまが海をかきまぜて島を作ったところまできました。
とてもおもしろいです。
でも、まんじゅうはあまりかんけいない気がします。
でも先輩は、脂汗を流しながらしんけんに、話してくださるので、いいと思います。
あとお話のあいだ、富松先輩がよこでずっと、逃げてもいいと思いますよ、と
いっているのですが、なんのことだろう。


613:はぐみひみつにっき6
07/08/05 22:37:22 ZcLuptKT

『団蔵』

きょういいんかいにいったら文次郎先輩に、一年ども、忍術でそうだんがあるなら
じぶんにせんか、といきなりおこられた。
なんでおこるんですかときいたら、食満先輩や七松先輩が、さいきん、は組のせいとから
いろいろそうだんされてて、それが気にくわないらしい。
ぴんときて、それたぶん、忍術のはなしじゃありませんといったけど、うそをつけと
またおこられた。
しかたないから、こういうことだとおもいますとはなしたら、それは忍術かんけいないと
ものすごくおこられた。
りふじんだとおもった。
でも、ともだちがすごくなやんでることなんです、といったら、一年ボーズがくだらんことで
なやむな、そんなひまあったらべんきょうしろ、といわれた。
ますますりふじんだとおもった。
ぼくは庄左ヱ門や伊助から、ぜったいきんしされてるから、せつめいしてあげられないけど、
乱太郎はすごくなやんでるのに、とおもったらはらがたった。
先輩は、そういうのはタケノコ卒業してからにしろ、ともいった。
うちは八百屋じゃなくて馬借なので、ぼくはタケノコじゃなくてうまですといったら、
一年ボーズがなにをこしゃくなとまたおこられた。

三木ヱ門先輩がまっかになって、そういう話題はもうやめてください、ととめにはいったけど、
文次郎先輩に『ちょーくすりーぱー』をかけられて気絶した。

文次郎先輩はまた、四年くらいまではタケノコにきまっとる、それがふつうだ、といった。
ぼくは、こわかったけど、すごくはらもたってたので、いいえぼくはぜったいうまです、と
いいはった。
そしたら文次郎先輩が、かっかしながら、ばかもん、うまってのはこういうもんだといって、
三木ヱ門先輩を『ほーるど』したまま、はかまとふんどしをぬいだ。
ものすごく男らしいぬぎっぷりだった。
ぼーぜんと見ていた、い組の佐吉と神埼左門先輩が、なんかもう、わけがわからないと
つぶやいた。
ぼくもさっぱりわからなかったけど、これはどうやらうまにかんすることらしいので、それなら
馬借のいじにかけてまけられないとおもって、じぶんもぬいで、先輩としょうぶした。



ぼくがかった。
やったぜ父ちゃん。


614:はぐみひみつにっき7
07/08/05 22:39:29 ZcLuptKT

『兵太夫』

夏のなごりの入道雲は、今日も空にあざやかだけど、ぼくの心は晴れない。
友達の成長を、喜ぶべきか、なやむべきか。
本当なら喜ぶべきなんだろうけど、両手ばなしとはいかない感じだ。
だって三治郎の知識は、一部だけどおそらく、決定的な部分でまちがってる。
しかもだんだんひどくなる。
三ちゃん。多分だけど、ぼくは人間は、おしりの穴からは生まれないと思うんだ。
庄左ヱ門は乱太郎でいっぱいいっぱいだから、こっちはぼくと虎若でなんとかしようと
決めたけど、でもどうしたらいいんだろう。
こんなのすっごく、説明しにくい。からくり図のほうがずっと簡単だ。
誰かに相談できないだろうか。

今日も悩みながら委員会に行ったら、仙蔵先輩がいきなり、一年は組は
すごいな、と言った。
何のことですか、と聞いたら、戦う会計委員長潮江文次郎先輩が、は組の生徒との
勝負に負けて、落ちこんでいるのだ、と教えてくれた。
あの文次郎先輩に勝つなんて誰だ、と思ったら、勝負は馬がらみらしい。
馬で会計なら団蔵だ。あいついったいなにやったんだろう。
気になったけど、そっちまでかまってる暇はないので、興味ないふりをした。
仙蔵先輩はにこにこしながら、あの年で馬とは、いやいやまったく将来が楽しみだ、と
ずっといっていた。

そしたらい組の伝七が、は組よりい組のほうがすごいですとぶつぶつ言い出した。
そしたら先輩が、それじゃあお前は、タケノコと昼の朝顔とどっちなんだ?と聞いた。
伝七は一瞬ぽかんとしたけど、ちょっと考えてすぐ、朝顔です、と胸を張った。
先輩はますます笑って、はははこやつめといいながら、伝七の頭を撫でていた。

よくわからない。

仙蔵先輩は今日はずっとご機嫌で、一人で紅を擦っていた綾部先輩にも、
お前はどうだと聞いていた。
綾部先輩は眠そうな顔で振り返ると、袖をまくって肘を曲げ、拳を握って、
ぼくはマックスこのくらいでしょうか、と言った。
仙蔵先輩はまた、はははこやつめと笑いながら、綾部先輩の頭も撫でていた。

前から思ってたけど、この委員会、変だ。
とりあえず、仙蔵先輩に相談するのだけはやめておこう。


615:名無しさん@ピンキー
07/08/05 22:40:24 L8EQjHEN
リアルタイムktkr

616:はぐみひみつにっき8
07/08/05 22:41:39 ZcLuptKT

『庄左ヱ門』

○月△日
乱太郎は依然、悩んでいる。
金吾もなぜか暗い。
虎若と兵太夫も、落ち着きがない。
団蔵一人がなぜか上機嫌。い組の佐吉に一目おかれたと言っている。
理由は聞かなかったが、組の一部だけでも明るいのは、よいことだと思う。
ぼくは、悩んでいる。
伊助ときり丸はやめておけというが、先生が不在の今、やはり学級委員長として、
ぼくが乱太郎に説明すべきなのではないか。
しかしこの重圧に、はたしてぼくは耐えられるだろうか。

便所で一人悩んでいたら、暗い顔をして何を悩んでいるんだい、と、鉢屋三郎先輩に
声をかけられた。
この先輩はいつも唐突だが、便所の個室に現れたのははじめてなので、少なからず驚いた。
先輩は笑っておられたが、傷まみれの包帯だらけであられた。
五年生ともなれば、実技も実践に近くなるのだろう。だが、武術大会で優勝するほどの
この人が、こんな怪我を負うとは珍しいことだ。
たいへんなお怪我ですねと言ったら、先輩は、私はボケで彼がツッコミだから仕方ないのさ、
と、また笑われた。
意味はわからないが、関西人として感じ入るところがあったので、黙っていた。

すると先輩は、もしかして、君の悩みは乱太郎君が関係しているんじゃないか、と仰った。
たいへん驚いた。なぜわかったのだろう。さすがは三郎先輩だ。
同じ学級委員でもある三郎先輩なら、悩みを打ち明けられると思い、ぼくはすべてを
先輩に話した。
先輩は万事静かに聞いてくださったが、ぼくが、乱太郎に説明しようと思っていることを
話すと、それは待ったほうがいいんじゃないかな、と仰った。
なぜかと問えば、説明する人間は、真に正しい知識を持っている必要があるから、だそう。
三郎先輩は、こう仰った。

『君は本当に、ちゃんと他人にそういうことを説明できるのかい?』
『君が知っていると思っていることが、真に正しい知識だと、一切の間違いがないと、
揺るぎない自信を持って言えるのかい?』

先輩の言葉は静かで抑揚もなく、頭の芯に染み入るようであった。
便所の匂いと相まって、ぼくはくらくらしてまるで、幻術にかかったような気分になった。
実際、かかっていたのかもしれない。
やがて先輩は笑いながら、質問があったら、いつでも私のところにきたまえ、といって、
現れた時と同じように、唐突に便所の中から消え去った。

ぼくはいま、なやんでいる。


617:はぐみひみつにっき9
07/08/05 22:43:45 ZcLuptKT

『きり丸』

・乱太郎悩み中。仕方ないので、保健室に行けとただで教えてやる。
 これで万事解決だろう。儲からないけどまあいいや。

・委員会出席。長次先輩と七松先輩が、図書室のすみっこでひそひそ話をしていた。
 長次先輩は、低学年に見せるのは違反だとか、これはとくにえぐい、とか言ってた。
 でもいつもの調子だったんで聞こえなかったらしく、七松先輩は本を抱えて、
 見舞いだー!と叫びながら走っていった。
 表題は『桃色遊戯・萌えよドラゴン・怒りの鉄根危機一髪』変な題だ。
 ぼんやり見送ってたら、長次先輩と目があった。
 先輩はおれを見ると、ちょっと考えて、五年待て、といって去っていった。

 なんだろう。うまくいえないけど、儲け話のにおいがする。どケチの勘。

・本の整理をしていたら、雷蔵先輩が乱太郎のことを聞いてきた。
 なんだかいいにくそうに、様子が変だったから、といわれたので、今はは組中が変ですと
 答えておいた。
 乱太郎と、庄左ヱ門もかなりたいへんなんだ。
 そのとき、庄左ヱ門が鉢屋先輩に、何かを質問しにいく、と言ってたことを思い出した。
 そういえば二人は仲良しだったなと思ったので、なんとなくそのことを雷蔵先輩に伝えてみた。

 そしたら先輩はいきなり、長次先輩の縄標を掴んで、お借りしますといいながら窓から
 飛び降りて、どこかへ走っていってしまった。

 一瞬の迷いもなかった。
 あんな鮮やかなサボり方を見たのは、生まれてはじめてだ。感動した。
 あんまり感動したので、怪士丸をさそって、おれも便乗することにした。
 久作先輩、あとよろしくお願いします。

・土井先生のお見舞いに行った。
 布団の上で、悲壮な顔で『虫の生態』という本を読んでいた。
 あんまり気の毒だったんで、乱太郎に保健室をすすめたことを言おうかと思ったが、思いついて、
 お駄賃出るなら、おれがちょっとだけ教えてやってもいいですよ、と言ってみた。
 みんなお得になっていい案だと思ったのに、床の上に正座させられて、小一時間説教された。
 先生はまた、胃炎が再発したらしい。だから寝てたほうがいいって言ったのに。

・乱太郎がおれを避ける。
 保健室にいって、ちゃんと大人のかいだんのぼれたのか聞きたいのに、目もあわせてくれない。
 なんかあったのか?
 もしかして、やばい知識仕入れちゃったんじゃないだろうな。おれまで気が重い。

 最初はは組だけだったのに、なんだか最近、学園全体が変な気がする。
 この先いったいどうなっちゃうんだ。



次こそ本編。


618:名無しさん@ピンキー
07/08/05 22:50:04 L8EQjHEN
乙!おもしろかったw
兵太夫の始まりが詩人っぽくてワロタw

619:名無しさん@ピンキー
07/08/05 22:56:31 sxVRNAzi
ちょwwwwwwwww
団蔵wwwwwww
勝負するとこちゃうしwww
本編楽しみ、GJ!

620:609
07/08/05 23:03:59 T9UNJawq
間にレス入れちゃってマジすんませんでした・・・。これからは自重するorz


にしても、もう駄目だこいつらwww
小平太としんべヱパパのバーローww団蔵にもむっちゃワロタ

621:名無しさん@ピンキー
07/08/05 23:04:22 Bcej3Cfb
六年頼りねぇwww

622:にっきの人
07/08/05 23:11:12 ZcLuptKT
>620
いやいや、即レスうれしかった。アリガトン
楽しんでもらえたんならなによりです。

623:名無しさん@ピンキー
07/08/05 23:18:09 wWxDIf5K
金吾硬すぎwwwwww

624:名無しさん@ピンキー
07/08/05 23:39:23 FQh8OK4e
GJ!食満先輩説明長いよwww
つーか「秘密文書」の出所が非常に気になるwwwwww
六年全員で金出し合って買ったのか?!
若旦那その年で馬並ってwww…ウラヤマスィ…

ああもうどこからツッコミを入れたらいいのかwwww

625:名無しさん@ピンキー
07/08/06 00:06:01 I/mDA4zt
なんか全部わろたwwwwww
よしろう先輩まで飛び火wwwwww

626:名無しさん@ピンキー
07/08/06 00:08:10 muqduU34
あちこちに地雷が仕掛けてあってほんとやばかったww
「四年生超ヤバイ」としんべヱパパがツボすぎる
今までの話とリンクしてる部分もあって隅々まで楽しめたよ
才能あるな~

627:名無しさん@ピンキー
07/08/06 01:25:39 XSnvmnDB
金碁の文章が武士らしいwwwwwwwwwwwwwwww

次屋先輩、行方不明。

何処言った次屋wwwwwwwwww

628:名無しさん@ピンキー
07/08/06 01:37:44 gS7I0w3q
文次郎負けてんじゃねーよw

作者さん文才ありすぎ。ファンになった。
続きも楽しみにしてます。


629:名無しさん@ピンキー
07/08/06 04:18:55 gixo77Up
ひ、一人一人の文体に個性があふれまくっている……!!おそるべし「ひみつにっきの人」(勝手にそう呼んでます)!!

