07/07/31 04:41:58 xt2TBzoR
「どう、したの?」
「左近…」
真っ暗な闇の中、青白い微かな月明かりに照らされた先に、左近はいた。
今まで見たことも無い驚いた顔をしている。
俺は今どんな顔をしているのだろう。
みっともなく泣きじゃくった顔に、バレてしまったというパニックが加わって、それでも頭のどこか一部は冷静で。
叫びたかった。泣き叫びたかった。
それが出来なかったのは、もうボロボロに崩れたにも関わらずまだ微かに残った俺のプライドだった。
「三郎次、どうし…」
左近の目が、俺の目から離れる。
その視線の先には、俺の手。―正確には、手の中にあるモノ。
もう隠せない。思い知った。
「ごめん、ごめん…ごめん、ごめん…」
訳も分からず謝った。何で左近に謝ってるのか自分でも分からなかったけど、とにかく謝った。
誰かに謝って、しかって欲しかったのかもしれない。
ガキの頃、おねしょをした時叱ってくれた母親の様に。
左近はしばらく視線を泳がせていたが、すぐに俺の目を見た。
なんだかそれが無性に怖くて、俺は小さな子供の様に頭を下げた。
罵倒されるかもしれない。気を使った言葉を言われるかもしれない。
どちらにせよ、怖かった。
もう戻れない。そう思った。
だけど、現実はそうじゃなかった。
「なんで謝ってるのかよく分からないけど…、とりあえずおめでとうとでも言っとく?」
「え・・・?」
左近は、苦笑してた。