07/01/19 00:24:36 buLajb7k
そう。千草の思いは完全に伝わっている。今のこの部屋には、俺が目を覚ましてからずっと、リーダーが歌う俺が書いた曲が流れている。
内容はベタベタなほどにストレートなラブソング。千草と付き合い始めて、その時に彼女に送った歌で個人的にはかなりいい線だと思っている。だが、彼女の無言のキスに――それによって伝えようとしてくる想いと比べてしまえば、陳腐にしか思えない。
「何百回好きだって言われるより、沢山伝わってる。だから、安心しろよ」
「…うん」
頷くと、千草は心音を聞くように、俺の胸に顔を寄せる。千草の髪は、いい匂いがする。シャンプーか香水か、それとも彼女自身の香りなのかはわからないけれども、いい匂いだ。
落ち着くような、それでいてどこかドキドキする……ぶっちゃけると、興奮する匂いだ。
…結局獣かよとか言うな、畜生。仕方ないだろ、ディープキスした挙句、恋人と二人きりで抱き合ってるんだぞ?増して千草は結構いい体している。
普段の図書館で作業しているエプロン姿では想とは見えないが、実は結構背が高く、手足は長い。プロポーションだってセーターの上からでも括れがはっきりと解るくらいだ。
などと俺が自己欺瞞をしていると、千草が呟いた。
「Hな気分?」
「え?」
「硬いから」
Oh!My馬鹿息子!
そりゃ密着状態じゃ隠しようないわな。
「雰囲気、台無し」
「く…っ、仕方ないだろ?」
二重の意味で硬直する俺に、千草は言う。さっきの意趣返しとでも言うつもりか?
だが、そんな俺の想像と、彼女の意図はまったく違った。
「うん。仕方ないよね」
「えっ?」
てっきり「この万年発情期がぁっ!」的なことを言われるのを覚悟していた俺は、意表を突かれて腕の中の千草を見る。千草も、俺の方を見ていた。
笑顔の一つもない無表情で、だけどほんの少しだけ恥ずかしそうに頬を染めて千草は言う。
「セックスしよ?」
つづく
今日はここまで。とりあえず、図書館の本は大切に使用ってことで。