孫兵ダメスw三冶郎ロマンチストw卵の殻てへその緒かw
そして虎若、5年生巻き込む伏線w

伊助献立の記録スゴスw
竹谷先輩責任感ツヨスwさすが生物委員。豆腐先輩罪悪感ツヨスw
ちょタカ丸wもう枯れてんのかw打ち止めてw何度か打ち止めてw

金吾テラ武士の子wまんじゅう嫌いにならないでw
滝夜叉丸、白菜の呪縛から解き放たれてよかったねw
次屋どこ行ったw七松テラ暴君w6年生も介入してきたw

食満の話、伊作が乱太郎に説明してた「しんわ」ってこれのことか!納得w
風魔へまで飛び火wナメクジは雌雄同体だからね、喜三太知らなかったよねw

しんべヱパパ、親子丼予告ですかw

文次郎テラ理不尽w団蔵GJw

兵太夫詩人w伝七の対抗心カワユスw仙蔵セクハラ委員長w綾部ふざけんなコノヤロウw

庄ちゃんも責任感ツヨスw三郎ざまあw

きり丸箇条書きw雷蔵、長次、男前wそれに比べて土井先生ときたら……。


長い感想でごめんなさい。印刷して何度も読んでは笑ってますごめんなさい。
4年生超ヤバイに笑いますたごめんなさい。昼の朝顔に笑いますたごめんなさい。

630:名無しさん@ピンキー
07/08/06 08:24:45 lK0EPxgZ
やばい、これから仙蔵を見る度にあのAAがちらつきそうだw

631:名無しさん@ピンキー
07/08/06 09:15:17 wZv47BmW
>>629
言いたい事全部ツッコンでくれてありがトンw w w

作者GJすぎる!!!
キャラの特徴とかすっごい掴んでてそんな感じに見えちまうからすごいす

ひみつにっき作者さんのおかげでずいぶんな良スレに
続き楽しみに待ってます!
このままシリーズどんどん増やしてってくれ~

632:名無しさん@ピンキー
07/08/06 09:20:41 D7TpI+0F
とにかくバロスwww
とってもGJ!

633:名無しさん@ピンキー
07/08/06 09:59:04 rVrMxiRA
伊作:みみずせんびき
小平太:暴君
食満:前置き長杉
文次郎:理不尽・テラカコワルス
仙蔵:はははこやつめ
長次:(ほとんど)傍観者

六年生駄目スグルwww
でも「ぼくはタケノコじゃなくてうまです」が一番ワロタww

634:名無しさん@ピンキー
07/08/07 00:26:23 jcLFHUWj
色々な被害がどんどん拡大して行くwww

頼むから学園内に止どめておいてくれwwww

しかし団蔵ワロタ
「やったぜ父ちゃん」じゃねぇよwwww

635:名無しさん@ピンキー
07/08/07 09:00:17 OixfSie7
与四郎先輩・・・。

636:名無しさん@ピンキー
07/08/07 15:50:38 vEPdeT53
何回読み返してもおもしろすぎます


637:名無しさん@ピンキー
07/08/07 17:24:40 /71Qw3U9
ちょw w 三郎w w w
便所の個室にまで入ってくんなよ w w w w

638:名無しさん@ピンキー
07/08/07 20:01:23 aKoXUFxT
>>631
「長い感想ウザー」と言われると思ったのにまさかお礼くるとは思わなかった。
逆にお礼を言いたいくらい感動しますた。皆で共に続きを待とう!

>>にっきのひとさん
このにっきは大変勉強になります。自分で剥くとは知りませんでした。
本編を楽しみにしています。

かしこ

639:名無しさん@ピンキー
07/08/07 22:44:21 wQwZeV45
>>638
おまえ、どん引きだwww

640:名無しさん@ピンキー
07/08/07 23:11:56 hoJrElvV
この勢いで他の職人さんも投稿してくれるといいな。

しかし、ここまで来るとどうやって事態を収めるのか気になるなww
にっきの人さんの腕前に期待。

641:名無しさん@ピンキー
07/08/08 02:25:25 Q8p4ssX1
>>639
名言キタコレwww

しかし>>638
「自分で剥く」は金吾の手紙の話で、にっきの人とは違うんじゃまいか?

642:名無しさん@ピンキー
07/08/08 11:54:26 bXxqBdd6
団蔵wwwwwwwwww
にっきの方!続編待ってます!!何時も最高の作品をありがとう!

643:名無しさん@ピンキー
07/08/09 14:19:04 FNzweb6X
サブユキの人も待ってる…。

644:名無しさん@ピンキー
07/08/10 19:54:12 4BBAomzD
くのいち教室にまでは飛び火しないのかな…

645:名無しさん@ピンキー
07/08/10 20:02:13 72IgH2bo
>>644
そうなったら多分一番地獄

646:名無しさん@ピンキー
07/08/10 23:31:31 teYbSh4D
>>643

ひみつにっきシリーズが終わったら投下する
遅くてごめん
さすがにこの間に投下する勇気は無いorz

647:名無しさん@ピンキー
07/08/11 00:24:26 0P5s7hME
サブユキの人も日記の人も期待されてるから、ひょっとしたらプレッシャーとかあるかもしれないけど
気楽でいてください・・・なんか上手く書けん。見苦しいレスですまん。

648:名無しさん@ピンキー
07/08/11 02:08:16 1WzCgQ2U
>>646
wktktrtr
職人頑張れ頑張るんだ~

649:らんたろうひみつにっき11
07/08/11 04:25:32 HefcqLZ4

続きいきます。これで終わり。
途中、大木先生×シナ先生で、エロといっては申し訳ないようなのが入ります。

>>634
挑発と受け取ったw



今日は、いちにち教科の授業の日でした。
忍び道具について、まなんだような気がしますが、わたしの帳面は、まっしろです。
わたしはさいきん、授業にもまったくみが入らず、ひがないちにち
ぼんやりしていることが多いです。
ふかい、なやみがあるからです。
しかし、今ではもはや、じぶんがいったい何についてなやんでいるのかも、
よくわからないような、ありさまです。
きり丸には、乱太郎ちょっとうつっぽい、といわれました。
とてもよくないと、じぶんでも思うのですが、みを焼くようなこのくのうの嵐と、
どう折り合いをつけてよいのか、まるでわからないのです。
おのれの知識のなさが、もはやにくらしいです。
なにより、組のみんなに心配をかけていることが、とてももうしわけなく、また
こころぐるしいです。

授業のあと、しんべヱと喜三太に、声をかけられました。
このところ、わたしがずっと暗いので、しんぱいしてくれたようです。
さいきん二人がさんかしている『お話会』に、いっしょにいかないかとさそってくれました。
『お話会』とは、ここ何日か、用具委員長の食満留三郎先輩が、授業のあとに
かいさいされているものだそうです。
おもに昔話を中心としており、たいへんおもしろく、またためになるものだそうです。
さいしょは、用具委員の間だけでおこなわれていたのですが、『くちこみ』で人がふえ、
一年い組やろ組のほとんどと、さらに二年生から五年生のいちぶ、そして、
六年生からも、聞きにくる人がいるくらいだそうです。
は組からも、兵太夫や虎若や三治郎が、さんかしているらしいです。
生物委員会は、五年生の竹谷先輩のご指示で、『ぜんいんきょうせいさんか』だそうです。

わたしは、一年生にお話をしてくださるなど、やさしい先輩だなあと感心しました。
どうしてそんなお話会がはじまったのかも、聞いたのですが、しんべヱも喜三太も、
きっかけについてはわすれてしまったそうです。
ただ、とてもおもしろいし、きっと気分てんかんになるからおいでよ、といってくれました。
うれしかったし、少しばかりきょうみもあったのですが、きのうあたりから、食満先輩の
『すけっと』として、保健委員長の善法寺伊作先輩もさんかされていると聞いて、いくのをやめました。
わたしはせんじつ、伊作先輩に、たいへんしつれいなこういをしてしまったので、いま先輩に
あわせる顔がないのです。
しんべヱと喜三太には、ざんねんだなあといわれました。わたしもとても、ざんねんです。


650:らんたろうひみつにっき12
07/08/11 04:27:35 HefcqLZ4

は組でなやみをかかえているのは、わたしだけではないようです。
団蔵は、会計委員長の潮江文次郎先輩が、どこかへ『しゅぎょう』に出かけて
おるすなので、平和だとよろこんでいますが、兵太夫と虎若は、二人でくらい顔で
ひそひそはなしたりして、おちつきがないです。
金吾は、すうじつ前から、授業をやすんでずっと寝こんでいます。
体育委員はみな、よく『げんかいとっぱ』していますが、今回は、つかれただけでは
ないようです。
布団から出ようともしないし、ご飯もほんの数口しか食べません。
またなぜか、トロロやもずくやめかぶは、ぜったいに口にしません。
このままでは、しゅっせき日数があやういのではないかと、みんなでしんぱいしたのですが、
庄左ヱ門が、は組はきほんてきにみんな、しゅっせき日数も授業日数も足りてないから、
大丈夫だよといったので、あんしんしました。
ずっと顔色のわるかった庄左ヱ門は、すこし元気になりました。
むしろ、こわいくらいおだやかになりました。
伊助によると、鉢屋三郎先輩になにか、お話を聞きにいくよていだったのに、きゅうに先輩が
ゆくえ不明になってしまい、けれどそれから、みょうにおちついているのだそうです。
鉢屋先輩は、さくや、五年生らしき人かげ数人と、裏裏山へむかっているところを
もくげきされたのをさいごに、ゆくえがわからないそうです。
たよりの人がいなくなって、逆に開きなおっちゃったのかもしれないね、と伊助はいいました。
むしろ切れちゃったんじゃないか?ときり丸はいいました。

わたしをきっかけに、それぞれの『かくされていたぶぶん』が、ひょうめんかしたのだろうと
庄左ヱ門はいいます。
その言葉に、わたしはとても、せきにんを感じました。
でも庄ちゃんは、それは乱太郎のせいじゃないから、気にしなくていいともいいました。
人にできることは小さくて、なやもうとなやむまいと、世の中けっきょく流れるように流れるもの。
だからここまできたら、流れに身をまかせるしかないんだよ、と、あみだ様みたいな顔でいう
庄左ヱ門は、わたしもやっぱり切れてるんじゃないかと思いました。



くのいちと聞こう!の段



しんべヱと喜三太のさそいをことわって、わたしは今日もふらふら、ひとりで
学園内をさまよいました。
放課後だというのに、校庭は人かげもまばらでした。みんな、食満先輩の『お話会』に
いったのでしょうか。
今日はどこへいこう、学園長先生のいおりならあまり人も来ないだろうか、とかんがえながら、
あるいているうちに、わたしは、学園内にある温泉のそばに出ました。
いぜん、体育委員が掘りあてて、それから学園長先生のお気に入りになっている温泉です。
温泉のそばには、さいきん、小さなきゅうけい所が作られました。
この時間なら、だれもいなくてしずかにかんがえごとができるだろう、と思ったので、
わたしは、きゅうけい所のうらに、まわることにしました。

でも、そこには、『せんきゃく』がいました。
くのいち教室のユキちゃんが、きゅうけい所をかこむしげみの中に、ひたっと
すわりこんでいたのです。


651:らんたろうひみつにっき13
07/08/11 04:29:41 HefcqLZ4

ユキちゃんは、くのいち教室の中でも、かなりおそろしい女の子のひとりです。
びじんですが、とても強くて、いろんないみで『なさけようしゃ』のない人です。
しょうじき、こわいです。
そんなかのじょと、いきなり顔をあわせたので、わたしはとてもおどろきました。
でも、それいじょうに、ユキちゃんの顔が唐辛子みたいにまっかになっていたことに、
おどろきました。
ユキちゃんも、わたしをみて、おどろいたみたいでした。
まっかな顔のなかで、目がまん丸になっていました。ちょっとかわいかっ(以下空白)

わたしはとりあえず、あいさつをしようと思ったのですが、こんにちはをいうまえに、
ユキちゃんに、いきなりむなぐらをつかまれて、しげみに引きこまれ、うしろから
『へっどろっく』をかけられてしまいました。

わたしは、ユキちゃんはきっと、暗殺術のふくしゅうをしているのだと思いました。
それほどかのじょの『へっどろっく』はかんぺきでした。
声が出ないどころか、鼻までふさがれて、いきもできません。さらに、足まで使って
ぜんしんはがいじめにされ、動くこともできず、あっという間に気がとおくなりました。
このまま、この胸をうめるくのうをはらすこともできずはてるのか、と、わたしはむねんでした。
しかし、わたしが心のなかで、父ちゃんと母ちゃんに、先立つ不幸をおわびしているとちゅうで、
ユキちゃんが小さな声で、あんたなにやってんの、静かにしなさいよこのバカ、といいました。
そして、すこしだけうでの力をゆるめて、うしろから、わたしの顔をのぞきこんできました。
ユキちゃんの顔は、やっぱりまっかでした。
鼻の頭がとくにあかくて、しきんきょりで見ると、大きな目も、うるんでいました。
ちょっとどきっとし(以下空白)

こわい声で、あんたこの『じょうきょう』がわかんないのこのバカ、とまたいわれて、わたしは
少々、腹が立ったのですが、とりあえずあたりを見ました。
そうしてはじめて、きゅうけい所の中に、だれかがいることに気づきました。

しげみの中からだったので、よく見えなかったのですが、それはどうやら山本シナ先生でした。
今日はお若いバージョンのお姿で、雨戸をあけはなったきゅうけい所の、座敷のまんなかに、
座っておられるようでした。
わたしは、ユキちゃんはどうしてシナ先生からかくれているんだろう、と思いました。
なにかいたずらでもしたのか、と思ったのですが、ユキちゃんは、もっと見ろ、というように、
さかんに目で合図をしてきます。
そこで目をこらすと、どうやらきゅうけい所の中には、もう一人いるようでした。
それは、杭瀬村の大木雅之助先生でした。
わたしはまた、野村先生と『たいけつ』にいらしたのかなあと思いました。
しかし、おかしいのです。
なにか、へんなのです。

