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妄想的時代小説part2 - 暇つぶし2ch37:皇女裏伝説
06/11/11 20:49:45 MJKPcxNT
>>36
 室に向かい始めると、後方で何かが落ちる音と共に 庭内がにわかにざわめき始める。
「誰かある! 一体何事が起こったというのだ!?」
 熾仁の呼びかけに、植え込みの影から警護を兼ねる庭師の一人が現れ跪く。
「お騒がせいたしまして申し訳ございませぬ。どうやら浮浪児が一人、庭の塀から紛れ込
んできた様です。御庭を汚す訳には参りませぬ故、ただいま取り押さえましてございます」

「離せよっ! 塀から出てる柿をお父にも持って行ってやろうとして滑っただけだっ!」
「こらっ! 高貴なお方々のおわす御庭内で騒ぐでない! 本来なら斬られても文句は言
えぬのだぞ!」

 薄暗闇でわからないが、どうやら迷い込んだのはやや甲高い声を持つ女子の様であった。
「ふむ。その侵入者とやらを、ここに連れて参ってみよ」
 熾仁はやや興味を示し、庭番にそう申し伝えた。
 程なく縄で括られた侵入者が二人の前に引き出されてくる。

 和宮と年の端も変わらぬ少女が粗末な着物に身を包み、ふて腐れた様に睨みつけてきた。
「まぁぁ……。随分と薄汚れた妖かしの者ですこと。……それになんだか臭いわ」
 和宮は感じたままにそう言うと、内掛けで顔を背けるようにして嫌悪を表した。
 囚われた少女は和宮の言葉を聞くと、かっとなったように叫んだ。
「く、臭くなんかないやいっ! ちゃんと毎日川で体も洗ってるんだ!
 あんたこそ綺麗な着物を羽織ってる癖に、なんだか生臭い臭いがしてるじゃないかっ!」
 言い返す少女の言葉に和宮の顔色が赤く染まり、体が小刻みに震えた。
「なっ……! 不潔な上に、なんて無礼な浮浪児なの!」

 確かに和宮の体からは、先程まで抽送されていた熾仁の精液の臭いが微かに漂っている。
 しかし、それを口に出す者は この館の中には誰一人としている筈もなかった。
「こ、こやつ! 皇女様に直に言葉を発しただけでも無礼というのに! 事もあろうに、
なんと恐れ多い事をほざきおるのか! ええい、黙らぬと命の保障はせぬぞ!」
 庭師は和宮の顔色の変化に慌てながら、縛られた少女を引きずり上げた。
「痛いってばっ! あたいはほんとの事を言っただけだ!」
「こ、この無礼者っ……! お兄様、この乞食娘にきつい罰を与えてやって下さいませ!」
 悔しさと怒りで縋り付いてくる和宮を余所に、熾仁は可笑しそうに笑ってしまった。
「まぁ、たまには珍事を見逃しても構わぬ。見ればまだ子供だ。
 花盗人は罪にならぬとも言うではないか。この庭内の柿位ならば、いくら与えてやって
も困らぬであろう。……娘、名はなんと言うのだ?」
「……」

 またも庭師に引きずり上げられ、少女は苦しげに視線を伏せながらぼそりと言った。
「……たき。あたいの名前はタキだよっ……」
「タキ……多岐だな。なかなか良い名だ。そこの者、多岐の戒めを解いて柿をくれてやれ」
 庶民には漢字名がつけられる風習はまだ少ない。熾仁は勝手にタキを多岐と呼び直した。
「お、お兄様っ!? 何故……っ!?」
 自分の命が通らなかった和宮は驚いて熾仁に詰め寄るが、熾仁は耳を貸そうともない。



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