07/01/19 00:22:57 buLajb7k
千草は無表情に呟いた。普通に言われたらグサリと来るかもしれないそれだが、シチュエーションによる補正と僅かに赤い頬のせいで俺の嗜虐心をくすぐる媚薬に変わる。
「極悪人はどっちだよ?人の寝込みを襲っておいてさ…」
「おっ、襲…ってなんか…」
「ん?聞こえないなぁ」
言いながら、俺は千草ににじり寄り、そっと抱き寄せる。千草はそっぽを向きながら、それでも抵抗する素振りはない。俺は調子に乗って千草の頬を撫で、口を耳元に寄せる。
「でもさ、どうしてそんなにキスが好きなんだ?」
「好きじゃ…ないもん」
「嘘つけ。じゃあ、どうしてそんなにキス魔なんだよ?」
「キス魔…じゃ!はむぅ…」
言葉を遮って、俺は千草にキスをする。舌も入れないフレンチキスだ。しかし効果は劇的だ。一枚のレンズ越しの目は、一瞬大きく見開かれ、すぐに蕩けて細まっていく。
ああ…その表情ヤバイって。
思わず押し倒したくなるが、ここはグッと我慢。キスを終えて、千草と目を合わせる。
「どうしてだ?」
再び問う。実は答えが返ってくることなど期待してはいない。どんな反応が返ってくるかが楽しい。それこそ嘘でも、無言であってかまわない。自分の言葉に対して彼女がどう返してきてくれるか、それが楽しい。
特に、普段から情緒情動が見えにくい千草だからこそ、こういう感情が表に出ている時は格別だ。
期待を込めて見つめる俺の視線の先で、千草は口を開く。
「……から…」
「ん?」
「怖い…から」
「…何がだ?」
千草は躊躇うようにしてから、必死といった風情に口を開いた。
「私…口下手だから。…あなたみたいに、歌ったりもできないし…好きって伝えられないから……。だから…代わりにキス、するの。伝わってなかったらって思うと、怖くて…キスしないと、不安だから…」
千草が言い終えるより早く、俺は再び彼女の唇を奪った。
「んっ…んんー!」
今度は舌を入れる。千草が僅かに抗うような動きをするが、それも僅かだった。
「ふゅ…ふ、ぅ……」
千草は反撃を試みる。必死さが伝わる舌の動きだが、あまりに稚拙だった。俺は差し込まれて舌をしゃぶる様に迎撃し、怯んだところで逆襲。千草の歯や
歯茎を撫で回す。
「…んっ!…ぁぅん…!っはぅ」
千草はついに音を上げて、逃げるように口を離す。息をつく千草を、俺はたまらなく愛しいと思いながら、告げた。
「伝わってるよ」
「…?」
「千草の気持ち、伝わってる」