なぜなら大木先生は、座ったシナ先生の体の下に、ねころんでいらしたのです。


652:らんたろうひみつにっき14
07/08/11 04:31:48 HefcqLZ4

わたしは、大木先生が、かってに温泉に入ろうとしているところをシナ先生に見つかって、
怒られているのだろうかと考えました。
なぜなら、二人のしせいは、『きゃめるくらっち』ににていました。
かくかくゆれているところなど、シナ先生が大木先生を、しめあげているように見えたのです。
くのいちの先生は、ごうかいな技をかけるものだと思いました。
しかしやはり、どこかへんなのです。
『きゃめるくらっち』なら、ときどき母ちゃんが父ちゃんにかけているのを見ますが、それと
くらべると、大木先生のむきが逆のようなのです。
世の中には、受け手があおむけでかかる『きゃめるくらっち』もあるのでしょうか。
しかしどうも、シナ先生のはかまが、なんとなくですが、ずれているような気もするのです。
上着のすそから、ちらっと、白い足が見えました。
わたしはふしぎに思って、ユキちゃんにいけんを聞くため振り返ろうとしたのですが、
ものすごい力でおさえこまれて、だんねんしました。
ユキちゃんは、わたしののどと頚動脈をしめあげながら、低い声で、声出したらコロス、といいました。
だまる以外、わたしに何ができたでしょう。

ぎゅうぎゅうにしめつけられているせいで、わたしの背中は、ユキちゃんのおなかと、ぴったり
『みっちゃくじょうたい』になっていました。
足もうでも、がんじがらめでからんでいます。
わたしの首には、ユキちゃんの、まだあかいであろう、ほっぺがくっついていました。
それはすごく熱くて、なんだかほんのりと、しめっぽかったです。
わたしは、そうとうこわかったのだと思います。しんぞうが、ひどくどきどきしました。

わたしたちが、じっとだまってしげみにひそんでいる間、大木先生とシナ先生は、
二人で息をきらしながら、ずっとかくかくゆれていました。
シナ先生は、ときどき大きくのびあがったり、たまに横にゆれたりしていました。
大木先生はそのたびに、がっはっはとごうかいに笑って、あんたはじつに
『めいき』じゃのう!とおっしゃいました。
シナ先生も、笑いながら、あら大木先生こそ、『かりだか』でよくそっていて、
すばらしいですわ、とおっしゃいました。

先生たちはおたがいに、ほんとに『まっくろ』とか『たこつぼ』とか、いやいや『ちゃきん』だとか、
『きょほう』とか『みみずせんびき』の上さらに『かずのこてんじょう』とはおそれいったとか、
こまった『あばれんぼう』ですこととか、『はっしんさんせん』とはこころえておるなとか、
あんまりおくをつかないでとか、『こりこりしたところがだいぶさがってきた』ようじゃなとか、
もうそろそろ『はっしゃ』していただかないと身がもちませんわとか、二人でうなったり、
たまにごろごろ回ったり、ときどきくっついてじっとしたりしながら、ずっと笑っていました。

わたしは、先生たちのおことばが、せんじつ、伊作先輩に夢うつつでお聞きしたお話の中に、
そういえばぜんぶ、出てきたような気がすると思いました。
やっぱりいみはわからなかったのですが。


653:らんたろうひみつにっき15
07/08/11 04:33:55 HefcqLZ4

たいへんはげしいおうしゅうでしたが、まだ明るい日の下で見ているうちに、わたしは、
どうやらお二人は、けんかをしているわけでも、体術をかけあっているわけでもないようだと
気づきました。
シナ先生は、くるしそうで、ユキちゃんと同じくらい顔があかくて、目もうるんでいましたが、
とてもたのしそうでした。
大木先生は、鼻息があらくて、いつもみたいににやにやしていましたが、なんとなくお声が、
やさしかったです。
そんなお二人のお顔を、わたしは、どこかで見たことがあるような気がしました。
ふと、夏休み、夜中にけんかしていた、父ちゃんと母ちゃんのようすに、にているのだと
思いつきました。
そういえば、あのときの父ちゃんも母ちゃんも、言ってることはこわかったけど、
しっかり手をにぎりあっていて、とてもうれしそうな顔をしていました。

もしかして、父ちゃんと母ちゃんは、けんかをしていたわけではないのでしょうか。

先生たちのうごきは、だんだん速くなっていきました。
上のシナ先生も、下の大木先生も、『上下左右じゅうおうむじん』にあばれ回り、空中に
とびあがらんばかりです。
どうじに、わたしに『へっどろっく』をかけているユキちゃんの力も、だんだんつよくなっていきました。
ユキちゃんに首をきめられ、両足で足をおさえられているため、わたしはあおむけの蛙みたいな、
ちょっとまぬけなかっこうになっていて、とても恥ずかしかったです。
でもそれ以上にくるしくて、ほんきでもう死ぬかも、と思いました。
わたしは、息ができなくて、ずっとはあはあしていたのですが、なぜかユキちゃんも、
はあはあ息をあらげていました。
耳のすぐうしろで聞こえる、ユキちゃんの声は、わたしの首にくっついているほっぺと同じくらい
熱くてしめっぽくて、わたしは耳がくすぐったというか、やっぱり熱いというか、
とてもへんな感じになりました。

ユキちゃんの、うでも、足も、背中にくっついているおなかも、着物ごしだというのに、
すごく熱くなっているのがわかりました。
むんむんしたねっきのようなものが、ちょくせつ伝わってきました。
汗もすごいし、風邪でも引いたのかとしんぱいになりましたが、なんだか背中にくっついている、
おなかじゃない、ちいさいけどなんだかやわらかいものが、もっとあつくなってきて、しかも
そのしたの、おしりにあたっているあたりは、なんだかじっとりしているようなきもして、
なんだかわたしも、だんだんあつくなってきてしまって、せんせいたちも、はあはあいってるし、
ユキちゃんもわたしもはあはあしてるし、ユキちゃんのからだはとてもやわらかくて、ほっぺは
すべすべで、しかもなんだか、あまいにおいまでしてきて、わたしはすっかり、あたまがぼうっと
してしまって、しんぞうはくちからとびだしそうだし、みみのなかはユキちゃんのいきで
いっぱいになってしまうし、だからなんだか、わたしは、もうなんだか、なんだか、

おなかのしたのほうが、
ものすごくあついというか
いたいというか
くるしいというかそんなかんじでもうqあwせdrftgyふじこ(以下五行解読不能)


654:らんたろうひみつにっき16
07/08/11 04:36:00 HefcqLZ4

やがて大木先生が、シナ先生のお腰をがしっとつかんだかと思うと、どうじにシナ先生が、
ああんとふるえながら、大木先生の上にたおれこみました。
そうして、しばらくじっとしてから、先生たちはおきあがりました。
お二人とも、とてもさっぱりしたお顔をされていました。
先生たちは、たまにはこうして技をみがかないといけませんわとか、わしでよければ
またよんでくれとか、でも学園長先生もお年のわりになかなかとか、まあこういうのも
いい授業になったじゃろ、とか、楽しそうに話しながら、あっという間にみじたくを
整えられて、きゅうけい所を出て行かれました。
さいごに笑いながらふりかえったお二人と、いっしゅん、目があったような気がしたのですが、
たぶん気のせいだと思います。

先生たちがいなくなって、百ほどかぞえてから、ユキちゃんはようやく『へっどろっく』を
といてくれました。
さんけつで死ぬ寸前だったので、ほっとしました。空気がとてもおいしかったです。
わたしは、ぜんしん汗だくで、上着どころかなんだか、ふんどしまでぬれているような
気がして、気持ちわるかったので、すぐにも逃げだそうと思っていました。
でもユキちゃんがあかい顔のまま、わたしのはかまをつかんだので、にげられませんでした。
しかたなく、おたがい汗びっしょりのまま、しげみの中で、びっくりしたね、とか、
しぬかとおもった、とか、ぽつぽつ話しました。
そのうちユキちゃんが、乱太郎もああいうこと、きょうみあるの?と聞いてきました。
さきほど、先生方がしていたことだとはわかりましたが、『ああいうこと』が
どういうことだか、わたしにはよくわかりません。
わかったのは、あれが、けんかでもとっくみあいでもないことだけです。
でも、なんとなく、わからない、といえるふいんきではなかったので、うんと答えました。

そしたらユキちゃんは、ゆでだこみたいになって、じゃあこんど、
あたしとためしてみない、といいました。

くのいちはみんな、『ああいうこと』にきょうみをもっているのだそうです。
授業でいろいろならっているので、みんな、はやくためしてみたいと思っているそうです。
あたしはこないだ『おとなのからだ』になったから、できるのよ、とユキちゃんはいばってました。
かと思ったら、きゅうにだまりこんで、まわりをきょろきょろ見回しました。
そして、わたしをそろそろと上目づかいで見ると、やっぱりゆでだこみたいな顔のまま、
あたし、乱太郎ならいいわ、と、とても小さな声で言いました。


655:らんたろうひみつにっき17
07/08/11 04:38:04 HefcqLZ4

夕日のなか、忍たま長屋にもどるために校庭を歩いていると、きり丸に会いました。
土井先生のところに行ったら、正座させられた、とふきげんでした。
たいへんだったね、というと、ところでお前は保健室で『大人のかいだんのぼれた』のか、
と聞かれました。
わたしは、それはしっぱいしたので、教えてくれたきり丸に、もうしわけなく思いました。
そして、ふとそのかわりに、今日見たことと、ユキちゃんにいわれたことについて、
そうだんしてみようかと思いつきました。
でも、やっぱりやめました。
だまって、いそいでその場からはなれるわたしを、きり丸は、ふしんな目で見てました。

ひみつにしたのは、これ以上、友達によけいなしんぱいをかけるのが、
しのびなかったからです。
それにユキちゃんにも、誰かにしゃべったらコロスといわれています。
もし、ばらしたりしたら、『へっどろっく』どころか『おくとぱすほーるど』や
『べんけいふうしゃ』や『だいびんぐぴーちぼんばー』や『きんにくばすたー』で、
私はこんどこそ、息の根をとめられるでしょう。
でも、りゆうは、こわかったからだけではありません。
なんとなく、じぶんだけのひみつにしておきたいと思ったのです。

だって、ゆでだこみたいだったユキちゃんは、ゆでだこなのに、だれかに話すのが
もったいないくらい、とてもかわいらしかったのです。

ユキちゃんとはあしたの放課後、おなじ場所で、会う約束をしています。
『ああいうこと』がなんだか、わたしは今もよくわかりません。
やはりおそろしいことなのかもしれません。本能がつげているのでしょうか。
ずっとしんぞうが、どきどきしています。
どきどきしすぎて、夏休みいらい、あれほどつらくかかえてきた『くのう』が、
うすれてしまったほどです。
『ゆうじょうにかんするひみつのそんざいとそのきょよう』についても、もういちど
考えてみたりもしましたが、すぐなにも考えられなくなりました。
思うのは、あしたの放課後のことばかりです。
庄左ヱ門のいっていた、『流れに身をまかせる』ということばが、ふとうかびました。

わたしも、どこかが切れちゃったのかもしれません。


656:らんたろうひみつにっき18
07/08/11 04:40:32 HefcqLZ4

小松田覚書

一、木下先生、野村先生、外出届。
  三年生、五年生のゆくえ不明者、きょうもみつからず。
  あすは裏裏山のたんさく予定。おばちゃんにお弁当依頼のこと。
二、食満留三郎君のこうしゅう会、大人気。
  低学年の先生方、とくにご推奨とのこと。
  立花仙蔵君より、あすはぜひ聞きにくるとよいといわれる。
  善法寺伊作君につづき、七松小平太君が講師としてさんか予定らしい。
  立花君「すごいカオスが期待できる」とのこと。
三、土井先生、寝込みっぱなし。
  は組のしんべヱ君より、手紙を頼まれる。
  剣豪の灰洲井溝さんの弟子の、飯加玄南君あて。「未来のお誘い」だそう。
  ほかのものと一緒に馬借に渡す。
四、一年は組の乱太郎君に会う。
  近ごろ具合が悪いと聞いていたが、穏やかな顔で、とてもげんきそう。
  「知識よりも、大事なのは心と心なんですね」と。なにそれ?
  「流れに身を任せてよかったです」「秋休みに帰ったら親孝行しよう」とも。
  なんとなく、大人っぽい顔をしていた。
五、くのいち教室のユキちゃん、がにまたで歩いている。
六、寝込んでいた一年は組の金吾君、乱太郎君の献身的介護により、復活。
  は組はみんな、いつでも仲がよい。
七、山田利吉さん来訪。風魔と、剣豪の灰洲井溝さんから、手紙をたのまれたとのこと。
  灰洲さんは、戸部先生あてでなにか相談ごとらしい。
  最近なんだか、ますますやつれているそうだ。
  風魔の手紙は、は組の喜三太君あて。厳重にこんぽうされた分厚い本がついていた。
  利吉さんは、山田先生が出張から戻られるまで、学園にとどまるそうだ。
八、一年い組の生徒に「赤ちゃんって本当はいったいどこから来るんですか」と聞かれる。
  「もうなにがなんだかわからなくなってきた」のだそうだ。
  子どもって、へんなこと気にする。
  
  そういえば、どこからくるんだろう。考えたことなかった。
九、エリートなので知ってるだろうと、利吉さんに聞いてみた。
  「君はときどき絞め殺したくなるな」といわれた。おもしろい人だ。
十、やっぱりお兄ちゃんに聞いてみよう。



Neverending


657:にっきの人
07/08/11 04:42:42 HefcqLZ4
途中で下げ忘れたorz

長々と続けさせてくれて、本当にありがとうございました。
たくさんの感想、すっごい長いのとか先の考察とか、マジうれしかったです(*´∀`)
すごい先読みに、エスパーがいるんじゃないかと本気で疑ったw

サブユキの人、連載の間に割り込む形になってしまい、すみませんでした。
続き、楽しみにしています。



658:名無しさん@ピンキー
07/08/11 04:55:59 FJhR/++H
ぐぐぐぐGJ!!!!!
全編通して呼吸困難になるくらい面白かったw
意外なオチにどきどきしたよ!良作をありがとう!

659:名無しさん@ピンキー
07/08/11 04:57:19 KIHu8B2p
ちょwwwwwwwww
にっきの人テラGJ(*´д`*)ハァハァハァ
それにしても半助さんの苦労症にも程がある…('A`)

660:名無しさん@ピンキー
07/08/11 05:51:24 6Kls9Dgk
超GJ!(*´Д`)
長く楽しませてもらいました!
「すごいカオスが期待できる」ってちょwww小平太止めろ仙蔵wwww

661:名無しさん@ピンキー
07/08/11 05:54:47 1pK5IdvV
にっきの人乙!!マジで乙!!

乱太郎大人の階段のぼりつめちゃったよwww

662:名無しさん@ピンキー
07/08/11 10:21:01 XrJPvJqK
最後の最後でそうきたかwwww
大団円乙でした

ユキちゃんカワユス

663:名無しさん@ピンキー
07/08/11 11:12:48 0P5s7hME
GJ!!!乙でした!
本当に伊作はバーローだwww
土井先生だけが最後まで救われなかったが('A`)w

664:名無しさん@ピンキー
07/08/11 12:22:31 1WzCgQ2U
ケマバーローwwwww6年は組は話が長いのがデフォなのかw七松のおかげでどんだけの一年が金吾化するのかwww

あと五年生…ちきしょうツッコミ所が多すぎるがとりあえずユキちゃんかわいいよユキちゃん。GJ超GJ

665:名無しさん@ピンキー
07/08/11 19:20:02 /iaM1GAu
にっきの人お疲れ様でした!
凄い楽しませてもらったよwwwww新作も楽しみにしてます。
サブユキの人もテラ楽しみにしてる!!

666:名無しさん@ピンキー
07/08/12 01:11:11 UaRa2LTT
大木先生に嫉妬www
にっきの人の文才にも嫉妬www

667:名無しさん@ピンキー
07/08/15 02:10:58 LqfFaWu6
挑発と受け取られた634だぜww
見事に学園外に被害がw
日記の人GJすぐる!ww

ていうか小松田ww
まさに愛すべき馬鹿ww


668:名無しさん@ピンキー
07/08/15 05:36:57 Fq01ClEe
>>667
おまいのせいで
玄南君が灰洲井溝さんが風魔の先輩が利吉さんが小松田お兄ちゃんが巻き込まれたじゃないか!!


GJwwww

669:名無しさん@ピンキー
07/08/15 13:38:30 38lftGwg
今度の講習会のカオスっぷりが非常に気になるwwww
これで三郎も参加したらどうなる事やら…

一方が解決したと思ったらもう一方で火種が出てるよww

670:名無しさん@ピンキー
07/08/19 20:45:41 vnebFPos
改めて全部通して読んだwww本当神です>にっきの人
ユキちゃんカワユスwwwww

671:名無しさん@ピンキー
07/08/25 18:09:37 DeaO4H/p
久々に来たら凄い大作が・・・!!

672:名無しさん@ピンキー
07/08/25 23:44:07 Z5GWb3nA
>>671
この名作をまとめて一気に読めたことはある意味ラッキーだぞw
俺はというと、毎回ワクテカワクテカうるさかった人です。

今でもサブユキにワクテカしてるわけですがww

673:名無しさん@ピンキー
07/08/29 16:56:21 7yowOgSe
日記の人乙!
てかワザ名が次から次へとでてくるあたりが面白かった!

674:名無しさん@ピンキー
07/08/30 19:35:06 W/GEdbfL
にっきの人は本当の神!

GJ!

675:にっきの人
07/09/01 02:10:51 38s1RaKn
職人待ちの間に、ひみつにっき後日譚。
食満講習会のその後。やたら長いので覚悟してくれイ。


676:講習会はカオス!の段
07/09/01 02:12:58 38s1RaKn

食満留三郎は、悩んでいた。
夏の暑さもさめやらぬ長月初旬。山深き忍術学園の領内も、まだまだ熱気に包まれている。
放課後になっても、未だ高く上ったままの太陽に照らされ、ここ、六年は組の教室は
蒸し風呂のような暑さだ。
一刻も早く涼を取ろうと、級友達は皆、授業が終わると同時に出て行ってしまい、
今、教室には食満の姿しかない。
食満もできることなら、さっさとここを出たいと思っている。じりじりと肌を焼く陽光は
痛いほどだし、窓を開けてもそよとも動かない暑苦しい空気は、不快の一言だ。
だが、一つの大きな葛藤が、食満の動きを止めていた。

行くべきか。いや、行かねばならん。それはわかっているがだがしかし。

うるさいほどの蝉の鳴き声に包まれて、悶々と脂汗を流す食満の耳に、教室の戸が開く
軽やかな音が響いた。
「留三郎、ここにいたのかい。そろそろ行かないと時間がなくなるよ?」
半分開いた戸の隙間から顔をのぞかせたのは、級友の善法寺伊作だった。
大風呂敷を背負って、汗を拭き拭きにこりと笑っている。だがその背の荷物は
いつもの落とし紙ではなく、何冊もの分厚い本の山だ。
汗も干上がるような熱気の中だというのに、食満の背筋をぞくりと妙な寒気が襲った。
今度はなにを持ってきやがった。
だが、見当たらないから迎えにきたんだよ、さあ行こう、と手を振る級友の顔に浮かぶのは、
爽やかな笑顔ばかりだ。
邪気のかけらもないその顔と、無償の友情が生み出す圧迫に負けて、留三郎は不承不承、重い腰を上げた。
「……ああ、そうだな」
どちらにしろ、行かないわけにはいかないのだ。自分の撒いた種なのだから。

食満が、委員会の下級生から奇妙な質問を受けたのは、新学期が始まってすぐの頃だった。
それは奇妙というより、この年代ならある意味、当然出て来る疑問といえたが、自分もまだ
思春期の食満には、非常に答えにくい難問だった。
もう少し年が近ければ、ただの猥談として楽しめたかもしれない。だが相手は、食満の半分も
背がないような、つぶらな瞳の一年生ばかりだ。罪悪感に苛まれ、とてもそんな気にはなれない。
かといって、先生に聞け、と突き放すのは、頼られているという思いが邪魔をした。
結局、食満がとった方法は、本題には触れず適当な話でごまかすという、忍法『煙に巻く』だった。
子供は飽きっぽい。適当な話を長々続けていれば、そのうち飽きて他に興味を移し、忘れるだろう。
少々無責任だが、そうしてお茶を濁すつもりだったのだ。
だが、そんな食満の思いを嘲笑うかのように、事態は想像もしていなかった方向へと進んでいった。

人気のない廊下は、教室よりは涼しかったが、空気がよどんでやはり暑苦しい。
足元で、ぎしぎし軋む床板の音さえ不快だ。
「今日は何人くらい来るかなあ。最近大繁盛だよね」
隣で、背中の荷物を揺すり上げながら笑う級友の顔も、なんだか鬱陶しい。
ひっきりなしに流れる汗を拭う手の陰で、食満はこっそり小さなため息をついた。
「さあな」
「みんな期待してるんだよ。こないだなんかあの野村先生まで、よろしく頼むってお菓子を
差し入れてくださったじゃないか」
「そうだな」
「前振りの神話も植物と昆虫も終わったから、今日からはいよいよ哺乳類だしね!」
生返事にも、気を悪くした様子なく振り返ると、伊作は食満をじっと見つめ、かたく拳を握りしめた。
「ついに大詰めだね!最上級生の面目にかけても成し遂げないと!」
瞳を燃え上がらせ、頑張ろう!と一人張り切る伊作に答えず、食満はただとぼとぼと歩き続けた。


677:講習会はカオス!の段2
07/09/01 02:15:01 38s1RaKn

善法寺伊作は、いい奴だ。
どんなに話を長引かせても、決して諦めず聞き続ける下級生に閉口して、どうしたものかと
友人たちに相談した時。
誰もが逃げるか、逆に面白がって聴講にきやがるかだったのに、伊作だけは真摯に話を聞いてくれた。
あまつさえ、何か私にできることがあればと、講習会の手伝いまでしてくれている。
本当は手伝いではなく、どうやったらうまいこと話を打ち切れるかの助言が欲しかったのだが、
それでもその心遣いはありがたかった。
ああ、いいやつなのだ。話は長いがうまいし、気がよくて、友情にも厚い。同学年には稀有な存在だ。
それは確かだ。だがしかし。

伊作が参加するようになってから、講習会の聴講者が、どういうわけかどんどん増えていくのだ。

伊作の話は実にうまい。食満が、本題をごまかして流そう流そうとするたびに、横から上手に
そのしっぽを捕まえて、筋を戻してしまう。
さまざまな資料を駆使し、つけたしをして先へと進め、また食満に戻す。ごまかす隙もない。
これは困ると、何度か話しあいもしてみたが、遠慮するなよと笑うばかりで、どうも通じない。
どうやら伊作はこれを、純粋に『上級生による下級生のための優しい性教育講座』だと
思い込んでいるらしいのだ。
おかげで食満の話は、学術的、文学的な方面へまで広がりを見せ、下級生はまったく飽きる様子も
なく、それどころか目を輝かせて聞き入り、さらには口コミで噂が広がって聴講者が増えるという、
悪循環に陥っている。
教師陣も止めるどころか、積極的に生徒を送り込んでくる始末だ。とくに低学年の受け持ちに
その傾向が強い。
今では忍術学園の生徒の八割が『食満講習会』に参加しているといわれている。
もともとは委員会内部だけの話だったのに、事態はもはや、食満の意思ではどうにもできない
状態にまで膨らんでしまっていた。
そう、もはや、腹をくくらねばならないほどに。

薄暗い廊下をとぼとぼ進みながら、ちらりと横目で級友を盗み見る。
今日のために長次に借りようと目をつけてた本が、ちょうど貸し出し中だったんだよ、と
残念そうに首をひねりながら、伊作はのほほんと笑っている。
わかっている。もともとは自分が悪い。それに善法寺伊作本人は、ただひたすらいい奴なのだ。
ただ、自分も気づかぬうちに周囲まで巻き込む、最強の不運の持ち主なだけで。



用具委員会室は、渦巻く熱気と人いきれで息もできないほどだった。
一年生から六年生まで、色とりどりの制服が、狭い部屋にぎゅうぎゅうづめに入り乱れ、まさしく
足の踏み場もない状態だ。窓も戸も開け放たれているが、風がないため部屋の温度は上がるばかりで、
あちこちで真っ赤な顔の下級生がへたりこんでいるのが見える。
戸口に立ち尽くす食満の隣から、室内を覗き込んだ伊作が眉をひそめ、たいへんだ、熱中症に
なっちゃうぞ、と呟いた。
だが、食満はそれどころではなかった。
「よお!遅かったな留三郎、伊作!先にはじめてたぞ!」
「……なにやってんだ小平太ァ!」
一瞬の自失の後、思わず上げたひっくり返った叫びに、返されたのは高らかな笑い声だった。
教室前方に据えられた黒板の前で、ばたばたと両手を振っているのは、六年ろ組の七松小平太だ。
同じくろ組の中在家長次と、妙なにやにや笑いを浮かべたい組の立花仙蔵を従え、山積みの本とともに
教壇の上でふんぞり返っている。
その顔は、夏空と同じほど晴れ晴れとした笑みに覆われ、いつもどおり無駄に元気いっぱいだ。
しかし問題はそんなことではない。

「お前、それ!黒板になに描いてるんだ!」
「もちろん今日のお題だ!私は回りくどいのは苦手だからな、直接的表現でいくぞ!任せとけ!」
「誰がお前に任せるといった!」
聞いてるだけじゃ足りんのか!と、怒りのままに投げた手裏剣は、小平太の顔をかすめて
背後の黒板に突き刺さった。
正確には、黒板いっぱいに描かれた、どへたくそな大股開きの図のど真ん中に。


678:講習会はカオス!の段3
07/09/01 02:19:07 38s1RaKn

なにかの本から写し取ったものだろうか。関節も奥行きも無視して描かれたそれは、あまりにも
下手すぎて、一瞬ナメクジの群れか山盛りまんじゅうにしか見えない。
そのため下級生のほとんどは、ただぽかんと見つめているだけだ
だがわかるものにはそれが、秘所もあらわに松葉くずしでまぐわう男女、ということが見て取れるだろう。
しかもただの交合ではない。背景にはイカめいたタコも描かれ、長い腕を睦みあう男女に複雑に絡めている。
巨大な吸盤を有する腕のうち、二本は大きく開かれた女体の股に潜り込み、一本が口へともぐりこんでいた。
松葉くずし二本挿し、同時三穴触手攻め。どういう趣味だ。
ご丁寧にも部分的に赤のチョークを使い、棒と穴だけは異様にリアルに描かれたそれは、
稚拙な分だけひどく卑猥だった。

食満の到着に気づいた下級生が、あちこちから先輩こんにちは、と元気なあいさつをよこしてきた。
ひときわいい声は、おそらく一年は組の連中だろう。目の前の衝撃的な光景にそぐわない、
無邪気な声がいっそ無残だ。
いたたまれなさをこらえながら、食満は大急ぎで教壇へと駆け寄った。
教壇の前には、用具委員の富松作兵衛が、縄でぐるぐる巻きになって転がされていた。
横では一年ろ組の平太が、なぜか頭巾を目の下まで下ろして、おろおろしている。
あわてて猿轡を外してやると、珍しくも作兵衛が、うわーんと大きな泣き声を上げた。
「先輩すみません、俺じゃ止められませんでした!平太の目隠しが精一杯で……!」
「気にすんな、お前はよくやった。しんべヱと喜三太はどうした?」
「今日はまだ来てなくて」
「よしわかった。あとは任せろ」
すすり泣く後輩たちを、すばやく後に下がらせて、一つ大きく息をつく。
そして食満は刀に手をかけ、ゆっくりと黒板を振り返った。
暑さと怒りで真っ赤に燃え、口から炎を吹かんばかりの食満を見て、小平太がだってさあ、と
口を尖らせる。

「ずっと聞いてきたけど、お前の説明遠まわしすぎて、わかるものもわかんないぞ。
あれじゃ教わるほうがかわいそうだ」
「こんなもんいきなり見せられるほうがもっとかわいそうだ!」
「なんで!滝夜叉丸は気絶するほど感動してたぞ!?私はこの手の指導にはかなり自信が」
「いやいや、そうでもないぞ小平太。現に三年と四年が五人ばかり、鼻血を吹いて保健室送りに
なったじゃないか。食満の教育もそれなりに功を奏していたと」
「お前が黒幕か仙蔵!」

打ち込んだ数本のくないは、すべて小刀に弾き返された。
汗一つ浮かべず涼しげに食満を見やると、仙蔵は学園一のサラストヘアを、さらりと優雅にかきあげた。
「だって、小平太のほうが面白くなりそうじゃないか。いろいろと」
「悪魔かお前は!」
ぎりりと睨み合う二人の間に、火花が飛び散る。ただでも蒸れた室内の空気が、さらに温度と湿度を
増していく。
突然始まった最上級生の諍いを、周辺の下級生は固唾を呑んで見守るばかりだ。
熱気に当てられたか、数人が気を失って倒れこむ。あわてて伊作が駆け寄った。
相手はい組の優等生。だが、今の食満に負ける気はなかった。有無を言わせずたたっ斬るか、いやまず
黒板を消すのが先か、といっそ冷静に考えながら、あたりに鋭く視線を走らす。
その目が、教壇に積み上げられた本の山にとまった。
「……なんじゃこりゃああ!」
一番上に置かれた冊子をつかみ取り、またもや悲鳴を上げた食満に、小平太が嬉しそうに目を輝かした。
「それか!すごいだろう、長次説き伏せてやっと借りられたんだ!教本に使おうと思って!」
「美熟女秘膜八方破れ……新妻秘穴ドドメ色奇譚……こんなグロいもんで何を教える気だ!?
ていうかそもそも『秘密文書』は、六年以外閲覧禁止だろうが図書委員長!」

周囲の騒ぎも気に留めず、教壇の横でもくもくと押し花のしおりを作っていた長次が、ふと顔を上げた。
怒り狂う食満を見て、むっつり押し黙ったまま懐に手を入れると、そこから数枚の小判を取り出し
軽く振ってみせる。
説明は終わった、とばかり、また押し花作成に精を出す長次に代わり、教壇から飛び降りた小平太が
ふんぞり返って胸を張った。


679:講習会はカオス!の段4
07/09/01 02:21:10 38s1RaKn

「半年分の小遣いをはたいた!かなり痛いが、でもまあ、可愛い後輩のためならエンヤコラだ!」
「お前の優しさは、方向性が間違っている!」
「あ、それ私が借りようと思ってたやつだ」
後ろでマイペースに、倒れた下級生の手当てをしていた伊作が、これまたマイペースに呟いた。
聞き捨てならない台詞のような気もしたが、今は追求している余裕がない。
あえて級友に背を向け、前方の三敵に向き直る。
「もういい、お前ら出て行け、退場だ!いやもう今日は休講だ!全員退避!駆け足!」
「そうはいくか。こんな面白いもの、見届けずにおられるものか。それいけ小平太!」
「任せろ、小遣い分は教えるぞ!それじゃあまず四十八手から!」
「いい加減にしやがれって……」
「ちょっと待ったあ!」
「今度はなんだあ!」

突然の横槍に、血汗を吹かんばかりの勢いで食満が振り返る。
同時に、開け放たれた窓の外で、ぼーんと派手な煙玉が上がった。
瞬く間に白煙が、よどんだ空気に混じり部屋を埋める。最上級生達はすばやく口を覆ったが、
部屋のあちらこちらで咳き込む声が上がった。
吹き始めた夕暮れの風に、ようやく目と喉を焼く刺激が洗い流されたとき、食満は、窓枠に一人の
人影があるのに気づいた。
ひょろりと背の高いその人影は、不安定な窓枠の上で両手を突き上げ、右足を後ろに折って立っていた。
いわゆる『グリコのポーズ』だ。
人のよさそうな顔には柔和な笑みが浮かんでいるが、なぜかその顔も、まとった五年生の制服も、
もさもさの髪も、傷だらけでずたずたのぼろぼろだった。
ヒメジョオンを本の間に挟みながら、長次がちらりと窓を見上げた。
「不破……いや、鉢屋か……」
「ご名答!」
ぱあんと小気味いい音を上げ、頭上で両手が打ち鳴らされた。忍術学園で一、二を争う有名人の登場に、
煙玉でざわついていた室内の騒ぎが、少し鎮まる。
窓枠に片足で立ったまま、にっこり微笑むと、鉢屋は奇妙に血走った目で教壇前の上級生たちを見た。

「やあやあ、久方ぶりに学園にもどってみれば、こんな面白いことが起きていようとは!
ぜひ私も参加させてください先輩方!僭越ながらこの鉢屋三郎、子供の性教育には少々の実績が!」
「引っ込め五年ボーズ!今日は終いだ!」
「なに言ってんだ、やるぞ!」
「鉢屋、随分テンション高いな。なにかあったのか」
「いえ、押入れに監禁されたあと、二日ほど山で逆さづりにされたので、頭に血が上ってるだけです」

どつき漫才はツッコミの強さが命!このくらいは序の口ですよ!と瞳を燃やして拳を握る鉢屋に、
今、ツッコミを入れるものは誰もいない。
いや俺が入れてやるべきか。なんといっても相手は窓辺でここは三階、ちょっと押したらそれで終いだ。
なんとなくだが、そうすべきだという気がする。
噂に聞き及ぶこの有名人の性格と、噂以上の異様なテンションに、食満の忍びとしての勘が
警告を発しているのだ。
こいつは、危険だと。
だが、食満がほとんど無意識に窓辺ににじり寄ったところで、まるでそれに気づいたかのように
鉢屋が振り返った。
「そうそう、その山でまた一つ、実績を積んできたんです」
さあ来たまえ!と浮かれた掛け声に続き、窓枠にかぎ縄が引っかかった。
部屋中の視線が集まる中、ずるずると、それを伝って窓枠に姿を現した人物に、小平太が
あれっと呟いて目を丸くした。

「三之助じゃないか!」
「裏裏山で偶然会ったんです。彼が通りかかってくれなければ、私は脳みそ破裂するところでした」
「なーんだ、いないと思ったらまた行方不明だったのかあ!」
「なんでもぜひ、七松先輩に伝えたいことがあるそうなので、こうして連れてきました」
「へえ!なんだ?」


680:講習会はカオス!の段5
07/09/01 02:23:14 38s1RaKn

窓枠の上で、鉢屋が親しげに肩に手を回しているのは、体育委員の三年生だ。
暴君七松によく従う、健気な後輩の一人だと聞いている。
だが、なんだか変じゃないか?と食満は首をかしげた。
テンションの高すぎる鉢屋の隣にいるからかもしれないが、こちらは逆に、テンションが低すぎるように
思える。
目も据わっているし、むっつり黙り込んだ丸長の顔は痩せこけて青白く、表情も空ろだ。
次屋と同級の富松作兵衛が、心配そうにこちらを見ている姿が、視界の隅に映った。
後輩のためにも、とりあえず大丈夫か、と声をかけてみたが、まるで聞こえていないかのように返答はない。
かわりによろよろと教壇へ目をやると、次屋は腕を組んでにこにこ見下ろす小平太に向かい、
ぐっと拳を突き出した。

「七松先輩ー!」
「応!どうした!」
「俺は、俺は、間違ってましたー!」
「ふーん!そっかー!」
「俺が今まで学んできたことは、間違いだらけだったんです!ざるです!いやそばです!」
「そりゃたいへんだー!」
「でももう大丈夫です!俺、大宇宙の真理を学びましたー!」
「おお!やったなー!」
「ねはんのそこでぱらいそとも交信しました!今では小宇宙も燃やせます!」
「よくわかんないけどよかったなー!」
「はい、だからわかったんです!……七松先輩、あなたの教えは間違っているのだということが!」
「ええー!?」
「でもあんしんしてください!おれがしんりをおしえてさしあげます!とうかこうかんで!」

どよめきが室内を轟かせた。食満も、仙蔵さえ目を見張る。
体育委員の暴君に逆らう下級生など、これまで一人もいなかったのだ。ましてや三年生如きが。
なんという命知らずだ。これは勇気というより暴挙だろう。
部屋の隅々から、同学年と思しき数人が、早まるな三之助、帰ってこい!と悲鳴を上げている。
だが、次屋の目は据わったままだ。黒目と黒目の間も離れているし、表情は空っぽで、
おそらく同輩の声も届いていないのではないか。
意識がどこかへ飛んでいる。まるで幻術にでもかかってしまったかのようだ。
いや、これってかかってんじゃないか?
はたとして、食満は横を見た。窓枠の鉢屋三郎は辺りを睥睨しながら、にこにこと笑ったままだ。

邪気のかけらも伺えないその笑顔に、不覚にも、背筋がぞっと総毛だった。

動けない食満の前で、小平太が不安そうに仙蔵を振り返った。
「どうしよう仙蔵、私、間違ってるって!」
「心配するな、今さらなんだ。お前はたいてい間違ってるじゃないか」
「そうか、じゃあ大丈夫だな!」
仙蔵の助言にはまったく説得力がなかったが、なぜか小平太は納得したようだ。
晴れ晴れした顔に戻り、よーしそれじゃあ、勝負だ三之助!と、腕を振り回す。
いやなんでそうなるんだと思う食満の、心の突っ込みは届かない。先輩からの熱い呼びかけに、
魂の抜けたような次屋の顔が、ふらふらと上がった。

同時に、戸の向こうから飛び込んできたほうろく火矢が、その頭を直撃した。


681:講習会はカオス!の段6
07/09/01 02:25:22 38s1RaKn

ごーんと鈍い音とともに、次屋が白目をむいてあおむけに倒れこんだ。
床に頭を打ちつける寸前で、食満の伸ばした手が、かろうじてその襟首をつかむ。
床を転がる火矢に悲鳴が上がったが、すばやく拾い上げた仙蔵が、火はついていないよと肩をすくめた。
だが、火がついていなくても、硬いほうろく火矢は、投げれば危険なことに変わりはない。
気絶したことで、ある意味次屋は救われたのだが、それとこれとは別問題だ。
どこから出したか、火器厳禁の札を掲げる長次とともに戸を睨むと、食満は、誰だこら!と怒声を上げた。
「火薬をおもちゃにするな!」
「すみません適当なもんがなくて!……許せよ三年ボーズ!せめて今はすべてを忘れて眠れ!」
「ああ、ぶら下がってないからもしやと思ったら!ついに下級生に被害が出ちまったか!」
間髪いれず飛び込んできたのは、二人の五年生だった。
床に伸びた次屋を見て、がっくり肩を落とすうち一人の姿に、あちこちで豆腐小僧だ、と低い囁きが飛んだ。
「やあ兵助、八左ヱ門!迎えがないから勝手に戻ってきたぞ!」
張り詰めた空気を読まず、にこやかに手を振る鉢屋に、豆腐小僧が顔を上げた。
生真面目そうな顔が、怒りと悲しみに染まる。

「鉢屋三郎!なんてひどいことしやがる、相手は下級生だぞ!」
「はっはっは!私は後輩だってかまわないで食っちまう人間なんだぜ!」
「待て待てなに言ってんだ!」
「おいおい君達、勘違いしているようだから言っておくが、私は彼を救ってやったんだぞ?
なにやらひどい目にあったらしくてね。まんじゅうこわいと呟きながら、怯えきってふらふら山を
さまよっていたから、いやな記憶を忘れられるよう、幻術をかけて」
「え、そうなのか?」
「別の知識を刷り込んでおいた」
「違うトラウマ植えつけただけじゃねえか!」

竹谷八左ヱ門の剛拳が、鉢屋の足元の窓枠を破壊した。ひらり華麗に飛び上がり、床に降り立った
鉢屋を、久々知兵助の手裏剣が襲う。
すごい、前で見よう!と立ち上がった火薬委員の四年生を、一年生と二年生が押さえつけて引き倒した。
にやりと笑ってそれもかわした瞬間、鉢屋の首に、音もなく窓から伸びた縄標の一端が巻きついた。
クエっと変な声を上げて倒れこんでも、締まらないよう、縄と首の間に手を通しているところは、
さすが鉢屋三郎だろう。
思わず感心した食満の眼前に、夕日を背負った黒い人影が、窓から化鳥のように飛び込んできた。

壊れた窓枠に足をかけ、縄を引き絞るその人物は、床に倒れる鉢屋三郎と、同じ制服、寸分変わらぬ
背格好に顔、髪型をしていた。
ただ一つ違うのは、人のよさそうな顔に、ギンギンの怒りを浮かべているところだ。
忍び刀を握りしめ、怒りの形相もものすごくにじり寄る人影を見て、鉢屋が転がったまま、
嬉しそうに片手を上げた。

「やあ雷蔵!やっとあらわれたな我が相方!」
「勝手に相方にするなってば!そんなの今日こそ解散だ!」
「なんの、明日には再結成だ!」
「いい加減にしろ三郎!君ってやつは、何人不幸にしたら気がすむんだ!?いったいあの三年生に
なにを吹き込んだ!」
普段穏やかな不破雷蔵の、容赦のない怒声に、部屋の片隅で図書委員の下級生が縮み上がる。
見上げる鉢屋の眉が、悲しげに寄った。
「君まで私を疑うのか?別に大人になったら三本に増えるとか、硬度も砲丸を貫けるほどになるとか、
長さは通常三尺八寸なんてことは教えてないぞ?」
「嘘つけ!普段は体内に収納しているからわからないんだとか、穴は五つあるとか、うち二つは偽物で、
間違ったところに入れるとちょん切れるとか言ったんだろう!」
「だから、頑張りすぎると口から出るなんて、信じたのは君くらいのもので」
「もうよせ雷蔵!聞いてるこっちの心が痛い!」


682:講習会はカオス!の段7
07/09/01 02:27:32 38s1RaKn

蒼白になって耳を押さえ、首を振る久々知の横で、だから吊るすより埋めときゃよかったんだ、
と、竹谷がため息をついた。
「あんなところで迷い癖出すから」
「わかってる、ぼくの過ちだったよ。もう迷わない。今ここで、五年分の決着をつける!」
ぎりりと縄を引き絞り、真剣な目で睨んでくるその顔を、同じ顔が寂しげに笑って見返した。
「悲しいものだな、若さゆえの過ちというものは」
「過ってんのはお前のほうだ!」
「過るより謝れっての!」
「そうはいくか。一度ネタを出したら後には引かない、芸のためなら親友も泣かす。それが芸人魂!
それが鉢屋クオリティ!」
「お前は芸人じゃなくて忍たまだあ!」

鉢屋と不破の間で張り詰めていた縄が、音を立てて千切れ飛んだ。
くない一閃、首に絡んでいた縄標と、半瞬遅れて突っ込んできた久々知の刃が、同時に払われる。
仰向けの体勢から、腹筋の力だけで天井近くまで舞い上がると、鉢屋は空中で身をひねり、
音もなく部屋の真ん中に降り立った。
相変わらずポーズはグリコだ。
見事な体術に、部屋のあちこちからまばらな拍手が上がった。
片手を振って拍手を収め、自分も刀を抜く。そして鉢屋は、寂しさの中にも決意を秘めた表情で、
獲物を構える三人の同級生を振り返った。

「批判を恐れて芸人が務まるものか。たとえ誰にも理解されなくても、私は私の道を貫くぞ。
さあ友よ、いまは敵となりしもの達よ!思うがままに罵り叫ぶがいい!変態とでもウホッ!とでも!」
「叫びたかねえよ!」
「だから芸人じゃなくて忍たまだっての!」
「君、実は楽しんでるだろう!」
「五年ボーズども!漫才は外でやれイ!」

息をもつかせぬボケツッコミの応酬に、ようやく割り込んだ食満だったが、加速する五年生の暴走を
止める手立てはない。
こっちは気になさらないでください!と言われても、舞い飛ぶ手裏剣、縄標に、交差する剣戟を
気にせずいられるものではない。
相変わらずマイペースに、熱中症患者の手当てをする伊作とともに、何とか生徒を部屋の隅に非難させる。
さらにぎゅうぎゅうづめになったが、これは仕方ないだろう。
気絶した次屋を三年生に託し、ほっと一息ついたところで、食満は自分の問題を失念していたことに気づいた。
お祭り大好きの小平太が、この騒ぎに一言も口を挟まないとは何事だ?
慌てて黒板を振り返る。

「いいかあ、それじゃ基本中の基本からいくぞ!これが押し車でこれが砧……」
「それのどこが基本だあ!」
黒板のわずかな隙間に、がりがりと勢いよく絵を描く小平太の手から、チョークがはじけ飛んだ。
いつのまにやら黒板の前に、室内の三分の一ほどの生徒が集まっていた。
仙蔵と小平太の仕業にちがいない。騒ぎの合間に勝手に進めるつもりだったのだろう。油断も隙もないとは
このことだ。
もっとも今度も下手すぎて、ほとんどの生徒には通じていないようだが。
だが中には数人、真っ赤になったり、涙目で友達の目を押さえているものもいる。だめだ。やはり黒板を
破壊するか、小平太を破壊するかしないとおさまるまい。
見つかったかー、と残念そうに肩をすくめる小平太を睨み、手首に仕込んだ棒手裏剣をもう一本引き抜く。
周りの騒ぎも知らぬげに、もくもくとマンジュシャゲを本に挟む長次の横から、立ち上がった仙蔵が
にやりと笑って食満を指差した。
「負けるな小平太。奴を倒せばお前の天下だ」
「煽るな悪魔!」
「応!真の講師の座を賭けて、勝負だ留三郎!」


683:講習会はカオス!の段8
07/09/01 02:29:36 38s1RaKn

窓辺では五年生が、三対一で演舞じみた華麗な立会いを繰り広げている。
黒板前では六年生が、一触即発の張り詰めた空気をにじませている。
新たなる戦いの予感に、生徒は二手に分かれて観戦の体勢に入っている。熱気に満ちた室内は、
いまや興奮の坩堝だ。もはや本題がなんだったか、覚えているものはいるまい。
おれ、まんじゅう売っていい!?と立ち上がった一年生が、同級生と思しき数人に押さえられて潰された。

「けませんぱいこんにちは~」
熱気も緊張感も粉々にするような、間延びした声が響いたのは、そのときだった。

「あ、おまんじゅうがいっぱい描かれてる~」
「ちがうよ、なめさんだよ」
ぽてぽてと間抜けな足音を立てながら、開けっ放しの戸から入ってきたのは、用具委員の一年生だった。
食満の苦悩の、元凶とも言える二人だ。
小太りのしんべヱはすでに汗だくで、喜三太はいつものナメクジ壷の他に、一冊の大きな本を抱えている。
無垢な目で黒板を眺め、ぺこりと頭を下げる二人の姿に、なぜか仙蔵が頬を引きつらせた。
部屋に満ちた興奮も、必死の戦いを繰り広げる五年生もなんのその。暑いね、とか、もうすぐ晩御飯だけど
時間あるかなあ、とか、呑気な会話を交わす後輩の目の前に、食満は慌てて立ちふさがった。

「こら!お前ら見るな!今日は帰れ!」
「遅くなってごめんなさい、喜三太が調べものしたいっていうから~」
「先輩あのね、ぼくの風魔の先輩が、わからないことがあるっていったら本を送ってくれたんですけど」
「すっごく古くて、絵と字としみがいっぱいの、分厚い本なの」
「これ読んだら完璧だベーって言うんですけど、難しくてよくわかんなくて」
「だからなあ……」
「無駄だ。そいつらに言葉は通じんぞ」
嫌そうに数歩下がり、黒板に張り付いて小声で囁く仙蔵は、顔面蒼白で脂汗まで流している。
何を怯えているんだと不審に思いながらも、二人を守るべく食満は黒板に向き直った。

「それで、先輩にお聞きしようと思って」
「今日は終いだ。質問は明日にしろ」
「難しい漢字や言葉がいっぱいで、でも図書室で辞書引いても載ってなくて」
「絵からすると、世界のまんじゅう百科だと思うんですけど」
「違うってば、全国ナメクジ大全だよ」
「お前らちょっと人の話を……」
「ほら、見て見て」
叱りつける声も無視して、ばさばさと本をめくる音がした。小さな体で精一杯に背伸びをし、
こちらに掲げている気配もする。だが振り返る余裕はない。
ああ、ややこしいときにややこしいことになった。少々乱暴だが、二人まとめて廊下に放り出すか、と
悩む食満の視界に、教壇の横でゆらりとゆれる影が映った。

膝から数種の草花を舞い落とし、ぬっと立ち上がったのは長次だった。
普段、どこを見ているかわからない空ろな目を、らんらんと輝かせ、じっと食満の後ろを凝視している。
正確には食満の胸下、喜三太が本を掲げているあたりを。
思わず手裏剣を構えた食満の耳に、ぼそりと低い声が届いた。
「あれは……!」
「知っているのか長次?」
「……風魔秘伝書・裏……!」
「なにィ!私も聞いたことがあるぞ!真言宗立川流の流れを汲み、さらに風魔独自の秘伝を加えた
房中術の最高峰と呼ばれる一品じゃないか!体位だけでも九十六手を誇るという!」
小平太の目がきらりと輝いた。仙蔵が興味深げに身を乗り出し、長次の顔に壮絶な笑みが浮かぶ。
下級生の間から悲鳴が上がった。


684:講習会はカオス!の段9
07/09/01 02:31:46 38s1RaKn

「風魔スゲー!クオリティ高ぇー!」
「それはそれは、後学のためにもぜひ、読みたいものだな!」
「……欲しい」
「お前ら、下級生の私物だぞ!」
「それでねえ先輩、このへん多分、専門用語だと思うんですけど」
「お前らも状況を読め!」

反射的に振り返ってしまったのは、食満留三郎の誤算といえよう。
振り向いた瞬間、目の前数寸に桃色の世界が広がった。
下級生が二人がかりで開き、こちらに向けた本には、見開きいっぱいに一枚の絵が描かれていた。
柔らかで繊細な線、高価な絵の具を駆使した風雅な色合いは、黒板と同じ構図でありながら、
小平太の絵など足元にも及ばない。匂いまで漂ってきそうな肌の質感、味がしそうな肉の重量感など、
まさに股間を一撃の衝撃だった。
侮りがたし、風魔秘伝書!
横を駆け抜けかけた竹谷八左ヱ門が、目を見開いてすっ転ぶ。巻き込まれて直視した二年生も数人、
鼻血を吹いてその場に突っ伏した。
「だからね、意味がね、ぜんぜんわかんなくて、それでね」
「先輩どうして前かがみなの?」
「お前ら、それしまえ!閉じろ!」
叱りながらも目を逸らせない悲しき十五歳。その間にも無邪気な手はぐいぐいと、食満に本を
押し付けてくる。

「先輩教えて!貝あわせってなんですか?」
「先輩教えて!尺八って笛のことじゃないんですか?」
「先輩教えて!みみずせんびきってなんですか?」
「ああ、それはね」
「ちょっと待て伊作うぅう!」

呪縛を解いたのは、親切で不運な同級生だった。
倒れた二年生の世話をしながら、にこやかに口を開いた善法寺伊作を、食満は思わず後ろから
ヘッドロックで締め落とした。
腕の中で、ゴキ、と妙な音がした気もするが、かまってはいられない。
床にくずれた委員長を、慣れた手つきで保健委員の下級生が運んでいく。その流れに乗じて、食満は
喜三太の手から本を取り上げた。
「没収だ!もうこれはおしまい!」
「いや~ん」
「おお可愛そうに。そんな暴力的な奴に渡すことないぞ。山本、福富、それは私が預かってやろう」
「ははは仙蔵、台詞が棒読みだぞ!」
「竹谷先輩、あれは新しい爬虫類でしょうか?色合いがじゅんこの腹っぽいと」
「は?……うわああああ!今気づいたけどなにこれヤベエエ!いかん、生物委員、全員退避だ!
目ェ閉じろ!雷蔵、兵助、ちょっとすまん!」
「大丈夫です、三治郎の目はふさいでます!」

黒板を見るなり奇声を上げて、抱えられるだけの後輩を抱き込むと、竹谷は部屋を飛び出していった。
生物委員は幸福だ、と心ひそかに思いながらも、食満は動くことができない。
先ほどとは段違いの熱意を秘め、仙蔵と小平太が小刀を構えた。長次も縄標を振りながら、ゆっくりと
こちらへ向き直る。
武器はすでに乏しい。唯一の味方は先ほど、自らの手で消したばかりだ。
ようやく事態を悟ったか、青くなって両足にすがりつく一年生をかばい、食満は絶望的な思いで
手裏剣を構えなおした。
「……よこせ」
「……うるさい」
目にも留まらぬ早業で、長次の縄標が飛ぶ。だがそれは、横手から飛んできた手裏剣に弾き飛ばされた。


685:講習会はカオス!の段10
07/09/01 02:34:19 38s1RaKn

「先輩方、風魔の秘伝書などより、鉢屋の秘技を知りたいと思いませんか?」
夕日の差し込む窓辺で、鉢屋三郎が高らかな笑い声を上げた。
またこいつか、と、どっと力が抜ける。
鉢屋は先ほどよりもさらにずたぼろで、顔の仮面も一部が剥がれかけていた。だが未だに意気揚々、
左右を囲む不破と久々知のほうが息が上がっているほどだ。
助けられたのかもしれないが、決して相容れられそうもない相手を、食満は鋭く睨みつけた。

「すっこんでろ、五年!」
「ほう、お前は風魔の秘伝書より深い知識があるというのか?」
「ええ。その手の秘伝書はすべて、私の好敵手ですから」
「先輩、騙されないでください!三郎はどこまでも斜め上な奴なんです!」
「わかってる!」
「そのとおり!あらゆる正しい奥義、知識の、斜め上を越えていくのが鉢屋クオリティ!」
「それはもういいっての!」

片手で高々と天を指差し、片手を腰に当て笑う鉢屋の顔面を、不破の投げた手裏剣が襲う。
だがそれが当る直前、鉢屋の体が大きく吹っ飛んだ。
「邪魔だ、どきやがれ五年ボーズ」
先ほど壊れた窓枠の上で、落日の眩い朱に包まれて、うっそうとした人影が片足を上げている。
ずたぼろの鉢屋よりも、顔も制服もはるかに薄汚れてぼろぼろだ。
だがその両目は、深い隈に縁取られながらも、炯炯と底知れない光を放っていた。
野生の熊も裸足で逃げ出しそうなその迫力に、下級生の間からまたもや悲鳴が上がった。
食満も生唾を飲み込む。だがそれは、恐怖からではない。
いなくてもいいときには大抵出て来る、学園一ややこしい男の登場に、危惧を覚えたからだ。
「なんだ、文次郎じゃないか。修行は終わったのか?」
小刀を構えながら、気安く手を上げた仙蔵に、六年い組の会計委員長、潮江文次郎は、小さく鼻を
鳴らすことで答えた。
そのままゆっくりと底光る目で、静まり返った室内を睨みまわす。
これまでの文次郎とは違う、静かながら一分の隙もない動きに、食満は思わず一歩、その場から
ずり下がった。

文次郎が、なんだかアホらしい理由でアホらしい修行に出た、という話は聞いていた。
そのときは、いったい何をどのようにすれば修行になるのか、と、呆れた思いを抱いただけだった。
だがこの男、今までとは明らかに何かが違う。一皮も二皮も向けたようだ。

「修行どうだった?私の貸してやった砲丸、役に立ったか?」
「おう。何度かすりきれたが、ついには完全粉砕した」
にこにこ問いかける小平太の言葉には、壮絶な笑みが返った。ほう、と珍しく声を上げ、長次が
ぐっと親指を立てる。
こちらはぐっと二の腕を曲げ、力瘤を作ると、文次郎は隈だらけの目をくわっと見開いた。

「男の一念、砲丸をも砕く!馬が何だ!重要なのは硬度と持久力だあ!」
「なにいいい!砲丸を貫くどころか粉砕しただとおお!」

文次郎に吹っ飛ばされた姿勢のまま、床にへばりついていた鉢屋が奇声を上げた。
仮面の隙間から覗く肌を蒼白に染め、愕然と床板に爪を立てて、気勢を上げる文次郎を凝視する。
「なんてことだ、現実にネタを越えられてしまうとは!雷蔵、私はいったいどうすればいいんだ!?」
「引退しろ!」
間髪いれず駆け寄った不破のげんこつが、鉢屋の頭頂部を直撃した。
文次郎の言葉がよほど衝撃だったのか、抵抗らしい抵抗も見せず昏倒した鉢屋を、不破と久々知が
二人がかりですばやく縛り上げる。
ケリがついたか。しかしなんで鉢屋は文次郎の修行のことを知っていたのだろう。
首をかしげる食満の横で、室内を見回していた文次郎が、ぎらりと瞳を輝かせた。
「そこか団蔵おぉお!」
部屋の片隅から、一年生らしい甲高い悲鳴が上がった。
かかってきやがれ、リターンマッチだ!と雄叫びを上げながら、床に座り込む下級生を蹴散らし
投げ飛ばし、重騎馬のごとく突き進む文次郎の後を、面白そうだ私も混ぜろ!と小平太が追った。


686:講習会はカオス!の段11
07/09/01 02:36:27 38s1RaKn

時はすでに夕刻に差しかかっていたが、日差しはまだ暮れる気配もなく、熱気もとどまるところを
知らない。
恐怖と混乱で埋め尽くされた室内は、あちこちで上がる怒声と泣き声で、自分の声も聞こえないほどだ。
幾人もが熱中症と緊張で倒れていく。保健委員は奮闘しているが、優秀な保健委員長を欠いた今、
その力はあまりに弱く、小さい。
文次郎は、すがりつく会計委員たちを引きずりながら、逃げ惑う一年生を飽きもせず追いかけている。
小平太は、途中で拾い上げた次屋を肩車して、無敵の体力でその後を走っている。
次屋はまだ気絶しているらしく、ほとんど逆さづり状態だ。そのさらに後ろを、三年生の一団が
必死に追っている。
昏倒したはずの鉢屋は、がんじがらめの縄を易々と抜け、あっという間に復活した。
越えられたのならさらに越えればいいだけだ、頑張ろう雷蔵!と張り切って、どうしてぼくを
巻き込むんだ、と不破を泣かせている。
邪魔がなくなったとばかり、仙蔵と長次はじりじりと、こちらに向けて間合いを詰めてきている。
背後で、作法委員と火薬委員の四年生が二人、教壇の本をもくもくと覗き見ているが、気づかないのか
単に面倒なのか、注意する様子は微塵もない。
食満の両足は、しがみつく一年生に捕らわれたままだ。
涙と鼻水と汗と涎と、壷から這い出した無数のナメクジで、袴はもうぐっしょりになっている。
何匹かが袴の隙間から入り込んできているような気もするが、払う気力も湧いてこない。

ああ、カオスだ。
これをカオスと呼ばずになんと呼ぶのだ。

夕日はどこまでも赤く、気温はどこまでも高く、阿鼻叫喚の騒ぎもどこまでも続いていく。
迫る小刀と縄標の輝きを見つめながら、食満は、それでも明日は今日の分まで、講習会をやらなければ
ならないんだろうな、と、ぼんやり考えた。



夕日の迫る忍術学園の正門では、事務員の小松田がいつものように掃除をしていた。
不器用な箒の動きも、生真面目な表情も、いつもと同じだ。いつもどおりのその光景を、山田伝蔵は
なんとなくほっとして眺めた。
二学期初日から出張に出かけ、ようやく帰ってきたところだった。出かけていたのはほんの数日だが、
なぜか随分長いこと留守にしていたような気がする。
正門の数歩手前まで来たところで、ようやく小松田が顔を上げた。山田先生、おかえりなさーいと
間延びした声に、うむとあいさつを返して、外出許可書を返還する。
「留守の間、何か変わったことがあったかね?」
のんびりと許可書を確認する小松田に、何の気なしに問いかける。ちょっと前から息子さんが
お待ちですよ、との言葉に、ほう、珍しいなと驚くとともに、なんとなく面映い気持ちになった。
「他には何か、あったかね」
「いいえ。いつもどおり、平和なものです」
「そうかね」
この青年の言葉を頭から信じるのは危険だが、おそらく、それほど大事はなかったのだろう。
「土井先生がまた、神経性胃炎で倒れられたんですけど」


687:講習会はカオス!の段12
07/09/01 02:38:40 38s1RaKn

さらりと続いた言葉に、やっぱりあるんじゃないかとがっくりする。
だがまあ、それもいつもどおりといえばいつもどおりのことなのだが。
「ちょっと悪かったそうなんですけど、こないだから乱太郎君が、とても献身的に看病していて」
「ほう、乱太郎が」
「ええ、それで、一時危篤に陥ったんですけど」
「なに!?」
「なんででしょうねえ。でも今は、すっかり復活されましたよ。少々やつれたけど、とても穏やかな
お顔をされてます」

最近は学級委員の庄左ヱ門君や金吾君と、並んでお茶を飲んでることが多いみたいですよ、と
のんびり言い、小松田は許可書にぽんとはんこを押した。
「あの三人は三人とも、最近、そろって阿弥陀さまみたいな顔になりましたよね」
「なんだねそりゃ」
「うーん、なんていうかこう、悟ったみたいなっていうか」
自分でもよくわからないのだろう、首をかしげる小松田を置いて、伝蔵は門を潜った。
その後ろから、ぼくも行きます、と小松田が飛び込んできた。
「掃除は終わりかね」
「はい。講習会に誘われてるから、はやく行かなくちゃ。もう終わっちゃったかなあ」
「講習会?」
「ええ。六年生が自主的に開いてるもので、とっても人気があるんですよ」
やはりなんだかいろいろ、あったようだ。知りたい気もするが、この青年に聞くより他のものに
聞いたほうがわかりやすいだろう。
並んで校舎への道を進む。途中で、ふと思いついたように、小松田が伝蔵を見上げてきた。
「そういえばぼく、山田先生にお聞きしたいことがあるんですけど」
「わしにかね」
「はい。実は利吉さんにもお聞きしたんですけど、教えてもらえなくて」
「利吉に?」
「ええ。吉野先生には顔を引っ張られるし。それで、山田先生に聞いてみようかなあって」
「なにかね?」

小松田が振り返った。真っ赤な夕日を受けて、その制服よりも黒々とした長い影が、背後に伸びている。
影の先をなんとなく見つめたとき、伝蔵は、校舎の方角から一陣の黒い影が駆け寄ってくるのに
気づいた。
見紛うはずもない、息子の利吉だ。この平和な夕暮れの中、戦場もかくやというほどの真剣な表情で、
瞳には殺気さえ漲らせ、真っ直ぐこちらへ走ってくる。
何か起きたかと一瞬緊張するが、周囲には殺気も、人の気配すらない。
まるでいつもどおりの、学園の中だ。
どうしたと声をかけてみるか。だが、小松田が何かを話そうとしている途中だ。遮っては悪いだろう。
おそらく息子が到着するより、この青年が言葉を発するほうが早いだろうから。
「あのですね、赤ちゃんって……」
夕日の中、聞こえるはずもない距離で、利吉の顔が絶望に歪むのが、かすかに見えた。





688:名無しさん@ピンキー
07/09/01 03:16:15 Hl2KQ7/9
続き来てた(*´д`*)ハァハァ
笑わせて頂きました、GJ!

689:名無しさん@ピンキー
07/09/01 11:34:37 XwWvW4aw
講習会
キタ━(゚∀゚)━!!!!!

鉢屋
キタ━━(゚∀゚)━━ !!!!!

ギンギン帰って
キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

アホの子小松田
キタァアアアアア━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!!!!

690:名無しさん@ピンキー
07/09/01 12:22:42 +rs0e/RA
食満好きにはとてもおいしい話でした
ありがとうありがとう
鉢屋アホスwww

691:名無しさん@ピンキー
07/09/01 13:39:39 3II74g6D
にっきの人GJ!!
想像以上の内容と量にただただ感服ですww
不死身な三郎と一部分だけ人間を超えた文次郎がアホ過ぎて大好きだ~!


692:名無しさん@ピンキー
07/09/01 16:39:54 /imZoBKB
続編キテタ!!!
にっきのひとありが㌧

693:名無しさん@ピンキー
07/09/01 17:41:06 B0iRsoxu
読みふけっちゃいました
にっきのひといつも感謝です

続き…ますか?

694:名無しさん@ピンキー
07/09/01 20:37:17 GiDcz01E
にっきの人!!!!!続編激しく感謝です!
鉢屋クオリティに感動wwww新作待ってる!

695:名無しさん@ピンキー
07/09/01 22:32:31 ChCTQEbC
鉢屋バロスw w w阿部さんのセリフw w w w w w w

696:名無しさん@ピンキー
07/09/01 22:41:53 6QIDAGCZ
にっき新作が!!もう笑いすぎて腹筋がヤバイす…
食満は苦労人でFAですかwww

697:名無しさん@ピンキー
07/09/02 01:37:42 JPw/u7bJ
超乙です!激しくGJ!!!!!!!!!!!!!!!!


カオス過ぎてもうどこからコメントしたものやらwww
とにかく上級生好きには嬉しい番外編でした。
鉢屋よりも中の人クヲリティタカスwwwwwwww

続編…期待してもいいですか?






あ、あと全編改めて読み直して思ったこと。

一番といっても良いほど冷静な気がするきり丸が、意外なようなそうでもないような。
(でも意外じゃない理由を考えると、原作14巻が頭から離れなくなるので自重)

698:名無しさん@ピンキー
07/09/02 03:05:52 GvUyM3H3
確かにきり丸は冷静だったね。にっきの人GJ!!何度もワロタよwww

699:名無しさん@ピンキー
07/09/02 11:00:17 mcbHX4+C
蛇な三年生が出てこなかったけどGJwwww

塚土井は一線越えを知ってしまったのねw

700:名無しさん@ピンキー
07/09/02 19:41:08 RYnrbQA8
URLリンク(mippi.jp)

にっきシリーズを勝手に個人的にまとめてみたけど、良かったらドゾ。
ログ、にっきの人の以外の書き込み要らないだろうか…?

701:名無しさん@ピンキー
07/09/02 22:33:05 +DH/fQ3t
>>700
超GJ!!!!!!!!乙!
感想欄とかでにっきの人へのレスも載せといたらさらに楽しめると個人的には思うけど。
なんか仕事増やしそうでごめん。

702:名無しさん@ピンキー
07/09/02 22:41:28 x+fy8dqj
>>700
乙です!!早速利用させてもらってます!
途中であった考察とかも楽しめたので載せてもらえると嬉しいのですが
やっぱり大変でしょうか?



703:700
07/09/02 23:24:02 RYnrbQA8
>>701-702
アドバイスありがとう!
一応にっきの本文とそれに関するレスをそのまま貼り付けてます。
先程3-4の間で抜けてたのを補ったけど、702が言っていたのはそのことかな…?
感想欄は……暇時間できたらやりますねw

704:名無しさん@ピンキー
07/09/03 01:23:22 fpUEKjQT
>>700
やるならスレ作品全部まとめておくれよ…

705:名無しさん@ピンキー
07/09/03 01:51:23 paCurIR8
スレのまとめサイトじゃないのか?
ここで公開するなら全部のまとめのほうがいんじゃね?

706:名無しさん@ピンキー
07/09/03 10:14:47 VIbKJxR5
スレまとめサイトを作りたい奴は作ればいいし
特定作品のまとめを作りたい奴はつくればいいだろ
労力が絡む以上横から口出すようなもんでもない

707:名無しさん@ピンキー
07/09/03 16:07:20 zxFPydWI
>>700GJ!!

にっきシリーズの人気は異常www
その流れでまとめをやってくれたんだからここは>700感謝するべきさー。
他のシリーズもまとめたいなら自分でやるか、個人的にメモ帳とかで楽しんでいればいい。

>706の言うとおりだ。
労力かかるんだからあれもこれもと文句つけるべきとこじゃない。

708:名無しさん@ピンキー
07/09/03 17:49:55 fpUEKjQT
>>707
そこまでイライラすることでもないだろう。モチツケ

709:にっきの人 ◆Vkqg3/8uas
07/09/04 00:22:53 0T++G0y8
気に入られたキャラほどえらい目にあう。
それがにっきクオリティ。
俺は忍たまだってかまわないで下ネタかます人間なんだぜ?

で、今まさにΣ(゚Д゚;≡;゚д゚)な状態なわけだが。
いやもう、書き手冥利に尽きます。
楽しんでくれてありがとう>700
レスくれた人たちもありがとう。
また何か浮かんだら投下する。
でもって、他の人の投下を心から待ってます。

最後に、喜三太の苗字を間違えていたことを
ここで懺悔する。
だれだ山本って……orz

710:名無しさん@ピンキー
07/09/04 08:57:26 W2jQ1ZwQ
>>709
ドンマイ涙w

711:名無しさん@ピンキー
07/09/04 21:40:24 piKtHKJ2
>>709
100点なんかとらなくていい
大事なのは読者にモテることだよ


うまいこと言おうとして失敗した……orz

712:名無しさん@ピンキー
07/09/10 16:00:58 AzzvQDtg
保守

713:名無しさん@ピンキー
07/09/17 12:10:56 qNVDB2yU
保守

714:名無しさん@ピンキー
07/09/18 20:48:57 zI0k2gcp
作品書きたい。でも時間がないorz
来年ぐらいまで、できるだけ多くの方が作品投下し続けてくれることを祈りつつ保守

715:名無しさん@ピンキー
07/09/21 08:10:11 8Vg/tH7l
>>714
職人マジガンガレ


716:名無しさん@ピンキー
07/09/21 23:46:22 r2a5Rz2b
>714
がんばれ応援してる。
 
 
ユキトモでもトモユキでも
どっちでもいいから百合が読みたい…
シナ先生×くの一とか


717:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:25:53 AxkkGtFK
仙蔵×くノ一って百合っぽく…
ならないか

718:名無しさん@ピンキー
07/09/23 00:05:34 uapdnFj9
6年×くのいちか…
15歳×11歳…いけるか??

もしくは6年×シナ??

719:名無しさん@ピンキー
07/09/23 04:08:35 J65w0V4C
>>718
6年が負けそうだなぁ…。
仙蔵は男っぽいとオモ

潮江×そうこが行けると思うんだがあまりやる人居ないな

720:名無しさん@ピンキー
07/09/23 04:10:40 qf+arSeT
>>718
同い年ってことで二年×くの一




しかし疑問なんだが、くの一は一学年しかないんだろうか…

721:名無しさん@ピンキー
07/09/23 21:38:40 TeojEsFG
>>719
エロでなければ見たことあるんだが・・・
貴重な男女のカラミなのに惜しいな

>>720
尼子先生によれば、ユキたちより上に
1クラスあるかもしれないらしい

722:名無しさん@ピンキー
07/09/23 22:49:19 3cpa+7SI
登場したってどうせ極太眉毛におめめギラギラまつ毛バシバシの怖いくノ一達なんだろう

723:名無しさん@ピンキー
07/09/24 00:29:15 IV8w6xYb
房中術の練習的な設定ならいけるんジャマイカ??

724:名無しさん@ピンキー
07/09/24 08:59:59 OHvXkDvs
求む兵みか

725:名無しさん@ピンキー
07/09/24 22:20:09 6tjjaiVD
求む滝夜叉丸山ぶ鬼
 
この二人略したら滝山でいいのか?

726:名無しさん@ピンキー
07/09/26 01:29:38 tt3WirIX
>>725
お笑い芸人みたいジャマイカw

727:風と木の名無しさん
07/09/29 13:17:14 jiZ0NbxA
>>724
投下しようか悩み中
…ちょっと兵太夫が無理やりぽい感じだし

728:名無しさん@ピンキー
07/09/29 14:42:49 /jQQjaQi
>>723
その設定いいなw
初めてのくのいちに先生や上級生が手取り足取りあんなことこんなことハアハアハア

>>727
よ、読みたい!!!
兵太夫が無理矢理ぽくだなんてなおさらハアハアハア
ぜひとも投下希望です

729:名無しさん@ピンキー
07/09/29 17:36:17 jiZ0NbxA
では流れぶった切って兵みか投下。結構長いですどぞ↓

730:兵みか1
07/09/29 17:37:37 jiZ0NbxA
見くびっていた。本当に甘く見ていた。
まさか。まさか、彼がこんな子‥いや、男の人だったとは。
みかは確かにくのいちの中ではかなり奥手なタイプだ。とはいえ仮にもくのいち。
あのシナから直に手ほどきを受けているのだから、男一人惑わすなど朝飯前なはずなのだ。
実際今まで彼女の術に堕ちた男は数知れず。しかし彼女をこんな窮地に立たせているのは
今まさに彼女の眼前にいる忍が初めてである。

「久しぶりだね、先輩」
みか同様きちんと切り揃えられた前髪。そこから覗く涼やかな眼差し。
それはかつて彼女が悪戯を仕掛けた相手、兵太夫だった。

「な‥なんでこんなとこにいるの?」
目を丸くして訊ねる彼女に兵太夫はにっこりと笑って答える。
「うーん、何でって言われても‥久しぶりに会いたくなったからかな?みかちゃんに」

同組のユキとトモミの悪巧みに手を貸し、まだ入学して間もない忍たまは組の子達を
こてんぱんにしたのは二年前の事。

二年。そう、まだ二年しか経っていないのだ。それなのにこの違和感は何だろう。

確かに自分はくのいちでも小柄な方だから、背はあの頃から自分より高かった‥しかしそれは少しの差だったはず。
少し目線を上げれば目を合わせる事が出来る差だった。それが今はどうか。
優に頭二つ分は違う目線、今だって壁際に追い詰めたみかを少し屈んで覗き込んでいる。
そして何より違うのは。みかはほんの少しだけちらりと視線を横に動かす。
彼女を逃すまいとするかのように、みかの顔の直ぐ側についている彼の左手。
彼は‥兵太夫の指は、もっと女の子のように細く華奢だった。
それが、いつの間にこんな節のしっかりした指になったのか。
手だけではない。以前より広くなった肩幅。以前より筋肉の付いた腕。
元々背の割りに細身だった兵太夫だが、今の彼を見ても以前のように女子と見間違えようが無く。
‥何よりみかの目を捉えて離さなかったのは、彼の喉の真ん中に付いた喉仏。
今、彼女の目の前にいる兵太夫は間違いなく"男のカラダ"だった。

「こ‥此処は男子禁制よ?」
「大丈夫、誰にも見つからない自信はあるよ。得意の抜け道があるから」
相も変わらず笑顔のまま兵太夫は答える。そうだ。彼は一年の頃からカラクリ使いで有名だったのだ。
学園中に抜け道を掘るなど彼からすれば造作も無い事。彼の自信は決してハッタリなどではない。
みかは背中に冷たい汗が流れるのを感じた。
「…い、いきなりこんな所まで来て何の用?」
「さあ…何の用だろうね」
言いながら兵太夫は右手をすっと伸ばし、みかの髪に指を差し入れてきた。途端にみかはビクリと肩を震わす。
彼の長い指は梳く様に彼女の髪の中を通り、そのまま彼女の頬に下りてくる。
強張る彼女の表情等お構い無く、兵太夫はその頬を撫でながら顔をゆっくり近づけてくる。
形の良い唇をみかの耳元に近づけ、彼は密かに嗤いながら囁いた。
「二年前の仕返し‥て僕が言ったら、みかちゃんどうする?」


731:兵みか2
07/09/29 17:40:02 jiZ0NbxA
「あ…んっ……ゃあっ…」

ここは男子禁制のくのいち部屋。男性教師でさえ何の許可も無く入る事は許されない。
そんな教室の片隅で。いつ誰が入ってくるかも分からない空間で。
…自分は一体、何を、しているのだろう。
朦朧とした意識を引き戻そうと、みかはそんな思考を浮かべた。
しかしカラダは彼女の意思を裏切り、ただひたすら掻き乱される。

床に広がる亜麻色がかった柔らかい髪。その上で彼女の細い手首を拘束しているのは兵太夫の左手のみ。
空いた右手がみかの服の上から小さな胸の膨らみをやんわりと揉み上げつつ、耳たぶから首筋へ、
ゆっくりと兵太夫の舌が下りてきた。それだけでみかは自分自身がおかしくなりそうな感覚に陥る。
「んう…や…やめて……ぁ」
「クスッ…可愛いね、みかちゃんの喘ぎ声って」
「ゃ…そ…んなこと…いわないでぇっ…ひゃぁっ」
反論する間も無く服の合わせ目から唐突にするりと忍び込んできた彼の手に、みかは翻弄されてしまう。
「うわ…柔らかい、みかちゃんの」
「だ…だめぇ……んぅ」
「じゃあココは?」
「っぁん!」
言うなり、赤く色づいた先端を指先で擦られ、みかの背中が大きく反る。
「もうこんなに硬くなってるよ?みかちゃんのココ。ほら」
「ゃめっ…あぁっ」
キュッと指先で軽く抓まれた。途端、びりりと電流のようなものが体中を駆け抜ける。
「指は嫌?じゃあこれならどう?」
「だめ…見ないでぇ…っやぁ…!」
しゅるりと帯紐を解かれ、はだけた衣の下の薄い鎖帷子も捲り上げられた。
あっという間に赤く小さな突起が兵太夫の口に吸い込まれる。
執拗に舐められ舌の上で転がされて吸われ、逃げようと体を捩っても掴まれた両腕はどうにもならず。
みかはすっかり逆上せてしまった頭を振り、必至に最後の理性にしがみつく。
「可愛いなあ本当…ココなんてほら、こんなに艶々してる。思わずこのまま食べたくなるよ」
双つの頂から顔を上げてみかに視線を戻し、兵太夫は微かに目を細め口の端を僅かに上げる。
漸く刺激から開放されたみかは既に絶え絶えの息を吐きながら、口を開いた。
「な…んでこんな…」
「ああごめん、上だけじゃあみかちゃんも辛いよね」
にっこり笑った兵太夫は言うが早いか、みかの下着の上からつ…と彼女の割れ目をなぞる。
「ぁ…ゃだ…あぅっ…」
たったそれだけなのに、じわり、と彼女の下着に薄い染みが広がった。
「あれ、もうこんなに濡れてる。…そんなに感じてるんだ」
最後の一言が熱い吐息と共に耳元へ吹き込まれ、ぞくりと体中が粟立つ。
恐怖じゃなく…そして何故か嫌悪でもない、意味の解らぬ感情。
「糸まで引いてるよ…ほら」
造作なく剥ぎ取った下着を見て兵太夫が薄く笑う。
「やだっ…そんなの見たくな…」
「でもこんなになってるよ?」
「っ…ゃあっ…!」
つぷ、と音を立て兵太夫が人差し指をみかの中へ差し入れた。その瞬間、みかの体がびくんと跳ねる。
「綺麗な色…まだあんまり使ってないみたいだね。房術やるって聞いてたけどな、くのいちって」
「房術なんて…実践で教わったの一度きりだったし…」
「そうなんだ、よかった」
「っ!やぁんっ」
ゆっくりと這い回る兵太夫の指が突然彼女の中を掻き回し始め、みかは言葉を続けられない。
以前房術の手ほどきをしてくれた先生は、もっと優しかった。だからに大した痛みもなかった。
今、自分へ与えられているのは何とも稚拙な愛撫。初めてでも無いのに時々痛みさえ感じる。
なのにあの時と違い、カラダの奥から湧き上がってくる、どうしようもない疼きと熱。
突き動かされる、もっとグチャグチャにされてしまいたいという衝動。
こんな感覚をみかは知らない。
…ああ。私、このまま壊れてしまうんじゃないかなあ…
何処かへ攫われそうになる自分の意識を何とか繋ぎとめながら、みかはまるで他人事のように思う。
しかしそんな他愛も無い思考さえ、次の瞬間に吹っ飛んだ。


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